説明

レジスト下層膜材料及びこれを用いたパターン形成方法

【課題】特には3層レジストプロセス用下層膜として反射率を低減でき(反射防止膜としての最適なn、k値を有し)、埋め込み特性に優れ、パターン曲がり耐性が高く、特には60nmよりも細い高アスペクトラインにおけるエッチング後のラインの倒れやよれの発生がない下層膜を形成できるレジスト下層膜材料、及びこれを用いたパターン形成方法を提供する。
【解決手段】少なくとも、下記一般式(1−1)及び/又は(1−2)で示される1種以上の化合物、並びに下記一般式(2)で示される1種以上の化合物及び/又はその等価体を縮合することにより得られるポリマーを含有するレジスト下層膜材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子等の製造工程における微細加工に用いられる反射防止膜材料として有効なレジスト下層膜材料及びこれを用いた遠紫外線、KrFエキシマレーザー光(248nm)、ArFエキシマレーザー光(193nm)、Fレーザー光(157nm)、Krレーザー光(146nm)、Arレーザー光(126nm)、軟X線(EUV、13.5nm)、電子線(EB)、X線露光等に好適なレジストパターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が求められている中、現在汎用技術として用いられている光露光を用いたリソグラフィーにおいては、用いられる光源に対して如何により微細かつ高精度なパターン加工を行うかについて種々の技術開発が行われている。
【0003】
レジストパターン形成の際に使用するリソグラフィー用の光源として、水銀灯のg線(436nm)もしくはi線(365nm)を光源とする光露光が広く用いられており、更なる微細化のための手段として、露光光を短波長化する方法が有効とされてきた。このため、64MビットDRAM加工方法の量産プロセスには、露光光源としてi線(365nm)に代わって短波長のKrFエキシマレーザー(248nm)が利用された。しかし、更に微細な加工技術(加工寸法が0.13μm以下)を必要とする集積度1G以上のDRAMの製造には、より短波長の光源が必要とされ、特にArFエキシマレーザー(193nm)を用いたリソグラフィーが検討されてきている。
【0004】
典型的なレジストパターン形成方法として用いられる単層レジスト法は、パターン線幅に対するパターンの高さの比(アスペクト比)が大きくなると現像時に現像液の表面張力によりパターン倒れを起こすことは良く知られている。そこで、段差基板上に高アスペクト比のパターンを形成するにはドライエッチング特性の異なる膜を積層させてパターンを形成する多層レジスト法が優れることが知られており、ケイ素系感光性ポリマーによるレジスト層と、炭素と水素及び酸素を主構成元素とする有機系ポリマー、例えばノボラック系ポリマーによる下層を組み合わせた2層レジスト法(特許文献1等)や、単層レジスト法に用いられる有機系感光性ポリマーによるレジスト層とケイ素系ポリマーあるいはケイ素系CVD膜による中間層と有機系ポリマーによる下層を組み合わせた3層レジスト法(特許文献2等)が開発されてきている。
【0005】
上述の多層レジスト法の下層膜は、直上のケイ素系材料層をハードマスクとして酸素ガスによるドライエッチングによるパターン形成を行うため、炭素と水素及び酸素を主構成元素とする有機系ポリマーが用いられるが、同時に被加工基板のドライエッチングを行う際のエッチング耐性や、被加工基板上に高い平坦性を持つ膜の形成が可能な成膜性、また使用法によっては露光時の反射防止機能が要求される。例えば特許文献2は2層あるいは3層レジスト法用の下層膜材料に関する技術であるが、このような下層膜を用いることにより、高精度な下層膜パターンの形成が可能であると共に、被加工基板のエッチング条件に対して高いエッチング耐性を確保することができる。
【0006】
ここで、図2にレジスト中間層膜のk値(消衰係数)を変化させたときの基板反射率を示す。
レジスト中間層膜のk値として0.2以下の低い値と、適切な膜厚設定によって、1%以下の十分な反射防止効果を得ることができる。
【0007】
図3及び4には、下層膜のk値が0.2の場合と0.6の場合の、中間層と下層の膜厚を変化させたときの反射率変化を示す。図3と図4との比較から、レジスト下層膜のk値が高い方(0.6の場合(図4))が、より薄膜で反射を1%以下に抑えることができることがわかる。レジスト下層膜のk値が0.2の場合(図3)、膜厚250nmでは反射を1%にするためにレジスト中間層膜の膜厚を厚くしなければならない。レジスト中間層膜の膜厚を上げると、レジスト中間層膜を加工するときのドライエッチング時に最上層のレジストに対する負荷が大きく、好ましいことではない。図3と4は、露光装置のレンズのNAが0.85のドライ露光の場合の反射であるが、3層プロセスの中間層のn値(屈折率)、k値と膜厚を最適化することによって、下層膜のk値によらずに1%以下の反射率にすることができることが示されている。
【0008】
ところが、液浸リソグラフィーによって投影レンズのNAが1.0を超え、レジストだけでなくレジストの下の反射防止膜に入射する光の角度が浅くなってきている。反射防止膜は、膜自体の吸収だけでなく、光の干渉効果による打ち消しの作用を用いて反射を抑えている。斜めの光は光の干渉効果が小さくなるため、反射が増大する。
【0009】
3層プロセスの膜の中で光の干渉作用を用いて反射防止を行っているのは中間層である。下層膜は干渉作用を用いるには十分に厚いために干渉効果による打ち消し合いによる反射防止効果はない。下層膜表面からの反射を抑える必要があり、そのためにはk値を0.6より小さく、n値を上層の中間層に近い値にしなければならない。k値が小さすぎて透明性が高すぎると、基板からの反射も生じてくるため、液浸露光のNA1.3の場合、k値は0.25〜0.48程度が最適となる。n値は中間層、下層共にレジストのn値1.7に近い値が目標値となる。
【0010】
加工線幅の縮小に伴い、下層膜をマスクに被加工基板をエッチングするときに下層膜がよれたり曲がったりする現象が起きる事が報告されている(非特許文献1)。CVDで作成したアモルファスカーボン(以後CVD−C)膜は、膜中の水素原子を極めて少なくすることが出来、よれ防止には非常に有効であることは、一般的によく知られている。
【0011】
しかしながら、下地の被加工基板に段差がある場合、下層膜によって段差を平坦化させる必要がある。下層膜を平坦化させることによって、その上に成膜する中間層やフォトレジストの膜厚変動を抑え、リソグラフィーのフォーカスマージンを拡大することができる。
メタンガス、エタンガス、アセチレンガス等を原料に用いたCVD−C膜は、段差をフラットに埋め込むことが困難である。一方、下層膜をスピンコーティングによって形成した場合、基板の凹凸を埋め込むことができる長所がある。
【0012】
このように、CVD−C膜は段差の埋め込み特性が悪く、またCVD装置の価格と装置フットプリント面積の占有により導入が困難な場合がある。スピンコート法で成膜可能な下層膜材料でよれの問題を解決することが出来れば、プロセスと装置の簡略化のメリットは大きい。
そのため、反射防止膜としての最適なn、k値と埋め込み特性、優れたパターン曲がり耐性を有し、エッチング中のよれが生じない下層膜材料及び下層膜を形成するための方法が求められているのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平6−118651号公報
【特許文献2】特許4355943号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Proc.of Symp.Dry.Process, (2005) p11
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、特には3層レジストプロセス用下層膜として反射率を低減でき、即ち反射防止膜としての最適なn、k値を有し、埋め込み特性に優れ、パターン曲がり耐性が高く、特には60nmよりも細い高アスペクトラインにおけるエッチング後のラインの倒れやよれの発生がない下層膜を形成できるレジスト下層膜材料、及びこれを用いたパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明は、少なくとも、下記一般式(1−1)及び/又は(1−2)で示される1種以上の化合物、並びに下記一般式(2)で示される1種以上の化合物及び/又はその等価体を縮合することにより得られるポリマーを含有することを特徴とするレジスト下層膜材料を提供する。
【化1】

(上記一般式(1−1)及び(1−2)中、R〜Rは、互いに独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、イソシアナト基、グリシジルオキシ基、カルボキシル基、アミノ基、炭素数1〜30のアルコキシル基、炭素数1〜30のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜30のアルカノイルオキシ基、又は置換されていてもよい炭素数1〜30の飽和若しくは不飽和の有機基である。更に、分子内でR〜R又はR〜Rからそれぞれ任意に選ばれる2個の置換基が結合して、環状置換基を形成してもよい。上記一般式(2)中、Xは二重結合を含有する脂環式の5又は6員環構造を1個以上有する炭素数1〜30の一価の有機基を示す。)
【0017】
このように、少なくとも、上記一般式(1−1)及び/又は(1−2)で示される1種以上の化合物、並びに上記一般式(2)で示される1種以上の化合物及び/又はその等価体を縮合することにより得られるポリマーを含むレジスト下層膜材料を用いたレジスト下層膜は、特に短波長の露光に対して、優れた反射防止膜として機能し、すなわち透明性が高く、最適なn値、k値を有し、しかも埋め込み特性に優れ、基板加工時におけるパターン曲がり耐性に優れたものである。
【0018】
また、前記一般式(1−1)及び/又は(1−2)で示される1種以上の化合物、前記一般式(2)で示される1種以上の化合物及び/又はその等価体、並びに下記一般式(3)で示される1種以上の化合物及び/又はその等価体を縮合することにより得られるポリマーを含有することもできる。
Y−CHO (3)
(上記一般式(3)中、Yは水素原子又は置換されていてもよい炭素数1〜30の一価の有機基であり、Xとは異なる。)
【0019】
このように、レジスト下層膜材料が、前記一般式(1−1)及び/又は(1−2)で示される1種以上の化合物、前記一般式(2)で示される1種以上の化合物及び/又はその等価体、並びに前記一般式(3)で示される1種以上の化合物及び/又はその等価体を縮合することにより得られるポリマーを含有するものであれば、k値の調整等を容易に行うことが可能となり、所望のn値、k値を有するものとできる。
【0020】
また、前記ポリマーが、下記一般式(4−1)又は(4−2)で示されるものであることが好ましい。
【化2】

(式中、R〜R、X、及びYは上記と同じであり、a、b、c、dは、全繰り返し単位中に占める各単位の比率であり、0≦d<c<a+b<1、a+b+c+d=1の関係を満たす。尚、*は結合位置を示す。)
【0021】
このようなポリマーを含むレジスト下層膜材料を用いたレジスト下層膜は、基板加工時におけるパターン曲がり耐性により優れたものである。
【0022】
また、前記レジスト下層膜材料は、さらに架橋剤、酸発生剤、有機溶剤のうちいずれか1つ以上のものを含有することができる。
【0023】
このように、上記本発明のレジスト下層膜材料が、さらに有機溶剤、架橋剤、酸発生剤のうちいずれか1つ以上のものを含有することで、基板等への塗布後にベーク等により、レジスト下層膜内での架橋反応を促進することができる。従って、このようなレジスト下層膜は、レジスト上層膜とのインターミキシングの恐れが少なく、レジスト上層膜への低分子成分の拡散が少ないものとなる。
【0024】
また本発明は、被加工体にパターンを形成する方法であって、少なくとも、被加工体上に前記レジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上にケイ素原子を含有するレジスト中間層膜材料を用いてレジスト中間層膜を形成し、該レジスト中間層膜の上にフォトレジスト組成物のレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにしてレジスト中間層膜をエッチングし、該パターンが形成されたレジスト中間層膜をマスクにしてレジスト下層膜をエッチングし、さらに、該パターンが形成されたレジスト下層膜をマスクにして被加工体をエッチングして該被加工体にパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0025】
このように、本発明のレジスト下層膜材料を用いてリソグラフィーによりパターンを形成すれば、高精度で基板にパターンを形成することができる。
【0026】
また本発明は、被加工体にパターンを形成する方法であって、少なくとも、被加工体上に前記レジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上にケイ素原子を含有するレジスト中間層膜材料を用いてレジスト中間層膜を形成し、該レジスト中間層膜の上に有機反射防止膜(BARC)を形成し、該BARC上にフォトレジスト組成物のレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して4層レジスト膜とし、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにしてBARCとレジスト中間層膜をエッチングし、該パターンが形成されたレジスト中間層膜をマスクにしてレジスト下層膜をエッチングし、さらに、該パターンが形成されたレジスト下層膜をマスクにして被加工体をエッチングして該被加工体にパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0027】
このように、本発明では、レジスト中間層膜とレジスト上層膜の間にBARCを形成することができる。
【0028】
また本発明は、被加工体にパターンを形成する方法であって、少なくとも、被加工体上に前記レジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜、及びアモルファスケイ素膜から選ばれるいずれかの無機ハードマスク中間層膜を形成し、該無機ハードマスク中間層膜の上にフォトレジスト組成物のレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして無機ハードマスク中間層膜をエッチングし、該パターンが形成された無機ハードマスク中間層膜をマスクにしてレジスト下層膜をエッチングし、さらに、該パターンが形成されたレジスト下層膜をマスクにして被加工体をエッチングして該被加工体にパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0029】
このように、本発明では、無機ハードマスク中間層膜を用いた場合にも、本発明のレジスト下層膜材料を用いてリソグラフィーによりパターンを形成することにより、高精度で基板にパターンを形成することができる。
【0030】
また本発明は、被加工体にパターンを形成する方法であって、少なくとも、被加工体上に前記レジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜、及びアモルファスケイ素膜から選ばれるいずれかの無機ハードマスク中間層膜を形成し、該無機ハードマスク中間層膜の上に有機反射防止膜(BARC)を形成し、該BARC上にフォトレジスト組成物のレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して4層レジスト膜とし、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにしてBARCと無機ハードマスク中間層膜をエッチングし、該パターンが形成された無機ハードマスク中間層膜をマスクにしてレジスト下層膜をエッチングし、さらに、該パターンが形成されたレジスト下層膜をマスクにして被加工体をエッチングして該被加工体にパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0031】
このように、ハードマスク中間層膜の上にBARCを形成すれば、2層の反射防止膜によって1.0を超える高NAの液浸露光に於いても反射を抑えることが可能となる。また、ハードマスク中間層膜上のフォトレジストパターンの裾引きを低減させる効果もある。
【0032】
この場合、前記無機ハードマスク中間層膜を、CVD法又はALD法によって形成することができる。
このように、無機ハードマスク中間層膜をCVD法又はALD法により形成することにより、エッチング耐性を高くすることができる。
【0033】
また、前記レジスト上層膜のパターン形成方法を、波長が10nm以上300nm以下の光リソグラフィー、電子線による直接描画、及びナノインプリンティングのいずれか、あるいはこれらの組み合わせによるパターン形成とすることができる。
【0034】
このように、波長が10nm以上300nm以下の光リソグラフィー、電子線による直接描画、及びナノインプリンティングのいずれか、あるいはこれらの組み合わせにより、レジスト上層膜にパターンを形成することができる。
【0035】
また、前記パターン形成方法における現像方法を、アルカリ現像又は有機溶剤による現像とすることができる。
このように、本発明では、アルカリ現像又は有機溶剤による現像を適用することができる。
【0036】
また、前記被加工体として、半導体装置基板に、金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、及び金属酸化窒化膜のいずれかが成膜されたものを用いることができる。
この場合、前記金属として、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、アルミニウム、銅、及び鉄のいずれか、あるいはこれらの合金を用いることができる。
【0037】
このように、本発明では、前記被加工体として、半導体装置基板に、金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、及び金属酸化窒化膜のいずれかが成膜されたもの、例えば、前記金属が、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、アルミニウム、銅、及び鉄のいずれか、あるいはこれらの合金であるものを用いることができる。
【発明の効果】
【0038】
以上説明したように、本発明のレジスト下層膜材料により形成されたレジスト下層膜は、特に短波長の露光に対して、優れた反射防止膜として機能し、すなわち透明性が高く、最適なn値、k値を有し、しかも埋め込み特性に優れ、基板加工時におけるパターン曲がり耐性に優れたものである。また、本発明のレジスト下層膜材料を用いてリソグラフィーによりパターンを形成すれば、高精度で基板にパターンを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明のパターン形成方法の一例(3層レジスト加工プロセス)の説明図である。
【図2】3層プロセスにおける下層膜屈折率n値が1.5、k値が0.6、膜厚500nm固定で、中間層のn値が1.5、k値を0〜0.4、膜厚を0〜400nmの範囲で変化させたときの基板反射率の関係を示すグラフである。
【図3】3層プロセスにおける下層膜屈折率n値が1.5、k値が0.2、中間層のn値が1.5、k値を0.1固定で下層と中間層の膜厚を変化させたときの基板反射率の関係を示すグラフである。
【図4】3層プロセスにおける下層膜屈折率n値が1.5、k値が0.6、中間層のn値が1.5、k値を0.1固定で下層と中間層の膜厚を変化させたときの基板反射率の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明について説明する。
前述のように、CVD−C膜は、膜中の水素原子を極めて少なくすることが出来、よれ防止には非常に有効であることは、一般的によく知られているものの、メタンガス、エタンガス、アセチレンガス等を原料に用いたCVD−C膜は、段差をフラットに埋め込むことが困難であり、またCVD装置の価格と装置フットプリント面積の占有により導入が困難な場合があるという問題があった。
そのため、反射防止膜としての最適なn、k値と埋め込み特性、優れたパターン曲がり耐性を有し、エッチング中のよれが生じない下層膜材料及び下層膜を形成するための方法が求められていた。
【0041】
本発明者らは、既に下記に示すジシクロペンタジエンとナフトール誘導体の共縮合体が、波長193nmといった短波長の露光において、最適なn値、k値を有し、かつ基板エッチング時におけるエッチング耐性にも優れる材料であることを見出した(特許3981825号)。
【化3】

(式中、R1〜R8は、本明細書の他の記載に関わらず、上記式においてのみ以下の通りである。R1〜R8は互いに独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜6の置換可アルキル基、炭素数1〜6の置換可アルコキシ基、炭素数2〜6の置換可アルコキシカルボキシル基、炭素数6〜10の置換可アリール基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、イソシアネート基、又はグリシジル基である。m、nは正の整数である。)
【0042】
このナフトール共縮合体を製造する反応は、以下のフェノールとジシクロペンタジエンとの反応をナフトール系に応用しているものである(尚、下記反応式中、*は結合位置を示すものとする)。
【化4】

【0043】
従来のレジスト下層膜形成時の膜硬化反応は、架橋剤(下記式中●)を介してポリマー同士を架橋させ、硬化させる反応機構が一般的であった。
【化5】

【0044】
本発明者らは波長193nmといった短波長の露光において、最適なn値、k値を有したまま、更に曲がり耐性を改善させるため、上記のような反応機構で進行可能な2重結合を分子内に導入することにより、以下の式のように、架橋剤を介したポリマー間の架橋のみならず、架橋剤を介することなく直接ポリマー同士の架橋を進行させることが可能になり、焼成後の膜の架橋密度を改善し、エッチング後のパターン変形を抑制できることを見出して本発明を完成させた。
【化6】

(式中
【化7】

は、二重結合を含有する脂環式の5又は6員環構造を表す。)
【0045】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明は、少なくとも、下記一般式(1−1)及び/又は(1−2)で示される1種以上の化合物、並びに下記一般式(2)で示される1種以上の化合物及び/又はその等価体(以後、「アルデヒド化合物(2)」ということもある)を縮合することにより得られるポリマーを含有することを特徴とするレジスト下層膜材料である。
【化8】

(上記一般式(1−1)及び(1−2)中、R〜Rは、互いに独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、イソシアナト基、グリシジルオキシ基、カルボキシル基、アミノ基、炭素数1〜30のアルコキシル基、炭素数1〜30のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜30のアルカノイルオキシ基、又は置換されていてもよい炭素数1〜30の飽和若しくは不飽和の有機基である。更に、分子内でR〜R又はR〜Rからそれぞれ任意に選ばれる2個の置換基が結合して、環状置換基を形成してもよい。上記一般式(2)中、Xは二重結合を含有する脂環式の5又は6員環構造を1個以上有する炭素数1〜30の一価の有機基を示す。)
【0046】
ここで、有機基は炭素を含む基の意味であり、更に水素を含み、また窒素、酸素、硫黄等を含んでもよい(以下同様)。
【0047】
このようなポリマーを含有するレジスト下層膜材料であれば、下層膜形成時の膜硬化反応で、上記のような反応機構で進行し、架橋剤を介したポリマー間の架橋のみならず、架橋剤を介することなく直接ポリマー同士の架橋を進行させることが可能になり、焼成後の膜の架橋密度を改善し、エッチング後のパターン変形を抑制できる。また、波長193nmといった短波長の露光において、最適なn値、k値を有したものとなる。さらに、埋め込み特性にも優れたものとなる。
【0048】
ここで、上記一般式(1−1)で示されるナフタレン(誘導体)(以後、「ナフタレン誘導体(1−1)」ということもある)として、ナフタレン、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン、1,3−ジメチルナフタレン、1,5−ジメチルナフタレン、1,7−ジメチルナフタレン、2,7−ジメチルナフタレン、2−ビニルナフタレン、2,6−ジビニルナフタレン、アセナフテン、アセナフチレン、アントラセン、1−メトキシナフタレン、2−メトキシナフタレン、1,4−ジメトキシナフタレン、2,7−ジメトキシナフタレン、1−ナフトール、2−ナフトール、2−メチル−1−ナフトール、4−メトキシ−1−ナフトール、7−メトキシ−2−ナフトール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、5−アミノ−1−ナフトール、2−メトキシカルボニル−1−ナフトール、1−(4−ヒドロキシフェニル)ナフタレン、6−(4−ヒドロキシフェニル)−2−ナフトール、6−(シクロヘキシル)−2−ナフトール、1,1’−ビ−2,2’−ナフトール、6,6’−ビ−2,2’−ナフトール、9,9−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレン、6−ヒドロキシ−2−ビニルナフタレン、1−ヒドロキシメチルナフタレン、2−ヒドロキシメチルナフタレン等を挙げることができる。
【0049】
また、上記一般式(1−2)で示されるベンゼン(誘導体)(以後、「ベンゼン誘導体(1−2)」ということもある)として、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、クメン、インダン、インデン、メシチレン、ビフェニール、フルオレン、フェノール、アニソール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、2−t−ブチルフェノール、3−t−ブチルフェノール、4−t−ブチルフェノール、レゾルシノール、2−メチルレゾルシノール、4−メチルレゾルシノール、5−メチルレゾルシノール、カテコール、4−t−ブチルカテコール、2−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール、2−プロピルフェノール、3−プロピルフェノール、4−プロピルフェノール、2−イソプロピルフェノール、3−イソプロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、2−メトキシ−5−メチルフェノール、2−t−ブチル−5−メチルフェノール、4−フェニルフェノール、トリチルフェノール、ピロガロール、チモール、フェニルグリシジルエーテル、4−フルオロフェノール、3,4−ジフルオロフェノール、4−トリフルオロメチルフェノール、4−クロロフェノール、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、スチレン、4−t−ブトキシスチレン、4−アセトキシスチレン、4−メトキシスチレン、ジビニルベンゼン、ベンジルアルコール等を挙げることができる。
【0050】
上記一般式(1−1)、(1−2)で示される化合物は、それぞれ単独で使用してもよいし、n値、k値及びエッチング耐性を制御するため、2種類以上を組み合わせてもよい。
【0051】
上記一般式(2)で示される二重結合を含有する脂環式の5又は6員環構造を1個以上有するアルデヒド化合物の一例を、以下の式で表すことができる。
【化9】

【0052】
【化10】

【0053】
【化11】

【0054】
【化12】

【0055】
更に、ここで示されたアルデヒド化合物の等価体を使用することもできる。例えば、上記一般式(2)の等価体としては、下記一般式
【化13】

(Xは前記Xと同じ定義、R’はそれぞれ同じでも異なってもよい炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。)
【化14】

(Xは前記Xと同じ定義、R’’は炭素数1〜10の2価の炭化水素基である。)
又は、ホルミル基のα−炭素原子に水素原子が結合している場合は、
【化15】

(X’は前記Xから水素原子が1個少ない有機基、R’は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。)
等を例示できる。
【0056】
(2A)のタイプの等価体として、具体的に例示すると、
【化16】

であり、そのほかのアルデヒド化合物に関しても同様に適応できる。
【0057】
(2B)のタイプの等価体として、具体的に例示すると、
【化17】

であり、そのほかのアルデヒド化合物に関しても同様に適応できる。
【0058】
(2C)のタイプの等価体として、具体的に例示すると、
【化18】

であり、そのほかのアルデヒド化合物に関しても同様に適応できる。
【0059】
ナフタレン誘導体(1−1)、ベンゼン誘導体(1−2)とアルデヒド化合物(2)の比率は、(1−1)と(1−2)のモル量の合計量1モルに対して0.01〜5モルが好ましく、より好ましくは0.1〜2モルである。
【0060】
本発明のレジスト下層膜材料は、前記一般式(1−1)及び/又は(1−2)で示される1種以上の化合物、前記一般式(2)で示される1種以上の化合物及び/又はその等価体、並びに下記一般式(3)で示される1種以上の化合物及び/又はその等価体(以後、「アルデヒド化合物(3)」ということもある)を縮合することにより得られるポリマーを含有するものであっても良い。
Y−CHO (3)
(上記一般式(3)中、Yは水素原子又は置換されていてもよい炭素数1〜30の一価の有機基であり、Xとは異なる。)
【0061】
上記一般式(3)で示されるアルデヒド化合物としては、例えばホルムアルデヒド、トリオキサン、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、アダマンタンカルボアルデヒド、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、α−フェニルプロピルアルデヒド、β−フェニルプロピルアルデヒド、o−クロロベンズアルデヒド、m−クロロベンズアルデヒド、p−クロロベンズアルデヒド、o−ニトロベンズアルデヒド、m−ニトロベンズアルデヒド、p−ニトロベンズアルデヒド、o−メチルベンズアルデヒド、m−メチルベンズアルデヒド、p−メチルベンズアルデヒド、p−エチルベンズアルデヒド、p−n−ブチルベンズアルデヒド、1−ナフチルアルデヒド、2−ナフチルアルデヒド、アントラセンカルボアルデヒド、ピレンカルボアルデヒド、フルフラール、メチラール等を挙げることができる。
【0062】
更に、上記一般式(2)で示されるアルデヒド化合物の場合と同様に、アルデヒド等価体を使用することができる。例えば、上記一般式(3)の等価体としては、下記一般式
【化19】

(Yは前記Yと同じ定義、R’はそれぞれ同じでも異なってもよい炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。)
【化20】

(Yは前記Yと同じ定義、R’’は炭素数1〜10の2価の炭化水素基である。)
又は、ホルミル基のα−炭素原子に水素原子が結合している場合は、
【化21】

(Y’は前記Yから水素原子が1個少ない有機基、R’は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。)
等を例示できる。
【0063】
本発明のレジスト下層膜材料に含有されるこのようなポリマーとして、下記一般式(4−1)又は(4−2)で示されるものを挙げることができる。
【化22】

(式中、R〜R、X、及びYは上記と同じであり、a、b、c、dは、全繰り返し単位中に占める各単位の比率であり、0≦d<c<a+b<1、a+b+c+d=1の関係を満たす。尚、*は結合位置を示す。)
【0064】
ナフタレン誘導体(1−1)、ベンゼン誘導体(1−2)とアルデヒド化合物(2)及びアルデヒド化合物(3)の比率は、(1−1)と(1−2)のモル量の合計量1モルに対して0.01〜5モルであり、(3)<(2)となる比率が好ましく、より好ましくは0.05〜2モルである。
全繰り返し単位中の比率としては、0.1<a+b<1が好ましく、より好ましくは0.3<a+b<0.95である。
【0065】
上記一般式(4−1)、(4−2)で示されるポリマー(以後、「ポリマー(4−1)」「ポリマー(4−2)」ということもある)の製造は、通常、無溶媒又は溶媒中で酸又は塩基を触媒として用いて、室温又は必要に応じて冷却又は加熱下にて、上記対応する化合物を縮合反応(例えば脱水縮合)させることにより、行うことができる。
用いられる溶媒として、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、塩化メチレン、クロロフォルム、ジクロロエタン、トリクロロエチレン等の塩素系溶剤類、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の炭化水素類、アセトニトリル等のニトリル類、アセトン、エチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエステル類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド等の非プロトン性極性溶媒類が例示でき、これらを単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。これらの溶媒は、反応原料100質量部に対して0〜2,000質量部の範囲で使用できる。
【0066】
用いられる酸触媒として、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ヘテロポリ酸等の無機酸類、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機酸類、三塩化アルミニウム、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、四塩化錫、四臭化錫、二塩化ジブチル錫、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫オキシド、四塩化チタン、四臭化チタン、チタン(IV)メトキシド、チタン(IV)エトキシド、チタン(IV)イソプロポキシド、酸化チタン(IV)等のルイス酸類を用いることができる。用いられる塩基触媒として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化カルシウム等の無機塩基類、メチルリチウム、n−ブチルリチウム、塩化メチルマグネシウム、臭化エチルマグネシウム等のアルキル金属類、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシド等のアルコキシド類、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N、N−ジメチルアニリン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の有機塩基類を用いることができる。その使用量は、原料に対して0.001〜100重量%、好ましくは0.005〜50重量%の範囲である。反応温度は−50℃から溶媒の沸点程度が好ましく、室温から100℃が更に好ましい。
【0067】
縮合反応方法としては、ナフタレン誘導体(1−1)、ベンゼン誘導体(1−2)、アルデヒド化合物(2)(3)、触媒を一括で仕込む方法や、触媒存在ナフタレン誘導体(1−1)、ベンゼン誘導体(1−2)、アルデヒド化合物(2)、(3)を滴下していく方法がある。
縮合反応終了後、系内に存在する未反応原料、触媒等を除去するために、反応釜の温度を130〜230℃にまで上昇させ、1〜50mmHg程度で揮発分を除去する方法や適切な溶媒や水を加えて、ポリマーを分画する方法、ポリマーを良溶媒に溶解後、貧溶媒中で再沈する方法等、得られた反応生成物の性質により使い分けることができる。
【0068】
このようにして得られたポリマー(4−1)又は(4−2)のポリスチレン換算の分子量は、重量平均分子量(Mw)が500〜100,000、特に1,000〜20,000であることが好ましい。分子量分散度は1.2〜8の範囲内が好ましく用いられるが、モノマー成分、オリゴマー成分又は分子量(Mw)1,000以下の低分子量体をカットして分子量分布を狭くした方が架橋効率が高くなり、またベーク中の揮発成分を抑えることによりベークカップ周辺の汚染を防ぐことができる。
【0069】
また、上記一般式(4−1)、(4−2)で示される化合物には縮合芳香族、あるいは脂環族の置換基を導入することができる。
ここで導入可能な置換基は、具体的には下記に挙げることができる。
【0070】
【化23】

【0071】
これらの中で248nm露光用には、多環芳香族基、例えばアントラセンメチル基、ピレンメチル基が最も好ましく用いられる。193nmでの透明性向上のためには脂環構造を持つものや、ナフタレン構造を持つものが好ましく用いられる。一方、波長157nmにおいてベンゼン環は透明性が向上するウィンドウがあるため、吸収波長をずらして吸収を上げてやる必要がある。フラン環はベンゼン環よりも吸収が短波長化して157nmの吸収が若干向上するが、効果は小さい。ナフタレン環やアントラセン環、ピレン環は吸収波長が長波長化することによって吸収が増大し、これらの芳香族環はエッチング耐性も向上する効果もあり、好ましく用いられる。
【0072】
置換基の導入方法としては、ポリマーに上記置換基の結合位置がヒドロキシル基になっているアルコールを酸触媒存在下芳香族親電子置換反応機構で水酸基やアルキル基のオルソ位又はパラ位に導入する方法が挙げられる。酸触媒は、塩酸、硝酸、硫酸、ギ酸、シュウ酸、酢酸、メタンスルホン酸、n−ブタンスルホン酸、カンファースルホン酸、トシル酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の酸性触媒を用いることができる。これらの酸性触媒の使用量は、反応前ポリマー100質量部に対して0.001〜20質量部である。置換基の導入量は、ポリマー中のモノマーユニット1モルに対して0〜0.8モルの範囲である。
【0073】
更に、別のポリマーとブレンドすることもできる。ブレンド用ポリマーとしては、上記一般式(1−1)又は上記一般式(1−2)で示される化合物を原料とし、組成の異なるポリマーや公知のノボラック樹脂等を例示できる。これらを混合し、スピンコーティングの成膜性や、段差基板での埋め込み特性を向上させる役割を持つ。また、炭素密度が高くエッチング耐性の高い材料を選ぶこともできる。
【0074】
例えばブレンドに用いることのできる公知のノボラック樹脂として、具体的には、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、2−t−ブチルフェノール、3−t−ブチルフェノール、4−t−ブチルフェノール、2−フェニルフェノール、3−フェニルフェノール、4−フェニルフェノール、3,5−ジフェニルフェノール、2−ナフチルフェノール、3−ナフチルフェノール、4−ナフチルフェノール、4−トリチルフェノール、レゾルシノール、2−メチルレゾルシノール、4−メチルレゾルシノール、5−メチルレゾルシノール、カテコール、4−t−ブチルカテコール、2−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール、2−プロピルフェノール、3−プロピルフェノール、4−プロピルフェノール、2−イソプロピルフェノール、3−イソプロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、2−メトキシ−5−メチルフェノール、2−t−ブチル−5−メチルフェノール、ピロガロール、チモール、イソチモール、4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジメチル−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジアリル−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジフルオロ−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジフェニル−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジメトキシ−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−6,6’−ジオール、3,3,3’,3’−テトラメチル−2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−6,6’−ジオール、3,3,3’,3’,4,4’−ヘキサメチル−2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−6,6’−ジオール、2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−5,5’−ジオール、5,5‘−ジメチル−3,3,3’,3’−テトラメチル−2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−6,6’−ジオール、1−ナフトール、2−ナフトール、2−メチル−1−ナフトール、4−メトキシ−1−ナフトール、7−メトキシ−2−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン、3−ヒドロキシ−ナフタレン−2−カルボン酸メチル、ヒドロキシインデン、ヒドロキシアントラセン、ビスフェノール、トリスフェノール等とホルムアルデヒドとの脱水縮合物、ポリスチレン、ポリビニルナフタレン、ポリビニルアントラセン、ポリビニルカルバゾール、ポリインデン、ポリアセナフチレン、ポリノルボルネン、ポリシクロデセン、ポリテトラシクロドデセン、ポリノルトリシクレン、ポリ(メタ)アクリレート及びこれらの共重合体等を挙げることができる。
【0075】
更に、その他公知のノルトリシクレン共重合体、水素添加ナフトールノボラック樹脂、ナフトールジシクロペンタジエン共重合体、フェノールジシクロペンタジエン共重合体、フルオレンビルフェノールノボラック、アセナフチレン共重合、インデン共重合体、フェノール基を有するフラーレン、ビスフェノール化合物及びこのノボラック樹脂、ジビスフェノール化合物及びこのノボラック樹脂、アダマンタンフェノール化合物のノボラック樹脂、ヒドロキシビニルナフタレン共重合体、ビスナフトール化合物及びこのノボラック樹脂、ROMP、トリシクロペンタジエン共重合物に示される樹脂化合物、フラーレン類樹脂化合物等をブレンドすることもできる。
【0076】
上記ブレンド用化合物又はブレンド用ポリマーの配合量は、上記一般式(4−1)、(4−2)に示される化合物100重量部に対して0〜1000重量部、好ましくは0〜500重量部である。
【0077】
本発明のレジスト下層膜材料には、基板等への塗布後にベーク等により、レジスト下層膜内での架橋反応を促進し、レジスト下層膜を、レジスト上層膜とのインターミキシングの恐れが少なく、レジスト上層膜への低分子成分の拡散が少ないものとする目的で、架橋剤を含有することができる。
【0078】
本発明で使用可能な架橋剤は、特開2007−199653号公報中の(0055)〜(0060)段落に記載されている材料を添加することができる。
【0079】
本発明においては、熱による架橋反応を更に促進させるための酸発生剤を添加することができる。酸発生剤は熱分解によって酸を発生するものや、光照射によって酸を発生するものがあるが、いずれのものも添加することができる。具体的には、特開2007−199653号公報中の(0061)〜(0085)段落に記載されている材料を添加することができる。
【0080】
更に、後述する本発明のパターン形成方法に用いるレジスト下層膜材料には、保存安定性を向上させるための塩基性化合物を配合することができる。塩基性化合物としては、酸発生剤より微量に発生した酸が架橋反応を進行させるのを防ぐための、酸に対するクエンチャーの役割を果たす。
このような塩基性化合物としては、具体的には特開2007−199653号公報中の(0086)〜(0090)段落に記載されている材料を添加することができる。
【0081】
また、本発明のレジスト下層膜材料の調製には、有機溶剤を用いることができる。
本発明のパターン形成方法に用いるレジスト下層膜材料において使用可能な有機溶剤としては、前記のベースポリマー、酸発生剤、架橋剤、その他添加剤等が溶解するものであれば特に制限はない。具体的には、特開2007−199653号公報中の(0091)〜(0092)段落に記載されている溶剤を添加することができる。
【0082】
また更に、本発明のパターン形成方法に用いる下層膜形成材料において、スピンコーティングにおける塗布性を向上させるために界面活性剤を添加することもできる。界面活性剤は、特開2008−111103号公報中の(0165)〜(0166)段落に記載のものを用いることができる。
【0083】
上記のように調製したレジスト下層膜材料を用いた本発明のパターン形成方法は、例えば以下のものである。
本発明では、被加工体にパターンを形成する方法であって、少なくとも、被加工体上に前記本発明のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上にケイ素原子を含有するレジスト中間層膜材料を用いてレジスト中間層膜を形成し、該レジスト中間層膜の上にフォトレジスト組成物のレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにしてレジスト中間層膜をエッチングし、該パターンが形成されたレジスト中間層膜をマスクにしてレジスト下層膜をエッチングし、さらに、該パターンが形成されたレジスト下層膜をマスクにして被加工体をエッチングして該被加工体にパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0084】
この場合、レジスト中間層膜として、ケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜(SiON膜)、及びアモルファスケイ素膜から選ばれるいずれかの無機ハードマスク中間層膜を形成しても良い。
【0085】
レジスト下層膜の上に無機ハードマスク中間層膜を形成する場合は、CVD法やALD法等で、ケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜(SiON膜)、アモルファスケイ素膜が形成される。窒化膜の形成方法としては、特開2002−334869号公報、WO2004/066377等に記載されている。無機ハードマスクの膜厚は5〜200nm、好ましくは10〜100nmであり、中でも反射防止膜としての効果が高いSiON膜が最も好ましく用いられる。SiON膜を形成する時の基板温度は300〜500℃となるために、下層膜として300〜500℃の温度に耐える必要がある。本発明で用いるレジスト下層膜材料は、高い耐熱性を有しており300℃〜500℃の高温に耐えることができるため、CVD法又はALD法で形成された無機ハードマスクと、スピンコート法で形成されたレジスト下層膜の組み合わせが可能である。
【0086】
このようなレジスト中間層膜や無機ハードマスク中間層膜の上に、レジスト上層膜としてフォトレジスト膜を形成しても良いが、レジスト中間層膜や無機ハードマスク中間層膜の上に有機反射防止膜(BARC)をスピンコートで形成して、その上にフォトレジスト膜を形成しても良い。
特に、SiON膜等の無機ハードマスク中間層膜を用いた場合、SiON膜とBARCの2層の反射防止膜によって1.0を超える高NAの液浸露光に於いても反射を抑えることが可能となる。BARCを形成するもう一つのメリットとしては、SiON直上でのフォトレジストパターンの裾引きを低減させる効果があることである。
【0087】
本発明のパターン形成方法におけるレジスト下層膜形成工程では、上記のレジスト下層膜材料を、フォトレジストと同様にスピンコート法等で被加工体上にコーティングする。スピンコート法等を用いることで、良好な埋め込み特性を得ることができる。スピンコート後、溶媒を蒸発し、レジスト上層膜やレジスト中間層膜とのミキシング防止のため、架橋反応を促進させるためにベークを行う。ベークは100℃を超え、600℃以下の範囲内で行い、10〜600秒、好ましくは10〜300秒の範囲内で行う。ベーク温度は、より好ましくは150℃以上500℃以下であり、更に好ましくは180℃以上400℃以下である。デバイスダメージやウェハーの変形への影響を考えると、リソグラフィーのウェハープロセスでの加熱できる温度の上限は600℃以下、好ましくは500℃以下である。
【0088】
ベーク中の雰囲気としては空気中でも構わないが、酸素を低減させるためにN、Ar、He等の不活性ガスを封入しておくことは、レジスト下層膜の酸化を防止するために好ましい。酸化を防止するためには酸素濃度をコントロールする必要があり、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは100ppm以下である。ベーク中のレジスト下層膜の酸化を防止すると、吸収が増大したりエッチング耐性が低下したりすることがないため好ましい。
【0089】
尚、このレジスト下層膜の厚さは適宜選定されるが、30〜20,000nm、特に50〜15,000nmとすることが好ましい。レジスト下層膜を作製した後、3層プロセスの場合はその上にケイ素を含有するレジスト中間層膜、ケイ素を含まないレジスト上層膜(単層レジスト膜)を形成することができる。
【0090】
このような3層プロセスのケイ素含有レジスト中間層膜としては、ポリシロキサンベースの中間層膜が好ましく用いられる。このケイ素含有中間層膜に反射防止膜として効果を持たせることによって、反射を抑えることができる。具体的には特開2004−310019号、同2009−126940号等に示されるポリシロキサンを含む材料が挙げられる。
【0091】
特に193nm露光用としては、レジスト下層膜として芳香族基を多く含み基板エッチング耐性が高い材料を用いると、k値が高くなり、基板反射が高くなるが、レジスト中間層膜で反射を抑えることによって基板反射を0.5%以下にすることができる。
【0092】
このような無機ハードマスク中間層膜は、CVD法又はALD法によって形成することが可能である。
【0093】
3層レジスト膜におけるレジスト上層膜は、ポジ型でもネガ型でもどちらでもよく、通常用いられているフォトレジスト組成物と同じものを用いることができる。上記フォトレジスト組成物によりレジスト上層膜を形成する場合、上記レジスト下層膜を形成する場合と同様に、スピンコート法が好ましく用いられる。フォトレジスト組成物をスピンコート後、プリベークを行うが、60〜180℃で10〜300秒の範囲が好ましい。その後常法に従い、露光を行い、ポストエクスポジュアーベーク(PEB)、現像を行い、レジストパターンを得る。尚、レジスト上層膜の厚さは特に制限されないが、30〜500nm、特に50〜400nmが好ましい。
【0094】
前記レジスト上層膜のパターン形成方法としては、波長が10nm以上300nm以下の光リソグラフィー、具体的には248nm、193nm、157nmのエキシマレーザー、20nm以下の軟X線、電子線による直接描画、ナノインプリンティング等、あるいはこれらの組み合わせによるパターン形成を行うことができる。
【0095】
また、このようなパターン形成方法における現像方法の一例として、アルカリ現像又は有機溶剤による現像が挙げられる。
【0096】
次に、得られたレジストパターンをマスクにしてエッチングを行う。3層プロセスにおけるレジスト中間層膜、特に無機ハードマスクのエッチングは、フロン系のガスを用いてレジストパターンをマスクにして行う。次いでレジスト中間層膜パターン、特に無機ハードマスクパターンをマスクにして酸素ガス又は水素ガスを用いてレジスト下層膜のエッチング加工を行う。
【0097】
次の被加工体のエッチングも、常法によって行うことができ、例えば基板がSiO、SiN、シリカ系低誘電率絶縁膜であればフロン系ガスを主体としたエッチング、p−SiやAl、Wでは塩素系、臭素系ガスを主体としたエッチングを行う。基板加工をフロン系ガスでエッチングした場合、3層プロセスのケイ素含有中間層膜は基板加工と同時に剥離される。塩素系、臭素系ガスで基板をエッチングした場合は、ケイ素含有中間層膜の剥離は基板加工後にフロン系ガスによるドライエッチング剥離を別途行う必要がある。
【0098】
本発明のレジスト下層膜形成方法で形成したレジスト下層膜は、これら被加工体のエッチング耐性に優れる特徴がある。
尚、被加工体としては、半導体装置基板(基板)に、金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、及び金属酸化窒化膜のいずれか(以後、「被加工層」とする)が成膜されたもの等を用いることができる。
【0099】
基板としては、特に限定されるものではなく、Si、α−Si、p−Si、SiO、SiN、SiON、W、TiN、Al等で被加工層と異なる材質のものが用いられる。
被加工層としては、Si、SiO、SiON、SiN、p−Si、α−Si、W、W−Si、Al、Cu、Al−Si等種々のLow−k膜及びそのストッパー膜等が用いられ、通常50〜10,000nm、特に100〜5,000nm厚さに形成し得る。
【0100】
本発明のパターン形成方法(3層プロセス)の一例について図1を用いて具体的に示すと下記の通りである。
【0101】
3層プロセスの場合、図1(A)に示したように、基板1の上に積層された被加工層2上に本発明によりレジスト下層膜3を形成した後、レジスト中間層膜4を形成し、その上にレジスト上層膜5を形成する。
【0102】
次いで、図1(B)に示したように、レジスト上層膜の所用部分6を露光し、PEB及び現像を行ってレジストパターン5aを形成する(図1(C))。この得られたレジストパターン5aをマスクとし、CF系ガスを用いてレジスト中間層膜4をエッチング加工してレジスト中間層膜パターン4aを形成する(図1(D))。レジストパターン5aを除去後、この得られたレジスト中間層膜パターン4aをマスクとしてレジスト下層膜3を酸素プラズマエッチングし、レジスト下層膜パターン3aを形成する(図1(E))。更にレジスト中間層膜パターン4aを除去後、レジスト下層膜パターン3aをマスクに被加工層2をエッチング加工して、基板にパターン2aを形成するものである(図1(F))。
【0103】
尚、無機ハードマスク中間層膜を用いる場合、レジスト中間層膜4が無機ハードマスク中間層膜であり、レジスト中間層膜パターン4aが無機ハードマスク中間層膜パターン4aである。
また、BARCを敷く場合は、レジスト中間層膜(又は無機ハードマスク中間層膜)4とレジスト上層膜5との間にBARC層を設ける。BARCのエッチングはレジスト中間層膜(又は無機ハードマスク中間層膜)4のエッチングに先立って連続して行われる場合もあるし、BARCだけのエッチングを行ってからエッチング装置を変える等してレジスト中間層膜(又は無機ハードマスク中間層膜)4のエッチングを行うこともできる。
【実施例】
【0104】
以下、合成例、比較合成例、実施例、比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの記載によって限定されるものではない。
尚、分子量として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を求め、それらから分散度(Mw/Mn)を導いた。
【0105】
(合成例1)
500mLのフラスコに1−ナフトール72g(0.5モル)、ノルボルネンカルボアルデヒド40g(0.33モル)、メチルセロソルブ200gを加え、65℃で撹拌しながら20%パラトルエンスルホン酸メチルセロソルブ溶液20gを加えた。同温度で2時間撹拌後、室温に冷却し、酢酸エチル800mlが入っている分液ロートにあけ、脱イオン水500mlで洗浄し、洗浄水を廃棄した。この洗浄分液操作を更に繰り返し、反応触媒と金属不純物を除去した。得られた溶液を減圧で濃縮した後、残渣にTHF500mlを加え、ヘキサン4000mlでポリマーを再沈させた。沈降したポリマーをろ過で分別し減圧乾燥してポリマー1を得た。
【化24】

【0106】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算の分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求め、H−NMR分析によりポリマー1中のナフトール(a)とノルボルネン(b)のモル比を以下の通りに求めた。
モル比 a:b=0.60:0.40
分子量(Mw)4,300
分散度(Mw/Mn)=6.50
【0107】
(合成例2〜12)
表1に示される原料を使用して合成例1と同じ反応条件で、表2に示されるようなポリマー2からポリマー12までを得た。
【0108】
【表1】

反応触媒A:20%パラトルエンスルホン酸メチルセロソルブ溶液
反応触媒B:20%パラトルエンスルホン酸メトキシプロパノール溶液
【0109】
【表2】

【0110】
[実施例、比較例]
(レジスト下層膜材料の調製)
上記ポリマー1〜12を20質量部と、下記AG1で示される酸発生剤を1質量部と、下記CR1で示される架橋剤を4質量部とを、FC−430(住友スリーエム社製)0.1質量%を含むプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100質量部に溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによってレジスト下層膜形成用溶液(SOL−1〜12)をそれぞれ調製した。
【化25】

【0111】
この溶液をシリコン基板上に塗布(スピンコート)して、250℃で60秒間ベークしてそれぞれ膜厚200nmの塗布膜UDL−1〜12を形成した。この膜を、J.A.ウーラム社の入射角度可変の分光エリプソメーター(VASE)で波長193nmにおける屈折率(n,k)を求めた。その結果を表3に示す。更に、東陽テクニカ社製ナノインデンターSA2型装置でナノインデンテーション試験を行い、上記塗布膜のハードネスを測定した。その結果も表3に示す。
【0112】
【表3】

【0113】
表3に示されるように、UDL1〜12では、レジスト下層膜の屈折率のn値が約1.5、k値が0.20〜0.50の範囲であり、3層レジスト用の下層膜としても十分な反射防止効果を有し、特に200nm以上の膜厚で十分な反射防止効果を発揮できるだけの最適な屈折率(n)と消光係数(k)を有することがわかる。
また、スピンコーティングによって形成したレジスト下層膜は、埋め込み特性に優れるものであった。
【0114】
UDL−1とUDL−10、UDL−4とUDL−11、UDL−8とUDL−12を比べると、ハードネスはそれぞれ、0.60と0.45、0.55と0.40そして0.60と0.45という結果になった。このことから脂環式の5又は6員環構造中に2重結合を有する置換基を持つポリマーは、これを持たない物に比べてハードネスが高く、より緻密な構造を有していることがわかった。
【0115】
また、UDL−7とUDL−8を比較すると、よりシクロヘキセン構造のモル比の高いUDL−8のハードネスが高いことからも、2重結合を有する置換基は、塗布膜のハードネス向上に寄与している。
さらに、上記一般式(3)のアルデヒド化合物の有無により、k値やハードネスを調整できることがわかる。
【0116】
[実施例1〜9、比較例1〜3]
(パターンエッチング試験)
レジスト下層膜材料(UDL−1〜12)を、膜厚200nmのSiO膜が形成された直径300mmSiウェハー基板上に塗布(スピンコート)して、250℃で60秒間ベークして膜厚200nmのレジスト下層膜(実施例1〜9、比較例1〜3)を形成した。その上にケイ素含有レジスト中間層膜材料SOG−1を常法に従って調製したものを塗布して220℃で60秒間ベークして膜厚35nmのレジスト中間層膜を形成し、レジスト上層膜材料(ArF用SLレジスト溶液)を塗布し、105℃で60秒間ベークして膜厚100nmのレジスト上層膜を形成した。レジスト上層膜に液浸保護膜(TC−1)を塗布し90℃で60秒間ベークし膜厚50nmの保護膜を形成した。上層レジストとしては、表4に示す組成の樹脂、酸発生剤、塩基化合物をFC−430(住友スリーエム(株)製)0.1質量%を含む溶媒中に溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって調製した。
【0117】
【表4】

【0118】
【化26】

【0119】
液浸保護膜(TC−1)としては、表5に示す組成の樹脂を溶媒中に溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって調製した。
【表5】

保護膜ポリマー:下記構造式
【化27】

分子量(Mw)=8,800
分散度(Mw/Mn)=1.69
【0120】
次いで、ArF液浸露光装置((株)ニコン製;NSR−S610C,NA1.30、σ0.98/0.65、35度ダイポールs偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)で露光量を変えながら露光し、100℃で60秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で30秒間現像し、ピッチ100nmでレジスト線幅を50nmから30nmまでのポジ型のラインアンドスペースパターンを得た。
【0121】
次いで、東京エレクトロン製エッチング装置Teliusを用いてドライエッチングによるレジストパターンをマスクにしてケイ素含有中間層膜の加工、ケイ素含有中間層膜をマスクにして下層膜、下層膜をマスクにしてSiO膜の加工を行った。結果を表6に示す。
【0122】
エッチング条件は下記に示すとおりである。
レジストパターンのSOG膜への転写条件。
チャンバー圧力 10.0Pa
RFパワー 1,500W
CFガス流量 15sccm
ガス流量 75sccm
時間 15sec
【0123】
SOG膜の下層膜への転写条件。
チャンバー圧力 2.0Pa
RFパワー 500W
Arガス流量 75sccm
ガス流量 45sccm
時間 120sec
【0124】
SiO膜への転写条件。
チャンバー圧力 2.0Pa
RFパワー 2,200W
12ガス流量 20sccm
ガス流量 10sccm
Arガス流量 300sccm
60sccm
時間 90sec
【0125】
パターン断面を(株)日立製作所製電子顕微鏡(S−4700)にて観察し、形状を比較し、表6にまとめた。
【0126】
【表6】

【0127】
表3に示されるように本発明の下層膜は、液浸リソグラフィー用3層レジストの下層膜として実用に値する屈折率を有している。
また、表6に示すように現像後のレジスト形状、酸素エッチング後、基板加工エッチング後の下層膜の形状が良好であった。露光により作られたレジスト線幅に従って、基板転写後のパターン寸法も変化した。その結果、ハードネスが0.50GPaに満たない材料は、40nm前後の線幅でパターンよれが発生した。一方、ハードネスが0.55GPa以上の下層膜を使用するとパターン寸法が36nm以下までよれないことが判明した。
【0128】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0129】
1…基板、2…被加工層、2a…パターン、3…レジスト下層膜、
3a…レジスト下層膜パターン、4…レジスト中間層膜(無機ハードマスク中間層膜)、
4a…レジスト中間層膜パターン(無機ハードマスク中間層膜パターン)、
5…レジスト上層膜、5a…レジストパターン、6…所用部分。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、下記一般式(1−1)及び/又は(1−2)で示される1種以上の化合物、並びに下記一般式(2)で示される1種以上の化合物及び/又はその等価体を縮合することにより得られるポリマーを含有することを特徴とするレジスト下層膜材料。
【化1】

(上記一般式(1−1)及び(1−2)中、R〜Rは、互いに独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、イソシアナト基、グリシジルオキシ基、カルボキシル基、アミノ基、炭素数1〜30のアルコキシル基、炭素数1〜30のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜30のアルカノイルオキシ基、又は置換されていてもよい炭素数1〜30の飽和若しくは不飽和の有機基である。更に、分子内でR〜R又はR〜Rからそれぞれ任意に選ばれる2個の置換基が結合して、環状置換基を形成してもよい。上記一般式(2)中、Xは二重結合を含有する脂環式の5又は6員環構造を1個以上有する炭素数1〜30の一価の有機基を示す。)
【請求項2】
前記一般式(1−1)及び/又は(1−2)で示される1種以上の化合物、前記一般式(2)で示される1種以上の化合物及び/又はその等価体、並びに下記一般式(3)で示される1種以上の化合物及び/又はその等価体を縮合することにより得られるポリマーを含有することを特徴とする請求項1に記載のレジスト下層膜材料。
Y−CHO (3)
(上記一般式(3)中、Yは水素原子又は置換されていてもよい炭素数1〜30の一価の有機基であり、Xとは異なる。)
【請求項3】
前記ポリマーが、下記一般式(4−1)又は(4−2)で示されるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のレジスト下層膜材料。
【化2】

(式中、R〜R、X、及びYは上記と同じであり、a、b、c、dは、全繰り返し単位中に占める各単位の比率であり、0≦d<c<a+b<1、a+b+c+d=1の関係を満たす。尚、*は結合位置を示す。)
【請求項4】
前記レジスト下層膜材料が、さらに架橋剤、酸発生剤、有機溶剤のうちいずれか1つ以上のものを含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のレジスト下層膜材料。
【請求項5】
被加工体にパターンを形成する方法であって、少なくとも、被加工体上に請求項1乃至4のいずれか1項に記載のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上にケイ素原子を含有するレジスト中間層膜材料を用いてレジスト中間層膜を形成し、該レジスト中間層膜の上にフォトレジスト組成物のレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにしてレジスト中間層膜をエッチングし、該パターンが形成されたレジスト中間層膜をマスクにしてレジスト下層膜をエッチングし、さらに、該パターンが形成されたレジスト下層膜をマスクにして被加工体をエッチングして該被加工体にパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項6】
被加工体にパターンを形成する方法であって、少なくとも、被加工体上に請求項1乃至4のいずれか1項に記載のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上にケイ素原子を含有するレジスト中間層膜材料を用いてレジスト中間層膜を形成し、該レジスト中間層膜の上に有機反射防止膜(BARC)を形成し、該BARC上にフォトレジスト組成物のレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して4層レジスト膜とし、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにしてBARCとレジスト中間層膜をエッチングし、該パターンが形成されたレジスト中間層膜をマスクにしてレジスト下層膜をエッチングし、さらに、該パターンが形成されたレジスト下層膜をマスクにして被加工体をエッチングして該被加工体にパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項7】
被加工体にパターンを形成する方法であって、少なくとも、被加工体上に請求項1乃至4のいずれか1項に記載のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜、及びアモルファスケイ素膜から選ばれるいずれかの無機ハードマスク中間層膜を形成し、該無機ハードマスク中間層膜の上にフォトレジスト組成物のレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして無機ハードマスク中間層膜をエッチングし、該パターンが形成された無機ハードマスク中間層膜をマスクにしてレジスト下層膜をエッチングし、さらに、該パターンが形成されたレジスト下層膜をマスクにして被加工体をエッチングして該被加工体にパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項8】
被加工体にパターンを形成する方法であって、少なくとも、被加工体上に請求項1乃至4のいずれか1項に記載のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜、及びアモルファスケイ素膜から選ばれるいずれかの無機ハードマスク中間層膜を形成し、該無機ハードマスク中間層膜の上に有機反射防止膜(BARC)を形成し、該BARC上にフォトレジスト組成物のレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して4層レジスト膜とし、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにしてBARCと無機ハードマスク中間層膜をエッチングし、該パターンが形成された無機ハードマスク中間層膜をマスクにしてレジスト下層膜をエッチングし、さらに、該パターンが形成されたレジスト下層膜をマスクにして被加工体をエッチングして該被加工体にパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項9】
前記無機ハードマスク中間層膜が、CVD法又はALD法によって形成されることを特徴とする請求項7又は8に記載のパターン形成方法。
【請求項10】
前記レジスト上層膜のパターン形成方法が、波長が10nm以上300nm以下の光リソグラフィー、電子線による直接描画、及びナノインプリンティングのいずれか、あるいはこれらの組み合わせによるパターン形成であることを特徴とする請求項5乃至9のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項11】
前記パターン形成方法における現像方法が、アルカリ現像又は有機溶剤による現像であることを特徴とする請求項5乃至10のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項12】
前記被加工体として、半導体装置基板に、金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、及び金属酸化窒化膜のいずれかが成膜されたものを用いることを特徴とする請求項5乃至11のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項13】
前記金属がケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、アルミニウム、銅、及び鉄のいずれか、あるいはこれらの合金であることを特徴とする請求項12に記載のパターン形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−98431(P2012−98431A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244981(P2010−244981)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】