説明

レジスト処理方法、レジスト組成物、レジスト付き基板、レジスト付きマスクブランクス、レジスト付き基板の製造方法、及びレジスト付きマスクブランクスの製造方法

【課題】化学増幅型レジスト層における未露光部については高残膜率を維持でき、かつ、露光部については現像後において未露光部に対して高いパターンコントラストを得る。
【解決手段】化学増幅型レジスト層を基体上に形成する工程と、前記化学増幅型レジスト層に対して露光前ベークを行う工程と、前記化学増幅型レジスト層に対して所定のパターン露光を行う工程と、前記化学増幅型レジスト層に対して露光後ベークを行う工程と、を有し、前記露光前ベーク時間の方が、前記露光後ベーク時間よりも長くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト処理方法、レジスト組成物、レジスト付き基板、レジスト付きマスクブランクス、レジスト付き基板の製造方法、及びレジスト付きマスクブランクスの製造方法に関し、特に、レジストにベークを施す方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハードディスク等で用いられる磁気ディスクにおいては、磁気ヘッド幅を極小化し、情報が記録されるデータトラック間を狭めて高密度化を図るという手法が用いられてきた。その一方で、この磁気ディスクは高密度化がますます進み、隣接トラック間の磁気的影響が無視できなくなっている。そのため、従来手法だと高密度化に限界がきている。
【0003】
最近、磁気ディスクのデータトラックを磁気的に分離して形成するパターンドメディアという、新しいタイプのメディアが提案されている。このパターンドメディアとは、記録に不要な部分の磁性材料を除去(溝加工)して信号品質を改善しようとするものである。
【0004】
このパターンドメディアを量産する技術として、マスターモールド、またはマスターモールドを元型モールドとしたコピーモールドが有するパターンを被転写材に転写することによりパターンドメディアを作製するというインプリント技術が知られている。以降、マスターモールド、コピーモールドをまとめて単にモールドともいう。
【0005】
このマスターモールドの製造方法としては、例えば特許文献1には、Si基板上にポジ型化学増幅レジストを塗布してレジスト層を形成し、このレジスト層の上に電子線描画を行い、露光後ベーク(PEB:Post Exposure Bake)を行い、その後で現像を行う技術が記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、SiO基板上に化学増幅型レジストを塗布した後、露光前ベーク(PB:Pre exposure Bake)を110℃で90秒行い、このレジスト層の上に電子線描画を行った後、さらに露光後ベーク(PEB)を110℃で90秒行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−117588号公報
【特許文献2】特開2009−173625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで挙げた化学増幅型レジストとは、アルカリ現像液に対する保護基を側鎖に有する高分子鎖よりなり、化学増幅型レジストの内部に光酸発生剤(PAG:Photo Acid Generator)を有するものである。この化学増幅型レジストに対して電子線描画を行うことにより、内部に存在する光酸発生剤から酸(H)が放出される。このプロトンにより、レジストを構成する高分子鎖の側鎖が切断される。そして、レジストを構成する高分子鎖はアルカリ現像液に対する保護基を失う。その結果、化学増幅型レジストにおける電子線描画部は、アルカリ現像液に対して溶解することになる。
【0009】
このように、化学増幅型レジストは非常に使い勝手が良いレジストではあるが、微細パターンを描画又は露光・現像した際の解像度については、他のレジストに比べて劣る面もある。また、レジストの残膜率という面においても、化学増幅型レジストは他のレジストに比べて劣る面もある。なお、ここでいう残膜率とは、ある露光量にて露光したレジスト層を現像した後、レジスト層の残膜量を測定し、その値を元の層厚で除して100倍した値である。
【0010】
その一方で、描画の際のレジストの感度という面では、化学増幅型レジストは他のレジストに比べて優れている。そのため、少ない露光量でパターニングが可能となり、スループットの向上という面では化学増幅型レジストを用いることが望まれる。
【0011】
本発明の目的は、上述の事情を考慮してなされたものであり、化学増幅型レジスト層における未露光部については高残膜率を維持でき、かつ、露光部については現像後において未露光部に対して高いパターンコントラストを有し、その結果高い解像度を有することができるレジスト処理方法、レジスト組成物、レジスト付き基板、レジスト付きマスクブランクス、レジスト付き基板の製造方法、及びレジスト付きマスクブランクスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様は、化学増幅型レジスト層を基体上に形成する工程と、前記化学増幅型レジスト層に対して露光前ベークを行う工程と、前記化学増幅型レジスト層に対して所定のパターン露光を行う工程と、前記化学増幅型レジスト層に対して露光後ベークを行う工程と、を有し、前記露光前ベーク時間の方が、前記露光後ベーク時間よりも長いことを特徴とするレジスト処理方法である。
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の発明において、前記露光前ベーク時間は90秒以上とすることを特徴とする。
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様に記載の発明において、前記露光後ベーク時間は90秒未満とすることを特徴とする。
本発明の第4の態様は、第1ないし第3のいずれかの態様に記載の発明において、前記露光は電子線描画であることを特徴とする。
本発明の第5の態様は、基板上に少なくともレジスト層を設けるレジスト付き基板の製造方法において、前記基体上に化学増幅型レジスト層を形成する工程と、前記化学増幅型レジスト層に対して露光前ベークを行う工程と、前記化学増幅型レジスト層に対して所定のパターン露光を行う工程と、前記化学増幅型レジスト層に対して露光後ベークを行う工程と、を有し、前記露光前ベーク時間の方が、前記露光後ベーク時間よりも長いことを特徴とするレジスト付き基板の製造方法である。
本発明の第6の態様は、第5の態様に記載の発明において、前記露光前ベーク時間は90秒以上とすることを特徴とする。
本発明の第7の態様は、第5または第6の態様に記載の発明において、前記露光後ベーク時間は90秒未満とすることを特徴とする。
本発明の第8の態様は、第5ないし第7のいずれかの態様に記載の発明において、前記露光は電子線描画であることを特徴とする。
本発明の第9の態様は、第5ないし第8のいずれかの態様に記載の方法を用い、前記基板上にハードマスク層を形成し、その上に少なくとも1層以上のレジスト層を形成し、前記レジスト層には化学増幅型レジスト層が含まれることを特徴とするレジスト付きマスクブランクスの製造方法である。
本発明の第10の態様は、現像したときの未露光部の残膜率が95%以上であることを特徴とする化学増幅型レジスト組成物である。
本発明の第11の態様は、現像したときの未露光部の残膜率が95%以上である化学増幅型レジスト層が基板上に設けられたことを特徴とするレジスト付き基板である。
本発明の第12の態様は、基板上にハードマスク層が設けられ、そのハードマスク層の上に、現像したときの未露光部の残膜率が95%以上である化学増幅型レジスト層が設けられたことを特徴とするレジスト付きマスクブランクスである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、化学増幅型レジスト層における未露光部については高残膜率を維持でき、かつ、露光部については現像後において未露光部に対して高いパターンコントラストが得られ、その結果高い解像度を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係るインプリントモールドの製造工程を説明するための断面概略図である。
【図2】別の実施形態に係るインプリントモールドの製造工程を説明するための断面概略図である。
【図3】図3(a)は、実施例および比較例における、縦軸を残膜率、横軸を必要露光量としたレジスト感度曲線を記載した図である。図3(b)は、実施例および比較例における、残膜率とγ値を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明者らは、描画の際のレジストの感度の面からも、化学増幅型レジストを用いながらも高解像度を実現する手段について種々検討した。
その検討の際、本発明者らは、レジスト塗布後の露光前ベーク(PB)及び露光後ベーク(PEB)の条件が解像度に影響を与えているのではないかと推察した。
【0016】
従来、PB及びPEBの条件には大きく分けて温度と時間とがある。温度条件に関しては、そもそもレジスト材料の種類により最適ベーク温度が決定される。ところが時間条件は、長時間のベークによるレジスト材料の変性等の問題や生産性の観点から、PBにおいてもPEBにおいても、特許文献2に示されるように90秒に固定されているのが現状であった。
【0017】
これに対し、本発明者らは、化学増幅型レジストを用いながらもインプリント技術の実用に堪えうる解像度を実現すべく、PB及びPEBの時間について鋭意研究した。
その結果、本発明者らは、PBの時間をPEBの時間よりも長くすることにより、高い残膜率を有し且つ高い解像度を得ることができることを見出した。
【0018】
<実施の形態1>
以下、本発明の実施形態を、インプリントモールドの製造工程を説明するための断面概略図である図1に基づいて説明する。
【0019】
(基板の準備)
まず、インプリントモールドとなるマスターモールド20製造のための基板1を用意する(図1(a))。
この基板1は、マスターモールド20として用いることができるのならば構わない。一例を挙げるとすれば、シリコンウエハ、石英基板などのガラス基板などが挙げられる。なお、基板材料とのエッチング選択比の高い材料をガラス基板上に設けてもよい。
【0020】
また、基板1の形状についてであるが、円盤形状であるのが好ましい。レジストを塗布する際、円盤基板1を回転させながらレジストを均一に塗布することができるためである。なお、円盤形状以外であっても良く、矩形、多角形、半円形状であってもよい。
本実施形態においては、円盤形状の石英基板1を用いて説明する。以降、この石英基板
1を単に基板1ともいう。
【0021】
(レジストの塗布)
この基板1に対して必要に応じ適宜洗浄・ベーク処理を行った後、本実施形態においては、図1(b)に示すように、化学増幅型レジストを基板1に対して塗布する。塗布方法としては、本実施形態においては所定の回転数にて回転させつつ基板1上方からレジストを塗布するスピンコート法を用いる。こうして基板1上に化学増幅型レジスト層4を形成する。以降、化学増幅型レジスト層4のことを、単にレジスト層4ともいう。なお、レジスト層4を設ける前に、基板1上に密着層を設け、その上にレジスト層4を設けてもよい。
【0022】
なお、この化学増幅型レジストとしては、公知のものでよい。エネルギビームを照射したときに反応性を有するものであればよい。具体的には、現像処理を行う必要のあるレジストであればよい。本実施形態においては電子線描画を行う場合について述べる。
【0023】
この化学増幅型レジストの組成物の一例を挙げれば、重合性不飽和単量体、光重合開始剤、などの光酸発生剤(アンモニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩等のオニウム塩、ジアゾジスルホン系、トリフェニルスルホニウム系など)、界面活性剤(フッ素系、ノニオン系、シリコーン系など)、離型剤、シランカップリング剤、重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤、可塑剤、密着促進剤、熱重合開始剤、着色剤、無機粒子、エラストマー粒子、酸化防止剤、光酸増殖剤、光塩基発生剤、塩基性化合物、流動調整剤、消泡剤、分散剤、有機溶剤、水などが挙げられる。
【0024】
なお、レジスト層4がポジ型レジストであるならば、後述する電子線による描画又は露光を行った箇所の溶解度が向上し、ひいてはその箇所が基板1上の溝の位置に対応する。一方、レジスト層がネガ型レジストであるならば、電子線描画した箇所の溶解度が低下し、ひいてはその箇所が基板1上の溝以外の位置に対応する。本実施形態においてはポジ型レジストを用いた場合、すなわちレジスト層4の上に描画している部分の溶解度を向上させる、すなわち描画又は露光部が基板1における溝の位置に対応する場合について説明する。
【0025】
また、この時のレジスト層4の厚さは、基板1へのエッチングが完了するまで残存する程度の厚さであることが好ましい。エッチングする際、基板1のみならずレジスト層4も少なからず除去されていくためである。
【0026】
なお、レジスト層4は複数層設けてもよい。例えば、レジスト層4における下層レジストを非化学増幅型レジストとし、上層レジストを化学増幅型レジストとしてもよい。
【0027】
上述のように化学増幅型レジスト層4を基板1上に形成した後、本実施形態においては、レジスト層4に対して、露光前ベーク(PB)、所定のパターン露光及び露光後ベーク(PEB)を行うことになる。以下、本明細書においては、まず、ベーク、描画又は露光および現像の概要について述べる。その後、本実施形態の特徴である、露光前ベーク(PB)及び露光後ベーク(PEB)の時間設定について詳述することにする。
【0028】
(露光前ベーク[PB])
このレジスト層4を有する基板1に対して、後述する所定のパターン描画のための露光前に、露光前ベーク(PB)を行う。このPBにより、レジスト層4に残存している溶媒を除去し、レジスト層4を緻密とすることができる。このPBの方法としては、本実施形態においてはホットプレートまたはオーブンを用いてベークを行う。
【0029】
(パターン描画)
次に、電子線描画機を用いて、前記マスクブランクスのレジスト層4にパターンを描画して露光する。この微細パターンはミクロンオーダーであってもよいが、近年の電子機器の性能という観点からはナノオーダーであってもよいし、インプリントモールドなどにより作製される最終製品の性能を考えると、その方が好ましい。
【0030】
(露光後ベーク[PEB])
パターン描画して露光した後のレジスト層4を有する基板1に対して露光後ベーク(PEB)を行う。このPEBにより、化学増幅型レジスト層4に含まれる光酸発生剤により発生した酸を拡散させることができる。このPEBの方法としては、本実施形態においてはPBと同様にホットプレートまたはオーブンを用いてベークを行う。
【0031】
(現像)
その後、図1(c)に示すように、レジスト層4を現像し、レジスト層4における電子線描画した部分を除去し、所定のパターンに対応するレジストパターンを形成する。なお、現像剤としては公知のもの(液現像やドライ現像)を用いても構わない。一例を挙げるとするならば、希釈テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液を用いた現像液が挙げられる。
【0032】
(レジスト塗布後露光前ベーク及び露光後ベークの間の時間条件設定)
以上、レジスト塗布後の露光前ベーク(PB)から現像までの概略について述べた。以下、PBを行う際の条件について詳述する。
温度条件については、先に述べたように、用いるレジストに応じて決定される。時間条件については、前記PB、及び後で詳述する露光後ベーク(PEB)の時間との関係を規定したことに、本実施形態の大きな特徴がある。すなわち、本実施形態においては、PBの時間をPEBの時間よりも長くしている。
【0033】
このようにPBとPEBのベーク時間を設定することにより、溶媒を除去しつつ、PBをPEBに比して長く行うと、PEBにおいて光酸発生剤の拡散を適度に抑えることができる。後述する図3に示すように、化学増幅型レジスト層における未露光部については高残膜率を維持でき、かつ、露光部については現像後において未露光部に対して高いパターンコントラストを有するようになる。
【0034】
これと同時に、レジスト層4における未露光部における現像後の残膜率についても設定するのが好ましい。本実施形態においては、レジストを現像したときの未露光部の残膜率が95%以上であるのが好ましい。未露光部の残膜率が95%以上であれば、未露光部においてはレジスト溶解を抑制することができ、未露光部分であっても電子線描画又は露光による回折光やその他の光の影響を受けずに済み、ひいてはパターンのコントラストが良好となり、優れた解像度が得られる。
【0035】
上述の働きについては、本発明者が鋭意研究しているところであるが、以下のような推測もできる。すなわち、先にも述べたようにPBにおいてはレジスト層4に含まれる溶媒を除去することができるが、PBにて溶媒が除去された後の光酸発生剤含有のレジスト層4において、露光によりレジスト層4内に酸が発生した後、PBを行う時間に比べてPEBが短いと、PEBにて酸が過度に拡散するのを抑制することができるのでは、と考えられる。酸が過度に拡散しないことにより、露光および現像後のパターンのコントラストを向上させることができ、ひいては解像度を上げることができるのではと推測される。
【0036】
さらに本実施形態においては、γ値が最大値となるようなPEB温度と時間となるのが好ましい。こうすることにより、良好な解像度を得ることができる。ここでいうγ値とは
、図3に示すようなレジストの感度曲線(縦軸:残膜率、横軸:露光量)の直線部の勾配から算出される溶解コントラストである。
【0037】
なお、PBの時間条件であるが、90秒以上とするのが好ましい。これにより、残留溶媒を実質的に全て除去でき、レジスト層4の自由体積を小さくでき、レジスト層を緻密化することができる。ひいてはレジスト層4の残膜率を向上させることができる。
【0038】
また、PEBの時間条件であるが、90秒未満とするのが好ましい。これにより、光酸発生剤による発生した酸の拡散距離を抑えることができる。その結果、パターンのコントラストを向上させることができ、ひいては解像度を向上させることができる。
【0039】
(リンス処理・乾燥)
レジストパターンを有する基板1に対し、必要に応じてリンス処理を行った後、乾燥処理を行う。
【0040】
(基板へのエッチング)
続いて、ドライエッチング装置を用い、フッ素系ガスを用いた第2のエッチングを、石英基板1に対して行う。この際、前記レジスト層をマスクとして基板1をエッチング加工し、図1(d)に示すように、微細パターンに対応した溝を基板1に施す。
【0041】
ここで用いられるフッ素系ガスとしては、C(例えば、CF、C、C)、CHF、これらの混合ガス又はこれらに添加ガスとして希ガス(He、Ar、Xeなど)を含むもの等が挙げられる。なお、基板1へのエッチングにおいては、基板1が石英であって、形成すべきパターンがマイクロオーダーの場合、フッ酸を用いたウェットエッチングを行ってもよい。
【0042】
こうして図1(d)に示すように、微細パターンに対応する溝加工が石英基板1に施され、微細パターンを有するレジスト層4が石英基板1の溝以外の部分上に形成される。このレジスト層4に対して硫酸過水などの酸溶液を用い、残存したレジスト層4を除去する。
【0043】
以上の工程を経た後、必要があれば基板1の洗浄等を行う。このようにして、図1(e)に示すようなインプリントモールドであるマスターモールド20を完成させる。
【0044】
以上のような本実施形態においては、以下の効果を得ることができる。
すなわち、PBの時間をPEBの時間よりも長くすることにより、化学増幅型レジスト層における未露光部については高残膜率を維持でき、かつ、露光部については現像後において未露光部に対して高いパターンコントラストを獲得できる。
【0045】
<実施の形態2>
先に述べた実施の形態1においては、基板1の上に直接レジスト層4を設けた場合について述べたが、本実施形態においては、基板1上にハードマスク層を設け、その上にレジスト層4を設けた場合について説明する。なお、以下の説明において特筆しない部分については、実施の形態1と同様である。
【0046】
(基板上へのハードマスク層の形成)
まず、図2(a)の石英基板1をスパッタリング装置に導入する。そして本実施形態においては、タンタル(Ta)とハフニウム(Hf)の合金からなるターゲットをアルゴンガスでスパッタリングし、タンタル−ハフニウム合金からなる導電層2を成膜し、基板1上に形成される溝に対応する微細パターンを有するハードマスク層の内の下層(導電層2
)とする(図2(b))。
【0047】
なお、導電層2の材料としては、導電層として用いられるものであってもよい。一例を挙げれば、Taを主成分とする化合物が挙げられる。この場合、TaHf、TaZr、TaHfZrなどのTa化合物やその合金が好適である。一方、ハフニウム(Hf)とジルコニウム(Zr)の少なくとも一方の元素又はその化合物(例えばHfZrなど)を選択することもでき、さらにこれらの材料をベース材料として、例えばB、Ge、Nb、Si、C、N等の副材料を加えた材料を選択することもできる。本実施形態においては、タンタル−ハフニウム(TaHf)合金からなる導電層2について説明する。
【0048】
次に、本実施形態においては、酸化防止の観点から前記導電層2に対して大気暴露は行わず、クロムターゲットをアルゴンと窒素の混合ガスでスパッタリングして窒化クロム層3を成膜し、微細パターンを有するハードマスク層の内の上層(導電層用酸化防止層3)とする(図2(b))。
【0049】
なお、酸化防止層3の材料としては、成膜の際のスパッタリングにおいて酸素を用いなくて済む点からも窒化クロム(CrN)が好ましいが、それ以外でも酸化防止層として使用できる化合物であればよい。例えばモリブデン化合物、酸化クロム(CrO)、SiC、アモルファスカーボン、Alを用いてもよい。本実施形態においては、窒化クロム(CrN)からなる酸化防止層3について説明する。
なお、本実施形態における「ハードマスク層」は、単一または複数の層からなり、パターンに対応する溝が形成される予定の部分を保護することができ、基板上への溝のエッチングに用いられる層状のマスクを指すものとする。ただし、ハードマスク層における酸化防止層3は、導電層2を兼ねても良い。その場合はTaHfのような導電層は省略可能である。
このように、基板上にハードマスク層を設けたものを、本実施形態においてはマスクブランクスという。
【0050】
(ハードマスク層へのレジスト層の形成)
次に、図2(c)に示すように、前記マスクブランクスにおけるハードマスク層に対して電子線描画用のレジストを塗布する。この際、実施の形態1と同様の手法で、レジスト塗布後かつ露光前にベーク(PB)を行う。
なお、レジスト層4は複数層設けてもよい。例えば、レジスト層4における下層レジストを非化学増幅型レジストとし、上層レジストを化学増幅型レジストとしてもよい。
【0051】
(パターン描画・現像)
その後、電子線にて微細パターンをレジスト層4に描画する。レジスト層への微細パターン描画後、実施の形態1と同様の手法で、露光後にベーク(PEB)を行う。その後、レジスト層4を現像し、レジストにおける電子線描画した部分を除去し、図2(d)に示すような所望の微細パターンに対応するレジストパターンを形成する。
【0052】
(第1のエッチング)
その後、基板1上にレジストパターンが形成された基板1を、ドライエッチング装置に導入する。そして、実質的に酸素を含まない塩素ガスによる第1のエッチングを行い、レジスト層4が除去された部分の導電層2および酸化防止層3を除去する(図2(e))。この際、導電層2の酸化防止という観点から、還元性ガスを導入しながら第1のエッチングを行ってもよい。なお、この時のエッチング終点は、反射光学式の終点検出器を用いることで判別する。
【0053】
(第2のエッチング)
続いて、第1のエッチングで用いられたガスを真空排気した後、実施の形態1と同様の手法で、フッ素系ガスを用いた第2のエッチングを石英基板1に対して行う。その後、アルカリ溶液や酸溶液にてレジストを除去する。
【0054】
こうして、図2(f)に示すように、微細パターンに対応する溝加工が石英基板1に施され、微細パターンを有するハードマスク層が石英基板1の溝以外の部分上に形成され、インプリントモールド20のための残存ハードマスク層除去前モールド10が作製される。
【0055】
(第3のエッチング)
このように作製された残存ハードマスク層除去前モールド10に対し、第1のエッチングと同様の手法で、引き続いて残存ハードマスク層除去前モールド10上に残存するハードマスク層をドライエッチングにて除去する工程が行われ、それによりインプリントモールド20が作製される(図2(g))。
【0056】
なお、いずれかのエッチングのみをウェットエッチングとし、他のエッチングにおいてはドライエッチングを行ってもよいし、全てのエッチングにおいてウェットエッチングまたはドライエッチングを行ってもよい。また、パターンサイズがミクロンオーダーである場合など、ミクロンオーダー段階ではウェットエッチングを行い、ナノオーダー段階ではドライエッチングを行うというように、パターンサイズに応じてウェットエッチングを導入しても良い。
【0057】
また、本発明における「基体」とは、実施の形態1及び2に示すような基板、基板上にレジスト層が設けられたもの、その基板の上にハードマスク層が設けられたもの、そしてその上にレジスト層が設けられたものを含む。まとめると、基板を含む物質であって、レジスト層が設けられるべき対象となる物質そのものを指すものとする。レジスト層を設け、ベーク処理を行うことができる物質であれば、本発明における基体として使用することができる。
【0058】
なお、実施の形態1における化学増幅型レジストの処理方法及びレジスト付き基板、並びに本実施形態におけるレジスト付きマスクブランクスは、インプリントモールド作製用以外にも以下の用途に好適に適用できる。例えば、半導体装置用フォトマスク、半導体製造、マイクロ電気機械システム(MEMS)、センサ素子、光ディスク、回折格子や偏光素子等の光学部品、ナノデバイス、有機トランジスタ、カラーフィルター、マイクロレンズアレイ、免疫分析チップ、DNA分離チップ、マイクロリアクター、ナノバイオデバイス、光導波路、光学フィルター、フォトニック結晶等の作製にも幅広く適用できる。
【0059】
以上、本発明に係る実施の形態を挙げたが、上記の開示内容は、本発明の例示的な実施形態を示すものである。本発明の範囲は、上記の例示的な実施形態に限定されるものではない。本明細書中に明示的に記載されている又は示唆されているか否かに関わらず、当業者であれば、本明細書の開示内容に基づいて本発明の実施形態に種々の改変を加えて実施し得る。
【実施例】
【0060】
次に実施例を示し、本発明について具体的に説明する。もちろんこの発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0061】
<実施例1>
本実施例においては、基板1として円盤状シリコンウエハ(外径150mm、厚み0.7mm)を用いた(図1(a))。この基板1に対して、ホットプレートにて200℃で
10分間ベークを行い、基板1上の脱水処理を行った。その後、基板1を冷却プレート上に載置して、基板1を冷却した。
【0062】
次に、基板1をレジストコータにセットした。そして、光酸発生剤含有のCyclic
low molecular resistをプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈(Cyclic low molecular resist:プロピレングリコールモノメチルエーテル=1:9)し、レジスト液を予め用意した。このレジスト液を基板1上に3ml程滴下し、3000rpmで60秒間基板1を回転させた。
【0063】
レジスト液の塗布後、この基板1に対して、ホットプレートにて130℃で120秒間ベーク(PB:露光前ベーク)を行い、レジスト液における不要な溶媒を除去した。
【0064】
そして、100keVの電子線描画機を用い、電子線描画部と電子線露光未描画部との幅比を1対1としたライン・アンド・スペース・パターンを描画した。そして、電子線描画部の寸法が8〜30nmの範囲で3nmごとにライン幅を変化させて描画した。
【0065】
描画後、この基板1に対して、ホットプレートにて110℃で90秒間ベーク(PEB:露光後ベーク)を行い、光酸発生剤をレジスト層中に拡散させた。
【0066】
その後、この基板1のレジスト層を、2.38%のTMAHにて60秒間現像した。現像後、基板1を回転させ続け、基板1の乾燥処理を行った。こうして実施例に係る試料を作製した。
【0067】
なお、この実施例に係る試料について感度曲線を求めた。求め方としては、上述のようなPBを行った後、電子線描画機を用いて、露光量を0から0.2μC/cmずつ変えながら露光を行い、さらに上述のようにPEBを行った。その後、2.38%TMAH水溶液を用いて現像を行い、縦軸を残膜率および横軸を露光量としたレジスト感度曲線を得た。この感度曲線を図3(a)に示す。また、γ値、残膜率についての結果を図3(b)に示す。
【0068】
<実施例2>
実施例2においては、PBを120秒間行い、PEBを60秒間行った以外は、実施例1と同様に実施例2に係る試料を作製した。そして、感度曲線、γ値、残膜率についても実施例1と同様に調査した。
【0069】
<比較例>
実施例では(PB時間)>(PEB時間)と設定したかわりに、比較例1においてはPBおよびPEBを90秒、即ち(PB時間)=(PEB時間)とした以外は、実施例と同様に試料を作製した。そして、感度曲線、γ値、残膜率についても実施例と同様に調査した。
【0070】
<評価>
実施例においては、図3(a)(b)に示すとおり、未露光部の残膜率が良好であった。また、図3(b)において実施例と比較例とを対比すると、未露光部の残膜率は98%以上であるのが更に好ましいことが分かった。
【0071】
一方、図3に示す通り、比較例においては、未露光部分であっても電子線露光描画による回折光やその他の光の影響を受けやすく、現像により相当除去されてしまうことが分かった。
【符号の説明】
【0072】
1 基板
2 導電層
3 酸化防止層
4 化学増幅型レジスト層
10 残存ハードマスク層除去前モールド
20 インプリントモールド(マスターモールド)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学増幅型レジスト層を基体上に形成する工程と、
前記化学増幅型レジスト層に対して露光前ベークを行う工程と、
前記化学増幅型レジスト層に対して所定のパターン露光を行う工程と、
前記化学増幅型レジスト層に対して露光後ベークを行う工程と、
を有し、
前記露光前ベーク時間の方が、前記露光後ベーク時間よりも長いことを特徴とするレジスト処理方法。
【請求項2】
前記露光前ベーク時間は90秒以上とすることを特徴とする請求項1に記載のレジスト処理方法。
【請求項3】
前記露光後ベーク時間は90秒未満とすることを特徴とする請求項1または2に記載のレジスト処理方法。
【請求項4】
前記露光は電子線描画であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のレジスト処理方法。
【請求項5】
基板上に少なくともレジスト層を設けるレジスト付き基板の製造方法において、
前記基体上に化学増幅型レジスト層を形成する工程と、
前記化学増幅型レジスト層に対して露光前ベークを行う工程と、
前記化学増幅型レジスト層に対して所定のパターン露光を行う工程と、
前記化学増幅型レジスト層に対して露光後ベークを行う工程と、
を有し、
前記露光前ベーク時間の方が、前記露光後ベーク時間よりも長いことを特徴とするレジスト付き基板の製造方法。
【請求項6】
前記露光前ベーク時間は90秒以上とすることを特徴とする請求項5に記載のレジスト付き基板の製造方法。
【請求項7】
前記露光後ベーク時間は90秒未満とすることを特徴とする請求項5または6に記載のレジスト付き基板の製造方法。
【請求項8】
前記露光は電子線描画であることを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載のレジスト付き基板の製造方法。
【請求項9】
請求項5ないし8のいずれかに記載の方法を用い、
前記基板上にハードマスク層を形成し、その上に少なくとも1層以上のレジスト層を形成し、
前記レジスト層には化学増幅型レジスト層が含まれることを特徴とするレジスト付きマスクブランクスの製造方法。
【請求項10】
現像したときの未露光部の残膜率が95%以上であることを特徴とする化学増幅型レジスト組成物。
【請求項11】
現像したときの未露光部の残膜率が95%以上である化学増幅型レジスト層が基板上に設けられたことを特徴とするレジスト付き基板。
【請求項12】
基板上にハードマスク層が設けられ、そのハードマスク層の上に、現像したときの未露
光部の残膜率が95%以上である化学増幅型レジスト層が設けられたことを特徴とするレジスト付きマスクブランクス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−215241(P2011−215241A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81392(P2010−81392)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】