説明

レジスト塗布装置、これを備える塗布現像システム、およびレジスト塗布方法

【課題】高い膜厚均一性を有するカラーレジスト膜を基板上に形成することが可能なレジスト塗布装置およびレジスト膜形成方法を提供する。
【解決手段】本発明の実施形態によるレジスト塗布装置は、基板の中央部における温度よりも基板の周辺部における温度が高くなるように基板の温度を調整するよう構成された基板温度調整部と、中央部よりも周辺部において温度が高くなるように基板温度調整部により温度調整された基板上にカラーレジスト液を供給するカラーレジスト液供給部と、カラーレジスト液が供給された基板を回転する基板回転部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーレジスト膜を基板上に形成するレジスト塗布装置、これを備える塗布現像システム、およびレジスト膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CCD(charge-coupled device)やCMOS(complementary metal oxide semiconductor)イメージセンサに用いられる、いわゆるオンチップカラーフィルタ(OCCF)は、カラーレジスト液を用いてウエハ上にカラーレジスト膜を形成し、このカラーレジスト膜を所定のフォトマスクを用いて露光し現像することによって製造される。具体的には、カラーレジスト膜の形成、露光、および現像を赤色(R)、緑色(G)、および青色(B)のカラーレジスト液をそれぞれ用いて行い、1画素を構成する赤色(R)、緑色(G)、および青色(B)の3つの副画素を形成することにより製造される。
【0003】
カラーフィルタの製造に用いる装置としては、たとえば特許文献1および2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−174911号公報(請求項1、段落0007)
【特許文献2】特開平11−202121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カラーレジスト液は、溶媒中に顔料が分散された非ニュートン性(チキソトロピー)の液体であり、応力が加わるとその粘度が低下する性質を有している。ウエハ上にカラーレジスト液を供給しウエハを回転すると、ウエハの周辺部付近においては遠心力によってカラーレジスト液に対して比較的大きな応力が働くため、カラーレジスト液の粘度が低くなる。一方、ウエハの中央付近においてはカラーレジスト液には大きな応力は働かないため、カラーレジスト液の粘度は高くなる。このような粘度の差により、形成されるカラーレジスト膜はウエハの中央付近で厚く、ウエハの周縁付近で薄いという膜厚分布を有する傾向がある。
【0006】
カラーレジスト膜の膜厚分布は、透過率の均一性などのカラーフィルタの光学的特性に大きな影響を与えるため、カラーレジスト膜の膜厚均一性を改善することが望まれている。
【0007】
本発明は、高い膜厚均一性を有するカラーレジスト膜を基板上に形成することが可能なレジスト塗布装置およびレジスト膜形成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、基板にカラーレジスト膜を形成するレジスト塗布装置を提供する。このレジスト塗布装置は、基板の中央部における温度よりも基板の周辺部における温度が高くなるように基板の温度を調整するよう構成される基板温度調整部と、中央部よりも周辺部において温度が高くなるように基板温度調整部によって温度調整された基板上にカラーレジスト液を供給するカラーレジスト液供給部と、カラーレジスト液が供給された基板を回転する基板回転部と、を備える。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様のレジスト塗布装置を含む塗布現像ユニットを提供する。
【0010】
本発明の第3の態様は、カラーレジスト膜を基板上に形成するレジスト膜形成方法を提供する。この方法は、基板の中央部における温度よりも基板の周辺部における温度が高くなるように基板の温度を調整するステップと、中央部よりも周辺部において温度が高くなるように基板温度調整部により温度調整された基板上にカラーレジスト液を供給するステップと、カラーレジスト液が供給された基板を回転するステップとを含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態によれば、高い膜厚均一性を有するカラーレジスト膜を基板上に形成することが可能なレジスト塗布装置、これを備える塗布現像システム、およびレジスト膜形成方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態による塗布現像システムを示す平面図である。
【図2】図1の塗布現像システムの斜視図である。
【図3】図1の塗布現像システム内の処理ユニットブロックを示す斜視図である。
【図4】図1の塗布現像システムの側面図である。
【図5】図1の塗布現像システムに用いられる、本発明の実施形態によるレジスト塗布装置を示す概略図である。
【図6】図5のレジスト塗布装置において、基板の温度がどのように調整されるかを説明する説明図である。
【図7】図5のレジスト塗布装置の変形例を示す概略図である。
【図8】本発明の他の実施形態によるレジスト塗布装置を示す概略図である。
【図9】本発明のまた別の実施形態によるレジスト塗布装置を示す概略図である。
【図10】図9のレジスト塗布装置の変形例を示す概略図である。
【図11】本発明の更に別の実施形態によるレジスト塗布装置を示す概略図である。
【図12】図11のレジスト塗布装置の変形例を示す概略図である。
【図13】本発明の更に別の実施形態によるレジスト塗布装置を示す概略図である。
【図14】本発明の更に別の実施形態によるレジスト塗布装置を示す概略図である。
【図15】図5に示すレジスト塗布装置を用いて行われた実験の結果を示すグラフである。
【図16】図5に示すレジスト塗布装置を用いて行われた実験の結果を示すグラフである。
【図17】図5に示すレジスト塗布装置を用いて行われた実験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態による塗布現像システムを説明する。以下の説明において、同一または対応する部品または部材には同一または対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
図1は、本実施形態による塗布現像システムを示す平面図である。図示のとおり、塗布現像システム1は、たとえば13枚の半導体ウエハ(以下、ウエハという)Wを収容可能なウエハキャリア20を搬入出するキャリアブロックS1と、処理装置群B,U1、棚ユニットU2,U3、およびメインアームAが配置される処理ブロックS2と、処理ブロックS2および露光装置S4の間に配置されるインターフェイスブロックS3とを備える。
【0015】
キャリアブロックS1には、複数個のウエハキャリア20を載置可能な載置台21と、載置台21の背後の壁に設けられる開閉部22と、開閉部22を通してウエハWをウエハキャリア20から取り出し、ウエハキャリア20へ収容する搬送アームCとが設けられている。この搬送アームCは、ウエハキャリア20と、後述する処理ブロックS2の棚ユニットU2との間でウエハWを受け渡すことができるように、昇降自在、鉛直軸回りに回転自在、ウエハキャリア20の配列方向(X軸方向)に移動自在、およびウエハキャリア20の方向(Y軸方向)伸縮自在に構成されている。
【0016】
キャリアブロックS1の背面(開閉部22が設けられた壁と反対側の面)には処理ブロックS2が接続されている。処理ブロックS2には、種々の処理ユニットを含む処理装置群Bと、処理ブロックS2においてキャリアブロックS1側に配置される棚ブロックU2と、処理ブロックS2においてインターフェイスブロックS3側に配置される棚ブロックU3と、棚ブロックU2およびU3との間において移動自在に構成されるメインアームAと、処理装置群Bと同様に種々の処理ユニットを含む処理装置群U1とが配置されている。
【0017】
処理装置群Bは、図2に示すように、積層された5個の単位ブロックB1からB5を含む。各単位ブロックB1からB5は、たとえばレジスト塗布装置、現像処理ユニット、加熱ユニット、疎水化処理ユニット、冷却ユニットなどを有することができる。たとえば、単位ブロックB1およびB2は、カラーレジスト膜が露光された後のウエハWを加熱する露光後加熱ユニットと、露光後加熱ユニットにより加熱されたウエハWを所定温度に調整する冷却ユニットと、露光されたカラーレジスト膜を現像する現像処理ユニットと、現像後のウエハWを乾燥のために加熱するベーキングユニットといった処理ユニットを有することができる。一方、単位ブロックB3からB5は、後述する塗布ユニットを有することができる。たとえば、図3を参照すると、単位ブロックB3には3つの塗布ユニット50が設けられている。塗布ユニット50においては、カラーレジスト液がウエハW上に供給され、ウエハWが回転されて、カラーレジスト膜が形成される。
【0018】
処理装置群U1は、図3に示すように、後述する搬送アームA3の移動可能領域を介して単位ブロックB3に対向するように配置される。図示のとおり、処理装置群U1は、本実施形態においては、冷却ユニットCOL31からCOL33、加熱ユニットCHP31からCHP33、疎水化処理ユニットADH、および周縁露光ユニットWEE等の種々の処理ユニットを含んでいる。これにより、単位ブロックB3の塗布ユニット50においてカラーレジスト膜を形成する前に、カラーレジスト液とウエハWとの密着性を向上させるため、疎水化処理ユニットADHにおいてウエハWに対して疎水化処理を行ったり、疎水化処理されたウエハWをたとえば冷却ユニットCOL31にて調整したりすることができる。また、カラーレジスト膜が形成されたウエハWを露光装置S4へ搬送する前に、ウエハWの周縁部のみを周縁露光ユニットWEEにて選択的に露光してもよい。
【0019】
なお、処理装置群U1の各処理ユニットと単位ブロックB3の塗布ユニット50との間のウエハWの受け渡しは、図3に示すように、単位ブロックB3に対応して設けられた搬送アームA3により行われる。搬送アームA3は、ウエハWを保持可能な2つのフォーク61,62を有し、Y軸方向に延びるレール65に沿って移動可能である。このようにメインアームAには、単位ブロックB1からB5に対応して設けられた搬送アームA1からA5が含まれる(図4参照)。搬送アームA1,A2,A4,A5もまた搬送アームA3と同様に2つのフォークを有し、Y軸方向に沿って移動可能である。
また、処理装置群U1と同様の構成を有する処理装置群を単位ブロックB4,B5に対して設けてもよい。
【0020】
図4を参照すると、棚ユニットU2は、単位ブロックB1からB5に対応して設けられるステージTRS1からTRS5を有している。たとえば、単位ブロックB1に対応して2つのステージTRS1が設けられ、各ステージTRS1は単位ブロックB1の搬送アームA1によりアクセス可能に配置されており、搬送アームA1により搬入されるウエハWを保持することができる。これにより、たとえば単位ユニットB1の処理ユニットで処理されたウエハWは、その処理ユニットから搬送アームA1により取り出され、2つのステージTRS1の一方に搬入され保持される。そのステージTRS1により保持されるウエハWは、たとえば、キャリアブロックS1の搬送アームCによってウエハキャリア20へ収容される。なお、図1に示すように、棚ユニットU2に隣接して搬送アームD1が設けられている。搬送アームD1は進退自在および昇降自在に構成されている。これにより、棚ユニットU2のステージTRS1からTRS5の間でウエハWを受け渡すことができる。
【0021】
また、棚ユニットU2にはステージTRS−Fが設けられている。ステージTRS−Fは、主として、キャリアブロックS1の搬送アームCによってウエハキャリア20から取り出されたウエハWを一時的に保持するために利用される。
【0022】
棚ユニットU3は、単位ブロックB1からB5に対応して設けられるステージTRS6からTRS10を有している。たとえば、棚ユニットU3には、単位ブロックB5に対応して2つのステージTRS10が設けられ、各ステージTRS10は単位ブロックB5の搬送アームA5によりアクセス可能に配置されており、搬送アームA5により搬入されるウエハWを保持することができる。これにより、たとえば単位ユニットB5の処理ユニットで処理されたウエハWは、その処理ユニットから搬送アームA5により取り出され、2つのステージTRS10の一方に搬入され保持される。そのステージTRS10により保持されるウエハWは、たとえば、インターフェイスブロックS3のインターフェイスアームE(後述)によって取り出され、露光装置S4(図1)へ搬出される。なお、図1に示すように、棚ユニットU3に隣接して搬送アームD2が設けられている。搬送アームD2は進退自在および昇降自在に構成され、これにより、棚ユニットU3のステージTRS5からTRS10の間でウエハWを受け渡すことができる。
【0023】
再び図1を参照すると、処理ブロックS2のキャリアブロックS1と反対側にはインターフェイスブロックS3が接続されている。インターフェイスブロックS3は、処理ブロックS2の棚ユニットU3と露光装置S4とに対してウエハWの受け渡しを行うためのインターフェイスアームEと、複数枚のウエハWをそれぞれ保持する複数の棚を有するバッファ83とを含む。インターフェイスアームEは、処理ブロックS2と露光装置S4との間のウエハWの搬送機構として機能する。本実施形態においては、インターフェイスアームEは、昇降自在、鉛直軸回りに回転自在、X軸方向に進退自在に構成され、これにより、単位ブロックB1からB5に対応する棚ユニットU3のステージTRS6からTRS10とバッファ83の各棚との間でウエハWの受け渡しが行われる。
【0024】
なお、バッファ83は、露光装置S4と処理ブロックS2との間のスループットの調整や、露光条件の変更の際に、たとえばカラーレジスト膜が形成されたウエハWを一時的に保管しておき、露光装置S4に順次搬送する場合に好適に用いられる。このようにすると、処理ブロックS2における処理を露光装置S4の処理速度に合わせて行うことができ、またロット毎に、露光強度やレチクル等を適宜変更して露光処理を行なうことができる。
【0025】
また、図1に示すように、本実施形態による基板処理装置は制御部100を備えている。制御部100は、たとえば中央演算処理装置(CPU)を含み、目的とする処理に応じて用意されるプログラムを実行することにより、搬送アームC,A1からA5,D1,D2、インターフェイスアームE、各処理ユニットを制御する。また、制御部100は、プログラムを記憶するメモリ(図示せず)を含み、このメモリには、プログラムが格納されるコンピュータ記憶媒体100aから所定の入出力(I/O)装置(図示せず)を通してプログラムが読み込まれる。
【0026】
次に、図5および図6を参照しながら、処理ブロックS2の単位ブロックB3に設けられるレジスト塗布装置50について説明する。
図5(a)を参照すると、レジスト塗布装置50は、ウエハWの裏面中央部を吸引により保持するチャック51と、チャック51に結合される回転シャフト51aを介してチャック51を回転するモータ52と、チャック51に保持されるウエハWにカラーレジスト液を供給するディスペンサ55と、チャック51に保持されるウエハWに流体を供給する流体供給部56と、ウエハWに供給される流体を所定の温度に冷却し、流体供給部56に提供する温度調整器57と、凹形状を有し、チャック51に保持されるウエハWを取り囲むように設けられるカップ部53とを有している。
【0027】
流体供給部56は、回動シャフト56s、アーム部56a、導管56c、および温度維持部56h等から構成される。回動シャフト56sは、レジスト塗布装置50の底部を貫通して延び、図示しない駆動機構に結合し、駆動機構よって鉛直軸の周りに回動される。アーム部56aは、回動シャフト56sの上端に結合されて水平に延びている。回動シャフト56sが回動すると、アーム部56aの先端部56tは、図5(a)に示すようにチャック51に保持されるウエハWのほぼ中央の上方に位置する。導管56cは、レジスト塗布装置50の外部において回動シャフト56sに形成された流入口から、回動シャフト56sおよびアーム部56aの内部を通って先端部56tに達している。温度維持部56hは、たとえば、図示しない電源から給電される熱電変換素子と、図示しない温調器に接続される熱電対と含んで構成されてよく、導管56cを流れる流体の温度が変動するのを抑制するため、回動シャフト56sおよびアーム部56aを取り囲むように設けられている。
【0028】
温度調整器57は、たとえば、塗布現像システム50が設置されるクリーンルームに備わる流体供給設備と接続されており、この流体供給設備から温度調整器57に対して流体が供給される。本実施形態において温度調整器57は、金属製(たとえばステンレススチール製)の螺旋管と、螺旋管が浸される冷媒と、冷媒を循環させて所定の温度に維持する循環冷凍機とから構成されてよい。これにより、流体は、螺旋管を流れる間に所定の温度に設定される。
【0029】
また、回動シャフト56sの流入口と温度調整器57とを繋ぐ配管には、温度調整器57からの流体の流量および供給時間を調整する供給量調整部(図示せず)が設けられている。供給量調整部は、たとえば流量調整バルブやサックバックバルブなどから構成され得る。また、回動シャフト56sの流入口と温度調整器57と間の配管には、供給量調整部を含めて、温度維持部で囲まれており、温度調整器57により所定の温度に維持された流体の温度が維持され得る。この温度維持部は、たとえば流体供給部56の温度維持部56hと同様に構成してよい。
【0030】
以上のような構成により、流体供給部56の回動シャフト56sが回動して、先端部56tがチャック51に保持されるウエハWのほぼ中央の上方に位置したときに、温度調整器57により所定の温度に設定された流体が、供給量調整されつつ、導管56cを通ってアーム部56aの先端部56tからウエハWのほぼ中央へ供給される。
【0031】
カップ部53はアップーカップ53U、ボトムカップ53B、およびカップベース53Eを有している。アッパーカップ53Uは、ディスペンサ55からウエハWに供給され、回転によりウエハWから振り落とされるカラーレジスト液を受け取ることができるように、ボトムカップ53Bの上端に配置されている。ボトムカップ53Bの底部には廃液管54aが接続されている。これにより、アッパーカップ53Uにより受け取られてボトムカップ53Bへ流れ落ちたカラーレジスト液等が廃液管54aを通してカップ部53から排出される。また、ボトムカップ53Bの底部には複数の排気管54bが接続されており、排気管54bには、図示しない排気部に接続されている。排気部は、たとえば、塗布現像システム1が設置されるクリーンルームに備わる排気処理設備であってよい。これにより、排気管54bを通してカップ部53内の空気が排気され、ウエハW上に供給されるカラーレジスト液等から蒸発する有機溶剤等が排気される。すなわち、排気管54bを通した排気により、塗布現像システム1内における有機溶剤等によるクロスコンタミネーションを低減することができる。
【0032】
図5(a)を参照すると、ディスペンサ55は、ガイドレール55bに摺動可能に設けられた基部55aに取り付けられている。チャック51に保持されるウエハW(図5(a))上にカラーレジスト液を供給する場合、ウエハWの中央の上方へ移動し、図示しない供給管からカラーレジスト液をウエハW上に供給する。また、図5(a)に示すとおり、レジスト塗布装置50の筐体50aにはウエハ搬送口50cが設けられ、ウエハ搬送口50cを通してウエハWが搬送アームA3(図3)によりレジスト塗布装置50に搬入出される。なお、筐体50aには、ウエハ搬送口50cを開閉する扉50dが設けられている。
【0033】
次に、これまでに参照した図面を参照しながら、塗布現像システム1の動作(ウエハ処理)の一例を説明する。
まず、たとえば13枚のウエハWが収容されたウエハキャリア20がキャリアブロックS1の載置台21(図4参照)に載置される。次に、ウエハキャリア20内のウエハWが搬送アームCにより取り出され、処理ブロックS2の棚ユニットU2のステージTRS−Fに搬入される。次いで、ウエハWは、搬送アームD1により棚ユニットU2のステージTRS3へ移され、単位ブロックB3の搬送アームA3によってステージTRS3から取り出される。この後、ウエハWは、搬送アームA3によって冷却ユニットCOL31(図3参照)へ搬入されて、ここで所定の温度に設定され、続けて疎水化処理ユニットADHへ搬送される。
【0034】
疎水化処理ユニットADHでは、たとえばウエハWを約80°から約150°までの範囲内の温度に加熱し、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)等のシリル化剤にウエハWを晒すことにより行われる。次いで、ウエハWは、搬送アームA3により冷却ユニットCOL32へ搬送されて、ここで所定の温度に冷却される。これにより、疎水処理によって加熱されたウエハWが冷却されて、図6(a)に示すように、ウエハWの全体が一定の温度(たとえばクリーンルーム内の室温と同じ23℃)にほぼ均一に維持される。
【0035】
所定の温度に維持されたウエハWは、搬送アームA3によってレジスト塗布装置50へ搬送され、ウエハW上にカラーレジスト膜が形成される。具体的には、ウエハWが、搬送アームA3からチャック51(図5)により受け取られて保持されると、流体供給部56の回動シャフト56sが回動し、温度調整器57により冷却された流体が先端部56tから、静止したウエハWの表面中央部に供給される。ここで、流体の温度は、レジスト塗布装置50の内部の雰囲気温度(23℃)に対して、たとえば約10℃から約20℃までの範囲にあってよく、約16℃から約18℃までの範囲にあると一層好ましい。
【0036】
また、ウエハW上に供給される流体Lの量は、図5(b)に示すように、ウエハWの周辺部にまで流体が広がらない程度に設定される。たとえば、ウエハW上の流体Lの直径は、ウエハWの直径300mmに対して、約10mmから約250mmまでの範囲(ウエハWの直径の1/30から5/6までの範囲)にあってよく、約100mmから約200mmまでの範囲(ウエハWの直径の1/3から2/3までの範囲)にあると好ましい。流体LがウエハW上に留まったまま約3秒から約15秒、好ましくは約5秒から約10秒経過した後、回転モータ52によりウエハWを回転することにより、ウエハW上の流体を乾燥させる。
【0037】
次いで、ディスペンサ55からウエハWの表面中央部に、たとえば赤色のカラーレジスト液が供給される。モータ52が回転し、チャック51に保持されたウエハWが回転すると、回転によってカラーレジスト液がウエハWの外縁から振り落とされるとともに、ウエハW上に残留したカラーレジスト液からカラーレジスト膜が形成される。このカラーレジスト膜のウエハWのエッジに形成された部分を除去した後、ウエハWは、搬送アームA3によって加熱ユニットCHP32(図3)へ搬送され、ここで加熱される。次いで、ウエハWが搬送アームA3により冷却ユニットCOL31へ搬入されて、ここで所定の温度に冷却される。
【0038】
次いで、ウエハWは、インターフェイスアームEによって棚ユニットU3のステージTRS8から露光装置S4へ搬送され、ここでウエハW上のカラーレジスト膜が露光される。これにより、多数の赤色の副画素がウエハW上に形成される。
【0039】
露光後、ウエハWは、インターフェイスアームEによって棚ユニットU3のステージTRS6(図4)に搬送され、続けて搬送アームA1によって、単位ブロックB1の加熱ユニット、冷却ユニット、現像処理ユニット、および加熱ユニットの順に搬送され、各ユニットにおいて所定の処理が行われる。加熱ユニットにおける加熱処理の後、ウエハWは搬送アームA1により棚ユニットU2のステージTRS1(図4)へ搬送される。
【0040】
続けて、ウエハWは、搬送アームD1(図1)により棚ユニットU2のステージTRS4(図4)に搬送され、処理装置群B4等および露光装置S4により、上記と同じ手順に従って緑色の副画素が形成される。この後、同様にして、処理装置群B5等および露光装置S4により、青色の副画素が形成されて、赤色、緑色、および青色の副画素からなる画素が多数ウエハW上に形成される。
【0041】
この後、ウエハWは、棚ユニットU2のステージTRS1に戻され、キャリアブロックS1の搬送アームCによって、ステージTRS1からウエハキャリア20へ収容されて、塗布現像システム1におけるウエハWに対する一連の処理が終了する。
【0042】
本実施形態の塗布現像システム1においては、これに備わるレジスト塗布装置50によって以下の効果が発揮される。レジスト塗布装置50へ搬入され、チャック51に保持されたウエハWは、搬入前に冷却ユニットCOL32によって図6(a)に示すように例えば室温(23℃)に一定に維持されている。ここで、温度調整器57により冷却された流体が流体供給部56の先端部56tから静止したウエハWの表面中央部に供給され、この状態で数秒間放置されると、ウエハWの中央部が流体によって冷却される。このため、図6(b)に示すように、ウエハWの中央部の温度よりも周辺部の温度が高くなる。このような温度分布を有するウエハW上にカラーレジスト液を供給し、ウエハWを回転すると、遠心力によってカラーレジスト液がウエハWの周縁に向かって広がる際に、温度の高い周辺部においてはカラーレジスト液の粘度が高くなるため、カラーレジスト液に働く応力によって生じる粘度の低下を補償することができる。したがって、周辺部における膜厚低下を低減することができ、高い膜厚均一性を有するカラーレジスト膜をウエハW上に形成される。
【0043】
なお、温度調整器57により冷却される流体の温度、およびウエハW上に留まる流体L(図5(b))の直径は、上記の範囲に限られることなく、予備実験を通して決定すると好ましい。
【0044】
次に、主に図7を参照しながら、上記のウエハWの処理の変形例について、上記の例との相違点を中心に説明する。まず、本変形例においては、温度調整器57において流体が約30℃から約70℃までの範囲の温度に加熱されている。冷却ユニットCOL32によって室温(23℃)に均一に維持されたウエハWがレジスト塗布装置50に搬入され、チャック51に保持されると、図7(b)に示すように、回転モータ52によりウエハWが回転されるとともに、流体供給部56の回動シャフト56sが回動して先端部56tがウエハWの周辺部の上方に維持される。そして、温度調整器57(図7(a))により予め加熱された流体が、流体供給部56の先端部56tからウエハWへ供給される。このとき、先端部56tの位置、流体の流量、およびウエハWの回転速度は、ウエハW上に供給された流体がウエハWの中央部に向かって流れないように設定すると好ましく、また、所望の膜厚分布が得られる条件を予備実験から求めると一層好ましい。
【0045】
ウエハWの回転と流体の供給とを約3秒から約15秒、好ましくは約5秒から約10秒継続した後、先端部56tからの流体の供給を停止するとともに、ウエハWの回転速度を上げてウエハWの流体を乾燥させる。続けて、ディスペンサ55からカラーレジスト液をウエハの表面中央部に供給して、カラーレジスト膜を形成する。以下、上述の手順が繰り返されてウエハW上に多数の画素が形成される。
【0046】
この変形例によれば、チャック51に保持されるウエハWの中央部は、冷却ユニットCOL32により維持された室温(23℃)に維持される一方で、周辺部においては中央部の温度よりも高い温度に加熱される。このため、ウエハWの回転によりカラーレジスト液がウエハW上で広がる際に、ウエハWの周辺部における粘度の低下を補償することができる。したがって、周辺部における膜厚低下を低減することができ、高い膜厚均一性を有するカラーレジスト膜をウエハW上に形成される。
【0047】
次に、図8を参照しながら、本発明の他の実施形態によるレジスト塗布装置について、図5から図7に示したレジスト塗布装置50との相違点を中心に説明する。図8(a)を参照すると、チャック51には熱電変換素子、たとえばペルチェ素子51pが内蔵されている。具体的には、図8(b)に示すように、ペルチェ素子51pは3つの同心円を形成するように配列されており、各円を構成するペルチェ素子51は制御装置57aに独立に電気的に接続され、その温度が独立に制御される。
【0048】
このように構成されるチャック51によって、冷却ユニットCOL32からレジスト塗布装置50に搬送されたウエハWが保持されると、ウエハWの中央部が冷却されることによりウエハWの周辺部の温度が中央部の温度よりも相対的に高くなるため、上述と同じ効果が発揮される。また、3つのほぼ同心円状に配列されるペルチェ素子51pが独立に制御され得るため、チャック51の温度を室温(23℃)よりも低い温度に均一に維持することも、たとえばチャック51の中央部の温度よりも周辺部の温度が高くなるように設定することも可能となる。したがって、ウエハWの温度分布をより詳細に制御することが可能となり、カラーレジスト膜の膜厚分布も一層均一に制御され得る。
【0049】
なお、チャック51の直径は、300mmの直径を有するウエハに対してたとえば240mmから270mmまでの範囲であると好ましい。このようにすれば、ウエハWのより広い範囲で温度分布を調整することができるからである。また、チャック51がこのような直径を有している場合、ペルチェ素子51pを4つ以上の同心円状に配列してもよい。
【0050】
続けて、図9を参照しながら、本発明の別の実施形態によるレジスト塗布装置について、図5から図7に示したレジスト塗布装置50との相違点を中心に説明する。図9を参照すると、この実施形態によるレジスト塗布装置50においては、熱電変換素子(たとえばペルチェ素子)が内蔵されたヘッド部59と、ヘッド部59を支持するためにほぼ水平に延びるアーム部56aと、アーム部56aの基端部を支持するとともに、筐体50aの底部を貫通して延びる回動シャフト56sとが設けられている。回動シャフト56sは、中心軸の周りに回動可能で、上下動可能である。また、ヘッド部59内の熱電変換素子は、電源58と電気的に接続されており、電源58からの給電により所定の温度に制御される。
【0051】
このような構成によれば、冷却ユニットCOL32により室温に均一に維持されたウエハWがレジスト塗布装置50に搬入されてチャック51により保持された後、図9(b)に示すように、回動シャフト56sが回動してヘッド部59がウエハWの中央部の上方に到達する。次に、回動シャフト56sが下降して、ヘッド部59がウエハWの表面中央部に接しない程度にまで近づき、この状態で所定の期間が経過すると、ウエハWの中央部が冷却される。このとき、ヘッド部59の温度および所定の期間は、予備実験を通して決定してよい。また、ヘッド部59の温度は、レジスト塗布装置50内の温度および湿度を考慮し、レジスト塗布装置50内の空気中の水分がヘッド部59に結露しない限りにおいて、できるだけ低く設定すると好ましい。
【0052】
この実施形態によるレジスト塗布装置においても、ウエハWの温度を中央部で低く、周辺部で高くすることができるため、上述のように、カラーレジスト膜の膜厚分布を均一化することが可能となる。
【0053】
また、ヘッド部59内の熱電変換素子への電源58の給電電圧を反転することによりヘッド部59の温度を室温よりも高くしてもよい。この場合には、図10に示すように、ヘッド部59は、回動シャフト56sおよびアーム部56aによってウエハWの表面周辺部に近接して維持され、ウエハWは回転モータ52により回転される。これにより、ウエハWの周辺部の温度が高くなり、中央部で低くなる。したがって、上述のように、カラーレジスト膜の膜厚分布を均一化することが可能となる。
【0054】
次に、図11を参照しながら、本発明の更に別の実施形態によるレジスト塗布装置について、図5および図6に示すレジスト塗布装置50との相違点を中心に説明する。図11に示すように、この実施形態によるレジスト塗布装置には、チャック51により保持されるウエハWの裏面周辺部を加熱可能なヒータ57hと、ヒータ57hの温度を調整する温度調整器58bとが設けられている。このレジスト塗布装置には、図5および6に示す流体供給部56および温度調整器57は設けられていない。この構成によれば、冷却ユニットCOL32(図3)により室温に均一に維持されたウエハWがレジスト塗布装置に搬入され、チャック51により保持された後、ウエハWの周辺部がヒータ57hからの熱輻射かつ/または熱伝導により加熱されるから、ウエハWの温度は中央部で低く周辺部で高くなる。したがって、上述のように、カラーレジスト膜の膜厚分布を均一化することが可能となる。
【0055】
図11に示すヒータ57hに代わり、カップ部53のカップベース53Eにヒータを内蔵してもよい。そのような例を図12を参照しながら説明する。図12に示すとおり、カップベース53Eには、チャック51に保持されるウエハWの裏面周辺部に近接する位置においてヒータ57eが組み込まれている。これによっても図11のヒータ57hと同様にウエハWの周辺部の温度を高くすることができるため、同様の効果が発揮される。さらに、ヒータ57eの代わりに又は追加して、アッパーカップ53UにおけるウエハWのエッジに最も近い部分にヒータ57uを組み込んでもよい。このヒータ57uによれば、ヒータ57eに代わってウエハWの周辺部の温度を中央部の温度に比べて高くすることができ、また、ヒータ57eとともに用いれば、ウエハWの周辺部の温度を短時間で確実に高くすることができる。なお、図12においては、ヒータ57eおよび57uが接続される温度調整器は、便宜上、省略している。
【0056】
次に、本発明の更に別の実施形態について説明する。この実施形態においては、レジスト塗布装置は、ウエハWの周辺部の温度を中央部の温度に比べて高くするための構成を含んでおらず、代わりにレジスト塗布装置へウエハWを搬入する搬送アームA3(図3)にウエハ温度調整のための構成が設けられている。
図13には、処理装置群B3およびU1(図3)の間に配置される搬送アームA3が図示されている。ここで、搬送アームA3はホームポジションにあり、図13(a)中の矢印の方向に伸びることにより、レジスト塗布装置のウエハ搬送口50c(図3)からレジスト塗布装置内に進入することができる。図13に示すように、ホームポジションにある搬送アームのアーム61の上方において、アーム61により保持されるウエハWの周辺部に沿う環状ヒータ57rが配置されている。環状ヒータ57rは、処理装置群U1の筐体を利用して支持されている。また、環状ヒータ57rは、図示しない温度調整器と電気的に接続され、温度調整器によって室温よりも高い温度に維持されている。
【0057】
このような構成によれば、冷却ユニットCOL32(図3)において室温に維持されたウエハWは、搬送アームA3のアーム61によって冷却ユニットCOL32から取り出され、搬送アームA3のホームポジションにおいて所定の期間放置されると、このウエハWの周辺部は、アーム61の上方に配置された環状ヒータ57rにより加熱されて、中央部に比べて高い温度を有することとなる。次いで、このウエハWはアーム61によりレジスト塗布装置のウエハ搬送口50cを通してレジスト塗布装置内へ搬入され、チャック51により受け取られる。続けて、ディスペンサ55からカラーレジスト液がウエハW上に供給され、ウエハWが回転すると、カラーレジスト膜がウエハW上に形成される。
【0058】
この場合であっても、ウエハWの温度が中央部に比べて周辺部において高くなっているため、ウエハW上のカラーレジスト液がウエハWの回転により広がるときに、ウエハWの周辺部にて応力により生じる粘度の低下が補償され、カラーレジスト膜の膜厚均一性が改善される。
【0059】
なお、図13において搬送アームA3のアーム61は、レジスト塗布装置内にウエハWを搬入する場合に専ら用いられ、アーム62は、レジスト塗布装置からウエハWを搬出する場合に専ら用いられてよい。
【0060】
また、搬送アームA3に環状ヒータ57rを設ける代わりに、または搬送アームA3に環状ヒータ57rを設けることに加えて、冷却ユニットCOL32において、ウエハWの中心部の温度が低く周辺部が高くなるような温度分布を実現するようにしてもよい。その一例を図14を参照しながら説明する。
【0061】
図14に示すように、冷却ユニットCOL32にはウエハWが載置されるウエハステージ32Sが設けられている。ウエハステージ32Sは、搬送アームA3により冷却ユニットCOL32内へ搬入されるウエハWを受け取ってウエハステージ32S上に載置するため、図示しない3つの昇降ピンが設けられている。また、ウエハステージ32Sは、内側チャネルCH1および外側チャネルCH2を有し、各チャネルCH1,CH2においては、内部に流体が流れる導管がたとえば渦巻き状に形成されており、各チャネルCH1,CH2をそれぞれ異なる温度に調整された流体が流れている。これにより、外側チャネルCH2の温度が内側チャネルCH1の温度よりも高くなるように維持されている。
【0062】
この構成によれば、たとえば疎水化処理ユニットADHにおいて疎水化処理のために加熱されたウエハWが冷却ユニットCOL32内へ搬入され、ウエハステージ32S上に載置されると、ウエハWの中央部がたとえば室温に冷却されることにより、ウエハWの周辺部の温度が中心部の温度よりも高くなる。このような温度分布を有するウエハWが搬送アームA3によりレジスト塗布装置に搬入され、チャックにより保持され、ディスペンサ55によってカラーレジスト液がウエハW上に供給された後にウエハWが回転されると、ウエハW上にカラーレジスト膜が形成される。この場合においても、ウエハW上のカラーレジスト液がウエハWの回転により広がるときに、ウエハWの周辺部にて応力により生じる粘度の低下が補償され、カラーレジスト膜の膜厚均一性が改善される。
【0063】
図5に示すレジスト塗布装置50を用いてカラーレジスト膜をウエハ上に形成する実験を行ったので、この実験について以下に説明する。
この実験においては、流体としてシクロヘキサノン、イソプロピルアルコール(IPA)、およびプロピレングリコールメチルエーテル(PGME)を用いた。これらの蒸発熱、比熱、および熱伝導率は下記の表1のとおりである。
【0064】
【表1】

また、これらの流体の温度は6℃とし、ウエハWの表面中央部に約3ml供給した。この供給量においては、ウエハWの表面中央部に広がった流体の直径は約10cmであった。また、流体によりウエハWの表面中央部を冷却した後、ウエハW上に富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ株式会社製のカラーレジスト液(SG−5000L)を使用した。このカラーレジスト液は、ウエハW上に、1.0ml/秒の供給レートで1.5ml供給した。使用したウエハWは、300mmの直径を有するシリコンウエハであり、形成したカラーレジスト膜の膜厚は、ウエハWの直径に沿って等間隔に約48点で測定した。
【0065】
なお、シクロヘキサノンおよびPGMEを用いた場合は、主に冷却時間をパラメータとして膜厚分布を調べた。また、比較のため、流体により冷却することなくカラーレジスト膜をウエハW上に形成した場合についても、その膜の膜厚分布を調べた。
【0066】
IPAを用いた場合には、主にIPAの供給量を3mlだけでなく、5mlおよび8mlと変えて、それぞれカラーレジスト膜を形成し、その膜厚分布を調べた。また、比較のため、IPAを冷却せずにウエハW上に供給した後(3ml)、カラーレジスト膜を形成した場合についても、その膜の膜厚分布を調べた。
【0067】
図15に流体としてPGMEを用いた場合の実験結果を示す。この結果より、ウエハWを冷却しなかった場合(◆)に比べ、6℃のPGMEにより約5秒間冷却した場合(■)の方が、ウエハWの中央部での膜厚が小さくなり、膜厚均一性が改善されたことがわかる。ただし、冷却時間を約15秒とした場合(▲)の膜厚分布は、冷却時間約5秒の場合における膜厚分布とほぼ同じであった。しかし、冷却しない場合に比べて膜厚均一性の改善が認められ、これにより、本発明の実施形態による効果が確認された。また、流体としてシクロヘキサノンを用いた場合の実験結果を図16に示すが、この図から、シクロヘキサノンを用いた場合でも、PGMEを用いた場合(図15)とほぼ同様の結果が得られていることが分かる。
【0068】
図17は、流体としてIPAを用いた場合の実験結果を示す。この図から、IPAを冷却せずに用いた場合(◆)に得られたカラーレジスト膜に比べ、IPAを6℃に冷却して用いた場合(■)に得られたカラーレジスト膜の方が、均一な膜厚分布を有していることが分かる。しかも、冷却したIPAの供給量を増やすにつれて、膜厚分布の均一性が更に改善されることが分かる。この結果からも、ウエハWの中央部を冷却流体により冷却する効果が確認される。また、図15および図16と図17とを比較すると、IPAを用いた場合の方が膜厚分布をより均一化できることが分かる。表1を参照すると、IPAは、シクロヘキサノンおよびPGMEに比べて大きな熱伝導率を有しているから、IPAとウエハWとの間での熱の交換が速やかに行われることにより、顕著に改善することができると推測される。
【0069】
以上、幾つかの実施形態を参照しながら本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されることなく、添付の特許請求の範囲に照らして種々に変形および変更することができる。
【0070】
レジスト塗布装置においては、カラーレジスト液をウエハ上に供給しウエハを回転するとカラーレジスト液がウエハ裏面に回り込むため、一般に、ウエハの裏面周辺部に向けてリンス液を吹きかけることによりウエハ裏面のカラーレジスト液を除去するバックリンスノズルが設けられている。追加のバックリンスノズルをレジスト塗布装置に設ければ、これを利用してウエハ温度を調整することができる。たとえば、リンス液は、リンス液貯蔵タンクとバックリンスノズルを繋ぐ所定の導管(チューブ)を通してバックリンスノズルから吐出されるから、導管の途中に温度調整器57(図5、図6)と同様の温度調整器を設け、この温度調整器によってリンス液の温度を室温より高い、例えば約30℃から約70℃までの範囲の温度に加熱することができる。カラーレジスト液をウエハ上に供給する前に、加熱されたリンス液をウエハの裏面周辺部に吹きかけることによって、ウエハの周辺部の温度を高くすることができる。すなわち、このように基板温度調整部を構成することも可能であり、上述の効果と同じ効果を得ることができる。
【0071】
特に上述の実験においては、図5に示すレジスト塗布装置50においてシクロヘキサノン、IPA、およびPGMEを使用したが、これらに限られることなく、例えばIPA以外のアルコールや酪酸系の溶剤を使用することができる。また、2以上の溶剤を混合しても構わない。この場合、上述の実験の結果を参考にして、所定の熱伝導率を有する混合溶剤を得ると好ましい。さらに、溶剤に代わり、脱イオン水や純水を用いてもよい。また、流体供給部56からは、溶剤や水などの液体の代わりに、窒素ガス、アルゴンなどの不活性ガス、および空気などの気体を温調器57により温度調節して供給してもよい。このようにしても、ウエハの周辺部の温度を高くできるため、上述の効果を得ることができる。流体として気体を用いる場合には、アーム部56aの先端部56tを、ウエハWの冷却されるべき領域に対応した面積を有するシャワーヘッドとして構成してもよい。
【0072】
また、レジスト塗布装置の内側の上部には、通常、所定の送風機により温度および湿度が調整された空気を吹き出す送風口が設けられ、これから吹き出される空気によりダウンフローが形成される。ここで、この送風口に又は送風口の下方の空間に、たとえばルーバーなどを設けてチャック51に保持されるウエハの周辺部に多量の空気を供給することにより、ウエハの温度分布を調整してもよい。この場合、ルーバーは(上向きの)円錐状の形状を有し、チャック51に保持されるウエハの中央の上方に配置されると好ましい。
【0073】
また、熱電変換素子(ペルチェ素子)51pを内蔵するヘッド部59をアーム56aに取り付けるのではなく、たとえば、カラーレジスト膜が形成されたウエハのエッジにおけるカラーレジスト膜を除去するためのエッジリンスノズル(edge bead removal(EBR)ともいう)用のアームにヘッド部59を取り付けても良い。これによれば、追加のアームが不要となるので、レジスト塗布装置を簡素に構成することができる。
【0074】
図5に示すレジスト塗布装置50においては、冷却された流体をウエハWのほぼ中央部に供給した後に、ウエハWの中央部を冷却するときにウエハW上の流体が周辺部にまで広がらない程度の回転速度でウエハWを回転しても構わない。また、そのような回転速度で回転するウエハW上に冷却された流体を供給してもよい。
【0075】
また、温度調整部57により冷却された又は加熱された流体の温度が変動しないようにたとえばアーム部56aおよび回動シャフト56sに設けられる温度維持部56hの代わりに、アーム部56aおよび回動シャフト56sに断熱材を巻き付けることにより、流体の温度変動を抑制しても良い。
【0076】
さらに、図5および図6に示す流体供給部56は、ディスペンサ55と同様に、ガイドレールと、これに摺動可能に設けられた基部と、基部に接続されたアーム部とから構成してもよい。また、図9および図10に示すヘッド部59(温度可変部)を支持するアーム部56aを基部に取り付け、基部をガイドレールに摺動可能に設けてもよい。
【0077】
また、ヘッド部59が熱電変換素子(ペルチェ素子)59pを内蔵することにより、ヘッド部59の温度が調整されるが、これに限らず、回動シャフト56sおよびアーム部56aの内部を通ってヘッド部59の内部に至る循環導管を形成し、ここに温度調整された流体を流すことによって、ヘッド部59の温度を調整してもよい。
【0078】
さらに、搬送アームA3のアーム61の上方に配置される環状ヒータ57rの代わりに、アーム61内にヒータを内蔵し、アーム61により支持されるウエハWの周辺部を加熱してもよい。
【0079】
また、本発明の実施形態によるレジスト塗布装置および塗布現像システムならびにレジスト膜形成方法においては、シリコンウエハではなく、フラットパネルディスプレー用のガラス基板を用いてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1・・・塗布現像システム、S1・・・キャリアブロック、S2・・・処理ブロック、S3・・・インターフェイスブロック、S4・・・露光装置、B,U1・・・処理装置群、U2,U3・・・棚ブロック、50・・・レジスト塗布装置、51・・・チャック、52・・・モータ、53・・・カップ部、56・・・流体供給部、56a・・・アーム部、56s・・・回動シャフト、57・・・温度調整器、51p・・・熱電変換素子、59・・・ヘッド部、57h,57e,57u・・・ヒータ、57r・・・環状ヒータ、32S・・・ウエハステージ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラーレジスト膜を基板上に形成するレジスト塗布装置であって、
前記基板の中央部における温度よりも前記基板の周辺部における温度が高くなるように前記基板の温度を調整するよう構成される基板温度調整部と、
前記中央部よりも前記周辺部において温度が高くなるように前記基板温度調整部により温度調整された前記基板上にカラーレジスト液を供給するカラーレジスト液供給部と、
前記カラーレジスト液が供給された前記基板を回転する基板回転部と
を備えるレジスト塗布装置。
【請求項2】
前記基板温度調整部が、
当該レジスト塗布装置の内部の雰囲気温度よりも低い温度に流体を冷却する流体冷却部と、
前記流体冷却部により冷却された前記流体を前記中央部に供給する第1の流体供給部と
を含む、請求項1に記載のレジスト塗布装置。
【請求項3】
前記第1の流体供給部が、
前記流体を吐出する第1の吐出部と、
前記流体冷却部により冷却された前記流体を前記第1の吐出部へ導く第1の導管を含み、前記第1の吐出部を前記中央部の上方に維持可能な第1のアーム部と、
前記第1のアーム部に備えられ、前記第1の導管を流れる前記流体の温度を維持するための第1の温度維持部と
を備える、請求項2に記載のレジスト塗布装置。
【請求項4】
前記第1の流体供給部が、
前記第1の流体供給部から前記中央部に供給された前記流体が前記周辺部まで広がらないように前記流体の供給量を調整する供給量調整部を更に備える、請求項3に記載のレジスト塗布装置。
【請求項5】
前記基板温度調整部が、
前記レジスト塗布装置の内部の雰囲気温度よりも高い温度に流体を加熱する流体加熱部と、
前記流体加熱部により加熱された前記流体を前記周辺部に供給する第2の流体供給部と
を含み、
前記基板回転部が、前記周辺部に前記流体が供給される間に前記基板を回転するように構成される、請求項1に記載のレジスト塗布装置。
【請求項6】
前記第2の流体供給部が、
前記流体を吐出する第2の吐出部と、
前記流体加熱部により加熱された前記流体を前記第2の吐出部へ導く第2の導管を含み、前記第2の吐出部を前記周辺部の上方に維持可能な第2のアーム部と、
前記第2のアーム部に設けられ、前記第2の導管を流れる前記流体の温度を維持する第2の温度維持部と
を備える、請求項5に記載のレジスト塗布装置。
【請求項7】
前記基板回転部が、前記第2の流体供給部から前記周辺部に供給された前記流体が前記中央部に到達しないような回転速度で前記基板を回転するように構成される、請求項6に記載のレジスト塗布装置。
【請求項8】
前記基板温度調整部が、当該レジスト塗布装置の内部の雰囲気温度よりも高い温度に加熱された流体を前記基板の裏面周辺部へ供給する第3の流体供給部を含み、
前記基板回転部が、前記第3の流体供給部から前記裏面周辺部に前記流体が供給されている間に前記基板を回転するよう構成される、請求項1に記載のレジスト塗布装置。
【請求項9】
前記流体が、シクロヘキサノン、プロピレングリコールメチルエーテル、およびアルコールのいずれかである、請求項1から8のいずれか一項に記載のレジスト塗布装置。
【請求項10】
前記流体が気体である、請求項1から8のいずれか一項に記載のレジスト塗布装置。
【請求項11】
前記基板温度調整部が、
当該レジスト塗布装置の内部の雰囲気温度よりも低い温度に維持される温度可変部材と、
前記基板の中央部の上方に前記温度可変部材を支持可能に構成される支持部と、
を含む、請求項1に記載のレジスト塗布装置。
【請求項12】
前記基板温度調整部が、
前記レジスト塗布装置の内部の雰囲気温度よりも高い温度に維持される温度可変部材と、
前記基板の周辺部の上方に前記温度可変部材を支持可能に構成される支持部と、
を含み、
前記基板回転部が、前記温度可変部材が前記周辺部の上方に支持される間に前記基板を回転するように構成される、請求項1に記載のレジスト塗布装置。
【請求項13】
前記温度可変部材が熱電変換素子を含む、請求項11または12に記載のレジスト塗布装置。
【請求項14】
前記基板温度調整部が、前記基板の周辺部を前記基板の裏面から又は表面から加熱可能に配置される第1の加熱部を含む、請求項1に記載のレジスト塗布装置。
【請求項15】
前記基板温度調整部が、
前記基板を支持する基板支持部を含み、前記基板回転部に前記基板を受け渡す搬送部と、
前記基板支持部により支持される前記基板の周辺部を加熱する第2の加熱部と
を含む、請求項1に記載のレジスト塗布装置。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載のレジスト塗布装置を含む塗布現像ユニット。
【請求項17】
カラーレジスト膜を基板上に形成するレジスト膜形成方法であって、
前記基板の中央部における温度よりも前記基板の周辺部における温度が高くなるように前記基板の温度を調整するステップと、
前記中央部よりも前記周辺部において温度が高くなるように前記基板温度調整部により温度調整された前記基板上にカラーレジスト液を供給するステップと、
前記カラーレジスト液が供給された前記基板を回転するステップと
を含むレジスト膜形成方法。
【請求項18】
前記基板の温度を調整するステップは、
前記基板の中央部に、レジスト塗布装置の内部の雰囲気温度よりも低い温度の流体を、前記基板の周辺部にまで広がらない程度に吐出するステップと、
前記基板の中央部に前記流体が留まったまま、前記基板上に前記流体を所定時間保持するステップと、
その後、前記基板を回転させるステップと
を含む、請求項17に記載のレジスト膜形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−230051(P2011−230051A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102266(P2010−102266)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】