説明

レジスト現像装置およびモールド製造方法

【課題】装置構成の複雑化やこれに伴うコスト増大等を抑制しつつ、保温ジャケットで覆われていない配管露出部分での現像液の温度変動を抑制する。
【解決手段】現像液供給管と、前記現像液供給管を被覆し、内部に恒温制御媒体が流れている温度保持部と、を備えたレジスト現像装置において、前記現像液供給管は、前記温度保持部に覆われた被覆部と、前記温度保持部に覆われていない露出部とを有する。そして、前記温度保持部には、前記恒温制御媒体を前記露出部に導く導出部が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト現像装置およびモールド製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトリソグラフィ技術の分野で用いられるレジスト現像装置は、基板表面に形成された露光済みのレジスト層に現像液を供給することにより、レジスト層の不要部分を溶解して露光パターンの現像を行う。このような現像装置で行う現像処理については、近年の半導体デバイスの高集積化等に伴い、形成されるレジスト像(現像パターン)の解像性またはコントラストの向上が強く望まれている。これを実現するためには、現像液の温度を周辺雰囲気の平常の温度(以下「常温」という)より大きく降下させて低温にすることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。低温の現像液を用いてレジスト層を現像すると、常温の場合に比べて、現像中にパターンのエッジ部分がダレを起こし難くなり、その結果パターンのエッジ部分の形状的な崩れが抑制されて解像度の向上等が図れるからである。特に、現像液が0℃以下の場合は、顕著な効果が得られる。
【0003】
低温の現像液を用いた現像処理(以下、単に「低温現像」という)を行うレジスト現像装置は、現像液の供給配管の途中に恒温槽を配置し、その供給配管の一部を熱交換コイルとして恒温層に沈めることで、現像液を所望所定の温度に制御調整するように構成されることが一般的である(例えば、特許文献1参照)。このように、現像液を所望所定の温度に制御調整する場合には、その温度を維持したまま、現像液を供給配管のノズル先端部分(現像液吐出口)まで供給することが求められる。これを実現するために、現像液の供給配管については、恒温層から下流側の部分を保温ジャケットで覆うことが提案されている(例えば、特許文献2参照)。さらに、恒温層から下流側の部分において、保温ジャケットで覆えない露出部分が存在する場合には、当該露出部分の結露防止のために、当該露出部分の先端近傍領域に乾燥気体等を吹き付けることも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−121336号公報
【特許文献2】特開平07−142322号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】XiaoMin Yang et.al.J.Vac.Sci.Technol.B 25(6),Nov/Dec 2007 p.2202
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
低温現像を行う場合には、現像液の温度を一定に保つことが重要である。なぜなら、低温現像では、現像液の温度がレジストパターンの解像性に大きく影響し、少しの温度の変動によってレジストの解像ムラが生じてしまうからである。
【0007】
ところが、現像液の供給配管に保温ジャケットで覆えない露出部分が存在していると、例えば現像液の供給をストップさせた場合に、露出部分に滞留した現像液が温度制御性を失うため、再度現像液を供給させた際に初期の現像液の温度変動の要因となり、レジスト解像ムラが生じてしまうおそれがある。
【0008】
このような事態が生じるのを未然に回避するという観点からは、供給配管のノズル先端部分までを保温ジャケットで覆ってしまうことが望ましい。しかしながら、現実的には困難である。第1の理由は、ノズルの形状は目的により様々な形状を採り得るため、それぞれのノズルに合わせて保温ジャケットを準備することは装置構成の複雑化を招いてしまいコスト的にも負荷が過大になってしまうからである。第2の理由は、異なる大きさや形状の基板を処理する際に、ノズルの向きを調節する等で対処可能な場合があるが、ノズルを保温ジャケットで覆うことで可動範囲に制限がかかってしまい、対応可能な処理基板の形状が制約されてしまうからである。
また、保温ジャケットで覆えない露出部分については、特許文献2に記載のように当該露出部分への気体吹き付けを利用して、当該露出部分に滞留した現像液の温度制御を行うことも考えられる。ただし、特許文献2に記載の従来技術では、保温ジャケットとは別に気体吹き付けのための機構を必要とするため、より複雑な装置構成を必要とし、また保守管理の簡便性が失われ、さらにはそれらに因るコストの増大が生じるおそれがあることから、現実的ではない。
【0009】
そこで、本発明は、装置構成の複雑化やこれに伴うコスト増大等を抑制しつつ、保温ジャケットで覆われていない配管露出部分での現像液の温度変動を抑制して、配管を通じて供給する現像液が所望所定の温度から逸脱しないようにし、これにより現像液の温度変動によるレジスト解像ムラの解消が図れるレジスト現像装置およびモールド製造方法を提供することを、主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために案出されたものである。
本発明の第1の態様は、現像液供給管と、前記現像液供給管を被覆し、内部に恒温制御媒体が流れている温度保持部と、を備えており、前記現像液供給管は、前記温度保持部に覆われた被覆部と、前記温度保持部に覆われていない露出部とを有し、前記温度保持部には、前記恒温制御媒体を前記露出部に導く導出部が設けられていることを特徴とするレジスト現像装置である。
本発明の第2の態様は、内部に恒温制御媒体が流れている温度保持部に覆われた被覆部と当該温度保持部に覆われていない露出部とを有する現像液供給管を通じて、基板表面に対して温度制御された現像液の供給を行うレジスト現像装置において、前記温度保持部を用いることによって前記現像液を温度制御する温度制御手段と、前記温度制御手段に用いた恒温制御媒体を前記露出部に導く導出手段と、を有することを特徴とするレジスト現像装置である。
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様に記載の発明において、前記恒温制御媒体が不活性ガスであることを特徴とする。
本発明の第4の態様は、第1、第2または第3の態様に記載の発明において、前記恒温制御媒体と前記露出部との熱交換を促進させる熱交換促進手段が設けられていることを特徴とする。
本発明の第5の態様は、第1から第4のいずれか1態様に記載の発明において、前記現像液の供給対象となる基板がナノインプリント用のモールド基板であることを特徴とする。
本発明の第6の態様は、基板表面に所定パターンが形成されてなるモールドを製造するモールド製造方法であって、レジスト層が設けられた前記基板表面にエネルギービームを照射して前記所定パターンの露光処理を行う露光工程と、前記露光処理後の前記基板表面に対して、内部に恒温制御媒体が流れている温度保持部に覆われた被覆部と当該温度保持部に覆われていない露出部とを有する現像液供給管を通じて、温度制御された現像液を供給して前記所定パターンの現像処理を行う現像工程と、前記現像工程で供給する前記現像液に対する温度制御を、前記温度保持部を用いることによって行う温度制御工程と、前記現像工程で前記現像液を供給する際に、前記温度制御工程で用いた前記恒温制御媒体を前記現像液供給管の前記露出部に導く導出工程と、を有することを特徴とするモールド製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、装置構成の複雑化やこれに伴うコスト増大等を抑制しつつ、保温ジャケットで覆われていない配管露出部分での現像液の温度変動を抑制して、配管を通じて供給する現像液が所望所定の温度から逸脱しないようにすることができ、その結果として現像液の温度変動によるレジスト解像ムラの解消が図れるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るレジスト現像装置の全体構成例を示す概略図である。
【図2】本発明に係るレジスト現像装置の保温ジャケット構造例を説明する模式図である。
【図3】本発明に係るレジスト現像装置の要部構成例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づき本発明に係るレジスト現像装置およびモールド製造方法について説明する。
本実施形態では、以下の順序で説明を行う。
1.レジスト現像装置の全体構成
2.レジスト現像装置の要部構成
3.レジスト現像装置の動作
4.本実施形態の効果
5.変形例
【0014】
<1.レジスト現像装置の全体構成>
図1は、本発明に係るレジスト現像装置の全体構成例を示す概略図である。
レジスト現像装置1は、少なくとも、現像処理部10と、現像液供給部20と、を備えて構成されている。以下、これらの各部10,20について順に詳述する。
【0015】
[現像処理部]
現像処理部10は、処理対象物である基体2に対して現像処理を行う部分である。現像処理の対象となる基体2は、露光済みのレジスト層を有する基板である。具体的には、その一例として、ナノインプリント用のモールド基板を挙げることができる。ナノインプリント用のモールド基板(以下、単に「モールド基板」ともいう)は、ナノインプリント法によってパターンの転写を行う場合に、その元型となるマスターモールドの基材となる基板である。
【0016】
基体2に対する現像処理を行うために、現像処理部10は、少なくとも、現像処理のための空間を有する処理室11と、この処理室11内で基体2を保持する保持部12と、この保持部12を駆動する駆動部13と、を備える。
【0017】
(処理室)
処理室11は、基体2を収容するのに十分な空間を有するものであれば、その天井部が全部あるいは一部開放された機構であってもよいし、また密閉開放自在とした機構であってもよい。
【0018】
(保持部)
保持部12は、処理対象となる基体2を保持するもので、基体2を固定状態に支持するテーブル12aと、このテーブル12aに連結されたスピンドル軸12bとを用いて構成されている。
テーブル12aは、例えば、基体2が円板状であれば、これと相似の平面視円形に形成されている。図例ではテーブル12aの外径が基体2の外径よりも小さくなっているが、両者の大小関係はこれに限らず、互いに同じ外径であってもよいし、図例とは逆の大小関係であってもよい。また、テーブル12aの平面視形状は円形に限らず、矩形を含む多角形であってもよい。また、テーブル12aは、少なくとも基体2と対向する側の面(図例ではテーブル上面)が水平に配置されているおり、その上面に基体2を載置した状態で、この基体2を下面側から支持するように構成されている。さらに、テーブル12aは、真空吸着方式で基体2を固定し得る構成になっている。具体的には、テーブル基体2は、その上面に複数の吸引孔(または吸引溝)を有し、これらの吸引孔を通して基体2の下面に真空引きによる吸引力を作用させることにより、基体2を吸着(真空吸着)し得る構成になっている。ただし、テーブル12aによる支持構造は、ここで挙げた真空吸着方式に限らず、他の方式(例えば、ピン等を用いた突き当て方式など)で基体2を固定状態に支持する構成であってもよい。
スピンドル軸12bは、駆動部13の駆動力をもって回転駆動される軸である。スピンドル軸12bは、ボルト等の締結手段を用いて、テーブル12aの下面側の中心部に連結されている。そのため、スピンドル軸12bが回転すると、これと一体にテーブル12aが回転する。スピンドル軸12bは、箱状の壁で区画された処理室11の底壁を貫通する状態で配置されている。また、処理室11の底壁におけるスピンドル軸12bの貫通部分には、シール部材14が設けられている。シール部材14は、スピンドル軸12bの回転を許容しつつ、スピンドル軸12bの貫通部分から処理室11外への液体(現像液を含む)の漏出を防止するものである。
【0019】
(駆動部)
駆動部13は、処理室11とは壁で仕切られた下部室15に配置されている。駆動部13は、例えば図示はしないが、回転の駆動源となるモータと、このモータの駆動力をスピンドル軸12bに伝達する駆動力伝達機構(歯車列等)とを用いて構成されている。
【0020】
なお、処理室11の外装表面には、レジスト現像装置の動作を制御するためのプログラムコントローラ(図示せず)に接続された操作用パネル(図示せず)を設置してもよい。そして、このプログラムコントローラとそれに接続された操作用パネルにて、保持部12の回転制御のみならず、現像液やリンス液等の供給停止の制御、現像液やリンス液等の液体温度の制御や処理室11内温度の制御を行ってもよい。
【0021】
[現像液供給部]
現像液供給部20は、処理室11内で保持部12が保持する基体2に対して、当該基体2の現像処理を行う現像液21を供給する部分である。現像液供給部20は、少なくとも、現像液21を貯留する貯留部22と、現像液21を供給(輸送)する現像液供給管(以下、単に「供給管」という)23と、供給管23の配管途中に設けられた開閉弁24およびポンプ25と、同じく供給管23の配管途中に設けられた液温調整部26と、液温調整部26より現像液流れ方向の下流側にて供給管23を被覆する温度保持部27と、を備える。
【0022】
(貯留部)
貯留部22は、適量の現像液21を貯留し得る容器状に形成されている。貯留部22が貯留する現像液21は、露光済みのレジスト層の不要部分を溶解して、露光パターンの現像を行うためのものである。
【0023】
(供給管)
供給管23は、貯留部22に貯留された現像液21を処理室11内の基体2に向けて供給するものである。供給管23は、例えば、断面円形の細長い中空の管を用いて構成されている。供給管23の一端部は取込部23aとなっており、同他端部は吐出部23bとなっている。供給管23の取込部23aは、現像液21を管内に取り込むために開口している。供給管23の吐出部23bは、基体2に向けて現像液21を吐出するために開口している。吐出部23bは、単なる一つの開口になっていてもよいし、複数の小さな開口が設けられたシャワーヘッドのような構造になっていてもよい。また、吐出部23bは、現像液21を霧状に噴出するスプレーのような構造になっていてもよい。
【0024】
供給管23の取込部23aは、現像液供給部20の貯留部22内に配置されている。また、供給管23の吐出部23bは、現像処理部10の処理室11内に配置されている。そして、供給管23は、取込部23aを最上流部とし、吐出部23bを最下流部として、それらの間に現像液21の流路を形成するように配管されている。具体的には、供給管23は、貯留部22の内部から外部へと導出するように配管されている。さらに、貯留部22の外部における供給管23は、現像処理部10の外壁部分を貫通して処理室11内に進出し、かつ、処理室11内で保持部12に臨む位置まで配管されている。保持部12に臨む位置とは、供給管23の吐出部23bから吐出させた現像液21を、保持部12に保持された基体2の面上に供給し得る位置をいう。図例においては、供給管23の最下流に位置する吐出部23bが、保持部12に保持される基体2の直上に配置されている。
【0025】
(開閉弁およびポンプ)
供給管23の配管途中には、現像液21の流れを制御するための部材として、開閉弁24およびポンプ25が設けられている。
【0026】
開閉弁24は、供給管23を通して現像液21を供給する場合に、供給管23の管路を開状態とすることにより、現像液21の流れを許容するとともに、供給管23の管路を閉状態とすることにより、現像液21の流れを阻止するものである。開閉弁24によって現像液21の流れを許容すると、供給管23を通して現像液21の供給が開始されることになる。また、開閉弁24によって現像液21の流れを阻止すると、供給管23を通した現像液21の供給が停止することになる。したがって、開閉弁24は、現像液21の供給を開始または停止する機能を果たす部材となる。
【0027】
なお、開閉弁24は、供給管23の配管途中のいずれかの箇所に配されていればよいが、具体的には例えば処理室11の内部に配置することが考えられる。開閉弁24を処理室11の内部に配置する理由は、次のような事情による。すなわち、開閉弁24の取付部位よりも下流側に延在する供給管23の配管部分(外部に露出している配管部分)は、そこに残留する、またはそこを流れる現像液21の温度変動要因となり得る。したがって、現像液21の温度変動を抑える上では、開閉弁24の取付部位よりも下流側に延在する供給管23の配管部分の長さを短くすることが有効である。そこで、開閉弁24については、できるだけ吐出部23bの近くに位置するように、処理室11の内部に配置している。
【0028】
ポンプ25は、当該ポンプ25を実際に駆動した場合に、供給管23に沿った現像液21の流れを生成する動力を発生するものである。ポンプ25は、供給管23を通して現像液21を供給するにあたって、現像液21の吸引および移送のための圧力を現像液21に付与する。すなわち、ポンプ25は、貯留部22に貯留された現像液21を供給管23内に吸引するとともに、吸引した現像液21を供給管23に沿って移送する駆動源となる。このため、ポンプ25の駆動を停止した状態(オフ状態)では、供給管23の内部に現像液21の流れが形成されないが、ポンプ25の駆動を開始または継続した状態(オン状態)では、供給管23の内部に現像液21の流れが形成されることになる。なお、ポンプ25は、貯留部22の外部に配置されている。
【0029】
開閉弁24の開閉状態やポンプ25の駆動(オン、オフ)状態は、例えば、処理室11の外装表面に設置された図示しないプログラムコントローラにより制御可能となっている。
【0030】
(液温調整部)
供給管23の配管途中に設けられた液温調整部26は、現像液21を所望所定の温度に制御調整するものである。そのために、液温調整部26は、例えば、供給管23の配管途中に配置された恒温槽を有しており、その恒温槽内に供給管23の一部を熱交換コイルとして沈めることで、現像液21の温度制御をするように構成されている。ただし、現像液21の温度制御が可能であれば、液温調整部26は、いかなる機構のものであってもよい。いずれの構成を採用しても、液温調整部26によって制御される現像液21は、予め決められた温度(以下、「設定温度」)に調整されることになる。具体的には、現像液21の温度は、設定温度(例えば−10℃)を中心値とした許容範囲内(例えば±0.2℃以内)に収まるように制御される。その場合、現像液21としては、このような設定温度(例えば0℃以下の温度)でも凍らない液体が用いられる。
【0031】
なお、液温調整部26は、必ずしも供給管23の配管途中に存在している必要はなく、現像液21を所望所定の温度に制御調整可能であれば、例えば貯留部22に内蔵されたものであってもよい。
【0032】
(温度保持部)
液温調整部26により現像液21を所望所定の温度に制御調整した後は、より精度良く、かつ、安定して、制御調整後の温度を維持した状態で、現像液21を供給管23の吐出部23bに供給することが求められる。これを実現するために、供給管23は、液温調整部26より現像液流れ方向の下流側の部分が、温度保持部27によって被覆されている。
【0033】
温度保持部27は、液温調整部26により所望所定の温度に制御調整された現像液21を温度保持できるものであれば、いかなる機構のものであってもよい。その一例としては、供給管23を中心とした多重管構造(二重管構造を含む)を有する保温ジャケット式の温度保持部27が挙げられる。保温ジャケット式の温度保持部27は、供給管23とその周囲の外気(大気)との間に介在して温度調整機能をなすものであり、さらに好ましくは、供給管23の周囲に、詳細を後述する恒温制御媒体を流動または循環させることにより、供給管23内の現像液21を液温調整部26による制御調整後と同じ温度(設定温度)に保つ機能(保冷機能)を有するものである。
【0034】
具体的には、保温ジャケット式の温度保持部27としては、例えば、図2に示すように、供給管23を内包する三重管構造のものがある。供給管23は、最も内側に位置する管となっており、その外側に供給管23よりも大径の第二の管27aが配置され、さらにその外側(つまり、最も外側)に第二の管27aよりも大径の第三の管27bが配置されている。この三重管構造の温度保持部27において、供給管23の外周面と第二の管27aの内周面との間には、そこに恒温層27cを形成すべく、例えば恒温制御媒体が流動または循環するようになっている。また、第二の管27aの外周面と第三の管27bの内周面との間には、そこに断熱層27dを形成すべく、例えば空気を充填するようになっている。
【0035】
恒温層27cの内部を流れる恒温制御媒体としては、例えば所望所定の温度に制御調整された現像液21と同じ温度の流体を用いる。現像液21を液温調整部26による制御調整後と同じ温度(設定温度)に保つためである。したがって、現像液21の設定温度が例えば−10℃であれば、恒温制御媒体についても、−10℃を中心値とした許容範囲内(例えば±0.2℃以内)に収まるように制御された冷媒を用いる。
なお、恒温制御媒体は、後述する理由により、気体状のものとする。
【0036】
このような恒温制御媒体を流動または循環させるために、温度保持部27における恒温層27cは、例えばT字型の貫通式継ぎ手やこれに連なる配管等を利用して、恒温制御媒体の供給装置に接続されている(ただし、いずれも不図示)。これら温度保持部27、T字型貫通式継ぎ手、これに連なる配管、恒温制御媒体の供給装置等によって、現像液21を温度制御する温度制御手段としての機能が実現される。すなわち、温度制御手段は、温度保持部27を用いることによって、現像液21を温度制御するように構成されている。
なお、温度制御手段における恒温制御媒体の供給装置は、液温調整部26の恒温槽へ貯留媒体(すなわち現像液21を所望所定の温度に制御調整するための媒体)を供給する供給装置と同一のものを用いることも考えられる。このように、温度保持部27の内部を流れる恒温制御媒体と液温調整部26の恒温槽への貯留媒体とを共用すれば、両者の間に温度差が生じることが解消されるからである。
【0037】
また図1に示すように、温度保持部27は、供給管23の長さ方向において、液温調整部26の下流側近傍から開閉弁24の近傍までの範囲にわたり、供給管23を被覆するように設けられている。
さらに具体的には、温度保持部27は、液温調整部26から現像処理部10の処理室11に至る配管部分と、処理室11内で保持部12に臨む位置に至る配管部分とに連続するかたちで、供給管23を覆う状態に設けられている。つまり、温度保持部27は、液温調整部26より現像液流れ方向の下流側にて、供給管23を被覆するように設けられている。また、処理室11の内部では、開閉弁24の取付部位の近傍を終端位置として温度保持部27が設けられている。
このような範囲にわたり温度保持部27が配置されることにより、供給管23は、温度保持部27に覆われた被覆部と、温度保持部27に覆われていない露出部と、を有することになる。
【0038】
ところで、上述したように供給管23が被覆部と露出部とを有している場合には、吐出部23bからの現像液21の吐出を停止した後において、供給管23の露出部内に残留する現像液21が、室温と現像液21との温度差または室温の揺らぎによって、所望所定の温度から逸脱してしまうおそれがある。そのため、如何に現像液21の温度を液温調整部26にて制御調整し、また、温度保持部27にて保持を行おうとも、供給管23の露出部内に残留した現像液23の一部については、その温度の制御が損なわれてしまう。
このような状況下においては、現像液21の吐出散布を再開したときに、温度制御が損なわれた現像液21が基体2上に吐出されてしまうことになる。すると、現像液21を供給させる際の温度変動に起因して、レジスト解像ムラが生じてしまうおそれがある。
これらの事態が生じないようにするために、本実施形態で説明するレジスト現像装置は、詳細を後述するような特徴的な要部構成を備えている。
【0039】
[その他]
レジスト現像装置1は、上述した現像処理部10および現像液供給部20に加えて、他の構成要素を備えたものであってもよい。他の構成要素としては、例えばリンス液供給部が挙げられる。
リンス液供給部は、現像処理を終えた処理室11内の基体2に対して、当該基体2の現像を止めて洗浄する処理(「洗浄処理」または「リンス処理」ともいう)を行うリンス液を供給する部分である。リンス液供給部は、現像液供給部20と同様の構成を備えたものであればよい。すなわち、リンス液供給部は、基体2に対して供給する液種が現像液供給部20とは異なるだけで、他は現像液供給部20と同様に構成することが考えられる。
【0040】
<2.レジスト現像装置の要部構成>
図3は、本発明に係るレジスト現像装置の要部構成例を示す概略図である。
なお、図3中では、開閉弁24の図示を省略している。
【0041】
既に説明したように、レジスト現像装置1において、供給管23は、温度保持部27に覆われた被覆部28aと、温度保持部27に覆われていない露出部28bと、を有する。
【0042】
被覆部28aを被覆する温度保持部27には、その内部(具体的には例えば恒温層27cの内部)に恒温制御媒体が流れているとともに、当該恒温制御媒体を供給管23の露出部28bに導く導出部29が設けられている。
【0043】
(導出部)
導出部29は、例えば温度保持部27における現像液21の流れ方向下流側の端部に設けられた開口部からなり、その開口部を通じて温度保持部27の内部から恒温制御媒体が吹き出すように構成されている。つまり、温度保持部27の下流側端部は、恒温制御媒体が吹き出すように開放されている。
【0044】
このような構成の導出部29が設けられていると、当該導出部29からは、供給管23に沿った方向に向けて恒温制御媒体が吹き出す(図中矢印A参照)。したがって、導出部29からの恒温制御媒体の吹き出しによって、当該恒温制御媒体は、供給管23の露出部28bに導かれることになる。
【0045】
導出部29は、供給管23の露出部28bに向けて恒温制御媒体を吹き出し得るように構成されていれば、開口部の形状や大きさ等が特に限定されるものではなく、恒温制御媒体の流量や露出部28bの範囲等を考慮して適宜設定すればよい。ただし、導出部29を構成する開口部は、供給管23の周方向に均等に配置されていることが好ましい。露出部28bの全体に対して満遍無く恒温制御媒体が行き渡るようにするためである。
【0046】
このような導出部29を温度保持部27に設けることで、温度制御手段が現像液21の温度制御に用いた恒温制御媒体を供給管23の露出部28bに導く導出手段としての機能が実現される。
【0047】
(恒温制御媒体)
ところで、導出部29からの吹き出しにより供給管23の露出部28bに導かれる恒温制御媒体としては、気体状のものを用いる。気体状の媒体であれば、導出部29から吹き出す場合であっても、液体状媒体の場合とは異なり排水処理等を必要とせず、装置構成の複雑化等を抑制し得るからである。
【0048】
また、特に好ましくは、気体状の恒温制御媒体として、不活性ガスを用いることが考えられる。不活性ガスであれば、現像液および処理対象物である基体2に悪影響が及ぶのを抑制できるからである。
ここで、不活性ガスとは、他の物質と反応しないガスまたは非常に反応しにくいガスのことをいい、具体的にはヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン、窒素、二酸化炭素、フルオロカーボン等のガスが該当する。
【0049】
(熱交換促進手段)
恒温制御媒体が導かれる供給管23の露出部28bには、当該恒温制御媒体と当該露出部28bとの熱交換を促進させる熱交換促進手段が設けられていてもよい。熱交換促進手段としては、以下に述べるような構成のものを用いることが考えられる。
【0050】
熱交換促進手段の一例としては、供給管23の露出部28bの外表面に設けられたフィン状の放熱板(ただし不図示)が挙げられる。このような放熱板を露出部28bの外表面に設けた場合には、当該放熱板が無い場合に比べて、恒温制御媒体と接する当該露出部28bの表面積が増加するため、当該恒温制御媒体と当該露出部28bとの熱交換が促進されることになる。
【0051】
また、熱交換促進手段の他の例としては、導出部29から吹き出す恒温制御媒体を案内する導風部材(ただし不図示)が挙げられる。このような導風部材を恒温制御媒体の吹き出し先に設けた場合には、導出部29から吹き出す恒温制御媒体を効率的に供給管23の露出部28b(特に供給管23における吐出部23bの近傍部分)まで到達させることができる。さらには、導出部29より恒温制御媒体の吹き出し方向下流側に開閉弁24等が配置されている場合(すなわち恒温制御媒体の吹き出し経路上に障害物が存在する場合)であっても、導風部材を設けることで、恒温制御媒体の迂回経路を形成することができる。したがって、導風部材を設けた場合には、当該導風部材が無い場合に比べて、当該恒温制御媒体と当該露出部28bとの熱交換が促進されることになる。
【0052】
<3.レジスト現像装置の動作>
次に、上述した構成のレジスト現像装置1の動作例を説明する。
ここでは、モールド基板を製造するモールド製造方法に、上述した構成のレジスト現像装置1を用いる場合を例に挙げる。
【0053】
(モールド製造方法の概要)
ここで、レジスト現像装置1の動作例の説明に先立ち、モールド製造方法の概要について簡単に説明する。
【0054】
モールド基板の製造にあたっては、先ず、所定パターンが形成されるべき主表面にレジスト層が設けられた基体2を用意する。レジスト材料としては、エネルギービームを照射して露光したときに反応性を有するものであればよい。具体的には、電子線描画用レジストを用いることが考えられる。その際、レジスト層の上に、チャージアップ防止のための導電材を塗布してもよい。
なお、レジスト層がポジ型レジストである場合には、電子線描画した箇所が抜き部となり、基体2上における所定パターンの溝の位置に対応することになる。一方、レジスト層がネガ型レジストである場合には、電子線描画した箇所が残し部となり、基体2上における所定パターンの溝以外の位置に対応することになる。以下の説明では、ポジ型レジストを用いた場合、すなわちレジスト層の上に描画している部分が抜き部となり、所定パターンの溝の位置に対応する場合を例に挙げる。
レジスト層の厚さは、基体2へのエッチングが完了するまで残存する程度の厚さであることが好ましい。描画パターン部分の基体2を除去する際、この部分の基体2のみならず、レジスト層も少なからず除去されていくためである。
【0055】
次いで、用意した基体2に対し、電子線描画機を用いて、当該基体2上のレジスト層に所定パターンを描画する露光工程を実行する。すなわち、レジスト層が設けられた基体2の主表面にエネルギービームとしての電子線を照射して、レジスト層に所定パターンの露光処理を行う。露光工程で描画する所定パターンは、ミクロンオーダーであってもよいが、近年の電子機器の性能という観点からはナノオーダーであってもよく、最終製品の性能を考えるとその方が好ましい。
【0056】
露光工程でレジスト層に所定パターンを描画した後は、当該露光工程を経た基体2に対し、上述した構成のレジスト現像装置1を用いて、所定パターンの現像処理を行う現像工程を実行する。さらには、現像工程に付随して、リンス工程や乾燥工程等を実行する。これらの各工程等の詳細については、後述する。
【0057】
その後は、レジスト現像装置1による現像工程等を経た基体2に対し、ハードマスク層や当該基体2等へのエッチング処理を適宜行う。これにより、モールド基板が製造されることになる。なお、ここでは、ナノインプリント用のモールド基板を製造する場合について説明したが、フォトリソグラフィ技術を利用して行うものであれば、インプリントモールド以外のモールドであっても、全く同様の手順で製造することができる。
【0058】
(レジスト現像装置の動作の詳細)
次に、上述した一連のモールド製造方法におけるレジスト現像装置1の動作について説明する。
レジスト現像装置1は、上述した一連のモールド製造方法における各工程のうちの現像工程にて用いられる。さらには、現像工程に付随して実行するリンス工程や乾燥工程等においても用いられる。なお、これらの各工程を実行する際のレジスト現像装置1の動作は、当該レジスト現像装置1のプログラムコントローラからの制御指令に基づいて行われる。
【0059】
(現像工程)
現像工程に際し、レジスト現像装置1の現像液供給部20は、貯留部22内に現像液21を貯留しておく。現像液21としては、露光済みのレジスト層を可溶し得るもので、かつ、液温調整部26による制御調整後の温度(設定温度)でも凍らないものを用いる。具体的には、レジスト材料との関係にもよるが、例えば酢酸イソアミルのように現像液として公知のものを用いることが考えられる。
【0060】
一方、レジスト現像装置1の現像処理部10は、保持部12のテーブル12a上に基体2を載せた後、真空吸着等により基体2を固定状態に支持する。次いで、駆動部13を駆動してスピンドル軸12bを回転させる。これにより、基体2を支持しているテーブル12aがスピンドル軸12bと一体に回転した状態となる。
【0061】
このとき、温度保持部27は、その内部(具体的には例えば恒温層27cの内部)に恒温制御媒体を流すことによって、現像液21の温度を設定温度に保つ。つまり、現像液21の温度制御のために、恒温制御媒体を流動または循環させる。
その場合に、温度保持部27には導出部29が設けられていることから、被覆部28aでの現像液21の温度維持に用いられた恒温制御媒体(すなわち、温度保持部27の内部を流動または循環する恒温制御媒体)は、導出部29から吹き出して供給管23の露出部28bに導かれる(図3中の矢印A参照)。さらに詳しくは、温度保持部27の端部を開放することで、恒温制御媒体が供給管23の露出部28bに導かれるようにしている。これにより、露出部28bでは、その表面と恒温制御媒体との熱交換が行われることになる。
【0062】
このような状態のもとで、開閉弁24を開状態とし、かつ、ポンプ25を駆動することにより、貯留部22内の現像液21は、供給管23内に取り込まれる。そして、供給管23内に取り込まれた現像液21は、液温調整部26を通過することによって、設定温度(例えば−10℃)に調整される。さらに、設定温度に調整された現像液21は、液温調整部26より下流側部分が温度保持部27によって被覆されていることから、被覆部28aでは温度保持部27によって設定温度(すなわち、液温調整部26による制御調整後と同じ温度)に保たれることになる。
【0063】
露出部28bの表面と恒温制御媒体の熱交換が行われると、露出部28bにおいても、被覆部28aと同様に、供給管23内を流れる現像液21の温度が、恒温制御媒体によって設定温度(すなわち、液温調整部26による制御調整後と同じ温度)に保たれる。つまり、被覆部28aを覆う温度保持部27の内部を流れる恒温制御媒体を、導出部29を通じて露出部28bに導くことによって、被覆部28aと露出部28bの温度差を解消または小さくする。したがって、温度保持部27に覆われていない供給管23の露出部28bについても、その供給管23内の現像液21に対する温度の制御が損なわれてしまうことがない。
【0064】
このように恒温制御媒体の吹き出しを利用した温度制御を行う場合、露出部28bには、熱交換促進手段が設けられていることが好ましい。熱交換促進手段が設けられていると、恒温制御媒体と露出部28bとの熱交換が促進されるからである。つまり、熱交換促進手段が設けられていれば、当該熱交換促進手段がない場合に比べて、熱交換が促進されることから、恒温制御媒体の吹き出しを利用した温度制御を行う場合であっても、露出部28bでの現像液21に対する温度制御を確実に行えるようになる。
【0065】
以上のような恒温制御媒体による温度制御を経た後、現像液21は、供給管23の最下流に位置する吐出部23bから吐出される。吐出部23bから吐出される現像液21は、被覆部28aおよび露出部28bのいずれにおいても恒温制御媒体による温度制御を経ているので、吐出散布を連続的に行っている場合であるか、吐出停止後に吐出散布を再開する場合であるかに関係なく、設定温度に調整された状態が維持されたもの、すなわち所望所定の温度から逸脱するような温度変動が生じていないものとなる。
【0066】
このような温度制御がされた現像液21が吐出されるとき、保持部12のテーブル12aで基体2を水平に支持し、かつ、駆動部13の駆動によってテーブル12aを回転させておけば、その現像液21が基体2の表面(上面)に供給される。その結果、基体2の表面に形成された、露光済みのレジスト層の可溶部が、現像液21との化学反応によって溶解・除去される。
【0067】
これにより、現像処理部10では、処理室11内で基体2の現像処理がなされる。例えば、ポジ型のレジストを用いてレジスト膜を形成した場合は、露光工程で露光された部分が可溶部となる。したがって、現像処理を行うと、露光パターンに整合するかたちのレジストパターンが得られることになる。なお、ネガ型のレジストを用いた場合であれば、ポジ型のレジストの場合とは逆に、露光パターンを反転したかたちのレジストパターンが得られる。
【0068】
このとき、供給管23の吐出部23bから吐出される現像液21は、設定温度に調整された状態が維持されている。つまり、現像液21の吐出散布時に、温度制御が損なわれた現像液21が基体2上に吐出されてしまうことがない。したがって、供給管23が被覆部28aと露出部28bとを有している場合であっても、基体2に対する現像処理の際に、現像液21の温度変動に起因するレジスト解像ムラが生じてしまうのを未然に回避することができる。
【0069】
また、基体2上に吐出される現像液21は、例えば−10℃といった低温状態に温度制御される。このような低温の現像液21を用いてレジスト層を現像すると、常温の場合に比べて、現像中にパターンのエッジ部分がダレを起こし難くなり、その結果パターンのエッジ部分の形状的な崩れが抑制されて解像度の向上等が図れる。
【0070】
基体2に対する現像処理を終えた後、現像液供給部20は、開閉弁24を開状態から閉状態に切り替えることにより、現像液21の吐出を停止し、その後、必要に応じてポンプ25の駆動を停止しておく。
【0071】
(リンス工程)
現像処理を終え、現像液21の吐出を停止した後、レジスト現像装置1は、リンス工程を実行する。リンス工程では、レジスト現像装置1における図示しないリンス液供給部が、処理室11内の基体2に対してリンス液を供給してリンス処理を行う。基体2に供給するリンス液は、例えばIPA(イソプロピルアルコール)のようにリンス液として公知のものを用いればよい。そして、リンス処理を終えた後、リンス液供給部は、リンス液の供給を停止する。
【0072】
(乾燥工程)
リンス工程の後、レジスト現像装置1は、必要に応じて乾燥工程を実行する。具体的には、現像処理部10は、保持部12のテーブル12a上に基体2が支持された状態のまま、駆動部13を駆動してスピンドル軸12bを回転させ、これにより基体2を支持しているテーブル12aをスピンドル軸12bと一体に回転させることで、基体2のスピン乾燥を行う。
【0073】
<4.本実施形態の効果>
本実施形態で説明したレジスト現像装置1、および、そのレジスト現像装置1を用いて行うモールド製造方法によれば、以下に述べる効果が得られる。
【0074】
本実施形態によれば、供給管23の被覆部28aを覆う温度保持部27内を流れる恒温制御媒体を、導出部29を通じて露出部28bに導くので、被覆部28aと露出部28bの温度差を解消または小さくすることができ、温度保持部27に覆われていない供給管23の露出部28bについても、その供給管23内の現像液21に対する温度制御が損なわれてしまうことがない。つまり、吐出部23bから吐出される現像液21は、被覆部28aおよび露出部28bのいずれにおいても恒温制御媒体による温度制御を経ているので、設定温度に調整された状態が維持されたもの、すなわち所望所定の温度から逸脱するような温度変動が生じていないものとなる。したがって、供給管23が被覆部28aと露出部28bとを有している場合であっても、基体2に対する現像処理の際に、現像液21の温度変動に起因するレジスト解像ムラが生じてしまうのを未然に回避することができる。
【0075】
しかも、本実施形態によれば、温度保持部27に覆われていない供給管23の露出部28bに対して、単に恒温制御媒体(所望所定の温度となるように調整された気体状の媒体)を吹き付けるだけの構成としている。したがって、露出部28bについては温度保持部27のような保温ジャケット式の多重管構造の部材による被覆を必要とすることがなく、また液体状媒体の場合とは異なり排水処理等を必要としないので、装置構成の複雑化等を抑制することができる。さらに具体的には、供給管23の先端の吐出部23bは目的により様々な形状(ノズル状、シャワーヘッド状等)を採り得るが、その吐出部23bが露出したままでも現像液21に対する温度制御が行えるので、様々な形状に合わせた保温ジャケット構造を個別に準備する必要がなく、その結果として装置構成の複雑化やコスト的負荷等を抑制し得るようになる。また、吐出部23bが露出したままでも現像液21に対する温度制御が行えるので、吐出部23bにおける媒体吐出方向が可変可能な場合であっても、その可動範囲に制限がかかってしまうことがなく、対応可能な基体2の形状が制約されてしまうといった事態を招くのを未然に回避することができる。
【0076】
その上、本実施形態によれば、露出部28bへ導く恒温制御媒体として、温度保持部27の内部を流れる恒温制御媒体を利用する。具体的には、温度保持部27の端縁を開放して導出部29とし、当該温度保持部27の内部を流れる恒温制御媒体を導出部29から吹き出して、温度保持部27で覆われていない露出部28b(例えば、開閉弁24や吐出部23b等を含む供給管23の先端近傍部分)まで到達させるようにする。このように、供給管23の被覆部28aと露出部28bとで恒温制御媒体を共用することで、複雑な装置構成となるのを極力抑制しつつ、保守管理の簡便性が失われることもなく、またそれらに因るコスト増大が生じるのを抑えることができる。
【0077】
さらに、本実施形態によれば、供給管23の被覆部28aと露出部28bとで恒温制御媒体を共用し、温度保持部27の導出部29から吹き出した恒温制御媒体を露出部28bへ導くので、露出部28bに恒温制御媒体を吹き付けることで温度制御を行う場合であっても、温度保持部27とは別に媒体吹き付けのための機構を必要とすることがない。したがって、別の媒体吹き付け機構を必要とする場合(例えば、特許文献2参照)とは異なり、複雑な装置構成を必要とすることなく、また保守管理の簡便性が失われてしまうこともなく、さらにはそれらに因るコストの増大が生じるおそれもない。
【0078】
さらにまた、本実施形態によれば、温度保持部27の下流側端部に導出部29が設けられており、その導出部29から吹き出した恒温制御媒体を露出部28bへ導くので、恒温制御媒体の吹き出し方向が供給管23に沿った方向となる。したがって、供給管23の先端近傍領域に対して媒体吹き付けを行う場合(例えば、特許文献2参照)とは異なり、供給管23の露出部28bの全体に対して恒温制御媒体が吹き付けられることになる。つまり、供給管23の露出部28bに対して部分的ではなく全体的に恒温制御媒体が吹き付けられるので、露出部28bでの現像液21に対する温度制御を確実に行えるようになる。
【0079】
以上のことから、本実施形態では、装置構成の複雑化やこれに伴うコスト増大等を抑制しつつ、保温ジャケット式の温度保持部27で覆われていない供給管23の露出部28bでの現像液21の温度変動を抑制して、供給管23を通じて供給する現像液21が所望所定の温度から逸脱しないようにすることができ、その結果として現像液21の温度変動によるレジスト解像ムラの解消が図れるという効果が得られる。
【0080】
また、本実施形態で説明したように、恒温制御媒体が不活性ガスである場合には、当該恒温制御媒体が導出部29から吹き出す場合であっても、基体2等の処理対象物に悪影響が及ぶのを抑制することができる。
【0081】
また、本実施形態で説明したように、恒温制御媒体と露出部28bとの熱交換を促進させる熱交換促進手段が設けられていれば、恒温制御媒体が導出部29から吹き出す場合であっても、露出部28bでの現像液21に対する温度制御を確実に行えるようになる。例えば、熱交換促進手段として導風部材を設けた場合であれば、導出部29から吹き出す恒温制御媒体を確実に供給管23の露出部28bまで到達させることができる。このことは、特に、導出部29流側に開閉弁24等が配置されている場合(媒体経路上に障害物が存在する場合)に有用である。
【0082】
また、本実施形態で説明したように、基体2がナノインプリント用のモールド基板である場合は、現像液21の温度を低温に設定することで、微細な凹凸パターンを高精度に形成することが可能となる。その理由は、ナノインプリント用のモールド基板に凹凸パターンを形成する場合、現像液21を低温に設定して現像処理を行うことによって、パターンのエッジ部分における形状的な崩れによる現像の解像度の低下を防ぐことができるためである。特に、0℃以下に設定して現像処理を行った場合、その効果は顕著に現れる。
【0083】
<5.変形例>
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0084】
例えば、上述した実施形態では、現像液21を低温状態(例えば−10℃)に温度制御する場合を例に挙げたが、必ずしもこのような態様に限定されることはなく、例えば一定温度に加熱された状態を維持するように温度制御する場合であっても、本発明を適用することで、供給管23の露出部28bでの現像液21の温度変動を抑制することができる。
【0085】
また、現像液21を基体2に対して供給するための構成(機構)についても、上述した実施形態の内容に限定されることはない。例えば、現像液供給部20の供給管23について、当該供給管23に付属して設けられる部材としては、開閉弁24やポンプ25に限らず、供給管23に付設されて現像液21(液体)の流れを制御するための部材であればよい。具体的には、例えば、開閉弁以外の弁部材(流量制御弁等)や、T型継手等の継手部材を、それぞれ付属部材として設けてもよい。
【符号の説明】
【0086】
1…レジスト現像装置
2…基体
10…現像処理部
20…現像液供給部
21…現像液
23…供給管
26…液温調整部
27…温度保持部
28a…被覆部
28b…露出部
29…導出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像液供給管と、
前記現像液供給管を被覆し、内部に恒温制御媒体が流れている温度保持部と、
を備えており、
前記現像液供給管は、前記温度保持部に覆われた被覆部と、前記温度保持部に覆われていない露出部とを有し、
前記温度保持部には、前記恒温制御媒体を前記露出部に導く導出部が設けられている
ことを特徴とするレジスト現像装置。
【請求項2】
内部に恒温制御媒体が流れている温度保持部に覆われた被覆部と当該温度保持部に覆われていない露出部とを有する現像液供給管を通じて、基板表面に対して温度制御された現像液の供給を行うレジスト現像装置において、
前記温度保持部を用いることによって前記現像液を温度制御する温度制御手段と、
前記温度制御手段に用いた恒温制御媒体を前記露出部に導く導出手段と、
を有することを特徴とするレジスト現像装置。
【請求項3】
前記恒温制御媒体が不活性ガスである
ことを特徴とする請求項1または2記載のレジスト現像装置。
【請求項4】
前記恒温制御媒体と前記露出部との熱交換を促進させる熱交換促進手段が設けられている
ことを特徴とする請求項1、2または3記載のレジスト現像装置。
【請求項5】
前記現像液の供給対象となる基板がナノインプリント用のモールド基板である
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のレジスト現像装置。
【請求項6】
基板表面に所定パターンが形成されてなるモールドを製造するモールド製造方法であって、
レジスト層が設けられた前記基板表面にエネルギービームを照射して前記所定パターンの露光処理を行う露光工程と、
前記露光処理後の前記基板表面に対して、内部に恒温制御媒体が流れている温度保持部に覆われた被覆部と当該温度保持部に覆われていない露出部とを有する現像液供給管を通じて、温度制御された現像液を供給して前記所定パターンの現像処理を行う現像工程と、
前記現像工程で供給する前記現像液に対する温度制御を、前記温度保持部を用いることによって行う温度制御工程と、
前記現像工程で前記現像液を供給する際に、前記温度制御工程で用いた前記恒温制御媒体を前記現像液供給管の前記露出部に導く導出工程と、
を有することを特徴とするモールド製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−58533(P2013−58533A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194788(P2011−194788)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】