説明

レジスト用低分散樹脂の製造方法

【課題】優れたラインウィドゥスラフネス(LWR)を有するレジストパターンを得ることができるレジスト組成物用の樹脂の製造方法を提供する。
【解決手段】以下の工程(1)〜工程(4)を含むレジスト組成物用低分散樹脂の製造方法。工程(1):高分散樹脂と第1のケトン溶剤とを混合して、高分散樹脂及び第1のケトン溶剤からなる溶液を得る工程、工程(2):工程(1)で得られた溶液と脂肪族エーテル溶剤とを混合後、不溶分を除去して濃縮して濃縮物を得る工程、工程(3):工程(2)で得られた濃縮物を第2のケトン溶剤に溶解させる工程、工程(4):工程(3)で得られた溶液と脂肪族炭化水素溶剤とを混合後、高分散樹脂よりも分散度が小さい低分散樹脂からなる不溶分を得る工程

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト用低分散樹脂の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、高分散樹脂をケトン系溶媒に溶解させて溶液を得、得られた溶液と脂肪族炭化水素溶剤とを混合後、低分散樹脂からなる不溶分を得る低分散樹脂の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−272785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の樹脂の製造方法により得られる樹脂を含むレジスト組成物では、得られるレジストパターンのラインウィドゥスラフネス(LWR)が十分に満足できるものではない場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の発明を含む。
[1] 以下の工程(1)〜工程(4)を含むレジスト組成物用低分散樹脂の製造方法。
工程(1):高分散樹脂と第1のケトン溶剤とを混合して、高分散樹脂及び第1のケトン溶剤からなる溶液を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた溶液と脂肪族エーテル溶剤とを混合後、不溶分を除去して濃縮して濃縮物を得る工程
工程(3):工程(2)で得られた濃縮物を第2のケトン溶剤に溶解させる工程
工程(4):工程(3)で得られた溶液と脂肪族炭化水素溶剤とを混合後、高分散樹脂よりも分散度が小さい低分散樹脂からなる不溶分を得る工程
【0006】
[2] 第1のケトン溶剤がアセトンである[1]記載のレジスト組成物用低分散樹脂の製造方法。
【0007】
[3] 脂肪族エーテル溶剤がメチル-tert-ブチルエーテルである[1]又は[2]記載のレジスト組成物用低分散樹脂の製造方法。
【0008】
[4] 第2のケトン溶剤がメチルイソブチルケトンである[1]〜[3]のいずれか記載のレジスト組成物用低分散樹脂の製造方法。
【0009】
[5] 脂肪族炭化水素溶剤がn−へプタンである[1]〜[4]のいずれか記載のレジスト組成物用低分散樹脂の製造方法。
【0010】
[6] レジスト組成物用低分散樹脂が、式(I)で表される構造単位及び式(II)で表される構造単位を有する樹脂である[1]〜[5]のいずれか記載のレジスト組成物用低分散樹脂の製造方法。

[式(I)中、
は、ハロゲン原子を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、水素原子又はハロゲン原子を表す。
、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数3〜20の脂環式炭化水素基を表すか、R及びRは互いに結合して炭素数2〜20の2価の炭化水素基を形成する。
は、単結合又は炭素数1〜20の2価の炭化水素基を表し、該炭化水素基に含まれる−CH−は、−O−、−CO−又は−NH−で置き換わっていてもよい。]

[式(II)中、
は、ハロゲン原子を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、水素原子又はハロゲン原子を表す。
は、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。
は、単結合又は炭素数1〜20の2価の炭化水素基を表し、該炭化水素基に含まれる−CH−は、−O−、−CO−又は−NH−で置き換わっていてもよい。
sは、1又は2の整数を表す。
tは、0〜2の整数を表す。]
【0011】
[7] [1]〜[6]のいずれか記載のレジスト組成物用低分散樹脂の製造方法で得られるレジスト組成物用低分散樹脂及び酸発生剤を含有するレジスト組成物。
【0012】
[8] (1)[7]記載のレジスト組成物を基板上に塗布する工程、
(2)塗布後の組成物を乾燥させて組成物層を形成する工程、
(3)組成物層を露光する工程、
(4)露光後の組成物層を加熱する工程、
(5)加熱後の組成物層を現像する工程を含むレジストパターンの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の低分散樹脂の製造方法により得られる樹脂を含むレジスト組成物から、優れたラインウィドゥスラフネス(LWR)を有するパターンを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<高分散樹脂>
高分散樹脂は、式(I)で表される構造単位及び式(II)で表される構造単位を有する高分散樹脂であることが好ましい。
【0015】
(式(I)で表される構造単位)
アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基が挙げられ、好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基であり、より好ましくは、炭素数1又は2のアルキル基であり、特に好ましくは、メチル基である。
ハロゲン原子を有するアルキル基としては、ペルフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、ペルフルオロブチル基、ペルフルオロsec−ブチル基、ペルフルオロtert−ブチル基、ペルフルオロペンチル基、ペルフルオロヘキシル基が挙げられる。
ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
【0016】
脂環式炭化水素基としては、単環式又は多環式のいずれでもよく、単環式の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロへキシル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロへキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などのシクロアルキル基が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基としては、デカヒドロナフチル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、メチルノルボルニル基、下記のような基等が挙げられる。脂環式炭化水素基の炭素数は、好ましくは炭素数3〜16である

【0017】
及びRが互いに結合して2価の炭化水素基を形成する場合、−C(R)(R)(R)基としては、下記の基が挙げられる。2価の炭化水素基の炭素数は、好ましくは炭素数3〜12である。

【0018】
としては、単結合、−CO−O−Xは−CO−との結合手を表し、Xは炭素数1〜6のアルキレン基を表す。]等が挙げられる。
式(I)で表される構造単位のうち、好ましくは、炭素数5〜20の脂環式炭化水素基を有するものが挙げられる。
【0019】
式(I)で表される構造単位としては、例えば、下記の構造単位が挙げられる。
【0020】

【0021】

【0022】
高分散樹脂における式(I)で表される構造単位の含有率は、高分散樹脂の全単位において、通常10〜95モル%であり、好ましくは15〜90モル%であり、より好ましくは20〜85モル%である。
【0023】
(式(II)で表される構造単位)
アルキル基、ハロゲン原子を有するアルキル基、ハロゲン原子としては、上記と同じ基が挙げられる。
【0024】
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基、n−ヘキトキシ基等が挙げられ、好ましくは、炭素数1〜4のアルコキシ基であり、より好ましくは、炭素数1又は2のアルコキシ基であり、特に好ましくは、メトキシ基である。
としては、単結合、−CO−O−、−CO−NH−、−CO−O−X−CO−O−、−CO−O−X−O−、−CO−O−X−NH−CO−O−、[はフェニル基との結合手を表し、Xは炭素数1〜6のアルキレン基を表す。]等が挙げられ、単結合又は−CO−O−が好ましい。
sは、好ましくは、1である。
tは、好ましくは0又は1であり、特に好ましくは、0である。
【0025】
式(II)で表される構造単位としては、例えば、以下の構造単位が挙げられ、好ましくは、4−ヒドロキシスチレンに由来する構造単位又は4−ヒドロキシ−α−メチルスチレンに由来する構造単位が挙げられる。
【0026】

【0027】

【0028】

【0029】

【0030】
高分散樹脂における式(II)で表される構造単位の含有率は、高分散樹脂の全単位において、通常10〜95モル%であり、好ましくは15〜90モル%であり、より好ましくは20〜85モル%である。
【0031】
<高分散樹脂の製造方法(1)>
式(III)で表されるモノマー及び式(IV)で表されるモノマーを溶媒中で混合して、式(III)で表されるモノマー及び式(IV)で表されるモノマーを重合させる(以下この工程を「第1工程」という場合がある。)。その後、得られた生成物の−O−CO−Rを−OHにすることにより(以下この工程を「第2工程」という場合がある。)、高分散樹脂を製造することができる。
【0032】
(第1工程)
重合方法としては、各種重合方法を使用できるが、なかでも重合開始剤を利用したラジカル重合法を使用することが好ましい。
前記ラジカル重合法では有機溶剤を使用することが好ましい。この有機溶剤としては、通常、モノマー、重合開始剤、及び得られる共重合体のいずれも溶解できる溶剤である。
このような有機溶剤としては、トルエン等の炭化水素、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルイソブチルケトン、イソプロピルアルコール、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等が挙げられ、1,4−ジオキサンが好ましい。これらの溶媒はそれぞれ単独でも用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0033】
前記ラジカル重合方法における反応温度は、通常、0〜150℃の範囲であり、好ましくは40〜100℃の範囲である。有機溶媒の使用量は、仕込みモノマー総量に対して1〜5重量倍が好ましく、重合開始剤の使用量は、仕込みモノマー総量に対して1〜20モル%が好ましい。
【0034】
(式(III)で表されるモノマー)

[式(III)中、
は、ハロゲン原子を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、水素原子又はハロゲン原子を表す。
、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数3〜20の脂環式炭化水素基を表すか、R及びRは互いに結合して炭素数2〜20の2価の炭化水素基を形成する。
は、単結合又は炭素数1〜20の2価の炭化水素基を表し、該炭化水素基に含まれる−CH−は、−O−、−CO−又は−NH−で置き換わっていてもよい。]
【0035】
式(III)で表されるモノマーは、式(I)で表される構造単位を与えるモノマーである。
式(III)で表されるモノマーとして、好ましくは式(a1−1)で表されるモノマー又は式(a1−2)で表されるモノマーが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】

[式(a1−1)及び式(a1−2)中、
a1及びLa2は、それぞれ独立に、−O−又は−O−(CH2k1−CO−O−を表し、k1は1〜7の整数を表し、*は−CO−との結合手を表す。
a4及びRa5は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
a6及びRa7は、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数3〜10の脂環式炭化水素基を表す。
m1は0〜14の整数を表す。
n1は0〜10の整数を表す。
n2は0又は1の整数を表す。]
【0037】
a1及びLa2は、好ましくは、−O−又は−O−(CH2k1−CO−O−であり、より好ましくは−O−である。k1は、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは1である。
a4及びRa5は、好ましくはメチル基である。
a6及びRa7のアルキル基及び脂環式炭化水素基としては、上記と同じ基が挙げられ、好ましくはメチル基又はエチル基である。
m1は、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0又は1である。
n1は、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0又は1である。
【0038】
式(a1−1)で表されるモノマーとしては、例えば、特開2010−204646号公報に記載されたモノマーが挙げられる。下式(a1−1−1)〜(a1−1−6)で表されるモノマーが好ましく、下式(a1−1−1)〜(a1−1−3)で表されるモノマーがより好ましい。

【0039】
式(a1−2)で表されるモノマーとしては、例えば、1−エチル−1−シクロペンチル(メタ)アクリレート、1−エチル−1−シクロヘキシル(メタ)アクリレート、1−エチル−1−シクロヘプチル(メタ)アクリレート、1−メチル−1−シクロペンチル(メタ)アクリレート、1−イソプロピル−1−シクロペンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。下式(a1−2−1)〜(a1−2−6)で表されるモノマーが好ましく、下式(a1−2−3)〜(a1−2−4)で表されるモノマーがより好ましく、下式(a1−2−3)で表されるモノマーがさらに好ましい。

【0040】
(式(IV)で表されるモノマー)

[式(IV)中、
は、ハロゲン原子を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、水素原子又はハロゲン原子を表す。
は、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。
は、炭素数1〜6のアルキル基を表す。
は、単結合又は炭素数1〜20の2価の炭化水素基を表し、該炭化水素基に含まれる−CH−は、−O−、−CO−又は−NH−で置き換わっていてもよい。
sは、1又は2の整数を表す。
tは、0〜2の整数を表す。]
【0041】
アルキル基としては、上記と同じ基が挙げられる。
式(IV)で表されるモノマーとしては、下記のモノマーが挙げられ、好ましくはアセトキシスチレンであり、より好ましくはp−アセトキシスチレンである。

【0042】

【0043】

【0044】

【0045】
(重合開始剤)
重合開始剤は、公知の化合物を使用できる。具体的には、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)などのアゾ系化合物;ラウリルパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシピバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシドなどの有機過酸化物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などの無機過酸化物等が挙げられる。
【0046】
なかでも、アゾ系化合物が好ましく、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)及びジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)がより好ましく、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)がさらに好ましい。また、重合開始剤を2種併用する場合、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)と2,2’−アゾビスイソブチロニトリルとの組み合わせ、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)と2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)との組み合わせ、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)と1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)との組み合わせ、及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)とジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)との組み合わせが好ましく、そのモル比率は1:1〜1:10の範囲が好ましい。
【0047】
(第2工程)
第2工程では、第1工程で得られた生成物の−O−CO−Rを−OHにする。第1工程の後に第2工程を経て、高分散樹脂を製造することができる。
−O−CO−Rのうち、−OHになる基の割合は、−O−CO−Rの総量に対して、例えば80〜100%であり、好ましくは90〜100%である。
【0048】
第1工程で得られた生成物を加溶媒分解して、−O−CO−Rを−OHにすることが好ましい。加溶媒分解とは、溶質が溶媒と反応して分解することをいい、溶媒が水の場合は特に加水分解という。
−O−CO−Rを−OHにする方法としては、例えばT.W.グリーン(T.W.Greene)及びP.G.M.ワッツ(P.G.M.Wuts)著、「有機合成の保護基(Protective Groups in Organic Synthesis)」、第四版、ジョン ウィリー アンド サンズ(John Wiley & Sons、ニューヨーク、2007年およびその引用文献に記載された方法により行うことができる。
【0049】
また特開平6−266112記載のように、例えば式(III)で表されるモノマーに由来する構造単位及び式(IV)で表されるモノマーに由来する構造単位を有する生成物を、非水性溶剤中で、脱アシル化して−O−CO−Rを−OHにして、式(I)で表される構造単位及び式(II)で表される構造単位を有する高分散樹脂を得ることができる。
非水性溶剤としては、アルコール等が挙げられ、アルコールとしては、メタノール及びプロパノール等が挙げられる。
脱アシル化は、塩基の存在下で行われることが好ましい。塩基としては、ジメチルアミノピリジン、水酸化アンモニウム、炭酸アンモニウム、及び重炭酸アンモニウム等が挙げられる。
塩基で処理した場合、常法に従い塩基を中和し、その後貧溶媒を用いて晶析を行いろ過・乾燥工程を経て樹脂を得ることができる。又は中和後、任意の溶剤に置換することで、樹脂溶液として得ることができる。任意の溶剤としては、例えばレジスト組成物用の溶剤が挙げられる。また上記工程の途中で溶液をろ過してもよい。
【0050】
<高分散樹脂の製造方法(2)>
式(III)で表されるモノマー及び式(V)で表されるモノマーを溶媒中で混合して、式(III)で表されるモノマー及び式(V)で表されるモノマーを重合させる(以下この工程を「第3工程」という場合がある。)。その後、得られた生成物の−O−CHR−O−Rを−OHにすることにより(以下この工程を「第2工程」という場合がある。)、高分散樹脂を製造することができる。
【0051】
(式(V)で表されるモノマー)

[式(V)中、
は、ハロゲン原子を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、水素原子又はハロゲン原子を表す。
は、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。
は、単結合又は炭素数1〜20の2価の炭化水素基を表し、該炭化水素基に含まれる−CH−は、−O−、−CO−又は−NH−で置き換わっていてもよい。
及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基を表すか、互いに結合して2価の炭化水素基を形成する。
sは、1又は2の整数を表す。
tは、0〜2の整数を表す。]
【0052】
アルキル基としては、上記と同じ基が挙げられる。
2価の炭化水素基としては、炭素数1〜6のアルキレン基が挙げられ、アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基等の直鎖状アルキレン基;
直鎖状アルキレンに、アルキル基(特に、炭素数1〜4のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等)の側鎖を有したもの、例えば、1−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,2−プロピレン基、1−メチル−1,4−ブチレン基、2−メチル−1,4−ブチレン基等の分岐状アルキレン;
等が挙げられる。
及びRが互いに結合して2価の炭化水素基を形成する場合、R及びR−CH−O−と共に形成する環は、3員環から7員環構造が好ましく、具体的には2−フラニルオキシ基、2−ピラニルオキシ基等が挙げられる。
【0053】
式(V)で表されるモノマーとしては、下記のモノマーが挙げられ、好ましくはエトキシエトキシスチレンであり、より好ましくはp−エトキシエトキシスチレンである。

【0054】

【0055】

【0056】

【0057】
高分散樹脂の製造方法(2)における第1工程の反応条件等は、高分散樹脂の製造方法(1)における第1工程と同様の条件等が挙げられる。
【0058】
(第2工程)
第2工程では、第1工程で得られた生成物の−O−CHR−O−Rを−OHにする。第1工程の後に第2工程を経て、高分散樹脂を製造することができる。
−O−CHR−O−Rのうち、−OHになる基の割合は、−O−CHR−O−Rの総量に対して、例えば80〜100%であり、好ましくは90〜100%である。
【0059】
第1工程で得られた生成物を加水分解して、−O−CHR−O−Rを−OHにすることが好ましい。加水分解とは、溶質が水と反応して分解することをいう。
−O−CHR−O−Rを−OHにする方法としては、例えばT.W.グリーン(T.W.Greene)及びP.G.M.ワッツ(P.G.M.Wuts)著、「有機合成の保護基(Protective Groups in Organic Synthesis)」、第四版、ジョン ウィリー アンド サンズ(John Wiley & Sons、ニューヨーク、2007年およびその引用文献に記載された方法により行うことができる。
【0060】
加水分解としては、有機溶剤中アセタール保護基を脱保護反応することで、式(I)で表される構造単位及び式(II)で表される構造単位を有する樹脂を得ることができる。加水分解時の触媒としては、シュウ酸、酢酸、p−トルエンスルホン酸、硫酸、塩酸等が使用できる。また、反応温度としては20〜50℃であり、反応時間としては0.2〜100時間、好ましくは0.5〜20時間である。
加水分解後、常法に従い酸を中和し、その後貧溶媒を用いて晶析を行いろ過・乾燥工程を経て高分散樹脂を得ることができる。又は中和後、任意の溶剤に置換することで、樹脂溶液として得ることができる。任意の溶剤としては、例えばレジスト組成物用の溶剤が挙げられる。また上記工程の途中で溶液をろ過してもよい。
【0061】
〈その他のモノマー〉
高分散樹脂は、上記のモノマー以外のその他の公知のモノマーに由来する構造単位を有していてもよい。
その他のモノマーとしては、好ましくは、式(a2−1)で表されるモノマーが挙げられる。

式(a2−1)中、
a3は、−O−又は−O−(CH2k2−CO−O−を表し、
k2は1〜7の整数を表す。*は−CO−との結合手を表す。
a14は、水素原子又はメチル基を表す。
a15及びRa16は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基又はヒドロキシ基を表す。
o1は、0〜10の整数を表す。
【0062】
a3は、好ましくは、−O−、−O−(CH2f1−CO−O−であり(前記f1は、1〜4の整数である)、より好ましくは−O−である。
a14は、好ましくはメチル基である。
a15は、好ましくは水素原子である。
a16は、好ましくは水素原子又はヒドロキシ基である。
o1は、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0又は1である。
【0063】
式(a2−1)で表されるモノマーとしては、例えば、特開2010−204646号公報に記載されたモノマーが挙げられる。下式(a2−1−1)〜(a2−1−6)で表されるモノマーが好ましく、下式(a2−1−1)〜(a2−1−4)で表されるモノマーがより好ましく、下式(a2−1−1)又は(a2−1−3)で表されるモノマーがさらに好ましい。

【0064】
高分散樹脂における式(a2−1)で表されるモノマーに由来する構造単位の含有率は、高分散樹脂の全単位において、通常3〜40モル%であり、好ましくは5〜35モル%であり、より好ましくは5〜30モル%である。
【0065】
その他のモノマーとしては、好ましくは、式(a3−1)、式(a3−2)又は式(a3−3)で表されるモノマーが挙げられる。

[式(a3−1)〜式(a3−3)中、
a4〜La6は、それぞれ独立に、−O−又は−O−(CH2k3−CO−O−を表す。
k3は1〜7の整数を表す。*は−CO−との結合手を表す。
a18〜Ra20は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
a21は、炭素数1〜4のアルキル基を表す。
p1は0〜5の整数を表す。
a22及びRa23は、それぞれ独立に、カルボキシ基、シアノ基又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
q1及びr1は、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。p1、q1又はr1が2以上のとき、それぞれ、複数のRa21、Ra22又はRa23は、互いに同一でも異なってもよい。]
【0066】
式(a3−1)〜式(a3−3)では、La4〜La6としては、La3で説明したものが挙げられる。
a4〜La6は、それぞれ独立に、−O−又は−O−(CH2k3−CO−O−であることが好ましく、より好ましくは−O−である。k3は、好ましくは1〜4の整数であり、より好ましくは1である。
a18〜Ra21は、好ましくはメチル基である。
a22及びRa23は、それぞれ独立に、好ましくはカルボキシ基、シアノ基又はメチル基である。
p1〜r1は、それぞれ独立に、好ましくは0〜2、より好ましくは0又は1である。
【0067】
式(a3−1)、式(a3−2)又は式(a3−3)で表されるモノマーとしては、特開2010−204646号公報に記載されたモノマーが挙げられる。下式(a3−1−1)〜(a3−1−4)、(a3−2−1)〜(a3−2−4)、(a3−3−1)〜(a3−3−4)で表されるモノマーが好ましく、下式(a3−1−1)〜(a3−1−2)、(a3−2−3)〜(a3−2−4)で表されるモノマーがより好ましく、下式(a3−1−1)又は(a3−2−3)で表されるモノマーがさらに好ましい。

【0068】
高分散樹脂に式(a3−1)、式(a3−2)又は式(a3−3)で表されるモノマーに由来する構造単位の含有率は、高分散樹脂の全単位において、通常5〜50モル%であり、好ましくは10〜45モル%であり、より好ましくは15〜40モル%である。
【0069】
高分散樹脂としては、具体的に下記の樹脂が挙げられる。

【0070】

【0071】

【0072】

【0073】

【0074】

【0075】

【0076】

【0077】

【0078】

【0079】

【0080】

【0081】
高分散樹脂の重量平均分子量は、例えば、800〜20000であり、900〜16000が好ましく、1000〜9000がより好ましい。
また、高分散樹脂の分散度は、例えば、1.4〜3であり、1.5〜2が好ましく、1.6〜1.9がより好ましい。
【0082】
<工程(1)>
工程(1)では、高分散樹脂と第1のケトン溶剤とを混合して、高分散樹脂及び第1のケトン溶剤からなる溶液を得る。
第1のケトン溶剤としては、アセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジイソブチルケトン、イソホロンが挙げられ、アセトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンが好ましく、アセトンがより好ましい。
第1のケトン溶剤の使用量は、高分散樹脂に対して、例えば1重量倍〜20重量倍であり、好ましくは1.5重量倍〜10重量倍であり、より好ましくは2重量倍〜5重量倍である。
【0083】
<工程(2)>
工程(2)では、工程(1)で得られた溶液と脂肪族エーテル溶剤とを混合後、不溶分を除去して濃縮して濃縮物を得る。
脂肪族エーテル溶剤としては、メチル-tert-ブチルエーテル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソランが挙げられ、メチル-tert-ブチルエーテル、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルが好ましく、メチル-tert-ブチルエーテルがより好ましい。
脂肪族エーテル溶剤の使用量は、高分散樹脂に対して、例えば2重量倍〜1000重量倍であり、好ましくは5重量倍〜500重量倍であり、より好ましくは20重量倍〜100重量倍である。
不溶分の除去は、例えばろ過、デカンテーション、遠心分離により行なことができ、ろ過により行なうことが好ましい。
濃縮は、例えば常圧蒸留、減圧蒸留により行なうことができ、減圧蒸留により行なうことが好ましい。
【0084】
<工程(3)>
工程(3)では、工程(2)で得られた濃縮物を第2のケトン溶剤に溶解させる。
第2のケトン溶剤としては、メチルイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルアミルケトン、ジイソブチルケトン、イソホロンが挙げられ、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトンが好ましく、メチルイソブチルケトンがより好ましい。
第2のケトン溶剤の使用量は、使用した元の高分散樹脂に対して、例えば1重量%溶液〜80重量%溶液であり、好ましくは5重量%溶液〜50重量%溶液であり、より好ましくは10重量%溶液〜40重量%溶液である。
【0085】
<工程(4)>
工程(4)では、工程(3)で得られた溶液と脂肪族炭化水素溶剤とを混合後、低分散樹脂からなる不溶分を得る。
脂肪族炭化水素溶剤としては、n−へプタン、n−ヘキサンが挙げられ、n−へプタンがより好ましい。
脂肪族炭化水素溶剤の使用量は、第2のケトン溶剤に対して、例えば10重量%〜500重量%であり、好ましくは20重量%〜300重量%であり、より好ましくは30重量%〜200重量%である。
【0086】
<低分散樹脂>
低分散樹脂は、高分散樹脂よりも分散度が小さい。
低分散樹脂は、高分散樹脂と同じ構造単位を有する。
低分散樹脂の重量平均分子量は、例えば、800〜20000であり、900〜150000が好ましく、1000〜9000がより好ましい。
また、低分散樹脂の分散度は、例えば、1〜1.7であり、1.2〜1.6が好ましく、1.3〜1.5がより好ましい。
【0087】
本発明のレジスト組成物は、低分散樹脂及び酸発生剤を含有する。
レジスト組成物中の低分散樹脂の含有率は、好ましくは、組成物の固形分中80質量%以上である。
なお本明細書において「組成物中の固形分」とは、後述する溶剤(E)を除いたレジスト組成物成分の合計を意味する。組成物中の固形分及びこれに対する低分散樹脂の含有率は、例えば、液体クロマトグラフィー又はガスクロマトグラフィーなどの公知の分析手段で測定することができる。
【0088】
〈酸発生剤(以下「酸発生剤(B)」という場合がある)〉
酸発生剤(B)は、非イオン系とイオン系とに分類される。非イオン系酸発生剤には、有機ハロゲン化物、スルホネートエステル類(例えば2−ニトロベンジルエステル、芳香族スルホネート、オキシムスルホネート、N−スルホニルオキシイミド、N−スルホニルオキシイミド、スルホニルオキシケトン、DNQ 4−スルホネート)、スルホン類(例えばジスルホン、ケトスルホン、スルホニルジアゾメタン)等が含まれる。イオン系酸発生剤は、オニウムカチオンを含むオニウム塩(例えばジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩)が代表的である。オニウム塩のアニオンとしては、スルホン酸アニオン、スルホニルイミドアニオン、スルホニルメチドアニオン等がある。
【0089】
酸発生剤(B)としては、例えば特開昭63−26653号、特開昭55−164824号、特開昭62−69263号、特開昭63−146038号、特開昭63−163452号、特開昭62−153853号、特開昭63−146029号や、米国特許第3,779,778号、米国特許第3,849,137号、独国特許第3914407号、欧州特許第126,712号等に記載の放射線によって酸を発生する化合物を使用できる。
【0090】
酸発生剤(B)は、好ましくはフッ素含有酸発生剤であり、より好ましくは式(B1)で表されるスルホン酸塩である。
【0091】

[式(B1)中、
1及びQ2は、それぞれ独立に、フッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。
b1は、単結合又は2価の炭素数1〜17の炭化水素基を表し、前記2価の炭化水素基に含まれる−CH−は、−O−又は−CO−で置き換わっていてもよい。
Yは、置換基を有していてもよい炭素数1〜18のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数3〜18の脂環式炭化水素基を表し、前記アルキル基及び前記脂環式炭化水素基に含まれる−CH−は、−O−、−SO−又は−CO−で置き換わっていてもよい。
+は、有機カチオンを表す。]
【0092】
ペルフルオロアルキル基としては、例えば、ペルフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、ペルフルオロブチル基、ペルフルオロsec−ブチル基、ペルフルオロtert−ブチル基、ペルフルオロペンチル基、ペルフルオロヘキシル基などが挙げられる。
1及びQ2は、それぞれ独立に、好ましくはペルフルオロメチル基又はフッ素原子であり、より好ましくはフッ素原子である。
【0093】
2価の炭化水素基としては、直鎖状アルキレン基、分岐状アルキレン基、単環式又は多環式の脂環式炭化水素基が挙げられ、これらの基のうち2種以上を組み合わせたものでもよい。
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基、ノナン−1,9−ジイル基、デカン−1,10−ジイル基、ウンデカン−1,11−ジイル基、ドデカン−1,12−ジイル基、トリデカン−1,13−ジイル基、テトラデカン−1,14−ジイル基、ペンタデカン−1,15−ジイル基、ヘキサデカン−1,16−ジイル基、ヘプタデカン−1,17−ジイル基、メチリデン基、エチリデン基、プロピリデン基、2−プロピリデン基等の直鎖状アルキレン基;
直鎖状アルキレンに、アルキル基(特に、炭素数1〜4のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等)の側鎖を有したもの、例えば、1−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,2−プロピレン基、1−メチル−1,4−ブチレン基、2−メチル−1,4−ブチレン基等の分岐状アルキレン;
1,3−シクロブチレン基、1,3−シクロペンチレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,5−シクロオクチレン基等のシクロアルキレン基である単環式の脂環式炭化水素基;
1,4−ノルボルニレン基、2,5−ノルボルニレン基、1,5−アダマンチレン基、2,6−アダマンチレン基等の多環式の脂環式炭化水素基等が挙げられる。
【0094】
b1の炭化水素基に含まれる−CH−が−O−又は−CO−で置き換わった基としては、例えば、式(b1−1)〜式(b1−6)が挙げられる。Lb1は、好ましくは式(b1−1)〜式(b1−4)のいずれか、さらに好ましくは式(b1−1)又は式(b1−2)が挙げられる。なお、式(b1−1)〜式(b1−6)は、その左右を式(B1)に合わせて記載しており、左側でC(Q1)(Q2)−と結合し、右側で−Yと結合する。以下の式(b1−1)〜式(b1−6)の具体例も同様である。
【0095】

式(b1−1)〜式(b1−6)中、
b2は、単結合又は炭素数1〜15の炭化水素基を表す。
b3は、単結合又は炭素数1〜12の炭化水素基を表す。
b4は、炭素数1〜13の炭化水素基を表す。但しLb3及びLb4の炭素数上限は13である。
b5は、炭素数1〜15の炭化水素基を表す。
b6及びLb7は、それぞれ独立に、炭素数1〜15の炭化水素基を表す。但しLb6及びLb7の炭素数上限は16である。
b8は、炭素数1〜14の炭化水素基を表す。
b9及びLb10は、それぞれ独立に、炭素数1〜11の炭化水素基を表す。但しLb9及びLb10の炭素数上限は12である。
中でも、好ましくは式(b1−1)で表される2価の基であり、より好ましくは、Lb2が単結合又は−CH−である式(b1−1)で表される2価の基である。
【0096】
式(b1−1)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0097】
式(b1−2)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0098】
式(b1−3)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0099】
式(b1−4)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0100】
式(b1−5)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0101】
式(b1−6)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0102】
Yのアルキル基としては、好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。
アルキル基及び脂環式炭化水素基の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基、ヒドロキシ基含有炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜16の脂環式炭化水素基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基、炭素数7〜21のアラルキル基、炭素数2〜4のアシル基、グリシジルオキシ基又は−(CH2j2−O−CO−Rb1基(式中、Rb1は、炭素数1〜16のアルキル基、炭素数3〜16の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基を表す。j2は、0〜4の整数を表す。)などが挙げられる。Yの置換基であるアルキル基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基及びアラルキル基等は、さらに置換基を有していてもよい。ここでの置換基は、例えば、アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基等が挙げられる。
ヒドロキシ基含有アルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基などが挙げられる。
【0103】
特に、Yの脂環式炭化水素基としては、式(Y1)〜式(Y26)で表される基が挙げられる。

【0104】
なかでも、好ましくは式(Y1)〜式(Y19)のいずれかで表される基であり、より好ましくは式(Y11)、式(Y14)、式(Y15)又は式(Y19)で表される基であり、さらに好ましくは式(Y11)又は式(Y14)で表される基である。
【0105】
Yは、好ましくは置換基を有していてもよいアダマンチル基であり、より好ましくはアダマンチル基又はオキソアダマンチル基である。
【0106】
式(B1)で表される塩におけるスルホン酸アニオンとしては、好ましくは、式(b1−1−1)〜式(b1−1−1−9)で表されるアニオンが挙げられる。以下の式においては、置換基の定義は上記と同じ意味であり、置換基Rb2及びRb3は、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基(好ましくは、メチル基)を表す。
式(B1)で表される塩におけるスルホン酸アニオンとしては、具体的には、特開2010−204646号公報に記載されたアニオンが挙げられる。
【0107】

【0108】
酸発生剤(B)に含まれるカチオンは、オニウムカチオン、例えば、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ベンゾチアゾリウムカチオン、ホスホニウムカチオンなどが挙げられ、好ましくは、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンであり、より好ましくは、アリールスルホニウムカチオンである。
【0109】
式(B1)中のZ+は、好ましくは式(b2−1)〜式(b2−4)のいずれかで表される。
【0110】

【0111】
これらの式(b2−1)〜式(b2−4)において、
b4〜Rb6は、それぞれ独立に、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基を表す。前記アルキル基は、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基で置換されていてもよく、前記脂環式炭化水素基は、ハロゲン原子、炭素数2〜4のアシル基又はグリシジルオキシ基で置換されていてもよく、前記芳香族炭化水素基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数1〜12のアルコキシ基で置換されていてもよい。
【0112】
b7及びRb8は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表す。
m2及びn2は、それぞれ独立に0〜5の整数を表す。
【0113】
b9及びRb10は、それぞれ独立に、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数3〜18の脂環式炭化水素基を表す。
b11は、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基を表す。
b9〜Rb11のアルキル基は、好ましくは炭素数1〜12であり、脂環式炭化水素基は、好ましくは炭素数3〜18、より好ましくは炭素数4〜12である。
b12は、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基を表す。前記芳香族炭化水素基は、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数1〜12のアルキルカルボニルオキシ基で置換されていてもよい。
b9とRb10と、及びRb11とRb12とは、それぞれ独立に、互いに結合して3員環〜12員環(好ましくは3員環〜7員環)を形成していてもよく、これらの環の−CH−は、−O−、−S−又は−CO−で置き換わっていてもよい。
【0114】
b13〜Rb18は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表す。
b11は、−S−又は−O−を表す。
o2、p2、s2、及びt2は、それぞれ独立に、0〜5の整数を表す。
q2及びr2は、それぞれ独立に、0〜4の整数を表す。
u2は0又は1を表す。
o2〜t2のいずれかが2であるとき、それぞれ、複数のRb13〜Rb18のいずれかは互いに同一でも異なってもよい。
【0115】
アルキルカルボニルオキシ基としては、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基、sec−ブチルカルボニルオキシ基、tert−ブチルカルボニルオキシ基、ペンチルカルボニルオキシ基、ヘキシルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基及び2−エチルヘキシルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0116】
アルキル基としては、好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基及び2−エチルヘキシル基が挙げられる。
脂環式炭化水素基としては、好ましくは、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロデシル基、2−アルキル−2−アダマンチル基、1−(1−アダマンチル)−1−アルキル基、及びイソボルニル基が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、好ましくは、フェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−シクロへキシルフェニル基、4−メトキシフェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基が挙げられる。
置換基が芳香族炭化水素基であるアルキル基(アラルキル基)としては、ベンジル基などが挙げられる。
b9及びRb10が形成する環としては、例えば、チオラン−1−イウム環(テトラヒドロチオフェニウム環)、チアン−1−イウム環、1,4−オキサチアン−4−イウム環などが挙げられる。
b11及びRb12が形成する環としては、例えば、オキソシクロヘプタン環、オキソシクロヘキサン環、オキソノルボルナン環、オキソアダマンタン環などが挙げられる。
【0117】
カチオン(b2−1)〜カチオン(b2−4)の中でも、好ましくは、カチオン(b2−1)であり、より好ましくは、式(b2−1−1)で表されるカチオンであり、特に好ましくは、トリフェニルスルホニウムカチオン(式(b2−1−1)中、v2=w2=x2=0)である。
【0118】

式(b2−1−1)中、
b19〜Rb21は、それぞれ独立に、ハロゲン原子(より好ましくはフッ素原子)、ヒドロキシ基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表す。
アルキル基は、好ましくは炭素数1〜12であり、脂環式炭化水素基は、好ましくは炭素数4〜18である。
前記アルキル基は、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基で置換されていてもよい。
前記脂環式炭化水素基は、ハロゲン原子、炭素数2〜4のアシル基又はグリシジルオキシ基で置換されていてもよい。
v2〜x2は、それぞれ独立に0〜5の整数(好ましくは0又は1)を表す。v2〜x2のいずれかが2以上のとき、それぞれ、複数のRb19〜Rb21のいずれかは、互いに同一でも異なってもよい。
なかでも、Rb19〜Rb21は、それぞれ独立に、好ましくは、ハロゲン原子(より好ましくはフッ素原子)、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基、又は炭素数1〜12のアルコキシ基である。
【0119】
カチオンとしては、具体的には、特開2010−204646号公報に記載されたカチオンが挙げられる。
【0120】
酸発生剤(B1)は、上述のスルホン酸アニオン及び有機カチオンの組合せである。上述のアニオンとカチオンとは任意に組み合わせることができ、好ましくは、アニオン(b1−1−1)〜アニオン(b1−1−9)のいずれかとカチオン(b2−1−1)との組合せ、並びにアニオン(b1−1−3)〜(b1−1−5)のいずれかとカチオン(b2−3)との組合せが挙げられる。
【0121】
酸発生剤(B1)としては、好ましくは、式(B1−1)〜式(B1−17)で表される塩が挙げられ、より好ましくは、トリフェニルスルホニウムカチオンを含む酸発生剤(B1−1)、(B1−2)、(B1−6)、(B1−11)、(B1−12)、(B1−13)及び(B1−14)が挙げられる。
【0122】

【0123】

【0124】

【0125】

【0126】
酸発生剤(B)の含有率は、低分散樹脂において、好ましくは1質量%以上(より好ましくは3質量%以上)、好ましくは30質量%以下(より好ましくは25質量%以下)である。
【0127】
〈クエンチャー(以下「クエンチャー(C)」という場合がある)〉
本発明のレジスト組成物はクエンチャー(C)を含むことが好ましい。
クエンチャー(C)は、好ましくは塩基性の含窒素有機化合物であることが好ましく、例えばアミン及びアンモニウム塩が挙げられる。アミンとしては、脂肪族アミン及び芳香族アミンが挙げられる。脂肪族アミンとしては、1級アミン、2級アミン及び3級アミンが挙げられる。クエンチャー(C)として、好ましくは、式(C1)で表される化合物〜式(C9)で表される化合物が挙げられ、より好ましくは式(C1−1)で表される化合物及び式(C9)で表される化合物が挙げられる。
【0128】

[式(C1)中、Rc1、Rc2及びRc3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数5〜10の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表し、該アルキル基及び該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基、アミノ基又は炭素数1〜6のアルコキシ基で置換されていてもよく、該芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数5〜10の脂環式炭化水素又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基で置換されていてもよい。]
【0129】

[式(C1−1)中、Rc2及びRc3は、上記と同じ意味を表す。
c4は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数5〜10の脂環式炭化水素又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表す。
m3は0〜3の整数を表し、m3が2以上のとき、複数のRc4は、互いに同一でも異なってもよい。]
【0130】

[式(C2)、式(C3)及び式(C4)中、Rc5、Rc6、Rc7及びRc8は、それぞれ独立に、Rc1と同じ意味を表す。
c9は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6の脂環式炭化水素基又は炭素数2〜6のアルカノイル基を表す。
n3は0〜8の整数を表し、n3が2以上のとき、複数のRc9は、互いに同一でも異なってもよい。]
【0131】

[式(C5)及び式(C6)中、Rc10、Rc11、Rc12、Rc13及びRc16は、それぞれ独立に、Rc1と同じ意味を表す。
c14、Rc15及びRc17は、それぞれ独立に、Rc4と同じ意味を表す。
o3及びp3は、それぞれ独立に0〜3の整数を表し、o3又はp3が2以上であるとき、それぞれ、複数のRc14及びRc15は互いに同一でも異なってもよい。
c1は、炭素数1〜6のアルキレン基、−CO−、−C(=NH)−、−S−又はこれらを組合せた2価の基を表す。]
【0132】

[式(C7)及び式(C8)中、Rc18、Rc19及びRc20は、それぞれ独立に、Rc4と同じ意味を表す。
q3、r3及びs3は、それぞれ独立に0〜3の整数を表し、q3、r3及びs3が2以上であるとき、それぞれ、複数のRc18、Rc19及びRc20は互いに同一でも異なってもよい。
c2は、単結合又は炭素数1〜6のアルキレン基、−CO−、−C(=NH)−、−S−又はこれらを組合せた2価の基を表す。]
【0133】

[式(C9)中、Rc21、Rc22、Rc23及びRc24は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20の脂環式炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基を表す。
c25は、置換基を有していてもよいC1〜C36炭化水素基を表し、該炭化水素基はヘテロ原子を含んでいてもよい。]
【0134】
式(C1)で表される化合物としては、1−ナフチルアミン、2−ナフチルアミン、アニリン、ジイソプロピルアニリン、2−,3−又は4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、ジフェニルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、メチルジブチルアミン、メチルジペンチルアミン、メチルジヘキシルアミン、メチルジシクロヘキシルアミン、メチルジヘプチルアミン、メチルジオクチルアミン、メチルジノニルアミン、メチルジデシルアミン、エチルジブチルアミン、エチルジペンチルアミン、エチルジヘキシルアミン、エチルジヘプチルアミン、エチルジオクチルアミン、エチルジノニルアミン、エチルジデシルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、トリス〔2−(2−メトキシエトキシ)エチル〕アミン、トリイソプロパノールアミンエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノ−1,2−ジフェニルエタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン等が挙げられ、好ましくはジイソプロピルアニリンが挙げられ、特に好ましくは2,6−ジイソプロピルアニリンが挙げられる。
【0135】
式(C2)で表される化合物としては、ピペラジン等が挙げられる。
式(C3)で表される化合物としては、モルホリン等が挙げられる。
式(C4)で表される化合物としては、ピペリジン及び特開平11−52575号公報に記載されているピペリジン骨格を有するヒンダードアミン化合物等が挙げられる。
式(C5)で表される化合物としては、2,2’−メチレンビスアニリン等が挙げられる。
式(C6)で表される化合物としては、イミダゾール、4−メチルイミダゾール等が挙げられる。
式(C7)で表される化合物としては、ピリジン、4−メチルピリジン等が挙げられる。
式(C8)で表される化合物としては、1,2−ジ(2−ピリジル)エタン、1,2−ジ(4−ピリジル)エタン、1,2−ジ(2−ピリジル)エテン、1,2−ジ(4−ピリジル)エテン、1,3−ジ(4−ピリジル)プロパン、1,2−ジ(4−ピリジルオキシ)エタン、ジ(2−ピリジル)ケトン、4,4’−ジピリジルスルフィド、4,4’−ジピリジルジスルフィド、2,2’−ジピリジルアミン、2,2’−ジピコリルアミン、ビピリジン等が挙げられる。
【0136】
式(C9)で表される化合物に含まれるカチオンとしては、式(IA−1)〜式(IA−8)で表されるカチオンが挙げられる。

【0137】
式(C9)で表される化合物に含まれるアニオンとしては、式(IB−1)〜式(IB−16)で表されるカチオンが挙げられる。

【0138】

【0139】
式(C9)で表される化合物としては、式(C9−1)〜式(C9−55)で表される化合物が挙げられ、式(C9−1)〜式(C9−5)で表される化合物及び式(C9−12)〜式(C9−30)で表される化合物が好ましく、式(C9−12)〜式(C9−21)で表される化合物がより好ましい。
【0140】
【表1】

【0141】
【表2】

【0142】
アンモニウム塩としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトライソプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラオクチルアンモニウムヒドロキシド、フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、3−(トリフルオロメチル)フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−ブチルアンモニウムサリチラート及びコリン等が挙げられる。
【0143】
クエンチャー(C)の含有率は、レジスト組成物の固形分量を基準に、好ましくは、0.01〜5質量%程度であり、より好ましく0.01〜3質量%程度であり、特に好ましく0.01〜1質量%程度である。
【0144】
〈溶剤(以下「溶剤(E)」という場合がある〉
本発明のレジスト組成物は、溶剤(E)を含んでいてもよい。溶剤(E)の含有率は、例えばレジスト組成物中90質量%以上、好ましくは92質量%以上、より好ましくは94質量%以上であり、例えば99.9質量%以下、好ましくは99質量%以下である。
溶剤(E)の含有率は、例えば液体クロマトグラフィー又はガスクロマトグラフィー等の公知の分析手段で測定できる。
【0145】
溶剤(E)としては、例えば、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートのようなグリコールエーテルエステル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルのようなグリコールエーテル類;乳酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル及びピルビン酸エチルのようなエステル類;アセトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン及びシクロヘキサノンのようなケトン類;γ−ブチロラクトンのような環状エステル類;等を挙げることができる。溶剤(E)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0146】
〈その他の成分(以下「その他の成分(F)」という場合がある)〉
本発明のレジスト組成物は、必要に応じて、その他の成分(F)を含有していてもよい。成分(F)に特に限定はなく、レジスト分野で公知の添加剤、例えば、増感剤、溶解抑止剤、界面活性剤、安定剤、染料等を利用できる。
【0147】
<レジスト組成物及びその調製方法>
レジスト組成物は、低分散樹脂、酸発生剤(B)及び溶剤(E)を混合することで、又は、低分散樹脂、酸発生剤(B)、クエンチャー(C)及び溶剤(E)を混合することで調製することができる。かかる混合において、その混合順は任意であり、特に限定されるものではない。混合する際の温度は、10〜40℃の範囲から、樹脂などの種類や樹脂等の溶剤(E)に対する溶解度等に応じて適切な温度範囲を選ぶことができる。混合時間は、混合温度に応じて、0.5〜24時間の中から適切な時間を選ぶことができる。なお、混合手段も特に制限はなく、攪拌混合などを用いることができる。
【0148】
このように、低分散樹脂、酸発生剤(B)及び溶剤(E)、並びに必要に応じて用いられるクエンチャー(C)又は成分(F)の各々を好ましい含有量で混合した後は、孔径0.2μm程度のフィルターを用いてろ過等することにより、レジスト組成物は調製できる。
【0149】
〈レジストパターンの製造方法〉
本発明のレジストパターンの製造方法は、
(1)本発明のレジスト組成物を基板上に塗布する工程、
(2)塗布後の組成物を乾燥させて組成物層を形成する工程、
(3)組成物層を露光する工程、
(4)露光後の組成物層を加熱する工程、
(5)加熱後の組成物層を現像する工程を含む。
【0150】
レジスト組成物の基体上への塗布は、スピンコーター等、通常、用いられる装置によって行うことができる。
【0151】
塗布後の組成物を乾燥させて溶剤を除去する。溶剤の除去は、例えば、ホットプレート等の加熱装置を用いて溶剤を蒸発させることにより行われるか、あるいは減圧装置を用いて行われ、溶剤が除去された組成物層が形成される。この場合の温度は、例えば、50〜200℃程度が例示される。また、圧力は、1〜1.0×10Pa程度が例示される。
【0152】
得られた組成物層は、露光機を用いて露光する。露光機は、液浸露光機であってもよい。この際、通常、求められるパターンに相当するマスクを介して露光が行われる。露光光源としては、KrFエキシマレーザ(波長248nm)、ArFエキシマレーザ(波長193nm)、F2レーザ(波長157nm)のような紫外域のレーザ光を放射するもの、固体レーザ光源(YAG又は半導体レーザ等)からのレーザ光を波長変換して遠紫外域または真空紫外域の高調波レーザ光を放射するもの等、種々のものを用いることができる。
【0153】
露光後の組成物層は、脱保護基反応を促進するための加熱処理が行われる。加熱温度としては、通常50〜200℃程度、好ましくは70〜150℃程度である。
加熱後の組成物層を、現像装置を用いて、通常、アルカリ現像液を利用して現像する。
ここで用いられるアルカリ現像液は、この分野で用いられる各種のアルカリ性水溶液であればよい。例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドや(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド(通称コリン)の水溶液等が挙げられる。
現像後、超純水でリンスし、基板及びパターン上に残った水を除去することが好ましい。
【0154】
〈用途〉
本発明のレジスト組成物は、KrFエキシマレーザ露光用のレジスト組成物、ArFエキシマレーザ露光用のレジスト組成物、EB用のレジスト組成物又はEUV露光機用のレジスト組成物として好適である。
【実施例】
【0155】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。
実施例及び比較例中、含有量及び使用量を表す%及び部は、特記ないかぎり質量基準である。
重量平均分子量は、以下の条件でポリスチレンを標準品として、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(東ソー株式会社製HLC−8120GPC型)により求めた値である。
カラム:TSKgel G4000HXL + TSKgel G2000HXL + guardcolumn(東ソー社製)
溶離液:テトラヒドロフラン
流量:1.0mL/min
検出器:RI検出器
カラム温度:40℃
注入量:100μL
分子量標準:標準ポリスチレン(東ソー社製)

【0156】
比較例1:樹脂H1の合成
冷却管、攪拌機を備えた四つ口フラスコに1,4−ジオキサン65.31部を仕込み、窒素置換後87℃まで昇温した。そこへp−(1−エトキシエトキシ)スチレン60.00部、メタクリル酸2−メチル−2−アダマンチル36.56部、メタクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル12.29部及びアゾビスイソブチロニトリル7.69部を1,4−ジオキサン97.97部に溶解した溶液を1時間かけて滴下した。その後87℃を保ったまま6時間攪拌を継続した。冷却したメタノール991部及びイオン交換水425部の混合溶液に、得られた反応液を注ぎ樹脂を再沈させた。ろ過後得られた樹脂をメチルイソブチルケトン327部に溶解し、p−トルエンスルホン酸2.18部をイオン交換水218部に溶かした溶液を加え6時間撹拌した。分液後、有機層をイオン交換水218部で3度洗浄後、メチルイソブチルケトン218部を加え、436部になるまで濃縮した。この溶液をn−ヘプタン1415部に注ぎ樹脂を析出させた。析出した樹脂を濾取し減圧乾燥して、重量平均分子量約4.23×10、分散1.610の共重合体を82.56部得た。これを樹脂H1とする。
【0157】
実施例1:樹脂A1の合成
樹脂H1 7.36部をアセトン12.72部に溶解させた。この溶液をメチル−t−ブチルエーテル368部に加え1時間撹拌した。析出物を濾別し、液部を濃縮した。濃縮物にメチルイソブチルケトン37部を加えた。この溶液にn−ヘプタン30部を加え1時間撹拌した。析出物を濾取し減圧乾燥する事で重量平均分子量約3.71×10、分散1.290の共重合体を3.42部得た。これを樹脂A1とする。
樹脂A1は、p−ヒドロキシスチレン、メタクリル酸2−メチル−2−アダマンチル及びメタクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル各々に由来する構造単位を有する樹脂である。
【0158】
以下の表の各成分を混合して溶解し、さらに孔径0.2μmのフッ素樹脂製フィルターで濾過して、レジスト組成物を調製した。
【0159】
【表3】

【0160】
<樹脂>
樹脂A1
樹脂H1
【0161】
<酸発生剤>
酸発生剤B1

【0162】
<クエンチャー>
化合物C1:

【0163】
<溶剤>
溶剤E1:
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 430.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 150.0部
γ−ブチロラクトン 5.0部
【0164】
電子線用レジスト組成物としての評価
シリコンウェハーを、ダイレクトホットプレート上にて、ヘキサメチルジシラザンを用いて110℃で60秒処理した上で、レジスト組成物を乾燥後の膜厚が0.06μmとなるようにスピンコートした。レジスト組成物塗布後は、ダイレクトホットプレート上にて、表3記載の温度で60秒間プリベーク(PB)した。こうしてレジスト膜を形成したそれぞれのウェハーに、電子線描画機〔(株)日立製作所製の「HL−800D
50keV」を用い、露光量を段階的に変化させてラインアンドスペースパターンを露光した。露光後は、ホットプレート上にて表3記載の温度で60秒間ポストエキスポジャーベーク(PEB)を行い、さらに2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間のパドル現像を行った。
【0165】
LWR評価:各レジスト膜において、0.1μmのラインアンドスペースパターンが1:1におけるLWRを、SuMMITソフトウエア(EUV Technology社)を使用して測定し、パターンの側壁のがたつきが4.0nm未満のものを○、4.0nm以上4.3nm未満のものを△、4.3nm以上のものを×とした。数値が小さい方がパターンの幅のがたつきが小さく性能が良好であることを示す。
【0166】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0167】
本発明の低分散樹脂の製造方法により得られる樹脂を含むレジスト組成物から、優れたラインウィドゥスラフネス(LWR)を有するパターンを製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程(1)〜工程(4)を含むレジスト組成物用低分散樹脂の製造方法。
工程(1):高分散樹脂と第1のケトン溶剤とを混合して、高分散樹脂及び第1のケトン溶剤からなる溶液を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた溶液と脂肪族エーテル溶剤とを混合後、不溶分を除去して濃縮して濃縮物を得る工程
工程(3):工程(2)で得られた濃縮物を第2のケトン溶剤に溶解させる工程
工程(4):工程(3)で得られた溶液と脂肪族炭化水素溶剤とを混合後、高分散樹脂よりも分散度が小さい低分散樹脂からなる不溶分を得る工程
【請求項2】
第1のケトン溶剤がアセトンである請求項1記載のレジスト組成物用低分散樹脂の製造方法。
【請求項3】
脂肪族エーテル溶剤がメチル-tert-ブチルエーテルである請求項1又は2記載のレジスト組成物用低分散樹脂の製造方法。
【請求項4】
第2のケトン溶剤がメチルイソブチルケトンである請求項1〜3のいずれか記載のレジスト組成物用低分散樹脂の製造方法。
【請求項5】
脂肪族炭化水素溶剤がn−へプタンである請求項1〜4のいずれか記載のレジスト組成物用低分散樹脂の製造方法。
【請求項6】
レジスト組成物用低分散樹脂が、式(I)で表される構造単位及び式(II)で表される構造単位を有する樹脂である請求項1〜5のいずれか記載のレジスト組成物用低分散樹脂の製造方法。

[式(I)中、
は、ハロゲン原子を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、水素原子又はハロゲン原子を表す。
、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数3〜20の脂環式炭化水素基を表すか、R及びRは互いに結合して炭素数2〜20の2価の炭化水素基を形成する。
は、単結合又は炭素数1〜20の2価の炭化水素基を表し、該炭化水素基に含まれる−CH−は、−O−、−CO−又は−NH−で置き換わっていてもよい。]

[式(II)中、
は、ハロゲン原子を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、水素原子又はハロゲン原子を表す。
は、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。
は、単結合又は炭素数1〜20の2価の炭化水素基を表し、該炭化水素基に含まれる−CH−は、−O−、−CO−又は−NH−で置き換わっていてもよい。
sは、1又は2の整数を表す。
tは、0〜2の整数を表す。]
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか記載のレジスト組成物用低分散樹脂の製造方法で得られるレジスト組成物用低分散樹脂及び酸発生剤を含有するレジスト組成物。
【請求項8】
(1)請求項7記載のレジスト組成物を基板上に塗布する工程、
(2)塗布後の組成物を乾燥させて組成物層を形成する工程、
(3)組成物層を露光する工程、
(4)露光後の組成物層を加熱する工程、
(5)加熱後の組成物層を現像する工程を含むレジストパターンの製造方法。

【公開番号】特開2012−219163(P2012−219163A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85269(P2011−85269)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】