説明

レジスト組成物及びレジストパターンの製造方法

【課題】リソグラフィー技術を用いたレジストパターン製造では、設計寸法がますます微細化していくことに従い、優れたCD均一性(CDU)を有するレジストパターンを製造し得るレジスト組成物が求められるようになってきた。
【解決手段】以下の(A)及び式(I)で表される塩を含有するレジスト組成物。
(A)酸不安定基を含む第1の構造単位と、ラクトン環を含む第2の構造単位とを有する樹脂;


[式(I)中、Q及びQは、互いに独立に、フッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。nは、0又は1を表す。Lは、単結合又は炭素数1〜10のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基を構成するメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。但し、nが0の場合、Lは単結合ではない。Rは、保護基により保護されたヒドロキシ基、又はヒドロキシ基を表す。Zは、有機カチオンを表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト組成物及びレジストパターンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィー技術を用いた半導体の微細加工に用いられるレジスト組成物は、酸不安定基を有する樹脂と、塩からなる酸発生剤と、溶剤とを含有する。
【0003】
このようなレジスト組成物として例えば、特許文献1には、式(a1−1−2)で表される構造単位、式(a2−1−1)で表される構造単位及び式(a3−1−1)で表される構造単位からなる樹脂と、式(B1)で表される塩と、溶剤とを含むレジスト組成物が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、上記の同様の構造単位からなる樹脂と、式(B2)で表される塩と、溶剤とを含むレジスト組成物が記載されている。



【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−161707号公報
【特許文献2】特開2006−257078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
リソグラフィー技術を用いたレジストパターン製造では、設計寸法がますます微細化していくことに従い、優れたCD均一性(CDU)を有するレジストパターンを製造し得るレジスト組成物が求められるようになってきた。この点では、前記特許文献1及び特許文献2に記載されたレジスト組成物は改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の事情に鑑み、本発明者は鋭意検討した結果、本発明に至った。すなわち、本発明は、以下の発明を含む。
〔1〕以下の(A)及び式(I)で表される塩を含有するレジスト組成物。
(A)酸不安定基を含む第1の構造単位と、ラクトン環を含む第2の構造単位とを有する樹脂;

[式(I)中、
及びQは、互いに独立に、フッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。
nは、0又は1を表す。
は、単結合又は炭素数1〜10のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基を構成するメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。但し、nが0の場合、Lは単結合ではない。
は、保護基により保護されたヒドロキシ基、又はヒドロキシ基を表す。
は、有機カチオンを表す。]
〔2〕前記式(I)のnが1である、前記〔1〕記載のレジスト組成物。
〔3〕前記式(I)のnが1であり、Lが単結合である、前記〔1〕記載のレジスト組成物。
〔4〕前記式(I)のRがヒドロキシ基である、前記〔1〕〜〔3〕のいずれか記載のレジスト組成物。
〔5〕前記式(I)のRが、式(2A)で表される基である、前記〔1〕〜〔4〕のいずれか記載のレジスト組成物。

[式(2A)中、
a61’及びRa62’は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜12の1価の炭化水素基を表し、Ra63’は、炭素数1〜20の1価の炭化水素基を表すか、Ra62’及びRa63’は互いに結合して炭素数2〜20の2価の炭化水素基を形成し、該1価の炭化水素基及び該2価の炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子又は硫黄原子に置き換わってもよい。]
〔6〕前記式(I)のZが、アリールスルホニウムカチオンである、前記〔1〕〜〔5〕のいずれか記載のレジスト組成物。
〔7〕前記(A)が、
前記第2の構造単位として、式(a3−1)、式(a3−2)又は式(a3−3)で表される構造単位を有する樹脂である、前記〔1〕〜〔6〕のいずれか記載のレジスト組成物。

[式(a3−1)中、
a4は、酸素原子又は*−O−(CH2k3−CO−O−(k3は1〜7の整数を表す。)を表す。*はカルボニル基との結合手を表す。
a18は、水素原子又はメチル基を表す。
p1は0〜5の整数を表す。
a21は群S1から選ばれる基であり、p1が2以上の場合、複数のRa21の全部又は一部は同じであってもよい。
式(a3−2)中、
a5は、酸素原子又は*−O−(CH2k3−CO−O−(k3は1〜7の整数を表す。)を表す。*はカルボニル基との結合手を表す。
a19は、水素原子又はメチル基を表す。
q1は、0〜3の整数を表す。
a22は、群S2から選ばれる基であり、q1が2以上の場合、複数のRa22の全部又は一部は同じであってもよい。
式(a3−3)中、
a6は、酸素原子又は*−O−(CH2k3−CO−O−(k3は1〜7の整数を表す。)を表す。*はカルボニル基との結合手を表す。
a20は、水素原子又はメチル基を表す。
r1は、0〜3の整数を表す。
a23は、群S2から選ばれる基であり、r1が2以上の場合、複数のRa23の全部又は一部は同じであってもよい。
群S1は、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基からなり、
群S2は、カルボキシ基、シアノ基及び炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基からなる。]
〔8〕前記(A)が、
第2の構造単位として前記式(a3−2)で表される構造単位を有し、式(a3−2)のLa5が*−O−(CH2k3−CO−O−(k3は前記と同義である。)であり、q1が0である樹脂である、前記〔7〕記載のレジスト組成物。
〔9〕前記(A)が、
第1の構造単位として、式(a1−1)又は式(a1−2)で表される構造単位を有する樹脂である、前記〔1〕〜〔8〕のいずれか記載のレジスト組成物。

[式(a1−1)中、
a1は、酸素原子又は−O−(CH2k1−CO−O−(k1は1〜7の整数を表し、*はカルボニル基との結合手を表す。)で表される基を表す。
a4は、水素原子又はメチル基を表す。
a6は、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基を表す。
m1は0〜14の整数を表す。
式(a1−2)中、
a2は、酸素原子又は−O−(CH2k1−CO−O−(k1は前記と同義である。)で表される基を表す。
a5は、水素原子又はメチル基を表す。
a7は、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基を表す。
n1は0〜10の整数を表す。]
〔10〕前記(A)が、
ヒドロキシアダマンタン−1−イル基を含む構造単位を、第3の構造単位として有する樹脂である、前記〔1〕〜〔9〕のいずれか記載のレジスト組成物。
〔11〕さらに、以下の(X)を含有する、前記〔1〕〜〔10〕のいずれか記載のレジスト組成物。
(X)式(a4−1)で表される構造単位を有する樹脂

[式(a4−1)中、
a41は、炭素数1〜12の1価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜12の1価の芳香族炭化水素基を表し、該1価の脂肪族炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。Aa41は、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルカンジイル基又は式(a−g1)

(式(a−g1)中、
sは0又は1を表す。
a42及びAa44は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基を表す。
a43は、置換基を有していてもよい炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又は単結合を表す。
a41及びXa42は、それぞれ独立に、酸素原子、カルボニル基、カルボニルオキシ基又はオキシカルボニル基を表す。
ただし、Aa42、Aa43、Aa44、Xa41及びXa42の炭素数の合計は6以下である。)
で表される基を表す。
a42は、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基を表す。]
〔12〕さらに、塩基性化合物(C)を含有する、前記〔1〕〜〔11〕のいずれか記載のレジスト組成物。
〔13〕(1)前記〔1〕〜〔12〕のいずれか一項記載のレジスト組成物を基板上に
塗布する工程、
(2)塗布後の組成物を乾燥させて組成物層を形成する工程、
(3)組成物層を用いて露光する工程、
(4)露光後の組成物層を加熱する工程、及び
(5)加熱後の組成物層を現像する工程、
を含むレジストパターンの製造方法。
〔14〕式(I−b)

[式(I−b)中、
及びQは、互いに独立に、フッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。
nは、0又は1を表す。
は、単結合又は炭素数1〜10のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基を構成するメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。但し、nが0の場合、Lは単結合ではない。
は、有機カチオンを表す。]
で表される化合物を還元する工程を有する式(I−a)

[式(I−a)中、Q、Qn、L及びZは、前記と同義である。]
で表される化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のレジスト組成物を用いれば、従来のレジスト組成物に比して、優れたCD均一性(CDU)を有するレジストパターンを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のレジスト組成物(以下、場合により「本レジスト組成物」という。)は、
(A)前記第1の構造単位及び第2の構造単位を有する樹脂(以下、場合により「樹脂(A)」という。)と、
前記式(I)で表される塩(以下、場合により「塩(I)」という。)とを含有することを特徴とする。
また、本レジスト組成物には、さらに必要に応じて、塩基性化合物(以下、場合により「塩基性化合物(C)」という。)、(D)溶剤(以下、場合により「溶剤(D)」という。)を含有していることが好ましい。
以下、本レジスト組成物の構成成分を、樹脂[樹脂(A)及び、必要に応じて、本レジスト組成物に含有される前記(X)(以下、場合により「樹脂(X)」という。)]、酸発生剤[塩(I)及び、必要に応じて、本レジスト組成物に含有される、塩(I)以外の酸発生剤(以下、場合により「酸発生剤(B)」という。)]、必要に応じて本レジスト組成物に含有される塩基性化合物(C)」などの添加剤、並びに溶剤(D)の順に説明し、これらを含有する本レジスト組成物の調製方法、本レジスト組成物を用いるレジストパターンの製造方法を説明する。
【0010】
本明細書では、特に断りのない限り、炭素数を適宜選択しながら、以下の置換基の例示は、同様の置換基を有するいずれの化学構造式においても適用される。脂肪族炭化水素基のうち、アルキル基のように直鎖状又は分岐状をとることができるものは、そのいずれをも含む。立体異性体が存在する場合は、全ての立体異性体を包含する。以下の置換基の例示において、「C」に付して記載した数値は、各々の基の炭素数を示すものである。
さらに、本明細書において、「(メタ)アクリル系モノマー」とは、「CH2=CH−CO−」又は「CH2=C(CH3)−CO−」の構造を有するモノマーの少なくとも1種を意味する。同様に「(メタ)アクリレート」及び「(メタ)アクリル酸」とは、それぞれ「アクリレート及びメタクリレートの少なくとも1種」並びに「アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種」を意味する。
【0011】
炭化水素基とは、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基を包含する。
脂肪族炭化水素基は、鎖式及び環式の双方を含み、特に定義しない限り、鎖式及び脂環式の脂肪族炭化水素基が組み合わせられたものをも包含する。また、これら脂肪族炭化水素基は、その一部に炭素−炭素二重結合を含んでいてもよいが、飽和の基(脂肪族飽和炭化水素基)が好ましい。
鎖式の脂肪族炭化水素基のうち1価のものとしては、典型的にはアルキル基が挙げられる。
アルキル基としては、メチル基(C)、エチル基(C)、プロピル基(C)、ブチル基(C)、ペンチル基(C)、ヘキシル基(C)、ヘプチル基(C)、オクチル基(C)、デシル基(C10)、ドデシル基(C12)、ヘキサデシル基(C14)、ペンタデシル基(C15)、ヘキシルデシル基(C16)、ヘプタデシル基(C17)及びオクタデシル基(C18)などが挙げられる。
鎖式の脂肪族炭化水素基のうち2価のものとしては、アルキル基から水素原子を1個取り去ったアルカンジイル基が挙げられる。
アルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基、ノナン−1,9−ジイル基、デカン−1,10−ジイル基、ウンデカン−1,11−ジイル基、ドデカン−1,12−ジイル基、トリデカン−1,13−ジイル基、テトラデカン−1,14−ジイル基、ペンタデカン−1,15−ジイル基、ヘキサデカン−1,16−ジイル基、ヘプタデカン−1,17−ジイル基、エタン−1,1−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、2−メチルプロパン−1,3−ジイル基、2−メチルプロパン−1,2−ジイル基、ペンタン−1,4−ジイル基、2−メチルブタン−1,4−ジイル基等が挙げられる。
【0012】
環式の脂肪族炭化水素基(以下、場合により「脂環式炭化水素基」という)は、典型的には、シクロアルキル基であり、以下に示す単環式及び多環式のいずれをも包含する。
【0013】
脂環式炭化水素基のうち1価のものとして、単環式の脂肪族炭化水素基は、以下の式(KA−1)〜(KA−7)で表されるシクロアルカンの水素原子を1個取り去った基である。

【0014】
多環式の脂肪族炭化水素基は、以下の式(KA−8)〜(KA−22)で表されるシクロアルカンの水素原子を1個取り去った基である。



【0015】
脂環式炭化水素基のうち2価のものとしては、式(KA−1)〜式(KA−22)の脂環式炭化水素から水素原子を2個取り去った基が挙げられる。
【0016】
脂肪族炭化水素基は置換基を有していてもよい。該置換基としては、その都度定義するが、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アリール基、アラルキル基及びアリールオキシ基などが挙げられる。
ここで、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
アルコキシ基としては、メトキシ基(C)、エトキシ基(C)、プロポキシ基(C)、ブトキシ基(C)、ペンチルオキシ基(C)、ヘキシルオキシ基(C)、ヘプチルオキシ基(C7)、オクチルオキシ基(C8)、デシルオキシ基(C10)及びドデシルオキシ基(C12)などが挙げられる。
アシル基としては、アセチル基(C)、プロピオニル基(C)、ブチリル基(C)、バレイル基(C)、ヘキサノイル基(C)、ヘプタノイル基(C7)、オクタノイル基(C8)、デカノイル基(C10)及びドデカノイル基(C12)などのアルキル基とカルボニル基とが結合したもの並びにベンゾイル基(C7)などのアリール基とカルボニル基とが結合したものが挙げられる。
アシルオキシ基としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基等が挙げられる。
アラルキル基としては、ベンジル基(C7)、フェネチル基(C8)、フェニルプロピル基(C9)、ナフチルメチル基(C11)及びナフチルエチル基(C12)などが挙げられる。
アリールオキシ基としては、フェノキシ基(C)、ナフチルオキシ基(C10)、アントリルオキシ基(C14)、ビフェニルオキシ基(C12)、フェナントリルオキシ基(C14)及びフルオレニルオキシ基(C13)などのアリール基と酸素原子とが結合したものが挙げられる。
【0017】
芳香族炭化水素基のうち1価のものとしては典型的には、アリール基が挙げられる。
アリール基としては、フェニル基(C)、ナフチル基(C10)、アントリル基(C14)、ビフェニル基(C12)、フェナントリル基(C14)及びフルオレニル基(C13)などが挙げられる。2価の芳香族炭化水素基は典型的には、ここに示すアリール基からさらに水素原子を1個取り去ったアリーレン基である。
【0018】
芳香族炭化水素基は置換基を有していてもよい。このような置換基は、その都度定義するが、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルキル基及びアリールオキシ基が挙げられる。これらのうち、アルキル基は、鎖式脂肪族炭化水素基として例示したものと同じであり、芳香族炭化水素基に任意に有する置換基のうち、アルキル基以外のものは、脂肪族炭化水素基の置換基として例示したものと同じものを含む。
【0019】
<樹脂>
本レジスト組成物は、樹脂として、第1の構造単位及び第2の構造単位を有する樹脂(A)を必須成分として含有し、さらに必要に応じて特定の構造単位を有する樹脂(X)を含有することがある。まず、樹脂(A)について説明する。
【0020】
前記樹脂(A)は上述のとおり、酸不安定基を含む第1の構造単位と、ラクトン環を含む第2の構造単位とを有する。
【0021】
樹脂(A)は、第1の構造単位を有することにより、アルカリ水溶液に不溶又は難溶であり、酸の作用によりアルカリ水溶液に可溶となる特性(以下、場合により「酸作用特性」という。)を有する。なお、「酸の作用によりアルカリ水溶液に可溶となる」とは、「酸の接触前ではアルカリ水溶液に不溶又は難溶であるが、酸との接触後にはアルカリ水溶液に可溶となる」ことを意味する。酸不安定基を有する樹脂(A)は、その分子内に酸不安定基を有する。このような樹脂(A)は、酸不安定基を有するモノマー(以下、このモノマーを場合により「モノマー(a1)」といい、該モノマー(a1)由来の構造単位を「構造単位(a1)」という。)を重合することによって製造できる。なお、酸作用特性を有する限り、樹脂(A)が有する第1の構造単位は1種のみであっても、2種以上であってもよい。
【0022】
前記第1の構造単位に含まれる酸不安定基とは、酸と接触すると脱離基が開裂して、親水性基(例えば、ヒドロキシ基又はカルボキシ基)を与える基を意味する。具体的に酸不安定基を挙げると、例えば、式(1)で表される基(以下、場合により「酸不安定基(1)」という。)、式(2)で表される基(以下、場合により「酸不安定基(2)」という。)などである。

[式(1)中、
a1〜Ra3は、それぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数3〜20の脂環式炭化水素基を表すか、Ra1及びRa2は互いに結合して炭素数2〜20の2価の炭化水素基を形成する。*は結合手を表す。]

[式(2)中、
a1’及びRa2’は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を表し、Ra3’は、炭素数1〜20の1価の炭化水素基を表すか、Ra2’及びRa3’は互いに結合して炭素数2〜20の2価の炭化水素基を形成し、該1価の炭化水素基及び該2価の炭化水素基をそれぞれ構成するメチレン基は、酸素原子又は硫黄原子に置き換わってもよい。]
【0023】
酸不安定基(1)のRa1〜Ra3のアルキル基及び脂環式炭化水素基は、炭素数がそれぞれの範囲において、すでに例示したものを含む。ただし、該脂環式炭化水素基の炭素数は、好ましくは3〜16の範囲である。
【0024】
a1及びRa2が互いに結合して2価の炭化水素基を形成する場合とは、*−C(Ra1)(Ra2)(Ra3)で表される基が、以下のいずれかの基となる場合が好ましい。該2価の炭化水素基の炭素数は、より好ましくは3〜12の範囲である。

【0025】
酸不安定基(1)としては、例えば、1,1−ジアルキルアルコキシカルボニル基(式(1)中、Ra1〜Ra3がアルキル基である基、好ましくはtert−ブトキシカルボニル基)、2−アルキルアダマンタン−2−イルオキシカルボニル基(式(1)中、Ra1及びRa2が結合することで、アダマンチル環を形成し、Ra3がアルキル基である基)及び1−(アダマンタン−1−イル)−1−アルキルアルコキシカルボニル基(式(1)中、Ra1及びRa2がアルキル基であり、Ra3がアダマンタン−1−イル基である基)などが挙げられる。
【0026】
酸不安定基(2)のRa1’及びRa2’の炭化水素基は、例えば、アルキル基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基などである。これらの基もすでに例示したもののうち、炭素数それぞれの範囲で同じものを含む。ただし、Ra1'及びRa2'のうち少なくとも1つは水素原子であると好ましい。
【0027】
酸不安定基(2)の具体例としては、以下の基が挙げられる。

【0028】
前記第1の構造単位は、酸不安定基[好ましくは、酸不安定基(1)及び/又は酸不安定基(2)]を有するモノマーから誘導されるが、好ましくは、酸不安定基と炭素−炭素二重結合とを有するモノマー(a1)から誘導される構造単位であり、さらに好ましくは、酸不安定基を有する(メタ)アクリル系モノマーから誘導される構造単位である。以下、酸不安定基を含む第1の構造単位を誘導し得るモノマーを場合により、「モノマー(a1)」という。
【0029】
好適な樹脂(A)は、式(a1−1)で表される構造単位(以下、場合により「構造単位(a1−1)」という。)又は式(a1−2)で表される構造単位(以下、場合により「構造単位(a1−2)」という。)を第1の構造単位として有する。かかる樹脂(A)は、構造単位(a1−1)を単独種で有していてもよく、複数種有していてもよく、構造単位(a1−2)を単独種で有していてもよく、複数種有していてもよく、構造単位(a1−1)と構造単位(a1−2)とを合わせて有していてもよい。

[式(a1−1)中、
a1は、酸素原子又は*−O−(CH2k1−CO−O−(k1は1〜7の整数を表し、*はカルボニル基との結合手を表す。)で表される基を表す。
a4は、水素原子又はメチル基を表す。
a6は、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基を表す。
m1は0〜14の整数を表す。
式(a1−2)中、
a2は、酸素原子又は*−O−(CH2k1−CO−O−(k1は前記と同義である。)で表される基を表す。
a5は、水素原子又はメチル基を表す。
a7は、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基を表す。
n1は0〜10の整数を表す。
n1’は0〜3の整数を表す。]
【0030】
a1及びLa2は、好ましくは、酸素原子又は、k1が1〜4の整数である*−O−(CH2k1−CO−O−で表される基であり、より好ましくは酸素原子又は*−O−CH2−CO−O−であり、さらに好ましくは酸素原子である。
a4及びRa5は、好ましくはメチル基である。
a6及びRa7の脂肪族炭化水素基のうち、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数3〜10の脂環式炭化水素基であり、この炭素数の上限以下の範囲で、すでに例示したものと同じものを含む。Ra6及びRa7の脂肪族炭化水素基はそれぞれ独立に、好ましくは炭素数8以下のアルキル基又は炭素数8以下の脂環式炭化水素基であり、より好ましくは炭素数6以下のアルキル基又は炭素数6以下の脂環式炭化水素基である。
m1は、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0又は1である。
n1は、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0又は1である。
n1’は好ましくは0又は1である。
【0031】
樹脂(A)が第1の構造単位として、構造単位(a1−1)を有する場合、該構造単位(a1−1)は、以下の式(a1−1−1)〜式(a1−1−8)のいずれかで表されるものが好ましく、式(a1−1−1)〜(a1−1−4)のいずれかで表されるものがより好ましく、式(a1−1−2)又は式(a1−1−3)で表されるものがさらに好ましい。

【0032】

【0033】
構造単位(a1−1)を誘導し得るモノマー(a1)は例えば、特開2010−204646号公報に記載されたモノマーが挙げられる。
【0034】
一方、構造単位(a1−2)を誘導し得るモノマー(a1)としては、例えば、1−エチルシクロペンタン−1−イル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロヘキサン−1−イル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロヘプタン−1−イル(メタ)アクリレート、1−メチルシクロペンタン−1−イル(メタ)アクリレート及び1−イソプロピルシクロペンタン−1−イル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0035】
構造単位(a1−2)としては、以下の式(a1−2−1)〜式(a1−2−6)のいずれかで表されるものが好ましく、式(a1−2−1)〜式(a1−2−4)のいずれかで表されるものがさらに好ましい。

【0036】
樹脂(A)が第1の構造単位として、構造単位(a1−1)や構造単位(a1−2)を有する場合、構造単位(a1−1)及び/又は構造単位(a1−2)の合計含有割合は、該樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対して、10〜95モル%の範囲が好ましく、15〜90モル%の範囲がより好ましく、20〜85モル%の範囲がさらに好ましい。また、構造単位(a1)として、アダマンタン環を含む構造単位(a1)(好ましくは、構造単位(a1−1))を有する場合には、樹脂(A)中の構造単位(a1)の合計(100モル%)に対して、アダマンタン環を含む構造単位(a1)が15モル%以上であることが好ましい。このような含有割合で、アダマンタン環を含む構造単位(a1)を有する樹脂(A)は、該樹脂(A)を含有するレジスト組成物から製造されるレジストパターンのドライエッチング耐性が良好となる傾向がある。なお、構造単位(a1−1)及び/又は構造単位(a1−2)の合計含有割合を、上述の範囲にするためには、樹脂(A)を製造する際に、全モノマーの使用量に対する、構造単位(a1−1)及び/又は構造単位(a1−2)を誘導し得るモノマー(a1)の使用量を調整すればよい。
【0037】
他のモノマー(a1)としては、例えば、酸不安定基(2)を有する(メタ)アクリル系モノマーである式(a1−5)で表されるモノマー(以下「モノマー(a1−5)」という場合がある)を用いてもよい。

式(a1−5)中、
31は、ハロゲン原子を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、水素原子又はハロゲン原子を表す。
及びLは、それぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を表す。
は、酸素原子、硫黄原子又は*−O−(CH2k4−CO−O−で表される基を表す。ここで、k4は1〜7の整数を表し、*はカルボニル基(−CO−)との結合手である。
1’は、単結合又は炭素数1〜6のアルカンジイル基であり、該アルカンジイル基中に含まれるメチレン基は、オキシ基又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。
s1及びs1’は、それぞれ独立に、0〜4の整数を表す。
【0038】
式(a1−5)において、R31は、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基が好ましい。
は、酸素原子が好ましい。
及びLは、一方が酸素原子、他方が硫黄原子であることが好ましい。
s1は、1が好ましい。
s1’は、0〜2の整数が好ましい。
1’は、単結合又は−CH−CO−O−が好ましい。
【0039】
モノマー(a1−5)としては、以下のモノマーが挙げられる。

【0040】
樹脂(A)が、モノマー(a1−5)に由来する構造単位を有する場合、その含有量は、樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対して、1〜95モル%の範囲が好ましく、3〜90モル%の範囲がより好ましく、5〜85モル%の範囲がさらに好ましい。
【0041】
樹脂(A)は、第1の構造単位に加え、さらにラクトン環を含む第2の構造単位を有する。かかる第2の構造単位は、通常、ラクトン環化合物から水素原子を1個取り去って得られる基を有する。第2の構造単位に含まれるラクトン環は、β−プロピオラクトン環、γ−ブチロラクトン環及びδ−バレロラクトン環のような単環式のラクトン環でもよく、単環式のラクトン環と他の環とが縮合したラクトン環でもよい。これらラクトン環の中で、γ−ブチロラクトン環及びγ−ブチロラクトン環と他の環とが縮合したラクトン環が好ましい。
【0042】
樹脂(A)が有する第1の構造単位と第2の構造単位との含有割合比を、〔第1の構造単位〕/〔第2の構造単位〕で表すと、好ましくは10〜80モル%/90〜20モル%であり、より好ましくは20〜60モル%/80〜40モル%である。このような範囲であれば、樹脂(A)を含有する本レジスト組成物から得られるレジストパターンのドライエッチング耐性がより一層良好になる傾向がある。なお、樹脂(A)は後述するように、酸不安定基を有さない構造単位(以下、場合により「酸安定構造単位」という。)として、第2の構造単位以外のものを有することがある。この場合の含有割合比は、前記の「〔第1の構造単位〕/〔第2の構造単位〕」を、「〔第1の構造単位〕/〔第2の構造単位+酸安定構造単位〕」に読み替えればよい。この〔第2の構造単位+酸安定構造単位〕とは、樹脂(A)中の第2の構造単位の含有割合と、酸安定構造単位の含有割合との合計を意味する。
【0043】
前記第2の構造単位として、以下の式(a3−1)、式(a3−2)又は式(a3−3)で表される構造単位が好ましいものとして挙げられる。以下、これら第2の構造単位について詳述する。

[式(a3−1)中、
a4は、酸素原子又は*−O−(CH2k3−CO−O−(k3は1〜7の整数を表す。)を表す。*はカルボニル基との結合手を表す。
a18は、水素原子又はメチル基を表す。
p1は0〜5の整数を表す。
a21は群S1から選ばれる基を表し、p1が2以上の場合、複数のRa21の全部又は一部は同じであってもよい。
式(a3−2)中、
a5は、酸素原子又は−O−(CH2k3−CO−O−(k3は1〜7の整数を表す。)を表す。*はカルボニル基との結合手を表す。
a19は、水素原子又はメチル基を表す。
q1は、0〜3の整数を表す。
a22は、群S2から選ばれる基を表し、q1が2以上の場合、複数のRa22の全部又は一部は同じであってもよい。
式(a3−3)中、
a6は、酸素原子又は−O−(CH2k3−CO−O−(k3は1〜7の整数を表す。)を表す。*はカルボニル基との結合手を表す。
a20は、水素原子又はメチル基を表す。
r1は、0〜3の整数を表す。
a23は、群S2から選ばれる基を表し、r1が2以上の場合、複数のRa23の全部又は一部は同じであってもよい。
群S1は、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基からなり、
群S2は、カルボキシ基、シアノ基及び炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基からなる。]
【0044】
a4〜La6は、好ましくは、酸素原子又は、k3が1〜4の整数である−O−(CH2k3−CO−O−で表される基であり、より好ましくは、酸素原子又は、−O−CH2−CO−O−であり、さらに好ましくは酸素原子である。
a14は、好ましくはメチル基である。
a15は、好ましくは水素原子である。
【0045】
樹脂(A)としては、第2の構造単位として前記式(a3−2)で表される構造単位を有し、式(a3−2)のLa5が*−O−(CH2k3−CO−O−(k3は前記と同義である。)であり、q1が0である樹脂が好ましく、k3が1である樹脂がより好ましい。
【0046】
次に、式(a3−1)、式(a3−2)又は式(a3−3)で表される第2の構造単位の好適例を挙げる。
【0047】
式(a3−1)で表される第2の構造単位の好適例は、以下の式(a3−1−1)、式(a3−1−2)、式(a3−1−3)及び式(a3−1−4)のいずれかで表されるものである。

【0048】
式(a3−2)で表される第2の構造単位の好適例は、以下の式(a3−2−1)、式(a3−2−2)、式(a3−2−3)及び式(a3−2−4)のいずれかで表されるものである。

【0049】
式(a3−3)で表される第2の構造単位の好適例は、以下の式(a3−3−1)、式(a3−3−2)、式(a3−3−3)及び式(a3−3−4)のいずれかで表されるものである。

【0050】
以上例示した第2の構造単位の好適例の中でも、式(a3−1−3)、式(a3−1−4)、式(a3−2−3)、式(a3−2−4)、式(a3−3−3)又は式(a3−3−4)で表される構造単位がさらに好ましく、式(a3−2−3)又は式(a3−2−4)で表される構造単位がとりわけ好ましく、式(a3−2−3)で表される構造単位が特に好ましい。これらの構造単位を誘導し得るモノマーは例えば、特開2010−204646号公報に記載されている。
【0051】
樹脂(A)が有する第2の構造単位の合計含有割合は、樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対して、5〜70モル%の範囲が好ましく、10〜65モル%の範囲がより好ましく、10〜60モル%の範囲がさらに好ましい。また、式(a3−1)に由来する構造単位、式(a3−2)に由来する構造単位及び式(a3−3)に由来する構造単位それぞれの含有割合は、樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対して、5〜60モル%が好ましく、5〜50モル%の範囲がより好ましく、10〜50モル%の範囲がさらに好ましい。このような含有割合で、第2の構造単位を有する樹脂(A)は、該樹脂(A)を含有する本レジスト組成物を基板に塗布したとき、基板上に形成される塗布膜、又は塗布膜から得られる組成物層が基板との間に優れた密着性を発現し易くなり、この本レジスト組成物を用いれば、良好な解像度で、レジストパターンを製造することができる。なお、ここでいう本レジスト組成物を用いるレジストパターンの製造方法に関しては後述する。
【0052】
すでに述べたように、第2の構造単位に加えて、酸安定構造単位を樹脂(A)は有することもある。この場合、第2の構造単位と、酸安定構造単位との合計含有割合を樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対して、5〜70モル%の範囲とすればよい。この合計含有割合も10〜65モル%の範囲がより好ましく、10〜60モル%の範囲がさらに好ましい。
【0053】
樹脂(A)が任意に有する酸安定構造単位のうち、好ましいものについて説明する。好ましい酸安定構造単位の1つは、ヒドロキシ基を含む酸安定構造単位である。この、ヒドロキシ基を有する酸安定構造単位(以下、場合により「含ヒドロキシ基構造単位」という。)を有する樹脂(A)も、当該樹脂(A)を含有する本レジスト組成物によりレジストパターンの製造を行ったとき、塗布膜又は組成物層の基板に対する密着性を高める効果がある。
【0054】
含ヒドロキシ基構造単位は、この構造単位を有する樹脂(A)を含有する本レジスト組成物からレジストパターンを製造する際の露光源の種類によって、各々、好適なものをさらに選択することができる。すなわち、本レジスト組成物を、KrFエキシマレーザ(波長:248nm)を露光源とする露光、電子線あるいはEUV光などの高エネルギー線を露光源とする露光に用いる場合には、含ヒドロキシ基構造単位として、フェノール性ヒドロキシ基を有する含ヒドロキシ基構造単位を樹脂(A)に導入することが好ましい。
一方、短波長のArFエキシマレーザ(波長:193nm)を露光源とする露光を用いる場合は、含ヒドロキシ基構造単位として、後述の式(a2−1)で表される含ヒドロキシ基構造単位を樹脂(A)に導入することが好ましい。このように、樹脂(A)が有する含ヒドロキシ基構造単位は各々、レジストパターンを製造する際の露光源によって好ましいものを選ぶことができる。以下、このような酸安定構造単位のそれぞれを示す。
【0055】
含ヒドロキシ基構造単位の好適例は、ヒドロキシアダマンチル基を含むものであり、樹脂(A)は、ヒドロキシアダマンチル基を含む構造単位を第3の構造単位として有していると好ましい。このヒドロキシアダマンチル基を含む構造単位の好適例は例えば、以下の式(a2−1)で表されるもの(以下、場合により「酸安定構造単位(a2−1)」という。)である。

[式(a2−1)中、
a3は、酸素原子又は*−O−(CH2k2−CO−O−(k2は1〜7の整数を表す。)を表し、*はカルボニル基(−CO−)との結合手を表す。
a14は、水素原子又はメチル基を表す。
a15及びRa16は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基又はヒドロキシ基を表す。
o1は、0〜10の整数を表す。]
【0056】
a3は、好ましくは、酸素原子又は、k2が1〜4の整数である*−O−(CH2k2−CO−O−で表される基であり、より好ましくは、酸素原子又は*−O−CH2−CO−O−であり、さらに好ましくは酸素原子である。
a14は、好ましくはメチル基である。
a15は、好ましくは水素原子である。
a16は、好ましくは水素原子又はヒドロキシ基である。
o1は、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0又は1である。
【0057】
酸安定構造単位(a2−1)としては、例えば、以下のものが挙げられる。

【0058】
以上、例示した酸安定構造単位(a2−1)は、例えば、特開2010−204646号公報に記載されたモノマーから誘導される。これらの中でも、式(a2−1−1)、式(a2−1−2)、式(a2−1−3)及び式(a2−1−4)のいずれかで表される酸安定構造単位(a2−1)がより好ましく、式(a2−1−1)又は(a2−1−3)で表される酸安定構造単位(a2−1)がさらに好ましい。
【0059】
樹脂(A)が酸安定構造単位として、酸安定構造単位(a2−1)を有する場合、その含有割合は、樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対して、3〜45モル%の範囲が好ましく、5〜40モル%の範囲がより好ましく、5〜35モル%の範囲がさらに好ましい。
【0060】
次に、含ヒドロキシ基酸安定構造単位のうち、フェノール性ヒドロキシ基を有する含ヒドロキシ基酸安定構造単位について説明する。該含ヒドロキシ基酸安定構造単位は、以下の式(a2−0)で表されるもの(以下、場合により「酸安定構造単位(a2−0)」という。)が好ましい。

[式(a2−0)中、
a30は、ハロゲン原子を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、水素原子又はハロゲン原子を表す。
a31は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜4のアシル基、炭素数2〜4のアシルオキシ基、アクリロイル基又はメタクリロイル基を表す。
maは0〜4の整数を表す。maが2以上の整数である場合、複数のRa31は同一でも異なっていてもよい。]
【0061】
a30の「ハロゲン原子を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基」における「炭素数1〜6のアルキル基」の具体例は、炭素数がこの範囲において、すでに例示したものを含む。「ハロゲン原子を有する炭素数1〜6のアルキル基」とは、該炭素数1〜6のアルキル基に含まれる水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子に置換されたものである。なお、ハロゲン原子の具体例もすでに説明したとおりである。これらのうち、Ra30は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基及びエチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
a31のアルコキシ基の具体例は、炭素数1〜6の範囲で、すでに例示したものを含む。これらのうち、Ra31は、炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基及びエトキシ基がより好ましく、メトキシ基がさらに好ましい。
maは0、1又は2が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
maは0、1又は2が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
【0062】
酸安定構造単位(a2−0)の中でも、以下の式(a2−0−1)及び式(a2−0−2)のいずれかで表されるものが好ましい。かかる構造単位を誘導し得るモノマーは、例えば、特開2010−204634号公報に記載されている。

【0063】
このような酸安定構造単位(a2−0)を有する樹脂(A)は、前記の公報記載のモノマー、例えば、p−ヒドロキシ−α−メチルスチレンやp−ヒドロキシスチレンなどのヒドロキシスチレン類を用いればよいが、樹脂(A)製造に当たり、ヒドロキシスチレン類のフェノール性ヒドロキシ基を例えば、アセチル基で保護し、アセチル化ヒドロキシスチレン類とした後、このアセチル化ヒドロキシスチレン類を用いて樹脂(A)を製造することもできる。アセチル化ヒドロキシスチレン類に由来する構造単位を有する樹脂を脱保護処理して、アセチル基を脱離することにより、酸安定構造単位(a2−0)を有する樹脂(A)を製造できる。ただし、アセチル基を脱保護する際には、他の構造単位(a1)を著しく損なわないようにして、該脱保護処理を実施する必要がある。
【0064】
樹脂(A)が酸安定構造単位(a2−0)を有する場合、その含有割合は、樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対して、5〜90モル%の範囲が好ましく、10〜85モル%の範囲がより好ましく、15〜80モル%の範囲がさらに好ましい。
【0065】
本レジスト組成物は、後述するように種々の露光源を用いた露光(リソグラフィー技術)に用いることができるが、特に、本レジスト組成物は、ArFエキシマレーザ露光を用いるリソグラフィー技術に有用であり、この点から樹脂(A)は、含ヒドロキシ基酸安定構造単位として酸安定構造単位(a2−1)を含むことが好ましいといえる。
【0066】
樹脂(A)が有する酸安定構造単位として、好適な含ヒドロキシ基酸安定構造単位について具体例を示して説明したが、当該樹脂(A)は含ヒドロキシ基酸安定構造単位以外の酸安定構造単位を有していてもよい。このような含ヒドロキシ基酸安定構造単位以外の酸安定構造単位について以下説明する。
【0067】
かかる酸安定構造単位の具体例は例えば、以下の式(a4−1)で表されるもの(以下、場合により「酸安定構造単位(a4−1)」という。)である。また、酸安定構造単位(a4−1)は、後述する樹脂(X)が有する構造単位としても好ましいものである。

[式(a4−1)中、
a41は、炭素数1〜12の1価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜12の1価の芳香族炭化水素基を表し、該1価の脂肪族炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。Aa41は、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルカンジイル基又は式(a−g1)

(式(a−g1)中、
sは0又は1を表す。
a42及びAa44は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基を表す。
a43は、置換基を有していてもよい炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又は単結合を表す。
a41及びXa42は、それぞれ独立に、酸素原子、カルボニル基、カルボニルオキシ基又はオキシカルボニル基を表す。
ただし、Aa42、Aa43、Aa44、Xa41及びXa42の炭素数の合計は6以下である。)
で表される基を表す。
a42は、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基を表す。]
【0068】
a42は、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基を表す。該脂肪族炭化水素基は部分的に、炭素−炭素不飽和結合を有していてもよいが、炭素−炭素不飽和結合を有さない脂肪族飽和炭化水素基が好ましい。該脂肪族飽和炭化水素基としては、アルキル基(当該アルキル基は直鎖でも分岐していてもよい)及び脂環式炭化水素基、並びに、アルキル基及び脂環式炭化水素基を組み合わせた脂肪族炭化水素基などが挙げられる。
【0069】
a41の脂肪族炭化水素基のうち、アルキル基及び芳香族炭化水素基は、その炭素数がそれぞれの範囲ですでに例示したものを含む。
【0070】
また、Ra42の脂肪族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよいが、Ra42は置換基を有する脂肪族炭化水素基であると好ましい。かかる置換基としては、ハロゲン原子(特にフッ素原子)及び式(a−g3)で表される基が好ましい。

[式(a−g3)中、
a43は、酸素原子、カルボニル基、カルボニルオキシ基又はオキシカルボニル基を表す。
a45は、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数3〜17の脂肪族炭化水素基を表す。]
つまり、Ra42は、以下の式(a−g2)で表される基であることが好ましい。

[式(a−g2)中、
a46は、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数3〜17の脂肪族炭化水素基を表す。
a44は、カルボニルオキシ基又はオキシカルボニル基を表す。
a47は、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数3〜17の脂肪族炭化水素基を表す。
ただし、Aa46、Aa47及びXa44の炭素数の合計は18以下である。]
【0071】
好適なRa42である、ハロゲン原子及び式(a−g3)で表される基からなる群より選ばれる置換基を有する脂肪族炭化水素基(式(a−g2)で表される基)について詳述する。
【0072】
まず、ハロゲン原子を有する脂肪族炭化水素基について説明する。かかる脂肪族炭化水素基は典型的には、ハロゲン原子を有するアルキル基、及びハロゲン原子を有する脂環式炭化水素基(好ましくは、ハロゲン原子を有するシクロアルキル基)である。ハロゲン原子を有するアルキル基とは、該アルキル基を構成する水素原子の一部又は全部がハロゲン原子に置換されたものである。同様に、ハロゲン原子を有する脂環式炭化水素基とは、該脂環式炭化水素基を構成する水素原子の一部又は全部がハロゲン原子に置換されたものである。ハロゲン原子を有するアルキル基及びハロゲン原子を有する脂環式炭化水素基に含まれるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、或いはこれらを組み合わせた形式でもよいが、フッ素原子が好ましい。
【0073】
a42が、フッ素原子を有する脂肪族炭化水素基である酸安定構造単位(a4−1)を、Aa41が好ましいエチレン基である場合の具体例で示すと、以下の式(a4−1−1)〜式(a4−1−22)で表される。

【0074】

【0075】
a42がハロゲン原子を有する脂肪族炭化水素基である場合、アルキル基を構成する水素原子の全部がフッ素原子に置換されたペルフルオロアルキル基や、シクロアルキル基を構成する水素原子の全部がフッ素原子に置換されたペルフルオロシクロアルキル基がより好ましい。Ra42が、ペルフルオロアルキル基又はペルフルオロシクロアルキル基であるモノマー(a4−1)は、上述の具体例の中では、式(a4−1−3)、式(a4−1−4)、式(a4−1−7)、式(a4−1−8)、式(a4−1−11)、式(a4−1−12)、式(a4−1−15)、式(a4−1−16)、式(a4−1−19)、式(a4−1−20)、式(a4−1−21)及び式(a4−1−22)のいずれかで表されるものが該当する。さらに、Ra42はペルフルオロアルキル基が好ましく、当該ペルフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロブチル基、ペルフルオロペンチル基、ペルフルオロヘキシル基、ペルフルオロヘプチル基及びペルフルオロオクチル基などが例示される。より好ましくは、炭素数が1〜6のペルフルオロアルキル基であり、さらに好ましくは、炭素数1〜3のペルフルオロアルキル基である。
【0076】
a42が、式(a−g3)で表される基を有する脂肪族炭化水素基である場合を、次に説明する。この脂肪族炭化水素基には、式(a−g3)で表される基を1個又は複数個有していてもよいが、式(a−g3)で表される基に含まれる炭素原子の数を含めて、脂肪族炭化水素基の総炭素数は、15以下が好ましく、12以下がより好ましい。このような好ましい総炭素数を満たすためには、式(a−g3)で表される基を1個有する基がRa42として好ましい。
【0077】
a42が、式(a−g2)で表される基を1個有する脂肪族炭化水素基である酸安定構造単位(a4−1)は具体的には、以下の式(a4−1’)で表されるもの(以下、場合により「酸安定構造単位(a4−1’)」という)である。

[式(a4−1’)中、すべての符号はいずれも、前記と同義である。]
【0078】
酸安定構造単位(a4−1’)において、Aa46及びAa47はともにハロゲン原子を有することもあるが、Aa46が、ハロゲン原子を有する脂肪族炭化水素基であるか、または、Aa47が、ハロゲン原子を有する脂肪族炭化水素基であると好ましい。さらには、Aa46がハロゲン原子を有する脂肪族炭化水素基であると好ましく、中でも、Aa46はフッ素原子を有するアルカンジイル基であるとより好ましく、ペルフルオロアルカンジイル基であるとさらに好ましい。なお、この「ペルフルオロアルカンジイル基」とは、水素原子の全部がフッ素原子に置換されたアルカンジイル基をいう。
【0079】
a42がペルフルオロアルカンジイル基である酸安定構造単位(a4−1’)を、Aa41がエチレン基である場合で例示すると、以下の式(a4−1’−1)〜式(a4−1’−22)で表される。

【0080】

【0081】
a46及びAa47は炭素数の合計が17以下である範囲で、任意に選択されるが、Aa46の炭素数は1〜6の範囲が好ましく、1〜3の範囲がより好ましい。
一方、Aa47の炭素数は4〜15の範囲が好ましく、5〜12の範囲がより好ましい。さらに好ましいAa47は、炭素数6〜12の脂環式炭化水素基であり、当該脂環式炭化水素基としては、シクロヘキシル基及びアダマンチル基が特に好ましい。
【0082】
a46及びAa47の組み合わせのうち、より好ましいものを、*−Aa46−Xa44−Aa47で表される部分構造(*はカルボニル基との結合手である)で表すと、以下の構造が挙げられる。

このような構造を有する酸安定構造単位(a4−1’)は、前記の具体例の中では、式(a4−1’−9)〜式(a4−1’−20)でそれぞれ表されるものが該当する。
【0083】
樹脂(A)が、酸安定構造単位(a4−1)を有する場合、該酸安定構造単位(a4−1)の含有割合は、樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対して、1〜20モル%の範囲が好ましく、2〜15モル%の範囲がより好ましく、3〜10モル%の範囲がさらに好ましい。
【0084】
また、ここに示す酸安定構造単位(a4−1)を有する樹脂を、樹脂(A)とは別に本レジスト組成物に含有させることもできる。換言すると、第1の構造単位及び第2の構造単位を有する樹脂(A)と、分子内に酸不安定基を有さず、酸安定構造単位(a4−1)を有する樹脂(以下、場合により「樹脂(X)」という。)とを組み合わせて、本レジスト組成物に含有させることができる。
この場合、樹脂(X)における、酸安定構造単位(a4−1)の含有割合は、当該樹脂(X)の全構造単位(100モル%)に対して、80モル%以上が好ましく、85モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましい。また、樹脂(X)は実質的に酸安定構造単位(a4−1)からなるものであってもよい。なお、樹脂(X)が、酸安定構造単位(a4−1)以外に有していてもよい構造単位としては例えば、樹脂(A)が有する第2の構造単位や含ヒドロキシ基酸安定構造単位と同じものが例示される。
【0085】
樹脂(X)は、酸安定構造単位(a4−1)の中でも、酸安定構造単位(a4−1’)を有していると好ましい。
【0086】
以上、樹脂(A)が有する第1の構造単位及び第2の構造単位、ならびに、樹脂(A)が任意に有する酸安定構造単位[含ヒドロキシ基構造単位及び酸安定構造単位(a4−1)]、樹脂(X)が有する構造単位として好適な酸安定構造単位(a4−1)について詳述したが、樹脂(A)及び樹脂(X)は、本発明の効果を著しく阻害しない範囲であれば、これらの構造単位以外に、当技術分野で周知の構造単位を有していてもよい。なお、樹脂(X)の説明では、酸作用特性を有しない樹脂(X)の場合について説明したが、本発明の効果を著しく阻害しない範囲であれば、樹脂(X)が、その分子内に酸不安定基を有していてもよい。
【0087】
樹脂(A)は、
第1の構造単位を誘導するモノマーと、第2の構造単位を誘導するモノマーとを共重合させた樹脂、より好ましくは、構造単位(a1−1)及び/又は構造単位(a1−2)を誘導するモノマーと、第2の構造単位を誘導するモノマーと、含ヒドロキシ基酸安定構造単位を誘導するモノマー[さらに好ましくは、式(a2−1)で表される構造単位を誘導するモノマー]とを共重合させたものである。
樹脂(A)が有する第1の構造単位として、アダマンタン環を含む構造単位(a1−1)がさらに好ましい。樹脂(A)は、上述したようなモノマーを公知の重合法(例えばラジカル重合法)に供し、重合(共重合)することにより製造できる。
一方、樹脂(X)は
好ましくは、酸安定構造単位(a4−1)〔より好ましくは酸安定構造単位(a4−1’)〕を誘導し得るモノマーを、公知の重合法に供して重合させたものである。
【0088】
樹脂(A)の重量平均分子量は、好ましくは、2,500以上(より好ましくは3,000以上)、50,000以下(より好ましくは30,000以下)である。なお、ここでいう重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析により、標準ポリスチレン基準の換算値として求められるものである。この分析の詳細な分析条件は、本願の実施例に記載する。
一方、樹脂(X)を本レジスト組成物に用いる場合、当該樹脂(X)の重量平均分子量は、好ましくは、8,000以上(より好ましくは10,000以上)、80,000以下(より好ましくは60,000以下)である。かかる樹脂(X)の重量平均分子量の測定手段は、樹脂(A)の場合と同様である。
【0089】
<酸発生剤>
本レジスト組成物は酸発生剤を含有する。そして、かかる酸発生剤は、塩(I)を有効成分とするものである。以下、塩(I)を説明し、本レジスト組成物が、任意に含有していてもよい、塩(I)以外の酸発生剤(B)について説明する。
【0090】
<塩(I)>
塩(I)は上述のとおり、式(I)で表される。

[式(I)中、
及びQは、互いに独立に、フッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。
nは、0又は1を表す。
は、単結合又は炭素数1〜10のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基を構成するメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。但し、nが0の場合、Lは単結合ではない。
は、保護基により保護されたヒドロキシ基、又はヒドロキシ基を表す。
は、有機カチオンを表す。]
以下の説明において、塩(I)のうち、正電荷を有するZで示される有機カチオンを除去してなる負電荷を有するものを「スルホン酸アニオン」ということがある。
【0091】
まず、塩(I)を構成するスルホン酸アニオンから説明する。
及びQはそれぞれ独立に、フッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。このペルフルオロアルキル基としては、すでに例示した炭素数1〜6のアルキル基において、当該アルキル基に含まれる全ての水素原子がフッ素原子に置き換わったものが挙げられる。具体的にいえば、トリフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、ペルフルオロブチル基、ペルフルオロsec−ブチル基、ペルフルオロtert−ブチル基、ペルフルオロペンチル基及びペルフルオロヘキシル基などである。以上、ペルフルオロアルキル基を、その具体例を挙げて説明したが、Q及びQはそれぞれ独立に、フッ素原子又はトリフルオロメチル基が好ましく、Q及びQはともにフッ素原子であると、さらに好ましい。
【0092】
は、単結合又は炭素数1〜10のアルカンジイル基などであるが、nが0である場合、Lは単結合であることはない。Lのアルカンジイル基は、その炭素数が前記の範囲において、すでに例示したものを含む。当該アルカンジイル基は、直鎖でも分岐していてもよい。なお、Lのアルカンジイル基は、その炭素数が1〜8の範囲が好ましい。
【0093】
が、アルカンジイル基を構成するメチレン基が、酸素原子又はカルボニル基に置き換わった基である場合、当該基は、式(b1−1)〜式(b1−6)のいずれかで表される基が好ましく、式(b1−1)〜式(b1−4)のいずれかで表される基がより好ましく、式(b1−1)又は式(b1−2)で表される基がさらに好ましい。なお、式(b1−1)〜式(b1−6)にある2つの*は結合手であり、左側の*は、−C(Q1)(Q2)−の炭素原子との結合手を表す。以下に示す式(b1−1)〜式(b1−6)の具体例でも同様である。
【0094】

[式(b1−1)〜式(b1−6)中、
b2〜Lb13は、それぞれ独立に、アルカンジイル基を表すが、
b2の炭素数は1〜8の範囲であり、
b3及びLb4の合計炭素数の上限は6であり、
b5及びLb6の合計炭素数の上限は8であり、
b7及びLb8の合計炭素数の上限は9であり、
b9及びLb10の合計炭素数の上限は7であり、
b11、Lb12及びLb13の合計炭素数の上限は5である。]
【0095】
式(b1−1)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0096】
式(b1−2)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0097】
式(b1−3)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0098】
式(b1−4)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0099】
式(b1−5)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0100】
式(b1−6)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0101】
前記式(I)のRは、保護基により保護されたヒドロキシ基(以下、場合により「保護化ヒドロキシ基」という。)、又はヒドロキシ基を表す。この保護基は、酸の作用により脱保護が生じ得る基をいう。かかる保護基は、酸の作用により脱保護が生じる限り、ヒドロキシ基の保護基として有機合成分野で周知のものが採用できる。上述のとおり、塩(I)は酸発生剤として機能するものであり、定かではないが、本レジスト組成物又はこれにより得られるレジスト膜(後述する塗布膜又は組成物層)中で、酸が発生したとき、当該酸の作用により、保護化ヒドロキシ基をRとして有する塩(I)は、ヒドロキシ基をRとして有する塩(I)に転化していることが推定される。ただし、本発明で用いる塩(I)及び当該塩(I)を酸発生剤として含有する本レジスト組成物は、このような推定メカニズムに限定されるものではない。
【0102】
ここで、保護化ヒドロキシ基の好適例を示すと、以下の式(1A)で表される基、及び式(2A)で表される基が挙げられる。これらの中でも、式(2A)で表される基がより好ましい。
【0103】

[式(1A)中、
a61〜Ra63は、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基を表す。*は結合手を表す。]

[式(2A)中、
a61’及びRa62’は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜12の1価の炭化水素基を表し、Ra63’は、炭素数1〜20の1価の炭化水素基を表すか、Ra62’及びRa63’は互いに結合して炭素数2〜20の2価の炭化水素基を形成する。前記1価の炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子又は硫黄原子に置き換わっていてもよく、前記2価の炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子又は硫黄原子に置き換わっていてもよい。]
【0104】
式(1A)のRa61〜Ra63のアルキル基は、炭素数1〜6の範囲において、すでに例示したものを含むが、Ra61〜Ra63は、その全てがメチル基であると好ましい。
【0105】
式(2A)のRa61’〜Ra63’は水素原子又は炭化水素基であり、この炭化水素基は脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基のいずれでもよく、当該脂肪族炭化水素基は、アルキル基であっても、脂環式炭化水素基であってもよい。また、Ra62’及びRa63’は互いに結合して2価の炭化水素基を形成していてもよく、当該2価の炭化水素基はヘテロ原子を含んでいてもよい。Ra61’及びRa62’のうち、少なくとも1つは水素原子であることが好ましい。
【0106】
式(2A)で表される基の具体例は、前記樹脂(A)の酸不安定基(2)の具体例として示したものと同じである。
【0107】
ここに示した式(1A)で表される基、及び式(2A)で表される基の中でも、塩(I)のRとしては、式(2A)で表される基がより好ましい。
【0108】
以上、塩(I)を構成するスルホン酸アニオンのQ、Q、L及びRについて説明したが、ここで、当該スルホン酸アニオンの具体例を示す。

【0109】

【0110】
続いて、塩(I)を構成する有機カチオン(Z+)について説明する。
当該有機カチオンとしては、例えば、有機スルホニウムカチオン、有機ヨードニウムカチオン、有機アンモニウムカチオン、ベンゾチアゾリウムカチオン及び有機ホスホニウムカチオンなどの有機オニウムカチオンが挙げられる。これらの中でも、有機スルホニウムカチオン及び有機ヨードニウムカチオンが好ましく、アリールスルホニウムカチオンがより好ましい。
【0111】
さらに好ましくは、以下の式(b2−1)〜式(b2−4)のいずれかで表される有機カチオン〔以下、各式の番号に応じて、「カチオン(b2−1)」、「カチオン(b2−2)」、「カチオン(b2−3)」及び「カチオン(b2−4)」という場合がある〕である。

【0112】
式(b2−1)〜式(b2−4)において、Rb4〜Rb6は、それぞれ独立に、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基を表し、該アルキル基に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基で置換されていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数2〜4のアシル基又はグリシジルオキシ基で置換されていてもよく、該芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数1〜12のアルコキシ基で置換されていてもよい。また、Rb4とRb5が一緒になってイオウ原子を含む環を形成してもよい。
【0113】
b44とRb5が一緒になって形成してもよいイオウ原子を含む環としては、単環式、多環式、芳香族性、非芳香族性、飽和及び不飽和のいずれの環であってもよく、イオウ原子を1以上含むものであれば、さらに、1以上のイオウ原子及び/又は1以上の酸素原子を含んでいてもよい。該環としては、炭素数3〜18の環が好ましく、炭素数4〜13の環がより好ましい。
【0114】
b7及びRb8は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表す。
m2及びn2は、それぞれ独立に0〜5の整数を表す。m2が2以上の場合、複数のRb7の全部又は一部は同じであってもよく、n2が2以上の場合、複数のRb8の全部又は一部は同じであってもよい。
【0115】
b9及びRb10は、それぞれ独立に、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数3〜18の脂環式炭化水素基を表す。
b11は、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基を表す。
b9〜Rb11は、それぞれ独立に、炭素数1〜18のアルキル又は炭素数3〜18の脂環式炭化水素基を表す。該アルキル基の炭素数は1〜12が好ましい。該脂環式炭化水素基の炭素数は4〜12の範囲が好ましい。
b12は、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基を表し、該芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数1〜12のアルキルカルボニルオキシ基で置換されていてもよい。
b9とRb10、及び/又は、Rb11とRb12は、それぞれ独立に、互いに結合して、それらが結合している原子とともに3員環〜12員環(好ましくは3員環〜7員環)を形成していてもよく、これらの環を構成するメチレン基は、酸素原子、硫黄原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。
【0116】
b13〜Rb18は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表す。
b11は、酸素原子又は硫黄原子を表す。
o2、p2、s2及びt2は、それぞれ独立に、0〜5の整数を表す。
q2及びr2は、それぞれ独立に、0〜4の整数を表す。
u2は0又は1を表す。
o2が2以上であるとき、複数のRb13の全部又は一部は同じであってもよい。p2が2以上であるとき、複数のRb14の全部又は一部は同じであってもよい。q2が2以上であるとき、複数のRb15の全部又は一部は同じであってもよい。r2が2以上であるとき、複数のRb16の全部又は一部は同じであってもよい。s2が2以上であるとき、複数のRb15の全部又は一部は同じであってもよい。t2が2以上であるとき、複数のRb18の全部又は一部は同じであってもよい。
【0117】
b12のアルキルカルボニルオキシ基としては、すでに例示したアシル基と酸素原子とが結合したものである。
【0118】
b9〜Rb12のアルキル基の好適例は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基及び2−エチルヘキシル基などである。
b9〜Rb11の脂環式炭化水素基の好適例は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロデシル基、2−アルキルアダマンタン−2−イル基、1−(アダマンタン−1−イル)アルカン−1−イル基及びイソボルニル基などである。
b12の芳香族炭化水素基の好適例は、フェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−シクロへキシルフェニル基、4−メトキシフェニル基、ビフェニリル基及びナフチル基などである。
b12の芳香族炭化水素基とアルキル基が結合したものは、典型的にはアラルキル基であり、ベンジル基などが挙げられる。
【0119】
b9とRb10との組み合わせが結合して形成する環としては例えば、チオラン−1−イウム環(テトラヒドロチオフェニウム環)、チアン−1−イウム環及び1,4−オキサチアン−4−イウム環などが挙げられる。
b11とRb12との組み合わせが結合して形成する環としては例えば、オキソシクロヘプタン環、オキソシクロヘキサン環、オキソノルボルナン環及びオキソアダマンタン環などが挙げられる。
【0120】
式(b2−1)〜式(b2−4)で表される有機カチオンとしては、特開2010−204646号公報に記載されたカチオンが挙げられる。
【0121】
例示した有機カチオンの中でも、カチオン(b2−1)が好ましく、アリールスルホニウムカチオン[Rb4〜Rb6のいずれかが芳香族炭化水素基であるカチオン(b2−1)]がより好ましく、以下の式(b2−1−1)で表される有機カチオン〔以下、「カチオン(b2−1−1)」という場合がある。〕がさらに好ましく、トリフェニルスルホニウムカチオン(式(b2−1−1)中、v2=w2=x2=0である。)又はトリトリルスルホニウムカチオン(式(b2−1−1)中、v2=w2=x2=1であり、Rb19、Rb20及びRb21がいずれもメチル基である。)がさらにより好ましい。

式(b2−1−1)中、Rb19、Rb20及びRb21は、それぞれ独立に、ハロゲン原子(より好ましくはフッ素原子)、ヒドロキシ基、炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表す。また、Rb19〜Rb21から選ばれる2つが一緒になってヘテロ原子を有してもよい環を形成してもよい。
この脂肪族炭化水素基の炭素数は1〜12であると好ましく、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数4〜18の脂環式炭化水素基がより好ましく、さらには置換基として、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基、炭素数2〜4のアシル基又はグリシジルオキシ基を有していてもよい。
v2、w2及びx2は、それぞれ独立に0〜5の整数(好ましくは0又は1)を表す。
v2が2以上のとき、複数のRb19の全部又は一部は同じであってもよく、w2が2以上のとき、複数のRb20の全部又は一部は同じであってもよく、x2が2以上のとき、複数のRb21の全部又は一部は同じであってもよい。
なかでも、Rb19、Rb20及びRb21は、それぞれ独立に、好ましくは、ハロゲン原子(より好ましくはフッ素原子)、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基、又は炭素数1〜12のアルコキシ基である。
【0122】
カチオン(b2−1−1)としては、以下のカチオンが挙げられる。

【0123】

【0124】

【0125】



【0126】
カチオン(b2−2)としては、以下のカチオンが挙げられる。

【0127】
カチオン(b2−3)としては、以下のカチオンが挙げられる。

【0128】
以上、塩(I)を、それを構成するスルホン酸アニオン及び有機カチオンにわけて説明したが、当該塩(I)は、スルホン酸アニオン及び有機カチオンの組合せである。これらスルホン酸アニオンと有機カチオンとは任意に組み合わせることができる。
この組み合わせを具体的に例示すると、例えば、下記の表1〜表4記載のものが挙げられる。
【0129】
【表1】

【0130】
【表2】

【0131】
【表3】

【0132】
【表4】

【0133】
表1〜表4に組み合わせで示した塩(I)の中でも、さらに好ましい塩(I)を具体的に示すと、以下のとおりである。

【0134】

【0135】

【0136】



【0137】
次に、塩(I)の製造方法を説明する。
がヒドロキシ基である塩(I)[以下の式(I−b)で表される塩(I)]は、例えば、式(I−a)で表される塩(式(I)におけるLが単結合及びn=1である場合)は、式(b1−a)を、溶媒中で還元させることにより製造することができる。この反応を反応式の形式で示すと以下のとおりである。

(式中の全ての符号は前記と同義である。)
この製造方法は、塩(I)を製造するうえで簡便且つ有用なものであり、本発明はこの製造方法も提供する。
この反応に用いられる還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウムなどが用いられる。溶媒としては、アセトニトリル及び水などが用いられる。
【0138】
続いて、前記式(I−b)で示される化合物を製造する方法について説明する。ここでは説明を簡単にするために、Lが単結合であり、nが1である式(I−b)で示される化合物、すなわち、以下の式(b1−a)で表される化合物を例にとり、その製造方法を工程ごとに遡って説明する。なお、式(b1−a)で表される化合物からは、以下の製造方法により、Rがヒドロキシ基である塩(I)が得られることになる。

【0139】
式(b1−a)で表される化合物は、式(b1−b)で表される化合物と、式(b1−c)で表される化合物とを、溶媒中で反応させることにより製造できる。この反応を反応式の形式で示すと以下のとおりである。

この反応で用いられる溶媒としては、アセトニトリル及びクロロホルムなどが挙げられる。
【0140】
式(b1−b)で表される化合物は、式(b1−d)で表される化合物と、式(b1−e)で表される化合物とを、溶媒中で反応させることにより得られる。この反応を反応式の形式で示すと以下のとおりである。

この反応で用いる溶媒は例えば、アセトニトリルなどである。また、式(b1−d)で表される化合物は、例えば、特開2008−13551号公報に記載された方法で合成することができる。
【0141】
式(b1−c)で表される化合物は、式(b1−f)で表される化合物を、酸の存在下、溶媒中で反応させることにより製造できる。この反応を反応式の形式で示すと以下のとおりである。

この反応で用いる酸は例えば、塩酸などである。溶媒としては、アセトニトリルなどが用いられる。
【0142】
式(b1−f)で表される化合物は、式(b1−g)で表される化合物を、溶媒中で還元させることにより製造できる。この反応を反応式の形式で示すと以下のとおりである。

この反応で用いる還元剤は例えば、リチウムアルミニウムハイドライドなどである。また、この反応で用いる酸は例えば、硫酸などであり、溶媒としては、テトラヒドロフランなどが用いられる。
【0143】
式(b1−g)で表される化合物は、式(b1−h)で表される化合物とエチレングリコールとを、酸の存在下、溶媒中で還元させることにより製造できる。この反応を反応式の形式で示すと以下のとおりである。

この反応で用いる酸は例えば、硫酸などであり、溶媒としては、トルエンなどである。
【0144】
式(b1−h)で表される化合物は、式(b1−j)で表される化合物と、カルボニルジイミダゾールとを、溶媒中で反応させた後、さらに、メタノールを反応させることにより製造できる。この反応を反応式の形式で示すと以下のとおりである。

この反応で用いる溶媒としては、クロロホルムなどが挙げられる。式(b1−j)で表される化合物としては、種々のオキソアダマンチルカルボン酸が使用できる。例えば、市場から容易に入手できるものとして、以下で表される化合物などがある。

【0145】
本レジスト組成物に含有される酸発生剤は、塩(I)を有効成分として含有する。この場合の塩(I)は、単独種で用いても、複数種を併用してもよい。当該酸発生剤は、上述のとおり、さらに塩(I)以外の酸発生剤(B)を含有してもよく、この酸発生剤(B)は、イオン性酸発生剤でも、非イオン性発生剤でもよい。イオン性酸発生剤の酸発生剤(B)は、それを構成するカチオン及びアニオンがともに、塩(I)とは異なるものはもちろん、
塩(I)を構成する有機カチオンと同じカチオンと、塩(I)を構成するスルホン酸アニオン以外の公知のアニオンとの組み合わせからなるイオン性酸発生剤であってもよい。
【0146】
酸発生剤(B)としては、例えば、それぞれ式(B1−1)〜式(B1−20)で表される塩が好ましい。中でもトリフェニルスルホニウムカチオン、トリトリルスルホニウムカチオンを含む塩が好ましく、式(B1−1)、式(B1−2)、式(B1−3)、式(B1−6)、式(B1−7)、式(B1−11)、式(B1−12)、式(B1−13)及び式(B1−14)でそれぞれ表される酸発生剤がさらに好ましい。
【0147】

【0148】

【0149】

【0150】

【0151】
本発明の酸発生剤が塩(I)と酸発生剤(B)とを含む場合、塩(I)の含有量は、酸発生剤全量100質量部に対して、好ましくは、10質量部以上であり、より好ましくは30質量部以上である。本レジスト組成物には、実質的に、塩(I)のみを酸発生剤として用いることもできる。また、本レジスト組成物に係る特性を調整するために、上述のように酸発生剤(B)を用いてもよい。
【0152】
<塩基性化合物(C)>
本レジスト組成物は、さらに、添加剤として塩基性化合物(C)を含有していると好ましい。この塩基性化合物は、当技術分野でクエンチャーと呼ばれるものである。塩基性化合物(C)は、好ましくは塩基性の含窒素有機化合物であり、例えばアミン及びアンモニウム塩が挙げられる。アミンとしては、脂肪族アミン及び芳香族アミンが挙げられる。脂肪族アミンとしては、第一級アミン、第二級アミン及び第三級アミンが挙げられる。塩基性化合物(C)として、好ましくは、式(C1)で表される化合物〜式(C8)で表される化合物が挙げられ、より好ましくは式(C1−1)で表される化合物が挙げられる。
【0153】

[式(C1)中、
c1、Rc2及びRc3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数5〜10の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表し、該アルキル基及び該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基、アミノ基又は炭素数1〜6のアルコキシ基で置換されていてもよく、該芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数5〜10の脂環式炭化水素又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基で置換されていてもよい。]
【0154】

[式(C1−1)中、
c2及びRc3は、前記と同義である。
c4は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数5〜10の脂環式炭化水素又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表す。
m3は0〜3の整数を表し、m3が2以上のとき、複数のRc4の全部又は一部は同じであってもよい。]
【0155】

[式(C2)、式(C3)及び式(C4)中、
c5、Rc6、Rc7及びRc8は、それぞれ独立に、Rc1と同義である。
c9は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6の脂環式炭化水素基又は炭素数2〜6のアルカノイル基を表す。
n3は0〜8の整数を表し、n3が2以上のとき、複数のRc9の全部又は一部は同じであってもよい。]
【0156】

[式(C5)及び式(C6)中、
c10、Rc11、Rc12、Rc13及びRc16は、それぞれ独立に、Rc1と同義である。
c14、Rc15及びRc17は、それぞれ独立に、Rc4と同義である。
o3及びp3は、それぞれ独立に0〜3の整数を表し、o3が2以上であるとき、複数のRc14の全部又は一部は同じであってもよい。p3が2以上であるとき、複数のRc15の全部又は一部は同じであってもよい。
c1は、炭素数1〜6のアルカンジイル基、−CO−、−C(=NH)−、−S−又はこれらを組合せた2価の基を表す。]
【0157】

[式(C7)及び式(C8)中、
c18、Rc19及びRc20は、それぞれ独立に、Rc4と同義である。
q3、r3及びs3は、それぞれ独立に0〜3の整数を表し、q3が2以上であるとき、複数のRc18の全部又は一部は同じであってもよい。r3が2以上であるとき、複数のRc19の全部又は一部は同じであってもよい。s3が2以上であるとき、複数のRc20の全部又は一部は同じであってもよい。
c2は、単結合又は炭素数1〜6のアルカンジイル基、−CO−、−C(=NH)−、−S−又はこれらを組合せた2価の基を表す。]
【0158】
式(C1)で表される化合物としては、1−ナフチルアミン、2−ナフチルアミン、アニリン、ジイソプロピルアニリン、2−,3−又は4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、ジフェニルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、メチルジブチルアミン、メチルジペンチルアミン、メチルジヘキシルアミン、メチルジシクロヘキシルアミン、メチルジヘプチルアミン、メチルジオクチルアミン、メチルジノニルアミン、メチルジデシルアミン、エチルジブチルアミン、エチルジペンチルアミン、エチルジヘキシルアミン、エチルジヘプチルアミン、エチルジオクチルアミン、エチルジノニルアミン、エチルジデシルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、トリス〔2−(2−メトキシエトキシ)エチル〕アミン、トリイソプロパノールアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノ−1,2−ジフェニルエタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン及び4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタンなどが挙げられ、好ましくはジイソプロピルアニリンが挙げられ、より好ましくは2,6−ジイソプロピルアニリンが挙げられる。
【0159】
式(C2)で表される化合物としては、ピペラジンなどが挙げられる。
式(C3)で表される化合物としては、モルホリンなどが挙げられる。
式(C4)で表される化合物としては、ピペリジン及び特開平11−52575号公報に記載されているピペリジン骨格を有するヒンダードアミン化合物などが挙げられる。
式(C5)で表される化合物としては、2,2’−メチレンビスアニリンなどが挙げられる。
式(C6)で表される化合物としては、イミダゾール及び4−メチルイミダゾールなどが挙げられる。
式(C7)で表される化合物としては、ピリジン及び4−メチルピリジンなどが挙げられる。
式(C8)で表される化合物としては、1,2−ジ(2−ピリジル)エタン、1,2−ジ(4−ピリジル)エタン、1,2−ジ(2−ピリジル)エテン、1,2−ジ(4−ピリジル)エテン、1,3−ジ(4−ピリジル)プロパン、1,2−ジ(4−ピリジルオキシ)エタン、ジ(2−ピリジル)ケトン、4,4’−ジピリジルスルフィド、4,4’−ジピリジルジスルフィド、2,2’−ジピリジルアミン、2,2’−ジピコリルアミン及びビピリジンなどが挙げられる。
【0160】
アンモニウム塩としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトライソプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラオクチルアンモニウムヒドロキシド、フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、3−(トリフルオロメチル)フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−ブチルアンモニウムサリチラート及びコリン等が挙げられる。
【0161】
<溶剤(D)>
本レジスト組成物に含有される溶剤(D)は、塩(I)や樹脂(A)などの種類及びその量に応じ、さらに後述するレジストパターンの製造において、基板上に本レジスト組成物を塗布する際の塗布性が良好となるという点から適宜、最適なものを選ぶことができる。
【0162】
溶剤(D)としては、例えば、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートのようなグリコールエーテルエステル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルのようなグリコールエーテル類;乳酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル及びピルビン酸エチルのようなエステル類;アセトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン及びシクロヘキサノンのようなケトン類;γ−ブチロラクトンのような環状エステル類などを挙げることができる。溶剤(D)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0163】
<その他の成分>
本レジスト組成物は、塩(I)を有効成分とする酸発生剤及び樹脂(A)並びに必要に応じて用いられる溶剤(D)、酸発生剤(B)及び塩基性化合物(C)以外の構成成分を含有していてもよい。この構成成分を「成分(F)」という場合がある。かかる成分(F)としては、本技術分野で公知の添加剤、例えば、、樹脂(A)以外の高分子化合物、増感剤、溶解抑止剤、界面活性剤、安定剤及び染料などが挙げられる。
【0164】
<本レジスト組成物の調製方法>
本レジスト組成物は、通常、溶剤(D)の存在下で、塩(I)及び樹脂(A)を混合することで調製することができる。さらに、上述のとおり必要に応じて酸発生剤(B)、塩基性化合物(C)及び/又は成分(F)を混合してもよい。塩基性化合物(C)を混合することが好ましい。混合順は任意であり、特に限定されるものではない。混合する際の温度は、10〜40℃の範囲から、樹脂(A)などの種類や樹脂(A)などの溶剤(D)に対する溶解度などに応じて適切な温度範囲を選ぶことができる。混合時間は、混合温度に応じて、0.5〜24時間の中から適切な時間を選ぶことができる。なお、混合手段も特に制限はなく、攪拌混合などを用いることができる。
本発明のレジスト組成物を調製する際に用いる各成分の使用量を選択することにより、本発明のレジスト組成物中の各成分の含有量を調節することができる。
【0165】
本レジスト組成物における酸発生剤の含有割合は、本レジスト組成物の固形分に対して、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下であり、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上である。
【0166】
本レジスト組成物における樹脂(A)の含有割合は、本レジスト組成物の固形分を基準に好ましい範囲が定められる。具体的は、該固形分の質量を基準として、樹脂(A)は80質量%以上99質量%以下であることが好ましい。本レジスト組成物に樹脂(X)を含有させる場合、その含有割合は、樹脂(A)の含有量を基準として、0.1〜30質量%程度であり、より好ましく0.5〜20質量%程度であり、さらに好ましく1〜15質量%程度である。
【0167】
本レジスト組成物に塩基性化合物(C)を含有させる場合、その含有割合は、本レジスト組成物の固形分に対して、好ましくは、0.01〜5質量%程度であり、より好ましく0.01〜3質量%程度であり、さらに好ましく0.01〜1質量%程度である。
【0168】
本レジスト組成物中の溶剤(D)の含有割合は、本レジスト組成物の総質量に対して、90質量%以上、好ましくは92質量%以上、より好ましくは94質量%以上であり、通常99.9質量%以下、好ましくは99質量%以下である。
【0169】
本レジスト組成物に成分(F)を含有させる場合、該成分(F)の種類に応じて、適切な含有量を調節可能である。
【0170】
このように、樹脂(A)、塩(I)及び溶剤(D)、並びに必要に応じて用いられる、樹脂(X)、酸発生剤(B)、塩基性化合物(C)又は成分(F)の各々を好ましい含有量で混合した後は、孔径0.01〜0.2μm程度のフィルターを用いてろ過することが好ましい。
【0171】
<レジストパターンの製造方法>
本レジスト組成物を用いるレジストパターンの製造方法を具体的に示すと、
(1)本レジスト組成物を基板上に塗布する工程、
(2)塗布後の組成物を乾燥させて組成物層を形成する工程、
(3)組成物層を露光する工程、
(4)露光後の組成物層を加熱する工程、及び
(5)加熱後の組成物層を、現像する工程
を含むものが挙げられる。以下、ここに示す工程の各々を、「工程(1)」〜「工程(5)」のようにいう。
【0172】
工程(1)における本レジスト組成物の基板上への塗布は、スピンコーターなど、半導体の微細加工のレジスト組成物塗布用として広く用いられている塗布装置によって行うことができる。かくして基板上に、本レジスト組成物からなる塗布膜が形成される。当該塗布装置の条件(塗布条件)を種々調節することで、該塗布膜の膜厚は調整可能であり、適切な予備実験などを行うことにより、所望の膜厚の塗布膜になるように塗布条件を選ぶことができる。本レジスト組成物を塗布する前の基板は、微細加工を実施しようとする種々のものを選ぶことができる。なお、本レジスト組成物を塗布する前に、基板を洗浄したり、反射防止膜を形成しておいたりすることもできる。この反射防止膜の形成には例えば、市販の有機反射防止膜用組成物を用いることができる。
【0173】
工程(2)においては、基板上に塗布された本レジスト組成物、すなわち塗布膜を乾燥させて、溶剤(D)を除去する。乾燥は、例えば、ホットプレートなどの加熱装置を用いた加熱手段(いわゆるプリベーク)、又は減圧装置を用いた減圧手段により、或いはこれらの手段を組み合わせて、該塗布膜から溶剤(D)を蒸発させることにより行われる。乾燥条件は、本レジスト組成物に含有される溶剤(D)の種類などに応じて選択でき、例えばホットプレートを用いる加熱手段では、該ホットプレートの表面温度を50〜200℃程度の範囲にして行うことが好ましい。また、減圧手段では、適当な減圧機の中に、塗布膜が形成された基板を封入した後、該減圧機の内部圧力を1〜1.0×10Pa程度にして行うことが好ましい。かくして塗布膜から溶剤(D)を除去することにより、該基板上には組成物層が形成される。
【0174】
工程(3)は該組成物層を露光する工程であり、好ましくは、露光機を用いて該組成物層を露光する工程である。露光には、微細加工を実施しようとする所望のパターンが形成されたマスク(フォトマスク)を介して露光が行われる。露光機の露光光源としては、KrFエキシマレーザ(波長248nm)、ArFエキシマレーザ(波長193nm)、F2エキシマレーザ(波長157nm)のような紫外域のレーザ光を放射するもの、固体レーザ光源(YAG又は半導体レーザ等)からのレーザ光を波長変換して遠紫外域または真空紫外域の高調波レーザ光を放射するものなど、種々のものを用いることができる。また、該露光機は液浸露光機であってもよい。また、露光機は、電子線、超紫外光(EUV)を照射するものであってもよい。本明細書において、これらの放射線を照射することを総称して「露光」という場合がある。
マスクを介して露光することにより、該組成物層には露光された部分(露光部)及び露光されていない部分(未露光部)が生じる。露光部の組成物層では該組成物層に含まれる酸発生剤(好ましくは、塩(I))が露光エネルギーを受けて酸を発生し、さらに発生した酸の作用により、樹脂(A)にある酸不安定基が脱保護反応により親水性を生じるため、露光部の組成物層にある樹脂(A)はアルカリ水溶液に可溶なものとなる。一方、未露光部では露光エネルギーを受けないため、樹脂(A)はアルカリ水溶液に対して不溶又は難溶のままとなる。露光部にある組成物層と未露光部にある組成物層とは、アルカリ水溶液に対する溶解性が著しく相違することとなる。
【0175】
工程(4)においては、露光後の組成物層に加熱処理(いわゆるポストエキスポジャーベーク)が行われる。かかる加熱処理は前記工程(2)で示したホットプレートを用いる加熱手段などが好ましい。なお、工程(4)において、ホットプレートを用いる加熱手段を行う場合、該ホットプレートの表面温度は50〜200℃程度が好ましく、70〜150℃程度がより好ましい。当該加熱処理により、上記脱保護反応が促進される。
【0176】
工程(5)は、加熱後の組成物層を現像する工程であり、好ましくは、加熱後の組成物層を現像装置により現像する。現像する工程で、加熱後の組成物層をアルカリ水溶液と接触させると、露光部の組成物層は該アルカリ水溶液に溶解して除去され、未露光部の組成物層は基板上に残るため、当該基板上にレジストパターンが製造される。
前記アルカリ水溶液としては、「アルカリ現像液」と称される本技術分野で公知のものを用いることができる。該アルカリ水溶液としては例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液や(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド(通称コリン)の水溶液などが挙げられる。
【0177】
現像後、レジストパターンは、好ましくは超純水などでリンス処理を行うことが好ましい。さらに基板及びレジストパターン上に残存している水分を除去することが好ましい。
【0178】
以上のような工程(1)〜工程(5)を含むレジストパターン製造方法によれば、本レジスト組成物は、優れたCD均一性(CDU)を有するレジストパターンを製造することができる。
【0179】
<用途>
本レジスト組成物は、KrFエキシマレーザ露光用のレジスト組成物、ArFエキシマレーザ露光用のレジスト組成物、電子線(EB)照射用のレジスト組成物又はEUV露光機用のレジスト組成物として好適である。特に、酸安定構造単位として、酸安定構造単位(a2−1)を有する樹脂(A)を含有する本レジスト組成物は、ArFエキシマレーザ露光用のレジスト組成物として極めて有用である。
【実施例】
【0180】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。
実施例及び比較例中、含有量及び使用量を表す「%」及び「部」は、特記ないかぎり質量基準である。
重量平均分子量は、ポリスチレンを標準品として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー株式会社製HLC−8120GPC型、カラムは”TSKgel Multipore HXL−M”3本、溶媒はテトラヒドロフラン)により求めた値である。
カラム:TSKgel Multipore HXL-M x 3 + guardcolumn(東ソー社製)
溶離液:テトラヒドロフラン
流量:1.0mL/min
検出器:RI検出器
カラム温度:40℃
注入量:100μl
分子量標準:標準ポリスチレン(東ソー社製)
【0181】
化合物の構造は、質量分析(LCはAgilent製1100型、MASSはAgilent製LC/MSD型)を用い、分子ピークを測定することで確認した。以下の実施例ではこの分子ピークの値を「MASS」で示す。
【0182】
合成例1:式(I1)で表される塩の合成

式(I1−a)で表される化合物10.00部及びクロロホルム50.00部を、反応器に仕込み、23℃で30分間攪拌した後、カルボニルジイミダゾール9.18部を添加した。得られた混合物を60℃程度まで昇温し、同温度で1時間攪拌した後、23℃程度まで冷却して、式(I1−b)で表される化合物を含む反応溶液を得た。23℃程度を保持したまま、得られた反応溶液に、メタノール1.81部を仕込み、12時間攪拌した。得られた反応混合物に、イオン交換水12.50部を加え、23℃で30分間攪拌した。その後、静置・分液して有機層を得た。このような水洗操作を3回繰り返した。水洗後の有機層を濃縮することにより、式(I1−c)で表される化合物10.72部を得た。
【0183】

式(I1−c)で表される化合物9.06部、エチレングリコール5.40部、硫酸0.21部及びトルエン68.00部を、反応器に仕込み、還流下(内温:105℃程度)、2時間攪拌した後、23℃まで冷却した。反応混合物に、10%炭酸カリウム水溶液34.00部を加え、23℃で30分間攪拌した。その後、静置・分液して有機層を得た。得られた有機層に、イオン交換水34.00部を加え、23℃で30分間攪拌した。その後、静置・分液して有機層を得た。このような水洗操作を3回繰り返した。水洗後の有機層をろ過して不溶物を除去した後、ろ液を濃縮することにより、式(I1−d)で表される化合物9.26部を得た。
【0184】

0℃に冷却したテトラヒドロフラン10.58部に、リチウムアルミニウムハイドライド2.78部を添加し、その後、式(I1−d)で表される化合物9.26部をテトラヒドロフラン21.16部に溶解した溶液を1時間かけて滴下した。23℃程度まで温度を戻し、そのまま12時間攪拌した。得られた反応混合物に、酢酸エチル52.90部を少量づつ添加した後、イオン交換水105.80部を仕込み、23℃で30分間攪拌した。その後、静置・分液して有機層を得た。得られた有機層に、イオン交換水17.63部を仕込み、23℃で30分間攪拌した。その後、静置・分液して有機層を得た。このような水洗操作を2回繰り返した。水洗後の有機層をろ過して不溶物を除去した後、ろ液を濃縮することにより、式(I1−e)で表される化合物7.05部を得た。
【0185】

式(I1−e)で表される化合物3.17部、アセトニトリル15.85部及びメタノール15.85部を、反応器に仕込み、23℃程度で30分間攪拌した後、塩酸0.14部及びイオン交換水12.68部を加えて50℃程度まで昇温し、同温度で6時間攪拌した。得られた反応混合物を濃縮した後、得られた濃縮物に、酢酸エチル31.70部を添加、攪拌後、静置・分液して有機層を得た。得られた有機層に、10%炭酸カリウム水溶液7.93部を加え、23℃で30分間攪拌した。その後、静置・分液して有機層を得た。得られた有機層に、イオン交換水7.93部を加え、23℃で30分間攪拌した。その後、静置・分液して有機層を得た。このような水洗操作を2回繰り返した。水洗後の有機層をろ過して不溶物を除去した後、ろ液を濃縮することにより、式(I1−f)で表される化合物1.72部を得た。
【0186】

式(I1−g)で表される化合物3.50部及びクロロホルム17.50部を、反応器に仕込み、23℃程度で30分間攪拌した。その後、カルボニルジイミダゾール1.54部を添加し、80℃まで昇温した後、同温度で1時間攪拌することで、式(I1−h)で表される化合物を含む反応溶液を得た。得られた反応溶液に、式(I1−f)で表される化合物1.71部をアセトニトリル4.59部に溶解した溶液を1時間かけて滴下し、さらに、80℃程度で1時間攪拌した後、反応混合物を濃縮した。得られた濃縮物に、クロロホルム35.00部及びイオン交換水8.75部を加え、23℃で30分間攪拌した。その後、静置・分液して有機層を得た。このような水洗操作をさらに5回繰り返した。水洗後の有機層に、活性炭0.50部を加え、23℃で30分間攪拌し、ろ過した。ろ液を濃縮し、得られた濃縮物に、tert−ブチルメチルエーテル20部を加えて攪拌した。得られた上澄液を除去し、上澄液除去後の残渣を濃縮した。酢酸エチル10部を加えて攪拌した。得られた上澄液を除去し、再び、上澄液除去後の残渣を濃縮した。得られた濃縮物をアセトニトリルに溶解した後、濃縮することにより、式(I1−i)で表される化合物3.19部を得た。
【0187】

式(I1−i)で表される化合物2.69部及びアセトニトリル15.00部を、反応器に仕込み、23℃程度で30分間攪拌した後、0℃まで冷却し、水素化ホウ素ナトリウム0.08部及びイオン交換水0.85部の水溶液を5分かけて滴下した。さらに、0℃程度を保持したまま、2時間攪拌した。次いで、1N塩酸2.24部を添加し攪拌した後、反応混合物を濃縮した。得られた濃縮物に、クロロホルム24.00部及びイオン交換水6.00部を仕込み、23℃で30分間攪拌した。その後、静置・分液して有機層を得た。得られた有機層に、イオン交換水6.00部を仕込み、23℃で30分間攪拌した。その後、静置・分液して有機層を得た。このような水洗操作を3回繰り返した。水洗後の有機層を濃縮した後、得られた濃縮物に、tert−ブチルメチルエーテル10部を加えて攪拌した。得られた上澄液を除去し、濃縮した。酢酸エチル10部を加えて攪拌した。得られた上澄液を除去し、上澄液除去後の残渣を濃縮した。得られた濃縮物をアセトニトリルに溶解した後、濃縮することにより、式(I1)で表される塩1.88部を得た。
【0188】
MASS(ESI(+)Spectrum):M 263.1
MASS(ESI(−)Spectrum):M 339.1
【0189】
合成例2:式(I6)で表される塩の合成

式(I1)で表される化合物5.75部及びテトラヒドロフラン36.23部を、反応器に仕込み、23℃で30分間攪拌した後、p−トルエンスルホン酸0.00036部をテトラヒドロフラン0.18部に溶解した溶液を加え、次いで、式(I6−a)で表される化合物1.38部を滴下した後、23℃で3時間攪拌した。得られた反応混合物にトリエチルアミン0.03部を添加した後、濃縮した。得られた濃縮物に、酢酸エチル50部及びイオン交換水20部を添加攪拌後、静置し、分液して有機層を得た。得られた有機層に、イオン交換水20部を加え、23℃で30分間攪拌した。その後、静置し、分液して有機層を得た。このような水洗操作を3回繰り返した。得られた有機層をろ過して不溶物を除去し、ろ液を濃縮することにより、式(I6)で表される化合物3.89部を得た。
【0190】
MASS(ESI(+)Spectrum):M 263.1
MASS(ESI(−)Spectrum):M 411.1
【0191】
合成例3:式(I13)で表される塩の合成

式(I13−g)で表される化合物3.84部及びクロロホルム19.20部を、反応器に仕込み、23℃で30分間攪拌した。その後、カルボニルジイミダゾール1.54部を添加し、80℃で1時間攪拌することで、式(I13−h)で表される化合物を含む反応溶液を得た。得られた反応溶液に、式(I1−f)で表される化合物1.71部をアセトニトリル4.59部に溶解した溶液を1時間かけて滴下し、さらに、80℃で1時間攪拌した。攪拌後の反応混合物を濃縮し、得られた濃縮物に、クロロホルム40部及びイオン交換水10部を加え、23℃で30分間攪拌した。その後、静置、分液して有機層を得た。このような水洗操作をさらに5回繰り返した。水洗後の有機層に活性炭0.50部を加え、23℃で30分間攪拌し、ろ過した。ろ液を濃縮し、得られた濃縮物に、tert−ブチルメチルエーテル20部を加えて攪拌した。得られた上澄液を除去し、除去後の残渣を濃縮した。酢酸エチル10部を加えて攪拌した。得られた上澄液を除去し、除去後の上澄液を除去した残渣を濃縮した。得られた濃縮物をアセトニトリルに溶解した後、濃縮することにより、式(I13−i)で表される塩3.31部を得た。
【0192】

式(I13−i)で表される化合物2.88部及びアセトニトリル15部を、反応器に仕込み、23℃程度で30分間攪拌した後、0℃まで冷却し、水素化ホウ素ナトリウム0.08部及びイオン交換水0.85部の水溶液を5分かけて滴下した。さらに、0℃程度を保持したまま、2時間攪拌した。次いで、1N塩酸2.24部を添加し攪拌した後、反応混合物を濃縮した。得られた濃縮物に、クロロホルム30部及びイオン交換水10部を仕込み、23℃で30分間攪拌した。その後、静置・分液して有機層を得た。得られた有機層に、イオン交換水10部を仕込み、23℃で30分間攪拌した。その後、静置・分液して有機層を得た。このような水洗操作を3回繰り返した。水洗後の有機層を濃縮した後、得られた濃縮物に、tert−ブチルメチルエーテル10部を加えて攪拌した。得られた上澄液を除去し、濃縮した。酢酸エチル10部を加えて攪拌した。得られた上澄液を除去し、上澄液除去後の残渣を濃縮した。得られた濃縮物をアセトニトリルに溶解した後、濃縮することにより、式(I13)で表される塩2.04部を得た。
【0193】
MASS(ESI(+)Spectrum):M 305.1
MASS(ESI(−)Spectrum):M 339.1
【0194】
合成例4:式(I109)で表される塩の合成

式(I109−g)で表される化合物4.54部及びクロロホルム22.70部を、反応器に仕込み、23℃で30分間攪拌した。その後、カルボニルジイミダゾール1.54部を添加し、80℃で1時間攪拌することで、式(I109−h)で表される化合物を含む反応溶液を得た。得られた反応溶液に、式(I1−f)で表される化合物1.71部をアセトニトリル4.59部に溶解した溶液を1時間かけて滴下し、さらに、80℃で1時間攪拌した。攪拌後の反応混合物を濃縮し、得られた濃縮物に、クロロホルム40部及びイオン交換水10部を加え、23℃で30分間攪拌した。その後、静置、分液して有機層を得た。このような水洗操作をさらに5回繰り返した。水洗後の有機層に活性炭0.50部を加え、23℃で30分間攪拌し、ろ過した。ろ液を濃縮し、得られた濃縮物に、tert−ブチルメチルエーテル20部を加えて攪拌した。得られた上澄液を除去し、除去後の残渣を濃縮した。酢酸エチル10部を加えて攪拌した。得られた上澄液を除去し、除去後の上澄液を除去した残渣を濃縮した。得られた濃縮物をアセトニトリルに溶解した後、濃縮することにより、式(I109−i)で表される塩4.12部を得た。
【0195】

式(I109−i)で表される化合物3.27部及びアセトニトリル20部を、反応器に仕込み、23℃程度で30分間攪拌した後、0℃まで冷却し、水素化ホウ素ナトリウム0.08部及びイオン交換水0.85部の水溶液を5分かけて滴下した。さらに、0℃程度を保持したまま、2時間攪拌した。次いで、1N塩酸2.24部を添加し攪拌した後、反応混合物を濃縮した。得られた濃縮物に、クロロホルム40部及びイオン交換水15部を仕込み、23℃で30分間攪拌した。その後、静置・分液して有機層を得た。得られた有機層に、イオン交換水15部を仕込み、23℃で30分間攪拌した。その後、静置・分液して有機層を得た。このような水洗操作を3回繰り返した。水洗後の有機層を濃縮した後、得られた濃縮物に、tert−ブチルメチルエーテル10部を加えて攪拌した。得られた上澄液を除去し、濃縮した。酢酸エチル10部を加えて攪拌した。得られた上澄液を除去し、上澄液除去後の残渣を濃縮した。得られた濃縮物をアセトニトリルに溶解した後、濃縮することにより、式(I109)で表される塩2.93部を得た。
【0196】
MASS(ESI(+)Spectrum):M 393.1
MASS(ESI(−)Spectrum):M 339.1
【0197】
合成例5:式(I49)で表される塩の合成

式(I109)で表される塩2.00部、式(I49−j)で表される化合物0.28部及びモノクロロベンゼン25部を仕込み、23℃で30分間攪拌した。得られた混合液に、二安息香酸銅(II)0.02部を添加した後、更に、100℃で1時間攪拌した。得られた反応溶液を濃縮した後、得られた残渣に、クロロホルム20部及びイオン交換水5部を加えて23℃で30分間攪拌した後、分液して有機層を取り出した。回収された有機層にイオン交換水5部を加えて23℃で30分間攪拌した後、分液して有機層を取り出した。この水洗操作を5回繰り返した。得られた有機層を濃縮した後、得られた残渣に、tert−ブチルメチルエーテル10部を加えて攪拌した。得られた上澄液を除去し、除去後の残渣を濃縮した。酢酸エチル10部を加えて攪拌した。得られた上澄液を除去し、除去後の上澄液を除去した残渣を濃縮した。得られた濃縮物をアセトニトリルに溶解した後、濃縮することにより、式(I49)で表される塩1.12部を得た。
【0198】
MASS(ESI(+)Spectrum):M 237.1
MASS(ESI(−)Spectrum):M 339.1
【0199】
合成例6:式(I73)で表される塩の合成

式(I73−a)で表される塩10.95部、式(I73−b)で表される塩8.96部、アセトニトリル100部及びイオン交換水50部を仕込み、23℃で15時間攪拌した。得られた反応マスを濃縮した後、クロロホルム100部で抽出した。回収された有機層を濃縮することにより、式(I73−d)で表される塩14.63部を得た。

式(I73−d)で表される塩2.61部及びアセトニトリル15部を仕込み、23℃で30分間攪拌した後、式(I73−e)で表される化合物1.30部を仕込み、70℃で2時間攪拌した。得られた反応物を23℃まで冷却した後、ろ過することにより、式(I73−f)で表される化合物を含む溶液を得た。式(I73−f)で表される化合物を含む溶液に、式(I1−f)で表される化合物1.06部をクロロホルム3.18部に溶解した溶液を仕込み、23℃で23時間攪拌した。得られた反応物を濃縮し、得られた濃縮物に、クロロホルム60部及び2%シュウ酸水溶液30部を仕込み、攪拌、分液を行った。このシュウ酸水溶液洗浄を2回行った。回収された有機層に、イオン交換水30部を仕込み、攪拌、分液を行った。水洗を5回行った。得られた有機層を濃縮し、得られた濃縮物をアセトニトリル30部に溶解した後、濃縮した。得られた濃縮物に、tert−ブチルメチルエーテル50部を加えて攪拌し、上澄液を除去した。得られた残渣をアセトニトリルに溶解した後、濃縮することにより、式(I73−g)で表される塩1.69部を得た。
【0200】

式(I73−g)で表される化合物1.22部及びアセトニトリル10部を、反応器に仕込み、23℃程度で30分間攪拌した後、0℃まで冷却し、水素化ホウ素ナトリウム0.04部及びイオン交換水0.43部の水溶液を5分かけて滴下した。さらに、0℃程度を保持したまま、2時間攪拌した。次いで、1N塩酸1.12部を添加し攪拌した後、反応混合物を濃縮した。得られた濃縮物に、クロロホルム20部及びイオン交換水10部を仕込み、23℃で30分間攪拌した。その後、静置・分液して有機層を得た。得られた有機層に、イオン交換水10部を仕込み、23℃で30分間攪拌した。その後、静置・分液して有機層を得た。このような水洗操作を3回繰り返した。水洗後の有機層を濃縮した後、得られた濃縮物に、tert−ブチルメチルエーテル10部を加えて攪拌した。得られた上澄液を除去し、濃縮した。酢酸エチル10部を加えて攪拌した。得られた上澄液を除去し、上澄液除去後の残渣を濃縮した。得られた濃縮物をアセトニトリルに溶解した後、濃縮することにより、式(I73)で表される塩0.88部を得た。
【0201】
MASS(ESI(+)Spectrum):M 207.1
MASS(ESI(−)Spectrum):M 339.1
【0202】
樹脂の合成
樹脂の合成に使用した化合物を下記に示す。

以下、これらの化合物をその式番号に応じて、「モノマー(a1−1−2)」などという。
【0203】
合成例7〔樹脂A1の合成〕
モノマーとして、モノマー(a1−1−3)、モノマー(a1−2−3)、モノマー(a2−1−1)、モノマー(a3−1−1)及びモノマー(a3−2−3)を用い、そのモル比(モノマー(a1−1−3):モノマー(a1−2−3):モノマー(a2−1−1):モノマー(a3−1−1):モノマー(a3−2−3))が30:14:6:20:30となるように混合し、全モノマー量の1.5質量倍のジオキサンを加えて溶液とした。当該溶液に、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル及びアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を全モノマー量に対して各々、1mol%及び3mol%添加し、これらを73℃で約5時間加熱した。得られた反応混合物を、大量のメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過した。かくして得られた樹脂を再び、ジオキサンに溶解させて得られる溶解液をメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過するという再沈殿操作を2回行い、重量平均分子量8.1×10の樹脂A1(共重合体)を収率65%で得た。この樹脂A1は、以下の構造単位を有するものである。

【0204】
合成例8〔樹脂A2の合成〕
モノマーとして、モノマー(a1−1−2)、モノマー(a2−1−1)及びモノマー(a3−1−1)を用い、そのモル比(モノマー(a1−1−2):モノマー(a2−1−1):モノマー(a3−1−1))が50:25:25となるように混合し、全モノマー量の1.5質量倍のジオキサンを加えて溶液とした。当該溶液に、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル及びアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を全モノマー量に対して各々、1mol%及び3mol%添加し、これらを80℃で約8時間加熱した。得られた反応混合物を、大量のメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過した。かくして得られた樹脂を再び、ジオキサンに溶解させて得られる溶解液をメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過するという再沈殿操作を2回行い、重量平均分子量9.2×10の樹脂A2(共重合体)を収率60%で得た。この樹脂A2は、以下の構造単位を有するものである。

【0205】
合成例9〔樹脂A3の合成〕
モノマーとして、モノマー(a1−1−3)、モノマー(a1−2−3)、モノマー(a2−1−1)、モノマー(a3−2−3)及びモノマー(a3−1−1)を用い、そのモル比(モノマー(a1−1−3):モノマー(a1−2−3):モノマー(a2−1−1):モノマー(a3−2−3):モノマー(a3−1−1))が、30:14:6:20:30となるように混合し、全モノマー量の1.5質量倍のジオキサンを加えて溶液とした。この溶液に、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル及びアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を全モノマー量に対して各々、1mol%及び3mol%添加し、これらを75℃で約5時間加熱した。得られた反応混合物を、大量のメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過した。得られた樹脂を再び、ジオキサンに溶解させて得られる溶解液をメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過するという再沈殿操作を2回行い、重量平均分子量7.0×10の樹脂A3(共重合体)を収率60%で得た。この樹脂A3は、以下の構造単位を有するものである。

【0206】
合成例10〔樹脂A4の合成〕
モノマーとして、モノマー(a1−1−3)、モノマー(a1−5−1)、モノマー(a2−1−1)、モノマー(a3−2−3)及びモノマー(a3−1−1)を用い、そのモル比(モノマー(a1−1−3):モノマー(a1−5−1):モノマー(a2−1−1):モノマー(a3−2−3):モノマー(a3−1−1))が、30:14:6:20:30となるように混合し、全モノマー量の1.5質量倍のジオキサンを加えて溶液とした。この溶液に、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル及びアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を全モノマー量に対して各々、1mol%及び3mol%添加し、これらを75℃で約5時間加熱した。得られた反応混合物を、大量のメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過した。得られた樹脂を再び、ジオキサンに溶解させて得られる溶解液をメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過するという再沈殿操作を2回行い、重量平均分子量7.4×10の樹脂A4(共重合体)を収率62%で得た。この樹脂A4は、以下の構造単位を有するものである。

【0207】
合成例11〔樹脂X1の合成〕
モノマーとして、モノマー(H)を用い、全モノマー量の1.5質量倍のジオキサンを加えて溶液とした。この溶液に、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル及びアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を全モノマー量に対して各々、0.7mol%及び2.1mol%添加し、これらを75℃で約5時間加熱した。得られた反応混合物を、大量のメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過した。得られた樹脂を再び、ジオキサンに溶解させて得られる溶解液をメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過するという再沈殿操作を2回行い、重量平均分子量1.8×10の樹脂X1(共重合体)を収率77%で得た。この樹脂X1は、以下の構造単位を有する。

【0208】
実施例1〜11、比較例1〜2
(レジスト組成物の調製)
以下の表5に示す各成分を混合して溶解し、さらに孔径0.2μmのフッ素樹脂製フィルターで濾過して、レジスト組成物を調製した。
【0209】
<酸発生剤>
I1:式(I1)で表される化合物
I6:式(I6)で表される化合物
I13:式(I13)で表される化合物
I109:式(I109)で表される化合物
I49:式(I49)で表される化合物
I73:式(I73)で表される化合物
B1:

B2:

<樹脂>
A1:樹脂A1
A2:樹脂A2
X1:樹脂X1
<塩基性化合物:クエンチャー>
C1:2,6−ジイソプロピルアニリン
【0210】
【表5】

【0211】
<溶剤>
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 265.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 20.0部
2−ヘプタノン 20.0部
γ−ブチロラクトン 3.5部
【0212】
<CD均一性(CDU)評価>
シリコンウェハに、有機反射防止膜用組成物(ARC−29;日産化学(株)製)を塗布して、205℃、60秒の条件でベークすることによって、厚さ780Åの有機反射防止膜を形成した。次いで、前記の有機反射防止膜の上に、上記のレジスト組成物を乾燥(プリベーク)後の膜厚が85nmとなるようにスピンコートした。レジスト組成物を塗布したシリコンウェハをダイレクトホットプレート上にて、表5の「PB」欄に記載された温度で60秒間プリベークし、レジスト膜を形成した。レジスト膜が形成されたシリコンウェハに、液浸露光用ArFエキシマステッパー(XT:1900Gi;ASML社製、NA=1.35、3/4Annular X−Y偏光)で、コンタクトホールパターン(ホールピッチ100nm/ホール径70nm)を形成するためのマスクを用いて、露光量を段階的に変化させて露光した。なお、液浸媒体としては超純水を使用した。
露光後、前記シリコンウェハを、ホットプレート上にて、表5の「PEB」欄に記載された温度で60秒間ポストエキスポジャーベーク処理した。次いでこのシリコンウェハを、2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間のパドル現像を行い、レジストパターンを得た。
【0213】
各レジスト膜において、ホール径70nmのマスクで形成したパターンのホール径が55nmとなる露光量を実効感度とした。
【0214】
実効感度において、前記マスクを用いて形成したレジストパターンを以下のようにして評価した。一つのホールにつき24箇所ホール径を測定し、その平均値を一つのホールの平均ホール径とした。同一レジストパターン内について、同様の平均ホール径測定を400箇所測定し、それらを母集団として標準偏差を求めた。その結果を表6に示す。
【0215】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0216】
本レジスト組成物を用いれば、従来のレジスト組成物に比して、優れたCD均一性(CDU)を有するレジストパターンを製造することができる。そのため、本レジスト組成物はリソグラフィー技術による半導体の微細加工に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(A)及び式(I)で表される塩を含有するレジスト組成物。
(A)酸不安定基を含む第1の構造単位と、ラクトン環を含む第2の構造単位とを有する樹脂;

[式(I)中、
及びQは、互いに独立に、フッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。
nは、0又は1を表す。
は、単結合又は炭素数1〜10のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基を構成するメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。但し、nが0の場合、Lは単結合ではない。
は、保護基により保護されたヒドロキシ基、又はヒドロキシ基を表す。
は、有機カチオンを表す。]
【請求項2】
前記式(I)のnが1である請求項1記載のレジスト組成物。
【請求項3】
前記式(I)のnが1であり、Lが単結合である請求項1記載のレジスト組成物。
【請求項4】
前記式(I)のRがヒドロキシ基である請求項1〜3のいずれか記載のレジスト組成物。
【請求項5】
前記式(I)のRが、式(2A)で表される基である請求項1〜4のいずれか記載のレジスト組成物。

[式(2A)中、
a61’及びRa62’は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜12の1価の炭化水素基を表し、Ra63’は、炭素数1〜20の1価の炭化水素基を表すか、Ra62’及びRa63’は互いに結合して炭素数2〜20の2価の炭化水素基を形成し、該1価の炭化水素基及び該2価の炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子又は硫黄原子に置き換わってもよい。]
【請求項6】
前記式(I)のZが、アリールスルホニウムカチオンである請求項1〜5のいずれか記載のレジスト組成物。
【請求項7】
前記(A)が、
前記第2の構造単位として、式(a3−1)、式(a3−2)又は式(a3−3)で表される構造単位を有する樹脂である請求項1〜6のいずれか記載のレジスト組成物。

[式(a3−1)中、
a4は、酸素原子又は*−O−(CH2k3−CO−O−(k3は1〜7の整数を表す。)を表す。*はカルボニル基との結合手を表す。
a18は、水素原子又はメチル基を表す。
p1は0〜5の整数を表す。
a21は群S1から選ばれる基であり、p1が2以上の場合、複数のRa21の全部又は一部は同じであってもよい。
式(a3−2)中、
a5は、酸素原子又は*−O−(CH2k3−CO−O−(k3は1〜7の整数を表す。)を表す。*はカルボニル基との結合手を表す。
a19は、水素原子又はメチル基を表す。
q1は、0〜3の整数を表す。
a22は、群S2から選ばれる基であり、q1が2以上の場合、複数のRa22の全部又は一部は同じであってもよい。
式(a3−3)中、
a6は、酸素原子又は*−O−(CH2k3−CO−O−(k3は1〜7の整数を表す。)を表す。*はカルボニル基との結合手を表す。
a20は、水素原子又はメチル基を表す。
r1は、0〜3の整数を表す。
a23は、群S2から選ばれる基であり、r1が2以上の場合、複数のRa23の全部又は一部は同じであってもよい。
群S1は、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基からなり、
群S2は、カルボキシ基、シアノ基及び炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基からなる。]
【請求項8】
前記(A)が、
第2の構造単位として前記式(a3−2)で表される構造単位を有し、式(a3−2)のLa5が*−O−(CH2k3−CO−O−(k3は前記と同義である。)であり、q1が0である樹脂である請求項7記載のレジスト組成物。
【請求項9】
前記(A)が、
第1の構造単位として、式(a1−1)又は式(a1−2)で表される構造単位を有する樹脂である請求項1〜8のいずれか記載のレジスト組成物。

[式(a1−1)中、
a1は、酸素原子又は−O−(CH2k1−CO−O−(k1は1〜7の整数を表し、*はカルボニル基との結合手を表す。)で表される基を表す。
a4は、水素原子又はメチル基を表す。
a6は、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基を表す。
m1は0〜14の整数を表す。
式(a1−2)中、
a2は、酸素原子又は−O−(CH2k1−CO−O−(k1は前記と同義である。)で表される基を表す。
a5は、水素原子又はメチル基を表す。
a7は、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基を表す。
n1は0〜10の整数を表す。]
【請求項10】
前記(A)が、
ヒドロキシアダマンタン−1−イル基を含む構造単位を、第3の構造単位として有する樹脂である請求項1〜9のいずれか記載のレジスト組成物。
【請求項11】
さらに、以下の(X)を含有する請求項1〜10のいずれか記載のレジスト組成物。
(X)式(a4−1)で表される構造単位を有する樹脂

[式(a4−1)中、
a41は、炭素数1〜12の1価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜12の1価の芳香族炭化水素基を表し、該1価の脂肪族炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。Aa41は、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルカンジイル基又は式(a−g1)

(式(a−g1)中、
sは0又は1を表す。
a42及びAa44は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基を表す。
a43は、置換基を有していてもよい炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又は単結合を表す。
a41及びXa42は、それぞれ独立に、酸素原子、カルボニル基、カルボニルオキシ基又はオキシカルボニル基を表す。
ただし、Aa42、Aa43、Aa44、Xa41及びXa42の炭素数の合計は6以下である。)
で表される基を表す。
a42は、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基を表す。]
【請求項12】
さらに、塩基性化合物(C)を含有する請求項1〜11のいずれか記載のレジスト組成物。
【請求項13】
(1)請求項1〜12のいずれか記載のレジスト組成物を基板上に塗布する工程、
(2)塗布後の組成物を乾燥させて組成物層を形成する工程、
(3)組成物層を用いて露光する工程、
(4)露光後の組成物層を加熱する工程、及び
(5)加熱後の組成物層を現像する工程、
を含むレジストパターンの製造方法。
【請求項14】
式(I−b)

[式(I−b)中、
及びQは、互いに独立に、フッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。
nは、0又は1を表す。
は、単結合又は炭素数1〜10のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基を構成するメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。但し、nが0の場合、Lは単結合ではない。
は、有機カチオンを表す。]
で表される化合物を還元する工程を有する式(I−a)

[式(I−a)中、Q、Qn、L及びZは、前記と同義である。]
で表される化合物の製造方法。

【公開番号】特開2012−234155(P2012−234155A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−76376(P2012−76376)
【出願日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】