説明

レジスト組成物及び該レジスト組成物を用いたパターン形成方法

【課題】通常露光(ドライ露光)のみならず液浸露光に於いても、プロファイルの劣化が少なく、パターン倒れが改良され、スカムの発生が抑制された、レジスト組成物及び該レジスト組成物を用いたパターン形成方法を提供する。
【解決手段】(A)酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解度が増大する樹脂、(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物、(C)疎水性樹脂及び
(D)溶剤を含有し、樹脂(A)の重量平均分子量と疎水性樹脂(C)の重量平均分子量との差が、下記式を満たすレジスト組成物及び該レジスト組成物を用いたパターン形成方法。
樹脂(A)の重量平均分子量 − 疎水性樹脂(C)の重量平均分子量 ≧3000

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IC等の半導体製造工程、液晶、サーマルヘッド等の回路基板の製造、さらにはその他のフォトアプリケーションのリソグラフィー工程に使用される、レジスト組成物及び該レジスト組成物を用いたパターン形成方法に関するものである。特に波長が300nm以下の遠紫外線光を光源とする液浸式投影露光装置で露光するために好適な、レジスト組成物及び該レジスト組成物を用いたパターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の微細化に伴い露光光源の短波長化と投影レンズの高開口数(高NA)化が進み、現在では193nm波長を有するArFエキシマレーザーを光源とするNA0.84の露光機が開発されている。これらは一般によく知れている様に次式で表すことができる。
(解像力)=k・(λ/NA)
(焦点深度)=±k・λ/NA
ここでλは露光光源の波長、NAは投影レンズの開口数、k及びkはプロセスに関係する係数である。
【0003】
光学顕微鏡に於いて、解像力を高める技術として、従来から投影レンズと試料の間に高屈折率の液体(以下、「液浸液」ともいう)で満たす、所謂、液浸法が知られている。
この「液浸の効果」は、λを露光光の空気中での波長とし、nを空気に対する液浸液の屈折率、θを光線の収束半角としNA=sinθとすると、液浸した場合、前述の解像力及び焦点深度は次式で表すことができる。
(解像力)=k・(λ/n)/NA
(焦点深度)=±k・(λ/n)/NA
すなわち、液浸の効果は、波長が1/nの露光波長を使用するのと等価である。言い換えれば、同じNAの投影光学系の場合、液浸により、焦点深度をn倍にすることができる。これは、あらゆるパターン形状に対して有効であり、更に、現在検討されている位相シフト法、変形照明法などの超解像技術と組み合わせることが可能である。
【0004】
この効果を半導体素子の微細画像パターンの転写に応用した装置例が、特許文献1(特開昭57−153433号公報)、特許文献2(特開平7−220990号公報)等にて紹介されている。
最近の液浸露光技術進捗が非特許文献1(SPIE Proc 4688,11(2002))、非特許文献2(J.Vac.Sci.Tecnol.B 17(1999))、非特許文献3(SPIE Proc 3999,2(2000))、特許文献3(特開平10−303114号公報)等で報告されている。ArFエキシマレーザーを光源とする場合は、取り扱い安全性と193nmにおける透過率と屈折率の観点で純水(193nmにおける屈折率1.44)が液浸液として最も有望であると考えられている。
【0005】
KrFエキシマレーザー(248nm)用レジスト以降、光吸収による感度低下を補うためにレジストの画像形成方法として化学増幅という画像形成方法が用いられている。ポジ型の化学増幅の画像形成方法を例に挙げ説明すると、露光で露光部の酸発生剤が分解し酸を生成させ、露光後のベーク(PEB:Post Exposure Bake)でその発生酸を反応触媒として利用してアルカリ不溶の基をアルカリ可溶基に変化させ、アルカリ現像により露光部を除去する画像形成方法である。
この化学増幅機構を用いたArFエキシマレーザー(波長193nm)用レジストは現在主流になりつつあるが、未だ不十分な点があり、レジストパターン倒れ性能の改善が望まれていた。
【0006】
また、化学増幅レジストを液浸露光に適用すると、露光時にレジスト層が浸漬液と接触することになるため、レジスト層が変質することや、レジスト層から浸漬液に悪影響を及ぼす成分が滲出することが指摘されている。特許文献4(国際公開WO2004−068242号パンフレット)では、ArF露光用のレジストを露光前後に水に浸すことによりレジスト性能が変化する例が記載されており、液浸露光における問題と指摘している。
また、液浸露光プロセスにおいて、スキャン式の液浸露光機を用いて露光する場合には、レンズの移動に追随して液浸液も移動しないと露光スピードが低下するため、生産性に影響を与えることが懸念される。液浸液が水である場合においては、レジスト膜は疎水的であるほうが水追随性良好であることが望まれるが、一方では、レジスト膜を疎水化するとスカム発生量が増えるなど、レジストの画像性能に対する悪影響もみられ、改善が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭57−153433号公報
【特許文献2】特開平7−220990号公報
【特許文献3】特開平10−303114号公報
【特許文献4】国際公開WO2004−068242号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】国際光工学会紀要(Proc. SPIE), 2002年, 第4688巻,第11頁
【非特許文献2】J.Vac.Sci.Tecnol.B 17(1999)
【非特許文献3】国際光工学会紀要(Proc. SPIE), 2000年, 第3999巻,第2頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、通常露光(ドライ露光)のみならず液浸露光に於いても、プロファイルの劣化が少なく、パターン倒れが改良され、スカムの発生が抑制された、レジスト組成物及び該レジスト組成物を用いたパターン形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記構成のレジスト組成物及び該レジスト組成物を用いたパターン形成方法であり、これにより本発明の上記目的が達成される。
【0011】
(1) (A)酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解度が増大する樹脂、
(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物、
(C)疎水性樹脂及び
(D)溶剤を含有し、樹脂(A)の重量平均分子量と疎水性樹脂(C)の重量平均分子量との差が、下記式を満たすことを特徴とするレジスト組成物。
樹脂(A)の重量平均分子量 − 疎水性樹脂(C)の重量平均分子量 ≧3000
【0012】
(2) 疎水性樹脂(C)が、フッ素原子及び珪素原子の少なくともいずれかを有することを特徴とする(1)に記載のレジスト組成物。
【0013】
(3) 樹脂(A)の重量平均分子量と疎水性樹脂(C)の重量平均分子量との差が、下記式を満たすことを特徴とする(1)又は(2)に記載のレジスト組成物。
樹脂(A)の重量平均分子量 − 疎水性樹脂(C)の重量平均分子量 ≧4000
【0014】
(4) 樹脂(A)の重量平均分子量と疎水性樹脂(C)の重量平均分子量との差が、下記式を満たすことを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のレジスト組成物。
樹脂(A)の重量平均分子量 − 疎水性樹脂(C)の重量平均分子量 ≧5000
【0015】
(5) 疎水性樹脂(C)が、下記一般式(F3a)で表される基を有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のレジスト組成物。
【0016】
【化1】

【0017】
一般式(F3a)に於いて、
62a及びR63aは、各々独立に、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。R62aとR63aは、互いに連結して環を形成してもよい。
64aは、水素原子、フッ素原子又はアルキル基を表す。
【0018】
(6) 疎水性樹脂(C)が、一般式(F3a)で表される基を有するアクリレート又はメタクリレートによる繰り返し単位を有することを特徴とする(5)に記載のレジスト組成物。
【0019】
(7) 疎水性樹脂(C)が、下記一般式(CS−1)〜(CS−3)で表される基を有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のレジスト組成物。
【0020】
【化2】

【0021】
一般式(CS−1)〜(CS−3)に於いて、
12〜R26は、各々独立に、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
〜Lは、単結合又は2価の連結基を表す。
nは、1〜5の整数を表す。
【0022】
(8) 疎水性樹脂(C)が、下記の樹脂(C−1)〜(C−6)から選ばれるいずれかの樹脂であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のレジスト組成物。
(C−1)フルオロアルキル基を有する繰り返し単位(a)を有する樹脂。
(C−2)トリアルキルシリル基又は環状シロキサン構造を有する繰り返し単位(b)を有する樹脂。
(C−3)フルオロアルキル基を有する繰り返し単位(a)と、分岐状アルキル基、シクロアルキル基、分岐状アルケニル基、シクロアルケニル基又はアリール基を有する繰り返し単位(c)とを有する樹脂。
(C−4)トリアルキルシリル基又は環状シロキサン構造を有する繰り返し単位(b)と、分岐状アルキル基、シクロアルキル基、分岐状アルケニル基、シクロアルケニル基又はアリール基を有する繰り返し単位(c)とを有する樹脂。
(C−5)フルオロアルキル基を有する繰り返し単位(a)と、トリアルキルシリル基又は環状シロキサン構造を有する繰り返し単位(b)とを有する樹脂。
(C−6)フルオロアルキル基を有する繰り返し単位(a)と、トリアルキルシリル基又は環状シロキサン構造を有する繰り返し単位(b)と、分岐状アルキル基、シクロアルキル基、分岐状アルケニル基、シクロアルケニル基又はアリール基を有する繰り返し単位
(c)とを有する樹脂。
【0023】
(9) 疎水性樹脂(C)が、下記一般式(Ia)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のレジスト組成物。
【0024】
【化3】

【0025】
一般式(Ia)に於いて、
Rfは、フッ素原子又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。
は、アルキル基を表す。
は、水素原子又はアルキル基を表す。
【0026】
(10) 疎水性樹脂(C)が、下記一般式(II)で表される繰り返し単位及び下記一般式(III)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のレジスト組成物。
【0027】
【化4】

【0028】
一般式(II)及び(III)に於いて、
Rfは、フッ素原子又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。
は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基又はシクロアルケニル基を表す。
は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、トリアルキルシリル基又は環状シロキサン構造を有する基を表す。
は、単結合又は2価の連結基を表す。
m及びnは、繰り返し単位の比率を表す数字であり、0<m<100、0<n<100である。
【0029】
(11) (1)〜(10)のいずれかに記載のレジスト組成物によりレジスト膜を形成し、露光、現像する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【0030】
以下、更に、本発明の好ましい実施の態様を挙げる。
【0031】
(12) 疎水性樹脂(C)が、アルカリ可溶性基又は酸やアルカリの作用により現像液に対する溶解度が増大する基を有する繰り返し単位を有し、アルカリ可溶性基又は酸やアルカリの作用により現像液に対する溶解度が増大する基を有する繰り返し単位の総量が、疎水性樹脂(C)を構成する全繰り返し単位に対して、20モル%以下であることを特徴とする(1)〜(10)のいずれかに記載のレジスト組成物。
【0032】
(13) 製膜した際の水の膜に対する後退接触角が、70°以上であることを特徴とする(1)〜(10)及び(12)のいずれかに記載のレジスト組成物。
【0033】
(14) 疎水性樹脂(C)の添加量が、レジスト組成物の全固形分量に対して0.1〜5質量%であることを特徴とする(1)〜(10)、(12)及び(13)のいずれかに記載のレジスト組成物。
【0034】
(15) 更に、(E)塩基性化合物を含有することを特徴とする(1)〜(10)及び(12)〜(14)のいずれかに記載のレジスト組成物。
【0035】
(16) 更に、(F)フッ素及び/又はシリコン系界面活性剤を含有することを特徴とする(1)〜(10)及び(12)〜(15)のいずれかに記載のレジスト組成物。
【0036】
(17) 溶剤(D)が、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有する2種類以上の混合溶剤であることを特徴とする(1)〜(10)及び(12)〜(16)のいずれかに記載のレジスト組成物。
【0037】
(18) 樹脂(A)が、酸の作用により脱離する、脂環構造を有する繰り返し単位を有することを特徴とする(1)〜(10)及び(12)〜(17)のいずれかに記載の液浸露光用レジスト組成物。
【0038】
(19) 樹脂(A)が、ラクトン基を有する繰り返し単位を有することを特徴とする
(1)〜(10)及び(12)〜(18)のいずれかに記載の液浸露光用レジスト組成物。
【0039】
(20) 樹脂(A)が、少なくとも、ラクトン環を有する(メタ)アクリレート系繰り返し単位、水酸基及びシアノ基の少なくともいずれかで置換された有機基を有する(メタ)アクリレート系繰り返し単位、並びに、酸分解性基を有する(メタ)アクリレート系繰り返し単位の3種類の繰り返し単位を有する共重合体であることであることを特徴とする(1)〜(10)及び(12)〜(17)のいずれかに記載のレジスト組成物。
【0040】
(21) 樹脂(A)の重量平均分子量が、5,000〜10,000で、且つ樹脂(A)の分散度が、1.2〜2.0であることを特徴とする(1)〜(10)及び(12)〜(20)のいずれかに記載のレジスト組成物。
【0041】
(22) 化合物(B)が、活性光線又は放射線の照射によりフッ素原子を有する脂肪族スルホン酸又はフッ素原子を有するベンゼンスルホン酸を発生する化合物であることを特徴とする(1)〜(10)及び(12)〜(21)のいずれかに記載のレジスト組成物。
【0042】
(23) 化合物(B)が、トリフェニルスルホニウム構造を有することを特徴とする
(1)〜(10)及び(12)〜(22)のいずれかに記載のレジスト組成物。
【0043】
(24) 化合物(B)が、カチオン部にフッ素置換されていないアルキル基若しくはシクロアルキル基を有するトリフェニルスルホニウム塩化合物であることを特徴とする(23)に記載のレジスト組成物。
【0044】
(25) レジスト組成物中の全固形分濃度が、1.0〜6.0質量%であること特徴とする(1)〜(10)及び(12)〜(24)のいずれかに記載のレジスト組成物。
【0045】
(26) 樹脂(A)が、フッ素原子及び珪素原子を有さないことを特徴とする(1)〜(10)及び(12)〜(25)のいずれかに記載のレジスト組成物。
【0046】
(27) 露光が、1nm〜200nmの波長の光にて露光されることを特徴とする(11)に記載のパターン形成方法。
【0047】
(28) 液浸露光工程を含むことを特徴とする(11)又は(27)に記載のパターン形成方法。
【0048】
(29) 下記一般式(I)で表されることを特徴とする化合物。
【0049】
【化5】

【0050】
一般式(I)に於いて、
Rfは、フッ素原子又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。
は、アルキル基を表す。
は、水素原子又はアルキル基を表す。
【発明の効果】
【0051】
本発明により、通常露光(ドライ露光)のみならず液浸露光に於いても、プロファイルの劣化が少なく、パターン倒れが改良され、スカムの発生が抑制された、レジスト組成物及び該レジスト組成物を用いたパターン形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本発明について詳細に説明する。
尚、本明細書に於ける基(原子団)の表記に於いて、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
【0053】
(A)酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解度が増大する樹脂
本発明のポジ型レジスト組成物に用いられる樹脂は、酸の作用により分解し、アルカリ現像液に対する溶解度が増大する樹脂であり、樹脂の主鎖又は側鎖、あるいは、主鎖及び側鎖の両方に、酸の作用により分解し、アルカリ可溶性基を生じる基(以下、「酸分解性基」ともいう)を有する樹脂(「酸分解性樹脂」、「酸分解性樹脂(A)」又は「樹脂(A)」とも呼ぶ)である。
アルカリ可溶性基としては、フェノール性水酸基、カルボン酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス
(アルキルカルボニル)メチレン基、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基を有する基等が挙げられる。
好ましいアルカリ可溶性基としては、カルボン酸基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール)、スルホン酸基が挙げられる。
酸で分解し得る基(酸分解性基)として好ましい基は、これらのアルカリ可溶性基の水素原子を酸で脱離する基で置換した基である。
酸で脱離する基としては、例えば、−C(R36)(R37)(R38)、−C(R36)(R37)(OR39)、−C(R01)(R02)(OR39)等を挙げることができる。
式中、R36〜R39は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基表す。R36とR37とは、互いに結合して環を形成してもよい。
01〜R02は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。
酸分解性基としては好ましくは、クミルエステル基、エノールエステル基、アセタールエステル基、第3級のアルキルエステル基等である。更に好ましくは、第3級アルキルエステル基である。
【0054】
本発明のポジ型レジスト組成物にArFエキシマレーザー光を照射する場合には、酸分解性樹脂は、単環又は多環の脂環炭化水素構造を有する、酸の作用により分解し、アルカリ現像液に対する溶解度が増加する樹脂であることが好ましい。
【0055】
単環又は多環の脂環炭化水素構造を有し、酸の作用により分解し、アルカリ現像液に対する溶解度が増加する樹脂(以下、「脂環炭化水素系酸分解性樹脂」ともいう)としては、下記一般式(pI)〜一般式(pV)で示される脂環式炭化水素を含む部分構造を有する繰り返し単位及び下記一般式(II−AB)で示される繰り返し単位の群から選択される少なくとも1種を含有する樹脂であることが好ましい。
【0056】
【化6】

【0057】
一般式(pI)〜(pV)中、
11は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基又はsec−ブチル基を表し、Zは、炭素原子とともにシクロアルキル基を形成するのに必要な原子団を表す。
12〜R16は、各々独立に、炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のアルキル基又はシクロアルキル基を表す。但し、R12〜R14のうち少なくとも1つ、もしくはR15、R16のいずれかはシクロアルキル基を表す。
17〜R21は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のアルキル基又はシクロアルキル基を表す。但し、R17〜R21のうち少なくとも1つはシクロアルキル基を表す。また、R19、R21のいずれかは炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のアルキル基又はシクロアルキル基を表す。
22〜R25は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のアルキル基又はシクロアルキル基を表す。但し、R22〜R25のうち少なくとも1つはシクロアルキル基を表す。また、R23とR24は、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0058】
【化7】

【0059】
一般式(II−AB)中、
11’及びR12’は、各々独立に、水素原子、シアノ基、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。
Z’は、結合した2つの炭素原子(C−C)を含み、脂環式構造を形成するための原子団を表す。
【0060】
また、上記一般式(II−AB)は、下記一般式(II−AB1)又は一般式(II−AB2)であることが更に好ましい。
【0061】
【化8】

【0062】
式(II−AB1)及び(II−AB2)中、
13’〜R16’は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、−COOH、−COOR、酸の作用により分解する基、−C(=O)−X−A’−R17’、アルキル基あるいはシクロアルキル基を表す。Rl3’〜R16’のうち少なくとも2つが結合して環を形成してもよい。
ここで、Rは、アルキル基、シクロアルキル基又はラクトン構造を有する基を表す。
Xは、酸素原子、硫黄原子、−NH−、−NHSO−又は−NHSONH−を表す。
A’は、単結合又は2価の連結基を表す。
17’は、−COOH、−COOR、−CN、水酸基、アルコキシ基、−CO−NH−R、−CO−NH−SO−R又はラクトン構造を有する基を表す。
は、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
nは、0又は1を表す。
【0063】
一般式(pI)〜(pV)において、R12〜R25におけるアルキル基としては、1〜4個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐のアルキル基を表す。
【0064】
11〜R25におけるシクロアルキル基或いはZと炭素原子が形成するシクロアルキル基は、単環式でも、多環式でもよい。具体的には、炭素数5以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ構造等を有する基を挙げることができる。その炭素数は6〜30個が好ましく、特に炭素数7〜25個が好ましい。これらのシクロアルキル基は置換基を有していてもよい。
【0065】
好ましいシクロアルキル基としては、アダマンチル基、ノルアダマンチル基、デカリン残基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、ノルボルニル基、セドロール基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基、シクロドデカニル基を挙げることができる。より好ましくは、アダマンチル基、ノルボルニル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、テトラシクロドデカニル基、トリシクロデカニル基を挙げることができる。
【0066】
これらのアルキル基、シクロアルキル基の更なる置換基としては、アルキル基(炭素数1〜4)、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基(炭素数1〜4)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(炭素数2〜6)が挙げられる。上記のアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基等が、更に有していてもよい置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基を挙げることができる。
【0067】
上記樹脂における一般式(pI)〜(pV)で示される構造は、アルカリ可溶性基の保護に使用することができる。アルカリ可溶性基としては、この技術分野において公知の種々の基が挙げられる。
【0068】
具体的には、カルボン酸基、スルホン酸基、フェノール基、チオール基の水素原子が一般式(pI)〜(pV)で表される構造で置換された構造などが挙げられ、好ましくはカルボン酸基、スルホン酸基の水素原子が一般式(pI)〜(pV)で表される構造で置換された構造である。
【0069】
一般式(pI)〜(pV)で示される構造で保護されたアルカリ可溶性基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(pA)で示される繰り返し単位が好ましい。
【0070】
【化9】

【0071】
ここで、Rは、水素原子、ハロゲン原子又は1〜4個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐のアルキル基を表す。複数のRは、各々同じでも異なっていてもよい。
Aは、単結合、アルキレン基、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、エステル基、アミド基、スルホンアミド基、ウレタン基、又はウレア基よりなる群から選択される単独あるいは2つ以上の基の組み合わせを表す。好ましくは単結合である。
Rpは、上記式(pI)〜(pV)のいずれかの基を表す。
【0072】
一般式(pA)で表される繰り返し単位は、特に好ましくは、2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、ジアルキル(1−アダマンチル)メチル(メタ)アクリレートによる繰り返し単位である。
【0073】
以下、一般式(pA)で示される繰り返し単位の具体例を示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0074】
【化10】

【0075】
【化11】

【0076】
前記一般式(II−AB)、R11’、R12’におけるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、沃素原子等を挙げることができる。
【0077】
上記R11’、R12’におけるアルキル基としては、炭素数1〜10個の直鎖状あるいは分岐状アルキル基が挙げられる。
【0078】
上記Z’の脂環式構造を形成するための原子団は、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素の繰り返し単位を樹脂に形成する原子団であり、中でも有橋式の脂環式炭化水素の繰り返し単位を形成する有橋式脂環式構造を形成するための原子団が好ましい。
【0079】
形成される脂環式炭化水素の骨格としては、一般式(pI)〜(pVI)に於けるR12〜R25の脂環式炭化水素基と同様のものが挙げられる。
【0080】
上記脂環式炭化水素の骨格には置換基を有していてもよい。そのような置換基としては、前記一般式(II−AB1)あるいは(II−AB2)中のR13’〜R16’を挙げることができる。
【0081】
本発明に係る脂環炭化水素系酸分解性樹脂においては、酸の作用により分解する基は、前記一般式(pI)〜一般式(pV)で示される脂環式炭化水素を含む部分構造を有する繰り返し単位、一般式(II−AB)で表される繰り返し単位、及び後記共重合成分の繰り返し単位のうち少なくとも1種の繰り返し単位に含有することができる。
【0082】
上記一般式(II−AB1)あるいは一般式(II−AB2)におけるR13’〜R16’の各種置換基は、上記一般式(II−AB)における脂環式構造を形成するための原子団ないし有橋式脂環式構造を形成するための原子団Zの置換基ともなり得る。
【0083】
上記一般式(II−AB1)あるいは一般式(II−AB2)で表される繰り返し単位として、下記具体例が挙げられるが、本発明はこれらの具体例に限定されない。
【0084】
【化12】

【0085】
本発明の酸分解性樹脂(A)は、ラクトン基を有することが好ましい。ラクトン基としては、ラクトン構造を含有していればいずれの基でも用いることができるが、好ましくは5〜7員環ラクトン構造を含有する基であり、5〜7員環ラクトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているものが好ましい。下記一般式(LC1−1)〜(LC1−16)のいずれかで表されるラクトン構造を有する基を有する繰り返し単位を有することがより好ましい。また、ラクトン構造を有する基が主鎖に直接結合していてもよい。好ましいラクトン構造としては一般式(LC1−1)、(LC1−4)、(LC1−5)、(LC1−6)、(LC1−13)、(LC1−14)で表される基であり、特定のラクトン構造を用いることでラインエッジラフネス、現像欠陥が良好になる。
【0086】
【化13】

【0087】
ラクトン構造部分は、置換基(Rb)を有していても有していなくてもよい。好ましい置換基(Rb)としては、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数4〜7のシクロアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数1〜8のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、酸分解性基などが挙げられる。n2は、0〜4の整数を表す。n2が2以上の時、複数存在するRbは、同一でも異なっていてもよく、また、複数存在するRb同士が結合して環を形成してもよい。
【0088】
一般式(LC1−1)〜(LC1−16)のいずれかで表されるラクトン構造を有する基を有する繰り返し単位としては、上記一般式(II−AB1)又は(II−AB2)中のR13’〜R16’のうち少なくとも1つが一般式(LC1−1)〜(LC1−16)で表される基を有するもの(例えば−COORのRが一般式(LC1−1)〜(LC1−16)で表される基を表す)、又は下記一般式(AI)で表される繰り返し単位等を挙げることができる。
【0089】
【化14】

【0090】
一般式(AI)中、
Rbは、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
Rbのアルキル基が有していてもよい好ましい置換基としては、水酸基、ハロゲン原子が挙げられる。
Rbのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子を挙げることができる。
Rbは、水素原子又はメチル基が好ましい。
Abは、単結合、アルキレン基、単環または多環の脂環炭化水素構造を有する2価の連結基、エーテル基、エステル基、カルボニル基又はこれらを組み合わせた2価の基を表す。好ましくは、単結合、−Ab−CO−で表される連結基である。Abは、直鎖、分岐アルキレン基、単環または多環のシクロアルキレン基であり、好ましくは、メチレン基、エチレン基、シクロヘキシレン基、アダマンチレン基、ノルボルニレン基である。
Vは、一般式(LC1−1)〜(LC1−16)のうちのいずれかで示される基を表す。
【0091】
ラクトン構造を有する繰り返し単位は通常光学異性体が存在するが、いずれの光学異性体を用いてもよい。また、1種の光学異性体を単独で用いても、複数の光学異性体混合して用いてもよい。1種の光学異性体を主に用いる場合、その光学純度(ee)が90以上のものが好ましく、より好ましくは95以上である。
【0092】
ラクトン構造を有する基を有する繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0093】
【化15】

【0094】
【化16】

【0095】
【化17】

【0096】
本発明の酸分解性樹脂(A)は、極性基を有する有機基を含有する繰り返し単位、特に、極性基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位を有していることが好ましい。これにより基板密着性、現像液親和性が向上する。極性基で置換された脂環炭化水素構造の脂環炭化水素構造としてはアダマンチル基、ジアマンチル基、ノルボルナン基が好ましい。極性基としては水酸基、シアノ基が好ましい。
極性基で置換された脂環炭化水素構造としては、下記一般式(VIIa)〜(VIId)で表される部分構造が好ましい。
【0097】
【化18】

【0098】
一般式(VIIa)〜(VIIc)中、
2c〜R4cは、各々独立に、水素原子又は水酸基、シアノ基を表す。ただし、R2c〜R4cのうち少なくとも1つは水酸基、シアノ基を表す。好ましくはR2c〜R4cのうち1つまたは2つが水酸基で残りが水素原子である。
一般式(VIIa)において、更に好ましくはR2c〜R4cのうち2つが水酸基で残りが水素原子である。
【0099】
一般式(VIIa)〜(VIId)で表される基を有する繰り返し単位としては、上記一般式(II−AB1)又は(II−AB2)中のR13’〜R16’のうち少なくとも1つが上記一般式(VII)で表される基を有するもの(例えば、−COORにおけるRが一般式(VIIa)〜(VIId)で表される基を表す)、又は下記一般式(AIIa)〜(AIId)で表される繰り返し単位等を挙げることができる。
【0100】
【化19】

【0101】
一般式(AIIa)〜(AIId)中、
1cは、水素原子、メチル基、トリフロロメチル基、ヒドロキメチル基を表す。
2c〜R4cは、一般式(VIIa)〜(VIIc)におけるR2c〜R4cと同義である。
【0102】
一般式(AIIa)〜(AIId)で表される構造を有する繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0103】
【化20】

【0104】
本発明の酸分解性樹脂(A)は、下記一般式(VIII)で表される繰り返し単位を有してもよい。
【0105】
【化21】

【0106】
上記一般式(VIII)に於いて、
は、−O−又は−N(R41)−を表す。R41は、水素原子、水酸基、アルキル基又は−OSO−R42を表す。R42は、アルキル基、シクロアルキル基又は樟脳残基を表す。R41及びR42のアルキル基は、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)等で置換されていてもよい。
【0107】
上記一般式(VIII)で表される繰り返し単位として、以下の具体例が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0108】
【化22】

【0109】
本発明の酸分解性樹脂(A)は、アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位を有することが好ましく、カルボキシル基を有する繰り返し単位を有することがより好ましい。これを含有することによりコンタクトホール用途での解像性が増す。カルボキシル基を有する繰り返し単位としては、アクリル酸、メタクリル酸による繰り返し単位のような樹脂の主鎖に直接カルボキシル基が結合している繰り返し単位、あるいは連結基を介して樹脂の主鎖にカルボキシル基が結合している繰り返し単位、さらにはアルカリ可溶性基を有する重合開始剤や連鎖移動剤を重合時に用いてポリマー鎖の末端に導入、のいずれも好ましく、連結基は単環または多環の環状炭化水素構造を有していてもよい。特に好ましくはアクリル酸、メタクリル酸による繰り返し単位である。
【0110】
本発明の酸分解性樹脂(A)は、更に一般式(F1)で表される基を1〜3個有する繰り返し単位を有していてもよい。これによりラインエッジラフネス性能が向上する。
【0111】
【化23】

【0112】
一般式(F1)中、
50〜R55は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又はアルキル基を表す。但し、R50〜R55の内、少なくとも1つは、フッ素原子又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。
Rxaは、水素原子または有機基(好ましくは酸分解性保護基、アルキル基、シクロアルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基)を表す。
【0113】
50〜R55のアルキル基は、フッ素原子等のハロゲン原子、シアノ基等で置換されていてもよく、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基、例えば、メチル基、トリフルオロメチル基を挙げることができる。
50〜R55は、すべてフッ素原子であることが好ましい。
【0114】
Rxaが表わす有機基としては、酸分解性保護基、置換基を有していてもよい、アルキル基、シクロアルキル基、アシル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルメチル基、アルコキシメチル基、1−アルコキシエチル基が好ましい。
【0115】
一般式(F1)で表される基を有する繰り返し単位として好ましくは下記一般式(F2)で表される繰り返し単位である。
【0116】
【化24】

【0117】
一般式(F2)中、
Rxは、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。Rxのアルキル基が有していてもよい好ましい置換基としては、水酸基、ハロゲン原子が挙げられる。
Faは、単結合、直鎖または分岐のアルキレン基(好ましくは単結合)を表す。
Fbは、単環または多環の環状炭化水素基を表す。
Fcは、単結合、直鎖または分岐のアルキレン基(好ましくは単結合、メチレン基)を表す。
は、一般式(F1)で表される基を表す。
は、1〜3を表す。
Fbにおける環状炭化水素基としてはシクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、ノルボルニレン基が好ましい。
【0118】
一般式(F1)で表される基を有する繰り返し単位の具体例を示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0119】
【化25】

【0120】
本発明の酸分解性樹脂(A)は、更に脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位を含有してもよい。これにより液浸露光時にレジスト膜から液浸液への低分子成分の溶出が低減できる。このような繰り返し単位として、例えば1−アダマンチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0121】
本発明の酸分解性樹脂(A)は、上記の繰り返し構造単位以外に、ドライエッチング耐性や標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、さらにレジストの一般的な必要な特性である解像力、耐熱性、感度等を調節する目的で様々な繰り返し構造単位を含有することができる。
【0122】
このような繰り返し構造単位としては、下記の単量体に相当する繰り返し構造単位を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0123】
これにより、酸分解性樹脂(A)に要求される性能、特に、(1)塗布溶剤に対する溶解性、(2)製膜性(ガラス転移温度)、(3)アルカリ現像性、(4)膜べり(親疎水性、アルカリ可溶性基選択)、(5)未露光部の基板への密着性、(6)ドライエッチング耐性、等の微調整が可能となる。
【0124】
このような単量体として、例えばアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類等から選ばれる付加重合性不飽和結合を1個有する化合物等を挙げることができる。
【0125】
その他にも、上記種々の繰り返し構造単位に相当する単量体と共重合可能である付加重合性の不飽和化合物であれば、共重合されていてもよい。
【0126】
酸分解性樹脂(A)において、各繰り返し構造単位の含有モル比はレジストのドライエッチング耐性や標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、さらにはレジストの一般的な必要性能である解像力、耐熱性、感度等を調節するために適宜設定される。
【0127】
本発明の酸分解性樹脂(A)の好ましい態様としては、以下のものが挙げられる。
(1) 上記一般式(pI)〜(pV)で表される脂環式炭化水素を含む部分構造を有する繰り返し単位を含有するもの(側鎖型)。
好ましくは(pI)〜(pV)の構造を有する(メタ)アクリレート繰り返し単位を含有するもの。
(2) 一般式(II−AB)で表される繰り返し単位を含有するもの(主鎖型)。
但し、(2)においては例えば、更に以下のものが挙げられる。
(3) 一般式(II−AB)で表される繰り返し単位、無水マレイン酸誘導体及び(メタ)アクリレート構造を有するもの(ハイブリッド型)。
【0128】
酸分解性樹脂(A)中、酸分解性基を有する繰り返し単位の含有量は、全繰り返し構造単位中10〜60モル%が好ましく、より好ましくは20〜50モル%、更に好ましくは25〜40モル%である。
【0129】
酸分解性樹脂(A)中、酸分解性基を有する繰り返し単位の含有量は、全繰り返し構造単位中10〜60モル%が好ましく、より好ましくは20〜50モル%、更に好ましくは25〜40モル%である。
【0130】
酸分解性樹脂(A)中、一般式(pI)〜(pV)で表される脂環式炭化水素を含む部分構造を有する繰り返し単位の含有量は、全繰り返し構造単位中20〜70モル%が好ましく、より好ましくは20〜50モル%、更に好ましくは25〜40モル%である。
【0131】
酸分解性樹脂(A)中、一般式(II−AB)で表される繰り返し単位の含有量は、全繰り返し構造単位中10〜60モル%が好ましく、より好ましくは15〜55モル%、更に好ましくは20〜50モル%である。
【0132】
酸分解性樹脂(A)中、ラクトン環を有する繰り返し単位の含有量は、全繰り返し構造単位中10〜70モル%が好ましく、より好ましくは20〜60モル%、更に好ましくは25〜40モル%である。
酸分解性樹脂(A)中、極性基を有する有機基を有する繰り返し単位の含有量は、全繰り返し構造単位中1〜40モル%が好ましく、より好ましくは5〜30モル%、更に好ましくは5〜20モル%である。
【0133】
また、上記更なる共重合成分の単量体に基づく繰り返し構造単位の樹脂中の含有量も、所望のレジストの性能に応じて適宜設定することができるが、一般的に、上記一般式(pI)〜(pV)で表される脂環式炭化水素を含む部分構造を有する繰り返し構造単位と上記一般式(II−AB)で表される繰り返し単位の合計した総モル数に対して99モル%以下が好ましく、より好ましくは90モル%以下、さらに好ましくは80モル%以下である。
【0134】
本発明のポジ型レジスト組成物がArF露光用であるとき、ArF光への透明性の点から樹脂は芳香族基を有さないことが好ましい。
【0135】
本発明に用いる酸分解性樹脂(A)として好ましくは、繰り返し単位のすべてが(メタ)アクリレート系繰り返し単位で構成されたものである。この場合、繰り返し単位のすべてがメタクリレート系繰り返し単位、繰り返し単位のすべてがアクリレート系繰り返し単位、繰り返し単位のすべてがメタクリレート系繰り返し単位/アクリレート系繰り返し単位の混合のいずれのものでも用いることができるが、アクリレート系繰り返し単位が全繰り返し単位の50mol%以下であることが好ましい。
【0136】
酸分解性樹脂(A)は、少なくとも、ラクトン環を有する(メタ)アクリレート系繰り返し単位、水酸基及びシアノ基の少なくともいずれかで置換された有機基を有する(メタ)アクリレート系繰り返し単位、並びに、酸分解性基を有する(メタ)アクリレート系繰り返し単位の3種類の繰り返し単位を有する共重合体であることが好ましい。
【0137】
好ましくは一般式(pI)〜(pV)で表される脂環式炭化水素を含む部分構造を有する繰り返し単位20〜50モル%、ラクトン構造を有する繰り返し単位20〜50モル%、極性基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位5〜30%含有する3元共重合ポリマー、または更にその他の繰り返し単位を0〜20%含む4元共重合ポリマーである。
【0138】
特に好ましい樹脂としては、下記一般式(ARA−1)〜(ARA−5)で表される酸分解性基を有する繰り返し単位20〜50モル%、下記一般式(ARL−1)〜(ARL−6)で表されるラクトン基を有する繰り返し単位20〜50モル%、下記一般式(ARH−1)〜(ARH−3)で表される極性基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位5〜30モル%含有する3元共重合ポリマー、または更にカルボキシル基、あるいは一般式(F1)で表される構造を有する繰り返し単位、脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位を5〜20モル%含む4元共重合ポリマーである。
【0139】
(式中、Rxyは水素原子またはメチル基、Rxa、Rxbはメチル基またはエチル基を表す。)
【0140】
【化26】

【0141】
【化27】

【0142】
【化28】

【0143】
本発明に用いる酸分解性樹脂(A)は、常法に従って(例えばラジカル重合)合成することができる。例えば、一般的合成方法としては、モノマー種および開始剤を溶剤に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、加熱溶剤にモノマー種と開始剤の溶液を1〜10時間かけて滴下して加える滴下重合法などが挙げられ、滴下重合法が好ましい。反応溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類やメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、酢酸エチルのようなエステル溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド溶剤、さらには後述のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノンのような本発明の組成物を溶解する溶媒が挙げられる。より好ましくは本発明のレジスト組成物に用いられる溶剤と同一の溶剤を用いて重合することが好ましい。これにより保存時のパーティクルの発生が抑制できる。
【0144】
重合反応は窒素やアルゴンなど不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。重合開始剤としては市販のラジカル開始剤(アゾ系開始剤、パーオキサイドなど)を用いて重合を開始させる。ラジカル開始剤としてはアゾ系開始剤が好ましく、エステル基、シアノ基、カルボキシル基を有するアゾ系開始剤が好ましい。好ましい開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などが挙げられる。所望により開始剤を追加、あるいは分割で添加し、反応終了後、溶剤に投入して粉体あるいは固形回収等の方法で所望のポリマーを回収する。反応の濃度は5〜50質量%であり、好ましくは10〜30質量%である。
反応温度は、通常10℃〜150℃であり、好ましくは30℃〜120℃、さらに好ましくは60〜100℃である。
【0145】
本発明に係る樹脂(A)の重量平均分子量は、GPC法によりポリスチレン換算値として、好ましくは1,000〜200,000であり、更に好ましくは3,000〜20,000、最も好ましくは5,000〜15,000である。重量平均分子量を、1,000〜200,000とすることにより、耐熱性やドライエッチング耐性の劣化を防ぐことができ、且つ現像性が劣化したり、粘度が高くなって製膜性が劣化することを防ぐことができる。
分散度(分子量分布)は、通常1〜5であり、好ましくは1〜3、更に好ましくは1.2〜3.0、特に好ましくは1.2〜2.0の範囲のものが使用される。分散度の小さいものほど、解像度、レジスト形状が優れ、且つレジストパターンの側壁がスムーズであり、ラフネス性に優れる。
【0146】
本発明のポジ型レジスト組成物において、本発明に係わる全ての樹脂の組成物全体中の配合量は、全固形分中50〜99.9質量%が好ましく、より好ましくは60〜99.0質量%である。
また、本発明において、樹脂は、1種で使用してもよいし、複数併用してもよい。
【0147】
本発明の酸分解性樹脂(A)は、疎水性樹脂(C)との相溶性の観点から、フッ素原子および珪素原子を含有しないことが好ましい。
【0148】
(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物
本発明のポジ型レジスト組成物は活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物
(「光酸発生剤」又は「(B)成分」ともいう)を含有する。
そのような光酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、あるいはマイクロレジスト等に使用されている活性光線又は放射線の照射により酸を発生する公知の化合物及びそれらの混合物を適宜に選択して使用することができる。
【0149】
たとえば、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o−ニトロベンジルスルホネートを挙げることができる。
【0150】
また、これらの活性光線又は放射線の照射により酸を発生する基、あるいは化合物をポリマーの主鎖又は側鎖に導入した化合物、たとえば、米国特許第3,849,137号、独国特許第3914407号、特開昭63−26653号、特開昭55−164824号、特開昭62−69263号、特開昭63−146038号、特開昭63−163452号、特開昭62−153853号、特開昭63−146029号等に記載の化合物を用いることができる。
【0151】
さらに米国特許第3,779,778号、欧州特許第126,712号等に記載の光により酸を発生する化合物も使用することができる。
【0152】
活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する化合物の内で好ましい化合物として、下記一般式(ZI)、(ZII)、(ZIII)で表される化合物を挙げることができる。
【0153】
【化29】

【0154】
上記一般式(ZI)において、R201、R202及びR203は、各々独立に有機基を表す。
は、非求核性アニオンを表し、好ましくはスルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、ビス(アルキルスルホニル)アミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオン、BF、PF、SbFなどが挙げられ、好ましくは炭素原子を含有する有機アニオンである。
【0155】
好ましい有機アニオンとしては下式に示す有機アニオンが挙げられる。
【0156】
【化30】

【0157】
式中、
Rcは、有機基を表す。
Rcにおける有機基として炭素数1〜30のものが挙げられ、好ましくは置換していてもよいアルキル基、アリール基、またはこれらの複数が、単結合、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SON(Rd)−などの連結基で連結された基を挙げることができる。Rdは水素原子、アルキル基を表す。
Rc、Rc、Rcは、各々独立に、有機基を表す。Rc、Rc、Rcの有機基として好ましくはRcにおける好ましい有機基と同じものを挙げることができ、最も好ましくは炭素数1〜4のパーフロロアルキル基である。
RcとRcが結合して環を形成していてもよい。RcとRcが結合して形成される基としてはアルキレン基、アリーレン基が挙げられる。好ましくは炭素数2〜4のパーフロロアルキレン基である。
Rc、Rc〜Rcの有機基として特に好ましくは1位がフッ素原子またはフロロアルキル基で置換されたアルキル基、フッ素原子またはフロロアルキル基で置換されたフェニル基である。フッ素原子またはフロロアルキル基を有することにより、光照射によって発生した酸の酸性度が上がり、感度が向上する。また、RcとRcが結合して環を形成することにより光照射によって発生した酸の酸性度が上がり、感度が向上する。
【0158】
201、R202及びR203としての有機基の炭素数は、一般的に1〜30、好ましくは1〜20である。
また、R201〜R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。R201〜R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)を挙げることができる。
201、R202及びR203としての有機基の具体例としては、後述する化合物(ZI−1)、(ZI−2)、(ZI−3)における対応する基を挙げることができる。
【0159】
尚、一般式(ZI)で表される構造を複数有する化合物であってもよい。例えば、一般式(ZI)で表される化合物のR201〜R203の少なくともひとつが、一般式(ZI)で表されるもうひとつの化合物のR201〜R203の少なくともひとつと結合した構造を有する化合物であってもよい。
【0160】
更に好ましい(ZI)成分として、以下に説明する化合物(ZI−1)、(ZI−2)、及び(ZI−3)を挙げることができる。
【0161】
化合物(ZI−1)は、上記一般式(ZI)のR201〜R203の少なくとも1つがアリール基である、アリールスルホニム化合物、即ち、アリールスルホニウムをカチオンとする化合物である。
アリールスルホニウム化合物は、R201〜R203の全てがアリール基でもよいし、R201〜R203の一部がアリール基で、残りがアルキル基、シクロアルキル基でもよい。
アリールスルホニウム化合物としては、例えば、トリアリールスルホニウム化合物、ジアリールアルキルスルホニウム化合物、アリールジアルキルスルホニウム化合物、ジアリールシクロアルキルスルホニウム化合物、アリールジシクロアルキルスルホニウム化合物を挙げることができる。
アリールスルホニウム化合物のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基などのアリール基、インドール残基、ピロール残基、などのヘテロアリール基が好ましく、更に好ましくはフェニル基、インドール残基である。アリールスルホニム化合物が2つ以上のアリール基を有する場合に、2つ以上あるアリール基は同一であっても異なっていてもよい。
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているアルキル基は、炭素数1〜15の直鎖又は分岐状アルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等を挙げることができる。
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているシクロアルキル基は、炭素数3〜15のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
201〜R203のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜14)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基を置換基として有してもよい。好ましい置換基としては、炭素数1〜12の直鎖又は分岐状アルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数1〜12の直鎖、分岐又は環状のアルコキシ基であり、特に好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基である。置換基は、3つのR201〜R203のうちのいずれか1つに置換していてもよいし、3つ全てに置換していてもよい。また、R201〜R203がアリール基の場合に、置換基はアリール基のp−位に置換していることが好ましい。
【0162】
次に、化合物(ZI−2)について説明する。化合物(ZI−2)は、式(ZI)におけるR201〜R203が、各々独立に、芳香環を含有しない有機基を表す場合の化合物である。ここで芳香環とは、ヘテロ原子を含有する芳香族環も包含するものである。
201〜R203としての芳香環を含有しない有機基は、一般的に炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20である。
201〜R203は、各々独立に、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリル基、ビニル基であり、更に好ましくは直鎖、分岐、環状2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基、特に好ましくは直鎖、分岐2−オキソアルキル基である。
【0163】
201〜R203としてのアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)を挙げることができる。R201〜R203としてのアルキル基は、直鎖若しくは分岐状2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基であることが好ましい。
201〜R203としてのシクロアルキル基は、好ましくは、炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)を挙げることができる。R201〜R203としてのシクロアルキル基は、環状2−オキソアルキル基であることが好ましい。
201〜R203としての直鎖、分岐、環状の2−オキソアルキル基は、好ましくは、上記のアルキル基、シクロアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
201〜R203としてのアルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基としては、好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基)を挙げることができる。
201〜R203は、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1〜5)、水酸基、シアノ基、ニトロ基によって更に置換されていてもよい。
【0164】
化合物(ZI−3)とは、以下の一般式(ZI−3)で表される化合物であり、フェナシルスルフォニウム塩構造を有する化合物である。
【0165】
【化31】

【0166】
一般式(ZI−3)に於いて、
1c〜R5cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、又はハロゲン原子を表す。
6c及びR7cは、各々独立に、水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
Rx及びRyは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリル基、又はビニル基を表す。
1c〜R7c中のいずれか2つ以上、及びRとRは、それぞれ結合して環構造を形成しても良く、この環構造は、酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合を含んでいてもよい。R1c〜R7c中のいずれか2つ以上、及びRとRが結合して形成する基としては、ブチレン基、ペンチレン基等を挙げることができる。
は、非求核性アニオンを表し、一般式(ZI)に於けるXの非求核性アニオンと同様のものを挙げることができる。
【0167】
1c〜R7cとしてのアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、例えば、炭素数1〜20個の直鎖又は分岐状アルキル基、好ましくは炭素数1〜12個の直鎖又は分岐状アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、直鎖又は分岐プロピル基、直鎖又は分岐ブチル基、直鎖又は分岐ペンチル基)を挙げることができる。
1c〜R7cとしてのシクロアルキル基は、好ましくは炭素数3〜8個のシクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基)を挙げることができる。
1c〜R5cとしてのアルコキシ基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、例えば炭素数1〜10のアルコキシ基、好ましくは、炭素数1〜5の直鎖及び分岐アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、直鎖又は分岐プロポキシ基、直鎖又は分岐ブトキシ基、直鎖又は分岐ペントキシ基)、炭素数3〜8の環状アルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基)を挙げることができる。
好ましくはR1c〜R5cのうちいずれかが直鎖又は分岐状アルキル基、シクロアルキル基又は直鎖、分岐、環状アルコキシ基であり、更に好ましくはR1c〜R5cの炭素数の和が2〜15である。これにより、より溶剤溶解性が向上し、保存時にパーティクルの発生が抑制される。
【0168】
及びRとしてのアルキル基は、R1c〜R7cとしてのアルキル基と同様のものを挙げることができる。R及びRとしてのアルキル基は、直鎖又は分岐状2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基であることが好ましい。
及びRとしてのシクロアルキル基は、R1c〜R7cとしてのシクロアルキル基と同様のものを挙げることができる。R及びRとしてのシクロアルキル基は、環状2−オキソアルキル基であることが好ましい。
直鎖、分岐、環状2−オキソアルキル基は、R1c〜R7cとしてのアルキル基、シクロアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
アルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基については、R1c〜R5cとしてのアルコキシ基と同様のものを挙げることができる。
、Rは、好ましくは炭素数4個以上のアルキル基であり、より好ましくは6個以上、更に好ましくは8個以上のアルキル基である。
【0169】
一般式(ZII)、(ZIII)中、
204〜R207は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
204〜R207のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基が好ましく、更に好ましくはフェニル基である。
204〜R207としてのアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)を挙げることができる。
204〜R207としてのシクロアルキル基は、好ましくは、炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)を挙げることができる。
204〜R207は、置換基を有していてもよい。R204〜R207が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜15)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基等を挙げることができる。
は、非求核性アニオンを表し、一般式(ZI)に於けるXの非求核性アニオンと同様のものを挙げることができる。
【0170】
活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物の内で好ましい化合物として、更に、下記一般式(ZIV)、(ZV)、(ZVI)で表される化合物を挙げることができる。
【0171】
【化32】

【0172】
一般式(ZIV)〜(ZVI)中、
Ar及びArは、各々独立に、アリール基を表す。
208は、アルキル基又はアリール基を表す。
209及びR210は、各々独立に、アルキル基、アリール基または電子吸引性基を表す。R209は、好ましくはアリール基である。R210は、好ましくは電子吸引性基であり、より好ましくはシアノ基、フロロアルキル基である。
Aは、アルキレン基、アルケニレン基又はアリーレン基を表す。
【0173】
活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物として、一般式(ZI)〜(ZIII)で表される化合物が好ましい。
【0174】
化合物(B)は、活性光線または放射線の照射によりフッ素原子を有する脂肪族スルホン酸又はフッ素原子を有するベンゼンスルホン酸を発生する化合物であることが好ましい。
【0175】
化合物(B)は、トリフェニルスルホニウム構造を有することが好ましい。
【0176】
化合物(B)は、カチオン部にフッ素置換されていないアルキル基若しくはシクロアルキル基を有するトリフェニルスルホニウム塩化合物であることが好ましい。
【0177】
活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物の中で、特に好ましいものの例を以下に挙げる。
【0178】
【化33】

【0179】
【化34】

【0180】
【化35】

【0181】
【化36】

【0182】
【化37】

【0183】
光酸発生剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。2種以上を組み合わせて使用する際には、水素原子を除く全原子数が2以上異なる2種の有機酸を発生する化合物を組み合わせることが好ましい。
光酸発生剤の含量は、ポジ型レジスト組成物の全固形分を基準として、0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは1〜7質量%である。
【0184】
(C)疎水性樹脂
本発明のレジスト組成物は、疎水樹脂(C)を含有する。これにより、レジスト膜表層に疎水性樹脂(C)が偏在化し、液浸媒体が水の場合、レジスト膜とした際の水に対するレジスト膜表面の後退接触角を向上させ、液浸水追随性を向上させることができる。疎水性樹脂(C)としては、表面の後退接触角が添加することにより向上する樹脂であれば何でもよいが、フッ素原子及び珪素原子の少なくともいずれかを有する樹脂であることが好ましい。レジスト膜の後退接触角は、60°〜90°が好ましく、更に好ましくは70°以上である。添加量は、レジスト膜の後退接触角が前記範囲になるよう適宜調整して使用できるが、レジスト組成物の全固形分を基準として、0.1〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。
疎水性樹脂(C)は前述のように界面に遍在するものであるが、界面活性剤とは異なり、必ずしも分子内に親水基を有する必要はなく、極性/非極性物質を均一に混合することに寄与しなくても良い。
【0185】
疎水性樹脂(C)としては、フッ素原子及び珪素原子の少なくともいずれかを有する樹脂が好ましい。
疎水性樹脂(C)に於ける、フッ素原子及び珪素原子は、樹脂の主鎖中に有していても、側鎖に置換していてもよい。
【0186】
疎水性樹脂(C)は、フッ素原子を有する部分構造として、フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するシクロアルキル基、または、フッ素原子を有するアリール基を有する樹脂であることが好ましい。
フッ素原子を有するアルキル基(好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜4)は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖若しくは分岐アルキル基であり、更に他の置換基を有していてもよい。
フッ素原子を有するシクロアルキル基は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された単環若しくは多環のシクロアルキル基であり、更に他の置換基を有していてもよい。
フッ素原子を有するアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等のアリール基の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたものが挙げられ、更に他の置換基を有していてもよい。
【0187】
フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するシクロアルキル基、または、フッ素原子を有するアリール基として、好ましくは、下記一般式(F2)〜(F4)で表される基を挙げることができるが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0188】
【化38】

【0189】
一般式(F2)〜(F4)に於いて、
57〜R68は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又はアルキル基を表す。但し、R57〜R61の内の少なくとも1つ、R62〜R64の内の少なくとも1つ及びR65〜R68の内の少なくとも1つは、フッ素原子又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基(好ましくは炭素数1〜4)を表す。R57〜R61は、全てがフッ素原子であることが好ましい。R65〜R67が全てがフッ素原子であり、R68がトリフルオロメチル基であることが好ましい。R62、R63及びR68は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基(好ましくは炭素数1〜4)が好ましく、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基であることが更に好ましい。R62とR63は、互いに連結して環を形成してもよい。
【0190】
一般式(F2)で表される基の具体例としては、例えば、p−フルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル基等が挙げられる。
一般式(F3)で表される基の具体例としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロプロピル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロブチル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ヘキサフルオロ(2−メチル)イソプロピル基、ノナフルオロブチル基、オクタフルオロイソブチル基、ノナフルオロヘキシル基、ノナフルオロ−t−ブチル基、パーフルオロイソペンチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロ(トリメチル)ヘキシル基、2,2,3,3−テトラフルオロシクロブチル基、パーフルオロシクロヘキシル基等が挙げられる。ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ヘキサフルオロ(2−メチル)イソプロピル基、オクタフルオロイソブチル基、ノナフルオロ−t−ブチル基、パーフルオロイソペンチル基が好ましく、ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基が更に好ましい。
一般式(F4)で表される基の具体例としては、例えば、−C(CFOH、−C(COH、−C(CF)(CH)OH、−CH(CF)OH等が挙げられ、−C(CFOHが好ましい。
【0191】
以下、フッ素原子を有する繰り返し単位の具体例を示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
具体例中、Xは、水素原子、−CH、−F又は−CFを表す。
は、−F又は−CFを表す。
【0192】
【化39】

【0193】
疎水性樹脂(C)は、珪素原子を有する部分構造として、アルキルシリル構造(好ましくはトリアルキルシリル基)、または環状シロキサン構造を有する樹脂であることが好ましい。
アルキルシリル構造、または環状シロキサン構造としては、具体的には、下記一般式(CS−1)〜(CS−3)で表される基が挙げられる。
【0194】
【化40】

【0195】
一般式(CS−1)〜(CS−3)に於いて、
12〜R26は、各々独立に、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20)又はシクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)を表す。
〜Lは、単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、アルキレン基、フェニレン基、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、エステル基、アミド基、ウレタン基又はウレア基よりなる群から選択される単独或いは2つ以上の基の組み合わせが挙げられる。nは、1〜5の整数を表す。
【0196】
以下、珪素原子を有する繰り返し単位の具体例を挙げるが、本発明は、これに限定されるものではない。
具体例中、Xは、水素原子、−CH、−F又は−CFを表す。
【0197】
【化41】

【0198】
更に、疎水性樹脂(C)は、下記(x)〜(z)の群から選ばれる基を少なくとも1つを有していてもよい。
(x)アルカリ可溶性基、
(y)アルカリ現像液の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する基及び
(z)酸の作用により分解する基。
【0199】
(x)アルカリ可溶性基としては、フェノール性水酸基、カルボキシル基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基等が挙げられる。
好ましいアルカリ可溶性基としては、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール基)、スルホンイミド基、ビス(カルボニル)メチレン基が挙げられる。
【0200】
アルカリ可溶性基(x)を有する繰り返し単位としては、アクリル酸による繰り返し単位、メタクリル酸による繰り返し単位のような樹脂の主鎖に直接アルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位、或いは連結基を介して樹脂の主鎖にアルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位、更にはアルカリ可溶性基を有する重合開始剤や連鎖移動剤を重合時に用いてポリマー鎖の末端に導入、のいずれも好ましい。
【0201】
アルカリ可溶性基(x)を有する繰り返し単位の含有量は、ポリマー中の全繰り返し単位に対し、1〜50mol%が好ましく、より好ましくは3〜35mol%、更に好ましくは5〜20mol%である。
【0202】
アルカリ可溶性基(x)を有する繰り返し単位の具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0203】
【化42】

【0204】
(y)アルカリ現像液の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する基としては、例えば、ラクトン基、酸無水物基、酸イミド基等が挙げられ、好ましくはラクトン基である。
アルカリ現像液の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する基(y)を有する繰り返し単位としては、アルカリ現像液の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する基(y)を有するアクリル酸エステルによる繰り返し単位、アルカリ現像液の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する基(y)を有するメタクリル酸エステルによる繰り返し単位のように、樹脂の主鎖にアルカリ現像液の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する基(y)が結合している繰り返し単位、或いは、アルカリ現像液の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する基(y)を有する重合開始剤や連鎖移動剤を重合時に用いてポリマー鎖の末端に導入、のいずれも好ましい。
【0205】
アルカリ現像液の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する基(y)を有する繰り返し単位の含有量は、ポリマー中の全繰り返し単位に対し、1〜40mol%が好ましく、より好ましくは3〜30mol%、更に好ましくは5〜15mol%である。
【0206】
アルカリ現像液中での溶解度が増大する基(y)を有する繰り返し単位の具体例としては、樹脂(A)で挙げたラクトン構造、及び一般式(VIII)で表される構造と同様のものを挙げることができる。
【0207】
(z)酸の作用により分解する基としては、樹脂(A)で挙げた酸分解性基と同様のものを挙げることができる。(z)酸の作用により分解する基を有する繰り返し単位は、樹脂(A)で挙げた酸分解性基を有する繰り返し単位と同様のものが挙げられる。酸の作用により分解する基(z)を有する繰り返し単位の含有量は、疎水性樹脂(C)中の全繰り返し単位に対し、1〜80mol%が好ましく、より好ましくは10〜80mol%、更に好ましくは20〜60mol%である。
【0208】
疎水性樹脂(C)は、更に、下記一般式(III)で表される繰り返し単位を有していてもよい。
【0209】
【化43】

【0210】
一般式(III)に於いて、
は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基又はシクロアルケニル基を有する基を表す。
は、単結合又は2価の連結基を表す。
【0211】
一般式(III)に於ける、Rのアルキル基は、炭素数3〜20の直鎖若しくは分岐状アルキル基が好ましい。
シクロアルキル基は、炭素数3〜20のシクロアルキル基が好ましい。
アリール基は、炭素数6〜20のアリール基が好ましい。
アルケニル基は、炭素数3〜20のアルケニル基が好ましい。
シクロアルケニル基は、炭素数3〜20のシクロアルケニル基が好ましい。
の2価の連結基は、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜5)、オキシ基、カルボニルオキシ基が好ましい。
【0212】
疎水性樹脂(C)は、下記一般式(F3a)で表される基を有することが好ましい。
【0213】
【化44】

【0214】
一般式(F3a)に於いて、
62a及びR63aは、各々独立に、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。R62aとR63aは、互いに連結して環を形成してもよい。
64aは、水素原子、フッ素原子又はアルキル基を表す。
【0215】
一般式(F3a)で表される基を有する繰り返し単位としては、一般式(F3a)で表される基を有するアクリレート又はメタクリレートによる繰り返し単位を挙げることができる。
【0216】
疎水性樹脂(C)は、下記一般式(Ia)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0217】
【化45】

【0218】
一般式(Ia)に於いて、
Rfは、フッ素原子又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。
は、アルキル基を表す。
は、水素原子又はアルキル基を表す。
【0219】
一般式(Ia)に於ける、Rfの少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基は、炭素数1〜3であることが好ましく、トリフルオロメチル基がより好ましい。
のアルキル基は、炭素数3〜10の直鎖若しくは分岐状のアルキル基が好ましく、炭素数3〜10の分岐状のアルキル基がより好ましい。
のアルキル基は、炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐状のアルキル基が好ましい。
【0220】
以下、一般式(Ia)で表される繰り返し単位の具体例を挙げるが、本発明は、これに限定されるものではない。
Xは、−H、−CH、−F、又は、−CFを表す。
【0221】
【化46】



【0222】
一般式(Ia)で表される繰り返し単位は、下記一般式(I)で表される化合物を重合させることにより形成させることができる。
【0223】
【化47】

【0224】
一般式(I)に於いて、
Rfは、フッ素原子又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。
は、アルキル基を表す。
は、水素原子又はアルキル基を表す。
【0225】
一般式(I)に於ける、Rf、R及びRは、一般式(Ia)に於ける、Rf、R及びRと同義である。
一般式(I)で表される化合物は、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。合成する場合は、2−トリフルオロメチルメタクリル酸を酸クロリド化後、エステル化することにより得ることができる。
【0226】
疎水性樹脂(C)は、下記一般式(II)で表される繰り返し単位及び下記一般式(III)で表される繰り返し単位を有する樹脂であることが好ましい。
【0227】
【化48】

【0228】
一般式(II)及び(III)に於いて、
Rfは、フッ素原子又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。
は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基又はシクロアルケニル基を表す。
は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、トリアルキルシリル基又は環状シロキサン構造を有する基を表す。
は、単結合又は2価の連結基を表す。
m及びnは、繰り返し単位の比率を表す数字であり、0<m<100、0<n<100である。
【0229】
一般式(II)に於ける、Rfは、一般式(Ia)に於ける、Rfと同様のものである。
のアルキル基は、炭素数3〜20の直鎖若しくは分岐状アルキル基が好ましい。
シクロアルキル基は、炭素数3〜20のシクロアルキル基が好ましい。
アルケニル基は、炭素数3〜20のアルケニル基が好ましい。
シクロアルケニル基は、炭素数3〜20のシクロアルケニル基が好ましい。
m=30〜70、n=30〜70であることが好ましく、m=40〜60、n=40〜60であることがより好ましい。
【0230】
以下、一般式(II)で表される繰り返し単位及び一般式(III)で表される繰り返し単位を有する疎水性樹脂(C)の具体例を挙げるが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0231】
【化49】

【0232】
【化50】

【0233】
疎水性樹脂(C)がフッ素原子を有する場合、フッ素原子の含有量は、疎水性樹脂(C)の分子量に対し、5〜80質量%であることが好ましく、10〜80質量%であることがより好ましい。また、フッ素原子を含む繰り返し単位が、疎水性樹脂(C)中10〜100質量%であることが好ましく、30〜100質量%であることがより好ましい。
疎水性樹脂(C)が珪素原子を有する場合、珪素原子の含有量は、疎水性樹脂(C)の分子量に対し、2〜50質量%であることが好ましく、2〜30質量%であることがより好ましい。また、珪素原子を含む繰り返し単位は、疎水性樹脂(C)中10〜100質量%であることが好ましく、20〜100質量%であることがより好ましい。
【0234】
疎水性樹脂(C)の標準ポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは500〜50000で、より好ましくは1000〜15000、更により好ましくは1500〜8000、特に好ましくは2000〜6000である。
【0235】
疎水性樹脂(C)は、樹脂(A)同様、金属等の不純物が少ないのは当然のことながら、残留単量体やオリゴマー成分が0〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0〜5質量%、0〜1質量%が更により好ましい。それにより、液中異物や感度等の経時変化のないレジストが得られる。また、解像度、レジスト形状、レジストパターンの側壁のラフネス、現像スカムなどの点から、分子量分布(Mw/Mn、分散度ともいう)は、1〜3の範囲が好ましく、より好ましくは1〜2、更により好ましくは1〜1.6の範囲であり、特に好ましくは1〜1.3の範囲である。
【0236】
疎水性樹脂(C)は、各種市販品を利用することもできるし、常法に従って(例えばラジカル重合)合成することができる。例えば、一般的合成方法としては、モノマー及び重合開始剤を溶剤に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、加熱溶剤にモノマーと重合開始剤の溶液を1〜10時間かけて滴下して加える滴下重合法等が挙げられ、滴下重合法が好ましい。溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチルのようなエステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、更には後述のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノンのような本発明の組成物を溶解する溶剤が挙げられる。より好ましくは、本発明のポジ型レジスト組成物に用いられる溶剤と同一の溶剤を用いて重合することが好ましい。これにより保存時のパーティクルの発生が抑制できる。
【0237】
重合反応は、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。重合開始剤としては、市販のラジカル重合開始剤(アゾ系重合開始剤、パーオキサイド等)を用いて重合を開始させる。ラジカル重合開始剤としては、アゾ系重合開始剤が好ましく、エステル基、シアノ基、カルボキシル基を有するアゾ系重合開始剤がより好ましい。好ましい重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等が挙げられる。反応液中のモノマー、重合開始剤等の溶質の濃度は、通常5〜50質量%であり、好ましくは30〜50質量%である。反応温度は、通常10℃〜150℃であり、好ましくは30℃〜120℃、更に好ましくは60〜100℃である。
【0238】
反応終了後、室温まで放冷し、精製する。精製は、水洗や適切な溶媒を組み合わせることにより残留単量体やオリゴマー成分を除去する液々抽出法、特定の分子量以下のもののみを抽出除去する限外ろ過等の溶液状態での精製方法や、樹脂溶液を貧溶媒へ滴下することで樹脂を貧溶媒中に凝固させることにより残留単量体等を除去する再沈澱法やろ別した樹脂スラリーを貧溶媒で洗浄する等の固体状態での精製方法等の通常の方法を適用できる。例えば、上記樹脂が難溶或いは不溶の溶媒(貧溶媒)を、該反応溶液の10倍以下の体積量、好ましくは10〜5倍の体積量で、接触させることにより樹脂を固体として析出させる。
【0239】
ポリマー溶液からの沈殿又は再沈殿操作の際に用いる溶媒(沈殿又は再沈殿溶媒)としては、該ポリマーの貧溶媒であればよく、ポリマーの種類に応じて、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ニトロ化合物、エーテル、ケトン、エステル、カーボネート、アルコール、カルボン酸、水、これらの溶媒を含む混合溶媒等の中から適宜選択して使用できる。これらの中でも、沈殿又は再沈殿溶媒として、少なくともアルコール(特に、メタノールなど)又は水を含む溶媒が好ましい。
【0240】
沈殿又は再沈殿溶媒の使用量は、効率や収率等を考慮して適宜選択できるが、一般には、ポリマー溶液100質量部に対して、100〜10000質量部、好ましくは200〜2000質量部、さらに好ましくは300〜1000質量部である。
【0241】
沈殿又は再沈殿する際の温度としては、効率や操作性を考慮して適宜選択できるが、通常0〜50℃程度、好ましくは室温付近(例えば20〜35℃程度)である。沈殿又は再沈殿操作は、攪拌槽などの慣用の混合容器を用い、バッチ式、連続式等の公知の方法により行うことができる。
【0242】
沈殿又は再沈殿したポリマーは、通常、濾過、遠心分離等の慣用の固液分離に付し、乾燥して使用に供される。濾過は、耐溶剤性の濾材を用い、好ましくは加圧下で行われる。乾燥は、常圧又は減圧下(好ましくは減圧下)、通常30〜100℃程度、好ましくは30〜50℃程度の温度で行われる。
【0243】
尚、一度、樹脂を析出させて、分離した後に、再び溶媒に溶解させ、該樹脂が難溶或いは不溶の溶媒と接触させてもよい。即ち、上記ラジカル重合反応終了後、該ポリマーが難溶或いはは不溶の溶媒を接触させ、樹脂を析出させ(工程a)、樹脂を溶液から分離し(工程b)、改めて溶媒に溶解させ樹脂溶液Aを調製(工程c)、その後、該樹脂溶液Aに、該樹脂が難溶或いは不溶の溶媒を、樹脂溶液Aの10倍未満の体積量(好ましくは5倍以下の体積量)で、接触させることにより樹脂固体を析出させ(工程d)、析出した樹脂を分離する(工程e)ことを含む方法でもよい。
【0244】
「樹脂(A)の重量平均分子量−疎水樹脂(C)の重量平均分子量」(「重量平均分子量差」ともいう)は、3000以上であり、好ましくは4000以上、より好ましくは5000以上である。重量平均分子量差は、20000以下が好ましく、より好ましくは10000以下、更により好ましくは8000以下、特に好ましくは7000以下である。
重量平均分子量差を3000以上とすることにより、レジスト表面の溶解速度が向上するので、T−トップ形状になりにくくパターン倒れ性能が向上し、現像欠陥も良化する。
【0245】
以下に疎水性樹脂(C)の具体例を示すが、本発明は、これに限定されるものではない。また、下記表1に、各樹脂における繰り返し単位の組成(モル比、各繰り返し単位と左から順に対応)、重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を示す。
【0246】
【化51】

【0247】
【化52】

【0248】
【化53】

【0249】
【化54】

【0250】
【表1】

【0251】
(D)溶剤
前記各成分を溶解させてポジ型レジスト組成物を調製する際に使用することができる溶剤としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、炭素数4〜10の環状ラクトン、炭素数4〜10の、環を含有しても良いモノケトン化合物、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、ピルビン酸アルキル等の有機溶剤を挙げることができる。
【0252】
アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレートとしては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートが好ましく挙げられる。
アルキレングリコールモノアルキルエーテルとしては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルを好ましく挙げられる。
【0253】
乳酸アルキルエステルとしては、例えば、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチルを好ましく挙げられる。
アルコキシプロピオン酸アルキルとしては、例えば、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチルを好ましく挙げられる。
【0254】
炭素数4〜10の環状ラクトンとしては、例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、β−メチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−オクタノイックラクトン、α−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンが好ましく挙げられる。
【0255】
炭素数4〜10の、環を含有しても良いモノケトン化合物としては、例えば、2−ブタノン、3−メチルブタノン、ピナコロン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、3−メチル−2−ペンタノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−メチル−3−ペンタノン、4,4−ジメチル−2−ペンタノン、2,4−ジメチル−3−ペンタノン、2,2,4,4−テトラメチル−3−ペンタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、5−メチル−3−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−メチル−3−ヘプタノン、5−メチル−3−ヘプタノン、2,6−ジメチル−4−ヘプタノン、2−オクタノン、3−オクタノン、2−ノナノン、3−ノナノン、5−ノナノン、2−デカノン、3−デカノン、、4−デカノン、5−ヘキセン−2−オン、3−ペンテン−2−オン、シクロペンタノン、2−メチルシクロペンタノン、3−メチルシクロペンタノン、2,2−ジメチルシクロペンタノン、2,4,4−トリメチルシクロペンタノン、シクロヘキサノン、3−メチルシクロヘキサノン、4−メチルシクロヘキサノン、4−エチルシクロヘキサノン、2,2−ジメチルシクロヘキサノン、2,6−ジメチルシクロヘキサノン、2,2,6−トリメチルシクロヘキサノン、シクロヘプタノン、2−メチルシクロヘプタノン、3−メチルシクロヘプタノンが好ましく挙げられる。
【0256】
アルキレンカーボネートとしては、例えば、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネートが好ましく挙げられる。
アルコキシ酢酸アルキルとしては、例えば、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル、酢酸−2−(2−エトキシエトキシ)エチル、酢酸−3−メトキシ−3−メチルブチル、酢酸−1−メトキシ−2−プロピルが好ましく挙げられる。
ピルビン酸アルキルとしては、例えば、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピルが好ましく挙げられる。
好ましく使用できる溶剤としては、常温常圧下で、沸点130℃以上の溶剤が挙げられる。具体的には、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、乳酸エチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸−2−エトキシエチル、酢酸−2−(2−エトキシエトキシ)エチル、プロピレンカーボネートが挙げられる。
本発明に於いては、上記溶剤を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0257】
本発明においては、有機溶剤として構造中に水酸基を含有する溶剤と、水酸基を含有しない溶剤とを混合した混合溶剤を使用してもよい。
水酸基を含有する溶剤としては、例えば、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、乳酸エチル等を挙げることができ、これらの内でプロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチルが特に好ましい。
水酸基を含有しない溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、酢酸ブチル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等を挙げることができ、これらの内で、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、酢酸ブチルが特に好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノンが最も好ましい。
水酸基を含有する溶剤と水酸基を含有しない溶剤との混合比(質量)は、1/99〜99/1、好ましくは10/90〜90/10、更に好ましくは20/80〜60/40である。水酸基を含有しない溶剤を50質量%以上含有する混合溶剤が塗布均一性の点で特に好ましい。
【0258】
溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有する2種類以上の混合溶剤であることが好ましい。
【0259】
(E)塩基性化合物
本発明のポジ型レジスト組成物は、露光から加熱までの経時による性能変化を低減するために、(E)塩基性化合物を含有することが好ましい。
塩基性化合物としては、好ましくは、下記式(A)〜(E)で示される構造を有する化合物を挙げることができる。
【0260】
【化55】

【0261】
一般式(A)〜(E)中、
200、R201及びR202は、同一でも異なってもよく、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)又はアリール基(炭素数6〜20)を表し、ここで、R201とR202は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0262】
上記アルキル基について、置換基を有するアルキル基としては、炭素数1〜20のアミノアルキル基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基、または炭素数1〜20のシアノアルキル基が好ましい。
203、R204、R205及びR206は、同一でも異なってもよく、炭素数1〜20個のアルキル基を表す。
これら一般式(A)〜(E)中のアルキル基は、無置換であることがより好ましい。
【0263】
好ましい化合物として、グアニジン、アミノピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピペラジン、アミノモルホリン、アミノアルキルモルフォリン、ピペリジン等を挙げることができ、更に好ましい化合物として、イミダゾール構造、ジアザビシクロ構造、オニウムヒドロキシド構造、オニウムカルボキシレート構造、トリアルキルアミン構造、アニリン構造又はピリジン構造を有する化合物、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体等を挙げることができる。
【0264】
イミダゾール構造を有する化合物としてはイミダゾール、2、4、5−トリフェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール等が挙げられる。ジアザビシクロ構造を有する化合物としては1、4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1、5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ−5−エン、1、8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカー7−エン等が挙げられる。オニウムヒドロキシド構造を有する化合物としてはトリアリールスルホニウムヒドロキシド、フェナシルスルホニウムヒドロキシド、2−オキソアルキル基を有するスルホニウムヒドロキシド、具体的にはトリフェニルスルホニウムヒドロキシド、トリス(t−ブチルフェニル)スルホニウムヒドロキシド、ビス(t−ブチルフェニル)ヨードニウムヒドロキシド、フェナシルチオフェニウムヒドロキシド、2−オキソプロピルチオフェニウムヒドロキシド等が挙げられる。オニウムカルボキシレート構造を有する化合物としてはオニウムヒドロキシド構造を有する化合物のアニオン部がカルボキシレートになったものであり、例えばアセテート、アダマンタンー1−カルボキシレート、パーフロロアルキルカルボキシレート等が挙げられる。トリアルキルアミン構造を有する化合物としては、トリ(n−ブチル)アミン、トリ(n−オクチル)アミン等を挙げることができる。アニリン化合物としては、2,6−ジイソプロピルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジブチルアニリン、N,N−ジヘキシルアニリン等を挙げることができる。水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリス(メトキシエトキシエチル)アミン等を挙げることができる。水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体としては、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン等を挙げることができる。
これらの塩基性化合物は、単独であるいは2種以上一緒に用いられる。
【0265】
塩基性化合物の使用量は、ポジ型レジスト組成物の固形分を基準として、通常、0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%である。
【0266】
酸発生剤と塩基性化合物の組成物中の使用割合は、酸発生剤/塩基性化合物(モル比)=2.5〜300であることが好ましい。即ち、感度、解像度の点からモル比が2.5以上が好ましく、露光後加熱処理までの経時でのレジストパターンの太りによる解像度の低下抑制の点から300以下が好ましい。酸発生剤/塩基性化合物(モル比)は、より好ましくは5.0〜200、更に好ましくは7.0〜150である。
【0267】
(F)界面活性剤
本発明のポジ型レジスト組成物は、更に(F)界面活性剤を含有することが好ましく、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤(フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッ素原子と珪素原子の両方を有する界面活性剤)のいずれか、あるいは2種以上を含有することがより好ましい。
【0268】
本発明のポジ型レジスト組成物が上記(F)界面活性剤を含有することにより、250nm以下、特に220nm以下の露光光源の使用時に、良好な感度及び解像度で、密着性及び現像欠陥の少ないレジストパターンを与えることが可能となる。
フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤としては、例えば特開昭62−36663号公報、特開昭61−226746号公報、特開昭61−226745号公報、特開昭62−170950号公報、特開昭63−34540号公報、特開平7−230165号公報、特開平8−62834号公報、特開平9−54432号公報、特開平9−5988号公報、特開2002−277862号公報、米国特許第5405720号明細書、同5360692号明細書、同5529881号明細書、同5296330号明細書、同5436098号明細書、同5576143号明細書、同5294511号明細書、同5824451号明細書記載の界面活性剤を挙げることができ、下記市販の界面活性剤をそのまま用いることもできる。
使用できる市販の界面活性剤として、例えばエフトップEF301、EF303、(新秋田化成(株)製)、フロラードFC430、431、4430(住友スリーエム(株)製)、メガファックF171、F173、F176、F189、F113、F110、F177、F120、R08(大日本インキ化学工業(株)製)、サーフロンS−382、SC101、102、103、104、105、106(旭硝子(株)製)、トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)、GF−300、GF−150(東亜合成化学(株)製)、サーフロンS−393(セイミケミカル(株)製)、エフトップEF121、EF122A、EF122B、RF122C、EF125M、EF135M、EF351、352、EF801、EF802、EF601((株)ジェムコ製)、PF636、PF656、PF6320、PF6520(OMNOVA社製)、FTX−204D、208G、218G、230G、208D、212D、218D、222D((株)ネオス製)等のフッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤を挙げることができる。またポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)もシリコン系界面活性剤として用いることができる。
【0269】
また、界面活性剤としては、上記に示すような公知のものの他に、テロメリゼーション法(テロマー法ともいわれる)もしくはオリゴメリゼーション法(オリゴマー法ともいわれる)により製造されたフルオロ脂肪族化合物から導かれたフルオロ脂肪族基を有する重合体を用いた界面活性剤を用いることが出来る。フルオロ脂肪族化合物は、特開2002−90991号公報に記載された方法によって合成することが出来る。
フルオロ脂肪族基を有する重合体としては、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート及び/又は(ポリ(オキシアルキレン))メタクリレートとの共重合体が好ましく、不規則に分布しているものでも、ブロック共重合していてもよい。また、ポリ(オキシアルキレン)基としては、ポリ(オキシエチレン)基、ポリ(オキシプロピレン)基、ポリ(オキシブチレン)基などが挙げられ、また、ポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとオキシエチレンとのブロック連結体)やポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとのブロック連結体)など同じ鎖長内に異なる鎖長のアルキレンを有するようなユニットでもよい。さらに、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体は2元共重合体ばかりでなく、異なる2種以上のフルオロ脂肪族基を有するモノマーや、異なる2種以上の(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)などを同時に共重合した3元系以上の共重合体でもよい。
【0270】
例えば、市販の界面活性剤として、メガファックF178、F−470、F−473、F−475、F−476、F−472(大日本インキ化学工業(株)製)を挙げることができる。さらに、C13基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、C基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシエチレン))アクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体などを挙げることができる。
【0271】
また、本発明では、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤以外の他の界面活性剤を使用することもできる。具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテ−ト、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤等を挙げることができる。
【0272】
これらの界面活性剤は単独で使用してもよいし、また、いくつかの組み合わせで使用してもよい。
【0273】
(F)界面活性剤の使用量は、ポジ型レジスト組成物全量(溶剤を除く)に対して、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%である。
【0274】
(G)カルボン酸オニウム塩
本発明におけるポジ型レジスト組成物は、(G)カルボン酸オニウム塩を含有しても良い。カルボン酸オニウム塩としては、カルボン酸スルホニウム塩、カルボン酸ヨードニウム塩、カルボン酸アンモニウム塩などを挙げることができる。特に、(G)カルボン酸オニウム塩としては、ヨードニウム塩、スルホニウム塩が好ましい。更に、本発明の(H)カルボン酸オニウム塩のカルボキシレート残基が芳香族基、炭素−炭素2重結合を含有しないことが好ましい。特に好ましいアニオン部としては、炭素数1〜30の直鎖、分岐、単環または多環環状アルキルカルボン酸アニオンが好ましい。さらに好ましくはこれらのアルキル基の一部または全てがフッ素置換されたカルボン酸のアニオンが好ましい。アルキル鎖中に酸素原子を含んでいても良い。これにより220nm以下の光に対する透明性が確保され、感度、解像力が向上し、疎密依存性、露光マージンが改良される。
【0275】
フッ素置換されたカルボン酸のアニオンとしては、フロロ酢酸、ジフロロ酢酸、トリフロロ酢酸、ペンタフロロプロピオン酸、ヘプタフロロ酪酸、ノナフロロペンタン酸、パーフロロドデカン酸、パーフロロトリデカン酸、パーフロロシクロヘキサンカルボン酸、2,2−ビストリフロロメチルプロピオン酸のアニオン等が挙げられる。
【0276】
これらの(G)カルボン酸オニウム塩は、スルホニウムヒドロキシド、ヨードニウムヒドロキシド、アンモニウムヒドロキシドとカルボン酸を適当な溶剤中酸化銀と反応させることによって合成できる。
【0277】
(G)カルボン酸オニウム塩の組成物中の含量は、組成物の全固形分に対し、一般的には0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは1〜7質量%である。
【0278】
(H)その他の添加剤
本発明のポジ型レジスト組成物には、必要に応じてさらに染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、アルカリ可溶性樹脂、溶解阻止剤及び現像液に対する溶解性を促進させる化合物
(例えば、分子量1000以下のフェノール化合物、カルボキシル基を有する脂環族、又は脂肪族化合物)等を含有させることができる。
【0279】
このような分子量1000以下のフェノール化合物は、例えば、特開平4−122938号、特開平2−28531号、米国特許第4,916,210、欧州特許第219294等に記載の方法を参考にして、当業者において容易に合成することができる。
カルボキシル基を有する脂環族、又は脂肪族化合物の具体例としてはコール酸、デオキシコール酸、リトコール酸などのステロイド構造を有するカルボン酸誘導体、アダマンタンカルボン酸誘導体、アダマンタンジカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0280】
(I)パターン形成方法
本発明のポジ型レジスト組成物は、解像力向上の観点から、膜厚30〜250nmで使用されることが好ましく、より好ましくは、膜厚30〜200nmで使用されることが好ましい。ポジ型レジスト組成物中の固形分濃度を適切な範囲に設定して適度な粘度をもたせ、塗布性、製膜性を向上させることにより、このような膜厚とすることができる。
ポジ型レジスト組成物中の全固形分濃度は、一般的には1〜10質量%、より好ましくは1〜8.0質量%、さらに好ましくは1.0〜6.0質量%である。
【0281】
本発明のポジ型レジスト組成物は、上記の成分を所定の有機溶剤、好ましくは前記混合溶剤に溶解し、フィルター濾過した後、次のように所定の支持体上に塗布して用いる。フィルター濾過に用いるフィルターは0.1ミクロン以下、より好ましくは0.05ミクロン以下、更に好ましくは0.03ミクロン以下のポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、ナイロン製のものが好ましい。
【0282】
例えば、ポジ型レジスト組成物を精密集積回路素子の製造に使用されるような基板(例:シリコン/二酸化シリコン被覆)上にスピナー、コーター等の適当な塗布方法により塗布、乾燥し、感光性膜を形成する。なお、予め公知の反射防止膜を塗設してもよい。
当該感光性膜に、所定のマスクを通して活性光線又は放射線を照射し、好ましくはベーク(加熱)を行い、現像、リンスする。これにより良好なパターンを得ることができる。
【0283】
活性光線又は放射線としては、赤外光、可視光、紫外光、遠紫外光、X線、電子線等を挙げることができるが、好ましくは250nm以下、より好ましくは220nm以下、特に好ましくは1〜200nmの波長の遠紫外光、具体的には、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、Fエキシマレーザー(157nm)、X線、電子ビーム等であり、ArFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー、EUV(13nm)、電子ビームが好ましい。
【0284】
レジスト膜を形成する前に、基板上に予め反射防止膜を塗設してもよい。
反射防止膜としては、チタン、二酸化チタン、窒化チタン、酸化クロム、カーボン、アモルファスシリコン等の無機膜型と、吸光剤とポリマー材料からなる有機膜型のいずれも用いることができる。また、有機反射防止膜として、ブリューワーサイエンス社製のDUV30シリーズや、DUV−40シリーズ、シプレー社製のAR−2、AR−3、AR−5等の市販の有機反射防止膜を使用することもできる。
【0285】
現像工程では、アルカリ現像液を次のように用いる。レジスト組成物のアルカリ現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピヘリジン等の環状アミン類等のアルカリ性水溶液を使用することができる。
さらに、上記アルカリ現像液にアルコール類、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常0.1〜20質量%である。
アルカリ現像液のpHは、通常10.0〜15.0である。
さらに、上記アルカリ性水溶液にアルコール類、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
リンス液としては、純水を使用し、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
また、現像処理または、リンス処理の後に、パターン上に付着している現像液またはリンス液を超臨界流体により除去する処理を行うことができる。
【0286】
本発明のポジ型レジスト組成物は、多層レジストプロセス(特に3層レジストプロセス)に適用してもよい。多層レジスト法は、以下のプロセスを含むものである。
(a) 被加工基板上に有機材料からなる下層レジスト層を形成する。
(b) 下層レジスト層上に中間層及び放射線照射で架橋もしくは分解する有機材料からなる上層レジスト層を順次積層する。
(c) 該上層レジスト層に所定のパターンを形成後、中間層、下層及び基板を順次エッチングする。
中間層としては、一般にオルガノポリシロキサン(シリコーン樹脂)あるいはSiO塗布液(SOG)が用いられる。下層レジストとしては、適当な有機高分子膜が用いられるが、各種公知のフォトレジストを使用してもよい。たとえば、フジフイルムアーチ社製FHシリーズ、FHiシリーズ或いは住友化学社製PFIシリーズの各シリーズを例示することができる。
下層レジスト層の膜厚は、0.1〜4.0μmであることが好ましく、より好ましくは0.2〜2.0μmであり、特に好ましくは0.25〜1.5μmである。0.1μm以上とすることは、反射防止や耐ドライエッチング性の観点で好ましく、4.0μm以下とすることはアスペクト比や、形成した微細パターンのパターン倒れの観点で好ましい。
【0287】
活性光線又は放射線の照射時にレジスト膜とレンズの間に空気よりも屈折率の高い液体
(液浸媒体)を満たして露光(液浸露光)を行ってもよい。これにより解像性を高めることができる。用いる液浸媒体としては空気よりも屈折率の高い液体であればいずれのものでも用いることができるが好ましくは純水である。また、液浸露光を行なう際に液浸媒体と感光性膜が直接触れ合わないようにするために感光性膜の上にさらにオーバーコート層を設けても良い。これにより感光性膜から液浸媒体への組成物の溶出が抑えられ、現像欠陥が低減する。
【0288】
液浸露光する際に使用する液浸液について、以下に説明する。
液浸液は、露光波長に対して透明であり、かつレジスト上に投影される光学像の歪みを最小限に留めるよう、屈折率の温度係数ができる限り小さい液体が好ましいが、特に露光光源がArFエキシマレーザー(波長;193nm)である場合には、上述の観点に加えて、入手の容易さ、取り扱いのし易さといった点から水を用いるのが好ましい。
また、さらに屈折率が向上できるという点で屈折率1.5以上の媒体を用いることもできる。この媒体は、水溶液でもよく有機溶剤でもよい。
【0289】
液浸液として水を用いる場合、水の表面張力を減少させるとともに、界面活性力を増大させるために、ウェハ上のレジスト層を溶解させず、且つレンズ素子の下面の光学コートに対する影響が無視できる添加剤(液体)を僅かな割合で添加しても良い。その添加剤としては水とほぼ等しい屈折率を有する脂肪族系のアルコールが好ましく、具体的にはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。水とほぼ等しい屈折率を有するアルコールを添加することにより、水中のアルコール成分が蒸発して含有濃度が変化しても、液体全体としての屈折率変化を極めて小さくできるといった利点が得られる。一方で、193nm光に対して不透明な物質や屈折率が水と大きく異なる不純物が混入した場合、レジスト上に投影される光学像の歪みを招くため、使用する水としては、蒸留水が好ましい。更にイオン交換フィルター等を通して濾過を行った純水を用いてもよい。
【0290】
水の電気抵抗は、18.3MQcm以上であることが望ましく、TOC(有機物濃度)は20ppb以下であることが望ましく、脱気処理をしていることが望ましい。
また、液浸液の屈折率を高めることにより、リソグラフィー性能を高めることが可能である。このような観点から、屈折率を高めるような添加剤を水に加えたり、水の代わりに重水(DO)を用いてもよい。
【0291】
本発明のポジ型レジスト組成物は、レジスト膜とした際に水のレジスト膜に対する後退接触角が70°以上であることが好ましい。ここで、後退接触角は常温常圧下におけるものである。後退接触角は、レジスト膜を傾けて液滴が落下し始めるときの後退の接触角である。
【0292】
本発明のポジ型レジスト組成物によるレジスト膜と液浸液との間には、レジスト膜を直接、液浸液に接触させないために、液浸液難溶性膜(以下、「トップコート」ともいう)を設けてもよい。トップコートに必要な機能としては、レジスト上層部への塗布適正、放射線、特に193nmに対する透明性、液浸液難溶性である。トップコートは、レジストと混合せず、さらにレジスト上層に均一に塗布できることが好ましい。
トップコートは、193nm透明性という観点からは、芳香族を含有しないポリマーが好ましく、具体的には、炭化水素ポリマー、アクリル酸エステルポリマー、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリビニルエーテル、シリコン含有ポリマー、フッ素含有ポリマーなどが挙げられる。疎水性樹脂(C)をトップコートとして用いても良い。トップコートから液浸液へ不純物が溶出すると光学レンズを汚染するという観点からは、トップコートに含まれるポリマーの残留モノマー成分は少ない方が好ましい。
【0293】
トップコートを剥離する際は、現像液を使用してもよいし、別途剥離剤を使用してもよい。剥離剤としては、レジストへの浸透が小さい溶剤が好ましい。剥離工程がレジストの現像処理工程と同時にできるという点では、アルカリ現像液により剥離できることが好ましい。アルカリ現像液で剥離するという観点からは、トップコートは酸性が好ましいが、レジストとの非インターミクス性の観点から、中性であってもアルカリ性であってもよい。
トップコートと液浸液との間には屈折率の差がない方が、解像力が向上する。ArFエキシマレーザー(波長:193nm)において、液浸液として水を用いる場合には、ArF液浸露光用トップコートは、液浸液の屈折率に近いことが好ましい。屈折率を液浸液に近くするという観点からは、トップコート中にフッ素原子を有することが好ましい。また、透明性・屈折率の観点から薄膜の方が好ましい。
【0294】
トップコートがレジストと混合せず、さらに液浸液とも混合しないことが好ましい。この観点から、液浸液が水の場合には、トップコート溶剤はレジスト溶媒難溶かつ非水溶性の媒体であることが好ましい。さらに、液浸液が有機溶剤である場合には、トップコートは水溶性であっても非水溶性であってもよい。
【実施例】
【0295】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明の内容がこれにより限定されるものではない。
【0296】
合成例1(樹脂(1)の合成)
窒素気流下、シクロヘキサノン8.6gを3つ口フラスコに入れ、これを80℃に加熱した。これに2−アダマンチルイソプロピルメタクリレート9.8g、ジヒドロキシアダマンチルメタクリレート4.4g、ノルボルナンラクトンメタクリレート8.9g、重合開始剤V−601(和光純薬製)をモノマーに対し8mol%をシクロヘキサノン79gに溶解させた溶液を6時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに80℃で2時間反応させた。反応液を放冷後ヘキサン800m/酢酸エチル200mlの混合液に20分かけて滴下し、析出した粉体をろ取、乾燥すると、樹脂(1)が19g得られた。得られた樹脂(1)の重量平均分子量は、標準ポリスチレン換算で8800、分散度(Mw/Mn)は1.9であった。
【0297】
同様にして樹脂(2)〜(19)を合成した。
【0298】
下記表2〜3に、樹脂(1)〜(19)に於ける、モノマー、そのモル比率(構造式における左から順)、重量平均分子量、分散度を示す。
【0299】
【表2】

【0300】
【表3】

【0301】
合成例2(疎水性樹脂(C−20)の合成)
ヘキサフルオロイソプピルアクリレート(和光純薬製)47.2gを、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解し、固形分濃度20%の溶液170gを調製した。この溶液に和光純薬工業(株)製重合開始剤V−601を8mol%(3.68g)加え、これを窒素雰囲気下、4時間かけて80℃に加熱したプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート20.0gに滴下した。滴下終了後、反応液を2時間攪拌し、反応液を得た。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、20倍量のメタノール/水=8/1の混合溶媒に滴下した。分離した油状化合物をデカンテーションによって回収し、目的物である疎水性樹脂(C−20)を24.1g得た。
GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量は4000、分散度は1.4であった。
【0302】
実施例1〜19及び比較例1〜6
<レジスト調製>
下記表4〜5に示す成分を溶剤に溶解させ、それぞれについて固形分濃度6質量%の溶液を調製し、これを0.1μmのポリエチレンフィルターで濾過してポジ型レジスト溶液を調製した。調製したポジ型レジスト組成物を下記の方法で評価し、結果を同表に示した。尚、同表における各成分について、複数使用した場合の比は質量比である。wt%は、固形分を基準とする。また、重量平均分子量差は、樹脂(A)の重量平均分子量から疎水性樹脂(C)の重量平均分子量を引いた数値を示す。
【0303】
〔画像性能試験〕
(露光条件(1))
シリコンウエハー上に有機反射防止膜ARC29A(日産化学社製)を塗布し、205℃で、60秒間ベークを行い、78nmの反射防止膜を形成した。その上に調製したポジ型レジスト組成物を塗布し、130℃で、60秒間ベークを行い、250nmのレジスト膜を形成した。得られたウエハーをArFエキシマレーザースキャナー(ASML社製 PAS5500/1100、NA0.75、σo/σi=0.85/0.55)を用いてパターン露光した。その後130℃で、60秒間加熱した後、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液(2.38質量%)で30秒間現像し、純水でリンスした後、スピン乾燥してレジストパターンを得た。
【0304】
(露光条件(2))
本条件は、純水を用いた液浸露光法によりレジストパターンを形成するものである。
シリコンウエハー上に有機反射防止膜ARC29A(日産化学社製)を塗布し、205℃で、60秒間ベークを行い、78nmの反射防止膜を形成した。その上に調製したポジ型レジスト組成物を塗布し、130℃で、60秒間ベークを行い、250nmのレジスト膜を形成した。得られたウエハーをArFエキシマレーザー液浸スキャナー(NA0.85)を用い、パターン露光した。液浸液としては超純水を使用した。その後130℃で、60秒間加熱した後、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液(2.38質量%)で30秒間現像し、純水でリンスした後、スピン乾燥してレジストパターンを得た。
【0305】
〔パターン形状〕
露光条件(1)及び(2)に於いて、90nmのラインアンドスペースパターンを再現する露光量を最適露光量とし、ラインアンドスペース1:1の密集パターンについて、最適露光量で露光した際に得られたパターンのプロファイルを、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所S−9206)にて観察して、評価した。
【0306】
〔パターン倒れ〕
露光条件(1)及び(2)に於いて、パターン倒れは、90nmのラインアンドスペースパターンを再現する露光量を最適露光量とし、ラインアンドスペース1:1の密集パターン及びラインアンドスペース1:10の孤立パターンについて、最適露光量で露光した際により微細なマスクサイズにおいてパターンが倒れずに解像する線幅を限界パターン倒れ線幅とした。値が小さいほど、より微細なパターンが倒れずに解像することを表し、パターン倒れが発生しにくいことを示す。
【0307】
〔現像欠陥評価〕
露光条件(1)に於いて、ケー・エル・エー・テンコール社製の欠陥検査装置KLA2360(商品名)を用い、欠陥検査装置のピクセルサイズを0.16μmに、また閾値を20に設定して、ランダムモードで測定し、比較イメージとピクセル単位の重ね合わせによって生じる差異から抽出される現像欠陥を検出して、単位面積あたりの現像欠陥数を算出した。値が0.5未満のものを○、0.5〜0.8のものを△、0.8を越えるものを×とした。値が小さいほど良好な性能であることを示す。
【0308】
【表4】

【0309】
【表5】

【0310】
表4〜5に於ける、記号は、次の通りである。
【0311】
酸発生剤は先に例示したものに対応する。
【0312】
N−1:N,N−ジブチルアニリン
N−2:N,N−ジヘキシルアニリン
N−3:2,6−ジイソプロピルアニリン
N−4:トリ−n−オクチルアミン
N−5:N,N−ジヒドロキシエチルアニリン
N−6:2,4,5−トリフェニルイミダゾール
【0313】
W−1:メガファックF176(大日本インキ化学工業(株)製)
(フッ素系)
W−2:メガファックR08(大日本インキ化学工業(株)製)
(フッ素及びシリコン系)
W−3:ポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)
(シリコン系)
W−4:トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)
W−5:PF656(OMNOVA社製、フッ素系)
W−6:PF6320(OMNOVA社製、フッ素系)
【0314】
SL−1:シクロヘキサノン
SL−2:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
SL−3:乳酸エチル
SL−4:プロピレングリコールモノメチルエーテル
SL−5:γ−ブチロラクトン
SL−6:プロピレンカーボネート
【0315】
表4〜5に於ける結果より、本発明のポジ型レジスト組成物は、通常露光のみならず液浸露光においても、レジストパターンの倒れ、プロファイルの劣化、および現像欠陥が良好であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解度が増大する樹脂、
(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物、
(C)疎水性樹脂及び
(D)溶剤を含有し、樹脂(A)の重量平均分子量と疎水性樹脂(C)の重量平均分子量との差が、下記式を満たすことを特徴とするレジスト組成物。
樹脂(A)の重量平均分子量 − 疎水性樹脂(C)の重量平均分子量 ≧3000
【請求項2】
疎水性樹脂(C)が、フッ素原子及び珪素原子の少なくともいずれかを有することを特徴とする請求項1に記載のレジスト組成物。
【請求項3】
樹脂(A)の重量平均分子量と疎水性樹脂(C)の重量平均分子量との差が、下記式を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載のレジスト組成物。
樹脂(A)の重量平均分子量 − 疎水性樹脂(C)の重量平均分子量 ≧4000
【請求項4】
樹脂(A)の重量平均分子量と疎水性樹脂(C)の重量平均分子量との差が、下記式を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のレジスト組成物。
樹脂(A)の重量平均分子量 − 疎水性樹脂(C)の重量平均分子量 ≧5000
【請求項5】
疎水性樹脂(C)が、下記一般式(F3a)で表される基を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のレジスト組成物。
【化1】


一般式(F3a)に於いて、
62a及びR63aは、各々独立に、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。R62aとR63aは、互いに連結して環を形成してもよい。
64aは、水素原子、フッ素原子又はアルキル基を表す。
【請求項6】
疎水性樹脂(C)が、一般式(F3a)で表される基を有するアクリレート又はメタクリレートによる繰り返し単位を有することを特徴とする請求項5に記載のレジスト組成物。
【請求項7】
疎水性樹脂(C)が、下記一般式(CS−1)〜(CS−3)で表される基を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のレジスト組成物。
【化2】


一般式(CS−1)〜(CS−3)に於いて、
12〜R26は、各々独立に、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
〜Lは、単結合又は2価の連結基を表す。
nは、1〜5の整数を表す。
【請求項8】
疎水性樹脂(C)が、下記の樹脂(C−1)〜(C−6)から選ばれるいずれかの樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のレジスト組成物。
(C−1)フルオロアルキル基を有する繰り返し単位(a)を有する樹脂。
(C−2)トリアルキルシリル基又は環状シロキサン構造を有する繰り返し単位(b)を有する樹脂。
(C−3)フルオロアルキル基を有する繰り返し単位(a)と、分岐状アルキル基、シクロアルキル基、分岐状アルケニル基、シクロアルケニル基又はアリール基を有する繰り返し単位(c)とを有する樹脂。
(C−4)トリアルキルシリル基又は環状シロキサン構造を有する繰り返し単位(b)と、分岐状アルキル基、シクロアルキル基、分岐状アルケニル基、シクロアルケニル基又はアリール基を有する繰り返し単位(c)とを有する樹脂。
(C−5)フルオロアルキル基を有する繰り返し単位(a)と、トリアルキルシリル基又は環状シロキサン構造を有する繰り返し単位(b)とを有する樹脂。
(C−6)フルオロアルキル基を有する繰り返し単位(a)と、トリアルキルシリル基又は環状シロキサン構造を有する繰り返し単位(b)と、分岐状アルキル基、シクロアルキル基、分岐状アルケニル基、シクロアルケニル基又はアリール基を有する繰り返し単位
(c)とを有する樹脂。
【請求項9】
疎水性樹脂(C)が、下記一般式(Ia)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のレジスト組成物。
【化3】


一般式(Ia)に於いて、
Rfは、フッ素原子又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。
は、アルキル基を表す。
は、水素原子又はアルキル基を表す。
【請求項10】
疎水性樹脂(C)が、下記一般式(II)で表される繰り返し単位及び下記一般式(III)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のレジスト組成物。
【化4】


一般式(II)及び(III)に於いて、
Rfは、フッ素原子又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。
は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基又はシクロアルケニル基を表す。
は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、トリアルキルシリル基又は環状シロキサン構造を有する基を表す。
は、単結合又は2価の連結基を表す。
m及びnは、繰り返し単位の比率を表す数字であり、0<m<100、0<n<100である。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のレジスト組成物によりレジスト膜を形成し、露光、現像する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法。

【公開番号】特開2012−123401(P2012−123401A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−11448(P2012−11448)
【出願日】平成24年1月23日(2012.1.23)
【分割の表示】特願2007−152804(P2007−152804)の分割
【原出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】