説明

レジスト組成物

【課題】優れたラインエッジラフネス(LER)を有するレジストパターンを製造し得るレジスト組成物を提供すること。
【解決手段】式(I)で表される化合物と、アルカリ水溶液に不溶又は難溶であり、酸との作用によりアルカリ水溶液に可溶となる樹脂と、酸発生剤とを含有するレジスト組成物。


[式(I)中、AI1は、炭素数1〜49の4価の炭化水素基を表し、該炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。mは2又は3を表し、複数存在する環WI1は、それぞれ独立に炭素数2〜36の飽和複素環を表す。nは1又は2を表す。但し、m+n=4の関係を満たす。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト組成物などに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の微細加工にはレジスト組成物用いられている。このようなレジスト組成物として、例えば、特許文献1には、クエンチャーとしてN−(2−ヒドロキシエチル)モルホリンを含有するレジスト組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−177250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体微細加工の設計寸法がますます微細化していくことに従い、より優れたラインエッジスラフネス(LER)を有するレジストパターンが求められている。このようなレジストパターンを製造するためには、特許文献1記載のレジスト組成物は、いまだ改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の発明を含む。
〔1〕 式(I)

[式(I)中、
I1は、炭素数1〜49の4価の炭化水素基を表し、該炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。
mは2又は3を表し、複数存在する環WI1は、それぞれ独立に炭素数2〜36の飽和複素環を表す。
nは1又は2を表す。但し、m+n=4の関係を満たす。]
で表される化合物と、
アルカリ水溶液に不溶又は難溶であり、酸との作用によりアルカリ水溶液に可溶となる樹脂と、
酸発生剤とを含有するレジスト組成物。
【0006】
〔2〕 前記式(I)のAI1が、式(AI1−1)で表される基である〔1〕記載のレジスト組成物。

[式(AI1−1)中、
I1、XI2、XI3及びXI4は、それぞれ独立に、単結合又は炭素数1〜12の炭化水素基を表し、該炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。
*1、*2、*3及び*4は結合手を表し、これらのうち少なくとも2つが環WI1との結合手を表し、残りはヒドロキシ基との結合手を表す。]
〔3〕 前記式(AI1−1)のXI1、XI2、XI3及びXI4がともにメチレン基である〔2〕記載のレジスト組成物。
〔4〕 前記酸発生剤が、式(B1)で表されるスルホン酸塩である〔1〕〜〔4〕のいずれか記載のレジスト組成物。

[式(B1)中、
1及びQ2は、それぞれ独立に、フッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。
b1は、単結合又は炭素数1〜17の2価の脂肪族飽和炭化水素基を表し、該2価の脂肪族飽和炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置き換わっていてもよい。
Yは、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基を表し、該炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子、スルホニル基又はカルボニル基で置き換わっていてもよい。
+は、有機カチオンを表す。]
〔5〕 さらに、溶剤を含有する〔1〕〜〔4〕のいずれか記載のレジスト組成物。
〔6〕 (1)〔1〕〜〔5〕のいずれか記載のレジスト組成物を基板上に塗布する工程、
(2)塗布後の組成物を乾燥して組成物層を形成する工程、
(3)組成物層に露光する工程、
(4)露光後の組成物層を加熱する工程、及び
(5)加熱後の組成物層を現像する工程、
を含むレジストパターンの製造方法。
【0007】
本発明は、以下の発明をも含む。
〔7〕前記化合物は、
前記式(I)のmが3の化合物である〔1〕記載のレジスト組成物。
〔8〕さらに、塩基性化合物を含有する〔1〕〜〔4〕のいずれか記載のレジスト組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明のレジスト組成物によれば、ラインエッジラフネス(LER)に優れたレジストパターンを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、アルカリ水溶液に不溶又は難溶であり、酸の作用によりアルカリ水溶液に溶解し得る樹脂(以下、場合により「樹脂(A)」という。)と、酸発生剤(以下、場合により「酸発生剤(B)」という。)と、前記式(I)で表される化合物(以下、場合により「化合物(I)」という。)とを含有するレジスト組成物(以下、場合により「本レジスト組成物」という。);
本レジスト組成物を用いるレジストパターンの製造方法
を提供する。
【0010】
本明細書では、特に断りのない限り、炭素数を適宜選択しながら、以下の置換基の例示は、同様の置換基を有するいずれの化学構造式においても適用される。脂肪族炭化水素基のうち、アルキル基のように直鎖状又は分岐状をとることができるものは、そのいずれをも含む。立体異性体が存在する場合は、全ての立体異性体を包含する。以下の置換基の例示において、「C」に付して記載した数値は、各々の基の炭素数を示すものである。
さらに、本明細書において、「(メタ)アクリル系モノマー」とは、「CH2=CH−CO−」又は「CH2=C(CH3)−CO−」の構造を有するモノマーの少なくとも1種を意味する。同様に「(メタ)アクリレート」及び「(メタ)アクリル酸」とは、それぞれ「アクリレート及びメタクリレートの少なくとも1種」並びに「アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種」を意味する。
本明細書において、特に断りない限り、化学式に含まれる「*」は結合手を表す。
【0011】
炭化水素基とは、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基、並びに、それらが組み合わされた基を包含する。
また、脂肪族炭化水素基や脂環式炭化水素基は、その一部に炭素−炭素二重結合を含んでいてもよいが、飽和の基(飽和炭化水素基)が好ましい。
鎖式の脂肪族炭化水素基のうち1価のものとしては、典型的にはアルキル基が挙げられる。
アルキル基としては、メチル基(C)、エチル基(C)、プロピル基(C)、ブチル基(C)、ペンチル基(C)、ヘキシル基(C)、ヘプチル基(C)、オクチル基(C)、デシル基(C10)、ドデシル基(C12)、ヘキサデシル基(C14)、ペンタデシル基(C15)、ヘキシルデシル基(C16)、ヘプタデシル基(C17)及びオクタデシル基(C18)などが挙げられる。
脂肪族炭化水素基のうち2価のものとしては、アルキル基から水素原子を1個取り去ったアルカンジイル基が挙げられる。
アルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基、ノナン−1,9−ジイル基、デカン−1,10−ジイル基、ウンデカン−1,11−ジイル基、ドデカン−1,12−ジイル基、トリデカン−1,13−ジイル基、テトラデカン−1,14−ジイル基、ペンタデカン−1,15−ジイル基、ヘキサデカン−1,16−ジイル基、ヘプタデカン−1,17−ジイル基、エタン−1,1−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、2−メチルプロパン−1,3−ジイル基、2−メチルプロパン−1,2−ジイル基、ペンタン−1,4−ジイル基及び2−メチルブタン−1,4−ジイル基等が挙げられる。
【0012】
脂環式炭化水素基は、単環式及び多環式のいずれをも包含する。
【0013】
脂環式炭化水素基のうち1価のものとして、単環式の脂肪族炭化水素基は、以下の式(KA−1)〜(KA−7)で表されるシクロアルカンから水素原子を1個取り去った基である。

【0014】
多環式の脂肪族炭化水素基は、以下の式(KA−8)〜(KA−22)で表される脂環式炭化水素から水素原子を1個取り去った基である。

【0015】
脂環式炭化水素基のうち2価のものとしては、式(KA−1)〜式(KA−22)の脂環式炭化水素から水素原子を2個取り去った基が挙げられる。
【0016】
1価の芳香族炭化水素基としては、典型的には、アリール基が挙げられる。
アリール基としては、フェニル基(C)、ナフチル基(C10)、アントリル基(C14)、ビフェニル基(C12)、フェナントリル基(C14)及びフルオレニル基(C13)などが挙げられる。2価の芳香族炭化水素基とは典型的には、1価の芳香族炭化水素基から、さらに1個の水素原子を取り去ったアリーレン基である。
【0017】
<樹脂(A)>
樹脂(A)は上述のとおり、アルカリ水溶液に不溶又は難溶であり、酸の作用によりアルカリ水溶液に可溶となる特性を有する。なお、「酸の作用によりアルカリ水溶液で溶解し得る」とは、「酸との接触前ではアルカリ水溶液に不溶又は難溶であるが、酸との接触後にはアルカリ水溶液に可溶となる」ことを意味する。
【0018】
樹脂(A)は、その分子内に酸に不安定な基(以下、場合により「酸不安定基」という。)を有する。このような樹脂(A)は、酸不安定基を有するモノマー(以下、このモノマーを場合により「モノマー(a1)」といい、該モノマー(a1)由来の構造単位を「構造単位(a1)」という。)を重合することによって製造できる。樹脂(A)を製造する際には、モノマー(a1)を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
<酸不安定基>
「酸不安定基」とは、脱離基を有し、酸と接触すると該脱離基が脱離して、親水性基(例えば、ヒドロキシ基又はカルボキシ基)を形成する基を意味する。酸不安定基としては、例えば、式(1)で表される基(以下、場合により「酸不安定基(1)」という。)、式(2)で表される基(以下、場合により「酸不安定基(2)」という。)などが挙げられる。

[式(1)中、
a1〜Ra3は、それぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基又はこれらを組み合わせた基を表すか、Ra1及びRa2は互いに結合して炭素数2〜20の2価の炭化水素基を形成する。*は結合手を表す。]
【0020】

[式(2)中、
a1’及びRa2’は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜12の1価の炭化水素基を表し、Ra3’は、炭素数1〜20の炭化水素基を表すか、Ra2’及びRa3’は互いに結合して炭素数2〜20の2価の炭化水素基を形成する。該1価の炭化水素基及び該2価の炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子又は硫黄原子に置き換わってもよい。*は結合手を表す。]
【0021】
酸不安定基(1)のRa1〜Ra3のアルキル基及び脂環式炭化水素基は、各々の炭素数の範囲において、すでに例示したものを含む。ただし、該脂環式炭化水素基の炭素数は、好ましくは3〜16の範囲である。
アルキル基と脂環式炭化水素基とを組み合わせた基としては、例えば、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロへキシル基、メチルノルボルニル基等が挙げられる。
【0022】
a1及びRa2が互いに結合して2価の炭化水素基を形成する場合の−C(Ra1)(Ra2)(Ra3)で表される基としては、例えば、下記式で表される基が挙げられる。該2価の炭化水素基の炭素数は、好ましくは3〜12の範囲である。

【0023】
酸不安定基(1)としては、例えば、1,1−ジアルキルアルコキシカルボニル基(式(1)中、Ra1〜Ra3がアルキル基である基;好ましくはtert−ブトキシカルボニル基)、2−アルキルアダマンタン−2−イルオキシカルボニル基(式(1)中、Ra1及びRa2が結合することで、アダマンチル環を形成し、Ra3がアルキル基である基)及び1−(アダマンタン−1−イル)−1−アルキルアルコキシカルボニル基(式(1)中、Ra1及びRa2がアルキル基であり、Ra3がアダマンチル基である基)などが挙げられる。
【0024】
酸不安定基(2)のRa1’及びRa2’の炭化水素基は、例えば、アルキル基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基などである。これらの基もすでに例示したもののうち、炭素数20以下の範囲で同じものを含む。ただし、Ra1'及びRa2'のうち少なくとも1つは水素原子が好ましい。
【0025】
酸不安定基(2)の具体例としては、以下の基が挙げられる。

【0026】
モノマー(a1)は、酸不安定基と炭素−炭素二重結合とを有するモノマーが好ましく、酸不安定基を有する(メタ)アクリル系モノマーがさらに好ましい。
【0027】
なかでも、酸不安定基(1)及び/又は酸不安定基(2)を有するモノマー(a1)が好ましく、酸不安定基(1)及び/又は酸不安定基(2)を有する(メタ)アクリル系モノマーが特に好ましい。
【0028】
酸不安定基を有する(メタ)アクリル系モノマーのうち、炭素数5〜20の脂環式炭化水素基を有するモノマー(a1)が好ましい。このようなモノマー(a1)を用いて得られる樹脂(A)は、脂環式炭化水素基のような嵩高い構造を有するものとなるので、該樹脂(A)を含有する本レジスト組成物の解像度が一層良好となる傾向がある。
【0029】
<好適な構造単位(a1)>
モノマー(a1)の中でも、式(a1−1)で表されるモノマー(以下、場合により「モノマー(a1−1)」といい、モノマー(a1−1)に由来する構造単位を「構造単位(a1−1)」という。)又は式(a1−2)で表されるモノマー(以下、場合により「モノマー(a1−2)」といい、モノマー(a1−2)に由来する構造単位を「構造単位(a1−2)」という。)が好ましい。樹脂(A)は、構造単位(a1−1)を単独種で有していてもよく、複数種有していてもよく、構造単位(a1−2)を単独種で有していてもよく、複数種有していてもよく、構造単位(a1−1)と構造単位(a1−2)とを合わせて有していてもよい。

[式(a1−1)中、
a1は、酸素原子又は*−O−(CH2k1−CO−O−(k1は1〜7の整数を表し、*はカルボニル基との結合手を表す。)で表される基を表す。
a4は、水素原子又はメチル基を表す。
a6は、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基又は炭素数3〜10の脂環式炭化水素基を表す。
m1は0〜14の整数を表す。
式(a1−2)中、
a2は、酸素原子又は*−O−(CH2k1−CO−O−(k1は前記と同義である。)で表される基を表す。
a5は、水素原子又はメチル基を表す。
a7は、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基又は炭素数3〜10の脂環式炭化水素基を表す。
n1は0〜10の整数を表す。
n1’は0〜3の整数を表す。]
【0030】
a1及びLa2は、好ましくは、−O−又は*−O−(CH2k1−CO−O−であり、 La1及びLa2は、好ましくは、酸素原子又は、k1が1〜4の整数である*−O−(CH2k1−CO−O−で表される基であり、より好ましくは酸素原子又は*−O−CH2−CO−O−であり、さらに好ましくは酸素原子である。
a4及びRa5は、好ましくはメチル基である。
a6及びRa7の脂肪族炭化水素基は、それぞれ独立に、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数3〜10の脂環式炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数3〜8の脂環式炭化水素基であり、さらに好ましくは炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数3〜6の脂環式炭化水素基である。
脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とを組み合わせた基としては、例えば、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロへキシル基、メチルノルボルニル基等が挙げられる。
m1は、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0又は1である。
n1は、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0又は1である。
n1’は、好ましくは0又は1である。
【0031】
構造単位(a1−1)としては、以下の式(a1−1−1)〜式(a1−1−8)でそれぞれ表される構造単位が好ましく、式(a1−1−1)〜式(a1−1−4)でそれぞれ表される構造単位がより好ましい。

【0032】

【0033】
これらの構造単位(a1−1)を誘導し得るモノマー(a1)としては、例えば、特開2010−204646号公報に記載されたものなどが挙げられる。
【0034】
構造単位(a1−2)としては、以下の式(a1−2−1)〜式(a1−2−12)でそれぞれ表される構造単位が好ましい。これらのなかでも、式(a1−2−1)〜(a1−2−4)及び式(a1−2−9)〜式(a1−2−10)のいずれかで表される構造単位がより好ましく、式(a1−2−3)又は(a1−2−9)で表される構造単位がさらに好ましい。

【0035】

【0036】
構造単位(a1−2)を誘導し得るモノマー(a1)としては、例えば、1−エチルシクロペンタン−1−イル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロヘキサン−1−イル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロヘプタン−1−イル(メタ)アクリレート、1−メチルシクロペンタン−1−イル(メタ)アクリレート及び1−イソプロピルシクロペンタン−1−イル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0037】
樹脂(A)が構造単位(a1−1)及び/又は構造単位(a1−2)を有する場合、これらの合計含有率は、該樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対して、10〜95モル%が好ましく、15〜90モル%がより好ましく、20〜85モル%がさらに好ましく、20〜60モル%が特に好ましい。また、構造単位(a1)として、アダマンチル基を有する構造単位(a1)(特に好ましくは、構造単位(a1−1))を有する場合には、樹脂(A)中の構造単位(a1)の合計(100モル%)に対して、アダマンチル基を有する構造単位(a1)が15モル%以上であることが好ましい。このような含有割合で、アダマンチル基を有する構造単位(a1)を有する樹脂(A)は、該樹脂(A)を含有するレジスト組成物から製造されるレジストパターンのドライエッチング耐性が良好となる傾向がある。なお、構造単位(a1−1)及び/又は構造単位(a1−2)の合計含有割合を、上述の範囲にするためには、樹脂(A)を製造する際に、全モノマーの使用量に対する、モノマー(a1−1)及び/又はモノマー(a1−2)の使用量を調整すればよい。
【0038】
樹脂(A)は、構造単位(a1−1)を樹脂(A)が有していると特に好ましい。
【0039】
構造単位(a1−1)及び構造単位(a1−2)以外の構造単位(a1)としては、以下の式(a1−3)で表されるモノマー(以下、場合により「モノマー(a1−3)」という。)に由来する構造単位が挙げられる。モノマー(a1−3)に由来する構造単位を有する樹脂(A)は、その主鎖に剛直なノルボルナン環を含むものとなるので、このような樹脂(A)を含有する本レジスト組成物は、ドライエッチング耐性に優れたレジストパターンを製造できる傾向がある。

[式(a1−3)中、
a9は、水素原子、置換基(例えばヒドロキシ基)を有していてもよい炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、カルボキシ基、シアノ基、又は−COORa13で表される基を表し、Ra13は、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基を表し、該脂肪族炭化水素基に含まれる水素原子はヒドロキシ基などで置換されていてもよく、該脂肪族炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。
a10、Ra11及びRa12は、それぞれ独立に、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基を表すか、或いはRa10及びRa11は互いに結合して環を形成している。該脂肪族炭化水素基及に含まれる水素原子はヒドロキシ基などで置換されていてもよく、該脂肪族炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。]
【0040】
a9の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基は好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基である。該置換基としては、ヒドロキシ基が挙げられる。ヒドロキシ基を有する脂肪族炭化水素基(好ましくはアルキル基)が挙げられ、例えば、ヒドロキシメチル基及び2−ヒドロキシエチル基などである。Ra13を表す基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、2−オキソ−オキソラン−3−イル基及び2−オキソ−オキソラン−4−イル基などが挙げられる。
【0041】
a10〜Ra12の脂肪族炭化水素基も典型的には、アルキル基であり、その具体例はRa9の場合と同じである。Ra10とRa11とが結合し、これらが結合する炭素原子とともに形成される環は、シクロへキサン環及びアダマンタン環などである。
【0042】
モノマー(a1−3)としては例えば、特開2010−204646号公報に記載されたものが用いられる。これらの中でも、以下の式(a1−3−1)、式(a1−3−2)、式(a1−3−3)及び式(a1−3−4)でそれぞれ表されるモノマーが好ましく、式(a1−3−2)又は(a1−3−4)で表されるモノマーがより好ましく、式(a1−3−2)で表されるモノマーがさらに好ましい。

【0043】
樹脂(A)が、モノマー(a1−3)に由来する構造単位を有する場合、その含有率は、樹脂(A)の全構造単位に対して、10〜95モル%が好ましく、15〜90モル%がより好ましく、20〜85モル%がさらに好ましい。
【0044】
構造単位(a1)としては、以下の式(a1−4)で表されるモノマー(以下「モノマー(a1−4)」という場合がある。)に由来する構造単位も挙げられる。

[式(a1−4)中、
10は、ハロゲン原子を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、水素原子又はハロゲン原子を表す。
laは0〜4の整数を表す。
11は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜4のアシル基、炭素数2〜4のアシルオキシ基、アクリロイル基又はメタクリロイル基を表し、laが2以上である場合、複数のR11は互いに同一であっても異なってもよい。
12及びR13はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を表す。
a2は、置換基を有していてもよい炭素数1〜17の脂肪族炭化水素基又は単結合を表し、該脂肪族炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又は−N(R)−(ただし、Rは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す)で表される基に置き換わっていてもよい。
a3は、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基を表す。]
【0045】
「ハロゲン原子を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基」のうち、アルキル基としては、炭素数が1〜6の範囲ですでに例示したものを含む。ハロゲン原子を有するアルキル基としては、フッ素原子を有するアルキル基が好ましく、例えば、トリフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、ペルフルオロブチル基、ペルフルオロsec−ブチル基、ペルフルオロtert−ブチル基、ペルフルオロペンチル基及びペルフルオロヘキシル基などが挙げられる。これらの中でも、R10は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基及びエチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
11のアルコキシ基は、炭素数1〜6の範囲において、すでに例示したものを含むが、中でも、炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基及びエトキシ基がより好ましく、メトキシ基が特に好ましい。
11のアシル基及びアシルオキシ基も、その炭素数が2〜4の範囲において、すでに例示したものを含む。
12及びR13の炭化水素基は、その炭素数が1〜12の範囲において、Ya3の炭化水素基は、その炭素数が1〜18の範囲において、すでに例示した脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基のいずれかを含む。
a2の脂肪族炭化水素基は2価の鎖式炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基又は、鎖式炭化水素基と脂環式炭化水素基とが組み合わさった2価の基であり、炭素数1〜17の範囲ですでに例示した基を適宜組み合わせた基を挙げることができる。
【0046】
モノマー(a1−4)としては、例えば、特開2010−204646号公報に記載されたモノマーが挙げられる。中でも、以下の式(a1−4−1)〜式(a1−4−7)でそれぞれ表されるモノマーが好ましく、式(a1−4−1)〜式(a1−4−5)でそれぞれ表されるモノマーがより好ましい。

【0047】
樹脂(A)がモノマー(a1−4)に由来する構造単位を有する場合、その含有率は、樹脂(A)の全構造単位に対して、10〜95モル%が好ましく、15〜90モル%がより好ましく、20〜85モル%が特に好ましい。
【0048】
構造単位(a1)としては、例えば、式(a1−5)で表される構造単位(以下「構造単位(a1−5)」という場合がある)も挙げられる。

[式(a1−5)中、
31は、ハロゲン原子を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、水素原子又はハロゲン原子を表す。
a1は、単結合又は*−[CH2k4−CO−La4−を表す。ここで、k4は1〜4の整数を表す。*は、La1との結合手を表す。
a1、La2、La3及びLa4は、それぞれ独立に、−O−又は−S−を表す。
s1は、1〜3の整数を表す。
s1’は、0〜3の整数を表す。]
【0049】
式(a1−5)においては、R31は、水素原子、メチル基及びトリフルオロメチル基が好ましい。
a1は、酸素原子が好ましい。
a2及びLa3は、一方が酸素原子、他方が硫黄原子が好ましい。
s1は、1が好ましい。
s1’は、0〜2の整数が好ましい。
a1は、単結合又は*−CH−CO−O−が好ましい。
【0050】
構造単位(a1−5)を誘導するモノマーとしては、以下のモノマーが挙げられる。

【0051】
樹脂(A)が、構造単位(a1−5)を有する場合、その含有率は、樹脂(A)の全構造単位に対して、1〜95モル%が好ましく、3〜90モル%がより好ましく、5〜85モル%がさらに好ましい。
【0052】
<酸安定構造単位>
樹脂(A)は、構造単位(a1)に加え、酸不安定基を有さない構造単位(以下、場合により「酸安定構造単位」といい、該酸安定構造単位を誘導し得るモノマーを、「酸安定モノマー」という。)を有していると好ましい。該樹脂(A)中、酸安定構造単位は1種のみを有していてもよく、複数種を有していてもよい。
【0053】
樹脂(A)が酸安定構造単位を有する場合、構造単位(a1)の含有割合を基準にして、酸安定性構造単位の含有割合を定めるとよい。構造単位(a1)の含有割合と酸安定性構造単位の含有割合との比〔構造単位(a1):酸安定構造単位〕はモル基準で、好ましくは10:90〜80:20であり、より好ましくは20:80〜60:40である。このようにすると、樹脂(A)を含有する本レジスト組成物から得られるレジストパターンのドライエッチング耐性がより一層良好になる傾向がある。
【0054】
次に、酸安定構造単位のうち、好ましいものを説明する。
酸安定構造単位は、ヒドロキシ基又はラクトン環を有する構造単位が好ましい。ヒドロキシ基を有する酸安定構造単位(以下、場合により「酸安定構造単位(a2)」という。)及び/又はラクトン環を有する酸安定構造単位(以下、場合により「酸安定構造単位(a3)」という。)を有する樹脂(A)は、当該樹脂(A)を含有する本レジスト組成物を基板に塗布したとき、基板上に形成される塗布膜、又は塗布膜から得られる組成物層が基板との間に優れた密着性を発現し易くなり、この本レジスト組成物は良好な解像度で、レジストパターンを製造することができる。
【0055】
<酸安定構造単位(a2)>
樹脂(A)における酸安定構造単位(a2)は、当該樹脂(A)を含有する本レジスト組成物からレジストパターンを製造する際の露光源の種類によって、各々、好適な酸安定構造単位(a2)を選択することができる。すなわち、本レジスト組成物を、KrFエキシマレーザ(波長:248nm)を露光源とする露光、電子線あるいはEUV光などの高エネルギー線を露光源とする露光に用いる場合には、酸安定構造単位(a2)は、フェノール性ヒドロキシ基を有する酸安定構造単位が好ましい。短波長のArFエキシマレーザ(波長:193nm)を露光源とする露光を用いる場合は、酸安定構造単位(a2)は、アルコール性ヒドロキシ基を有する酸安定構造単位が好ましい。このように、酸安定構造単位(a2)は、露光源の種類に応じて好適な酸安定構造単位(a2)1種のみを有していてもよく、露光源の種類に応じて好適な酸安定構造単位(a2)2種以上を有していてもよく、或いは、露光源の種類に応じて好適な酸安定構造単位(a2)と、それ以外の酸安定構造単位(a2)とを組み合わせて有していてもよい。
【0056】
アルコール性ヒドロキシ基を有する酸安定構造単位としては、以下の式(a2−1)で表される構造単位(以下、場合により「酸安定構造単位(a2−1)」という。)が挙げられる。

式(a2−1)中、
a3は、酸素原子又は*−O−(CH2k2−CO−O−(k2は1〜7の整数を表し、*はカルボニル基(−CO−)との結合手を表す。)で表される基を表す。
a14は、水素原子又はメチル基を表す。
a15及びRa16は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基又はヒドロキシ基を表す。
o1は、0〜10の整数を表す。
【0057】
a3は、好ましくは、酸素原子又は、k2が1〜4の整数である*−O−(CH2k2−CO−O−で表される基であり、より好ましくは、酸素原子又は、*−O−CH2−CO−O−であり、さらに好ましくは酸素原子である。
a14は、好ましくはメチル基である。
a15は、好ましくは水素原子である。
a16は、好ましくは水素原子又はヒドロキシ基である。
o1は、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0又は1である。
【0058】
酸安定構造単位(a2−1)としては、例えば、以下のものが挙げられる。

【0059】
酸安定構造単位(a2−1)は、例えば、特開2010−204646号公報に記載された酸安定モノマーから誘導される。これらの中でも、式(a2−1−1)〜式(a2−1−4)でそれぞれ表される酸安定構造単位がより好ましく、式(a2−1−1)又は(a2−1−3)で表される酸安定構造単位がさらに好ましい。
【0060】
樹脂(A)が酸安定構造単位(a2−1)を有する場合、その含有率は、樹脂(A)の全構造単位に対して、3〜45モル%が好ましく、5〜40モル%がより好ましく、5〜35モル%がさらに好ましい。
【0061】
フェノール性ヒドロキシ基を有する酸安定構造単位としては、以下の式(a2−0)で表される構造単位(以下、場合により「酸安定構造単位(a2−0)」という。)が挙げられる。

式(a2−0)中、
a30は、ハロゲン原子を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、水素原子又はハロゲン原子を表す。
a31は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜4のアシル基、炭素数2〜4のアシルオキシ基、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を表す。
maは0〜4の整数を表す。maが2以上の整数である場合、複数のRa31は同一でも異なっていてもよい。
【0062】
a30の「ハロゲン原子を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基」における「炭素数1〜6のアルキル基」の具体例は、炭素数がこの範囲において、すでに例示したものを含む。「ハロゲン原子を有する炭素数1〜6のアルキル基」とは、該炭素数1〜6のアルキル基に含まれる水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子に置換されたものである。なお、ハロゲン原子の具体例も式(a1−4)のR10ですでに説明したとおりである。これらのうち、Ra30は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基及びエチル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
a31のアルコキシ基の具体例は、炭素数1〜6の範囲で、すでに例示したものを含む。これらのうち、Ra31は、炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基及びエトキシ基がより好ましく、メトキシ基が特に好ましい。
maは0、1又は2が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
maは0、1又は2が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
【0063】
酸安定構造単位(a2−0)の中でも、以下の式(a2−0−1)〜式(a2−0−4)でそれぞれ表されるものが好ましい。かかる構造単位を誘導し得る酸安定モノマーは、例えば、特開2010−204634号公報に記載されている。

【0064】
例えば、p−ヒドロキシスチレンやp−ヒドロキシ−α−メチルスチレンといった酸安定構造単位(a2−0)を誘導し得る酸安定モノマーを、樹脂(A)製造に用いることにより、式(a2−0−1)又は式(a2−0−2)で表される酸安定構造単位(a2−0)を、樹脂(A)に導入することができるが、該酸安定モノマーにあるフェノール性ヒドロキシ基を例えば、アセチル基のような保護基で保護した後、この保護化酸安定モノマーを重合して樹脂(A)を製造することもできる。重合後、この保護化酸安定モノマーに由来する構造単位を有する樹脂を脱保護処理することにより、酸安定構造単位(a2−0)を有する樹脂(A)を製造できる。ただし、脱保護処理を実施する際には、他の構造単位(a1)を著しく損なわないようにして、該脱保護処理を実施する必要がある。
【0065】
樹脂(A)が酸安定構造単位(a2−0)を有する場合、その含有率は、樹脂(A)の全構造単位に対して、5〜90モル%が好ましく、10〜85モル%がより好ましく、15〜80モル%がさらに好ましい。
【0066】
<酸安定構造単位(a3)>
酸安定構造単位(a3)が有するラクトン環は例えば、β−プロピオラクトン環、γ−ブチロラクトン環及びδ−バレロラクトン環のような単環式でもよく、単環式のラクトン環と他の環との縮合環でもよい。これらラクトン環の中で、γ−ブチロラクトン環及びγ−ブチロラクトン環と他の環との縮合環が好ましい。
【0067】
酸安定構造単位(a3)は好ましくは、以下の式(a3−1)、式(a3−2)又は式(a3−3)で表されるものである。樹脂(A)は、これらのうち1種のみを有していてもよく、2種以上を有していてもよい。なお、以下の説明においては、式(a3−1)で表されるものを、場合により、「酸安定構造単位(a3−1)」といい、式(a3−2)で表されるものを「酸安定構造単位(a3−2)」といい、式(a3−3)で表されるものを「酸安定構造単位(a3−3)」という。

[式(a3−1)中、
a4は、酸素原子又は*−O−(CH2k3−CO−O−(k3は1〜7の整数を表す。)で表される基を表す。*はカルボニル基との結合手を表す。
a18は、水素原子又はメチル基を表す。
p1は0〜5の整数を表す。
a21は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を表し、p1が2以上の場合、複数のRa21は同一でも異なっていてもよい。
式(a3−2)中、
a5は、酸素原子又は*−O−(CH2k3−CO−O−(k3は1〜7の整数を表す。)で表される基を表す。*はカルボニル基との結合手を表す。
q1は、0〜3の整数を表す。
a19は、水素原子又はメチル基を表す。
a22は、カルボキシ基、シアノ基又は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を表し、q1が2以上の場合、複数のRa22は同一でも異なっていてもよい。
式(a3−3)中、
a6は、酸素原子又は*−O−(CH2k3−CO−O−(k3は1〜7の整数を表す。)で表される基を表す。*はカルボニル基との結合手を表す。
a20は、水素原子又はメチル基を表す。
r1は、0〜3の整数を表す。
a23は、カルボキシ基、シアノ基又は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を表し、r1が2以上の場合、複数のRa23は同一でも異なっていてもよい。]
【0068】
式(a3−1)〜式(a3−3)において、La4〜La6は、式(a2−1)のLa3で説明したものと同じものが挙げられる。
a4〜La6は、それぞれ独立に、酸素原子又は、k3が1〜4の整数である*−O−(CH2k3−CO−O−で表される基が好ましく、酸素原子及び、*−O−CH2−CO−O−がより好ましく、さらに好ましくは酸素原子である。
a18〜Ra21は、好ましくはメチル基である。
a22及びRa23は、それぞれ独立に、好ましくはカルボキシ基、シアノ基又はメチル基である。
p1、q1及びr1は、好ましくは0〜2の整数であり、より好ましくは0又は1である。なお、p1が2である場合、2つのRa21は互いに同一でも異なっていてもよく、q1が2である場合、2つのRa22は互いに同一でも異なっていてもよく、r1が2である場合、2つのRa23は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0069】
酸安定構造単位(a3−1)の好適例は、以下の式(a3−1−1)〜式(a3−1−4)でそれぞれ表されるものである。

【0070】
酸安定構造単位(a3−2)の好適例は、以下の式(a3−2−1)〜式(a3−2−4)でそれぞれ表されるものである。

【0071】
酸安定構造単位(a3−3)の好適例は、以下の式(a3−3−1)〜式(a3−3−4)でそれぞれ表されるものである。

【0072】
酸安定構造単位(a3−1)、酸安定構造単位(a3−2)及び酸安定構造単位(a3−3)は、特開2010−204646号公報に記載された酸安定モノマーにより誘導できる。上記の酸安定構造単位(a3)の具体例の中でも、式(a3−1−1)、式(a3−1−2)、式(a3−2−3)、式(a3−2−4)でそれぞれ表される酸安定構造単位がより好ましく、式(a3−1−1)又は式(a3−2−3)で表される酸安定構造単位がさらに好ましい。
【0073】
樹脂(A)が、酸安定構造単位(a3)を有する場合、その合計含有率は、該樹脂(A)の全構造単位に対して、5〜70モル%が好ましく、10〜65モル%がより好ましく、10〜60モル%がさらに好ましい。
また、酸安定構造単位(a3−1)、酸安定構造単位(a3−2)及び酸安定構造単位(a3−3)それぞれの含有率は、樹脂(A)の全構造単位に対して、5〜60モル%が好ましく、5〜50モル%がより好ましく、10〜50モル%がさらに好ましい。
【0074】
<その他の酸安定構造単位>
樹脂(A)は酸安定構造単位(a2)及び酸安定構造単位(a3)以外の酸安定構造単位(以下、場合により「酸安定構造単位(a4)という。」を有していてもよい。以下、酸安定構造単位(a4)を誘導し得る酸安定モノマーを、場合により「酸安定モノマー(a4)」という。
【0075】
酸安定モノマー(a4)の具体例は例えば、以下の式(a4−1)で表されるモノマー(以下、場合により「モノマー(a4−1)」という。)である。このモノマー(a4−1)は、後述するように、フッ素原子を有するものであることが好ましい。

式(a4−1)中、
a41は、炭素数1〜12の1価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜12の1価の芳香族炭化水素基を表し、該1価の脂肪族炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。
a41は、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルカンジイル基又は式(a−g1)

[式(a−g1)中、
sは0又は1を表す。
a42及びAa44は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基を表す。
a43は、置換基を有していてもよい炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又は単結合を表す。
a41及びXa42は、それぞれ独立に、酸素原子、カルボニル基、カルボニルオキシ基又はオキシカルボニル基を表す。
ただし、Aa42、Aa43、Aa44、Xa41及びXa42の炭素数の合計は6以下である。]
で表される基を表す。
a42は、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基を表す。該脂肪族炭化水素基は部分的に、炭素炭素不飽和結合を有していてもよいが、炭素炭素不飽和結合を有さない脂肪族飽和炭化水素基が好ましい。該脂肪族飽和炭化水素基としては、アルキル基(当該アルキル基は直鎖でも分岐していてもよい)及び脂環式炭化水素基、並びに、アルキル基及び脂環式炭化水素基を組み合わせた脂肪族炭化水素基などが挙げられる。
【0076】
a41の脂肪族炭化水素基のうち、アルキル基及び芳香族炭化水素基は、その炭素数がそれぞれの範囲ですでに例示したものを含む。
【0077】
また、Ra42の脂肪族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよいが、Ra42は置換基を有する脂肪族炭化水素基であると好ましい。かかる置換基としては、ハロゲン原子及び式(a−g3)で表される基が好ましい。

[式(a−g3)中、
a43は、酸素原子、カルボニル基、カルボニルオキシ基又はオキシカルボニル基を表す。
a45は、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数3〜17の脂肪族炭化水素基を表す。]
つまり、Ra42は、以下の式(a−g2)で表される基であることが好ましい。

[式(a−g2)中、
a46は、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数3〜17の脂肪族炭化水素基を表す。
a44は、カルボニルオキシ基又はオキシカルボニル基を表す。
a47は、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数3〜17の脂肪族炭化水素基を表す。
ただし、Aa46、Aa47及びXa44の炭素数の合計は18以下である。]
【0078】
好適なRa42である、ハロゲン原子及び式(a−g3)で表される基からなる群より選ばれる置換基を有する脂肪族炭化水素基(式(a−g2)で表される基)について詳述する。
【0079】
まず、ハロゲン原子を有する脂肪族炭化水素基について説明する。かかる脂肪族炭化水素基は典型的には、ハロゲン原子を有するアルキル基、及びハロゲン原子を有する脂環式炭化水素基(好ましくは、ハロゲン原子を有するシクロアルキル基)である。ハロゲン原子を有するアルキル基とは、該アルキル基を構成する水素原子の一部又は全部がハロゲン原子に置換されたものである。同様に、ハロゲン原子を有する脂環式炭化水素基とは、該脂環式炭化水素基を構成する水素原子の一部又は全部がハロゲン原子に置換されたものである。ハロゲン原子を有するアルキル基及びハロゲン原子を有する脂環式炭化水素基に含まれるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、或いはこれらを組み合わせた形式でもよいが、フッ素原子が特に好ましい。
【0080】
式(a4−1)においては、Aa41及び/又はRa42がハロゲン原子を有していることが好ましく、Aa41及び/又はRa42がフッ素原子を有していることがより好ましい。
【0081】
a42がフッ素原子を有する脂肪族炭化水素基であり、かつAa41がエチレン基である場合のモノマー(a4−1)の具体例としては、以下の式(a4−1−1)〜式(a4−1−22)でそれぞれ表されるモノマーが挙げられる。

【0082】

【0083】
a42がハロゲン原子を有する脂肪族炭化水素基である場合、アルキル基を構成する水素原子の全部がフッ素原子に置換されたペルフルオロアルキル基や、シクロアルキル基を構成する水素原子の全部がフッ素原子に置換されたペルフルオロシクロアルキル基がより好ましい。Ra42が、ペルフルオロアルキル基又はペルフルオロシクロアルキル基であるモノマー(a4−1)は、上述の具体例の中では、式(a4−1−3)、式(a4−1−4)、式(a4−1−7)、式(a4−1−8)、式(a4−1−11)、式(a4−1−12)、式(a4−1−15)、式(a4−1−16)、式(a4−1−19)、式(a4−1−20)、式(a4−1−21)及び式(a4−1−22)のいずれかで表されるものが該当する。さらに、Rはペルフルオロアルキル基が好ましく、当該ペルフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロブチル基、ペルフルオロペンチル基、ペルフルオロヘキシル基、ペルフルオロヘプチル基及びペルフルオロオクチル基などが例示される。さらに好ましくは、炭素数が1〜6のペルフルオロアルキル基であり、特に好ましくは、炭素数1〜3のペルフルオロアルキル基である。
【0084】
a42が、式(a−g3)で表される基を有する脂肪族炭化水素基である場合を、次に説明する。この脂肪族炭化水素基には、式(a−g3)で表される基を1個又は複数個有していてもよいが、式(a−g3)で表される基に含まれる炭素原子の数を含めて、脂肪族炭化水素基の総炭素数は、15以下が好ましく、12以下がより好ましい。このような好ましい総炭素数を満たすためには、式(a−g3)で表される基を1個有する基がRa42として好ましい。
【0085】
a42が、式(a−g2)で表される基を1個有する脂肪族炭化水素基であるモノマー(a4−1)は具体的には、以下の式(a4−1’)で表されるもの(以下、場合により「モノマー(a4−1’)」という)である。

[式(a4−1’)中、
すべての符号はいずれも、前記と同義である。]
【0086】
モノマー(a4−1’)において、Aa46及びAa47はともにハロゲン原子を有することもあるが、Aa46が、ハロゲン原子を有する脂肪族炭化水素基であるか、または、Aa47が、ハロゲン原子を有する脂肪族炭化水素基であると好ましい。さらには、Aa46がハロゲン原子を有する脂肪族炭化水素基であると好ましく、中でも、Aa46はフッ素原子を有するアルカンジイル基であると一層好ましく、ペルフルオロアルカンジイル基であると特に好ましい。なお、この「ペルフルオロアルカンジイル基」とは、水素原子の全部がフッ素原子に置換されたアルカンジイル基をいう。
【0087】
a42がペルフルオロアルカンジイル基である化合物(a4−1’)を、Aa41がエチレン基である場合で例示すると、以下の式(a4−1’−1)〜式(a4−1’−22)でそれぞれ表されるモノマー(a4−1’)が挙げられる。

【0088】

【0089】
a46及びAa47は炭素数の合計が17以下である範囲で、任意に選択されるが、Aa46の炭素数は1〜6の範囲が好ましく、1〜3の範囲がさらに好ましい。
一方、Aa47の炭素数は4〜15の範囲が好ましく、5〜12の範囲がさらに好ましい。特に好ましいAa47は、炭素数6〜12の脂環式炭化水素基であり、当該脂環式炭化水素基としては、シクロヘキシル基及びアダマンチル基が特に好ましい。
【0090】
a46及びAa47の組み合わせのうち、より好ましいものを、*−Aa46−Xa44−Aa47で表される部分構造(*はカルボニル基との結合てである)で表すと、以下の構造が挙げられる。


このような構造を有するモノマー(a4−1’)は、前記の具体例の中では、式(a4−1’−9)〜式(a4−1’−20)で表される化合物が該当する。
【0091】
樹脂(A)が、モノマー(a4−1)に由来する構造単位を有する場合、その含有率は、該樹脂(A)の全構造単位に対して、1〜20モル%が好ましく、2〜15モル%がより好ましく、3〜10モル%がさらに好ましい。
【0092】
樹脂(A)は、さらに、上述の構造単位以外の構造単位を有していてもよく、かかる構造単位としては、本技術分野で周知の構造単位を挙げることができる。
【0093】
本レジスト組成物は、樹脂(A)以外の樹脂をさらに含有してもよい。樹脂(A)以外の樹脂としては、モノマー(a4−1)に由来する構造単位を有する樹脂(以下、場合により「樹脂(X)」という。)が好ましい。
樹脂(X)における、モノマー(a4−1)に由来する構造単位の含有割合は、当該樹脂(X)の全構造単位に対して、80モル%以上が好ましく、85モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましい。樹脂(X)は、実質的にモノマー(a4−1)に由来する構造単位のみからなるものであってもよい。モノマー(a4−1)としては、モノマー(a4−1’)が好ましい。なお、樹脂(X)が、モノマー(a4−1)に由来する構造単位以外に有していてもよい構造単位としては、上述の酸安定構造単位(a2)や酸安定構造単位(a3)などを挙げることができる。樹脂(X)は、酸不安定基を有しない構造単位からなるものであれば、当技術分野で周知の構造単位を、さらに有していてもよい。
【0094】
<樹脂(A)の製造方法>
樹脂(A)は、モノマー(a1)を重合させたものであり、より好ましくは、モノマー(a1)と酸安定モノマーとを共重合させたものであり、さらに好ましくは、モノマー(a1−1)及び/又はモノマー(a1−2)と、酸安定構造単位(a2)及び/又は酸安定構造単位(a3)を誘導する酸安定モノマーとを共重合させたものである。なお、本レジスト組成物を例えば、EUV露光用とするうえでは、モノマー(a1−1)及び/又はモノマー(a1−2)と、酸安定構造単位(a2−0)を誘導する酸安定モノマーとを共重合させたものが好ましい。
樹脂(A)は、構造単位(a1)として、構造単位(a1−1)を有することがさらに好ましい。樹脂(A)は、上述したようなモノマーを公知の重合法(例えばラジカル重合法)に供し、重合(共重合)することにより製造できる。
一方、樹脂(X)は好ましくは、モノマー(a4−1)を公知の重合法に供して重合させたものであり、かかる重合には、モノマー(a4−1)に加えて、他の酸安定モノマー(例えば、酸安定構造単位(a2)又は酸安定構造単位(a3)を誘導するモノマー)を用い、これらを共重合させたものであってもよい。
【0095】
樹脂(A)の重量平均分子量は、好ましくは、2,500以上(より好ましくは3,000以上)、50,000以下(より好ましくは30,000以下)である。なお、ここでいう重量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー分析により、標準ポリスチレン基準の換算値として求められるものである。この分析の詳細な分析条件は、本願の実施例に記載する。
一方、樹脂(X)を本レジスト組成物に用いる場合、当該樹脂(X)の重量平均分子量は、好ましくは、8,000以上(より好ましくは10,000以上)、80,000以下(より好ましくは60,000以下)である。かかる樹脂(X)の重量平均分子量の測定手段は、樹脂(A)の場合と同様である。
【0096】
本レジスト組成物における樹脂(A)の含有割合は、本レジスト組成物の固形分の総質量に対して、80質量%以上99質量%以下が好ましい。
なお本明細書において「本レジスト組成物の固形分」とは、本レジスト組成物から溶剤(D)を除いた本レジスト組成物構成成分の合計を意味する。例えば、溶剤(D)の含有割合が90質量%である本レジスト組成物において、本レジスト組成物中の固形分は10質量%に相当する。本レジスト組成物の固形分及びこれに対する各成分の含有量は、例えば、液体クロマトグラフィー又はガスクロマトグラフィーなどの公知の分析手段で測定することができる。
【0097】
<酸発生剤(B)>
レジスト分野に用いられる酸発生剤は、非イオン系とイオン系とに分類される。本レジスト組成物に含有される酸発生剤(B)は、非イオン系酸発生剤であっても、イオン系酸発生剤であっても、これらの組み合わせであってもよい。非イオン系酸発生剤としては、有機ハロゲン化物、スルホネートエステル類(例えば2−ニトロベンジルエステル、芳香族スルホネート、オキシムスルホネート、N−スルホニルオキシイミド、N−スルホニルオキシイミド、スルホニルオキシケトン、ジアゾナフトキノン4−スルホネート)、スルホン類(例えばジスルホン、ケトスルホン、スルホニルジアゾメタン)等が挙げられる。イオン系酸発生剤としては、オニウムカチオンを含むオニウム塩(例えばジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩)等が挙げられる。オニウム塩のアニオンとしては、スルホン酸アニオン、スルホニルイミドアニオン、スルホニルメチドアニオン等が挙げられる。
【0098】
酸発生剤(B)としては、レジスト分野で使用される酸発生剤(特に光酸発生剤)だけでなく、光カチオン重合の光開始剤、色素類の光消色剤又は光変色剤等の放射線(光)によって酸を発生する公知化合物及びそれらの混合物も、適宜、使用できる。例えば特開昭63−26653号、特開昭55−164824号、特開昭62−69263号、特開昭63−146038号、特開昭63−163452号、特開昭62−153853号、特開昭63−146029号、米国特許第3,779,778号、米国特許第3,849,137号、独国特許第3914407号、欧州特許第126,712号等に記載の放射線によって酸を発生する化合物を使用できる。
【0099】
酸発生剤(B)は、好ましくはフッ素含有酸発生剤であり、より好ましくは式(B1)で表されるスルホン酸塩(以下、場合により「酸発生剤(B1)」という。)である。

[式(B1)中、
1及びQ2は、それぞれ独立に、フッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。
b1は、単結合又は炭素数1〜17の2価の脂肪族飽和炭化水素基を表し、該2価の脂肪族飽和炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置き換わっていてもよい。
Yは、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基を表し、該炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子、スルホニル基又はカルボニル基で置き換わっていてもよい。
+は、有機カチオンを表す。]
【0100】
1及びQ2のペルフルオロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、ペルフルオロブチル基、ペルフルオロsec−ブチル基、ペルフルオロtert−ブチル基、ペルフルオロペンチル基、ペルフルオロヘキシル基などが挙げられる。
式(B1)では、Q1及びQ2は、それぞれ独立に、好ましくはペルフルオロメチル基又はフッ素原子であり、より好ましくはフッ素原子である。
【0101】
b1の2価の脂肪族飽和炭化水素基は、鎖式及び環式の脂肪族飽和炭化水素基を包含する。
b1の2価の脂肪族飽和炭化水素基の具体例は、すでに例示したアルカンジイル基、及び、上述の式(KA−1)〜式(KA−22)の脂環式飽和炭化水素から水素原子を2個取り去った基などである。
【0102】
b1の脂肪族炭化水素基を構成するメチレン基が、酸素原子又はカルボニル基に置き換わったものとしては、例えば、以下の式(b1−1)、式(b1−2)、式(b1−3)、式(b1−4)、式(b1−5)、式(b1−6)及び式(b1−7)〔式(b1−1)〜式(b1−7)〕でそれぞれ示される基が挙げられる。なお、式(b1−1)〜式(b1−7)は、その左右を式(B1)に合わせて記載しており、*で表される2つの結合手のうち、左側の結合手は、C(Q1)(Q2)と結合し、右側の結合手はYと結合している。以下の式(b1−1)〜式(b1−7)の具体例も同様である。
【0103】


式(b1−1)〜式(b1−7)中、
b2は、単結合又は炭素数1〜15の脂肪族飽和炭化水素基を表す。
b3は、単結合又は炭素数1〜12の脂肪族飽和炭化水素基を表す。
b4は、炭素数1〜13の脂肪族飽和炭化水素基を表す。但しLb3及びLb4の合計炭素数の上限は13である。
b5は、単結合又は炭素数1〜14の脂肪族飽和炭化水素基を表す。
b6は、炭素数1〜15の脂肪族飽和炭化水素基を表す。但しLb5及びLb6の合計炭素数の上限は15である。
b7は、単結合又は炭素数1〜15の脂肪族飽和炭化水素基を表す。
b8は、炭素数1〜15の脂肪族飽和炭化水素基を表す。但しLb7及びLb8の合計炭素数の上限は16である。
b9は、単結合又は炭素数1〜13の脂肪族飽和炭化水素基を表す。
b10は、炭素数1〜14の脂肪族飽和炭化水素基を表す。但しLb9及びLb10の合計炭素数の上限は14である。
b11及びLb12は、単結合又は炭素数1〜11の脂肪族飽和炭化水素基を表す。
b13は、炭素数1〜12の脂肪族飽和炭化水素基を表す。但しLb11、Lb12及びLb13の合計炭素数の上限は12である。
b14及びLb15は、それぞれ独立に、単結合又は炭素数1〜13の脂肪族飽和炭化水素基を表す。
b16は、炭素数1〜14の脂肪族飽和炭化水素基を表す。但しLb14、Lb15及びLb16の合計炭素数の上限は14である。
【0104】
式(b1−1)で表される基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0105】
式(b1−2)で表される基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0106】
式(b1−3)で表される基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0107】
式(b1−4)で表される基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0108】
式(b1−5)で表される基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0109】
式(b1−6)で表される基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0110】
式(b1−7)で表される基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0111】
これらの中でも、Lb1は、式(b1−1)で表される基が好ましく、Lb2が単結合又は炭素数1〜6の脂肪族飽和炭化水素基である式(b1−1)で表される2価の基であることがより好ましい。
【0112】
Yの炭化水素基としては、アルキル基及び脂環式炭化水素が挙げられる。
Yのアルキル基としては、炭素数1〜18の範囲ですでに例示したものを含むが、中でも炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。
Yの脂環式炭化水素基も、炭素数1〜18の範囲ですでに例示したものを含み、その炭素数は3〜12の範囲が好ましい。
なお、上述のとおり、該アルキル基及び脂環式炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子、スルホニル基又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。例えば、脂環式炭化水素基を構成するメチレン基が、酸素原子又はカルボニル基に置き換わった基としては、環状エーテル基(脂環式炭化水素基に含まれるメチレン基の1つ又は2つが酸素原子に置き換わった基)、環状ケトン基(脂環式炭化水素基に含まれるメチレン基の1つ又は2つがカルボニル基に置き換わった基)、スルトン環基(脂環式炭化水素基に含まれるメチレン基のうち隣り合う2つのメチレン基が、それぞれ、酸素原子及びスルホニル基に置き換わった基)及びラクトン環基(脂環式炭化水素基に含まれるメチレン基のうち隣り合う2つのメチレン基が、それぞれ、酸素原子及びカルボニル基に置き換わった基)などが挙げられる。具体的には、以下の式(Y12)〜式(Y26)で表される基等が挙げられる。

【0113】
Yの脂環式炭化水素基の好ましい基は、式(Y11)、式(Y14)、式(Y15)、式(Y16)及び式(Y19)のいずれか、より好ましくは、式(Y11)、式(Y14)、式(Y15)及び式(Y19)のいずれか、さらに好ましくは、式(Y11)及び式(Y14)のいずれかで表される脂環式炭化水素基である。
【0114】
Yにおける脂肪族炭化水素基の置換基は、例えば、ハロゲン原子(但し、フッ素原子を除く)、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基、炭素数7〜21のアラルキル基、炭素数2〜4のアシル基、グリシジルオキシ基又は−(CH2j2−O−CO−Rb1で表される基(式中、Rb1は、炭素数1〜16の炭化水素基を表す。j2は、0〜4の整数を表す。)などが挙げられる。Yの置換基である芳香族炭化水素基及びアラルキル基は、例えば、アルキル基、ハロゲン原子又はヒドロキシ基をさらに有していてもよい。
【0115】
ハロゲン原子としては、すでに例示したもののいずれでもよい。
アルキル基、脂環式炭化水素基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、アラルキル基及びアシル基の具体例は、各々の炭素数の範囲ですでに例示したものを含む。
ヒドロキシ基を有するアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基などが挙げられる。
【0116】
置換基を有する脂環式炭化水素基のYとしては、例えば以下のものが挙げられる。

【0117】
なお、Yがアルキル基であり、かつLb1が炭素数1〜17のアルカンジイル基である場合、Yとの結合位置にある該アルカンジイル基の−CH−は、−O−又は−CO−に置き換わっていることが好ましい。この場合、Yのアルキル基をに含まれる−CH−は、−O−又は−CO−に置き換わらない。Yのアルキル基及び/又はLb1のアルカンジイル基に含まれる水素原子が置換基で置換されている場合も同様である。
【0118】
Yは、好ましくは置換基を有していてもよいアダマンチル基であり、より好ましくはアダマンチル基、オキソアダマンチル基、ヒドロキシアダマンチル基である。
【0119】
酸発生剤(B1)を構成するスルホン酸アニオンとしては、好ましくは、式(b1−1−1)〜式(b1−1−9)でそれぞれ表されるアニオンが挙げられる。以下の式においては、置換基の定義は上記と同じ意味であり、Rb2及びRb3は、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基(好ましくは、メチル基)を表す。
当該スルホン酸アニオンとしては、具体的には、特開2010−204646号公報に記載されたアニオンが挙げられる。

【0120】
b1が式(b1−1)で表される基であり、Yが無置換の脂肪族炭化水素基であるスルホン酸アニオンとしては、以下の式(b1−s−0)〜式(b1−s−9)でそれぞれ表されるものが挙げられる。

【0121】
Yがヒドロキシ基を有する脂環式炭化水素基であるスルホン酸アニオンとしては、以下の式(b1−s−10)〜式(b1−s−18)でそれぞれ表されるものが挙げられる。

【0122】
Yが環状ケトン基であるスルホン酸アニオンとしては、以下の式(b1−s−19)〜式(b1−s−29)でそれぞれ表されるものが挙げられる。

【0123】

【0124】
Yが芳香族炭化水素基を有する脂環式炭化水素基であるスルホン酸アニオンとしては、以下の式(b1−s−30)〜式(b1−s−35)でそれぞれ表されるものが挙げられる。

【0125】
Yが、前記ラクトン環基又は前記スルトン環基であるスルホン酸アニオンとしては、以下の式(b1−s−36)〜式(b1−s−41)でそれぞれ表されるものが挙げられる。

【0126】
酸発生剤(B1)を構成する有機カチオンとしては、有機オニウムカチオン、例えば、有機スルホニウムカチオン、有機ヨードニウムカチオン、有機アンモニウムカチオン、ベンゾチアゾリウムカチオン及び有機ホスホニウムカチオンなどが挙げられる。これらの中でも、有機スルホニウムカチオン及び有機ヨードニウムカチオンが好ましく、さらに好ましくは、以下の式(b2−1)〜式(b2−4)のいずれかで表される有機カチオン〔以下、各式の番号に応じて、場合により、「カチオン(b2−1)」、「カチオン(b2−2)」、「カチオン(b2−3)」及び「カチオン(b2−4)」という。〕である。
【0127】

【0128】
式(b2−1)〜式(b2−4)において、
b4〜Rb6は、互いに独立に、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基を表す。該脂肪族炭化水素基は、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基を有していてもよく、該脂環式炭化水素基は、ハロゲン原子、炭素数2〜4のアシル基又はグリシジルオキシ基を有していてもよく、該芳香族炭化水素基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を有していてもよい。Rb4、Rb5及びRb6から選ばれる2つが一緒になって、硫黄原子を含む環を形成してもよい。
b7及びRb8は、互いに独立に、ヒドロキシ基、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表す。
m2及びn2は、互いに独立に0〜5の整数を表す。m2が2以上である場合、複数のRb7は互いに同一であっても異なってもよく、n2が2以上である場合、複数のRb8は互いに同一であっても異なってもよい。
b9及びRb10は、互いに独立に、炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基又は炭素数3〜18の脂環式炭化水素基を表す。
b9とRb10とは、互いに結合して硫黄原子を含む3員環〜12員環(好ましくは3員環〜7員環)の脂環式炭化水素環を形成していてもよく、該脂環式炭化水素環に含まれるメチレン基が、酸素原子、硫黄原子又はカルボニル基で置き換わっていてもよい。
b11は、水素原子、炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基を表す。
b12は、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基を表し、該芳香族炭化水素基は、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数1〜12のアルキルカルボニルオキシ基を有していてもよい。
b11とRb12は、互いに結合して硫黄原子を含む3員〜12員(好ましくは3員〜7員)環を形成していてもよく、該環に含まれるメチレン基が、酸素原子、硫黄原子又はカルボニル基で置き換わっていてもよい。
b13〜Rb18は、互いに独立に、ヒドロキシ基、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表す。
b11は、酸素原子又は硫黄原子を表す。
o2、p2、s2及びt2は、互いに独立に、0〜5の整数を表す。
q2及びr2は、互いに独立に、0〜4の整数を表す。
u2は0又は1を表す。
o2が2以上であるとき、複数のRb13は互いに同一であっても異なってもよく、p2が2以上であるとき、複数のRb14は互いに同一であっても異なってもよく、s2が2以上であるとき、複数のRb15は互いに同一であっても異なってもよく、t2が2以上であるとき、複数のRb18は互いに同一であっても異なってもよい。q2が2以上であるとき、複数のRb15は互いに同一でも異なっていてもよく、r2が2以上であるとき、複数のRb16は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0129】
脂肪族炭化水素基としては、典型的にはアルキル基が挙げられ、当該アルキル基は各々の炭素数においてすでに例示したものを含む。
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子が挙げられる。
アシル基も炭素数2〜4の範囲ですでに例示したものを含む。
アルキルカルボニルオキシ基としては、例えば、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基、sec−ブチルカルボニルオキシ基、tert−ブチルカルボニルオキシ基、ペンチルカルボニルオキシ基、ヘキシルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基及び2−エチルヘキシルカルボニルオキシ基などが挙げられる。
【0130】
b4、Rb5及びRb6から選ばれる2つが一緒になって形成してもよい環としては、単環式、多環式、芳香族性、非芳香族性、飽和及び不飽和のいずれの環であってもよく、硫黄原子を1以上含むものであれば、さらに、1以上の硫黄原子及び/又は1以上の酸素原子を含んでいてもよい。該環としては、炭素数3〜18の環が好ましく、炭素数4〜13の環がより好ましい。
【0131】
b9〜Rb11の脂肪族炭化水素基は、好ましくは炭素数1〜12である。具体的に好ましい基は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基及び2−エチルヘキシル基である。
b9〜Rb11の脂環式炭化水素基は、好ましくは炭素数3〜18、より好ましくは炭素数4〜12である。具体的に好ましい基は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロデシル基及びイソボルニル基である。
【0132】
b12の芳香族炭化水素基のうち好ましい基は、フェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−シクロへキシルフェニル基、4−メトキシフェニル基、ビフェニリル基及びナフチル基である。
b12の脂肪族炭化水素基を有する芳香族炭化水素基は、典型的にはアラルキル基であり、具体的にはベンジル基等が挙げられる。
b9とRb10とが結合して形成する環としては、例えば、チオラン−1−イウム環(テトラヒドロチオフェニウム環)、チアン−1−イウム環及び1,4−オキサチアン−4−イウム環等が挙げられる。
b11とRb12とが結合して形成する環としては、例えば、オキソシクロヘプタン環、オキソシクロヘキサン環、オキソノルボルナン環及びオキソアダマンタン環等が挙げられる。
【0133】
上述の有機カチオンの中でも、カチオン(b2−1)が好ましく、以下の式(b2−1−1)で表される有機カチオン〔以下、場合により「カチオン(b2−1−1)」という。〕がより好ましく、トリフェニルスルホニウムカチオン(式(b2−1−1)中、v2=w2=x2=0である。)又はトリトリルスルホニウムカチオン(式(b2−1−1)中、v2=w2=x2=1であり、Rb19、Rb20及びRb21がいずれもメチル基である。)がさらに好ましい。

式(b2−1−1)中、
b19、Rb20及びRb21は、互いに独立に、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)、ヒドロキシ基、炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表し、Rb19、Rb20及びRb21から選ばれる2つが一緒になって単結合、−O−又は炭素数1〜4の2価の脂肪族炭化水素基を表し、イオウ原子を含む環を形成してもよい。
【0134】
脂肪族炭化水素基は、好ましくは炭素数は1〜12であり、より好ましくは炭素数1〜12のアルキル基であり、置換基として、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基を有していてもよい。
脂環式炭化水素基は、好ましくは炭素数は4〜18であり、置換基として、ハロゲン原子、炭素数2〜4のアシル基又はグリシジルオキシ基を有していてもよい。
v2、w2及びx2は、互いに独立に0〜5の整数(好ましくは0又は1)を表す。
v2が2以上のとき、複数のRb19は互いに同一でも異なってもよく、w2が2以上のとき、複数のRb20は互いに同一でも異なってもよく、x2が2以上のとき、複数のRb21は互いに同一でも異なってもよい。
なかでも、Rb19、Rb20及びRb21は、互いに独立に、好ましくは、ハロゲン原子(より好ましくはフッ素原子)、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基である。
【0135】
カチオン(b2−1−1)としては、以下のカチオンが挙げられる。

【0136】

【0137】

【0138】

【0139】
カチオン(b2−2)としては、以下のカチオンが挙げられる。

【0140】
カチオン(b2−3)としては、以下のカチオンが挙げられる。

【0141】
酸発生剤(B1)は、上述のスルホン酸アニオン及び有機カチオンの組合せである。上述のアニオンとカチオンとは任意に組み合わせることができ、好ましくは、アニオン(b1−1−1)〜アニオン(b1−1−9)のいずれかとカチオン(b2−1−1)との組合せ、並びにアニオン(b1−1−1)〜(b1−1−9)のいずれかとカチオン(b2−3)との組合せが挙げられる。
【0142】
酸発生剤(B1)としては、好ましくは、式(B1−1)〜式(B1−24)で表される塩が挙げられ、より好ましくは、トリアリールスルホニウムカチオンを含む酸発生剤であり、式(B1−1)、式(B1−2)、式(B1−3)、式(B1−6)、式(B1−7)、式(B1−11)、式(B1−12)、式(B1−13)、式(B1−14)、式(B1−18)、式(B1−19)、式(B1−20)、式(B1−21)、式(B1−22)、式(B1−23)及び式(B1−24)でそれぞれ表される酸発生剤がさらに好ましい。
【0143】

【0144】

【0145】

【0146】

【0147】
本レジスト組成物における酸発生剤(B)[特に好ましくは酸発生剤(B1)]の含有割合は、樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは1質量部以上40質量部以下であり、より好ましくは3質量部以上35質量部以下である。
【0148】
<化合物(I)>
化合物(I)は上述のとおり、式(I)で表されるものであり、本レジスト組成物において、クエンチャーとして機能し得る塩基性化合物である。

[式(I)中、
I1は、炭素数1〜49の4価の炭化水素基を表し、該炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。
mは2又は3を表し、複数存在する環WI1は、それぞれ独立に炭素数2〜36の飽和複素環を表す。
nは1又は2を表す。但し、m+n=4の関係を満たす。]
【0149】
環WI1における飽和複素環とは、環を構成する原子(環構成原子)として少なくも1つの窒素原子を有し、環構成原子間の結合に不飽和結合を有さない環である。当該飽和複素環は、該窒素原子以外に、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子の1以上を有していてもよい。このような飽和複素環を化合物(I)中の式(IN)

で表される基の具体例で示すと、以下の基が挙げられる。

化合物(I)を含有する本レジスト組成物は、より一層優れたラインエッジスラフネス(LER)を有するレジストパターンの製造を可能とする。また、入手容易な原料により低コストで化合物(I)を製造できる点では、式(W1)、式(W2)又は式(W3)で表される基を有するものがさらに好ましい。なお、化合物(I)中に複数含まれる式(IN)で表される基は、互いに同一でも異なっていてもよいが、製造上の容易さを考慮すると、複数の式(IN)で表される基は同一のものであることが好ましい。
【0150】
I1の4価の炭化水素基としては、鎖式脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基のいずれでもよく、また、これらの炭化水素基は、酸素原子などのヘテロ原子を有していてもよい。AI1は鎖式脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる2種以上が組み合わさった4価の炭化水素基でもよい。これらの中でも、AI1は式(AI1−1)で表される基が好ましく、鎖式炭化水素基を含むものがより好ましく、アルカンテトライル基がさらに好ましい。

[式(AI1−1)中、
I1、XI2、XI3及びXI4は、それぞれ独立に、単結合又は炭素数1〜12の炭化水素基を表し、該炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。
*1、*2、*3及び*4は結合手を表し、これらのうち少なくとも2つが環WI1との結合手を表し、残りはヒドロキシ基との結合手を表す。]
【0151】
I1、XI2、XI3及びXI4におけるメチレン基が、酸素原子又はカルボニル基に置き換わった基としては、例えば、式(L1−1)〜式(L1−4)のいずれかが挙げられ、好ましくは式(L1−1)、式(L1−2)又は式(L1−3)、さらに好ましくは式(L1−1)又は式(L1−2)で表される基である。式(L1−1)〜式(L1−4)においては、*は結合手を表し、右側で環WI1又はヒドロキシ基と結合する。以下の式(L1−1)〜式(L1−4)の具体例も同様である。
【0152】

式(L1−1)〜式(L1−4)中、
、L及びLは、それぞれ独立に、単結合、炭素数1〜15の脂肪族飽和炭化水素基を表す。なかでもL、L及びLが単結合であることが好ましい。
は、炭素数1〜15の脂肪族飽和炭化水素基を表す。なかでもLは、ブタン−1,4−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基又はドデカン−1,12−ジイル基であると好ましい。
は、炭素数1〜14の脂肪族飽和炭化水素基を表す。なかでもLはメチレン基がが好ましい。
は、炭素数1〜4の飽和炭化水素基を表す。なかでもLは、ブタン−1,4−ジイル基、又はプロパン−1,3−ジイル基であると好ましい。
nlは、2〜4の整数を表す。
【0153】
式(L1−1)で表される基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0154】
式(L1−2)で表される基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0155】
式(L1−3)で表される基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0156】
式(L1−4)で表される基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0157】
I1、XI2、XI3及びXI4の炭化水素基は、それぞれ独立に、好ましくは、単結合又は炭素数1〜12の炭化水素基であり、より好ましくは、4つの炭化水素基のうちのいずれかが鎖式炭化水素基であり、該炭化水素基及び該鎖式炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。
I1、XI2、XI3及びXI4の炭化水素基は、それぞれ独立に、さらに好ましくは、いずれもが炭素数1〜12のアルカンジイル基であり、特に好ましくは、いずれもがメチレン基である。
【0158】
化合物(I)の具体例を以下に挙げる。

【0159】

【0160】

【0161】

【0162】
化合物(I)の製造方法を、AI1が、式(AI1−1)で表される基であり、*1、*2及び*3が式(IN)で表される基との結合手であり(m=3)、*4がヒドロキシ基との結合手である化合物(I)、すなわち、式(IA)で表される化合物(化合物(IA))を例にとって説明する。

(式中、環WI1、XI1、XI2、XI3及びXI4は、それぞれ上記と同じ意味を表す。)
【0163】
化合物(IA)は、式(IA−a)で表される化合物と、式(IA−b)で表される化合物とを触媒存在下で反応させることにより得ることができる。触媒としては、トリエチルアミンなどが用いられる。

【0164】
式(IA−a)で表される化合物としては、以下で表される化合物などが挙げられる。

式(IA−b)で表される化合物としては、以下で表される化合物などが挙げられる。

【0165】
本レジスト組成物における化合物(I)の含有割合は、本レジスト組成物の固形分に対して、好ましくは0.01質量%以上5質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以上4質量%以下であり、さらに好ましくは0.05質量%以上3質量%以下である。
【0166】
<他の塩基性化合物(以下、場合により「塩基性化合物(C)」という。)>
化合物(I)は、本レジスト組成物においてクエンチャーとして機能し得る塩基性化合物であるが、本レジスト組成物には、化合物(I)とは異なる他の塩基性化合物(C)をさらに含有していてもよい。本レジスト組成物に、この塩基性化合物(C)を含有させる場合、その含有量は、化合物(I)の含有量100質量部に対して、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下、さらに好ましくは100質量部以下とすることが望ましい。また、塩基性化合物(C)を含有する場合、化合物(I)及び他の塩基性化合物(C)の合計含有割合は、本レジスト組成物の固形分に対し、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下である。
【0167】
塩基性化合物(C)は、好ましくは塩基性の含窒素有機化合物であり、例えばアミン及びアンモニウム塩が挙げられる。アミンとしては、脂肪族アミン及び芳香族アミンが挙げられる。脂肪族アミンとしては、第一級アミン、第二級アミン及び第三級アミンが挙げられる。塩基性化合物(C)として、好ましくは、式(C1)〜式(C8)及び式(C1−1)のいずれかで表される化合物が挙げられ、より好ましくは式(C1−1)で表される化合物が挙げられる。
【0168】

[式(C1)中、
c1、Rc2及びRc3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数5〜10の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表し、該アルキル基及び該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基、アミノ基又は炭素数1〜6のアルコキシ基で置換されていてもよく、該芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数5〜10の脂環式炭化水素又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基で置換されていてもよい。]
【0169】

[式(C1−1)中、
c2及びRc3は、上記と同じ意味を表す。
c4は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数5〜10の脂環式炭化水素又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表す。
m3は0〜3の整数を表し、m3が2以上のとき、複数のRc4は、互いに同一であるか相異なる。]
【0170】

[式(C2)、式(C3)及び式(C4)中、
c5、Rc6、Rc7及びRc8は、それぞれ独立に、Rc1と同じ意味を表す。
c9は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6の脂環式炭化水素基又は炭素数2〜6のアルカノイル基を表す。
n3は0〜8の整数を表し、n3が2以上のとき、複数のRc9は、互いに同一であるか相異なる。]
【0171】

[式(C5)及び式(C6)中、
c10、Rc11、Rc12、Rc13及びRc16は、それぞれ独立に、Rc1と同じ意味を表す。
c14、Rc15及びRc17は、それぞれ独立に、Rc4と同じ意味を表す。
o3及びp3は、それぞれ独立に0〜3の整数を表し、o3又はp3が2以上であるとき、それぞれ、複数のRc14及びRc15は互いに同一であるか相異なる。
c1は、炭素数1〜6のアルカンジイル基、−CO−、−C(=NH)−、−S−又はこれらを組合せた2価の基を表す。]
【0172】

[式(C7)及び式(C8)中、
c18、Rc19及びRc20は、それぞれ独立に、Rc4と同じ意味を表す。
q3、r3及びs3は、それぞれ独立に0〜3の整数を表し、q3、r3及びs3が2以上であるとき、それぞれ、複数のRc18、Rc19及びRc20は互いに同一であるか相異なる。
c2は、単結合又は炭素数1〜6のアルカンジイル基、−CO−、−C(=NH)−、−S−又はこれらを組合せた2価の基を表す。]
【0173】
式(C1)〜式(C8)及び式(C1−1)においては、アルキル基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、アルコキシ基、アルカンジイル基は、上述したものと同様のものが挙げられる。
アルカノイル基としては、アセチル基、2−メチルアセチル基、2,2−ジメチルアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ペンタノイル基、及び2,2−ジメチルプロピオニル基などが挙げられる。
【0174】
式(C1)で表される化合物としては、1−ナフチルアミン、2−ナフチルアミン、アニリン、ジイソプロピルアニリン、2−,3−又は4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、ジフェニルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、メチルジブチルアミン、メチルジペンチルアミン、メチルジヘキシルアミン、メチルジシクロヘキシルアミン、メチルジヘプチルアミン、メチルジオクチルアミン、メチルジノニルアミン、メチルジデシルアミン、エチルジブチルアミン、エチルジペンチルアミン、エチルジヘキシルアミン、エチルジヘプチルアミン、エチルジオクチルアミン、エチルジノニルアミン、エチルジデシルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、トリス〔2−(2−メトキシエトキシ)エチル〕アミン、トリイソプロパノールアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノ−1,2−ジフェニルエタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン及び4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタンなどが挙げられ、好ましくはジイソプロピルアニリンが挙げられ、より好ましくは2,6−ジイソプロピルアニリンが挙げられる。
【0175】
式(C2)で表される化合物としては、ピペラジンなどが挙げられる。
式(C3)で表される化合物としては、モルホリンなどが挙げられる。
式(C4)で表される化合物としては、ピペリジン及び特開平11−52575号公報に記載されているピペリジン骨格を有するヒンダードアミン化合物などが挙げられる。
式(C5)で表される化合物としては、2,2’−メチレンビスアニリンなどが挙げられる。
式(C6)で表される化合物としては、イミダゾール及び4−メチルイミダゾールなどが挙げられる。
式(C7)で表される化合物としては、ピリジン及び4−メチルピリジンなどが挙げられる。
式(C8)で表される化合物としては、1,2−ジ(2−ピリジル)エタン、1,2−ジ(4−ピリジル)エタン、1,2−ジ(2−ピリジル)エテン、1,2−ジ(4−ピリジル)エテン、1,3−ジ(4−ピリジル)プロパン、1,2−ジ(4−ピリジルオキシ)エタン、ジ(2−ピリジル)ケトン、4,4’−ジピリジルスルフィド、4,4’−ジピリジルジスルフィド、2,2’−ジピリジルアミン、2,2’−ジピコリルアミン及びビピリジンなどが挙げられる。
【0176】
アンモニウム塩としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトライソプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラオクチルアンモニウムヒドロキシド、フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、3−(トリフルオロメチル)フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−ブチルアンモニウムサリチラート及びコリンなどが挙げられる。
【0177】
<溶剤(以下、場合により「溶剤(D)」という。)>
本レジスト組成物は、さらに、溶剤(D)を含有することが好ましい。溶剤(D)の含有量は、例えば、本レジスト組成物の総量に対して、90質量%以上99.9質量%以下が好ましく、92質量%以上99質量%以下がより好ましく、94質量%以上99質量%以下が特に好ましい。なお、本レジスト組成物における溶剤(D)の含有割合は、例えば液体クロマトグラフィー又はガスクロマトグラフィーなどの公知の分析手段で測定できる。
【0178】
溶剤(D)は、本レジスト組成物に用いる化合物(I)や樹脂(A)などの種類及びその量に応じて最適なものを選択できるが、例えば、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートのようなグリコールエーテルエステル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルのようなグリコールエーテル類;乳酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル及びピルビン酸エチルのようなエステル類;アセトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン及びシクロヘキサノンのようなケトン類;γ−ブチロラクトンのような環状エステル類;等を挙げることができる。溶剤(D)は、1種を単独で含有してもよく、2種以上を含有してもよい。
【0179】
<その他の成分(以下、場合により「成分(F)」という。)>
本レジスト組成物は、必要に応じて、成分(F)を含有していてもよい。かかる成分(F)は特に限定はなく、レジスト分野で公知の添加剤、例えば、増感剤、溶解抑止剤、界面活性剤、安定剤及び染料などが挙げられる。
【0180】
<本レジスト組成物及びその調製方法>
本レジスト組成物は例えば、化合物(I)、樹脂(A)、酸発生剤(B)並びに、必要に応じて用いられる溶剤(D)、塩基性化合物(C)及び成分(F)を混合することで調製することができる。かかる混合において、その混合順は任意であり、特に限定されるものではない。混合する際の温度は、10〜40℃の範囲から、樹脂などの種類や樹脂等の溶剤(D)に対する溶解度等に応じて適切な温度範囲を選ぶことができる。混合時間は、混合温度に応じて、0.5〜24時間が好ましい。混合手段は特に限定されず、攪拌混合などを用いることができる。
【0181】
このように、各成分を好ましい含有量で混合した後は、孔径0.003〜0.2μm程度のフィルタを用いてろ過することが好ましい。
【0182】
<レジストパターンの製造方法>
続いて、本レジスト組成物を用いるレジストパターンの製造方法について説明する。
本発明のレジストパターンの製造方法は、
(1)本発明のレジスト組成物を基板上に塗布する工程、
(2)塗布後の組成物を乾燥して組成物層を形成する工程、
(3)組成物層に露光する工程、
(4)露光後の組成物層を加熱する工程、及び
(5)加熱後の組成物層を現像する工程
を含む。
【0183】
工程(1)における本レジスト組成物の基板上への塗布は、スピンコーターなど、半導体の微細加工のレジスト材料塗布用として広く用いられている塗布装置によって行うことができる。当該塗布装置の条件(塗布条件)を種々調節することで、該塗布膜の膜厚は調整可能であり、適切な予備実験等を行うことにより、所望の膜厚の塗布膜になるように塗布条件を選ぶことができる。本レジスト組成物を塗布する前の基板は、微細加工を実施しようとする種々のもの(例えば、シリコンウェハ等)を選ぶことができる。なお、本レジスト組成物を塗布する前に、基板を洗浄したり、反射防止膜を形成したりしてもよい。この反射防止膜の形成には例えば、市販の有機反射防止膜用組成物を用いることができる。かくして基板上にレジスト組成物からなる塗布膜が形成される。
【0184】
工程(2)においては、基板上に塗布された本レジスト組成物、すなわち塗布膜を乾燥させて、溶剤(D)を除去する。乾燥は、例えば、ホットプレートなどの加熱装置を用いた加熱手段(いわゆるプリベーク)、又は減圧装置を用いた減圧手段により、或いはこれらの手段を組み合わせて、該塗布膜から溶剤を蒸発させて除去することにより行われる。乾燥条件は、本レジスト組成物に含まれる溶剤(D)の種類等に応じて選択でき、例えばホットプレートを用いた加熱手段の場合、該ホットプレートの表面温度を50〜200℃程度の範囲にして行うことが好ましい。また、減圧手段では、適当な減圧機の中に、塗布膜が形成された基板を封入した後、該減圧機の内部圧力を1〜1.0×10Pa程度にして行うことが好ましい。かくして塗布膜から溶剤を除去することにより、該基板上には組成物層が形成される。
【0185】
工程(3)は該組成物層に露光する工程であり、好ましくは、露光機を用いて該組成物層に露光する工程である。露光には、微細加工を実施しようとする所望のパターンが形成されたマスク(フォトマスク)を介して行われる。露光機の露光光源としては、KrFエキシマレーザ(波長248nm)、ArFエキシマレーザ(波長193nm)、F2エキシマレーザ(波長157nm)のような紫外域のレーザ光を放射するもの、固体レーザ光源(YAG又は半導体レーザ等)からのレーザ光を波長変換して遠紫外域または真空紫外域の高調波レーザ光を放射するもの等、種々のものを用いることができる。また、該露光機は液浸露光機であってもよい。また、露光機は、電子線又は超紫外光(EUV)を照射するものであってもよい。なお、本明細書において、これらの放射線を組成物層に照射することを総称して「露光」という場合がある。露光光源が電子線の場合は、フォトマスクを使用せずに、所望のパターンを直接描画してもよい。
マスクを介して露光することにより、該組成物層には露光された部分(露光部)及び露光されていない部分(未露光部)が生じる。露光部の組成物層では該組成物層に含まれる酸発生剤(B)が露光エネルギーを受けて酸を発生し、さらに発生した酸との作用により、樹脂(A)にある酸不安定基が脱保護反応により親水性基を生じるため、露光部の組成物層にある樹脂(A)はアルカリ水溶液に可溶なものとなる。一方、未露光部では露光エネルギーを受けないため、樹脂(A)はアルカリ水溶液に対して不溶又は難溶のままとなる。露光部にある組成物層と未露光部にある組成物層とは、アルカリ水溶液に対する溶解性が著しく相違するものとなる。
【0186】
工程(4)においては、露光部で生じうる脱保護基反応を、さらにその進行を促進するための加熱処理(いわゆるポストエキスポジャーベーク)が行われる。該加熱処理は前記工程(2)で示したホットプレートを用いる加熱手段等が好ましい。なお、工程(4)において、ホットプレートを用いる加熱手段を行う場合、該ホットプレートの表面温度は50〜200℃程度が好ましく、70〜150℃程度がより好ましい。加熱処理により、上記脱保護反応が促進される。
【0187】
工程(5)は、加熱後の組成物層を現像する工程であり、好ましくは、加熱後の組成物層を現像装置を用いて現像する工程である。現像方法としては、ディップ法、パドル法、スプレー法、ダイナミックディスペンス法等が挙げられる。現像温度は、例えば、5〜60℃が好ましく、現像時間は、例えば、5〜300秒間が好ましい。現像液の種類を以下のとおりに選択することにより、ポジ型レジストパターン又はネガ型レジストパターンを製造できる。
【0188】
本発明のレジスト組成物からポジ型レジストパターンを製造する場合は、現像液としてアルカリ現像液を用いる。アルカリ現像液は、この分野で用いられる各種のアルカリ性水溶液であればよい。例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドや(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド(通称コリン)の水溶液等が挙げられる。アルカリ現像液には、界面活性剤が含まれていてもよい。
現像後レジストパターンを超純水で洗浄し、次いで、基板及びパターン上に残った水を除去することが好ましい。
【0189】
本発明のレジスト組成物からネガ型レジストパターンを製造する場合は、現像液として有機溶剤を含む現像液(以下「有機系現像液」という場合がある)を用いる。
有機系現像液に含まれる有機溶剤としては、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン等のケトン溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルエステル溶剤;酢酸ブチル等のエステル溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル溶剤;N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド溶剤;アニソール等の芳香族炭化水素溶剤等が挙げられる。
有機系現像液中、有機溶剤の含有率は、90質量%以上100質量%以下が好ましく、95質量%以上100質量%以下がより好ましく、実質的に有機溶剤のみであることがさらに好ましい。
中でも、有機系現像液としては、酢酸ブチル及び/又は2−ヘプタノンを含む現像液が好ましい。有機系現像液中、酢酸ブチル及び2−ヘプタノンの合計含有率は、50質量%以上100質量%以下が好ましく、90質量%以上100質量%以下がより好ましく、実質的に酢酸ブチル及び/又は2−ヘプタノンのみであることがさらに好ましい。
有機系現像液には、界面活性剤が含まれていてもよい。また、有機系現像液には、微量の水分が含まれていてもよい。
現像の際、有機系現像液とは異なる種類の溶剤に置換することにより、現像を停止してもよい。
【0190】
現像後のレジストパターンをリンス液で洗浄することが好ましい。リンス液としては、レジストパターンを溶解しないものであれば特に制限はなく、一般的な有機溶剤を含む溶液を使用することができ、好ましくはアルコール溶剤又はエステル溶剤である。
洗浄後は、基板及びパターン上に残ったリンス液を除去することが好ましい。
【0191】
現像後、製造されたレジストパターンに、超純水などでリンス処理を行うことが好ましく、さらに基板及びレジストパターン上に残存している水分を除去することが好ましい。
【0192】
<用途>
本レジスト組成物は、KrFエキシマレーザ露光用のレジスト組成物、ArFエキシマレーザ露光用のレジスト組成物、電子線(EB)照射用のレジスト組成物又はEUV露光用のレジスト組成物として好適であり、半導体の微細加工に利用できる。
【実施例】
【0193】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。
実施例及び比較例中、含有量及び使用量を表す「%」及び「部」は、特記ないかぎり質量基準である。
重量平均分子量は、ポリスチレンを標準品として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより下記の条件で求めた値である。
装置:HLC−8120GPC型(東ソー株式会社製)
カラム:TSKgel Multipore HXL-M x 3 + guardcolumn(東ソー株式会社製)
溶離液:テトラヒドロフラン
流量:1.0mL/min
検出器:RI検出器
カラム温度:40℃
注入量:100μl
分子量標準:標準ポリスチレン(東ソー社製)
【0194】
化合物の構造は、質量分析(LCはAgilent製1100型、MASSはAgilent製LC/MSD型)を用い、分子ピークを測定することで確認した。以下の実施例ではこの分子ピークの値を「MS」で示す。
【0195】
合成例1:式(I−1)で表される化合物の合成

式(I1−a)で表される化合物5.00部及び式(I1−b)で表される化合物25.00部を反応器に仕込み、23℃で30分間攪拌し、さらにトリエチルアミン5.61部を加えた。得られた混合物を100℃まで昇温し、同温度で42時間攪拌した。得られた反応混合物を、23℃まで冷却した後、tert−ブチルメチルエーテル181.82部及びイオン交換水60.61部を加え、23℃で30分間攪拌した。その後、静置し、分液して有機層を得た。得られた有機層にイオン交換水60.61部を仕込み、23℃で30分間攪拌した後、静置/分液することで有機層を回収するという水洗操作を4回繰り返した。水洗後の有機層を濃縮した後、得られた濃縮物に、n−ヘプタン29.10部を仕込み、23℃で1時間攪拌した後、析出した析出物をろ過することにより、式(I−1)で表される化合物0.97部を得た。
MS:343.3
【0196】
合成例2:式(I−12)で表される化合物の合成

式(I12−a)で表される化合物2.50部及び式(I1−b)で表される化合物20部を反応器に仕込み、23℃で30分間攪拌し、さらにトリエチルアミン5.61部を加えた。得られた混合物を100℃まで昇温し、同温度で48時間攪拌した。得られた反応混合物を、23℃まで冷却した後、tert−ブチルメチルエーテル200部及びイオン交換水100部を加え、23℃で30分間攪拌した。その後、静置し、分液して有機層を得た。得られた有機層にイオン交換水100部を仕込み、23℃で30分間攪拌した後、静置/分液することで有機層を回収するという水洗操作を4回繰り返した。水洗後の有機層を濃縮することにより、式(I−12)で表される化合物0.54部を得た。
MS:274.2
【0197】
樹脂(A)の合成
樹脂(A)の合成に使用した化合物を下記に示す。

以下、これらの化合物をその式番号に応じて、「モノマー(a1−1−2)」などという。
【0198】
合成例1〔樹脂A1の合成〕
モノマーとして、モノマー(a1−1−2)、モノマー(a1−2−3)、モノマー(a2−1−1)、モノマー(a3−1−1)及びモノマー(a3−2−3)を用い、そのモル比(モノマー(a1−1−2):モノマー(a1−2−3):モノマー(a2−1−1):モノマー(a3−1−1):モノマー(a3−2−3))が30:14:6:20:30となるように混合し、全モノマー量の1.5質量倍のジオキサンを加えて溶液とした。当該溶液に、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル及びアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を全モノマー量に対して各々、1mol%及び3mol%添加し、これらを75℃で約5時間加熱した。得られた反応混合物を、大量のメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過した。かくして得られた樹脂を再び、ジオキサンに溶解させて得られる溶解液をメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過するという再沈殿操作を2回行い、重量平均分子量7.2×10の樹脂A1を収率78%で得た。この樹脂A1は、以下の構造単位を有するものである。

【0199】
合成例2〔樹脂A2の合成〕
モノマー(a1−1−2)、モノマー(a1−2−3)、モノマー(a2−1−1)、モノマー(a3−2−3)及びモノマー(a3−1−1)を、そのモル比(モノマー(a1−1−2):モノマー(a1−2−3):モノマー(a2−1−1):モノマー(a3−2−3):モノマー(a3−1−1))が、30:14:6:20:30となるように混合し、全モノマー量の1.5質量倍のジオキサンを加えて溶液とした。この溶液に、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル及びアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を全モノマー量に対して各々、1mol%及び3mol%添加し、これらを75℃で約5時間加熱した。得られた反応混合物を、大量のメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過した。得られた樹脂を再び、ジオキサンに溶解させて得られる溶解液をメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過するという再沈殿操作を2回行い、重量平均分子量7.2×10の共重合体A2を収率78%で得た。この樹脂A2は、以下の構造単位を有するものである。

【0200】
合成例3〔樹脂A3の合成〕
モノマー(a1−1−2)、モノマー(a1−5−1)、モノマー(a2−1−1)、モノマー(a3−2−3)及びモノマー(a3−1−1)を、そのモル比(モノマー(a1−1−2):モノマー(a1−5−1):モノマー(a2−1−1):モノマー(a3−2−3):モノマー(a3−1−1))が、30:14:6:20:30となるように混合し、全モノマー量の1.5質量倍のジオキサンを加えて溶液とした。この溶液に、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル及びアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を全モノマー量に対して各々、1mol%及び3mol%添加し、これらを75℃で約5時間加熱した。得られた反応混合物を、大量のメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過した。得られた樹脂を再び、ジオキサンに溶解させて得られる溶解液をメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過するという再沈殿操作を2回行い、重量平均分子量7.2×10の共重合体A3を収率78%で得た。この樹脂A3は、以下の構造単位を有するものである。

【0201】
合成例4〔樹脂X1の合成〕
モノマーとして、モノマー(a4−1−7)を用い、全モノマー量の1.5質量倍のジオキサンを加えて溶液とした。当該溶液に、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル及びアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を全モノマー量に対して各々、0.7mol%及び2.1mol%添加し、これらを75℃で約5時間加熱した。得られた反応混合物を、大量のメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過した。
かくして得られた樹脂を再び、ジオキサンに溶解させて得られる溶解液をメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過するという再沈殿操作を2回行い、重量平均分子量1.8×10の樹脂X1を収率77%で得た。この樹脂X1は、以下の構造単位を有するものである。

【0202】
実施例1〜8及び比較例
(レジスト組成物の調製)
表1に示す以下の各成分を、下記の溶剤と混合して溶解し、さらに孔径0.2μmのフッ素樹脂製フィルターで濾過して、レジスト組成物を調製した。
【0203】
【表1】

【0204】
<酸発生剤>
B1−3:特開2010−152341号公報の実施例に従って合成

<樹脂(A)>
A1:樹脂A1
A2:樹脂A2
A3:樹脂A3
X1:樹脂X1
<式(I)で表される化合物>
I−1:

I−12:

<塩基性化合物(C):クエンチャー>
C1:2,6−ジイソプロピルアニリン(東京化成工業(株)製)
C2:N−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン(東京化成工業(株)製)
<溶剤>
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 265部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 20部
2−ヘプタノン 20部
γ−ブチロラクトン 3.5部
【0205】
<レジストパターンの製造及びその評価>
12インチのシリコン製ウェハ上に、有機反射防止膜用組成物[ARC−29;日産化学(株)製]を塗布して、205℃、60秒の条件でベークすることによって、厚さ78nmの有機反射防止膜を形成した。この有機反射防止膜の上に、上記のレジスト組成物を、乾燥(プリベーク)後の膜厚が85nmとなるようにスピンコートした。
得られたシリコンウェハをダイレクトホットプレート上にて、表1の「PB」欄に記載された温度で60秒間プリベーク(PB)して、組成物層を形成した。
シリコンウェハ上に形成された組成物層に、液浸露光用ArFエキシマレーザステッパー[XT:1900Gi;ASML社製、NA=1.35、3/4Annular X−Y偏光]を用いて、露光量を段階的に変化させてラインアンドスペースパターンを液浸露光した。なお、液浸媒体としては超純水を使用した。
露光後、ホットプレート上にて、表1の「PEB」欄に記載された温度で60秒間ポストエキスポジャーベーク(PEB)を行い、さらに2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間のパドル現像を行い、レジストパターンを得た。
【0206】
各レジスト組成物からのレジストパターン形成において、50nmのラインアンドスペースパターンの線幅が1:1となる露光量を実効感度とした。
【0207】
<ラインエッジラフネス評価(LER)>
実効感度で得られたレジストパターンの壁面を走査型電子顕微鏡で観察し、レジストパターンの側壁の凹凸の振れ幅(単位;nm)を求めた。以上のようにして求められたラインエッジラフネス評価(LER)の結果を表2に示す。
【0208】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0209】
本レジスト組成物によれば、優れたラインエッジラフネスでレジストパターンを製造できるため、半導体の微細加工に極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)

[式(I)中、
I1は、炭素数1〜49の4価の炭化水素基を表し、該炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。
mは2又は3を表し、複数存在する環WI1は、それぞれ独立に炭素数2〜36の飽和複素環を表す。
nは1又は2を表す。但し、m+n=4の関係を満たす。]
で表される化合物と、
アルカリ水溶液に不溶又は難溶であり、酸との作用によりアルカリ水溶液に可溶となる樹脂と、
酸発生剤とを含有するレジスト組成物。
【請求項2】
前記式(I)のAI1が、式(AI1−1)で表される基である請求項1記載のレジスト組成物。

[式(AI1−1)中、
I1、XI2、XI3及びXI4は、それぞれ独立に、単結合又は炭素数1〜12の炭化水素基を表し、該炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。
*1、*2、*3及び*4は結合手を表し、これらのうち少なくとも2つが環WI1との結合手を表し、残りはヒドロキシ基との結合手を表す。]
【請求項3】
前記式(AI1−1)のXI1、XI2、XI3及びXI4がともにメチレン基である請求項2記載のレジスト組成物。
【請求項4】
前記酸発生剤が、式(B1)で表されるスルホン酸塩である請求項1〜4のいずれか記載のレジスト組成物。

[式(B1)中、
1及びQ2は、それぞれ独立に、フッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。
b1は、単結合又は炭素数1〜17の2価の脂肪族飽和炭化水素基を表し、該2価の脂肪族飽和炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置き換わっていてもよい。
Yは、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基を表し、該炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子、スルホニル基又はカルボニル基で置き換わっていてもよい。
+は、有機カチオンを表す。]
【請求項5】
さらに、溶剤を含有する請求項1〜4のいずれか記載のレジスト組成物。
【請求項6】
(1)請求項1〜5のいずれか記載のレジスト組成物を基板上に塗布する工程、
(2)塗布後の組成物を乾燥して組成物層を形成する工程、
(3)組成物層に露光する工程、
(4)露光後の組成物層を加熱する工程、及び
(5)加熱後の組成物層を現像する工程、
を含むレジストパターンの製造方法。

【公開番号】特開2013−83938(P2013−83938A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−182173(P2012−182173)
【出願日】平成24年8月21日(2012.8.21)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】