説明

レジスト組成物

エキシマレーザー等の真空紫外線に対する透明性、ドライエッチング性に優れ、さらに感度、解像度、平坦性、耐熱性等に優れたレジストパターンを容易に形成できるレジスト組成物を提供する。 シクロアルキル基、シクロアルキル基を1個以上有する有機基またはビシクロアルキル基等を有するブロック化基によりブロック化されている酸性基を有する含フッ素ポリマー(A)、光照射を受けて酸を発生する酸発生化合物(B)および有機溶媒(C)を含むことを特徴とするレジスト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、新規なレジスト組成物に関する。さらに詳しくはKrF、ArFエキシマレーザー等の遠紫外線やFエキシマレーザー等の真空紫外線を用いる微細加工に有用な化学増幅型レジスト組成物に関する。
【背景技術】
近年、半導体集積回路の製造工程において、回路パターンの細密化に伴い高解像度でしかも高感度の光レジスト材料が求められている。回路パターンが微細になればなるほど露光装置の光源の短波長化が必須である。250nm以下のエキシマレーザーを用いるリソグラフィー用途にポリビニルフェノール系樹脂、脂環式アクリル系樹脂、ポリノルボルネン系樹脂(例えば、WO01/63362号明細書など)、フッ素系樹脂(例えば、WO00/17712号明細書など)等が提案されているが、十分なる解像度、感度を有し、同時に高いドライエッチング耐性を有するには至っていないのが現状である。
本発明が解決しようとする課題は、化学増幅型レジストとして、特にKrF、ArFエキシマレーザー等の遠紫外線やFエキシマレーザー等の真空紫外線に対して用いられるレジストで、解像性にも優れなおかつドライエッチング耐性にも優れたレジスト組成物を提供することである。
【発明の開示】
本発明は前述の課題を解決すべくなされた以下の発明である。
すなわち本発明は、酸性基を有する含フッ素ポリマーであって、該酸性基の一部が式(1)で表されるブロック化基によりブロック化されている含フッ素ポリマー(A)、光照射を受けて酸を発生する酸発生化合物(B)および有機溶媒(C)を含むことを特徴とするレジスト組成物。
−CHR−O−R ・・・(1)
(ただし、Rは水素原子または炭素数3以下のアルキル基であり、Rは置換基を有していてもよいシクロアルキル基、該シクロアルキル基を一つ以上有する1価の有機基または置換基を有していてもよい2個〜4個の環を有する橋かけ環式飽和炭化水素または該橋かけ環式飽和炭化水素を有する有機基である。)
【発明を実施するための最良の形態】
本発明におけるブロック化基は酸により脱離やすく、アルカリでは脱離しにくいことを特徴とするブロック化基である。この条件に見合うブロック化基としては式(1)のような構造を持つ必要がある。
−CHR−O−R ・・・(1)
は水素原子もしくは炭素数3以下のアルキル基を表すが、特に水素原子もしくはメチル基であることが好ましい。また、Fエキシマレーザー等の真空紫外線を用いる微細加工に有用な化学増幅型レジストとして用いる場合には該紫外線に対して適度な透過性を有することから、Rは置換基を有していてもよいシクロアルキル基、該シクロアルキル基を一つ以上有する1価の有機基、置換基を有していてもよい2個〜4個の環を有する橋かけ環式飽和炭化水素または該橋かけ環式飽和炭化水素を有する有機基である。
シクロアルキル基としては、炭素数5〜8のシクロアルキル基が好ましく、特にシクロヘキシル基であることが好ましい。前記1価の有機基としては、炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。2個〜4個の環を有する橋かけ環式飽和炭化水素とは、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基またはテトラシクロアルキル基を表わす。ビシクロアルキル基としては、炭素数7〜12のビシクロアルキル基が好ましく、例えばビシクロ[2,2,1]ヘプチル基(ノルボルニル基)などのビシクロヘプチル基、ビシクロオクチル基、ビシクロデシル基などが挙げられる。特に、ノルボルニル基であることが好ましい。トリシクロアルキル基としては、炭素数7〜14のトリシクロアルキル基であることが好ましい。テトラシクロアルキル基としては、炭素数9〜14のテトラシクロアルキル基であることが好ましい。これらの環に結合していてもよい置換基としては、不活性な置換基であれば特に限定されないが、下記R〜Rで表される置換基が好ましく、また環あたりの置換基の数は1〜5が好ましい。
さらに、Rは式(2)、式(3)または式(4)で表される構造であることが好ましい。

ここで、R、R、RおよびRはそれぞれ独立にフッ素原子、炭素数3以下のアルキル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基または炭素数3以下のフルオロアルキル基を表し、p、q、rおよびsはそれぞれ独立に0〜11の整数を表し、tは0または1である。pが2以上の場合、Rはそれぞれ異なっていてもよい。qが2以上の場合、Rはそれぞれ異なっていてもよい。rが2以上の場合、Rはそれぞれ異なっていてもよい。sが2以上の場合、Rはそれぞれ異なっていてもよい。
さらに、式(2)においては、Rが炭素数1〜3のアルキル基、tert−ブチル基またはシクロヘキシル基であり、pが1〜3の整数であることが特に好ましい。式(3)においては、qおよびrがともに0であること、またはq、rおよびsがそれぞれ独立に1〜3の整数、R、RおよびRがそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基であることが特に好ましい。
本発明における含フッ素ポリマー(A)は酸性基を有し、該酸性基の一部が式(1)で表されるブロック化基によりブロック化されている。ブロック化されているとは、酸性基の酸性水素が、ブロック化基により置換されていることをいう。以下、ブロック化されている酸性基をブロック化酸性基と記す。本発明における含フッ素ポリマー(A)は、ブロック化されていない酸性基をも有していることが好ましく、そのような含フッ素ポリマー(A)を使用するとブロック化されていない酸性基の割合を制御することでレジスト材料の溶解性を制御できる。含フッ素ポリマー(A)の式(1)のブロック化基によるブロック化率(式(1)のブロック化基によるブロック化酸性基とブロック化されていない酸性基の合計に対する式(1)のブロック化基によるブロック化酸性基の割合)は5〜99モル%が好ましく、特に10〜90モル%が好ましい。
本発明における含フッ素ポリマーとは酸性基を有し、ポリマーの主鎖の炭素原子に結合したフッ素原子を含むポリマーである。なかでも全原子数に対するフッ素原子数の割合が15%〜65%であり、主鎖にフッ素原子が存在するポリマーであることが好ましい。さらに、主鎖に脂肪族環構造を有するポリマーであることが好ましい。
本発明において、「脂肪族環構造」とは、炭素原子のみまたは炭素原子と他の原子からなる環状構造を有し、非局在化した不飽和二重結合を有しない環構造をいう。他の原子としては酸素原子が好ましい。環を構成する原子の数は4〜8、特に5〜7、が好ましい。
本発明において、「主鎖に脂肪族環構造を有する」とは、脂肪族環を構成する炭素原子の1個以上が主鎖の炭素原子であることをいう。主鎖の炭素原子は側鎖と結合する結合手を2個有することより、脂肪族環を構成する炭素原子の1個が主鎖の炭素原子である場合はその1個の主鎖の炭素原子に2価の基が結合している(主鎖の炭素原子とこの2価の基より脂肪族環が構成される。)。脂肪族環を構成する炭素原子の2個以上が主鎖の炭素原子である場合は、その2個以上の主鎖の炭素原子の内の異なる2個の炭素原子に2価の基が結合している(2価の基が結合している主鎖の2個の炭素原子が隣接している場合はその2個の炭素原子とこの2価の基より脂肪族環が構成され、2価の基が結合している主鎖の2個の炭素原子間にさらに主鎖の炭素原子が存在する場合はそれら3個以上の主鎖の炭素原子とこの2価の基より脂肪族環が構成される。)。
主鎖に脂肪族環構造を有するポリマーは、脂肪族環構造を有しかつ脂肪族環を形成する炭素原子の少なくとも1個から形成される重合性二重結合を1個有する化合物が重合したモノマー単位を有するポリマー、または含フッ素ジエンが環化重合したモノマー単位を有するポリマーが好ましい。
上記重合性二重結合を1個有する化合物としては、ノルボルネンなどが好ましい例として挙げられる。具体的なポリマーとしては、ノルボルネンおよびフルオロオレフィンを含む共重合体が好ましい例として挙げられる。
本発明における酸性基を有する含フッ素ポリマーとしては、特に式(5)で表される含フッ素ジエンが環化重合したモノマー単位を有することが好ましい。
CF=CR−Q−CR=CH ・・・(5)
(ただし、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を表し、Qが式(6)で表される2価の有機基である。)
−R10−C(R12)(R13)−R11− ・・・(6)
(ただし、R10、R11は、それぞれ独立に、単結合、酸素原子、エーテル性酸素原子を有していてもよい炭素数3以下のアルキレン基またはエーテル性酸素原子を有していてもよい炭素数3以下のフルオロアルキレン基、R12は水素原子、フッ素原子、炭素数3以下のアルキル基または炭素数3以下のフルオロアルキル基、R13は酸性基、または酸性基を有する1価の有機基、を表す。)。
式(5)で表される含フッ素ジエン(以下、含フッ素ジエン(5)という。)の環化重合により、以下の(a)〜(c)のモノマー単位が生成すると考えられ、分光学的分析の結果等より含フッ素ジエン(5)の環化重合体は、モノマー単位(a)、モノマー単位(b)およびモノマー単位(c)から選ばれる1種以上のモノマー単位を含む構造を有する重合体と考えられる。なお、この環化重合体の主鎖とは重合性不飽和結合を構成する炭素原子(含フッ素ジエン(5)の場合は重合性不飽和二重結合を構成する4個の炭素原子)から構成される炭素連鎖をいう。

含フッ素ジエン(5)のR10、R11におけるアルキレン基としては(CHが好ましく、フルオロアルキレン基としては(CFが好ましい(m、nはそれぞれ1〜3の整数)。R10とR11の組合せにおいては、両者ともこれらの基である(その場合、m+nは2または3が好ましい。)か一方がこれらの基で他方が単結合または酸素原子であることが好ましい。R12におけるアルキル基としてはメチル基が、フルオロアルキル基としてはトリフルオロメチル基が好ましい。
1価の有機基である場合のR13としては、炭素数8以下の有機基が好ましく、酸性基を除く部分は炭化水素基またはフルオロ炭化水素基であることが好ましい。特に酸性基を有する、炭素数2〜6のアルキル基、炭素数2〜6のフルオロアルキル基、炭素数7〜9のフェニルアルキル基が好ましい。具体的なR13としては、下記の基がある(ただし、kは1〜6の整数、Xは酸性基、を表す。)。
−(CH−X、−(CHC(CF−X、
−(CHC(CH−X、
−(CHC(CF)(CH)−X、
−(CHCH(CH)−X、−(CH−X。
好ましい含フッ素ジエン(5)は以下の化学式で表される化合物である。
CF=CF(CFC(−Y)(CF)(CHCH=CH
CF=CF(CFC(−Y)(CF)(CFCH=CH
CF=CF(CHC(−Y)(CF)(CHCH=CH
CF=CF(CHC(−Y)(CF)(CFCH=CH
CF=CF(CFC(−Y)(CF)(CFC(CH)=CH
CF=C(CF)(CFC(−Y)(CF)(CFCH=CH
CF=CF(CFCH(−Z)(CHCH=CH
YはXまたは−R13を、Zは−R13を表す。
最も好ましい含フッ素ジエン(5)は下記式(7)および式(8)で表される化合物である。
CF=CFCFC(−X)(CF)CHCH=CH・・・(7)
CF=CFCFCH(−(CHC(CF−X)CHCH=CH
・・(8)
本発明における酸性基としては、酸性水酸基、カルボン酸基、スルホン酸基などがあり、特に酸性水酸基とカルボン酸基が好ましく、酸性水酸基が最も好ましい。酸性水酸基とは、酸性を示す水酸基であり、たとえばアリール基の環に直接結合した水酸基(フェノール性水酸基)、パーフルオロアルキル基が結合した炭素原子に結合した水酸基、第3級炭素原子に結合した水酸基などがある。特に1または2個のパーフルオロアルキル基が結合した炭素原子に結合した水酸基が好ましい。パーフルオロアルキル基としては、炭素数1〜2のパーフルオロアルキル基が好ましい。パーフルオロアルキル基がトリフルオロメチル基の場合、たとえば、下記式(d−1)で表される2価の基における水酸基(すなわち、ヒドロキシトリフルオロメチルメチレン基の水酸基)や下記式(d−2)や下記式(d−3)で表される1価の基における水酸基(すなわち、1−ヒドロキシ−1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチル基や1−ヒドロキシ−1−メチル−2,2,2−トリフルオロエチル基の水酸基)が好ましい。

本発明における含フッ素ポリマー(A)は式(1)で表されるブロック化基と式(1)で表されるブロック化基以外のブロック化基(以下、他のブロック化基と記す。)とを併用することもできる。以下、式(1)で表されるブロック化基によりブロック化された酸性基をブロック化酸性基(1)、他のブロック化基によりブロック化された酸性基を他のブロック化酸性基とも記す。含フッ素ポリマー(A)のブロック化率(ブロック化酸性基(1)、他のブロック化酸性基およびブロック化されていない酸性基の合計に対するブロック化酸性基(1)および他のブロック化酸性基の割合)は10〜99モル%が好ましく、特に10〜90モル%が好ましい。また、このブロック化率の内、式(1)のブロック化基の占める割合(ブロック化酸性基(1)と他のブロック化酸性基の合計に対するブロック化酸性基(1)の割合)が5〜90モル%であることが好ましい。
ここで他のブロック化酸性基とは、酸性基がカルボン酸基やスルホン酸基の場合は、該カルボン酸やスルホン酸の酸性水素原子をアルキル基などに置換したエステル系のブロック化酸性基のことであり、酸性基が酸性水酸基の場合は酸性水酸基の水素原子を、アルキル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、環状エーテル基などにより置換して得られる式(1)の構造以外のアセタール、ケタール、エステル、エーテル系のブロック化酸性基のことである。
上記アルキル基としては、置換基(アリール基、アルコキシ基など)を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。これらのアルキル基の具体例としては、炭素数6以下のアルキル基(tert−ブチル基(t−C)など)、全炭素数7〜20のアリール基置換アルキル基(ベンジル基、トリフェニルメチル基、p−メトキシベンジル基、3,4−ジメトキシベンジル基など)、全炭素数8以下のアルコキシアルキル基(メトキシメチル基、(2−メトキシエトキシ)メチル基、ベンジルオキシメチル基など)が挙げられる。水酸基の水素原子を置換するのに好ましいアルコキシカルボニル基としては、全炭素数8以下のアルコキシカルボニル基があり、tert−ブトキシカルボニル基(−COO(t−C))などが挙げられる。水酸基の水素原子を置換するのに好ましいアシル基としては、全炭素数8以下のアシル基があり、ピバロイル基、ベンゾイル基、アセチル基などが挙げられる。水酸基の水素原子を置換するのに好ましい環状エーテル基としてはテトラヒドロピラニル基(THP)などが挙げられる。
本発明における含フッ素ポリマーの酸性基は、含フッ素ポリマーを得るためのモノマーに予め存在していてもよいし、モノマー中に酸性基に変換できる基を有していて、重合後に酸性基に変換してもよい。また、ブロック化酸性基についても、モノマーの段階で酸性基にブロック化基を有する化合物(以下、ブロック化剤とも記す。)を反応させ、ブロック化酸性基を有するモノマーとしてもよいし、酸性基または酸性基に変換できる基を有するモノマーを重合後、この酸性基または酸性基に変換できる基の場合は酸性基に変換後の酸性基を、ブロック化剤と反応させてブロック化酸性基としてもよい。
式(1)で表されるブロック化基を有するブロック化剤としては、酸性水素原子を置換できるものであれば何でも構わないが、式(9)で表されるハロゲン化物などが好ましい例として挙げられる。
J−CHR−O−R ・・・(9)
ここで、Jはハロゲン原子を表すが、特に塩素原子であることが好ましい。RおよびRについては、式(1)で記述したRおよびRと同じである。
また他のブロック化酸性基は、酸性基である水酸基、カルボン酸基またはスルホン酸基に、他のブロック化基を有する化合物(以下、他のブロック化剤とも記す。)を反応させて得ることができる。これら他のブロック化剤としては、ハロゲン化メチルアルキルエーテル、アルキルハライド、酸塩化物、酸無水物、クロル炭酸エステル類、ジアルキルジカーボネート(ジ−tert−ブチルジカーボネートなど)、3,4−ジヒドロ−2H−ピランなどが挙げられる。
本発明における酸性水酸基をブロック化するのに有用な他のブロック化剤の具体例は、A.J.PearsonおよびW.R.Roush編、Handbook of Reagents for Organic Synthesis:Activating Agents and Protecting Groups,John Wiley & Sons(1999)に記載されている。
具体的な他のブロック化基によりブロック化された酸性水酸基としては、−O(t−C)、−OCHOCH、−OCHOC、−CO(t−C)、−OCH(CH)OC、2−テトラヒドロピラニルオキシ基が好ましい。
本発明における含フッ素ポリマー(A)の分子量は、後述する有機溶媒に均一に溶解し、基材に均一に塗布できる限り特に限定されないが、通常そのポリスチレン換算数平均分子量は1000〜10万が適当であり、好ましくは2000〜2万である。数平均分子量を1000以上とすることで、より良好なレジストパターンが得られ、現像後の残膜率が充分であり、パターン熱処理時の形状安定性もより良好となる。また数平均分子量を10万以下とすることで、組成物の塗布性がより良好であり、また充分な現像性を保つことができる。
重合開始源としては、重合反応をラジカル的に進行させるものであればなんら限定されないが、例えばラジカル発生剤、光、電離放射線などが挙げられる。特にラジカル発生剤が好ましく、過酸化物、アゾ化合物、過硫酸塩などが例示される。重合の方法もまた特に限定されるものではなく、単量体をそのまま重合に供するいわゆるバルク重合、単量体を溶解するフッ化炭化水素、塩化炭化水素、フッ化塩化炭化水素、アルコール、炭化水素、その他の有機溶剤中で行う溶液重合、水性媒体中で適当な有機溶剤存在下あるいは非存在下に行う懸濁重合、水性媒体に乳化剤を添加して行う乳化重合などが例示される。
本発明における光照射を受けて酸を発生する酸発生化合物(B)は露光により酸を発生する。この酸によって、含フッ素ポリマー(A)中に存在するブロック化酸性基が開裂(脱ブロック化)される。その結果レジスト膜の露光部がアルカリ性現像液に易溶性となり、アルカリ性現像液によってポジ型のレジストパターンが形成される。このような光照射を受けて酸を発生する酸発生化合物(B)としては、通常の化学増幅型レジスト材に使用されている酸発生化合物が採用可能であり、オニウム塩、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物、スルホン化合物、スルホン酸化合物等を挙げることができる。これらの酸発生化合物(B)の例としては、下記のものを挙げることができる。
オニウム塩としては、例えば、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等を挙げることができる。好ましいオニウム塩の具体例としては、ジフェニルヨードニウムトリフレート、ジフェニルヨードニウムピレンスルホネート、ジフェニルヨードニウムドデシルベンゼンスルホネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフレート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムドデシルベンゼンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、1−(ナフチルアセトメチル)チオラニウムトリフレート、シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウムトリフレート、ジシクロヘキシル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウムトリフレート、ジメチル(4−ヒドロキシナフチル)スルホニウムトシレート、ジメチル(4−ヒドロキシナフチル)スルホニウムドデシルベンゼンスルホネート、ジメチル(4−ヒドロキシナフチル)スルホニウムナフタレンスルホネート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホネート、(4−ヒドロキシフェニル)ベンジルメチルスルホニウムトルエンスルホネート等を挙げられる。
ハロゲン含有化合物としては、例えば、ハロアルキル基含有炭化水素化合物、ハロアルキル基含有複素環式化合物等を挙げることができる。具体例としては、フェニル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、メトキシフェニル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、ナフチル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等の(トリクロロメチル)−s−トリアジン誘導体や、1,1−ビス(4−クロロフェニル)−2,2,2−トリクロロエタン等を挙げられる。
スルホン化合物としては、例えば、β−ケトスルホン、β−スルホニルスルホンや、これらの化合物のα−ジアゾ化合物等を挙げることができる。具体例としては、4−トリスフェナシルスルホン、メシチルフェナシルスルホン、ビス(フェニルスルホニル)メタン等を挙げることができる。スルホン酸化合物としては、例えば、アルキルスルホン酸エステル、アルキルスルホン酸イミド、ハロアルキルスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステル、イミノスルホネート等を挙げることができる。具体例としては、ベンゾイントシレート、1,8−ナフタレンジカルボン酸イミドトリフレート等を挙げることができる。本発明において、酸発生化合物(B)は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
本発明における有機溶媒(C)は(A)、(B)両成分を溶解するものであれば特に限定されるものではない。メチルアルコール、エチルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等のグリコールモノアルキルエーテルエステル類などが挙げられる。
本発明のレジスト組成物における各成分の割合は、通常含フッ素ポリマー(A)100質量部に対し酸発生化合物(B)0.1〜20質量部および有機溶媒(C)50〜2000質量部が適当である。好ましくは、含フッ素ポリマー(A)100質量部に対し酸発生化合物(B)0.1〜10質量部および有機溶媒(C)100〜1000質量部である。
酸発生化合物(B)の使用量を0.1質量部以上とすることで、充分な感度および現像性を与えることができ、また10質量部以下とすることで、放射線に対する透明性が充分に保たれ、より正確なレジストパターンを得ることができる。
本発明のレジスト組成物にはパターンコントラスト向上のための酸開裂性添加剤、塗布性の改善のために界面活性剤、酸発生パターンの調整のために含窒素塩基性化合物、基材との密着性を向上させるために接着助剤、組成物の保存性を高めるために保存安定剤等を目的に応じ適宜配合できる。また本発明のレジスト組成物は、各成分を均一に混合した後0.03〜0.45μmのフィルターによってろ過して用いることが好ましい。
本発明のレジスト組成物をシリコーンウエハなどの基板上に塗布乾燥することによりレジスト膜が形成される。塗布方法には回転塗布、流し塗布、ロール塗布等が採用される。形成されたレジスト膜上にパターンが描かれたマスクを介して光照射が行われ、その後現像処理がなされパターンが形成される。
照射される光としては、波長436nmのg線、波長365nmのi線等の紫外線、波長248nmのKrFエキシマレーザー、波長193nmのArFエキシマレーザー、波長157nmのFエキシマレーザー等の遠紫外線や真空紫外線が挙げられる。本発明のレジスト組成物は、波長250nm以下の紫外線、特に波長200nm以下の紫外線(ArFエキシマレーザー光やFエキシマレーザー光)が光源として使用される用途に有用なレジスト組成物である。
現像処理液としては、各種アルカリ水溶液が適用される。アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、トリエチルアミン等が例示可能である。
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例にのみに限定されるものではない。なお、THFはテトラヒドロフラン、R113はトリクロロトリフルオロエタン(有機溶媒)、TFEはテトラフルオロエチレンを表す。
[クロロメチル(2−シクロヘキシルシクロヘキシル)エーテルの合成例]
(合成例1)
A.Warshawsky,A.Deshe,R.Gutman,British Polymer Journal,16(1984)234.,およびJ.Polym.Sci.Polym.Chem.Ed.,23(6)(1985)1839.に基づいて合成を行った。
500mlのガラス製反応容器を窒素置換し、ここに2−シクロヘキシルシクロヘキサノールの46.6gと脱水クロロホルムの200mlとを仕込み、撹拌子により溶液を撹拌し、完全に溶解したところでパラホルムアルデヒドの7.70gを加えた。次に氷浴により0〜5℃に反応容器を冷却し、溶液内にバブラーにて塩化水素を導入した。パラホルムアルデヒドによる溶液の懸濁がなくなり、溶液が透明になった時点で、塩化水素の導入を止めた。下層を分取し、無水塩化カルシウム粉の28.3gを加えて乾燥させた後、溶媒を留去して48.0gのクロロメチル(2−シクロヘキシルシクロヘキシル)エーテルを得た(H NMRによる純度87%)。
以下に、H NMRのデータを示す。
H NMR(399.8MHz、溶媒:CDCl、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):0.84〜2.23(m,20H),3.54〜4.20(m,1H(exo,endo体混合)),5.55〜5.62(m,2H)。
[クロロメチルフェンチルエーテルの合成例]
(合成例2)
合成例1における2−シクロヘキシルシクロヘキサノールの46.6gの替わりに、フェンチルアルコールの39.5gを用いる以外は合成例1と同様の操作を行い、45.9gのクロロメチルフェンチルエーテルを得た。収率は88%であり、H NMRによる純度は90%であった。以下に、H NMRのデータを示す。
H NMR(399.8MHz、溶媒:CDCl、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):0.87〜1.68(m,16H),3.32(s,1H(exo,endo体混合)),5.48〜5.50(m,2H)。
[クロロメチル(2−ノルボルナンメチル)エーテルの合成例]
(合成例3)
合成例1における2−シクロヘキシルシクロヘキサノールの46.6gの替わりに、2−ノルボルナンメタノールの32.3gを用いる以外は合成例1と同様の操作を行い、40.6gのクロロメチル(2−ノルボルナンメチル)エーテルを得た。収率は90%であり、H NMRによる純度は90%であった。以下に、H NMRのデータを示す。
H NMR(399.8MHz、溶媒:CDCl、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):0.64〜2.25(m,11H),3.34〜3.67(m,2H),5.50〜5.52(m,2H)。
[クロロメチル(4−tert−ブチルシクロヘキシル)エーテルの合成例]
(合成例4)
合成例1における2−シクロヘキシルシクロヘキサノールの46.6gの替わりに、4−tert−ブチルシクロヘキサノールの40.0gを用いる以外は合成例1と同様の操作を行い、37.9gのクロロメチル(4−tert−ブチルシクロヘキシル)エーテルを得た。収率は68%であり、H NMRによる純度は90%であった。以下に、H NMRのデータを示す。
H NMR(399.8MHz、溶媒:CDCl、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):0.85(s,9H),0.98〜2.11(m,9H),3.60〜4.02(m,1H(exo,endo体混合)),5.56(s,2H)。
[クロロメチル(ジシクロヘキシルメチル)エーテルの合成例]
(合成例5)
合成例1における2−シクロヘキシルシクロヘキサノールの46.6gの替わりに、ジシクロヘキシルメタノールの50.3gを用いる以外は合成例1と同様の操作を行い、49.9gのクロロメチル(ジシクロヘキシルメチル)エーテルを得た。収率は79%であり、H NMRによる純度は86%であった。以下に、H NMRのデータを示す。
H NMR(399.8MHz、溶媒:CDCl、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):1.40〜14.4(m,20H),1.45〜2.06(m,2H),2.81(d,1H),5.46(s,2H)。
[クロロメチルネオペンチルエーテルの合成例]
(合成例6)
合成例1における2−シクロヘキシルシクロヘキサノールの46.6gの替わりに、ネオペンチルアルコールの22.6gを用いる以外は合成例1と同様の操作を行い、27.1gのクロロメチルネオペンチルエーテルを得た。収率は77%であり、H NMRによる純度は66%であった。以下に、H NMRのデータを示す。
H NMR(399.8MHz、溶媒:CDCl、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):0.92(s,9H),3.34(s,2H),5.59(s,2H)。
[含フッ素ジエン(1)の合成例]
(合成例7)
2Lのガラス製反応器にCFClCFClCFC(O)CFの108gと脱水THFの500mlとを仕込み、0℃に冷却した。ここにCH=CHCHMgClの2MのTHF溶液200mlをさらに200mlの脱水THFで希釈した溶液を、窒素雰囲気下で約5.5時間かけて滴下した。滴下終了後0℃で30分、室温で17時間撹拌した後、2N塩酸200mlを滴下した。水200mlとジエチルエーテル300mlを加え分液し、ジエチルエーテル層を有機層として得た。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、ろ過し粗液を得た。この粗液をエバポレーターで濃縮し、次いで減圧蒸留して、85gのCFClCFClCFC(CF)(OH)CHCH=CH(60〜66℃/0.7kPa)を得た。
次いで500mlのガラス製反応器に亜鉛の81gとジオキサンの170mlとを仕込み、ヨウ素で亜鉛の活性化を行った。その後100℃に加熱し、上記で合成したCFClCFClCFC(CF)(OH)CHCH=CHの84gをジオキサン50mlに希釈した溶液を1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃で40時間撹拌した。反応液をろ過し、少量のジオキサンで洗浄した。ろ液を減圧蒸留し、30gのCF=CFCFC(CF)(OH)CHCH=CH(36〜37℃/1kPa)を得た。以下に、H NMRおよび19F NMRのデータを示す。
H NMR(399.8MHz、溶媒:CDCl、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):2.74(d,J=7.3,2H),3.54(boad s,1H),5.34(m,2H),5.86(m,1H)。
19F NMR(376.2MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl)δ(ppm):−75.7(m,3F),−92.2(m,1F),−106.57(m,1F),−112.6(m,2F),−183.5(m,1F)。
(合成例8)
10Lのガラス製反応器にCFClCFClCFC(O)CFの758gと脱水THFの4.5Lを仕込み、0℃に冷却した。ここに窒素雰囲気下でCH=CHCHMgClの2MのTHF溶液1.4Lを約10.5時間かけて滴下した。滴下終了後0℃で30分、室温で12時間撹拌した後、クロロメチルメチルエーテルの350gを滴下し、さらに室温で92時間撹拌した。水1.5Lを添加、分液し、有機層をエバポレーターで濃縮し得られた粗液を1.5Lの水で2回水洗した。次いで減圧蒸留して、677gのCFClCFClCFC(CF)(OCHOCH)CHCH=CH(53〜55℃/0.17kPa)を得た。
次いで3Lのガラス製反応器に亜鉛の577gとジオキサンの1.3Lを仕込み、ヨウ素で亜鉛の活性化をおこなった。その後100℃に加熱し、上記で合成したCFClCFClCFC(CF)(OCHOCH)CHCH=CHの677gを2時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃で47時間撹拌した。反応液をろ過し、少量のジオキサンで洗浄した。ろ液に水2.5Lとエーテル1.5Lを加えて分液した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、ろ過して粗液を得た。粗液をエバポレーターで濃縮し、次いで減圧蒸留し、177gのCF=CFCFC(CF)(OCHOCH)CHCH=CH(43〜45℃/0.6kPa)を得た。以下に、H NMRおよび19F NMRのデータを示す。
H NMR(399.8MHz、溶媒:CDCl、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):3.16(broad,2H),3.44(s,3H),4.95(m,2H),5.22(m,2H),5.92(m,1H)。
19F NMR(376.2MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl)δ(ppm):−72.5(m,3F),−92.9(m,1F),−106.8(m,1F),−109.7(m,2F),−183.0(m,1F)。
[含フッ素ポリマー(A)の合成例]
(合成例9)
1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−4−トリフルオロメチル−4−ヒドロキシ−1,6−ヘプタジエン[CF=CFCFC(CF)(OH)CHCH=CH]の7.50g、1,4−ジオキサンの3.66gおよび酢酸メチルの16.6gを、内容積30mLのガラス製耐圧反応器に仕込んだ。次に、重合開始剤としてパーフルオロベンゾイルパーオキシドの0.22gを添加した。系内を凍結脱気した後、恒温振とう槽内(70℃)で18時間重合させた。重合後、反応溶液をヘキサン中に滴下して、ポリマーを再沈させた後、150℃で15時間真空乾燥を実施した。その結果、主鎖に含フッ素環状モノマー単位を有する白色粉末状の非結晶性ポリマーの5.40gを得た。このポリマーの分子量をGPC(THF溶媒)にて測定したところ、ポリスチレン換算で、数平均分子量(Mn)は7,600、重量平均分子量(Mw)は15,000であり、Mw/Mnは1.99であった。示差走査熱分析(DSC)により測定したガラス転移温度は152℃であった。
(合成例10)
1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−4−トリフルオロメチル−4−ヒドロキシ−1,6−ヘプタジエン[CF=CFCFC(CF)(OH)CHCH=CH]の4.82g、1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−4−トリフルオロメチル−4−メトキシメチルオキシ−1,6−ヘプタジエン[CF=CFCFC(CF)(OCHOCH)CHCH=CH]の1.00g、1,4−ジオキサンの0.78gおよび酢酸メチルの15.4gを、内容積30mLのガラス製耐圧反応器に仕込んだ。次に、重合開始剤としてパーフルオロベンゾイルパーオキシドの0.088gを添加した。系内を凍結脱気した後、恒温振とう槽内(70℃)で18時間重合させた。重合後、反応溶液をヘキサン中に滴下して、ポリマーを再沈させた後、150℃で15時間真空乾燥を実施した。その結果、主鎖に含フッ素環状モノマー単位を有する白色粉末状の非結晶性ポリマーの5.16gを得た。このポリマーの分子量をGPC(THF溶媒)にて測定したところ、ポリスチレン換算で、数平均分子量(Mn)は12,800、重量平均分子量(Mw)は31,000であり、Mw/Mnは2.42であった。示差走査熱分析(DSC)により測定したガラス転移点は140℃であった。
19F NMRおよびH NMR測定により計算されたポリマー組成は、1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−4−トリフルオロメチル−4−ヒドロキシ−1,6−ヘプタジエンからなるモノマー単位/1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−4−トリフルオロメチル−4−メトキシメチルオキシ−1,6−ヘプタジエンからなるモノマー単位=85.0/15.0モル%であった。
(合成例11)
1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−4−トリフルオロメチル−4−ヒドロキシ−1,6−ヘプタジエン[CF=CFCFC(CF)(OH)CHCH=CH]の5.04g、1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−4−トリフルオロメチル−4−メトキシメチルオキシ−1,6−ヘプタジエン[CF=CFCFC(CF)(OCHOCH)CHCH=CH]の2.51g、1,4−ジオキサンの3.52gおよび酢酸メチルの16.9gを、内容積30mLのガラス製耐圧反応器に仕込んだ。次に、重合開始剤としてパーフルオロベンゾイルパーオキシドの0.224gを添加した。系内を凍結脱気した後、恒温振とう槽内(70℃)で18時間重合させた。重合後、反応溶液をヘキサン中に滴下して、ポリマーを再沈させた後、150℃で15時間真空乾燥を実施した。その結果、主鎖に含フッ素環状モノマー単位を有する白色粉末状の非結晶性ポリマー(以下、重合体1Aという。)の5.29gを得た。重合体1Aの分子量をGPC(THF溶媒)にて測定したところ、ポリスチレン換算で、数平均分子量(Mn)は12,900、重量平均分子量(Mw)は7,300であり、Mw/Mnは1.77であった。示差走査熱分析(DSC)により測定したガラス転移点は140℃であった。
19F NMRおよびH NMR測定により計算されたポリマー組成は、1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−4−トリフルオロメチル−4−ヒドロキシ−1,6−ヘプタジエンからなるモノマー単位/1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−4−トリフルオロメチル−4−メトキシメチルオキシ−1,6−ヘプタジエンからなるモノマー単位=70/30モル%であった。
(合成例12)
1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−4−トリフルオロメチル−4−ヒドロキシ−1,6−ヘプタジエン[CF=CFCFC(CF)(OH)CHCH=CH]の6.43gおよびtert−ブチルメタクリレートの0.18g、1,4−ジオキサンの0.93gおよび酢酸メチルの20.4gを内容積30mLのガラス製耐圧反応器に仕込んだ。次に、重合開始剤としてパーフルオロベンゾイルパーオキシドの0.112gを添加した。系内を凍結脱気した後、恒温振とう槽内(70℃)で18時間重合させた。重合後、反応溶液をヘキサン中に滴下して、ポリマーを再沈させた後、150℃で15時間真空乾燥を実施した。その結果、主鎖に含フッ素環状モノマー単位およびtert−ブチルメタクリレートからなるモノマー単位を有する白色粉末状の非結晶性ポリマーの5.28gを得た。このポリマーの分子量をGPC(THF溶媒)にて測定したところ、ポリスチレン換算で、数平均分子量(Mn)は8,300、重量平均分子量(Mw)は16,800であり、Mw/Mnは2.01であった。示差走査熱分析(DSC)により測定したガラス転移点は162℃であった。
19F NMRおよびH NMR測定により計算されたポリマー組成は、1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−4−トリフルオロメチル−4−ヒドロキシ−1,6−ヘプタジエンからなるモノマー単位/tert−ブチルメタクリレートからなるモノマー単位=95/5モル%であった。
(合成例13)
1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−4−トリフルオロメチル−4−ヒドロキシ−1,6−ヘプタジエン[CF=CFCFC(CF)(OH)CHCH=CH]の4.5g、1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−4−トリフルオロメチル−4−メトキシメチルオキシ−1,6−ヘプタジエン[CF=CFCFC(CF)(OCHOCH)CHCH=CH]の1.72g、tert−ブチルメタクリレートの0.166g、1,4−ジオキサンの0.69gおよび酢酸メチルの16.58gを、内容積30mLのガラス製耐圧反応器に仕込んだ。次に、重合開始剤としてパーフルオロベンゾイルパーオキシドの0.095gを添加した。系内を凍結脱気した後、恒温振とう槽内(70℃)で18時間重合させた。重合後、反応溶液をヘキサン中に滴下して、ポリマーを再沈させた後、150℃で15時間真空乾燥を実施した。その結果、主鎖に含フッ素環状モノマー単位およびtert−ブチルメタクリレートからなるモノマー単位を有する白色粉末状の非結晶性ポリマー(以下、重合体2Aという。)の5.40gを得た。重合体2Aの分子量をGPC(THF溶媒)にて測定したところ、ポリスチレン換算で、数平均分子量(Mn)は10,000、重量平均分子量(Mw)は31,000であり、Mw/Mnは3.10であった。示差走査熱分析(DSC)により測定したガラス転移温度は150℃であった。
19F NMRおよびH NMR測定により計算されたポリマー組成は、1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−4−トリフルオロメチル−4−ヒドロキシ−1,6−ヘプタジエンからなるモノマー単位/1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−4−トリフルオロメチル−4−メトキシメチルオキシ−1,6−ヘプタジエンからなるモノマー単位/tert−ブチルメタクリレートからなるモノマー単位=72/23/5モル%であった。
(合成例14)
脱気した撹拌機付きの内容積0.2リットルのステンレス製オートクレーブにR113を150g仕込み、TFE14.4g、ノルボルネンの1.504g、1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−4−ペンテン−2−オール(以下、AF2という)の33.28gを導入した。55℃に昇温し、tert−ブチルパーオキシピバレート1.67gのR113溶液8mlを圧入し重合を開始した。55℃に達した時点での圧力は0.69MPaであった。10時間反応後圧力は0.62MPaに低下した。オートクレーブを室温まで冷却後、未反応ガスをパージし、ポリマー溶液を取り出した。得られたポリマー溶液をメタノールに投入しポリマーを析出させ、洗浄後50℃にて真空乾燥を行い、6.3gの含フッ素ポリマーを得た。このポリマーの分子量をGPC(THF溶媒)にて測定したところ、ポリスチレン換算で、数平均分子量(Mn)は2,400、重量平均分子量(Mw)は3,400であり、Mw/Mnは1.42であった。
19F NMRおよびH NMR測定により計算されたポリマー組成は、TFE単位/ノルボルネン単位/AF2単位=35/20/45モル%であった。
(合成例15)
合成例9にて合成したポリマー5.00gおよびメタノール25mLを200mLの丸底フラスコに入れ、マグネチックスターラーにて撹拌した。ポリマーが溶解した後水酸化ナトリウムのメタノール溶液(水酸化ナトリウム0.31gにメタノール7.65gを加え予め溶解させておく。)を加えて一晩室温にて撹拌した。溶媒を留去した後、脱水THF200mLおよび合成例1にて調製したクロロメチル2−シクロヘキシルシクロヘキシルエーテルの1.95gを加えて激しく撹拌した。3日間室温にて撹拌を続けた後、溶媒を留去した。残渣をジエチルエーテル100mLにて溶かし、純水200mLにて分液し水溶性成分を除去した。有機層から溶媒を留去した後、アセトン20mLに溶かし、ヘキサン中に滴下して、ポリマーを再沈させた。得られたポリマーを130℃で15時間真空乾燥し、白色粉末状の非結晶性ポリマー(以下、重合体3Aという。)を4.20g得た。
H NMR測定により計算された保護化率(全酸性基に対するブロック化された酸性基の割合(%))は29%であった。
(合成例16)
合成例15におけるクロロメチル(2−シクロヘキシルシクロヘキシル)エーテルの1.95gの替わりに、合成例2にて調製したクロロメチルフェンチルエーテルの1.58gを用いる以外は、合成例15と同様の操作を行い、白色粉末状の非結晶性ポリマー(以下、重合体4Aという。)を4.20g得た。
H NMR測定により計算された保護化率(全酸性基に対するブロック化された酸性基の割合(%))は32%であった。
(合成例17)
合成例15におけるクロロメチル(2−シクロヘキシルシクロヘキシル)エーテルの1.95gの替わりに、合成例3にて調製したクロロメチル(2−ノルボルナンメチル)エーテルの2.17gを用いる以外は、合成例15と同様の操作を行い、白色粉末状の非結晶性ポリマー(以下、重合体5Aという。)を4.30g得た。
H NMR測定により計算された保護化率(全酸性基に対するブロック化された酸性基の割合(%))は33%であった。
(合成例18)
合成例15におけるクロロメチル(2−シクロヘキシルシクロヘキシル)エーテルの1.95gの替わりに、合成例4にて調製したクロロメチル(4−tert−ブチルシクロヘキシル)エーテルの1.69gを用いる以外は、合成例15と同様の操作を行い、白色粉末状の非結晶性ポリマー(以下、重合体6Aという。)を4.00g得た。
H NMR測定により計算された保護化率(全酸性基に対するブロック化された酸性基の割合(%))は32%であった。
(合成例19)
合成例15におけるクロロメチル(2−シクロヘキシルシクロヘキシル)エーテルの1.95gの替わりに、クロロメンチルエーテルの1.60gを用いる以外は、合成例15と同様の操作を行い、白色粉末状の非結晶性ポリマー(以下、重合体7Aという。)を4.10g得た。
H NMR測定により計算された保護化率(全酸性基に対するブロック化された酸性基の割合(%))は34%であった。
(合成例20)
合成例15におけるクロロメチル(2−シクロヘキシルシクロヘキシル)エーテルの1.95gの替わりに、合成例5にて調製したクロロメチル(ジシクロヘキシルメチル)エーテルの1.91gを用いる以外は、合成例15と同様の操作を行い、白色粉末状の非結晶性ポリマー(以下、重合体8Aという。)を4.40g得た。
H NMR測定により計算された保護化率(全酸性基に対するブロック化された酸性基の割合(%))は27%であった。
(合成例21)
合成例15において、合成例9にて合成したポリマーの替わりに合成例10にて合成したポリマーを用いたこと、水酸化ナトリウム溶液の量を水酸化ナトリウム0.16gにメタノール3.83gを加えて溶解させたものに変えたこと、およびクロロメチル(2−シクロヘキシルシクロヘキシル)エーテルの量を0.98gに変えたこと以外は、合成例15と同様の操作を行い、白色粉末状の非結晶性ポリマー(以下、重合体9Aという。)を4.30g得た。
H NMR測定により計算された保護化率(全酸性基に対するブロック化された酸性基の割合(%))は29%(内訳:14%(合成例1の保護基)、15%(MOM))であった。
(合成例22)
合成例15において、合成例9にて合成したポリマーの替わりに合成例12にて合成したポリマーを用いたこと、および合成例15における水酸化ナトリウム溶液の量を水酸化ナトリウム0.21gにメタノール5.10gを加えて溶解させたものに変えたこと以外は、合成例15と同様の操作を行い、白色粉末状の非結晶性ポリマー(以下、重合体10Aという。)を4.00g得た。
H NMR測定により計算された保護化率(全酸性基に対するブロック化された酸性基の割合(%))は25%(内訳:20%(合成例1の保護基)、5%(tert−ブチルメタクリレートのtert−ブチル基))であった。
(合成例23)
合成例14にて合成したポリマー5.00gおよびメタノール25mLを200mLの丸底フラスコに入れ、マグネチックスターラーにて撹拌した。完全にポリマーが溶解したら水酸化ナトリウムメタノール溶液(水酸化ナトリウム0.31gにメタノール7.65gを加え予め溶解させておく)を加えて一晩室温にて撹拌した。溶媒留去した後、脱水THF200mLおよび合成例1にて調製した塩化物1.95gを加えて激しく撹拌した。その後暫くすると徐々に溶液が白濁してくる。数日室温にて撹拌を続けた後、溶媒留去した。残渣をジエチルエーテル100mLにて溶かし、純水200mLにて分液を行った。有機層を溶媒留去した後、アセトン20mLに溶かし、ヘキサン中に滴下して、ポリマーを再沈させた後、130℃で15時間真空乾燥を実施した。その結果、白色粉末状の非結晶性ポリマー(以下、重合体11Aという)を4.20g得た。
H NMR測定により計算された保護化率(全酸性基に対するブロック化された酸性基の割合(%))は29%であった。
(合成例24)
合成例9にて合成したポリマー5.0gおよびメタノール25mLを200mLの丸底フラスコに入れ、マグネチックスターラーにて撹拌した。完全にポリマーが溶解したら水酸化ナトリウムメタノール溶液(水酸化ナトリウム0.31gにメタノール7.65gを加え予め溶解させておく)を加えて一晩室温にて撹拌した。溶媒留去した後、脱水THF200mLおよび合成例6にて調製した塩化物1.71gを加えて激しく撹拌した。その後暫くすると徐々に溶液が白濁してくる。数日室温にて撹拌を続けた後、溶媒留去した。残渣をジエチルエーテル100mLにて溶かし、純水200mLにて分液を行った。有機層を溶媒留去した後、アセトン20mLに溶かし、ヘキサン中に滴下して、ポリマーを再沈させた後、130℃で15時間真空乾燥を実施した。その結果、白色粉末状の非結晶性ポリマー(以下、重合体12Aという)を4.40g得た。
H NMR測定により計算された保護化率(全酸性基に対するブロック化された酸性基の割合(%))は35%であった。
(合成例25)
合成例14にて合成したポリマー5.00gおよびメタノール25mLを200mLの丸底フラスコに入れ、マグネチックスターラーにて撹拌した。完全にポリマーが溶解したら水酸化ナトリウムメタノール溶液(水酸化ナトリウム0.31gにメタノール7.65gを加え予め溶解させておく)を加えて一晩室温にて撹拌した。溶媒留去した後、脱水THF200mLおよびクロロメチルメチルエーテル1.95gを加えて激しく撹拌した。その後暫くすると徐々に溶液が白濁してくる。数日室温にて撹拌を続けた後、溶媒留去した。残渣をジエチルエーテル100mLにて溶かし、純水200mLにて分液を行った。有機層を溶媒留去した後、アセトン20mLに溶かし、ヘキサン中に滴下して、ポリマーを再沈させた後、130℃で15時間真空乾燥を実施した。その結果、白色粉末状の非結晶性ポリマー(以下、重合体13Aという)を4.20g得た。
H NMR測定により計算された保護化率(全酸性基に対するブロック化された酸性基の割合(%))は29%であった。
【実施例1】
合成例15で合成した重合体3Aの1gとトリメチルスルホニウムトリフレートの0.05gとをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの10gに溶解させ、孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いてろ過し、レジスト組成物を製造した。
ヘキサメチルジシラザンで処理したシリコン基板上に、上記のレジスト組成物を回転塗布し、塗布後80℃で2分間加熱処理して、膜厚0.3μmのレジスト膜を形成した。窒素置換した露光実験装置内に、上記のレジスト膜を形成した基板を入れ、その上に石英板上にクロムでパターンを描いたマスクを密着させた。そのマスクを通じてArFエキシマレーザー光を照射し、その後100℃で2分間露光後ベークを行った。現像はテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(2.38質量%)を用いて、23℃で3分間行い、続けて1分間純水で洗浄した。レジスト膜の光線透過率、現像試験結果およびエッチング耐性を表1に示す。
(実施例2〜9、比較例1〜4)
実施例1における重合体3Aを、各々表1に示した重合体に替えた以外は、実施例1と同様な操作でレジスト膜を形成し、現像試験およびエッチング耐性を評価した。レジスト膜の光線透過率、現像試験結果およびエッチング耐性を表1に示す。

エッチング耐性:テトラフルオロメタン/酸素混合ガスプラズマによりエッチング速度を測定し、KrFレジスト(ESCAP)を1とした時の相対値を表す。
【産業上の利用可能性】
本発明のレジスト組成物は化学増幅型レジストとして用いることができ、特にKrF、ArFエキシマレーザー等の遠紫外線やFエキシマレーザー等の真空紫外線に対する透明性、ドライエッチング性に優れ、さらに感度、解像度、平坦性、耐熱性等に優れたレジストパターンを容易に形成できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性基を有する含フッ素ポリマーであって、該酸性基の一部が式(1)で表されるブロック化基によりブロック化されている含フッ素ポリマー(A)、光照射を受けて酸を発生する酸発生化合物(B)および有機溶媒(C)を含むことを特徴とするレジスト組成物。
−CHR−O−R ・・・(1)
(ただし、Rは水素原子または炭素数3以下のアルキル基であり、Rは置換基を有していてもよいシクロアルキル基、該シクロアルキル基を1つ以上有する1価の有機基、置換基を有していてもよい2個〜4個の環を有する橋かけ環式飽和炭化水素または該橋かけ環式飽和炭化水素を有する有機基である。)
【請求項2】
が式(2)、式(3)または式(4)で表される基である、請求項1に記載のレジスト組成物。


(R、R、RおよびRはそれぞれ独立にフッ素原子、炭素数3以下のアルキル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基または炭素数3以下のフルオロアルキル基を表し、p、q、rおよびsはそれぞれ独立に0〜11の整数を表し、tは0または1である。pが2以上の場合、Rはそれぞれ異なっていてもよい。qが2以上の場合、Rはそれぞれ異なっていてもよい。rが2以上の場合、Rはそれぞれ異なっていてもよい。sが2以上の場合、Rはそれぞれ異なっていてもよい。)
【請求項3】
酸性基が酸性水酸基である請求項1または2に記載のレジスト組成物。
【請求項4】
酸性基を有する含フッ素ポリマーが、主鎖に脂肪族環構造を有するポリマーである請求項1〜3のいずれかに記載のレジスト組成物。
【請求項5】
酸性基を有する含フッ素ポリマーが式(5)で表される含フッ素ジエンが環化重合したモノマー単位を有する構造である、請求項1〜4のいずれかに記載のレジスト組成物。
CF=CR−Q−CR=CH ・・・(5)
(ただし、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を表し、Qが式(6)で表される2価の有機基である。)
−R10−C(R12)(R13)−R11− ・・・(6)
(ただし、R10、R11は、それぞれ独立に、単結合、酸素原子、エーテル性酸素原子を有していてもよい炭素数3以下のアルキレン基またはエーテル性酸素原子を有していてもよい炭素数3以下のフルオロアルキレン基、R12は水素原子、フッ素原子、炭素数3以下のアルキル基または炭素数3以下のフルオロアルキル基、R13は酸性基、または酸性基を有する1価の有機基、を表す。)
【請求項6】
含フッ素ポリマーにおける酸性基の一部が、さらに式(1)の構造以外のブロック化基によりブロック化されている、請求項1〜5のいずれかに記載のレジスト組成物。

【国際公開番号】WO2004/042475
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【発行日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−549625(P2004−549625)
【国際出願番号】PCT/JP2003/014158
【国際出願日】平成15年11月6日(2003.11.6)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】