説明

レジスト膜の形成方法、ワーク、および、静電噴霧装置

【課題】低コストでレジスト膜を均一に形成可能なレジスト膜の形成方法を提供する。
【解決手段】静電噴霧によりワーク3の上にレジスト膜を形成するレジスト膜の形成方法であって、ノズル2とワーク3との間に所定の電圧を印加し、ノズル2からワーク3に向けてレジスト液を噴霧するステップと、ワーク3の上に噴霧されたレジスト液を硬化させてレジスト膜を形成するステップとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電噴霧によるレジスト膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、レジスト液にワーク(基板)を浸す液浸方法、版の凹凸を利用する印刷法、または、ワーク上にレジスト液を供給してワークを高速回転させることにより生じる遠心力で薄膜を形成するスピンコート法を用いて、ワーク上にレジスト膜を形成する方法がある。例えば特許文献1には、スピンコート法を用いたレジスト膜の形成方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−23387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、液浸方法や印刷法では、ワーク上に形成したレジスト膜が厚くなり、また、その厚さにばらつきが生じる。厚さにばらつきが生じると、ワーク自体の剛性が低下する。また、特許文献1に開示されているようなスピンコート法では、レジスト液の例えば50%が周囲に飛び散り、レジスト液の無駄が生じてコスト高となる。また、ワーク上に段差が形成されている場合に、レジスト液は段差に付着しにくい。
【0005】
そこで本発明は、低コストでレジスト膜を均一に形成可能なレジスト膜の形成方法、ワーク、および、静電噴霧装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面としてのレジスト膜の形成方法は、静電噴霧によりワークの上にレジスト膜を形成するレジスト膜の形成方法であって、ノズルと前記ワークとの間に所定の電圧を印加し、該ノズルから該ワークに向けてレジスト液を噴霧するステップと、前記ワークの上に噴霧された前記レジスト液を硬化させて前記レジスト膜を形成するステップとを有する。
【0007】
本発明の他の側面としてのワークは、静電噴霧によりレジスト膜が形成されたワークであって、半導体部材からなる基板部と、ノズルと前記基板部との間に所定の電圧を印加して該ノズルから該基板部に向けてレジスト液を噴霧し、該基板部の上に噴霧された該レジスト液を硬化させて形成されたレジスト膜とを有する。
【0008】
本発明の他の側面としての静電噴霧装置は、静電噴霧によりレジスト液を噴霧する静電噴霧装置であって、前記レジスト液を噴霧するノズルと、前記ノズルとワークとの間に所定の電圧を印加する電圧印加手段とを有し、前記ノズルは、前記電圧印加手段により前記所定の電圧が印加されることにより、前記レジスト液を前記ワークに向かって噴霧する。
【0009】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施例において説明される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低コストでレジスト膜を均一に形成可能なレジスト膜の形成方法、ワーク、および、静電噴霧装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施例の静電噴霧装置を用いて、レジスト膜を構成する粒子をワークの上に着弾している状態を示す図である。
【図2】本実施例の静電噴霧装置により印加されるパルス電圧の説明図である。
【図3】本実施例の静電噴霧装置におけるノズル先端部の断面図である。
【図4】本実施例の静電噴霧装置に設けられるシャッタの動作を示す図(a)、および、ノズル先端部の位置制御を示す図(b)である。
【図5】本実施例の静電噴霧装置により印加される直流電圧の説明図である。
【図6】本実施例の静電噴霧装置における複数のノズルの配置図である。
【図7】本実施例の静電噴霧装置によるレジスト膜形成の説明図である。
【図8】本実施例の静電噴霧装置の概略構成図である。
【図9】本実施例の静電噴霧の原理図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
まず、図8を参照して、本実施例における静電噴霧装置について説明する。図8は、本実施例の静電噴霧装置1の概略構成図である。静電噴霧装置1は、静電噴霧によりワーク3(基板)の上にレジスト膜を形成する。
【0014】
静電噴霧装置1は、主に、ノズル2、テーブル4、基盤5、および、電圧制御装置6(電圧印加手段)を備えて構成される。ノズル2には、図8中の矢印Aの方向からレジスト膜の液剤であるレジスト液が供給される。電圧制御装置6は、ノズル2の電極2aとテーブル4の電極4aとの間に所定の電圧を印加する。ワーク3は、例えば半導体部材からなる基板(基板部)であり、ノズル2の先端部2b(ノズル先端部)に対向するようにテーブル4の上に載置されている。ノズル先端部の径(レジスト液が通過する内径)は、例えば20μm〜200μm程度に設定される。
【0015】
電圧制御装置6により所定の電圧が印加されると、ノズル2の先端部2bからワーク3に向けてレジスト液が噴霧される。このとき、ノズル2の内部におけるレジスト液は、印加電圧により生じる静電力で反発し、ノズル2の先端部2bにおける液面の表面張力を破って微粒子化する。微粒子化されたレジスト液は、正又は負のいずれかに帯電しているため、互いの粒子は反発し合い、凝集することなく噴霧することができる。このように、レジスト液はノズル2の先端部2bから噴霧され、最初は比較的大きな径を有する粒子21の状態にあり、その後比較的小さな径を有する粒子23となってワーク3の上に堆積する。最後に、堆積した粒子23(レジスト液)を硬化させる(焼成する)ことにより、ワーク3は、基板部と基板部上に形成されたレジスト膜とを備えて構成されることになる。
【0016】
続いて、図9(a)〜(f)を参照して、静電噴霧装置1による静電噴霧(レジスト膜形成)の原理について説明する。図9(a)〜(f)は、静電噴霧の原理図である。図9(a)、(d)はノズル2の先端部2bからワーク3に向けて粒子21が噴霧された状態(着弾状態)、図9(b)、(e)は粒子23がワーク3の上に到達して薄膜を形成している状態(薄膜形成状態)、図9(c)、(f)は粒子23がワーク3の上で分散した状態(分散噴霧状態)をそれぞれ示す。
【0017】
図9(a)、(d)に示されるように、ノズル2の先端部2bからワーク3に向けて噴霧された粒子21は、比較的大きな径を有し、静電力が付与されることにより例えば正電荷を含んで帯電している。このように、噴霧された粒子21は、比較的大きな径を有し、かつ帯電した状態でワーク3に向けて移動(着弾)する。続いて図9(b)、(e)に示されるように、粒子21は分裂して、例えば100nm以下の比較的小さな径を有する粒子23となってワーク3の上に堆積する。このようにして、レジスト膜となる薄膜がワーク3の上に形成される。最後に図9(c)、(f)に示されるように、正電荷を含む粒子23は、互いに反発し合い、ワーク3の上で分散する。
【0018】
次に、静電噴霧を用いたレジスト膜の形成方法について説明する。図1は、静電噴霧装置1を用いて、レジスト膜を構成する粒子をワーク3の上に着弾している状態を示す図である。本実施例において、ワーク3には複数の凸部3a(段差)が設けられている。このように凸部3aを有するワーク3に対して、従来のようなスピンコート法を用いてレジスト膜(薄膜)を形成しようとすると、レジスト膜を均一に形成(成膜)することは困難である。そこで本実施例では、静電噴霧装置1を用いて粒子23を堆積させることにより、凸部3aを有するワーク3に対してもレジスト膜を均一に形成することができる。
【0019】
続いて、図2(a)〜(c)を参照して、静電噴霧装置1により印加される電圧(静電気を発生させるための電圧)について説明する。図2(a)〜(c)は、静電噴霧装置1により印加されるパルス電圧の説明図である。本実施例において、ワーク3が絶縁体である場合、静電噴霧装置1の電圧制御装置6は、ワーク3(テーブル4)に対する極性が正と負の交互に変化するパルス電圧をノズル2に印加する(パルス発振させる)。パルス電圧を印加する場合、まず図2(a)に示されるように、ノズル2に正電圧(+電圧)を印加する。このとき、絶縁体であるワーク3の表面(ノズル2側の面)には正電荷(+電荷)が集まり、この表面が正(+)に帯電する。
【0020】
また他の実施形態として、ワーク3(テーブル4)に対する極性が正のみ又は負のみの電圧高低差の変化で構成されたパルス電圧を印加してもよい。このようなパルス電圧を印加する場合、0Vの電圧を含むように設定することができるが、これに限定されるものではなく、0Vの電圧を含まないように設定してもよい。
【0021】
次に図2(b)に示されるように、ノズル2に負電圧(−電圧)を印加する。このとき、ノズル2から静電噴霧された粒子23は負(−)に帯電しており、正(+)に帯電したワーク3の表面上に付着(着弾)する。続いて図2(c)に示されるように、ノズル2に正電圧(+電圧)を印加する。このとき、ノズル2から静電噴霧された粒子23は正(+)に帯電しており、直前の負の電圧の印加時に負に帯電したワーク3の表面上に付着する。
【0022】
そして、図2(b)に示されるような負電圧を印加する状態と図2(c)に示されるような正電圧を印加する状態とを繰り返す(パルス電圧を印加する)ことにより、絶縁体であるワーク3の上にレジスト膜となる粒子23が堆積されていく。本実施例において、印加電圧の大きさは例えば0.5kV〜10kV程度に設定され、印加電圧のパルス幅(噴霧スピード)は例えば5Hz〜1kHz程度に設定される。また、ノズル2の先端部2bとワーク3の表面との間の距離dは、例えば0.5mm〜20mm程度に設定される。
【0023】
続いて、図3(a)〜(c)を参照して、静電噴霧開始時において、静電噴霧装置1のノズル先端部におけるレジスト液20の状態について説明する。図3(a)〜(c)は、静電噴霧開始時におけるノズル2の先端部2bの断面図である。図3(a)は、静電噴霧開始時において、ノズル2の内部にあるレジスト液20に対して外部から背圧が加えられていない自然な状態を示す。このとき、先端部2bにおいて、ノズル2の先端部2b(ノズル先端部)におけるレジスト液20は乾燥しており、レジスト液20の液面20aは、ノズル先端部には存在せずに、ノズル先端部の内側に寄っている。
【0024】
そこで本実施例では、図3(b)に示されるように、静電噴霧開始時においてレジスト液20の液面20bがノズル先端部と同一面に移動するように、背圧印加手段(不図示)を用いて、レジスト液20に対して外部から所定の背圧を加える。または、図3(c)に示されるように、静電噴霧開始時においてレジスト液20の液面20cがノズル先端部の外側に突出するように、レジスト液20に対して外部から所定の背圧を加えるようにしてもよい。
【0025】
また本実施例は、静電噴霧開始時において、所定の背圧を加える構成に限定されるものではない。例えば、噴霧開始時の電圧を噴霧中の電圧よりも高くするように設定してもよい。また、噴霧開始時の電圧パルスの周期を短くし、又は、逆に長くするように設定することもできる。このような構成でも、背圧を加える場合と同様に、噴霧開始時にレジスト液20の液面をノズル先端部に移動させることが可能である。
【0026】
ただし、静電噴霧開始時に噴霧条件を上述のように変更すると、設定された噴霧条件と比較してレジスト液20(粒子23)の噴霧量が増加する場合がある。このため、本実施例の静電噴霧装置1は、静電噴霧開始時の粒子23がワーク3に到達するのを妨げるためのシャッタ(ダミーシャッタ)を備える。図4(a)は、静電噴霧装置1に設けられるシャッタの動作を示す図である。図4(a)に示されるように、本実施例の静電噴霧装置1は、2つのシャッタ7a、7bを備える。シャッタ7aは、静電噴霧開始時において、粒子23がワーク3に到達するのを妨げる(レジスト液の噴射を遮る)ための捨て打ち用シャッタである。シャッタ7bは、静電噴霧終了時において、粒子23がワーク3に到達するのを妨げるための液だれ防止シャッタである。
【0027】
静電噴霧中(通常噴霧時)において、シャッタ7a、7bはノズル2とワーク3との間の領域から避けるように配置されている。一方、噴霧開始時および噴霧終了時において、シャッタ7a、7bはそれぞれ、ノズル2とワーク3との間の領域に入り込むように図4(a)中の矢印方向(ワーク3と平行方向)に移動する。このためシャッタ7a、7bはそれぞれ、噴霧開始時および噴霧終了時において、ノズル2から噴霧された粒子23がワーク3に到達することを妨げることができる。また電圧制御装置6は、噴霧終了時に、ノズル2(電極2a)に印加される電圧と同極性の電圧をシャッタ7a、7bに印加して、レジスト液20の噴霧を瞬時に止めることもできる。同時に、電圧制御装置6がノズル2に電圧を印加するのを止めるように構成してもよい。
【0028】
また本実施例では、静電噴霧開始時にのみ背圧を加える構成に限定されるものではない。レジスト液20の液面の位置や形状を一定に保持するために、静電噴霧中において所定の背圧を加えるようにしてもよい。
【0029】
また本実施例では、ワーク3の上に到達する粒子23の粒子径を制御するため、噴霧距離すなわちノズル2の位置(高さ)を制御することができる。図4(b)は、ノズル2(ノズル先端部)の位置制御(高さ制御)を示す図である。図4(b)に示されるように、静電噴霧装置1にはカメラ8が設けられている。カメラ8は、ワーク3の表面に到達した粒子23を観察可能に配置されている。このように、カメラ8を用いて粒子23の粒子径または粒子23による塗布状態を観察し、その観察結果に応じてノズル2を所望の位置に移動させるように制御する。例えば図4(b)に示されるように、噴霧中において、ノズル先端部とワーク3の表面との距離d1を、距離d2に変更することが可能である。
【0030】
このような制御は画像処理により自動的に実行することができ、または手動で行うこともできる。なお、粒子径を制御する場合、ノズル2の高さや左右方向の位置を移動させる構成に限定されるものではなく、例えばノズルの径や、印加電圧の大きさ又はパルス幅を変更する構成を採用してもよい。ワーク3の上にレジスト膜を形成する間にワーク3の静電気特性が変化する場合に効果的である。
【0031】
また本実施例では、図2を参照して説明したようなパルス電圧を印加する代わりに、ワーク3に対して正又は負の直流電圧をノズル2に印加してもよい。例えばワーク3が導電体である場合には直流電圧を用いることが好ましい。図5は、静電噴霧装置1により印加される直流電圧の説明図である。図5では、ワーク3(テーブル4)を接地し、ノズル2に正(+)の直流電圧を印加した状態を示している。ただし本実施例はこれに限定されるものではなく、ノズル2に負(−)の直流電圧を印加してもよい。正又は負のいずれの電圧を用いるかは、レジスト液20やワーク3の材料などに応じて適宜設定される。また、極性を変えることなく一方の極性のみの電圧を印加するように構成すればよいから、直流電圧に限定されるものではなく、噴霧中に極性を維持しながら電圧の大きさを変化するように制御してもよい。さらに、極性が正のみ又は負のみの電圧高低差の変化で構成されたパルス電圧を印加してもよい。このようなパルス電圧を印加する場合、0Vを含むように設定することができるが、0Vを含まないように設定してもよい。
【0032】
また本実施例では、ノズル2を複数配置して構成された複数ノズル、すなわち複数のノズル部を有するノズル2を用いてもよい。このとき、ワーク3の上にレジスト膜を均一に形成するため、複数のノズル2ごと、又は、所定の領域ごとに印加電圧(パルス電圧)を制御してもよい。
【0033】
また、複数のノズル2の配置は、所定の領域ごとに変更することができる。図6(a)〜(c)は、静電噴霧装置1における複数のノズル2(ノズル群)の配置図である。図6(a)は複数のノズル2を一列に等間隔で配置した例(ノズル群12a)を示し、図6(b)は複数のノズル2を一列に異なる間隔で配置した例(ノズル群12b)を示す。これらは、印加電圧が等電圧であるなど各種条件が同一に設定されており、ノズルの間隔(ノズルピッチ)のみを変更した例である。また図6(c)は、複数のノズル2を三列に等間隔で配置し、ノズルA、B、Cにおいて互いに異なる電圧を印加する例(ノズル群12c)を示す。
【0034】
レジスト膜を均一に形成するため、例えば図6(b)に示されるように、複数のノズル2の印加電圧が等電圧である場合、中心領域のノズルの間隔wを周辺領域のノズルの間隔wよりも広く設定する。複数のノズル2に印加する電圧がノズルによらず一定である(いずれのノズル2にも所定の電圧が等電圧であるように印加される)場合、図6(a)に示されるように複数のノズル2が等間隔wで配置されていると、周辺よりも中心領域において形成されるレジスト膜の膜厚が大きくなる。このため、図6(b)に示されるように、中心領域におけるノズルの間隔wを周辺領域におけるノズルの間隔wよりも大きくすることで、レジスト膜の膜厚を均一に形成することが可能となる。なお、図6(a)の等間隔ノズルの場合、端部のノズル電圧と中央部のノズル電圧を変えることで同じ結果を得ることもできる。
【0035】
また、例えば図6(c)に示されるように、複数のノズル2を等間隔wで配置した場合、複数のノズル2の周辺に位置する(周辺領域の)ノズルA(第1ノズル領域)、中間に位置する(中間領域の)ノズルB(第3ノズル領域)、および、中心に位置する(中心領域の)ノズルC(第2ノズル領域)のそれぞれに印加電圧の大きさ(V、V、V)を変更する。具体的には、ノズルA、B、Cの順に印加電圧の大きさを小さくする(V>V>V)。
【0036】
このように、電圧制御装置6は、複数のノズル2を構成する第1ノズル領域および第2ノズル領域(および第3ノズル領域)のそれぞれに印加される電圧を独立に制御することができる。図6(c)に示されるような配置の場合、電圧制御装置6は、第1ノズル領域に印加される第1電圧(V)を第2ノズル領域に印加される第2電圧(V)、および、(第3ノズル領域に印加される第3電圧V)よりも高くなるように制御する。このように電圧の大きさを設定することによっても、レジスト膜の膜厚を均一に形成することが可能となる。
【0037】
図7(a)〜(c)は、静電噴霧装置1によるレジスト膜形成の説明図である。図7(a)は、レジスト膜を構成する成膜材料が溶解した液剤(レジスト液)を噴霧した場合を示す。図7(b)は、レジスト膜を構成するナノ粒子を含有した液剤を噴霧した場合であって、噴霧中に溶媒が気化しない液剤を用いた場合を示す。図7(c)は、ナノ粒子を含有した液剤を噴霧した場合であって、噴霧中に溶媒が気化する液剤を用いた場合を示す。
【0038】
図7(a)に示されるように、成膜材料が溶解した液剤を用いた場合、液剤の粒子21aが分散して粒子23aとなり、ワーク3の上に堆積する。そしてワーク3の上に堆積した粒子23aを乾燥させることにより、粒子23a(堆積物)は矢印A、B、Cの順に変化する。最終的に、熱又は紫外線により堆積物を硬化(焼成)して、レジスト膜26a(薄膜)が形成される。
【0039】
図7(b)に示されるように、ナノ粒子を含有した液剤を用いた場合、粒子21bがナノ粒子30を含有した状態で分散して溶媒が気化しない状態で粒子23bとなり、ワーク3の上に堆積する(溶媒とともに着弾する)。そしてワーク3の上に堆積した粒子23bを乾燥させることにより、粒子23b(堆積物)は矢印A、B、Cの順に変化する。最終的に、熱又は紫外線により堆積物を硬化(焼成)して、レジスト膜26b(薄膜)が形成される。
【0040】
図7(c)に示されるように、ナノ粒子を含有した液剤を用いた場合、粒子21cがナノ粒子30を含有した状態で分散して溶媒が気化してナノ粒子30となり、ワーク3の上に堆積する(ナノ粒子のみ着弾する)。そしてワーク3の上に堆積したナノ粒子30(堆積物)を加熱することによりレべリング(平坦化)し(矢印A)、その後堆積物は矢印B、Cの順に変化する。最終的に、熱又は紫外線によりナノ粒子30(堆積物)を硬化(焼成)して、レジスト膜26cが形成される。
【0041】
このように本実施例のレジスト膜の形成方法においては、まず、ノズルとワークとの間に所定の電圧を印加し、ノズルからワークに向けてレジスト液を噴霧する。続いて、ワークの上に噴霧されたレジスト液(粒子)を硬化させてレジスト膜を形成する。
【0042】
本実施例によれば、低コストでレジスト膜を均一に形成可能なレジスト膜の形成方法、ワーク、および、静電噴霧装置を提供することができる。
【0043】
以上、本発明の実施例について具体的に説明した。ただし、本発明は上記実施例として記載された事項に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 静電噴霧装置
2 ノズル
3 ワーク
4 テーブル
5 基盤
6 電圧制御装置
7 シャッタ
8 カメラ
20 レジスト液
21、23 粒子
26a、26b、26c レジスト膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電噴霧によりワークの上にレジスト膜を形成するレジスト膜の形成方法であって、
ノズルと前記ワークとの間に所定の電圧を印加し、該ノズルから該ワークに向けてレジスト液を噴霧するステップと、
前記ワークの上に噴霧された前記レジスト液を硬化させて前記レジスト膜を形成するステップと、を有することを特徴とするレジスト膜の形成方法。
【請求項2】
前記所定の電圧は、正電圧と負電圧が交互に変化するパルス電圧であることを特徴とする請求項1に記載のレジスト膜の形成方法。
【請求項3】
前記所定の電圧は、正電圧または負電圧のみで構成された電圧が変化するパルス電圧であることを特徴とする請求項1に記載のレジスト膜の形成方法。
【請求項4】
前記所定の電圧は、正電圧または負電圧で構成された直流電圧であることを特徴とする請求項1に記載のレジスト膜の形成方法。
【請求項5】
静電噴霧によりレジスト膜が形成されたワークであって、
半導体部材からなる基板部と、
ノズルと前記基板部との間に所定の電圧を印加して該ノズルから該基板部に向けてレジスト液を噴霧し、該基板部の上に噴霧された該レジスト液を硬化させて形成されたレジスト膜と、を有することを特徴とするワーク。
【請求項6】
静電噴霧によりレジスト液を噴霧する静電噴霧装置であって、
前記レジスト液を噴霧するノズルと、
前記ノズルとワークとの間に所定の電圧を印加する電圧印加手段と、を有し、
前記ノズルは、前記電圧印加手段により前記所定の電圧が印加されることにより、前記レジスト液を前記ワークに向かって噴霧することを特徴とする静電噴霧装置。
【請求項7】
前記電圧印加手段により印加される前記所定の電圧は、正電圧と負電圧が交互に変化するパルス電圧であることを特徴とする請求項6に記載の静電噴霧装置。
【請求項8】
前記電圧印加手段により印加される前記所定の電圧は、正電圧または負電圧のみで構成された電圧が変化するパルス電圧であることを特徴とする請求項6に記載の静電噴霧装置。
【請求項9】
前記電圧印加手段により印加される前記所定の電圧は、正電圧または負電圧で構成された直流電圧であることを特徴とする請求項6に記載の静電噴霧装置。
【請求項10】
前記レジスト液の噴霧を遮るシャッタを更に有し、
前記シャッタは、前記レジスト液が前記ワークの上に噴霧されるのを妨げることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項に記載の静電噴霧装置。
【請求項11】
前記電圧印加手段は、前記ノズルに印加される前記所定の電圧と同極性の電圧を前記シャッタに印加して、前記レジスト液の噴霧を瞬時に止めることを特徴とする請求項10に記載の静電噴霧装置。
【請求項12】
前記ノズルの内部の前記レジスト液に所定の背圧を印加する背圧印加手段を更に有し、
前記背圧印加手段は、前記ノズルの先端部における前記レジスト液の形状を一定に保持するように前記所定の背圧を印加することを特徴とする請求項6乃至11のいずれか1項に記載の静電噴霧装置。
【請求項13】
前記ノズルは複数のノズル部を有し、
前記電圧印加手段は、前記複数のノズル部を構成する第1ノズル領域および第2ノズル領域のそれぞれに印加される電圧を独立に制御することを特徴とする請求項6乃至12のいずれか1項に記載の静電噴霧装置。
【請求項14】
前記第1ノズル領域は前記複数のノズル部の中心に位置し、
前記第2ノズル領域は前記複数のノズル部の周辺に位置し、
前記電圧印加手段は、前記第1ノズル領域に印加される第1電圧を前記第2ノズル領域に印加される第2電圧よりも低くなるように制御することを特徴とする請求項13に記載の静電噴霧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−22551(P2013−22551A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162001(P2011−162001)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000144821)アピックヤマダ株式会社 (194)
【Fターム(参考)】