説明

レストレスレッグス症候群を処置するための経外角皮的投与形

【課題】レストレスレッグス症候群を処置するための経外角皮的投与形の提供。
【解決手段】本発明は、レストレスレッグス症候群(RLS)を有効に処置するためのロチゴチンを含有している、特に2.5〜20cmの表面積を有しており、かつレストレスレッグス症候群に対する活性成分としてロチゴチン1.125〜9.0mg/cmを含有しているアクリレートベース又はシリコーンベースの経皮吸収治療システム(TDS)の形の経外角皮の薬剤学的組成物に関するものであり、前記システムは国際レストレスレッグス症候群研究グループ(IRLSSG)評定尺度に従って少なくとも8日間の期間に亘る投与後に2単位又はそれ以上のプラシーボ処置に比較してヒトのレストレスレッグス症候群−患者の状態の改善を生じさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レストレスレッグス症候群を処置するための経外角皮的(transepikutan)適用形の、特に経皮吸収治療システム(TDS)の形の医薬を製造するためのロチゴチンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
レストレスレッグス症候群(以下にRLSとも呼ぶ)は神経疾患であり、かつ強い運動衝動を伴う脚における知覚異常として現れる。RLSは、蟻走感、刺痛、疝痛、かゆみ、灼熱感、痙攣又は痛みとなって現れ、かつ罹患者に動かしたいという抵抗しがたい衝動を引き起こす。これらの障害はその都度罹患者が休息する際に蓄積されて発生する。
【0003】
特に夜の入眠時及び夜間睡眠の間に、これらの感覚障害及び結果的に発生する運動衝動は、不穏状態及び睡眠障害をまねく。
【0004】
RLSは全ての年齢段階で発生しうるものであるが、しかしながら頻度は年齢が高くなるに連れて増大する。一般人口の有病率は約10%である。症候の特徴に基づきRLSは睡眠障害の最も頻度の高い原因の1つである。RLSは20〜40歳で5%、40〜60歳で20%及び60歳超で35%の睡眠−覚醒障害の原因である。
【0005】
患者の睡眠もしくは生活の質がRLSにより一段と制限されているか又は患者が日中疲労に苦しむ場合に治療のための適応が与えられている。治療の必要性は通例40〜50歳の年齢で生じる。
【0006】
治療研究において、ドーパ脱カルボキシル酵素阻害剤との組合せでのドーパミンアゴニスト類、オピエート類、ベンゾジアゼピン類、カルバマゼピン、クロニジン又はレボドーパ(L-DOPA)での単独治療(Monotherapien)は異なる成果を示した。
【0007】
RLSの場合のL-DOPAの使用は最も頻繁に試験されていた。L-DOPAでの長期治療の場合に、生活及び睡眠の質の改善と共に明らかな愁訴減少となる。しかしながら該治療の欠点は、多数の患者の場合に作用がL-DOPAの短い半減期のために短く持続するに過ぎないことにある。そのうえ長期使用の場合に作用の減少(寛容発展)及び/又は朝の時間へのRLS−愁訴のシフト(リバウンド)又は日中にも障害の発生を伴う愁訴の悪化(増悪;Augmentation)となる。
【0008】
増悪、リバウンド及び寛容はRLS−疾患の場合に詳細に次のように記載される:
a)増悪
RLS−患者の場合に増悪は
− 処置前よりも夕方でのより早いRLS−症候の発生;
− 日中の症候の発生;
− 他の身体部分、典型的には腕の罹患;
又は
− 処置されない経過の場合よりも症候のより迅速な進行
を含んでいる。
【0009】
特にRLS−患者の場合の増悪の型は望ましくない。これは、薬剤の服用がその都度夕方に行われる場合に、昼の間にRLS−愁訴の重症度が増大し、続いて夜に症候が減少することが記載される。
b)リバウンド
この現象は増悪に類似しており、かつ特に朝の時間におけるRLS−症候の発生となって、覚醒後すぐに次第に弱まる作用レベルで現れる。
c)寛容
これはRLS−患者の場合に作用物質ベースの治療への適応として記載されることができる。
【0010】
これは、RLS−疾患の同じ症候を軽減するために、ますます高い作用物質用量が患者に投与されなければならないか、又は同じ作用物質量がこれが治療の開始時にそうであったよりも愁訴の軽減をあまり生じないことになって現れる。
【0011】
個々の別のドーパミンアゴニストは、短期治療研究においてそれらの治療上の使用可能性について試験されている。試験されたドーパミンアゴニストには次のものが含まれる:ブロモクリプチン、カベルゴリン、α−ジヒドロエルゴクリプチン、リスリド、ペルゴリド、プラミペキソール及びロピニロール。これら全てのドーパミンアゴニストが有効であるが、しかしながら、通例初期に及び用量に依存して発生する副作用、例えばはきけ、嘔吐、めまい、低血圧症、便秘、不眠症を引き起こすという欠点を有することが示されている。
【0012】
ベンゾジアゼピン類及びオピエート類は同様にRLSの場合に使用される。しかしながら依存性及び寛容発展の危険のために、これらの物質は治療に制限されて利用可能であるに過ぎない。
【0013】
当初に抗高血圧薬及び縮瞳薬として開発された経皮投与されるクロニジン、2−(2,6−ジクロロアニリノ)−4,5−ジヒドロイミダゾールの作用もRLSの処置の場合に試験されている。その際に、確かに入眠潜時は短縮されたが、それに反して睡眠の質、覚醒頻度又は睡眠中の周期的な脚運動(Periodic Leg Movements during Sleep、"PLMS")は影響を受けなかったことが確認されている。単独治療としてより有効な物質が利用可能であるので、目下のところクロニジンは代替的な治療形として制限されて推奨されるに過ぎない。
【0014】
大部分のこれまでの単独治療、例えばL−ドーパでの治療は、治療上の成果を確保するために、相応する作用物質の量が治療期間に依存して増大されなければならないという欠点を有する。治療はそれゆえ必然的に一段と作用物質寛容と結びついている。
【0015】
故に組合せ治療は単独治療と結びついた欠点を克服すべきである。
【0016】
例えば、WO 01/13903には、とりわけレストレスレッグス症候群を処置するためのTDS中に含まれており、α2−アゴニストと単独治療においてRLSの症候を減少させる別の精神心理学的薬(Neuropsychopharmakon)とからなっている作用物質組合せが記載されている。
【0017】
とりわけ、ドーパミンアゴニストの群からの精神心理学的薬としてS(−)−2−(N−プロピル−N−2−チエニルエチルアミノ)−5−ヒドロキシ−テトラリン(例えばN-0923として)が作用物質組合せの成分として挙げられている。しかしながらこれについての実施例は欠けている。
【0018】
WO 01/13902には、レストレスレッグス症候群を処置するための、とりわけ経皮適用のための、α2−アゴニストであるクロニジンとドーパミンアゴニストであるプラミペキソールからなっている作用物質組合せが定義されている。
【0019】
双方の文書において実施例にはプラミペキソール及びクロニジンからなる組合せ治療での2人の患者の処置が説明されている。
【0020】
プラミペキソールは原則的に感覚運動性RLS−症候の処置に承認されている。
【0021】
この物質の顕著でさらなる望ましくない作用(副作用)として、疲労、障害された消化(消化不良)、頭痛及び分泌停滞が報告されている。
【0022】
しかしながら作用物質組合せ中に存在しているクロニジンは−WO明細書に提案されたように−睡眠の質、覚醒頻度又は睡眠中の周期的な脚運動への影響を有していないので、それゆえ作用物質クロニジンは疾患RLSの軽減に本質的に寄与しない。
【0023】
既に挙げられたように故にα2−アゴニストであるクロニジンはRLS−疾患の処置の場合に2番目の選択であるに過ぎない。
【0024】
このことを、US American Restless Leg Syndrome Foundationはその"RLS Medical Bulletin"において確認している。
【0025】
"Treatment"(処置)の章において、"Primary Pharmacological Treatments"(一次薬理学的処置)の後に"Secondary Pharmacological Treatments"(二次薬理学的処置)が扱われている。"Secondary Pharmacological Treatments"はそこでは良好に確立されていない処置としてか又はRLSの処置の場合に制限された有効性を有する処置として評価されている。
【0026】
他の作用物質に加えてクロニジンもRLS−疾患の場合に十分有効に作用してしないとして挙げられている。
【0027】
RLSの処置の場合にクロニジンの使用が確信をもって推奨されることができないことが推論される。患者は、この物質の利用の証拠が最小限であることを理解しなければならないだろう。
【0028】
最後に、双方の前記のWO明細書に記載された組合せ治療での処置は全部で2人の発端者(その都度一(1)人が男性及び一(1)人が女性)のみで実施されたので、治療及びその経過に関する証言は不可能である。
【0029】
また、提案されたプラスター製剤は取り扱うのが厄介であるか、実現するのが技術的に難しいか又は経済的に費用集約的である。
【0030】
前記のWO明細書に説明されたように、双方の作用物質がそれぞれ別個のプラスターで与えられる場合に、患者には取扱いが厄介であり、かつ十分なコンプライアンスが与えられていない。とりわけ、プラスターが混同され、ひいては患者により同じ作用物質の二つ(2)のプラスターが適用されるという危険が存在する。
【0031】
双方の作用物質が共通のプラスター中で混合物として貯蔵される場合には、それぞれ個々の成分の治療上の必要な用量が作用することになりうることが保証されていない。それゆえ必要な有効性が十分に保証されていない。
【0032】
双方の作用物質がプラスター内部で分離されて貯蔵される場合には、そのようなプラスターの製造は構成的に複雑であり、かつ費用集約的である。
【0033】
最後に、投与される他の物質との相互作用をできるだけ僅かにするために、疾患の治療はできるだけ個々の物質で行われるべきである。この治療上の要求はRLS−疾患の場合に重要である、それというのも疾患は−冒頭に挙げられたように−多重の病的状態がしばしば発生する進んだ年齢で発生するからである。
【0034】
RLS−投薬の場合に多数の困難が克服されるべきである。
【0035】
例えば、レボドーパの投与の場合に腸中、特に十二指腸中の制限されかつ不規則な吸収が可能であるに過ぎないので、再現可能な血漿レベルは達成されない。このことは特に同時の食料摂取の場合に当てはまる。
【0036】
疾患RLSの場合に使用可能な大部分の作用物質は経口投与の場合に肝臓の初回−通過−代謝を受ける。
【0037】
これらの因子は、経口投与の際に遅延されかつ再現可能ではない作用発生及び予測可能ではない作用期間の結果となりうる。特に、引き起こされた変動するレボドーパ−血漿濃度は望ましくない。血漿濃度のピーク値はしばしば望ましくない副作用の発生と相関し、これに反して低すぎる血漿レベルの場合に作用は帳消しになる。故にL−ドーパは毎日何度も与えられなければならないので、このことはコンプライアンスの問題をまねきうる。
【0038】
経口投与の前記の欠点は、RLS−疾患に対するレボドーパ又は他の作用物質のためのより有効な他の投与経路を探すことをもたらした。次の非経口投与経路が考察されている:静脈内、経皮、皮下、筋肉内、脳室内、鼻内、肺、舌下又は直腸内。
【0039】
しかしながら、これまでこれらの経路のいずれも治療上満足のいく投与系又は治療成果をもたらさなかった。
【0040】
特に、提案された非経口投与経路は、これらが一部は観血的であり、かつ合併症を発生しうるという制限を示す。このことは例えばレボドーパ−溶液の長期−十二指腸内−投与の場合にそうであった。特にカテーテル先端の交換はしばしば創傷及び痛みと結びついている。
【0041】
連続的な静脈内又は皮下の注入も治療上満足されるものではない。確かに、例えばアポモルフィンの皮下投与される注入で安定な血漿濃度が達成されることができるが、しかしながら、アポモルフィンが毎日何度もより長い期間に亘り投与されなければならない場合に受け入れることができない局所刺激を発生する。
【0042】
故に、
・ 抜群に適合性であり、
・ 単独治療されることができ、
・ 治療上の要求を満たす薬剤学的−技術的な製剤中に存在し、
かつ
作用物質含有の製剤が技術的に並びに費用面で好都合に製造されることができる、
疾患RLSの治療のための作用物質を提供するというさらなる需要が過去及び現在に存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0043】
意外なことにかつ予期せずに、ロチゴチンを含有している経外角皮的投与形が、特にTDSの形でRLSを処置するために治療上有益であることが見出された。特にRLS−症候の連続的な長期処置に頼り、かつRLS−増悪に罹りやすいRLS−患者を処置するためにこの投与形は治療上有効である。
【0044】
故に本発明は、経外角皮の薬剤学的製剤の形における、特に経口投与される作用物質を用いる技術水準から公知のこれまでの単独治療の欠点を回避する経皮吸収治療システム(TDS)の形における薬剤学的組成物を製造するためのロチゴチンの使用に関する。
【0045】
意外なことに、経外角皮的組成物における、特にTDSの薬剤学的組成物の形における単独治療剤としてのロチゴチンの投与がRLS−症候の抑圧及び減少を生じさせ、その際に作用物質ロチゴチンはこれまで公知の単独治療と比較して持続的にも極めて低く配量されることができ、かつ良好な適合性を有することが示された。
【0046】
本発明による投与形はRLSの中程度から重度の疾患の処置に特に適している。
【0047】
ロチゴチンは化学物質(−)−5,6,7,8−テトラヒドロ−6−[プロピル[2−(2−チエニル)エチル]アミノ]−1−ナフトールのINN(国際一般名)である。
【0048】
化合物(−)−5,6,7,8−テトラヒドロ−6−[プロピル[2−(2−チエニル)エチル]アミノ]−1−ナフトールは本来公知の方法で得られる。前記化合物の製造はEP 0 168 505 B1に記載されたようにして製造される。これに関して本発明には完全に広範に関連づけられている。
【0049】
(−)−5,6,7,8−テトラヒドロ−6−[プロピル[2−(2−チエニル)エチル]アミノ]−1−ナフトールがパーキンソン症候群を処置するための薬剤として使用されることができることは既に公知である。
【0050】
しかしながらこれに関連して疾患RLSがパーキンソン病の形ではなくて、むしろこれとは異なる疾患であるという指摘が重要である。
【0051】
ところで経外角皮的投与形での(−)−5,6,7,8−テトラヒドロ−6−[プロピル[2−(2−チエニル)エチル]アミノ]−1−ナフトールの投与が疾患レストレスレッグス症候群に有利な影響を及ぼすことが見出された。
【0052】
意外なことに、本発明により使用すべき化合物は既に極めて低い用量で、レストレスレッグス症候群を処置する場合のその使用を可能にする特異的な作用を示した。作用強度並びにその特異性において、前記化合物はレストレスレッグス症候群の適応に有効な公知物質よりも優れている。
【0053】
RLSに対する多数の技術水準から公知の単独治療剤において、これまでそのような有効かつ特異的な作用は知られていなかったので、レストレスレッグス症候群の治療剤としての本発明による投与形における前記化合物の使用は薬学を豊かにし、かつ医者のためになる。
【0054】
本発明による投与形は治療上有利な方法で、経口投与形の場合に発生する拍動性の血漿レベルを回避する一定の血漿レベルを提供する。特に、血漿レベル及び治療上の作用が再現不可能であるという結果を有するL−ドーパ治療から公知であるような、食物−相互作用はない。
【0055】
本発明の一利点は、レストレスレッグス症候群を処置するための経皮適用形における作用物質ロチゴチンの使用の際に、患者の健康状態を改善するために、その際に許容できない望ましくない作用(副作用)が発生することなく、既に低い用量で十分であることにあり;特に増悪が抑圧されることが重要である。このことは特に望ましい、それというのも増悪を有するRLS−患者のほぼ半分で投薬変更が必要だからである。さらにまた、反応性能及び応答速度がRLS−患者の場合に改善される。本発明の範囲内で特に有利には、作用物質は1日当たり1.0〜10mgの量で、好ましくは0.5〜5mgからなる量で適用される。
【0056】
本発明による投与形の別の利点は、一定の血漿レベルを有する少なくとも24hに亘る作用物質ロチゴチンの快適な供給に起因している。
【0057】
作用物質は、経外角皮適用の形で軟膏、ゲル又はクリームとして患者の皮膚に適用されるが、しかしながら好ましくはこれはTDSとしてプラスターの形で投与される。
【発明を実施するための形態】
【0058】
本発明によれば、経皮吸収治療システムはマトリックスの成分に対して不活性のバッキング層、(−)−5,6,7,8−テトラヒドロ−6−[プロピル[2−(2−チエニル)エチル]アミノ]−1−ナフトールを含有している自己接着性のマトリックス層及び使用前に除去すべき保護フィルムを含有しており、前記マトリックス層が、
a)ベースとしてアクリレートベースもしくはシリコーンベースの非水性ポリマー接着剤を含有し、
b)≧5%(g/g)の遊離塩基(−)−5,6,7,8−テトラヒドロ−6−[プロピル[2−(2−チエニル)エチル]アミノ]−1−ナフトールの溶解度を有し、かつ
c)遊離塩基(−)−5,6,7,8−テトラヒドロ−6−[プロピル[2−(2−チエニル)エチル]アミノ]−1−ナフトールを有効な量で含有する
ことにより特徴付けられる。
【0059】
さらなる一展開によればTDSのマトリックスは無機ケイ酸塩粒子<0.5%(g/g)を含有する。
【0060】
特に有利なさらなる一展開によれば、経皮吸収治療システムはマトリックス中に無機ケイ酸塩粒子<0.05%(g/g)を含有する。
【0061】
本発明の一実施態様によれば、経皮吸収システムは次のモノマーの少なくとも2つを含有するアクリレートベースのポリマー接着剤を含有する:
アクリル酸、アクリルアミド、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、オクチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルアクリレート、グリシジルアクリレート、メタクリレート酸、メタクリルアミド、ヘキシルメチルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、メチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、酢酸ビニル又はビニルピロリドン。
【0062】
本発明の有利なさらなる一展開によれば、経皮吸収システムは、親水性ポリマー又はグリセリン又はグリセリン誘導体の形の(−)−5,6,7,8−テトラヒドロ−6−[プロピル[2−(2−チエニル)エチル]アミノ]−1−ナフトールの溶解度を改善するための添加剤を有するシリコーンベースのポリマー接着剤を含有する。
【0063】
本発明による他の実施態様によれば、経皮吸収システムにおいて(−)−5,6,7,8−テトラヒドロ−6−[プロピル[2−(2−チエニル)エチル]アミノ]−1−ナフトールが、アクリレートベースのポリマー接着剤中には10〜35%[g/g]の濃度でか又はシリコーンベースのポリマー接着剤中には5〜40%[g/g]の濃度で含まれている。
【0064】
本発明の別のさらなる一展開によれば、経皮吸収システムは、ヒトの皮膚への(−)−5,6,7,8−テトラヒドロ−6−[プロピル[2−(2−チエニル)エチル]アミノ]−1−ナフトールの浸透を改善する物質を含有する。
【0065】
本発明によれば、経皮吸収システムのために浸透を促進する物質は脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、グリセリン又はその誘導体、N−メチルピロリドン、テルペン又はテルペン誘導体からなる群から選択されている。
【0066】
本発明による一実施態様によれば、経皮吸収治療システム中で浸透を促進する物質はオレイン酸又はオレイルアルコールである。
【0067】
本発明によれば有利には、経皮吸収システム中で親水性ポリマーはポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン及び酢酸ビニルのコポリマー、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はエチレン及び酢酸ビニルのコポリマーである。
【0068】
別の実施態様において、経皮吸収システム中で親水性ポリマーは可溶性ポリビニルピロリドンの形で及び1.5〜5%(g/g)の濃度で作用物質含有のマトリックス層中に含まれている。
【0069】
さらに、本発明によれば経皮吸収システムはマトリックス中に凝集の改善のための不活性充てん剤を含有していてよい。
【0070】
経皮吸収治療システムは、EP 1 033 978 B1の実施例に詳細に記載されるように、製造されることができる。
【0071】
本発明による薬剤学的製品は、マトリックスの成分に関して不活性である補強層、有効なロチゴチン−又は塩酸ロチゴチン−量を含んでいる自己接着性のマトリックス層及び使用前に除去すべき保護フィルムを含んでいる。
【実施例】
【0072】
実施例1
(−)−5,6,7,8−テトラヒドロ−6−[プロピル[2−(2−チエニル)−エチル]−アミノ]−1−ナフトールを有するポリアクリレート系
50%の固体含量を有するポリアクリレート接着剤の溶液264gに、酢酸エチル中のEudragit E100の50%溶液の66gを添加し、オレイルアルコール36gの添加後に塊状物(Masse)を撹拌により均質化する。
【0073】
その後、(−)−5,6,7,8−テトラヒドロ−6−[プロピル[2−(2−チエニル)エチル]アミノ]−1−ナフトール89.65gをメチルエチルケトン200ml中に溶解させ、前記の塊状物を撹拌しながら添加する。塊状物が均質化された後に、これを、適当なドクターブレードを用いてシリコーン処理されたポリエステルフィルム上で被覆する。湿った塗膜の厚さは、50℃での30分間の乾燥による溶剤の除去後に60g/mの被覆質量が生じるように調節されている。
【0074】
乾燥したマトリックス塗膜を、現在、13μmの厚さのポリエステルフィルムと貼り合わせる。生じるプラスターラミネートから、現在、完成したプラスターを所望の大きさで打ち抜き、パッケージングバッグ(Packstoffbeutel)中に包装する。
【0075】
プラスターマトリックス中の(−)−5,6,7,8−テトラヒドロ−6−[プロピル[2−(2−チエニル)エチル]アミノ]−1−ナフトールの濃度は30.8%である。適しているポリアクリレート接着剤は、例えばDurotak 387-2051、Durotak 387-2287、Durotak 387-2353、Durotak 387-2516であり、全てNational Starch & Chemicalによる。
実施例2
(−)−5,6,7,8−テトラヒドロ−6−[プロピル[2−(2−チエニル)−エチル]−アミノ]−1−ナフトールを有するシリコーン系
Kollidon 90Fの25%溶液24gに、エタノール40g中に溶解させた(−)−5,6,7,8−テトラヒドロ−6−[プロピル[2−(2−チエニル)エチル]アミノ]−1−ナフトール18gを添加し、塊状物を均質化させる。この塊状物に引き続いて、70%の固体含量を有するアミン耐性のシリコーン接着剤の溶液251gを添加し、塊状物をさらに撹拌することにより均質化する。
【0076】
引き続いて、塊状物を、適当なドクターブレードを用いて接着剤を備えたポリエステルフィルム(Scotchpak 1022)上で、50℃での30分間の乾燥による溶剤の除去後に50g/mの被覆質量が生じる厚さで被覆する。
【0077】
乾燥したマトリックス塗膜を、現在、13μmの厚さのポリエステルフィルムと貼り合わせる。生じるプラスターラミネートから、完成したプラスターを所望の大きさで打ち抜き、パッケージングバッグ中に包装する。
【0078】
プラスターマトリックス中の(−)−5,6,7,8−テトラヒドロ−6−[プロピル[2−(2−チエニル)エチル]アミノ]−1−ナフトール塩基の濃度は9%である。
【0079】
適しているアミン耐性のシリコーン接着剤は例えばBIO-PSA Q7-4301及びBIO-PSA Q7-4201である、双方ともDow Corningによる。
実施例3
(−)−5,6,7,8−テトラヒドロ−6−[プロピル[2−(2−チエニル)エチル]アミノ]−1−ナフトール−塩酸塩25gを、エタノール40ml中のメタケイ酸ナトリウム14.7g又は三ケイ酸ナトリウム16.8gと一緒に室温で48時間に亘り撹拌する。場合により、作用物質溶液を現在ろ過し、オレイルアルコール9.2g、ポリアクリレート接着剤(Durotak 387-2287、National Starch & Chemical社)の52%溶液63.2g及びEudragit E100(Roehm-Pharma)の40%(g/g)溶液22.8gを添加し、塊状物を引き続いて機械的撹拌により均質化する。
【0080】
引き続いて塊状物をプラスターマトリックスの製造のために適当な接着剤を備えたフィルム上で被覆し、溶剤を50℃での20分間の乾燥により除去する。乾燥したマトリックス塗膜の被覆質量は80g/mである。
【0081】
乾燥したマトリックス塗膜を23μmの厚さのポリエステルフィルムと貼り合わせる。全ラミネートから個々のプラスターを打ち抜く。
【0082】
最終的に、本発明によれば、アミンに対して耐性の少なくとも1つのシリコーン化合物を主成分として含有していなければならないシリコーンベースの経皮吸収治療システムを使用することは、極めて特に有利である。
【0083】
通常、シリコーン化合物は、圧力に反応する接着剤又はその混合物であり、かつTDSの他の成分が埋め込まれるマトリックスを形成する。1つ/複数の接着剤は、さらにまた好ましくは薬剤学的に許容されうるべきであるので、これらは生物学的適合性であり、感作性でなく、かつ皮膚に対して刺激性ではない。本発明による使用のために特に有利なシリコーン接着剤はそのうえ次の要求を満たすべきである。
− 通常の温度変動での水分又は発汗の存在での残留粘着−及び凝集性、
− ロチゴチン並びに製剤に使用される他の担体との良好な適合性、特に接着剤はロチゴチンのアミン基と反応すべきでない。
【0084】
可溶性の重縮合されたポリジメチルシロキサン(PDMS)/樹脂ネットワークを形成するタイプの圧力に反応する接着剤(その際にヒドロキシ−末端基は例えばトリメチルシリル(TMS)基でキャップされている)が、本発明によれば特に有用であることが示された。この種類の好ましい接着剤は、Dow Corningにより製造される圧力に反応するBIO-PSAシリコーン接着剤、特に品質Q7-4201及びQ7-4301である。しかしながら他のシリコーン接着剤も同じように使用されることができる。
【0085】
さらにかつ好ましくは本発明によればそのうえ同じ使用のために2つ又はそれ以上のシリコーン樹脂を接着性主成分として含んでいるシリコーンベースの経皮吸収治療システムが提供される。良好な粘着と低い冷フラックス(kaltem Fluss)との間の最適な平衡を保証するために、シリコーン接着剤からなるそのような混合物が少なくとも1つの強接着性の接着剤及び中程度の接着能を有する少なくとも1つの接着剤を含んでいる場合に有利でありうる。過度の冷フラックスはパッケージングにか又は患者の衣類に容易に粘着する軟らかすぎるプラスターをまねきうる。さらにまた接着剤のそのような混合物は、有効な経皮吸収治療システムを得るために特に有用であるように見える。ほぼ同じ量の前記のアミンに対して耐性で圧力に反応するシリコーン接着剤Q7-4201(中程度の接着力)及びQ7-4301(強粘着性)からなる混合物は本発明によれば特に有用であることが判明している。
【0086】
別の好ましい実施態様において、シリコーンベースの経皮吸収治療システムは溶解助剤を含んでいる。異なる界面活性剤−類似又は両親媒性の物質は溶解助剤として使用されることができる。これらは薬剤学的に許容されうるべきであり、かつ医薬での使用のために許可されているべきである。溶解助剤が、経皮吸収治療システムの凝集が改善されるように作用する場合にも有利である。そのような溶解助剤の特に好ましい例は可溶性ポリビニルピロリドンである。ポリビニルピロリドンは、商業的に、例えば商標Kollidon(R)(Bayer AG)のもとで入手可能である。他の例は、ポリビニルピロリドン及び酢酸ビニルからなるコポリマー、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン及びグリセリンからなる脂肪酸エステル又はエチレン及び酢酸ビニルからなるコポリマーを含んでいる。
【0087】
シリコーンベースの経皮吸収治療システムは、本発明による使用のためには無機ケイ酸塩1質量%未満を含有し、最も好ましくは無機ケイ酸塩が完全に不含である。
【0088】
本発明による使用のための経皮吸収治療システムの含水量は好ましくはTDS製造の間の水の蒸発が不要であるように低い。典型的には未使用の製造されたプラスターの含水量は2質量%未満であり、かつ好ましくは1質量%又はそれ未満である。
【0089】
本発明による特に好ましい実施態様において、経皮吸収治療システムは10〜30cm、好ましくは5〜20cmの表面積を有する。例えば20cmの表面積を有するTDSが、1cm当たり同じ薬剤含量を有する、2つの10cmプラスター又は4つの5cmプラスターに薬理学的に等価であり、かつこれらと交換されることができることは言うまでもない。故に本明細書に記載された表面積は、患者で同時に適用される全てのTDSの全表面積に基づいていることが理解されるべきである。
【0090】
本発明による1つ又はそれ以上の経皮吸収治療システムの供給及び適用は経口治療に比較して、管轄の医者が患者のために最適な用量を比較的迅速に、個々にかつ正確に、例えば患者に与えられるプラスターの数又は大きさが単純に高められることができることによって、滴定することができるという薬理学的な利点を有する。
【0091】
7日間のプラスターが望ましい場合には、より高い薬剤含量は一般的に必要である。約0.4〜0.5質量%の範囲内のロチゴチン含量が特に有利であることが確認された、それというのもこれはTTS中に含まれている薬剤を最適に利用する、すなわち投与後にTTS中の残留薬剤量が極めて低いに過ぎないからである。そのようなTTSの使用下に投与される用量は通常、TTS中に当初に含まれている薬剤量の50%又はそれ以上であり、かつ高くて80〜90%でありうる。
【0092】
本発明により記載されたシリコーンベースの経皮吸収治療システムがレストレスレッグス症候群の症候に対する著しい治療上の作用を10〜20cmの表面積及び特に10cm未満の表面積及び約0.4〜0.5mg/cm、特に0.45g/cmの低い薬剤含量でさえ生じさせるという事実は、本発明がさらに有益であるとみなされるはずである。
【0093】
本発明により使用される経皮吸収治療システムは好ましくは少なくとも中心部に薬剤を含有する連続的に粘着性のマトリックスを有するプラスターである。しかしながら、そのようなプラスターの経皮の等価物も本発明によれば、すなわち、薬剤が不活性ではあるがしかし不粘着性のシリコーンマトリックス中にTTSの中心部に存在し、かつ粘着部がプラスター端部に沿って走っている場合の一実施態様が含まれる。
【0094】
そのうえ本発明は患者に5〜20cmの表面積を有する経皮吸収治療システムが適用されることによるRLS−疾患の処置方法に関する。
【0095】
本発明及び最良の実施態様は以下により詳細に記載される。
実施例4
感圧性シリコーン接着剤の組合せ物の使用下での経皮吸収治療システムを次のように製造した。
【0096】
(−)−5,6,7,8−テトラヒドロ−6−[プロピル[2−(2−チエニル)エチル]アミノ]−1−ナフタレノール−塩酸塩(塩酸ロチゴチン、150g)をエタノール218g(96%)中のNaOH 17.05gからなる溶液に添加した。生じた混合物を約10分間撹拌した。引き続いてリン酸ナトリウム緩衝液溶液23.7g(水90.3g中のNaHPO×2HO 8.35g及びNaHPO×2HO 16.07g)を添加した。不溶性の又は沈殿した物質を混合物からろ過により分離した。ろ液を、遊離塩基の形のロチゴチンの粒子不含のエタノール溶液を得るために、エタノール60.4g(96%)で洗浄した。
【0097】
エタノール(35%G/G)中の遊離塩基(346.4g)の形でのロチゴチンからなる溶液をエタノール36.2g(96%)と混合した。生じた溶液を、ポリビニルピロリドン25質量%(KOLLIDON(R) 90F)、液体の重亜硫酸ナトリウム溶液(10質量%)0.077質量%、アスコルビルパルミテート0.25質量%及びDL−α−トコフェロール0.63質量%を含有するエタノール溶液109gと均質になるまで混合した。混合物に、アミンに対して耐性で強粘着性のシリコーン接着剤817.2g(BIO-PSA(R) Q7-4301、Dow Corningにより製造)(ヘプタン中74質量%溶液)、アミンに対して耐性で中程度の接着力のシリコーン接着剤851.8g(BIO-PSA(R) Q7-4201、Dow Corningにより製造)(ヘプタン中の71質量%溶液)及び石油エーテル(ヘプタン)205.8gを添加し、均質な分散液が得られるまで全ての成分を撹拌した。
【0098】
分散液を、適当なポリエステルからなるリリースコーティング(SCOTCHPAK(R) 1022)上に適当なドクターブレードを用いて塗布し、溶剤を乾燥器中で80℃までの温度で約30分間連続的に除去し、こうして50g/mのコーティング質量を有する薬剤含有の粘着性マトリックスを得た。乾燥したマトリックス塗膜をポリエステルタイプの補強フィルム(SCOTCHPAK(R) 1109)と貼り合わせた。個々のプラスターを、完全なラミネートから所望の大きさ(例えば5cm、10cm、20cm、30cm) に打ち抜き、窒素−流下にバッグ中に封入した。
【0099】
次の表はシリコーンタイプのPSAからなる組合せ物を含有する本発明による経皮吸収治療システムの組成[mg/20cm]を示す。
組成物の成分 量(mg)
ロチゴチン塩基 9.00
ポリビニルピロリドン 2.00
シリコーンBIO-PSA(R) Q7-4301 44.47
シリコーンBIO-PSA(R) Q7-4201 44.46
アスコルビルパルミテート 0.02
DL−α−トコフェロール 0.05
メタ重亜硫酸ナトリウム 0.0006
マトリックスのコーティング質量 50g/m
臨床試験
実施例4に従って製造したロチゴチン−TDSを、複数の中心でのプラシーボコントロールされ、二重盲検で、無作為化された(偶然に制御された)臨床試験において試験し、かつ3本腕の並行群を有している研究として、中程度から極めて重度のレストレスレッグス症候群の特発性の疾患に罹った63人の患者を含んでいた。
【0100】
患者の平均年齢は58.3歳であった。性別、年齢及び先の疾患の重症度に基づく3つの処置群における無作為化は適切なバランスが取れていた。
【0101】
L−ドーパでのこれまでの治療のゆっくりでかつ完全な終了及び7±4日間の治療中断(ウオッシュアウト)後に患者をロチゴチン−TDSで処置した。
【0102】
八(8)日間の処置期間に亘り、ある群からなる患者を5cm TDSで及び別の群からなる患者を10cm TDSで処置した。比較としてプラシーボ群からなる患者をプラシーボ−TDSで処置した。全ての群は、その都度真のプラスター及びプラシーボプラスターの組合せとして4つのプラスターを受け取った。例えば、第一の群は2つの2.5cm 真のプラスター及び2つのプラシーボプラスターからなる組合せ、及び第二の群は4つの2.5cm 真のプラスターを受け取った。プラシーボ群は4つのプラシーボプラスターを受け取った。TDS 2.5cmは1.125mgのロチゴチン量を有していた。5cmは故に2.25mgのロチゴチン量を含有し、TDS 10cmは4.5mgのロチゴチン量を含有していた。24時間かけて、それぞれの前記の作用物質含有のTDSから作用物質ロチゴチン(見かけの用量)約50%が個々の患者に投与された。
【0103】
この疾患に苦しむ患者の場合にレストレスレッグス症候群の症候の有効な軽減が、既に一(1)週間後に達成されたことが明らかになった。これらの患者はこの時点でRLSに有効な他の薬剤を受け取らなかった。
【0104】
予め明記された(praespezifizierten)主要な有効性の結果として、毎日の生活の活動度及び運動学は、一般的に認められた国際レストレスレッグス症候群研究グループ(IRLSSG)評定尺度に従って出発値と最近の処置評価(8日目)との間で変化した。
【0105】
IRLSSGは、10個の質問に基づいてレストレス−レッグス患者の以下の臨床パラメーターを測定し、かつこれらをカテゴリー分けする。
1.あなたの脚又は腕のRLS−愁訴を大きさで及び全体的にどのくらいであると判断しますか?
0 = 存在しない=症候なし
1 = 軽度
2 = 中程度
3 = 相当に
4 = 極めて重度の症候
2.あなたのRLS−愁訴のために動かさずにはいられないあなたの衝動を大きさで及び全体的にどのくらいであると判断しますか?
0 = 存在しない
1 = 軽度
2 = 中程度
3 = 相当に
4 = 極めて
3.動かすことにより腕及び脚のあなたのRLS−愁訴は大きさで及び全体的にどのくらい軽減されましたか?
0 = RLS−愁訴が軽減されなくてもよかった
1 = 完全にか又はほぼ完全に
2 = 中程度
3 = 僅かに
4 = 総じてなし
4.あなたの睡眠はあなたのRLS−愁訴によりどのくらい障害されましたか?
0 = 総じてなし
1 = 軽度
2 = 中程度
3 = 相当に
4 = 極めて
5.あなたは昼の間にあなたのRLS−愁訴のためにどのくらい疲れましたか又は眠かったですか?
0 = 総じてなし
1 = 僅かに
2 = 中程度
3 = 相当に
4 = 極めて
6.あなたのRLS−愁訴は全部でどのくらいでしたか?
0 = 存在しない
1 = 軽度
2 = 中程度
3 = 相当に
4 = 極めて
7.あなたのRLS−愁訴はどの頻度で発生していますか?
0 = 総じてなし
1 = 時々(すなわち、最近7日間で1日)
2 = 往々にして(すなわち、最近7日間で2〜3日)
3 = 頻繁に(すなわち、最近7日間で4〜5日)
4 = 極めて頻繁に(すなわち、最近7日間で6〜7日)
8.あなたがRLS−愁訴を有していた時に、これらは平均してどのくらいでしたか?
0 = 存在しない
1 = 軽度(すなわち、1日24時間で1時間未満)
2 = 中程度(すなわち、1日24時間で1〜3時間)
3 = 相当に(すなわち、1日24時間で3〜8時間)
4 = 極めて(すなわち、1日24時間で8時間又はそれ以上)
9.あなたのRLS−愁訴が大きさで及び全体的に、あなたの毎日の活動に専念するあなたの可能性、例えば満足している家族−、プライベート−、学校−又は仕事−生活をもたらすことにどのくらい影響を及ぼしましたか?
0 = 総じてなし
1 = 軽度
2 = 中程度
3 = 相当に
4 = 極めて
10.あなたのRLS−愁訴があなたの気分をどのくらい妨害しましたか?、例えばあなたは怒り狂いましたか、落ち込みましたか、悲しみましたか、不安でしたか又はいら立ちましたか?
0 = 総じてなし
1 = 軽度
2 = 中程度
3 = 相当に
4 = 極めて
IRLSSG−全評価は個々の値から次のように決定される:
まず最初に、研究に関与しているそれぞれの患者の出発値が決定される。しかも0日目のIRLSSGの個々のパラメーター値はすなわち処置前に加えられる。処置経過中のIRLSSG−値はついでこの出発値と比較され、かつ出発値と比較した変化が記録される。最終的に出発値と比較した8日目のIRLSSGの平均の改善は全ての被験者の平均が採用されることによって決定される。生じる値はIRLSSG全評価の出発値からのFAS−(完全分析セット)として無作為化された平均の変化と呼ばれる。「無作為化される」という表現は、患者が異なる予め決定された用量に関連して前もって二重盲検に無作為化されていたという事実を指摘する。
【0106】
レストレスレッグス症候群の疾患に苦しむ患者からは、彼らが比較的強いプラシーボ作用を経験することは公知であり、すなわちプラシーボ−処置の場合でさえある程度までレストレスレッグス−患者のIRLSSG−値が改善される。故に薬剤−処置の各作用を同じ期間に亘るプラシーボ処置の場合に達成されるIRLSSG改善の評価と比較することが重要である。故に改善の最終的な判定は同じ期間に亘るプラシーボ処置の作用と比較して行われる。
結果
出発値と本発明によるTDSの適用8日後との間のIRLSSG−値の著しく用量に依存した改善が生じた。プラシーボ群と比較して特に4.5mgのロチゴチン量(見かけの用量2.25mg)を有しているTDSで処置した群は治療上特に好都合なIRLSSG−値を示した。この結果は、次の表から引き出されることができる。
【0107】
【表1】

【0108】
前記の表中の「p」として示されている値は試験データの統計学的な判定により得られた片側のp−値である。
【0109】
8日間の処置の終わりで、双方の患者群が、ほぼ全ての主観的な症候、例えば蟻走感、痙攣、脚の痛み、夜間の脚の不穏状態、入眠及び熟眠障害がもはや存在しないか又は許容できる最小限に抑えられていたので、彼らの毎日の生活の質がもはや負の影響を受けなかったことを報告した。
【0110】
さらに患者はそれらの場合に作用物質ロチゴチンの投与された用量に依存して日中疲労が極めて弱いに過ぎないか又は全く引き起こされず、はきけ、めまい、嘔吐又は不眠症等が引き起こされなかったことを報告した。
【0111】
ロチゴチンは本発明によるTDSの使用下に投与される場合に一般的に良好な適合性を有していた。
【0112】
適用部位での皮膚反応は一般的に極めて弱かった。
結論
前記の結果は二重盲検プラシーボコントロールされた研究において初めて、毎日1回経皮投与されたドーパミン−アゴニスト(ロチゴチン)が、中程度ないし重度の段階のレストレスレッグス症候群を有する患者の場合に臨床上の明らかな改善を示し、かつ良好に許容されることを示した。特にRLS−症候が強化されて昼の間に発生した患者の場合に、この投薬の利点が認められることができた。
【0113】
そのような結果は、単独治療の場合の経口投与される薬剤でこれまで達成されることができず、その際に、プラシーボと比較して2のIRLSSG−値の改善ですでに成果とみなされることができる。3を上回るかもしくは6又はそれ以上の単位の改善は故にさらにより大きな治療上の進歩を意味しており、かつ故に本発明によれば好ましい。
長期試験
前記の臨床試験モデルを維持しながら、四(4)ヶ月間もしくは120日間に亘る長期試験を実施した。
【0114】
再び実施例4により製造されたロチゴチン−TDSを使用した。
【0115】
試験を、プラシーボコントロールされ、二重盲検でかつ無作為化され(偶然に制御され)、レストレスレッグス症候群の中程度ないし極めて重度の特発性の疾患に罹った十二(12)人の患者を有する3本腕の並行−群を有している研究として実施した。
【0116】
患者の平均年齢は60歳であった。性別、年齢及び前の疾患の重症度に関して3つの処置群における無作為化は適切なバランスが取れていた。
【0117】
L−ドーパでのこれまでの治療のゆっくりとかつ完全な終了及び8±4日間の治療中断(ウオッシュアウト)後に患者をロチゴチン−TDSで処置した。
【0118】
四(4)ヶ月間の処置期間に亘り、ある群からなる患者を5cm TDSで、他の群からなる患者を10cm TDSで、かつ比較のためにプラシーボ群からなる患者をプラシーボ−TDSで処置した。5cm TDSは2.25mgのロチゴチン量を有し、10cm TDSは4.5mgのロチゴチン量を有していた。24時間かけて、前記のそれぞれの作用物質含有のTDSから作用物質ロチゴチン50%(見かけの用量)を個々の患者に投与した。
【0119】
レストレスレッグス症候群の症候の有効な軽減がこの疾患に苦しむ患者の場合に、既に一(1)週間後に達成されたことが明らかになった。患者はこの時点でRLSに有効な他の薬剤を受け取らなかった。
【0120】
予め明記された主要な有効性の結果として、毎日の生活の活動度及び運動学は一般的に認められた国際レストレスレッグス症候群研究グループ(IRLSSG)評定尺度に従って出発値と最近の処置評価(120日目)との間で変化した。
【0121】
IRLSSGは−前記のように−10個の質問に基づいてレストレス−レッグスの患者の臨床上のパラメーターを測定し、かつこれらをカテゴリー分けする。
結果
出発値と本発明によるTDSの適用120日後との間でIRLSSG−値の著しく、用量に依存した改善が生じた。プラシーボ群と比較して特に4.5mgのロチゴチン量(見かけの用量2.25mg)を有しているTDSで処置した群は、治療上に特に好都合なIRLSSG−値を示した。
【0122】
120日間の処置の終わりで双方の患者群が、全ての主観的な症候、入眠及び熟眠障害がもはや存在しないか又は最小限に抑えられていたので、彼らの毎日の生活の質がもはや負の影響を受けなかったことを報告した。増悪は著しくなかった。IRLSSG−値は、ロチゴチン量2.25mgを有するTDSで処置した群では12.8であり、ロチゴチン量4.5mgを有するTDSで処置した群では15.7であった。
【0123】
さらに患者は、それらの場合に作用物質ロチゴチンの投与される用量に依存して処置期間に亘って日中疲労が極めて弱いに過ぎないか又は全く引き起こされず、はきけ、めまい、嘔吐又は不眠症等が引き起こされなかったことを報告した。
【0124】
ロチゴチンは本発明によるTDSの使用下に投与される場合に、一般的に良好な適合性を有していた。
【0125】
適用部位での皮膚反応は一般的に極めて弱かった。必要である場合には皮膚の他の部位でTDSを適用した。前の適用部位は迅速に回復し、かつ別の処置のために採用されることができた。
結論
前記の結果は、二重盲検プラシーボコントロールされた長時間−研究において初めて、毎日1回経皮投与されたドーパミン−アゴニスト(ロチゴチン)が、良好な許容性及び安全性で中程度及び重度の段階のレストレスレッグス症候群の疾患を有する患者の場合に重要な臨床上の改善を生じさせることを示している。
【0126】
そのような結果は、単独治療の場合に経口投与される薬剤を用いてこれまで達成されることができず、その際にプラシーボと比較して2のIRLSSG−値の改善は既に成果とみなされることができる。10又はそれ以上の単位の改善は故にさらにより大きな治療上の進歩を意味し、かつ故に本発明によれば好ましい。
【0127】
特に、本研究は、先の他の投薬に基づくRLS−愁訴の増大が観察されることができたRLS−患者の場合に疾患を軽減するための本発明による投与形の有効性を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レストレスレッグス症候群の経外角皮的処置のための医薬を製造するための、(−)−5,6,7,8−テトラヒドロ−6−[プロピル[2−(2−チエニル)エチル]アミノ]−1−ナフトールの使用。
【請求項2】
経皮吸収治療システム(TDS)を製造するための、(−)−5,6,7,8−テトラヒドロ−6−[プロピル[2−(2−チエニル)エチル]アミノ]−1−ナフトールの使用。
【請求項3】
医薬が1日当たり作用物質0.5〜10mgを適用するのに適している、請求項1又は2記載の使用。
【請求項4】
マトリックスの成分に対して不活性のバッキング層、(−)−5,6,7,8−テトラヒドロ−6−[プロピル[2−(2−チエニル)エチル]アミノ]−1−ナフトールを含有している自己接着性のマトリックス層及び使用前に除去すべき保護フィルムを有している経皮吸収治療システムにおいて、マトリックス層が、
a)ベースとしてアクリレートベースもしくはシリコーンベースの非水性ポリマー接着剤を含有し、
b)≧5%(g/g)の遊離塩基(−)−5,6,7,8−テトラヒドロ−6−[プロピル[2−(2−チエニル)エチル]アミノ]−1−ナフトールの溶解度を有し、かつ
c)遊離塩基(−)−5,6,7,8−テトラヒドロ−6−[プロピル[2−(2−チエニル)エチル]アミノ]−1−ナフトールを有効量で含有する
ことを特徴とする、経皮吸収治療システム。
【請求項5】
マトリックスが無機ケイ酸塩粒子<0.5%(g/g)を含有している、請求項4記載の経皮吸収治療システム。
【請求項6】
マトリックスが無機ケイ酸塩粒子<0.05%(g/g)を含有している、請求項4記載の経皮吸収治療システム。
【請求項7】
アクリレートベースのポリマー接着剤が次のモノマー:
アクリル酸、アクリルアミド、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、オクチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルアクリレート、グリシジルアクリレート、メタクリレート酸、メタクリルアミド、ヘキシルメチルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、メチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、酢酸ビニル又はビニルピロリドン
の少なくとも2つを含有している、請求項4記載の経皮吸収システム。
【請求項8】
シリコーンベースのポリマー接着剤が、親水性ポリマー又はグリセリン又はグリセリン誘導体の形の(−)−5,6,7,8−テトラヒドロ−6−[プロピル[2−(2−チエニル)エチル]アミノ]−1−ナフトールの溶解度を改善するための添加剤を含有している、請求項4記載の経皮吸収システム。
【請求項9】
(−)−5,6,7,8−テトラヒドロ−6−[プロピル[2−(2−チエニル)エチル]アミノ]−1−ナフトールが、アクリレートベースのポリマー接着剤中に10〜35%[g/g]の濃度でか又はシリコーンベースのポリマー接着剤中に5〜40%[g/g]の濃度で含まれている、請求項7又は8記載の経皮吸収システム。
【請求項10】
ヒトの皮膚への(−)−5,6,7,8−テトラヒドロ−6−[プロピル[2−(2−チエニル)エチル]アミノ]−1−ナフトールの浸透を改善する物質を含有している、請求項9記載の経皮吸収システム。
【請求項11】
浸透を促進する物質が、脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、グリセリン又はその誘導体、N−メチルピロリドン、テルペン又はテルペン誘導体の群から選択されている、請求項10記載の経皮吸収システム。
【請求項12】
浸透を促進する物質がオレイン酸又はオレイルアルコールである、請求項11記載の経皮吸収システム。
【請求項13】
親水性ポリマーがポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン及び酢酸ビニルのコポリマー、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はエチレン及び酢酸ビニルのコポリマーである、請求項8記載の経皮吸収システム。
【請求項14】
親水性ポリマーが可溶性ポリビニルピロリドンであり、かつ1.5〜5%(g/g)の濃度で作用物質含有のマトリックス層中に含まれている、請求項13記載の経皮吸収システム。
【請求項15】
マトリックスが、凝集を改善するための不活性充てん剤を含有している、請求項4記載の経皮吸収システム。
【請求項16】
抗−レストレスレッグス症候群薬を製造するための、5〜20cmの表面積を有しており、かつ活性成分としてロチゴチン0.1〜3.15mg/cmを含有しているシリコーンベースの経皮吸収治療システムの使用であって、前記システムがヒトのレストレスレッグス症候群−患者の場合に、国際レストレスレッグス症候群研究グループ評定尺度(IRLSSG)に従ってプラシーボ処置に比較して少なくとも8日間の適用後に2単位又はそれ以上の改善を生じさせる、経皮吸収治療システムの使用。
【請求項17】
5〜20cmの表面積を有しており、かつ活性成分としてロチゴチン0.1〜3.15mg/cmを含有している経皮吸収治療システムをレストレスレッグス症候群に苦しむ患者に適用することによるレストレスレッグス症候群の処置方法であって、前記システムがレストレスレッグス症候群研究グループ評定尺度に従ってプラシーボ処置に比較して8日間の期間に亘る投与後に約2単位又はそれ以上の患者の状態の改善をもたらす、レストレスレッグス症候群の処置方法。
【請求項18】
アミンに対して耐性の少なくとも2つのシリコーン接着剤からなる混合物を主に含んでいる、5〜20cmの大きさを有しており、かつ活性成分としてロチゴチン0.4〜0.5mg/cmをマトリックス中に含有している、レストレスレッグス症候群を処置するための経皮吸収治療システム。

【公開番号】特開2010−159302(P2010−159302A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98924(P2010−98924)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【分割の表示】特願2004−500861(P2004−500861)の分割
【原出願日】平成15年5月5日(2003.5.5)
【出願人】(591071997)シュバルツ ファルマ アクチェンゲゼルシャフト (39)
【氏名又は名称原語表記】SCHWARZ PHARMA AKTIENGESELLSCHAFT
【住所又は居所原語表記】Alfred−Nobel−Strasse 10, D−40789 Monheim, Germany
【Fターム(参考)】