説明

レスベラトロールおよびその誘導体の製造方法

【課題】レスベラトロール(RES)およびその誘導体、並びにRES合成の基幹中間体を、入手容易な原料から出発して、実用性が高く簡便で効率的に製造する方法の提供。
【解決手段】RES合成に導き得る3,5-ジメトキシフェニルボロン酸誘導体、及び4-アセトキシスチレン誘導体を、パラジウム触媒を用いる酸化的カップリング条件下に反応させてRES合成への基幹中間体(3,5-ジメトキシ-4'-アセトキシスチルベン誘導体)を得、次いで、脱メチル化及び脱アセチル化反応を経由してRES並びにその誘導体を製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェニルボロン酸誘導体およびスチレン誘導体を、パラジウム触媒を用いる酸化的カップリング反応によって反応させてスチルベン誘導体を製造する方法、ならびに、該反応を鍵ステップとする3,4',5-トリヒドロキシスチルベン(レスベラトロール)およびその誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レスベラトロールは、式5:
[式1]

で表される3, 4', 5-トリヒドロキシスチルベン(以下、「RES」と称することもある。)、であり、ブドウの皮やピーナッツなどに含まれているポリフェノールの一種である。RESはファイトアレキシン(植物の病原菌に対する防御機構の中で、植物体内で生合成される防御物質)として知られている。また、RESは抗酸化作用、抗炎症作用、抗ガン作用等、さまざまな生理活性を示す天然化合物であり、中でも前立腺ガンの予防効果があるとされている。
【0003】
このようにRESは食品分野や医薬品としてその応用が期待されるため、現在までに多くの合成法が報告されている。その例をいくつか示す。
M. B. Andrusらは3, 5-ジヒドロキシ安息香酸を出発物質とし、フェノール性水酸基のアセチル基による保護、酸塩化物への変換、パラジウム触媒を用いたスチレン誘導体とのカップリング、加水分解による脱保護の4段階でRESを合成している(反応式1)。
【0004】
【化1】

[反応式1]
(M. B. Andrus et al. Tetrahedron Lett. 2003, 44, 4819-4822.)
【0005】
またM. Guisoらはパラジウム触媒を用いて3, 5-ジアセトキシスチレンとp−アセトキシヨードベンゼンのHeck型カップリングを行い、また加水分解による2段階でRESを合成している(反応式 2)。
【0006】
【化2】

[反応式2]
(M. Guiso et al. Tetrahedron Lett. 2002, 43, 597-598.)
【0007】
上記の例からも明らかなように、RESの合成法においては、スチルベン骨格の合成が鍵となる。スチルベン骨格の合成法としては、Y. C. Jung らのフェニルボロン酸及びスチレンから、パラジウム触媒を用いた酸化的カップリング反応を利用する合成法が知られている(反応式3)。
【0008】
【化3】

[反応式3]
(Y. C. Jung et al. Org. Lett. 2003, 5, 2231-2234.)
【0009】
しかしながら、フェニルボロン酸及びスチレン中のフェニル基に反応性に富む官能基が置換した誘導体については、Y. C. Jung らは彼らの方法が適用し得るか否かを明らかにしていない。また、Y. C. Jung らの方法を、RES合成に利用しようとした試みも知られていない。
【0010】
以上の様に、上記従来技術においては、原料が不安定である、もしくは、原料が入手難であること、または多段階を有して経済性に欠けること、さらには、種々の活性のバリエーションが期待し得る誘導体合成に向かないなど、様々な問題点があり、市場へのRESの供給は未だ天然物からの抽出法のみであり、有機合成法に基づくRES製品は未だ工業化されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】M. B. Andrus et al. Tetrahedron Lett. 2003, 44, 4819-4822.
【非特許文献2】M. Guiso et al. Tetrahedron Lett. 2002, 43, 597-598.
【非特許文献3】Y. C. Jung et al. Org. Lett. 2003, 5, 2231-2234.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、上記問題点の幾つかを解消したRESおよびその誘導体、並びにRES合成の基幹中間体の製造方法を提供することである。即ち、本発明の課題は、入手容易な原料から出発して、実用性の高い簡便なRESおよびその誘導体、並びにRES合成の基幹中間体(以下、基幹中間体も含めて、広く「RES誘導体」と称することもある。)の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、Y. C. Jung らの方法に着目し、その酸化的カップリング反応を組み込んだRES合成方法を鋭意検討した。官能基の種類によっては、酸化的カップリング反応条件下、官能基の脱離、変性や反応阻害等、種々の副反応の生起が懸念された。そこで、RESに至る合成経路を慎重に検討し、種々の官能基を持つ中間体を経由する合成経路の検討を鋭意行った。
その結果、驚くべきことに、RES合成に導き得る特定の官能基を所定位置に有するフェニルボロン酸誘導体、及び特定の官能基を所定位置に有するスチレン誘導体を、パラジウム触媒を用いる酸化的カップリング条件下に反応させることによって、RES合成への基幹中間体が効率よく得られることを発見し、本発明に到達した。
【0014】
即ち、本発明の第1の側面は、
3, 5-ジ置換スチルベン誘導体の製造方法であって、式01:
【0015】
【化4】

[式中、X1、X2およびR2は各々独立に、水素、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基、R3-O[式中、R3は炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数7〜12のアラルキル基を表す。]で表されるアルコキシ基、R4-C(=O)O[式中、R4は炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数7〜12のアラルキル基を表す。]で表されるアシロキシ基、シアノ基(CN)またはR5-C(=O)ONH[式中、R5は炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数7〜12のアラルキル基を表す。]で表されるアシロキシアミノ基を表す。但し、X1およびX2が水素の場合を除く。]で表される3, 5-ジ置換フェニルボロン酸誘導体、及び式2:
【0016】
【化5】

[式中、R1は炭素数1〜12のアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基、R6-O[式中、R6は炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数7〜12のアラルキル基を表す。]で表されるアルコキシ基、R7-C(=O)O[式中、R7は炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数7〜12のアラルキル基を表す。]で表されるアシロキシ基、シアノ基(CN)またはR8-C(=O)ONH[式中、R8は炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数7〜12のアラルキル基を表す。]で表されるアシロキシアミノ基、アミノ基(NH2)、ニトロ基(NO2)、またはハロゲンを表す。]で表されるスチレン誘導体を、パラジウム触媒および塩基の存在下に混合して酸化的カップリング反応を行って、式03:
【0017】
【化6】

[式中、X1、X2、R1およびR2は前記と同義である。]で表される3, 5-ジ置換スチルベン誘導体を得る工程を有して成る、3, 5-ジ置換スチルベン誘導体の製造方法を提供するものである。
【0018】
本発明の第2の側面は、第1の側面における置換基X1およびX2がメトキシキ基(OMe)の場合に相当する。即ち、RES合成およびその誘導体合成の基幹中間体である3, 5-ジメトキシスチルベン誘導体の製造方法であって、式1:
【0019】
【化7】

[式中、R2は水素、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基、R3-O[式中、R3は炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数7〜12のアラルキル基を表す。]で表されるアルコキシ基、R4-C(=O)O[式中、R4は炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数7〜12のアラルキル基を表す。]で表されるアシロキシ基、シアノ基(CN)またはR5-C(=O)ONH[式中、R5は炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数7〜12のアラルキル基を表す。]で表されるアシロキシアミノ基を表す。]で表されるフェニルボロン酸誘導体、及び式2:
【0020】
【化8】

[式中、R1は炭素数1〜12のアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基、R6-O[式中、R6は炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数7〜12のアラルキル基を表す。]で表されるアルコキシ基、R7-C(=O)O[式中、R7は炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数7〜12のアラルキル基を表す。]で表されるアシロキシ基、シアノ基(CN)またはR8-C(=O)ONH[式中、R8は炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数7〜12のアラルキル基を表す。]で表されるアシロキシアミノ基、アミノ基(NH2)、ニトロ基(NO2)、またはハロゲンを表す。]で表されるスチレン誘導体を、パラジウム触媒および塩基の存在下に混合して酸化的カップリング反応を行って、式3:
【0021】
【化9】

[式中、R1およびR2は前記と同義である。]で表される3, 5-ジメトキシスチルベン誘導体を得る工程を有して成る、3, 5-ジメトキシスチルベン誘導体の製造方法を提供するものである。
【0022】
本発明の第3の側面は、第2の側面で得られた3, 5-ジメトキシスチルベン誘導体3を、引き続き脱メチル化反応する第2工程を有して成る3, 5-ジヒドロキシスチルベン誘導体の製造方法に相当する。
即ち、本発明の第3の側面は、3, 5-ジヒドロキシスチルベン誘導体の製造方法であって、式1:
【0023】
【化10】

[式中、R2は前記と同義である。]で表されるフェニルボロン酸誘導体、及び式2:
【0024】
【化11】

[式中、R1は前記と同義である。]で表されるスチレン誘導体を、パラジウム触媒および塩基の存在下に混合して酸化的カップリング反応を行って、式3:
【0025】
【化12】

[式中、R1およびR2は前記と同義である。]で表される3, 5-ジメトキシスチルベン誘導体を得る第1工程、ならびに、得られた3, 5-ジメトキシスチルベン誘導体3の脱メチル化反応を行って、式4:
【0026】
【化13】

[式中、R1およびR2は前記と同義である。]で表される3, 5-ジヒドロキシスチルベン誘導体を得る第2工程を有して成る、3, 5-ジヒドロキシスチルベン誘導体の製造方法を提供するものである。
【0027】
本発明の第4の側面は、
RES合成およびその誘導体合成の基幹中間体である3, 5-ジヒドロキシ-4'-アセトキシスチルベン誘導体の製造方法であって、式1:
【0028】
【化14】

[式中、R2は前記と同義である。]で表されるフェニルボロン酸誘導体、及び式2-1:
【0029】
【化15】

で表される4-アセトキシスチレンを、パラジウム触媒および塩基の存在下に混合して酸化的カップリング反応を行って、式3-1:
【0030】
【化16】

[式中、R2は前記と同義である。]で表される3, 5-ジメトキシ-4'-アセトキシスチルベン誘導体を得る第1工程、ならびに、得られた3, 5-ジメトキシ-4'-アセトキシスチルベン誘導体の脱メチル化反応を行って、式4-1:
【0031】
【化17】

[式中、R2は前記と同義である。]で表される3, 5-ジヒドロキシ-4'-アセトキシスチルベン誘導体を得る第2工程を有して成る、3, 5-ヒドロキシ-4'-アセトキシスチルベン誘導体の製造方法を提供するものである。
【0032】
本発明の第5の側面は、第4の側面で得られた3, 5-ジヒドロキシ-4'-アセトキシスチルベン誘導体4-1を、引き続き脱アセチル化反応によって3, 4', 5-トリヒドロキシスチルベン(レスベラトロール)およびその誘導体を得る第3工程を有して成る3, 4', 5-トリヒドロキシスチルベン(レスベラトロール)およびその誘導体の製造方法に相当するものである。
即ち、本発明の第5の側面は、3, 4', 5-トリヒドロキシスチルベン(レスベラトロール)およびその誘導体の製造方法であって、式1:
【0033】
【化18】

[式中、R2は前記と同義である。]で表されるフェニルボロン酸誘導体、及び式2-1:
【0034】
【化19】

で表される4-アセトキシスチレンを、パラジウム触媒および塩基の存在下に混合して酸化的カップリング反応を行って、式3-1:
【0035】
【化20】

[式中、R2は前記と同義である。]で表される3, 5-ジメトキシ-4'-アセトキシスチルベン誘導体を得る第1工程、得られた3, 5-ジメトキシ-4'-アセトキシスチルベン誘導体3-1の脱メチル化反応を行って、式4-1:
【0036】
【化21】

[式中、R2は前記と同義である。]で表される3, 5-ジヒドロキシ-4'-アセトキシスチルベン誘導体を得る第2工程、ならびに、得られた3, 5-ジヒドロキシ-4'-アセトキシスチルベン誘導体4-1の脱アセチル化反応を行って、式5-1:
【0037】
【化22】

[式中、R2は前記と同義である。]で表される3, 4', 5-トリヒドロキシスチルベン誘導体を得る第3工程を有して成る、3, 4', 5-トリヒドロキシスチルベン(R2=H:レスベラトロール)およびその誘導体の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0038】
本発明により、新規な合成ルートに基づき、入手容易な原料から出発して実用性の高い簡便なRESの製造が効率よく行うことができる。また、RES誘導体およびRESに至る基幹中間体についても、実用性の高い簡便な製造が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明のレスベラトロール(RES:式5)製造に至る新規な合成反応経路(Step-1(第1工程)〜Step-3(第3工程)から成る3工程法:第5の実施態様)を反応式4:
【0040】
【化23】

[反応式4]
に示す。
【0041】
前記式において、ステップ-1は、3,5-ジメトキシフェニルボロン酸(1-1)および4-アセトキシスチレン(2-1)を、パラジウム触媒および塩基の存在下に酸化的カップリング反応により基幹中間体である3,5-ジメトキシ-4'-アセトキシスチルベン(3-1)を得る第1工程、
ステップ-2は、前工程で得られた3,5-ジメトキシ-4'-アセトキシスチルベン(3-1)を脱メトキシ化反応により、RES前駆体である3,5-ジヒドロキシ-4'-アセトキシスチルベン(4-1-1)を得る第2工程、並びに
ステップ3は、前工程で得られた前駆体3,5-ジヒドロキシ-4'-アセトキシスチルベン(4-1-1)の脱アセチル化反応により、目的製品のレスベラトロール(RES:5)を得る第3工程を示す。
【0042】
前記式から判るとおり、本発明のレスベラトロール(RES)製造方法はシンプルな3工程合成法である。しかも、後の実施例にて具体的に説明するとおり、各工程の反応収率は良好であり、一例として挙げれば、各工程の反応収率が約80%以上であって、全工程を通じての反応収率が50%を上回ることが可能である。勿論、各工程の反応条件等の最適化により、全工程収率は更に向上し得ることは、当業者にとって明らかであろう。
この3工程から成るRES合成法は未だ報告されたことがない。
出発原料の3,5-ジメトキシフェニルボロン酸(1-1)および4-アセトキシスチレン(2-1)の双方とも市場で入手可能である。
【0043】
上記全3工程の内、第1の工程であるパラジウム触媒および塩基の存在下に実施される酸化的カップリング反応が、本発明の第1の実施態様である。即ち、本発明の第1の実施態様は、3, 5-ジ置換スチルベン誘導体の製造方法であって、式01:
【0044】
【化24】

[式中、X1、X2およびR2は各々独立に、水素、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基、R3-O[式中、R3は炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数7〜12のアラルキル基を表す。]で表されるアルコキシ基、R4-C(=O)O[式中、R4は炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数7〜12のアラルキル基を表す。]で表されるアシロキシ基、シアノ基(CN)またはR5-C(=O)ONH[式中、R5は炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数7〜12のアラルキル基を表す。]で表されるアシロキシアミノ基を表す。但し、X1およびX2が水素の場合を除く。]で表される3, 5-ジ置換フェニルボロン酸誘導体、及び式2:
【0045】
【化25】

[式中、R1は炭素数1〜12のアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基、R6-O[式中、R6は炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数7〜12のアラルキル基を表す。]で表されるアルコキシ基、R7-C(=O)O[式中、R7は炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数7〜12のアラルキル基を表す。]で表されるアシロキシ基、シアノ基(CN)またはR8-C(=O)ONH[式中、R8は炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数7〜12のアラルキル基を表す。]で表されるアシロキシアミノ基、アミノ基(NH2)、ニトロ基(NO2)、またはハロゲンを表す。]で表されるスチレン誘導体を、パラジウム触媒および塩基の存在下に混合して酸化的カップリング反応を行って、式03:
【0046】
【化26】

[式中、X1、X2、R1およびR2は前記と同義である。]で表される3, 5-ジ置換スチルベン誘導体を得る工程を有して成る、3, 5-ジ置換スチルベン誘導体の製造方法を提供するものである。
【0047】
上記の酸化的カップリング反応を反応式で示すと、反応式5:
【0048】
【化27】

[反応式5]
で表される。
ここで、式03の化合物の内、X1=X2=OMe(メトキシ基), R1=OAc(アセトキシ基), R2=Hの場合が、RES前駆体である3,5-ジメトキシ-4'-アセトキシスチルベン(式3-1):
【0049】
【化28】

に相当する。
【0050】
出発原料の一方である3, 5-ジ置換スチルベン誘導体(01)におけるX1、X2およびR2は各々独立に、水素、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基、R3-O[式中、R3は炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数7〜12のアラルキル基を表す。]で表されるアルコキシ基、R4-C(=O)O[式中、R4は炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数7〜12のアラルキル基を表す。]で表されるアシロキシ基、シアノ基(CN)、またはR5-C(=O)ONH[式中、R5は炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数7〜12のアラルキル基を表す。]で表されるアシロキシアミノ基を表す。但し、X1およびX2が水素の場合はを除かれる。
【0051】
炭素数1〜12のアルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、sec-ペンチル、n-ヘキシル、2-メチルペンチル、n-ヘプチル、2-メチルヘキシル、n-オクチル、2-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、n-ノニル、2-メチルオクチル、n-デシル、2-メチルノニル、n-ウンデシル、n-ドデシル等の鎖状または分岐状のアルキル基が例示される。これらの内、好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、sec-ブチルである。
【0052】
炭素数7〜12のアラルキル基とは、アリール基を含有するアルキル基を云う。例えば、ベンジル、フェニルエチル、2-フェニルブチル、2-フェニルヘキシル、ナフチルエチル等のアラルキル基が例示される。これらの内、ベンジル、フェニルエチルが好ましい。
【0053】
R3-Oで表されるアルコキシ基としては、前記の炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数7〜12のアラルキル基に対応するアルコキシ基が挙げられる。具体的に例示すれば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、n-ペントキシ、sec-ペントキシ、n-ヘキシルオキシ、2-メチルペントキシ、n-ヘプチルオキシ、2-メチルヘキシルオキシ、n-オクチルオキシ、2-メチルヘプチルオキシ、2-エチルヘキシルオキシ、n-ノニルオキシ、2-メチルオクチルオキシ、n-デシルオキシ、n-ウンデシルオキシ、n-ドデシルオキシ、ベンジルオキシ、フェニルエチルオキシ、2-フェニルブチルオキシ、2-フェニルヘキシルオキシ、ナフチルエチルオキシ等のアルキルオキシ基またはアラルキルオキシ基が挙げられる。これらの内、炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、例えば、メトキシ基である。
【0054】
R4-C(=O)Oで表されるアシロキシ基としては、前記の炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数7〜12のアラルキル基に対応するカルボン酸のアシロキシ基が挙げられる。具体的に例示すれば、アセトキシ、エチルアセトキシ、n-プロピルアセトキシ、i-プロピルアセトキシ、n-ブチルアセトキシ、sec-ブチルアセトキシ、tert-ブチルアセトキシ、n-ペンチルアセトキシ、sec-ペンチルアセトキシ、n-ヘキシルアセトキシ、2-メチルペンチルアセトキシ、n-ヘプチルアセトキシ、2-メチルヘキシルアセトキシ、n-オクチルアセトキシ、2-メチルヘプチルアセトキシ、2-エチルヘキシルアセトキシ、n-ノニルアセトキシ、2-メチルオクチルアセトキシ、n-デシルアセトキシ、n-ウンデシルアセトキシ、n-ドデシルアセトキシ、ベンジルアセトキシ、フェニルエチルアセトキシ、2-フェニルブチルアセトキシ、2-フェニルヘキシルアセトキシ、ナフチルエチルアセトキシ等のアルキルアセトキシ基またはアラルキルアセトキシ基が挙げられる。これらの内、好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基もしくは炭素数7〜10のアラルキル基に対応するカルボン酸のアシロキシ基が挙げられ、例えば、アセトキシ、エチルアセトキシ、n-プロピルアセトキシ、i-プロピルアセトキシ、n-ブチルアセトキシ、sec-ブチルアセトキシ、tert-ブチルアセトキシ、n-ペンチルアセトキシ、sec-ペンチルアセトキシ、n-ヘキシルアセトキシ、ベンジルアセトキシ、フェニルエチルアセトキシ、2-フェニルブチルアセトキシ等のアシロキシ基が挙げられる。
【0055】
R5-C(=O)ONHで表されるアシロキシアミノ基としては、前記炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数7〜12のアラルキル基に対応するアシロキシ基の置換したアミノ基が挙げられる。具体的には、アセトキシアミノ、エチルアセトキシアミノ、n-プロピルアセトキシアミノ、i-プロピルアセトキシアミノ、n-ブチルアセトキシアミノ、sec-ブチルアセトキシアミノ、tert-ブチルアセトキシアミノ、n-ペンチルアセトキシアミノ、sec-ペンチルアセトキシアミノ、n-ヘキシルアセトキシアミノ、2-メチルペンチルアセトキシアミノ、n-ヘプチルアセトキシアミノ、2-メチルヘキシルアセトキシアミノ、n-オクチルアセトキシアミノ、2-メチルヘプチルアセトキシアミノ、2-エチルヘキシルアセトキシアミノ、n-ノニルアセトキシアミノ、2-メチルオクチルアセトキシアミノ、n-デシルアセトキシアミノ、n-ウンデシルアセトキシアミノ、n-ドデシルアセトキシアミノ、ベンジルアセトキシアミノ、フェニルエチルアセトキシアミノ、2-フェニルブチルアセトキシアミノ、2-フェニルヘキシルアセトキシアミノ、ナフチルエチルアセトキシアミノ等のアルキルアセトキシアミノ基またはアラルキルアセトキシアミノ基が挙げられる。これらの内、好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基もしくは炭素数7〜10のアラルキル基に対応するカルボン酸のアシロキシアミノ基が挙げられ、例えば、アセトキシアミノ、エチルアセトキシアミノ、n-プロピルアセトキシアミノ、i-プロピルアセトキシアミノ、n-ブチルアセトキシアミノ、sec-ブチルアセトキシアミノ、tert-ブチルアセトキシアミノ、n-ペンチルアセトキシアミノ、sec-ペンチルアセトキシアミノ、n-ヘキシルアセトキシアミノ、ベンジルアセトキシアミノ、フェニルエチルアセトキシアミノ、2-フェニルブチルアセトキシアミノ等のアシロキシアミノ基が挙げられる。
【0056】
もう一方の出発原料である4-置換スチレン(式2)の4-位の置換基R1は炭素数1〜12のアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基、R6-O[式中、R6は炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数7〜12のアラルキル基を表す。]で表されるアルコキシ基、R7-C(=O)O[式中、R7は炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数7〜12のアラルキル基を表す。]で表されるアシロキシ基、シアノ基(CN)またはR8-C(=O)ONH[式中、R8は炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数7〜12のアラルキル基を表す。]で表されるアシロキシアミノ基、アミノ基(NH2)、ニトロ基(NO2)、またはハロゲンである。
【0057】
炭素数1〜12のアルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、sec-ペンチル、n-ヘキシル、2-メチルペンチル、n-ヘプチル、2-メチルヘキシル、n-オクチル、2-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、n-ノニル、2-メチルオクチル、n-デシル、2-メチルノニル、n-ウンデシル、n-ドデシル等の鎖状または分岐状のアルキル基が例示される。これらの内、好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、sec-ブチルである。
【0058】
炭素数7〜12のアラルキル基とは、アリール基を含有するアルキル基を云う。例えば、ベンジル、フェニルエチル、2-フェニルブチル、2-フェニルヘキシル、ナフチルエチル等のアラルキル基が例示される。これらの内、ベンジル、フェニルエチルが好ましい。
【0059】
R6-Oで表されるアルコキシ基としては、前記の炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数7〜12のアラルキル基に対応するアルコキシ基が挙げられる。具体的に例示すれば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、n-ペントキシ、sec-ペントキシ、n-ヘキシルオキシ、2-メチルペントキシ、n-ヘプチルオキシ、2-メチルヘキシルオキシ、n-オクチルオキシ、2-メチルヘプチルオキシ、2-エチルヘキシルオキシ、n-ノニルオキシ、2-メチルオクチルオキシ、n-デシルオキシ、n-ウンデシルオキシ、n-ドデシルオキシ、ベンジルオキシ、フェニルエチルオキシ、2-フェニルブチルオキシ、2-フェニルヘキシルオキシ、ナフチルエチルオキシ等のアルキルオキシ基またはアラルキルオキシ基が挙げられる。これらの内、炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、例えば、メトキシ基である。
【0060】
R7-C(=O)Oで表されるアシロキシ基としては、前記の炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数7〜12のアラルキル基に対応するカルボン酸のアシロキシ基が挙げられる。具体的に例示すれば、アセトキシ、エチルアセトキシ、n-プロピルアセトキシ、i-プロピルアセトキシ、n-ブチルアセトキシ、sec-ブチルアセトキシ、tert-ブチルアセトキシ、n-ペンチルアセトキシ、sec-ペンチルアセトキシ、n-ヘキシルアセトキシ、2-メチルペンチルアセトキシ、n-ヘプチルアセトキシ、2-メチルヘキシルアセトキシ、n-オクチルアセトキシ、2-メチルヘプチルアセトキシ、2-エチルヘキシルアセトキシ、n-ノニルアセトキシ、2-メチルオクチルアセトキシ、n-デシルアセトキシ、n-ウンデシルアセトキシ、n-ドデシルアセトキシ、ベンジルアセトキシ、フェニルエチルアセトキシ、2-フェニルブチルアセトキシ、2-フェニルヘキシルアセトキシ、ナフチルエチルアセトキシ等のアルキルアセトキシ基またはアラルキルアセトキシ基が挙げられる。これらの内、好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基もしくは炭素数7〜10のアラルキル基に対応するカルボン酸のアシロキシ基が挙げられ、例えば、アセトキシ、エチルアセトキシ、n-プロピルアセトキシ、i-プロピルアセトキシ、n-ブチルアセトキシ、sec-ブチルアセトキシ、tert-ブチルアセトキシ、n-ペンチルアセトキシ、sec-ペンチルアセトキシ、n-ヘキシルアセトキシ、ベンジルアセトキシ、フェニルエチルアセトキシ、2-フェニルブチルアセトキシ等のアシロキシ基が挙げられる。
【0061】
R8-C(=O)ONHで表されるアシロキシアミノ基としては、前記炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数7〜12のアラルキル基に対応するアシロキシ基の置換したアミノ基が挙げられる。具体的には、アセトキシアミノ、エチルアセトキシアミノ、n-プロピルアセトキシアミノ、i-プロピルアセトキシアミノ、n-ブチルアセトキシアミノ、sec-ブチルアセトキシアミノ、tert-ブチルアセトキシアミノ、n-ペンチルアセトキシアミノ、sec-ペンチルアセトキシアミノ、n-ヘキシルアセトキシアミノ、2-メチルペンチルアセトキシアミノ、n-ヘプチルアセトキシアミノ、2-メチルヘキシルアセトキシアミノ、n-オクチルアセトキシアミノ、2-メチルヘプチルアセトキシアミノ、2-エチルヘキシルアセトキシアミノ、n-ノニルアセトキシアミノ、2-メチルオクチルアセトキシアミノ、n-デシルアセトキシアミノ、n-ウンデシルアセトキシアミノ、n-ドデシルアセトキシアミノ、ベンジルアセトキシアミノ、フェニルエチルアセトキシアミノ、2-フェニルブチルアセトキシアミノ、2-フェニルヘキシルアセトキシアミノ、ナフチルエチルアセトキシアミノ等のアルキルアセトキシアミノ基またはアラルキルアセトキシアミノ基が挙げられる。これらの内、好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基もしくは炭素数7〜10のアラルキル基に対応するカルボン酸のアシロキシアミノ基が挙げられ、例えば、アセトキシアミノ、エチルアセトキシアミノ、n-プロピルアセトキシアミノ、i-プロピルアセトキシアミノ、n-ブチルアセトキシアミノ、sec-ブチルアセトキシアミノ、tert-ブチルアセトキシアミノ、n-ペンチルアセトキシアミノ、sec-ペンチルアセトキシアミノ、n-ヘキシルアセトキシアミノ、ベンジルアセトキシアミノ、フェニルエチルアセトキシアミノ、2-フェニルブチルアセトキシアミノ等のアシロキシアミノ基基が挙げられる。
ハロゲンとしては、FまたはClが好ましい。
【0062】
本発明の第2の実施態様は、第1の実施態様に於けるX1=X2=MeO(メトキシ基)の場合であって、式1:
【0063】
【化29】

[式中、R2は前記と同義である。]で表される3,5-ジメトキシフェニルボロン酸誘導体、及び式2:
【0064】
【化30】

[式中、R1は前記と同義である。]で表されるスチレン誘導体を、パラジウム触媒および塩基の存在下に混合して酸化的カップリング反応を行って、式3:
【0065】
【化31】

[式中、R1およびR2は前記と同義である。]で表される3, 5-ジメトキシスチルベン誘導体を得る工程を有して成る、3, 5-ジメトキシスチルベン誘導体の製造方法を提供するものである。
【0066】
上記の酸化的カップリング反応を反応式で示すと、反応式6:
【0067】
【化32】

[反応式6]
で表される。
ここで、式3の化合物の内、R1=アセトキシ基(OAc)でR2=Hの場合が、RES前駆体である3,5-ジメトキシ-4'-アセトキシスチルベン(式3-1):
【0068】
【化33】

に相当する。
【0069】
出発原料の一つであるフェニルボロン酸(式1)におけるR1は前記と同義である。この内、特に好ましくは、R1が水素またはメトキシ基(OMe)である。本発明で用いるフェニルボロン酸化合物の好ましい例を示せば、3,5-ジメトキシフェニルボロン酸(式1-1):
【0070】
【化34】

および3,4,5-トリメトキシフェニルボロン酸(式1-2):
【0071】
【化35】

が挙げられる。
【0072】
もう一方の出発原料である4-置換スチレン(式2)の4-位の置換基R1は前記と同義である。その内、特に好ましくは、R1はアセトキシ基(OAc)、メトキシ基(OMe)、アミノ基(NH2)、ニトロ基(NO2)、フッ素(F)または塩素(Cl)である。具体的化合物で例示すれば、以下の通りである。
【0073】
【化36】

【0074】
次に、パラジウム触媒および塩基を用いる酸化的カップリング反応について説明する。
本反応は、反応容器中に、フェニルボロン酸誘導体(式1)および4-置換スチレン(式2)を適当な溶媒中に溶解させ、パラジウム化合物および塩基を添加混合後、酸化剤としての酸素もしくは空気雰囲気下に所定温度で所定時間、撹拌して反応させる。
【0075】
原料組成比は、通常、4-位置換スチレン誘導体1モルに対して、置換フェニルボロン酸誘導体を0.5〜8モルの範囲、好ましくは1〜5モル、特に好ましくは1.5〜3モルの範囲、例えば、2モルである。後述する実施例に於ける酸化的カップリング反応の反応収率は、置換スチレンに対する生成スチルベン誘導体の収率で表示してある。
反応溶媒中に於ける原料(フェニルボロン酸誘導体+スチレン誘導体)の濃度は、0.1〜50wt%、好ましくは1〜30wt%、より好ましくは1〜20wt%、例えば、(実施例の数値)wt%である。
【0076】
パラジウム触媒としては種々のパラジウム化合物を用いることができるが、好ましくは、ビスアセトニトリル塩化パラジウム(II):(CH3CN)2PdCl2、塩化パラジウム:PdCl2、酢酸パラジウム:Pd(OAc)2およびアリルパラジウム(II)クロリドダイマー:[Pd(η3-C3H5Cl)]2から成る群から選ばれた少なくとも1つのパラジウム化合物を用いることができる。これらのパラジウム化合物の内、酸化的カップリング反応の反応収率が優れている点では、ビスアセトニトリル塩化パラジウム(II)、塩化パラジウムおよび酢酸パラジウムが特に好ましい。
パラジウム触媒の量は、通常、4-置換スチレン1モルを基準として、0.1〜50mol%、好ましくは1〜30mol%、より好ましくは5〜20mol%、例えば、10mol%である。触媒の量は、所望の反応収率に依存して、反応温度および反応時間等に応じて適宜設定することができる。に対して
【0077】
塩基としては種々の塩基化合物を用いることができて、特に制限するものではない。本反応では、酸化的雰囲気下での反応であることを勘案すると、酸化されにくい無機塩基が好ましい。また、塩基の強さも反応に影響する点に留意が必要である。特に、本発明の場合、出発原料として反応性に富んだ官能基が置換したフェニルボロン酸誘導体およびスチレン誘導体を用いることから、塩基強度が強すぎると官能基の脱離や変性といった副反応が生じ得る。好ましい塩基としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属炭酸塩が挙げられるが、特に、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムが好ましい。
塩基の量は、フェニルボロン酸誘導体の中和に作用すると考えられることから、通常、用いるフェニルボロン酸誘導体と等モル前後の量が用いられる。
【0078】
反応は通常、溶媒に原料および触媒成分を混合して実施される。反応溶媒としては、原料基質および触媒成分を溶解させ、且つ、原料、触媒成分および生成物を安定に保つ不活性なものであれば、特に限定するものではない。好ましい溶媒としては、活性水素を有しない非プロティック極性溶媒が一般的に好ましい。例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル等の含窒素溶媒やアセトン、メチルエチルケトン、ジオキサン等のケトン類やエーテル類溶媒が挙げられる。これらの内、特に好ましい溶媒は、DMFおよびDMSOである。
これらの溶媒は脱水して用いることが好ましい。溶媒中の微量の水分は、酸化的カップリング反応を阻害する。
【0079】
酸化的カップリング反応は、酸素もしくは空気雰囲気下で実施される。酸素は触媒の再酸化に必要であり、触媒サイクル(触媒効率)の向上に必須の成分である。実際の反応に於いては、反応容器に原料、触媒および溶媒を仕込んだ後に酸素置換し、その後に酸素もしくは空気雰囲気を保って反応を行う。
なお、酸素雰囲気中の反応であるから、気相の有機蒸気と酸素との比率が爆発限界を外れる様に常に留意する必要がある。
反応温度は、通常、0〜120℃、好ましくは10〜80℃、より好ましくは20〜60℃、例えば50℃である。
反応時間は、所望の反応収率、反応温度、触媒量、基質濃度等によって左右されるが、通常、0.2〜50時間、好ましくは0.5〜48時間、より好ましくは1〜30時間、例えば、3〜24時間である。
酸化カップリング反応の終点をガスクロマトグラフィおよび液体(もしくは薄層)クロマトグラフィ等で確認後、反応温度を室温付近まで下げ、酢酸エチル等の抽出溶媒で生成物を抽出し、飽和食塩水で数回洗浄後、該抽出液を無水硫酸ナトリウム等の乾燥剤で乾燥する。乾燥剤を濾過後、溶媒を減圧留去し、粗生成物を得る。粗生成物を再結晶またはカラムクロマトグラフィ等で常法通り精製して、生成物のRES基幹中間体を得ることができる。後述の実施例に於いて、生成物の確認は、IR-スペクトル(日本分光製のFT/IR-460 Plus)、1H-NMRおよび13C-NMR(日本電子製のJMTC-400/54/SS)、MS(MALDI-TOF質量分析計)および融点測定(BUCHI Melting Point B-545)によって行った。
【0080】
本発明の第3〜第5の側面に対応する実施態様において、第2工程として脱メチル化反応を実施する。即ち、第3の実施態様は、第1工程の酸化的カップリング反応で得られた3, 5-ジメトキシスチルベン誘導体3を第2工程の反応式7:
【0081】
【化37】

[反応式7]
で表される脱メチル化反応を行って、3, 5-ジヒドロキシスチルベン誘導体4を得る工程を有して成る製造方法である。
第4および第5の実施態様は、第1工程の酸化的カップリング反応で得られた3, 5-ジメトキシ-4'-アセトキシスチルベン誘導体3-1を第2工程の反応式8:
【0082】
【化38】

[反応式8]
で表される脱メチル化反応を行って、式4-1で表される3, 5-ジヒドロキシ-4'-アセトキシスチルベン誘導体を得る工程を有して成る製造方法である。
【0083】
脱メチル化反応の種類は特に限定するものではない。例えば、塩化メチレン溶媒中、塩化アルミニウムとエタンチオールを用いる脱メチル化等の反応を用いることが出来る。その中でも、好ましくは、三塩化ホウ素およびテトラ-n-ブチルアンモニウムヨージドを用いて行う脱メチル化反応であってよい。テトラ-n-ブチルアンモニウムヨージドの使用量は、脱メチル化原料の3, 5-ジメトキシスチルベン誘導体3または3-1が1molに対して、1〜6mol、好ましくは1〜4mol、例えば3mol程度である。三塩化ホウ素の量は、テトラ-n-ブチルアンモニウムヨージドの当量程度である。
【0084】
脱メチル化反応は、通常、脱水処理された溶媒中、液体窒素温度の-78℃〜50℃、好ましくは、-78℃〜30℃、例えば-78℃〜室温で、窒素ガス雰囲気下に撹拌して行う。溶媒としては、通常、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム等の非プロトン性極性溶媒が用いられる。反応原料の混合順序は特に限定されないが、メトキシ置換スチルベン誘導体およびテトラ-n-ブチルアンモニウムヨージドを溶媒に溶解させた後、溶媒に溶解した三塩化ホウ素溶液を滴下して添加するのが好ましい。この際、三塩化ホウ素溶液の滴下は低温、例えば-78℃で行うのが好ましい。急激な反応開始を避けるためである。三塩化ホウ素の添加終了後、撹拌しながら徐々に内温を10℃〜50℃、例えば室温に上げ、更に撹拌しながら反応を所定時間継続する。反応時間は通常、0.5〜24時間、好ましくは1〜10時間、例えば2時間である。
【0085】
反応の終了は、例えば薄層もしくはカラムクロマトグラフィやガスクロマトグラフィにて原料の消失を確認して行う。反応終了後、アルカリ、例えば炭酸水素ナトリウム水溶液を添加して反応を停止すると共に、ホウ素を除去する。その後、酸化的カップリング反応の項で説明した手順に沿って常法どおり後処理および精製を行い、脱メチル化生成物を得る。得られた生成物の確認は、酸化的カップリング反応の項で説明したと同様に、IR-スペクトル(日本分光製のFT/IR-460 Plus)、1H-NMRおよび13C-NMR(日本電子製のJMTC-400/54/SS)、MS(MALDI-TOF質量分析計)および融点測定(BUCHI Melting Point B-545)によって行った。
【0086】
本発明の第5の側面に対応する実施態様において、第3工程として脱アセチル化反応を実施する。具体的に反応式で示せば、第2工程の脱メチル化反応で得られた3, 5-ジヒドロキシスチルベン誘導体4-1の脱アセチル化反応を行って、3, 4', 5-トリヒドロキシスチルベン誘導体5-1を得る反応式9:
【0087】
【化39】

[反応式9]
で表される第3工程である。式5-1において、R2=Hの場合がレスベラトロール(RES: 5):
【0088】
【化40】

に相当する。
本発明において、脱アセチル化反応の方式は特に限定するものではなく、アルカリ水溶液による通常の脱アセチル化反応(即ち、アルカリ加水分解反応)を用いてよい。アルカリとしては、通常、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウム等の無機アルカリを用いてよい。アルカリ水溶液の濃度は、通常、5〜80wt%、好ましくは20〜60wt%、例えば50wt%であってよい。反応は通常、原料のアセトキシスチルベン誘導体を溶媒、例えば、テトラヒドロフラン(THF)やジメチルエーテル(DME)、ジオキサン等のエーテル系溶媒に溶解し、アルカリ水溶液と混合・撹拌して行う。反応温度は通常、0〜100℃、好ましくは20〜80℃、例えば70℃であり、反応時間は通常、0.5〜24時間、好ましくは1〜10時間、例えば2時間である。
【0089】
脱アセチル化反応の終了は、例えば薄層もしくはカラムクロマトグラフィやガスクロマトグラフィにて原料の消失を確認して行う。反応終了後、用いたアルカリを、酸、例えば塩酸水溶液を添加して中和して反応を停止する。その後、酸化的カップリング反応の項で説明した手順に沿って常法どおり溶媒抽出、水洗等の後処理を行った後に、カラムクロマトグラフィや晶析等による精製を行い、脱メチル化生成物を得る。得られた生成物の確認は、酸化的カップリング反応の項で説明したと同様に、IR-スペクトル(日本分光製のFT/IR-460 Plus)、1H-NMRおよび13C-NMR(日本電子製のJMTC-400/54/SS)、MS(MALDI-TOF質量分析計)および融点測定(BUCHI Melting Point B-545)等によって行った。
【0090】
本発明の製造方法によって得られるレスベラトロール(RES: 式5)は周知の通り多様な生理(薬理)活性を有する。一方、本発明の製造方法によって得られるRES誘導体(RES前駆体およびRES中間体、並びにそれらの誘導体を含む。)も、それらの構造的特徴の共通性から、多様な生理(薬理)活性の発現が期待されるところである。本発明の製造方法によって得られるRES(5)およびその代表的な誘導体を以下に列挙する。
【0091】
【化41】

【実施例】
【0092】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下の実施例で用いた出発原料の3,5-ジ置換フェニルボロン酸誘導体および4-置換スチレン誘導体は、いずれも市販品(東京化成株式会社製)をそのまま、または精製して用いた。
【0093】
実施例1
[4'-アセトキシ-3, 5-ジメトキシスチルベン(3-1)の合成]
【0094】
【化42】

[反応式10]
【0095】
25ml容量のナス型フラスコに、p-アセトキシスチレン(2-1: 41mg; 0.25mmol)を無水ジメチルホルムアミドに溶解させ、3, 5-ジメトキシフェニルボロン酸(1-1: 91mg; 0.5mmol)、炭酸ナトリウム(53mg; 0.5mmol)、ビスアセトニトリル塩化パラジウム(II) ((CH3CN)2PdCl2: 6.5mg; 0.025mmol)を加えた。そしてその混合物を酸素で脱気した後、酸素ガス雰囲気下50℃で3時間撹拌した。室温まで冷却した後、酢酸エチル (20ml)を加えて反応停止および反応物の抽出を行い、飽和食塩水 (10ml)で3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。乾燥剤を濾過した後、溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(段階的溶出:ヘキサン中、10%〜20% AcOEtの溶出液)で精製し、白色固体であるRES中間体 3-1 (62.2g; p-アセトキシスチレン基準の収率=84%)を得た。得られた生成物の分析データ(下記)より、目的化合物3-1の生成を確認した。
【0096】
Rf=0.3 (シリカゲル薄層クロマトグラフィ;展開溶媒:hexane:AcOEt=3:1)
1H-NMR (CDCl3) δ: 7.50 (d, 2H, J=8.6 Hz, H-2', H-6'), 7.08 (d, 2H, J =8.6Hz, H-3', H-5'), 7.06 (d, 1H, J =15 Hz, H-β), 6.98 (d, 1H, J =15 Hz, H-α), 6.66 (d, 2H, J=2.2 Hz, H-2, H-6), 6.40 (t, 1H, J=2.2Hz, H-4), 3.83 (s, 6H, OMe), 2.31 (s, 3H, OAc).
13C-NMR (CDCl3) δ: 169.4 (C=O), 161.0, 150.1, 139.2, 134.9, 128.9, 128.2, 127.5, 121.8, 104.6, 100.1, 55.4 (OAc), 21.1 (OMe).
【0097】
実施例2
[4'-アセトキシ-3,5-ジジヒドロキシスチルベン(4-1-1)の合成]
【0098】
【化43】

[反応式11]
【0099】
25mlのナス型フラスコに3,5-ジメトキシ-4'-アセトキシスチルベン(3-1) (78mg 0.26 mmol)を無水ジクロロメタン(1.7ml)に溶解させ、n-テトラブチルアンモニウムヨージド(0.24g; 0.65mmol)を加えた。N2ガスで置換した後、1M BCl3 (in CH2Cl2) (0.7ml; 0.7mmol)を−78℃で滴下し、5分間撹拌した後、室温で2時間撹拌して反応させた。その後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(30ml)を加えて反応を停止した後、酢酸エチル(30ml)で3回抽出を行い、水および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。乾燥剤を濾過した後、溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(段階的溶出法: 1%〜5%のMeOH含有CHCl3溶媒)で精製し、淡黄色固体であるRES前駆体4-1-1 (51.9 mg; 収率=73%)を得た。得られた生成物の分析データ(下記)より、目的化合物4-1-1の生成を確認した。
【0100】
Rf=0.5 (CHCl3:MeOH=9:1)
1H-NMR (アセトン溶液) δ: 8.25 (s, 2H, OH), 7.59 (d, 2H, J=8.5Hz, H-2', H-6'), 7.03-7.11 (m, 4H, H-α, H-β, H-3', H-5'), 6.58 (d, 2H, J=2.1 Hz, H-2, H-6), 6.31 (t, 1H, J=2.1Hz, H-4), 2.25 (s, 3H, OAc).
13C-NMR (アセトン溶液) δ: 169.6 (C=O), 159.6, 151.3, 140.3, 135.9, 129.9, 128.2, 128.1, 122.8, 106.0, 103.2, 20.9 (OAc).
【0101】
実施例3
[3,4',5-トリヒドロキシスチルベン (レスベラトロール:RES: 5)の合成]
【0102】
【化44】

[反応式12]
【0103】
25mlのナス型フラスコに3, 5-ジヒドロキシ-4'-アセトキシスチルベン(4-1-1) (68mg; 0.25mmol)をTHFに溶解させ、50%水酸化ナトリウム水溶液(2ml)を滴下し、加熱還流下2時間撹拌した。そして2M HClをpH=3になるまで加え、酢酸エチル(20ml)で3回抽出を行い、水および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。乾燥剤を濾過した後、溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー((段階的溶出法: 20%〜35%のAcOEt含有ヘキサン溶出液)で精製し、淡黄色固体であるRES 5 (41.5mg, 収率=73%)を得た。得られた生成物の分析データ(下記)より、目的化合物:RES 5の生成を確認した。
【0104】
Rf=0.38 (Hexane:AcOEt=1:1)
1H-NMR (Acetone) δ: 8.56 (s, 1H, OH), 8.28 (s, 2H, OH), 7.40 (d, 2H, J=8.5 Hz, H-2', H-6'), 7.01 (d, 1H, J=16 Hz, H-β), 6.87 (d, 1H, J=16 Hz, H-α), 6.83 (d, 2H, J=8.8 Hz, H-3', H-5'), 6.53 (d, 2H, J=2.2 Hz, H-2, H-6), 6.25(s, 1H, H-4)(1.
13C-NMR (Acetone) δ: 159.6, 158.1, 140.8, 129.9, 129.1, 128.7, 126.8, 116.4, 105.6, 102.6(1.
【0105】
実施例4〜12
実施例1と同様な条件下、パラジウム化合物の種類、塩基の種類および溶媒の種類を代える以外は、実施例1に準じて酸化的カップリング反応を行い、同様に反応液の後処理および生成物の精製を行った。得られた結果を表1に示す。
【0106】
【化45】

[反応式13]
【0107】
【表1】

【0108】
実施例13
【0109】
【化46】

[反応式14]
【0110】
フェニルボロン酸誘導体:2および4-置換スチレン誘導体:1の種類を代える以外は、実施例1に準じて酸化的カップリング反応を行った。実施例1に準じて後処理および精製を行って、各種のジメトキシスチルベン誘導体(RES誘導体:3)を得た。得られた結果を表2に示す。
【0111】
【表2】

【0112】
得られたRES誘導体の分析結果を以下に示す:
[Entry No.1] 4'-フルオロ-3, 5-ジメトキシスチルベン
Rf=0.3 (Hexane:AcOEt=9:1)
1H-NMR (CDCl3) δ: 7.45-7.49 (m, 2H, H-2, H-6), 7.02-7.07 (m, 3H, H-β, H-3, H-5), 6.94 (d, 1H, J =16 Hz, H-α), 6.65 (d, 2H, J =16 Hz, H-2, H-6), 6.40 (s, 1H, H-4), 3.83 (s, 6H, OMe).
13C-NMR (CDCl3) δ: 160.9, 139.1, 128.4, 128.1, 128.0, 127.9, 115.7, 115.5, 104.5, 99.9, 55.3 (OMe).
【0113】
[Entry No.2] 4'-クロロ-3, 5-ジメトキシスチルベン
Rf=0.25 (Hexane:AcOEt=9:1)
1H-NMR (CDCl3) δ: 7.43 (d, 2H, J=8.4 Hz, H-2', H-6'), 7.32 (d, 2H, J=8.4 Hz, H-3', H-5'), 7.01 (d, 2H, J=1.7 Hz, H-α, H-β), 6.66 (d, 2H, J =2.2 Hz, H-2, H-6), 6.04 (t, 1H, J =2.2 Hz, H-4), 3.83 (s, 6H, OMe).
13C-NMR (CDCl3) δ: 160.9, 138.9, 135.6, 133.3, 129.2, 128.8, 127.8, 127.7, 104.6, 100.1, 55.4 (OMe).
【0114】
[Entry No.3] 4'-ニトロ-3, 5-ジメトキシスチルベン
Rf=0.38 (Hexane:AcOEt=3:1)
1H-NMR (CDCl3) δ: 8.22 (d, 2H, J=8.8 Hz, H-3', H-5'), 7.63 (d, 2H, J=8.8Hz, H-2', H-6'), 7.20 (d, 1H, J=16 Hz, H-β), 7.11 (d, 1H, J =16 Hz, H-α), 6.7 (d, 2H, J =2.0 Hz, H-2, H-6), 6.46 (t, 1H, J=2.0Hz, H-4), 3.85(s, 6H, OMe).
13C-NMR (CDCl3) δ: 161.0, 146.7, 143.6, 138.0, 133.2, 126.9, 126.7, 124.1, 105.0, 100.9, 55.4 (OMe).
【0115】
[Entry No.4] 4'-アミノ-3, 5-ジメトキシスチルベン
Rf=0.32(Hexane:AcOEt=2:1)
1H-NMR (CDCl3) δ: 7.33 (d, 2H, J=8.3 Hz, H-2', H-6'), 7.00 (d, 1H, J=16 Hz, H-β), 6.85 (d, 1H, J=16 Hz, H-α), 6.67 (d, 2H, J =8.3 Hz, H-3', H-5'), 6.63 (d, 2H, J =1.7 Hz, H-2, H-6), 6.36 (s, 1H, H-4), 3.82(s, 6H, OMe), 3.76(br, s, 2H, NH2).
13C-NMR (CDCl3) δ: 160.9, 146.2, 139.9, 129.2, 127.8, 127.7, 124.9, 115.1, 104.1, 99.3, 55.3 (OMe).
【0116】
[Entry No.5] 3, 4, 4', 5-テトラメトキシスチルベン
Rf=0.4(Hexane:AcOEt=3:1)
1H-NMR (CDCl3) δ: 7.45 (d, 2H, J=8.8 Hz, H-2', H-6'), 6.89-7.00 (m, 4H, H-α, H-β, H-3', H-5'), 6.72 (s, 2H, H-2, H-6), 3.92 (s, 6H, OMe), 3.87 (s, 3H, OMe), 3.84 (s, 3H, OMe), 3.82(s, 6H, OMe).
13C-NMR (CDCl3) δ: 159.3, 153.4, 137.6, 133.4, 130.0, 127.7, 127.6, 126.5, 114.1, 103.3, 60.9 (OMe), 56.1 (OMe), 55.3 (OMe).
【0117】
実施例14
【0118】
【化47】

[反応式15]
【0119】
各種のジメトキシスチルベン誘導体(RES誘導体:3)の種類を代える以外は、実施例2に準じて脱メチル化反応を行った。実施例2に準じて後処理および精製を行って、各種のジヒドロキシスチルベン誘導体(RES誘導体:4)を得た。得られた結果を表3に示す。
【0120】
【表3】

【0121】
得られたRES誘導体の分析結果を以下に示す:
[No.1] 4'-フルオロ-3, 5-ジヒドロキシスチルベン(4-1-3)
Rf=0.13 (Hexane:AcOEt=3:1)
1H-NMR (Acetone) δ: 8.28 (s, 2H, OH), 7.61-7.64 (m, 2H, H-2', H-6'), 7.02-7.15 (m, 4H, H-α, H-β, H-3', H-5'), 6.58 (d, 2H, J=2.0 Hz, H-2, H-6), 6.32 (t, 1H, J=2.0 Hz, H-4).
13C-NMR (Acetone) δ: 159.6, 140.2, 134.8, 129.7, 129.7, 129.1, 129.0, 127.9, 116.3, 116.1, 105.9, 103.1.
【0122】
[No.2] 4'-クロロ-3, 5-ジヒドロキシスチルベン(4-1-4)
Rf=0.14 (Hexane:AcOEt=3:1), M.p.: 168.7 ℃
1H-NMR (Acetone) δ: 8.33 (s, 2H, OH), 7.60 (d, 2H, J=8.3 Hz, H-2', H-6'), 7.39 (d, 2H, J= 8.5 Hz,H-α, H-β ), 7.12 (s, 2H, H-3', H-5'), 6.60 (d, 2H, J= 2.0 Hz, H-2, H-6), 6.33 (s, 1H, H-4).
13C-NMR (Acetone) δ: 159.6, 140.0, 137.2, 133.3, 130.6, 129.5, 128.8, 127.7, 106.0, 103.3.
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明の製造方法により、専ら天然物からの抽出に頼っているレスベラトロール(RES)を、入手容易な原料から出発して簡便な有機合成的方法で工業的に効率よく製造することができる。また、各種のRES誘導体およびRES合成の基幹中間体についても、実用性の高い簡便で効率的な製造が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3, 5-ジ置換スチルベン誘導体の製造方法であって、式01:
【化1】

[式中、X1、X2およびR2は各々独立に、水素、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基、R3-O[式中、R3は炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数7〜12のアラルキル基を表す。]で表されるアルコキシ基、R4-C(=O)O[式中、R4は炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数7〜12のアラルキル基を表す。]で表されるアシロキシ基、シアノ基(CN)またはR5-C(=O)ONH[式中、R5は炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数7〜12のアラルキル基を表す。]で表されるアシロキシアミノ基を表す。但し、X1およびX2が水素の場合を除く。]で表される3, 5-ジ置換フェニルボロン酸誘導体、及び式2:
【化2】

[式中、R1は炭素数1〜12のアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基、R6-O[式中、R6は炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数7〜12のアラルキル基を表す。]で表されるアルコキシ基、R7-C(=O)O[式中、R7は炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数7〜12のアラルキル基を表す。]で表されるアシロキシ基、シアノ基(CN)またはR8-C(=O)ONH[式中、R8は炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数7〜12のアラルキル基を表す。]で表されるアシロキシアミノ基、アミノ基(NH2)、ニトロ基(NO2)、またはハロゲンを表す。]で表されるスチレン誘導体を、パラジウム触媒および塩基の存在下に混合して酸化的カップリング反応を行って、式03:
【化3】

[式中、X1、X2、R1およびR2は前記と同義である。]で表される3, 5-ジ置換スチルベン誘導体を得る工程を有して成る、3, 5-ジ置換スチルベン誘導体の製造方法。
【請求項2】
3, 5-ジメトキシスチルベン誘導体の製造方法であって、式1:
【化4】

[式中、R2は水素、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基、R3-O[式中、R3は炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数7〜12のアラルキル基を表す。]で表されるアルコキシ基、R4-C(=O)O[式中、R4は炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数7〜12のアラルキル基を表す。]で表されるアシロキシ基、シアノ基(CN)またはR5-C(=O)ONH[式中、R5は炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数7〜12のアラルキル基を表す。]で表されるアシロキシアミノ基を表す。]で表されるフェニルボロン酸誘導体、及び式2:
【化5】

[式中、R1は炭素数1〜12のアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基、R6-O[式中、R6は炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数7〜12のアラルキル基を表す。]で表されるアルコキシ基、R7-C(=O)O[式中、R7は炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数7〜12のアラルキル基を表す。]で表されるアシロキシ基、シアノ基(CN)またはR8-C(=O)ONH[式中、R8は炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数7〜12のアラルキル基を表す。]で表されるアシロキシアミノ基、アミノ基(NH2)、ニトロ基(NO2)、またはハロゲンを表す。]で表されるスチレン誘導体を、パラジウム触媒および塩基の存在下に混合して酸化的カップリング反応を行って、式3:
【化6】

[式中、R1およびR2は前記と同義である。]で表される3, 5-ジメトキシスチルベン誘導体を得る工程を有して成る、3, 5-ジメトキシスチルベン誘導体の製造方法。
【請求項3】
3, 5-ジヒドロキシスチルベン誘導体の製造方法であって、式1:
【化7】

[式中、R2は前記と同義である。]で表されるフェニルボロン酸誘導体、及び式2:
【化8】

[式中、R1は前記と同義である。]で表されるスチレン誘導体を、パラジウム触媒および塩基の存在下に混合して酸化的カップリング反応を行って、式3:
【化9】

[式中、R1およびR2は前記と同義である。]で表される3, 5-ジメトキシスチルベン誘導体を得る第1工程、ならびに、得られた3, 5-ジメトキシスチルベン誘導体3の脱メチル化反応を行って、式4:
【化10】

[式中、R1およびR2は前記と同義である。]で表される3, 5-ジヒドロキシスチルベン誘導体を得る第2工程を有して成る、3, 5-ジヒドロキシスチルベン誘導体の製造方法。
【請求項4】
3, 5-ジヒドロキシ-4'-アセトキシスチルベン誘導体の製造方法であって、式1:
【化11】

[式中、R2は前記と同義である。]で表されるフェニルボロン酸誘導体、及び式2-1:
【化12】

で表される4-アセトキシスチレンを、パラジウム触媒および塩基の存在下に混合して酸化的カップリング反応を行って、式3-1:
【化13】

[式中、R2は前記と同義である。]で表される3, 5-ジメトキシ-4'-アセトキシスチルベン誘導体を得る第1工程、ならびに、得られた3, 5-ジメトキシ-4'-アセトキシスチルベン誘導体の脱メチル化反応を行って、式4-1:
【化14】

[式中、R2は前記と同義である。]で表される3, 5-ジヒドロキシ-4'-アセトキシスチルベン誘導体を得る第2工程を有して成る、3, 5-ヒドロキシ-4'-アセトキシスチルベン誘導体の製造方法。
【請求項5】
3, 4', 5-トリヒドロキシスチルベン(レスベラトロール)およびその誘導体の製造方法であって、式1:
【化15】

[式中、R2は前記と同義である。]で表されるフェニルボロン酸誘導体、及び式2-1:
【化16】

で表される4-アセトキシスチレンを、パラジウム触媒および塩基の存在下に混合して酸化的カップリング反応を行って、式3-1:
【化17】

[式中、R2は前記と同義である。]で表される3, 5-ジメトキシ-4'-アセトキシスチルベン誘導体を得る第1工程、得られた3, 5-ジメトキシ-4'-アセトキシスチルベン誘導体3-1の脱メチル化反応を行って、式4-1:
【化18】

[式中、R2は前記と同義である。]で表される3, 5-ジヒドロキシ-4'-アセトキシスチルベン誘導体を得る第2工程、ならびに、得られた3, 5-ジヒドロキシ-4'-アセトキシスチルベン誘導体4-1の脱アセチル化反応を行って、式5-1:
【化19】

[式中、R2は前記と同義である。]で表される3, 4', 5-トリヒドロキシスチルベン誘導体を得る第3工程を有して成る、3, 4', 5-トリヒドロキシスチルベン(R2=H:レスベラトロール)およびその誘導体の製造方法。
【請求項6】
R2が水素またはメトキシ基(MeO)であり、R1がアセトキシ基(OAc)、メトキシキ基(OMe)、アミノ基(NH2)、ニトロ基(NO2)、フッ素(F)または塩素(Cl)である、請求項1〜3のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項7】
R2が水素またはメトキシ基(MeO)である、請求項4または5に記載の製造方法。
【請求項8】
脱メチル化反応が、三塩化ホウ素およびn-テトラブチルアンモニウムヨージドを用いて行う反応である、請求項3〜5および7のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項9】
脱アセチル化反応が、アルカリ水溶液による加水分解反応である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項10】
パラジウム触媒が、(CH3CN)2PdCl2, PdCl2, Pd(OAc)2および[Pd(η3-C3H5Cl)]2から成る群から選ばれた少なくとも1つのパラジウム化合物である、請求項1〜9のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項11】
パラジウム触媒による酸化的カップリング反応で用いる塩基が炭酸ナトリウムである、請求項1〜10のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項12】
パラジウム触媒による酸化的カップリング反応が、ジメチルホルムアミド(DMF)またはジメチルスルホキシド(DMSO)を反応溶媒として実施される、請求項1〜11のいずれか1つに記載の製造方法。

【公開番号】特開2013−47193(P2013−47193A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185991(P2011−185991)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【Fターム(参考)】