レセプターとリガンドの間の相互作用の調節の方法
本発明は少なくとも2つのタンパク質間の相互作用を調節する方法に関する、ここで、上記少なくとも2つのタンパク質の一方が機能性細胞表面レセプターであり、かつ、もう一方のタンパク質が上記レセプターのリガンドである。本発明は、上記レセプター・リガンドに対する上記機能性細胞表面レセプターの結合部位を特徴とし、そして上記結合部位の構造の一部であり、および/または上記レセプターと上記リガンドの間の相互作用に関与する一連のアミノ酸配列を開示する。しかも、本発明は、前述の結合部位を通して上記機能性細胞表面レセプターと上記レセプター・リガンドの間の相互作用を調節することができる候補化合物の分子設計方法およびスクリーニング方法を特徴とし、そしてそのような化合物の同定のためのスクリーニング・アッセイ方法を提供する。本発明は、前記結合部位、および/または前記結合部位を通してレセプター−リガンド相互作用を達成するために不可欠なアミノ酸配列を含むエピトープに結合することができる抗体をさらに説明する。同様に、本発明は、開示した方法、ペプチド配列、および抗体のさまざまな用途に関係する。好ましい態様において、本発明は、FGFRリガンドに対する線維芽細胞成長因子レセプター(FGFR)の結合部位、上記結合部位を通して上記レセプター−リガンド相互作用を調節することができる化合物、および上記結合部位を認識することができる抗体に関係する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つのタンパク質間の相互作用を調節するための方法に関する、ここで、上記2つのタンパク質の少なくとも一方が機能性細胞表面レセプターであって、もう一方のタンパク質が上記レセプターのリガンドである。好ましくは、本発明は線維芽細胞成長因子レセプター(FGFR)とFGFRリガンドの相互作用に関係する。本発明はFGFRリガンドのFGFR結合部位を形成することに関与する一連のアミノ酸配列にさらに関する。しかも、本発明は、FGFRと上述の結合部位をもつタンパク質の間の相互作用を調節することができる候補化合物の分子設計およびスクリーニング方法を特色とし、そしてそのような化合物の同定のためのスクリーニング・アッセイを提供する。
【背景技術】
【0002】
免疫グロブリン・スーパーファミリーの神経細胞接着分子(CAMs)は、初期発生の間および成人で、核となり、そして主要な部位にて細胞群を維持する。
【0003】
それらの接着特性に加えて、CAMsのホモフィリックとヘテロフィリックな相互作用は、細胞内のシグナル伝達に影響しうる。従って、細胞の遊走、増殖、および分化を含む発生事件に影響を与えるそれらの能力は、それらの接着特性、ならびにそれらのシグナル伝達特性の両方に起因するのかもしれない。
【0004】
神経細胞接着分子、NCAMは、最初に発見された神経系CAMだった。発見以来、NCAMは集中的に調査されていて、現在十分に特徴づけられている。
【0005】
NCAMは免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーに属している。その細胞外部分は5つのIg様モジュールと、2つのIII型フィブロネクチン(F3)モジュールから成る(Berezin et al., 2000)。NCAMは、細胞−細胞、および細胞−基層相互作用の両方を補助する。NCAMは、ヘパリン/ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、プロテオグリカン、および異なる型のコラーゲンといった様々な細胞外マトリックス成分に結合する。細胞−細胞相互作用は、たいていNCAMホモフィリック相互作用によって補助される。
【0006】
NCAMの異なるモジュールが、異なる機能を実施することが示された。このように、現在、NCAMホモフィリック結合は、最初の3つのIgモジュールに依存すると思われている。ヘパリン結合配列はIg2モジュールに局限されている。NCAMは神経細胞接着分子L1に同様に結合する。この相互作用はNCAMの4番目のIgモジュールの間でおこなわれていると思われ、そしてオリゴマンノシド部分がL1で発現した。NCAMの2つの膜近位F3モジュールはFGFR結合に関与することが示唆された。NCAMの多数のリガンド中で、最も興味深いものが相変わらずATPである。NCAMがアデノシン三リン酸(ATP)に細胞外で加水分解されることは証明されていて(Dzhandzhugazyan and Bock, 1993 and 1997)、そして近位F3モジュールがNCAMのこの作用に関与することが示唆されていた。最近、ATPがNCAMの誘発した神経突起生成のモジュレーターであることが証明された(Skladchikova et al., 1999)。しかし、脳内で最も多い神経伝達物質の1つである細胞外ATPの役割は、NCAMの知られている生物学的機能に関して十分に理解されていない。
【0007】
現在、多数の調査グループが、NCAM介在軸索伸長の根底にある細胞内シグナル伝達カスケードが線維芽細胞成長因子レセプター(FGFR)の刺激によって活性化されるシグナル伝達カスケードに類似していることを示す証拠の大部分を積み上げている。
【0008】
線維芽細胞成長因子レセプター(FGFRs)は、細胞外の3つのIg様モジュールと、細胞内の開裂チロシンキナーゼ・モジュールから成る4つ近縁のレセプター・タンパク質チロシン・キナーゼのファミリーである(Powers et al., 2000)。前記レセプターは、形態形成、発生、血管形成、および創傷治癒の主要なレギュレーターとして知られている。FGFR活性化とシグナル伝達は、そのリガンド、線維芽細胞成長因子(FGF)の高親和性結合によって誘発されるレセプターの二量体化に依存しており、かつ、それは細胞表面ヘパリンまたはヘパラン硫酸プロテオグリカンの関与を同様に必要とする。
【0009】
主な神経系CAMs、NCAM、L1、およびN−カドヘリンの全てがFGFRの新しいクラスの推定上の代替リガンドとみなされるが、これまでのところ、これらのCAMsとレセプターの間の直接的な相互作用に関するいずれかの証拠は得られていない。FGFRとの相互作用のための必要条件であるかもしれない共通の構造的モチーフの同定は、FGFR活性の制御が重要な役割を担う種々の病理的な障害の治療のための新薬の開発の観点から非常に有利であるように思われる。
【発明の開示】
【0010】
本発明の概要
本発明は、少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用を調節する方法に向けられ、ここで、少なくとも2つの異なるタンパク質の一方が機能性細胞表面レセプター、またはその断片もしくは変異体に相当し、かつ、少なくとも2つの異なるタンパク質のもう一方が上記レセプターへの結合部位を有するポリペプチドに相当し、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む、そして上記方法が以下のステップ:
i) それによって上記レセプターと上記ポリペプチドの相互作用を妨害する、当該レセプターおよび/またはポリペプチドと相互作用できる化合物を準備し、そして
ii) 上記少なくとも2つの異なるタンパク質にステップ(i)の化合物を提示する、
を含む。
【0011】
本発明は、少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用を調節する方法に向けられ、ここで、少なくとも2つの異なるタンパク質の一方が機能性細胞表面レセプター、またはその断片もしくは変異体に相当し、かつ、少なくとも2つの異なるタンパク質のもう一方が上記レセプターへの結合部位を有するポリペプチドに相当し、ここで、上記結合部位が1以上の「ストランド−ループ−ストランド」構造モチーフから本質的に成る、そして上記方法が以下のステップ:
i) それによって上記レセプターと上記ポリペプチドの相互作用を妨害する,当該レセプターおよび/またはポリペプチドと相互作用できる化合物を準備し、そして
ii) 上記少なくとも2つの異なるタンパク質にステップ(i)の化合物を提示する、
を含む。
【0012】
本発明の他の側面は、少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用を調節することができる候補化合物のスクリーニング方法に関係し、ここで、少なくとも2つの異なるタンパク質の一方が機能性細胞表面レセプターか、その断片もしくは変異体に相当し、かつ、少なくとも2つの異なるタンパク質のもう一方が上記レセプターへの結合部位を有するポリペプチドに相当し、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む、そして上記方法が以下のステップ:
i) 少なくとも2つの異なるタンパク質を準備し;
ii) 化合物を準備し;
iii) ステップ(i)の少なくとも2つの異なるタンパク質にステップ(ii)の化合物を提示し;
iv) 上記化合物を上記タンパク質に提示した前後で上記少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用を測定し;
v) 上記少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用が上記提示された化合物によって調節されたかどうかを測定し、そして
vi) 上記少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用を調節することができる候補化合物を選ぶ、
を含む。
【0013】
さらに、本発明は、少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用を調節することができる候補化合物の連続スクリーニング・アッセイを開示し、ここで、少なくとも2つの異なるタンパク質の一方が機能性細胞表面レセプターか、その断片もしくは変異体に相当し、かつ、少なくとも2つの異なるタンパク質のもう一方が上記レセプターへの結合部位を有するポリペプチドに相当し、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む、そして上記アッセイが以下のステップ:
i) 少なくとも1つの機能性細胞表面レセプター分子、またはその断片もしくは変異体、および上記レセプターに対する結合部位を有する少なくとも1つのポリペプチドを準備し、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体もしくは相同体、または上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む;
ii) ステップ(i)の少なくとも1つのレセプター分子をステップ(i)の少なくとも1つのポリペプチドに提示するか、またはステップ(i)の少なくとも1つのレセプター分子をステップ(i)の少なくとも1つのポリペプチドに提示し、そして上記レセプターと上記ポリペプチドの間で相互作用させ;続いて
iii) ステップ(ii)の分子間の相互作用を記録し;
iv) ステップ(ii)の分子に候補化合物を提示し;
v) ステップ(iv)の分子間の相互作用を記録し、続いて
vi) ステップ(iv)の分子間の相互作用に対する候補化合物の少なくとも1つの効果を評価し、続いて
vii) 少なくとも1つの機能性細胞表面レセプター分子とステップ(i)の少なくとも1つのポリペプチドの間の相互作用を調節することができる化合物の選ぶ、
を含む。
【0014】
本発明の方法およびアッセイは、この調節が可能な化合物による、FGFRとFGFR結合部位を含むタンパク質の間の相互作用の調節のために好ましくは全て設計されており、上記部位は配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体もしくは相同体の少なくとも1つを含む。そのため、そのような化合物の分子設計の方法を準備することが本発明の重要な側面であり、上記方法は、FGFRと上述の結合部位を含むタンパク質の結合に関する構造的なデータを含み、上記データはFGFRとNCAMの間の相互作用の分子モデルを含む。
【0015】
さらに、少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用を調節することができる候補化合物の単離方法を準備することが本発明の重要な他の位置であり、ここで、少なくとも2つの異なるタンパク質の一方が機能性細胞表面レセプターか、その断片もしくは変異体に相当し、かつ、少なくとも2つの異なるタンパク質のもう一方が上記レセプターへの結合部位を有するポリペプチドに相当し、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む、そして上記アッセイが以下のステップ:
i) 先に規定されている上記候補化合物の連続スクリーニング方法を準備し、および/または
i) 先に規定されている上記候補化合物の分子設計方法を準備し、
ii) 上記候補化合物を単離する、
を含む。
【0016】
本発明は、配列番号2〜146に記載の配列をもつ一連のペプチド断片をさらに開示し、上記断片は、i) FGFRとの直接的な相互作用に関与するか、またはFGFRリガンド上のFGFR結合部位の一部を表し、および/またはii) 少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用を調節することができる、ここで、少なくとも2つの異なるタンパク質の一方が機能性細胞表面レセプターか、その断片もしくは変異体に相当し、かつ、少なくとも2つの異なるタンパク質のもう一方が上記レセプターに対する結合部位を有するポリペプチドに相当し、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む。
本発明は、上述のペプチド断片を含む化合物、および薬剤の準備のための上記化合物の使用にも関する。
【0017】
さらに、本発明は、以下の:
i) 細胞表面レセプターの結合部位を含むエピトープに結合することができる抗体(ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体もしくは相同体)、あるいは上記抗体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む;
ii) 配列番号1〜146に記載の配列、または上記抗体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含むエピトープに結合することができる抗体、
に関する。
【0018】
本発明は、上述の抗体の製造方法を同様に提供する。さらに、本発明は、以下の:
1) 細胞表面レセプター、またはその断片もしくは変異体と、上記レセプターに対する結合部位を有するポリペプチドの間の相互作用の調節のため、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む、
2) 薬剤の製造のため、および
3) サンプル中の、配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含むエピトープを含む物質の存在を測定するため、
に先に規定されている抗体の使用にも関連する。
【0019】
最後に、本発明は候補化合物を同定するステップ、さらに細胞表面レセプター、またはその断片もしくは変異体と、上記レセプターに対する結合部位を有するポリペプチドの間の相互作用の調節ができる化合物を、医薬として許容される担体または溶剤と一緒に処方するステップを含む医薬組成物の製造方法に関する、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む。
【0020】
表1は、NOE統計学、エネルギー条件、およびNMR計測から計算された理想的なジオメトリからの偏差の概要を表す。
【0021】
【化1】
【0022】
【化2】
【0023】
【化3】
【0024】
発明の詳細な説明
2つのタンパク質間の相互作用の調節方法
多細胞生物の細胞は、精巧なコミュニケーション・システムを使って互いにコミュニケートし、そして細胞環境の種々のシグナルに応答している。このシステムは、シグナルを受け取る細胞表面レセプターの分子と、細胞内にシグナルを導入し、そして伝える細胞表面および細胞内タンパク質の間の相互作用の見事に調整されたネットワークを利用することによって、1つの細胞が多数のシグナルに的確に反応することを可能にしている。このネットワークの1つの相互作用へのわずかな介入が、多くの場合、細胞外シグナルに対する特異的な細胞応答の大きな変化をもたらすかもしれない。
【0025】
それ故に、本発明は、1つの側面において、少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用を調節する方法に関する、ここで、上記少なくとも2つの異なるタンパク質の一方は、機能性細胞表面レセプター、またはその断片もしくは変異体に相当し、そして少なくとも2つの異なるタンパク質のもう一方は、上記レセプターに対する結合部位を有するポリペプチドに相当し、ここで、上記結合部位の少なくとも一部は、配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、または上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む、そして上記方法は、以下のステップ:
i) それによって上記レセプターと上記ポリペプチドの相互作用を妨害することができる、当該レセプターおよび/または当該ポリペプチドに相互作用する化合物を準備し、
ii) 上記少なくとも2つの異なるタンパク質にステップ(i)の化合物を提示する、
を含む。
【0026】
このように、機能性細胞表面レセプターともう1つのタンパク質の間の相互作用の調節は本発明の方法の最初の目的である。
本文脈において用語「相互作用」は、機能性細胞表面レセプターが一時的または永久的に、直接的または間接的に他のタンパク質と接触すること意味する。
【0027】
機能性細胞表面レセプター
細胞表面レセプターは、本発明の内容において、少なくとも1つのポリペプチド鎖を含むいずれかの分子と規定され、上記分子は、となるように細胞の原形質膜に会合している。上記分子が膜の外側でシグナルを受け取り、膜を通って上記シグナルを伝達し、そして、例えば分子複合体の会合または解離を誘発することによって、または生化学の反応、例えばレセプターの自動リン酸化、もしくは細胞内シグナル伝達の開始をもたらすレセプターのタンパク質分解性の分割、の開始によって細胞内の分子レベルへのある行動を誘発することによって、さらにシグナルを伝達する、ことを可能にする。
【0028】
本発明は、「機能性細胞表面レセプター」に対して規定する。「機能性細胞表面レセプター」は、本発明の細胞表面レセプターには特定可能なリガンドのグループがあり、細胞の生理学的な応答をもたらす上記レセプターへのこれらのリガンドの結合が細胞内のシグナル伝達を誘発することを意味する。
【0029】
生理学的な応答、例えば分化、増殖、生存、アポトーシス、または細胞の運動性は、上記レセプターとの相互作用に関与するリガンド、および/または相互作用の特性、例えば親和性、または継続時間、および/または上記レセプターを発現する細胞の種類、に依存する。用語「リガンド」は、レセプターに結合することができ、そしてそれによって上記レセプターを活性化する化合物と規定される。レセプターの「活性化」は、リガンドの細胞外結合後に、上記レセプターが「リガンド結合」の効果を、細胞の先に触れた生理学的な応答の1つをもたらす、「レセプターのシグナル伝達」または細胞内への「シグナル伝達」と集合的に呼ばれる生化学の反応のカスケードの中に伝えることが出来るようになること意味する。
【0030】
リガンド結合による細胞過程を誘発および/または維持する細胞表面レセプターの能力は、本明細書中においてレセプターの「生物学的機能」と呼ばれる。
【0031】
他のタンパク質を認識し、かつ、それと相互作用する)本発明の機能性細胞表面レセプターは、好ましい態様において、FGFR1、FGFR2、FGFR3、およびFGFR4を含む線維芽細胞成長因子レセプター(FGFRs)ファミリーのレセプターである。最も好ましい態様で、本発明の細胞表面レセプターは、FGFR1またはその機能性相同体である。
【0032】
用語「レセプターの機能性相同体」は、以下の:
i) FGFRのリガンドの細胞外結合、そしてそれによる、細胞内におけるレセプター依存性シグナル伝達カスケードの活性化、および/または
ii ) FGFRのアダプター分子の細胞内結合、そしてそれによる細胞内におけるレセプター依存性シグナル伝達カスケードの活性化、
が可能な分子を意味する。
【0033】
用語「結合」は、FGFR相同体と、FGFRに対する結合部位がある対分子(counter molecule)の間の直接的または間接的な相互作用を表す。本文脈で、対分子はFGFRの細胞外のリガンド、または細胞内アダプター分子である。「アダプター分子」は、本発明の内容において、レセプターの「活性化状態」を認識し、そのようなレセプターに選択的に結合して、シグナル伝達の反応のカスケードを誘発することによって細胞の「活性化されたレセプター」のシグナルを伝達する分子と規定される。細胞内アダプター分子は、例えばSTN、FRS、Grb、SHP2、PLCγ、またはPIP3によって表される。
【0034】
本発明は、FGFRに比較的に低い親和性をもつリガンドに関する。親和性は、分子間の誘引力の強さを意味する。本文脈のFGFRのリガンドは、FGFRに対する少なくとも1つの結合部位を含み、かつ、上記レセプターに低い親和性結合が可能である分子として判断される。このように、本発明により、細胞表面レセプターとの相互作用に関係する他のタンパク質がFGFRリガンドの1つの側面である。
【0035】
結合部位
本発明によると、細胞表面レセプターはレセプター結合部位を通して他のタンパク質と相互作用し、上記結合部位が上記他のタンパク質上に位置している。分子の結合部位は、他の分子との相互作用に関与する上記分子の特定の部分と規定されうる。本文脈で、「結合部位」は、その特異的な特徴が直接的、かつ、選択的に他の分子、例えばレセプター分子、と相互作用する能力を当該タンパク質に与える、タンパク質の断片と規定される。本文脈で「特定の機能」は、結合部位として言及される特定のアミノ酸配列またはタンパク質の断片の3次元構造と理解されている。本文脈中で、用語「選択的に」は、結合部位が特定の分子または特定のグループの分子との相互作用に関与することを意味し、上記分子は結合部位を認識し、そしてそれと相互作用できるようにする特定の構造を有する。
【0036】
1つの態様において、本発明は細胞表面レセプターに対する結合部位を特徴とする、ここで、少なくとも一部の上記結合部位が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含み、例えば上記断片、変異体、および相同体は以下に規定される。
【0037】
他の態様において、結合部位または上記結合部位の少なくとも一部が、配列番号1〜10、100、125、例えば配列番号2〜10、100、125に記載の配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む。本発明は、配列番号1〜10、100、125、または配列番号2〜10、100、125に記載の所定の配列の長さの少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%をもつ配列に関する、ここで、断片と所定の配列の間のアミノ酸配列相同性は100%である。本文脈の変異体は、配列番号1〜10、100、125または配列番号2〜10、100、125から選ばれる配列と、少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは95%の相同性を有するアミノ酸配列、あるいは配列番号1〜10、100、125または配列番号2〜10、100、125から選ばれる配列と比較して、少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは95%の正のアミノ酸一致があるアミノ酸配列、と規定される。
【0038】
正のアミノ酸一致は、2つの比較配列内の同じ位置をもつアミノ酸の物理的および/または化学的性質によって規定された同一性または類似性と規定される。本発明の好ましい正のアミノ酸一致は、K対R、E対D、L対M、Q対E、I対V、I対L、A対S、Y対W、K対Q、S対T、N対S、およびQ対Rである。一方のアミノ酸配列と他のアミノ酸との相同性は、上記2つの照合された配列の同じアミノ酸の百分率として規定される。本文脈の相同体は、所定の配列の物理的性質、例えば3次元構造、または機能性性質、例えば他の分子、特にレセプター分子との相互作用する能力を維持した、配列番号1〜10、100、125または配列番号2〜10、100、125に記載の配列のいずれかに、60%より低く19%より高い、例えば50〜59%、例えば55%、例えば40〜49%、例えば45%、例えば30〜39%、例えば35%、例えば20〜29%、例えば25%の相同性をもつアミノ酸配列と規定される。本文脈の相同体の変異体は、配列番号1〜10、100、125または配列番号2〜10、100、125から選ばれる配列のいずれかの相同体と比べて少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、好ましくは95%の正のアミノ酸一致を有するアミノ酸配列と規定される。正のアミノ酸一致の好ましい態様は、先に触れたとおり規定される。本発明は、先に規定される細胞表面レセプターと相互作用する所定の配列の能力を維持する断片、変異体、および相同体に関係する。
【0039】
さらに他の態様において、本発明は、配列番号1〜10、100、125または配列番号2〜10、100、125に記載の配列のいずれかの少なくとも1つの変異体、断片、または相同体を含む結合部位を特徴とすし、上記変異体、断片、または相同体は、配列番号11〜99、101〜124、126〜146に一致する配列から好ましくは選ばれている。
【0040】
先に記載された結合部位は、本発明によると特定の構造的な特徴によって特徴づけられる。好ましくは、本発明は、本質的に1以上の「ストランド−ループ−ストランド」構造モチーフから成る結合部位を特徴とする。
【0041】
隣接しているアミノ酸配列のアミノ酸側鎖は互いに相互作用する。多数の相互作用が、アミノ酸配列を特定の構造パターン、例えば配列のアミノ酸によって通常測定されるα-へリックスおよびβ-ストランド、への上記アミノ酸配列の折り畳みをもたらす。個々のパターンのアミノ酸の間の相互作用は、簡潔な3次構造に折り畳まれた、ポリペプチドの長いアミノ酸配列を保持する。3次構造において、ポリペプチドのアミノ酸配列は、折り返しを作り、それによりループ領域を作ることによって突然その方向を逆行させる、α-へリックスまたはβ-ストランドのいずれかとして、構造体全体を横切ってその前後に曲がる傾向にある。(長さが異なり、かつ、不規則な形をもちうる上記ループ領域は、多くの場合、他の分子の結合部位を形成する。本発明は、少なくとも1つのループ領域を含む結合部位に関係する。結合部位の少なくとも1つのループ領域が2つの相互作用しているβ−ストランドに接続し、それにより「ストランド−ループ−ストランド」構造モチーフを形成する場合、それが好ましい。当該内容における用語「モチーフ」は、特定の長さのアミノ酸の規定された配列を有する、および/または特定の構造的な特徴によって特徴づけられる、ならびに/あるいは(場合により)タンパク質のグループに一般的な特定の機能的能力を有する、タンパク質のポリペプチド鎖の単位を意味する。
【0042】
結合部位を含むポリペプチド
先に記載のとおり、α-へリックスとβ−ストランドは密に詰まり、そしてタンパク質の密に折り畳まれた3次構造を形成する。タンパク質が長い、例えば100アミノ酸より長い、アミノ酸配列を含む場合、その3次構造は、その各々がタンパク質ドメインと呼ばれる、数個のモジュラー単位から成るかもしれない。ドメインは、50〜350アミノ酸を含むポリペプチド鎖のセクションから通常成る。球状の構造体を作るのに限られた数のα-へリックスとβ−ストランドの組み合わせ方しかないので、これらの要素の特定の組み合わせが、これらのタンパク質にいくつかの共通の構造的な特徴を与える、関連した、および関連がないタンパク質のコアにおいて繰り返し生じる。本発明は、共通の構造的な特性を有する、構造的に関連するタンパク質と、構造的に関連がないタンパク質の両方のタンパク質を意図する。好ましい態様において、本発明は互いに相互作用することができる少なくとも2つの異なるタンパク質に関係する、ここで、上記少なくとも2つのタンパク質の少なくとも1つが、少なくとも2つの免疫グロブリン(Ig)様ドメイン、および/または少なくとも2つのフィブロネクチン・タイプ3(F3)ドメイン、または少なくとも1つのIg様ドメインと少なくとも1つのF3ドメインを含む。
【0043】
本発明によると、機能性細胞表面レセプターは他のタンパク質と相互作用する。好ましくは、本発明は細胞表面レセプターと異種タンパク質の間の相互作用に関連する。本文脈で用語「異種の」は、そのアミノ酸配列が上記レセプターのポリペプチド鎖のアミノ酸配列と最大40%の相同性および/または最大50%の正のアミノ酸一致を有するタンパク質を意味する。好ましくは、前記異種タンパク質自体はレセプターのあらゆる生物学的機能を実行することができない。好ましくは、異種タンパク質が細胞外タンパク質、または少なくともその一部が細胞外空間にさらされているタンパク質である。しかし、上記タンパク質が先に記載のレセプターに対する結合部位を含む場合、レセプターのポリペプチド鎖のアミノ酸配列と40%より高い相同性、および/または50%より高い正のアミノ酸の一致を有するあらゆる異種タンパク質であっても本発明の範囲内にある。
【0044】
本発明は、膜貫通、細胞表面関連、細胞外マトリックス関連、または可溶性タンパク質を含む群から好ましくは選ばれる、先に記載の結合部位を含む異種タンパク質に関連する。
【0045】
タンパク質は、そのタンパク質のポリペプチド鎖の少なくとも一部が細胞外に位置する場合、上記タンパク質のポリペプチド鎖の少なくとも一部が原形質膜貫通ドメインに相当する場合、かつ、上記タンパク質のポリペプチド鎖の少なくとも一部が細胞内に位置している場合、本文脈中で「膜貫通」と規定された、ここで、上記少なくとも1つの細胞外部分が少なくとも1つの膜貫通ドメインによって少なくとも1つの細胞内部分に接続する。
【0046】
本文脈で「原形質膜関連タンパク質」は、原形質膜と直接的または間接的な接触があるタンパク質と規定される。「直接的な」接触は、を意味する そのタンパク質に共有結合した部分、例えば脂質部分、例えばグリコシルホスファチジルイノシトールまたは脂肪酸部分、によって会合した膜と直に接続のある上記タンパク質である。「間接的な」接触は、そのタンパク質が複合体の状態、例えば他のタンパク質、リポ多糖、またはプロテオグリカン分子、で会合された、そのタンパク質が他の分子によって膜との接触をもつことを意味する。
【0047】
本文脈中で細胞外マトリックス関連タンパク質は、タンパク質、またはポリペプチド鎖を含む分子であって、化学結合を通しての細胞外マトリックスの成分に結合している上記タンパク質または上記分子、あるいは上記タンパク、または上記分子自体が細胞外マトリックスに隣接した成分であるものと規定される。
【0048】
本文脈の可溶性タンパク質は、細胞外空間の溶液中、遊離状態で存在するタンパク質、例えば、分泌タンパク質、膜関連タンパク質の細胞外タンパク質分解によって生じた脱落タンパク質、を意味する。
さらに、本発明は、上述のグループからの特定のポリペプチドを特徴とし、それらは好ましくは細胞接着分子、細胞表面レセプター、プロテオグリカン、膜アンカー型細胞表面タンパク質分解酵素、細胞外マトリックス分子、または成長因子から選ばれる。
【0049】
よって、1つの態様において、本発明のポリペプチドは以下のものを含む細胞接着分子群から選ばれる:
−神経細胞接着分子(NCAM)(Swiss-Prot Ass. Nos:P13591, P13595-01, P13595)、
−神経細胞接着分子L1(Swiss-Prot Ass. Nos:Q9QYQ7, Q9QY38, P11627, Q05695, P32004)、
−神経細胞接着分子-2(NCAM-2)(Swiss-Prot Ass. No:P36335)、
−ニューロングリア細胞接着分子(Ng-CAM)(Swiss-Prot Ass. No:Q03696; Q90933)、
−神経細胞接着分子CALL(Swiss-Prot Ass. No:O00533)、
【0050】
−ニューログリアン(Neuroglian)(Swiss-Prot Ass. No:P91767, P20241)、
−Nr-CAM(HBRAVO、NRCAM、NR-CAMs12).(Swiss-Prot Ass. Nos:Q92823, O15179, Q9QVN3)、
−アキソニン(Axonin)-1/TAG-1(Swiss-Prot Ass. Nos:Q02246, P22063, P28685)、
−アキソナル(Axonal)関連細胞接着分子(AxCAM)(NCBI Ass. No:NP_031544.1; Swiss Prot. Ass. No:Q8TC35)、
−ミエリン関連糖タンパク質(MAG)(Swiss-Prot Ass. No:P20917)、
−神経細胞接着分子BIG-1(Swiss-Prot Ass. No:Q62682)、
−神経細胞接着分子BIG-2(Swiss-Prot Ass. No:Q62845)、
【0051】
−ファシクリン(FAS-2)(Swiss-Prot Ass. No:P22648)、
−神経細胞接着分子HNB-3/NB-3(Swiss-Prot Ass. Nos:Q9UQ52, P97528, Q9JMB8)、
−神経細胞接着分子HNB-2/NB-2(Swiss-Prot Ass. Nos:O94779, P07409, P97527)、
−カドヘリン(Swiss-Prot Ass. No:Q9VW71)、
−接合部接着分子-1(JAM-1)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q9JKD5, O88792)、
−神経細胞接着F3/F11(Contactin)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q63198, P1260, Q12860, Q28106, P14781, O93250)、
−ニューロファシン(Neurofascin)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q90924, Q91Z60; O42414)、
−Bリンパ球細胞接着分子CD22(Swiss-Prot Ass. Nos:Q9R094, P20273)、
【0052】
−ネオゲニン(Neogenin)(NEO1)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q92859, P97603, Q90610, P97798)、
−細胞間細胞接着分子-5(ICAM-5/telencephalin)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q8TAM9, Q60625,または
−ガラクトース結合レクチン-12(ガレクチン-12)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q91VD1, Q9JKX2, Q9NZ03)、
−ガラクトース結合レクチン-4(ガレクチン-4)(Swiss-Prot Ass. No:Q8K419; P38552)、
またはその断片もしくは変異体。
【0053】
他の態様において、上記ポリペプチドは以下のものを含む機能性細胞表面レセプター群から選ばれる:
−線維芽細胞成長因子レセプター1(FGFR1)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q9QZM7, Q99AW7, Q9UD50, Q63827)、
−線維芽細胞成長因子レセプター2(FGFR2)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q96KM2, P21802, Q63241)、
−線維芽細胞成長因子レセプター3(FGFR3)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q95M13, AF487554, Q99052)、
−線維芽細胞成長因子レセプター4(FGFR4)(Swiss-Prot Ass. No:Q91742)、
−ニューロトロピン・チロシン・キナーゼタイプ-2(NTRKT-2)(Swiss-Prot Ass. No:Q8WXJ5)、
【0054】
−白血球抗原関係タンパク質−チロシン・ホスファターゼ(LAR-PTPRF)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q9EQ17, Q64605, Q64604, Q9QW67, Q9VIS8, P10586)、
−ネフリン(Swiss-Prot Ass. Nos:Q925S5, Q9JIX2, Q9ET59, Q9R044, Q9QZS7, Q06500)、
−タンパク質−チロシン・ホスファターゼ・レセプター・タイプS(PTPRS)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q64699, Q13332, O75870)、
−タンパク質−チロシン・ホスファターゼ・レセプター・タイプ・カッパ(R-PTP-kappa)(Swiss Prot Ass. No:Q15262)、
−タンパク質−チロシン・ホスファターゼ・レセプター・タイプD(PTPRD)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q8WX65, Q9IAJ1, P23468, Q64487)、
−EphrinタイプAレセプター8(EPHA8/チロシン−タンパク質キナーゼ・レセプターEKK)(Swiss-Prot Ass. Nos:O09127, P29322)、
【0055】
−EphrinタイプAレセプター3(EPHA8/チロシン−タンパク質キナーゼ・レセプターETK-1/CEK4)(Swiss-Prot Ass. No:P29318)、
−EphrinタイプAレセプター2(Swiss-Prot Ass. No:Q8N3Z2)、
−インシュリン・レセプター(IR)(Swiss-Prot Ass. No:Q9PWN6)、
−インシュリン様成長因子-1レセプター(IGF-1)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q9QVW4, P08069, P24062, Q60751, P15127, P15208)、
−インシュリン関連レセプター(IRR)(Swiss-Prot Ass. No:P14616)、
−チロシン−タンパク質キナーゼ・レセプターTie-1(Swiss-Prot Ass. Nos:06805, P35590, Q06806)、
−ラウンドアバウト・レセプター-1(robo-1)(Swiss-Prot Ass. Nos:O44924, AF041082, Q9Y6N7)、
【0056】
−神経細胞ニコチン性アセチルコリン・レセプターアルファ3サブユニット(CHRNA3)(Swiss Prot Ass. Nos:Q8VHH6, P04757, Q8R4G9, P32297)、
−神経細胞アセチルコリン・レセプターアルファ6サブユニット(Swiss-Prot Ass. Nos:Q15825, Q9ROW9)、
−血小板由来成長因子レセプターβ(PDGFRB)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q8R406, Q05030)、
−インターロイキン-6レセプター(IL-6R)(Swiss-Prot Ass. No:Q00560)、
−インターロイキン-23レセプター(IL-23R)(Swiss-Prot Ass. No:AF461422)、
【0057】
−IL-3、IL-5、およびGmCsfのβ−共通サイトカイン・レセプター(Swiss-Prot Ass. No:P32927)、
−サイトカイン・レセプター様分子3(CRLF1)(Swiss-Prot Ass. No:Q9JM58)、
−クラスIサイトカイン・レセプター(ZCYTOR5)(Swiss-Prot Ass. No:Q9UHH5)、
−ネトリン-1レセプターDCC(Swiss-Prot Ass. No:P43146)、
−白血球Fcレセプター様タンパク質(IFGP2)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q96PJ6, Q96KM2)、
−マクロファージ・スカベンジャー・レセプター2(MSR2)(Swiss-Prot Ass. No:Q91YK7)、または
−顆粒球コロニー刺激因子レセプター(G-CSF-R)(Swiss-Prot Ass. No:Q99062)、
またはその断片もしくは変異体。
【0058】
さらに別の態様において、前記ポリペプチドはプロテオグリカンの群から選ばれる。より好ましくは、前記プロテオグリカンはヘパラン硫酸プロテオグリカンを含む群から選ばれる。最も好ましい態様において、前記プロテオグリカンはパールカン(Swiss-Prot Ass. No:P98160)、またはその断片もしくは変異体である。
【0059】
前記ポリペプチドを膜アンカー型細胞表面タンパク質分解酵素の群から選ぶことが他の態様でもある。好ましくは、前記ポリペプチドは、以下のものを含むメタロプロテイナーゼのピトリライシン(pitrilysin)ファミリー、またはデスインテグリン(desintegrin)とメタロプロテアーゼ(ADAMs)のファミリーを含む群から選ばれる:
−ADAM-8(Swiss-Prot Ass. No:Q05910)、
−ADAM-19(Swiss-Prot Ass. Nos:Q9H013、O35674)、
−ADAM-8(Swiss-Prot Ass. No:P78325)、
−ADAM-12(Swiss-ProtAss. Nos:O43184, Q61824)、
−ADAM-28(Swiss-Prot Ass. Nos:Q9JLN6, Q61824, Q9XSL6, Q9UKQ2)、
−ADAM-33前駆体(Swiss-Prot Ass. Nos:Q8R533, Q923W9)、
−ADAM-9(Swiss-ProtAss. Nos:Q13433, Q61072)、
−ADAM-7(Swiss-Prot Ass. NoS:Q9H2U9, O35227, Q63180)、
−ADAM-1Aフェルチリン(Fertilin)アルファ(Swiss-Prot Ass. No:Q8R533)、
−ADAM-15(Swiss-Prot Ass. Nos:Q9QYVO, O88839, Q13444)、
−メタロプロテイナーゼ-デスインテグリン・ドメインを含むタンパク質(TECAM)(Swiss-Prot Ass. No:AF163291)、
−メタロプロテイナーゼ1(Swiss-Prot Ass. Nos:O95204, Q9BSI6)、
またはその断片もしくは変異体。
【0060】
さらに他の態様において、前記ポリペプチドは以下のものを含む細胞外マトリックス分子の群から選ばれる:
−タイプVIIコラーゲン(Swiss-Prot Ass. No:Q63870),
−フィブロネクチン(Swiss-Prot Ass.).Nos:Q95KV4, Q95KV5, P07589, Q28377, U42594, O95609, P07589, P11276)、または
−テネイシン(Tenascin)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q15568, O00531, P10039, Q90995)、
またはその断片もしくは変異体。
【0061】
よりさらに他の態様において、前記ポリペプチドは成長因子の群から選ばれる。最も好ましい態様において、前記成長因子はサイトカイン様ファクター-1(CLF-1)(Swiss-Prot Ass. No:075462)、またはその断片もしくは変異体である。
さらに他の態様において、前記ポリペプチドは可溶性タンパク質の群から選ばれる。最も好ましい態様において、前記可溶性タンパク質はSPLIT(Swiss-Prot Ass. NoQ9XYV4)である。
【0062】
最も好ましい態様において、前記ポリペプチドはSwiss-Prot Ass. Nos P13591, P13595-01,またはP13595に規定される配列を有する神経細胞接着分子(NCAM)である。
【0063】
文言上述のポリペプチドの「断片または変異体」は以下の:
(i) 所定のポリペプチドのアミノ酸配列から本質的に成るポリペプチド、ここで、上記ポリペプチドのアミノ酸配列の長さが上記所定のポリペプチドの長さより短いか、または長く、上記ポリペプチドが本発明に従って機能性細胞表面レセプターと相互作用することができる、および/または
(ii) 上記所定のポリペプチドのアミノ酸配列の少なくとも1つの断片、または上記所定のポリペプチドの配列に少なくとも60%の相同性を有する配列の断片、を含むポリペプチド、ここで、上記断片の長さが上記所定のポリペプチドの長さの少なくとも25%から成り、上記ポリペプチドが本発明に従って機能性細胞表面レセプターと相互作用することができる、および/または
(iii) 上記所定のポリペプチドについて先行技術に説明された特徴を本質的に有するポリペプチド、上記特徴は本発明に従って細胞表面レセプターと上記ポリペプチドの相互作用に不可欠である、および/または
(iv) 所定のポリペプチドについて先行技術に説明された特徴の1以上を欠いているポリペプチド、上記ポリペプチドは本発明に従って機能性細胞表面レセプターと相互作用することができる、
を意味する。
【0064】
そのような断片または変異体は、自然発生した上述のポリペプチドのアイソフォームの例によって制限されることなく、プロ−ポリペプチド、上述のポリペプチドのタンパク質分解性断片、上述のポリペプチド由来のアミノ酸配列を含む対応の組換えポリペプチド、または融合タンパク質から選ばれる。
【0065】
相互作用の親和性
2個の分子間のあらゆる相互作用が、2個の分子間の親和性の強さを意味するその親和性によって特徴づけられうる。相互作用の親和性は一般にKd、解離平衡定数、の値によって表される。Kdは、2個の分子間の解離率と結合率の比を反映し、それにより上記2個の分子の結合の強さの尺度を表す。結合が強いほど、Kd値はより低くなる。本発明は、細胞表面レセプターと他のタンパク質、例えば先に規定のもの、の間の低い親和性の相互作用に関する。本発明の低い親和性の相互作用は、10-3〜10-10の範囲の、例えば10-4〜10-8の範囲の、値をもつKdによって特徴づけられる。
【0066】
本発明によると、相互作用の親和性は表面プラスモン共鳴分析(SPR)または核磁気共鳴スペクトル法(NMR)によって測定される。
【0067】
相互作用の調節
2個の分子間の相互作用に関して、用語「調節」は、例えば相互作用の強さの低下または増加のいずれかといった相互作用の強さの変化を意味する。前記相互作用に依存する状況の変化に対する分子間相互作用の強さの的確な調整に重要である時、相互作用の調節がおこなわれる。例えば、レセプターとレセプター・リガンドの間の相互作用の強さの調節が、レセプター依存性シグナル伝達の調節を可能にし、そしてそれによって細胞の生理学的なステータスの調節を可能にする。
【0068】
「レセプター・シグナル伝達の調節」は、細胞外刺激によるレセプターの活性化に対する応答において細胞内で通常おこなわれるメッセンジャー分子カスケード産生の活性化または不活化を意味する。
【0069】
レセプターのシグナル伝達は、細胞の生理学的な応答をもたらす。従って、レセプターとレセプターのリガンドの間の相互作用の強さの調節、あるいは、いわゆる「レセプター刺激の強さ」は、レセプター・シグナル伝達の調節を可能にし、そしてそれによって、細胞の生理学的な応答の調節を可能にする。レセプターの刺激に対する細胞の応答が、例えばレセプターとリガンドの相互作用の親和性の値によって、および/またはそのような相互作用の継続時間によって特徴づけられうる、レセプター刺激の強さに依存していることが示された。相互作用している分子がその相互作用を調節することができる化合物にさらされた場合、相互作用の親和性も継続時間も影響されうる。
【0070】
化合物
本発明は、以下の:
i) 細胞表面レセプターと相互作用し、それによってそのレセプターとそのリガンドの相互作用を模倣すること、および/または
ii) 細胞表面レセプターと相互作用し、それによってそのレセプターとそのリガンドの相互作用を妨害すること、および/または
iii) 細胞表面レセプター・リガンドと相互作用し、それによってそのレセプター・リガンドとそのレセプターの相互作用を妨害すること、および/または
iv) 細胞表面レセプターおよびそのレセプター・リガンドと同時に相互作用し、それによって上記レセプターと上記レセプター・リガンドの相互作用を妨害すること、および/または
v) 細胞表面レセプターとそのレセプター・リガンドの間の相互作用の補助に関与する分子と相互作用し、それによって上記レセプターと上記レセプター・リガンドの相互作用を妨害すること、
が可能な化合物に関する。
【0071】
1つの側面において、本発明は、上記レセプターとリガンドの相互作用に関与するか、または上記リガンド分子のレセプター結合部位と相互作用することができる、レセプター上の部位と相互作用することができる化合物に関する。
【0072】
他の側面において、本発明は、そのような相互作用がそのレセプターとそのリガンドの相互作用を妨害することが推測されるレセプターまたはリガンドの他の部位に結合することができる化合物に関する。
【0073】
本発明は前述の結合ができるあらゆる化合物を特徴とする。しかし、本発明の好ましい化合物は、ペプチド、炭水化物、脂質、またはヌクレオチドを含む群から選ばれる。好ましい化合物の間で最も好ましいものはペプチドまたはヌクレオチド化合物である。
【0074】
従って、1つの態様において、本発明は、ヌクレオチド、ヌクレオチド相似体、ヌクレオチド誘導体、ヌクレオチドのジ-またはオリゴマー、またはヌクレオチド含有物質を含む群から選ばれた化合物に関する。好ましくは、ヌクレオチドは、ヌクレオチド三リン酸を含む群から選ばれる。より好ましくは、ヌクレオチド三リン酸は、UTP、GTP、CTP、TTP、およびATP、またはその相似体、誘導体、ジ-もしくはオリゴマー、あるいはそれを含有する物質を含む群から選ばれる。本発明の最も好ましいヌクレオチドは、ATPまたはその相似体である。ヌクレオチド相似体は、ヌクレオチド塩基または修飾ヌクレオチド塩基、糖残基または修飾糖残基、およびモノ-、ジ-、トリ-、クアドラ-、ペンタ-エステル群を含む。ヌクレオチド相似体がインビトロにおいて水性溶液中、高い安定性、および/または基質としてのヌクレオチドを利用することができる酵素を含む酵素システムの高い安定性を有する場合、それは本発明の好ましい態様の1つである。細胞の含有物はそのような酵素システムの例である。本発明は、安定したヌクレオチド三リン酸相似体に好ましくは関する、ここで、上記三リン酸エステル内の少なくとも1つのリン基が、他の化学基、例えばCH-、S-またはNH-基、を置換する。
【0075】
他の態様において、本発明は化合物に関連する。それはヌクレオチドを含む。より好ましい態様において化合物はそれについてATPか、相似体を含む。
【0076】
本発明のペプチド化合物は、先に規定された化合物に関する必要条件を満たす、いずれかの隣接アミノ酸配列であるかもしれない。好ましくは、ペプチド化合物は配列番号2〜10、100、125、または上記配列のいずれかに由来のペプチド断片に規定される配列の少なくとも1つを含む。本文脈において用語「由来する」は、上記ペプチド化合物が配列番号2〜10、100、125に規定される配列のいずれかの変異体、断片、または組み合わせ、あるいはその変異体または断片の組み合わせを含むアミノ酸配列によって表されうることを意味する。本発明は、配列番号2〜10、100、125に記載の所定の配列の、少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の長さを有する断片に関する、ここで、断片と所定の配列の間のアミノ酸配列相同性は100%である。
【0077】
本文脈における変異体は、配列番号2〜10、100、125から選ばれた配列と少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは95%の相同性をもつか、またはアミノ酸配列2〜10、100、125から選ばれた配列と比べて、少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは95%の正のアミノ酸の一致がをもつアミノ酸配列と規定される。あるアミノ酸配列と他のアミノ酸との相同性は、2つの照合された配列の同じアミノ酸の百分率として規定される。正のアミノ酸の一致は、2つの照合された配列の中で同じ位置を持つアミノ酸の物理的または化学的性質によって規定される同一性および/または類似性と規定される。本発明の正のアミノ酸一致は、K対R、E対D、L対M、Q対E、I対V、I対L、A対S、Y対W、K対Q、S対T、N対S、およびQ対Rである。アミノ酸配列の組み合わせは、上記配列のホモポリマーまたはヘテロポリマーのいずれかに相当する、ここで、上記ホモポリマーは配列番号2〜10、100、125から選ばれるいずれかの配列の1以上の繰り返しを含む配列を表し、かつ、上記ホモポリマーは配列番号2〜10、100、125から選ばれた少なくとも2つの異なる配列の1以上の繰り返しを含む配列によって表される。ホモポリマーまたはヘテロポリマーの配列の繰り返し数は、2〜20、例えば15、例えば2〜15、例えば10、例えば2〜10、例えば3、4、5、6、7、8、または9に変化するかもしれない。
【0078】
本発明の他の好ましいペプチド化合物は、配列番号11〜99、101〜124、126〜146から選ばれた配列、またはその断片、変異体もしくは相同体の少なくとも1つを含むものである。
【0079】
本発明によると、配列番号1〜146と同定された配列は、FGFRレセプター・リガンドの配列由来であり、そしてレ上記セプターと上記リガンドの相互作用に関与している。従って、配列番号1〜146から選ばれた配列のどれもがFGFRとFGFRリガンドの間の相互作用を調節することができると推測され、ここで、上記リガンドは本発明の結合部位を含む。
【0080】
本発明のペプチド化合物のアミノ酸配列は、アミノ酸配列の長さがそのペプチドの機能によって決定され、かつ、医薬組成物中へのその化合物の処方の点において、いずれかの好適な長さであるかもしれない。従って、前記化合物は、3〜100アミノ酸残基、例えば10〜90アミノ酸残基、例えば15〜85アミノ酸残基、例えば20〜80アミノ酸残基、例えば25〜75アミノ酸残基、例えば30〜70アミノ酸残基、例えば35〜65アミノ酸残基、例えば40〜60アミノ酸残基、例えば45〜55アミノ酸残基の範囲でアミノ酸残基を通常含む。
【0081】
他の側面において、ペプチド化合物は3〜20アミノ酸残基、例えば3〜19アミノ酸残基、例えば3〜18アミノ酸残基、例えば3〜17アミノ酸残基、例えば3〜16アミノ酸残基、例えば3〜15アミノ酸残基、例えば3〜14アミノ酸残基、例えば3〜13アミノ酸残基の範囲でアミノ酸残基を含む。
【0082】
さらに他の側面において、前記ペプチド化合物は、少なくとも6〜16個の隣接するアミノ酸、例えば7、8、9、10、11、12、13、14、または15個のアミノ酸の配列を含む。
【0083】
さらに他の側面において、ペプチド化合物のアミノ酸配列は、本発明の先に記載された結合部位のストランド−ループ−ストランド・モチーフに類似したストランド−ループ−ストランド折り畳みを形成することができる。
【0084】
本発明の化合物は、好ましくは、単量体のオリゴマー(多量体)の形式であり、ここで、各々の単量体は先に規定したようなペプチド化合物である。特に、デンドリマーのような多重結合ペプチドは、複数の柔軟なペプチド単量体の存在によって立体配座決定基またはクラスターを形成するかもしれない。1つの態様において、前記化合物は二量体である。より好ましい態様において、前記化合物はリジン骨格に連結したか、またはポリマー担体、例えばBSAのようなタンパク質担体に組み合わされた4つのペプチドのような、デンドリマーである。例えば、リジン骨格、例えば4つのペプチド、8つのペプチド、16個のペプチド、または32個のペプチドを担持するリジン・デンドリマーのように、重合、例えば反復配列、または様々な担体への接着が当該技術分野で周知である。他の担体は、脂溶性デンドリマー、または脂溶性誘導体よって形成されたミセル様担体、または星形(星のような)炭素鎖重合体コンジュゲートであるかもしれない。
【0085】
個々の単量体は同種であるかもしれない、すなわち、互いに同一であるか、または個々の単量体は異種であるかもしれない、すなわち互いに異なる。単量体の後者のタイプは、少なくとも2つの異なる単量体を含む。一般に、二量体および多量体は、2つ以上の同一単量体、互いに異なる2つ以上の単量体を含む。
【0086】
スクリーニング方法
少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用を調節することができる候補化合物のスクリーニング方法を提供することが本発明の重要な側面である、ここで、上記少なくとも2つの異なるタンパク質の一方が機能性細胞表面レセプター、またはその断片もしくは変異体に相当し、かつ、上記少なくとも2つの異なるタンパク質のもう一方が上記レセプターに対する結合部位を有するポリペプチドに相当し、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、またはその配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む、そして上記方法は以下のステップ:
i) 少なくとも2つの異なるタンパク質を準備し;
ii) 化合物を準備し;
iii) (ii)の化合物を(i)の少なくとも2つの異なるタンパク質に提示し;
iv) 候補化合物を上記タンパク質に提示する前後で上記少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用を測定し;
v) 上記少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用が提示された化合物によって調節されたかどうかを測定し;
vi) 上記少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用を調節することができる候補化合物を選ぶ、
を含む。
【0087】
本発明によるスクリーニング方法は、好ましい態様において、細胞表面レセプターとポリペプチド間の相互作用を調節することができる候補化合物の同定に関係する、ここで、上記レセプターはFGFRであり、ここで、上記ポリペプチドはFGFRリガンドである。より好ましくは、FGFRは、Swiss-Prot Seq Nos:Q9QZM7、Q99AVV7、Q9UD50、またはQ63827に規定されるアミノ酸配列を有するFGFR1、またはその断片もしくは変異体、あるいは上記レセプターの機能性相同体である。上記FGFRリガンドは、それらのポリペプチド鎖が先に記載の結合部位を含むFGFR1リガンドから好ましくは選ばれる。好ましいポリペプチドの例が先に述べられている。本発明のスクリーニング方法のための最も好ましいポリペプチドは、神経細胞接着分子、NCAM、であるSwiss-Prot Ass. Nos:P13591、P13595-01、またはP13595と規定されるアミノ酸配列、またはその断片もしくは変異体、その機能性相同体である。
【0088】
スクリーニング・アッセイ
レセプター−リガンド相互作用の調節は、当該技術分野で開発された多数のインビトロ・アッセイを使うことによって評価されうる。しかし、異なるレセプターとそれらのリガンドの間の相互作用を調節する候補化合物の能力の推測のためのこれらのアッセイの選定におけるいずれかの普遍的なアプローチがない。本発明は、少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用を調節することができる候補化合物の連続スクリーニングのためのアッセイを準備する、ここで、上記少なくとも2つの異なるタンパク質の一方が機能性細胞表面レセプター、またはその断片もしくは変異体に相当し、かつ、上記少なくとも2つの異なるタンパク質のもう一方が上記レセプターに対する結合部位を有するポリペプチドに相当し、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む、そして上記方法は、以下のステップ:
【0089】
i) 少なくとも1つの機能性細胞表面レセプター分子、またはその断片もしくは変異体、および上記レセプターに対する結合部位を有する少なくとも1つのポリペプチドを準備し、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体もしくは相同体、または上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む;
ii) ステップ(i)の少なくとも1つのレセプター分子をステップ(i)の少なくとも1つのポリペプチドに提示するか、またはステップ(i)の少なくとも1つのポリペプチドをステップ(i)の少なくとも1つのレセプター分子に提示し、そして上記レセプターと上記ポリペプチドの間で相互作用させ;続いて
iii) ステップ(ii)の分子間の相互作用を記録し;
iv) ステップ(ii)の分子に候補化合物を提示し;
v) ステップ(iv)の分子間の相互作用を記録し、続いて
vi) ステップ(iv)の分子間の相互作用に対する候補化合物の少なくとも1つの効果を評価し、続いて
vii) ステップ(i)の少なくとも1つの機能性細胞表面レセプター分子と、少なくとも1つのポリペプチドの間の相互作用を調節することができる化合物の選ぶ、
を含む。
【0090】
当該内容において、用語「相互作用させる」は、ステップ(ii)の条件が、その中で相互作用が有利に働く適当な媒体、および上記分子が相互作用することを可能にするのに十分に長い期間を含むことを意味する。
【0091】
上述のアッセイのステップ(ii)−(v)は、場合により以下のステップ:
(ii) 前記化合物をステップ(i)の少なくとも1つのレセプター分子に提示するか、または上記化合物をステップ(i)の少なくとも1つのポリペプチドに提示し、
(iii) ステップ(i)の少なくとも1つのポリペプチドを上記化合物とステップ(ii)のレセプターに提示するか、または上記少なくとも1つのレセプター分子を上記化合物とステップ(i)のポリペプチドに提示し、
(iv) ステップ(iii)の分子間の相互作用を記録する、
のとおり実施される。後者の選択肢が使用された場合、ステップ(iii)の分子間の相互作用が記録されないか、または記録された相互作用が上記化合物の不存在下の上記分子間の相互作用と比べて調節された場合、候補化合物が選ばれる。修飾されたアッセイを実施する前に、前記化合物の不存在下の前記レセプターと前記ポリペプチドの間の相互作用パラメーターを以下に記載の方法のいずれかを使って評価したと推定される。
【0092】
好ましくは、先に記載のアッセイは、FGFR1とFGFR1リガンドの間の相互作用の調節ができる候補化合物の連続スクリーニングのために本発明によって提供され、上記リガンドは、先に記載のポリペプチドの1つである。好ましい態様において、前記リガンドはNCAMである。
【0093】
アッセイ分子間の相互作用に対する候補化合物の効果の評価は、当該技術分野の従来の方法、例えば表面プラスモン共鳴分析(SPR)、核磁気共鳴分光法(NMR)、沈降分析、免疫沈降、2-ハイブリッド・システム、または共鳴エネルギー移動(BRETまたはFRET)、を使っておこなわれる。相互作用を調節することができる候補化合物は、前記レセプターと前記レセプター・リガンドの間の相互作用の強さを低下させる化合物、または相互作用の強さを増加させる化合物から選ばれうる。
【0094】
選択後に、本発明による候補化合物は、細胞の代謝に対する記録された調節の有意性を評価するためにインビボまたはインビトロの細胞系で試験される。1つの態様において、そのような系で、下流のシグナル伝達事件に関連する細胞表面レセプター、例えば下流タンパク質の活性化、を計測する。細胞表面レセプターとの相互作用に関係しているタンパク質がレセプターに似た分子に相当する場合、他の態様において、上記タンパク質に関係する下流シグナル伝達事件が計測されうる。従って、本発明は、上述のアッセイのステップ(vii)選ばれる化合物のスクリーニング方法をさらに提供し、上記方法は、以下のステップ:
viii) 少なくとも1つの機能性細胞表面レセプター分子、またはその断片もしくは変異体を提示する少なくとも1つの細胞、および上記レセプターに対する結合部位を有する少なくとも1つのポリペプチドに、上記選ばれた化合物(上述のアッセイのステップ(vii)の化合物)を提示し、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体を含む、
ix) ステップ(viii)の細胞に対する上記化合物の少なくとも1つの効果を評価する、
を含む。
【0095】
好ましくは、本発明は、以下の:
i) FGFR1チロシン・リン酸化;
ii) FGFRに関連するシグナル伝達経路のいずれかに関与する1以上の細胞内タンパク質、例えばSTAT1、JNK、PLCγ、ERK、STAT5、PI3K、PKC、FRS2、および/またはGRB2タンパク質、の活性化;および/または
iii) 細胞分化に関連する効果、
の推定から選ばれる、FGFR1に関連する下流シグナル伝達事件に関係する。
【0096】
FGFRシグナル伝達がFGFRのリン酸化レベルとして計測される時、リン酸化の程度は、対照値の少なくとも20%、例えば少なくとも20〜200%、例えば少なくとも50〜200%を上回る。本内容において対照値は、FGFRの活性化ができる化合物が不存在の媒体中のFGFRのリン酸化の程度を意味する。
【0097】
FGFRシグナル伝達の調節に関しての化合物の能率的な濃度を推定する時、上記濃度は、0.1〜1000 μM、1〜1000 μM、例えば1〜200 μM、例えば10〜200 μM、例えば20〜180 μM、例えば30〜160 μM、例えば40〜140 μM、例えば50〜130 μM、例えば60〜120 μM、例えば70〜110 μM、例えば80〜100 μMでありうる。
【0098】
例えば、細胞分化に関係する効果といった下流FGFRシグナル伝達効果の推定の場合、好ましくは、本発明は、細胞集合、小結節の形成、軟骨の形成、または上記効果の2以上に関連し(Listrum, G. P. et at. J. Histochem. Cytochem. 1999, 47:1-6)、そのような効果は、光学顕微鏡検査、比濁法、またはフローサイトメトリーで検出可能である。細胞分化に関連する効果は、骨シアロタンパク質(J. Bone Miner. Res. 1998, 13:1852-61; Genomics 1998, 53: 391-4)、またはタイプXコラーゲン(Cell Tissue Res. 1998, 293: 357-64)、ヒトILA遺伝子(Osteoarthritis Cartilage 1997, 5: 394-406)、またはタイプIIコラーゲン/またはMGP(J Miner Res. 1997: 1815.23)などのRNA発現あるいはタンパク質レベルの変化として同様に計測されうる。
【0099】
FGFRのチロシン・リン酸化、またはFGFRに関連する下流シグナル伝達分子、例えばSTST1、JNK、PLCγ、ERK、STAT5、PI3K、PKC、FRS2、および/またはGRB2タンパク質、のいずれかの活性化は、例えば活性化されたタンパク質に対する市販の抗体を使った免疫細胞化学、イムノブロッティング法、または免疫沈降、といったいずれかの従来法によっても推定されうる。活性化の程度は、対照値の少なくとも20%上回る/下回る、例えば少なくとも20〜200%、例えば少なくとも50〜200%、と推定される。対照値は、FGFRを活性化できる化合物の不存在下、媒体中の着目のタンパク質のリン酸化の程度として推定される。
【0100】
他の好ましい態様において、本発明はFGFRとの相互作用に関与するタンパク質に関係する下流シグナル伝達に関係し、上記タンパク質はFGFR1リガンドである。そのような下流シグナル伝達がレセプター連結型リガンドFGFR1に関係することが理解されていている。FGFR1のそのようなリガンドの好ましい態様が先に開示されている。そのようなリガンドが、いずれかの下流シグナル伝達カスケードに関連するか、あるいは潜在的に下流シグナル伝達カスケードに関係することができるタンパク質群を含むことは理解される。
最も好ましい本発明のFGFR1のレセプター連結型リガンドはNCAMである。
【0101】
従って、前記アッセイは、機能性FGFR1またはその機能性相同体の少なくとも1つの分子と、NCAMまたはその機能性相同体の少なくとも1つの分子を提示している少なくとも1つの細胞を含む、あらゆるインビボまたはインビトロの細胞系にさらに関係する。
【0102】
NCAM依存性シグナル伝達は、さまざまな下流分子に関与し、上記シグナル伝達によるそれらの活性化が計測される。特に、本発明は、局所接着キナーゼ、FAK、チロシン・キナーゼ、Fyn、および/またはサイクリックAMP応答性結合要素タンパク質、CREBの活性化の評価に関係する。リン酸化の程度は、対照値の少なくとも20%を上回る/下回る、例えば少なくとも20〜200%、例えば少なくとも50〜200%のように推定される。対照値は前記のとおり推定される。
【0103】
NCAM依存性シグナル伝達の活性化または阻害が、形態学的レベル、特に細胞分化に関係する効果、に対する細胞の応答を評価することによって同様に計測されうる。それ故に、他の特定の態様において、前記アッセイは、NCAM依存性細胞凝集、細胞運動性、神経突起生成、増殖、または生存に対する候補化合物の効果についての評価に関係する。
【0104】
当業者は、上述の細胞の応答を評価するために当該技術分野で発展した多数のアッセイから選ぶ。例えば、細胞凝集および神経突起生成は、Skladchikovaら(J.Neurosci.Res 1999、57:207-18)によって記載されるとおり評価される。増殖とアポトーシスは、製造業者の指示に従って、いずれかの市販のアッセイおよびキットを使うことによって評価される。
【0105】
神経突起生成に対する化合物の効果を評価することによってNCAM-FGFR1相互作用を調節することができる化合物を選ぶことは、本発明の好ましい態様である。従って、神経細胞分化が可能である神経の起源の細胞は本発明に好まれる。そのような細胞は、生物の神経系の選択領域から取り出されて、標準方法に従って培養によって維持された初代細胞から選ばれうるか、あるいは上記細胞は、異なる神経腫または発生初期の神経細胞から不死に形質転換されたクローン細胞であるかもしれない。そのような細胞の例が、ラット褐色細胞腫PC12、マウス神経芽細胞腫N2A、ヒト・テラトカルシノーマNT-2、またはマウス癌腫F9である。
【0106】
本発明において、対照細胞と比較したときに、それが培養細胞の神経突起の伸長を2倍にすることができる、例えば神経突起の伸長を3倍、例えば4倍、例えば5倍、例えば6倍に改善する場合、化合物が有望であるとみなされる。
【0107】
さらに、他の好ましい態様において、本アッセイは、FGFR1-NCAM相互作用を調節することによって細胞の生存を刺激/促進することができる化合物の選定に関係する。本文脈で用語「生存を刺激/促進する」は、用語「細胞死の予防」または「神経保護」と同じ意味で使用される。生存を刺激/促進することによって、病気を防ぐか、または神経変性の障害を患う個体の神経系のさらなる変性を防ぐことが可能である。「生存」は過程に言及する、ここで、本発明の化合物が変性から細胞を防ぐために使用されなければ高い確率で死滅する通常状況下で細胞が外傷を負わされ、および傷つけられ、それにより、上記外傷を負った細胞の生存を促進または刺激する。特に、本発明は神経起源の細胞の生存を促進または刺激することに関係する。
【0108】
前記アッセイの細胞培養は、神経起源ではない哺乳動物の細胞をさらに含むかもしれない。そのような細胞の例葉、例えばHEK293、COS7、CHO、またはTREX293を含む。当該技術分野で周知の方法(例えばFGFRおよび/またはNCAMの異なる変異体もしくは相同体、ならびに/あるいは本発明のFGFRの他の好ましいリガンドをコードしているDMA構成物による細胞の安定な、または一時的なトランスフェクションの方法)を使うことによってFGFRまたはNCAMの異なる変異体または相同体を発現するために、これらの細胞は望ましく形質転換される。そのような細胞は、候補化合物の選定のために、先に触れた下流分子の活性化の評価を使う時に有用であるかもしれない。
【0109】
候補化合物の分子設計方法
少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用を調節することができる化合物の分子設計方法を提供することが本発明のさらなる側面である、ここで、上記少なくとも2つの異なるタンパク質の一方が機能性細胞表面レセプター、またはその断片もしくは変異体に相当し、そして少なくとも2つの異なるタンパク質のもう一方が上記レセプターに対する結合部位を有するポリペプチドに相当し、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む、そして上記方法は、FGFRに対するNCAMの結合部位の構造的データの使用を含む。
【0110】
FGFRに対するNCAMの結合部位の構造的データに基づいて、本発明はFGFR1とNCAMの相互作用の分子モデルを準備する。本発明によって準備された構造的データは、アミノ酸配列モチーフと、これらの2つの分子の相互作用に関係している特別な構造的モチーフを開示する。
【0111】
それ故に、以下の:
i) 少なくとも6〜16個の隣接するアミノ酸の配列を含み、そして
ii) 配列番号1に対して、少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは95%の配列相同性を持ち、および/または
iii) 配列番号1に対応するペプチド断片の構造的な特徴に類似した3次元特性、例えばストランド−ループ−ストランド折り畳みを有するペプチド断片、ここで、上記アラインされたペプチド断片間の配列相同性が少なくとも40%であり、および/または正のアミノ酸一致が少なくとも50%である、
のペプチド断片は、FGFRとNCAMの間の相互作用の調節ができる候補化合物と本発明によって考えられる。さらに、配列番号2〜146に規定される配列のいずれかに対し少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは95%の配列相同性を有するペプチド断片は可能性がある候補化合物としての本発明によって考えられ、そしてFGFRと先に記載のFGFR結合部位をもつタンパク質の間の相互作用の調節能力に関するスクリーニング・アッセイにおけるスクリーニングのために本発明で指定されている。
【0112】
候補化合物の同定方法
先に記載のスクリーニングおよび分子設計の方法により、少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用を調節することができる候補化合物が単離され、そして医薬組成物の処方のために使用されうる、ここで、上記少なくとも2つの異なるタンパク質の一方が機能性細胞表面レセプター、またはその断片もしくは変異体に相当し、かつ、少なくとも2つの異なるタンパク質のもう一方が上記レセプターに対する結合部位を有するポリペプチドに相当し、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む。
【0113】
このように、本発明は以下の:
− 少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用を調節することができる候補化合物を単離する方法、ここで、上記少なくとも2つの異なるタンパク質の一方が機能性細胞表面レセプター、またはその断片もしくは変異体に相当し、かつ、少なくとも2つの異なるタンパク質のもう一方が上記レセプターに対する結合部位を有するポリペプチドに相当し、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む、そして上記方法は以下のステップ:
i) 先に規定されている候補化合物の連続スクリーニング方法を提供し、および/または
ii) 先に規定されている候補化合物の分子設計方法を提供し、
iii) 上記候補化合物を単離する、
を含む;
【0114】
− 候補化合物の単離するステップ、そして医薬として許容される担体または溶剤と一緒に、細胞表面レセプター、またはその断片もしくは変異体と、上記レセプターに対する結合部位を有するポリペプチドの間の相互作用を調節することができる化合物の処方するステップをさらに含む医薬組成物の製造方法、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む、
を提供する。
【0115】
ペプチド断片
先に記載の方法および/または本発明のアッセイの使用によって、FGFRと、先に記載のFGFR結合部位を有するタンパク質の間の相互作用を調節することができるペプチド断片が同定されうる。本発明により、1つの態様において、これらのペプチド断片は2〜146の番号を付けられ、以下の配列表:
【0116】
【化4】
【0117】
【化5】
【0118】
【化6】
【0119】
【化7】
【0120】
【化8】
【0121】
に開示されるアミノ酸配列、またはその変異体、断片、もしくは相同体の少なくとも1つを含む、最大で100アミノ酸を有するペプチド断片である。
【0122】
本発明によると、1つの態様において、ペプチド化合物は前述の配列の少なくとも1つを含む。他の態様において、前記化合物は前述の配列の少なくとも1つを本質的に含む。さらに他の態様において、前記化合物は前述の配列の少なくとも1つから成る。
前述の配列の断片、変異体、および相同体は、先に記載のペプチド化合物の断片、変異体、および相同体のための基準に従って規定される。
薬剤の製造のために1以上の前述のアミノ酸配列を提供することが本発明の目的である。
本発明の他の目的は、抗体の製造のために抗原エピトープとしての前述の配列を使うことである。
【0123】
抗体
本発明の結合部位を含むエピトープに選択的に結合することができる抗体を提供することが本発明の目的である。従って、本発明は、以下の:
1)配列番号1〜10、100、125に記載の配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体のいずれか、ここで、
i) 断片は、配列番号1〜10、100、125に記載の所定の配列の長さの少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%を有するアミノ酸配列と規定される、ここで、断片と上記所定の配列の間のアミノ酸配列相同性は100%であり、
ii) 変異体は配列番号1〜10、100、125から選ばれた配列に対して少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは95%の相同性を有するアミノ酸配列、または配列番号1〜10、100、125から選ばれた配列と比べて正のアミノ酸一致が少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくはより少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは95%のアミノ酸配列と規定される、ここで、正のアミノ酸一致は、2つの比較されている配列で同じ位置を持つアミノ酸の物理的および/または化学的性質によって規定された同一性または類似性として規定される。本発明の好ましい正のアミノ酸一致は、K対R、E対D、L対M、Q対E、I対V、I対L、A対S、Y対W、K対Q、S対T、N対S、およびQ対Rである。あるアミノ酸配列と他のアミノ酸の相同性は、2つの照合された配列の同じアミノ酸の百分率と規定され、
【0124】
iii) 相同体は、所定の配列の物理的特徴、例えば3次元構造、のいくつか、または機能的特徴、例えば他の分子、特にレセプター分子と相互作用する能力、のいくつかを維持している、配列番号1〜10、100、125に記載の配列のいずれかに対して60%未満-19%超、例えば50〜59%、例えば55%、例えば40〜49%、例えば45%、例えば30〜39%、例えば35%、例えば20〜29%、例えば25%の相同性を有するアミノ酸配列と規定され、
iv) 相同体の変異体は、配列番号1〜10、100、125から選ばれた配列のいずれかの相同体と比べて少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは95%の正のアミノ酸一致を有するアミノ酸配列と規定される、ここで、正のアミノ酸は先に規定されているとおりである;および/または
【0125】
2)配列番号11〜99、101〜124、126〜146と規定される配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体のいずれか、ここで、前記の上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体先のとおり規定される、および/または
3)ペプチド断片は、配列番号1に対応するペプチド断片の構造的な特徴に類似した構造的な特徴、例えばストランド−ループ−ストランド折り畳み、を有する、ここで、アラインされたペプチド断片の間の配列相同性は少なくとも40%であり、および/または正のアミノ酸一致が少なくとも50%である、
を含むエピトープに選択的に結合することができるあらゆる抗体に関連する。
【0126】
1つの態様において、抗体は、細胞表面レセプター機能を、当該レセプターへのそのリガンドの結合を調節することによってそのレセプターを活性化するリガンドの能力を低下または上昇させることによって調節することができる。本文脈において「結合を調節する」は、リガンドレセプター相互作用の親和性および/または強さを増加/減少させる抗体の能力を意味する。より好ましい態様において、抗体は、FGFRリガンドの前述のエピトープに結合することができ、それによってFGFRの活性化を調節することができる。本文脈において「調節する」は、レセプターの活性化を促進するかまたは抑制することを意味する。これらのFGFRリガンドについての好ましい態様は先に記載されている。
【0127】
他の態様において、前記抗体は、そのレセプターに対するそのリガンドの結合を妨害することによって細胞表面レセプター・リガンドの生物学的機能を調節することができる。この態様は、以下の:
(i) FGFRから独立したレセプター分子であるかもしれない、および/または
(ii) FGFRシグナル伝達が阻害された場合、代替レセプターを使うかもしれない、および/または
(iii) いずれの下流シグナル伝達にも関係しない追加の生物学的機能を有するかもしれない、
FGFRリガンドに関係する。
本発明のエピトープを含むそのようなリガンドの好ましい態様が先に記載されている。
【0128】
本発明の結合部位を含むポリペプチド断片は、本発明において有用な抗体を作製するために使われる。そのペプチド断片が配列番号1〜146に規定される配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体先に記載の抗体を作製するための使用に好ましい。一般に、ペプチドは、Ausubelら(上記)に記載のとおり、KLHのような担体タンパク質と組み合わされ、アジュバントと混ぜられて、宿主哺乳動物に注入される。そのようなポリペプチドまたはペプチド断片を、先に記載のとおり、組換え技術によって製造することができるか、または合成することができる(例えば、"Solid Phase Peptide Synthesis,"(上記); Ausubel et al.,(上記)を参照のこと)。また前記担体は、PPDであるかもしれない。抗体をペプチド抗原親和クロマトグラフィで精製することができる。
このように、本発明は、配列番号1〜146に規定される配列から選ばれた少なくとも1つの配列を含むペプチド断片を動物に投与することを含む抗体の製造方法に関係する。
【0129】
特に、様々な宿主動物が前述のペプチド断片の注射によって免疫されることができる。宿主動物は、ウサギ、マウス、モルモット、ラット、およびニワトリを含む。免疫応答を高めるために使用されうる様々なアジュバントは、宿主の種に依存し、そして(完全、および不完全)フロインド・アジュバント、無機質ゲル、例えば水酸化アルミニウム、表面活性剤、例えば、リゾレシチン、プルロニック(pluronic)ポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシアニン、およびジニトロフェノール、を含む。潜在的に有用なヒト・アジュバントは、BCG(カルメット・ゲラン桿菌)およびコリネバクテリウム・パルヴム(Corynebacterium parvum)を含む。免疫処置は、FGFRリガンド、または結合部位に対応するその断片をコードしているDNAの注射によっても実行されうる。ポリクローナル抗体は、免疫された動物の血清中に含まれる抗体分子の異種集団である。
【0130】
従って、本発明の中の抗体は、ポリクローナル抗体を含み、さらに、モノクローナル抗体、ヒト化またはキメラ抗体、単鎖抗体、Fab'断片、F(ab')2断片、およびFab発現ライブラリを使って製造された分子、ならびにファージ・ディスプレイ技術によって製造された抗体または断片を含む。
【0131】
特定の抗原に対する抗体の同種集団であるモノクローナル抗体は、前述の結合部位を含んでペプチド断片および標準的なハイブリドーマ技術を使って準備できる(例えば、Kohler et al., Nature 256:495, 1975; Kohler et al., Eur. J. Immunol. 6:511, 1976; Kohler et al., Eur. J. Immunol. 6:292, 1976; Hammerling et al., "Monoclonal Antibodies and T Cell Hybridomas," Elsevier, NY, 1981; Ausubel et al.,(上記)を参照のこと)。
【0132】
特に、モノクローナル抗体は、例えばKohlerらのNature 256:495, 1975および米国特許第4,376,110号;the human B-cell hybridoma technique(Kosbor et al., Immunology Today 4:72, 1983; Cole et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:2026, 1983)、およびEBVハイブリドーマ技術(Cole et al., "Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy," Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96, 1983)に記載の培養による継代細胞株による抗体分子の産生を提供するいずれかの技術によっても得ることができる。そのような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgDを含むいずれかの免疫グロブリン・クラス、およびいずれかのサブクラスであるかもしれない。(ニワトリの場合に、免疫グロブリン・クラスがIgYである可能性もある。)本願発明のmAbを生じるハイブリドーマは、インビトロまたはインビボで培養される。インビボにおける高い力価のmAbsを産生する能力は、これを現在好ましい製造方法にするが、しかしいくつかの場合、例えば、腹水から生じた正常な免疫グロブリンの存在が望ましくない場合、または倫理的な検討事項を伴う場合、において、インビトロ産生が癌細胞を生きた動物に導入することを避けるために好ましいであろう。
【0133】
一度産生された、ポリクローナル、モノクローナル、またはファージ由来抗体は、例えば、Ausubelら、上記に記載のとおり、結合部位またはその断片を含むポリペプチドを含むサンプルのウェスタンブロットまたは免疫沈殿によって、前述のエピトープの特異的な認識を試験される。FGFRリガンドを特異的に認識し、そして結合する抗体は本発明に有用である。例えば、そのような抗体は、個体から収集されたサンプルの中FGFRリガンドの発現レベルを観察する免疫学的測定法に使用されることができる。
【0134】
いくつかのケースで、抗血清の低い親和性または特異性の潜在的な問題を最小限にすることが望ましいかもしれない。そのような情況で、2または3の融合物を各々のタンパク質について作製することができ、そして各々の融合物を少なくとも2匹の動物に注入することができる。抗血清は、好ましくは少なくとも3回の追加免疫注射を含む、一連の注射によって産生させることができる。免疫された動物由来の脾臓細胞がモノクローナル抗体の作製に使用されうる。
【0135】
先に規定されたエピトープに結合することができる抗体は、サンプル中の、配列番号1〜146に規定された配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含むエピトープを含む物質を測定するために使用されうる。前記サンプルは、物質、例えば物質または生物学的サンプルの溶液、を含むあらゆるサンプルでもあるかもしれない。ピトープを含む物質は、天然または合成起源であるかもしれない。そのような物質の例は、これだけに制限されることなく、エピトープを含む化合物を含む細胞、エピトープを含む化合物、エピトープから成る化合物を含む。エピトープを含む化合物を含む細胞は、例えば本発明の細胞表面レセプターのリガンドを発現する細胞であるかもしれない。そのようなリガンドの例は、先に記載されている。エピトープを含む化合物は、先に記載の化合物であるかもしれない。
【0136】
前述の抗体は、例えば生物学的サンプル中のFGFRリガンドの検出に使用されうる。前記抗体は、例えば診断アッセイの一部としてFGFRの活性を計測するためのスクリーニング・アッセイにも使用されうる。検出技術に依存して、抗体は、検出可能なマーカーを含む化合物と組み合わされる。前記マーカーまたは標識は、当該技術分野で知られているあらゆるマーカーおよび標識から選ばれうる。前記抗体は、エピトープを含む物質、あるいは上記物質または上記エピトープの溶液中のエピトープの濃度を測定するためにも使用されうる。広い範囲の検出および標識技術が当該技術分野で現在利用可能であり、従って、上記技術は、抗体を実施している当業者、またはその使用目的に依存して選ばれうる。
【0137】
さらに、適当な生物活性のヒト抗体分子由来の遺伝子と一緒の適当な抗原特異性のマウス抗体分子由来の遺伝子のスプライシングによる、「キメラ抗体」の製造のために開発された技術(Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851, 1984; Neuberger et al., Nature, 312:604, 1984; Takeda et al., Nature, 314:452, 1984)が使用されることができる。キメラ抗体は、その中の異なる部分が異なる動物種由来である分子、例えばマウスmAb由来の可変領域と、ヒト免疫グロブリン不変領域を有するもの、である。
【0138】
あるいは、単鎖抗体の製造について記載された技術(米国特許第4,946,778号、同第4,946,778号、および同第4,704,692号)は、FGFRリガンドまたはその断片に対する単鎖抗体を製造するために適合されうる。単鎖抗体は、単鎖ポリペプチドを生じる、アミノ酸架橋によるFv領域の重鎖および軽鎖断片の連結によって形成される。
【0139】
特定のエピトープを認識し、そして結合する抗体断片は、知られている技術によって産生されうる。例えば、そのような断片は、これだけに制限されることなく、抗体分子のペプシン消化によって製造されることができるF(ab')2断片、およびF(ab')2断片のジスルフィド架橋の還元によって産生されうるFab'断片を含む。あるいは、所望の特異性を有するモノクローナルFab'断片を迅速に、かつ、簡単に同定するために、Fab'発現ライブラリが、構築されうる(Huse et al., Science, 246:1275, 1989)。
【0140】
当該技術分野で知られている方法によって抗体をヒト化することができる。例えば所望の結合特異性を有するモノクローナル抗体を、商業的にヒト化することができる(Scotgene, Scotland; Oxford Molecular, Palo Alto, CA)。完全なヒト抗体、例えばトランスジェニック動物で発現されたものは、本発明の特徴でもある(Green et al., Nature Genetics 7:13-21, 1994;同様に米国特許第5,545,806号および同第5,569,825号を参照のこと、上記文献の両方を本明細書中に援用する)。
【0141】
ポリペプチドとペプチド断片の製造
本発明のポリペプチドおよびペプチド断片は、当該技術分野で知られているいずれかの好適な従来法によって準備されうる。本発明のペプチド断片およびポリペプチドは、化学的に合成されうるか(例えば、Creighton, "Proteins:Structures and Molecular Principles," W.H. Freeman & Co., NY, 1983を参照のこと)、またはおそらく、より有利には、本明細書中に記載の組換えDNA技術によって製造されうる。追加の手引きのために、当業者は、Ausubelら(上記)、Sambrookら("Molecular Cloning, A Laboratory Manual," Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989)、および特に化学合成の例に関してGait、M.J. Ed、("Oligonucleotide Synthesis," IRL Press, Oxford, 1984)を調べることができる。
【0142】
組換え分子
先に記載の方法およびアッセイの全てが、少なくとも2つの相互作用しているタンパク質を準備するステップを含む。
【0143】
本発明の方法およびアッセイの2つの相互作用しているタンパク質は、好ましくは組換えタンパク質である。従って、追加の態様において、本発明は、相互作用しているタンパク質をコードするDNA塩基配列を含む発現ベクター、および先の発現ベクターのいずれかを含む遺伝子操作された宿主細胞、そしてそれによって宿主細胞における本発明の核酸分子の発現、を取り囲む。
【0144】
発現ベクターの好ましい態様は、以下の:
(a) FGFR1、FGFR2、FGFR3、およびFGFR4を含む先のFGFRs、またはFGFRリガンド関連コード配列のいずれかを含む発現ベクターであって、上記FGFRリガンドは先に記載の本発明の好ましいポリペプチド、および/またはその相補体(すなわち「アンチセンス」配列)から選ばれる上記発現ベクター;
(b) 上記コード配列の発現に対する制御因子(その例は以下に与えられる)に使用可能なように結合された前述の突然変異を含む、先のFGFRsまたはFGFRリガンド関連コード配列のいずれかを含む発現ベクター;および
(c) 突然変異FGFRsまたはFGFRリガンドをコードする配列に加えて、例えばレポーターまたはマーカーをコードしている分子といったFGFRsまたはFGFRリガンドをコードする核酸配列に関係がない核酸配列を含む発現ベクター、
である。
【0145】
組換えの核酸分子は、突然変異FGFRsまたはFGFRリガンド、可溶性FGFRsまたはFGFRリガンド、切断型FGFRsまたはFGFRリガンド、あるいはFGFRsの機能性ドメイン、例えばFGFR1のIg2もしくはIg3ドメイン、またはFGFRリガンドのドメイン、例えばNCAMのドメイン、例えばIg様もしくはF3タイプ・ドメインをコードする配列を含む。全長突然変異ポリペプチド、FGFRsまたはFGFRリガンドのドメイン、またはその断片が以下に記載の追加のポリペプチドに融合されうる。
【0146】
先に言及された制御因子は、これだけに制限されることなく、当該技術分野で当業者に知られる、そして遺伝子発現を行うかもしくはそれ以外に制御する、誘導性および非誘導性プロモーター、エンハンサー、オペレーター、および他の分子を含む。そのような制御因子は、これだけに制限されることなく、サイトメガロウイルスhCMV早期初期遺伝子、SV40アデノウイルスの初期または後期プロモーター、lac系、trp系、TAC系、TRC系、ファージAの主なオペレーターおよびプロモーター領域、fdコート・タンパク質の管理領域、3-ホスホグリセラート・キナーゼのプロモーター、酸性ホスファターゼのプロモーター、ならびに酵母接合因子のプロモーターを含む。
【0147】
同じように、核酸は追加のポリペプチド配列、例えばマーカーまたはレポーターとして機能する配列、をコードするハイブリッド遺伝子の一部を形成することができる。マーカーまたはレポーター遺伝子の例は、-ラクタマーゼ、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ(CAT)、アデノシン・ジアミナーゼ(ADA)、アミノグリコシド・ホスホトランスフェラーゼ(neor、G418r)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ(HPH)、チミジン・キナーゼ(TK)、lacZ(-ガラクトシダーゼをコードした)、緑色蛍光性タンパク質(GFP)、およびキサンチン・グアニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ(XGPRT)を含む。本発明の実施に関係する標準的な手順の多くと同様に、当業者は追加の有用な試薬、例えばそれがマーカーまたはレポーターの機能を担うことができる追加の配列、に気付くであろう。一般的に、ハイブリッド・ポリペプチドは第1の部分と第2の部分を含む;上記第1の部分は、例えばFGFR1またはNCAMアミノ酸配列の部分であり、そして上記第2の部分は、例えば先に記載のレポーターもしくは免疫グロブリン重鎖である。
【0148】
本発明の目的のために使用される発現系は、これだけに制限されることなく、以下の:
本発明の核酸分子を含む、組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDMA、またはコスミドDNA発現ベクターによって形質転換された、微生物、例えば細菌(例えば、E.コリ(E.coli)およびB.サブチリス(B.subtills));
FGFR1をコードする核酸分子、またはNCAMをコードする核酸配列を含む組換え酵母発現ベクターによって形質転換された酵母(例えば、サッカロミセス・ピチア(Saccharomyces Pichia);
本発明の核酸分子を含む組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)を感染させた昆虫細胞系;
FGFRヌクレオチド配列を含む、組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワー・モザイク・ウイルス(CaMV)、およびタバコ・モザイク・ウイルス(TMV))を感染させたか、または組換えプラスミド発現ベクター(例えばTiプラスミド)によって形質転換された植物細胞系;あるいは
哺乳動物細胞のゲノム由来のプロモーター(例えば、メタロチオネイン・プロモーター)、または哺乳動物のウイルス(例えば、アデノウイルス後期プロモーターおよびワクチニア・ウイルス7.5 Kプロモーター)由来のプロモーターを含む組換え発現構築物を包含する哺乳動物細胞(例えば、COS、CHO、BHK、293、VERO、HeLa、MDCK、WI38、およびNIH3T3細胞)、
を含む。
【0149】
細菌の系において、発現される遺伝子産物の意図される用途に依存して、多数の発現ベクターが有利に選ばれうる。そのようなベクターは、これだけに制限されることなく、融合タンパク質が産生されるように、挿入断片のコード配列がlacZコード領域と一緒にフレーム単位でベクター内に個々に連結されうるE.コリ発現ベクターpUR278(Ruther et al., EMBO J. 2:1791, 1983);pINベクター(Inouye and Inouye, Nucleic Acids Res. 13:3101-3109, 1985; Van Heeke and Schuster, J. Biol. Chem. 264:5503-5509, 1989);などを含む。同様に、pGEXベクターがグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として外来ポリペプチドを発現するために使用される。一般に、そのような融合タンパク質は可溶性であり、そしてグルタチオン−アガロース・ビーズへの吸着、続くフリーのグルタチオン存在下での溶出によって溶解細胞から容易に精製することができる。前記pGEXベクターは、クローン化されたターゲット遺伝子産物をGST部分から放出することができるようにトロンビンまたはファクターXaプロテアーゼ分割部位を含むように設計されている。
【0150】
昆虫の系において、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographacalifornica)核多角体病ウイルス(AcNPV)を、外来遺伝子を発現するためのベクターとして使用することができる。前記ウイルスは、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞中で増殖する。挿入断片のコード配列は、ウイルスの必須ではない領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)内に別個にクローン化され、AcNPVプロモーター(例えば、ポリヘドリン・プロモーター)の管理下に置かれる。コード配列の成功した挿入は、ポリヘドリン遺伝子の不活化と、非閉塞組換えウイルス(すなわち、ポリヘドリン遺伝子によってコードされたタンパク性コートを欠いたウイルス)の産生をもたらす。これらの組換えウイルスは、そこで挿入された遺伝子が発現されるスポドプテラ・フルギペルダ細胞の感染に使用される(例えば、Smith et al., J. Virol. 46:584, 1983;Smith,米国特許第4,215,051号を参照のこと)。
【0151】
哺乳動物の宿主細胞において、多数のウイルス・ベースの系が利用されうる。アデノウイルスが発現ベクターとして使用される場合、本発明の核酸分子はアデノウイルス転写/翻訳管理複合体、例えば、後期プロモーターおよびトリパータイト・リーダー配列、に連結されうる。そして、このキメラ遺伝子は、インビトロまたはインビボの組換えによってアデノウイルス・ゲノム内に挿入される。ウイルス・ゲノムの必須でない領域(例えば、E1またはE3領域)への挿入は、生き残ることができ、かつ、感染宿主内でFGFR遺伝子産物を発現することができるウイルスをもたらす(例えば、Logan and Shenk, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3655-3659, 1984を参照のこと)。同様に特定の開始シグナルが挿入された核酸分子の効率的な翻訳のために必要とされる。これらのシグナルは、ATG開始コドンおよび隣接配列を含む。全遺伝子、またはそれ自身の開始コドンおよび隣接配列を含むcDNAが適切な発現ベクターに挿入された場合、追加の翻訳調節シグナルは必要とされない。しかし、コード配列の一部だけが挿入された場合、多分ATG開始コドンを含む外因性の翻訳調節シグナルが提供されなければならない。さらに、挿入断片全体の翻訳を確実にするために、前記開始コドンは所望のコード配列の読み取り枠と同じ位相になくてはならない。これらの外来翻訳調節シグナルおよび開始コドンは、天然および合成の種々の起源であるかもしれない。発現の効率は、適当な転写エンハンサー因子、転写ターミネータなどの包含によって高められうる(Bittner et al., Methods in Enzymol. 153:516- 544, 1987を参照のこと)。
【0152】
さらに、挿入された配列の発現を調節する宿主細胞株が選ばれるか、または所望の特異的な様式によって遺伝子産物を修飾、および加工する。タンパク質産物のそのような修飾(例えば、グリコシド化)および加工(例えば、分割)は、タンパク質の機能にとって重要である。異なる宿主細胞は、タンパク質および遺伝子産物の翻訳後加工および修飾のための特徴的なおよび独自の機構をもつ。発現された外来タンパク質の正しい修飾および加工を確実にするように、適当な細胞株または宿主系を選出することができる。このために、一次転写、遺伝子産物のグリコシド化、およびリン酸化の適当な加工のための細胞機構を有する真核宿主細胞が使用されうる。先に列挙された哺乳動物細胞型は、好適な宿主細胞としての役割を担うことが可能なものに含まれる。
【0153】
組換えのタンパク質の長期の、高い収率での産生のために、安定した発現が好ましい。例えば、FGFR配列または先に記載のFGFRリガンド配列のいずれかを安定に発現する細胞株が設計されうる。ウイルス起源のものを含む発現ベクターの複製を使うよりむしろ、宿主細胞は、適当な発現制御因子(例えば、プロモーター、エンハンサー配列、転写ターミネータ、ポリアデニレーション部位など)、および選択可能マーカーによって管理されたDMAによって形質転換されることができる。外来DNAの導入に続いて、組換え細胞は、強化培地中で1〜2日間培養され、そして選択培地に変更される。組換えプラスミド内の選択可能マーカーは、選択に対する抵抗性を与え、細胞に上記プラスミドをそれらの染色体内に安定に統合させ、そして次々にクローン化されて、細胞株内に広がることができる増殖巣を形成するようになる。そのような組換え細胞株は、FGFRとFGFRリガンドの間の相互作用に影響する候補化合物のスクリーニング・アッセイおよび評価に特に有用である。
【0154】
多数の選択システムを使用することができる。例えば、単純ヘルペスウイルス・チミジン・キナーゼ(Wigler, et al., Cell 11:223, 1977)、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska and Szybalski, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 48:2026, 1962)、およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy, et al., Cell 22:817, 1980)遺伝子を、それぞれtk-、hgprt-、またはaprt-細胞に利用することができる。同様に、抗代謝産物耐性を以下の遺伝子:メトトレキサートに対する抵抗性を与えるdhfr(Wigler et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:3567, 1980; O'Hare et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:1527, 1981);ミコフェノール酸に対する抵抗性を与えるgpt(Mulligan and Berg, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:2072, 1981);アミノグリコシドG-418に対する抵抗性を与えるneo(Colberre-Garapin et al., J. Mol. Biol. 150:1, 1981);そしてハイグロマイシンに対する抵抗性を与えるhygro(Santerre et al., Gene 30:147, 1984)について選択の根拠として使用することができる。
【0155】
あるいは、あらゆる融合タンパク質も発現された融合タンパク質に対して特異的な抗体を利用することによって容易に精製される。例えば、Janknechtらによって記載された系は、ヒト細胞株で発現された非変性融合タンパク質の即座の精製を可能にする(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:8972-8976, 1991)。この系では、遺伝子の読み取り枠が6つのヒスチジン残基から成るアミノ末端タグに翻訳融合されるように、着目の遺伝子をワクチニア・リコンビナント・プラスミド内にサブクローニングする。リコンビナント・ワクチニア・ウイルスを感染させた細胞からの抽出物を、Ni2+ニトリロ酢酸−アガロース・カラムに添加し、そしてヒスチジン・タグ・タンパク質をイミダゾール含有バッファーで選択的に溶出する。
【0156】
本発明の組換えタンパク質のある群の分子が上記結合部位を含み、組換え型タンパク質の他の群の分子が上記結合部位の認識のための部位を含むことが考えられる。
【0157】
薬剤
リガンド結合による細胞表面レセプターの活性化は、健康的な生物において厳密に制御されている。突然変異、レセプターまたはレセプター・リガンドの異常な発現または加工は、レセプターの活性の異常をもたらして、それによりレセプターの機能不全をもたらす。レセプターの機能不全は、言い換えると、様々な細胞過程の維持のためにレセプターを使う細胞の機能不全の理由である。後者は病気の徴候である。FGFRsは、発生初期の発達の間、および成人において幅広い種類の細胞種によって発現される。これらのレセプターの機能不全は、多数の病気に関係した。
【0158】
それ故に、FGFRsの活性の調節ができる化合物を提供することが本発明の目的であって、上記化合物は病気の治療のための薬剤として本発明に関係する、ここで、FGFRsの活性の調節が上記治療のための必要不可欠な条件として考えられうる。
【0159】
本発明の薬剤は、1つの態様において、以下の:
1) 正常、変性、または損傷NCAMを提示する細胞、および/または
2) 中枢および末梢神経系の、または筋肉の、あるいは様々な臓器の病気および異常、および/または
【0160】
3) 中枢および末梢神経系の病気または異常、例えば術後の神経損傷、外傷性神経損傷、神経線維の髄鞘形成障害、虚血後損傷、例えば脳卒中に起因するもの、パーキンソン病、アルツハイマー症、ハンチントン病、痴呆、例えば多発脳梗塞性痴呆、硬化症、糖尿病に関係する神経変性、概日時計または神経−筋肉の伝達に影響する障害、統合失調症、気分障害、例えば躁鬱病;神経−筋肉接続の機能障害、例えば臓器移植後の、または遺伝的もしくは外傷性の萎縮性筋肉障害を含む筋肉の病気または異常の治療;または、様々な臓器、例えば生殖腺の変性状態の、膵臓、例えばI型およびII型糖尿病の、腎臓、例えばネフローゼの、ならびに心臓、肝臓、および腸の病気または異常の治療、および/または
【0161】
4) 術後神経損傷、外傷性神経損傷、神経線維の髄鞘形成障害、虚血後損傷、例えば脳卒中に起因するもの、パーキンソン病、アルツハイマー症、ハンチントン病、痴呆、例えば多発脳梗塞性痴呆、硬化症、糖尿病に関係する神経変性、概日時計または神経−筋肉の伝達に影響する障害、ならびに統合失調症、気分障害、例えば躁鬱病、および/または
5) 癌疾患、ここで、癌は血管新生を必要とするあらゆるタイプの固体腫瘍である、
の治療のためである。
【0162】
他の態様において、本発明の薬剤は、以下の:
1) 創傷治癒の促進、および/または
2) 例えば、急性心筋梗塞後の、または血管新生後の心筋細胞の細胞死の予防、および/または
3) 血管再開通術、および/または
4) 学習能力、および/または短期および/または長期記憶の刺激、
のための薬剤の製造のためのものである。
【0163】
1つの態様において、本発明の薬剤は配列番号2〜146に規定されるアミノ酸配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしく変異体少なくとも1つを含む。他の態様において、本発明の薬剤は、本発明の結合部位を含むエピトープに結合することができる抗体、または上記抗体の断片もしくは変異体を含む。
【0164】
本発明の薬剤は、有効量の先に規定された化合物、または医薬として許容される添加剤と組み合わせて先に規定された組成物の1以上を含む。そのような薬剤は、経口、経皮、筋肉内、静脈内、頭蓋内、くも膜下、脳室内、鼻腔内、または肺投与のために好適に処方される。
【0165】
一般に、本発明の化合物に基づいた薬剤と組成物の処方開発の戦略は、あらゆる他のタンパク質ベース薬剤の製品のための処方戦略と一致する。潜在的な問題と、これらの問題を克服するために必要な手引きが数冊のテキスト、例えば"Therapeutic Peptides and Protein Formulation.Processing and Delivery Systems", Ed.A.K.Banga, Technomic Publishing AG, Basel, 1995中で扱われている。
【0166】
注射剤は、液性の溶液または懸濁液、注射前に液体中、溶液または懸濁液に好適である固体形態のいずれかとして通常準備される。前記調合剤を乳化することもできる。有効成分は、医薬として許容され、かつ、多くの場合、有効成分と適合する賦形剤と混合される。好適な賦形剤は、例えば水、生理食塩液、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、およびその組み合わせである。さらに、所望であれば、前記調合剤は少量の補助物質、例えば湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、または上記調合剤の有効性または輸送を高める物質を含むかもしれない。
【0167】
本発明の化合物の製剤を当業者に知られた技術によって準備することができる。前記製剤は、医薬として許容される担体、およびマイクロスフェア、リポソーム、マイクロカプセル、ナノ粒子などを含む賦形剤を含む。
【0168】
場合により、前記有効成分がその効果を発揮する部位において、前記調合剤は注射によって好適に投与されうる。他の投与方式に好適な追加の製剤が坐剤、点鼻剤、肺用調合剤、および場合によっては、経口製剤を含む。坐剤のために、伝統的な結合剤および担体は、ポリアルキレン・グリコールまたはトリグリセリドを含む。そのような坐剤は、0.5%〜10%、好ましくは1〜2%の範囲で有効成分を含む混合物から形成されうる。経口製剤は、例えば医薬等級のマンニトール、ラクトース、スターチ、ステアリン酸マグネシウム、サッカライド・ナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的に利用される賦形剤を含む。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル、徐放製剤、または粉末の形態をとり、そして一般に10〜95%、好ましくは25〜70%の有効成分を含む。
【0169】
他の製剤は経鼻および肺投与、例えば吸入器およびエアロゾール剤に好適である。
【0170】
活性な化合物は、中世または塩の形で処方されることができる。医薬として許容される塩は、(前記ペプチド化合物の遊離アミノ基により形成される)酸付加塩を含み、そしてそれは無機酸、例えば塩化水素またはリン酸、あるいは有機酸、例えば酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などによって形成される。遊離のカルボキシル基によって形成された塩は、同様に無機塩基、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または水酸化第二鉄、ならびに有機塩基、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノ・エタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来する。
【0171】
前記調合剤は、剤形に適合するやり方で、かつ、医薬として有効な量で投与される。投与されるべき量は、例えば対象者の体重と年齢、治療する病気、および病気のステージを含めて、治療される対象者に依存する。好適な投与量の範囲は、通常は、体重1キロにつき1回の投与で数百μgの有効成分の水準であり、体重1キロにつき約0.1 μg-5000 μgの好ましい範囲をもつ。前記化合物の単量体形態を使うことで、好適な投与量範囲は、多くの場合、体重1キロにつき0.1 μg-5000 μgの範囲、例えば体重1キロつき0.1 μg-3000 μgの範囲、そして特に体重1キロにつき約0.1 μg-1000 μgの範囲である。前記化合物の多量体形態を使うことで、好適な投与量範囲は、多くの場合、体重1キロにつき0.1 μg−1000 μgの範囲、例えば体重1キロにつき0.1 μg-750 μgの範囲、そして特に体重1キロにつき約0.1 μg-から500 μgの範囲、例えば体重1キロにつき約0.1 μg-250 μgの範囲である。特に、経鼻投与の場合、他の経路で投与される時よりもわずかな投与量が使用される。投与は、一回実施されるか、または次の投与が続く可能性がある。同様に、投与量は投与経路に依存し、かつ、治療される対象者の年齢および体重で変化する。多量体形態の好ましい投与量は、70 kgの体重につき1 mg〜70 mgの区間である。
【0172】
たいていの適応について、局所適用、または実質的に局所適用が好ましい。
本発明の化合物のいくつかは十分に活性であるが、しかし、他のいくつかについては、その調合物がさらに医薬として許容される添加剤および/または担体を含めば、その効果が高められる。そのような添加剤および担体が当該技術分野で知られている。場合によって、その標的への作用物質のデリバリーを高める化合物を含むことが有利である。
【0173】
多くの例で、前記製剤を複数回投与する必要がある。投与は、連続的な注入、例えば心室内注入か、またはより多くの投与量での投与、例えば毎日、1日あたりより多くの回数、毎週、1週間あたりより多くの回数であるかもしてない。個体が細胞死をもたらすかもしれない因子にさらされる前、またはその直後に薬剤の投与が開始されることが好ましい。好ましくは、因子発現から8時間以内、例えば因子発現から5時間以内に薬剤は投与される。前記化合物の多くが長期の効果を示すので、その化合物の投与は長い間隔、例えば1週間または2週間の間隔をとって行われうる。
【0174】
ナーブ・ガイド(nerve guides)における使用に関連して、投与は連続的であるか、または活性化合物の制御放出に基づいたわずかな部分によるかもしれない。さらに、前駆物質が放出速度および/または放出部位を管理するために使用されるかもしれない。経口投与としての他の種類の移植片およびウェルは、制御放出および/または前駆物質の使用に同様に基づきうる。
【0175】
治療
1つの態様において、本発明による化合物/組成物の使用による治療は、分化の誘導、増殖の調節、再生の刺激、神経可塑性、ならびに植え込まれたかまたは移植された細胞の生存に役立つ。これは長期効果をもつ化合物を使う時に特に有用である。
【0176】
さらなる態様において、治療は、種々の要因、例えば外傷および傷害、急性疾患、慢性疾患および/または障害、特に通常、細胞死をもたらす変性疾患、他の外部要因、例えばフリーラジカルの形成、またはそれ以外に細胞障害効果を有するものを引き起こす、治療法および/または外科療法および/または診断方法、例えばエックス線および化学療法によって死滅の危険性がある細胞の生存の刺激のためのものである。化学療法に関して、本発明によるFGFR結合化合物は、FGFRsを提示している全ての癌細胞の癌治療に有用である。
【0177】
従って、前記治療は、中枢および末梢神経系の病気または異常、例えば、術後の神経損傷、例えば脊椎損傷に起因する、外傷性神経損傷、神経線維の髄鞘形成障害、例えば脳卒中に起因する、虚血後損傷、多発脳梗塞性痴呆、多発性硬化症、糖尿病に関係する神経変性、神経−筋肉の変性、統合失調症、アルツハイマー症、パーキンソン病、またはハンチントン病、に関係する細胞死の治療および/または予防を含む。
【0178】
同様に、神経−筋肉の接続の機能障害を伴う異常、例えば遺伝性または外傷性の萎縮性筋肉障害を含む筋肉の病気または異常に関して;または様々な臓器の病気または異常、例えば生殖腺の変性異常、膵臓の変性異常、例えばI型およびII型糖尿病、腎臓の変性異常、例えばネフローゼの治療のために、本発明による化合物が、分化の誘導、増殖の調節、再生刺激、神経可塑性の刺激、および生存の刺激、すなわち生存を刺激するために使用されうる。
【0179】
さらに、前記化合物および/または医薬組成物は、血管形成を誘導するために、例えば急性心筋梗塞後に心筋細胞の細胞死を防ぐためのものであるかもしれない。さらに、1つの態様において、前記化合物および/または医薬組成物は、例えば急性心筋梗塞後の生存のように、心筋肉細胞の生存の刺激のためのものである。他の側面において、前記化合物および/または医薬組成物は、例えば損傷後の血管再開通術のためのものである。
【0180】
創傷治癒の促進のために前記化合物および/または医薬組成物を使うことは本発明の範囲内でもある。当該化合物は、血管形成を刺激することができて、それによって創傷治癒過程を促進する。
【0181】
本発明は癌の治療における前記化合物および/または医薬組成物の使用をさらに開示する。FGFRの活性の調節が腫瘍の血管形成、増殖、および拡散にとって重要である。
【0182】
よりさらなる態様において、FGFR活性が神経細胞の分化にとって重要なので、前記化合物および/または医薬組成物の使用は学習能力および/または、短期および/または長期記憶の刺激のためのものである。
【0183】
特に、本発明の化合物および/または医薬組成物は、臨床的異常、例えば新生物、例えば悪性新生物、良性新生物、上皮内癌、および流動的な挙動の新生物、内分泌腺の病気、例えば糖尿病、精神病、例えば老年性および初老性器質性精神異常、アルコール精神病、薬物精神病、一過性器質性精神異常、アルツハイマー症、脳リピドーシス、てんかん、全身不全麻痺[梅毒]、肝レンズ核変性症、ハンチントン舞踏病、ヤコブ−クロイツフェルト病、多発性硬化症、脳のピック病、梅毒、統合失調症障害、情動性精神病、ノイローゼ障害、性格神経症を含む人格障害、器質性脳症候群に関係する非精神病性人格障害、偏執性人格障害、狂信的人格、偏執性人格(障害)、偏執特性、性的逸脱、および障害、精神薄弱、神経系および感受性臓器、認識異常、例えば髄膜炎、脳炎といった中枢神経系の炎症性疾患、例えばアルツハイマー症といった脳の変性、
【0184】
ピック病、脳の老年性変性、交通性水頭症、閉塞性水頭症、他の錐体外路症および異常な運動障害を含むパーキンソン病、脊髄小脳疾患、小脳失調症、Marie's、サンガー−ブラウン、ミオクローヌス性小脳性共同運動障害、例えば脊椎性筋萎縮症、家族性、若年性、成人の脊椎性筋萎縮症といった原始小脳変性、運動ニューロン疾患、筋萎縮性側索硬化症、運動ニューロン疾患、進行性球麻痺、偽球麻痺、原発性側索硬化症、他の前角細胞疾患、前角細胞疾患、特定されていない、他も脊髄の病気、脊髄空洞症および延髄空洞症、血管ミエロパシー、(塞栓症である)(塞栓症ではない)脊髄の急性梗塞形成、脊髄の動脈血栓、脊椎の水腫、亜急性壊死ミエロパシー、他の場所で分類された病気における脊髄の亜急性会合性脊髄変性症、ミエロパシー、薬物によって誘導された、放射線によって誘導された脊髄炎、自律神経系の障害、末梢自律神経の障害、交感神経、副交感神経、または自律神経系、家族性自律神経障害[ライリー−デイ症候群]、
【0185】
特発性末梢自律神経ニューロパシー、頸動脈洞失神または症候群、頸部交感神経ジストロフィーまたは麻痺、他の場所で分類された障害における末梢自律神経ニューロパシー、アミロイドーシス、末梢神経系の病気、上腕神経叢病変、頚肋症候群、肋鎖症候群、前斜角筋症候群、胸郭出口症候群、上腕神経炎または神経根炎(新生児で含む)、急性伝染性多発性神経炎、ギラン−バレー症候群、感染後多発性神経炎を含む炎症性および有毒なニューロパシー、膠原病における多発ニューロパシー、眼の多重構造に影響している障害、化膿した眼内炎、耳および乳様突起の病気、慢性リューマチ性心疾患、虚血性心疾患、不整脈、肺系の病気、神経系を含めた新生児の臓器および軟組織の異常、陣痛または分娩における麻酔剤の投与と他の鎮静剤投与の合併症、伝染を含む皮膚の病気、不十分な循環問題、術後を含めた傷害、激しい損傷、やけど、神経の分裂を含めた神経および脊髄への傷害、(開放創ありまたはなしの)連続性の病変、(開放創ありまたはなしの)外傷性神経腫、(開放創ありまたはなしの)外傷性一過性麻痺、医療処置中の偶然の穿刺または裂傷、視神経と経路への傷害、視神経損傷、第2脳神経、視神経交差への傷害、視覚経路への傷害、視覚野への傷害、特定されていない失明、他の脳神経への傷害、他のおよび特定されていない神経への傷害、薬物、薬用物質、および生物学的物質による中毒、遺伝性または外傷性の萎縮性筋肉障害の治療;あるいは、様々な臓器の病気または異常、例えば生殖腺の変性異常、例えばI型およびII型糖尿病といった膵臓の、例えばネフローゼといった腎臓の治療のために使用されうる。
【0186】
本発明のさらなる側面は、1以上の医薬として許容される添加剤または担体と一緒に、有効量の本発明の化合物または本発明の医薬組成物の1以上を混合することを含む医薬組成物の製造方法であり、そして対象者に有効量の上記化合物、または上記医薬組成物の少なくとも1つを投与する。
【0187】
先に触れた方法の1つの態様において、前記化合物は補綴デバイスとの組み合わせで使用される、ここで、前記デバイスは補綴ナーブ・ガイドである。このように、さらなる側面において、本発明は、先に規定された化合物または医薬組成物の1以上を含むことを特徴とする補綴ナーブ・ガイドに関する。ナーブ・ガイドは当該技術分野で知られている。
【0188】
本発明は、前述の病気および異常のいずれかの治療または予防のための、本発明の化合物を含む医薬組成物の使用に関する。
よりさらなる側面において、本発明は本明細書中に規定されるように化合物を投与することによる、先に議論された病気または異常の治療方法に関する。
【実施例】
【0189】
組換えタンパク質の製造
NCAM F3モジュール1、2(エクソンa、AAGの発現なし)、およびFGFR1 Igモジュール2、3を、ラットNCAM cDNAおよびマウスFGFR1(IIICアイソフォーム)cDNAを使って製造した。F3モジュール1および結合F3モジュール1、2は、それぞれAGHHHHHHと、NCAM(swiss-prot:p13596)の第507〜611アミノ酸および第507〜705アミノ酸から成る。F3モジュール2は、AGと、NCAM(swiss-prot:p13596)の第612〜705アミノ酸から成り、そして連続して1から96までの番号を付ける。Aが1番である。FGFR Igモジュール2は、AGHHHHHHと、FGFR(swiss-prot:p16092)の第140〜251アミノ酸から成る。FGFR Igモジュール3、および結合Igモジュール2、3は、それぞれRSHHHHHHと、FGFR(swiss-prot:p16092)の第249〜365アミノ酸および第141〜365アミノ酸から成る。F3モジュールとFGFR Igモジュール2を、記載のとおりKM71株の酵母P.パストリス(P.pastoris)(Invitrogen, USA)によって発現させた(Thomsen et al., 1996)。FGFR Igモジュール3と、モジュール2、3を、製造業者の使用説明書に従ってショウジョウバエ(Drosophila)S2細胞(Invitrogen, USA)によって発現させた。全ての前記タンパク質をNi2+-NTAレジン(Qiagen, USA)を使ったアフィニティークロマトグラフィーおよび/またはイオン交換クロマトグラフィとゲル濾過によって精製した。15N標識F3モジュール2を、記載のとおり製造した(Thomsen et al., 1996)。NCAM Igモジュール1、2、および3(RV、およびラットNCAM、swiss-prot:p13596の第20〜308アミノ酸)を、記載のとおり製造した(Soroka et. al., 2002)。
【0190】
NMR分析:NCAM F3モジュール2の構造計算、ならびにFGFRおよびATPとの結合に関与する残基の同定
以下のサンプルをNCAM F3モジュール2の構造決定に使用した:H2OまたはD20中、2 mMのモジュール、およびH2O中、1 mMの15N標識モジュール。バッファーは、30 mMのNaCl、10 mMのリン酸ナトリウム・バッファー、pH 7.27だった。以下のNMRスペクトルが記録され、そして指定のために使用した:H2OまたはD2O中、TOCSY(45および70 msの混合時間)、H2OまたはD2O中、NOESY(80および200 msの混合時間)、DQFCOSY、15N-HSQC、15N-TOCSY-HSQC(70 msの混合時間)、15N-NOESY-HSQC(125 msの混合時間)(Bodenhausen and Ruben, 1980; Braunsweiler and Ernst, 1983; Kumar et al., 1981; Piantini et al., 1982; Zhang et al., 1994)。NMR実験を、Bruker AMX-600 MHz、およびVarian Unity Inova 500、750、および800 MHzのスペクトロメーターで実施した。全てのスペクトルを298 Kで記録した。1Hおよび15Nの共鳴の指定を、プログラムPRONTO(Kjaer et al., 1994)を使って実施した。
【0191】
構造計算
X-PLORプログラムを使った距離ジオメトリ/模擬されたアニーリング・プロトコルを、構造計算のために使用した。NOE制限は、もしその制限がメチル基を含んでいれば0.5 Åまで増加する、2.7、3.3、および6.0 Åの上限をもつ80/200 msのNOESYと、125 msの15N-NOESY-HSQCスペクトルに由来する。40 φアングルは、-120±40°と-57±40°の境界によって制限し(3JHNHα結合定数に由来する)、そして4χ1アングルを適用した。水素結合エネルギーの検査後に、80の水素結合制限を、NH-OおよびN-Oの距離に関して、それぞれ、2 Åと3 Åを上限とするNOE制限として適用した。96個の構造が算出され、96個が、NOE制限違反>0.5 Åまたはアングル違反>5°をもつあらゆる構造を判別するX-PLORによって受け入れられた。構造は、MOLMOL、PROCHECK_NMR、およびWHATCHECKプログラムを用いて検討した。78個の構造が、第2世代のパッキング特性のZスコアの絶対値、ラマチャンドラン・プロット、χ1/χ2プロット、および骨格立体配座3.0未満、を有した。これらの78個の構造から、2.4未満のZスコアの絶対値を持つ30個の構造が、F3モジュール2の構造を表すために選ばれた。
【0192】
NMRによるNCAM F3モジュール2の構造決定
骨格原子についての30個の重ね合わせ構造体のオーバーレイを図1Aに示す(登録番号1LWR、タンパク質データバンク)。7βストランドを標識した構造体のリボン描写を図1Bに示す。構造的な統計値の概要を表1に与える。
【0193】
構造体は、一方が3つのストランド(ABE)を含み、そして他方が4つのストランド(GFCD)を含む、2つのβシートから成るサンドイッチ状に配列された7つの逆平行βストランドから成る。その両βシートは、右利きのねじりがある。前記3ストランドβシートは、K7-G13(A)、S18-I24(B)、H59-S63(E)残基から成り、そして前記4ストランドβシートは、I33-A42(C)、I51、A52(D)、E70-N79(F)およびG82-R92(G)残基から成る。残基K85、A86およびV76(GおよびFのβストランド)、ならびに残基A77とH35、Y36(FおよびCのβストランド)を含めた2つの幅広いタイプのβ隆起がある(Chan et al., 1993)。2つのβ隆起が4ストランドβシートの右ねじりの立体配座に寄与している。特徴的なβシート・ストランド間のNOEsの分析が、このモジュールにはフィブロネクチンIII型折り畳みがあるということを明らかに示す。
【0194】
FGFRおよびATPと相互作用するNCAM F3モジュール2の残基の同定
15N標識タンパク質の15N-HSQCスペクトルで、窒素とプロトンの両方を持つ各々のアミノ酸のシグナルを観察することができる。シグナルの化学シフトにおける変化は、他の分子の結合によって乱されるタンパク質内の残基の同定方法を提供する。NCAM F3モジュール2の50 μMの15N標識サンプルに、1 mMの未標識FGFR Igモジュール2もしくは3、または5 mMのAMP-PCP(ATPの非加水分解性相似体)を加えた。化学シフトの著しい変化がIgモジュール2の存在下では見られなかった(データ未掲載)。Igモジュール3またはAMP-PCPの存在下で記録された化学シフトの変化を、図1C、Dに示す。Igモジュール3による混乱を示したF3モジュールの残基は、N79、Q81、G82、およびK83だった(図1C)。これらの残基の化学シフトの変化は、F3モジュール2に近いIgモジュール3の存在が、(その乱れた残基が2つのモジュール間の相互作用のための結合部位の一部または周辺のいずれかであることを示す)F3モジュールの乱れた残基において化学的な環境を変えることを証明する。これらの残基はFとGのβストランド間の回転部位にあって、図2Eからわかるように、それらはそのモジュールのN末端に近くて、それによりNCAM分子のF3モジュール1のC末端に近接する。結合F3モジュール1、2から成る組換えタンパク質が2つの個々のF3モジュールのどれよりも非常に高い親和性でFGFRに結合することが分かったので、F3モジュール2のN末端の乱れた残基がF3モジュール1のC末端の残基と一緒に、F3モジュールが分離された場合に破壊され、それにより2つのモジュールをもつタンパク質と比べてFGFRに対するそれらの親和性を大きく減少させる、単一の結合部位を形成することが可能である。
【0195】
AMP-PCPで乱されたF3モジュールの残基はY74とV75だった。Y74の側鎖はモジュールの表面上にさらされて、ヌクレオチドの結合モチーフ:A77ENQQGKS84とK85(図1E)のすぐ近くにある。K83もK85もモジュールの表面上とさらされて、恐らくK83とK85の正に荷電した側鎖がATPの負に荷電した三リン酸部分と相互作用するのに対し、Y74の側鎖は、ATPのアデノシン部分と疎水性の相互作用に関係する。ATPとF3モジュール2の複合体の可能な配置を図1Gに描写する。FGFR Igモジュール3(N79、Q81、G82、およびK83)によって乱れた残基がヌクレオチド結合モチーフの一部でもあり、ATP結合部位とFGFR結合部位が重なっていることを示す。
【0196】
このように、これらのデータは、NCAM F3モジュール2のN79、Q81、G82、およびK83がFGFRに結合する部位に位置し、そしてそのFGFR結合部位がATP結合部位に重なることを示す。
【0197】
FGFRとNCAMの間の相互作用のSPR分析
結合分析を、ランニング・バッファーとして10 mMのリン酸ナトリウムpH7.4、150 mMのNaClを使ったBIAcoreX器具(Biosensor AB)を使って25℃で実施した。流量は5 μl/分だった。データを、製造業者のソフトウェアを使って非線形の曲線の当てはめによって分析した。FGFR Igモジュール2、3を、以下の通りアミン連結キット(Biosensor AB)を使ってセンサー・チップCM5上に固定した:
1) チップの2つの部分(Fc1とFc2と呼ぶ)を20 μlの活性化溶液によって活性化した;
2) 10 mMのリン酸ナトリウム・バッファーpH6.0中、12 μlの20 μg/mlタンパク質を使って、上記タンパク質をFc1上に固定した;
【0198】
3) Fc1とFc2を35 μlのブロッキング溶液によってブロックした。
固定されたFGFRモジュールへの様々な化合物の結合を、以下の通り調査した:化合物を、(固定されたFGFRモジュールの)Fc1と(何も固定されていない)Fc2に同時に注入した。Fc2表面への上記化合物の非特異的結合を表す曲線を、固定されたFGFRモジュールおよびFc1表面への上記タンパク質の結合を表す曲線から差し引いた。得られた曲線を分析のために使用した。ATP競合実験のために、特定の化合物を特定の濃度のATPと一緒に10分間プレインキュベートした。NCAM F3モジュール1、2と、FGFRモジュール2、3の間の相互作用のためのATPのKiを、前述のように推定した(Kiselyov et al., 1997):30 μMのF3モジュールの初期結合率、V0、および特定の濃度のATPとプレインキュベートした30 μMのF3モジュールの初期結合率、VATPを測定した。阻害率(%)、I%を、式:I%=(1-VATP/V0)×100を使って計算した。I%を、ATP濃度に対してプロットし、Kiを実験データに対する理論曲線の非線形当てはめによって計算した。
【0199】
NCAMとFGFRの間の直接的な相互作用の証明
図2から、NCAM F3モジュール1、2から成るタンパク質がFGFRモジュール2、3を含む固定されたタンパク質に結合する一方で、NCAM Igモジュール1、2、および3から成る対照タンパク質がFGFR断片に結合しないように見える。解離定数(Kd)と関連係数および解離係数はそれぞれ以下の通りである:9.97±0.37 μM、889±332 M-1s-1、および5.56±0.07×10-3s-1(平均±標準偏差)。
【0200】
このように、これらのデータは、NCAM F3モジュールが直接的にFGFRに結合することを示している。
【0201】
NCAMのFGFRへの結合をATPによって阻害することができる
FGFRとATPに結合するNCAM部位が重なっているので、その結果、ATPがNCAM-FGFR結合を妨害することが予想されるかもしれない。この仮定を試験するために、SPR分析を使用した。図3Aから確認できるように、10 mMのATPを30 μMのNCAM F3モジュール1、2に加えることで、FGFR Igモジュール2、3へのF3モジュールの結合を完全に阻害した。阻害定数(Ki)を測定するために、様々なATP濃度で阻害効果を計測した(図3B)。算出されたKiは、0.37±0.05 mMだった。NMR実験がF3モジュール2のβ−ストランドFおよびGの間の回転部位がFGFRへの結合に係わっていることを示すので、これらの残基におよぶペプチド断片がFGFRに結合することができるか試験することは興味深い。
【0202】
しかも、F3モジュール1に位置する他のペプチド断片を試験することも興味深い。なぜなら、このモジュールのEおよびFストランドの間の回転部位がFGFRのIg2-lg3モジュールと相互作用するNCAMの結合部位のN末端部分を構成するかもしれないからである。この目的のために、ペプチドはF3モジュール2のE72-A86(配列番号1)(FGループ・ペプチドと呼ばれる)残基に相当し、およびペプチドは、F3モジュール1のT573-R586(配列番号9)(EFループ・ペプチドと呼ばれる)残基に相当する。しかし、これらのペプチドの単量体形態の結合はSPRによって検出できない。従って、1つの型(例えば、配列番号1または配列番号9)の4つのペプチド配列をそれらのC末端によって3つのリジン骨格に接続した、上記ペプチドの合成デンドリマー・バージョンが存在した。これは、ペプチドが同時にFGFRの数個の分子に結合することを可能にし、それにより、上記ペプチドの見かけ上の親和性が大きく増加し、同時に、(各々のペプチドの分子量が4倍に増えたので)SPR分析の感度が4倍に増えた。
【0203】
図3Cで明らかなように、デンドリマーFGループ・ペプチドは、2.58±2.06 μMの見かけ上のKdでFGFRに結合する(関連係数および解離係数は、それぞれ、2.07±1.08×103M-1s-1と3.97±2.29×10-3s-1である)。F3モジュール1、2のFGFRへの結合をATPによって阻害することができ、そして上記ペプチドがNCAMの全ヌクレオチド結合モチーフを含むので、ATPがFGFRへの上記ペプチドの結合を妨害することができるか同様に試験した。実際に、10 mMのATPを34 μMペプチドに加えることによって約70%にまで結合を阻害した(図3C)。図4はFGFRへのデンドリマー形態のEFループ・ペプチドの実時間結合を明らかにする。
【0204】
これらの実験は、FGFRへのNCAMの結合がATPによって阻害されうることを明らかにし、そしてF3モジュール2のβ−ストランドFおよびGの間の回転部位、およびF3モジュール1のβ−ストランドEおよびFがFGFRへの結合に関与する、そしてFGFRとATPのためのNCAM部位が重なるという考えを支持する。
【0205】
FGFR1のリン酸化の測定のためのアッセイおよびNCAM免疫沈降
NCAM F3モジュール2とFGループ・ペプチドによるFGFRの活性化
NCAM F3モジュール2とFGFRデンドリマーFGループ・ペプチドがFGFRに結合するため、それらは生細胞においてFGFR活性化を誘導することが同様に予測される。この仮定を試験するために、2つのアッセイを使用した。
【0206】
アッセイ1:Flp-Inシステム(Invitrogen)を使って、C末端StrepIIタグ(IBA biotech)を有するヒトFGFR1によってTREX-293細胞(Invitrogen)を安定に形質移入した。リン酸化の検討のために:〜2×107細胞を一晩飢餓状態にし、その後20分間特定の化合物によって刺激した。細胞を1%のNP-40およびホスファターゼ制限因子混合物セットII(Calbiochem)によりPBS中で溶解した。透明な細胞ライセートを、50 μlのアガロース結合抗ホスホチロシン抗体(4G10-AC, Upstate Biotechnologies)と一緒に4℃で3時間インキュベートした。リン酸化したFGFRの大幅な増加を検出できるように、利用した細胞の量を調整するように注意を払った。結合したタンパク質を洗浄し、150 mMのフェニルリン酸(Sigma)を使って溶出し、12%のトリクロロ酢酸によって沈澱させ、冷アセトンによって洗浄し、そしてSDS-PAGEサンプル・バッファー中に溶かした。組換えStrepIIタグ(IBA biotech)に対する抗体を使ってイムノブロッティングを実施した。免疫沈降のために:〜1×107の細胞を180 kDaのNCAMアイソフォームまたは対照ベクターによって一時的に形質移入した。細胞を24時間インキュベートし、そして一晩飢餓状態にした。溶解後に、FGFRをStrep Tactin Minicolumn(IBA biotech)により製造業者の使用説明書に従って精製し、そしてヒトNCAMに対するポリクローナル抗体を用いたイムノブロッティング法によって分析した。
【0207】
図5Aで明らかなように、5 μMのF3モジュールも2.5 μMのデンドリマーFGループ・ペプチドも非刺激細胞と比べてFGFRリン酸化を実質的に増加させる。
【0208】
アッセイ2:ラットFGFR1(IIICアイソフォーム)のcDNAを、ラットPC12細胞株から単離したRNAを使ったRT-PCRによってクローン化し、そしてN末端のヘキサヒスチジンに融合したFGFR1の発現を可能にするpcDNA3.1(+)プラスミド(Invitrogen)中に挿入した。
【0209】
〜8×105のHEK293細胞を、完全培地(10%のFCS、100 U/mlのペニシリン、100 μg/mlのストレプトマイシン、および58.4 g/lのGlutamaxを添加したDMEM1965)中、60 mmのプレートにおいて24時間培養し、そしてLipofectAMIN PLUS(商標)試薬キット(Gibco BRL)を使って製造業者の使用説明書に従って0.2 μgの(FGFRを含む)プラスミドによって形質移入する。細胞を完全培地中でさらに24時間培養し、そして一晩飢餓培地(DMEM1965)に変えた。FGFR形質移入細胞を特定の化合物で20分間刺激して、(PBS中)8 Mの尿素、1 mMのオルソバナダートによって溶解し、以下の通りHis-tagによって上記ライセートから精製した:上記ライセートをNi2+/NTAセファロース(Qiagen)上に添加し、10 mMのイミダゾールを加えた溶解バッファーで洗浄し、FGFRを250 mMのイミダゾールを加えた溶解バッファーで溶出した。精製したFGFRを抗pentahis抗体(Qiagen)または抗ホスホチロシン抗体(PY20、Transduction Laboratories)を使ったイムノブロッティング法によって分析した。バンドを化学発光によって可視化し、GeneGnome装置(SynGene)を使って上記バンド密度を計測した。
【0210】
図5Bから、5 μMのF3モジュール2または25 μMの単量体FGループ・ペプチドの添加が、それぞれ対照細胞と比べて、約150%および100%増加にまでFGFRリン酸化を増加させることが明らかである。
【0211】
NCAMとFGFRの同時免疫沈降
NCAMとFGFR断片の結合をインビトロにおいてSPRおよびNMR分析によって証明することができたので、天然のNCAMが生細胞のFGFRに結合することを確認することは興味深い。そのため、C末端にStrepIIタグを含むFGFRによって安定に形質移入したTREX-293細胞を、180 kDaのNCAMアイソフォームによって一時的に形質移入した。前記細胞を溶解した後に、FGFRをStrepIIタグによって親和性を使って精製し、NCAMに対する抗体を使ったイムノブロッティング法によって分析した。図5Cから明らかなように、実際、NCAMはFGFRによって沈澱し、このように我々のSPRおよびNMRの実験を支持する。
【0212】
NCAM F3モジュール2、FGループ(FGL−ペプチド、配列番号1)、EFループ・ペプチド(EFL−ペプチド、配列番号9)、および軸索関連細胞接着分子由来のペプチドによる海馬ニューロンの神経突起長の刺激
記載(Skladchikova et al., 1999)のとおり準備した発生初期のラット海馬(発生初期の19日目)から解離したニューロンを、B27(Gibco BRL)と以下の特定の化合物を補った20 mMのHepes、100 U/mlのペニシリン、100 ng/mlのストレプトマイシン、0.4%のBSAを含むNeurobasal培地中、5%のCO2、37℃、6000細胞/cm2の密度で24時間、Permanoxプラスチック(Nunc)上で培養した。24時間後に、細胞をパラホルムアルデヒドで固定し、クマシー・ブリリアント・ブルーR250で染色し、そして記載(Skladchikova et al., 1999)の通り神経突起の長さを計測した。
【0213】
図6A、Bから確認することができるように、5 μMのF3モジュール2は非刺激ニューロンと比べて神経突起の長さを実質的に増加させた。その効果を、F3モジュール、FGループ・ペプチド、およびペプチド(A77-K83)の切断型バージョンの全てが(成長因子の誘導した神経突起生成を象徴する釣鐘型曲線(Hattenほか,1988)で)神経突起の伸長を誘導したことを証明している、用量応答研究により定量した(図6C)。10倍高い濃度が最大効果のために必要とされたので、前記ペプチドの能力は上記モジュールのそれより低く、そして前記切断型形態は拡張形態より効率的でなかった。F3モジュールとFGループ・ペプチドの刺激効果を、NCAMに刺激された神経突起伸長の阻害因子、FGFRに対する抗体(Williams et al., 1994)(図6D)によって完全に打ち消すことができ、さらにモジュールとFGループ・ペプチドがFGFRと相互作用するという考えを支持している。F3モジュール2のEFループ・ペプチドが顕著に神経突起の伸長を刺激することが同様に可能であった。図7から明らかなように、前記ペプチドによる神経突起の伸長刺激は、特にFGFR1の阻害因子、SU54402によって妨げられた。
【0214】
FGループ・ペプチドの機能上重要なアミノ酸を決定するために、切断および様々なアミノ酸のAla置換によって分析した。FGループ・ペプチドの(N-およびC末端からの)2つの切断型バージョン:九量体のV76-S84および七量体のAla77-K83、を作製した。切断型ペプチドのどちらもFGループ・ペプチド全体の刺激効果の約50%を維持し(図6E)、βストランドFとGの間の回転部位がNCAM-FGFR相互作用にとって重要であることを示した。図6Eから確認できるように、Alaを持つ七量体ペプチドのいずれかのアミノ酸の置換が神経突起誘導効果の減少をもたらし、そしてE78、N79、Q80、G82、K83が置換された場合には機能の完全な損失に至り、これらの残基がFGFRとの相互作用にとって重要であることを示した。Alaによる、FGループ・ペプチド全体の中のFGループの回転部位からのQ80およびQ81両方の置換は、同様に完全にペプチドを不活性化した(図6E)。これらの所見は、F3モジュール2においてN79、Q81、G82、およびK83がFGFR Igモジュール3への結合によって乱されることを示すNMR実験を裏付ける。しかし、ATPとの相互作用にとって重要であるように思われる残基(Y74、K83、およびK85)がFGループ・ペプチドにおいてAlaで置換させられた場合に、上記ペプチドは変異させていないペプチドの刺激効果の約60%を維持した(図6E)。
【0215】
さらに、F3モジュールの七量体ペプチドの構造はFGFR、FGF2の天然のリガンドの知られている構造と比較し(PDBコード:4FGF、Eriksson et al., 1993)、そして上記ペプチドが顕著な構造、そしてFGF2のループ領域、A42-R48(図8A)に類似した配列を示すことが分かった。2つのペプチドの骨格原子の立体配座は事実上同じであり、同様に側鎖が似通った立体配座を持っている。唯一の例外は(FGF2の)R48はその側鎖にK83のそれとは幾分異なる立体配座がある点である。図8Bから確認できるように、FGF2由来のペプチドは、類似のNCAMペプチドと同程度に神経突起の伸長を誘導し、そしてAlaによるいずれかのアミノ酸の置換によって機能の完全な損失に至った。NCAM F3モジュール2のFGループと、FGF2の一部の間の近い配列および構造の類似は、前者が直接的にFGFRと相互作用するという本主張を裏付ける。
【0216】
ATPはNCAM-FGFR結合を阻害し、F3モジュール2によるFGFR活性化を妨害することができるので、その結果として、それは上記モジュールの神経突起誘導活性に影響するかもしれない。この仮定を試験するために、ATPまたはAMP-PCPの存在下、ニューロンを以下に記載の化合物で刺激した。図9で確認できるように、ATPもAMP-PCPもF3モジュール2およびFGペプチド・ループによって誘導されたが神経突起誘導効果を実質的に減少させた。AMP-PCPが加えられた時、F3モジュールとFGループ・ペプチドの効果の完全な阻害が達成された一方で、ATPが加えられた時、FGループ・ペプチドの効果だけが完全に阻害され、ATPがその非加水分解性相似体より阻害因子の能力がより低いことを示した。最も顕著なことに、ATP結合に重要性であると推定されるFGループ・ペプチドのアミノ酸残基(Y74、K83、およびK85)をAlaで置換した場合、上記ペプチドがその神経突起誘導能力を維持したが、しかし、上記ペプチドの刺激効果はATPによって阻害されることはもはやできなくなり(図9)、ATP結合がF3モジュールとFGFRの間の相互作用を制御するという考えを支持した。
【0217】
これらの結果は、NCAM F3モジュール2、FGループおよびEFループ・ペプチドによるニューロンのFGFRのその活性化が神経突起生成を誘導し、この効果がATPまたはATP相似体によって阻害されることを示す。
【0218】
本発明にしたがってFGFRリガンドのFGFR結合部位の少なくとも一部を構成要素とする他のFGL様ペプチドの神経突起誘導能力を調査するために、軸索関係細胞接着分子[NCBI:NP_031544.1]由来の配列から成るペプチドを、先に記載のアッセイで使用した。選ばれたペプチドは、C末端から2つのアミノ酸を切断された配列番号5に記載の配列の11個のアミノ酸の断片である。図11が、FGループおよびEFループ・ペプチドと同様に、そのペプチドが海馬ニューロンの神経突起の伸長を刺激することができることを証明する。最大効果は、約0.3 μg/mlのペプチド濃度で観察された。
【0219】
エピトープ特異的抗体
配列番号1(FGL-ペプチド)を含むエピトープを特異的に認識する抗体を標準的な手法によってウサギで作製した(Gill BM, Barbosa JA, Dinh TQ, Garrod S, O'Connor DT: Chromogranin B: isolation from pheochromocytoma, N-terminal sequence, tissue distribution and secretory vesicle processing.Regul Peptides 33:223-35, 1991)。合成物FGLペプチドを担体タンパク質、KLH(キーホール・リンペット・ヘモシアニン)に連結した。前記ペプチドを、フロイント不完全アジュバントと混ぜて、そしてその混合物をウサギに注入した。(1羽のウサギにつき)1回の免疫処置に208 μgのペプチドを使用した。
【0220】
R.J. Jenny, T.L. Messier, L.A. Ouellette, and W.R. Church, Methods Enzymol. 222, 400 (1993)に記載のプロトコールに従って一連のFGLペプチド切断型変異体を使った競合的ELISAによって、抗体(血清)を特異性について試験した。試験の結果を図10に示す。100%の免疫反応性は、配列番号1から成る無処置のFGL−ペプチドだけで観察された。しかし、モチーフVVAENQQGKを含むFGL−ペプチドの2つの切断型変異体は、異なる免疫反応性を除いて、減少を明らかにした:ペプチドt4は完全長FGL−ペプチドの3つのC-末端アミノ酸を欠き(80%の免疫反応性)、そしてペプチドt1は完全長FGL−ペプチドの3つのN末端アミノ酸を欠く(40%の免疫反応性)。
【図面の簡単な説明】
【0221】
【図1】NCAM F3モジュール2の構造に示し、そしてFGFR1 Igモジュール3またはAMP-PCPとの相互作用に関係しているモジュール領域を説明する。a) 30個の重ね合わせ構造体の骨格原子オーバーレイの立体像、b)構造体のリボン描写。N末端が図面の上部に配置されている。cとd) FGFR1 Igモジュール3の1 mMの未標識サンプル(c)、または5 mMのAMP-PCP(d)添加後のNCAM F3モジュール2の0.05 mMの15N標識サンプルの1Hと15N原子の化学シフトの変化。前記化学シフトは15N-HSQCスペクトルから測定された。前記データは2つの独立した実験の平均として示される。e) そのモジュール構造上にFGFR Igモジュール3(N79、Q81、G82、K83、黒色)によって乱されたNCAM F3モジュール2残基のマッピング。f)AMP-PCP、Y74およびV75(黒色)によって乱されたNCAM F3モジュール2残基、ならびに上記モジュールの構造に対するATP結合ウォーカー・モチーフA、A77ENQQGKS84(灰色)、およびK85(暗い灰色、輪郭を書かれている);全ての他の残基は淡い灰色に塗られる、の残基のマッピング。g) NCAM F3モジュール2とATPの複合体の配置。K83、K85、およびY74は骨格原子のリボン描写で示されている。
【図2】表面プラスモン共鳴(SPR)分析の手段によって調査された、複合FGFR1 Igモジュール2および3への、複合NCAM F3モジュール1および2の結合を説明する。前記結合は、固定されたFGFRモジュールを有するセンサー・チップへの結合と、ブランク・センサー・チップ(非特異的な結合)への結合の間の応答の相違(Resp.Diff)として得られる。使用された全てのタンパク質の2つの異なる作製物を用いて、4つの独立した実験が実施された。
【図3】FGFR Igモジュール2、3と、NCAM F3モジュール1、2、またはデンドリマーFGループ・ペプチド(配列番号1)の間の結合に対するATPの阻害効果を説明する。前記結合はSPR分析によって調査された。FGFRモジュールの約2000個の共鳴ユニット(RU)をセンサー・チップに固定した。3つの独立した実験が実施された。a) 10 mMのATPの存在下または不存在下での、30 μMのF3モジュール1、2のFGFRモジュールへの結合。b) 30 μMのF3モジュール1、2と、固定されたFGFRモジュールの結合のATPによる阻害率(%)対阻害に使用したATP濃度のプロット、ならびに算出されたKi値。c) 固定されたFGFRモジュールへのデンドリマーFGループ・ペプチド(34、17、および8 μM濃度)の結合、および10 mMのATPの存在下での34 μMのペプチドの結合。
【図4】SPRによって記録された、デンドリマーEFループ・ペプチド(配列番号9)と、FGFR Igモジュール2、3の間の結合を説明する。前記結合は、固定されたFGFRモジュールを有するセンサー・チップへの結合と、ブランク・センサー・チップへの結合(非特異的な結合)の間の応答の相違(Resp.Diff)として得られる。使用された全てのタンパク質の2つの異なる作製物を使った、4つの独立した実験が実施された。
【図5】FGFRのリン酸化に対するNCAM F3モジュール2、およびFGループ・ペプチドの効果を示し、そしてFGFRによるNCAM免疫沈降を説明する。a) C末端StrepII−タグを含むFGFRで安定に形質移入されたTREX-293細胞を、10 ng/mlのFGF2、5 μMのF3モジュール2、または2.5 μMのデンドリマーFGループ・ペプチドのいずれかで20分間も刺激した。刺激後に、抗ホスホチロシン抗体を使って、FGFRは免疫精製し、そしてStrepII−タグに対する抗体を使ったイムノブロッティング法によって分析した。b) FGFR1のHis-タグ・バージョンで一時的に形質移入されたHEK293細胞を、5 μMのF3モジュール2、または25 μMのFGループ・ペプチドのいずれかで20分間刺激した。FGFR1の総量とFGFRリン酸化の量を、それぞれ、抗ペンタhis(抗-His)と、抗ホスホチロシン(抗-pY)抗体を使ったイムノブロッティング法によって評価した。FGFRリン酸化の定量を、バンド強度の濃度測定分析によって実施した。リン酸化を、1.0に標準化された対照(未処理細胞)に関連して評価した。エラーバーは平均の1つの標準誤差を表す。P<0.05、処理細胞を対照と比較した場合の対応のあるt検定による(t検定は非標準化データの6つの独立したセットで実施された)。Ctlは対照を、FはF3モジュール2を、FGLはFGループ・ペプチドを表す。c) C末端StrepII−タグを含むFGFRで安定に形質移入されたTREX-293細胞を、対照ベクターまたはNCAMで一時的に形質移入した。FGFRをStrepII−タグによって細胞ライセートから精製し、そしてNCAMに対する抗体を使ったイムノブロッティング法によって分析した。
【図6】海馬ニューロンからの神経突起伸長に対するNCAM F3モジュール2と、そのFGFR結合部分(FGループ・ペプチド(配列番号1))の効果を示す。a) 対照(未処理)ニューロンの位相差顕微鏡写真。b) 5 μMのF3モジュールで処理したニューロンの位相差顕微鏡写真。c) 神経突起の長さ対F3モジュール、FGループ・ペプチド、およびペプチドの切断バージョンの濃度。d) 5 μMのF3モジュールまたは50 μMのFGループ・ペプチドによって誘発された神経突起の伸長に対する抗FGFR抗体の効果。e) 海馬ニューロンからの神経突起の伸長に対するFGループ・ペプチドのAlaの様々なアミノ酸による置き換え、または上記ペプチドの切断バージョンの効果。上記様々なペプチドの濃度は、あらゆる場合において50 μMであった。4つの独立した実験を実施した。エラーバーは、平均の1つの標準誤差を表す。*および**は、それぞれp<0.05およびp<0.01の(t検定による)統計的有意性を表わす。
【図7】海馬ニューロンからの神経突起の伸長に対するEFループ・ペプチド(EFLペプチド)(配列番号9)の効果を示す。SU5402はFGFR1の特異的阻害因子である。
【図8】NCAMおよびFGF2のFGFR結合部分由来のペプチドの間の配列的、構造的、および機能的類似点を示す。a) ペプチドの配列アラインメント、この中で、記号、|、|| 、:、・は、高い類似度から低い類似度へと下がっていく順で類似レベルを示し;そしてNCAM(1)とFGF2(2)由来のペプチドの骨格原子の構造的なアラインメントを示す。b) 対応するNCAM誘導ペプチドとの比較を含めた、海馬ニューロンからの神経突起の伸長に対するFGF2由来ペプチドおよび様々なAlaの置換型の効果。4つの独立した実験が実施された。エラーバーは平均の1つの標準誤差を表す。*は、(t検定による)p<0.05の統計的有意性を表す。
【図9】NCAM F3モジュール2、単量体FGループ・ペプチド、および上記ペプチドの修飾バージョンの、海馬ニューロンからの神経突起の伸長を刺激する能力に対するATP(a)およびAMP-PCP(b)の効果を示す。様々な濃度(0、0.4、1.0 mM)のATPまたはAMP-PCPの存在下、ニューロンを、5 μMの2番目のF3モジュールまたは50 μMのペプチドのいずれかで刺激した。cntは対照を、F3はF3モジュールを、FGLはFGループ・ペプチドを、ならびにYKKは、Y74、K83、およびK85がアラニンで置換されたFGループ・ペプチドを表す。4つの独立した実験が実施された。エラーバーは平均の1つの標準誤差を表す。*および**は(t検定による)それぞれp<0.05およびp<0.01の統計的有意性を表す。
【図10】競合的ELISAによって計測された、無処置のFGLペプチド(配列番号1)(白抜きの棒)およびその様々な切断変異体(t1-t6、平行線模様の棒)と、無処置のFGLペプチドに対するポリクローナル抗体との免疫反応性を示す。
【図11】軸索関連細胞接着分子由来の配列番号5に記載の配列の断片によるネズミ海馬ニューロンの神経突起伸長のインビトロでの刺激の結果を示す。処理細胞を、処理を受けていない細胞と比較した。
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つのタンパク質間の相互作用を調節するための方法に関する、ここで、上記2つのタンパク質の少なくとも一方が機能性細胞表面レセプターであって、もう一方のタンパク質が上記レセプターのリガンドである。好ましくは、本発明は線維芽細胞成長因子レセプター(FGFR)とFGFRリガンドの相互作用に関係する。本発明はFGFRリガンドのFGFR結合部位を形成することに関与する一連のアミノ酸配列にさらに関する。しかも、本発明は、FGFRと上述の結合部位をもつタンパク質の間の相互作用を調節することができる候補化合物の分子設計およびスクリーニング方法を特色とし、そしてそのような化合物の同定のためのスクリーニング・アッセイを提供する。
【背景技術】
【0002】
免疫グロブリン・スーパーファミリーの神経細胞接着分子(CAMs)は、初期発生の間および成人で、核となり、そして主要な部位にて細胞群を維持する。
【0003】
それらの接着特性に加えて、CAMsのホモフィリックとヘテロフィリックな相互作用は、細胞内のシグナル伝達に影響しうる。従って、細胞の遊走、増殖、および分化を含む発生事件に影響を与えるそれらの能力は、それらの接着特性、ならびにそれらのシグナル伝達特性の両方に起因するのかもしれない。
【0004】
神経細胞接着分子、NCAMは、最初に発見された神経系CAMだった。発見以来、NCAMは集中的に調査されていて、現在十分に特徴づけられている。
【0005】
NCAMは免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーに属している。その細胞外部分は5つのIg様モジュールと、2つのIII型フィブロネクチン(F3)モジュールから成る(Berezin et al., 2000)。NCAMは、細胞−細胞、および細胞−基層相互作用の両方を補助する。NCAMは、ヘパリン/ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、プロテオグリカン、および異なる型のコラーゲンといった様々な細胞外マトリックス成分に結合する。細胞−細胞相互作用は、たいていNCAMホモフィリック相互作用によって補助される。
【0006】
NCAMの異なるモジュールが、異なる機能を実施することが示された。このように、現在、NCAMホモフィリック結合は、最初の3つのIgモジュールに依存すると思われている。ヘパリン結合配列はIg2モジュールに局限されている。NCAMは神経細胞接着分子L1に同様に結合する。この相互作用はNCAMの4番目のIgモジュールの間でおこなわれていると思われ、そしてオリゴマンノシド部分がL1で発現した。NCAMの2つの膜近位F3モジュールはFGFR結合に関与することが示唆された。NCAMの多数のリガンド中で、最も興味深いものが相変わらずATPである。NCAMがアデノシン三リン酸(ATP)に細胞外で加水分解されることは証明されていて(Dzhandzhugazyan and Bock, 1993 and 1997)、そして近位F3モジュールがNCAMのこの作用に関与することが示唆されていた。最近、ATPがNCAMの誘発した神経突起生成のモジュレーターであることが証明された(Skladchikova et al., 1999)。しかし、脳内で最も多い神経伝達物質の1つである細胞外ATPの役割は、NCAMの知られている生物学的機能に関して十分に理解されていない。
【0007】
現在、多数の調査グループが、NCAM介在軸索伸長の根底にある細胞内シグナル伝達カスケードが線維芽細胞成長因子レセプター(FGFR)の刺激によって活性化されるシグナル伝達カスケードに類似していることを示す証拠の大部分を積み上げている。
【0008】
線維芽細胞成長因子レセプター(FGFRs)は、細胞外の3つのIg様モジュールと、細胞内の開裂チロシンキナーゼ・モジュールから成る4つ近縁のレセプター・タンパク質チロシン・キナーゼのファミリーである(Powers et al., 2000)。前記レセプターは、形態形成、発生、血管形成、および創傷治癒の主要なレギュレーターとして知られている。FGFR活性化とシグナル伝達は、そのリガンド、線維芽細胞成長因子(FGF)の高親和性結合によって誘発されるレセプターの二量体化に依存しており、かつ、それは細胞表面ヘパリンまたはヘパラン硫酸プロテオグリカンの関与を同様に必要とする。
【0009】
主な神経系CAMs、NCAM、L1、およびN−カドヘリンの全てがFGFRの新しいクラスの推定上の代替リガンドとみなされるが、これまでのところ、これらのCAMsとレセプターの間の直接的な相互作用に関するいずれかの証拠は得られていない。FGFRとの相互作用のための必要条件であるかもしれない共通の構造的モチーフの同定は、FGFR活性の制御が重要な役割を担う種々の病理的な障害の治療のための新薬の開発の観点から非常に有利であるように思われる。
【発明の開示】
【0010】
本発明の概要
本発明は、少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用を調節する方法に向けられ、ここで、少なくとも2つの異なるタンパク質の一方が機能性細胞表面レセプター、またはその断片もしくは変異体に相当し、かつ、少なくとも2つの異なるタンパク質のもう一方が上記レセプターへの結合部位を有するポリペプチドに相当し、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む、そして上記方法が以下のステップ:
i) それによって上記レセプターと上記ポリペプチドの相互作用を妨害する、当該レセプターおよび/またはポリペプチドと相互作用できる化合物を準備し、そして
ii) 上記少なくとも2つの異なるタンパク質にステップ(i)の化合物を提示する、
を含む。
【0011】
本発明は、少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用を調節する方法に向けられ、ここで、少なくとも2つの異なるタンパク質の一方が機能性細胞表面レセプター、またはその断片もしくは変異体に相当し、かつ、少なくとも2つの異なるタンパク質のもう一方が上記レセプターへの結合部位を有するポリペプチドに相当し、ここで、上記結合部位が1以上の「ストランド−ループ−ストランド」構造モチーフから本質的に成る、そして上記方法が以下のステップ:
i) それによって上記レセプターと上記ポリペプチドの相互作用を妨害する,当該レセプターおよび/またはポリペプチドと相互作用できる化合物を準備し、そして
ii) 上記少なくとも2つの異なるタンパク質にステップ(i)の化合物を提示する、
を含む。
【0012】
本発明の他の側面は、少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用を調節することができる候補化合物のスクリーニング方法に関係し、ここで、少なくとも2つの異なるタンパク質の一方が機能性細胞表面レセプターか、その断片もしくは変異体に相当し、かつ、少なくとも2つの異なるタンパク質のもう一方が上記レセプターへの結合部位を有するポリペプチドに相当し、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む、そして上記方法が以下のステップ:
i) 少なくとも2つの異なるタンパク質を準備し;
ii) 化合物を準備し;
iii) ステップ(i)の少なくとも2つの異なるタンパク質にステップ(ii)の化合物を提示し;
iv) 上記化合物を上記タンパク質に提示した前後で上記少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用を測定し;
v) 上記少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用が上記提示された化合物によって調節されたかどうかを測定し、そして
vi) 上記少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用を調節することができる候補化合物を選ぶ、
を含む。
【0013】
さらに、本発明は、少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用を調節することができる候補化合物の連続スクリーニング・アッセイを開示し、ここで、少なくとも2つの異なるタンパク質の一方が機能性細胞表面レセプターか、その断片もしくは変異体に相当し、かつ、少なくとも2つの異なるタンパク質のもう一方が上記レセプターへの結合部位を有するポリペプチドに相当し、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む、そして上記アッセイが以下のステップ:
i) 少なくとも1つの機能性細胞表面レセプター分子、またはその断片もしくは変異体、および上記レセプターに対する結合部位を有する少なくとも1つのポリペプチドを準備し、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体もしくは相同体、または上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む;
ii) ステップ(i)の少なくとも1つのレセプター分子をステップ(i)の少なくとも1つのポリペプチドに提示するか、またはステップ(i)の少なくとも1つのレセプター分子をステップ(i)の少なくとも1つのポリペプチドに提示し、そして上記レセプターと上記ポリペプチドの間で相互作用させ;続いて
iii) ステップ(ii)の分子間の相互作用を記録し;
iv) ステップ(ii)の分子に候補化合物を提示し;
v) ステップ(iv)の分子間の相互作用を記録し、続いて
vi) ステップ(iv)の分子間の相互作用に対する候補化合物の少なくとも1つの効果を評価し、続いて
vii) 少なくとも1つの機能性細胞表面レセプター分子とステップ(i)の少なくとも1つのポリペプチドの間の相互作用を調節することができる化合物の選ぶ、
を含む。
【0014】
本発明の方法およびアッセイは、この調節が可能な化合物による、FGFRとFGFR結合部位を含むタンパク質の間の相互作用の調節のために好ましくは全て設計されており、上記部位は配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体もしくは相同体の少なくとも1つを含む。そのため、そのような化合物の分子設計の方法を準備することが本発明の重要な側面であり、上記方法は、FGFRと上述の結合部位を含むタンパク質の結合に関する構造的なデータを含み、上記データはFGFRとNCAMの間の相互作用の分子モデルを含む。
【0015】
さらに、少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用を調節することができる候補化合物の単離方法を準備することが本発明の重要な他の位置であり、ここで、少なくとも2つの異なるタンパク質の一方が機能性細胞表面レセプターか、その断片もしくは変異体に相当し、かつ、少なくとも2つの異なるタンパク質のもう一方が上記レセプターへの結合部位を有するポリペプチドに相当し、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む、そして上記アッセイが以下のステップ:
i) 先に規定されている上記候補化合物の連続スクリーニング方法を準備し、および/または
i) 先に規定されている上記候補化合物の分子設計方法を準備し、
ii) 上記候補化合物を単離する、
を含む。
【0016】
本発明は、配列番号2〜146に記載の配列をもつ一連のペプチド断片をさらに開示し、上記断片は、i) FGFRとの直接的な相互作用に関与するか、またはFGFRリガンド上のFGFR結合部位の一部を表し、および/またはii) 少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用を調節することができる、ここで、少なくとも2つの異なるタンパク質の一方が機能性細胞表面レセプターか、その断片もしくは変異体に相当し、かつ、少なくとも2つの異なるタンパク質のもう一方が上記レセプターに対する結合部位を有するポリペプチドに相当し、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む。
本発明は、上述のペプチド断片を含む化合物、および薬剤の準備のための上記化合物の使用にも関する。
【0017】
さらに、本発明は、以下の:
i) 細胞表面レセプターの結合部位を含むエピトープに結合することができる抗体(ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体もしくは相同体)、あるいは上記抗体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む;
ii) 配列番号1〜146に記載の配列、または上記抗体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含むエピトープに結合することができる抗体、
に関する。
【0018】
本発明は、上述の抗体の製造方法を同様に提供する。さらに、本発明は、以下の:
1) 細胞表面レセプター、またはその断片もしくは変異体と、上記レセプターに対する結合部位を有するポリペプチドの間の相互作用の調節のため、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む、
2) 薬剤の製造のため、および
3) サンプル中の、配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含むエピトープを含む物質の存在を測定するため、
に先に規定されている抗体の使用にも関連する。
【0019】
最後に、本発明は候補化合物を同定するステップ、さらに細胞表面レセプター、またはその断片もしくは変異体と、上記レセプターに対する結合部位を有するポリペプチドの間の相互作用の調節ができる化合物を、医薬として許容される担体または溶剤と一緒に処方するステップを含む医薬組成物の製造方法に関する、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む。
【0020】
表1は、NOE統計学、エネルギー条件、およびNMR計測から計算された理想的なジオメトリからの偏差の概要を表す。
【0021】
【化1】
【0022】
【化2】
【0023】
【化3】
【0024】
発明の詳細な説明
2つのタンパク質間の相互作用の調節方法
多細胞生物の細胞は、精巧なコミュニケーション・システムを使って互いにコミュニケートし、そして細胞環境の種々のシグナルに応答している。このシステムは、シグナルを受け取る細胞表面レセプターの分子と、細胞内にシグナルを導入し、そして伝える細胞表面および細胞内タンパク質の間の相互作用の見事に調整されたネットワークを利用することによって、1つの細胞が多数のシグナルに的確に反応することを可能にしている。このネットワークの1つの相互作用へのわずかな介入が、多くの場合、細胞外シグナルに対する特異的な細胞応答の大きな変化をもたらすかもしれない。
【0025】
それ故に、本発明は、1つの側面において、少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用を調節する方法に関する、ここで、上記少なくとも2つの異なるタンパク質の一方は、機能性細胞表面レセプター、またはその断片もしくは変異体に相当し、そして少なくとも2つの異なるタンパク質のもう一方は、上記レセプターに対する結合部位を有するポリペプチドに相当し、ここで、上記結合部位の少なくとも一部は、配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、または上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む、そして上記方法は、以下のステップ:
i) それによって上記レセプターと上記ポリペプチドの相互作用を妨害することができる、当該レセプターおよび/または当該ポリペプチドに相互作用する化合物を準備し、
ii) 上記少なくとも2つの異なるタンパク質にステップ(i)の化合物を提示する、
を含む。
【0026】
このように、機能性細胞表面レセプターともう1つのタンパク質の間の相互作用の調節は本発明の方法の最初の目的である。
本文脈において用語「相互作用」は、機能性細胞表面レセプターが一時的または永久的に、直接的または間接的に他のタンパク質と接触すること意味する。
【0027】
機能性細胞表面レセプター
細胞表面レセプターは、本発明の内容において、少なくとも1つのポリペプチド鎖を含むいずれかの分子と規定され、上記分子は、となるように細胞の原形質膜に会合している。上記分子が膜の外側でシグナルを受け取り、膜を通って上記シグナルを伝達し、そして、例えば分子複合体の会合または解離を誘発することによって、または生化学の反応、例えばレセプターの自動リン酸化、もしくは細胞内シグナル伝達の開始をもたらすレセプターのタンパク質分解性の分割、の開始によって細胞内の分子レベルへのある行動を誘発することによって、さらにシグナルを伝達する、ことを可能にする。
【0028】
本発明は、「機能性細胞表面レセプター」に対して規定する。「機能性細胞表面レセプター」は、本発明の細胞表面レセプターには特定可能なリガンドのグループがあり、細胞の生理学的な応答をもたらす上記レセプターへのこれらのリガンドの結合が細胞内のシグナル伝達を誘発することを意味する。
【0029】
生理学的な応答、例えば分化、増殖、生存、アポトーシス、または細胞の運動性は、上記レセプターとの相互作用に関与するリガンド、および/または相互作用の特性、例えば親和性、または継続時間、および/または上記レセプターを発現する細胞の種類、に依存する。用語「リガンド」は、レセプターに結合することができ、そしてそれによって上記レセプターを活性化する化合物と規定される。レセプターの「活性化」は、リガンドの細胞外結合後に、上記レセプターが「リガンド結合」の効果を、細胞の先に触れた生理学的な応答の1つをもたらす、「レセプターのシグナル伝達」または細胞内への「シグナル伝達」と集合的に呼ばれる生化学の反応のカスケードの中に伝えることが出来るようになること意味する。
【0030】
リガンド結合による細胞過程を誘発および/または維持する細胞表面レセプターの能力は、本明細書中においてレセプターの「生物学的機能」と呼ばれる。
【0031】
他のタンパク質を認識し、かつ、それと相互作用する)本発明の機能性細胞表面レセプターは、好ましい態様において、FGFR1、FGFR2、FGFR3、およびFGFR4を含む線維芽細胞成長因子レセプター(FGFRs)ファミリーのレセプターである。最も好ましい態様で、本発明の細胞表面レセプターは、FGFR1またはその機能性相同体である。
【0032】
用語「レセプターの機能性相同体」は、以下の:
i) FGFRのリガンドの細胞外結合、そしてそれによる、細胞内におけるレセプター依存性シグナル伝達カスケードの活性化、および/または
ii ) FGFRのアダプター分子の細胞内結合、そしてそれによる細胞内におけるレセプター依存性シグナル伝達カスケードの活性化、
が可能な分子を意味する。
【0033】
用語「結合」は、FGFR相同体と、FGFRに対する結合部位がある対分子(counter molecule)の間の直接的または間接的な相互作用を表す。本文脈で、対分子はFGFRの細胞外のリガンド、または細胞内アダプター分子である。「アダプター分子」は、本発明の内容において、レセプターの「活性化状態」を認識し、そのようなレセプターに選択的に結合して、シグナル伝達の反応のカスケードを誘発することによって細胞の「活性化されたレセプター」のシグナルを伝達する分子と規定される。細胞内アダプター分子は、例えばSTN、FRS、Grb、SHP2、PLCγ、またはPIP3によって表される。
【0034】
本発明は、FGFRに比較的に低い親和性をもつリガンドに関する。親和性は、分子間の誘引力の強さを意味する。本文脈のFGFRのリガンドは、FGFRに対する少なくとも1つの結合部位を含み、かつ、上記レセプターに低い親和性結合が可能である分子として判断される。このように、本発明により、細胞表面レセプターとの相互作用に関係する他のタンパク質がFGFRリガンドの1つの側面である。
【0035】
結合部位
本発明によると、細胞表面レセプターはレセプター結合部位を通して他のタンパク質と相互作用し、上記結合部位が上記他のタンパク質上に位置している。分子の結合部位は、他の分子との相互作用に関与する上記分子の特定の部分と規定されうる。本文脈で、「結合部位」は、その特異的な特徴が直接的、かつ、選択的に他の分子、例えばレセプター分子、と相互作用する能力を当該タンパク質に与える、タンパク質の断片と規定される。本文脈で「特定の機能」は、結合部位として言及される特定のアミノ酸配列またはタンパク質の断片の3次元構造と理解されている。本文脈中で、用語「選択的に」は、結合部位が特定の分子または特定のグループの分子との相互作用に関与することを意味し、上記分子は結合部位を認識し、そしてそれと相互作用できるようにする特定の構造を有する。
【0036】
1つの態様において、本発明は細胞表面レセプターに対する結合部位を特徴とする、ここで、少なくとも一部の上記結合部位が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含み、例えば上記断片、変異体、および相同体は以下に規定される。
【0037】
他の態様において、結合部位または上記結合部位の少なくとも一部が、配列番号1〜10、100、125、例えば配列番号2〜10、100、125に記載の配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む。本発明は、配列番号1〜10、100、125、または配列番号2〜10、100、125に記載の所定の配列の長さの少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%をもつ配列に関する、ここで、断片と所定の配列の間のアミノ酸配列相同性は100%である。本文脈の変異体は、配列番号1〜10、100、125または配列番号2〜10、100、125から選ばれる配列と、少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは95%の相同性を有するアミノ酸配列、あるいは配列番号1〜10、100、125または配列番号2〜10、100、125から選ばれる配列と比較して、少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは95%の正のアミノ酸一致があるアミノ酸配列、と規定される。
【0038】
正のアミノ酸一致は、2つの比較配列内の同じ位置をもつアミノ酸の物理的および/または化学的性質によって規定された同一性または類似性と規定される。本発明の好ましい正のアミノ酸一致は、K対R、E対D、L対M、Q対E、I対V、I対L、A対S、Y対W、K対Q、S対T、N対S、およびQ対Rである。一方のアミノ酸配列と他のアミノ酸との相同性は、上記2つの照合された配列の同じアミノ酸の百分率として規定される。本文脈の相同体は、所定の配列の物理的性質、例えば3次元構造、または機能性性質、例えば他の分子、特にレセプター分子との相互作用する能力を維持した、配列番号1〜10、100、125または配列番号2〜10、100、125に記載の配列のいずれかに、60%より低く19%より高い、例えば50〜59%、例えば55%、例えば40〜49%、例えば45%、例えば30〜39%、例えば35%、例えば20〜29%、例えば25%の相同性をもつアミノ酸配列と規定される。本文脈の相同体の変異体は、配列番号1〜10、100、125または配列番号2〜10、100、125から選ばれる配列のいずれかの相同体と比べて少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、好ましくは95%の正のアミノ酸一致を有するアミノ酸配列と規定される。正のアミノ酸一致の好ましい態様は、先に触れたとおり規定される。本発明は、先に規定される細胞表面レセプターと相互作用する所定の配列の能力を維持する断片、変異体、および相同体に関係する。
【0039】
さらに他の態様において、本発明は、配列番号1〜10、100、125または配列番号2〜10、100、125に記載の配列のいずれかの少なくとも1つの変異体、断片、または相同体を含む結合部位を特徴とすし、上記変異体、断片、または相同体は、配列番号11〜99、101〜124、126〜146に一致する配列から好ましくは選ばれている。
【0040】
先に記載された結合部位は、本発明によると特定の構造的な特徴によって特徴づけられる。好ましくは、本発明は、本質的に1以上の「ストランド−ループ−ストランド」構造モチーフから成る結合部位を特徴とする。
【0041】
隣接しているアミノ酸配列のアミノ酸側鎖は互いに相互作用する。多数の相互作用が、アミノ酸配列を特定の構造パターン、例えば配列のアミノ酸によって通常測定されるα-へリックスおよびβ-ストランド、への上記アミノ酸配列の折り畳みをもたらす。個々のパターンのアミノ酸の間の相互作用は、簡潔な3次構造に折り畳まれた、ポリペプチドの長いアミノ酸配列を保持する。3次構造において、ポリペプチドのアミノ酸配列は、折り返しを作り、それによりループ領域を作ることによって突然その方向を逆行させる、α-へリックスまたはβ-ストランドのいずれかとして、構造体全体を横切ってその前後に曲がる傾向にある。(長さが異なり、かつ、不規則な形をもちうる上記ループ領域は、多くの場合、他の分子の結合部位を形成する。本発明は、少なくとも1つのループ領域を含む結合部位に関係する。結合部位の少なくとも1つのループ領域が2つの相互作用しているβ−ストランドに接続し、それにより「ストランド−ループ−ストランド」構造モチーフを形成する場合、それが好ましい。当該内容における用語「モチーフ」は、特定の長さのアミノ酸の規定された配列を有する、および/または特定の構造的な特徴によって特徴づけられる、ならびに/あるいは(場合により)タンパク質のグループに一般的な特定の機能的能力を有する、タンパク質のポリペプチド鎖の単位を意味する。
【0042】
結合部位を含むポリペプチド
先に記載のとおり、α-へリックスとβ−ストランドは密に詰まり、そしてタンパク質の密に折り畳まれた3次構造を形成する。タンパク質が長い、例えば100アミノ酸より長い、アミノ酸配列を含む場合、その3次構造は、その各々がタンパク質ドメインと呼ばれる、数個のモジュラー単位から成るかもしれない。ドメインは、50〜350アミノ酸を含むポリペプチド鎖のセクションから通常成る。球状の構造体を作るのに限られた数のα-へリックスとβ−ストランドの組み合わせ方しかないので、これらの要素の特定の組み合わせが、これらのタンパク質にいくつかの共通の構造的な特徴を与える、関連した、および関連がないタンパク質のコアにおいて繰り返し生じる。本発明は、共通の構造的な特性を有する、構造的に関連するタンパク質と、構造的に関連がないタンパク質の両方のタンパク質を意図する。好ましい態様において、本発明は互いに相互作用することができる少なくとも2つの異なるタンパク質に関係する、ここで、上記少なくとも2つのタンパク質の少なくとも1つが、少なくとも2つの免疫グロブリン(Ig)様ドメイン、および/または少なくとも2つのフィブロネクチン・タイプ3(F3)ドメイン、または少なくとも1つのIg様ドメインと少なくとも1つのF3ドメインを含む。
【0043】
本発明によると、機能性細胞表面レセプターは他のタンパク質と相互作用する。好ましくは、本発明は細胞表面レセプターと異種タンパク質の間の相互作用に関連する。本文脈で用語「異種の」は、そのアミノ酸配列が上記レセプターのポリペプチド鎖のアミノ酸配列と最大40%の相同性および/または最大50%の正のアミノ酸一致を有するタンパク質を意味する。好ましくは、前記異種タンパク質自体はレセプターのあらゆる生物学的機能を実行することができない。好ましくは、異種タンパク質が細胞外タンパク質、または少なくともその一部が細胞外空間にさらされているタンパク質である。しかし、上記タンパク質が先に記載のレセプターに対する結合部位を含む場合、レセプターのポリペプチド鎖のアミノ酸配列と40%より高い相同性、および/または50%より高い正のアミノ酸の一致を有するあらゆる異種タンパク質であっても本発明の範囲内にある。
【0044】
本発明は、膜貫通、細胞表面関連、細胞外マトリックス関連、または可溶性タンパク質を含む群から好ましくは選ばれる、先に記載の結合部位を含む異種タンパク質に関連する。
【0045】
タンパク質は、そのタンパク質のポリペプチド鎖の少なくとも一部が細胞外に位置する場合、上記タンパク質のポリペプチド鎖の少なくとも一部が原形質膜貫通ドメインに相当する場合、かつ、上記タンパク質のポリペプチド鎖の少なくとも一部が細胞内に位置している場合、本文脈中で「膜貫通」と規定された、ここで、上記少なくとも1つの細胞外部分が少なくとも1つの膜貫通ドメインによって少なくとも1つの細胞内部分に接続する。
【0046】
本文脈で「原形質膜関連タンパク質」は、原形質膜と直接的または間接的な接触があるタンパク質と規定される。「直接的な」接触は、を意味する そのタンパク質に共有結合した部分、例えば脂質部分、例えばグリコシルホスファチジルイノシトールまたは脂肪酸部分、によって会合した膜と直に接続のある上記タンパク質である。「間接的な」接触は、そのタンパク質が複合体の状態、例えば他のタンパク質、リポ多糖、またはプロテオグリカン分子、で会合された、そのタンパク質が他の分子によって膜との接触をもつことを意味する。
【0047】
本文脈中で細胞外マトリックス関連タンパク質は、タンパク質、またはポリペプチド鎖を含む分子であって、化学結合を通しての細胞外マトリックスの成分に結合している上記タンパク質または上記分子、あるいは上記タンパク、または上記分子自体が細胞外マトリックスに隣接した成分であるものと規定される。
【0048】
本文脈の可溶性タンパク質は、細胞外空間の溶液中、遊離状態で存在するタンパク質、例えば、分泌タンパク質、膜関連タンパク質の細胞外タンパク質分解によって生じた脱落タンパク質、を意味する。
さらに、本発明は、上述のグループからの特定のポリペプチドを特徴とし、それらは好ましくは細胞接着分子、細胞表面レセプター、プロテオグリカン、膜アンカー型細胞表面タンパク質分解酵素、細胞外マトリックス分子、または成長因子から選ばれる。
【0049】
よって、1つの態様において、本発明のポリペプチドは以下のものを含む細胞接着分子群から選ばれる:
−神経細胞接着分子(NCAM)(Swiss-Prot Ass. Nos:P13591, P13595-01, P13595)、
−神経細胞接着分子L1(Swiss-Prot Ass. Nos:Q9QYQ7, Q9QY38, P11627, Q05695, P32004)、
−神経細胞接着分子-2(NCAM-2)(Swiss-Prot Ass. No:P36335)、
−ニューロングリア細胞接着分子(Ng-CAM)(Swiss-Prot Ass. No:Q03696; Q90933)、
−神経細胞接着分子CALL(Swiss-Prot Ass. No:O00533)、
【0050】
−ニューログリアン(Neuroglian)(Swiss-Prot Ass. No:P91767, P20241)、
−Nr-CAM(HBRAVO、NRCAM、NR-CAMs12).(Swiss-Prot Ass. Nos:Q92823, O15179, Q9QVN3)、
−アキソニン(Axonin)-1/TAG-1(Swiss-Prot Ass. Nos:Q02246, P22063, P28685)、
−アキソナル(Axonal)関連細胞接着分子(AxCAM)(NCBI Ass. No:NP_031544.1; Swiss Prot. Ass. No:Q8TC35)、
−ミエリン関連糖タンパク質(MAG)(Swiss-Prot Ass. No:P20917)、
−神経細胞接着分子BIG-1(Swiss-Prot Ass. No:Q62682)、
−神経細胞接着分子BIG-2(Swiss-Prot Ass. No:Q62845)、
【0051】
−ファシクリン(FAS-2)(Swiss-Prot Ass. No:P22648)、
−神経細胞接着分子HNB-3/NB-3(Swiss-Prot Ass. Nos:Q9UQ52, P97528, Q9JMB8)、
−神経細胞接着分子HNB-2/NB-2(Swiss-Prot Ass. Nos:O94779, P07409, P97527)、
−カドヘリン(Swiss-Prot Ass. No:Q9VW71)、
−接合部接着分子-1(JAM-1)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q9JKD5, O88792)、
−神経細胞接着F3/F11(Contactin)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q63198, P1260, Q12860, Q28106, P14781, O93250)、
−ニューロファシン(Neurofascin)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q90924, Q91Z60; O42414)、
−Bリンパ球細胞接着分子CD22(Swiss-Prot Ass. Nos:Q9R094, P20273)、
【0052】
−ネオゲニン(Neogenin)(NEO1)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q92859, P97603, Q90610, P97798)、
−細胞間細胞接着分子-5(ICAM-5/telencephalin)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q8TAM9, Q60625,または
−ガラクトース結合レクチン-12(ガレクチン-12)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q91VD1, Q9JKX2, Q9NZ03)、
−ガラクトース結合レクチン-4(ガレクチン-4)(Swiss-Prot Ass. No:Q8K419; P38552)、
またはその断片もしくは変異体。
【0053】
他の態様において、上記ポリペプチドは以下のものを含む機能性細胞表面レセプター群から選ばれる:
−線維芽細胞成長因子レセプター1(FGFR1)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q9QZM7, Q99AW7, Q9UD50, Q63827)、
−線維芽細胞成長因子レセプター2(FGFR2)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q96KM2, P21802, Q63241)、
−線維芽細胞成長因子レセプター3(FGFR3)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q95M13, AF487554, Q99052)、
−線維芽細胞成長因子レセプター4(FGFR4)(Swiss-Prot Ass. No:Q91742)、
−ニューロトロピン・チロシン・キナーゼタイプ-2(NTRKT-2)(Swiss-Prot Ass. No:Q8WXJ5)、
【0054】
−白血球抗原関係タンパク質−チロシン・ホスファターゼ(LAR-PTPRF)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q9EQ17, Q64605, Q64604, Q9QW67, Q9VIS8, P10586)、
−ネフリン(Swiss-Prot Ass. Nos:Q925S5, Q9JIX2, Q9ET59, Q9R044, Q9QZS7, Q06500)、
−タンパク質−チロシン・ホスファターゼ・レセプター・タイプS(PTPRS)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q64699, Q13332, O75870)、
−タンパク質−チロシン・ホスファターゼ・レセプター・タイプ・カッパ(R-PTP-kappa)(Swiss Prot Ass. No:Q15262)、
−タンパク質−チロシン・ホスファターゼ・レセプター・タイプD(PTPRD)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q8WX65, Q9IAJ1, P23468, Q64487)、
−EphrinタイプAレセプター8(EPHA8/チロシン−タンパク質キナーゼ・レセプターEKK)(Swiss-Prot Ass. Nos:O09127, P29322)、
【0055】
−EphrinタイプAレセプター3(EPHA8/チロシン−タンパク質キナーゼ・レセプターETK-1/CEK4)(Swiss-Prot Ass. No:P29318)、
−EphrinタイプAレセプター2(Swiss-Prot Ass. No:Q8N3Z2)、
−インシュリン・レセプター(IR)(Swiss-Prot Ass. No:Q9PWN6)、
−インシュリン様成長因子-1レセプター(IGF-1)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q9QVW4, P08069, P24062, Q60751, P15127, P15208)、
−インシュリン関連レセプター(IRR)(Swiss-Prot Ass. No:P14616)、
−チロシン−タンパク質キナーゼ・レセプターTie-1(Swiss-Prot Ass. Nos:06805, P35590, Q06806)、
−ラウンドアバウト・レセプター-1(robo-1)(Swiss-Prot Ass. Nos:O44924, AF041082, Q9Y6N7)、
【0056】
−神経細胞ニコチン性アセチルコリン・レセプターアルファ3サブユニット(CHRNA3)(Swiss Prot Ass. Nos:Q8VHH6, P04757, Q8R4G9, P32297)、
−神経細胞アセチルコリン・レセプターアルファ6サブユニット(Swiss-Prot Ass. Nos:Q15825, Q9ROW9)、
−血小板由来成長因子レセプターβ(PDGFRB)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q8R406, Q05030)、
−インターロイキン-6レセプター(IL-6R)(Swiss-Prot Ass. No:Q00560)、
−インターロイキン-23レセプター(IL-23R)(Swiss-Prot Ass. No:AF461422)、
【0057】
−IL-3、IL-5、およびGmCsfのβ−共通サイトカイン・レセプター(Swiss-Prot Ass. No:P32927)、
−サイトカイン・レセプター様分子3(CRLF1)(Swiss-Prot Ass. No:Q9JM58)、
−クラスIサイトカイン・レセプター(ZCYTOR5)(Swiss-Prot Ass. No:Q9UHH5)、
−ネトリン-1レセプターDCC(Swiss-Prot Ass. No:P43146)、
−白血球Fcレセプター様タンパク質(IFGP2)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q96PJ6, Q96KM2)、
−マクロファージ・スカベンジャー・レセプター2(MSR2)(Swiss-Prot Ass. No:Q91YK7)、または
−顆粒球コロニー刺激因子レセプター(G-CSF-R)(Swiss-Prot Ass. No:Q99062)、
またはその断片もしくは変異体。
【0058】
さらに別の態様において、前記ポリペプチドはプロテオグリカンの群から選ばれる。より好ましくは、前記プロテオグリカンはヘパラン硫酸プロテオグリカンを含む群から選ばれる。最も好ましい態様において、前記プロテオグリカンはパールカン(Swiss-Prot Ass. No:P98160)、またはその断片もしくは変異体である。
【0059】
前記ポリペプチドを膜アンカー型細胞表面タンパク質分解酵素の群から選ぶことが他の態様でもある。好ましくは、前記ポリペプチドは、以下のものを含むメタロプロテイナーゼのピトリライシン(pitrilysin)ファミリー、またはデスインテグリン(desintegrin)とメタロプロテアーゼ(ADAMs)のファミリーを含む群から選ばれる:
−ADAM-8(Swiss-Prot Ass. No:Q05910)、
−ADAM-19(Swiss-Prot Ass. Nos:Q9H013、O35674)、
−ADAM-8(Swiss-Prot Ass. No:P78325)、
−ADAM-12(Swiss-ProtAss. Nos:O43184, Q61824)、
−ADAM-28(Swiss-Prot Ass. Nos:Q9JLN6, Q61824, Q9XSL6, Q9UKQ2)、
−ADAM-33前駆体(Swiss-Prot Ass. Nos:Q8R533, Q923W9)、
−ADAM-9(Swiss-ProtAss. Nos:Q13433, Q61072)、
−ADAM-7(Swiss-Prot Ass. NoS:Q9H2U9, O35227, Q63180)、
−ADAM-1Aフェルチリン(Fertilin)アルファ(Swiss-Prot Ass. No:Q8R533)、
−ADAM-15(Swiss-Prot Ass. Nos:Q9QYVO, O88839, Q13444)、
−メタロプロテイナーゼ-デスインテグリン・ドメインを含むタンパク質(TECAM)(Swiss-Prot Ass. No:AF163291)、
−メタロプロテイナーゼ1(Swiss-Prot Ass. Nos:O95204, Q9BSI6)、
またはその断片もしくは変異体。
【0060】
さらに他の態様において、前記ポリペプチドは以下のものを含む細胞外マトリックス分子の群から選ばれる:
−タイプVIIコラーゲン(Swiss-Prot Ass. No:Q63870),
−フィブロネクチン(Swiss-Prot Ass.).Nos:Q95KV4, Q95KV5, P07589, Q28377, U42594, O95609, P07589, P11276)、または
−テネイシン(Tenascin)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q15568, O00531, P10039, Q90995)、
またはその断片もしくは変異体。
【0061】
よりさらに他の態様において、前記ポリペプチドは成長因子の群から選ばれる。最も好ましい態様において、前記成長因子はサイトカイン様ファクター-1(CLF-1)(Swiss-Prot Ass. No:075462)、またはその断片もしくは変異体である。
さらに他の態様において、前記ポリペプチドは可溶性タンパク質の群から選ばれる。最も好ましい態様において、前記可溶性タンパク質はSPLIT(Swiss-Prot Ass. NoQ9XYV4)である。
【0062】
最も好ましい態様において、前記ポリペプチドはSwiss-Prot Ass. Nos P13591, P13595-01,またはP13595に規定される配列を有する神経細胞接着分子(NCAM)である。
【0063】
文言上述のポリペプチドの「断片または変異体」は以下の:
(i) 所定のポリペプチドのアミノ酸配列から本質的に成るポリペプチド、ここで、上記ポリペプチドのアミノ酸配列の長さが上記所定のポリペプチドの長さより短いか、または長く、上記ポリペプチドが本発明に従って機能性細胞表面レセプターと相互作用することができる、および/または
(ii) 上記所定のポリペプチドのアミノ酸配列の少なくとも1つの断片、または上記所定のポリペプチドの配列に少なくとも60%の相同性を有する配列の断片、を含むポリペプチド、ここで、上記断片の長さが上記所定のポリペプチドの長さの少なくとも25%から成り、上記ポリペプチドが本発明に従って機能性細胞表面レセプターと相互作用することができる、および/または
(iii) 上記所定のポリペプチドについて先行技術に説明された特徴を本質的に有するポリペプチド、上記特徴は本発明に従って細胞表面レセプターと上記ポリペプチドの相互作用に不可欠である、および/または
(iv) 所定のポリペプチドについて先行技術に説明された特徴の1以上を欠いているポリペプチド、上記ポリペプチドは本発明に従って機能性細胞表面レセプターと相互作用することができる、
を意味する。
【0064】
そのような断片または変異体は、自然発生した上述のポリペプチドのアイソフォームの例によって制限されることなく、プロ−ポリペプチド、上述のポリペプチドのタンパク質分解性断片、上述のポリペプチド由来のアミノ酸配列を含む対応の組換えポリペプチド、または融合タンパク質から選ばれる。
【0065】
相互作用の親和性
2個の分子間のあらゆる相互作用が、2個の分子間の親和性の強さを意味するその親和性によって特徴づけられうる。相互作用の親和性は一般にKd、解離平衡定数、の値によって表される。Kdは、2個の分子間の解離率と結合率の比を反映し、それにより上記2個の分子の結合の強さの尺度を表す。結合が強いほど、Kd値はより低くなる。本発明は、細胞表面レセプターと他のタンパク質、例えば先に規定のもの、の間の低い親和性の相互作用に関する。本発明の低い親和性の相互作用は、10-3〜10-10の範囲の、例えば10-4〜10-8の範囲の、値をもつKdによって特徴づけられる。
【0066】
本発明によると、相互作用の親和性は表面プラスモン共鳴分析(SPR)または核磁気共鳴スペクトル法(NMR)によって測定される。
【0067】
相互作用の調節
2個の分子間の相互作用に関して、用語「調節」は、例えば相互作用の強さの低下または増加のいずれかといった相互作用の強さの変化を意味する。前記相互作用に依存する状況の変化に対する分子間相互作用の強さの的確な調整に重要である時、相互作用の調節がおこなわれる。例えば、レセプターとレセプター・リガンドの間の相互作用の強さの調節が、レセプター依存性シグナル伝達の調節を可能にし、そしてそれによって細胞の生理学的なステータスの調節を可能にする。
【0068】
「レセプター・シグナル伝達の調節」は、細胞外刺激によるレセプターの活性化に対する応答において細胞内で通常おこなわれるメッセンジャー分子カスケード産生の活性化または不活化を意味する。
【0069】
レセプターのシグナル伝達は、細胞の生理学的な応答をもたらす。従って、レセプターとレセプターのリガンドの間の相互作用の強さの調節、あるいは、いわゆる「レセプター刺激の強さ」は、レセプター・シグナル伝達の調節を可能にし、そしてそれによって、細胞の生理学的な応答の調節を可能にする。レセプターの刺激に対する細胞の応答が、例えばレセプターとリガンドの相互作用の親和性の値によって、および/またはそのような相互作用の継続時間によって特徴づけられうる、レセプター刺激の強さに依存していることが示された。相互作用している分子がその相互作用を調節することができる化合物にさらされた場合、相互作用の親和性も継続時間も影響されうる。
【0070】
化合物
本発明は、以下の:
i) 細胞表面レセプターと相互作用し、それによってそのレセプターとそのリガンドの相互作用を模倣すること、および/または
ii) 細胞表面レセプターと相互作用し、それによってそのレセプターとそのリガンドの相互作用を妨害すること、および/または
iii) 細胞表面レセプター・リガンドと相互作用し、それによってそのレセプター・リガンドとそのレセプターの相互作用を妨害すること、および/または
iv) 細胞表面レセプターおよびそのレセプター・リガンドと同時に相互作用し、それによって上記レセプターと上記レセプター・リガンドの相互作用を妨害すること、および/または
v) 細胞表面レセプターとそのレセプター・リガンドの間の相互作用の補助に関与する分子と相互作用し、それによって上記レセプターと上記レセプター・リガンドの相互作用を妨害すること、
が可能な化合物に関する。
【0071】
1つの側面において、本発明は、上記レセプターとリガンドの相互作用に関与するか、または上記リガンド分子のレセプター結合部位と相互作用することができる、レセプター上の部位と相互作用することができる化合物に関する。
【0072】
他の側面において、本発明は、そのような相互作用がそのレセプターとそのリガンドの相互作用を妨害することが推測されるレセプターまたはリガンドの他の部位に結合することができる化合物に関する。
【0073】
本発明は前述の結合ができるあらゆる化合物を特徴とする。しかし、本発明の好ましい化合物は、ペプチド、炭水化物、脂質、またはヌクレオチドを含む群から選ばれる。好ましい化合物の間で最も好ましいものはペプチドまたはヌクレオチド化合物である。
【0074】
従って、1つの態様において、本発明は、ヌクレオチド、ヌクレオチド相似体、ヌクレオチド誘導体、ヌクレオチドのジ-またはオリゴマー、またはヌクレオチド含有物質を含む群から選ばれた化合物に関する。好ましくは、ヌクレオチドは、ヌクレオチド三リン酸を含む群から選ばれる。より好ましくは、ヌクレオチド三リン酸は、UTP、GTP、CTP、TTP、およびATP、またはその相似体、誘導体、ジ-もしくはオリゴマー、あるいはそれを含有する物質を含む群から選ばれる。本発明の最も好ましいヌクレオチドは、ATPまたはその相似体である。ヌクレオチド相似体は、ヌクレオチド塩基または修飾ヌクレオチド塩基、糖残基または修飾糖残基、およびモノ-、ジ-、トリ-、クアドラ-、ペンタ-エステル群を含む。ヌクレオチド相似体がインビトロにおいて水性溶液中、高い安定性、および/または基質としてのヌクレオチドを利用することができる酵素を含む酵素システムの高い安定性を有する場合、それは本発明の好ましい態様の1つである。細胞の含有物はそのような酵素システムの例である。本発明は、安定したヌクレオチド三リン酸相似体に好ましくは関する、ここで、上記三リン酸エステル内の少なくとも1つのリン基が、他の化学基、例えばCH-、S-またはNH-基、を置換する。
【0075】
他の態様において、本発明は化合物に関連する。それはヌクレオチドを含む。より好ましい態様において化合物はそれについてATPか、相似体を含む。
【0076】
本発明のペプチド化合物は、先に規定された化合物に関する必要条件を満たす、いずれかの隣接アミノ酸配列であるかもしれない。好ましくは、ペプチド化合物は配列番号2〜10、100、125、または上記配列のいずれかに由来のペプチド断片に規定される配列の少なくとも1つを含む。本文脈において用語「由来する」は、上記ペプチド化合物が配列番号2〜10、100、125に規定される配列のいずれかの変異体、断片、または組み合わせ、あるいはその変異体または断片の組み合わせを含むアミノ酸配列によって表されうることを意味する。本発明は、配列番号2〜10、100、125に記載の所定の配列の、少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の長さを有する断片に関する、ここで、断片と所定の配列の間のアミノ酸配列相同性は100%である。
【0077】
本文脈における変異体は、配列番号2〜10、100、125から選ばれた配列と少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは95%の相同性をもつか、またはアミノ酸配列2〜10、100、125から選ばれた配列と比べて、少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは95%の正のアミノ酸の一致がをもつアミノ酸配列と規定される。あるアミノ酸配列と他のアミノ酸との相同性は、2つの照合された配列の同じアミノ酸の百分率として規定される。正のアミノ酸の一致は、2つの照合された配列の中で同じ位置を持つアミノ酸の物理的または化学的性質によって規定される同一性および/または類似性と規定される。本発明の正のアミノ酸一致は、K対R、E対D、L対M、Q対E、I対V、I対L、A対S、Y対W、K対Q、S対T、N対S、およびQ対Rである。アミノ酸配列の組み合わせは、上記配列のホモポリマーまたはヘテロポリマーのいずれかに相当する、ここで、上記ホモポリマーは配列番号2〜10、100、125から選ばれるいずれかの配列の1以上の繰り返しを含む配列を表し、かつ、上記ホモポリマーは配列番号2〜10、100、125から選ばれた少なくとも2つの異なる配列の1以上の繰り返しを含む配列によって表される。ホモポリマーまたはヘテロポリマーの配列の繰り返し数は、2〜20、例えば15、例えば2〜15、例えば10、例えば2〜10、例えば3、4、5、6、7、8、または9に変化するかもしれない。
【0078】
本発明の他の好ましいペプチド化合物は、配列番号11〜99、101〜124、126〜146から選ばれた配列、またはその断片、変異体もしくは相同体の少なくとも1つを含むものである。
【0079】
本発明によると、配列番号1〜146と同定された配列は、FGFRレセプター・リガンドの配列由来であり、そしてレ上記セプターと上記リガンドの相互作用に関与している。従って、配列番号1〜146から選ばれた配列のどれもがFGFRとFGFRリガンドの間の相互作用を調節することができると推測され、ここで、上記リガンドは本発明の結合部位を含む。
【0080】
本発明のペプチド化合物のアミノ酸配列は、アミノ酸配列の長さがそのペプチドの機能によって決定され、かつ、医薬組成物中へのその化合物の処方の点において、いずれかの好適な長さであるかもしれない。従って、前記化合物は、3〜100アミノ酸残基、例えば10〜90アミノ酸残基、例えば15〜85アミノ酸残基、例えば20〜80アミノ酸残基、例えば25〜75アミノ酸残基、例えば30〜70アミノ酸残基、例えば35〜65アミノ酸残基、例えば40〜60アミノ酸残基、例えば45〜55アミノ酸残基の範囲でアミノ酸残基を通常含む。
【0081】
他の側面において、ペプチド化合物は3〜20アミノ酸残基、例えば3〜19アミノ酸残基、例えば3〜18アミノ酸残基、例えば3〜17アミノ酸残基、例えば3〜16アミノ酸残基、例えば3〜15アミノ酸残基、例えば3〜14アミノ酸残基、例えば3〜13アミノ酸残基の範囲でアミノ酸残基を含む。
【0082】
さらに他の側面において、前記ペプチド化合物は、少なくとも6〜16個の隣接するアミノ酸、例えば7、8、9、10、11、12、13、14、または15個のアミノ酸の配列を含む。
【0083】
さらに他の側面において、ペプチド化合物のアミノ酸配列は、本発明の先に記載された結合部位のストランド−ループ−ストランド・モチーフに類似したストランド−ループ−ストランド折り畳みを形成することができる。
【0084】
本発明の化合物は、好ましくは、単量体のオリゴマー(多量体)の形式であり、ここで、各々の単量体は先に規定したようなペプチド化合物である。特に、デンドリマーのような多重結合ペプチドは、複数の柔軟なペプチド単量体の存在によって立体配座決定基またはクラスターを形成するかもしれない。1つの態様において、前記化合物は二量体である。より好ましい態様において、前記化合物はリジン骨格に連結したか、またはポリマー担体、例えばBSAのようなタンパク質担体に組み合わされた4つのペプチドのような、デンドリマーである。例えば、リジン骨格、例えば4つのペプチド、8つのペプチド、16個のペプチド、または32個のペプチドを担持するリジン・デンドリマーのように、重合、例えば反復配列、または様々な担体への接着が当該技術分野で周知である。他の担体は、脂溶性デンドリマー、または脂溶性誘導体よって形成されたミセル様担体、または星形(星のような)炭素鎖重合体コンジュゲートであるかもしれない。
【0085】
個々の単量体は同種であるかもしれない、すなわち、互いに同一であるか、または個々の単量体は異種であるかもしれない、すなわち互いに異なる。単量体の後者のタイプは、少なくとも2つの異なる単量体を含む。一般に、二量体および多量体は、2つ以上の同一単量体、互いに異なる2つ以上の単量体を含む。
【0086】
スクリーニング方法
少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用を調節することができる候補化合物のスクリーニング方法を提供することが本発明の重要な側面である、ここで、上記少なくとも2つの異なるタンパク質の一方が機能性細胞表面レセプター、またはその断片もしくは変異体に相当し、かつ、上記少なくとも2つの異なるタンパク質のもう一方が上記レセプターに対する結合部位を有するポリペプチドに相当し、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、またはその配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む、そして上記方法は以下のステップ:
i) 少なくとも2つの異なるタンパク質を準備し;
ii) 化合物を準備し;
iii) (ii)の化合物を(i)の少なくとも2つの異なるタンパク質に提示し;
iv) 候補化合物を上記タンパク質に提示する前後で上記少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用を測定し;
v) 上記少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用が提示された化合物によって調節されたかどうかを測定し;
vi) 上記少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用を調節することができる候補化合物を選ぶ、
を含む。
【0087】
本発明によるスクリーニング方法は、好ましい態様において、細胞表面レセプターとポリペプチド間の相互作用を調節することができる候補化合物の同定に関係する、ここで、上記レセプターはFGFRであり、ここで、上記ポリペプチドはFGFRリガンドである。より好ましくは、FGFRは、Swiss-Prot Seq Nos:Q9QZM7、Q99AVV7、Q9UD50、またはQ63827に規定されるアミノ酸配列を有するFGFR1、またはその断片もしくは変異体、あるいは上記レセプターの機能性相同体である。上記FGFRリガンドは、それらのポリペプチド鎖が先に記載の結合部位を含むFGFR1リガンドから好ましくは選ばれる。好ましいポリペプチドの例が先に述べられている。本発明のスクリーニング方法のための最も好ましいポリペプチドは、神経細胞接着分子、NCAM、であるSwiss-Prot Ass. Nos:P13591、P13595-01、またはP13595と規定されるアミノ酸配列、またはその断片もしくは変異体、その機能性相同体である。
【0088】
スクリーニング・アッセイ
レセプター−リガンド相互作用の調節は、当該技術分野で開発された多数のインビトロ・アッセイを使うことによって評価されうる。しかし、異なるレセプターとそれらのリガンドの間の相互作用を調節する候補化合物の能力の推測のためのこれらのアッセイの選定におけるいずれかの普遍的なアプローチがない。本発明は、少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用を調節することができる候補化合物の連続スクリーニングのためのアッセイを準備する、ここで、上記少なくとも2つの異なるタンパク質の一方が機能性細胞表面レセプター、またはその断片もしくは変異体に相当し、かつ、上記少なくとも2つの異なるタンパク質のもう一方が上記レセプターに対する結合部位を有するポリペプチドに相当し、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む、そして上記方法は、以下のステップ:
【0089】
i) 少なくとも1つの機能性細胞表面レセプター分子、またはその断片もしくは変異体、および上記レセプターに対する結合部位を有する少なくとも1つのポリペプチドを準備し、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体もしくは相同体、または上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む;
ii) ステップ(i)の少なくとも1つのレセプター分子をステップ(i)の少なくとも1つのポリペプチドに提示するか、またはステップ(i)の少なくとも1つのポリペプチドをステップ(i)の少なくとも1つのレセプター分子に提示し、そして上記レセプターと上記ポリペプチドの間で相互作用させ;続いて
iii) ステップ(ii)の分子間の相互作用を記録し;
iv) ステップ(ii)の分子に候補化合物を提示し;
v) ステップ(iv)の分子間の相互作用を記録し、続いて
vi) ステップ(iv)の分子間の相互作用に対する候補化合物の少なくとも1つの効果を評価し、続いて
vii) ステップ(i)の少なくとも1つの機能性細胞表面レセプター分子と、少なくとも1つのポリペプチドの間の相互作用を調節することができる化合物の選ぶ、
を含む。
【0090】
当該内容において、用語「相互作用させる」は、ステップ(ii)の条件が、その中で相互作用が有利に働く適当な媒体、および上記分子が相互作用することを可能にするのに十分に長い期間を含むことを意味する。
【0091】
上述のアッセイのステップ(ii)−(v)は、場合により以下のステップ:
(ii) 前記化合物をステップ(i)の少なくとも1つのレセプター分子に提示するか、または上記化合物をステップ(i)の少なくとも1つのポリペプチドに提示し、
(iii) ステップ(i)の少なくとも1つのポリペプチドを上記化合物とステップ(ii)のレセプターに提示するか、または上記少なくとも1つのレセプター分子を上記化合物とステップ(i)のポリペプチドに提示し、
(iv) ステップ(iii)の分子間の相互作用を記録する、
のとおり実施される。後者の選択肢が使用された場合、ステップ(iii)の分子間の相互作用が記録されないか、または記録された相互作用が上記化合物の不存在下の上記分子間の相互作用と比べて調節された場合、候補化合物が選ばれる。修飾されたアッセイを実施する前に、前記化合物の不存在下の前記レセプターと前記ポリペプチドの間の相互作用パラメーターを以下に記載の方法のいずれかを使って評価したと推定される。
【0092】
好ましくは、先に記載のアッセイは、FGFR1とFGFR1リガンドの間の相互作用の調節ができる候補化合物の連続スクリーニングのために本発明によって提供され、上記リガンドは、先に記載のポリペプチドの1つである。好ましい態様において、前記リガンドはNCAMである。
【0093】
アッセイ分子間の相互作用に対する候補化合物の効果の評価は、当該技術分野の従来の方法、例えば表面プラスモン共鳴分析(SPR)、核磁気共鳴分光法(NMR)、沈降分析、免疫沈降、2-ハイブリッド・システム、または共鳴エネルギー移動(BRETまたはFRET)、を使っておこなわれる。相互作用を調節することができる候補化合物は、前記レセプターと前記レセプター・リガンドの間の相互作用の強さを低下させる化合物、または相互作用の強さを増加させる化合物から選ばれうる。
【0094】
選択後に、本発明による候補化合物は、細胞の代謝に対する記録された調節の有意性を評価するためにインビボまたはインビトロの細胞系で試験される。1つの態様において、そのような系で、下流のシグナル伝達事件に関連する細胞表面レセプター、例えば下流タンパク質の活性化、を計測する。細胞表面レセプターとの相互作用に関係しているタンパク質がレセプターに似た分子に相当する場合、他の態様において、上記タンパク質に関係する下流シグナル伝達事件が計測されうる。従って、本発明は、上述のアッセイのステップ(vii)選ばれる化合物のスクリーニング方法をさらに提供し、上記方法は、以下のステップ:
viii) 少なくとも1つの機能性細胞表面レセプター分子、またはその断片もしくは変異体を提示する少なくとも1つの細胞、および上記レセプターに対する結合部位を有する少なくとも1つのポリペプチドに、上記選ばれた化合物(上述のアッセイのステップ(vii)の化合物)を提示し、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体を含む、
ix) ステップ(viii)の細胞に対する上記化合物の少なくとも1つの効果を評価する、
を含む。
【0095】
好ましくは、本発明は、以下の:
i) FGFR1チロシン・リン酸化;
ii) FGFRに関連するシグナル伝達経路のいずれかに関与する1以上の細胞内タンパク質、例えばSTAT1、JNK、PLCγ、ERK、STAT5、PI3K、PKC、FRS2、および/またはGRB2タンパク質、の活性化;および/または
iii) 細胞分化に関連する効果、
の推定から選ばれる、FGFR1に関連する下流シグナル伝達事件に関係する。
【0096】
FGFRシグナル伝達がFGFRのリン酸化レベルとして計測される時、リン酸化の程度は、対照値の少なくとも20%、例えば少なくとも20〜200%、例えば少なくとも50〜200%を上回る。本内容において対照値は、FGFRの活性化ができる化合物が不存在の媒体中のFGFRのリン酸化の程度を意味する。
【0097】
FGFRシグナル伝達の調節に関しての化合物の能率的な濃度を推定する時、上記濃度は、0.1〜1000 μM、1〜1000 μM、例えば1〜200 μM、例えば10〜200 μM、例えば20〜180 μM、例えば30〜160 μM、例えば40〜140 μM、例えば50〜130 μM、例えば60〜120 μM、例えば70〜110 μM、例えば80〜100 μMでありうる。
【0098】
例えば、細胞分化に関係する効果といった下流FGFRシグナル伝達効果の推定の場合、好ましくは、本発明は、細胞集合、小結節の形成、軟骨の形成、または上記効果の2以上に関連し(Listrum, G. P. et at. J. Histochem. Cytochem. 1999, 47:1-6)、そのような効果は、光学顕微鏡検査、比濁法、またはフローサイトメトリーで検出可能である。細胞分化に関連する効果は、骨シアロタンパク質(J. Bone Miner. Res. 1998, 13:1852-61; Genomics 1998, 53: 391-4)、またはタイプXコラーゲン(Cell Tissue Res. 1998, 293: 357-64)、ヒトILA遺伝子(Osteoarthritis Cartilage 1997, 5: 394-406)、またはタイプIIコラーゲン/またはMGP(J Miner Res. 1997: 1815.23)などのRNA発現あるいはタンパク質レベルの変化として同様に計測されうる。
【0099】
FGFRのチロシン・リン酸化、またはFGFRに関連する下流シグナル伝達分子、例えばSTST1、JNK、PLCγ、ERK、STAT5、PI3K、PKC、FRS2、および/またはGRB2タンパク質、のいずれかの活性化は、例えば活性化されたタンパク質に対する市販の抗体を使った免疫細胞化学、イムノブロッティング法、または免疫沈降、といったいずれかの従来法によっても推定されうる。活性化の程度は、対照値の少なくとも20%上回る/下回る、例えば少なくとも20〜200%、例えば少なくとも50〜200%、と推定される。対照値は、FGFRを活性化できる化合物の不存在下、媒体中の着目のタンパク質のリン酸化の程度として推定される。
【0100】
他の好ましい態様において、本発明はFGFRとの相互作用に関与するタンパク質に関係する下流シグナル伝達に関係し、上記タンパク質はFGFR1リガンドである。そのような下流シグナル伝達がレセプター連結型リガンドFGFR1に関係することが理解されていている。FGFR1のそのようなリガンドの好ましい態様が先に開示されている。そのようなリガンドが、いずれかの下流シグナル伝達カスケードに関連するか、あるいは潜在的に下流シグナル伝達カスケードに関係することができるタンパク質群を含むことは理解される。
最も好ましい本発明のFGFR1のレセプター連結型リガンドはNCAMである。
【0101】
従って、前記アッセイは、機能性FGFR1またはその機能性相同体の少なくとも1つの分子と、NCAMまたはその機能性相同体の少なくとも1つの分子を提示している少なくとも1つの細胞を含む、あらゆるインビボまたはインビトロの細胞系にさらに関係する。
【0102】
NCAM依存性シグナル伝達は、さまざまな下流分子に関与し、上記シグナル伝達によるそれらの活性化が計測される。特に、本発明は、局所接着キナーゼ、FAK、チロシン・キナーゼ、Fyn、および/またはサイクリックAMP応答性結合要素タンパク質、CREBの活性化の評価に関係する。リン酸化の程度は、対照値の少なくとも20%を上回る/下回る、例えば少なくとも20〜200%、例えば少なくとも50〜200%のように推定される。対照値は前記のとおり推定される。
【0103】
NCAM依存性シグナル伝達の活性化または阻害が、形態学的レベル、特に細胞分化に関係する効果、に対する細胞の応答を評価することによって同様に計測されうる。それ故に、他の特定の態様において、前記アッセイは、NCAM依存性細胞凝集、細胞運動性、神経突起生成、増殖、または生存に対する候補化合物の効果についての評価に関係する。
【0104】
当業者は、上述の細胞の応答を評価するために当該技術分野で発展した多数のアッセイから選ぶ。例えば、細胞凝集および神経突起生成は、Skladchikovaら(J.Neurosci.Res 1999、57:207-18)によって記載されるとおり評価される。増殖とアポトーシスは、製造業者の指示に従って、いずれかの市販のアッセイおよびキットを使うことによって評価される。
【0105】
神経突起生成に対する化合物の効果を評価することによってNCAM-FGFR1相互作用を調節することができる化合物を選ぶことは、本発明の好ましい態様である。従って、神経細胞分化が可能である神経の起源の細胞は本発明に好まれる。そのような細胞は、生物の神経系の選択領域から取り出されて、標準方法に従って培養によって維持された初代細胞から選ばれうるか、あるいは上記細胞は、異なる神経腫または発生初期の神経細胞から不死に形質転換されたクローン細胞であるかもしれない。そのような細胞の例が、ラット褐色細胞腫PC12、マウス神経芽細胞腫N2A、ヒト・テラトカルシノーマNT-2、またはマウス癌腫F9である。
【0106】
本発明において、対照細胞と比較したときに、それが培養細胞の神経突起の伸長を2倍にすることができる、例えば神経突起の伸長を3倍、例えば4倍、例えば5倍、例えば6倍に改善する場合、化合物が有望であるとみなされる。
【0107】
さらに、他の好ましい態様において、本アッセイは、FGFR1-NCAM相互作用を調節することによって細胞の生存を刺激/促進することができる化合物の選定に関係する。本文脈で用語「生存を刺激/促進する」は、用語「細胞死の予防」または「神経保護」と同じ意味で使用される。生存を刺激/促進することによって、病気を防ぐか、または神経変性の障害を患う個体の神経系のさらなる変性を防ぐことが可能である。「生存」は過程に言及する、ここで、本発明の化合物が変性から細胞を防ぐために使用されなければ高い確率で死滅する通常状況下で細胞が外傷を負わされ、および傷つけられ、それにより、上記外傷を負った細胞の生存を促進または刺激する。特に、本発明は神経起源の細胞の生存を促進または刺激することに関係する。
【0108】
前記アッセイの細胞培養は、神経起源ではない哺乳動物の細胞をさらに含むかもしれない。そのような細胞の例葉、例えばHEK293、COS7、CHO、またはTREX293を含む。当該技術分野で周知の方法(例えばFGFRおよび/またはNCAMの異なる変異体もしくは相同体、ならびに/あるいは本発明のFGFRの他の好ましいリガンドをコードしているDMA構成物による細胞の安定な、または一時的なトランスフェクションの方法)を使うことによってFGFRまたはNCAMの異なる変異体または相同体を発現するために、これらの細胞は望ましく形質転換される。そのような細胞は、候補化合物の選定のために、先に触れた下流分子の活性化の評価を使う時に有用であるかもしれない。
【0109】
候補化合物の分子設計方法
少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用を調節することができる化合物の分子設計方法を提供することが本発明のさらなる側面である、ここで、上記少なくとも2つの異なるタンパク質の一方が機能性細胞表面レセプター、またはその断片もしくは変異体に相当し、そして少なくとも2つの異なるタンパク質のもう一方が上記レセプターに対する結合部位を有するポリペプチドに相当し、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む、そして上記方法は、FGFRに対するNCAMの結合部位の構造的データの使用を含む。
【0110】
FGFRに対するNCAMの結合部位の構造的データに基づいて、本発明はFGFR1とNCAMの相互作用の分子モデルを準備する。本発明によって準備された構造的データは、アミノ酸配列モチーフと、これらの2つの分子の相互作用に関係している特別な構造的モチーフを開示する。
【0111】
それ故に、以下の:
i) 少なくとも6〜16個の隣接するアミノ酸の配列を含み、そして
ii) 配列番号1に対して、少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは95%の配列相同性を持ち、および/または
iii) 配列番号1に対応するペプチド断片の構造的な特徴に類似した3次元特性、例えばストランド−ループ−ストランド折り畳みを有するペプチド断片、ここで、上記アラインされたペプチド断片間の配列相同性が少なくとも40%であり、および/または正のアミノ酸一致が少なくとも50%である、
のペプチド断片は、FGFRとNCAMの間の相互作用の調節ができる候補化合物と本発明によって考えられる。さらに、配列番号2〜146に規定される配列のいずれかに対し少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは95%の配列相同性を有するペプチド断片は可能性がある候補化合物としての本発明によって考えられ、そしてFGFRと先に記載のFGFR結合部位をもつタンパク質の間の相互作用の調節能力に関するスクリーニング・アッセイにおけるスクリーニングのために本発明で指定されている。
【0112】
候補化合物の同定方法
先に記載のスクリーニングおよび分子設計の方法により、少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用を調節することができる候補化合物が単離され、そして医薬組成物の処方のために使用されうる、ここで、上記少なくとも2つの異なるタンパク質の一方が機能性細胞表面レセプター、またはその断片もしくは変異体に相当し、かつ、少なくとも2つの異なるタンパク質のもう一方が上記レセプターに対する結合部位を有するポリペプチドに相当し、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む。
【0113】
このように、本発明は以下の:
− 少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用を調節することができる候補化合物を単離する方法、ここで、上記少なくとも2つの異なるタンパク質の一方が機能性細胞表面レセプター、またはその断片もしくは変異体に相当し、かつ、少なくとも2つの異なるタンパク質のもう一方が上記レセプターに対する結合部位を有するポリペプチドに相当し、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む、そして上記方法は以下のステップ:
i) 先に規定されている候補化合物の連続スクリーニング方法を提供し、および/または
ii) 先に規定されている候補化合物の分子設計方法を提供し、
iii) 上記候補化合物を単離する、
を含む;
【0114】
− 候補化合物の単離するステップ、そして医薬として許容される担体または溶剤と一緒に、細胞表面レセプター、またはその断片もしくは変異体と、上記レセプターに対する結合部位を有するポリペプチドの間の相互作用を調節することができる化合物の処方するステップをさらに含む医薬組成物の製造方法、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む、
を提供する。
【0115】
ペプチド断片
先に記載の方法および/または本発明のアッセイの使用によって、FGFRと、先に記載のFGFR結合部位を有するタンパク質の間の相互作用を調節することができるペプチド断片が同定されうる。本発明により、1つの態様において、これらのペプチド断片は2〜146の番号を付けられ、以下の配列表:
【0116】
【化4】
【0117】
【化5】
【0118】
【化6】
【0119】
【化7】
【0120】
【化8】
【0121】
に開示されるアミノ酸配列、またはその変異体、断片、もしくは相同体の少なくとも1つを含む、最大で100アミノ酸を有するペプチド断片である。
【0122】
本発明によると、1つの態様において、ペプチド化合物は前述の配列の少なくとも1つを含む。他の態様において、前記化合物は前述の配列の少なくとも1つを本質的に含む。さらに他の態様において、前記化合物は前述の配列の少なくとも1つから成る。
前述の配列の断片、変異体、および相同体は、先に記載のペプチド化合物の断片、変異体、および相同体のための基準に従って規定される。
薬剤の製造のために1以上の前述のアミノ酸配列を提供することが本発明の目的である。
本発明の他の目的は、抗体の製造のために抗原エピトープとしての前述の配列を使うことである。
【0123】
抗体
本発明の結合部位を含むエピトープに選択的に結合することができる抗体を提供することが本発明の目的である。従って、本発明は、以下の:
1)配列番号1〜10、100、125に記載の配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体のいずれか、ここで、
i) 断片は、配列番号1〜10、100、125に記載の所定の配列の長さの少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%を有するアミノ酸配列と規定される、ここで、断片と上記所定の配列の間のアミノ酸配列相同性は100%であり、
ii) 変異体は配列番号1〜10、100、125から選ばれた配列に対して少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは95%の相同性を有するアミノ酸配列、または配列番号1〜10、100、125から選ばれた配列と比べて正のアミノ酸一致が少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくはより少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは95%のアミノ酸配列と規定される、ここで、正のアミノ酸一致は、2つの比較されている配列で同じ位置を持つアミノ酸の物理的および/または化学的性質によって規定された同一性または類似性として規定される。本発明の好ましい正のアミノ酸一致は、K対R、E対D、L対M、Q対E、I対V、I対L、A対S、Y対W、K対Q、S対T、N対S、およびQ対Rである。あるアミノ酸配列と他のアミノ酸の相同性は、2つの照合された配列の同じアミノ酸の百分率と規定され、
【0124】
iii) 相同体は、所定の配列の物理的特徴、例えば3次元構造、のいくつか、または機能的特徴、例えば他の分子、特にレセプター分子と相互作用する能力、のいくつかを維持している、配列番号1〜10、100、125に記載の配列のいずれかに対して60%未満-19%超、例えば50〜59%、例えば55%、例えば40〜49%、例えば45%、例えば30〜39%、例えば35%、例えば20〜29%、例えば25%の相同性を有するアミノ酸配列と規定され、
iv) 相同体の変異体は、配列番号1〜10、100、125から選ばれた配列のいずれかの相同体と比べて少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは95%の正のアミノ酸一致を有するアミノ酸配列と規定される、ここで、正のアミノ酸は先に規定されているとおりである;および/または
【0125】
2)配列番号11〜99、101〜124、126〜146と規定される配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体のいずれか、ここで、前記の上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体先のとおり規定される、および/または
3)ペプチド断片は、配列番号1に対応するペプチド断片の構造的な特徴に類似した構造的な特徴、例えばストランド−ループ−ストランド折り畳み、を有する、ここで、アラインされたペプチド断片の間の配列相同性は少なくとも40%であり、および/または正のアミノ酸一致が少なくとも50%である、
を含むエピトープに選択的に結合することができるあらゆる抗体に関連する。
【0126】
1つの態様において、抗体は、細胞表面レセプター機能を、当該レセプターへのそのリガンドの結合を調節することによってそのレセプターを活性化するリガンドの能力を低下または上昇させることによって調節することができる。本文脈において「結合を調節する」は、リガンドレセプター相互作用の親和性および/または強さを増加/減少させる抗体の能力を意味する。より好ましい態様において、抗体は、FGFRリガンドの前述のエピトープに結合することができ、それによってFGFRの活性化を調節することができる。本文脈において「調節する」は、レセプターの活性化を促進するかまたは抑制することを意味する。これらのFGFRリガンドについての好ましい態様は先に記載されている。
【0127】
他の態様において、前記抗体は、そのレセプターに対するそのリガンドの結合を妨害することによって細胞表面レセプター・リガンドの生物学的機能を調節することができる。この態様は、以下の:
(i) FGFRから独立したレセプター分子であるかもしれない、および/または
(ii) FGFRシグナル伝達が阻害された場合、代替レセプターを使うかもしれない、および/または
(iii) いずれの下流シグナル伝達にも関係しない追加の生物学的機能を有するかもしれない、
FGFRリガンドに関係する。
本発明のエピトープを含むそのようなリガンドの好ましい態様が先に記載されている。
【0128】
本発明の結合部位を含むポリペプチド断片は、本発明において有用な抗体を作製するために使われる。そのペプチド断片が配列番号1〜146に規定される配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体先に記載の抗体を作製するための使用に好ましい。一般に、ペプチドは、Ausubelら(上記)に記載のとおり、KLHのような担体タンパク質と組み合わされ、アジュバントと混ぜられて、宿主哺乳動物に注入される。そのようなポリペプチドまたはペプチド断片を、先に記載のとおり、組換え技術によって製造することができるか、または合成することができる(例えば、"Solid Phase Peptide Synthesis,"(上記); Ausubel et al.,(上記)を参照のこと)。また前記担体は、PPDであるかもしれない。抗体をペプチド抗原親和クロマトグラフィで精製することができる。
このように、本発明は、配列番号1〜146に規定される配列から選ばれた少なくとも1つの配列を含むペプチド断片を動物に投与することを含む抗体の製造方法に関係する。
【0129】
特に、様々な宿主動物が前述のペプチド断片の注射によって免疫されることができる。宿主動物は、ウサギ、マウス、モルモット、ラット、およびニワトリを含む。免疫応答を高めるために使用されうる様々なアジュバントは、宿主の種に依存し、そして(完全、および不完全)フロインド・アジュバント、無機質ゲル、例えば水酸化アルミニウム、表面活性剤、例えば、リゾレシチン、プルロニック(pluronic)ポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシアニン、およびジニトロフェノール、を含む。潜在的に有用なヒト・アジュバントは、BCG(カルメット・ゲラン桿菌)およびコリネバクテリウム・パルヴム(Corynebacterium parvum)を含む。免疫処置は、FGFRリガンド、または結合部位に対応するその断片をコードしているDNAの注射によっても実行されうる。ポリクローナル抗体は、免疫された動物の血清中に含まれる抗体分子の異種集団である。
【0130】
従って、本発明の中の抗体は、ポリクローナル抗体を含み、さらに、モノクローナル抗体、ヒト化またはキメラ抗体、単鎖抗体、Fab'断片、F(ab')2断片、およびFab発現ライブラリを使って製造された分子、ならびにファージ・ディスプレイ技術によって製造された抗体または断片を含む。
【0131】
特定の抗原に対する抗体の同種集団であるモノクローナル抗体は、前述の結合部位を含んでペプチド断片および標準的なハイブリドーマ技術を使って準備できる(例えば、Kohler et al., Nature 256:495, 1975; Kohler et al., Eur. J. Immunol. 6:511, 1976; Kohler et al., Eur. J. Immunol. 6:292, 1976; Hammerling et al., "Monoclonal Antibodies and T Cell Hybridomas," Elsevier, NY, 1981; Ausubel et al.,(上記)を参照のこと)。
【0132】
特に、モノクローナル抗体は、例えばKohlerらのNature 256:495, 1975および米国特許第4,376,110号;the human B-cell hybridoma technique(Kosbor et al., Immunology Today 4:72, 1983; Cole et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:2026, 1983)、およびEBVハイブリドーマ技術(Cole et al., "Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy," Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96, 1983)に記載の培養による継代細胞株による抗体分子の産生を提供するいずれかの技術によっても得ることができる。そのような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgDを含むいずれかの免疫グロブリン・クラス、およびいずれかのサブクラスであるかもしれない。(ニワトリの場合に、免疫グロブリン・クラスがIgYである可能性もある。)本願発明のmAbを生じるハイブリドーマは、インビトロまたはインビボで培養される。インビボにおける高い力価のmAbsを産生する能力は、これを現在好ましい製造方法にするが、しかしいくつかの場合、例えば、腹水から生じた正常な免疫グロブリンの存在が望ましくない場合、または倫理的な検討事項を伴う場合、において、インビトロ産生が癌細胞を生きた動物に導入することを避けるために好ましいであろう。
【0133】
一度産生された、ポリクローナル、モノクローナル、またはファージ由来抗体は、例えば、Ausubelら、上記に記載のとおり、結合部位またはその断片を含むポリペプチドを含むサンプルのウェスタンブロットまたは免疫沈殿によって、前述のエピトープの特異的な認識を試験される。FGFRリガンドを特異的に認識し、そして結合する抗体は本発明に有用である。例えば、そのような抗体は、個体から収集されたサンプルの中FGFRリガンドの発現レベルを観察する免疫学的測定法に使用されることができる。
【0134】
いくつかのケースで、抗血清の低い親和性または特異性の潜在的な問題を最小限にすることが望ましいかもしれない。そのような情況で、2または3の融合物を各々のタンパク質について作製することができ、そして各々の融合物を少なくとも2匹の動物に注入することができる。抗血清は、好ましくは少なくとも3回の追加免疫注射を含む、一連の注射によって産生させることができる。免疫された動物由来の脾臓細胞がモノクローナル抗体の作製に使用されうる。
【0135】
先に規定されたエピトープに結合することができる抗体は、サンプル中の、配列番号1〜146に規定された配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含むエピトープを含む物質を測定するために使用されうる。前記サンプルは、物質、例えば物質または生物学的サンプルの溶液、を含むあらゆるサンプルでもあるかもしれない。ピトープを含む物質は、天然または合成起源であるかもしれない。そのような物質の例は、これだけに制限されることなく、エピトープを含む化合物を含む細胞、エピトープを含む化合物、エピトープから成る化合物を含む。エピトープを含む化合物を含む細胞は、例えば本発明の細胞表面レセプターのリガンドを発現する細胞であるかもしれない。そのようなリガンドの例は、先に記載されている。エピトープを含む化合物は、先に記載の化合物であるかもしれない。
【0136】
前述の抗体は、例えば生物学的サンプル中のFGFRリガンドの検出に使用されうる。前記抗体は、例えば診断アッセイの一部としてFGFRの活性を計測するためのスクリーニング・アッセイにも使用されうる。検出技術に依存して、抗体は、検出可能なマーカーを含む化合物と組み合わされる。前記マーカーまたは標識は、当該技術分野で知られているあらゆるマーカーおよび標識から選ばれうる。前記抗体は、エピトープを含む物質、あるいは上記物質または上記エピトープの溶液中のエピトープの濃度を測定するためにも使用されうる。広い範囲の検出および標識技術が当該技術分野で現在利用可能であり、従って、上記技術は、抗体を実施している当業者、またはその使用目的に依存して選ばれうる。
【0137】
さらに、適当な生物活性のヒト抗体分子由来の遺伝子と一緒の適当な抗原特異性のマウス抗体分子由来の遺伝子のスプライシングによる、「キメラ抗体」の製造のために開発された技術(Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851, 1984; Neuberger et al., Nature, 312:604, 1984; Takeda et al., Nature, 314:452, 1984)が使用されることができる。キメラ抗体は、その中の異なる部分が異なる動物種由来である分子、例えばマウスmAb由来の可変領域と、ヒト免疫グロブリン不変領域を有するもの、である。
【0138】
あるいは、単鎖抗体の製造について記載された技術(米国特許第4,946,778号、同第4,946,778号、および同第4,704,692号)は、FGFRリガンドまたはその断片に対する単鎖抗体を製造するために適合されうる。単鎖抗体は、単鎖ポリペプチドを生じる、アミノ酸架橋によるFv領域の重鎖および軽鎖断片の連結によって形成される。
【0139】
特定のエピトープを認識し、そして結合する抗体断片は、知られている技術によって産生されうる。例えば、そのような断片は、これだけに制限されることなく、抗体分子のペプシン消化によって製造されることができるF(ab')2断片、およびF(ab')2断片のジスルフィド架橋の還元によって産生されうるFab'断片を含む。あるいは、所望の特異性を有するモノクローナルFab'断片を迅速に、かつ、簡単に同定するために、Fab'発現ライブラリが、構築されうる(Huse et al., Science, 246:1275, 1989)。
【0140】
当該技術分野で知られている方法によって抗体をヒト化することができる。例えば所望の結合特異性を有するモノクローナル抗体を、商業的にヒト化することができる(Scotgene, Scotland; Oxford Molecular, Palo Alto, CA)。完全なヒト抗体、例えばトランスジェニック動物で発現されたものは、本発明の特徴でもある(Green et al., Nature Genetics 7:13-21, 1994;同様に米国特許第5,545,806号および同第5,569,825号を参照のこと、上記文献の両方を本明細書中に援用する)。
【0141】
ポリペプチドとペプチド断片の製造
本発明のポリペプチドおよびペプチド断片は、当該技術分野で知られているいずれかの好適な従来法によって準備されうる。本発明のペプチド断片およびポリペプチドは、化学的に合成されうるか(例えば、Creighton, "Proteins:Structures and Molecular Principles," W.H. Freeman & Co., NY, 1983を参照のこと)、またはおそらく、より有利には、本明細書中に記載の組換えDNA技術によって製造されうる。追加の手引きのために、当業者は、Ausubelら(上記)、Sambrookら("Molecular Cloning, A Laboratory Manual," Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989)、および特に化学合成の例に関してGait、M.J. Ed、("Oligonucleotide Synthesis," IRL Press, Oxford, 1984)を調べることができる。
【0142】
組換え分子
先に記載の方法およびアッセイの全てが、少なくとも2つの相互作用しているタンパク質を準備するステップを含む。
【0143】
本発明の方法およびアッセイの2つの相互作用しているタンパク質は、好ましくは組換えタンパク質である。従って、追加の態様において、本発明は、相互作用しているタンパク質をコードするDNA塩基配列を含む発現ベクター、および先の発現ベクターのいずれかを含む遺伝子操作された宿主細胞、そしてそれによって宿主細胞における本発明の核酸分子の発現、を取り囲む。
【0144】
発現ベクターの好ましい態様は、以下の:
(a) FGFR1、FGFR2、FGFR3、およびFGFR4を含む先のFGFRs、またはFGFRリガンド関連コード配列のいずれかを含む発現ベクターであって、上記FGFRリガンドは先に記載の本発明の好ましいポリペプチド、および/またはその相補体(すなわち「アンチセンス」配列)から選ばれる上記発現ベクター;
(b) 上記コード配列の発現に対する制御因子(その例は以下に与えられる)に使用可能なように結合された前述の突然変異を含む、先のFGFRsまたはFGFRリガンド関連コード配列のいずれかを含む発現ベクター;および
(c) 突然変異FGFRsまたはFGFRリガンドをコードする配列に加えて、例えばレポーターまたはマーカーをコードしている分子といったFGFRsまたはFGFRリガンドをコードする核酸配列に関係がない核酸配列を含む発現ベクター、
である。
【0145】
組換えの核酸分子は、突然変異FGFRsまたはFGFRリガンド、可溶性FGFRsまたはFGFRリガンド、切断型FGFRsまたはFGFRリガンド、あるいはFGFRsの機能性ドメイン、例えばFGFR1のIg2もしくはIg3ドメイン、またはFGFRリガンドのドメイン、例えばNCAMのドメイン、例えばIg様もしくはF3タイプ・ドメインをコードする配列を含む。全長突然変異ポリペプチド、FGFRsまたはFGFRリガンドのドメイン、またはその断片が以下に記載の追加のポリペプチドに融合されうる。
【0146】
先に言及された制御因子は、これだけに制限されることなく、当該技術分野で当業者に知られる、そして遺伝子発現を行うかもしくはそれ以外に制御する、誘導性および非誘導性プロモーター、エンハンサー、オペレーター、および他の分子を含む。そのような制御因子は、これだけに制限されることなく、サイトメガロウイルスhCMV早期初期遺伝子、SV40アデノウイルスの初期または後期プロモーター、lac系、trp系、TAC系、TRC系、ファージAの主なオペレーターおよびプロモーター領域、fdコート・タンパク質の管理領域、3-ホスホグリセラート・キナーゼのプロモーター、酸性ホスファターゼのプロモーター、ならびに酵母接合因子のプロモーターを含む。
【0147】
同じように、核酸は追加のポリペプチド配列、例えばマーカーまたはレポーターとして機能する配列、をコードするハイブリッド遺伝子の一部を形成することができる。マーカーまたはレポーター遺伝子の例は、-ラクタマーゼ、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ(CAT)、アデノシン・ジアミナーゼ(ADA)、アミノグリコシド・ホスホトランスフェラーゼ(neor、G418r)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ(HPH)、チミジン・キナーゼ(TK)、lacZ(-ガラクトシダーゼをコードした)、緑色蛍光性タンパク質(GFP)、およびキサンチン・グアニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ(XGPRT)を含む。本発明の実施に関係する標準的な手順の多くと同様に、当業者は追加の有用な試薬、例えばそれがマーカーまたはレポーターの機能を担うことができる追加の配列、に気付くであろう。一般的に、ハイブリッド・ポリペプチドは第1の部分と第2の部分を含む;上記第1の部分は、例えばFGFR1またはNCAMアミノ酸配列の部分であり、そして上記第2の部分は、例えば先に記載のレポーターもしくは免疫グロブリン重鎖である。
【0148】
本発明の目的のために使用される発現系は、これだけに制限されることなく、以下の:
本発明の核酸分子を含む、組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDMA、またはコスミドDNA発現ベクターによって形質転換された、微生物、例えば細菌(例えば、E.コリ(E.coli)およびB.サブチリス(B.subtills));
FGFR1をコードする核酸分子、またはNCAMをコードする核酸配列を含む組換え酵母発現ベクターによって形質転換された酵母(例えば、サッカロミセス・ピチア(Saccharomyces Pichia);
本発明の核酸分子を含む組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)を感染させた昆虫細胞系;
FGFRヌクレオチド配列を含む、組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワー・モザイク・ウイルス(CaMV)、およびタバコ・モザイク・ウイルス(TMV))を感染させたか、または組換えプラスミド発現ベクター(例えばTiプラスミド)によって形質転換された植物細胞系;あるいは
哺乳動物細胞のゲノム由来のプロモーター(例えば、メタロチオネイン・プロモーター)、または哺乳動物のウイルス(例えば、アデノウイルス後期プロモーターおよびワクチニア・ウイルス7.5 Kプロモーター)由来のプロモーターを含む組換え発現構築物を包含する哺乳動物細胞(例えば、COS、CHO、BHK、293、VERO、HeLa、MDCK、WI38、およびNIH3T3細胞)、
を含む。
【0149】
細菌の系において、発現される遺伝子産物の意図される用途に依存して、多数の発現ベクターが有利に選ばれうる。そのようなベクターは、これだけに制限されることなく、融合タンパク質が産生されるように、挿入断片のコード配列がlacZコード領域と一緒にフレーム単位でベクター内に個々に連結されうるE.コリ発現ベクターpUR278(Ruther et al., EMBO J. 2:1791, 1983);pINベクター(Inouye and Inouye, Nucleic Acids Res. 13:3101-3109, 1985; Van Heeke and Schuster, J. Biol. Chem. 264:5503-5509, 1989);などを含む。同様に、pGEXベクターがグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として外来ポリペプチドを発現するために使用される。一般に、そのような融合タンパク質は可溶性であり、そしてグルタチオン−アガロース・ビーズへの吸着、続くフリーのグルタチオン存在下での溶出によって溶解細胞から容易に精製することができる。前記pGEXベクターは、クローン化されたターゲット遺伝子産物をGST部分から放出することができるようにトロンビンまたはファクターXaプロテアーゼ分割部位を含むように設計されている。
【0150】
昆虫の系において、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographacalifornica)核多角体病ウイルス(AcNPV)を、外来遺伝子を発現するためのベクターとして使用することができる。前記ウイルスは、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞中で増殖する。挿入断片のコード配列は、ウイルスの必須ではない領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)内に別個にクローン化され、AcNPVプロモーター(例えば、ポリヘドリン・プロモーター)の管理下に置かれる。コード配列の成功した挿入は、ポリヘドリン遺伝子の不活化と、非閉塞組換えウイルス(すなわち、ポリヘドリン遺伝子によってコードされたタンパク性コートを欠いたウイルス)の産生をもたらす。これらの組換えウイルスは、そこで挿入された遺伝子が発現されるスポドプテラ・フルギペルダ細胞の感染に使用される(例えば、Smith et al., J. Virol. 46:584, 1983;Smith,米国特許第4,215,051号を参照のこと)。
【0151】
哺乳動物の宿主細胞において、多数のウイルス・ベースの系が利用されうる。アデノウイルスが発現ベクターとして使用される場合、本発明の核酸分子はアデノウイルス転写/翻訳管理複合体、例えば、後期プロモーターおよびトリパータイト・リーダー配列、に連結されうる。そして、このキメラ遺伝子は、インビトロまたはインビボの組換えによってアデノウイルス・ゲノム内に挿入される。ウイルス・ゲノムの必須でない領域(例えば、E1またはE3領域)への挿入は、生き残ることができ、かつ、感染宿主内でFGFR遺伝子産物を発現することができるウイルスをもたらす(例えば、Logan and Shenk, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3655-3659, 1984を参照のこと)。同様に特定の開始シグナルが挿入された核酸分子の効率的な翻訳のために必要とされる。これらのシグナルは、ATG開始コドンおよび隣接配列を含む。全遺伝子、またはそれ自身の開始コドンおよび隣接配列を含むcDNAが適切な発現ベクターに挿入された場合、追加の翻訳調節シグナルは必要とされない。しかし、コード配列の一部だけが挿入された場合、多分ATG開始コドンを含む外因性の翻訳調節シグナルが提供されなければならない。さらに、挿入断片全体の翻訳を確実にするために、前記開始コドンは所望のコード配列の読み取り枠と同じ位相になくてはならない。これらの外来翻訳調節シグナルおよび開始コドンは、天然および合成の種々の起源であるかもしれない。発現の効率は、適当な転写エンハンサー因子、転写ターミネータなどの包含によって高められうる(Bittner et al., Methods in Enzymol. 153:516- 544, 1987を参照のこと)。
【0152】
さらに、挿入された配列の発現を調節する宿主細胞株が選ばれるか、または所望の特異的な様式によって遺伝子産物を修飾、および加工する。タンパク質産物のそのような修飾(例えば、グリコシド化)および加工(例えば、分割)は、タンパク質の機能にとって重要である。異なる宿主細胞は、タンパク質および遺伝子産物の翻訳後加工および修飾のための特徴的なおよび独自の機構をもつ。発現された外来タンパク質の正しい修飾および加工を確実にするように、適当な細胞株または宿主系を選出することができる。このために、一次転写、遺伝子産物のグリコシド化、およびリン酸化の適当な加工のための細胞機構を有する真核宿主細胞が使用されうる。先に列挙された哺乳動物細胞型は、好適な宿主細胞としての役割を担うことが可能なものに含まれる。
【0153】
組換えのタンパク質の長期の、高い収率での産生のために、安定した発現が好ましい。例えば、FGFR配列または先に記載のFGFRリガンド配列のいずれかを安定に発現する細胞株が設計されうる。ウイルス起源のものを含む発現ベクターの複製を使うよりむしろ、宿主細胞は、適当な発現制御因子(例えば、プロモーター、エンハンサー配列、転写ターミネータ、ポリアデニレーション部位など)、および選択可能マーカーによって管理されたDMAによって形質転換されることができる。外来DNAの導入に続いて、組換え細胞は、強化培地中で1〜2日間培養され、そして選択培地に変更される。組換えプラスミド内の選択可能マーカーは、選択に対する抵抗性を与え、細胞に上記プラスミドをそれらの染色体内に安定に統合させ、そして次々にクローン化されて、細胞株内に広がることができる増殖巣を形成するようになる。そのような組換え細胞株は、FGFRとFGFRリガンドの間の相互作用に影響する候補化合物のスクリーニング・アッセイおよび評価に特に有用である。
【0154】
多数の選択システムを使用することができる。例えば、単純ヘルペスウイルス・チミジン・キナーゼ(Wigler, et al., Cell 11:223, 1977)、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska and Szybalski, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 48:2026, 1962)、およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy, et al., Cell 22:817, 1980)遺伝子を、それぞれtk-、hgprt-、またはaprt-細胞に利用することができる。同様に、抗代謝産物耐性を以下の遺伝子:メトトレキサートに対する抵抗性を与えるdhfr(Wigler et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:3567, 1980; O'Hare et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:1527, 1981);ミコフェノール酸に対する抵抗性を与えるgpt(Mulligan and Berg, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:2072, 1981);アミノグリコシドG-418に対する抵抗性を与えるneo(Colberre-Garapin et al., J. Mol. Biol. 150:1, 1981);そしてハイグロマイシンに対する抵抗性を与えるhygro(Santerre et al., Gene 30:147, 1984)について選択の根拠として使用することができる。
【0155】
あるいは、あらゆる融合タンパク質も発現された融合タンパク質に対して特異的な抗体を利用することによって容易に精製される。例えば、Janknechtらによって記載された系は、ヒト細胞株で発現された非変性融合タンパク質の即座の精製を可能にする(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:8972-8976, 1991)。この系では、遺伝子の読み取り枠が6つのヒスチジン残基から成るアミノ末端タグに翻訳融合されるように、着目の遺伝子をワクチニア・リコンビナント・プラスミド内にサブクローニングする。リコンビナント・ワクチニア・ウイルスを感染させた細胞からの抽出物を、Ni2+ニトリロ酢酸−アガロース・カラムに添加し、そしてヒスチジン・タグ・タンパク質をイミダゾール含有バッファーで選択的に溶出する。
【0156】
本発明の組換えタンパク質のある群の分子が上記結合部位を含み、組換え型タンパク質の他の群の分子が上記結合部位の認識のための部位を含むことが考えられる。
【0157】
薬剤
リガンド結合による細胞表面レセプターの活性化は、健康的な生物において厳密に制御されている。突然変異、レセプターまたはレセプター・リガンドの異常な発現または加工は、レセプターの活性の異常をもたらして、それによりレセプターの機能不全をもたらす。レセプターの機能不全は、言い換えると、様々な細胞過程の維持のためにレセプターを使う細胞の機能不全の理由である。後者は病気の徴候である。FGFRsは、発生初期の発達の間、および成人において幅広い種類の細胞種によって発現される。これらのレセプターの機能不全は、多数の病気に関係した。
【0158】
それ故に、FGFRsの活性の調節ができる化合物を提供することが本発明の目的であって、上記化合物は病気の治療のための薬剤として本発明に関係する、ここで、FGFRsの活性の調節が上記治療のための必要不可欠な条件として考えられうる。
【0159】
本発明の薬剤は、1つの態様において、以下の:
1) 正常、変性、または損傷NCAMを提示する細胞、および/または
2) 中枢および末梢神経系の、または筋肉の、あるいは様々な臓器の病気および異常、および/または
【0160】
3) 中枢および末梢神経系の病気または異常、例えば術後の神経損傷、外傷性神経損傷、神経線維の髄鞘形成障害、虚血後損傷、例えば脳卒中に起因するもの、パーキンソン病、アルツハイマー症、ハンチントン病、痴呆、例えば多発脳梗塞性痴呆、硬化症、糖尿病に関係する神経変性、概日時計または神経−筋肉の伝達に影響する障害、統合失調症、気分障害、例えば躁鬱病;神経−筋肉接続の機能障害、例えば臓器移植後の、または遺伝的もしくは外傷性の萎縮性筋肉障害を含む筋肉の病気または異常の治療;または、様々な臓器、例えば生殖腺の変性状態の、膵臓、例えばI型およびII型糖尿病の、腎臓、例えばネフローゼの、ならびに心臓、肝臓、および腸の病気または異常の治療、および/または
【0161】
4) 術後神経損傷、外傷性神経損傷、神経線維の髄鞘形成障害、虚血後損傷、例えば脳卒中に起因するもの、パーキンソン病、アルツハイマー症、ハンチントン病、痴呆、例えば多発脳梗塞性痴呆、硬化症、糖尿病に関係する神経変性、概日時計または神経−筋肉の伝達に影響する障害、ならびに統合失調症、気分障害、例えば躁鬱病、および/または
5) 癌疾患、ここで、癌は血管新生を必要とするあらゆるタイプの固体腫瘍である、
の治療のためである。
【0162】
他の態様において、本発明の薬剤は、以下の:
1) 創傷治癒の促進、および/または
2) 例えば、急性心筋梗塞後の、または血管新生後の心筋細胞の細胞死の予防、および/または
3) 血管再開通術、および/または
4) 学習能力、および/または短期および/または長期記憶の刺激、
のための薬剤の製造のためのものである。
【0163】
1つの態様において、本発明の薬剤は配列番号2〜146に規定されるアミノ酸配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしく変異体少なくとも1つを含む。他の態様において、本発明の薬剤は、本発明の結合部位を含むエピトープに結合することができる抗体、または上記抗体の断片もしくは変異体を含む。
【0164】
本発明の薬剤は、有効量の先に規定された化合物、または医薬として許容される添加剤と組み合わせて先に規定された組成物の1以上を含む。そのような薬剤は、経口、経皮、筋肉内、静脈内、頭蓋内、くも膜下、脳室内、鼻腔内、または肺投与のために好適に処方される。
【0165】
一般に、本発明の化合物に基づいた薬剤と組成物の処方開発の戦略は、あらゆる他のタンパク質ベース薬剤の製品のための処方戦略と一致する。潜在的な問題と、これらの問題を克服するために必要な手引きが数冊のテキスト、例えば"Therapeutic Peptides and Protein Formulation.Processing and Delivery Systems", Ed.A.K.Banga, Technomic Publishing AG, Basel, 1995中で扱われている。
【0166】
注射剤は、液性の溶液または懸濁液、注射前に液体中、溶液または懸濁液に好適である固体形態のいずれかとして通常準備される。前記調合剤を乳化することもできる。有効成分は、医薬として許容され、かつ、多くの場合、有効成分と適合する賦形剤と混合される。好適な賦形剤は、例えば水、生理食塩液、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、およびその組み合わせである。さらに、所望であれば、前記調合剤は少量の補助物質、例えば湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、または上記調合剤の有効性または輸送を高める物質を含むかもしれない。
【0167】
本発明の化合物の製剤を当業者に知られた技術によって準備することができる。前記製剤は、医薬として許容される担体、およびマイクロスフェア、リポソーム、マイクロカプセル、ナノ粒子などを含む賦形剤を含む。
【0168】
場合により、前記有効成分がその効果を発揮する部位において、前記調合剤は注射によって好適に投与されうる。他の投与方式に好適な追加の製剤が坐剤、点鼻剤、肺用調合剤、および場合によっては、経口製剤を含む。坐剤のために、伝統的な結合剤および担体は、ポリアルキレン・グリコールまたはトリグリセリドを含む。そのような坐剤は、0.5%〜10%、好ましくは1〜2%の範囲で有効成分を含む混合物から形成されうる。経口製剤は、例えば医薬等級のマンニトール、ラクトース、スターチ、ステアリン酸マグネシウム、サッカライド・ナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的に利用される賦形剤を含む。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル、徐放製剤、または粉末の形態をとり、そして一般に10〜95%、好ましくは25〜70%の有効成分を含む。
【0169】
他の製剤は経鼻および肺投与、例えば吸入器およびエアロゾール剤に好適である。
【0170】
活性な化合物は、中世または塩の形で処方されることができる。医薬として許容される塩は、(前記ペプチド化合物の遊離アミノ基により形成される)酸付加塩を含み、そしてそれは無機酸、例えば塩化水素またはリン酸、あるいは有機酸、例えば酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などによって形成される。遊離のカルボキシル基によって形成された塩は、同様に無機塩基、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または水酸化第二鉄、ならびに有機塩基、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノ・エタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来する。
【0171】
前記調合剤は、剤形に適合するやり方で、かつ、医薬として有効な量で投与される。投与されるべき量は、例えば対象者の体重と年齢、治療する病気、および病気のステージを含めて、治療される対象者に依存する。好適な投与量の範囲は、通常は、体重1キロにつき1回の投与で数百μgの有効成分の水準であり、体重1キロにつき約0.1 μg-5000 μgの好ましい範囲をもつ。前記化合物の単量体形態を使うことで、好適な投与量範囲は、多くの場合、体重1キロにつき0.1 μg-5000 μgの範囲、例えば体重1キロつき0.1 μg-3000 μgの範囲、そして特に体重1キロにつき約0.1 μg-1000 μgの範囲である。前記化合物の多量体形態を使うことで、好適な投与量範囲は、多くの場合、体重1キロにつき0.1 μg−1000 μgの範囲、例えば体重1キロにつき0.1 μg-750 μgの範囲、そして特に体重1キロにつき約0.1 μg-から500 μgの範囲、例えば体重1キロにつき約0.1 μg-250 μgの範囲である。特に、経鼻投与の場合、他の経路で投与される時よりもわずかな投与量が使用される。投与は、一回実施されるか、または次の投与が続く可能性がある。同様に、投与量は投与経路に依存し、かつ、治療される対象者の年齢および体重で変化する。多量体形態の好ましい投与量は、70 kgの体重につき1 mg〜70 mgの区間である。
【0172】
たいていの適応について、局所適用、または実質的に局所適用が好ましい。
本発明の化合物のいくつかは十分に活性であるが、しかし、他のいくつかについては、その調合物がさらに医薬として許容される添加剤および/または担体を含めば、その効果が高められる。そのような添加剤および担体が当該技術分野で知られている。場合によって、その標的への作用物質のデリバリーを高める化合物を含むことが有利である。
【0173】
多くの例で、前記製剤を複数回投与する必要がある。投与は、連続的な注入、例えば心室内注入か、またはより多くの投与量での投与、例えば毎日、1日あたりより多くの回数、毎週、1週間あたりより多くの回数であるかもしてない。個体が細胞死をもたらすかもしれない因子にさらされる前、またはその直後に薬剤の投与が開始されることが好ましい。好ましくは、因子発現から8時間以内、例えば因子発現から5時間以内に薬剤は投与される。前記化合物の多くが長期の効果を示すので、その化合物の投与は長い間隔、例えば1週間または2週間の間隔をとって行われうる。
【0174】
ナーブ・ガイド(nerve guides)における使用に関連して、投与は連続的であるか、または活性化合物の制御放出に基づいたわずかな部分によるかもしれない。さらに、前駆物質が放出速度および/または放出部位を管理するために使用されるかもしれない。経口投与としての他の種類の移植片およびウェルは、制御放出および/または前駆物質の使用に同様に基づきうる。
【0175】
治療
1つの態様において、本発明による化合物/組成物の使用による治療は、分化の誘導、増殖の調節、再生の刺激、神経可塑性、ならびに植え込まれたかまたは移植された細胞の生存に役立つ。これは長期効果をもつ化合物を使う時に特に有用である。
【0176】
さらなる態様において、治療は、種々の要因、例えば外傷および傷害、急性疾患、慢性疾患および/または障害、特に通常、細胞死をもたらす変性疾患、他の外部要因、例えばフリーラジカルの形成、またはそれ以外に細胞障害効果を有するものを引き起こす、治療法および/または外科療法および/または診断方法、例えばエックス線および化学療法によって死滅の危険性がある細胞の生存の刺激のためのものである。化学療法に関して、本発明によるFGFR結合化合物は、FGFRsを提示している全ての癌細胞の癌治療に有用である。
【0177】
従って、前記治療は、中枢および末梢神経系の病気または異常、例えば、術後の神経損傷、例えば脊椎損傷に起因する、外傷性神経損傷、神経線維の髄鞘形成障害、例えば脳卒中に起因する、虚血後損傷、多発脳梗塞性痴呆、多発性硬化症、糖尿病に関係する神経変性、神経−筋肉の変性、統合失調症、アルツハイマー症、パーキンソン病、またはハンチントン病、に関係する細胞死の治療および/または予防を含む。
【0178】
同様に、神経−筋肉の接続の機能障害を伴う異常、例えば遺伝性または外傷性の萎縮性筋肉障害を含む筋肉の病気または異常に関して;または様々な臓器の病気または異常、例えば生殖腺の変性異常、膵臓の変性異常、例えばI型およびII型糖尿病、腎臓の変性異常、例えばネフローゼの治療のために、本発明による化合物が、分化の誘導、増殖の調節、再生刺激、神経可塑性の刺激、および生存の刺激、すなわち生存を刺激するために使用されうる。
【0179】
さらに、前記化合物および/または医薬組成物は、血管形成を誘導するために、例えば急性心筋梗塞後に心筋細胞の細胞死を防ぐためのものであるかもしれない。さらに、1つの態様において、前記化合物および/または医薬組成物は、例えば急性心筋梗塞後の生存のように、心筋肉細胞の生存の刺激のためのものである。他の側面において、前記化合物および/または医薬組成物は、例えば損傷後の血管再開通術のためのものである。
【0180】
創傷治癒の促進のために前記化合物および/または医薬組成物を使うことは本発明の範囲内でもある。当該化合物は、血管形成を刺激することができて、それによって創傷治癒過程を促進する。
【0181】
本発明は癌の治療における前記化合物および/または医薬組成物の使用をさらに開示する。FGFRの活性の調節が腫瘍の血管形成、増殖、および拡散にとって重要である。
【0182】
よりさらなる態様において、FGFR活性が神経細胞の分化にとって重要なので、前記化合物および/または医薬組成物の使用は学習能力および/または、短期および/または長期記憶の刺激のためのものである。
【0183】
特に、本発明の化合物および/または医薬組成物は、臨床的異常、例えば新生物、例えば悪性新生物、良性新生物、上皮内癌、および流動的な挙動の新生物、内分泌腺の病気、例えば糖尿病、精神病、例えば老年性および初老性器質性精神異常、アルコール精神病、薬物精神病、一過性器質性精神異常、アルツハイマー症、脳リピドーシス、てんかん、全身不全麻痺[梅毒]、肝レンズ核変性症、ハンチントン舞踏病、ヤコブ−クロイツフェルト病、多発性硬化症、脳のピック病、梅毒、統合失調症障害、情動性精神病、ノイローゼ障害、性格神経症を含む人格障害、器質性脳症候群に関係する非精神病性人格障害、偏執性人格障害、狂信的人格、偏執性人格(障害)、偏執特性、性的逸脱、および障害、精神薄弱、神経系および感受性臓器、認識異常、例えば髄膜炎、脳炎といった中枢神経系の炎症性疾患、例えばアルツハイマー症といった脳の変性、
【0184】
ピック病、脳の老年性変性、交通性水頭症、閉塞性水頭症、他の錐体外路症および異常な運動障害を含むパーキンソン病、脊髄小脳疾患、小脳失調症、Marie's、サンガー−ブラウン、ミオクローヌス性小脳性共同運動障害、例えば脊椎性筋萎縮症、家族性、若年性、成人の脊椎性筋萎縮症といった原始小脳変性、運動ニューロン疾患、筋萎縮性側索硬化症、運動ニューロン疾患、進行性球麻痺、偽球麻痺、原発性側索硬化症、他の前角細胞疾患、前角細胞疾患、特定されていない、他も脊髄の病気、脊髄空洞症および延髄空洞症、血管ミエロパシー、(塞栓症である)(塞栓症ではない)脊髄の急性梗塞形成、脊髄の動脈血栓、脊椎の水腫、亜急性壊死ミエロパシー、他の場所で分類された病気における脊髄の亜急性会合性脊髄変性症、ミエロパシー、薬物によって誘導された、放射線によって誘導された脊髄炎、自律神経系の障害、末梢自律神経の障害、交感神経、副交感神経、または自律神経系、家族性自律神経障害[ライリー−デイ症候群]、
【0185】
特発性末梢自律神経ニューロパシー、頸動脈洞失神または症候群、頸部交感神経ジストロフィーまたは麻痺、他の場所で分類された障害における末梢自律神経ニューロパシー、アミロイドーシス、末梢神経系の病気、上腕神経叢病変、頚肋症候群、肋鎖症候群、前斜角筋症候群、胸郭出口症候群、上腕神経炎または神経根炎(新生児で含む)、急性伝染性多発性神経炎、ギラン−バレー症候群、感染後多発性神経炎を含む炎症性および有毒なニューロパシー、膠原病における多発ニューロパシー、眼の多重構造に影響している障害、化膿した眼内炎、耳および乳様突起の病気、慢性リューマチ性心疾患、虚血性心疾患、不整脈、肺系の病気、神経系を含めた新生児の臓器および軟組織の異常、陣痛または分娩における麻酔剤の投与と他の鎮静剤投与の合併症、伝染を含む皮膚の病気、不十分な循環問題、術後を含めた傷害、激しい損傷、やけど、神経の分裂を含めた神経および脊髄への傷害、(開放創ありまたはなしの)連続性の病変、(開放創ありまたはなしの)外傷性神経腫、(開放創ありまたはなしの)外傷性一過性麻痺、医療処置中の偶然の穿刺または裂傷、視神経と経路への傷害、視神経損傷、第2脳神経、視神経交差への傷害、視覚経路への傷害、視覚野への傷害、特定されていない失明、他の脳神経への傷害、他のおよび特定されていない神経への傷害、薬物、薬用物質、および生物学的物質による中毒、遺伝性または外傷性の萎縮性筋肉障害の治療;あるいは、様々な臓器の病気または異常、例えば生殖腺の変性異常、例えばI型およびII型糖尿病といった膵臓の、例えばネフローゼといった腎臓の治療のために使用されうる。
【0186】
本発明のさらなる側面は、1以上の医薬として許容される添加剤または担体と一緒に、有効量の本発明の化合物または本発明の医薬組成物の1以上を混合することを含む医薬組成物の製造方法であり、そして対象者に有効量の上記化合物、または上記医薬組成物の少なくとも1つを投与する。
【0187】
先に触れた方法の1つの態様において、前記化合物は補綴デバイスとの組み合わせで使用される、ここで、前記デバイスは補綴ナーブ・ガイドである。このように、さらなる側面において、本発明は、先に規定された化合物または医薬組成物の1以上を含むことを特徴とする補綴ナーブ・ガイドに関する。ナーブ・ガイドは当該技術分野で知られている。
【0188】
本発明は、前述の病気および異常のいずれかの治療または予防のための、本発明の化合物を含む医薬組成物の使用に関する。
よりさらなる側面において、本発明は本明細書中に規定されるように化合物を投与することによる、先に議論された病気または異常の治療方法に関する。
【実施例】
【0189】
組換えタンパク質の製造
NCAM F3モジュール1、2(エクソンa、AAGの発現なし)、およびFGFR1 Igモジュール2、3を、ラットNCAM cDNAおよびマウスFGFR1(IIICアイソフォーム)cDNAを使って製造した。F3モジュール1および結合F3モジュール1、2は、それぞれAGHHHHHHと、NCAM(swiss-prot:p13596)の第507〜611アミノ酸および第507〜705アミノ酸から成る。F3モジュール2は、AGと、NCAM(swiss-prot:p13596)の第612〜705アミノ酸から成り、そして連続して1から96までの番号を付ける。Aが1番である。FGFR Igモジュール2は、AGHHHHHHと、FGFR(swiss-prot:p16092)の第140〜251アミノ酸から成る。FGFR Igモジュール3、および結合Igモジュール2、3は、それぞれRSHHHHHHと、FGFR(swiss-prot:p16092)の第249〜365アミノ酸および第141〜365アミノ酸から成る。F3モジュールとFGFR Igモジュール2を、記載のとおりKM71株の酵母P.パストリス(P.pastoris)(Invitrogen, USA)によって発現させた(Thomsen et al., 1996)。FGFR Igモジュール3と、モジュール2、3を、製造業者の使用説明書に従ってショウジョウバエ(Drosophila)S2細胞(Invitrogen, USA)によって発現させた。全ての前記タンパク質をNi2+-NTAレジン(Qiagen, USA)を使ったアフィニティークロマトグラフィーおよび/またはイオン交換クロマトグラフィとゲル濾過によって精製した。15N標識F3モジュール2を、記載のとおり製造した(Thomsen et al., 1996)。NCAM Igモジュール1、2、および3(RV、およびラットNCAM、swiss-prot:p13596の第20〜308アミノ酸)を、記載のとおり製造した(Soroka et. al., 2002)。
【0190】
NMR分析:NCAM F3モジュール2の構造計算、ならびにFGFRおよびATPとの結合に関与する残基の同定
以下のサンプルをNCAM F3モジュール2の構造決定に使用した:H2OまたはD20中、2 mMのモジュール、およびH2O中、1 mMの15N標識モジュール。バッファーは、30 mMのNaCl、10 mMのリン酸ナトリウム・バッファー、pH 7.27だった。以下のNMRスペクトルが記録され、そして指定のために使用した:H2OまたはD2O中、TOCSY(45および70 msの混合時間)、H2OまたはD2O中、NOESY(80および200 msの混合時間)、DQFCOSY、15N-HSQC、15N-TOCSY-HSQC(70 msの混合時間)、15N-NOESY-HSQC(125 msの混合時間)(Bodenhausen and Ruben, 1980; Braunsweiler and Ernst, 1983; Kumar et al., 1981; Piantini et al., 1982; Zhang et al., 1994)。NMR実験を、Bruker AMX-600 MHz、およびVarian Unity Inova 500、750、および800 MHzのスペクトロメーターで実施した。全てのスペクトルを298 Kで記録した。1Hおよび15Nの共鳴の指定を、プログラムPRONTO(Kjaer et al., 1994)を使って実施した。
【0191】
構造計算
X-PLORプログラムを使った距離ジオメトリ/模擬されたアニーリング・プロトコルを、構造計算のために使用した。NOE制限は、もしその制限がメチル基を含んでいれば0.5 Åまで増加する、2.7、3.3、および6.0 Åの上限をもつ80/200 msのNOESYと、125 msの15N-NOESY-HSQCスペクトルに由来する。40 φアングルは、-120±40°と-57±40°の境界によって制限し(3JHNHα結合定数に由来する)、そして4χ1アングルを適用した。水素結合エネルギーの検査後に、80の水素結合制限を、NH-OおよびN-Oの距離に関して、それぞれ、2 Åと3 Åを上限とするNOE制限として適用した。96個の構造が算出され、96個が、NOE制限違反>0.5 Åまたはアングル違反>5°をもつあらゆる構造を判別するX-PLORによって受け入れられた。構造は、MOLMOL、PROCHECK_NMR、およびWHATCHECKプログラムを用いて検討した。78個の構造が、第2世代のパッキング特性のZスコアの絶対値、ラマチャンドラン・プロット、χ1/χ2プロット、および骨格立体配座3.0未満、を有した。これらの78個の構造から、2.4未満のZスコアの絶対値を持つ30個の構造が、F3モジュール2の構造を表すために選ばれた。
【0192】
NMRによるNCAM F3モジュール2の構造決定
骨格原子についての30個の重ね合わせ構造体のオーバーレイを図1Aに示す(登録番号1LWR、タンパク質データバンク)。7βストランドを標識した構造体のリボン描写を図1Bに示す。構造的な統計値の概要を表1に与える。
【0193】
構造体は、一方が3つのストランド(ABE)を含み、そして他方が4つのストランド(GFCD)を含む、2つのβシートから成るサンドイッチ状に配列された7つの逆平行βストランドから成る。その両βシートは、右利きのねじりがある。前記3ストランドβシートは、K7-G13(A)、S18-I24(B)、H59-S63(E)残基から成り、そして前記4ストランドβシートは、I33-A42(C)、I51、A52(D)、E70-N79(F)およびG82-R92(G)残基から成る。残基K85、A86およびV76(GおよびFのβストランド)、ならびに残基A77とH35、Y36(FおよびCのβストランド)を含めた2つの幅広いタイプのβ隆起がある(Chan et al., 1993)。2つのβ隆起が4ストランドβシートの右ねじりの立体配座に寄与している。特徴的なβシート・ストランド間のNOEsの分析が、このモジュールにはフィブロネクチンIII型折り畳みがあるということを明らかに示す。
【0194】
FGFRおよびATPと相互作用するNCAM F3モジュール2の残基の同定
15N標識タンパク質の15N-HSQCスペクトルで、窒素とプロトンの両方を持つ各々のアミノ酸のシグナルを観察することができる。シグナルの化学シフトにおける変化は、他の分子の結合によって乱されるタンパク質内の残基の同定方法を提供する。NCAM F3モジュール2の50 μMの15N標識サンプルに、1 mMの未標識FGFR Igモジュール2もしくは3、または5 mMのAMP-PCP(ATPの非加水分解性相似体)を加えた。化学シフトの著しい変化がIgモジュール2の存在下では見られなかった(データ未掲載)。Igモジュール3またはAMP-PCPの存在下で記録された化学シフトの変化を、図1C、Dに示す。Igモジュール3による混乱を示したF3モジュールの残基は、N79、Q81、G82、およびK83だった(図1C)。これらの残基の化学シフトの変化は、F3モジュール2に近いIgモジュール3の存在が、(その乱れた残基が2つのモジュール間の相互作用のための結合部位の一部または周辺のいずれかであることを示す)F3モジュールの乱れた残基において化学的な環境を変えることを証明する。これらの残基はFとGのβストランド間の回転部位にあって、図2Eからわかるように、それらはそのモジュールのN末端に近くて、それによりNCAM分子のF3モジュール1のC末端に近接する。結合F3モジュール1、2から成る組換えタンパク質が2つの個々のF3モジュールのどれよりも非常に高い親和性でFGFRに結合することが分かったので、F3モジュール2のN末端の乱れた残基がF3モジュール1のC末端の残基と一緒に、F3モジュールが分離された場合に破壊され、それにより2つのモジュールをもつタンパク質と比べてFGFRに対するそれらの親和性を大きく減少させる、単一の結合部位を形成することが可能である。
【0195】
AMP-PCPで乱されたF3モジュールの残基はY74とV75だった。Y74の側鎖はモジュールの表面上にさらされて、ヌクレオチドの結合モチーフ:A77ENQQGKS84とK85(図1E)のすぐ近くにある。K83もK85もモジュールの表面上とさらされて、恐らくK83とK85の正に荷電した側鎖がATPの負に荷電した三リン酸部分と相互作用するのに対し、Y74の側鎖は、ATPのアデノシン部分と疎水性の相互作用に関係する。ATPとF3モジュール2の複合体の可能な配置を図1Gに描写する。FGFR Igモジュール3(N79、Q81、G82、およびK83)によって乱れた残基がヌクレオチド結合モチーフの一部でもあり、ATP結合部位とFGFR結合部位が重なっていることを示す。
【0196】
このように、これらのデータは、NCAM F3モジュール2のN79、Q81、G82、およびK83がFGFRに結合する部位に位置し、そしてそのFGFR結合部位がATP結合部位に重なることを示す。
【0197】
FGFRとNCAMの間の相互作用のSPR分析
結合分析を、ランニング・バッファーとして10 mMのリン酸ナトリウムpH7.4、150 mMのNaClを使ったBIAcoreX器具(Biosensor AB)を使って25℃で実施した。流量は5 μl/分だった。データを、製造業者のソフトウェアを使って非線形の曲線の当てはめによって分析した。FGFR Igモジュール2、3を、以下の通りアミン連結キット(Biosensor AB)を使ってセンサー・チップCM5上に固定した:
1) チップの2つの部分(Fc1とFc2と呼ぶ)を20 μlの活性化溶液によって活性化した;
2) 10 mMのリン酸ナトリウム・バッファーpH6.0中、12 μlの20 μg/mlタンパク質を使って、上記タンパク質をFc1上に固定した;
【0198】
3) Fc1とFc2を35 μlのブロッキング溶液によってブロックした。
固定されたFGFRモジュールへの様々な化合物の結合を、以下の通り調査した:化合物を、(固定されたFGFRモジュールの)Fc1と(何も固定されていない)Fc2に同時に注入した。Fc2表面への上記化合物の非特異的結合を表す曲線を、固定されたFGFRモジュールおよびFc1表面への上記タンパク質の結合を表す曲線から差し引いた。得られた曲線を分析のために使用した。ATP競合実験のために、特定の化合物を特定の濃度のATPと一緒に10分間プレインキュベートした。NCAM F3モジュール1、2と、FGFRモジュール2、3の間の相互作用のためのATPのKiを、前述のように推定した(Kiselyov et al., 1997):30 μMのF3モジュールの初期結合率、V0、および特定の濃度のATPとプレインキュベートした30 μMのF3モジュールの初期結合率、VATPを測定した。阻害率(%)、I%を、式:I%=(1-VATP/V0)×100を使って計算した。I%を、ATP濃度に対してプロットし、Kiを実験データに対する理論曲線の非線形当てはめによって計算した。
【0199】
NCAMとFGFRの間の直接的な相互作用の証明
図2から、NCAM F3モジュール1、2から成るタンパク質がFGFRモジュール2、3を含む固定されたタンパク質に結合する一方で、NCAM Igモジュール1、2、および3から成る対照タンパク質がFGFR断片に結合しないように見える。解離定数(Kd)と関連係数および解離係数はそれぞれ以下の通りである:9.97±0.37 μM、889±332 M-1s-1、および5.56±0.07×10-3s-1(平均±標準偏差)。
【0200】
このように、これらのデータは、NCAM F3モジュールが直接的にFGFRに結合することを示している。
【0201】
NCAMのFGFRへの結合をATPによって阻害することができる
FGFRとATPに結合するNCAM部位が重なっているので、その結果、ATPがNCAM-FGFR結合を妨害することが予想されるかもしれない。この仮定を試験するために、SPR分析を使用した。図3Aから確認できるように、10 mMのATPを30 μMのNCAM F3モジュール1、2に加えることで、FGFR Igモジュール2、3へのF3モジュールの結合を完全に阻害した。阻害定数(Ki)を測定するために、様々なATP濃度で阻害効果を計測した(図3B)。算出されたKiは、0.37±0.05 mMだった。NMR実験がF3モジュール2のβ−ストランドFおよびGの間の回転部位がFGFRへの結合に係わっていることを示すので、これらの残基におよぶペプチド断片がFGFRに結合することができるか試験することは興味深い。
【0202】
しかも、F3モジュール1に位置する他のペプチド断片を試験することも興味深い。なぜなら、このモジュールのEおよびFストランドの間の回転部位がFGFRのIg2-lg3モジュールと相互作用するNCAMの結合部位のN末端部分を構成するかもしれないからである。この目的のために、ペプチドはF3モジュール2のE72-A86(配列番号1)(FGループ・ペプチドと呼ばれる)残基に相当し、およびペプチドは、F3モジュール1のT573-R586(配列番号9)(EFループ・ペプチドと呼ばれる)残基に相当する。しかし、これらのペプチドの単量体形態の結合はSPRによって検出できない。従って、1つの型(例えば、配列番号1または配列番号9)の4つのペプチド配列をそれらのC末端によって3つのリジン骨格に接続した、上記ペプチドの合成デンドリマー・バージョンが存在した。これは、ペプチドが同時にFGFRの数個の分子に結合することを可能にし、それにより、上記ペプチドの見かけ上の親和性が大きく増加し、同時に、(各々のペプチドの分子量が4倍に増えたので)SPR分析の感度が4倍に増えた。
【0203】
図3Cで明らかなように、デンドリマーFGループ・ペプチドは、2.58±2.06 μMの見かけ上のKdでFGFRに結合する(関連係数および解離係数は、それぞれ、2.07±1.08×103M-1s-1と3.97±2.29×10-3s-1である)。F3モジュール1、2のFGFRへの結合をATPによって阻害することができ、そして上記ペプチドがNCAMの全ヌクレオチド結合モチーフを含むので、ATPがFGFRへの上記ペプチドの結合を妨害することができるか同様に試験した。実際に、10 mMのATPを34 μMペプチドに加えることによって約70%にまで結合を阻害した(図3C)。図4はFGFRへのデンドリマー形態のEFループ・ペプチドの実時間結合を明らかにする。
【0204】
これらの実験は、FGFRへのNCAMの結合がATPによって阻害されうることを明らかにし、そしてF3モジュール2のβ−ストランドFおよびGの間の回転部位、およびF3モジュール1のβ−ストランドEおよびFがFGFRへの結合に関与する、そしてFGFRとATPのためのNCAM部位が重なるという考えを支持する。
【0205】
FGFR1のリン酸化の測定のためのアッセイおよびNCAM免疫沈降
NCAM F3モジュール2とFGループ・ペプチドによるFGFRの活性化
NCAM F3モジュール2とFGFRデンドリマーFGループ・ペプチドがFGFRに結合するため、それらは生細胞においてFGFR活性化を誘導することが同様に予測される。この仮定を試験するために、2つのアッセイを使用した。
【0206】
アッセイ1:Flp-Inシステム(Invitrogen)を使って、C末端StrepIIタグ(IBA biotech)を有するヒトFGFR1によってTREX-293細胞(Invitrogen)を安定に形質移入した。リン酸化の検討のために:〜2×107細胞を一晩飢餓状態にし、その後20分間特定の化合物によって刺激した。細胞を1%のNP-40およびホスファターゼ制限因子混合物セットII(Calbiochem)によりPBS中で溶解した。透明な細胞ライセートを、50 μlのアガロース結合抗ホスホチロシン抗体(4G10-AC, Upstate Biotechnologies)と一緒に4℃で3時間インキュベートした。リン酸化したFGFRの大幅な増加を検出できるように、利用した細胞の量を調整するように注意を払った。結合したタンパク質を洗浄し、150 mMのフェニルリン酸(Sigma)を使って溶出し、12%のトリクロロ酢酸によって沈澱させ、冷アセトンによって洗浄し、そしてSDS-PAGEサンプル・バッファー中に溶かした。組換えStrepIIタグ(IBA biotech)に対する抗体を使ってイムノブロッティングを実施した。免疫沈降のために:〜1×107の細胞を180 kDaのNCAMアイソフォームまたは対照ベクターによって一時的に形質移入した。細胞を24時間インキュベートし、そして一晩飢餓状態にした。溶解後に、FGFRをStrep Tactin Minicolumn(IBA biotech)により製造業者の使用説明書に従って精製し、そしてヒトNCAMに対するポリクローナル抗体を用いたイムノブロッティング法によって分析した。
【0207】
図5Aで明らかなように、5 μMのF3モジュールも2.5 μMのデンドリマーFGループ・ペプチドも非刺激細胞と比べてFGFRリン酸化を実質的に増加させる。
【0208】
アッセイ2:ラットFGFR1(IIICアイソフォーム)のcDNAを、ラットPC12細胞株から単離したRNAを使ったRT-PCRによってクローン化し、そしてN末端のヘキサヒスチジンに融合したFGFR1の発現を可能にするpcDNA3.1(+)プラスミド(Invitrogen)中に挿入した。
【0209】
〜8×105のHEK293細胞を、完全培地(10%のFCS、100 U/mlのペニシリン、100 μg/mlのストレプトマイシン、および58.4 g/lのGlutamaxを添加したDMEM1965)中、60 mmのプレートにおいて24時間培養し、そしてLipofectAMIN PLUS(商標)試薬キット(Gibco BRL)を使って製造業者の使用説明書に従って0.2 μgの(FGFRを含む)プラスミドによって形質移入する。細胞を完全培地中でさらに24時間培養し、そして一晩飢餓培地(DMEM1965)に変えた。FGFR形質移入細胞を特定の化合物で20分間刺激して、(PBS中)8 Mの尿素、1 mMのオルソバナダートによって溶解し、以下の通りHis-tagによって上記ライセートから精製した:上記ライセートをNi2+/NTAセファロース(Qiagen)上に添加し、10 mMのイミダゾールを加えた溶解バッファーで洗浄し、FGFRを250 mMのイミダゾールを加えた溶解バッファーで溶出した。精製したFGFRを抗pentahis抗体(Qiagen)または抗ホスホチロシン抗体(PY20、Transduction Laboratories)を使ったイムノブロッティング法によって分析した。バンドを化学発光によって可視化し、GeneGnome装置(SynGene)を使って上記バンド密度を計測した。
【0210】
図5Bから、5 μMのF3モジュール2または25 μMの単量体FGループ・ペプチドの添加が、それぞれ対照細胞と比べて、約150%および100%増加にまでFGFRリン酸化を増加させることが明らかである。
【0211】
NCAMとFGFRの同時免疫沈降
NCAMとFGFR断片の結合をインビトロにおいてSPRおよびNMR分析によって証明することができたので、天然のNCAMが生細胞のFGFRに結合することを確認することは興味深い。そのため、C末端にStrepIIタグを含むFGFRによって安定に形質移入したTREX-293細胞を、180 kDaのNCAMアイソフォームによって一時的に形質移入した。前記細胞を溶解した後に、FGFRをStrepIIタグによって親和性を使って精製し、NCAMに対する抗体を使ったイムノブロッティング法によって分析した。図5Cから明らかなように、実際、NCAMはFGFRによって沈澱し、このように我々のSPRおよびNMRの実験を支持する。
【0212】
NCAM F3モジュール2、FGループ(FGL−ペプチド、配列番号1)、EFループ・ペプチド(EFL−ペプチド、配列番号9)、および軸索関連細胞接着分子由来のペプチドによる海馬ニューロンの神経突起長の刺激
記載(Skladchikova et al., 1999)のとおり準備した発生初期のラット海馬(発生初期の19日目)から解離したニューロンを、B27(Gibco BRL)と以下の特定の化合物を補った20 mMのHepes、100 U/mlのペニシリン、100 ng/mlのストレプトマイシン、0.4%のBSAを含むNeurobasal培地中、5%のCO2、37℃、6000細胞/cm2の密度で24時間、Permanoxプラスチック(Nunc)上で培養した。24時間後に、細胞をパラホルムアルデヒドで固定し、クマシー・ブリリアント・ブルーR250で染色し、そして記載(Skladchikova et al., 1999)の通り神経突起の長さを計測した。
【0213】
図6A、Bから確認することができるように、5 μMのF3モジュール2は非刺激ニューロンと比べて神経突起の長さを実質的に増加させた。その効果を、F3モジュール、FGループ・ペプチド、およびペプチド(A77-K83)の切断型バージョンの全てが(成長因子の誘導した神経突起生成を象徴する釣鐘型曲線(Hattenほか,1988)で)神経突起の伸長を誘導したことを証明している、用量応答研究により定量した(図6C)。10倍高い濃度が最大効果のために必要とされたので、前記ペプチドの能力は上記モジュールのそれより低く、そして前記切断型形態は拡張形態より効率的でなかった。F3モジュールとFGループ・ペプチドの刺激効果を、NCAMに刺激された神経突起伸長の阻害因子、FGFRに対する抗体(Williams et al., 1994)(図6D)によって完全に打ち消すことができ、さらにモジュールとFGループ・ペプチドがFGFRと相互作用するという考えを支持している。F3モジュール2のEFループ・ペプチドが顕著に神経突起の伸長を刺激することが同様に可能であった。図7から明らかなように、前記ペプチドによる神経突起の伸長刺激は、特にFGFR1の阻害因子、SU54402によって妨げられた。
【0214】
FGループ・ペプチドの機能上重要なアミノ酸を決定するために、切断および様々なアミノ酸のAla置換によって分析した。FGループ・ペプチドの(N-およびC末端からの)2つの切断型バージョン:九量体のV76-S84および七量体のAla77-K83、を作製した。切断型ペプチドのどちらもFGループ・ペプチド全体の刺激効果の約50%を維持し(図6E)、βストランドFとGの間の回転部位がNCAM-FGFR相互作用にとって重要であることを示した。図6Eから確認できるように、Alaを持つ七量体ペプチドのいずれかのアミノ酸の置換が神経突起誘導効果の減少をもたらし、そしてE78、N79、Q80、G82、K83が置換された場合には機能の完全な損失に至り、これらの残基がFGFRとの相互作用にとって重要であることを示した。Alaによる、FGループ・ペプチド全体の中のFGループの回転部位からのQ80およびQ81両方の置換は、同様に完全にペプチドを不活性化した(図6E)。これらの所見は、F3モジュール2においてN79、Q81、G82、およびK83がFGFR Igモジュール3への結合によって乱されることを示すNMR実験を裏付ける。しかし、ATPとの相互作用にとって重要であるように思われる残基(Y74、K83、およびK85)がFGループ・ペプチドにおいてAlaで置換させられた場合に、上記ペプチドは変異させていないペプチドの刺激効果の約60%を維持した(図6E)。
【0215】
さらに、F3モジュールの七量体ペプチドの構造はFGFR、FGF2の天然のリガンドの知られている構造と比較し(PDBコード:4FGF、Eriksson et al., 1993)、そして上記ペプチドが顕著な構造、そしてFGF2のループ領域、A42-R48(図8A)に類似した配列を示すことが分かった。2つのペプチドの骨格原子の立体配座は事実上同じであり、同様に側鎖が似通った立体配座を持っている。唯一の例外は(FGF2の)R48はその側鎖にK83のそれとは幾分異なる立体配座がある点である。図8Bから確認できるように、FGF2由来のペプチドは、類似のNCAMペプチドと同程度に神経突起の伸長を誘導し、そしてAlaによるいずれかのアミノ酸の置換によって機能の完全な損失に至った。NCAM F3モジュール2のFGループと、FGF2の一部の間の近い配列および構造の類似は、前者が直接的にFGFRと相互作用するという本主張を裏付ける。
【0216】
ATPはNCAM-FGFR結合を阻害し、F3モジュール2によるFGFR活性化を妨害することができるので、その結果として、それは上記モジュールの神経突起誘導活性に影響するかもしれない。この仮定を試験するために、ATPまたはAMP-PCPの存在下、ニューロンを以下に記載の化合物で刺激した。図9で確認できるように、ATPもAMP-PCPもF3モジュール2およびFGペプチド・ループによって誘導されたが神経突起誘導効果を実質的に減少させた。AMP-PCPが加えられた時、F3モジュールとFGループ・ペプチドの効果の完全な阻害が達成された一方で、ATPが加えられた時、FGループ・ペプチドの効果だけが完全に阻害され、ATPがその非加水分解性相似体より阻害因子の能力がより低いことを示した。最も顕著なことに、ATP結合に重要性であると推定されるFGループ・ペプチドのアミノ酸残基(Y74、K83、およびK85)をAlaで置換した場合、上記ペプチドがその神経突起誘導能力を維持したが、しかし、上記ペプチドの刺激効果はATPによって阻害されることはもはやできなくなり(図9)、ATP結合がF3モジュールとFGFRの間の相互作用を制御するという考えを支持した。
【0217】
これらの結果は、NCAM F3モジュール2、FGループおよびEFループ・ペプチドによるニューロンのFGFRのその活性化が神経突起生成を誘導し、この効果がATPまたはATP相似体によって阻害されることを示す。
【0218】
本発明にしたがってFGFRリガンドのFGFR結合部位の少なくとも一部を構成要素とする他のFGL様ペプチドの神経突起誘導能力を調査するために、軸索関係細胞接着分子[NCBI:NP_031544.1]由来の配列から成るペプチドを、先に記載のアッセイで使用した。選ばれたペプチドは、C末端から2つのアミノ酸を切断された配列番号5に記載の配列の11個のアミノ酸の断片である。図11が、FGループおよびEFループ・ペプチドと同様に、そのペプチドが海馬ニューロンの神経突起の伸長を刺激することができることを証明する。最大効果は、約0.3 μg/mlのペプチド濃度で観察された。
【0219】
エピトープ特異的抗体
配列番号1(FGL-ペプチド)を含むエピトープを特異的に認識する抗体を標準的な手法によってウサギで作製した(Gill BM, Barbosa JA, Dinh TQ, Garrod S, O'Connor DT: Chromogranin B: isolation from pheochromocytoma, N-terminal sequence, tissue distribution and secretory vesicle processing.Regul Peptides 33:223-35, 1991)。合成物FGLペプチドを担体タンパク質、KLH(キーホール・リンペット・ヘモシアニン)に連結した。前記ペプチドを、フロイント不完全アジュバントと混ぜて、そしてその混合物をウサギに注入した。(1羽のウサギにつき)1回の免疫処置に208 μgのペプチドを使用した。
【0220】
R.J. Jenny, T.L. Messier, L.A. Ouellette, and W.R. Church, Methods Enzymol. 222, 400 (1993)に記載のプロトコールに従って一連のFGLペプチド切断型変異体を使った競合的ELISAによって、抗体(血清)を特異性について試験した。試験の結果を図10に示す。100%の免疫反応性は、配列番号1から成る無処置のFGL−ペプチドだけで観察された。しかし、モチーフVVAENQQGKを含むFGL−ペプチドの2つの切断型変異体は、異なる免疫反応性を除いて、減少を明らかにした:ペプチドt4は完全長FGL−ペプチドの3つのC-末端アミノ酸を欠き(80%の免疫反応性)、そしてペプチドt1は完全長FGL−ペプチドの3つのN末端アミノ酸を欠く(40%の免疫反応性)。
【図面の簡単な説明】
【0221】
【図1】NCAM F3モジュール2の構造に示し、そしてFGFR1 Igモジュール3またはAMP-PCPとの相互作用に関係しているモジュール領域を説明する。a) 30個の重ね合わせ構造体の骨格原子オーバーレイの立体像、b)構造体のリボン描写。N末端が図面の上部に配置されている。cとd) FGFR1 Igモジュール3の1 mMの未標識サンプル(c)、または5 mMのAMP-PCP(d)添加後のNCAM F3モジュール2の0.05 mMの15N標識サンプルの1Hと15N原子の化学シフトの変化。前記化学シフトは15N-HSQCスペクトルから測定された。前記データは2つの独立した実験の平均として示される。e) そのモジュール構造上にFGFR Igモジュール3(N79、Q81、G82、K83、黒色)によって乱されたNCAM F3モジュール2残基のマッピング。f)AMP-PCP、Y74およびV75(黒色)によって乱されたNCAM F3モジュール2残基、ならびに上記モジュールの構造に対するATP結合ウォーカー・モチーフA、A77ENQQGKS84(灰色)、およびK85(暗い灰色、輪郭を書かれている);全ての他の残基は淡い灰色に塗られる、の残基のマッピング。g) NCAM F3モジュール2とATPの複合体の配置。K83、K85、およびY74は骨格原子のリボン描写で示されている。
【図2】表面プラスモン共鳴(SPR)分析の手段によって調査された、複合FGFR1 Igモジュール2および3への、複合NCAM F3モジュール1および2の結合を説明する。前記結合は、固定されたFGFRモジュールを有するセンサー・チップへの結合と、ブランク・センサー・チップ(非特異的な結合)への結合の間の応答の相違(Resp.Diff)として得られる。使用された全てのタンパク質の2つの異なる作製物を用いて、4つの独立した実験が実施された。
【図3】FGFR Igモジュール2、3と、NCAM F3モジュール1、2、またはデンドリマーFGループ・ペプチド(配列番号1)の間の結合に対するATPの阻害効果を説明する。前記結合はSPR分析によって調査された。FGFRモジュールの約2000個の共鳴ユニット(RU)をセンサー・チップに固定した。3つの独立した実験が実施された。a) 10 mMのATPの存在下または不存在下での、30 μMのF3モジュール1、2のFGFRモジュールへの結合。b) 30 μMのF3モジュール1、2と、固定されたFGFRモジュールの結合のATPによる阻害率(%)対阻害に使用したATP濃度のプロット、ならびに算出されたKi値。c) 固定されたFGFRモジュールへのデンドリマーFGループ・ペプチド(34、17、および8 μM濃度)の結合、および10 mMのATPの存在下での34 μMのペプチドの結合。
【図4】SPRによって記録された、デンドリマーEFループ・ペプチド(配列番号9)と、FGFR Igモジュール2、3の間の結合を説明する。前記結合は、固定されたFGFRモジュールを有するセンサー・チップへの結合と、ブランク・センサー・チップへの結合(非特異的な結合)の間の応答の相違(Resp.Diff)として得られる。使用された全てのタンパク質の2つの異なる作製物を使った、4つの独立した実験が実施された。
【図5】FGFRのリン酸化に対するNCAM F3モジュール2、およびFGループ・ペプチドの効果を示し、そしてFGFRによるNCAM免疫沈降を説明する。a) C末端StrepII−タグを含むFGFRで安定に形質移入されたTREX-293細胞を、10 ng/mlのFGF2、5 μMのF3モジュール2、または2.5 μMのデンドリマーFGループ・ペプチドのいずれかで20分間も刺激した。刺激後に、抗ホスホチロシン抗体を使って、FGFRは免疫精製し、そしてStrepII−タグに対する抗体を使ったイムノブロッティング法によって分析した。b) FGFR1のHis-タグ・バージョンで一時的に形質移入されたHEK293細胞を、5 μMのF3モジュール2、または25 μMのFGループ・ペプチドのいずれかで20分間刺激した。FGFR1の総量とFGFRリン酸化の量を、それぞれ、抗ペンタhis(抗-His)と、抗ホスホチロシン(抗-pY)抗体を使ったイムノブロッティング法によって評価した。FGFRリン酸化の定量を、バンド強度の濃度測定分析によって実施した。リン酸化を、1.0に標準化された対照(未処理細胞)に関連して評価した。エラーバーは平均の1つの標準誤差を表す。P<0.05、処理細胞を対照と比較した場合の対応のあるt検定による(t検定は非標準化データの6つの独立したセットで実施された)。Ctlは対照を、FはF3モジュール2を、FGLはFGループ・ペプチドを表す。c) C末端StrepII−タグを含むFGFRで安定に形質移入されたTREX-293細胞を、対照ベクターまたはNCAMで一時的に形質移入した。FGFRをStrepII−タグによって細胞ライセートから精製し、そしてNCAMに対する抗体を使ったイムノブロッティング法によって分析した。
【図6】海馬ニューロンからの神経突起伸長に対するNCAM F3モジュール2と、そのFGFR結合部分(FGループ・ペプチド(配列番号1))の効果を示す。a) 対照(未処理)ニューロンの位相差顕微鏡写真。b) 5 μMのF3モジュールで処理したニューロンの位相差顕微鏡写真。c) 神経突起の長さ対F3モジュール、FGループ・ペプチド、およびペプチドの切断バージョンの濃度。d) 5 μMのF3モジュールまたは50 μMのFGループ・ペプチドによって誘発された神経突起の伸長に対する抗FGFR抗体の効果。e) 海馬ニューロンからの神経突起の伸長に対するFGループ・ペプチドのAlaの様々なアミノ酸による置き換え、または上記ペプチドの切断バージョンの効果。上記様々なペプチドの濃度は、あらゆる場合において50 μMであった。4つの独立した実験を実施した。エラーバーは、平均の1つの標準誤差を表す。*および**は、それぞれp<0.05およびp<0.01の(t検定による)統計的有意性を表わす。
【図7】海馬ニューロンからの神経突起の伸長に対するEFループ・ペプチド(EFLペプチド)(配列番号9)の効果を示す。SU5402はFGFR1の特異的阻害因子である。
【図8】NCAMおよびFGF2のFGFR結合部分由来のペプチドの間の配列的、構造的、および機能的類似点を示す。a) ペプチドの配列アラインメント、この中で、記号、|、|| 、:、・は、高い類似度から低い類似度へと下がっていく順で類似レベルを示し;そしてNCAM(1)とFGF2(2)由来のペプチドの骨格原子の構造的なアラインメントを示す。b) 対応するNCAM誘導ペプチドとの比較を含めた、海馬ニューロンからの神経突起の伸長に対するFGF2由来ペプチドおよび様々なAlaの置換型の効果。4つの独立した実験が実施された。エラーバーは平均の1つの標準誤差を表す。*は、(t検定による)p<0.05の統計的有意性を表す。
【図9】NCAM F3モジュール2、単量体FGループ・ペプチド、および上記ペプチドの修飾バージョンの、海馬ニューロンからの神経突起の伸長を刺激する能力に対するATP(a)およびAMP-PCP(b)の効果を示す。様々な濃度(0、0.4、1.0 mM)のATPまたはAMP-PCPの存在下、ニューロンを、5 μMの2番目のF3モジュールまたは50 μMのペプチドのいずれかで刺激した。cntは対照を、F3はF3モジュールを、FGLはFGループ・ペプチドを、ならびにYKKは、Y74、K83、およびK85がアラニンで置換されたFGループ・ペプチドを表す。4つの独立した実験が実施された。エラーバーは平均の1つの標準誤差を表す。*および**は(t検定による)それぞれp<0.05およびp<0.01の統計的有意性を表す。
【図10】競合的ELISAによって計測された、無処置のFGLペプチド(配列番号1)(白抜きの棒)およびその様々な切断変異体(t1-t6、平行線模様の棒)と、無処置のFGLペプチドに対するポリクローナル抗体との免疫反応性を示す。
【図11】軸索関連細胞接着分子由来の配列番号5に記載の配列の断片によるネズミ海馬ニューロンの神経突起伸長のインビトロでの刺激の結果を示す。処理細胞を、処理を受けていない細胞と比較した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用の調節方法であって、ここで、上記少なくとも2つの異なるタンパク質の一方が機能性細胞表面レセプター、またはその断片もしくは変異体に相当し、かつ、上記少なくとも2つの異なるタンパク質のもう一方が上記レセプターに対する結合部位を有するポリペプチドに相当し、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む、そして以下のステップ:
i) それによって上記レセプターと上記ポリペプチドの相互作用を妨害する、当該レセプターおよび/またはポリペプチドと相互作用できる化合物を準備し、そして
ii) 上記少なくとも2つの異なるタンパク質にステップ(i)の化合物を提示する、
を含む前記方法。
【請求項2】
前記少なくとも2つのタンパク質が異種である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも2つのタンパク質の少なくとも1つが、少なくとも2つの免疫グロブリン(Ig)様ドメイン、および/または少なくとも2つのタイプ3フィブロネクチン(F3)ドメイン、あるいは少なくとも1つのIg様と少なくとも1つのF3ドメインを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞表面レセプターが、FGFR1、FGFR2、FGFRS、およびFGFR4を含む線維芽細胞成長因子レセプター(FGFRs)のファミリーから選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記線維芽細胞成長因子レセプターが、Swiss Prot配列番号Q9QZM7、Q99AVV7、Q9UD50、またはQ63827に記載のアミノ酸配列を有するFGFR1、またはその断片もしくは変異体、あるいは上記レセプターの機能性相同体である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリペプチドが、膜貫通タンパク質、細胞表面関連タンパク質、細胞外マトリックス関連タンパク質、可溶性タンパク質を含む群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリペプチドが、細胞接着分子、細胞表面レセプター、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、メタロプロテアーゼ、細胞外マトリックス分子、および成長因子を含む群から選ばれる、請求項1または6に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞接着分子が、以下の:
−神経細胞接着分子(NCAM)(Swiss-Prot Ass. Nos:P13591, P13595-01, P13595)、
−神経細胞接着分子L1(Swiss-Prot Ass. Nos:Q9QYQ7, Q9QY38, P11627, Q05695, P32004)、
−神経細胞接着分子-2(NCAM-2)(Swiss-Prot Ass. No:P36335)、
−ニューロングリア細胞接着分子(Ng-CAM)(Swiss-Prot Ass. No:Q03696; Q90933)、
−神経細胞接着分子CALL(Swiss-Prot Ass. No:O00533)、
−ニューログリアン(Neuroglian)(Swiss-Prot Ass. No:P91767, P20241)、
−Nr-CAM(HBRAVO、NRCAM、NR-CAMs12).(Swiss-Prot Ass. Nos:Q92823, O15179, Q9QVN3)、
−アキソニン(Axonin)-1/TAG-1(Swiss-Prot Ass. Nos:Q02246, P22063, P28685)、
−アキソナル(Axonal)関連細胞接着分子(AxCAM)(NCBI Ass. No:NP_031544.1; Swiss Prot. Ass. No:Q8TC35)、
−ミエリン関連糖タンパク質(MAG)(Swiss-Prot Ass. No:P20917)、
−神経細胞接着分子BIG-1(Swiss-Prot Ass. No:Q62682)、
−神経細胞接着分子BIG-2(Swiss-Prot Ass. No:Q62845)、
−ファシクリン(FAS-2)(Swiss-Prot Ass. No:P22648)、
−神経細胞接着分子HNB-3/NB-3(Swiss-Prot Ass. Nos:Q9UQ52, P97528, Q9JMB8)、
−神経細胞接着分子HNB-2/NB-2(Swiss-Prot Ass. Nos:O94779, P07409, P97527)、
−カドヘリン(Swiss-Prot Ass. No:Q9VW71)、
−接合部接着分子-1(JAM-1)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q9JKD5, O88792)、
−神経細胞接着F3/F11(Contactin)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q63198, P1260, Q12860, Q28106, P14781, O93250)、
−ニューロファシン(Neurofascin)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q90924, Q91Z60; O42414)、
−Bリンパ球細胞接着分子CD22(Swiss-Prot Ass. Nos:Q9R094, P20273)、
−ネオゲニン(Neogenin)(NEO1)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q92859, P97603, Q90610, P97798)、
−細胞間細胞接着分子-5(ICAM-5/telencephalin)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q8TAM9, Q60625,または
−ガラクトース結合レクチン-12(ガレクチン-12)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q91VD1, Q9JKX2, Q9NZ03)、
−ガラクトース結合レクチン-4(ガレクチン-4)(Swiss-Prot Ass. No:Q8K419; P38552)、または
その断片もしくは変異体を含む群から選ばれる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記機能性細胞表面レセプターが、以下の:
−線維芽細胞成長因子レセプター1(FGFR1)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q9QZM7, Q99AW7, Q9UD50, Q63827)、
−線維芽細胞成長因子レセプター2(FGFR2)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q96KM2, P21802, Q63241)、
−線維芽細胞成長因子レセプター3(FGFR3)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q95M13, AF487554, Q99052)、
−線維芽細胞成長因子レセプター4(FGFR4)(Swiss-Prot Ass. No:Q91742)、
−ニューロトロピン・チロシン・キナーゼタイプ-2(NTRKT-2)(Swiss-Prot Ass. No:Q8WXJ5)、
−白血球抗原関係タンパク質−チロシン・ホスファターゼ(LAR-PTPRF)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q9EQ17, Q64605, Q64604, Q9QW67, Q9VIS8, P10586)、
−ネフリン(Swiss-Prot Ass. Nos:Q925S5, Q9JIX2, Q9ET59, Q9R044, Q9QZS7, Q06500)、
−タンパク質−チロシン・ホスファターゼ・レセプター・タイプS(PTPRS)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q64699, Q13332, O75870)、
−タンパク質−チロシン・ホスファターゼ・レセプター・タイプ・カッパ(R-PTP-kappa)(Swiss Prot Ass. No:Q15262)、
−タンパク質−チロシン・ホスファターゼ・レセプター・タイプD(PTPRD)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q8WX65, Q9IAJ1, P23468, Q64487)、
−EphrinタイプAレセプター8(EPHA8/チロシン−タンパク質キナーゼ・レセプターEKK)(Swiss-Prot Ass. Nos:O09127, P29322)、
−EphrinタイプAレセプター3(EPHA8/チロシン−タンパク質キナーゼ・レセプターETK-1/CEK4)(Swiss-Prot Ass. No:P29318)、
−EphrinタイプAレセプター2(Swiss-Prot Ass. No:Q8N3Z2)、
−インシュリン・レセプター(IR)(Swiss-Prot Ass. No:Q9PWN6)、
−インシュリン様成長因子-1レセプター(IGF-1)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q9QVW4, P08069, P24062, Q60751, P15127, P15208)、
−インシュリン関連レセプター(IRR)(Swiss-Prot Ass. No:P14616)、
−チロシン−タンパク質キナーゼ・レセプターTie-1(Swiss-Prot Ass. Nos:06805, P35590, Q06806)、
−ラウンドアバウト・レセプター-1(robo-1)(Swiss-Prot Ass. Nos:O44924, AF041082, Q9Y6N7)、
−神経細胞ニコチン性アセチルコリン・レセプターアルファ3サブユニット(CHRNA3)(Swiss Prot Ass. Nos:Q8VHH6, P04757, Q8R4G9, P32297)、
−神経細胞アセチルコリン・レセプターアルファ6サブユニット(Swiss-Prot Ass. Nos:Q15825, Q9ROW9)、
−血小板由来成長因子レセプターβ(PDGFRB)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q8R406, Q05030)、
−インターロイキン-6レセプター(IL-6R)(Swiss-Prot Ass. No:Q00560)、
−インターロイキン-23レセプター(IL-23R)(Swiss-Prot Ass. No:AF461422)、
−IL-3、IL-5、およびGmCsfのβ−共通サイトカイン・レセプター(Swiss-Prot Ass. No:P32927)、
−サイトカイン・レセプター様分子3(CRLF1)(Swiss-Prot Ass. No:Q9JM58)、
−クラスIサイトカイン・レセプター(ZCYTOR5)(Swiss-Prot Ass. No:Q9UHH5)、
−ネトリン-1レセプターDCC(Swiss-Prot Ass. No:P43146)、
−白血球Fcレセプター様タンパク質(IFGP2)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q96PJ6, Q96KM2)、
−マクロファージ・スカベンジャー・レセプター2(MSR2)(Swiss-Prot Ass. No:Q91YK7)、または
−顆粒球コロニー刺激因子レセプター(G-CSF-R)(Swiss-Prot Ass. No:Q99062)、または
その断片もしくは変異体を含む群から選ばれる、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ヘパラン硫酸プロテオグリカンが、パールカン(Swiss-Prot Ass. No:P98160)、またはその断片もしくは変異体である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記メタロプロテアーゼが、以下の:
−ADAM-8(Swiss-Prot Ass. No:Q05910)、
−ADAM-19(Swiss-Prot Ass. Nos:Q9H013、O35674)、
−ADAM-8(Swiss-Prot Ass. No:P78325)、
−ADAM-12(Swiss-ProtAss. Nos:O43184, Q61824)、
−ADAM-28(Swiss-Prot Ass. Nos:Q9JLN6, Q61824, Q9XSL6, Q9UKQ2)、
−ADAM-33前駆体(Swiss-Prot Ass. Nos:Q8R533, Q923W9)、
−ADAM-9(Swiss-ProtAss. Nos:Q13433, Q61072)、
−ADAM-7(Swiss-Prot Ass. NoS:Q9H2U9, O35227, Q63180)、
−ADAM-1Aフェルチリン(Fertilin)アルファ(Swiss-Prot Ass. No:Q8R533)、
−ADAM-15(Swiss-Prot Ass. Nos:Q9QYVO, O88839, Q13444)、
−メタロプロテイナーゼ-デスインテグリン・ドメインを含むタンパク質(TECAM)(Swiss-Prot Ass. No:AF163291)、
−メタロプロテイナーゼ1(Swiss-Prot Ass. Nos:O95204, Q9BSI6)、または
その断片もしくは変異体を含む群から選ばれる、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記細胞外マトリックス分子が、以下の:
−タイプVIIコラーゲン(Swiss-Prot Ass. No:Q63870),
−フィブロネクチン(Swiss-Prot Ass.).Nos:Q95KV4, Q95KV5, P07589, Q28377, U42594, O95609, P07589, P11276)、または
−テネイシン(Tenascin)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q15568, O00531, P10039, Q90995)、または
その断片もしくは変異体を含む群から選ばれる、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記成長因子が、サイトカイン様ファクター1(CLF-1)(Swiss-Prot Ass. No:O75462)、またはその断片もしくは変異体である、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用が、弱い親和性を有する相互作用である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記相互作用の親和性が、Kd 10-3〜10-11の範囲内にある、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記化合物が、前記少なくとも2つの異なるタンパク質の少なく1つに結合することができるいずれかの化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記化合物が、ペプチド、炭水化物、脂質、およびヌクレオチドを含む群から選ばれる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ペプチドが、配列番号1〜10、100、125に記載のアミノ酸配列、または上記配列の変異体もしくは断片、あるいは上記配列の組み合わせのいずれかを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ペプチドが、配列番号1〜10、100、125に記載の配列、または上記アミノ酸配列の変異体、もしくは上記アミノ酸配列の断片のいずれかと少なくとも60%の相同性がある隣接アミノ酸配列を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記ペプチドが、配列番号11〜99、101〜124で126〜146に記載のアミノ酸配列、または上記配列の変異体もしくは断片、あるいは上記配列の組み合わせのいずれかを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記ペプチドが、ストランド−ループ−ストランド折り畳みを形成することができる少なくとも6〜16個の隣接アミノ酸の配列を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用の調節方法であって、ここで、上記少なくとも2つの異なるタンパク質の一方が機能性細胞表面レセプター、またはその断片もしくは変異体に相当し、かつ、上記少なくとも2つの異なるタンパク質のもう一方が上記レセプターに対する結合部位を有するポリペプチドに相当し、ここで、上記結合部位が1つ以上の「ストランド−ループ−ストランド」構造モチーフから本質的に成る、そして以下のステップ:
iii) それによって上記レセプターと上記ポリペプチドの相互作用を妨害する、当該レセプターおよび/またはポリペプチドと相互作用できる化合物を準備し、そして
iv) 上記少なくとも2つの異なるタンパク質にステップ(i)の化合物を提示する、
を含む前記方法。
【請求項23】
前記結合部位が1つ以上の「ストランド−ループ−ストランド」構造モチーフから成る、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
請求項1〜21のいずれか1項に記載の特徴の少なくとも1つをさらに含む、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用を調節することができる候補化合物のスクリーニング方法であって、ここで、上記少なくとも2つの異なるタンパク質の一方が機能性細胞表面レセプター、またはその断片もしくは変異体に相当し、かつ、上記少なくとも2つの異なるタンパク質のもう一方が上記レセプターに対する結合部位を有するポリペプチドに相当し、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む、そして以下のステップ:
i) 上記少なくとも2つの異なるタンパク質を準備し;
ii) 候補化合物を準備し;
iii) ステップ(ii)の候補化合物をステップ(i)の少なくとも2つの異なるタンパク質に提示し;
iv) 上記候補化合物を上記タンパク質に提示する前後で上記少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用を測定し;
v) 上記少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用が上記提示された化合物によって調節されたかどうかを測定し;
vi) 上記少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用を調節することができる候補化合物を選ぶ、
を含む前記方法。
【請求項26】
前記機能性細胞表面レセプターが請求項4又は5に規定される群から選ばれる、請求項25に記載のスクリーニング方法。
【請求項27】
前記ポリペプチドが、請求項6〜13のいずれか1項に記載のポリペプチドを含む群から選ばれる、請求項25に記載のスクリーニング方法。
【請求項28】
前記ポリペプチドが、Swiss Prot配列番号P13591、P13595-01、またはP13595に記載のアミノ酸配列、またはその断片もしくは変異体を有するNCAM、あるいはNCAMの機能性相同体である、請求項27に記載のスクリーニング方法。
【請求項29】
前記化合物が、正常な、変性した、または損傷したNCAM提示細胞の治療のための薬剤の製造のためのものである、請求項25〜28のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
【請求項30】
前記化合物が、中枢神経系および末梢神経系、筋肉、または様々な臓器の病気または異常の治療用薬剤の製造のためのものである、請求項25〜28のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
【請求項31】
前記化合物が、中枢神経系および末梢神経系の病気または異常、例えば術後の神経損傷、外傷性神経損傷、神経線維の髄鞘形成障害、虚血後損傷、例えば脳卒中に起因するもの、パーキンソン病、アルツハイマー症、ハンチントン病、痴呆、例えば多発脳梗塞性痴呆、硬化症、糖尿病に関係する神経変性、概日時計または神経−筋肉の伝達に影響する障害、および統合失調症、気分障害、例えば躁鬱病の治療用薬剤;神経−筋肉接続の機能障害を伴う異常を含む筋肉の病気または異常、例えば臓器移植後の、または遺伝的もしくは外傷性の萎縮性筋肉障害の治療用薬剤;あるいは、様々な臓器の病気または異常、例えば生殖腺の変性状態、膵臓、例えばI型およびII型糖尿病、腎臓、例えばネフローゼ、ならびに心臓、肝臓、および腸の治療用薬剤の製造のためのものである、請求項25〜28に記載のスクリーニング方法。
【請求項32】
前記化合物が、術後の神経損傷、外傷性神経損傷、神経線維の髄鞘形成障害、虚血後損傷、例えば脳卒中に起因するもの、パーキンソン病、アルツハイマー症、ハンチントン病、痴呆、例えば多発脳梗塞性痴呆、硬化症、糖尿病に関係する神経変性、概日時計または神経−筋肉の伝達に影響する障害、ならびに統合失調症、気分障害、例えば躁鬱病の治療用薬剤の製造のためのものである、請求項25〜28のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
【請求項33】
前記化合物が、創傷治癒の促進用薬剤の製造のためのものである、請求項25〜28のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
【請求項34】
前記化合物が、癌の治療用薬剤の製造のためのものである、請求項25〜28のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
【請求項35】
前記癌が血管新生を必要とするいずれかの種類の固形腫瘍である、請求項31に記載のスクリーニング方法。
【請求項36】
前記で最初の化合物が、例えば急性心筋梗塞後または血管形成後の、心筋細胞の細胞死の予防用薬剤の製造のためのものである、請求項25〜28のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
【請求項37】
前記化合物が、血管再開通術用薬剤の製造のためのものである、請求項25〜28のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
【請求項38】
前記化合物が、学習能力、ならびに/あるいは短期記憶および/または長期記憶の刺激用薬剤の製造のためのものである、請求項25〜28のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
【請求項39】
少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用を調節することができる候補化合物の連続スクリーニング・アッセイ方法であって、ここで、上記少なくとも2つの異なるタンパク質の一方が機能性細胞表面レセプター、またはその断片もしくは変異体に相当し、かつ、上記少なくとも2つの異なるタンパク質のもう一方が上記レセプターに対する結合部位を有するポリペプチドに相当し、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む、そして以下のステップ:
i) 少なくとも1つの機能性細胞表面レセプター分子、またはその断片もしくは変異体、および上記レセプターに対する結合部位を有する少なくとも1つのポリペプチドを準備し、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体もしくは相同体、または上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む;
ii) ステップ(i)の少なくとも1つのレセプター分子をステップ(i)の少なくとも1つのポリペプチドに提示するか、またはステップ(i)の少なくとも1つのポリペプチドをステップ(i)の少なくとも1つのレセプター分子に提示し、そして上記レセプターと上記ポリペプチドの間で相互作用させ;続いて
iii) ステップ(ii)の分子間の相互作用を記録し;
iv) ステップ(ii)の分子に候補化合物を提示し;
v) ステップ(iv)の分子間の相互作用を記録し、続いて
vi) ステップ(iv)の分子間の相互作用に対する候補化合物の少なくとも1つの効果を評価し、続いて
vii) ステップ(i)の少なくとも1つの機能性細胞表面レセプター分子と、少なくとも1つのポリペプチドの間の相互作用を調節することができる化合物の選ぶ、
を含む前記方法。
【請求項40】
ステップ(vii)の後に、以下のステップ:
viii) 少なくとも1つの機能性細胞表面レセプター分子、またはその断片もしくは変異体を提示する少なくとも1つの細胞、および上記レセプターに対する結合部位を有する少なくとも1つのポリペプチドに、ステップ(vii)で選ばれた化合物を提示し、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体を含む、
ix) ステップ(viii)の細胞に対する上記化合物の少なくとも1つの効果を評価する、
が続く、請求項39に記載のアッセイ方法。
【請求項41】
ステップ(iii)又はステップ(v)の分子間の相互作用の記録、およびステップ(vi)の候補化合物の少なくとも1つの効果の評価が、表面プラスモン共鳴分析、核磁気共鳴分光法、沈降分析、免疫沈降、2-ハイブリッド・システム、または共鳴エネルギー移動を含む群から選ばれる方法を使うことによって達成される、請求項39または40に記載のアッセイ方法。
【請求項42】
ステップ(ix)の少なくとも1つの効果が、レセプターのリン酸化、細胞内シグナル伝達、遺伝子発現、細胞接着、細胞運動性、神経突起誘導、アポトーシス、細胞増殖、またはシナプスの可塑性の刺激/阻害から選ばれるものである、請求項40に記載のアッセイ方法。
【請求項43】
少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用を調節することができる化合物の分子設計方法であって、ここで、上記少なくとも2つの異なるタンパク質の一方が機能性細胞表面レセプター、またはその断片もしくは変異体に相当し、かつ、上記少なくとも2つの異なるタンパク質のもう一方が上記レセプターに対する結合部位を有するポリペプチドに相当し、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む、そしてFGFRに対するNCAMの結合部位の構造的データの使用を含む前記方法。
【請求項44】
少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用を調節することができる候補化合物の単離方法であって、ここで、上記少なくとも2つの異なるタンパク質の一方が機能性細胞表面レセプターか、その断片もしくは変異体に相当し、かつ、上記少なくとも2つの異なるタンパク質のもう一方が上記レセプターへの結合部位を有するポリペプチドに相当し、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む、そして、以下のステップ:
i) 請求項39に記載の上記候補化合物の連続スクリーニング方法を提供し、および/または
i) 請求項43に記載の上記候補化合物の分子設計方法を提供し、そして
ii) 上記候補化合物を単離する、
を含む前記方法。
【請求項45】
以下のアミノ酸配列:
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
またはその断片もしくは変異体のいずれかを有するペプチド断片。
【請求項46】
配列番号2〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体の少なくとも1つを有する少なくとも1つのペプチド断片を含む化合物。
【請求項47】
請求項29〜38のいずれか1項に記載の異常の治療用薬剤の製造のための、請求項45に記載のペプチド断片および/または請求項46に記載の化合物の使用。
【請求項48】
その結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体の少なくとも1つを含むところの、細胞表面レセプターに対する結合部位を含むエピトープに結合することができる抗体、あるいは上記抗体の断片もしくは変異体。
【請求項49】
配列番号1〜146に記載の配列の少なくとも1つを含むエピトープに結合することができる抗体、または上記抗体の断片もしくは変異体。
【請求項50】
細胞表面レセプター、またはその断片もしくは変異体と、その結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含むところの、上記レセプターに対する結合部位を有するポリペプチドの間の相互作用を調節するための請求項48または49に記載の抗体の使用。
【請求項51】
請求項29〜38のいずれか1項に記載の異常の治療用薬剤の製造のための請求項48または49に記載の抗体の使用。
【請求項52】
サンプル中の、配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含むエピトープを含む物質の存在を判定するための請求項48または49に記載の抗体の使用。
【請求項53】
配列番号1〜146に記載の配列から選ばれる少なくとも1つの配列を含むペプチド断片を動物に投与するステップを含む、請求項48または49に記載の抗体の製造方法。
【請求項54】
請求項39に記載のステップを含み、かつ、医薬として許容される担体または溶剤と一緒に前記化合物を処方するステップをさらに含む医薬組成物の製造方法。
【請求項1】
少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用の調節方法であって、ここで、上記少なくとも2つの異なるタンパク質の一方が機能性細胞表面レセプター、またはその断片もしくは変異体に相当し、かつ、上記少なくとも2つの異なるタンパク質のもう一方が上記レセプターに対する結合部位を有するポリペプチドに相当し、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む、そして以下のステップ:
i) それによって上記レセプターと上記ポリペプチドの相互作用を妨害する、当該レセプターおよび/またはポリペプチドと相互作用できる化合物を準備し、そして
ii) 上記少なくとも2つの異なるタンパク質にステップ(i)の化合物を提示する、
を含む前記方法。
【請求項2】
前記少なくとも2つのタンパク質が異種である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも2つのタンパク質の少なくとも1つが、少なくとも2つの免疫グロブリン(Ig)様ドメイン、および/または少なくとも2つのタイプ3フィブロネクチン(F3)ドメイン、あるいは少なくとも1つのIg様と少なくとも1つのF3ドメインを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞表面レセプターが、FGFR1、FGFR2、FGFRS、およびFGFR4を含む線維芽細胞成長因子レセプター(FGFRs)のファミリーから選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記線維芽細胞成長因子レセプターが、Swiss Prot配列番号Q9QZM7、Q99AVV7、Q9UD50、またはQ63827に記載のアミノ酸配列を有するFGFR1、またはその断片もしくは変異体、あるいは上記レセプターの機能性相同体である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリペプチドが、膜貫通タンパク質、細胞表面関連タンパク質、細胞外マトリックス関連タンパク質、可溶性タンパク質を含む群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリペプチドが、細胞接着分子、細胞表面レセプター、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、メタロプロテアーゼ、細胞外マトリックス分子、および成長因子を含む群から選ばれる、請求項1または6に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞接着分子が、以下の:
−神経細胞接着分子(NCAM)(Swiss-Prot Ass. Nos:P13591, P13595-01, P13595)、
−神経細胞接着分子L1(Swiss-Prot Ass. Nos:Q9QYQ7, Q9QY38, P11627, Q05695, P32004)、
−神経細胞接着分子-2(NCAM-2)(Swiss-Prot Ass. No:P36335)、
−ニューロングリア細胞接着分子(Ng-CAM)(Swiss-Prot Ass. No:Q03696; Q90933)、
−神経細胞接着分子CALL(Swiss-Prot Ass. No:O00533)、
−ニューログリアン(Neuroglian)(Swiss-Prot Ass. No:P91767, P20241)、
−Nr-CAM(HBRAVO、NRCAM、NR-CAMs12).(Swiss-Prot Ass. Nos:Q92823, O15179, Q9QVN3)、
−アキソニン(Axonin)-1/TAG-1(Swiss-Prot Ass. Nos:Q02246, P22063, P28685)、
−アキソナル(Axonal)関連細胞接着分子(AxCAM)(NCBI Ass. No:NP_031544.1; Swiss Prot. Ass. No:Q8TC35)、
−ミエリン関連糖タンパク質(MAG)(Swiss-Prot Ass. No:P20917)、
−神経細胞接着分子BIG-1(Swiss-Prot Ass. No:Q62682)、
−神経細胞接着分子BIG-2(Swiss-Prot Ass. No:Q62845)、
−ファシクリン(FAS-2)(Swiss-Prot Ass. No:P22648)、
−神経細胞接着分子HNB-3/NB-3(Swiss-Prot Ass. Nos:Q9UQ52, P97528, Q9JMB8)、
−神経細胞接着分子HNB-2/NB-2(Swiss-Prot Ass. Nos:O94779, P07409, P97527)、
−カドヘリン(Swiss-Prot Ass. No:Q9VW71)、
−接合部接着分子-1(JAM-1)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q9JKD5, O88792)、
−神経細胞接着F3/F11(Contactin)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q63198, P1260, Q12860, Q28106, P14781, O93250)、
−ニューロファシン(Neurofascin)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q90924, Q91Z60; O42414)、
−Bリンパ球細胞接着分子CD22(Swiss-Prot Ass. Nos:Q9R094, P20273)、
−ネオゲニン(Neogenin)(NEO1)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q92859, P97603, Q90610, P97798)、
−細胞間細胞接着分子-5(ICAM-5/telencephalin)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q8TAM9, Q60625,または
−ガラクトース結合レクチン-12(ガレクチン-12)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q91VD1, Q9JKX2, Q9NZ03)、
−ガラクトース結合レクチン-4(ガレクチン-4)(Swiss-Prot Ass. No:Q8K419; P38552)、または
その断片もしくは変異体を含む群から選ばれる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記機能性細胞表面レセプターが、以下の:
−線維芽細胞成長因子レセプター1(FGFR1)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q9QZM7, Q99AW7, Q9UD50, Q63827)、
−線維芽細胞成長因子レセプター2(FGFR2)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q96KM2, P21802, Q63241)、
−線維芽細胞成長因子レセプター3(FGFR3)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q95M13, AF487554, Q99052)、
−線維芽細胞成長因子レセプター4(FGFR4)(Swiss-Prot Ass. No:Q91742)、
−ニューロトロピン・チロシン・キナーゼタイプ-2(NTRKT-2)(Swiss-Prot Ass. No:Q8WXJ5)、
−白血球抗原関係タンパク質−チロシン・ホスファターゼ(LAR-PTPRF)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q9EQ17, Q64605, Q64604, Q9QW67, Q9VIS8, P10586)、
−ネフリン(Swiss-Prot Ass. Nos:Q925S5, Q9JIX2, Q9ET59, Q9R044, Q9QZS7, Q06500)、
−タンパク質−チロシン・ホスファターゼ・レセプター・タイプS(PTPRS)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q64699, Q13332, O75870)、
−タンパク質−チロシン・ホスファターゼ・レセプター・タイプ・カッパ(R-PTP-kappa)(Swiss Prot Ass. No:Q15262)、
−タンパク質−チロシン・ホスファターゼ・レセプター・タイプD(PTPRD)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q8WX65, Q9IAJ1, P23468, Q64487)、
−EphrinタイプAレセプター8(EPHA8/チロシン−タンパク質キナーゼ・レセプターEKK)(Swiss-Prot Ass. Nos:O09127, P29322)、
−EphrinタイプAレセプター3(EPHA8/チロシン−タンパク質キナーゼ・レセプターETK-1/CEK4)(Swiss-Prot Ass. No:P29318)、
−EphrinタイプAレセプター2(Swiss-Prot Ass. No:Q8N3Z2)、
−インシュリン・レセプター(IR)(Swiss-Prot Ass. No:Q9PWN6)、
−インシュリン様成長因子-1レセプター(IGF-1)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q9QVW4, P08069, P24062, Q60751, P15127, P15208)、
−インシュリン関連レセプター(IRR)(Swiss-Prot Ass. No:P14616)、
−チロシン−タンパク質キナーゼ・レセプターTie-1(Swiss-Prot Ass. Nos:06805, P35590, Q06806)、
−ラウンドアバウト・レセプター-1(robo-1)(Swiss-Prot Ass. Nos:O44924, AF041082, Q9Y6N7)、
−神経細胞ニコチン性アセチルコリン・レセプターアルファ3サブユニット(CHRNA3)(Swiss Prot Ass. Nos:Q8VHH6, P04757, Q8R4G9, P32297)、
−神経細胞アセチルコリン・レセプターアルファ6サブユニット(Swiss-Prot Ass. Nos:Q15825, Q9ROW9)、
−血小板由来成長因子レセプターβ(PDGFRB)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q8R406, Q05030)、
−インターロイキン-6レセプター(IL-6R)(Swiss-Prot Ass. No:Q00560)、
−インターロイキン-23レセプター(IL-23R)(Swiss-Prot Ass. No:AF461422)、
−IL-3、IL-5、およびGmCsfのβ−共通サイトカイン・レセプター(Swiss-Prot Ass. No:P32927)、
−サイトカイン・レセプター様分子3(CRLF1)(Swiss-Prot Ass. No:Q9JM58)、
−クラスIサイトカイン・レセプター(ZCYTOR5)(Swiss-Prot Ass. No:Q9UHH5)、
−ネトリン-1レセプターDCC(Swiss-Prot Ass. No:P43146)、
−白血球Fcレセプター様タンパク質(IFGP2)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q96PJ6, Q96KM2)、
−マクロファージ・スカベンジャー・レセプター2(MSR2)(Swiss-Prot Ass. No:Q91YK7)、または
−顆粒球コロニー刺激因子レセプター(G-CSF-R)(Swiss-Prot Ass. No:Q99062)、または
その断片もしくは変異体を含む群から選ばれる、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ヘパラン硫酸プロテオグリカンが、パールカン(Swiss-Prot Ass. No:P98160)、またはその断片もしくは変異体である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記メタロプロテアーゼが、以下の:
−ADAM-8(Swiss-Prot Ass. No:Q05910)、
−ADAM-19(Swiss-Prot Ass. Nos:Q9H013、O35674)、
−ADAM-8(Swiss-Prot Ass. No:P78325)、
−ADAM-12(Swiss-ProtAss. Nos:O43184, Q61824)、
−ADAM-28(Swiss-Prot Ass. Nos:Q9JLN6, Q61824, Q9XSL6, Q9UKQ2)、
−ADAM-33前駆体(Swiss-Prot Ass. Nos:Q8R533, Q923W9)、
−ADAM-9(Swiss-ProtAss. Nos:Q13433, Q61072)、
−ADAM-7(Swiss-Prot Ass. NoS:Q9H2U9, O35227, Q63180)、
−ADAM-1Aフェルチリン(Fertilin)アルファ(Swiss-Prot Ass. No:Q8R533)、
−ADAM-15(Swiss-Prot Ass. Nos:Q9QYVO, O88839, Q13444)、
−メタロプロテイナーゼ-デスインテグリン・ドメインを含むタンパク質(TECAM)(Swiss-Prot Ass. No:AF163291)、
−メタロプロテイナーゼ1(Swiss-Prot Ass. Nos:O95204, Q9BSI6)、または
その断片もしくは変異体を含む群から選ばれる、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記細胞外マトリックス分子が、以下の:
−タイプVIIコラーゲン(Swiss-Prot Ass. No:Q63870),
−フィブロネクチン(Swiss-Prot Ass.).Nos:Q95KV4, Q95KV5, P07589, Q28377, U42594, O95609, P07589, P11276)、または
−テネイシン(Tenascin)(Swiss-Prot Ass. Nos:Q15568, O00531, P10039, Q90995)、または
その断片もしくは変異体を含む群から選ばれる、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記成長因子が、サイトカイン様ファクター1(CLF-1)(Swiss-Prot Ass. No:O75462)、またはその断片もしくは変異体である、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用が、弱い親和性を有する相互作用である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記相互作用の親和性が、Kd 10-3〜10-11の範囲内にある、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記化合物が、前記少なくとも2つの異なるタンパク質の少なく1つに結合することができるいずれかの化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記化合物が、ペプチド、炭水化物、脂質、およびヌクレオチドを含む群から選ばれる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ペプチドが、配列番号1〜10、100、125に記載のアミノ酸配列、または上記配列の変異体もしくは断片、あるいは上記配列の組み合わせのいずれかを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ペプチドが、配列番号1〜10、100、125に記載の配列、または上記アミノ酸配列の変異体、もしくは上記アミノ酸配列の断片のいずれかと少なくとも60%の相同性がある隣接アミノ酸配列を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記ペプチドが、配列番号11〜99、101〜124で126〜146に記載のアミノ酸配列、または上記配列の変異体もしくは断片、あるいは上記配列の組み合わせのいずれかを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記ペプチドが、ストランド−ループ−ストランド折り畳みを形成することができる少なくとも6〜16個の隣接アミノ酸の配列を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用の調節方法であって、ここで、上記少なくとも2つの異なるタンパク質の一方が機能性細胞表面レセプター、またはその断片もしくは変異体に相当し、かつ、上記少なくとも2つの異なるタンパク質のもう一方が上記レセプターに対する結合部位を有するポリペプチドに相当し、ここで、上記結合部位が1つ以上の「ストランド−ループ−ストランド」構造モチーフから本質的に成る、そして以下のステップ:
iii) それによって上記レセプターと上記ポリペプチドの相互作用を妨害する、当該レセプターおよび/またはポリペプチドと相互作用できる化合物を準備し、そして
iv) 上記少なくとも2つの異なるタンパク質にステップ(i)の化合物を提示する、
を含む前記方法。
【請求項23】
前記結合部位が1つ以上の「ストランド−ループ−ストランド」構造モチーフから成る、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
請求項1〜21のいずれか1項に記載の特徴の少なくとも1つをさらに含む、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用を調節することができる候補化合物のスクリーニング方法であって、ここで、上記少なくとも2つの異なるタンパク質の一方が機能性細胞表面レセプター、またはその断片もしくは変異体に相当し、かつ、上記少なくとも2つの異なるタンパク質のもう一方が上記レセプターに対する結合部位を有するポリペプチドに相当し、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む、そして以下のステップ:
i) 上記少なくとも2つの異なるタンパク質を準備し;
ii) 候補化合物を準備し;
iii) ステップ(ii)の候補化合物をステップ(i)の少なくとも2つの異なるタンパク質に提示し;
iv) 上記候補化合物を上記タンパク質に提示する前後で上記少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用を測定し;
v) 上記少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用が上記提示された化合物によって調節されたかどうかを測定し;
vi) 上記少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用を調節することができる候補化合物を選ぶ、
を含む前記方法。
【請求項26】
前記機能性細胞表面レセプターが請求項4又は5に規定される群から選ばれる、請求項25に記載のスクリーニング方法。
【請求項27】
前記ポリペプチドが、請求項6〜13のいずれか1項に記載のポリペプチドを含む群から選ばれる、請求項25に記載のスクリーニング方法。
【請求項28】
前記ポリペプチドが、Swiss Prot配列番号P13591、P13595-01、またはP13595に記載のアミノ酸配列、またはその断片もしくは変異体を有するNCAM、あるいはNCAMの機能性相同体である、請求項27に記載のスクリーニング方法。
【請求項29】
前記化合物が、正常な、変性した、または損傷したNCAM提示細胞の治療のための薬剤の製造のためのものである、請求項25〜28のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
【請求項30】
前記化合物が、中枢神経系および末梢神経系、筋肉、または様々な臓器の病気または異常の治療用薬剤の製造のためのものである、請求項25〜28のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
【請求項31】
前記化合物が、中枢神経系および末梢神経系の病気または異常、例えば術後の神経損傷、外傷性神経損傷、神経線維の髄鞘形成障害、虚血後損傷、例えば脳卒中に起因するもの、パーキンソン病、アルツハイマー症、ハンチントン病、痴呆、例えば多発脳梗塞性痴呆、硬化症、糖尿病に関係する神経変性、概日時計または神経−筋肉の伝達に影響する障害、および統合失調症、気分障害、例えば躁鬱病の治療用薬剤;神経−筋肉接続の機能障害を伴う異常を含む筋肉の病気または異常、例えば臓器移植後の、または遺伝的もしくは外傷性の萎縮性筋肉障害の治療用薬剤;あるいは、様々な臓器の病気または異常、例えば生殖腺の変性状態、膵臓、例えばI型およびII型糖尿病、腎臓、例えばネフローゼ、ならびに心臓、肝臓、および腸の治療用薬剤の製造のためのものである、請求項25〜28に記載のスクリーニング方法。
【請求項32】
前記化合物が、術後の神経損傷、外傷性神経損傷、神経線維の髄鞘形成障害、虚血後損傷、例えば脳卒中に起因するもの、パーキンソン病、アルツハイマー症、ハンチントン病、痴呆、例えば多発脳梗塞性痴呆、硬化症、糖尿病に関係する神経変性、概日時計または神経−筋肉の伝達に影響する障害、ならびに統合失調症、気分障害、例えば躁鬱病の治療用薬剤の製造のためのものである、請求項25〜28のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
【請求項33】
前記化合物が、創傷治癒の促進用薬剤の製造のためのものである、請求項25〜28のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
【請求項34】
前記化合物が、癌の治療用薬剤の製造のためのものである、請求項25〜28のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
【請求項35】
前記癌が血管新生を必要とするいずれかの種類の固形腫瘍である、請求項31に記載のスクリーニング方法。
【請求項36】
前記で最初の化合物が、例えば急性心筋梗塞後または血管形成後の、心筋細胞の細胞死の予防用薬剤の製造のためのものである、請求項25〜28のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
【請求項37】
前記化合物が、血管再開通術用薬剤の製造のためのものである、請求項25〜28のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
【請求項38】
前記化合物が、学習能力、ならびに/あるいは短期記憶および/または長期記憶の刺激用薬剤の製造のためのものである、請求項25〜28のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
【請求項39】
少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用を調節することができる候補化合物の連続スクリーニング・アッセイ方法であって、ここで、上記少なくとも2つの異なるタンパク質の一方が機能性細胞表面レセプター、またはその断片もしくは変異体に相当し、かつ、上記少なくとも2つの異なるタンパク質のもう一方が上記レセプターに対する結合部位を有するポリペプチドに相当し、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む、そして以下のステップ:
i) 少なくとも1つの機能性細胞表面レセプター分子、またはその断片もしくは変異体、および上記レセプターに対する結合部位を有する少なくとも1つのポリペプチドを準備し、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体もしくは相同体、または上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む;
ii) ステップ(i)の少なくとも1つのレセプター分子をステップ(i)の少なくとも1つのポリペプチドに提示するか、またはステップ(i)の少なくとも1つのポリペプチドをステップ(i)の少なくとも1つのレセプター分子に提示し、そして上記レセプターと上記ポリペプチドの間で相互作用させ;続いて
iii) ステップ(ii)の分子間の相互作用を記録し;
iv) ステップ(ii)の分子に候補化合物を提示し;
v) ステップ(iv)の分子間の相互作用を記録し、続いて
vi) ステップ(iv)の分子間の相互作用に対する候補化合物の少なくとも1つの効果を評価し、続いて
vii) ステップ(i)の少なくとも1つの機能性細胞表面レセプター分子と、少なくとも1つのポリペプチドの間の相互作用を調節することができる化合物の選ぶ、
を含む前記方法。
【請求項40】
ステップ(vii)の後に、以下のステップ:
viii) 少なくとも1つの機能性細胞表面レセプター分子、またはその断片もしくは変異体を提示する少なくとも1つの細胞、および上記レセプターに対する結合部位を有する少なくとも1つのポリペプチドに、ステップ(vii)で選ばれた化合物を提示し、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体を含む、
ix) ステップ(viii)の細胞に対する上記化合物の少なくとも1つの効果を評価する、
が続く、請求項39に記載のアッセイ方法。
【請求項41】
ステップ(iii)又はステップ(v)の分子間の相互作用の記録、およびステップ(vi)の候補化合物の少なくとも1つの効果の評価が、表面プラスモン共鳴分析、核磁気共鳴分光法、沈降分析、免疫沈降、2-ハイブリッド・システム、または共鳴エネルギー移動を含む群から選ばれる方法を使うことによって達成される、請求項39または40に記載のアッセイ方法。
【請求項42】
ステップ(ix)の少なくとも1つの効果が、レセプターのリン酸化、細胞内シグナル伝達、遺伝子発現、細胞接着、細胞運動性、神経突起誘導、アポトーシス、細胞増殖、またはシナプスの可塑性の刺激/阻害から選ばれるものである、請求項40に記載のアッセイ方法。
【請求項43】
少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用を調節することができる化合物の分子設計方法であって、ここで、上記少なくとも2つの異なるタンパク質の一方が機能性細胞表面レセプター、またはその断片もしくは変異体に相当し、かつ、上記少なくとも2つの異なるタンパク質のもう一方が上記レセプターに対する結合部位を有するポリペプチドに相当し、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む、そしてFGFRに対するNCAMの結合部位の構造的データの使用を含む前記方法。
【請求項44】
少なくとも2つの異なるタンパク質間の相互作用を調節することができる候補化合物の単離方法であって、ここで、上記少なくとも2つの異なるタンパク質の一方が機能性細胞表面レセプターか、その断片もしくは変異体に相当し、かつ、上記少なくとも2つの異なるタンパク質のもう一方が上記レセプターへの結合部位を有するポリペプチドに相当し、ここで、上記結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含む、そして、以下のステップ:
i) 請求項39に記載の上記候補化合物の連続スクリーニング方法を提供し、および/または
i) 請求項43に記載の上記候補化合物の分子設計方法を提供し、そして
ii) 上記候補化合物を単離する、
を含む前記方法。
【請求項45】
以下のアミノ酸配列:
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
またはその断片もしくは変異体のいずれかを有するペプチド断片。
【請求項46】
配列番号2〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体の少なくとも1つを有する少なくとも1つのペプチド断片を含む化合物。
【請求項47】
請求項29〜38のいずれか1項に記載の異常の治療用薬剤の製造のための、請求項45に記載のペプチド断片および/または請求項46に記載の化合物の使用。
【請求項48】
その結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体の少なくとも1つを含むところの、細胞表面レセプターに対する結合部位を含むエピトープに結合することができる抗体、あるいは上記抗体の断片もしくは変異体。
【請求項49】
配列番号1〜146に記載の配列の少なくとも1つを含むエピトープに結合することができる抗体、または上記抗体の断片もしくは変異体。
【請求項50】
細胞表面レセプター、またはその断片もしくは変異体と、その結合部位の少なくとも一部が配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含むところの、上記レセプターに対する結合部位を有するポリペプチドの間の相互作用を調節するための請求項48または49に記載の抗体の使用。
【請求項51】
請求項29〜38のいずれか1項に記載の異常の治療用薬剤の製造のための請求項48または49に記載の抗体の使用。
【請求項52】
サンプル中の、配列番号1〜146に記載の配列、または上記配列の断片、変異体、もしくは相同体、あるいは上記相同体の断片もしくは変異体の少なくとも1つを含むエピトープを含む物質の存在を判定するための請求項48または49に記載の抗体の使用。
【請求項53】
配列番号1〜146に記載の配列から選ばれる少なくとも1つの配列を含むペプチド断片を動物に投与するステップを含む、請求項48または49に記載の抗体の製造方法。
【請求項54】
請求項39に記載のステップを含み、かつ、医薬として許容される担体または溶剤と一緒に前記化合物を処方するステップをさらに含む医薬組成物の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2007−524566(P2007−524566A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−502523(P2005−502523)
【出願日】平成15年12月18日(2003.12.18)
【国際出願番号】PCT/DK2003/000901
【国際公開番号】WO2004/056865
【国際公開日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(503214070)エンカム ファーマシューティカルズ アクティーゼルスカブ (8)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年12月18日(2003.12.18)
【国際出願番号】PCT/DK2003/000901
【国際公開番号】WO2004/056865
【国際公開日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(503214070)エンカム ファーマシューティカルズ アクティーゼルスカブ (8)
【Fターム(参考)】
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