レゾルバの駆動装置
【課題】レゾルバの角度データを必要とするタイミングでレゾルバの励磁を行うことで、省電力化したレゾルバの駆動を可能とする。
【解決手段】励磁パルス出力回路105は、角度検出の要求信号を受けて励磁パルス信号を出力する。ここで、励磁パルス出力回路105は、角度検出の要求信号を受け付けた場合のみに励磁パルス信号を出力するので、常時励磁パルス信号を出力する場合に比較して、励磁に要する消費電力を抑えることができる。
【解決手段】励磁パルス出力回路105は、角度検出の要求信号を受けて励磁パルス信号を出力する。ここで、励磁パルス出力回路105は、角度検出の要求信号を受け付けた場合のみに励磁パルス信号を出力するので、常時励磁パルス信号を出力する場合に比較して、励磁に要する消費電力を抑えることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、省電力化が可能なレゾルバの駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用として使用されるセンサは、車載電気機器の増加や、電気自動車化などにより低消費電力化が求められてきている。例えば、車両のステアリング軸の回転角を検出する装置として、レゾルバを用いたものが知られている。通常のレゾルバは、励磁電流として、常時5KHz〜20KHzの正弦波が入力されている。このため、他の回転角度センサと比べて消費電力が大きくなる傾向がある。これは、従来使われてきたサーボ方式のR/Dコンバータでは、安定にサーボを掛けるために、セットリング・タイムが必要であり、常時励磁を行う方式が一般的であるという点にも原因がある。なお、セットリング・タイム(settling time)というのは、入力デジタル信号にステップ出力が得られるような変化を与えた場合の出力応答に関わる値を考えた場合に、入力データが変化した後、出力値が目標値の許容範囲に到達するまでの時間のことである。
【0003】
特許文献1には、バッテリによるバックアップ時の消費電力を低減することを目的としたレゾルバの駆動回路が開示されている。この技術では、レゾルバからの出力値は、AMP、微分回路を通りパルス検出回路に入力される。そして、微分回路の出力の増減(すなわちレゾルバ出力の増減)により、パルス検出回路の出力値を増減させ、この出力に応じてパルス数が変動する信号で励磁を行う構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−226200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された構造では、可動子の回転状態に応じてサンプリングパルスのパルスレートを増減させることで励磁回数を増減させることが可能となるとされているが、角度データが必要でない場合に励磁が停止されるわけではなく、常時励磁が行われていることには変わりがない。このため、角度データの検出が不要な状態においても励磁電流が消費される。このような背景において、本発明は、レゾルバの角度データを必要とするタイミングでレゾルバの励磁を行うことで、省電力化したレゾルバの駆動を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、角度検出の要求信号を受け付けた場合に、特定の期間の間において励磁信号を出力する励磁信号出力部と、前記特定の期間の間に行われた励磁に応答して得られたsin相検出信号およびcos相検出信号に基づいて角度情報の算出を行う演算部とを備えることを特徴とするレゾルバの駆動装置である。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、角度検出の要求信号を受け付けた場合、特定の期間の間において励磁信号が出力される。このため、角度検出が不要な場合にレゾルバの励磁が行われず、レゾルバの励磁に要する消費電力を削減することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記特定の期間の間における励磁信号の出力が間欠的に繰り返し行われることを特徴とする。請求項2に記載の発明によれば、励磁信号の出力が間欠的に行われるので、角度検出を継続的に行いつつ励磁に要する消費電力の削減が可能となる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記励磁信号出力部は、特定の条件に基づき、前記特定の期間の間において励磁信号を出力するモードから常時励磁信号を出力するモードに切り替わることを特徴とする。請求項3に記載の発明によれば、常時角度検出を行う必要がある場合に、励磁信号を間欠的にレゾルバに供給するモードから励磁信号を連続的に供給するモードに切り替わることで、全体としての消費電力の削減と、連続的に角度検出が必要な場合への対応とを両立させることができる。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記特定の条件が角度情報の変化が検出された場合であることを特徴とする。励磁が間欠的であっても、検出対象の角度に変化がなければ、より高い頻度で角度検出を行う必要性は低い。他方において、励磁が間欠的である場合に、検出対象の角度変化が検出された場合、その角度変化のその後の推移を検出する必要性が高くなるが、このタイミングで励磁を連続的に行うモードに移行することで、その後の角度変化を追従性良く検出することが可能となる。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の発明において、前記励磁信号がパルス信号であり、このパルス信号はコンデンサが並列に接続された励磁巻線に供給されることを特徴とする。一般にプログラム可能な各種のマイクロ・コンピュータは、各種の制御信号として利用可能なパルス信号を決められたタイミングで出力する機能を有している。請求項5に記載の発明によれば、この機能を利用してレゾルバの励磁を行うことができる。このため、請求項5に記載の構成によれば、特別な部品を必要とせずに発明を実現することができる。また、励磁巻線に並列にコンデンサを接続し、共振回路を構成することで、パルス信号の波形をサイン波形に類似な波形に変え、得られる出力波形を理想的な波形に近付けることができる。なお、パルス信号の波形は方形波に限らず階段波、三角波などが使用される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、レゾルバの角度データを必要とするタイミングでレゾルバの励磁を行うことで、省電力化したレゾルバの駆動が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態のブロック図である。
【図2】実施形態のタイミングチャートである。
【図3】実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(構成)
図1には、本発明を利用したシステムの一例が示されている。ここでは、車両の電動パワーステアリングシステムに本発明を利用する場合の例を説明する。図1には、レゾルバ100が示されている。レゾルバ100は、通常のVR型レゾルバであり、励磁巻線101、sin相検出巻線102、cos相検出巻線103を備えている。レゾルバ100は、通常のVR型レゾルバと同じ構造であるので、その詳細な説明は省略する。ここでレゾルバ100の回転軸は、車両のステアリング軸の回転を検出する構成とされている。
【0015】
レゾルバ100には、R/Dコンバータ演算部内蔵マイコン104が接続されている。R/Dコンバータ演算部内蔵マイコン104は、レゾルバ100の駆動信号を生成し、IF回路(インターフェース回路)(109)を介してレゾルバ100に励磁信号を出力し、またレゾルバ100が検出した信号に基づく角度演算を行うR/Dコンバータとしての機能を有している。R/Dコンバータ演算部内蔵マイコン104は、励磁パルス出力回路105、A/Dコンバータ1(106)、A/Dコンバータ2(107)、R/Dコンバータ演算部108を備えている。なお、R/Dコンバータ演算部はソフトウェアだけで実現することもできる。
【0016】
励磁パルス出力回路105は、後述する角度検出の要求信号が入力された場合に、レゾルバ100の励磁巻線101への励磁信号となる励磁パルス信号を出力する。励磁パルス出力回路105から出力された励磁パルス信号は、例えばリニア増幅器により構成されるIF回路109で増幅され、レゾルバ100の励磁巻線101に供給される。
【0017】
A/Dコンバータ1(106)は、sin相検出巻線102が検出したsin相検出信号をデジタル信号に変換する。A/Dコンバータ2(107)は、cos相検出巻線103が検出したcos相検出信号をデジタル信号に変換する。R/Dコンバータ演算部108は、A/D変換されたsin相検出信号とcos相検出信号とに基づき、レゾルバ100の回転軸の回転角を算出し、それを角度データとして出力する。この例において、レゾルバは、車両のステアリング軸の回転角を検出する。このステアリング軸の角度データは、例えばステアリング軸の回転をモータによってアシストする電動パワーステアリングシステムに利用される。なお、ここでは、対象となる車両として、公道を走行可能な乗用車を想定しているが、車両はそれに限定されるものではない。
【0018】
励磁巻線101には並列にコンデンサ110が挿入され、励磁巻線101とコンデンサ110とで共振回路111が形成されている。共振回路111は、IF回路109から出力されるデジタル信号の波形を鈍らせ、励磁巻線101に流れる電流が正弦波に似せた波形となるようにする機能を発揮する。コンデンサ110の容量の値は、共振回路111の共振周波数が、励磁パルス出力回路105から出力される励磁パルス信号の周波数(この場合は、10kHz)となる値とされている。
【0019】
励磁パルス出力回路105は、車両制御用マイコン112から出力される角度検出の要求信号に基づいて、励磁パルス信号を出力する。具体的にいうと、励磁パルス出力回路105は、角度検出の要求信号の入力がある場合に、励磁パルス信号を出力し、角度検出の要求信号の入力がない場合は、励磁パルス信号の出力を行わない。車両制御用マイコン112は、車両の状態に関する情報を取得し、それに基づきステアリング軸の回転角を検出する必要がある状態であるか否か、を判定し、その結果に基づき角度検出の要求信号を励磁パルス出力回路に出力する。
【0020】
励磁パルス信号はIF回路109で適切なレベルに増幅され、励磁巻線101に供給される。この際、共振回路111の作用により、波形がなまりサイン波形に似せた波形が励磁信号として励磁巻線101に供給される。励磁巻線101に励磁信号が流れることで、励磁巻線が磁束を生成し、それがsin相検出巻線102およびcos相検出巻線103で検出され、sin相検出信号とcos相検出信号とが得られる。この応答は、巻線のインダクタンスの影響で励磁パルス信号の供給タイミングに対して少し遅れる。
【0021】
A/Dコンバータ1(106)とA/Dコンバータ2(107)は、sin相検出巻線102から得られるsin相検出信号とcos相検出巻線103から得られるcos相検出信号とを取り込み、それらをデジタル信号に変換する。このデジタル信号に変換されたsin相検出信号とcos相検出信号とがR/Dコンバータ演算部108に取り込まれる。R/Dコンバータ演算部108は、取り込んだsin相検出信号とcos相検出巻線103とに基づき、レゾルバ100が検出した角度データの算出を行う。
【0022】
図2には、各種信号および処理の関係を示すタイミングチャートが示されている。図2には、レゾルバ100への励磁パルス信号の供給が間欠的に行われる間欠励磁モードが示されている。図2に示すように、車両制御用マイコン112から角度検出の要求信号が出力され、それが励磁パルス出力回路105に入力すると、励磁パルス出力回路105は、励磁パルス信号を出力する。図2には、角度検出の要求信号がT1の期間で出力され、それに応答して励磁パルス出力回路105から励磁パルス信号が期間T1の間出力される場合が示されている。励磁パルス信号は、10kHzの周期で繰り返すパルス信号(矩形波形)である。なお、励磁パルス信号の繰り返し周波数は、例えば5kHz〜50kHzの範囲から選択可能である。
【0023】
図2には、角度検出の要求信号がT1の期間で出力され、その後期間T2の間出力されず、その後に再びT1の期間で出力が行われ、といった動作が繰り返され、このタイミングに応答して同様のタイミングで励磁パルス出力回路105から励磁パルス信号が出力される状態が示されている。すなわち、車両制御用マイコン112からの角度検出の要求信号に対応して、T1の期間における励磁パルス信号の出力、その後のT2の期間における励磁パルス信号の出力の停止、更にその後のT1の期間における励磁パルス信号の出力が行われる状態が示されている。なお、図2では、図示されていないが、角度検出の要求信号の繰り返しが、同様に行われている間、このサイクルは繰り返し行われる。ここでは、期間T1における励磁パルス信号の出力→期間T2における励磁パルス信号の出力の休止→期間T1における励磁パルス信号の出力→・・・の繰り返しの状態を、励磁パルス信号が間欠的に出力される状態と呼ぶ。そしてこの状態で励磁を行うモードを間欠励磁モードと呼ぶ。
【0024】
図2において、T3は、間欠励磁モードにおける角度検出の要求信号の間隔である。ここで、T1とT2の和がT3となる関係にある。またこの例において、T1=0.3秒、T2=1秒、T3=1.3秒と設定されている。これらの数値の設定は、一例であり、この値に限定されるものではない。
【0025】
図2に示すように、励磁パルス出力回路105からの励磁パルス信号が出力されると、励磁パルス出力回路105からの励磁パルス信号の出力タイミングに少し遅れて、sin相検出信号およびcos相検出信号が出力される。これは、巻線のインダクタンス成分に起因して応答が少し遅れるためである。sin相検出信号は、A/Dコンバータ1(106)により取り込まれ、cos相検出信号は、A/Dコンバータ2(107)によって取り込まれ、それぞれデジタル信号に変換される。ここで取り込まれたsin相検出信号およびcos相検出信号に基づく演算がR/Dコンバータ演算部108で行われ、レゾルバ100が検出するステアリング軸の角度データの算出が行われる。この角度データは、R/Dコンバータ内臓マイコン104から出力され、他の機器に取り込まれる。図2には、この角度演算と他の機器における角度データの取込のタイミングが示されている。
【0026】
図2の間欠励磁モードでは、励磁パルス信号が出力されていない期間T2が周期的にあり、常時励磁を行う場合(つまり休止期間T2なしの場合)に比較して励磁に必要な電力が削減されている。なお、この場合、励磁が間欠的であるので、図2に例示されるように、sin相検出信号およびcos相検出信号の取り込みも間欠的に行われ、角度検出の処理も間欠的に行われる。
【0027】
(動作の一例)
以下、図1のシステムで行われる処理の一例を説明する。図3には、図1のシステムで行われる処理の手順の一例が示されている。なお、以下において便宜上エンジンと記載するが、ここでエンジンに相当するものとしては、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、電動モータ、ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジンと電動モータとのハイブリッド仕様等が挙げられる、また、ここでは、オートマチック車の場合を例に挙げ説明を行う。
【0028】
エンジンキーが差し込まれONの位置に回されると、処理が開始される(ステップS201)。処理が開始されると、まずギアのシフトレバーがパーキングの位置にあるか否か、が判定される(ステップS202)。ここで、ギアのシフトレバーがパーキングに入っていれば、ステップS203に進み、そうでなければステップS204に進む。
【0029】
ステップS203に進んだ場合、車両制御用マイコン112からの角度検出の要求信号の出力は行わない。この場合、励磁パルス出力回路105は、励磁パルス信号を出力せず、レゾルバ100の励磁は行われない。
【0030】
ステップS204に進んだ場合、当該車両が停車中であるか否か、の判定が車両制御用マイコン112において判定される。ここで、当該車両が停車中であれば、ステップS205に進み、図2に示す間欠励磁モードでの励磁が行われる。また、ステップS204の判定において、当該車両が停車中でなければ(つまり動いていれば)、ステップS207に進む。
【0031】
また、ステップS205の間欠励磁モードが実行されている状態において、レゾルバ100が検出対象としている軸(この場合は、ステアリング軸)の角度変化を検出したか否か、の判定が行われる(ステップS206)。この判定は、車両状態用マイコン112において行われる。ステップ206において角度変化が検出されると、ステップS207に進み、角度変化が検出されない場合はステップS202以下の処理が再度実行される。
【0032】
ステップS207では、車両制御用マイコン112からの角度検出の要求信号の出力が連続して途切れることなく行われる。この場合、励磁パルス出力回路105からの励磁パルスの出力は、図2に例示するような、出力期間T1と出力休止期間T2とを交互に繰り返す間欠的なものではなく、連続して行われる。このモードでは、レゾルバ100は休みなく連続して励磁され、常時角度検出処理が行われ、R/Dコンバータ演算部108からは当該車両のステアリング軸の角度情報が途切れなく出力され続ける。
【0033】
ステップS203およびステップS207の処理が実行されている状態において、エンジンキーが抜かれると、ステップS208の判定がYESとなり、処理は終了する(ステップS209)。処理が終了した場合、システムの電源がOFFとなるので、車両制御用マイコン112もOFFとなり、角度検出の要求信号の出力も行われない。また、ステップS203およびステップS207の処理が実行されている状態において、エンジンキーが抜かれていない場合、ステップS202以下の処理が再度実行される。
【0034】
図3に示す処理によれば、エンジンキーがキー穴に差し込まれ、ON動作が行われた後であっても、ステアリング軸の角度検出が必要のないパーキングモードにおいては、励磁電流の出力が行われず、励磁を行うための消費電流の消費は生じない(ステップS203)。また、ブレーキをかけて停車中の場合、間欠的に励磁が行われるモードが実行され(ステップS205)、励磁に必要な消費電力が抑えられる。例えば、赤信号により停車中でエンジンを停止している状態では、間欠励磁モードとなる(ステップS205)。この場合、間欠的ではあるがステアリング軸の回転角の検出が行われており、角度検出が行われれば、常時励磁モードやよりT2の短い間欠励磁モードに移行する(ステップS207)。このように、必要とされる角度検出を行いつつ、レゾルバの励磁に要する電力を削減することができる。
【0035】
(優位性)
本実施形態において、励磁パルス出力回路105は、角度検出の要求信号を受けて励磁パルス信号を出力する。ここで、車両制御用マイコン112は、車両の状態を判定し、ステアリング軸の角度検出が必要な状況と判定された場合に角度検出の要求信号を出力する。このため、励磁パルス出力回路105は、常時励磁パルス信号を出力する場合に比較して、励磁に要する消費電力を抑えることができる。
【0036】
従来使われてきたサーボ方式のR/Dコンバータでは、安定にサーボを掛けるために、セットリング・タイムが必要とされる。これに対して、本実施形態で示すマイクロ・コンピュータによる関数演算を主体としたアルゴリズムでは、サーボ方式の様なセトリング・タイムを必要としない。このため、レゾルバのインダクタンス成分や共振回路で主に起こる僅かな過渡応答時間の後にsin相,cos相をサンプリングし、その後直ちに励磁を切ることが可能となる。
【0037】
図3に例示する処理の手順によれば、エンジンキーが差し込まれている状態であっても、車両の状況に応じて、レゾルバ100の励磁を行わないのか、励磁を常時行うのか、励磁を間欠的に行うのか、が選択される。また、ステップS206→ステップS207の処理の例で示されるように、角度検出を常時行いたい状況となった場合には、車両制御用マイコン112から角度検出の要求信号が連続して出力され、連続的な励磁が行われるモードに移行する。このため、角度データを必要とするタイミングで励磁パルス信号の供給が行われ、励磁に必要な電力の消費を、励磁を車両の状態に関係なく常時行う場合に比較して低減することができる。また、状況に応じて、励磁の状態を切り替えるので、安全性に悪影響を与えずに励磁に係る消費電力の低減が行える。
【0038】
励磁巻線101に並列にコンデンサを接続し、共振回路111を形成することで、励磁巻線101に供給される励磁電流の波形をサイン波形に近付けることができる。こうすることで、sin相検出信号およびcos相検出信号を理想的な波形に近付けることができ、低コストで得られる構成でありながら、R/Dコンバータ演算部108で行われる角度演算の精度を高めることができる。
【0039】
ところで、安全性の確保のためにレゾルバを多重に配置し、故障に際しての冗長性を持たせる構成がある。本発明を利用した場合、レゾルバ一つ当たりの消費電力が削減されるので、レゾルバを多重に配置した構成であっても、多重化による安全性の確保と、低消費電力化を両立させることができる。
【0040】
(その他)
図3の例では、間欠励磁モードが一種類であるが、間欠的に励磁が行われる間隔(図2の場合の期間T2)を複数設定することで、角度検出の頻度と励磁に必要な消費電力との組み合わせとを複数用意し、状況に応じてその中の一つを選択するようにしてもよい。又、常時励磁モードの代わりにT2の短い間欠励磁モードを選択してもよい。
【0041】
本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【0042】
実施形態では、一例として電動パワーステアリングの制御システムに本発明を利用する場合の例を説明したが、ある部分の回転角を検出し、その検出結果を用いて何らかの制御を行うシステムに本発明は利用することができる。この時、当該回転角の検出を必要としない状況において、励磁パルスが出力されない構成とすることで、省電力化したレゾルバの駆動を行う構成が提供される。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、レゾルバを駆動する技術に利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
100…レゾルバ、101…励磁巻線、102…sin相検出巻線、103…cos相検出巻線、104…R/Dコンバータ内蔵マイコン、105…励磁パルス出力回路、106…A/Dコンバータ1、107…A/Dコンバータ2、108…R/Dコンバータ演算部、109…IF(インターフェース)回路、110…コンデンサ、111…共振回路、112…車両制御用マイコン。
【技術分野】
【0001】
本発明は、省電力化が可能なレゾルバの駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用として使用されるセンサは、車載電気機器の増加や、電気自動車化などにより低消費電力化が求められてきている。例えば、車両のステアリング軸の回転角を検出する装置として、レゾルバを用いたものが知られている。通常のレゾルバは、励磁電流として、常時5KHz〜20KHzの正弦波が入力されている。このため、他の回転角度センサと比べて消費電力が大きくなる傾向がある。これは、従来使われてきたサーボ方式のR/Dコンバータでは、安定にサーボを掛けるために、セットリング・タイムが必要であり、常時励磁を行う方式が一般的であるという点にも原因がある。なお、セットリング・タイム(settling time)というのは、入力デジタル信号にステップ出力が得られるような変化を与えた場合の出力応答に関わる値を考えた場合に、入力データが変化した後、出力値が目標値の許容範囲に到達するまでの時間のことである。
【0003】
特許文献1には、バッテリによるバックアップ時の消費電力を低減することを目的としたレゾルバの駆動回路が開示されている。この技術では、レゾルバからの出力値は、AMP、微分回路を通りパルス検出回路に入力される。そして、微分回路の出力の増減(すなわちレゾルバ出力の増減)により、パルス検出回路の出力値を増減させ、この出力に応じてパルス数が変動する信号で励磁を行う構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−226200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された構造では、可動子の回転状態に応じてサンプリングパルスのパルスレートを増減させることで励磁回数を増減させることが可能となるとされているが、角度データが必要でない場合に励磁が停止されるわけではなく、常時励磁が行われていることには変わりがない。このため、角度データの検出が不要な状態においても励磁電流が消費される。このような背景において、本発明は、レゾルバの角度データを必要とするタイミングでレゾルバの励磁を行うことで、省電力化したレゾルバの駆動を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、角度検出の要求信号を受け付けた場合に、特定の期間の間において励磁信号を出力する励磁信号出力部と、前記特定の期間の間に行われた励磁に応答して得られたsin相検出信号およびcos相検出信号に基づいて角度情報の算出を行う演算部とを備えることを特徴とするレゾルバの駆動装置である。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、角度検出の要求信号を受け付けた場合、特定の期間の間において励磁信号が出力される。このため、角度検出が不要な場合にレゾルバの励磁が行われず、レゾルバの励磁に要する消費電力を削減することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記特定の期間の間における励磁信号の出力が間欠的に繰り返し行われることを特徴とする。請求項2に記載の発明によれば、励磁信号の出力が間欠的に行われるので、角度検出を継続的に行いつつ励磁に要する消費電力の削減が可能となる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記励磁信号出力部は、特定の条件に基づき、前記特定の期間の間において励磁信号を出力するモードから常時励磁信号を出力するモードに切り替わることを特徴とする。請求項3に記載の発明によれば、常時角度検出を行う必要がある場合に、励磁信号を間欠的にレゾルバに供給するモードから励磁信号を連続的に供給するモードに切り替わることで、全体としての消費電力の削減と、連続的に角度検出が必要な場合への対応とを両立させることができる。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記特定の条件が角度情報の変化が検出された場合であることを特徴とする。励磁が間欠的であっても、検出対象の角度に変化がなければ、より高い頻度で角度検出を行う必要性は低い。他方において、励磁が間欠的である場合に、検出対象の角度変化が検出された場合、その角度変化のその後の推移を検出する必要性が高くなるが、このタイミングで励磁を連続的に行うモードに移行することで、その後の角度変化を追従性良く検出することが可能となる。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の発明において、前記励磁信号がパルス信号であり、このパルス信号はコンデンサが並列に接続された励磁巻線に供給されることを特徴とする。一般にプログラム可能な各種のマイクロ・コンピュータは、各種の制御信号として利用可能なパルス信号を決められたタイミングで出力する機能を有している。請求項5に記載の発明によれば、この機能を利用してレゾルバの励磁を行うことができる。このため、請求項5に記載の構成によれば、特別な部品を必要とせずに発明を実現することができる。また、励磁巻線に並列にコンデンサを接続し、共振回路を構成することで、パルス信号の波形をサイン波形に類似な波形に変え、得られる出力波形を理想的な波形に近付けることができる。なお、パルス信号の波形は方形波に限らず階段波、三角波などが使用される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、レゾルバの角度データを必要とするタイミングでレゾルバの励磁を行うことで、省電力化したレゾルバの駆動が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態のブロック図である。
【図2】実施形態のタイミングチャートである。
【図3】実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(構成)
図1には、本発明を利用したシステムの一例が示されている。ここでは、車両の電動パワーステアリングシステムに本発明を利用する場合の例を説明する。図1には、レゾルバ100が示されている。レゾルバ100は、通常のVR型レゾルバであり、励磁巻線101、sin相検出巻線102、cos相検出巻線103を備えている。レゾルバ100は、通常のVR型レゾルバと同じ構造であるので、その詳細な説明は省略する。ここでレゾルバ100の回転軸は、車両のステアリング軸の回転を検出する構成とされている。
【0015】
レゾルバ100には、R/Dコンバータ演算部内蔵マイコン104が接続されている。R/Dコンバータ演算部内蔵マイコン104は、レゾルバ100の駆動信号を生成し、IF回路(インターフェース回路)(109)を介してレゾルバ100に励磁信号を出力し、またレゾルバ100が検出した信号に基づく角度演算を行うR/Dコンバータとしての機能を有している。R/Dコンバータ演算部内蔵マイコン104は、励磁パルス出力回路105、A/Dコンバータ1(106)、A/Dコンバータ2(107)、R/Dコンバータ演算部108を備えている。なお、R/Dコンバータ演算部はソフトウェアだけで実現することもできる。
【0016】
励磁パルス出力回路105は、後述する角度検出の要求信号が入力された場合に、レゾルバ100の励磁巻線101への励磁信号となる励磁パルス信号を出力する。励磁パルス出力回路105から出力された励磁パルス信号は、例えばリニア増幅器により構成されるIF回路109で増幅され、レゾルバ100の励磁巻線101に供給される。
【0017】
A/Dコンバータ1(106)は、sin相検出巻線102が検出したsin相検出信号をデジタル信号に変換する。A/Dコンバータ2(107)は、cos相検出巻線103が検出したcos相検出信号をデジタル信号に変換する。R/Dコンバータ演算部108は、A/D変換されたsin相検出信号とcos相検出信号とに基づき、レゾルバ100の回転軸の回転角を算出し、それを角度データとして出力する。この例において、レゾルバは、車両のステアリング軸の回転角を検出する。このステアリング軸の角度データは、例えばステアリング軸の回転をモータによってアシストする電動パワーステアリングシステムに利用される。なお、ここでは、対象となる車両として、公道を走行可能な乗用車を想定しているが、車両はそれに限定されるものではない。
【0018】
励磁巻線101には並列にコンデンサ110が挿入され、励磁巻線101とコンデンサ110とで共振回路111が形成されている。共振回路111は、IF回路109から出力されるデジタル信号の波形を鈍らせ、励磁巻線101に流れる電流が正弦波に似せた波形となるようにする機能を発揮する。コンデンサ110の容量の値は、共振回路111の共振周波数が、励磁パルス出力回路105から出力される励磁パルス信号の周波数(この場合は、10kHz)となる値とされている。
【0019】
励磁パルス出力回路105は、車両制御用マイコン112から出力される角度検出の要求信号に基づいて、励磁パルス信号を出力する。具体的にいうと、励磁パルス出力回路105は、角度検出の要求信号の入力がある場合に、励磁パルス信号を出力し、角度検出の要求信号の入力がない場合は、励磁パルス信号の出力を行わない。車両制御用マイコン112は、車両の状態に関する情報を取得し、それに基づきステアリング軸の回転角を検出する必要がある状態であるか否か、を判定し、その結果に基づき角度検出の要求信号を励磁パルス出力回路に出力する。
【0020】
励磁パルス信号はIF回路109で適切なレベルに増幅され、励磁巻線101に供給される。この際、共振回路111の作用により、波形がなまりサイン波形に似せた波形が励磁信号として励磁巻線101に供給される。励磁巻線101に励磁信号が流れることで、励磁巻線が磁束を生成し、それがsin相検出巻線102およびcos相検出巻線103で検出され、sin相検出信号とcos相検出信号とが得られる。この応答は、巻線のインダクタンスの影響で励磁パルス信号の供給タイミングに対して少し遅れる。
【0021】
A/Dコンバータ1(106)とA/Dコンバータ2(107)は、sin相検出巻線102から得られるsin相検出信号とcos相検出巻線103から得られるcos相検出信号とを取り込み、それらをデジタル信号に変換する。このデジタル信号に変換されたsin相検出信号とcos相検出信号とがR/Dコンバータ演算部108に取り込まれる。R/Dコンバータ演算部108は、取り込んだsin相検出信号とcos相検出巻線103とに基づき、レゾルバ100が検出した角度データの算出を行う。
【0022】
図2には、各種信号および処理の関係を示すタイミングチャートが示されている。図2には、レゾルバ100への励磁パルス信号の供給が間欠的に行われる間欠励磁モードが示されている。図2に示すように、車両制御用マイコン112から角度検出の要求信号が出力され、それが励磁パルス出力回路105に入力すると、励磁パルス出力回路105は、励磁パルス信号を出力する。図2には、角度検出の要求信号がT1の期間で出力され、それに応答して励磁パルス出力回路105から励磁パルス信号が期間T1の間出力される場合が示されている。励磁パルス信号は、10kHzの周期で繰り返すパルス信号(矩形波形)である。なお、励磁パルス信号の繰り返し周波数は、例えば5kHz〜50kHzの範囲から選択可能である。
【0023】
図2には、角度検出の要求信号がT1の期間で出力され、その後期間T2の間出力されず、その後に再びT1の期間で出力が行われ、といった動作が繰り返され、このタイミングに応答して同様のタイミングで励磁パルス出力回路105から励磁パルス信号が出力される状態が示されている。すなわち、車両制御用マイコン112からの角度検出の要求信号に対応して、T1の期間における励磁パルス信号の出力、その後のT2の期間における励磁パルス信号の出力の停止、更にその後のT1の期間における励磁パルス信号の出力が行われる状態が示されている。なお、図2では、図示されていないが、角度検出の要求信号の繰り返しが、同様に行われている間、このサイクルは繰り返し行われる。ここでは、期間T1における励磁パルス信号の出力→期間T2における励磁パルス信号の出力の休止→期間T1における励磁パルス信号の出力→・・・の繰り返しの状態を、励磁パルス信号が間欠的に出力される状態と呼ぶ。そしてこの状態で励磁を行うモードを間欠励磁モードと呼ぶ。
【0024】
図2において、T3は、間欠励磁モードにおける角度検出の要求信号の間隔である。ここで、T1とT2の和がT3となる関係にある。またこの例において、T1=0.3秒、T2=1秒、T3=1.3秒と設定されている。これらの数値の設定は、一例であり、この値に限定されるものではない。
【0025】
図2に示すように、励磁パルス出力回路105からの励磁パルス信号が出力されると、励磁パルス出力回路105からの励磁パルス信号の出力タイミングに少し遅れて、sin相検出信号およびcos相検出信号が出力される。これは、巻線のインダクタンス成分に起因して応答が少し遅れるためである。sin相検出信号は、A/Dコンバータ1(106)により取り込まれ、cos相検出信号は、A/Dコンバータ2(107)によって取り込まれ、それぞれデジタル信号に変換される。ここで取り込まれたsin相検出信号およびcos相検出信号に基づく演算がR/Dコンバータ演算部108で行われ、レゾルバ100が検出するステアリング軸の角度データの算出が行われる。この角度データは、R/Dコンバータ内臓マイコン104から出力され、他の機器に取り込まれる。図2には、この角度演算と他の機器における角度データの取込のタイミングが示されている。
【0026】
図2の間欠励磁モードでは、励磁パルス信号が出力されていない期間T2が周期的にあり、常時励磁を行う場合(つまり休止期間T2なしの場合)に比較して励磁に必要な電力が削減されている。なお、この場合、励磁が間欠的であるので、図2に例示されるように、sin相検出信号およびcos相検出信号の取り込みも間欠的に行われ、角度検出の処理も間欠的に行われる。
【0027】
(動作の一例)
以下、図1のシステムで行われる処理の一例を説明する。図3には、図1のシステムで行われる処理の手順の一例が示されている。なお、以下において便宜上エンジンと記載するが、ここでエンジンに相当するものとしては、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、電動モータ、ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジンと電動モータとのハイブリッド仕様等が挙げられる、また、ここでは、オートマチック車の場合を例に挙げ説明を行う。
【0028】
エンジンキーが差し込まれONの位置に回されると、処理が開始される(ステップS201)。処理が開始されると、まずギアのシフトレバーがパーキングの位置にあるか否か、が判定される(ステップS202)。ここで、ギアのシフトレバーがパーキングに入っていれば、ステップS203に進み、そうでなければステップS204に進む。
【0029】
ステップS203に進んだ場合、車両制御用マイコン112からの角度検出の要求信号の出力は行わない。この場合、励磁パルス出力回路105は、励磁パルス信号を出力せず、レゾルバ100の励磁は行われない。
【0030】
ステップS204に進んだ場合、当該車両が停車中であるか否か、の判定が車両制御用マイコン112において判定される。ここで、当該車両が停車中であれば、ステップS205に進み、図2に示す間欠励磁モードでの励磁が行われる。また、ステップS204の判定において、当該車両が停車中でなければ(つまり動いていれば)、ステップS207に進む。
【0031】
また、ステップS205の間欠励磁モードが実行されている状態において、レゾルバ100が検出対象としている軸(この場合は、ステアリング軸)の角度変化を検出したか否か、の判定が行われる(ステップS206)。この判定は、車両状態用マイコン112において行われる。ステップ206において角度変化が検出されると、ステップS207に進み、角度変化が検出されない場合はステップS202以下の処理が再度実行される。
【0032】
ステップS207では、車両制御用マイコン112からの角度検出の要求信号の出力が連続して途切れることなく行われる。この場合、励磁パルス出力回路105からの励磁パルスの出力は、図2に例示するような、出力期間T1と出力休止期間T2とを交互に繰り返す間欠的なものではなく、連続して行われる。このモードでは、レゾルバ100は休みなく連続して励磁され、常時角度検出処理が行われ、R/Dコンバータ演算部108からは当該車両のステアリング軸の角度情報が途切れなく出力され続ける。
【0033】
ステップS203およびステップS207の処理が実行されている状態において、エンジンキーが抜かれると、ステップS208の判定がYESとなり、処理は終了する(ステップS209)。処理が終了した場合、システムの電源がOFFとなるので、車両制御用マイコン112もOFFとなり、角度検出の要求信号の出力も行われない。また、ステップS203およびステップS207の処理が実行されている状態において、エンジンキーが抜かれていない場合、ステップS202以下の処理が再度実行される。
【0034】
図3に示す処理によれば、エンジンキーがキー穴に差し込まれ、ON動作が行われた後であっても、ステアリング軸の角度検出が必要のないパーキングモードにおいては、励磁電流の出力が行われず、励磁を行うための消費電流の消費は生じない(ステップS203)。また、ブレーキをかけて停車中の場合、間欠的に励磁が行われるモードが実行され(ステップS205)、励磁に必要な消費電力が抑えられる。例えば、赤信号により停車中でエンジンを停止している状態では、間欠励磁モードとなる(ステップS205)。この場合、間欠的ではあるがステアリング軸の回転角の検出が行われており、角度検出が行われれば、常時励磁モードやよりT2の短い間欠励磁モードに移行する(ステップS207)。このように、必要とされる角度検出を行いつつ、レゾルバの励磁に要する電力を削減することができる。
【0035】
(優位性)
本実施形態において、励磁パルス出力回路105は、角度検出の要求信号を受けて励磁パルス信号を出力する。ここで、車両制御用マイコン112は、車両の状態を判定し、ステアリング軸の角度検出が必要な状況と判定された場合に角度検出の要求信号を出力する。このため、励磁パルス出力回路105は、常時励磁パルス信号を出力する場合に比較して、励磁に要する消費電力を抑えることができる。
【0036】
従来使われてきたサーボ方式のR/Dコンバータでは、安定にサーボを掛けるために、セットリング・タイムが必要とされる。これに対して、本実施形態で示すマイクロ・コンピュータによる関数演算を主体としたアルゴリズムでは、サーボ方式の様なセトリング・タイムを必要としない。このため、レゾルバのインダクタンス成分や共振回路で主に起こる僅かな過渡応答時間の後にsin相,cos相をサンプリングし、その後直ちに励磁を切ることが可能となる。
【0037】
図3に例示する処理の手順によれば、エンジンキーが差し込まれている状態であっても、車両の状況に応じて、レゾルバ100の励磁を行わないのか、励磁を常時行うのか、励磁を間欠的に行うのか、が選択される。また、ステップS206→ステップS207の処理の例で示されるように、角度検出を常時行いたい状況となった場合には、車両制御用マイコン112から角度検出の要求信号が連続して出力され、連続的な励磁が行われるモードに移行する。このため、角度データを必要とするタイミングで励磁パルス信号の供給が行われ、励磁に必要な電力の消費を、励磁を車両の状態に関係なく常時行う場合に比較して低減することができる。また、状況に応じて、励磁の状態を切り替えるので、安全性に悪影響を与えずに励磁に係る消費電力の低減が行える。
【0038】
励磁巻線101に並列にコンデンサを接続し、共振回路111を形成することで、励磁巻線101に供給される励磁電流の波形をサイン波形に近付けることができる。こうすることで、sin相検出信号およびcos相検出信号を理想的な波形に近付けることができ、低コストで得られる構成でありながら、R/Dコンバータ演算部108で行われる角度演算の精度を高めることができる。
【0039】
ところで、安全性の確保のためにレゾルバを多重に配置し、故障に際しての冗長性を持たせる構成がある。本発明を利用した場合、レゾルバ一つ当たりの消費電力が削減されるので、レゾルバを多重に配置した構成であっても、多重化による安全性の確保と、低消費電力化を両立させることができる。
【0040】
(その他)
図3の例では、間欠励磁モードが一種類であるが、間欠的に励磁が行われる間隔(図2の場合の期間T2)を複数設定することで、角度検出の頻度と励磁に必要な消費電力との組み合わせとを複数用意し、状況に応じてその中の一つを選択するようにしてもよい。又、常時励磁モードの代わりにT2の短い間欠励磁モードを選択してもよい。
【0041】
本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【0042】
実施形態では、一例として電動パワーステアリングの制御システムに本発明を利用する場合の例を説明したが、ある部分の回転角を検出し、その検出結果を用いて何らかの制御を行うシステムに本発明は利用することができる。この時、当該回転角の検出を必要としない状況において、励磁パルスが出力されない構成とすることで、省電力化したレゾルバの駆動を行う構成が提供される。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、レゾルバを駆動する技術に利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
100…レゾルバ、101…励磁巻線、102…sin相検出巻線、103…cos相検出巻線、104…R/Dコンバータ内蔵マイコン、105…励磁パルス出力回路、106…A/Dコンバータ1、107…A/Dコンバータ2、108…R/Dコンバータ演算部、109…IF(インターフェース)回路、110…コンデンサ、111…共振回路、112…車両制御用マイコン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
角度検出の要求信号を受け付けた場合に、特定の期間の間において励磁信号を出力する励磁信号出力部と、
前記特定の期間の間に行われた励磁に応答して得られたsin相検出信号およびcos相検出信号に基づいて角度情報の算出を行う演算部と
を備えることを特徴とするレゾルバの駆動装置。
【請求項2】
前記特定の期間の間における励磁信号の出力が間欠的に繰り返し行われることを特徴とする請求項1に記載のレゾルバの駆動装置。
【請求項3】
前記励磁信号出力部は、特定の条件に基づき、前記特定の期間の間において励磁信号を出力するモードから常時励磁信号を出力するモードに切り替わることを特徴とする請求項1または2に記載のレゾルバの駆動装置。
【請求項4】
前記特定の条件が角度情報の変化が検出された場合であることを特徴とする請求項3に記載のレゾルバの駆動装置。
【請求項5】
前記励磁信号がパルス信号であり、このパルス信号はコンデンサが並列に接続された励磁巻線に供給されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のレゾルバの駆動装置。
【請求項1】
角度検出の要求信号を受け付けた場合に、特定の期間の間において励磁信号を出力する励磁信号出力部と、
前記特定の期間の間に行われた励磁に応答して得られたsin相検出信号およびcos相検出信号に基づいて角度情報の算出を行う演算部と
を備えることを特徴とするレゾルバの駆動装置。
【請求項2】
前記特定の期間の間における励磁信号の出力が間欠的に繰り返し行われることを特徴とする請求項1に記載のレゾルバの駆動装置。
【請求項3】
前記励磁信号出力部は、特定の条件に基づき、前記特定の期間の間において励磁信号を出力するモードから常時励磁信号を出力するモードに切り替わることを特徴とする請求項1または2に記載のレゾルバの駆動装置。
【請求項4】
前記特定の条件が角度情報の変化が検出された場合であることを特徴とする請求項3に記載のレゾルバの駆動装置。
【請求項5】
前記励磁信号がパルス信号であり、このパルス信号はコンデンサが並列に接続された励磁巻線に供給されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のレゾルバの駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2012−247344(P2012−247344A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120254(P2011−120254)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】
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