説明

レタス栽培システムおよび方法

【課題】既存技術を組み合わせてトータル制御することにより、露地栽培環境を作り出することにより、レタスを結球させることが可能な条件を満たしたレタスの栽培システムおよび方法を得る。
【解決手段】栽培槽11と、給水槽20と、肥料タンク21と、CO2タンク18と、光源13と、エアコン14と、ファン15と、各種センサと、CO2センサ17と、コントローラ2とを備える。コントローラ2は、栽培槽11への給水状態を制御するとともに、CO2濃度が露地栽培よりも高い濃度となるようにCO2タンク18を制御し、露地栽培での周期よりも短い周期で明期および暗期を繰り返すように、光源13を周期的に制御し、環境温度および気流が変動するように、エアコン14およびファン15を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レタスの栽培システムおよび方法に関し、特に、LED灯を用いた閉鎖型完全人工光型植物工場の環境制御によりレタスを栽培して、レタスを結球させるためのシステムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、閉鎖型完全人工光型植物工場による水耕栽培法に関しては、種々の技術が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
また、レタス栽培において、食感の優れた結球レタスを実現させるためには、適度なストレスを与える必要があるので、栽培環境条件が変化する露地栽培が適していることが知られている。
【0003】
しかしながら、従来の閉鎖型完全人工光型植物工場においては、閉鎖空間中で露地栽培環境を人工的に作り出すことは非常に困難であるうえ、コストアップが著しいことから、閉鎖型完全人工光型植物工場内においてレタスを結球させることは、現実的に不可能といわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−188841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来は、閉鎖型完全人工光型植物工場において、露地栽培の個々の栽培環境を各々単独で設定していたので、レタスを結球させることができないという課題があった。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、既存技術(照明技術、空調制御技術、養液栽培技術など)を組み合わせてトータル制御し、露地栽培環境を作り出することにより、レタスを結球させることが可能な条件を満たした閉鎖型完全人工光型植物工場によるレタスの栽培システムおよび方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る閉鎖型完全人工光型植物工場によるレタス栽培システムは、レタスの栽培槽と、栽培槽に肥料成分が調整された給水を行う給水槽と、給水槽に肥料を供給する肥料タンクと、レタスの環境中にCO2(炭酸ガス)を供給するCO2タンクと、レタスに人工光を照射する光源と、レタスの空気環境を調整するエアコンと、レタスに向けて気流を発生するファンと、栽培槽および給水槽の給水情報を検出する各種センサと、レタスの環境中のCO2濃度を検出するCO2センサと、給水槽、肥料タンク、CO2タンク、光源、エアコンおよびファンを制御するコントローラと、を備え、コントローラは、給水情報に基づき、栽培槽への給水状態が一定となるように給水槽および肥料タンクを制御するとともに、レタスの環境中のCO2濃度が、露地栽培でのCO2濃度よりも高い濃度となるようにCO2タンクを制御し、露地栽培での周期よりも短い周期で明期および暗期を繰り返すように、光源を周期的に制御し、明期および暗期の周期と同期して、レタスの環境温度および気流が変動するように、エアコンおよびファンを周期的に制御するものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、LED灯を使用するとともに、栽培環境条件をトータル制御することにより、閉鎖型完全人工光型植物工場においてレタスを結球させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1に係るレタス栽培システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1によるトータル制御手順を露地栽培状態と比較して示す説明図である。
【図3】この発明の実施の形態1によるトータル制御手順を時間軸方向に拡大して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
以下、図面を参照しながら、この発明の実施の形態1について説明する。
図1はこの発明の実施の形態1に係るレタス栽培システムの全体構成を示すブロック図である。
図1において、レタス栽培システムは、閉鎖型完全人工光型植物工場1と、コントローラ2と、CO2タンク18およびバルブ19と、給水槽20と、肥料タンク21と、水タンク22と、水位センサ23と、導電率センサ24と、pH(水素イオン指数)センサ25と、ポンプ26〜28と、を備えている。
【0011】
閉鎖型完全人工光型植物工場1は、複数のレタス12が設置される栽培槽11と、レタス12に人工光を照射する光源13と、レタス12の空気環境を調整するエアコン14と、レタス12に向けて気流を発生するファン15と、レタス12の環境湿度を調整する除湿機16と、レタス12の環境中のCO2濃度を検出するCO2センサ17と、を備えている。
【0012】
光源13は、レタス12の成長を促す波長(620nm)の人工光を出射する赤色(R)LEDと、レタス12の強度向上を促す波長(450nm)の人工光を出射する青色(B)LEDと、レタス12に適度なストレスを与える波長(280nm)の人工光を出射する紫外線(UV)LEDと、を備えている。
【0013】
CO2タンク18は、バルブ19を介して、レタス12の環境中にCO2を供給する。
肥料タンク21は、ポンプ27を介して給水槽20に肥料(酸、アルカリ、カリウム、窒素など)を供給し、水タンク22は、ポンプ28を介して給水槽20に水を供給する。
給水槽20は、ポンプ26を介して、栽培槽11に対し、肥料成分が調整された給水を行う。
【0014】
水位センサ23、導電率センサ24およびpHセンサ25は、栽培槽11および給水槽20の給水情報を検出する各種センサを構成している。
CO2センサ17および各種センサ23〜25の検出情報は、コントローラ2に入力される。なお、図示しないが、除湿機16は、湿度センサを内蔵し、湿度センサの検出情報がコントローラ2に入力されてもよい。
【0015】
コントローラ2内のメモリ(図示せず)には、レタス12を結球させるために最適な制御シーケンスがあらかじめ格納されている。
コントローラ2は、各種検出情報に基づき、給水槽20のポンプ26、肥料タンク21のポンプ27、CO2タンク18のバルブ19、光源13、エアコン14、ファン15および除湿機16を制御する。
【0016】
具体的には、コントローラ2は、各種センサ23〜25からの給水情報に基づき、栽培槽11への給水状態(水位、肥料成分など)が一定となるように、給水槽20(ポンプ26)および肥料タンク(ポンプ27)を制御する。
【0017】
また、コントローラ2は、レタス12の環境中のCO2濃度が、露地栽培でのCO2濃度よりも高い濃度となるようにCO2タンク(バルブ19)を制御する。
さらに、コントローラ2は、露地栽培での周期よりも短い周期で明期および暗期を繰り返すように、光源13を周期的に制御し、明期および暗期の周期と同期して、レタス12の環境温度および気流が変動するように、エアコン14およびファン15を周期的に制御する。
【0018】
次に、図1とともに、図2および図3を参照しながら、この発明の実施の形態1に係るレタス栽培システムによるトータル的な環境制御手順について説明する。
図2はこの発明の実施の形態1によるトータル制御手順(b)を露地栽培状態(a)と比較して示す説明図であり、図3は図2(b)のトータル制御手順を時間軸方向に拡大して示す説明図である。図2および図3においては、実証試験に基づくデータとして示している。
【0019】
一般に、閉鎖型完全人工光型植物工場1において要求される最適栽培条件としては、以下の4つの条件(1)〜(4)が挙げられる。
(1)日長時間の設定、
(2)栽培空調制御の設定、
(3)気流の設定、
(4)栽培養液とCO2(二酸化炭素)濃度の設定。
【0020】
まず、条件(1)「日長時間の設定」について説明する。
周知のように、植物は、吸収した炭酸ガスを光合成により糖の形で固定するが、糖は、澱粉などの多糖類との間で代謝が行われて、セルローズ、ヘミセルローズ、ペクチン質、リグニンなどに変化し、セルローズなどは、細胞膜や繊維などの植物体の構造および体勢の維持に寄与する。
【0021】
また、糖から生成された有機酸は、根から吸収された窒素と結合して、グルタミン酸などのアミノ酸に転換され、グルタミン酸からアミノ酸への転換により、各種のアミノ酸が生成される。
これら一連の物質代謝は、昼と夜との時間長さに大きく左右されるので、閉鎖型完全人工光型植物工場1において、照明による最適照射時間を設定する必要がある。
【0022】
図2(a)は通常の露地栽培での環境条件の時間変化を示している。
図2(a)においては、日の出時刻が6:00で、日の入時刻が18:00であって、5:00頃から光量(光質)が上昇を開始し、8:00〜16:00にわたって光量のピーク期間となり、21:00頃および23:00頃において、段階的に光量が下降する状態を示している。
【0023】
また、図2(a)において、レタス12の光合成能力(太線参照)は、日の出時刻(6時頃)で上昇を開始するものの、日の入時刻の手前(16:00頃)で無効レベル(0%)となる。
また、糖分転流能力(破線参照)は、光合成能力の上昇開始時刻から1時間後(7:00)に上昇を開始し、光合成能力が最大値となる時刻(10:00)から1時間後(11:00)に下降を開始する。
【0024】
さらに、図2(a)において、21:00〜24:00(0:00)および0:00〜11:00は、糖分蓄積期間であり、11:00〜17:00は、糖分転流期間であり、17:00〜21:00は、糖分転流促進期間である。
【0025】
図2(a)から明らかなように、実質的に糖分転流に寄与する光合成期間は、実線特性の前半部(6:00〜11:00)の4時間〜5時間程度であり、糖分転流能力が有効な光合成促進期間は、破線特性の前半部(7:00〜10:30)の3.5時間程度であることが分かる。
【0026】
すなわち、光合成により炭酸ガスから生成される糖分は、光が存在する限り生成され続けるのではなく、約5時間の光照射時間を境として実質的に無効となり、その後は、糖分の生成量が増えることはない。
一方、糖分が各種の多糖類へと代謝される夜間においては、約6時間の暗期間が必要といわれている。
【0027】
そこで、図1の閉鎖型完全人工光型植物工場1においては、暗室の中で、光源13(LED照明)の点灯時間および不点灯時間を、コントローラ2のメモリにあらかじめ設定されたシーケンス(図2(b)、図3)にしたがって制御することにより、最適な日長時間を作り出している。
【0028】
具体的には、図2(b)および図3に示すように、コントローラ2は、時刻2:30に光源13(LED灯)を点灯し、7時間後の時刻9:30に光源13(LED灯)を消灯する。
また、消灯時刻9:30から5時間後の時刻14:30に光源13(LED灯)を点灯し、7時間後の時刻21:30に光源13(LED灯)を消灯する。
【0029】
つまり、図2(b)および図3においては、露地栽培(図2(a))における日の出時刻6:00が、点灯時刻2:30にシフトアップされ、露地栽培における日の入時刻18:00が、消灯時刻9:30にシフトアップされ、露地栽培における時刻24:00が、時刻12:00にシフトアップされたことになり、1日の周期が半分に短縮されている。
【0030】
光源13の具体的構成としては、たとえば、赤色LED(λ=620nm)54本と、青色LED(λ=450nm)18本と、紫外線LED(λ=380nm)9本とを用いる。これにより、赤色(R)、青色(B)、紫外線(UV)のLED比率が、それぞれ、67%、22%、11%となる。
【0031】
また、赤色の光量子量は237μmol、青色の光量子量は83μmol、全体の光量子量が326μmolとなる。
光源13の上記構成例は、レタス12の栽培促進を実現するとともに、適度な紫外線ストレスによりレタス12の結球を促すことになる。
【0032】
なお、図2(b)および図3においては、光源13の点灯時間を7時間とし、光源13の消灯時間を5時間としたが、光源13の点灯時間を5〜8時間の範囲内に設定し、光源13の消灯時間を5〜7時間の範囲内に設定してもよい。
【0033】
次に、条件(2)「栽培空調制御の設定」および条件(3)「気流の設定」について説明する。
周知のように、レタス12は、比較的冷涼な気候を好み、適温は、栽培適正平均温度で15℃〜25℃の範囲内である。
【0034】
また、露地栽培環境においては、昼間と夜間とで湿度変化、気温変化、気流変化が発生するので、これらの変化を相殺するように、閉鎖型完全人工光型植物工場1において、エアコン14、ファン15および除湿機16を用いて空調制御を行うことにより、環境湿度、環境温度(気温)、気流を最適栽培環境に設定する必要がある。
【0035】
また、植物(レタス12)は、光合成中において、葉の表面にある気孔を介して、水分およびCO2(二酸化炭素)を吸収または放出しているが、光合成量は、光合成時の葉温が重要に影響し、葉温は、日射量、気温、湿度および風(気流)によって変化する。
【0036】
そこで、図1の閉鎖型完全人工光型植物工場1においては、光源13の点灯時間および消灯時間(不点灯時間)と同期するように、エアコン14および除湿機16を用いて気温および湿度の変化を相殺させるとともに、ファン15により風の変化を作り出している。
【0037】
具体的には、図3に示すように、時刻3:00(光源13の点灯開始から30分後)から時刻9:00(点灯終了から30分前)までの期間(明期)での環境温度は、約22℃に一定制御され、時刻9:00から次の点灯開始から1時間後の時刻までの期間(暗期)での環境温度は、約19℃に一定制御される。
これにより、12時間周期内での実質的な平均温度は、約20℃(15℃〜25℃の中間値)となる。
【0038】
また、図3において、ファン15の駆動により発生する気流は、光源13の点灯期間(時刻2:30〜9:30)では0.5m/secに制御され、光源13の消灯期間では、0.3m/secに制御される。
これにより、レタス12の葉の表面近傍における空気流が適性に設定されて、光合成能力が向上するとともに、レタス12に対して適度なストレスが与えられて、レタス12が結球し易くなる。
【0039】
なお、図3には示されていないが、除湿機16の駆動による環境湿度は、通常の露地栽培環境での70%程度よりも低い60%程度に制御される。
これにより、農薬を用いない栽培槽11の上部に設置されたレタス12において、細菌の繁殖を抑制することができる。
【0040】
また、図3において、時刻0:00〜12:00の12時間のうち、時刻0:00〜3:00および時刻9:00〜12:00は、吸収抑制期間となり、点灯開始時刻2:30〜光合成能力ピーク時刻6:00(3.5時間)は、光合成促進期間となり、消灯時刻9:30〜12:00(2.5時間)は、糖分転流促進期間となる。
【0041】
最後に、条件(4)「栽培養液とCO2濃度の設定」について説明する。
一般に、露地栽培による通常のレタスは、発芽してから40日〜50日で結球開始となり、その後、結球が進行して、50日〜60日で収穫に達するので、百日野菜と考えられる。つまり、露地栽培においては、1年間に3〜4回の収穫が見込まれている。
【0042】
このとき、レタスが結球していく過程での葉数、葉形および葉面積を増加させる要因としては、栽培養液成分およびCO2濃度が大きく関係するので、図1の閉鎖型完全人工光型植物工場1においては、栽培養液成分およびCO2濃度を最適な栽培環境に設定する必要がある。
【0043】
また、植物(レタス12)において、根から吸収された養水分は、維管束の導管を通って植物体内を上昇する。一方、根が養水分を吸収するために必要な呼吸基質となる糖は、地上部での光合成によって生成され、導管を通って植物体内を下降して根に送られる。
このとき、養水分および糖分は、各細胞間の「浸透圧勾配」が生じることによって送られる。
【0044】
そこで、図1の閉鎖型完全人工光型植物工場1においては、レタス12の養水分の吸収および輸送能力を向上させるために、葉(上部)での光合成を促進する環境と、根(下部)での呼吸を盛んにする環境とを作り出している。
【0045】
具体的には、コントローラ2は、CO2センサ17の検出情報に基づき、CO2タンク18のバルブ19を開放し、CO2濃度を通常環境値(200ppm〜300ppm)の3倍以上の1000ppm程度に制御し、光合成能力を向上させる。
また、コントローラ2は、各センサ24、25の検出情報に基づき、肥料タンク21のポンプ27を開放して所要の肥料成分を給水槽20に供給する。
【0046】
このように、閉鎖型完全人工光型植物工場1のコントローラ2は、露地栽培環境の条件(1)〜(4)を、レタス12を結球させるための「最適栽培条件」として、実証試験に基づきあらかじめシーケンス制御情報として決定し、時間軸を基準に複合的に組み合わせて、各条件(1)〜(4)を個別に且つトータル的に制御することにより、最適な環境設定を実現することができる。
【0047】
以上のように、この発明の実施の形態1(図1〜図3)に係る閉鎖型完全人工光型植物工場1によるレタス栽培システムは、レタス12の栽培槽11と、栽培槽11に肥料成分が調整された給水を行う給水槽20と、給水槽20に肥料を供給する肥料タンク21と、レタス12の環境中にCO2を供給するCO2タンク18と、レタス12に人工光を照射する光源13と、レタス12の空気環境を調整するエアコン14と、レタス12に向けて気流を発生するファン15と、栽培槽11および給水槽20の給水情報を検出する各種センサ(水位センサ23、導電率センサ24、pHセンサ25)と、レタス12の環境中のCO2濃度を検出するCO2センサ17と、給水槽20(ポンプ26、28)、肥料タンク21(ポンプ27)、CO2タンク18(バルブ19)、光源13、エアコン14およびファン15を制御するコントローラ2と、を備えている。
【0048】
コントローラ2は、給水情報に基づき、栽培槽11への給水状態が一定となるように給水槽20(ポンプ26、28)および肥料タンク21(ポンプ26)を制御するとともに、レタス12の環境中のCO2濃度が、露地栽培でのCO2濃度よりも高い濃度となるようにCO2タンク18(バルブ19)を制御する。
【0049】
また、コントローラ2は、露地栽培での周期よりも短い周期で明期および暗期を繰り返すように、光源13を周期的に制御し、明期および暗期の周期と同期して、レタス12の環境温度および気流が変動するように、エアコン14およびファン15を周期的に制御する。
また、コントローラ2は、レタス12の環境中のCO2濃度が約1000ppmとなるように、CO2タンク18を制御する。
【0050】
具体的には、コントローラ2は、明期が5時間〜8時間の範囲内となり、暗期が5時間〜7時間の範囲内となるように、光源13を制御する。
また、コントローラ2は、明期での環境温度が約22℃となり、暗期での環境温度が約19℃となるように、エアコン14を制御する。
また、コントローラ2は、明期での気流が約0.5m/secとなり、暗期での気流が約0.3m/secとなるように、ファン15を制御する。
【0051】
また、この発明の実施の形態1(図1)に係るレタス栽培システムは、レタス12の環境湿度を調整する除湿機16を備えており、コントローラ2は、環境湿度が約60%となるように除湿機16を制御する。
さらに、光源13は、赤色LEDと、青色LEDと、紫外線LEDとを有し、コントローラ2は、赤色LEDの光量子量が約66%となり、青色LEDの光量子量が約22%となり、紫外線LEDの光量子量が約11%となるように光源13を制御する。
【0052】
上記構成に加えて、レタス12を結球させるための露地栽培環境での最適な4つの栽培条件、すなわち(1)「日長時間の設定」、(2)「栽培空調制御の設定」、(3)「気流の設定」、(4)「栽培養液とCO2濃度の設定」を、あらかじめ実証試験で求め、4条件を個別に満たし、且つ時間軸を基準に複合的に組み合わせて、トータル的にシーケンス制御することにより、トータル環境設定が可能となり、レタス12を確実に結球させることができる。
【0053】
さらに、明期および暗期を必要最小限の短い周期で繰り返すことにより、通常の露地栽培では3〜4回/年の収穫回数を、5〜6回/年の収穫回数に増やすことができ、閉鎖型完全人工光型植物工場1の設備投資を考慮しても、コストダウンを実現することが可能となる。また、衛生的にも安全な結球レタスを安定的に供給し続けることができる。
【0054】
同様に、この発明の実施の形態1(図1)に係る閉鎖型完全人工光型植物工場1によるレタス栽培方法は、レタス12が設置された栽培槽11への給水状態を一定に制御する第1の工程と、露地栽培でのCO2濃度よりも高い濃度となるように、レタス12の環境中のCO2濃度を制御する第2の工程と、レタス12に対し、露地栽培での周期よりも短い周期で明期および暗期を繰り返すように人工光を照射する第3の工程と、明期および暗期の周期と同期して、レタス12の環境温度および気流を変動させる第4の工程と、を備えている。
【0055】
第2の工程において、レタス12の環境中のCO2濃度は、約1000ppmに制御される。
第3の工程において、明期は、5時間〜8時間の範囲内に制御され、暗期は、5時間〜7時間の範囲内に制御される。
第4の工程において、明期での環境温度は、約22℃に制御され、暗期での環境温度は、約19℃に制御される。
【0056】
また、第4の工程において、明期での気流は、約0.5m/secに制御され、暗期での気流は、約0.3m/secに制御される。
また、レタス12の環境湿度を調整する第5の工程を備え、第5の工程において、環境湿度は、約60%に制御される。
【0057】
人工光は、赤色LED、青色LEDおよび紫外線LEDにより生成され、赤色LED、青色LEDおよび紫外線LEDの各光量子量の比率は、それぞれ、約66%、約22%および約11%に制御される。
【0058】
このように、システム管理シーケンサを導入した簡単な制御方法により、レタス12を結球させるための最適な栽培条件を満たすトータル環境設定制御が可能となるので、レタス12を確実に結球させることができる。
また、人工光を発生させるための光源13として、赤色、青色および紫外線のLEDを使用することにより、閉鎖型完全人工光型植物工場1において、容易にレタスを結球させることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 閉鎖型完全人工光型植物工場、2 コントローラ、6 光合成能力ピーク時刻、11 栽培槽、12 レタス、13 光源、14 エアコン、15 ファン、16 除湿機、17 CO2センサ、18 CO2タンク、19 バルブ、20 給水槽、21 肥料タンク、22 水タンク、23 水位センサ、24 導電率センサ、25 pHセンサ、26、27、28 ポンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉鎖型完全人工光型植物工場によるレタス栽培システムであって、
レタスの栽培槽と、
前記栽培槽に肥料成分が調整された給水を行う給水槽と、
前記給水槽に肥料を供給する肥料タンクと、
前記レタスの環境中にCO2を供給するCO2タンクと、
前記レタスに人工光を照射する光源と、
前記レタスの空気環境を調整するエアコンと、
前記レタスに向けて気流を発生するファンと、
前記栽培槽および前記給水槽の給水情報を検出する各種センサと、
前記レタスの環境中のCO2濃度を検出するCO2センサと、
前記給水槽、前記肥料タンク、前記CO2タンク、前記光源、前記エアコンおよび前記ファンを制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記給水情報に基づき、前記栽培槽への給水状態が一定となるように前記給水槽および前記肥料タンクを制御するとともに、
前記レタスの環境中のCO2濃度が、前記露地栽培でのCO2濃度よりも高い濃度となるように前記CO2タンクを制御し、
露地栽培での周期よりも短い周期で明期および暗期を繰り返すように、前記光源を周期的に制御し、
前記明期および前記暗期の周期と同期して、前記レタスの環境温度および前記気流が変動するように、前記エアコンおよび前記ファンを周期的に制御することを特徴とするレタス栽培システム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記レタスの環境中のCO2濃度が約1000ppmとなるように、前記CO2タンクを制御することを特徴とする請求項1に記載のレタス栽培システム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記明期が5時間〜8時間の範囲内となり、前記暗期が5時間〜7時間の範囲内となるように、前記光源を制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のレタス栽培システム。
【請求項4】
前記コントローラは、前記明期での環境温度が約22℃となり、前記暗期での環境温度が約19℃となるように、前記エアコンを制御することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のレタス栽培システム。
【請求項5】
前記コントローラは、前記明期での気流が約0.5m/secとなり、前記暗期での気流が約0.3m/secとなるように、前記ファンを制御することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のレタス栽培システム。
【請求項6】
前記レタスの環境湿度を調整する除湿機を備え、
前記コントローラは、前記環境湿度が約60%となるように前記除湿機を制御することを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のレタス栽培システム。
【請求項7】
前記光源は、赤色LEDと、青色LEDと、紫外線LEDとを有し、
前記コントローラは、前記赤色LEDの光量子量が約66%となり、前記青色LEDの光量子量が約22%となり、前記紫外線LEDの光量子量が約11%となるように前記光源を制御することを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のレタス栽培システム。
【請求項8】
閉鎖型完全人工光型植物工場によるレタス栽培方法であって、
レタスが設置された栽培槽への給水状態を一定に制御する第1の工程と、
前記露地栽培でのCO2濃度よりも高い濃度となるように、前記レタスの環境中のCO2濃度を制御する第2の工程と、
前記レタスに対し、露地栽培での周期よりも短い周期で明期および暗期を繰り返すように人工光を照射する第3の工程と、
前記明期および前記暗期の周期と同期して、前記レタスの環境温度および前記気流を変動させる第4の工程と、
を備えたことを特徴とするレタス栽培方法。
【請求項9】
前記第2の工程において、レタスの環境中のCO2濃度は、約1000ppmに制御されることを特徴とする請求項8に記載のレタス栽培方法。
【請求項10】
前記第3の工程において、前記明期は、5時間〜8時間の範囲内に制御され、前記暗期は、5時間〜7時間の範囲内に制御されることを特徴とする請求項8または請求項9に記載のレタス栽培方法。
【請求項11】
前記第4の工程において、前記明期での環境温度は、約22℃に制御され、前記暗期での環境温度は、約19℃に制御されることを特徴とする請求項8から請求項10までのいずれか1項に記載のレタス栽培方法。
【請求項12】
前記第4の工程において、前記明期での気流は、約0.5m/secに制御され、前記暗期での気流は、約0.3m/secに制御されることを特徴とする請求項8から請求項11までのいずれか1項に記載のレタス栽培方法。
【請求項13】
前記レタスの環境湿度を調整する第5の工程を備え、
前記第5の工程において、前記環境湿度は、約60%に制御されることを特徴とする請求項8から請求項12までのいずれか1項に記載のレタス栽培方法。
【請求項14】
前記人工光は、赤色LED、青色LEDおよび紫外線LEDにより生成され、
前記赤色LED、前記青色LEDおよび前記紫外線LEDの各光量子量の比率は、それぞれ、約66%、約22%および約11%に制御されることを特徴とする請求項8から請求項13までのいずれか1項に記載のレタス栽培方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−111073(P2013−111073A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263472(P2011−263472)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(599041606)三菱電機プラントエンジニアリング株式会社 (21)
【Fターム(参考)】