説明

レチナール誘導体で眼科的な状態を処置するための方法および組成物

可逆性の夜盲症を生じる化合物を用いて、視覚サイクルの経過の間に蓄積する排泄物の過剰産生に関連する眼科的状態を処置し得る。本発明者らは、例えば、黄斑の変性およびジストロフィーを処置するため、またはこのような眼科的状態に関連する症状を緩和するためにこのような化合物およびそれらの誘導体を用いる方法および組成物を記載する。このような化合物およびそれらの誘導体は、単剤療法として、または他の薬剤もしくは治療剤と組み合わせて用いられ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2004年6月23日に出願された米国仮特許出願第60/582,293号、2004年11月19日に出願された米国仮特許出願第60/629,695号、2005年3月11日に出願された米国仮特許出願第60/660,904号、2005年4月18日に出願された米国仮特許出願番号第60/672,405号の利益を主張する。これらのすべての開示は、その全体が参考として援用される。
【0002】
発明の分野
本明細書に記載の方法および組成物は、眼科的な状態の処置に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
視覚サイクルまたはレチノイドサイクルは、一連の光駆動性および酵素触媒性の反応であり、活性な視覚発色団ロドプシンがオール−トランス異性体(all−trans−isomer)に変換され、次いでこれが引き続いて再生される。このサイクルの一部はロッドの外部セグメント内で生じ、そしてこのサイクルの一部は、網膜色素上皮(RPE)中で生じる。このサイクルの成分は、種々のデヒドロゲナーゼおよびイソメラーゼ、ならびに光受容器とRPEとの間で中間体を輸送するためのタンパク質を含む。
【0004】
視覚サイクルに関連する他のタンパク質は、視覚サイクルレチノイド、例えば、オール−トランス・レチナール(all−trans−retinal)(atRAL)の過剰な産生から蓄積する化合物および毒性産物の輸送、除去および/または処分を担う。例えば、N−レチニリデン−N−レチニルエタノールアミン(A2E)は、オール−トランス・レチナールとホスファチジルエタノールアミンの縮合から生じる。このオレンジ放射蛍光の特定のレベルは光受容器およびRPEによって耐容されるが、過剰な量では、リポフスチンの産生、そして可能性としては網膜黄斑下のドルーゼン(drusen under the macula)を含む有害な効果が生じ得る。例えば、Finnemann,S.C.,Proc.Natl.Acad.Sci.,99:3842〜47(2002)(非特許文献1)を参照のこと。さらに、A2Eは、RPEに対して毒性であり得、これは網膜の損傷および破壊を生じ得る。ドルーゼン(結晶腔、drusen)は、細胞外貯蔵所であり、これはRPEの下で蓄積して、加齢性黄斑変性症を発症するリスク要因である。例えば、Crabb,J.W.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.,99:14682〜87(2002)(非特許文献2)を参照のこと。従って、視覚サイクルにおいて副作用を生じる毒性産物の除去および処分は重要である。なぜなら、いくつかの系統の証拠によって、毒性産物の過剰な蓄積が部分的に、黄斑変性症および網膜ジストロフィーに関連する症状を担っていることが示されているからである。
【0005】
加齢性黄斑変性症には2つの一般的なカテゴリーがある:浸出型および萎縮型。全ての症例のうち約90パーセントを占める萎縮型黄斑変性症はまた、萎縮性、非滲出性またはドルセノイド(drusenoid)黄斑変性症としても公知である。萎縮型黄斑変性症とともに、ドルーゼン(drusen)は代表的には、網膜におけるRPE組織の下に蓄積する。次いで、ドルーゼンが網膜黄斑における光受容器の機能を妨害する場合、失明が生じ得る。この形態の黄斑変性症は、何年にもわたって視覚を徐々に消失させる。
【0006】
症例の約10%を占める浸出型黄斑変性症はまた、脈絡膜血管新生、網膜下血管新生、滲出性または円板状の変性としても公知である。浸出型黄斑変性症では、異常な血管増殖が網膜黄斑の下で形成し得る;これらの血管は、網膜黄斑に血液および液体を漏出させて、光受容器細胞を損傷し得る。萎縮型の黄斑変性症が浸出型の黄斑変性症をもたらし得ることが研究によって、示されている。黄斑変性症の浸出型は、急速に進行して、中央の視覚に重篤な損傷を生じ得る。
【0007】
スタルガルト病はまた、スタルガルト黄斑変性(Stargardt Macular Dystrophy)または黄色斑眼底としても公知であり、黄斑ジストロフィーの最も頻繁に遭遇される若年性発現形態である。この状態は、ABCA4遺伝子(ABCR遺伝子としても公知)における常染色体劣性の形質として伝達されることが研究によって示される。この遺伝子は、膜を横切る物質の広範なスペクトルのエネルギー依存性の輸送に関与する膜貫通タンパク質をコードする遺伝子のABCスーパーファミリーのメンバーである。
【0008】
スタルガルト病の症状としては、年齢に伴い徐々に悪化する問題である中央の視覚の減少、および暗順応の困難性が挙げられ、その結果スタルガルト病に罹患する多くの人が20/100〜20/400の視覚損失を被る。スタルガルト病を有する人は一般に、オール−トランス・レチナールの潜在的な過剰産生のせいで明るい光を避けるようになる。
【0009】
スタルガルト病を診断する方法は、網膜黄斑における萎縮性または「ビートン−ブロンズ(beaten−bronze)」外観の悪化の観察、および萎縮性の外観の中央斑状病変を囲む網膜内で生じる多くの黄色っぽい白色のスポットの存在を含む。他の診断試験としては、網膜電図、電気眼位図および暗順応試験の使用が挙げられる。さらに、フルオレセイン血管造影を用いてこの診断を確認してもよい。後者の試験では、「暗(dark)」または「サイレント(silent)」の脈絡膜外観の観察は、黄斑変性症症の初期症状の1つである患者の網膜色素上皮におけるリポフスチンの蓄積に関連する。
【0010】
現在、黄斑変性症および黄斑ジストロフィーのための処置の選択肢は限られる。萎縮型のAMDを有する幾例かの患者は、高用量のビタミンおよびミネラルに対して反応している。さらに、ドルーゼンのレーザー光凝固は、萎縮型のAMDのさらに重篤な症状を導き得るドルーゼンの発症を防止または遅延させることが2〜3の研究によって示されている。結局、特定の研究では、体外レオフェレーシス(rheopheresis)が萎縮型のAMDを有する患者に利点があることが示されている。
【非特許文献1】Finnemann,S.C.,Proc.Natl.Acad.Sci.,99:3842〜47(2002)
【非特許文献2】Crabb,J.W.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.,99:14682〜87(2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、成功は限定されており、黄斑変性症および黄斑ジストロフィーに関連する失明を管理および制限するための新規な方法および処置の強力な要望が引き続き存在する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の要旨
本明細書に提示されるのは、(a)眼科の状態を処置する工程、および(b)このような眼科状態を予測する(例えば、リスク要因)かまたはそれに関連する症状を制御する工程のための方法、組成物および処方物である。1局面では、このような方法および処方物は、レチニル誘導体の使用を包含する。他の局面では、この眼科的な状態は、黄斑変性症、黄斑ジストロフィーおよび網膜ジストロフィーである。他の局面では、この方法および処方物を用いて、光から哺乳動物の眼を保護する;他の局面では、この方法および処方物を用いて、オール−トランス・レチナール、N−レチニリデン−N−レチニルエタノールアミン、N−レチニリデン−ホスファチジルエタノールアミン、ジヒドロ−N−レチニリデン−N−レチニル−ホスファチジルエタノールアミン、N−レチニリデン−N−レチニル−ホスファチジルエタノールアミン、ジヒドロ−N−レチニリデン−N−レチニル−エタノールアミン、N−レチニリデン−ホスファチジルエタノールアミン、リポフスチンの形成、地図状萎縮症(その暗点は非限定的な例の1つ)、光受容器変性および/または哺乳動物の眼におけるドルーゼンを限定する。他の局面では、このような方法および処方物は、暗視能力を障害し得る因子の使用を包含する。他の局面では、このような方法および処方物は、(a)患者の身体における血清レチノールのレベルを低下させる工程と、(b)患者の眼における酵素またはタンパク質の活性を調節する工程であって、このような酵素またはタンパク質が視覚サイクルに関与する、例えば、一例として、レシチン−レチノールアクリルトランスフェラーゼおよび/または細胞のレチンアルデヒド結合タンパク質である工程、あるいは(c)(a)および(b)の効果を組み合わせる工程とによって眼科的状態を処置するための因子の使用を包含する。さらに他の局面では、この方法および処方物は、他の処置様式と組み合わせて用いられる。
【0013】
1局面は、哺乳動物の眼においてオール−トランス・レチナールの形成を軽減するための方法であり、この方法は、式(I)の構造:
【0014】
【化6】

を有する第一の化合物であって、
ここでXは、NR、O、S、CHRからなる群より選択され;Rは(CHR−L−Rであり、ここでxが0、1、2または3であり;Lは単結合または−C(O)−であり;RはH、(C−C)アルキル、F、(C−C)フルオロアルキル、(C−C)アルコキシ、−C(O)OH、−C(O)−NH、−(C−C)アルキルアミン、−C(O)−(C−C)アルキル、−C(O)−(C−C)フルオロアルキル、−C(O)−(C−C)アルキルアミン、および−C(O)−(C−C)アルコキシからなる群より選択される部分であり;かつRが(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、アリール、(C−C)シクロアルキル、(C−C)シクロアルケニル、および複素環からなる群より選択される、1〜3個の独立して選択された置換基で必要に応じて置換される、Hまたは部分であり;ただしこれは、xが0であり、かつLが単結合である場合、RがHでないという条件下である、化合物;あるいはその活性な代謝物または薬学的に受容可能なプロドラッグもしくは溶媒和化合物の有効量を少なくとも1回該哺乳動物に投与する工程を包含する。
【0015】
別の局面では、哺乳動物の眼においてN−レチニリデン−N−レチニルエタノールアミン、N−レチニリデン−ホスファチジルエタノールアミン、ジヒドロ−N−レチニリデン−N−レチニル−ホスファチジルエタノールアミン、N−レチニリデン−N−レチニル−ホスファチジルエタノールアミン、ジヒドロ−N−レチニリデン−N−レチニル−エタノールアミン、および/またはN−レチニリデン−ホスファチジルエタノールアミンの形成を軽減するための方法であって、式(I)の構造を有する第一の化合物の有効量を少なくとも1回この哺乳動物に投与する工程を包含する方法である。
【0016】
別の局面では、哺乳動物に対して、式(I)の構造を有する第一の化合物の有効量を投与する工程を包含する、哺乳動物の眼においてリポフスチンの形成を軽減するための方法である。
【0017】
別の局面では、哺乳動物に対して、式(I)の構造を有する第一の化合物の有効量を投与する工程を包含する、哺乳動物の眼においてドルーゼンの形成を軽減するための方法である。
【0018】
別の局面では、哺乳動物に対して、式(I)の構造を有する第一の化合物の有効量を投与する工程を包含する、哺乳動物の眼においてレシチン−レチノールアクリルトランスフェラーゼを調整するための方法である。
【0019】
別の局面では、哺乳動物に対して、式(I)の構造を有する第一の化合物の有効量を投与する工程を包含する、哺乳動物の眼において黄斑変性症を処置するための方法である。この局面のさらなる実施形態では、黄斑変性症は、スタルガルト病を含む若年性の黄斑変性である。この局面のさらなる実施形態では、(a)黄斑変性は、乾燥型の(dry form)加齢性黄斑変性症であるか、または(b)黄斑変性症は、錐体−桿体ジストロフィーである。この局面のさらなる実施形態では、この黄斑変性症は、浸出型の加齢性黄斑変性症である。この局面のさらなる実施形態では、この黄斑変性症は、脈絡膜血管新生、網膜下血管新生、滲出性または円板状の変性である。
【0020】
別の局面は、哺乳動物の眼における地図状萎縮症(その暗点は非限定的な例の1つ)および/または光受容器変性の形成を軽減または広がりを制限するための方法であって、この方法は、式(I)の構造を有する第一の化合物の有効量をこの哺乳動物に投与する工程を包含する。
【0021】
別の局面は、哺乳動物の眼において網膜黄斑の下で異常な血管成長の形成を軽減するための方法であって、この方法は、式(I)の構造を有する第一の化合物の有効量をこの哺乳動物に投与する工程を包含する。
【0022】
別の局面は、哺乳動物の眼において光受容器を保護するための方法であって、この方法は、式(I)の構造を有する第一の化合物の有効量をこの哺乳動物に投与する工程を包含する。
【0023】
別の局面は、哺乳動物の眼を光から保護するための方法であって、この方法は、式(I)の構造を有する化合物の有効量をこの哺乳動物に投与する工程を包含する。
【0024】
別の局面は、哺乳動物の眼において視覚サイクルを破壊するための方法であって、この方法は、式(I)の構造を有する化合物の有効量をこの哺乳動物に投与する工程を包含する。
【0025】
別の局面は、動物において眼科的な疾患または状態を処置するための医薬の製造における式(I)の化合物の使用であって、ここで少なくとも1つの視覚サイクルのタンパク質の活性が、この疾患または状態の病理および/または症状に寄与する。この局面の1実施形態では、視覚サイクルタンパク質は、レシチン−レチノールアクリルトランスフェラーゼおよび細胞レチンアルデヒド結合タンパク質からなる群より選択される。この局面の別のまたはさらなる実施形態では、この眼科的疾患または状態は網膜症である。さらなるまたは別の実施形態では、この網膜症は、黄斑変性である。さらなるまたは別の実施形態では、この疾患または状態の症状は、オール−トランス・レチナール、N−レチニリデン−N−レチニルエタノールアミン、N−レチニリデン−ホスファチジルエタノールアミン、ジヒドロ−N−レチニリデン−N−レチニル−ホスファチジルエタノールアミン、N−レチニリデン−N−レチニル−ホスファチジルエタノールアミン、ジヒドロ−N−レチニリデン−N−レチニル−エタノールアミン、N−レチニリデン−ホスファチジルエタノールアミン、リポフスチンの形成、光受容器変性、地図状萎縮症(その暗点は非限定的な例の1つ)、脈絡膜血管新生および/または哺乳動物の眼におけるドルーゼンである。
【0026】
任意の上述の局面は、さらなる実施形態であって、(a)Xが、NRであり、ここでRがHまたは(C−C)アルキルであるか;(b)ここでxが0であるか;(c)xが1でありかつLが−C(O)−であるか;(d)Rが必要に応じて置換されたアリールであるか;(e)Rが必要に応じて置換されたヘテロアリールであるか;(f)XがNHであり、かつRは必要に応じて置換されたアリールである実施形態であって、これにはさらに、(i)アリール基が1つの置換基を有するか、(ii)アリール基が水素、OH、O(C−C)アルキル、NH(C−C)アルキル、O(C−C)フルオロアルキル、およびN[(C−C)アルキル]からなる群より選択される1つの置換基を有するか、(iii)このアリール基が、OHである1つの置換基を有するか、(v)このアリールがフェニルであるか、または(vi)このアリールがナフチルであるか;(g)この化合物が
【0027】
【化7】

、またはその活性な代謝物、薬学的に受容可能なプロドラッグもしくは溶媒和化合物であるか;(h)この化合物が4−ヒドロキシフェニルレチンアミドまたはその代謝物、または薬学的に受容可能なプロドラッグもしくは溶媒和化合物であるか;(i)この化合物が4−メトキシフェニルレチンアミドであるか、あるいは(j)4−オキソフェニレチニド、またはその代謝物、薬学的に受容可能なプロドラッグもしくは溶媒和化合物である実施形態を包含する。
【0028】
任意の上記の局面では、さらなる実施形態であって、(a)この化合物の有効量がこの哺乳動物に全身投与されるか;(b)この化合物の有効量が、この哺乳動物に経口投与されるか;(c)この化合物の有効量がこの哺乳動物に静脈内投与されるか;(d)この化合物の有効量がこの哺乳動物に対して眼科的に投与されるか;(e)この化合物の有効量がイオン泳動によって投与され;または(f)この化合物の有効量が注射によって哺乳動物に投与される実施形態である。
【0029】
任意の上述の局面では、上記哺乳動物がヒトであるさらなる実施形態であって、これには、(a)このヒトがスタルガルト病の変異体ABCA4遺伝子のキャリアであるか、またはこのヒトがスタルガルト病の変異ELOV4遺伝子を有するか、もしくは加齢性黄斑変性に関連する補体因子Hにおける遺伝的変化を有するか、あるいは(b)このヒトがスタルガルト病、劣性の網膜色素変性症、地図状萎縮症(その暗点は非限定的な例の1つ)、光受容器変性、萎縮型AMD、劣性錐体−桿体ジストロフィー、浸出型の加齢性黄斑変性症、錐体−桿体ジストロフィー、および網膜色素変性症からなる群より選択される、眼科的状態または形質を有する、実施形態を包含する。任意の上述の局面では、上記哺乳動物が、網膜変性の動物モデルであって、本明細書においてその例が提供される動物モデルであるさらなる実施形態である。
【0030】
任意の上述の局面では、上記化合物の有効量の複数回の投与を包含するさらなる実施形態であって、これには(i)複数の投与の間の時間が少なくとも1週間である;(ii)複数の投与の間の時間が少なくとも1日である;そして(iii)この化合物は基本的に毎日この哺乳動物に投与される;または(iv)この化合物が12時間ごとにこの哺乳動物に投与される、さらなる実施形態を包含する。さらなるまたは別の実施形態では、この方法は、休薬日を含み、この化合物の投与は、一時停止されるか、またはこの投与された化合物の用量は一時的に減少させられる;休薬日の終わりには、この化合物の投薬は再開される。この休薬日の長さは、2日〜1年にわたって変化し得る。
【0031】
任意の上述の局面は、一酸化窒素生成物の誘導因子、抗炎症剤、生理学的に受容可能な抗酸化剤、生理学的に受容可能なミネラル、負に荷電されたリン脂質、カロチノイド、スタチン、抗血管形成薬、マトリクス・メタロプロテイナーゼインヒビター、13−シス−レチノイン酸(13−シス−レチノイン酸の誘導体を含む)、11−シス−レチノイン酸(11−シス−レチノイン酸の誘導体を含む)、9−シス−レチノイン酸(9−シス−レチノイン酸の誘導体を含む)、およびレチニルアミン誘導体からなる群より選択される少なくとも1つのさらなる因子を投与する工程を包含するさらなる実施形態である。
さらなる実施形態では:
(a)さらなる因子が、一酸化窒素生成物の誘導因子である実施形態であって、これにはこの一酸化窒素生成物の誘導因子が、シトルリン、オルニチン、ニトロソ化Lアルギニン、ニトロシル化Lアルギニン、ニトロソ化NヒドロキシLアルギニン、ニトロシル化NヒドロキシLアルギニン、ニトロソ化Lホモアルギニンおよびニトロシル化Lホモアルギニンからなる群より選択される実施形態を包含する;
(b)さらなる因子が、抗炎症性剤である実施形態であって、これにはこの抗炎症性剤が、非ステロイド性抗炎症薬物、リポキシゲナーゼインヒビター、プレドニゾン、デキサメタゾンおよびシクロオキシゲナーゼインヒビターからなる群より選択される実施形態を包含する;
(c)さらなる因子が、少なくとも1つの生理学的に受容可能な抗酸化剤である実施形態であって、これにはこの生理学的に受容可能な抗酸化剤が、ビタミンC、ビタミンE、βカロチン、コエンザイムQ、および4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペラジン−N−オキシルからなる群より選択される実施形態、または(i)この少なくとも1つの生理学的に受容可能な抗酸化剤が、式(I)の構造を有する化合物とともに投与されるか、もしくは(ii)少なくとも2つの生理学的に受容可能な抗酸化剤が、式(I)の構造を有する化合物とともに投与される実施形態を包含する;
(d)さらなる因子が、少なくとも1つの生理学的に受容可能なミネラルである実施形態であって、これにはこの生理学的に受容可能なミネラルが、亜鉛(II)化合物、Cu(II)化合物およびセレニウム(II)化合物からなる群より選択される実施形態、または少なくとも1つの生理学的に受容可能な抗酸化剤をこの哺乳動物に投与する工程をさらに包含する実施形態を包含する;
(e)さらなる因子が、負に荷電されたリン脂質である実施形態であって、これにはこの負に荷電されたリン脂質がホスファチジルグリセロールである実施形態を包含する;
(f)さらなる因子が、カロチノイドである実施形態であって、これにはこのカロチノイドが、ルテインおよびゼアキサンチンからなる群より選択される実施形態を包含する;
(g)さらなる因子が、スタチンである実施形態であって、これにはこのスタチンがロスバスタチン、ピチバスタチン、シムバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン、メバスタチン、ベロスタチン、フルバスタチン、コンパクチン、ロバスタチン、ダルバスタチン、フルインドスタチン、アトルバスタチン、アトロバスタチンカルシウムおよびジヒドロコンパクチンからなる群より選択される実施形態を包含する;
(h)さらなる因子が、抗血管形成薬である実施形態であって、これにはこの抗血管形成薬が、Rhufab V2、トリプトファニル−tRNAシンテターゼ、抗VEGFペグ化アプタマー、スクアラミン(Squalamine)、酢酸アネコルタブ、コンブレタスタチン(Combretastatin)A4プロドラッグ、MacugenTM、ミフェプリストン、スブテノン、トリアムシノロン・アセトニド、硝子体内の結晶性トリアムシノロン・アセトニド、AG3340、フルオシノロン・アセトニドおよびVEGF−Trapである実施形態を包含する;
(i)さらなる因子が、マトリクス・メタロプロテイナーゼ・インヒビターである実施形態であって、これにはこのマトリクス・メタロプロテイナーゼ・インヒビターが、メタロプロテイナーゼの組織インヒビター、α−マクログロブリン、テトラサイクリン、ヒドロキサメート、キレート剤、合成のMMPフラグメント、スクシニルメルカプトプリン、ホスホンアミデートおよびヒドロキサム酸である実施形態を包含する;
(j)さらなる因子が、13−シス−レチノイン酸(13−シス−レチノイン酸の誘導体を含む)、11−シス−レチノイン酸(11−シス−レチノイン酸の誘導体を含む)、9−シス−レチノイン酸(9−シス−レチノイン酸の誘導体を含む)である実施形態である;
(k)さらなる因子が、レチニルアミン誘導体である実施形態であって、この誘導体としてはオール−トランス・レチニルアミン誘導体、13−シス−レチノイン酸、11−シス−レチニルアミン誘導体、または9−シス−レチニルアミン誘導体が挙げられる;
(l)さらなる因子を、(i)式(I)の構造を有する化合物の投与の前に、(ii)式(I)の構造を有する化合物の投与に続いて、(iii)式(I)の構造を有する化合物の投与と同時に、または(iv)式(I)の構造を有する化合物の投与の前後の両方で投与するか;あるいは
(m)式(I)の構造を有するさらなる因子および化合物が、同じ薬学的組成物中で投与される。
【0032】
任意の上述の局面では、哺乳動物に対する体外レオフェレーシスの処置を包含するさらなる実施形態である。
【0033】
任意の上述の局面では、限定された網膜移動、光線力学療法、ドルーゼンレーザー処置、黄斑孔手術、黄斑移動手術、ファイ・モーション(Phi−Motion)、陽子ビーム治療、網膜はく離および硝子体の手術、強膜バックル、黄斑下手術、経瞳孔温熱療法、光化学系I療法、マイクロカレント刺激(MicroCurrent Stimulation)、抗炎症性剤、RNA干渉、眼の医薬、例えば、ヨウ化ホスホリン、またはエコチオフェート、または炭酸脱水酵素阻害薬、マイクロチップ移植、幹細胞療法、遺伝子置換療法、リボザイム遺伝子療法、光受容器/網膜細胞移動、および鍼治療からなる群より選択される手技的な治療の処置を包含するさらなる実施形態である。
【0034】
任意の上述の局面では、哺乳動物の眼からドルーゼン(drusen)を除去するためのレーザー光凝固の使用を包含するさらなる実施形態である。
【0035】
任意の上述の局面では、式(I)の構造を有する第二の化合物であって、上記の第一の化合物がこの第二の化合物とは異なる化合物の有効量を少なくとも1回哺乳動物に投与する工程を包含するさらなる実施形態である。
【0036】
任意の上述の局面では、(a)哺乳動物の眼におけるドルーゼンの形成をモニタリングする工程;(b)自己蛍光によって哺乳動物の眼におけるリポフスチンのレベルを測定する工程;(c)哺乳動物の眼における視覚の鋭敏さを測定する工程;(d)哺乳動物の眼に対する視覚野検査を行う工程であって、これには視覚野検査がHumphrey視覚野検査である実施形態を含む工程;(e)哺乳動物の眼におけるN−レチニリデン−ホスファチジルエタノールアミン、ジヒドロ−N−レチニリデン−N−レチニル−ホスファチジルエタノールアミン、N−レチニリデン−N−レチニル−ホスファチジルエタノールアミン、ジヒドロ−N−レチニリデン−N−レチニル−エタノールアミン、および/またはN−レチニリデン−ホスファチジルエタノールアミンの自己蛍光または吸収スペクトルを測定する工程;(f)読み取り速度および/または読み取り鋭敏さの検査を行う工程;(g)暗点のサイズを測定する工程;あるいは(h)地図状萎縮病変のサイズおよび数を測定する工程;を包含するさらなる実施形態である。
【0037】
任意の上述の局面では、哺乳動物がスタルガルト病の変異体ABCA4対立遺伝子のキャリアであるか、スタルガルト病の変異体ELOV4対立遺伝子を有するか、または加齢性黄斑変性症に関連する補体因子Hにおける遺伝的変化を有するかを決定する工程を包含するさらなる実施形態である。
【0038】
任意の前述の局面では、網膜変性のさらなる処置を包含するさらなる実施形態である。
【0039】
別の局面では、以下の構造:
【0040】
【化8】

を有する化合物であって、
が、NR、O、S、CHRからなる群より選択され;Rが(CHR−L−Rであり、xが0、1、2または3であり;Lが単結合または−C(O)−であり;RがH、(C−C)アルキル、F、(C−C)フルオロアルキル、(C−C)アルコキシ、−C(O)OH、−C(O)−NH、−(C−C)アルキルアミン、−C(O)−(C−C)アルキル、−C(O)−(C−C)フルオロアルキル、−C(O)−(C−C)アルキルアミン、および−C(O)−(C−C)アルコキシからなる群より選択される部分であり;かつRが、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、アリール、(C−C)シクロアルキル、(C−C)シクロアルケニルおよび複素環からなる群より選択される、1〜3個の独立して選択された置換基で必要に応じて置換される、Hまたは部分である化合物であって;ただしこれは、xが0であり、かつLが単結合である場合、RがHでないという条件下である、化合物;あるいはその活性な代謝物、または薬学的に受容可能なプロドラッグもしくは溶媒和化合物の有効量;ならびに薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物である。
【0041】
この薬学的組成物の局面のさらなる実施形態では、(a)上記の薬学的に受容可能なキャリアは、眼科的な投与に適切であるか;(b)この薬学的に受容可能なキャリアは、リゾホスファチジルコリン、モノグリセリドおよび脂肪酸を含むか;(c)この薬学的に受容可能なキャリアはさらに、粉末、甘味料および保湿剤を含むか;(d)この薬学的に受容可能なキャリアは、コーン油および非イオン性界面活性剤を含むか;(e)この薬学的に受容可能なキャリアは、ジミリストイルホスファチジルコリン、ダイズ油、t−ブチルアルコールおよび水を含むか;(f)この薬学的に受容可能なキャリアは、エタノール、アルコキシル化キャスターオイルおよび非イオン性サーファクタントを含むか;(g)この薬学的に受容可能なキャリアは、徐放性処方物を含むか;または(h)この薬学的に受容可能なキャリアは、急速放出処方物を含む。
【0042】
薬学的組成物の局面のさらなる実施形態では、この薬学的組成物はさらに、一酸化窒素生成物、抗炎症剤、生理学的に受容可能な抗酸化剤、生理学的に受容可能なミネラル、負に荷電されたリン脂質、カロチノイド、スタチン、抗血管形成薬、マトリクス・メタロプロテイナーゼインヒビター、13−シス−レチノイン酸(13−シス−レチノイン酸の誘導体を含む)、11−シス−レチノイン酸(11−シス−レチノイン酸の誘導体を含む)、9−シス−レチノイン酸(9−シス−レチノイン酸の誘導体を含む)、およびレチニルアミン誘導体からなる群より選択される少なくとも1つのさらなる因子の有効量を含む。さらなる実施形態では、(a)このさらなる因子は、生理学的に受容可能な抗酸化剤であるか;(b)このさらなる因子は、一酸化窒素生成物の誘導因子であるか;(c)このさらなる因子は、抗炎症性剤であるか;(d)このさらなる因子は、生理学的に受容可能なミネラルであるか;(e)このさらなる因子は、負に荷電されたリン脂質であるか;(f)このさらなる因子は、カロチノイドであるか;(g)このさらなる因子は、スタチンであるか;(h)このさらなる因子は、抗血管形成薬であるか;(i)このさらなる因子は、マトリクス・メタロプロテイナーゼ・インヒビターであるか;または(j)このさらなる因子は、13−シス−レチノイン酸である。
【0043】
別の局面では、哺乳動物の身体におけるレチノールの血清レベルを調節する工程を包含する網膜症を処置するための方法であって、これには、(a)この網膜症が、スタルガルト病を含む若年性黄斑変性であるか;(b)この網膜症が、萎縮型の加齢性黄斑変性であるか;(c)この網膜症が、錐体−桿体ジストロフィーであるか;(d)この網膜症が、網膜色素変性症であるか;(e)この網膜症が、浸出型の加齢性黄斑変性症であるか;(f)この網膜症が地図状萎縮症および/または光受容器変性であるかまたはそれを示すか;あるいは(g)この網膜症が、リポスフシンに基づく網膜変性である、実施形態を包含する。
【0044】
上述の局面のある実施形態では、この方法は、以下の構造:
【0045】
【化9】

を有する第一の化合物であって、
が、NR、O、S、CHRからなる群より選択され;Rが(CHR−L−Rであり、xが0、1、2または3であり;Lが単結合または−C(O)−であり;RがH、(C−C)アルキル、F、(C−C)フルオロアルキル、(C−C)アルコキシ、−C(O)OH、−C(O)−NH、−(C−C)アルキルアミン、−C(O)−(C−C)アルキル、−C(O)−(C−C)フルオロアルキル、−C(O)−(C−C)アルキルアミン、および−C(O)−(C−C)アルコキシからなる群より選択される部分であり;かつRが、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、アリール、(C−C)シクロアルキル、(C−C)シクロアルケニル、および複素環からなる群より選択される、1〜3個の独立して選択された置換基で必要に応じて置換される、Hまたは部分である化合物であって;ただしこれは、xが0であり、かつLが単結合である場合、RがHでないという条件下である化合物;あるいはその活性な代謝物、または薬学的に受容可能なプロドラッグもしくは溶媒和化合物の有効量を少なくとも1回この哺乳動物に投与する工程をさらに包含する。
【0046】
なおさらなる実施形態では、この方法はさらに、一酸化窒素生成物の誘導因子、抗炎症剤、薬学的に受容可能な抗酸化剤、薬学的に受容可能なミネラル、負に荷電されたリン脂質、カロチノイド、スタチン、抗血管形成薬、マトリクス・メタロプロテイナーゼインヒビター、13−シス−レチノイン酸(13−シス−レチノイン酸の誘導体を含む)、11−シス−レチノイン酸(11−シス−レチノイン酸の誘導体を含む)、9−シス−レチノイン酸(9−シス−レチノイン酸の誘導体を含む)、およびレチニルアミン誘導体からなる群より選択される少なくとも1つのさらなる因子を投与する工程を包含する。さらなる実施形態は、(a)このさらなる因子が、一酸化窒素生成物の誘導因子であるか;(b)このさらなる因子が、抗炎症性剤であるか;(c)このさらなる因子が、少なくとも1つの生理学的に受容可能な抗酸化剤であるか;(d)このさらなる因子が、少なくとも1つの生理学的に受容可能なミネラルであるか;(e)このさらなる因子が、負に荷電されたリン脂質であるか;(f)このさらなる因子が、カロチノイドであるか;(g)このさらなる因子が、スタチンであるか;(h)このさらなる因子が、抗血管形成薬であるか;(i)このさらなる因子が、マトリクス・メタロプロテイナーゼ・インヒビターであるか;または(j)このさらなる因子が、13−シス−レチノイン酸である方法を包含する。
【0047】
上述の局面のさらなる実施形態では、網膜症を処置するための方法はさらに、哺乳動物の眼においてレシチン−レチノール・アシルトランスフェラーゼを調節する工程をさらに包含し、これには、(a)この網膜症が、スタルガルト病を含む若年性黄斑変性であるか;(b)この網膜症が、萎縮型の加齢性黄斑変性であるか;(c)この網膜症が、錐体−桿体ジストロフィーであるか;(d)この網膜症が、網膜色素変性症であるか;(e)この網膜症が、浸出型の加齢性黄斑変性症であるか;(f)この網膜症が地図状萎縮症および/または光受容器変性であるかまたはそれを示すか;あるいは(g)この網膜症が、リポスフシンに基づく網膜変性である実施形態を包含する。さらなる実施形態では、この方法はさらに、以下の構造:
【0048】
【化10】

を有する第一の化合物であって、
が、NR、O、S、CHRからなる群より選択され;Rが(CHR−L−Rであり、xが0、1、2または3であり;Lが単結合または−C(O)−であり;RがH、(C−C)アルキル、F、(C−C)フルオロアルキル、(C−C)アルコキシ、−C(O)OH、−C(O)−NH、−(C−C)アルキルアミン、−C(O)−(C−C)アルキル、−C(O)−(C−C)フルオロアルキル、−C(O)−(C−C)アルキルアミン、および−C(O)−(C−C)アルコキシからなる群より選択される部分であり;かつRが、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、アリール、(C−C)シクロアルキル、(C−C)シクロアルケニル、および複素環からなる群より選択される、1〜3個の独立して選択された置換基で必要に応じて置換される、Hまたは部分である化合物であって;ただしこれは、xが0であり、かつLが単結合である場合、RがHでないという条件下である化合物;あるいはその活性な代謝物、または薬学的に受容可能なプロドラッグもしくは溶媒和化合物の有効量を少なくとも1回この哺乳動物に投与する工程をさらに包含する。
【0049】
なおさらなる実施形態では、この方法はさらに、一酸化窒素生成物の誘導因子、抗炎症剤、生理学的に受容可能な抗酸化剤、生理学的に受容可能なミネラル、負に荷電されたリン脂質、カロチノイド、スタチン、抗血管形成薬、マトリクス・メタロプロテイナーゼインヒビター、13−シス−レチノイン酸(13−シス−レチノイン酸の誘導体を含む)、11−シス−レチノイン酸(11−シス−レチノイン酸の誘導体を含む)、9−シス−レチノイン酸(9−シス−レチノイン酸の誘導体を含む)、およびレチニルアミン誘導体からなる群より選択される少なくとも1つのさらなる因子を投与する工程を包含する。さらなる実施形態は、(a)このさらなる因子が、一酸化窒素生成物の誘導因子であるか;(b)このさらなる因子が、抗炎症性剤であるか;(c)このさらなる因子が、少なくとも1つの生理学的に受容可能な抗酸化剤であるか;(d)このさらなる因子が、少なくとも1つの生理学的に受容可能なミネラルであるか;(e)このさらなる因子が、負に荷電されたリン脂質であるか;(f)このさらなる因子が、カロチノイドであるか;(g)このさらなる因子が、スタチンであるか;(h)このさらなる因子が、抗血管形成薬であるか;(i)このさらなる因子が、マトリクス・メタロプロテイナーゼ・インヒビターであるか;または(j)このさらなる因子が、13−シス−レチノイン酸である方法を包含する。
【0050】
別の局面では、網膜症を処置するための方法であって、この方法は、哺乳動物の暗視能力を損なう因子をこの哺乳動物に投与する工程を包含し、これには、(a)この網膜症が、スタルガルト病を含む若年性黄斑変性であるか;(b)この網膜症が、萎縮型の加齢性黄斑変性であるか;(c)この網膜症が、錐体−桿体ジストロフィーであるか;(d)この網膜症が、網膜色素変性症であるか;(e)この網膜症が、浸出型の加齢性黄斑変性症であるか;(f)この網膜症が地図状萎縮症および/または光受容器変性であるかまたはそれを示すか;あるいは(g)この網膜症が、リポスフシンに基づく網膜変性である実施形態を包含する。さらなる実施形態では、この方法はさらに、以下の構造:
【0051】
【化11】

を有する第一の化合物であって、
が、NR、O、S、CHRからなる群より選択され;Rが(CHR−L−Rであり、xが0、1、2または3であり;Lが単結合または−C(O)−であり;RがH、(C−C)アルキル、F、(C−C)フルオロアルキル、(C−C)アルコキシ、−C(O)OH、−C(O)−NH、−(C−C)アルキルアミン、−C(O)−(C−C)アルキル、−C(O)−(C−C)フルオロアルキル、−C(O)−(C−C)アルキルアミン、および−C(O)−(C−C)アルコキシからなる群より選択される部分であり;かつRが、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、アリール、(C−C)シクロアルキル、(C−C)シクロアルケニル、および複素環からなる群より選択される、1〜3個の独立して選択された置換基で必要に応じて置換される、Hまたは部分である化合物であって;ただしこれは、xが0であり、かつLが単結合である場合、RがHでないという条件下である化合物;あるいはその活性な代謝物、または薬学的に受容可能なプロドラッグもしくは溶媒和化合物の有効量を少なくとも1回この哺乳動物に投与する工程をさらに包含する。
【0052】
なおさらなる実施形態では、この方法はさらに、一酸化窒素生成物の誘導因子、抗炎症剤、生理学的に受容可能な抗酸化剤、生理学的に受容可能なミネラル、負に荷電されたリン脂質、カロチノイド、スタチン、抗血管形成薬、マトリクス・メタロプロテイナーゼインヒビター、13−シス−レチノイン酸(13−シス−レチノイン酸の誘導体を含む)、11−シス−レチノイン酸(11−シス−レチノイン酸の誘導体を含む)、9−シス−レチノイン酸(9−シス−レチノイン酸の誘導体を含む)、およびレチニルアミン誘導体からなる群より選択される少なくとも1つのさらなる因子を投与する工程を包含する。さらなる実施形態は、(a)このさらなる因子が、一酸化窒素生成物の誘導因子であるか;(b)このさらなる因子が、抗炎症性剤であるか;(c)このさらなる因子が、少なくとも1つの生理学的に受容可能な抗酸化剤であるか;(d)このさらなる因子が、少なくとも1つの生理学的に受容可能なミネラルであるか;(e)このさらなる因子が、負に荷電されたリン脂質であるか;(f)このさらなる因子が、カロチノイドであるか;(g)このさらなる因子が、スタチンであるか;(h)このさらなる因子が、抗血管形成薬であるか;(i)このさらなる因子が、マトリクス・メタロプロテイナーゼ・インヒビターであるか;または(j)このさらなる因子が、13−シス−レチノイン酸である方法を包含する。
【0053】
別の局面では、薬学的組成物であって、(a)哺乳動物の眼におけるN−レチニリデン−N−レチニルエタノールアミン、N−レチニリデン−ホスファチジルエタノールアミン、ジヒドロ−N−レチニリデン−N−レチニル−ホスファチジルエタノールアミン、N−レチニリデン−−N−レチニル−ホスファチジルエタノールアミン、ジヒドロ−N−レチニリデン−N−レチニル−エタノールアミン、および/またはN−レチニリデン−ホスファチジルエタノールアミンの形成を軽減する工程、(b)哺乳動物の眼におけるリポフスチンの形成を軽減する工程、(c)哺乳動物の眼におけるドルーゼンの形成を軽減する工程、(d)哺乳動物の眼における黄斑変性を予防する工程、(e)哺乳動物の眼におけるオール−トランス−レチナールの形成を軽減する工程、(f)哺乳動物の眼における視覚サイクルを破壊する工程、および/または(g)哺乳動物の眼を光から保護する工程のための薬学的組成物であって、式(I)の構造を有する少なくとも1つの化合物の有効量および薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物である。
【0054】
化合物であって、限定はしないが式(I)の構造を有する化合物を含む化合物であり、これは、(a)哺乳動物の眼におけるN−レチニリデン−N−レチニルエタノールアミン、N−レチニリデン−ホスファチジルエタノールアミン、ジヒドロ−N−レチニリデン−N−レチニル−ホスファチジルエタノールアミン、N−レチニリデン−N−レチニル−ホスファチジルエタノールアミン、ジヒドロ−N−レチニリデン−N−レチニル−エタノールアミン、および/またはN−レチニリデン−ホスファチジルエタノールアミンの形成を軽減する工程、(b)哺乳動物の眼におけるリポフスチンの形成を軽減する工程、(c)哺乳動物の眼におけるドルーゼンの形成を軽減する工程、(d)哺乳動物の眼における黄斑変性を予防する工程、(e)哺乳動物の眼におけるオール−トランス−レチナールの形成を軽減する工程、および/または(f)哺乳動物の眼を光から保護する工程において用途を見出す化合物は、以下の特性の少なくとも1つを有する:哺乳動物の眼において視覚サイクルを破壊する能力、哺乳動物において可逆性の夜盲症を生じる能力、哺乳動物の眼において受容可能なバイオアベイラビリティー、および哺乳動物の眼に対して限定的でしかなく受容可能な刺激を生じる能力。
【0055】
別のまたはさらなる局面では、哺乳動物の眼において地図状萎縮および/または光受容器変性の形成を軽減するかまたはその伝播を制限するための方法であって、式(I)の構造を有する第一の化合物の有効量を少なくとも1回この哺乳動物に投与する工程を包含する。さらなるまたは別の実施形態では、一酸化窒素生成物の誘導因子、抗炎症剤、生理学的に受容可能な抗酸化剤、生理学的に受容可能なミネラル、負に荷電されたリン脂質、カロチノイド、スタチン、抗血管形成薬、マトリクス・メタロプロテイナーゼインヒビター、13−シス−レチノイン酸(13−シス−レチノイン酸の誘導体を含む)、11−シス−レチノイン酸(11−シス−レチノイン酸の誘導体を含む)、9−シス−レチノイン酸(9−シス−レチノイン酸の誘導体を含む)、およびレチニルアミン誘導体からなる群より選択される少なくとも1つのさらなる因子を投与する工程をさらに包含する方法である。
【0056】
式(I)の構造を有する化合物の投与を包含する、任意の上記の方法のさらなる実施形態または別の実施形態では、哺乳動物の読み取り速度および/または読み取りの鋭敏さを測定する工程をさらに包含する方法である。
【0057】
式(I)の構造を有する化合物の投与を包含する、任意の上記の方法のさらなる実施形態または別の実施形態では、哺乳動物の眼における暗点の数および/またはサイズを測定する工程をさらに包含する方法である。
【0058】
式(I)の構造を有する化合物の投与を包含する、任意の上記の方法のさらなる実施形態または別の実施形態では、哺乳動物の眼における地図状萎縮症病変のサイズおよび/または数を測定する工程をさらに包含する方法である。
【0059】
式(I)の構造を有する化合物の投与を包含する、任意の上記の方法のさらなる実施形態または別の実施形態では、哺乳動物の眼におけるビタミンAのエステル化を軽減する工程をさらに包含する方法である。
【0060】
式(I)の構造を有する化合物の投与を包含する、任意の上記の方法のさらなる実施形態または別の実施形態では、哺乳動物の眼における網膜色素上皮においてリポフスチンの自己蛍光を低下させる工程をさらに包含する方法である。
【0061】
式(I)の構造を有する化合物の投与を包含する、任意の上記の方法のさらなる実施形態または別の実施形態では、哺乳動物の眼におけるLRATから下流の視覚サイクルタンパク質の基質の濃度を減少させる工程をさらに包含する方法である。さらなる実施形態または別の実施形態では、この下流の視覚サイクルタンパク質は、シャペロンタンパク質、イソメラーゼおよびデヒドロゲナーゼからなる群より選択される。
【0062】
さらなる局面では、哺乳動物の眼におけるLRATから下流の視覚サイクルタンパク質の基質の濃度を減少させるための方法であって、この方法は、式(I)の構造を有する第一の化合物の有効量を少なくとも1回この哺乳動物に投与する工程を包含する。さらなる実施形態または別の実施形態では、この下流の視覚サイクルタンパク質は、シャペロンタンパク質、イソメラーゼおよびデヒドロゲナーゼからなる群より選択される。
【0063】
さらなる局面では、哺乳動物の眼におけるビタミンAのエステル化を軽減するための方法であって、この方法は、式(I)の構造を有する第一の化合物の有効量を少なくとも1回この哺乳動物に投与する工程を包含する。
【0064】
別の局面では、細胞性レチンアルデヒド結合タンパク質(Cellular Retinaldehyde Binding Protein)(CRALBP)の活性を調節するための方法であって、CRALBPと式(I)の構造を有する化合物とを接触させる工程を包含する方法である。さらなる実施形態では、この化合物は、細胞性レチンアルデヒド結合タンパク質と直接接触する。さらなる実施形態では、このような調節は、インビボで生じる。別の実施形態では、このような調節はインビトロで生じる。さらなる実施形態では、このような調節は、哺乳動物の眼で生じる。さらなる実施形態では、このような調節は、眼科的な疾患または状態を有する哺乳動物に対して治療的な利点を提供する。さらなる実施形態では、このような調節は、哺乳動物における眼科的疾患または状態に関連する少なくとも1つの症状を改善するかさもなければ緩和する。さらなる実施形態または別の実施形態では、この疾患または状態は、黄斑変性、黄斑ジストロフィー、網膜症からなる群より選択される。さらなる実施形態または別の実施形態では、この化合物は、4−ヒドロキシフェニルレチンアミド;あるいはその代謝物、または薬学的に受容可能なプロドラッグもしくは溶媒和化合物である。さらなる実施形態または別の実施形態では、この化合物は、4−メトキシフェニルレチンアミド;あるいはその代謝物、または薬学的に受容可能なプロドラッグもしくは溶媒和化合物である。
【0065】
別の局面は、式(I)の化合物によって直接調節されない視覚サイクルタンパク質の活性を直接調節するための方法である。このような局面の1実施形態では、式(I)の化合物は、1つの視覚サイクルタンパク質を直接調節して(このようなタンパク質に対して結合することによって、またはこのようなタンパク質のリガンドに対して結合することによって、ここでこの結合は、水素結合を含む、化学的な結合であっても、物理的な結合であっても、またはその組み合わせであってもよい)、その視覚サイクルタンパク質の予想される反応産物の濃度を低下させる。さらなる実施形態では、式(I)の化合物によって直接調節される視覚サイクルタンパク質は、LRATである。さらなる実施形態では、式(I)の化合物によるLRATの直接調節は、オール−トランス−レチニル・エステルの濃度を減少させる。さらなる実施形態では、オール−トランス−レチニル・エステルの濃度の減少は、このような下流の視覚サイクルタンパク質の基質の濃度を低下させることによって下流の視覚サイクルタンパク質の活性を間接的に調節する。さらなる実施形態では、このような下流の視覚サイクルタンパク質としては、イソメラーゼ、シャペロンタンパク質、およびデヒドロゲナーゼが挙げられる。
【0066】
本明細書に記載される方法および組成物の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになる。しかし、この詳細な説明および特定の実施例は、特定の実施形態を示しているが、例示の目的で与えられるに過ぎないことが理解されるべきである。なぜなら、本発明の趣旨および範囲内の種々の変化および改変が、この詳細な説明から当業者に明らかになるからである。
【0067】
特許、特許出願および刊行物を含む、本明細書に引用される全ての参照文献は、その全体が参照によって本明細書に援用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0068】
発明の詳細な説明
式(I)の構造を有する化合物は、ガンの処置のために用いられている。詳細には、この化合物N−(4−ヒドロキシフェニル)レチンアミドはまた、フェニレチニド、HPRまたは4−HPRとしても公知であり、乳癌の処置のために広く試験されている。Moonら、Cancer Res.,39:1339〜46(1979)。フェネレチニドは、米国特許第4,190,594号および同第4,323,581号に記載されている。さらに、フェネレチニドを調製するための他の方法は公知であり、そしてさらに、フェネレチニドの多くのアナログが調製されて、ガン処置におけるそれらの有効性について試験されている。例えば、米国特許出願公開第2004/0102650号;米国特許第6,696,606号;Villeneuve & Chan,Tetrahedron Letters,38:6489〜92(1997);Um,S.J.ら、Chem.Pharm.Bull.,52:501〜506(2004)を参照のこと。しかし、懸念なのは、このような化合物がヒト患者において、暗視能力の障害を含む、特定の副作用を生じるという一般的な傾向である。例えば、Decensi、Aら、J.Natl.Cancer Inst.,86:1−5−110(1994);Mariani,L.,Tumori.,82:444〜49(1996)を参照のこと。近年の研究によってまた、N−(4−ヒドロキシフェニル)レチンアミドが、特定の培養されたヒトRPE細胞において天然様の分化を誘導し得るといういくつかの証拠が提供されている。Chen,S.ら、J.Neurochem.,84:972〜81(2003)を参照のこと。
【0069】
驚くべき事に、式(I)の化合物を用いて、限定はしないが、萎縮型の加齢性黄斑変性およびスタルガルト病を含む、種々の黄斑変性およびジストロフィーに罹患しているかまたはその疑いがある患者に対して利点を提供し得る。詳細には、式(I)の化合物は、このようなヒト患者に対して以下の利点のうちの少なくともいくつかを提供する:オール−トランス−レチナール(all−trans−retinal)(atRAL)の量の減少、A2Eの形成の減少、リポフスチンの形成の減少、ドルーゼンの形成の減少、および光感受性の減少。眼科において、そして眼科の組織においては、部分的にはこれらの組織におけるオール−トランス−レチナールの過剰な蓄積の減少に起因する、A2Eを形成する傾向の低下がある。A2E自体がRPE(網膜細胞死を導き得る)に対して細胞傷害性であるので、式(I)の構造を有する化合物(本明細書に記載されるように、単独で、または他の因子と組み合わせて)の投与は、細胞傷害性因子であるA2Eの蓄積の速度を低下させ、これによって、患者に利点を提供する。さらに、A2Eは、リポフスチンの主な発蛍光団であるので、眼科組織および眼の組織におけるA2Eの量の減少はまた、このような組織においてリポフスチンを蓄積させる傾向の低下を生じる。従って、本明細書に記載される方法および組成物に関しては、リポフスチンに基づく処置であるとみなすことができる。なぜなら、式(I)の構造を有する化合物の投与は(本明細書に記載されるように、単独、または他の因子と組み合わせて)、眼科および/または眼の組織においてリポフスチンの蓄積を減少するか、低下させるか、そうでなければ影響するからである。眼科および/または眼の組織におけるリポフスチンの蓄積速度の低下は、黄斑変性および/またはジストロフィーのような疾患または状態を有する患者に利点である。
【0070】
さらに、萎縮型の加齢性黄斑変性はしばしば浸出型の加齢性黄斑変性の前駆体であるので、式(I)の化合物の使用はまた、この後者の眼科的状態の予防的治療として用いられ得る。
【0071】
興味深いことに、式(I)の化合物および/またはその誘導体はまた、視覚サイクルにおける酵素またはタンパク質に対して効果を有する。例えば、網膜色素上皮におけるエステル化は、レシチンからレチノールへのアシル基の移行を触媒するレシチン−レチノールアセチルトランスフェラーゼ(LRAT)に関与する。式(I)および/またはその誘導体の投与は、LRATの活性を調節し、これは種々の黄斑変性およびジストロフィーに罹患しているかまたはその疑いがある患者に利点であり得る。
【0072】
血清中のビタミンAは、肝外の標的組織に送達されて、膜結合した酵素LRATによって直ちにエステル化される。LRATは、膜のリン脂質からレチノールへの脂肪酸の移行を触媒して、それによって全ての組織におけるビタミンAの主な貯蔵型であるオール−トランス・レチニルエステルを生成する。RPEでは、オール−トランス・レチニルエステルは、光感受性の可視の蛍光団前駆体である11−シスレチノールを生成する、固有のイソメラーゼ酵素の唯一の基質である。網膜におけるこのレチノイドの引き続く酸化およびオプシンアポタンパク質に対する結合体化によって、ロドプシンが生じる。
【0073】
N−4−(ヒドロキシフェニル)レチンアミドは、肝臓および小腸から調製された膜におけるLRAT活性の顕著な阻害を生じることが示されている。さらに、本発明者らは、眼のRPEにおけるLRAT活性がHPRによって阻害されるということを初めて実証した(例えば、実施例13)。この実施例で考察されるとおり、HPRの投与はまた、血清レチノールおよびレチノール結合タンパク質(RBP)の減少を伴う。従って、HPRの全身的な効果(例えば、血清レチノールレベルの減少)に加えて、また細胞内の酵素特異的な効果(例えば、RPE細胞におけるLRAT活性)も存在する。眼におけるビタミンAの恒常性は、血清からのレチノールの送達にのみ依拠するのではなく、視覚発色団を提供するレチニルエステルの細胞内貯蔵にも依拠しているという事実は、HPRの効果がこの器官で最も顕著であり得るということを示唆する。
【0074】
さらに、式(I)の構造を有する化合物はまた、別の視覚サイクルのタンパク質である、細胞性レチンアルデヒド結合タンパク質(Cellular Retinaldehyde Binding Protein)(CRALBP)に対しても結合する。この効果を示すために、そして単なる例であるが、図7および図8に示されるデータは、HPRがCRALBPに結合することを実証する。従って、CRALBPが見出され得る眼科的な組織では、式(I)の構造を有する化合物は、CRALBPに結合し、そして結果として(a)レチンアルデヒドのような他の化合物のCRALBPに対する結合を調節し、(b)CRALBPの活性を調節し、(c)CRALBPに対するリガンドとして機能し、(d)輸送活性を含む、CRALBPによって触媒される活性を受け、そして/または(e)本明細書に記載される方法および組成物における治療剤として働くことが期待される。
【0075】
視覚サイクル 脊椎動物の網膜は、2つのタイプの光受容器細胞(桿体および錐体)を含む。桿体は、微光条件下で視覚に対して専門化される。錐体は感度が低く、これによって高度な時間的かつ空間的な解像度が得られ、そして色の知覚が得られる。日光の条件下では、桿体応答は飽和されて、視覚は錐体によって全体的に媒介される。両方の細胞タイプとも外部セグメントと呼ばれる構造を含み、この構造が膜状のディスクのスタックを含む。視覚伝達の反応は、これらのディスクの表面上で生じる。視覚の第一工程は、発色団の11−シスからオール−トランスへの異性化に関与するオプシン色素分子(ロドプシン)による光子の吸収である。光の感度が回復され得る前に、得られたオール−トランス−レチナールは、網膜に対して隣接する細胞の単層である網膜色素上皮において生じる複数の酵素のプロセスにおいて、11−シス−レチナールに変換して戻されねければならない。
【0076】
黄斑または網膜の変性およびジストロフィー 黄斑変性(網膜変性とも呼ばれる)は、網膜の中央部位である黄斑の悪化に関与する眼の疾患である。黄斑変性の場合の約85%〜90%が、「萎縮(dry)」(萎縮性(atrophic)または非血管性)のタイプである。萎縮型の黄斑変性では、網膜の悪化は、黄斑下における、ドルーゼン(drusen)として公知の小さい黄色の沈着の形成に関連する;さらにRPEにおけるリポフスチンの蓄積は、光受容器の変性および地図状の萎縮をもたらす。この現象は、黄斑の外の脆弱化および萎縮をもたらす。ドルーゼンによって生じる網膜中の薄層化の位置および量は、中心の視野の消失の量と直接相関する。網膜の色素上皮層およびドルーゼンに重なる光受容器の変性は、萎縮性になり、中心の視野の消失を遅らせ得る。最終的に、網膜色素上皮および基礎にある光受容器細胞の損失は、地図状の萎縮を生じる。哺乳動物に対する式(I)の構造を有する少なくとも1つの化合物の投与は、この哺乳動物の眼における光受容器変性および/または地図状萎縮の形成を軽減するか、またはその伝播を限定し得る。例に過ぎないが、哺乳動物に対するHPRおよび/またはMPRの投与は、この哺乳動物の眼における光受容器変性および/または地図状萎縮を処置するために用いられ得る。
【0077】
「滲出性、浸出性(wet)」の黄斑変性症では、新生の血管が形成して(すなわち、新血管新生)、網膜組織に対する、詳細には、我々の先鋭な中央の視野を担う網膜の一部である黄斑の下に対する血液供給が改善される。この新生血管は容易に損傷されて、時には破裂して、周囲の組織への出血および損傷を生じる。浸出型の黄斑変性は、全ての黄斑変性の症例のうち約10パーセントでのみ生じるが、これは、黄斑変性関連の失明のうち約90%を占める。新血管新生は、視覚の急速な消失、ならびに最終的な網膜組織の瘢痕および眼の出血をもたらし得る。この瘢痕組織および血液は、視野に暗いゆがめられた領域を生じ、しばしば眼の法的な失明をもたらす。浸出型の黄斑変性症は一般に、視野の中央領域でのゆがみで始まる。直線が波形になる。黄斑変性症を有する多くの人はまた、不鮮明な視野および空白のスポット(暗点)を視覚野に有することを報告している。血管内皮増殖因子、すなわちVEGFと呼ばれる増殖促進タンパク質は、眼においてこの異常な血管増殖を誘発するように標的されている。この発見によって、VEGFを阻害するかまたはブロックする実験的薬物の積極的な研究がもたらされている。抗VEGF因子を用いて異常な血管増殖をブロックおよび予防できることが研究によって示されている。このような抗VEGF因子は、VEGF刺激を停止するか阻害して、それによって、血管の増殖が小さくなる。このような抗VEGF因子はまた、抗血管形成において、またはVEGFが網膜下で血管増殖を誘導する能力をブロックするのにおいて、血管漏出と同様に成功するかもしれない。哺乳動物に対する式(I)の構造を有する少なくとも1つの化合物の投与は、哺乳動物の眼における浸出型の加齢性黄斑変性の形成を軽減するか、またはその伝播を限定し得る。例に過ぎないが、哺乳動物に対するHPRおよび/またはMPRの投与は、哺乳動物の眼における浸出型の加齢性黄斑変性を処置するために用いられ得る。同様に、式(I)の化合物(単なる例であるが、HPRおよび/またはMPRを包含する)を用いて、哺乳動物の眼の脈絡膜の新血管新生および黄斑の下の異常な血管の形成を処置することができる。
【0078】
スタルガルト病は、小児期の間の発現を伴う、劣性型の黄斑変性症として現れる黄斑のジストロフィーである。例えば、Allikmetsら、Science,277:1805〜07(1997);Lewisら、Am.J.Hum.Genet.,64:422〜34(1999);Stoneら、Nature Genetics,20:328〜29(1998);Allikmets,Am.J.Hum.Gen.,67:793〜799(2000);Kleveringら、Ophthalmology,111:546〜553(2004)を参照のこと。スタルガルト病は、中央の視野の進行性の消失、および黄斑に重なるRPEの進行性の萎縮によって臨床上特徴付けられる。Rim Protein(RmP)についてのヒトABCA4遺伝子における変異は、スタルガルト病を担う。疾患経過の初期には、患者は、暗順応の遅れを示すが、それ以外は正常な桿体機能を示す。組織学的には、スタルガルト病は、RPE細胞におけるリポフスチン色素顆粒の沈着に関連する。
【0079】
ABCA4における変異はまた、劣性の色素性網膜炎(例えば、Cremersら、Hum.Mol.Genet.,7:355〜62(1998)を参照のこと)、劣勢の錐体−桿体ジストロフィー(同書を参照のこと)、および非浸出性加齢性黄斑変性症(例えば、Allikmetsら、Science,277:1805〜07(1997);Lewisら、Am.J.Hum.Genet.,64:422〜34(1999)を参照のこと)に関係しているが、AMDにおけるABCA4変異の罹患率は未知のままである。Stoneら、Nature Genetics,20:328〜29(1998);Allikmets,Am.J.Hum.Gen.,67:793〜799(2000);Kleveringら、Ophthalmology,111:546〜553(2004)を参照のこと。スタルガルト病と同様に、これらの疾患は遅延型の桿体暗順応に関連している。Steinmetzら、Brit.J.Ophthalm.,77:549〜54(1993)を参照のこと。RPE細胞におけるリポフスチン沈着はまた、AMDにおいて顕著にみられている。Kliffenら、Microsc.Res.Tech.,36:106〜22(1997)および網膜色素変性症のいくつかの症例を参照のこと。Bergsmaら、Nature,265:62〜67(1977)を参照のこと。さらに、スタルガルト病の常染色体優性型は、ELOV4遺伝子における変異によって生じる。Karanら、Proc.Natl.Acad.Sci.(2005)を参照のこと。
【0080】
さらに、小児、十代および成人に影響する黄斑変性症のいくつかのタイプが存在して、これは現在早発性または若年性の黄斑変性症として一般に公知である。これらのタイプの多くは、遺伝性であって、変性ではなく黄斑ジストロフィーとしてみられる。黄斑ジストロフィーのいくつかの例としては、錐体−桿体ジストロフィー、角膜ジストロフィー、フックスジストロフィー(Fuch’s Dystrophy)、ソーズビー黄斑ジストロフィー(Sorsby’s Macular Dystrophy)、ベスト病(Best Disease)、および若年性網膜分離症、ならびにスタルガルト病が挙げられる。
【0081】
化学的な用語
「アルコキシ(alkoxy)」基とは、(アルキル)O−基をいい、ここでアルキルは本明細書に記載のとおりである。
【0082】
「アルキル(alkyl)」基とは、脂肪族炭化水素基をいう。アルキル部分とは、「飽和アルキル(saturated alkyl)」基であってもよく、これは、いかなるアルケン部分もアルキン部分も含まないことを意味する。アルキル部分はまた、「不飽和アルキル(unsaturated alkyl)」部分であってもよく、これは、少なくとも1つのアルケン部分またはアルキン部分を含むことを意味する。「アルケン(alkene)」部分とは、少なくとも2つの炭素原子および少なくとも1つの炭素間二重結合からなる群をいい、そして「アルキン(alkyne)」部分とは、少なくとも2つの炭素原子および少なくとも1つの炭素間三重結合からなる基をいう。このアルキル部分は、飽和されるかまたは不飽和のいずれかであって、分枝されても、直鎖であってもまたは環状であってもよい。
【0083】
「アルキル(alkyl)」部分は、1〜10個の炭素原子を有してもよい(これが本明細書でみられるなら常に、「1〜10」のような数的範囲は、所定の範囲内の各々の整数をいい;例えば、「1〜10個の炭素原子(1 to 10 carbon atoms)」とは、アルキル基が、1炭素原子、2炭素原子、3炭素原子など、そして最大で10炭素原子からなってもよいことを意味するが、この定義はまた、数的な範囲が指定されていない「アルキル(alkyl)」という用語の出現もカバーする)。アルキル基とはまた、1〜5個の炭素原子を有する「低級アルキル(lower alkyl)」であってもよい。本明細書に記載の化合物のアルキル基は、「C−Cアルキル(C−Calkyl)」または同様の名称を指定され得る。一例に過ぎないが、「C−Cアルキル」とは、アルキル鎖に1〜4個の炭素原子が存在する、すなわち、このアルキル鎖が、メチル、エチル、プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、およびt−ブチルからなる群より選択されることを意味する。代表的なアルキル基としては、限定はしないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第三ブチル、ペンチル、ヘキシル、エテニル、エテニル、プロペニル、ブテニル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。
【0084】
「アルキルアミン(alkylamine)」という用語は、−N(アルキル)基であって、xおよびyが、x=1、y=1およびx=2、y=0からなる群より選択される基を指す。x=2である場合、このアルキル基は、まとめると、必要に応じて環系を形成し得る。
【0085】
この「アルケニル(alkenyl)」という用語は、アルキル基のタイプであって、このアルキル基の第一の2つの原子が芳香族基の一部ではない二重結合を形成する基をいう。すなわち、アルケニル基は、原子−C(R)=C−Rで開始し、ここでRは、アルケニル基の残りの部分であって、同じであっても異なってもよい部分をいう。アルケニル基の非限定的な例としては、−CH=CH、−C(CH)=CH、−CH=CCH、および−C(CH)=CCHが挙げられる。アルケニル部分は、分枝されても、直鎖でもまたは環状でもよい(この場合、これは、「シクロアルケニル」基としても公知である)。
【0086】
「アルキニル(alkynyl)」という用語は、アルキル基の最初の2つの原子が三重結合を形成するアルキル基のタイプをいう。すなわち、アルキニル基は、原子−C≡C−Rで開始し、ここでRは、アルキニル基の残りの部分をいい、この残りの部分は、同じであっても異なってもよい。アルキニル基の非限定的な例としては、−C≡CH、−C≡CCHおよび−C≡CCHCHが挙げられる。アルケニル部分の「R」部分は、分枝しても、直鎖であっても、環状であってもよい。
【0087】
「アミド(amide)」とは、式−C(O)NHRまたは−NHC(O)Rを有する化学部分であって、Rはアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール(環状炭素を介して結合された)および複素脂環式(環の炭素を通じて結合された)からなる群より選択される、化学部分である。アミドは、式(I)の化合物に結合されたアミノ酸またはペプチド分子であってもよく、これによってプロドラッグが形成される。本明細書に記載されるこの化合物に対する任意のアミン、ヒドロキシまたはカルボキシル側鎖はアミド化されてもよい。このようなアミドを作成するための手順および特定の基は、当業者に公知であり、そして本明細書においてその全体が参照によって援用される、GreeneおよびWuts,Protective Groups in Organic Synthesis、第3版,John Wiley&Sons,New York,NY,1999のような参照材料に容易に見出すことができる。
【0088】
「芳香族の(aromatic)」または「アリール(aryl)」という用語は、芳香族基であって、結合体化されたπ電子系を有する少なくとも1つの環を有し、かつ炭素環式アリール(例えば、フェニル)基および複素環式アリール(または「ヘテロアリール(heteroaryl)」または「複素環式芳香族(heteroaromatic)」)基(例えば、ピリジン)の両方を含む芳香族基をいう。この用語は、単環式または縮合した環の多環式の(すなわち、炭素原子の隣接対を共有する環)基を包含する。「炭素環式(carbocyclic)」という用語は、1つ以上の共有結合的に閉じた環構造を含み、かつこの環の骨格を形成する原子がすべて炭素原子である化合物をいう。従ってこの用語は、炭素とは異なる少なくとも1つの原子を環の骨格が含む複素環式の環から炭素環を区別する。
【0089】
「シアノ(cyano)」基とは、−CN基をいう。
【0090】
「シクロアルキル(cycloalkyl)」という用語は、炭素および水素しか含まず、そして飽和されても、部分的に不飽和でもまたは完全に不飽和でもよい、単環式または多環式のラジカルを指す。シクロアルキル基としては、3〜10個の環状原子を有する基が挙げられる。シクロアルキル基の図示的な例としては、以下の部分が挙げられる:
【0091】
【化12】

など。
【0092】
「エステル」という用語は、式−COORを有する化学部分であって、Rがアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール(環の炭素を通じて結合された)および複素脂環式(環の炭素を通じて結合された)からなる群より選択される化学部分を指す。本明細書に記載される化合物に対する任意のアミン、ヒドロキシまたはカルボキシル側鎖は、エステル化されてもよい。このようなエステルを作製するための手順および特定の基は、当業者に公知であり、そして本明細書においてその全体が参照によって援用される、GreeneおよびWuts,Protective Groups in Organic Synthesis、第3版,John Wiley&Sons,New York,NY,1999のような参照材料に容易に見出すことができる。
【0093】
「ハロ(halo)」または、代替的には、「ハロゲン(halogen)」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードを意味する。好ましいハロ基はフルオロ、クロロおよびブロモである。
【0094】
「ハロアルキル(haloalkyl)」、「ハロアルケニル(haloalkenyl)」、「ハロアルキニル(haloalkynyl)」および「ハロアルコキシ(haloalkoky)」という用語は、1つ以上のハロ基で、またはその組み合わせで置換される、アルキル、アルケニル、アルキニルおよびアルコキシ構造を包含する。「フルオロアルキル(fluoroalkyl)」、および「フルオロアルコキシ(fluoroalkoxy)」という用語は、それぞれ、ハロがフッ素である、ハロアルキル基およびハロアルコキシ基を包含する。
【0095】
「ヘテロアルキル(heteroalkyl)」、「ヘテロアルケニル(heteroalkenyl)」および「ヘテロアルキニル(heteroalkynyl)」という用語は、必要に応じて置換されたアルキル、アルケニルおよびアルキニルラジカルを包含し、そしてこれは、炭素以外の原子、例えば、酸素、窒素、イオウ、リンまたはそれらの組み合わせから選択される1つ以上の骨格鎖原子を有する。
【0096】
「ヘテロアリール(heteroaryl)」または、代替的には、「複素環式芳香族(heteroaromatic)」という用語は、窒素、酸素およびイオウから選択される1つ以上の環ヘテロ原子を含むアリール基をいう。N含有「複素環式芳香族」または「ヘテロアリール」部分とは、芳香族基であって、この環の骨格原子の少なくとも1つが窒素原子である芳香族基をいう。多環式ヘテロアリール基は、縮合されても非縮合であってもよい。ヘテロアリール基の図示的な例としては、以下の部分が挙げられる:
【0097】
【化13】

など。
【0098】
「複素環(heterocycle)」という用語は、各々O、SおよびNから選択される1〜4個のヘテロ原子を含む複素環式芳香族基および複素脂環式基をであって、ここで各々の複素環式基が、その環系において4〜10個の原子を有し、そしてこの基の環が2つの隣接するO原子もS原子も含まない条件下である基をいう。非芳香族複素環式基としては、その環系においてわずか4個の原子しか有さない基が挙げられるが、芳香族複素環式基は、その環系において少なくとも5つの原子を有さなければならない。複素環式基としては、ベンゾ−縮合環系が挙げられる。4員の複素環式基の例は、アゼチジニル(アゼチジン由来)である。5員の複素環式基の例はチアゾリルである。6員の複素環式基の例は、ピリジルであり、そして10員の複素環式基の例はキノリニルである。非芳香族複素環式基の例は、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、チオキサニル、ピペラジニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ホモピペリジニル、オキセパニル、チエパニル、オキサゼピニル、ジアゼピニル、チアゼピニル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジニル、2−ピロリニル、3−ピロリニル、インドリニル、2H−ピラニル、4H−ピラニル、ジオキサニル、1,3−ジオキソールアニール(dioxolanyl)、ピラゾリニル、ジチアニール、ジチオールアニール、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジヒドロフラニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサニル、3−アザビシクロ[4.1.0]ヘプタニル、3H−インドリルおよびキノリジニルである。芳香族複素環式基の例は、ピリニジル、イミダゾリル、ピリミジニル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピラジニル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソキサゾリル、チアゾリル、オキザゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、キノキニル、イソキノリニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、シンノリニル、インダゾリル、インドリジニル、フタラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、イソインドリル、プテリジニル、プリニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、フラザニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾキサゾリル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチルリジニルおよびフロピリジニルである。前述の基は、上記の基由来であり、C付加されてもまたはN付加されてもよく、このようなことは可能である。例えば、ピロール由来の基は、ピロール−1−イル(N−付加)であっても、またはピロール−3−イル(C−付加)であってもよい。さらに、イミダゾール由来の基は、イミダゾール−1−イルであっても、またはイミダゾール−3−イル(両方ともN付加)であっても、またはイミダゾール−2−イル、イミダゾール−4−イルもしくはイミダゾール−5−イル(全てC付加)であってもよい。複素環式基としては、ベンゾ縮合環系およびピロリジン−2−オンのような1つまたは2つのオキソ(=O)部分で置換された環系が挙げられる。
【0099】
「複素脂環式(heteroalicyclic)」基とは、窒素、酸素およびイオウから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含むシクロアルキル基をいう。このラジカルは、アリールとまたはヘテロアリールと縮合されてもよい。ヘテロシクロアルキル基の図示的な例としては、以下が挙げられる:
【0100】
【化14】

など。
複素脂環式という用語はまた、限定はしないが単糖、二糖およびオリゴ糖を含む炭水化物の全ての環系を包含する。
【0101】
「員環(membered ring)」という用語は、任意の環状構造を包含し得る。「員環の(membered)」という用語は、環を構成する骨格原子の数を示すことを意味する。従って、例えば、シクロヘキシル、ピリジン、ピランおよびチオピランは、6員の環であり、そしてシクロペンチル、ピロール、フラン、およびチオフェンは5員の環である。
【0102】
「イソシアナト(isocyanato)」基とは、−NCO基をいう。
【0103】
「イソチオシアナト(isothiocyanato)」基とは、−NCS基をいう。
【0104】
「メルカプチル(mercaptyl)」基とは、(アルキル)S−基をいう。
【0105】
本明細書において用いる場合、「求核試薬(nucleophile)」および「求電子試薬(electrophile)」という用語は、合成のおよび/または物理的な有機化学に対して周知のそれらの通常の意味を有する。炭素求電子試薬は代表的には、炭素原子自体のものより大きいポーリング電気陰性度を有する任意の原子または基で置換された、1つ以上のアルキル、アルケニル、アルキニルまたは芳香族(sp、spまたはspハイブリダイズされた)炭素原子を含む。炭素求電子試薬の例としては、限定はしないが、カルボニル(アルデヒド、ケトン、エステル、アミド)、オキシム、ヒドラゾン、エポキシド、アジリジン、アルキル−、アルケニル−、およびアリールハライド、アシル、スルホネート(アリール、アルキルなど)が挙げられる。炭素求電子試薬の他の例としては、電子吸引基と電気的に結合体化された不飽和炭素原子が挙げられ、この例は、α不飽和ケトン中の6炭素またはフッ素置換アリール基中の炭素原子である。炭素求電子試薬を生じる方法は、特に正確に制御された生成物を生じる方法で、有機合成の分野における当業者に公知である。
【0106】
芳香族置換基の相対的な配置(オルト、メタ、およびパラ)は、このような立体異性体の特徴的な化学を与え、そして芳香族化学の分野内で十分に認識される。パラ置換およびメタ置換パターンは、異なる方向に2つの置換基を投影する。オルト配置された置換基は、お互いに対して60°に方向付けられ;メタ配置された置換は、お互いに対して120°に方向付けられ;パラ配置された置換基は、お互いに対して180°で方向付けられる。
【0107】
【化15】

置換基の相対的な配置、すなわち、オルト、メタ、パラはまた、この置換基の電気的な特性に影響する。理論のいかなる特定のタイプまたはレベルにも束縛されないが、オルト配置およびパラ配置された置換基は、相当するメタ配置の置換基が影響するよりも大きい程度まで、お互いに対して電気的に影響することが公知である。メタ二置換された芳香族はしばしば、相当するオルト二置換およびパラ二置換芳香族以外の種々の経路を用いて合成される。
【0108】
「部分(moiety)」という用語は、ある分子の特定のセグメントまたは官能基をいう。化学的な部分はしばしば、ある分子に包埋されるか、または付加された、認識された化学的実体である
「結合された(bond)」または「単結合(single bond)」という用語は、2つの原子の間の、またはこの結合によって連結された原子が、より大きい下部構造の一部であるとみなされる場合は2つの部分の間の、化学結合を指す。
【0109】
「スルフィニル(sulfinyl)」基とは、Rが、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール(環炭素を通じて結合された)および複素脂環式(環炭素を通じて結合された)からなる群より選択される−S(=O)−Rをいう。
【0110】
「スルホニル(sulfonyl)」基とは、Rがアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール(環炭素を通じて結合された)および複素脂環式(環炭素を通じて結合された)からなる群より選択される−S(=O)−Rをいう。
【0111】
「チオシアナト(thiocyanato)」基とは、−CNS基をいう。
【0112】
「必要に応じて置換された(optionally substituted)」という用語は、この言及される基が、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環式、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ハロ、カルボニル、チオカルボニル、イソシアナト、チオシアナト、イソチオシアナト、ニトロ、ペルハロアルキル、ペルフルオロアルキル、シリルおよびアミノであって、一置換および二置換アミノ基を含むアミノ、ならびにそれらの保護誘導体から個々にかつ独立して選択される1つ以上のさらなる基(単数または複数)で置換されてもよいことを意味する。上記の置換基の保護誘導体に由来し得る保護基は、当業者に公知であり、そして上記のGreeneおよびWutsのような引用文献において見出され得る。
【0113】
本明細書に提示される化合物は、1つ以上の不斉中心を保有してもよく、そして各々の中心がRまたはSの立体配置で存在してもよい。本明細書に呈示される化合物としては、全てのジアステレオマー型、エンチオマー型およびエピマー型、ならびにその適切な混合物が挙げられる。立体異性体は、所望の場合、例えば、キラルクロマトグラフィーカラムによる立体異性体の分離のような、当該分野で公知の方法によって得ることができる。
【0114】
本明細書に記載される方法および処方としては、式(I)の構造を有する化合物のN酸化物、結晶型(多形体としても公知)または薬学的に受容可能な塩、ならびに同じタイプの活性を有するこれらの化合物の活性代謝物の使用が挙げられる。単なる例に過ぎないが、フェンレチニドの公知の代謝物は、4−MPRまたはMPRとしても公知のN−(4−メトキシフェニル)レチンアミドである。フェンレチニドの別の公知の代謝物は4−オキソフェンレチニドである。ある状況では、化合物は、互変異性体として存在してもよい。全ての互変異性体は、本明細書に示される化合物の範囲内に包含される。さらに、本明細書に記載されるこの化合物は、溶解せずに存在してもよく、そして水、エタノールなどのような薬学的に受容可能な溶媒との溶媒和形態で存在してもよい。本明細書に提示されるこの化合物の溶媒和形態も、本明細書に開示されるとみなされる。
【0115】
薬学的組成物
別の局面は、式(I)の化合物および薬学的に受容可能な希釈剤、賦形剤またはキャリアを含む薬学的組成物である。
【0116】
「薬学的組成物(pharmaceutical composition)」という用語は、式(I)の化合物と他の化学的成分、例えば、キャリア、安定化剤、希釈剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤および/または賦形剤との混合物をいう。この薬学的組成物は、生物体に対するこの化合物の投与を容易にする。限定はしないが、静脈内投与、経口投与、エアロゾル投与、非経口的投与、眼科的投与、肺投与および局所投与を包含する、化合物を投与する多数の技術が当該分野に存在する。
【0117】
「キャリア(carrier)」という用語は、細胞もしくは組織への化合物の取り込みを容易にする、比較的非毒性の化合物または因子をいう。
【0118】
「希釈剤(diluent)」という用語は、送達の前に目的の化合物を希釈するために用いられる化合物をいう。希釈剤はまた、化合物を安定化するために用いられ得る。なぜなら、それらは、より安定な環境を提供し得るからである。緩衝化溶液に溶解された塩(pHの制御または維持も提供し得る)は、当該分野において希釈剤として利用され、これには限定はしないがリン酸緩衝化生理食塩水溶液が挙げられる。
【0119】
「生理学的に受容可能な(physiologically acceptable)」という用語は、キャリアまたは希釈剤のような物質であって、化合物の生物学的活性または特性を取り消さず、かつ非毒性である、物質をいう。
【0120】
「薬学的に受容可能な塩(pharmaceutically acceptable)」という用語は、それが投与される生物体に対する有意な刺激を生じず、かつ化合物の生物学的活性および特性を取り消さない化合物の処方物をいう。薬学的に受容可能な塩は、式(I)の化合物と、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸などのような酸との反応によって得ることができる。薬学的に受容可能な塩はまた、式(I)の化合物と、塩基とを反応させて、塩、例えば、アンモニウム塩、アルカリ金属塩、例えば、ナトリウム塩またはカリウム塩、アルカリ土類金属塩、例えば、カルシウムまたはマグネシウム塩、有機塩基の塩、例えば、ジシクロヘキシルアミン、N−メチル−D−グルカミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、およびアルギニン、リジンなどのようなアミノ酸との塩を形成することによって、あるいは当該分野で公知の他の方法によって、得ることができる。
【0121】
本明細書に開示される化合物の「代謝物(metabolite)」は、この化合物が代謝される場合に形成される化合物の誘導体である。「活性な代謝物(active metabolite)」という用語は、ある化合物が代謝される場合に形成されるこの化合物の生物学的に活性な誘導体をいう。「代謝された(metabolized)」という用語は、特定の物質が生物体によって変化されるプロセス(限定はしないが、加水分解反応および酵素によって触媒される反応を包含する)の合計(sum)をいう。従って、酵素は、化合物に対して特定の構造的変更を生じ得る。例えば、チトクロームp450は、種々の酸化的および還元的な反応を触媒するが、ウリジン二リン酸グルクロニルトランスフェラーゼが芳香族アルコール、脂肪族アルコール、カルボン酸、アミンおよび遊離スルフヒドリル基への活性化グルクロン酸分子の移行を触媒する。代謝に対するさらなる情報は、The Pharmacological Basis of Therapeutics,第9版、McGraw−Hill(1996)から得ることができる。
【0122】
本明細書に開示される化合物の代謝物は、宿主に対する化合物の投与および宿主からの組織サンプルの分析によって、またはインビトロでの化合物と肝細胞とのインキュベーションおよび得られた化合物の分析のいずれかによって、同定され得る。両方の方法とも当該分野で周知である。
【0123】
例に過ぎないが、MPRは、その両方ともが式(I)の構造内に含まれるHPRの公知の代謝物である。MPRはHPRと慢性的に反応されている患者において全身的に蓄積する。MPRが全身的に蓄積するという理由の1つは、MPRは、(仮にあったとしても)ごく緩徐にしか代謝されないが、HPRはMPRに代謝されるということである。さらに、MPRは、比較的緩徐なクリアランスを受け得る。従って、(a)MPRの薬物動態および薬動力学が、投与された場合、およびHPRのバイオアベイラビリティーを決定する場合、考慮されるべきである、(b)MPRは、HPRよりも代謝に対して安定である、そして(c)MPRは、吸収後HPRよりも直ちに生体利用可能であり得る。フェンレチニドの別の公知の代謝物は4−オキソフェンレチニドである。
【0124】
MPRはまた、活性代謝物とみなされ得る。図9および図10に示されるとおり、MPR(HPRと同様)は、レチノール結合タンパク質(RBP)に結合して、トランスエリトリン(Transerythrin)(TTR)に対するRBPの結合を防止し得る。結果として、HPRまたはMPRのいずれが患者に投与される場合も、得られる期待される特徴の1つは、MPRが蓄積されて、RBPに結合して、RBPに対するレチノールの結合、そしてTTRに対するRBPの結合を阻害することである。従って、MPRは、(a)RBPに対するレチノールの結合のインヒビターとして機能し得、(b)TTRに対するRBPのインヒビターとして機能し得、(c)眼科組織を含む特定の組織へのレチノールの輸送を制限し得、そして(d)眼科組織を含む特定の組織へRBPによって輸送され得る。MPRは、HPRよりもRBPに対してより弱く結合するようであり、従って、RBPに対するレチノール結合の強度の劣るインヒビターである。にもかかわらず、MPRおよびHPRは両方とも、TTRに対するRBPの結合を、ほぼ等しく阻害することが期待される。さらに、MPR(HPRと同様)は、LRATおよびCRALBPを含む視覚サイクルタンパク質に結合することが期待される。MPRは、これらの点において、HPRと同じ作用様式を有し、そして本明細書に記載される方法および組成物における治療剤として機能し得る。
【0125】
「プロドラッグ(prodrug)」とは、インビボで親の薬物に変換される因子をいう。プロドラッグはしばしば有用である。なぜなら、これらの状況では、親の薬物よりも投与することが容易であり得るからである。例えば、それらは、経口投与によって生体利用可能であり得るが、親はそうではない。このプロドラッグはまた、親の薬物よりも薬学的組成物において改善された溶解度を有し得る。プロドラッグの例は、限定はしないが、式(I)の化合物であって、水溶性(water solubility)が移動度に対して有害である、細胞膜を横切る通過を促進するエステル(「プロドラッグ(prodrug)」)として投与され、ただし次に、水溶性が利点である細胞に一旦入れば、活性な実体であるカルボン酸に代謝的に加水分解される化合物である。プロドラッグのさらなる例は、酸性基に結合された短いペプチド(ポリアミノ酸)であり得、ここでペプチドが活性部分を明らかにするように代謝される。
【0126】
本明細書に記載される化合物は、そのままで、あるいは、併用療法として、他の活性な成分と混合されて、または適切なキャリア(単数または複数)もしくは賦形剤(単数または複数)と混合されて薬学的組成物中で、ヒト患者に投与されてもよい。本出願の化合物の処方物および投与のための技術は、「Remington:The Science and Practice of Pharmacy」第20版(2000)に見出され得る。
【0127】
投与経路
適切な投与経路としては、例えば、経口、直腸、経粘膜、経皮、肺、眼または腸の投与;筋肉内、皮下、静脈内、髄内注射、そしてクモ膜下腔内、直接脳室内、腹腔内、鼻腔内または眼内の注入を含む非経口送達を挙げることができる。
【0128】
あるいは、当業者は、全身性の方式ではなく、例えば、器官へ直接的に化合物の注入を介して、しばしば、デポ処方物または徐放性の処方物中で、局所に化合物を投与することができる。さらに、当業者は、標的された薬物送達系に、例えば、器官特異的抗体でコーティングされたリポソーム中で、薬物を投与し得る。リポソームは、器官に対して標的されて、器官によって選択的に取り込まれる。さらに、この薬物は、急速放出処方物の形態で提供されてもよく、徐放性処方物の形態で提供されてもよく、または中程度の放出の処方物の形態で提供されてもよい。
【0129】
組成物/処方物
式(I)の化合物を含む薬学的組成物は、それ自体公知である方式で、例えば、従来の混合、溶解、顆粒化、糖衣錠作成、ゲル化、乳化、カプセル化、エントラッピング(entrapping)または圧縮プロセスの方法によって、製造されてもよい。
【0130】
薬学的組成物は、薬学的に用いられ得る調製物への活性化合物の処理を促進する賦形剤および補助剤を含む、1つ以上の生理学的に受容可能なキャリアを用いて従来の方式で処方されてもよい。適切な処方物は、選り抜きの投与の経路に依存する。適切である場合、そして当該分野において;例えば、上記のRemington’s Pharmaceutical Sciencesにおいて、理解されるとおり、任意の周知の技術、キャリアおよび賦形剤を用いてもよい。
【0131】
式(I)の化合物は、眼への局所送達の全ての形態を含む、種々の方法で投与され得る。さらに、式(I)の化合物は、全身に、例えば、経口的にまたは静脈内に投与され得る。式(I)の化合物は、眼に局所投与されてもよく、そして種々の局所的に眼科の組成物、例えば、溶液、懸濁液、ゲルまたは軟膏に処方されてもよい。従って、「眼科の投与(ophthalmic administration)」とは、限定はしないが、眼内注射、網膜下注射、硝子体内注射、眼周囲の投与、結膜下注射、球後注射、房内注射(前房または硝子体腔への注射を含む)、テノン嚢下注射またはインプラント、眼科溶液、眼科懸濁液、眼科軟膏、眼インプラントおよび眼挿入物、眼内溶液、イオン泳動の使用、外科的洗浄溶液中への組み込み、およびパック(例に過ぎないが、円蓋に挿入された飽和コットン綿球)を包含する。
【0132】
眼に対する組成物の投与は一般に、この因子と角膜との直接の接触を生じるが、投与された因子の少なくとも一部は角膜を通過する。しばしば、この組成物は、約2時間〜約24時間、さらに代表的には約4〜約24時間、そして最も代表的には約6〜約24時間という眼での有効残留時間を有する。
【0133】
式(I)の化合物を含む組成物は、例示的には液体の形態をとってもよく、ここではこの因子は、溶液中に、懸濁液中にまたはその両方に存在する。代表的には、この組成物が溶液または懸濁液として投与される場合、この因子の第一の部分は溶液中に存在して、この因子の第二の部分は特定の形態で、液体マトリックス中の懸濁物中に存在する。ある実施形態では、液体組成物は、ゲル処方物を含んでもよい。他の実施形態では、液体組成物は水性である。あるいは、この組成物は、軟膏の形態をとってもよい。
【0134】
有用な組成物は、水溶液であっても、懸濁物であってもまたは溶液/懸濁物であってもよく、これは点眼液の形態で与えられ得る。所望の投与量は、既知の数の滴下によって眼に投与されてもよい。例えば、25μlの滴下溶液については、1〜6滴の投与がこの組成物の25〜150μlを送達する。水性組成物は代表的には、約0.01%〜約50%、さらに代表的には約0.1%〜約20%、それより代表的には約0.2%〜約10%、そして最も代表的には約0.5%〜約5%の重量/容積の式(I)の化合物を含む。
【0135】
代表的には、水性の組成物は眼科的に受容可能なpHおよび重量モル浸透圧濃度を有する。処方物、組成物または成分に関して「眼科的に受容可能な(ophthalmically acceptable)」とは代表的には、処置された眼もしくはその機能に対して、または処置されている被験体の全身的な健康に対して、永続的な有害な効果を有さないことを意味する。一過性の影響、例えば、わずかな刺激または「穿刺(stinging)」感、は因子の局所的な眼科投与に共通であって、「眼科的に受容可能」である、該当の処方物、組成物または成分と一致する。
【0136】
有用な水性懸濁液はまた、懸濁剤として1つ以上のポリマーを含んでもよい。有用なポリマーとしては、水溶性ポリマー、例えばセルロース性ポリマー、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、および水不溶性ポリマー、例えば、架橋カルボキシ含有ポリマーが挙げられる。有用な組成物はまた、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボマー(アクリル酸ポリマー)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリアクリルアミド、ポリカルボフィル、アクリル酸/ブチルアクリレートコポリマー、アルギン酸ナトリウムおよびデキストランから選択される、眼科的に受容可能な粘膜付着性のポリマーを含んでもよい。
【0137】
有用な組成物はまた、式(I)の化合物の溶解度を補助する眼科的に受容可能な安定化剤を含んでもよい。「安定化剤(solubilizing agent)」という用語は一般には、ミセル溶液または因子の真溶液の形成を生じる因子を包含する。特定の眼科的に受容可能な非イオン性サーファクタント、例えば、ポリソルベート80は、可溶化剤として有用であり得、同様に、グリコール、ポリグリコール、例えば、ポリエチレングリコール400およびグリコールエーテルが眼科的に受容可能であり得る。
【0138】
有用な組成物はまた、1つ以上の眼科的に受容可能なpH調節剤または緩衝剤を含んでもよく、これには、酸、例えば、酢酸、ホウ酸、クエン酸、乳酸、リン酸および塩酸;塩基、例えば、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウムおよびトリス−ヒドロキシメチルアミノメタン;ならびに緩衝液、例えば、クエン酸/デキストロース、炭酸水素ナトリウムおよび塩化アンモニウムが挙げられる。このような酸、塩基および緩衝液は、眼科的に受容可能な範囲に組成物のpHを維持するのに必要な量で含まれる。
【0139】
有用な組成物はまた、1つ以上の眼科的に受容可能な塩を、組成物の重量モル浸透圧濃度を眼科的に受容可能な範囲にさせるのに必要な量で含んでもよい。このような塩としては、ナトリウム、カリウムまたはアンモニウムの陽イオンおよび塩化物、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、チオ硫酸塩または亜硫酸水素の陰イオンを有する塩が挙げられる;適切な塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムおよび硫酸アンモニウムが挙げられる。
【0140】
他の有用な組成物はまた、微生物活性を阻害する1つ以上の眼科的に受容可能な防腐剤を含んでもよい。適切な防腐剤としては、水銀含有物質、例えば、メルフェン(merfen)およびチメロサール;安定化された塩化二酸化物;ならびに四級アンモニウム化合物、例えば、塩化ベンザルコニウム、臭化セチルメチルアンモニウムおよび塩化セチルピリジニウムが挙げられる。
【0141】
さらに他の有用な組成物は、物理的な安定性を強化するか、または他の目的のために1つ以上の眼科的に受容可能なサーファクタントを含んでもよい。適切な非イオン性サーファクタントとしては、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリドおよび植物油、例えばポリオキシエチレン(60)硬化キャスターオイル;およびポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびアルキルフェニルエーテル、例えば、オクトキシノール10、オクトキシノール40が挙げられる。
【0142】
さらに他の有用な組成物は、必要な場合、化学的な安定性を増強するための1つ以上の抗酸化剤を含んでもよい。適切な抗酸化剤としては、例に過ぎないが、アスコルビン酸およびメタ重亜硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0143】
水性の懸濁組成物は、単一用量の非再密閉性容器にパッケージングされ得る。あるいは、複数の用量の再密閉可能な容器が用いられてもよく、この場合、この組成物には防腐剤を含むことが代表的である。
【0144】
この眼科的組成物はまた、眼とまぶたとの間、または結膜嚢に挿入され得、ここで因子を放出する中実な物体の形態をとってもよい。放出は、角膜の表面を浸す涙液に対して、または直接角膜自体に対してであり、ここではこの中実物体は、一般に緊密に接触している。このような方式での眼に移入するために適切な中実固体は一般には、主にポリマーからなり、そして生分解性であっても、非生分解性であってもよい。
【0145】
静脈内注射のためには、式(I)の化合物は、水溶液に、好ましくは生理学的に適合する緩衝液、例えば、ハンクス溶液、リンゲル溶液、または生理学的な生理食塩水緩衝液に処方されてもよい。経粘膜投与のためには、透過されるべき障壁に適切な浸透剤は、この処方物中で用いられる。このような浸透剤は一般に、当該分野で公知である。他の注射剤については、適切な処方物は、水溶液または非水溶液を、好ましくは、生理学的に適合する緩衝液または賦形剤とともに含んでもよい。このような賦形剤は一般に当該分野で公知である。
【0146】
高用量の式(I)の化合物を安定化するための1つの有用な処方物は、単なる例に過ぎないが、正に、負にまたは中立的に荷電されたリン脂質、または胆汁塩/ホスファチジルコリン混合脂質凝集体系、例えば、Li、C.Y.ら、Pharm.Res.13:907〜913(1996)に記載されるものである。式(I)の構造を有する化合物と同じ目的のために用いられ得るさらなる処方物は、アルコール、例えば、エタノールを、アルキル化キャスターオイルと組み合わせて含む溶媒の使用を包含する。例えば、米国特許公開第2002/0183394号を参照のこと。あるいは、式(I)の化合物を含む処方物は、水相において分散されたリポイド、安定化量の非イオン性サーファクタント、必要に応じて溶媒、および必要に応じて等張剤からなるエマルジョンである。同書を参照のこと。式(I)の化合物を含むさらに別の処方物は、コーン油および非イオン性サーファクタントを含む。米国特許第4,665,098号を参照のこと。式(I)の化合物を含むさらに別の処方物は、リゾホスファチジルコリン、モノグリセリドおよび脂肪酸を含む。米国特許第4,874,795号を参照のこと。式(I)の化合物を含むさらに別の処方物は、小麦粉、甘味料および保湿剤を含む。国際公開番号WO2004/069203号を参照のこと。そして式(I)の化合物を含むさらに別の処方物は、ジメチルストイルホスファチジルコリン、ダイズ油、t−ブチルアルコールおよび水を含む。米国特許出願公開第US2002/0143062号を参照のこと。
【0147】
経口投与のためには、式(I)の化合物は、当該分野で周知の薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤との活性化合物との組み合わせによって容易に処方され得る。このようなキャリアによって本明細書に記載される化合物は、処置されるべき患者による経口摂取のための、錠剤、粉末、丸剤、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、エリキシル、スラリー、懸濁物などとして処方され得る。経口使用のための薬学的調製物は、1つ以上の固体賦形剤と本明細書に記載の1つ以上の化合物との混合、必要に応じて得られた混合物を粉砕すること、および、必要に応じて、適切な補助剤を添加した後に、顆粒の混合物を処理して、錠剤または糖衣錠コアを得ることによって、得ることができる。適切な賦形剤は、詳細には、充填剤(賦形剤)、例えば糖であって、これには、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトール;セルロース調製物など、例えば:トウモロコシデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム;またはその他、例えば:ポリビニルピロリドン(PVPまたはポピドン)またはリン酸カルシウムである。所望の場合、崩壊剤、例えば、架橋クロスカルメロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、寒天またはアルギン酸またはその塩、例えばアルギン酸塩が添加されてもよい。
【0148】
糖衣錠コアは、適切なコーティングを与えられる。この目的のためには、濃縮された糖溶液を用いてもよく、この溶液は、必要に応じて、アラビアゴム、滑石、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液および適切な有機溶媒または溶媒の混合物を含んでもよい。染料または色素が、同定のために、または活性な化合物の用量の異なる組み合わせを特徴付けるために、錠剤または糖衣錠コーティングに加えられてもよい。
【0149】
経口的に用いられ得る薬学的な調製物としては、ゼラチンからなる押込みカプセル、ならびにゼラチンおよび可塑剤、例えば、グリセロールまたはソルビトールからなる軟性の、密閉されたカプセルが挙げられる。この押込みカプセルは、ラクトースのような充填剤、デンプンのような結合剤および/または滑石もしくはステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、および必要に応じて安定化剤と混合される活性成分を含み得る。軟カプセルでは、活性化合物は、脂肪酸、液体パラフィンまたは液体ポリエチレングリコールのような適切な液体に溶解されても懸濁されてもよい。さらに、安定化剤が添加されてもよい。経口投与のための全ての処方物は、このような投与のために適切な用量でなければならない。
【0150】
口腔内または舌下の投与のためには、この組成物は、従来の方式で処方された錠剤、トローチ剤またはゲルの形態をとってもよい。
【0151】
式(I)の構造を有する化合物の投与のための別の有用な処方物は、経皮送達デバイス(「パッチ」)を使用する。このような経皮パッチは、本発明の化合物の連続的または不連続な注入を制御された量で行うために用いられ得る。薬学的な因子の送達のための経皮パッチの構築および使用は、当該分野で周知である。例えば、米国特許第5,023,252号を参照のこと。このようなパッチは、薬物学的因子の連続的送達、パルス送達またはオンデマンド送達のために構築され得る。さらに、式(I)の化合物の経皮送達は、イオントフォレーシスなパッチなどの方法で達成され得る。経皮パッチによって、この化合物の制御された送達を得ることができる。吸収の速度は、速度制御メンブレンを用いることによって、またはポリマーマトリックスもしくはゲル内に化合物を捕獲することによって緩徐にされ得る。逆に、吸収促進剤を用いて吸収を向上させてもよい。経皮投与のために適切な処方物は、個別のパッチとして存在してもよく、そしてポリマーまたは接着剤中に溶解および/または分散された、脂溶性のエマルジョンまたは緩衝液、水溶液であってもよい。経皮パッチは、眼の上を含む、患者の身体の種々の部分の上に配置されてもよい。
【0152】
式(I)の構造を有する化合物の眼科的投与のために用いられ得るさらなるイオントフォレーシスデバイス(iontophoretic devices)は、Optis France S.A.が作製して特許取得したEyegateアプリケーター、およびIomed,Incが開発したOcuphorTM Ocularイオントフォレーシスシステムである。
【0153】
吸入による投与のためには、式(I)の化合物は、適切な噴霧剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切なガスの使用によって、圧縮パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示の形態で都合良く送達される。加圧されたエアロゾルの場合、投薬単位は、一定量を送達するためのバルブを設けることによって決定され得る。インヘイラー(inhaler)または吸入器(insufflator)における使用のための例えばゼラチンのカプセルおよびカートリッジが処方されてもよく、これは、この化合物およびラクトースまたはデンプンのような適切な粉末の粉末混合物を含有する。
【0154】
この化合物は、注入による、例えば、ボーラス注射または連続的注入による非経口投与のために処方され得る。注射用処方物は、単位剤形で、例えば、アンプルまたは複数回用量の容器で、防腐剤を添加されて提示されてもよい。この組成物は、油状ビヒクルまたは水性のビヒクル中で、懸濁物、溶液またはエマルジョンのような形態をとってもよく、そして懸濁剤、安定化剤および/または分散剤のような処方剤を含んでもよい。
【0155】
経口投与のための薬学的処方物としては、水溶性型である活性化合物の水溶液が挙げられる。さらに、活性化合物の懸濁物は、必要に応じて油状の注射懸濁物として調製されてもよい。適切な脂溶性溶媒またはビヒクルとしては、脂肪酸、例えば、ゴマ油、または合成脂肪酸エステル、例えば、オレイン酸エチルまたはトリグリセリド、またはリポソームが挙げられる。水性注射懸濁液は、この懸濁液の粘性を増大する物質、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランを含んでもよい。必要に応じて、この懸濁物はまた、高度に濃縮された溶液の調製を可能にするために化合物の溶解度を向上させる適切な安定化剤または因子を含んでもよい。
【0156】
あるいは、活性成分は、使用前の、適切なビヒクル、例えば、滅菌のパイロジェンフリー水での構成のための粉末形態であってもよい。
【0157】
この化合物はまた、例えば、ココアバターもしくは他のグリセリドのような従来の坐剤基剤を含む、直腸組成物、例えば、直腸のゲル、直腸泡状物質、直腸エアロゾル、坐剤または停留浣腸(retention enemas)に処方されてもよい。
【0158】
前に記載された処方物に加えて、この化合物はまた、デポ調製物として処方されてもよい。このような長時間作用性処方物は、移植によって(例えば、皮下または筋肉内)、または筋肉内注射によって、投与され得る。従って、例えば、この化合物は、適切なポリマー物質または疎水性物質(例えば、受容可能なオイルにおけるエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂とともに、または難溶性の誘導体として、例えば、難溶性の塩として処方されてもよい。
【0159】
注射可能なデポ形態は、生分解性のポリマー中で式(I)の化合物のマイクロカプセル化マトリックス(マイクロカプセルマトリックスとしても公知)を形成することによって作成され得る。ポリマーに対する薬物の比、および使用される特定のポリマーの性質に依存して、薬物放出の速度は制御され得る。デポ注射用処方物はまた、リポソームまたはマイクロエマルジョン中に薬物を捕獲することによって調製され得る。例に過ぎないが、後部の強膜近傍デポ(posterior juxtascleral depot)は、式(I)の構造を有する化合物の投与の方式として用いられ得る。この強膜は薄い無血管層であって、ほとんどの脊椎動物の眼を囲む極めて規則的なコラーゲンの網目状構造からなる。強膜は無血管性であるので、天然の保管貯蔵所として利用可能であり、この貯蔵所からは、注入された物質は急速に除去できず、眼から消失もできない。眼の強膜層へのこの化合物の投与のために用いられる処方物は、強膜層への注射のために適切な小さい直径を有するカニューレを通じた注射による、強膜への適用のために適切な任意の形態であってもよい。注射可能な適用形態についての例は、溶液、懸濁液またはコロイド懸濁液である。
【0160】
式(I)の疎水性化合物のための薬学的なキャリアは、ベンジルアルコール、非極性サーファクタント、水混和性有機ポリマーおよび水相を含む共溶媒系である。この共溶媒系は、10%エタノール、10%ポリエチレングリコール300、10%ポリエチレングリコール40キャスターオイル(PEG−40キャスターオイル)と70%水溶液であってもよい。この共溶媒系は、疎水性化合物をよく溶解して、それ自身が合成投与の際に低い毒性を生じる。当然ながら、共溶媒系の割合は、その溶解度および毒性の特徴を破壊することなくかなり変化されてもよい。さらに、共溶媒成分の同一性は、変化されてもよい:例えば、他の低毒性の非極性サーファクタントがPEG−40キャスターオイルの代わりに用いられてもよく、ポリエチレングリコール300の画分サイズが変化されてもよく;他の生体適合性ポリマーが、ポリエチレングリコール、例えば、ポリビニルピロリドンを置き換えてもよく;そして他の糖またはポリサッカライドが、この水溶液に含まれてもよい。
【0161】
あるいは、疎水性の薬学的化合物の他の送達系が使用されてもよい。リポソームおよびエマルジョンは、疎水性薬物の送達ビヒクルまたはキャリアの周知の例である。特定の有機溶媒、例えば、N−メチルピロリドンも使用されてもよいが、通常は、毒性が大きくなるという犠牲を伴う。さらに、この化合物は、治療剤を含む固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスのような徐放性の系を用いて送達され得る。種々の徐放性物質が確立されており、そして当業者に周知である。徐放性のカプセルは、その化学的性質に依存して、2〜3週の間、最大100日までにわたってこの化合物を放出し得る。この治療的な試薬の化学的な性質および生物学的な安定性に依存して、タンパク質安定化のためのさらなるストラテジーが使用され得る。
【0162】
式(I)の構造を有する化合物の投与のための1処方物は、神経芽細胞腫、前立腺および卵巣の癌の処置においてフェンニチニドとともに用いられており、そしてLym−X−SorbTMという名称でAvanti Polar Lipids,Inc.(Alabaster,Alabama)によって市販されている。この処方物は、リゾホスファチジルコリン、モノグリセリドおよび脂肪酸を含む組織化された脂質マトリックスを含み、フェンレチニドの経口アベイラビリティーを改善するように設計される。このような処方物、すなわち、リゾホスファチジルコリン、モノグリセリドおよび脂肪酸を含む経口処方物は、限定はしないが、黄斑の変性およびジストロフィーを含む、眼科的および眼の疾患および状態の処置のための式(I)の構造を有する化合物の改善されたバイオアベイラビリティーを提供するために提唱される。
【0163】
本明細書で記載される全ての処方物は、抗酸化剤、金属キレート剤、チオール含有化合物および他の一般的な安定化剤よりも有利であり得る。このような安定化剤の例としては、限定はしないが、(a)約0.5%〜約2%(w/v)のグリセロール、(b)約0.1%〜約1%(w/v)のメチオニン、(c)約0.1%〜約2%(w/v)のモノチオグリセロール、(d)約1mM〜約10mMのEDTA,(e)約0.01%〜約2%(w/v)のアスコルビン酸、(f)0.003%〜約0.02%(w/v)のポリボルベート80、(g)0.001%〜約0.05%(w/v)のポリソルベート20、(h)アルギニン、(i)ヘパリン、(j)硫酸デキストラン、(k)シクロデキストラン、(l)ペントサンポリ硫酸および他のヘパリノイド,(m)マグネシウムおよび亜鉛のような二価陽イオン;または(n)それらの組み合わせが挙げられる。
【0164】
式(I)の化合物の多くが、薬学的に適合性の対イオンとの塩として提供され得る。薬学的に受容可能な塩は、多くの酸と形成され得、この酸としては、限定はしないが、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などが挙げられる。塩は、水性または他のプロトン性の溶媒においては、対応する遊離の酸または塩基の形態よりも可溶性である傾向である。
【0165】
処置方法、投与量および併用療法
「哺乳動物(mammal)」という用語は、ヒトを含む全ての哺乳動物を意味する。哺乳動物としては、単なる例であるが、ヒト、非ヒト霊長類、ウシ、イヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ラット、マウスおよびウサギが挙げられる。
【0166】
本明細書において用いる場合、「有効量(effective amount)」という用語は、投与されている化合物の量であって、処置されている疾患、状態または障害の症状の1つ以上をある程度まで軽減する量をいう。
【0167】
本明細書に記載の化合物(単数または複数)を含む組成物は、予防的および/または治療的な処置のために投与され得る。「処置(treating)」という用語は、予防的な処置および/または治療的な処置のいずれかをいうものである。治療適用では、組成物は、既にある疾患、状態または障害に罹患している患者に対して、その疾患、障害または状態の症状を治癒させるかまたは少なくとも部分的に停止させるのに十分な量で投与される。この使用のために有効な量は、治療の前の疾患、障害または状態の重篤度および経過、患者の健康状態、および薬物に対する応答、ならびに処置している医師の判定に依存する。慣用的な実験によってこのような治療上有効な量を決定することは当業者の十分に範囲内であると考えられる(例えば、用量漸増臨床試験)。
【0168】
予防的な適用において、本明細書に記載の化合物を含む組成物は、特定の疾患、障害または状態に感受性であるかまたはそのリスクがある患者に投与される。このような量は、「予防的に有効な量または用量(prophylactically effective amount or dose)」であると規定される。この用途では、正確な量はまた、患者の健康状態、体重などに依存する、慣用的な実験によってこのような予防上有効な量を決定することは当業者の十分に範囲内であるとみなされる(例えば、用量漸増臨床試験)。
【0169】
「増強する(enhance)」または「enhancing(増強)」という用語は、所望の効果の力価または期間のいずれかを増大または延長することを意味する。従って、治療剤の効果を増強することに関して、「増強(enhancing)」という用語は、ある系に対する他の治療剤の効果を、力価または期間のいずれかにおいて、増大または延長する能力をいう。本明細書において用いる場合、「増強有効量(enhancing−effective amount)」とは、所望の系において別の治療剤の効果を増強するのに十分な量をいう。患者において用いる場合、この用途に有効な量は、疾患、障害または状態の重篤度および経過、以前の治療、患者の健康状態および薬物に対する応答、ならびに処置している医師の判断に依存する。
【0170】
患者の状態が改善されない場合、患者の疾患または状態の症状を緩和するか、またはそうでなければ制御もしくは限定するために、医師の判断次第で、化合物の投与は慢性的に、すなわち、患者の寿命の期間全体にわたってを含む、長期間にわたって投与されてもよい。
【0171】
患者の状態が改善する場合、医師の判断次第で、化合物の投与は連続的に与えられてもよく;あるいは、投与されるべき薬物の用量は、特定の期間にわたって一時的に減少されるか、または一時的に停止されてもよい(すなわち、「休薬日(drug holiday)」)。休薬日の長さは、2日〜1年の間で変化してもよく、これには、単なる例であるが、2日、3日、4日、5日、6日、7日、10日、12日、15日、20日、28日、35日、50日、70日、100日、120日、150日、180日、200日、250日、280日、300日、320日、350日および365日が挙げられる。休薬日の間の用量減少は、10%〜100%の間であってもよく、これには単なる例であるが、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、80%、85%、90%、95%および100%が挙げられる。
【0172】
患者の状態の改善が一旦生じれば、維持用量は、必要に応じて投与される。引き続き、投与の用量もしくは頻度、またはその両方は、その症状の関数として、改善された疾患、障害または状態が保持されるレベルまで減少されてもよい。しかし、患者は、症状の再発の際には長期間の間欠的な処置を要し得る。
【0173】
このような量に相当する所定の因子の量は、処置の必要な被験体またはホストの特定の化合物、疾患状態およびその重篤度、独自性(例えば、体重)のような要因に依存して変化するが、それにもかかわらず、例えば、投与されている特定の因子、投与経路、処置されている状態および処置されている被験体またはホストを含む、この症例を囲む特定の状況によって当該分野で公知の方式で慣用的に決定され得る。しかし、一般には、成体のヒト処置に使用される用量は代表的には、1日あたり0.02〜5000mg、好ましくは、1日あたり1〜1500mgの範囲である。所望の用量は、単一用量で、あるいは同時に(または短期間にわたって)または適当な間隔で、例えば、1日あたり2、3、4もしくはそれ以上の小用量で投与される分割用量として都合よく与えられてもよい。
【0174】
特定の場合には、本明細書に記載の化合物(または薬学的に受容可能な塩、エステル、アミド、プロドラッグもしくは溶媒)の少なくとも1つを、別の治療剤と組み合わせて投与することが適切であり得る。単なる例であるが、本明細書における化合物の1つを受容する際に患者によって経験される副作用の1つは、炎症であり、その結果、最初の治療剤と組み合わせて、ある炎症性因子を投与することが適切であり得る。または、一例であるが、本明細書に記載される化合物の1つの治療有効性は、アジュバントの投与によって増強され得る(すなわち、アジュバントとはそれ自体では、治療の利点を最小限にしか有し得ないだけでなく、別の治療因子と組み合わせて、患者に対する全体的な治療利益が増強される)。または、単なる例であるが、患者が経験する利益は、本明細書に記載される化合物の1つを、やはり治療利益を有する別の治療因子(これは治療レジメンも含む)とともに投与することによって増大され得る。単なる例であるが、本明細書に記載される化合物の1つの投与を包含する黄斑変性の処置において、治療利益の増大は、患者に黄斑変性症の他の治療剤または治療与えることによっても生じ得る。いずれの場合でも、処置されている疾患、障害または状態にかかわらず、患者によって経験される全体的な利点は単に、2つの治療剤の相加であってもよいし、または患者は相乗的な利点を経験してもよい。
【0175】
治療剤の可能性のある組み合わせの特定の非限定的な例としては、式(I)の少なくとも1つの化合物と、一酸化窒素(NO)誘導因子、スタチン、負に荷電されたリン脂質、抗酸化剤、ミネラル、抗炎症剤、血管新生阻害剤、マトリックスメタロプロテイナーゼインヒビターおよびカロチノイドとの使用が挙げられる。いくつかの場合には、適切な併用剤は、複数のカテゴリーにおさまり得る(単なる例であるが、ルテインは、抗酸化剤およびカロチノイドである)。さらに、式(I)の化合物はまた、単なる例であるがサイクロスポリンAを含む、患者に利点を与え得るさらなる因子とともに投与され得る。
【0176】
さらに、式(I)の化合物はまた、患者に相加的利点または相乗的な利点を提供し得る手順、単なる例であるが、体外レオフェレーシス(メンブレン・ディファレンシャル・フィルトレーション(membrane differential filtration)としても公知)の使用、移植可能なミニチュア望遠鏡の使用、ドルーゼンのレーザー光凝固および微小刺激療法と組み合わせて用いられてもよい。
【0177】
抗酸化剤の使用は、黄斑の変性およびジストロフィーを有する患者に対して利点であることが示されている。例えば、Arch.Ophthalmol.,119:1417〜36(2001);Sparrowら、J.Biol.Chem.,278:18207〜13(2003)を参照のこと。式(I)の構造を有する少なくとも1つの化合物と組み合わせて用いられ得る適切な抗酸化剤の例としては、ビタミンC、ビタミンE、βカロチンおよび他のカロチノイド、補酵素Q、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(Tempolとしても公知)、ルテイン、ブチル化ヒドロキシトルエン、レスベラトロル(resveratol)、トロロックス(trolox)アナログ(PNU−83836−E)およびビルベリー抽出物が挙げられる。
【0178】
特定のミネラルの使用はまた、黄斑の変性およびジストロフィーを有する患者に有利であることが示されている。例えば、Arch.Ophthalmol.,119:1417〜36(2001)を参照のこと。式(I)の構造を有する少なくとも1つの化合物と組み合わせて用いられ得る適切なミネラルの例としては、銅含有ミネラル、例えば、酸化銅(単なる例である);亜鉛含有ミネラル、例えば、酸化亜鉛(単なる例である);そしてセレニウム含有化合物が挙げられる。
【0179】
特定の負に荷電されたリン脂質の使用はまた、黄斑の変性およびジストロフィーを有する患者に有利であることが示されている。例えば、Shaban&Richter,Biol.Chem.,383:537〜45(2002);Shabanら、Exp.Eye Res.,75:99〜108(2002)を参照のこと。式(I)の構造を有する少なくとも1つの化合物と組み合わせて用いられ得る適切な負に荷電されたリン脂質の例としては、カルジオリピンおよびホスファチジルグリセロールが挙げられる。正に荷電されリン脂質および/または中性のリン脂質はまた、式(I)の構造を有する化合物と組み合わせて用いられる場合、黄斑の変性およびジストロフィーを有する患者に有利であり得る。
【0180】
特定のカロチノイドの使用は、光受容器細胞中で必要な光保護の維持と相関している。カロチノイドは、植物、藻類、細菌および特定の動物、例えば、鳥類および甲殻類において見出され得るテルペノイド基の天然に存在する黄色から赤色の色素である。カロチノイドは、600より多い天然に存在するカロチノイドが同定されている、大きいクラスの分子である。カロチノイドは、炭化水素(カロテン)およびそれらの酸化された、アルコール性誘導体(キサントロフィル)を含む。それらとしては、アクチンイオエリトロール(actinioerythrol)、アスタキサンチン、カンタキサンチン、カプサンチン、カプソルビン、β−8’−アポ−カロテナール(アポ−カロテナール)、β−12’−アポ−カロテナール、α−カロテン、β−カロテン、「カロテン(carotene)」(αカロテンおよびβカロテンの混合物)、γ−カロテン、βクリプトキサンチン、ルテイン、リコピン、ビオールエリトリン(violerythrin)、ゼアキサンチン、およびそのヒドロキシまたはカルボキシ含有メンバーのエステルが挙げられる。多くのカロチノイドが天然にはシス−異性体型およびトランス−異性体型として存在するが、合成の化合物は、高頻度にラセミ混合物である。
【0181】
ヒトでは、網膜は、主に2つのカロチノイド、ゼアキサンチンおよびルテインを選択的に蓄積する。これらの2つのカロチノイドは、網膜を保護することを補助すると考えられる。なぜなら、それらは、強力な抗酸化剤であって、青色光を吸収するからである。ウズラでの研究によって、カロチノイド欠損食餌で上昇する群が有する網膜は、アポトーシス性の光受容器細胞が極めて多数であることによって証明されるように、ゼアキサンチンが低濃度であって、重篤な光損傷を被るが、高いゼアキサンチン濃度を有する群が有する損傷は最小限である。式(I)の構造を有する少なくとも1つの化合物と組み合わせるための適切なカロチノイドの例としては、ルテインおよびゼアキサンチン、ならびに任意の上述のカロチノイドが挙げられる。
【0182】
適切な一酸化窒素誘導因子としては、インビボにおいて内因性のNOを刺激するか、もしくは内因性の内皮由来弛緩因子(EDRF)のレベルを上昇させる、または一酸化窒素シンターゼの基質である化合物が挙げられる。このような化合物としては、例えば、L−アルギニン、L−ホモアルギニン、およびN−ヒドロキシ−L−アルギニンが挙げられ、これにはそれらのニトロソ化およびニトロシル化したアナログ(例えば、ニトロソ化Lアルギニン、ニトロシル化Lアルギニン、ニトロソ化N−ヒドロキシ−L−アルギニン、ニトロシル化N−ヒドロキシ−L−アルギニン、ニトロソ化L−ホモアルギニンおよびニトロシル化L−ホモアルギニン)、Lアルギニンの前駆体および/またはその物理学的に受容可能な塩が挙げられ、これには、例えば、シトルリン、オルニチン、グルタミン、リジン、これらのアミノ酸の少なくとも1つを含むポリペプチド、酵素アルギナーゼのインヒビター(例えば、N−ヒドロキシ−L−アルギニンおよび2(S)−アミノ−6−ボロノヘキサン酸)および一酸化窒素シンターゼの基質、サイトカイン、アデノシン、ブラジキニン、カルレティキュリン、ビサコジルおよびフェノールフタレインが挙げられる。EDRFは、エンドセリンによって分泌される血管弛緩因子であり、そして一酸化窒素またはその密接に関連する誘導体として同定されている(Palmerら、Nature,327:524〜526(1987);Ignarroら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84:9265〜9269(1987))。
【0183】
スタチンは、脂質低下剤および/または適切な一酸化窒素誘導因子として働く。さらに、スタチン使用と、黄斑変性の発生または発達の遅延との間の関係が実証されている。G.McGwinら、British Journal of Ophthalmology,87:1121〜25(2003)。従って、スタチンは、式(I)の化合物と組み合わせて投与された場合、眼科的状態(例えば、黄斑の変性およびジストロフィー、ならびに網膜ジストロフィー)に罹患している患者に対して利点を提供し得る。適切なスタチンとしては、単なる例あるが、ロスバスタチン、ピチバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン、メバスタチン、ベロスタチン、フルバスタチン、コンパクチン、ロバスタチン、ダルバスタチン、フルインドスタチン、アトルバスタチン、アトルバスタチンカルシウム(アトルバスタチンのヘミカルシウム塩である)およびジヒドロコンパクチンが挙げられる。
【0184】
式(I)の化合物とともに用いられ得る適切な抗炎症剤としては、単なる例であるが、アスピリンおよび他のサリチル酸塩、クロモリン、ネドクロミル、テオフィリン、ジレウトン、ザフィルルカスト、モンテルカスト、プラヌルカスト(pranlukast)、インドメタシンおよびリポキシゲナーゼインヒビター;非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)(例えば、イブプロフェンおよびナプロキシン);プレドニゾン、デキサメタゾン、シクロオキシゲナーゼインヒビター(すなわち、COX−1および/またはCOX−2インヒビター、例えば、NaproxenTM、またはCelebrexTM);スタチン(単なる例であるが、ロスバスタチン、ピチバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン、メバスタチン、ベロスタチン、フルバスタチン、コンパクチン、ロバスタチン、ダルバスタチン、フルインドスタチン、アトルバスタチン、アトルバスタチンカルシウム(アトルバスタチンのヘミカルシウム塩である)およびジヒドロコンパクチン);ならびに二つ会合したステロイドが挙げられる。
【0185】
適切なマトリックス・メタロプロテイナーゼ(MMP)インヒビターも、黄斑または網膜の変性に関連する眼科的な状態または症状を処置するために、式(I)の化合物とともに投与されてもよい。MMPは、細胞外マトリックスのほとんどの成分を加水分解することが公知である。これらのプロテイナーゼは、多くの生物学的プロセス、例えば、正常な組織再構築、胚形成、創傷治癒および血管形成において中心的な役割を果たす。しかし、黄斑変性症を含む多くの疾患状態でMMPの過剰な発現が観察されている。多くのMMPが同定されており、そのほとんどがマルチドメインの亜鉛エンドペプチダーゼである。多数のメタロプロテイナーゼインヒビターが公知である(例えば、Whittaker MらによるMMPインヒビターの概説、Chemical Reviews 99(9):2735〜2776(1999)を参照のこと)。MMPインヒビターの代表的な例としては、メタロプロテイナーゼ(TIMP)の組織インヒビター(例えば、TIMP−1、TIMP−2、TIMP−3またはTIMP−4)、α−マクログロブリン、テトラサイクリン(例えば、テトラサイクリン、ミノサイクリン、およびドキシサイクリン)、ヒドロキシメタン(例えば、BATIMASTAT、MARIMISTATおよびTROCADE)、キレーター(例えば、EDTA、システインン、アセチルシステイン、D−ペニシルアミン、および金塩)、合成MMPフラグメント、スクシニルメルカプトプリン、ホスホンアミドおよびヒドロキサム酸が挙げられる。式(I)の化合物と組み合わせて用いられ得るMMPインヒビターの例としては、例に過ぎないが、任意の上述のインヒビターが挙げられる。
【0186】
血管新生阻害剤または抗VEGF薬の使用はまた、黄斑の変性およびジストロフィーを有する患者に利点を提供することが示されている。式(I)の構造を有する少なくとも1つの化合物と組み合わせて用いられ得る適切な血管新生阻害剤または抗VEGF薬の例としては、Rhufab V2(LucentisTM)、トリプトファニル−tRNAシンテターゼ(TrpRS)、Eye001(抗VEGFペグ化アプタマー)、スクアラミン(squalamine)、RetaaneTM15mg(デポ懸濁物のための酢酸アネコルタブ;Alcon,Inc.)、Combretastatin A4プロドラッグ(CA4P)、MacugenTM、MifeprexTM(ミフェプリストン−ru486)、スブテノントリアムシノロンアセトニド、硝子体内の結晶性トリアムシノロンアセトニド、Prinomastat(AG3340−合成のマトリクスメタロプロテイナーゼインヒビター、Pfizer)、フルシノロンアセトニド(フルシノロン眼内インプラント、Bausch&Lomb/Control Delivery Systemsを含む)、VEGFRインヒビター(Sugen)およびVEGF−Trap(Regeneron/Aventis)が挙げられる。
【0187】
視覚的な障害を救済するために用いられている他の薬学的な治療法は、式(I)の少なくとも1つの化合物と組み合わせて用いられ得る。このような処置としては、限定はしないが、VisudyneTMのような因子との非熱的レーザーの使用、PKC412、Endovion(NeuroSearch A/S)、例として、グリア由来神経栄養因子および毛様体神経栄養因子を含む神経栄養因子、ジアタゼム、ドルゾラミド、Phototrop、9−シス−レチナール、ヨウ化ホスホリンまたはエコチオフェートまたは炭酸脱水酵素阻害薬を含む眼の医薬(Echo療法を含む)AE−941(AEterna Laboratories,Inc.)、Sirna−027(Sirna Therapeutics,Inc.)、ペガプタニブ(NeXstar Pharmaceuticals/Gilead Sciences)、ニュートロフィン(単なる例であるがNT−4/5、Genetechを含む)、Cand5(Acuity Pharmaceuticals)、ラニビズマブ(Genentech)、INS−37217(Inspire Pharmaceuticals)、インテグリンアンタゴニスト(Jerini AGおよびAbbott Laboratories由来のものを含む)、EG−3306(Ark Therapeutics Ltd.)、BDM−E(BioDiem Ltd.)、サリドマイド(例えば、EntreMed,Inc.によって用いられる)、カルジオトロフィン−1(Genentech)、2−メトキシエストラジオール(Allergan/Oculex)、DL−8234(Toray Industries)、NTC−200(Neurotech)、テトラチオモリブデート(University of Michigan)、LYN−002(Lynkeus Biotech)、微細藻類化合物(Aquasearch/Albany、Mera Pharmaceuticals)、D−9120(Celltech Group plc)、ATX−S10(Hamamatsu Photonics)、TGF−β2(Genzyme/Celtrix)、チロシンキナーゼインヒビター(Allergan,SUGEN,Pfizer)、NX−278−L(NeXstar Pharmaceuticals/Gilead Sciences)、Opt−24(OPTIS France SA)、網膜細胞神経節神経保護剤(Cogent Neurosciences)、N−ニトロピラゾール誘導体(Texas A&M University System)、KP−102(Krenitsky Pharmaceuticals)およびサイクロスポリンAが挙げられる。米国特許出願第20040092435号を参照のこと。
【0188】
いかなる場合にも、複数の治療因子(その1つは本明細書に記載される化合物の1つである)が任意の順序で投与されてもよく、または同時に投与されてさえよい。同時の場合、複数の治療因子は、単回で、統合型で、または複数の形態で与えられてもよい(単なる例であるが、単一の丸剤として、または2つの別の丸剤として)。治療剤の1つが、複数の用量で与えられてもよく、または両方ともが複数の用量として与えられてもよい。同時ではない場合、複数の用量の間のタイミングは、ゼロ週から4週未満まで変化してもよい。さらに、併用方法、組成物および処方物は、2つだけの因子の使用には限定されない;本発明者らは、複数の治療併用の使用を想定する。単なる例であるが、式(I)の構造を有する化合物は、少なくとも1つの抗酸化剤および少なくとも1つの負に荷電されたリン脂質とともに提供されてもよい;または式(I)の構造を有する化合物は、少なくとも1つの抗酸化剤、および少なくとも1つの一酸化窒素生成の誘導因子とともに提供されてもよい;または式(I)の構造を有する化合物は、少なくとも1つの一酸化窒素生成の誘導因子および少なくとも1つの負に荷電されたリン脂質とともに提供されてもよい;その他などもよい。
【0189】
さらに、式(I)の化合物はまた、患者に対して相加的または相乗的な利点を提供し得る手順と組み合わせて用いられ得る。視覚的障害を救済するために公知の、提唱されたまたは考慮される手順としては、限定はしないが、「限定網膜移動(limited retinal translocation)」、光線力学療法(単なる例であるが、レセプター標的PDT,Bristol−Myers Squibb,Co.;注射用ポルフィマー(porfimer)ナトリウムとPDT;ベルテポルフィン、QLT Inc.;ロスタポルフィンとPDT,Miravent Medical Technologies;タラポルフィンナトリウムとPDT、Nippon Petroleum;モテキサフィンルテチウム、Pharmacyclics,.Inc.)、アンチセンスオリゴヌクレオチド(例に過ぎないが、Novagali Pharma SAおよびISIS−13650,Isis Pharmaceuticalsによって試験された生成物を含む)、レーザー光凝固、ドルーゼンレーザー加工、黄斑円孔手術、黄斑移動手術、移植可能なミニチュア・テレスコープ、φ−モーション血管造影法(Phi−Motion Angiography)(マイクロレーザー治療(Micro−Laser Therapy)およびフィーダー・ベッセル療法(Feeder Vessel Treatment)としても公知)、陽子ビーム療法、微小刺激療法、網膜剥離および硝子体の手術、強膜バックル、黄斑下手術、経瞳孔温熱療法、光化学系I療法、RNA干渉(RNAi)の使用、対外レオフェレーシス(メンブレン・ディファレンシャル・フィルトレーションおよびレオテラピー(Rheotherapy)としても公知)、マイクロチップ移植、幹細胞療法、遺伝子置換療法、リボザイム遺伝子療法(低酸素応答エレメントのための遺伝子療法を含む、Oxford Biomedica;Lentipak,Genetix;PDEF遺伝子療法、GenVec)、光受容器/網膜細胞移動(移植可能な網膜上皮細胞を含む、Diacrin,Inc.;網膜細胞移植片、Cell Genesys,Inc.)および鍼治療が挙げられる。
【0190】
ある個体に対して利点であり得るさらなる組み合わせとしては、その個体が特定の眼科的状態に相関することが公知である変異体遺伝子のキャリアであるか否かを決定するために遺伝的試験を用いる工程が挙げられる。単なる例であるが、ヒトABCA4遺伝子の欠損は、スタルガルト病、錐体−桿体ジストロフィー、加齢性黄斑変性および網膜色素変性症を含む5つの別個の網膜表現型に関連すると考えられる。例えば、Allikmetsら、Science,277:1805〜07(1997);Lewisら、Am.J.Hum.Genet.,64:422〜34(1999);Stoneら、Nature Genetics,20:328〜29(1998);Allikmets,Am.J.Hum.Gen.,67:793〜799(2000);Kleveringら、Ophthalmology,111:546〜553(2004)を参照のこと。さらに、スタルガルト病の常染色体優性型は、ELOV4遺伝子における変異によって生じる。Karanら、Proc.Natl.Acad.Sci.(2005)を参照のこと。任意のこれらの変異を保有する患者は、本明細書に記載の方法において治療および/または予防的な利点を見出すことが期待される。
【0191】
式(I)の化合物の合成
式(I)の化合物は、当業者に公知の標準的な合成技術を用いて、または本明細書に記載の方法と組み合わせて当該分野で公知の方法を用いて合成され得る。例えば、米国特許出願公開第2004/0102650号;Um,S.J.ら、Chem.Pharm.Bull.,52:501〜506(2004)を参照のこと。さらに、フェンレチニドのような式(I)の化合物のうちいくつかは、種々の商業的供給業者から購入され得る。さらなるガイドとして、以下の合成方法も利用され得る。
【0192】
求電子試薬と求核試薬との反応による共有結合的な架橋の形成
共有的な結合およびそれを生じる前駆官能基の選択された例は、「共有結合およびその前駆体の例(Examples of Covalent Linkages and Presursors Thereof)」と題された表に示される。前駆体の官能基は、求電子基および求核基として示される。有機物質上の官能基は、直接結合されてもよく、または下記のような任意の有用なスペーサーもしくはリンカーを介して結合されてもよい。
【0193】
(表1:共有結合およびその前駆体の例)
【0194】
【化16−1】

【0195】
【化16−2】

一般には、炭素求電子試薬は、炭素求核試薬を含む相補的な求核試薬による攻撃の影響を受けやすく、攻撃求核試薬は、炭素求電子試薬に対して電子対を与えて、この求核試薬と炭素求電子試薬との間に新規な結合を形成させる。
【0196】
適切な炭素求核試薬としては限定はしないが、アルキル、アルケニル、アリールおよびアルキニル・グリニャール(Grignard)、有機リチウム、有機亜鉛、アルキル−、アルケニル、アリール−およびアルケニル−スズ試薬(オルガノスタンナン(organostannanes))、アルキル−、アルケニル−、アリール−、およびアルケニル−ボラン試薬(有機ボランおよび有機ボロン酸);これらの炭素求核試薬は、水または極性の有機溶媒において動力学的に安定であるという利点を有する。他の炭素求核試薬としては、リンイリド、エノールおよびエノラート試薬が挙げられる;これらの炭素求核試薬は、合成有機化学の当業者に周知の前駆体から生成することが比較的容易であるという利点を有する。炭素求核試薬は、炭素求電子試薬と組み合わせて用いた場合、炭素求核試薬と炭素求電子試薬との間の新規な炭素間結合を生じさせる。
【0197】
炭素求電子試薬に対するカップリングに適切な非炭素求核試薬としては、限定はしないが、一級および二級のアミン、チオール、チオレートおよびチオエーテル、アルコール、アルコキシド、アジド、セミカルバジドなどが挙げられる。これらの非炭素求核試薬は、炭素求電子試薬と組み合わせて用いられた場合、Xがヘテロ原子、例えば、酸素または窒素である、ヘテロ原子結合(C−X−C)を代表的には生成する。
【0198】
保護基の使用
「保護基(protecting group)」という用語は、反応性部分のいくつかまたは全てをブロックして、保護基が除去されるまでこのような基が化学反応に関与しないように妨げる化学部分をいう。各々の保護基は異なる方法によって除去可能であることが好ましい。完全に異種の反応条件下で切断される保護基は、異なる除去の要件を満たす。保護基は、酸、塩基および水素化分解によって除去され得る。トリチル、ジメトキシトリチル、アセタールおよびt−ブチルジメチルシリルのような基は、酸不安定性であり、そして水素化分解によって除去されるCbz基、および塩基不安定性であるFmoc基で保護されたアミノ基の存在下で、カルボキシおよびヒドロキシ反応部分を保護するために用いられ得る。カルボン酸およびヒドロキシ反応性部分は、酸不安定性基、例えば、t−ブチルカルバメートで、または酸および塩基の両方に安定であるが加水分解的に除去可能であるカルバメートでブロックされたアミンの存在下で、塩基不安定性基、例えば、限定はしないが、メチル、エチルおよびアセチルでブロックされてもよい。
【0199】
カルボン酸およびヒドロキシ反応性部分はまた、加水分解的に除去可能な保護基、例えばベンジル基でブロックされてもよいが、酸と水素結合し得るアミン基は、Fmocのような塩基不安定性でブロックされ得る。カルボン酸反応性部分は、本明細書に例示されるような単純なエステル誘導体への変換によって保護されてもよく、またはそれらは、2,4−ジメトキシベンジルのような酸化的に除去可能な保護基でブロックされてもよいが、同時に存在するアミノ基は、フッ化物不安定性シリルカルバメートでブロックされてもよい。
【0200】
アリールブロッキング基は、酸保護基および塩基保護基の存在下で有用である。なぜなら、前者は安定であって、金属またはπ酸触媒によって引き続き除去され得るからである。例えば、アリールブロックされたカルボン酸は、酸不安定性t−ブチルカルバメートまたは塩基不安定性酢酸アミン保護基の存在下でPd−触媒反応で脱保護され得る。保護基のさらに別の形態は、化合物または中間体が結合され得る樹脂である。残基がこの樹脂に結合されている限り、その官能基はブロックされて反応できない。一旦樹脂から遊離されれば、官能基は、反応することが可能になる。
【0201】
代表的にはブロッキング基/保護基は、以下:
【0202】
【化17】

より選択され得る。
【0203】
他の保護基は、その全体が参照によって本明細書に援用される、Greene および Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,第3版、John Wiley & Sons,New York,NY,1999に記載される。
【実施例】
【0204】
例示的な実施例
以下の実施例は、式(I)の化合物の有効性および安全性を試験するための例示的な方法を提供する。これらの実施例は、例示的な目的のためだけに提供されるものであって、本明細書に提供される特許請求の範囲を限定するものではない。
【0205】
ヒトでの研究
黄斑または網膜の変性の検出 眼の異常な血管の特定は、血管造影図で行うことができる。この特定は、さらなる視覚消失を妨げるかまたは防止するために候補物質または他の処置方法の使用についてどの患者が候補であるかを決定することを補助し得る。血管造影図はまた、処置の追跡のために、そして任意の新規な血管増殖の将来の評価のために有用であり得る。
【0206】
フルオレセイン血管造影図(フルオレセイン血管造影法、フルオレセイン血管顕微法)は、眼の背景の脈絡叢および網膜の循環の可視化のための技術である。フルオレセイン色素は、静脈内に注射され、その後にマルチフレーム・フォトグラフィー(血管造影)、検眼鏡評価(血管顕微法)またはハイデルベルグ(Heidelberg)網膜血管造影(共焦点走査レーザー系)が続く。さらに、網膜は、網膜の高解像度の断面画像を得る非侵襲性の方法であるOCTによって試験されてもよい。網膜に栄養供給する血管に対する漏出または潜在的な損傷の分析を通じた、ある範囲の網膜および脈絡叢の疾患の評価には、フルオレセイン血管造影を用いる。視神経および虹彩の異常を評価することもBerkowら、Am.J.Ophthalmol.97:143〜7(1984)によって行われている。
【0207】
同様に、インドシアニングリーンを用いる血管造影を、眼の背景での循環を可視化するために用いてもよい。フルオレセインは、網膜循環を研究するためにさらに有効であり、インドシアニンは、より深い脈絡叢の血管層を観察するためにさらに良好である。インドシアニン血管造影の使用は、新血管新生がフルオレセイン色素単独で観察できない場合に有用である。
【0208】
式(I)の構造を有する化合物の適切なヒト用量は、標準的な用量漸増研究を用いて決定される。しかし、ガンの処置におけるこのような化合物の使用に対する研究からいくつかの手引きが利用可能である。例えば、式(I)の構造を有する化合物である4800mg/m用量のフェンレチニドは、種々のガンを有する患者に投与されている。このような用量は、毎日3回投与されて、観察される毒性は最小であった。しかし、このような患者に推奨される用量は、達成可能な血漿レベルに対して観察される天井に基づいて900mg/mであった。さらに、フェンレチニドのバイオアベイラビリティーは、食事で増大され、血漿濃度は、炭水化物の食事後よりも高脂肪の食事後には3倍大きい。
【0209】
ヒトでの偶発的な夜盲症の観察によって、正常な治療用量でのロドプシン再生の有意な障害が示唆される。これらのデータに基いて、本発明者らは、RPE組織におけるフェンレチニドの阻害性濃度が、ガンの処置のためのヒト治療用量に類似の用量で、または可能性としてはそれより低い用量で達成されると提唱する。
【0210】
実施例1:黄斑変性を処置するための式(I)の化合物の有効性についての試験
前試験のために、全てのヒト患者は、フルオレセイン血管造影、視覚の鋭敏さ、電気生理学的パラメーターならびに生化学的および流動学的パラメーターの測定を含む慣用的な眼科検査を受ける。包含基準は以下のとおりである:少なくとも1つの眼で20/160〜20/32の視覚鋭敏さ、およびAMDの徴候、例えば、ドルーゼン、輪紋萎縮(areolar atrophy)、色素クランピング(pigment clumping)、色素上皮剥離、または網膜下血管新生。妊娠している患者または活発に授乳中の小児はこの研究から除外する。
【0211】
黄斑変性を有すると診断された、または眼に進行性のA2Eの形成、リポフスチン、もしくはドルーゼンを有する200例のヒト患者を、約100例のコントロール群の患者および100例の実験群に分ける。フェンレチニドを基本的に毎日実験群に投与する。フェンレチニドを実験群に投与するのと同じレジメンでプラシーボをコントロール群に投与する。
【0212】
患者に対するフェンレチニドまたはプラシーボの投与は、黄斑変性の発症または再発を阻害するのに有効な量で経口的にまたは非経口的に投与され得る。有効な用量は、1日に3回まで約1〜4000mg/mの範囲である。
【0213】
コントロール群および実験群の両方における黄斑変性症の進行を測定するための1方法は、ライン・アセスメント(line assessment)および強制選択法(Ferrisら、Am J Ophthalmol,94:97〜98(1982))を用いる初期処置糖尿病性網膜症研究(Early Treatment Diabetic Retinopathy Study)(ETDRS)チャート(Lighthouse,Long Island,NY)によって測定した、最も補正された視覚鋭敏さである。視覚鋭敏さは、LogMARで記録される。ETDRSチャートの1ラインの変化は、0.1logMARに等しい。コントロール群および実験群の両方における黄斑変性の進行を測定するためのさらに代表的な方法は、視野の検査の使用を包含し、これには、限定はしないが、患者の眼におけるハンフリー(Humphrey)視野検査、ならびにN−レチニリデン−ホスファチジルエタノールアミン、ジヒドロ−N−レチニリデン−N−レニチル−ホスファチジルエタノールアミン、N−レチニリデン−N−レチニル−ホスファチジルエタノールアミン、ジヒドロ−N−レチニリデン−N−レチニル−エタノールアミン、および/またはN−レチニリデン−ホスファチジルエタノールアミンの自己蛍光または吸収スペクトルを測定/モニタリングする工程を包含する。自己蛍光は、限定はしないが、共焦点走査レーザー検眼鏡を含むがこれに限定されない種々の装置を用いて測定される。Bindewaldら、Am.J.Ophthalmol.,137:556〜8(2004)を参照のこと。
【0214】
コントロールおよび実験群における黄斑変性症の進行を測定するためのさらなる方法としては、眼底写真の撮影、ハイデルベルグ(Heiderberg)網膜血管造影(あるいは、M.Hammerら、Ophthalmologe 2004年4月7日に記載された技術[Epub ahead of patent(特許前)])を用いる経時的な自己蛍光の変化の観察、およびベースライン、追跡訪問の3、6、9および12ヶ月でのフルオレセイン血管造影撮影が挙げられる。形態学的変化の証拠としては、(a)ドルーゼンのサイズ、特徴および分布;(b)脈絡膜血管新生の発達および進行;(c)他の間隔の眼底変化または異常;(d)読み取り速度および/または読み取り鋭敏さ;(e)暗点のサイズ;または(f)地図状萎縮病変のサイズおよび数、における変化が挙げられる。さらに、アムスラー・グリッド・テスト(Amsler Grid Test)および色彩試験が必要に応じて行われる。
【0215】
薬物投与の間の視覚の改善を統計学的に評価するために、試験者らは、ETDRS(LogMAR)チャートおよび標準化された屈折および視覚鋭敏さのプロトコールを用いる。利用可能な処置後間隔の訪問を通じた、ベースラインからの平均ETDRS(LogMAR)最高補正視覚鋭敏さ(best corrected visual acuity)(BCVA)の評価は、統計的な視覚改善を決定するのを補助し得る。
【0216】
コントロール群と実験群との間のANOVA(群間の分散分析)を評価するために、利用可能な処置後間隔の訪問を通じた、ベースラインからのETDRS(LogMAR)視覚鋭敏さの平均の変化は、SAS/STATソフトウェア(SAS Institutes Inc,Cary,North Carolina)を用いる非構造共分散による反復測定分析で2群のANOVAを用いて比較する。
【0217】
研究の開始後の毒性評価は、その後の年に3ヵ月ごと、その後の年に4ヵ月ごと、そして引き続いて6ヵ月ごとの調査を含む。フェンレチニドおよびその代謝物N−(4−メトキシフェニル)−レチンアミドの血漿レベルもこれらの訪問の間に評価され得る。毒性評価は、フェンレチニドを用いる患者、およびコントロール群における患者を包含する。
【0218】
実施例2:A2E生成を減じるための式(I)の化合物の有効性の試験
実施例1に記載される、試験前、投与、投薬および毒性評価プロトコールを含む同じプロトコールのデザインをまた用いて、患者の眼でのA2Eの生成を減じるかそうでなければ制限するのにおける式(I)の化合物の有効性について試験する。
【0219】
A2Eの形成を測定またはモニタリングするための方法は、患者の眼におけるN−レチニリデン−ホスファチジルエタノールアミン、ジヒドロ−N−レチニリデン−N−レニチル−ホスファチジルエタノールアミン、N−レチニリデン−N−レチニル−ホスファチジルエタノールアミン、ジヒドロ−N−レチニリデン−N−レチニル−エタノールアミン、および/またはN−レチニリデン−ホスファチジルエタノールアミンの自己蛍光測定の使用を包含する。自己蛍光は、限定はしないが、共焦点走査レーザー検眼鏡を含むがこれに限定されない種々の装置を用いて測定される。Bindewaldら、Am.J.Ophthalmol.,137:556〜8(2004)または実施例1に注記される自己蛍光もしくは吸収スペクトル測定技術を参照のこと。特定の処置の有効性のための代用マーカーとして用いられ得る他の試験としては、実施例1に記載されるように、視覚鋭敏さおよび視野検査の使用、読み取り速度および/または読み取り鋭敏さ検査、暗点および/または地図状萎縮病変のサイズおよび数の測定が挙げられる。実施例1に記載される統計学的分析を使用する。
【0220】
実施例3:リポフスチン生成を減じるための式(I)の化合物の有効性の試験
実施例1に記載される、試験前、投与、投薬および毒性評価プロトコールを含む同じプロトコールのデザインをまた用いて、患者の眼でのリポフスチンの生成を減じるかそうでなければ制限するのにおける式(I)の化合物の有効性について試験する。実施例1に記載される統計学的分析も使用され得る。
【0221】
特定の処置の有効性のための代用マーカーとして用いられ得る試験としては、実施例1に記載されるような、視覚鋭敏さおよび視野検査の使用、読み取り速度および/または読み取り鋭敏さ検査、暗点および/または地図状萎縮病変のサイズおよび数の測定、ならびに患者の眼における特定の化合物の自己蛍光の測定/モニタリングが挙げられる。
【0222】
実施例4:ドルーゼン生成を減じるための式(I)の化合物の有効性の試験
実施例1に記載される、試験前、投与、投薬および毒性評価プロトコールを含む同じプロトコールのデザインをまた用いて、患者の眼でのドルーゼンの生成または形成を減じるかそうでなければ制限するのにおける式(I)の化合物の有効性について試験する。実施例1に記載される統計学的分析も使用され得る。
【0223】
コントロール群および実験群の両方におけるドルーゼンの進行性の形成を測定するための方法は、眼底写真の撮影、およびベースライン、追跡訪問の3、6、9および12ヶ月でのフルオレセイン血管造影を包含する。形態学的変化の証拠としては、(a)ドルーゼンのサイズ、特徴および分布;(b)脈絡膜血管新生の発達および進行ならびに(c)他の間隔の眼底変化または異常、における変化が挙げられる。特定の処置の有効性のための代用マーカーとして用いられ得る他の試験としては、実施例1に記載されるような、視覚鋭敏さおよび視野検査の使用、読み取り速度および/または読み取り鋭敏さ検査、暗点および/または地図状萎縮病変のサイズおよび数の測定、ならびに患者の眼における特定の化合物の自己蛍光の測定/モニタリングが挙げられる。
【0224】
実施例5:黄斑ジストロフィーの遺伝的試験
ヒトABCA4遺伝子における欠損は、スタルガルト病、錐体−桿体ジストロフィー、加齢性黄斑変性(萎縮型および浸出型の両方)および網膜色素変性症を含む5つの別個の網膜の表現型に関連すると考えられる。例えば、Allikmetsら、Science,277:1805〜07(1997);Lewisら、Am.J.Hum.Genet.,64:422〜34(1999);Stoneら、Nature Genetics,20:328〜29(1998);Allikmets,Am.J.Hum.Gen.,67:793〜799(2000);Kleveringら、Ophthalmology,111:546〜553(2004)を参照のこと。さらに、スタルガルト病の常染色体優性型は、ELOV4遺伝子における変異によって生じる。Karanら、Proc.Natl.Acad.Sci.(2005)を参照のこと。患者は、任意の以下のアッセイによってスタルガルト病を有すると診断され得る:(a)配列変異についてABCA4またはELOV4の全てのエキソンおよび隣接するイントロン領域を配列決定する工程を包含し得る直接配列決定変異検出ストラテジー;(b)ゲノムサザン(Genomic Southern)分析;(c)全ての公知のABCA4またはELOV4改変体を含むマイクロアレイアッセイ;ならびに(d)抗体およびウエスタン分析を用いて免疫細胞化学的解析とカップリングされた液体クロマトグラフィータンデム質量分析による分析。患者および患者の家族の履歴とともに眼底写真、フルオレセイン血管造影および走査レーザー検眼鏡画像によって、診断を予測および/または確認することができる。
【0225】
マウスおよびラットの研究
abca4マウスにおけるA2Eの形成をブロックするための式(I)の化合物の最適用量は、標準的な用量漸増研究を用いて決定され得る。式(I)の構造を有する化合物である、フェンレチニドを利用する1つの例示的なアプローチを以下に示す。しかし、式(I)の構造を有する他の化合物については同様のアプローチを利用してもよい。
【0226】
明順応マウス由来の網膜におけるオール−トランス・レチナールに対するフェンレチニドの効果は好ましくは、ヒト治療用量を囲む用量で決定される。好ましい方法としては、単回の朝の腹腔内用量でマウスを処置する工程を包含する。1日を通じて網膜のオール−トランス−レチナールの低下したレベルを維持するためには注射頻度の増大が必要であるかもしれない。
【0227】
ABCA4ノックアウトマウス ABCA4は、桿体および錐体の光受容器の外部セグメントディスクにおけるATP結合カセット(ABC)トランスポーターであるリムタンパク質(RmP)をコードする。RmPの輸送された基質は未知である。abca4遺伝子におけるノックアウト変異で生成されたマウス(Wengら、Cell,98:13〜23(1999)を参照のこと)は、RmP機能の研究のために、そして候補基質の有効性のインビボスクリーニングのために有用である。これらの動物は、複雑な眼の表現型を表す:(i)緩徐な光受容器変性、(ii)光曝露後の桿体感度の回復遅延、(iii)光退色後の光受容器外部セグメントにおけるatRALの上昇およびatROLの減少、(iv)外部セグメントにおける構成的に上昇したホスファチジルエタノールアミン(PE)、および(v)RPE細胞におけるリポフスチンの蓄積。Wengら、Cell,98:13〜23(1999)を参照のこと。
【0228】
光受容器変性の速度は、2つの技術によって、処置されたそして未処置の、野性型およびabca4のマウスでモニターされ得る。1つは、ERG分析による種々の時点でのマウスの研究であり、臨床診断手順から採用される。Wengら、Cell,98:13〜23(1999)を参照のこと。麻酔されたマウスの角膜表面に電極をおいて、光のフラッシュに対する電気的な応答を網膜から記録する。光受容器の光誘導性過分極から生じるα波の振幅は、光受容器変性の鋭敏な指標である。Kedzierskiら、Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.,38:498〜509(1997)を参照のこと。ERGは、生きた動物で行われる。従って、同じマウスを、経時的な研究の間に繰り返し分析してもよい。光受容器変性を定量するための決定的な技術は、網膜切片の組織学的な分析である。各々の時点で網膜に残る光受容器の数は、外部核層における光受容器の核の列をカウントすることによって決定される。
【0229】
組織抽出物 眼のサンプルを氷上で1mlのPBS、pH7.2中で解凍して、Duallガラス−ガラスホモジナイザーを用いて手でホモジナイズした。このサンプルは、1mlのクロロホルム/メタノール(2:1、v/v)の添加後にさらにホモジナイズした。このサンプルをホウケイ酸チューブに移し、4mlのクロロホルム中に脂質を抽出した。有機抽出物を3mlのPBS,pH7.2で洗浄し、次いでサンプルを3,000×gで10分間遠心分離した。クロロホルム相をデカントして、水相をさらに4mlのクロロホルムで再抽出した。遠心分離後、クロロホルム相をあわせて、サンプルを窒素ガス下で乾燥させた。サンプル残滓を100μlのヘキサンに再懸濁して、下に記載のようにHPLCによって分析した。
【0230】
HPLC分析 蛍光およびダイオードアレイ検出器を装備したAgilent1100シリーズの液体クロマトグラフィーを用いて、Agilent Zorbax Rx−Silカラム(5μm、4.6×250mm)で、クロマトグラフィー分析を達成した。移動相(ヘキサン/2−プロパノール/エタノール/25mM KHPO、pH7.0/酢酸;485/376/100/50/0.275、v/v)を1ml/分で送達した。サンプルピークの同定は、信頼できる標準の保持時間および吸収スペクトルに対して比較することによって行なわれた。データは、蛍光検出器から得たピーク蛍光(fluorescence)(L.U.)として報告される。
【0231】
実施例6:A2E蓄積に対するフェンレチニドの効果
実験群のマウスに対するフェニレチニドの投与、およびコントロール群のマウスに対するDMSO単独の投与を行い、A2Eの蓄積についてアッセイする。実験群には10〜25μlのDMSOに含まれる、1日あたり2.5〜20mg/kgのフェンレチニドを与える。50mg/kgという最高用量で効果が示されない場合、さらに高用量を試験する。コントロール群には、DMSO単独の10〜25μlの注射を与える。1ヶ月を超えない種々の実験期間にわたって腹腔内(i.p.)注射によって実験物質またはコントロール物質のいずれかをマウスに投与する。
【0232】
abca4マウスRPE A2Eの蓄積についてアッセイするために、1日あたり2.5〜20mg/kgのフェンレチニドを、2ヶ月齢のabca4マウスに対してi.p.注射によって与える。1ヵ月後、両方の実験およびコントロールのマウスを殺傷して、RPEにおけるA2EのレベルをHPLCによって決定する。さらに、N−レチニリデン−ホスファチジルエタノールアミン、ジヒドロ−N−レチニリデン−N−レニチル−ホスファチジルエタノールアミン、N−レチニリデン−N−レチニル−ホスファチジルエタノールアミン、ジヒドロ−N−レチニリデン−N−レチニル−エタノールアミン、および/またはN−レチニリデン−ホスファチジルエタノールアミンの自己蛍光または吸収スペクトルは、UV/Vis分光光度計を用いてモニターしてもよい。
【0233】
実施例7:リポフスチン蓄積に対するフェンレチニドの効果
実験群のマウスに対するフェニレチニドの投与、およびコントロール群のマウスに対するDMSO単独の投与を行い、リポフスチンの蓄積についてアッセイする。実験群には10〜25μlのDMSOに含まれる、1日あたり2.5〜20mg/kgのフェンレチニドを与える。50mg/kgという最高用量で効果が示されない場合、さらに高用量を試験する。コントロール群には、DMSO単独の10〜25μlの注射を与える。1ヶ月を超えない種々の実験期間にわたってi.p.(腹腔内)注射によって実験物質またはコントロール物質のいずれかをマウスに投与する。あるいは、1ヶ月を超えない種々の実験期間にわたって0.25μl/hrの速度で実験物質またはコントロール物質のいずれかを送達するポンプをマウスに移植してもよい。
【0234】
フェンレチニド処置したそして未処置のabca4マウスにおけるリポフスチンの形成に対するフェンレチニドの効果についてアッセイするために、電子顕微鏡または蛍光顕微鏡によって眼を検査してもよい。
【0235】
実施例8:桿体細胞死亡および桿体機能障害に対するフェンレチニドの効果
実験群のマウスに対するフェニレチニドの投与、およびコントロール群のマウスに対するDMSO単独の投与を行い、桿体細胞死亡および桿体機能障害に対するフェンレチニドの効果についてアッセイする。実験群には10〜25μlのDMSOに含まれる、1日あたり2.5〜20mg/kgのフェンレチニドを与える。50mg/kgという最高用量で効果が示されない場合、さらに高用量を試験する。コントロール群には、DMSO単独の10〜25μlの注射を与える。1ヶ月を超えない種々の実験期間にわたってi.p.注射によって実験物質またはコントロール物質のいずれかをマウスに投与する。あるいは、1ヶ月を超えない種々の実験期間にわたって0.25μl/hrの速度で実験物質またはコントロール物質のいずれかを送達するポンプをマウスに移植してもよい。
【0236】
約8週間にわたって1日あたり2.5〜20mg/kgのフェンレチニドに対して処置されるマウスを、ERG記録をモニタリングすることおよび網膜組織学を行うことによって、桿体細胞死亡または桿体機能障害に対するフェンレチニドの効果についてアッセイしてもよい。
【0237】
実施例9:光損傷からの保護についての試験
以下の研究は、Sieving,P.A.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.,98:1835〜40(2001)から適応させる。慢性の露光(light−exposure)研究のために、Sprague−Dawley雄性7週齢アルビノラットを、5ルクスの白色蛍光の12:12時間の明/暗サイクルで飼育する。0.18mlのDMSO中に含まれるi.p.注射による20〜50mg/kgのフェンレチニドの注射を、8週間の間慢性のラットに対して毎日3回与える。コントロールには0.18mlのDMSOをi.p.注射によって与える。ラットは最終の注射の2日後に殺傷する。50mg/kgという最高用量で効果が示されない場合、さらに高用量を試験する。
【0238】
急性の露光研究のためには、ラットを一晩暗野に馴れさせて、暗赤色燈のもとで0.18mlのDMSOに含まれるフェンレチニド20〜50mg/kgの単回i.p.注射を与えて、暗野に1時間保ち、その後、ERG測定の前に脱色光に曝す。ラットは、2,000ルクスの白色蛍光に48時間曝す。ERGを7日後に記録して、組織学を直ちに行う。
【0239】
ラットを安楽死させて、眼を取り出す。外核層の厚みおよび桿体外節(ROS)長さの柱細胞カウントを、両方の半球にまたがって200μmごとに測定して、その数を平均して、網膜全体にわたる細胞変化の測定値を得る。ERGを、処置の4および8週に慢性のラットから記録する。急性のげっ歯類では、錐体の寄与を誘発しない刺激を用いることにより、暗順応ERGによって、脱色光からの桿体回復を追跡する。錐体回復は、明所視ERGで追跡する。ERGの前に、動物を暗赤色燈で調製して、麻酔する。瞳孔を拡張させて、ERGを、金ワイア角膜ループを用いることによって同時に両方の眼から記録する。
【0240】
実施例10:フェンレチニドおよびアキュテインを含む併用療法
実施例6〜9に記載の方式でマウスおよび/またはラットを試験するが、ただし、さらに2つのアームを用いる。さらなるアームの1つでは、マウスおよび/またはラットの群を、1日あたり5mg/kg〜1日あたり50mg/kgという漸増する用量のAccutane(アキュテイン)で処理する。第二のさらなるアームでは、マウスおよび/またはラットの群を、1日あたり20mg/kgのフェンレチニド、および1日あたり5mg/kg〜1日あたり50mg/kgという漸増する用量のアキュテイン(Accutane)の組み合わせで処置する。併用療法の利点は、実施例6〜9に記載されるとおりアッセイする。
【0241】
実施例11:abca4ヌル変異体マウスにおけるリポフスチン(および/またはA2E)の蓄積に対するフェンレチニドの有効性:第I相−血清レチノールに対する用量応答および効果
動物およびヒトの被験体における血清レチナール減少に対するHPRの効果によって、本発明者らは、リポフスシンおよび毒性のビス−レチノイド結合体A2Eの減少も実現され得るという可能性を探ることになった。このアプローチについての原理は、科学的証拠の2つの独立した系統に依存する:1)公知の視覚サイクル酵素(11−シスレチノールデヒドロゲナーゼ)の阻害を介した眼のビタミンA濃度の減少が、リポフスチンおよびA2Eの顕著な減少を生じる;2)ビタミンA欠損食で飼育された動物がリポフスチン蓄積の劇的な減少を示す。従って、この実施例の目的は、abca4ヌル変異体マウスの眼の組織におけるリポフスチンおよびA2Eの膨大な蓄積を示す動物モデルにおいてHPRの効果を試験することであった。
【0242】
最初の研究は、血清レチノールに対するHPRの効果を検査することによって始まる。動物を3つの群に分けて、DMSO、10mg/kgのHPR、または20mg/kgのHPRのいずれかを14日間与えた。研究期間の最後に、血液は動物から回収して、血清を調製し、血清のアセトニトリル抽出物を逆相LC/MSによって分析した。UV可視スペクトルおよび質量/電荷分析を行って、溶出ピークの同一性を確認した。これらの分析から得たサンプルのクロマトグラムを以下に示す:図1a−HPRビヒクル、DMSO;図1b−10mg/kgのHPR;図1c−20mg/kgのHPRを投与されているabca4ヌル変異体マウス由来の抽出物。このデータによって、血清レチノールにおける用量依存性の減少が明確に示される。定量的なデータによって、10mg/kgのHPRでは、オール−トランス・レチノールは、40%に低下されることが示される。図11を参照のこと。20mg/kgのHPRについては、血清レチノールは、72%に低下する。図11を参照のこと。血清中のレチノールおよびHPRの定常状態の濃度(20mg/kgのHPRで)は、それぞれ2.11μMおよび1.75μMであることが確認された。
【0243】
これらの知見に基づいて、本発明者らは、HPR処置の間のレチノール減少の機構(単数または複数)をさらに探索しようとした。支持できる仮説は、HPRがRBP上のレチノール結合部位で競合することによってレチノールを置き換え得るということである。レチノールと同様に、HPRは、タンパク質蛍光の領域で光エネルギーを吸収(クエンチ)する;しかし、レチノールと異なり、HPRは、蛍光を放射しない。従って、当業者は、タンパク質(340nm)およびレチノール(470nm)の両方の蛍光の減少を観察することによってRBPホロタンパクからのレチノールの置き換えを測定できる。本発明者らは、上記の20mg/kgのHPRでの14日のトライアルから決定したのと同様のRBP−レチノール/HPR濃度を用いて競合結合アッセイを行った。これらの分析から得たデータによって、HPRは、生理学的な温度でRBPレチノールホロプロテインからレチノールを効率的に置換するということが明らかになる。図3bを参照のこと。RBPに対するHPRの競合的な結合は、用量依存性であってかつ飽和性であった。コントロールアッセイでは、レチノールの蛍光の減少は、タンパク質の蛍光の付随する増大を伴っていた。図3aを参照のこと。この効果は、37℃での時間の増大にともなうRBP−レチノールの解離定数の増大(親和性の減少)として、温度効果に起因するものであることが確認された。まとめると、これらのデータによって、RBPホロプロテインに対して、等モル相当を上回るHPRの増大(例えば、1.0μMのHPR、0.5μMのRBP)によって、レチノールのかなりの画分がインビボでRBPから置換されるようになることが示唆される。
【0244】
実施例12:abca4ヌル変異マウスにおけるリポフスチン(および/またはA2E)の蓄積に対するフェンレチニドの有効性:PhaseII−abca4ヌル変異体マウスの慢性処置
本発明者らは、abca4ヌル変異マウスでのA2EおよびA2E前駆体の減少に対するHPRの効果を評価する1ヶ月の研究を開始した。28日間にわたって毎日abca4ヌル変異体マウス(BL6/129、2ヶ月齢)に対してHPRをDMSO中で(20mg/kg、ip)で投与した。コントロールの年齢/系統の一致したマウスには、DMSOビヒクルのみを与えた。0、14および28日にマウスをサンプリングして(1群あたりn=3)、眼を摘出して、クロロホルム可溶性の構成成分(脂質、レチノイドおよび脂質−レチノイド結合体)を抽出した。頸椎脱臼によってマウスを屠殺して、眼を摘出して、凍結バイアル中で個々に急速冷凍した。次いでサンプル抽出物を、オンライン蛍光検出を用いるHPLCによって分析した。この研究からの結果によって、A2E前駆体、A2PE−H2における顕著な早期減少(図4aを参照のこと)、およびA2Eの引き続く減少(図4bを参照のこと)が示される。定量的な分析によって、HPR処置の28日後、A2PE−H2の70%減少およびA2Eの55%の減少が明らかになった。網膜電図検査および形態学的な表現型に対するHPR処置の効果を確認するために、同様の研究が行なわれてもよい。
【0245】
実施例13:網膜色素上皮におけるビタミンAホメオスターシスに対するフェンレチニドの効果
本発明者らは、インビトロの生化学的アッセイを用いて視覚サイクルの酵素またはタンパク質に対するHPRの効果を実証した。詳細には、ウシRPEから調製したメンブレンによる外因性のオール−トランス・レチノールの利用を研究した。本発明者らの研究からの代表的なデータを図5に示す。阻害データの動態的な分析によって、LRATの最大半分阻害は、約20μMのHPRで生じることが示される。RPEにおけるHPRの定常的なレベル(20mg/kgのHPRを28日間毎日腹腔内に投与されているマウスから決定した)は、5〜10μMにおよぶ。この点を考慮して、本発明者らは、上記のアッセイと同様のアッセイにおいて、オール−トランス・レチニル・エステルおよび11−シスレチノールの産生に対する10μMのHPRの効果を試験した。オール−トランス・レチノール利用(図6c)およびオール−トランス・レチニールエステル合成(図6a)における減少に加えて、このデータによって、11−シスレチノール生合成の統計学的に有意な阻害(p<0.05、星印によって示される)が明らかになる。図6bを参照のこと。内因性のレチノイドの存在において、外因性のオール−トランスレチノールの利用は、極度に低く、そして11−シスレチノールは、単に内因性のオール−トランスレチニルエステルから生成される。実際、本発明者らが内因性のレチニルエステルの存在下で本発明者らの実験を行なう場合、本発明者らは、11−シスレチノール生成に対するHPRの効果を観察しない;しかし、LRAT活性の阻害は続いている。従って、レチノイン酸は、視覚サイクルにおいて少なくとも2つの標的に影響すると考えられる。本発明者らは、11−シスレチノールの生合成のHPR誘導性の減少が、LRAT阻害およびオール−トランスレチニルエステルのレベルの減少を介して生じることを決定した。この状況では、イソメラーゼ酵素を基質について枯渇させて、11−シスレチノールの生成が減少する。
【0246】
凝集物中では、視覚発色団生合成の調節のために複数の標的が存在することがいくつかの研究から明確である。次いで、低下された視覚発色団は、A2Eが生成されるレチノイドであるオール−トランス・レチナールの結果的な減少をもたらす。これによって、HPRでの処置は、眼に送達されたレチノールの量を低下させることに対して全身性の効果を有するだけでなく、オール−トランス・レチナールの定常状態レベルを低下することに対する細胞内効果も有する。最終的な結果は、上記で証明されるように、RPEにおける低下したA2Eである。
【0247】
従って、本研究の結果の1つは、限定はしないが、哺乳動物の眼におけるオール−トランス・レチナール、N−レチニリデン−N−レチニルエタノールアミン、N−レチニリデン−ホスファチジルエタノールアミン、ジヒドロ−N−レチニリデン−N−レニチル−ホスファチジルエタノールアミン、N−レチニリデン−N−レチニル−ホスファチジルエタノールアミン、ジヒドロ−N−レチニリデン−N−レチニル−エタノールアミン、N−レチニリデン−ホスファチジルエタノールアミン、地図状萎縮、暗点、リポフスチンおよびドルーゼンの形成の制御を含む黄斑の変性およびジストロフィーの処置が、血清レチノールのレベルを低下させ、かつ例えば、LRAT活性を含む、視覚サイクルにおける少なくとも1つの酵素またはタンパク質を調節するという両方を可能にする因子(単数または複数)の投与によって影響され得るということである。黄斑もしくは網膜のジストロフィーおよび変性の処置、またはこのような疾患もしくは状態に関連する症状の軽減に対するこの二重作用のアプローチは、一般に適用可能なアプローチであると考えられ、そして本明細書に記載されるとおりフェンレチニドで観察されている。さらに、(a)視覚サイクルにおける少なくとも1つの酵素を調節することなく患者における血清レチナールのレベルを低下させる因子(単数または複数)の投与、または(b)患者における血清レチノールのレベルを低下することのない、視覚サイクルにおける少なくとも1つの酵素を調節する因子(単数または複数)の、患者自身による投与はまた、このようなジストロフィーおよび変性またはそれに関連する症状の処置を提供し得る。本明細書に記載のようなアッセイは、この二重作用を保有するさらなる因子であって、式(I)の構造を有する化合物から選択される因子および他の因子を含む因子、を選択するために用いられ得る。推定のリード化合物としては、レチノールの血清レベルに影響することが公知であるかまたは実証されている他の因子が挙げられる。
【0248】
インビボにおいて視覚サイクル酵素またはタンパク質に対するHPRの効果を決定するためには、内因性のレチノイド貯蔵からのロドプシンの再生は、HPR処置マウスおよび年齢/株のマッチしたコントロールにおいて試験され得る。
【0249】
実施例14:フェンレチニドおよびスタチンに関与する併用療法
マウスおよび/またはラットを、実施例6〜9に記載の方式で、ただし2つのさらなるアームを用いて試験する。さらなるアームの1つでは、マウスおよび/またはラットの群を、適切なスタチン、例えば:Lipitor(登録商標)(Atorvastatin)、Mevacor(登録商標)(Lovastatin)、Pravachol(登録商標)(Pravastatinナトリウム)、ZocorTM(Simvastatin)、Leschol(フルバスタチンナトリウム)、などを、重量に基づいた最適用量で処置する。第二のさらなるアームでは、マウスおよび/またはラットの群を、1日あたり20mg/kgのフェンレチニド、および前の工程で用いたスタチンの漸増用量の組み合わせで処置する。このようなスタチンの示唆されるヒト用法は、例えば:Lipitor(登録商標)(Atorvastatin)10〜80mg/日、Mevacor(登録商標)(Lovastatin)10〜80mg/日、Pravachol(登録商標)(Pravastatinナトリウム)10〜40mg/日、ZocorTM(Simvastatin)5〜80mg/日、Leschol(フルバスタチンナトリウム)20〜80mg/日である。マウスおよび/またはラットの被験体のスタチンの用量は、体重に基づいて算出されるべきである。併用療法の利点は、実施例6〜9に記載されるようにアッセイする。
【0250】
実施例15:フェンレチニド、ビタミンおよびミネラルを包含する併用療法
マウスおよび/またはラットを、実施例14に記載された方式で、ただし選択されたビタミンおよびミネラルを用いて試験する。ビタミンおよびミネラルと組み合わせたフェンレチニドの投与は、黄斑変性の発症または再発を阻害するのに有効な量で、経口的に投与されても、非経口的に投与されてもよい。試験用量は最初には、1日あたり約20mg/kgのフェンレチニドの範囲で、100〜1000mgのビタミンC、100〜600mgのビタミンE、10,000〜40,000IUのビタミンA、50〜200mgの亜鉛および1〜5mgの銅とともに15〜20週間である。併用療法の利点は、実施例6〜9に記載のとおりアッセイする。
【0251】
実施例16:細胞性レチンアルデヒド結合タンパク質(CRALBP)に対する結合の蛍光クエンチ研究
0.5μMのアポ−CRALBPを、PBSに含有される1μMの11−シスレチナール(11cRAL)、オール−トランス・レチナール(atRAL)またはN−4−ヒドロキシフェニルレチンアミド(HPR)とともに室温で1時間インキュベートした。コントロールとして、同じ容積のDMSOをApo−CRABLP溶液に添加した。280nmの励起波長および2nmの帯域通過によって290nm〜500nmの間で発光スペクトルを測定した(図7を参照のこと)。
【0252】
DMSOコントロールと比較して、3つ全てのレチノイドは有意にCRALBPの蛍光発光をクエンチし、これは11cRALで最高程度のクエンチングを有し、HPRで最低を有し、このことは、3つ全ての化合物がCRALBPに結合することを示唆している。蛍光クエンチングは、タンパク質芳香族残基と結合したレチノイドとの間の蛍光共鳴エネルギー移動から生じるようである。
【0253】
実施例17:CRALBPに対する結合のサイズ排除クロマトグラフィー研究
4μMのアポ−CRALBPを、PBSに含有される8μMの11cRAL、atRALまたはHPRとともに室温で1時間インキュベートした。コントロール実験では、等価な容積のDMSOを、CRALBP溶液に添加した。50μlの各々のサンプル混合物を、BioRad Bio−Sil SEC125 Gel Filtration Column(300×7.8mm)によって分析した。
【0254】
DMSOコントロール(図8aを参照のこと)では、アポ−CRALBPはマルチマーとして溶出した(溶出ピーク8.1ml);一方、リガンド−結合ホロタンパク質は、単量体型にシフトした(溶出ピーク9.4ml)。11cRALの存在下では、ほとんどのCRALBPは、リガンドに結合されて、モノマー溶出位置で強力な430nmの吸光度を示す(図8bを参照のこと)、atRALの半分未満がCRALBPに結合され(図8cを参照のこと)、そして極少量のHPRがCRALBPに結合され、350nmの吸光度ピークによって示される(図8dを参照のこと)。
【0255】
実施例18:レチノール結合タンパク質(RBP)に対するMPR結合の蛍光クエンチ研究
0.5μMのアポRBPを、それぞれ、PBSに含有される0.0.25、0.5、1および2μMのMPRとともに室温で1時間インキュベートした。コントロールとして、同じ濃度のアポRBPを1μMのHPRまたは1μMのatROLとともにインキュベートした。全ての混合物が0.2%のエタノール(v/v)を含んだ。発光スペクトルは、290nm〜550nmで、280nmおよび3nmの帯域通過の励起波長を用いて測定した。
【0256】
図9に示されるとおり、MPRはRBP蛍光の濃度依存性クエンチングを示し、このクエンチングは、0.5μMのRBPについてMPRの1μMで飽和した。観察された蛍光クエンチングは、タンパク質芳香族残基と結合したMPR分子との間で蛍光共鳴エネルギー移動に起因するようであるので、MPRは、RBPに結合するということが提唱される。MPRによるクエンチングの程度は、RBPに結合する2つの他のリガンドである、atROLおよびHPRによるクエンチングの程度よりも小さい。
【0257】
実施例19:RBPに対するトランスサイレチン(TTR)結合のサイズ排除研究
10μMのアポRBPを、PBSに含有される50μMのMPRとともに室温で1時間インキュベートした。次いで、10μMのTTRをこの溶液に添加して、その混合物を室温でさらに1時間インキュベートした。50μlのサンプル混合物をTTR添加の有無とともに、BioRad Bio−Sil SEC125 Gel Filtration Column(300×7.8mm)によって分析した。コントロール実験では、atROL−RBPおよびatROL−RBPTTR混合物は、同じ方式で分析した。
【0258】
図10aに示されるとおり、MPR−RBPサンプルは、360nmで強力な吸光度を有するRBP溶出ピーク(11mlで)を示し、このことは、RBPがMPRに結合することを示す;TTRとのインキュベーション後、この360nmの吸光度は、RBP溶出ピークに存在するが、TTR溶出ピーク(8.6mlで)は、明確な360nmの吸光度を含まず(図10bを参照のこと)、このことは、MPR−RBPが、TTRに結合しなかったことを示す。atROL−RBPコントロール実験では、RBP溶出ピークは、強力な330nmの吸光度を示した(図10cを参照のこと);TTRとのインキュベーション後、この330nmの吸光度の半分より多くがTTR溶出ピークにシフトして(図10dを参照のこと)、このことは、atROL−RBPがTTRに結合することを示している。従って、MPRはRBPに対するTTRの結合を阻害する。
【0259】
実施例20:HPR濃度の関数としての血清レチノールの分析
ABCA4ヌル変異体マウスに、28日間毎日、DMSOに含まれるHPRの示された用量を与えた(i.p.)(n=投与群1匹あたり4匹のマウス)。研究期間の終りには、血液サンプルを採取して、血清を調製した。血清タンパク質のアセトニトリル沈殿後、レチノールおよびHPRの濃度をLC/MSによって、可溶性相から決定した(図11を参照のこと)。溶出された化合物の同一性は、UV−vis吸光光度法およびサンプルピークと信頼できる標準物との同時溶出によって確認した。
【0260】
実施例21:ABCA4ヌル変異体マウスにおけるレチノール、A2PE−HおよびA2Eの減少に対するHPR濃度の相関
実施例25の図18のパネルA〜Gに示されるデータからの群平均(28日時点)をプロットして、血清HPRの増大と、血清レチノールの減少との間の強力な相関を図示する(図12を参照のこと)。血清レチノールにおける減少は、A2Eおよび前駆体化合物(A2PE−H)の減少と極めて相関している。血清レチノール減少が20%しかない場合、2.5mg/kgの用量群においてA2PE−Hの顕著な減少(約47%)が観察される。この不均衡な減少の理由は、他の群に比較して2ヶ月齢の動物の群では眼のレチノイド含量が生得的に低いことに関係している。これらの動物がさらに長期間にわたって2.5mg/kgの用量で維持されていた場合、A2Eのさらに大きい減少がまた実現され得ると考えられる。
【0261】
実施例22:細胞性レチンアルデヒド結合タンパク質(CRALBP)に対するHPR結合の蛍光分析
(11−シスレチナール(11cRAL)を用いるCRALBPタンパク質蛍光のクエンチング)組み換えアポ−CRALBP(0.5μM)の蛍光発光は、280nmの励起を用いて測定した(「no 11cRAL」)。天然のリガンド(11cRAL)の追加によって、CRALBPタンパク質蛍光を濃度依存性の様式でクエンチした(図13Aを参照のこと)。これらのデータによって、タンパク質−リガンド相互作用を確認するために用いた技術的なアプローチを確証する。
【0262】
(HPRによるCRALBPタンパク質蛍光のクエンチング)このデータは、上記のものと同じ実験デザインを用いて得られた。組み換えアポ−CRALBPの蛍光発光は、280nmの励起を用いて測定した(「no HPR」)。HPRの追加によって、CRALBPタンパク質蛍光を、天然のリガンドで観察されたのと同様の濃度依存性の様式でクエンチした(図13bを参照のこと)。これらのデータによって、CRALBPは生理学的な濃度でHPRに結合することが強力に示唆される。
【0263】
実施例23:細胞性レチンアルデヒド結合タンパク質(CRALBP)に対するHPR結合の分光分析
CRALBPに対するHPR結合の蛍光分析の間に得たデータを確認するために、アフィニティークロマトグラフィーおよび分光分析を用いて第二の分析を行った。組み換えアポCRALBPは、発現クローニング後にNi+アフィニティーカラム上でタンパク質を精製するために利用されるヒスチジンタグと構築された。ここでは、本発明者らは、分光光度分析のためにタンパク質および任意のタンパク質リガンド種を特異的に「トラップ(trap)」するためにアポCRALBPのこの特徴を利用した。アポCRALBP(10μM)および11cRAL(20μM)またはHPR(20μM)のいずれかを含有する2つの結合混合物を調製した。アフィニティーマトリックス上への非特異的なリガンド結合の分析のためのコントロール実験では、本発明者らは、結合緩衝液中に11cRAL(20μM)またはHPR(20μM)のみを含有する2つのさらなる混合物を調製した。結合混合物は、別のNi+アフィニティーカラムを通過させて、そのカラムを広範に洗浄して、未結合のタンパク質およびリガンドを溶出した。溶出緩衝液の添加後、その溶出画分を分光計によって分析した。11cRAL+アポCRALBP結合混合物(陽性のコントロール)の分光分析によって、スペクトルがCRALBPに結合した11cRALと一致する場合、この技術が有効であることを確認した。重要なことに、そのデータはまた、HPRがアポ−CRALBPに結合することを示す。HPRがアポCRALBPに結合しなかった場合、タンパク質吸光度(280nm)のみが、溶出されたHPR+アポ−CRALBPサンプル中で観察される。代わりに、2つの最大吸光度がみられる:1つは280nmであって、第二は360nmであって、これは、HPRの吸収に起因する(図14を参照のこと)。
【0264】
本発明者らは、アポCRALBPに対する11cRALおよびHPRの結合についての解離定数(K)の分析を行った(図15を参照のこと)。蛍光クエンチングデータの変換によって、各々のリガンドについて同様の値(約30nM)が明らかになった。この計算は、タンパク質蛍光を完全にクエンチするのに必要なリガンド濃度に基づく。このデータによって、11cRALおよびHPRの両方がアポCRALBP蛍光を約1.5μMで最大にクエンチすることが明らかである。従って、アポCRALBPは、11シス特異的なレチノイド結合タンパク質として記載されるが、これはHPRにも同様に結合するようである。RPEにおけるHPRの濃度は、動物でのトライアルの間に(2.5mg/kgという最低の治療用量でさえ)30nMをかなり超えるという事実によって、同程度のHPR媒介性阻害が、視覚サイクルにおける視覚発色団の生合成の間に期待されるということが示唆される。
【0265】
実施例24:網膜色素上皮(RPE)におけるビタミンAのエステル化に対するHPRの効果
視覚サイクルにおけるHPRについての第二の標的は、インビトロの生化学的アッセイを用いて同定した。レシチン・レチノール・アシル・トランスフェラーゼ(LRAT)は、レチノールのレチニルエステルへの変換を触媒する。LRATは、レチノール−レチニルエステルの恒常性について重要なだけでなく、視覚発色団生合成についての基質の生成のためにも重要である。図16のパネルAに示されるデータは、レチニルエステル合成の速度に対するHPRの阻害性効果を図示する。このアッセイでは、ウシRPEミクロソームを酵素の供給源として用い、そしてオール−トランス・レチノール(atROL)が基質である。HPRは、正味のレチニルエステル合成を濃度依存性の様式で減少する。パネルAにおける動的データの二次変換(Eadie−Hofstee)によって、阻害の様式が競合的であることが明らかになる(図16、パネルBを参照のこと)。従って、HPRは、LRAT上での結合部位についてatROLと競合する。みかけの阻害定数(K)は約6μMであることが確認された。このことは、6μM HPRでは、レチニルエステル生合成の速度が50%まで低下されることを意味する。別の研究では、本発明者らは、RPEにおけるHPR濃度が、HPRの10mg/kgの用量で10μMに接近することを確認した。
【0266】
まとめると、実験20〜24に記載されたデータから、動物トライアルの間のA2Eおよびその前駆体の蓄積の減少に対するHPRの顕著な効果は、血清レチノールを低下することに対する全身的な効果、および視覚サイクル内の細胞内効果の両方に起因したということが明らかである。
【0267】
実施例25:レチノイドの定常状態濃度、A2E発蛍光団、および網膜の生理学に対するHPRの効果
明順応DMSO−およびHPR−処置マウスでのレチノイド組成物の分析(図17、パネルA)によって、HPR処置(28日間毎日10mg/kg)の結果として視覚サイクルレチノイドの約50%の減少が示される。図17のパネルBおよびパネルCによって、HPRが、これらのマウスにおける視覚発色団の再生に影響しないことが示される(パネルBは、視覚発色団生合成であり、パネルCは、退色された発色団リサイクリングである)。図17のパネルD〜Fは、桿体機能(パネルD)、桿体および錐体の機能(パネルE)および光退色からの回復(パネルF)の電気生理学的測定である。唯一の著名な相違はHPR処置マウスでの暗順応の遅れである(パネルF)。
【0268】
ABCA4ヌル変異体マウスは、28日間にわたって毎日、DMSOに含まれるHPRまたはDMSO単独の示した用量を与えられた(1処置群あたりn=16マウス)。研究の開始時点で、2.5mg/kg群のマウスは2ヶ月齢であって、他の処置群のマウスは3ヶ月齢であった。示した時点では、各々の群(n=4)から、A2E前駆体化合物(図18、A2PE−H、パネルA、CおよびEを参照のこと)およびA2E(図18、パネルB、DおよびFを参照のこと)の分析のために代表的なマウスを採った。眼を摘出して、二等分し、そしてクロロホルム/メタノール−水相分配によって後極から脂質可溶性成分を抽出した。サンプル抽出物をLCによって分析した。溶出された化合物の同一性は、UV−vis吸光光度法およびサンプルピークと信頼できる標準物との同時溶出によって確認した。注記:10mg/kgの群におけるほぼ年齢および株のマッチしたマウスでの制限によって、14日の間隔で分析が妨げられた。このデータによって、研究期間中のA2PE−HおよびA2Eの用量依存性の減少が示される。
【0269】
図18のパネルG〜Iによって、HPRがabcrヌル変異体マウス(スタルガルトの動物モデル)のRPEにおけるリポフスチン自己蛍光を有意に減少させるという形態学的/組織学的な証拠が示される。処置条件は上記のとおりである。HPR処置動物における自己蛍光のレベルは、年齢のマッチした野性型の動物でのレベルに匹敵する。図19は、DMSOおよびHPR処置動物からの網膜の光学顕微鏡画像を示す。網膜の細胞構造の完全性に異常な形態も損傷もないことが観察された。
【0270】
網膜色素上皮(RPE)におけるリポフスチンの蓄積は、網膜の種々の変性疾患において観察された共通の生理学的な特徴である。リポフスチン顆粒内に存在する毒性のビタミンAに基づく発蛍光団(A2E)は、RPEおよび光受容体細胞の死滅に関係している。これらの実験では、本発明者らは、血清ビタミンA(レチノール)の減少に基づく治療アプローチの有効性を評価するために、加速されたリポフスチン蓄積を明らかにする動物モデルを使用する。フェンレチニドは血清レチノールを強力かつ可逆的に減少させる。スタルガルト病遺伝子(ABCA4)におけるヌル変異を保有するマウスに対するHPRの投与は、血清レチノール/レチノール結合タンパク質における顕著な減少、ならびにRPEにおけるA2Eおよびリポフスチンの自己蛍光の蓄積停止を生じた。生理学的には、視覚発色団のHPR誘導性の減少は、暗順応における軽度の遅延として表れた;発色団再生の動態は、正常であった。重要なことに、ビタミンAエステル化および発色団動員に対するHPRの特定の細胞内効果も同定された。これらの知見によって、A2E生合成のビタミンA依存性の性質が実証され、そしてリポフスチンに基づく網膜疾患に罹患しているヒト患者に対して容易に移転可能である治療的アプローチが確証される。
【0271】
実施例26:HPR治療の利点は休薬日の間、継続する
HPR(DMSO中に10mg/kg)を、28日の期間中、毎日ABCA4−/−マウスに投与した。コントロールのABCA4−/−マウスには、同じ期間、DMSOのみを与えた。28日の処置後のA2E前駆体(A2PE−H)およびA2Eの生化学的(HPLC)分析によって、HPR処置マウスの眼におけるこれらの発蛍光団の減少が明らかになった(図18)。蛍光顕微鏡によるさらなる分析によって、この生化学的データが裏付けられ、そしてHPR−処置ABCA4−/−マウスのリポフスチン自己蛍光レベルが、未処置の野性型マウスで観察されたレベルに匹敵することが明らかになった(図18)。光学顕微鏡による組織学的検査では、網膜細胞構造または形態学の変更は示されなかった(図19)。重要なことに、リポフスチン自己蛍光で観察された減少は、HPR治療の休止後長く継続する。HPR(10mg/kg)またはDMSOの投与を、処置の28日後に停止し、そして2週後および4週後にA2Eおよび前駆体のレベルを再評価した。
【0272】
本発明者らは、HPLCによってアイカップ(eyecup)抽出物を検査して、吸光度および蛍光定量によって検出を行った。示されたピークの同一性は、オンラインのスペクトル分析によって、および信頼できる標準物との同時溶出によって確認した。このデータによって、HPR治療(図20、パネルA)、A2Eおよび前駆体(A2PE−HおよびA2PE)で以前に維持されていた動物では、HPRの用量を与えることなしに12日後でさえ(すなわち、12日の薬物休養日)、レベルはコントロールマウス(図20、パネルB)に対して有意に低下したままであることが示される。同様の結果が28日の休薬後にマウスで観察された。A2Eおよび前駆体(A2PE−HおよびA2PE)のレベルは、コントロールのマウスに対して有意に低いままである(図20、パネルCの処置マウスと、図20、パネルDのコントロールマウスとを比較する)。さらに、12日または28日の休薬日の後、A2Eおよび前駆体(A2PE−HおよびA2PE)のレベルは、28日の処置の直後にこのレベルでまたはほぼそのレベルで維持された(すなわち、コントロールに対して約50%の減少)が、28日の休薬後は、A2Eおよび前駆体の量(A2PE−HおよびA2PE)は、12日の休薬レベルに対して数パーセントのポイントまで増大した。HPR休薬日での動物の眼におけるA2Eおよび前駆体(A2PE−HおよびA2PE)のレベルの持続的な減少にかかわらず、本発明者らは、28日の休薬日での動物の眼においてHPRまたはHPR代謝物(例えば、MPR)のいずれも検出できなかった。図20、パネルCおよびパネルDのトレースによって、示されたピークに関連する自己蛍光の強度が示される。ピーク強度は、A2E、A2PEおよびA2PE−Hの量で追跡されることが明らかである。
【0273】
これらのデータは、高用量での臨床有効性の証拠の後に、減少したHPR用量に対して患者を維持することによって臨床トライアルの間の毒性に関係する。この分析は、顕微鏡によるさらなる実証の必要性を省き得る。本発明者らの知る限り、この効果は、スタルガルト病、萎縮型加齢性黄斑変性症、リポフスチンに基づく網膜変性、光受容器変性、および地図状萎縮からなる群より選択される眼科的条件または形質を処置するための他の方法では観察されていない。哺乳動物の眼におけるN−レチニリデン−N−レチニルエタノールアミンの形成の減少のための方法でも、哺乳動物の眼におけるリポフスチンの形成の減少のための方法でも、この効果は観察されていない。
【0274】
この効果は、血清レチノールにおける長期減少には起因し得ない。なぜなら血清レチノールは、最後のHPR用量の48時間後にベースラインまで戻ったからである。HPRがRPE内で蓄積するという事実、ならびに視覚サイクルの特定の酵素およびタンパク質のHPR媒介性阻害の本発明者らの特定によって、休薬の間のHPRの潜在性の有益な効果は、視覚サイクル内の効果に起因することが示唆される。さらに、HPRは、血清レチノールレベルを減少し、これが処置された動物の眼におけるレチノールのレベルの減少をもたらす。レチノールのレベルが眼で一旦減少されれば、眼におけるレチノールレベルの引き続く増大には時間差が存在する。単独で、または組み合わせて、眼におけるA2E、A2PEおよびA2PE−Hの生成は、血清または眼におけるHPRの非存在にかかわらず低いままである。
【0275】
本明細書において開示され、特許請求される方法の全ては、本開示に照らして過度の実験なしに行なわれ、かつ実行され得る。本発明の概念、趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の方法に対して、そしてこの方法の工程または工程の順序においてバリエーションが加えられてもよいことが当業者に明らかである。さらに詳細には、臨床的かつ生理学的の両方で関連する特定の因子は本明細書に記載される因子に置換されてもよいが、同じまたは類似の結果が達成され得るということが明らかである。当業者に明白なこのような類似の置換および改変の全ては、添付の特許請求の範囲によって規定されるとおり本発明の趣旨、範囲および概念内であるとみなされる。
【図面の簡単な説明】
【0276】
【図1】図1a〜図1cは、血清のアセトニトリル抽出物の種々の逆相LC分析を図示する。この血清は、DMSO(図1a)、10mg/kgのN−4−(ヒドロキシフェニル)レチンアミド(HPR)(図1b)、または20mg/kgのHPR(図1c)のいずれかを14日間投与されたマウスから得た。
【図2a】図2aは、10mg/kgのHPRの注射後のマウスにおける時間の関数としてオール−トランス・レチノール(atROL)およびHPRの眼内濃度を図示する。
【図2b】図2bは、DMSO、10mg/kgのHPRまたは20mg/kgのHPRでの14日の処置後のマウスにおけるオール−トランス・レチノールおよびHPRの血清濃度を図示する;この図の最新でかつ正確なバージョンについては図11を参照のこと。
【図3a】図3aは、蛍光クエンチングによって測定した場合のレチノールとレチノール結合タンパク質との間の相互作用についてのコントロールの結合アッセイを図示する。
【図3b】図3bは、蛍光クエンチングによって測定した場合の、HPR(2μM)の存在下におけるチノールとレチノール結合タンパク質との間の相互作用についての結合アッセイを図示する。
【図4a】図4aは、abca4ヌル変異体マウスにおけるA2PE−H生合成に対するHPRの効果を図示する。
【図4b】図4bは、abca4ヌル変異体マウスにおけるA2E生合成に対するHPRの効果を図示する。
【図5】図5は、インビトロの生化学的アッセイを用いるRPE中のLRAT活性に対するHPR投与量の効果を図示する。
【図6a】図6aは、インビトロの生化学的アッセイを用いるオール−トランス・レチニルエステル生合成に対するHPRの効果を図示する。
【図6b】図6bは、インビトロの生化学的アッセイを用いる11−シス・レチノール生合成に対するHPRの効果を図示する。
【図6c】図6cは、インビトロの生化学的アッセイを用いるオール−トランス・レチノール利用に対するHPRの効果を図示する。
【図7】図7は、蛍光クエンチングによって測定した場合の、細胞性レチンアルデヒド結合タンパク質(CRALBP)と種々のリガンドとの相互作用を図示する。
【図8】図8は、サイズ排除クロマトグラフィーおよびUV/可視分光光度法(Visible spectrophotometry)によって測定した場合の、CRALBPと種々のリガンドとの相互作用を図示する。
【図9】図9は、蛍光クエンチングによって測定した場合の、レチノール結合タンパク質(RBP)に対するN−4−(メトキシフェニル)レチンアミド(MPR)の結合を図示する。
【図10】図10は、サイズ排除クロマトグラフィーおよびUV/可視分光光度法(Visible spectrophotometry)によって測定した場合の、RBP−MPRに対するTTR結合の調節を図示する。
【図11】図11は、フェンレチニド濃度の関数としての血清レチノールの分析を図示する。
【図12】図12は、ABCA4ヌル変異体マウスにおける、レチノール、A2PE−HおよびA2Eの減少に対して関連するフェンレチニド濃度の相関プロットを図示する。
【図13】図13は、(A)11−シス−レチナール(11 cRAL)を用いるCRALBPタンパク質蛍光のクエンチング、および(B)フェンレチニドを用いるCRALBPタンパク質蛍光のクエンチングを図示する。
【図14】図14は、CRALBPに対するフェンレチニド結合の分光光度分析を図示する。
【図15】図15は、11cRALまたはフェンレチニドのいずれかの濃度の関数としてアポ−CRALBPの蛍光クエンチングを図示する。
【図16】図16は、網膜色素上皮におけるビタミンAのエステル化に対するフェンレチニドの効果を図示する。
【図17】図17は、光順応DMSOおよびHPR処理マウスでのレチノイド組成物(パネルA);視覚的発色団の再生に対するHPRの効果(パネルB);漂白された発色団のリサイクルに対するHPRの効果(パネルC);ならびに桿体機能の電気生理学的測定(パネルD)、桿体および錐体の機能(パネルE)、および光退色からの回復(パネルF)を図示する。
【図18】図18は、フェニレチニド用量および処置期間の関数としてA2PE−HおよびA2Eレベルの分析(パネルA〜F)、ならびにフェンレチニド処置の関数として、ABCA4ヌル変異体マウスのRPEにおけるリポフスチン自己蛍光(パネルG〜I)を図示する。
【図19】図19は、DMSOおよびHPR処置された動物からの網膜の光学顕微鏡画像を図示する。
【図20】図20は、12日の休薬日後、コントロールマウス(パネルA)の、そしてHPR治療に対して前に維持されたマウス(パネルB)の、アイカップ(eyecup)抽出物からの吸光度および蛍光クロマトグラム;28日の休薬日後、コントロールマウス(パネルC)の、そしてHPR治療に対して前に維持されたマウス(パネルD)の、アイカップ抽出物からの吸光度および蛍光クロマトグラムを図示しており;このヒストグラムは、パネルA〜Dにおいて記載されたマウスの相対的なA2Eレベルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物の眼においてN−レチニリデン−N−レチニルエタノールアミンの形成を軽減するための方法であって、以下の構造:
【化1】

を有する第一の化合物であって、
が、NR、O、S、CHRからなる群より選択され;Rが(CHR−L−Rであり、xが0、1、2または3であり;Lが単結合または−C(O)−であり;RがH、(C−C)アルキル、F、(C−C)フルオロアルキル、(C−C)アルコキシ、−C(O)OH、−C(O)−NH、−(C−C)アルキルアミン、−C(O)−(C−C)アルキル、−C(O)−(C−C)フルオロアルキル、−C(O)−(C−C)アルキルアミン、および−C(O)−(C−C)アルコキシからなる群より選択される部分であり;かつRが(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、アリール、(C−C)シクロアルキル、(C−C)シクロアルケニル、および複素環からなる群より選択される、1〜3個の独立して選択された置換基で必要に応じて置換される、Hまたは部分である化合物であって;ただしこれは、xが0であり、かつLが単結合である場合、RがHでないという条件下である化合物;あるいはその活性な代謝物、または薬学的に受容可能なプロドラッグもしくは溶媒和化合物の有効量を少なくとも1回該哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
【請求項2】
哺乳動物の眼においてリポフスチンの形成を軽減させるための方法であって、以下の構造:
【化2】

を有する第一の化合物であって、
が、NR、O、S、CHRからなる群より選択され;Rが(CHR−L−Rであり、xが0、1、2または3であり;Lが単結合または−C(O)−であり;RがH、(C−C)アルキル、F、(C−C)フルオロアルキル、(C−C)アルコキシ、−C(O)OH、−C(O)−NH、−(C−C)アルキルアミン、−C(O)−(C−C)アルキル、−C(O)−(C−C)フルオロアルキル、−C(O)−(C−C)アルキルアミン、および−C(O)−(C−C)アルコキシからなる群より選択される部分であり;かつRが、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、アリール、(C−C)シクロアルキル、(C−C)シクロアルケニル、および複素環からなる群より選択される、1〜3個の独立して選択された置換基で必要に応じて置換される、Hまたは部分である化合物であって;ただしこれは、xが0であり、かつLが単結合である場合、RがHでないという条件下である化合物;あるいはその活性な代謝物、または薬学的に受容可能なプロドラッグもしくは溶媒和化合物の有効量を該哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
【請求項3】
哺乳動物の眼において乾燥型の加齢性黄斑変性症を処置するための方法であって、以下の構造:
【化3】

を有する第一の化合物であって、
が、NR、O、S、CHRからなる群より選択され;Rが(CHR−L−Rであり、xが0、1、2または3であり;Lが単結合または−C(O)−であり;RがH、(C−C)アルキル、F、(C−C)フルオロアルキル、(C−C)アルコキシ、−C(O)OH、−C(O)−NH、−(C−C)アルキルアミン、−C(O)−(C−C)アルキル、−C(O)−(C−C)フルオロアルキル、−C(O)−(C−C)アルキルアミン、および−C(O)−(C−C)アルコキシからなる群より選択される部分であり;かつRが、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、アリール、(C−C)シクロアルキル、(C−C)シクロアルケニル、および複素環からなる群より選択される、1〜3個の独立して選択された置換基で必要に応じて置換される、Hまたは部分である化合物であって;ただしこれは、xが0であり、かつLが単結合である場合、RがHでないという条件下である化合物;あるいはその活性な代謝物、または薬学的に受容可能なプロドラッグもしくは溶媒和化合物の有効量を該哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
【請求項4】
xが0である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
が、NHであり、かつRがフェニル基であり、該フェニル基が1つの置換基を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記置換基が、ハロゲン、OH、O(C−C)アルキル、NH(C−C)アルキル、O(C−C)フルオロアルキルおよびN[(C−C)アルキル]からなる群より選択される部分である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記置換基がOHまたはOCHである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記化合物が
【化4】

あるいはその活性代謝物、または薬学的に受容可能なプロドラッグもしくは溶媒和化合物である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
有効量の化合物の複数回の投与を含み、該複数の投与の間の時間が少なくとも1日である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
休薬日をさらに含み、前記化合物の投与が一時停止されるか、または該投与された化合物の用量が一時的に減少させられる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記休薬日が少なくとも7日続く、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
有効量の前記化合物が哺乳動物に対して経口投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記哺乳動物が、スタルガルト病、乾燥型の加齢性黄斑変性症、リポフスチンに基づく網膜変性、光受容体の変性および地図状萎縮症からなる群より選択される、眼の状態または形質を有するヒトである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
哺乳動物の眼においてN−レチニリデン−ホスファチジルエタノールアミン、ジヒドロ−N−レチニリデン−N−レチニル−ホスファチジルエタノールアミン、N−レチニリデン−N−レチニル−ホスファチジルエタノールアミン、ジヒドロ−N−レチニリデン−N−レチニル−エタノールアミン、および/またはN−レチニリデン−ホスファチジルエタノールアミンの自己蛍光を測定する工程をさらに包含する、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
ヒトの眼において地図状萎縮症を軽減するための方法であって、以下の構造:
【化5】

を有する第一の化合物であって、
が、NR、O、S、CHRからなる群より選択され;Rが(CHR−L−Rであり、xが0、1、2または3であり;Lが単結合または−C(O)−であり;RがH、(C−C)アルキル、F、(C−C)フルオロアルキル、(C−C)アルコキシ、−C(O)OH、−C(O)−NH、−(C−C)アルキルアミン、−C(O)−(C−C)アルキル、−C(O)−(C−C)フルオロアルキル、−C(O)−(C−C)アルキルアミン、および−C(O)−(C−C)アルコキシからなる群より選択される部分であり;かつRが、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、アリール、(C−C)シクロアルキル、(C−C)シクロアルケニル、および複素環からなる群より選択される、1〜3個の独立して選択された置換基で必要に応じて置換される、Hまたは部分である化合物であって;ただしこれは、xが0であり、かつLが単結合である場合、RがHでないという条件下である化合物;あるいはその活性な代謝物、または薬学的に受容可能なプロドラッグもしくは溶媒和化合物の有効量を少なくとも1回該ヒトに投与する工程を包含する、方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2008−504257(P2008−504257A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518098(P2007−518098)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【国際出願番号】PCT/US2005/020080
【国際公開番号】WO2006/007314
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(506422490)シリオン セラピューティクス, インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】