説明

レチノール結合タンパク質4(RBP4)へのレチノールの結合を調節するための組成物および方法

本発明は、レチノール結合タンパク質4(RBP4)へのレチノールの結合を調節するための組成物および方法に関する。特に、本発明は、式(1)または(2)


で示される化合物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年4月13日出願の米国仮特許出願番号第61/168,720号に優先権の利益を主張する。その出願の開示内容全体は、その全体を引用により本明細書に包含させる。
【0002】
技術分野
本発明は、レチノール結合タンパク質4(RBP4)へのレチノールの結合を調節するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景技術
ビタミンAおよびその種々の代謝物は、種々の生理学的役割を果たす。例えば、ビタミンA欠乏症は、小児の失明の主な原因である。臓器および組織、例えば眼における過剰なビタミンAレベルもまた、黄斑変性症を含む種々の網膜疾患における失明の原因である。加齢黄斑変性症(AMD)または黄斑ジストロフィー(macular dystrophy)は、視力が徐々に低下し、最終的に中心視力の重度の低下をもたらす。1千万人以上がAMDを有すると概算され、この数は、今後10年間で3倍になると予期されている。
【0004】
異常なレベルのビタミンA、および/またはその関連輸送タンパク質であるレチノール結合タンパク質(RBP)およびトランスサイレチン(TTR)もまた、代謝障害を含む他の疾患の徴候と関連している。1型および2型糖尿病患者において異常なレベルのレチノールが観察されるが、正常な患者では見られない。他の疾患には、特発性頭蓋内圧亢進症(IIH)、ならびに頚部脊椎症、脊椎骨増殖症およびびまん性特発性骨組織過形成症(DISH)を含む骨関連障害が含まれる。加えて、ビタミンAおよび/またはその関連する輸送タンパク質、特にTTRは、アルツハイマー病および全身性アミロイド症を含む、タンパク質ミスフォールディングおよび凝集性疾患において役割を果たし得る。
【0005】
現在、レチノール関連疾患に有効な治療法はなく、これらの疾患を処置するための方法および組成物が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
発明の開示
本発明は、レチノール結合タンパク質4(RBP4)へのレチノールの結合を調節するための組成物および方法に関する。
【0007】
一局面において、本発明は、式(1)または(2):
【化1】


[式中、RおよびRは、独立して、H、ハロゲン、C1−6アルコキシ、または所望によりハロゲンで置換されていてよいC1−6アルキルであり(ただし、RおよびRは、両方が同時にHではない。);
は、C1−6ハロゲン化アルキルであり;
およびRは、独立して、H、OH、C1−6アルキル、C1−6アルコキシまたはC3−7炭素環式環であるか;または、RおよびRは、一体となって、3−6員環を形成し;
は、COまたは5,6−ジヒドロ−1,4,2−ジオキサジニル以外のカルボン酸等量体であり;
は、HまたはC1−6アルキルであり;
およびYのうち一方は、SまたはOであり、他方は、CR(ここで、Rは、HまたはC1−6アルキルである。)であり;
あるいは、YおよびYのうち一方は、Nであり、他方は、Oであり;
およびYのうち一方は、Nであり、他方は、Oであり;
mは、0−1である。ただし、該化合物は、式(1−Q)または(1−R):
【化2】


〔式中、Rは、フェニル環の6位でハロであり;
は、ハロであり;
7’はそれぞれ、HまたはC1−6アルキルである。〕ではない。]
で示される化合物、またはその生理的に許容される塩を提供する。
【0008】
いくつかの態様において、式(1Q)中のRは、フェニル環の2位にてハロである。
【0009】
上記の式(1)または(2)において、Rは、フェニル環の何れかの位置の置換基であってよく、ハロゲン、C1−6アルコキシおよび所望によりハロゲンで置換されていてよいC1−6アルキルから選択され得て;Rは、Hであり得る。いくつかの例において、Rは、COであり;Rは、HまたはC1−6アルキルである。他の例において、Rは、カルボン酸等量体である。例えば、Rは、
【化3】


からなる群から選択されるカルボン酸等量体であり得る。
【0010】
一態様において、本発明は、式(1A):
【化4】


[式中、RおよびRが、ハロゲンであり;
、R、R、R、Y、Yおよびmが、式(1)に定義の通りである。]
で示される化合物を提供する。
【0011】
別の態様において、本発明は、式(1B):
【化5】


[式中、R、R、R、R、Y、Yおよびmが、式(1)に定義の通りである。]
で示される化合物を提供する。
【0012】
上記の式(1)、(1A)または(1B)の何れかにおいて、Yは、SまたはOであってよく、YはCRであり、Rは、HまたはC1−6アルキルである。他の例において、Yは、SまたはOであり、YはCRであり、RはHまたはC1−6アルキルである。さらに他の例において、YおよびYのうち一方がNであり、他方がOである。さらに他の例において、mは1である。
【0013】
さらに別の態様において、本発明は、式(2A);
【化6】


[式中、R、R、R、R、R、R、YおよびYは、上記に定義の通りである。]
で示される化合物を提供する。
【0014】
上記の式(1)、(1A)、(1B)、(2)または(2A)のいずれかにおいて、RはCFであってよい。他の例において、RおよびRはHである。他の例において、RはHであり、RはOHである。
【0015】
他の局面において、本発明は、式(1)、(1A)、(1B)、(2)または(2A)の化合物、および生理的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0016】
さらに別の局面において、本発明は、細胞におけるレチノール結合タンパク質4(RBP4)へのレチノールの結合を阻害するための方法であって、該細胞と有効量の式(1)または(2):
【化7】


[式中、RおよびRは、独立して、H、ハロゲン、C1−6アルコキシ、または所望によりハロゲンで置換されていてよいC1−6アルキルであり(ただし、RおよびRは、両方が同時にHではない。);
は、C1−6ハロゲン化アルキルであり;
およびRは、独立して、H、OH、C1−6アルキル、C1−6アルコキシまたはC3−7炭素環式環であるか;または、RおよびRは、一体となって、3−6員環を形成し;
は、COまたは5,6−ジヒドロ−1,4,2−ジオキサジニル以外のカルボン酸等量体であり;
は、HまたはC1−6アルキルであり;
およびYのうち一方は、SまたはOであり、他方は、CR(ここで、Rは、HまたはC1−6アルキルである。)であり;
あるいは、YおよびYのうち一方は、Nであり、他方は、Oであり;
およびYのうち一方は、Nであり、他方は、Oであり;
mは、0−1である。]
の化合物、またはその生理的に許容される塩を接触させ、それによりRBP4へのレチノールの結合を阻害することを含む方法を提供する。
【0017】
本発明はまた、黄斑変性症またはシュタルガルト病を有する対象における、レチノール結合タンパク質4(RBP4)へのレチノールの結合により仲介される状態(該状態は、黄斑変性症またはシュタルガルト病である。)の処置方法であって、該対象に、有効量の式(1)または(2):
【化8】


[式中、RおよびRは、独立して、H、ハロゲン、C1−6アルコキシ、または所望によりハロゲンで置換されていてよいC1−6アルキルであり(ただし、RおよびRは、両方が同時にHではない。);
は、C1−6ハロゲン化アルキルであり;
およびRは、独立して、H、OH、C1−6アルキル、C1−6アルコキシまたはC3−7炭素環式環であるか;または、RおよびRは、一体となって、3−6員環を形成し;
は、COまたは5,6−ジヒドロ−1,4,2−ジオキサジニル以外のカルボン酸等量体であり;
は、HまたはC1−6アルキルであり;
およびYのうち一方は、SまたはOであり、他方は、CR(ここで、Rは、HまたはC1−6アルキルである。)であり;
あるいは、YおよびYのうち一方は、Nであり、他方は、Oであり;
およびYのうち一方は、Nであり、他方は、Oであり;
mは、0−1である。]
の化合物、またはその生理的に許容される塩を投与することを含む方法を提供する。
【0018】
さらに、本発明は、レチノール結合タンパク質4(RBP4)へのレチノールの結合を阻害するための、式(1)または(2):
【化9】


[式中、RおよびRは、独立して、H、ハロゲン、C1−6アルコキシ、または所望によりハロゲンで置換されていてよいC1−6アルキルであり(ただし、RおよびRは、両方が同時にHではない。);
は、C1−6ハロゲン化アルキルであり;
およびRは、独立して、H、OH、C1−6アルキル、C1−6アルコキシまたはC3−7炭素環式環であるか;または、RおよびRは、一体となって、3−6員環を形成し;
は、COまたは5,6−ジヒドロ−1,4,2−ジオキサジニル以外のカルボン酸等量体であり;
は、HまたはC1−6アルキルであり;
およびYのうち一方は、SまたはOであり、他方は、CR(ここで、Rは、HまたはC1−6アルキルである。)であり;
あるいは、YおよびYのうち一方は、Nであり、他方は、Oであり;
およびYのうち一方は、Nであり、他方は、Oであり;
mは、0−1である。]
の化合物、またはその生理的に許容される塩、またはそれを含む医薬組成物の使用を提供する。
【0019】
本発明はまた、黄斑変性症またはシュタルガルト病の処置のための医薬の製造における、式(1)または(2):
【化10】


[式中、RおよびRは、独立して、H、ハロゲン、C1−6アルコキシ、または所望によりハロゲンで置換されていてよいC1−6アルキルであり(ただし、RおよびRは、両方が同時にHではない。);
は、C1−6ハロゲン化アルキルであり;
およびRは、独立して、H、OH、C1−6アルキル、C1−6アルコキシまたはC3−7炭素環式環であるか;または、RおよびRは、一体となって、3−6員環を形成し;
は、COまたは5,6−ジヒドロ−1,4,2−ジオキサジニル以外のカルボン酸等量体であり;
は、HまたはC1−6アルキルであり;
およびYのうち一方は、SまたはOであり、他方は、CR(ここで、Rは、HまたはC1−6アルキルである。)であり;
あるいは、YおよびYのうち一方は、Nであり、他方は、Oであり;
およびYのうち一方は、Nであり、他方は、Oであり;
mは、0−1である。]
の化合物、またはその生理的に許容される塩、またはそれを含む医薬組成物の使用を提供する。
【0020】
本発明の化合物の上記使用法において、本発明の化合物は、レチノール結合タンパク質4(RBP4)へのレチノールの結合により仲介される状態の処置のために、単独で、または第二治療薬と併用して用いられ得て、ここで該状態は、黄斑変性症またはシュタルガルト病である。いくつかの例において、該状態は、加齢黄斑変性症(AMD)、特に乾燥型または萎縮型AMDである。
【0021】
本発明の化合物の上記使用法において、式(1)、(1A)、(1B)、(2)または(2A)の化合物は、ヒトまたは動物対象に投与され得る。
【0022】
定義
“アルキル”は、部分および他の基、例えばハロ−置換−アルキルおよびアルコキシの構造成分を意味し、直鎖または分枝鎖であり得る。本明細書で用いる所望により置換されていてよいアルキル、アルケニルまたはアルキニルは、所望によりハロゲン化されていてよいか(例えば、CF)、またはNR、OまたはSのようなヘテロ原子で置換される1個以上の炭素を有していてよい(例えば、−OCHCHO−、アルキルチオール、チオアルコキシ、アルキルアミン等)。
【0023】
本明細書で用いる“炭素環式環”は、所望により、例えば=Oで置換されていてよい炭素原子を含む、飽和または部分的に不飽和の、単環式環、縮合二環式環または架橋多環式環を意味する。炭素環式環の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロプロピレン、シクロヘキサノン等が含まれるが、これらに限定されない。
【0024】
本明細書で用いる“ヘテロ環式環”は、上記の炭素環式環での定義の通りであり、ここで、1個以上の環炭素がヘテロ原子である。例えば、ヘテロ環式環には、N、O、S、−N=、−S−、−S(O)、−S(O)−、または−NR−(ここで、Rは、水素、C1−4アルキルまたは保護基であり得る。)が含まれ得る。ヘテロ環式環の例には、モルホリノ、ピロリジニル、ピロリジニル−2−オン、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリジニロン、1,4−ジオキサ−8−アザ−スピロ[4.5]デス−8−イル等が含まれるが、これらに限定されない。
【0025】
本明細書で用いる、任意の置換基中のH原子(例えば、CH)は、全ての適当な同位体の変異形、例えば、H、HおよびHを含む。
【0026】
“等量体”は、異なる分子式を有するが、同一または類似の特性を示す、異なる化合物である。用語“カルボン酸等量体”は、異なる分子式を有するが、カルボン酸の特性が類似する化合物を意味する。適当なカルボン酸等量体の例には、何れかの化学的に安定な酸化状態でCH、O、SまたはNの任意の組合せを含む5−7員の炭素環またはヘテロ環を含むが、これらに限定されず、ここで、該環構造の原子の何れかは、所望により1箇所以上の位置で置換されていてよい。本発明の化合物における使用のための特定のカルボン酸等量体には、
【化11】


が含まれるが、これらに限定されない。
【0027】
本発明で考慮される他のカルボン酸等量体には、−SOH、−SOHNR、−PO(R、−CN、−PO(R、−OR、−SR、−NHCOR、−N(R、−CON(R、−CONH(O)R、−CONHNHSO、−COHNSOおよび−CONRCN(式中、Rは、H、C1−6アルキル、アリール、ヘテロアリール、炭素環またはヘテロ環である。)が含まれる。
【0028】
本明細書で用いる用語“共投与”または“組合せ投与”等は、個々の対象(例えば、患者)に選択された治療剤を投与することを含むことを意味し、必ずしも薬剤が同じ投与経路によりまたは同時に投与されない処置レジメンを含むことを意図する。
【0029】
本明細書で用いる用語“薬学的組合せ剤”は、複数の有効成分の混合または組合せから得られる製品を意味し、有効成分の固定されたまたは固定されていない組合せ剤の両方を含む。用語“固定された組合せ剤”は、有効成分、例えば式(1)の化合物および併用剤を、患者に同時に単一の薬物(entity)または投与量として両方とも投与することを意味する。用語“固定されていない組合せ剤”は、患者に、有効成分、例えば式(1)の化合物および併用剤を、別個の物として、同時に、共にまたは特定の時間制限なしに連続して両方とも投与し、ここで、かかる投与が患者の体内で複数の有効成分の治療的有効レベルを提供することを意味する。後者はまたカクテル療法、例えば、3種またはそれ以上の有効成分の投与にも適用される。
【0030】
用語“治療的有効量”は、研究者、獣医師、担当医または他の医師により求められる、細胞、組織、臓器、器官、動物またはヒトにおける生物学的または医学的応答を生じ得る対象化合物の量を意味する。
【0031】
用語、対象化合物の“投与”または“投与する”は、処置を必要とする対象への本発明の化合物およびそのプロドラッグの提供を意味する。
【0032】
本明細書で用いる用語“加齢黄斑変性症(ARMD)または黄斑ジストロフィー”は、ウェット型およびドライ型のARMDを含む。ドライ型ARMDはまた、萎縮型、非滲出型またはドルセノイド(加齢)黄斑変性症としても知られている。ウェット型ARMDはまた、滲出型または新生血管型(加齢)黄斑変性症としても知られている。黄斑ジストロフィーには、シュタルガルト黄斑ジストロフィーまたは黄色斑眼底としても知られているシュタルガルト病が含まれ、最もよく見られる若年発症型の黄斑ジストロフィーである。
【0033】
本発明の実施手段
本発明は、レチノール結合タンパク質へのレチノールの結合を調節することによるレチノール関連疾患の処置のための組成物および方法に関する。
【0034】
一局面において、本発明は、式(1)または(2):
【化12】


[式中、RおよびRは、独立して、H、ハロゲン、C1−6アルコキシ、または所望によりハロゲンで置換されていてよいC1−6アルキルであり(ただし、RおよびRは、両方が同時にHではない。);
は、C1−6ハロゲン化アルキルであり;
およびRは、独立して、H、OH、C1−6アルキル、C1−6アルコキシまたはC3−7炭素環式環であるか;または、RおよびRは、一体となって、3−6員環を形成し;
は、COまたは5,6−ジヒドロ−1,4,2−ジオキサジニル以外のカルボン酸等量体であり;
は、HまたはC1−6アルキルであり;
およびYのうち一方は、SまたはOであり、他方は、CR(ここで、Rは、HまたはC1−6アルキルである。)であり;
あるいは、YおよびYのうち一方は、Nであり、他方は、Oであり;
およびYのうち一方は、Nであり、他方は、Oであり;
mは、0−1である。ただし、該化合物は、式(1−Q)または(1−R):
【化13】


〔式中、Rは、フェニル環の6位でハロであり;
は、ハロであり;
7’はそれぞれ、HまたはC1−6アルキルである。〕ではない。]
で示される化合物、またはその生理的に許容される塩を提供する。
【0035】
一態様において、本発明は、式(1A):
【化14】


[式中、RおよびRが、ハロゲンであり;
、R、R、R、Y、Yおよびmが、式(1)に定義の通りである。]
で示される化合物を提供する。
【0036】
別の態様において、本発明は、式(1B):
【化15】


[式中、R、R、R、R、Y、Yおよびmが、式(1)に定義の通りである。]
で示される化合物を提供する。
【0037】
さらに別の態様において、本発明は、式(2A);
【化16】


[式中、R、R、R、R、R、R、YおよびYは、上記に定義の通りである。]
で示される化合物を提供する。
【0038】
上記式のそれぞれにおいて、何れの不斉炭素原子も、(R)−、(S)−または(R,S)−立体配置で存在し得る。故に、化合物は、異性体の混合物または純粋な異性体、例えば、純粋なエナンチオマーまたはジアステレオマーとして存在し得る。本発明はさらに、本発明の化合物の可能性のある互変異性体を包含する。
【0039】
本明細書に記載の式は何れも、非標識形態ならびに同位体標識した形態の化合物を示すことを意図する。同位体標識した化合物は、1個以上の原子が、選択した原子量または質量数を有する原子により置換されること以外、本明細書に記載の式で示される構造を有する。本発明の化合物に挿入され得る同位体の例には、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素および塩素の同位体、例えば、それぞれH、H、11C、13C、14C、15N、18F、31P、32P、35S、36Cl、125Iが含まれる。
【0040】
本発明は、本明細書に記載の種々の同位体標識した化合物、例えば、H、13Cおよび14Cのような放射性同位体が存在する化合物を含む。かかる同位体標識した化合物は、代謝研究(例えば、14Cを用いる)、反応速度論研究(例えば、HまたはHを用いる)、薬剤もしくは基質の組織分布アッセイを含む陽電子放出断層撮影(PET)または単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)のような検出または画像技術、または患者の放射線処置において有用である。他の例において、18Fまたは標識した化合物は、PETまたはSPECT研究に用いられ得る。化合物の同位体変異は、化合物の代謝経路を変える可能性を有し、かつ/または、疎水性などのような物理的特性の小変化を生じさせる。同位体変化はまた、効力および安全性を増大し、バイオアベイラビリティの増大および半減期の延長、タンパク質結合の変化、生体内分布の変化、活性代謝産物の割合の増加および/または反応性または毒性代謝物の形成の減少の可能性を有する。本発明の同位体標識した化合物およびそのプロドラッグは、概して、スキームに記載の方法を実行することにより、または以下に記載の実施例および製造例にて、同位体標識していない反応材を容易に入手可能な同位体標識した反応材に置換することにより、製造可能である。
【0041】
薬理学および有用性
本発明は、レチノール結合タンパク質4(RBP4)へのレチノールの結合を調節するための組成物および方法を提供する。RBP4は、レチノールの細胞外輸送系の一つである循環タンパク質である。RBP4は、粗面小胞体中でアポ型で合成されるが、レチノールと複合体形成するまでは、小胞体から効率よく転送されない。さらに、RBP4は、トランスチレチン(TTR)と結合して血清中に優先的に見出される。TTR自体は甲状腺タンパク質の2個の分子と結合できるが、レチナール恒常性に関しては、腎臓における血漿濾過中はRBP4の排出が阻止されると考えられる。従って、体内で製造または維持されるRBP4のレベルを変えることにより、RBP4の活性レベルを変化させることができ、一方で、1)発生期RBP4の産生速度、2)RBP4がレチノールと相互作用する能力、3)RBP4がTTRと相互作用する能力、および4)体内のRBP4の半減期を変えることにより変化し得る。さらに、例えばレチナール依存性シグナル伝達が影響される様に、RBP4がレチノールを細胞に送達する能力を変えることにより、RBP4活性が変化し得る。
【0042】
本発明はまた、レチノール結合タンパク質4(RBP4)へのレチノールの結合により仲介される状態の処置のための組成物および方法を提供する。特定の態様において、本発明は、黄斑変性症および黄斑ジストロフィーの処置のための組成物および方法を提供する。本発明の組成物は、異常なレチノールレベルと関連する代謝障害および他のレチノール関連疾患を含むレチノール結合タンパク質(RBP)へのレチノールの結合により仲介される状態の処置に用いられ得ることも、考慮される。
【0043】
黄斑変性症および黄斑ジストロフィー
黄斑変性症(網膜変性症とも称される)は、網膜の中心部である黄斑部の異常を伴う眼の疾患である。黄斑変性症の約85%ないし90%が“乾燥型”(萎縮型または非血管新生型)である。乾燥型黄斑変性症において、網膜の変性は、黄斑下での小さな黄色の沈着(すなわち、ドルーゼン)の形成と関係し;加えて、RPE(網膜色素上皮)でのリポフスチンの蓄積は地図状の萎縮をもたらす。この現象は、黄斑の外の脆弱化および萎縮をもたらす。ドルーゼンによって生じる網膜中の薄層化の位置および量は、中心の視野の消失の量と直接相関する。網膜の色素上皮層およびドルーゼンに重なる光受容器の変性は、萎縮型となり、中心の視野のゆっくりとした消失をもたらし得る。
【0044】
“湿潤型”黄斑変性症において、血管が新生形成(すなわち、新血管形成)されると、緻密な中心視野をもたらす網膜の一部である黄斑部の網膜組織に対する血液供給が改善される。この新生血管は損傷を受けやすく、時には破裂して、周囲の組織への出血および傷害を生じる。新血管新生は、視力の急速な低下、ならびに最終的な網膜組織の瘢痕をもたらし得る。この瘢痕組織および血液は、視野に暗いゆがめられた領域を生じ、しばしば眼の法律上の失明をもたらす。湿潤型の黄斑変性は、全ての黄斑変性の症例のうち約10パーセントでのみ生じるが、これは、黄斑変性が関連する失明のうち約90%を占める。
【0045】
湿潤型の黄斑変性症は一般に、視野の中央領域でのゆがみで始まる。直線が波形になる。黄斑変性症を有する多くの人はまた、視覚野に不鮮明な視野および暗点を有することも報告されている。血管内皮細胞増殖因子、すなわちVEGFと称される増殖促進タンパク質は、眼においてこの異常な血管増殖を誘発するように標的化されている。この発見によって、VEGFを阻害するか、または阻止する実験的薬物の積極的な研究につながっている。抗VEGF因子を用いて異常な血管増殖を阻止および予防できることが研究によって示されている。このような抗VEGF因子は、VEGF刺激を停止するか、または阻害することにより、血管の増殖を抑える。このような抗VEGF因子はまた、抗血管形成、またはVEGFの網膜下での血管増殖を誘導する能力の阻止、ならびに血管からの血液漏出の阻止にも有効であり得る。
【0046】
加えて、いくつかのタイプの黄斑変性症は、小児、10代または成人に影響を与え、これは現在、早発性または若年性の黄斑変性症として一般に知られている。これらのタイプの多くは遺伝性であって、変性ではなく黄斑ジストロフィーと見なされる。黄斑ジストロフィーのいくつかの例としては、錐体−桿体ジストロフィー、角膜ジストロフィー、フックスジストロフィー(Fuch’s Dystrophy)、Sorsby 黄斑ジストロフィー(Sorsby’s Macular Dystrophy)、ベスト病(Best Disease)、および若年性網膜分離症、ならびにシュタルガルト病が含まれる。
【0047】
シュタルガルト病
シュタルガルト病は、小児期での発症を伴う、劣性型の黄斑変性症として現れる黄斑ジストロフィーである。例えば、Allikmets et al., Science, 277:1805−07 (1997)を参照のこと。シュタルガルト病は、中心の視野の進行性の消失、および黄斑に重なるRPEの進行性の萎縮によって臨床上特徴付けられる。Rim タンパク質(RmP)についてのヒトABCA4遺伝子における変異は、シュタルガルト病の病因となる。疾患経過の初期には、患者は、暗順応の遅れを示すが、それ以外は正常な桿体機能を示す。組織学的には、シュタルガルト病は、RPE細胞におけるリポフスチン色素顆粒の沈着に関連する。
【0048】
シュタルガルト病とは別に、ABCA4における変異は、劣性の色素性網膜炎、劣勢の錐体−桿体ジストロフィー、および非浸出型加齢黄斑変性症(AMD)(例えば,Lewis et al., Am. J. Hum. Genet., 64:422−34 (1999)を参照のこと)に関係しているが、AMDにおけるABCA4変異の罹患率は未知のままである。Allikmets, Am. J. Hum. Gen., 67:793−799 (2000)を参照のこと。シュタルガルト病と同様に、これらの疾患は、遅延型の桿体暗順応に関連している。RPE細胞におけるリポフスチン沈着はまた、AMDにおいて顕著に見いだされており(Kliffen et al., Microsc. Res. Tech., 36:106−22 (1997)を参照のこと。)、網膜色素変性および錐体−桿体ジストロフィーのいくつかの場合に見いだされている。
【0049】
Travis et al. (Annu. Rev. Pharmocol. Toxicol. 2007. 47:8.1−8.44)は、RBP4−TTR−ビタミンA複合体の形成阻害(この複合体により血清から眼へのビタミンAの輸送を阻害する)とその後のAMDおよびシュタルガルト病を含む眼疾患でのA2Eレベルの低下との関係を示す。その機序は、本発明の実施に必要ではないが、RBP4−TTR複合体の崩壊は、低下した血漿レチノールレベル、減少した眼へのレチノールの送達、および減少したA2Eの形成をもたらす。任意の態様において、式1および式2の化合物は、本発明においてA2Eレベルの低下をもたらす。故に、AMDまたはシュタルガルト病患者の、RBP4−TTR複合体の崩壊および低い血漿RBP4レベルをもたらすかかる化合物での処置は、A2Eの形成を減少し、さらなる視力低下を阻止するだろう。RBP4からレチノールへの単純な置換もまた、眼へのレチノール送達を減少し、A2E産生を減少する効果があり得る。
【0050】
投与および医薬組成物
一般に、本発明の化合物は、当技術分野で公知の常用法および許容される方法の何れかにより、単独で、または1個以上の治療剤と組み合わせて、治療的有効量を投与され得る。治療的有効量は、疾患の重症度、対象の年齢および相対的健康状態、用いる化合物の有効性および他の因子によって大きく異なる。一般的に、満足のいく結果は、体重1kg当たり約0.03ないし2.5mgの1日投与量で全身的に得られることが示される。大型の哺乳動物、例えばヒトにおいて指示された1日投与量は、約0.5mgないし約100mgの範囲であり、都合よくは、例えば、1日4回までの分割用量でまたは遅延形態で投与される。経口投与に適する単位投与量形態には、約1ないし50mgの有効成分が含まれる。
【0051】
本発明の化合物は、医薬組成物として、何れかの常套経路で、特に経腸的に、例えば錠剤またはカプセルの形態で、例えば経口で、または例えば、注射溶液または懸濁液の形態で非経腸的に、例えばローション、ジェル、軟膏またはクリームの形態で、または経鼻または坐剤形態で局所的に投与され得る。
【0052】
遊離形または薬学的に許容される塩形態の本発明の化合物を、少なくとも1個の薬学的に許容される担体または希釈剤と共に含む医薬組成物は、混合法、造粒法またはコーティング法により常套的態様で製造され得る。例えば、経口組成物は、有効成分を、a)希釈剤、例えばラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロースおよび/またはグリシン;b)滑剤、例えばシリカ、タルカム、ステアリン酸、そのマグネシウム塩またはカルシウム塩および/またはポリエチレングリコール;錠剤についてはまた、c)結合剤、例えばケイ酸マグネシウムアルミニウム、デンプン糊、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロースおよび/またはポリビニルピロリドン;要すれば、d)崩壊剤、例えばデンプン、寒天、アルギン酸またはそのナトリウム塩、または起沸性混合物;および/またはe)吸収剤、着色剤、香味剤および甘味剤と共に含む、錠剤またはゼラチンカプセルであり得る。注射可能組成物は、等張の水溶液または懸濁液であってよく、坐剤は、脂肪エマルジョンまたは懸濁液から製造され得る。
【0053】
組成物は、滅菌可能であり、および/またはアジュバント、例えば保存剤、安定化剤、湿潤剤または乳化剤、溶解促進剤、浸透圧を調節するための塩、および/または緩衝剤を含んでいてよい。加えて、それらはまた、他の治療的に有効な他の物質を含んでいてよい。経皮適用に適する製剤には、有効量の本発明の化合物と担体が含まれる。担体には、宿主の皮膚を通過するのを補助する吸収性の薬理学的に許容される溶媒が含まれ得る。例えば、経皮デバイスは、裏打ち部材、化合物を所望により担体と共に含む貯蔵部、所望により、化合物の宿主の皮膚への送達を制御されかつ予定された速度で長時間送達するための速度制御バリアおよび、該デバイスを皮膚に固定するための手段を含む、バンデージの形である。マトリックス経皮製剤も使用され得る。例えば皮膚および眼への、局所適用に適する製剤は、好ましくは当技術分野で既知の水溶液、軟膏、クリームまたはゲルである。これらは可溶化剤、安定化剤、張性増加剤、緩衝剤および防腐剤を含み得る。
【0054】
本発明の化合物は、治療有効量で、1個以上の治療剤との組合せ(薬学的組合せ剤)で投与され得る。例えば、シクロスポリン、ラパマイシン、もしくはアスコマイシン、またはそれらの免疫抑制剤類似体、例えばシクロスポリンA(CsA)、シクロスポリンG、FK−506、ラパマイシン、もしくは同等な化合物、コルチコステロイド、シクロホスファミド、アザチオプリン、メトトレキサート、ブレキナール(brequinar)、レフルノミド、ミゾルビン、ミコフェノール酸、ミコフェノール酸モフェチル、15−デオキシスパガリン、免疫抑制性抗体、とりわけ白血球受容体に対するモノクローナル抗体、例えばMHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD25、CD28、B7、CD45、CD58もしくはそれらのリガンド、または他の免疫調節化合物、例えばCTLA41gと共に使用されるとき、例えば相乗効果が、他の免疫調節剤もしくは抗炎症剤と生じ得る。本発明の化合物が他の治療と共に投与されるとき、共投与される化合物の用量は、もちろん使用される共薬剤のタイプ、使用される特定の薬剤、処置される状態などによって変わり得る。
【0055】
本発明はまた、a)遊離形または薬学的に許容される塩形態の本明細書に記載の本発明の化合物である第一薬剤、およびb)少なくとも1つの共薬剤を含む薬学的組合せ剤、例えばキットを提供する。該キットはその投与のための指示書を含み得る。
【0056】
本発明の化合物の製造方法
一般的に、式(1)の化合物は、以下のスキーム1−9に記載の合成法の何れか1つによって製造され得る。記載の反応において、反応性官能基、例えばヒドロキシ、アミノ、イミノ、チオまたはカルボキシ基を、これらが最終産物で望まれるとき、それらの望ましくない反応への参加を避けるために保護する必要があり得る。慣用の保護基は、標準的方法に従い用いることができる(例えば、T.W. Greene and P. G. M. Wuts in “Protective Groups in 有機 Chemistry”, John Wiley and Sons, 1991を参照のこと)。記載の合成法に用いるのに適当な脱離基には、ハロゲン脱離基(例えば、クロロまたはブロモ)および当業者の知識内の他の常套の脱離基が含まれる。
【0057】
【化17】


a)ZnCN、Pd(PPh、DMF、Δ;b)CHCSNH、HCl、DMF、Δ;c)LiOH H;d)ClCHCOMe、EtOH、Δ;e)LiOH、THF:MeOH:HO。
Xは、脱離基であり、
、RおよびRは、上記の通りである。
【0058】
【化18】


Yは、SまたはOであり、
Xは、脱離基であり、
、R、RおよびRは、上記の通りである。
【0059】
【化19】


a)EDCI、HOBT、NHOH、DMF;b)ローソン試薬、Δ、THF;c)ClCHCOMe、EtOH、Δ;d)LiOH、THF:MeOH:HO。
、RおよびRは、上記の通りである。
【0060】
【化20】


a)EDCI、HOBT、NHOH、DMF;b)ClCHCOMe、Δ;c)LiOH、THF:MeOH:HO。
、RおよびRは、上記の通りである。
【0061】
【化21】


a)NHOHHCl、KCO、EtOH;b)NCS、DMF、Δ;c)3−ブチン−1−オール、EtN、CHCl;d)デス−マーチン、CHCl;e)2−メチル−2−ブテン、亜塩素酸ナトリウム、NaPOO。
、RおよびRは、上記の通りである。
【0062】
【化22】


a)スチレン、Pd(dba)、[(t−Bu)PH]BF、CyNMe、ジオキサン、Δ;b)O、CHCl;c)DAST、CHCl、MeOH;d)LiOH、THF:MeOH:HO。
Yは、OまたはSであり、
Xは、脱離基であり、
およびRは、上記の通りである。
【0063】
【化23】


a)ClCHOCHCOMe、DIEA、CHCl;b)酢酸ナトリウム、EtOH、Δ;c)LiOH、THF:MeOH:HO。
、RおよびRは、上記の通りである。
【0064】
【化24】


a)HCl、ジオキサン、Δ;b)デスーマーチン ペルヨージナン、CHCl
c)2−メチル−2−ブテン、亜塩素酸ナトリウム、NaPOO、THF、t−BuOH。
、RおよびRは、上記の通りである。
【0065】
【化25】


a)EtOH、Δ;b)KCN、KCO、DMSO;c)NaN、NHCl、DMF、Δ。
、RおよびRは、上記の通りである。
【0066】
本発明の化合物およびその塩類は、水和物の形態で得られ得るか、またはそれらの結晶形は、例えば、結晶化に用いられる溶媒を含み得る(溶媒和物として存在する)。塩は、通常、例えば適当な塩基性薬剤、例えばアルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素、またはアルカリ金属水酸化物、例えば炭酸カリウムまたは水酸化ナトリウムで処理することで遊離形の化合物に変換され得る。塩基付加塩形態の本発明の化合物は、適当な酸(例えば、塩酸など)と処理することにより対応する遊離酸に変換され得る。新規化合物の遊離形態とそれらの塩形態(中間体として使用できる塩も含む)の間の、例えば新規化合物の精製またはその同定における密接な関係から見て、遊離化合物という場合には全て、適当であれば、その対応する塩も意味するものと理解すべきである。
【0067】
本発明の化合物と塩形成基との塩は、それ自体公知の方法で製造され得る。故に、式(1)、(1A)、(1B)、(2)または(2A)の化合物の酸付加塩は、酸または適当なアニオン交換反応材で処理して得られ得る。本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、塩基性窒素原子を有する式(1)、(1A)、(1B)、(2)または(2A)の化合物から有機または無機酸を用いて、例えば酸付加塩として形成され得る。
【0068】
適当な無機酸には、塩酸、硫酸またはリン酸のようなハロゲンが含まれるが、これらに限定されない。適当な有機酸には、カルボン酸、リン酸、スルホン酸またはスルファミン酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、グリコール酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グルタミン酸またはアスパラギン酸のようなアミノ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、メチルマレイン酸、シクロヘキサンカルボン酸、アダマンタンカルボン酸、安息香酸、サリチル酸、4−アミノサリチル酸、フタル酸、フェニル酢酸、マンデル酸、ケイ皮酸、メタン−またはエタン−スルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、1,5−ナフタレン−ジスルホン酸(disuifonic acid)、2−、3−または4−メチルベンゼンスルホン酸、メチル硫酸、エチル硫酸、ドデシル硫酸、N−シクロヘキシルスルファミン酸、N−メチル−、N−エチル−またはN−プロピル−スルファミン酸、またはアスコルビン酸のような他の有機プロトン酸が含まれるが、これらに限定されない。単離または精製目的の場合、薬学的に許容されない塩、例えばピクリン酸塩または過塩素酸塩も使用可能である。治療目的の場合、薬学的に許容される塩または遊離化合物のみを用いる(医薬品の形態で利用可能であるとき)。
【0069】
非酸化形態の本発明の化合物は、本発明の化合物のN−オキシドから、適当な不活性有機溶媒(例えば、アセトニトリル、エタノール、水性ジオキサンなど)中、0ないし80℃で、還元剤(例えば、硫黄、二酸化硫黄、トリフェニルホスフィン、リチウムボロハイドライド、水素化ホウ素ナトリウム、三塩化リン、三臭化物など)で処理することにより、製造可能である。
【0070】
本発明の化合物のプロドラッグ誘導体は、当業者に公知の方法により製造できる(例えば、さらに詳細には、Saulnier et al., (1994), Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters, Vol. 4, p. 1985を参照のこと)。例えば、適当なプロドラッグは、本発明の非誘導体化化合物を適当なカルバミル化剤(例えば、1,1−アシルオキシアルキルカルバノクロライデート(acyloxyalkylcarbanochloridate)、パラ−ニトロフェニルカルボネートなど)と反応させることにより製造することができる。
【0071】
本発明の化合物の保護誘導体は、当業者に公知の方法で製造できる。保護基の構築およびそれらの除去に用い得る技術の詳細な説明は、T. W. Greene, “Protecting Groups in Organic Chemistry”, 3rd edition, John Wiley and Sons, Inc., 1999に見出され得る。
【0072】
本発明の化合物は、本化合物のラセミ混合物と光学活性分解剤を反応させ、一対のジアステレオ異性体化合物を形成させ、そのジアステレオマーを分離し、光学的に純粋なエナンチオマーを回収することにより、その個々の立体異性体として製造できる。エナンチオマーの分解は、本発明の化合物の共有結合ジアステレオマー誘導体を用いて、または解離可能な複合体(例えば、結晶性ジアステレオマー塩)を用いて行われ得る。ジアステレオマーは、異なる物理的特性(例えば、融点、沸点、溶解性、反応性など)を有し、これらの相違を利用して直ぐに分離され得る。ジアステレオマーは、分別結晶、クロマトグラフィーにより、または溶解性の相違をもとにした分離/分解技術により分離され得る。その後、光学的に純粋なエナンチオマーを、ラセミ化をもたらすことのない何らかの実用的手段により、分解剤と共に回収する。それらのラセミ混合物からの化合物の立体異性体の分割に適用可能な技術のより詳細な説明は、Jean Jacques, Andre Collet, Samuel H. Wilen, “Enantiomers, Racemates and Resolutions”, John Wiley And Sons, Inc., 1981に見いだされ得る。
【0073】
まとめると、本発明の化合物は、実施例に記載の方法、および
(a)所望により、本発明の化合物を薬学的に許容される塩に変換する工程;
(b)所望により、本発明の化合物の塩形態を非塩形態に変換する工程;
(c)所望により、本発明の化合物の非酸化形態を薬学的に許容されるN−オキシドに変換する工程;
(d)所望により、本発明の化合物のN−オキシド形態をその非酸化形態に変換する工程;
(e)所望により、異性体の混合物から本発明の化合物の個々の異性体に分割する工程;
(f)所望により、本発明の非誘導体化化合物を薬学的に許容されるプロドラッグ誘導体に変換する工程;ならびに
(g)所望により、本発明の化合物のプロドラッグ誘導体をその非誘導体化形態に変換する工程
を含む方法により製造され得る。
【0074】
出発物質の製造について特に記載がない限り、該化合物は公知であるか、または当技術分野で公知の方法と同様にもしくは下記の実施例に記載の通りに製造できる。当業者は、上記の変換は、本発明の化合物の製造方法の単なる典型であること、および他のよく知られた方法を、同様に用いることができることを理解する。本発明はさらに、本発明の化合物の製造を説明する以下の記載および実施例により例示されるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0075】
実施例1
メチル 2−(2−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)チアゾール−4−イル)アセテート
【化26】


密封バイアルに、3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゾチオアミド(60mg、0.22mmol)、メチル−4−クロロアセトアセテート(33mg、0.22mmol)およびエタノール(1mL)を添加した。マイクロ波中、180℃で10分間撹拌後、揮発性反応材を減圧下で除去した。化合物を、シリカゲルクロマトグラフィー(0%−35%酢酸エチル/ヘキサン)により精製して、所望の生成物を得た。
【0076】
実施例2
2−(2−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)チアゾール−4−イル)酢酸
【化27】


バイアルに、メチル 2−(2−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)チアゾール−4−イル)アセテート(78mg、0.22mmol)、LiOH・HO(26mg、0.66mmol)およびTHF:MeOH:HO(10:1:10、1mL)を添加した。反応物を、環境温度で4時間撹拌し、その後、10%クエン酸でクエンチして、EtOAcで抽出した(3x)。有機層を合わせて、HO、塩水で洗浄し、MgSOで乾燥させた。揮発性有機溶媒を減圧下で除去した。生成物をEtOH/HOから再結晶した。
【0077】
実施例3
メチル 2−(3−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル)アセテート
【化28】


バイアルに、3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンズアミドキシム(500mg、1.84mmol)、DIPEA(641μL、3.86mmol)およびCHCl(15mL)を添加し、混合物を氷/水浴中、0℃に冷却した。10分間の浸漬後、メチルマロニルクロライド(236μL、2.21mmol)を添加し、反応物を冷却浴から取り出し、環境温度で一晩撹拌した。反応物を水(10mL)で希釈し、その後、EtOAc、10%クエン酸および塩水を用いる標準的な酸性水溶液での後処理を行った。揮発性有機溶媒を減圧下で除去した。反応混合物をジオキサン(3mL)中に溶解し、触媒量のTBAFを、マイクロ波管中、反応混合物に添加した。反応混合物を、150℃で10分間加熱した。環境温度まで冷却後、揮発性有機溶媒を減圧下で除去した。有機層残渣をDMSO中に溶解し、生成物を、分取HPLCにより反応混合物から精製した。
【0078】
実施例4
メチル 2−(2−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)オキサゾール−4−イル)アセテート
【化29】


アルゴン下、密封バイアルに、3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンズアミド(70mg、0.27mmol)およびメチル−4−クロロアセトアセテート(123mg、0.82mmol)を添加した。120℃で2時間適切に撹拌後、反応物を室温まで冷却し、HOで希釈した。その後、水層をEtOAで抽出した(3x)。その後、有機抽出物を合わせ、塩水で洗浄し、MgSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。化合物を、シリカゲルクロマトグラフィー(0%−35%酢酸エチル/ヘキサン)により精製して、所望の生成物を得た。
【0079】
実施例5
メチル 2−(4−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)オキサゾール−2−イル)アセテート
【化30】


アルゴン下、密封バイアルに、1−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−フェニル)−2−ブロモ−エタノン(50mg、0.15mmol)およびメチルマロン酸モノアミド(52mg、0.45mmol)を添加した。120℃で2時間適切に撹拌後、反応物を室温まで冷却し、HOで希釈した。その後、水層をEtOACで抽出した(3x)。その後、有機抽出物を合わせ、塩水で洗浄し、MgSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。化合物を、0%−35%EtOAc/ヘキサン勾配のシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、所望の生成物を得た。
【0080】
実施例6
2−(2−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)オキサゾール−4−イル)酢酸
【化31】


実施例6の化合物を、実施例2に記載の方法に従い、メチル 2−(2−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)オキサゾール−4−イル)アセテート(実施例4)から製造した。生成物をEtOH/HOから再結晶した。
【0081】
実施例7
2−(4−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)オキサゾール−2−イル)酢酸
【化32】


実施例7の化合物を、実施例2に記載の方法に従い、メチル 2−(4−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)オキサゾール−2−イル)アセテート(実施例5)から製造した。有機層残渣をDMSO中に溶解し、生成物を、分取HPLCにより反応混合物から精製した。
【0082】
実施例8
2−(2−(3−クロロ−5−(トリフルオロメチル)フェニル)チアゾール−4−イル)酢酸
【化33】


実施例8の化合物を、スキーム1に従い、3−クロロ−5−トリフルオロメチル−ベンゾニトリルから出発して製造した。100mLフラスコに、3−クロロ−5−トリフルオロメチル−ベンゾニトリル(2g、9.7mmol)、チオアセトアミド(1.9g、3.9mmol)、4N HCl(9.2mL、36.9mL)およびDMF(20mL)を添加した。反応物を、95℃で一晩加熱した。冷却して、反応混合物を水および飽和NaHCOで希釈した。標準的DMF有機後処理により、全ての揮発物質を除去後、3−クロロ−5−(トリフルオロメチル)ベンゾチオアミドを黄色がかった固体として得た。化合物をシリカゲルクロマトグラフィー(5%−45%EtOAc/ヘキサン勾配)により精製した。所望のチオアミド(100mg、0.42mmol)を、実施例1の合成に記載の通りに、メチル−4−クロロアセトアセテート(63mg、0.42mmol)と反応させて、所望のチアゾールを得た。メチルエステルを、実施例2の合成に記載の通りに鹸化した。生成物を、EtOH/HOから再結晶した。
【0083】
実施例9
2−(4−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)−5−メチルチアゾール−2−イル)酢酸
【化34】


密封バイアルに、1−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−フェニル)−2−ブロモ−プロパン−1−オン(70mg、0.20mmol)、エチル−3−アミノ−2−チオキシプロパン酸(29mg、0.20mmol)およびエタノール(1mL)を添加した。マイクロ波中、180℃で10分間撹拌後、揮発性反応材を減圧下で除去した。化合物を、シリカゲルクロマトグラフィー(0%−35%EtOAc/ヘキサン)により精製して、所望の生成物を得た。エチルエステルを、実施例2の合成に記載の通りに鹸化した。有機層残渣を、DMSO中に溶解し、生成物を、分取HPLCにより反応混合物から精製した。
【0084】
実施例10
2−(2−(4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)チアゾール−4−イル)酢酸
【化35】


実施例10の化合物を、実施例8に記載の合成法に従い、4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)ベンゾニトリルを用いて製造した。メチルエステルを、実施例2の合成に記載の通りに鹸化した。生成物を、EtOH/HOから再結晶した。
【0085】
実施例11
2−(4−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)−5−メチルオキサゾール−2−イル)酢酸
【化36】


実施例11の化合物を、実施例5に記載の合成法に従い、1−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−フェニル)−2−ブロモ−プロパン−1−オン(70mg、0.20mmol)およびメチルマロン酸モノアミド(70mg、0.6mmol)から製造した。メチルエステルを、実施例2の合成に記載の通りに鹸化した。有機層残渣をDMSO中に溶解し、生成物を、分取HPLCにより反応混合物から精製した。
【0086】
実施例12
2−(4−(3−フルオロ−5−(トリフルオロメチル)フェニル)オキサゾール−2−イル)酢酸
【化37】


実施例12の化合物を、実施例5に記載の合成法に従い、2−ブロモ−1−(3−フルオロ−5−トリフルオロメチル−フェニル)−エタノン(200mg、0.70mmol)およびメチルマロン酸モノアミド(246mg、2.1mmol)から製造した。メチルエステルを、実施例2の合成に記載の通りに鹸化した。有機層残渣をDMSO中に溶解し、生成物を、分取HPLCにより反応混合物から精製した。
【0087】
実施例13
2−(4−(3−フルオロ−5−(トリフルオロメチル)フェニル)チアゾール−2−イル)酢酸
【化38】


実施例13の化合物を、実施例9に記載の合成法に従い、1−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−フェニル)−2−ブロモ−プロパン−1−オン(70mg、0.20mmol)およびエチル−3−アミノ−2−チオキシプロパン酸(29mg、0.20mmol)から製造した。エチルエステルを、実施例2の合成に記載の通りに鹸化した。生成物をEtOH/HOから再結晶した。
【0088】
実施例14
2−(2−(3−メトキシ−5−(トリフルオロメチル)フェニル)チアゾール−4−イル)酢酸
【化39】


実施例14の化合物を、実施例1に記載の合成法に従い、3−メトキシ−5−トリフルオロメチル−チオベンズアミド(70mg、0.30mmol)およびメチル メチル−4−クロロアセトアセテート(45mg、0.3mmol)から製造した。メチルエステルを、実施例2の合成に記載の通りに鹸化した。生成物をEtOH/HOから再結晶した。
【0089】
実施例15
2−(2−(3−メトキシ−5−(トリフルオロメチル)フェニル)オキサゾール−4−イル)酢酸
【化40】


密封バイアルに、3−メトキシ−5−トリフルオロメチル−安息香酸(1.1g、5.0mmol)、HOBt(810mg、6.0mmol)、EDCI(1.0g、5.5mmol)およびDMF(12mL)を添加した。反応物を、アルゴン下、環境温度で1時間撹拌し、その後、NHOH(水溶液)(3mL)を一度に添加した。反応物を環境温度で一晩撹拌した。完了後、反応物を、10%クエン酸でクエンチして、EtOAcで抽出した。有機層を合わせ、HOおよび塩水で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濃縮して、所望の3−メトキシ−5−トリフルオロメチル−ベンズアミドを得て、その後、それを次工程に粗物質として用いた。アミド(150mg、0.68mmol)を、実施例4の合成法に従い、メチル−4−クロロアセトアセテート(86mg、0.57mmol)と反応させた。メチルエステルを、実施例2の合成に記載の通りに鹸化した。生成物を、EtOH/HOから再結晶した。
【0090】
実施例16
2−(2−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)チアゾール−4−イル)−2−ヒドロキシ酢酸
【化41】


密封バイアルに、3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゾチオアミド(150mg、0.55mmol)、1−アセトキシ−3−クロロアセトン(83mg、0.55mmol)およびエタノール(1mL)を添加した。マイクロ波中、180℃で10分間撹拌後、揮発性反応材を減圧下で除去した。化合物を、シリカゲルクロマトグラフィー(5%−45%EtOAc/ヘキサン)により精製して、所望のアセタールおよびアルコールの混合物を得た。アセタールを、実施例2の合成に記載の通りに鹸化し、得られたアルコールを前工程から得られたアルコールと合わせた。
【0091】
密封バイアルに、アルコール(50mg、0.15mmol)、デス−マーチンペルヨージナン(76mg、0.18mmol)およびCHCl(1mL)を添加した。反応物を、環境温度で2時間撹拌した。完了後、反応物を飽和Naおよび飽和NaHCOでクエンチして、さらに10分間撹拌した。その後、CHClを減圧下で除去し、水層をEtOAcで抽出した。有機層を合わせ、HOおよび塩水で洗浄し、その後、MgSOで乾燥させ、減圧下で濃縮して、所望のアルデヒドを得て、それを粗物質として次工程に用いた。KCNの水溶液を、THF中のアルデヒドの溶液に撹拌しながら一度に添加した。混合物を、50℃で3時間撹拌し、その後、THFを減圧下で除去した。得られたスラリーに、濃HCl(1mL)を添加し、反応物を30分間撹拌した。完了すると、混合物をEtOAcで抽出した(3x)。その後、有機層を合わせ、HO、塩水で洗浄し、MgSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。有機層残渣をDMSOに溶解し、生成物を、分取HPLCにより反応混合物から精製した。
【0092】
実施例17
2−(2−(4−メチル−3−(トリフルオロメチル)フェニル)チアゾール−4−イル)酢酸
【化42】


実施例17の化合物を、実施例8に記載の合成法に従い、4−メチル−3−トリフルオロメチル−ベンゾニトリルから製造した。メチルエステルを、実施例2の合成に記載の通りに鹸化した。生成物をEtOH/HOから再結晶した。
【0093】
実施例18
2−(2−(4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)チアゾール−4−イル)酢酸
【化43】


実施例18の化合物を、実施例8に記載の合成法に従い、4−フルオロ−3−トリフルオロメチル−ベンゾニトリルから製造した。メチルエステルを、実施例2の合成に記載の通りに鹸化した。生成物を、EtOH/HOから再結晶した。
【0094】
実施例19
2−(2−(3−フルオロ−5−(トリフルオロメチル)フェニル)オキサゾール−4−イル)酢酸
【化44】


実施例19の化合物を、実施例4に記載の合成法に従い、3−フルオロ−5−トリフルオロメチル−ベンズアミド(75mg、0.36mmol)およびメチル−4−クロロアセトアセテート(1.26μL、1.09mmol)から製造した。メチルエステルを、実施例2の合成に記載の通りに鹸化した。生成物をEtOH/HOから再結晶した。
【0095】
実施例20
2−(2−(3−フルオロ−5−(トリフルオロメチル)フェニル)チアゾール−4−イル)酢酸
【化45】


実施例20の化合物を、実施例8に記載の合成法に従い、3−フルオロ−5−トリフルオロメチル−ベンゾニトリルから製造した。メチルエステルを、実施例2の合成に記載の通りに鹸化した。生成物を、EtOH/HOから再結晶した。
【0096】
実施例21
2−(2−(2−クロロ−5−(トリフルオロメチル)フェニル)チアゾール−4−イル)酢酸
【化46】


実施例21の化合物を、実施例8に記載の合成法に従い、2−クロロ−5−トリフルオロメチル−ベンゾニトリルから製造した。メチルエステルを、実施例2の合成に記載の通りに鹸化した。生成物を、EtOH/HOから再結晶した。
【0097】
実施例22
2−(2−(2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)オキサゾール−4−イル)酢酸
【化47】


実施例22の化合物を、実施例15に記載の合成法に従い、2−クロロ−3−トリフルオロメチル−安息香酸から製造した。有機層残渣をDMSOに溶解し、生成物を、分取HPLCにより反応混合物から精製した。
【0098】
実施例23
2−(2−(4−メトキシ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)オキサゾール−4−イル)酢酸
【化48】


実施例23の化合物を、実施例4に記載の合成法に従い、4−メトキシ−3−トリフルオロメチル−ベンズアミド(100mg、0.5mmol)およびメチル−4−クロロアセトアセテート(226mg、1.5mmol)から製造した。メチルエステルを、実施例2の合成に記載の通りに鹸化した。生成物をEtOH/HOから再結晶した。
【0099】
実施例24
2−(2−(4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)オキサゾール−4−イル)酢酸
【化49】


実施例24の化合物を、実施例4に記載の合成法に従い、4−フルオロ−3−トリフルオロメチル−ベンズアミド(103mg、0.5mmol)およびメチル−4−クロロアセトアセテート(226mg、1.5mmol)から製造した。メチルエステルを、実施例2の合成に記載の通りに鹸化した。生成物を、EtOH/HOから再結晶した。
【0100】
実施例25
2−(3−(4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)イソキサゾール−5−イル)酢酸
【化50】


密封バイアルに、4−クロロ−3−トリフルオロメチル−ベンズアルデヒド(1g、4.79mmol)、塩酸ヒドロキシルアミン(666mg、9.59mmol)、炭酸カリウム(1.3g、9.59mmol)およびEtOH(8mL)を添加した。反応物を、環境温度で4時間撹拌し、その後、HOで希釈して、pHを、10%クエン酸を用いてpH6−7に調節した。その後、水層をEtOAcで抽出し、HOで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。得られた固体オキシムを濾過し、ヘキサン:CHCl(10:1)で洗浄し、さらに精製することなく次工程に用いた。
【0101】
DMF(1mL)中のオキシムの撹拌溶液(400mg、1.79mmol)に、0℃で、N−クロロスクシンイミド(239mg、1.79mmol)を添加した。反応物を、50℃で45分間撹拌し、その後、環境温度まで冷却し、HOで希釈した。水層をEtOAcで抽出し、HO(3x)および塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗生成物を、さらなる精製なしに次工程に用いた。
【0102】
CHCl中のオキシムクロライド(338mg、1.31mmol)および3−ブチン−1−オール(99μL、1.31mmol)の撹拌溶液に、0℃で、トリエチルアミン(183μL、1.31mmol)を添加した。反応物を、環境温度で一晩撹拌した。完了すると、反応混合物をHOで希釈し、EtOACで抽出した。有機層を合わせ、HOで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。その後、CHCl(4mL)中の得られたアルコール(175mg、0.343mmol)の溶液に、デス−マーチンペルヨージナン(174mg、0.411)を0℃で添加した。反応物を、環境温度で2時間撹拌し、その後、それを、飽和Naおよび飽和NaHCOでクエンチし、環境温度でさらに5分間撹拌した。層を分離し、水層をCHCl(3x)で洗浄した。有機層を合わせ、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。
【0103】
その後、塩化ナトリウム(195mg、2.15mmol)の水溶液(0.3mL)に、THF(1mL)中、前工程で得られたアルデヒド(78mg、0.269mmol)、リン酸二水素ナトリウム一水和物(297mg、2.15mmol)および2−メチル−2−ブテン(0.5mL)の混合物を0℃で添加した。反応混合物を、環境温度で一晩撹拌し、その後、10%クエン酸でクエンチして、EtOAcで抽出した(3x)。有機層を合わせ、HOおよび塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮して、所望のイソオキサゾールを得た。有機層残渣をDMSOに溶解し、生成物を、分取HPLCにより反応混合物から精製した。
【0104】
実施例26
2−(2−(4−メトキシ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)チアゾール−4−イル)酢酸
【化51】


バイアルに、4−メトキシ−3−トリフルオロメチル−ベンズアミド(219mg、1.0mmol)、ローソン試薬(425mg、1.05mmol)およびTHF(5mL)を添加した。反応物を、マイクロ波中、90℃で15分間撹拌し、次いで、標準的な水溶液での後処理を行った。溶媒を減圧下で取り除き、化合物を、シリカゲルクロマトグラフィー(5%−50%EtOAc/ヘキサン)により精製して、所望の生成物を得た。チオアミド(60mg、0.25mmol)を、実施例1に記載の合成法に従い、メチル−4−クロロアセトアセテート(38mg、0.25mmol)と反応した。メチルエステルを、実施例2の合成に記載の通りに鹸化した。生成物を、EtOH/HOから再結晶した。
【0105】
実施例27
2−(2−(2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)チアゾール−4−イル)酢酸
【化52】


実施例27の化合物を、実施例15および26に記載の合成法に従い、2−クロロ−3−トリフルオロメチル−安息香酸から製造した。生成物を、EtOH/HOから再結晶した。
【0106】
実施例28
2−(2−(3−ブロモ−5−(トリフルオロメチル)フェニル)チアゾール−4−イル)酢酸
【化53】


実施例28の化合物を、実施例26に記載の合成法に従い、3−ブロモ−5−トリフルオロメチル−ベンズアミドから製造した。有機層残渣をDMSOに溶解し、生成物を、分取HPLCにより反応混合物から精製した。
【0107】
実施例29
2−(2−(3,4−ジフルオロ−5−(トリフルオロメチル)フェニル)オキサゾール−4−イル)酢酸
【化54】


実施例29の化合物を、実施例4に記載の合成法に従い、3,4−ジフルオロ−5−トリフルオロメチル−ベンズアミド(225mg、1.0mmol)およびメチル−4−クロロアセトアセテート(452mg、3.0mmol)から製造した。メチルエステルを、実施例2の合成に記載の通りに鹸化した。生成物を、EtOH/HOから再結晶した。
【0108】
実施例30
2−(2−(3,4−ジフルオロ−5−(トリフルオロメチル)フェニル)チアゾール−4−イル)酢酸
【化55】


実施例30の化合物を、実施例15および26に記載の合成法に従い、3,4−ジフルオロ−5−トリフルオロメチル−安息香酸から製造した。生成物を、EtOH/HOから再結晶した。
【0109】
実施例31
メチル 2−(2−(3−(ジフルオロメチル)−5−(トリフルオロメチル)フェニル)チアゾール−4−イル)アセテート
【化56】


密封バイアルに、[2−(3−ブロモ−5−トリフルオロメチル−フェニル)−チアゾール−4−イル]−酢酸メチルエステル(1.2g、3.16mmol)、スチレン(542μL、4.73mmol)、Pd(dba)(43mg、0.047mmol)、[(t−Bu)PH]BF(28mg、0.095mmol)、N,N−ジシクロヘキシルメチルアミン(738μL、3.48mmol)およびジオキサン(5mL)を添加した。反応物を95℃で2時間撹拌し、環境温度まで冷却し、セライトを通して濾過し、EtOAcで洗浄した。溶媒を減圧下で除去し、反応物をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製した。得られたアルキンをCHClに溶解し、オゾン下で15分間撹拌し、その後、硫化ジメチルおよび飽和硫化ナトリウム(水溶液)でクエンチして、環境温度で一晩撹拌した。有機層を分け、水層をCHClで抽出した(3x)。有機層を合わせ、HOおよび塩水で洗浄し、MgSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。反応物を、シリカゲルクロマトグラフィー(3:1ヘキサン/EtOAc)により精製して、[2−(3−ホルミル−5−トリフルオロメチル−フェニル)−チアゾール−4−イル]−酢酸メチルエステルを得た。
【0110】
DASTを、CHCl中のアルデヒドの溶液に、アルゴン下、0℃で、撹拌しながら滴下した。MeOHを添加し、反応混合物を、環境温度で2時間撹拌し、その後、飽和NaHCOでクエンチし、EtOAcで抽出した。有機層を合わせ、飽和NaHCOで洗浄し、MgSOで乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。有機層残渣をDMSO中に溶解し、生成物を、分取HPLCにより反応混合物から精製した。
【0111】
実施例32
2−(2−(3−(ジフルオロメチル)−5−(トリフルオロメチル)フェニル)チアゾール−4−イル)酢酸
【化57】


実施例32の化合物を、実施例2の合成法に従い、メチルエステル(実施例31)から製造した。有機層残渣をDMSOに溶解し、生成物を、分取HPLCにより反応混合物から精製した。
【0112】
実施例33
4−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−フェニル)−チアゾール−2−カルボン酸
【化58】


実施例33の化合物を、まず初めに、実施例1の合成法に従い、1−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−フェニル)−2−ブロモ−エタノン(1g、2.9mmol)および2,2−ジメチル−プロピオン酸チオカルバモイルメチルエステル(508mg、2.9mmol)から製造した。得られたピボレート(pivolate)エステル(1.19g、2.9mmol)を、ジオキサン中の3N HCl(7mL)およびジオキサン(3mL)中で、20時間、還流した。完了すると、反応物を環境温度まで冷却し、HOで希釈し、水層をEtOAcで抽出した(3x)。有機層を合わせ、HOおよび塩水で洗浄し、その後、MgSOで乾燥させ、濃縮した。その後、得られたアルコール(850mg、2.6mmol)を、環境温度で1時間、デス−マーチンペルヨージナン(1.3g、3.1mmol)およびCHClと反応させた。反応物を飽和Naおよび飽和NaHCOでクエンチし、環境温度でさらに5分間撹拌した。水層をCHClで抽出し(3x)、有機層をMgSOで乾燥させ、濃縮した。
【0113】
得られたアルデヒド(70mg、0.22mmol)を、実施例25、工程5に記載の合成法に従い、2−メチル−2−ブテン、NaClO、KHPO、t−BuOH、THFおよびHOを用いて酸化した。最終的な酸を、DMSOに溶解し、生成物を、分取HPLCにより反応混合物から精製した。
【0114】
実施例34
5−[2−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−フェニル)−チアゾール−4−イルメチル]−2H−テトラゾール
【化59】


実施例34の化合物を、まず初めに、実施例1の合成法に従い、3,5−ビス−トリフルオロメチル−チオベンズアミド(273mg、1.0mmol)および1,3−ジクロロアセトン(140mg、1.1mmol)から製造した。得られたα−クロロチアゾールを、シリカゲルクロマトグラフィー(0%−40%EtOAc/ヘキサン)により精製した。密封バイアルに、塩化物(345mg、1.0mmol)、KCN(195mg、3.0mmol)、KCO(10%)およびDMSO(5mL)を添加した。反応物を環境温度で一晩撹拌し、その後、それをHOに注ぎ、EtOAcで抽出した(3x)。有機層を合わせ、HOおよび塩水で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濃縮した。その後、生成物を、シリカゲルクロマトグラフィー(0%−40%EtOAc/ヘキサン)により精製した。その後、得られたニトリル(34mg、0.1mmol)をDMF(1mL)に溶解した。アジ化ナトリウム(33mg、0.5mmol)および塩化アンモニウム(27mg、0.5mmol)を添加し、混合物を、密封反応管中、140℃で一晩撹拌した。完了すると、反応物を環境温度まで冷却し、生成物を、分取HPLCにより反応混合物から精製した。
【0115】
実施例35
5−[2−(4−クロロ−3−トリフルオロメチル−フェニル)−チアゾール−4−イルメチル]−2H−テトラゾール
【化60】


実施例35の化合物を、実施例34の合成法に従い、4−クロロ−3−トリフルオロメチル−チオベンズアミドおよび1,3−ジクロロアセトンから製造した。有機層残渣をDMSOに溶解し、生成物を、分取HPLCにより反応混合物から精製した。
【0116】
実施例36
2−(2−(2−クロロ−5−(トリフルオロメチル)フェニル)オキサゾール−4−イル)酢酸
【化61】


2−クロロ−5−トリフルオロメチル−ベンゾニトリル(550mg、2.68mmol)を、4N NaOH(3mL)およびTHF(6mL)中に溶解し、60℃で一晩加熱した。完了後、反応物を環境温度まで冷却し、10%クエン酸で希釈した。水層をEtOAcで抽出し、10%クエン酸(2x)および塩水で洗浄し、MgSOで乾燥させ、減圧下で濃縮して、シリカゲルクロマトグラフィー(3:2ヘキサン/EtOAc)により精製した。得られた2−クロロ−5−トリフルオロメチル−ベンズアミド(100mg、0.447mmol)を、実施例4に記載の合成法に従い、メチル−4−クロロアセトアセテート(300mg、1.34mmol)と反応した。メチルエステルを、実施例2の合成に記載の通りに鹸化した。有機層残渣をDMSO中に溶解し、生成物を、分取HPLCにより反応混合物から精製した。
【0117】
実施例37
2−(2−(3−ブロモ−5−(トリフルオロメチル)フェニル)オキサゾール−4−イル)酢酸
【化62】


実施例37の化合物を、実施例4に記載の合成法に従い、3−ブロモ−5−トリフルオロメチル−ベンズアミドから製造した。メチルエステルを、実施例2の合成に記載の通りに鹸化した。有機層残渣をDMSOに溶解し、生成物を、分取HPLCにより反応混合物から精製した。
【0118】
実施例38
RBP4を調節する化合物の有効性試験
RBP4に対する試験化合物の結合親和性を決定するため、ホモジニアス時間分解蛍光(HTRF)アッセイが開発された。該アッセイは、RBP4と公知のRBP4リガンドであるレチノールとの相互作用を測定する競合実験である。Cy5標識レチノールを、10nMビオチン標識RBP4タンパク質およびストレプトアビジン−ユーロピウムクリプ
テート(1nM)と共にインキュベートした。試験または対照化合物を反応混合物に添加し、室温で30分間インキュベートした。HTRFシグナルを、665nMおよび620nMで放出をモニタリングすることにより決定した。665nMシグナルと620nMシグナルの比を、RBP4へのCy5−レチノールの結合を決定するために用いた。RBP4からCy5−レチノールを外す試験または対照化合物の能力を、RBP4に対するそれらの効力を決定するために用いた。
【0119】
本発明の実施例化合物を表1にまとめる。
【化63】


【化64】

【0120】
【化65】


【化66】


【化67】

【0121】
【化68】


【化69】


【化70】


【化71】

【0122】
アッセイ
TR−FRETベースのRBP4結合アッセイの開発のため、レチノイン酸(RA)のカルボキシ基を、短いPEGスペーサーで分けたCy5−フルオロフォアに結合させて誘導体化して、RA−PEG−Cy5を得た。RA−PEG−Cy5の、その担体タンパク質への結合をモニターするために、RBP4をビオチニル化し、ストレプトアビジン−ユーロピウムキレート結合複合体(SA−Eu)と共に予めインキュベートした。RA−Cy5がRBP4−ビオチン/SA−Eu複合体に結合するとき、330nm近辺のUV光でのEu−キレートの励起が、620nmでの光放射をもたらし、Cy5へのエネルギー転移、その後の665nmでのCy5による光放射をもたらす。故に、665nmでの光放射、あるいは、665nmと620nmの光放射の比は、RBP4−EuへのRA−PEG−Cy5の結合の直接的測定である
【0123】
RBP4をレチノールまたはレチノイン酸へ置換するだけでなく、RBP4−TTR相互作用を崩壊する化合物を同定するために、第二のSPRベースのアッセイが開発された。この目的を達成するために、ビオチニル化TTRを、ストレプトアビジンでコートしたバイオセンサーチップ上にロードし、RBP4溶液を、試験化合物またはDMSOのみの存在下で、固定化したTTR上を種々の濃度で通過させた。
【0124】
黄斑変性症の処置に対する化合物の有効性の試験
試験前に、全てのヒト患者に、蛍光眼底血管造影、視力測定、電気生理的パラメーターおよび生化学的パラメーターおよびレオロジーパラメーターを含む、所定の眼科検査を行い得る。試験対象基準は以下の通りである:少なくとも一方の眼の視力が、20/160から20/32の間であり、ドルーゼ、輪紋状萎縮症(areolar atrophy)、ピグメント・クランプ、色素上皮剥離、または網膜下血管新生のようなAMDの指標を有すること。妊婦または乳児である患者は、実験から除かれる。
【0125】
黄斑変性症と診断されたか、または眼でのA2E、リポフスチンまたはドルーゼンの形成が進行性である200名のヒト患者を、対照群の約100名の患者および実験群の100名の患者に分ける。本発明の化合物は、実験群に毎日投与される。プラセボは、本発明の化合物が実験群に投与されるのと同様のレジメンで対照群に投与される。本発明の化合物またはプラセボの患者への投与は、どちらも経口的または非経腸的に黄斑変性症の発症または再発の阻害に有効な量で投与され得る。有効な投与量は、約1−4000mg/mを1日3回までの範囲である。
【0126】
対照および実験群の両方における黄斑変性症の進行を測定するための1つの方法は、線形評価を用いるEarly Treatment Diabetic Retinopathy Study (ETDRS)チャート(Lighthouse, Long Island, NY)および強制選択法(Ferris et al., Am J Ophthalmol., 94:97-98 (1982))により評価される最高矯正視力である。視力は、logMAIRに記録される。ETDRSチャートにおける1つの線の変化は、0.1 logMARと等しい。対照および実験群の両方における黄斑変性症の進行を測定するためのさらなる典型的な方法には、Humphrey視野検査、および患者の眼におけるN−レチニリデン−ホスファチジルエタノールアミン、ジヒドロ−N−レチニリデン−N−レチニル−ホスファチジルエタノールアミン、N−レチニリデン−N−レチニル−ホスファチジルエタノールアミン、ジヒドロ−N−レチニリデン−N−レチニル−エタノールアミン、および/またはN−レチニリデン−ホスファチジルエタノールアミンの自己蛍光または吸収スペクトルを測定/モニタリングする方法が含まれるが、これらに限定されない、視野検査の使用が含まれる。自己蛍光を、共焦点レーザー走査検眼鏡を含むが、これに限定されない種々の装置を用いて測定する。Bindewald et al., Am. J. Ophthalmol., 137:556-8 (2004)を参照のこと。
【0127】
対照および実験群の両方における黄斑変性症の進行を測定するためのさらなる方法には、ベースライン、3、6、9および12ヶ月目の経過観察検診での、基底部撮影、Heidelberg社の網膜断層撮影(または、別法の、Hammer et al., Opthalmologe 2004 Apr. 7 [本特許出願前のEpub]に記載の技術)を用いる時間経過による自己蛍光の変化の観察、および蛍光血管造影撮影が含まれる。形態学的変化の記録は、(a)ドルーゼンの大きさ、特徴および分布;(b)脈絡膜血管新生の発症および進行;(c)他の基底部間の変化または異常;(d)読書速度および/または読書時の視力;(e)暗点の大きさ;または、(f)地理的萎縮病斑(geographic atrophy lesion)の大きさおよび数、の変化を含む。加えて、アムスラーグリッド検査および色覚検査を任意で行う。
【0128】
薬剤投与中の統計的な視力改善を評価するために、試験者は、ETDRS(LogMAR)チャートと標準化屈折および視力プロトコールを用い得る。ベースラインから利用可能な処置後の間隔をあけた来診までの平均ETDRS(LogMAR)最良矯正視力(BCVA)の評価は、統計的視力回復の測定を補助できる。対照群と実験群とのANOVA(2つの群間の分散分析)を評価するため、ベースラインから利用可能な治療後の間隔をあけた来診までのETDRS(LogMAR)視力における平均変化を、2つの群のANOVAを用いて、SAS/STATソフトウェア(SAS Institutes mc, Cary, North Carolina)を用いる非構造共分散で測定分析を繰り返して比較する。試験開始後の毒性評価には、次年度の3ヶ月毎の検査、さらに1年後の4ヶ月毎の検査およびその後6ヶ月毎の検査が含まれる。
【0129】
本明細書に記載の実施例および態様は例示の目的のみのものであり、それらに照らして様々な修飾または変形が当業者に示唆され得、これが本出願および添付の特許請求の範囲内に包含されることが理解される。本明細書に引用する文献、特許および特許出願は全て、全ての目的に関して引用により本明細書中に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)または(2):
【化1】


[式中、RおよびRは、独立して、H、ハロゲン、C1−6アルコキシ、または所望によりハロゲンで置換されていてよいC1−6アルキルであり(ただし、RおよびRは、両方が同時にHではない。);
は、C1−6ハロゲン化アルキルであり;
およびRは、独立して、H、OH、C1−6アルキル、C1−6アルコキシまたはC3−7炭素環式環であるか;または、RおよびRは、一体となって、3−6員環を形成し;
は、COであり;
は、HまたはC1−6アルキルであり;
およびYのうち一方は、SまたはOであり、他方は、CR(ここで、Rは、HまたはC1−6アルキルである。)であり;
あるいは、YおよびYのうち一方は、Nであり、他方は、Oであり;
およびYのうち一方は、Nであり、他方は、Oであり;
mは、0−1である。ただし、該化合物は、式(1−Q)または(1−R):
【化2】


〔式中、Rは、フェニル環の6位でハロであり;
は、ハロであり;
各R7’は、HまたはC1−6アルキルである。〕ではない。]
で示される化合物、またはその生理的に許容される塩。
【請求項2】
化合物が、式(1)の化合物であって、
が、ハロゲン、C1−6アルコキシ、または所望によりハロゲンで置換されていてよいC1−6アルキルであり、フェニル環のいずれかの位置にあり;
がHであり;
、R、R、R、Y、Yおよびmが、請求項1に定義の通りである、
請求項1記載の化合物。
【請求項3】
化合物が、式(1A)の化合物
【化3】


[式中、RおよびRが、ハロゲンであり;
、R、R、R、Y、Yおよびmが、請求項1に定義の通りである。]
である、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
化合物が、式(1B)の化合物
【化4】


[式中、R、R、R、R、Y、Yおよびmが、請求項1に定義の通りである。]
である、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
が、SまたはOであり、YがCRであり、Rが、HまたはC1−6アルキルである、請求項1−4のいずれか一項記載の化合物。
【請求項6】
が、SまたはOであり、YがCRであり、RがHまたはC1−6アルキルである、請求項1−4のいずれか一項記載の化合物。
【請求項7】
およびYのうち一方がNであり、他方がOである、請求項1−4のいずれか一項記載の化合物。
【請求項8】
mが1である、請求項1−7のいずれか一項記載の化合物。
【請求項9】
化合物が、式(2A)の化合物
【化5】


[式中、R、R、R、R、R、R、YおよびYが、請求項1に定義の通りである。]
である、請求項1記載の化合物。
【請求項10】
式(1)または(2):
【化6】


[式中、RおよびRは、独立して、H、ハロゲン、C1−6アルコキシ、または所望によりハロゲンで置換されていてよいC1−6アルキルであり(ただし、RおよびRは、両方が同時にHではない。);
は、C1−6ハロゲン化アルキルであり;
およびRは、独立して、H、OH、C1−6アルキル、C1−6アルコキシまたはC3−7炭素環式環であるか;または、RおよびRは、一体となって、3−6員環を形成し;
は、カルボン酸等量体であり;
およびYのうち一方は、SまたはOであり、他方は、CR(ここで、Rは、HまたはC1−6アルキルである。)であり;
あるいは、YおよびYのうち一方は、Nであり、他方は、Oであり;
およびYのうち一方は、Nであり、他方は、Oであり;
mは、1である。ただし、該化合物は、式(1−Q)または(1−R):
【化7】


〔式中、Rは、フェニル環の6位でハロであり;
は、ハロであり;
7’はそれぞれ、HまたはC1−6アルキルである。〕ではない。]
で示される化合物、またはその生理的に許容される塩。
【請求項11】
カルボン酸等量体が、
【化8】


からなる群から選択される、請求項10記載の化合物。
【請求項12】
がCFである、請求項1−11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項13】
およびRがHである、請求項1−11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項14】
がHであり、RがOHである、請求項1−11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項15】
化合物が、以下の群
【化9】


【化10】


【化11】


【化12】


【化13】


から選択される、請求項1−9および12−14のいずれか一項記載の化合物。
【請求項16】
該化合物が、以下
【化14】


から選択される、請求項10−14のいずれか一項記載の化合物。
【請求項17】
治療的有効量の請求項1または10記載の化合物および生理的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項18】
細胞においてレチノール結合タンパク質4(RBP4)へのレチノールの結合を阻害する方法であって、該細胞と有効量の式(1)または(2):
【化15】


[式中、RおよびRは、独立して、H、ハロゲン、C1−6アルコキシ、または所望によりハロゲンで置換されていてよいC1−6アルキルであり(ただし、RおよびRは、両方が同時にHではない。);
は、C1−6ハロゲン化アルキルであり;
およびRは、独立して、H、OH、C1−6アルキル、C1−6アルコキシまたはC3−7炭素環式環であるか;または、RおよびRは、一体となって、3−6員環を形成し;
は、COまたは5,6−ジヒドロ−1,4,2−ジオキサジニル以外のカルボン酸等量体であり;
は、HまたはC1−6アルキルであり;
およびYのうち一方は、SまたはOであり、他方は、CR(ここで、Rは、HまたはC1−6アルキルである。)であり;
あるいは、YおよびYのうち一方は、Nであり、他方は、Oであり;
およびYのうち一方は、Nであり、他方は、Oであり;
mは、0−1である。]
の化合物、またはその生理的に許容される塩を接触させることを含む、方法。
【請求項19】
黄斑変性症またはシュタルガルト病を有する対象における、レチノール結合タンパク質4(RBP4)へのレチノールの結合により仲介される状態(該状態は、黄斑変性症またはシュタルガルト病である。)の処置方法であって、該対象に、有効量の式(1)または(2):
【化16】


[式中、RおよびRは、独立して、H、ハロゲン、C1−6アルコキシ、または所望によりハロゲンで置換されていてよいC1−6アルキルであり(ただし、RおよびRは、両方が同時にHではない。);
は、C1−6ハロゲン化アルキルであり;
およびRは、独立して、H、OH、C1−6アルキル、C1−6アルコキシまたはC3−7炭素環式環であるか;または、RおよびRは、一体となって、3−6員環を形成し;
は、COまたは5,6−ジヒドロ−1,4,2−ジオキサジニル以外のカルボン酸等量体であり;
は、HまたはC1−6アルキルであり;
およびYのうち一方は、SまたはOであり、他方は、CR(ここで、Rは、HまたはC1−6アルキルである。)であり;
あるいは、YおよびYのうち一方は、Nであり、他方は、Oであり;
およびYのうち一方は、Nであり、他方は、Oであり;
mは、0−1である。]
の化合物、またはその生理的に許容される塩を投与することを含む、方法。
【請求項20】
該状態が加齢黄斑変性症である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
該状態が萎縮性加齢黄斑変性症である、請求項19記載の方法。
【請求項22】
該状態がシュタルガルト病である、請求項19記載の方法。
【請求項23】
レチノール結合タンパク質4(RBP4)へのレチノールの結合を阻害するための、式(1)または(2):
【化17】


[式中、RおよびRは、独立して、H、ハロゲン、C1−6アルコキシ、または所望によりハロゲンで置換されていてよいC1−6アルキルであり(ただし、RおよびRは、両方が同時にHではない。);
は、C1−6ハロゲン化アルキルであり;
およびRは、独立して、H、OH、C1−6アルキル、C1−6アルコキシまたはC3−7炭素環式環であるか;または、RおよびRは、一体となって、3−6員環を形成し;
は、COまたは5,6−ジヒドロ−1,4,2−ジオキサジニル以外のカルボン酸等量体であり;
は、HまたはC1−6アルキルであり;
およびYのうち一方は、SまたはOであり、他方は、CR(ここで、Rは、HまたはC1−6アルキルである。)であり;
あるいは、YおよびYのうち一方は、Nであり、他方は、Oであり;
およびYのうち一方は、Nであり、他方は、Oであり;
mは、0−1である。]
の化合物、またはその生理的に許容される塩、またはそれを含む医薬組成物の使用。
【請求項24】
黄斑変性症またはシュタルガルト病の処置のための医薬の製造における、式(1)または(2):
【化18】


[式中、RおよびRは、独立して、H、ハロゲン、C1−6アルコキシ、または所望によりハロゲンで置換されていてよいC1−6アルキルであり(ただし、RおよびRは、両方が同時にHではない。);
は、C1−6ハロゲン化アルキルであり;
およびRは、独立して、H、OH、C1−6アルキル、C1−6アルコキシまたはC3−7炭素環式環であるか;または、RおよびRは、一体となって、3−6員環を形成し;
は、COまたは5,6−ジヒドロ−1,4,2−ジオキサジニル以外のカルボン酸等量体であり;
は、HまたはC1−6アルキルであり;
およびYのうち一方は、SまたはOであり、他方は、CR(ここで、Rは、HまたはC1−6アルキルである。)であり;
あるいは、YおよびYのうち一方は、Nであり、他方は、Oであり;
およびYのうち一方は、Nであり、他方は、Oであり;
mは、0−1である。]
の化合物、またはその生理的に許容される塩、またはそれを含む医薬組成物の使用。

【公表番号】特表2012−523461(P2012−523461A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506119(P2012−506119)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【国際出願番号】PCT/US2010/030843
【国際公開番号】WO2010/120741
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(503261524)アイアールエム・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (158)
【氏名又は名称原語表記】IRM,LLC
【Fターム(参考)】