説明

レトルトクリームソース、電子レンジ調理用容器詰食品及びクリーム煮料理の調理又は製造方法

【課題】具材をレトルトクリームソースに加えて加熱調理することによりクリーム煮料理を得る際に、その加熱を電子レンジ加熱で行っても、ふきこぼれが生じず、油脂分の分離もしないレトルトクリームソースを提供する。
【解決手段】具材を加えて電子レンジで加熱調理することによりクリーム煮料理を得られるようにするレトルトクリームソースは、蛋白質、脂質、湿熱処理澱粉又は加工澱粉、及び小麦粉を含有しており、蛋白質の含有量がレトルトクリームソース全体の0.5〜4質量%であり、脂質の含有量がレトルトクリームソース全体の2〜30質量%であり、且つ脂質100質量部に対して蛋白質を10〜70質量部含有し、更に湿熱処理澱粉又は加工澱粉を0.1〜10質量%で含有し、小麦粉を1質量%以下で含有し、そして1〜5Pa・sの粘度を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジ加熱調理に適したレトルトクリームソース、そのレトルトクリームソースが充填された容器に固形具材を投入して電子レンジ調理を行うための電子レンジ調理用容器詰食品、及びそれを利用してクリーム煮料理を調理又は製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食生活が洋風化した現在、人気のある代表的メニューの一つとして、クリーム煮料理がある。クリーム煮調理は、スズキや牡蛎等の魚介類、鶏肉、牛肉等の肉類、ブロッコリー、人参などの野菜類等の具材を、必要に応じて油通しなどの下処理した上で、トマトソース、ホワイトルーを希釈したソース、あるいはソテーした香味野菜に白ワインを加えて煮込んだソースなどの比較的低粘度のベースソースに加えて煮込み、ベースソースの味を具材に馴染ませた後、最後に生クリームを加えてひと煮立ちさせて作られている。
【0003】
ところで、このようなクリーム煮料理を作るに際しては、具材の煮込みに先だって、ベースソースを予め作り置きしなければならず、ベースソースを作る手間と時間とがかかるという問題がある。また、具材の煮込みの際には、具材の煮込み過ぎや、鍋底へのソースの焦げ付きを防止するために、かなりの頻度で火加減を調整すること等、煩雑な操作が必要となるという問題がある。
【0004】
ところで、ベースソースを作り置きしなければならないという問題に対応するために、市販の固形状、粉状あるいはペースト状の種々の濃縮ソースが市販されている。例えば、濃縮タイプのホワイトソース缶詰が市販されている(非特許文献1)。
【0005】
また、煩雑な操作が必要となるという問題については、クリームソースを耐熱キャセロールに具材を共に入れ、蓋をした上で電子レンジ加熱調理することが考えられる。電子レンジ加熱の場合、電子レンジ庫内に入れた後は、マイクロウェーブの発振出力と加熱時間とをセットするだけなので、調理に手間がかからない。
【0006】
また、そのような耐熱キャセロールも使用せずに電子レンジ調理をすることも提案されている。例えば、ジッパーを備えた水蒸気透過性調理用袋に、野菜類や肉類などの生鮮食品具材と調味料やソースとを密封した調理用バッグが提案されている(特許文献1)。この調理用バッグを電子レンジで数分間、加熱調理した場合、生鮮食品具材はレトルト処理を受けずに電子レンジ加熱調理により初めて加熱されるので、そのテクスチャーは失われにくく、また、同様に、生鮮食品具材への調味液やソースの過度のしみ込みも生じにくいことが期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−44708号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】http://WWW.kumano−eshop.com/SHOP/4901577175329.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、非特許文献1の濃縮タイプのホワイトソースを牛乳や清水で希釈して低粘度に調整したソースを、耐熱キャセロールに具材と共に入れ、蓋をして電子レンジ加熱調理した場合、強い沸騰状態が数分間連続し、しかも沸騰状態に応じて出力の調整ができないため、沸騰したソースが泡立って容器からふきこぼれるという問題があった。それだけでなく、油脂成分が分離するという問題もあった。油脂成分の分離については、高HLBのショ糖脂肪酸エステルやグリセリン脂肪酸エステル等の親水性の乳化剤を配合することが考えられるが、このような乳化剤を配合すると、かえって、クリームソースのふきこぼれを助長することになるので、採用することはできない。また、生クリームを泡立てたホイップクリームについて、泡の安定化に固体油脂粒子が寄与していることが知られていることから、クリームソースの電子レンジ加熱により沸騰した際の沸き上がりを抑制するために、固体油脂のクリームソースへの配合を避けることも考えられるが、油脂を配合しないことは、そもそもクリームソースのレシピとして不完全であり、しかも、油脂を配合しなくてもクリームソースの電子レンジ加熱調理時の沸き上がりを軽減することはできない。
【0010】
以上のクリームソースのふきこぼれと油脂分の分離の問題は、非特許文献1の濃縮タイプのホワイトソースを牛乳や清水で希釈したソースを、特許文献1の調理用バッグに具材と共に投入して電子レンジ加熱調理した場合にも当然に生じる。
【0011】
このように、クリーム煮料理は、電子レンジ加熱調理では満足のいくものができないというのが現状であり、家庭、レストラン、弁当屋、あるいは惣菜店などで、簡便にクリーム煮料理を電子レンジ加熱調理により作れることが望まれていた。
【0012】
なお、既に調理済みのクリーム煮料理をレトルト処理したパウチ詰め食品が市販されているが、具材のテクスチャーは損なわれ、煮崩れしがちであり、また、具材に乳風味が過度に染み込み、具材そのものの味が失われがちという問題がある。このことからも、新鮮な具材をクリームソースで電子レンジ加熱調理することにより、そのクリーム煮料理を簡便に得られるようにすることが重要な課題となっている。
【0013】
本発明の目的は、以上の従来の技術の課題を解決しようとするものであり、具材をレトルトクリームソースに加えて加熱調理することによりクリーム煮料理を得る際に、その加熱を電子レンジ加熱で行っても、ふきこぼれが生じず、油脂分の分離もしないレトルトクリームソースを提供することである。また、本発明は、そのようなレトルトクリームソースを使用する電子レンジ調理用パウチ詰食品及びそれを使用するクリーム煮料理の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、レトルトクリームソースの粘度と、成分のうち特に蛋白質と脂質とに着目し、レトルトクリームソースの粘度を(煮込みに用いる一般的な低粘度のクリームソースと比較して)煮込みに支障がない程度に澱粉を用いて増粘させ、更に蛋白質含量と脂質含量とを所定低濃度とし且つそれらの相対量を一定の範囲に規定することにより、上述の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0015】
即ち、本発明は、具材を加えて電子レンジで加熱調理することによりクリーム煮料理を得られるようにするレトルトクリームソースであって、
蛋白質の含有量がレトルトクリームソース全体の0.5〜4質量%であり、脂質の含有量がレトルトクリームソース全体の2〜30質量%であり、且つ脂質100質量部に対して蛋白質が10〜70質量部含有されており、
澱粉を含有し、そして
粘度が1〜10Pa・sであるレトルトクリームソースを提供する。
【0016】
また、本発明は、上述のレトルトクリームソースが容器に充填されてなり、容器内に固形具材を投入し、電子レンジで加熱調理することによりクリーム煮を得られるようにする電子レンジ調理用容器詰食品を提供する。特に、容器として、固形具材の投入口となるジッパー部と電子レンジによる加熱調理時に蒸気を排出する蒸気抜き機構とを有したパウチを使用することが好ましい。
【0017】
また、本発明は、上述の電子レンジ調理用容器詰食品の容器内に具材を投入して電子レンジで加熱調理することを特徴とするクリーム煮料理の調理又は製造方法を提供する。特に好ましい態様として、容器が固形具材の投入口となるジッパー部と電子レンジによる加熱調理時に蒸気を排出する蒸気抜き機構とを有したパウチである場合に、電子レンジ調理用容器詰食品のジッパー部を開封し、そこから固形具材をパウチ内に投入し、ジッパー部を閉じ、電子レンジで加熱調理することを特徴とするクリーム煮料理の調理又は製造方法を提供する。更に、そのような電子レンジ調理用容器詰食品のジッパー部を開封し、そこから固形具材をパウチ内に投入し、ジッパー部を閉じ、電子レンジで加熱調理することを特徴とするパウチ詰液状食品の使用方法と提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、レトルトクリームソースの粘度を、澱粉を用いて、煮込みに支障がない程度に、即ち1〜10Pa・sに増粘させているので、電子レンジ加熱時のクリームソースのふき上がりを抑制することができる。また、蛋白質及び脂質のレトルトクリームソース中の含有量をそれぞれ0.5〜4質量%及び2〜30質量%とし、且つ脂質100質量部に対して蛋白質を10〜70質量部含有させているので、ふきこぼれを抑制でき且つ油脂分の分離を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施態様の電子レンジ調理用パウチ詰食品の正面図である。
【図2】電子レンジ調理用パウチ詰食品を平置きした状態の側面図である。
【図3】固形具材を投入するためにジッパー部を開口した電子レンジ調理用パウチ詰食品の正面図である。
【図4】固形具材をパウチに投入後、そのパウチを電子レンジで加熱調理する姿勢とした状態の電子レンジ調理用パウチ詰食品の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のレトルトクリームソースは、具材を加えて電子レンジで加熱調理することによりクリーム煮料理を得られるようにするソースである。なお、本発明において、レトルトクリームソースの性状(例えば、粘度や食塩濃度等)や構成成分の含有量等を規定する場合、クリームソースが目視で均一な液状と評価できる場合には、そのままのクリームソースに対し、必要な測定、試験あるいは評価を行い、得られた結果に基づき、前述の性状や含有量を規定すればよい。他方、クリームソースにタマネギやマッシュルーム等の具材が含まれている場合には、クリームソースを10メッシュの網目に通し、網目を通り抜けた液状物に対し、必要な測定、試験、評価を行い、得られた結果に基づき、前述の性状や含有量を規定すればよい。
【0021】
本発明が対象とするクリームソースとは、少なくとも調味料及び乳原料を含有する乳化状のソースであって、常法でレトルト処理されたものである。調味料としては、食塩、砂糖、グルタミン酸ナトリウム、動植物エキス類、香辛料等が挙げられる。乳原料としては、牛乳、クリーム、バター、チーズ、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、チーズなどが挙げられる。クリームソースには、トマトソース、ホワイトルー、香味野菜、あるいは、白ワインを加えたソースなどの味付けのベースとなる風味原料を配合したものであることが好ましい。具体的なクリームソースとしては、ホワイトルーをベースとしたホワイトクリームソース、トマトソースをベースとしたトマトクリームソース、白ワインをベースとしたヴァンブランソースなどが挙げられる。
【0022】
本発明のレトルトクリームソースにおける蛋白質の含有量は、レトルトクリームソース全体の0.5〜4質量%、好ましくは1〜3質量%である。蛋白質含有量が0.5質量%未満であると、レトルトクリームソースに好ましいコクを付与することができないばかりか電子レンジ加熱時に油脂分の分離が生じる可能性が高まり、4質量%を超えると、電子レンジ加熱時にふきこぼれが顕著になるので好ましくない。なお、蛋白質含有量は、栄養表示基準(平成15年4月24日厚生省告示第176号)別表第2の第3欄記載の窒素定量換算法に準じて測定した値である。
【0023】
他方、本発明のレトルトクリームソースにおける脂質の含有量は、レトルトクリームソース全体の2〜30質量%、好ましくは4〜20質量である。脂質含有量が2質量%未満であると、レトルトクリームソースに好ましいコクを付与することができず、そればかりでなく電子レンジ加熱時のクリームソースのふきこぼれ抑制効果が得られず、30質量%を超えると、レトルトクリームソースが油っぽくなるばかりか電子レンジ加熱時に油脂分の分離が生じる可能性が高まるので好ましくない。なお、脂質含有量は、栄養表示基準(平成15年4月24日厚生省告示第176号)別表第2の第3欄記載のエーテル抽出法に準じて測定した値である。
【0024】
本発明において、蛋白質と脂質との相対的な配合割合は、脂質100質量部に対し蛋白質含有量が10〜70質量部、好ましくは10〜60質量部、より好ましくは15〜50質量部である。蛋白質含有量がこの範囲を下回ると、電子レンジ加熱時に油脂分の分離が生ずる可能性が高まり、この範囲を超えると電子レンジ加熱時にクリームソースのふきこぼれが生じやすい。
【0025】
本発明において使用できる蛋白質としては、乳蛋白質、大豆蛋白、卵蛋白等が挙げられるが、乳風味が得られる点からクリームソースの全蛋白質に占める乳蛋白質の割合は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。
【0026】
通常、乳蛋白質は、その8割がカゼインであり、2割が乳清蛋白質である。本発明においては、乳蛋白質は、常法により乳清蛋白質除去処理した、カゼインを蛋白質の主成分として含有する乳蛋白含有原料由来のものを用いることが好ましい。これは、電子レンジ加熱した際にクリームソースが電子レンジ調理により沸騰して沸き上がり難くなり好ましいからである。ここで、乳清蛋白質除去処理としては、常法によればよく、例えば、レンネット反応や酸凝固反応を利用した除去処理が挙げられる。また、このような乳清蛋白質除去処理した、カゼインを含有する乳蛋白含有原料としては、α、β又はκ−カゼイン、レンネットカゼイン、酸カゼイン、カゼインナトリウム、カゼインカルシウム、カゼインマグネシウム等のカゼイン塩の他、常法により乳原料から乳清蛋白質除去処理して加工された食品、例えばチーズ等が挙げられる。
【0027】
乳清蛋白質除去処理された、カゼインを含有する乳蛋白含有原料をクリームソースに配合する場合、その配合量は、カゼインがクリームソースの全蛋白質中に占める割合が好ましくは7割以上、より好ましくは8割以上、更に好ましくは9割以上となる量である。
【0028】
本発明において使用できる脂質としては、食用油脂、例えば、乳脂、ラード、ヘット、卵黄油等の動物性油脂、あるいは、菜種油、コーン油、オリーブ油、サフラワー油、綿実油、大豆油、米油、トウモロコシ油、これらを精製したサラダ油等の植物性油脂等が挙げられる。さらに、これらの油脂を硬化、エステル交換等の処理を施したものの他、MCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、ジグリセリド等のように化学的あるいは酵素的処理を施して得られる油脂等が挙げられる。これらの油脂の中でも風味の点から、乳脂、あるいは植物油脂が好ましい。
【0029】
なお、本発明のクリームソースに食用油脂を配合する場合、上述の食用油脂の他に、乳原料である生クリームやバターを配合してもよい。また、バターやバターオイルなどの乳脂肪分に脱脂粉乳などの無脂乳固形分、乳化剤、清水等を添加して製造した還元クリーム、乳脂肪分および植物性脂肪分に脱脂粉乳などの無脂乳固形分、乳化剤、安定剤、清水等を添加して製造したコンパウンドクリーム、植物性脂肪分に脱脂粉乳などの無脂乳固形分、乳由来以外の蛋白質、乳化剤、安定剤、清水等を添加して製造した合成クリーム等を配合してもよい。
【0030】
本発明のレトルトクリームソースの粘度は、1〜10Pa・s、好ましくは1.5〜8Pa・s、より好ましくは1.5〜5Pa・sである。粘度が1Pa・s未満であると、電子レンジ加熱調理中のクリームソースの沸き上がりを十分に抑制することができず、10Pa・sを超えると、具材を加えてクリーム煮として煮込みにくくなるので好ましくない。なお、粘度の測定は、当該ソースをBH型粘度計で、品温60℃、回転数20rpmの条件で、粘度が0.375Pa・s未満のときローターNo.1、0.375Pa・s以上1.5Pa・s未満のときローターNo.2、1.5Pa・s以上3.75Pa・s未満のときローターNo.3、3.75Pa・s以上7.5Pa・s未満のときローターNo.4、7.5Pa・s以上のときローターNo.5を使用し、測定開始後ローターが3回転した時の示度により求めた値である。
【0031】
本発明のレトルトクリームソースの粘度の調整は、電子レンジ調理中のクリームソースの沸き上がりを抑制する効果が得られ易い点から、澱粉を用いる。澱粉としては、例えば、小麦粉澱粉、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、米澱粉、タピオカ澱粉などの生澱粉、これら生澱粉に常法によりα化処理を行ったα化澱粉、生澱粉に常法により湿熱処理を行った湿熱澱粉、更に、生澱粉に常法により架橋処理、エステル化処理、エーテル化処理、酸化処理などの一種又は二種以上の処理を行った架橋澱粉、酸化澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉などの加工澱粉などが挙げられる。これらの澱粉の中でも、具材にソースが絡み易い好ましい性状を付与できるという点から、湿熱処理澱粉又は加工澱粉を好ましく使用できる。
【0032】
澱粉の使用量は、レトルトクリームソースの粘度が1〜10Pa・sとなるに必要な量であり、具体的には、沸き上がりを抑制する効果が得られ易い点からレトルトクリームソース全体の好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.5〜5質量%である。
【0033】
また、本発明のクリームソースには、電子レンジ加熱中のふきこぼれを防止するために、澱粉を使用して粘度を一定の範囲に規定してあるが、風味を出す等の理由で小麦粉を配合することができる。この場合、小麦粉を入れすぎると、却ってふきこぼれを助長することになるため、その配合量は、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下、特に好ましくは0.01〜0.5質量%であり、更に、澱粉100質量部に対して小麦粉を50質量部以下で配合することが好ましい。
【0034】
本発明のクリームソースには、油分離を抑制するために、キサンタンガムやグアーガム等のガム質を配合することができる。この場合、入れ過ぎると、却ってふきこぼれを助長することになるため、その配合量は、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.001〜0.08質量%であり、更に、澱粉の含有量100質量部に対してガム質を10質量部以下で配合することが好ましい。
【0035】
本発明のレトルトクリームソースの食塩濃度は、具材を適度に味付けする点から、好ましくは1〜3質量%、より好ましくは1.2〜2質量%とする。食塩濃度は、塩化ナトリウムの濃度又はそれに換算した食塩相当濃度をいい、常法により試料を希酸抽出法で調製して原子吸光法でナトリウム含量を測定し、所定の係数(2.54)を乗じて算出することにより求められる。
【0036】
本発明のクリームソースは、電子レンジ加熱中のふきこぼれの防止とソースの油分離を防止するために、蛋白質と脂質の相対量を一定の範囲に規定してあるが、電子レンジ加熱が長時間におよぶ場合には、ソースにわずかに油分離が生じることが懸念される。そのため、クリームソースには、モノアシル型親水性乳化剤をふきこぼれが生じない範囲で微量に配合することができる。モノアシル型親水性乳化剤をクリームソースに配合する場合、その配合量は、好ましくは0.001〜1質量%、より好ましくは0.001〜0.5質量%、更に好ましくは0.001〜0.1質量%である。
【0037】
ここで、モノアシル型親水性乳化剤とは、1個のアシル基を有し、水又は温水に分散する性質を有する食品に使用可能な乳化剤のことであり、具体的には、例えば、ジアシルグリセロリン脂質をホスフォリパーゼAあるいはホスフォリパーゼAの酵素で1位あるいは2位のアシル基を加水分解し、水酸基に変換したモノアシルグリセロリン脂質であるリゾリン脂質や、HLB(親水性親油性バランス)が、10以上のショ糖脂肪酸エステル若しくはポリグリセロリン脂肪酸エステル等が挙げられる。特に、これらの乳化剤のうち卵黄リゾリン脂質を使用すると、風味の点で好ましい。
【0038】
なお、モノアシル型親水性乳化剤としてリゾリン脂質を用いる場合は、リゾリン脂質そのものを使用してもよいが、トリグリセリド、コレステロール、リン脂質等の他の脂質成分も含有した一般的に卵黄リゾレシチン、大豆リゾレシチン、酵素処理卵黄レシチン、酵素処理大豆レシチン、酵素処理卵黄油等と称されるものも使用してよい。この場合、脂質混合物中のリゾリン脂質の部分は、本発明でいう脂質の一部に相当する。
【0039】
本発明のレトルトクリームソースには、以上述べた原料の他に、水飴、デキストリン、還元デキストリン、サイクロデキストリン、ソルビトール、トレハロース等の糖類、食酢、クエン酸等の有機酸又はその塩、アスコルビン酸又はその塩、ビタミンE等の酸化防止剤、着色料、香料、甘味料、保存料等の原料を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択して用いることができる。
【0040】
本発明のレトルトクリームソースは、蛋白質原料、脂質原料、調味料、及びその他の成分を、加熱撹拌したものを、レトルトパウチに密封し、レトルト処理することにより製造することができる。
【0041】
なお、本発明のレトルトクリームソースでクリーム煮すべき対象となる具材としては、クリーム煮料理に適したものを適宜選択して使用すればよい。例えば、キャベツ、ホウレン草、小松菜、ナス、インゲン、ブロッコリー、ダイコン、ニンジン、カブ、カボチャ、ジャガイモなどの野菜類、まいたけ、しめじなどのきのこ類、鶏肉、豚肉、牛肉、羊肉などの獣肉類、スズキ、タラ、たこ、いか、エビ、ムール貝、ホタテなどの魚介類などを挙げることができる。これらの具材は、容器に投入する前に予め、下茹で、油通し、あく抜きなどの下処理をしておくことができる。
【0042】
また、本発明において電子レンジ加熱調理とは、加えた具材の好ましいテクスチャーや旨みを加熱により引き出し、また、クリームソースで具材を調理する点から少なくともクリームソースが沸騰する加熱条件、具体的には、クリームソースと加えた具材の合計300gあたり、好ましくは出力600W×3分相当以上の加熱をすることを意味する。ここで600W×3分相当とは、出力300Wであれば6分、出力400Wであれば、4.5分、出力800Wであれば2.25分というように、出力ワット数と時間との積の値が同じになるように換算して計算した条件以上の電子レンジ加熱を行うことである。また、クリームソースと具材の合計が例えば600gであれば、出力ワット数と時間との積の値が300gの場合の2倍となるように電子レンジ加熱を行う。なお、従来のレトルト処理済みの調理食品を単に温めるために行う電子レンジ加熱は、通常沸騰する条件で行われることは無く、この場合、調理食品が電子レンジ調理により沸騰して沸き上がることもないことから、上述したふきこぼれの問題も生じない。前記加熱条件の上限としては、沸騰状態を持続して投入した具材が適度に加熱調理される条件とすればよく、具体的には、投入した具材の種類にもよるが、クリームソースと加えた具材の合計300gあたり、好ましくは出力600W×20分相当以下の加熱条件とすればよい。
【0043】
次に、本発明のレトルトクリームソースが容器に充填されてなり、容器内に固形具材を投入し、電子レンジで加熱調理することによりクリーム煮を得られるようにする電子レンジ調理用容器詰食品について説明する。
【0044】
この電子レンジ調理用容器詰食品に使用する容器としては、レトルト処理及びレンジ調理が可能な種々の容器を用いることができる。このような容器としては、例えば、耐熱性樹脂性の成形容器の他、底面にマチをもたせたスタンディングパウチ、底面及び側面にマチをもたせたガゼット袋、四方シール袋などが挙げられる。また、これら容器としては、容器を開封して具材を投入した後電子レンジ調理する前に当該容器を再封するための再封機能や、電子レンジ加熱調理時に蒸気を容器外に排出する蒸気抜き機構を備えていることが好ましい。
【0045】
本発明においては、容器に充填するソースの容積に関し、電子レンジで加熱調理する際のふきこぼれを防止するために、容器に充填するソースの充填量を少なくすることが好ましい。一方、あまり充填量が少なすぎても投入した具材とソースとが絡み難く、うまく煮込めなくなる傾向がある。従って、例えば、容器としてジッパー部を備えたパウチを用いた場合、パウチの最大密封充填容積の10〜40%となるようにソースをパウチに充填することが好ましい。よりふきこぼれ防止効果が得られ易い点からは、ソースの充填量は、容器の最大密封充填容積の好ましくは10〜35%、より好ましくは10〜30%である。なお、本発明におけるパウチの最大密封充填容積とは、パウチのジッパー部を閉じた時に、パウチに密封充填できる最大の容積であり、当該最大密封充填容積の測定は、例えば、パウチに満杯量の清水を充填密封し、そのパウチ内の清水の容積をメスシリンダー等で測定することで行うことができる。
【0046】
以下、電子レンジ調理用容器詰食品の一態様を、図面を参照しつつ詳細に説明する。各図中、同一符号は同一又は同等の要素を表す。
【0047】
図1は、本発明の一実施態様の電子レンジ調理用パウチ詰食品1の斜視図である。
【0048】
この電子レンジ調理用パウチ詰食品1は、電子レンジ対応のフィルム材料からなる袋状のパウチ10に、予め下調理したクリームソース30を充填密封し、レトルト処理したものであって、これを食するときに、所定の固形具材をパウチ10内に投入し、電子レンジで加熱調理するようにしたものである。ここで、レトルト処理としては、レトルトクリームソース30の中心部の品温を120℃で4分間相当加熱する処理又はこれと同等以上の加熱調理レベルを有する処理を挙げることができる。
【0049】
図1に示す様に、パウチ10は、底面にマチができるようにプラスチックフィルムを折り曲げて重ね合わせ、両側縁部及び上縁部をヒートシールして側縁シール部11及び上縁シール部12を形成したスタンディングパウチからなる平袋状のレトルトパウチであり、パウチ10の片面の上縁シール部12の近傍には、ジッパー部13が設けられている。
【0050】
ジッパー部13の外方もヒートシールされてジッパーシール部14が形成されており、このジッパーシール部14近傍の側縁シール部11において、ジッパー部13より上の部分に、引き裂きによりジッパーシール部14を切除し、ジッパー部13を開口可能とするためのノッチ15が形成されている。このようにジッパーシール部14をジッパー部13の外方に設けることにより、レトルト処理の間にジッパー部13が開口することなく、密封状態を維持することが可能となる。
【0051】
また、側縁シール部11において、ジッパー部13と上縁シール部12との間には、料理の取出用開口部を引き裂きにより形成するためのノッチ16が形成されている。後述するように、このノッチ16から、電子レンジ加熱調理後のパウチ10を開封し、内容物を一気に皿に移すことにより内容物が撹拌されるので、料理の加熱ムラを容易に解消することが可能となる。
【0052】
また、パウチ10の表面には、電子レンジ加熱調理時にパウチ10が過度に膨張して破裂することを防止する蒸気抜き機構17が設けられている。蒸気抜き機構17としては、従来より電子レンジ対応包装袋で使用されているものを設けることができ、例えば、側縁シール部11の近傍に、弱化シール部18を設け、その弱化シール部18内に切欠19を形成したものとする。また、パウチ10の蒸気抜き機構17としては、密封されていたジッパー部13が電子レンジ加熱時にパウチ10が膨張する際の圧力で部分的に開口するようにジッパー部の嵌合を調整してもよい。
【0053】
レトルト処理においてクリームソースの中心部と外周部をムラなく均一に加熱し、加熱条件を緩くしても、中心部を120℃で4分間相当に加熱できるようにするため、図2に示すように、クリームソース30が充填されている状態で平板50の上に平置きして平らにならした場合のパウチ厚(以下、単にパウチ厚という)Lは、過度に厚くなると、クリームソース30のレトルト処理において、中心部が120℃4分間相当に加熱されるまでに、外周部が過度に加熱され、風味が低下する傾向があるので、好ましくは2cm以下、より好ましくは1.5cm以下、特に好ましくは1cm以下とする。
【0054】
また、本発明の電子レンジ調理用パウチ詰食品1には、電子レンジ加熱調理で最終的に得ようとする料理の種類、電子レンジ加熱の際にパウチ内に投入することが予定されている固形具材の種類、その固形具材の好ましい切り方、大きさ、投入量、パウチへの投入方法、電子レンジ加熱する際のパウチの姿勢、電子レンジ加熱に必要なワット数と時間、電子レンジ加熱後のパウチの開封方法などの説明表示40を備えることが好ましい。特に、説明表示40の具体的な内容として、固形具材の投入量、大きさ、電子レンジ加熱のワット数と時間については、これらが電子レンジ加熱後の調理の出来の善し悪しに大きく影響するため、できるだけ表示することが望まれる。
【0055】
このような説明表示40は、図1に示したように、パウチ10の表面に印刷することにより形成してもよく、電子レンジ調理用パウチ詰食品1の梱包箱等の外装材に印刷することにより形成してもよく、パウチ10とは別個の紙片に印刷し、その紙片を電子レンジ調理用パウチ詰食品1に添付するようにしてもよい。
【0056】
本発明の電子レンジ調理用パウチ詰食品1の製造方法としては、例えば、上縁シール部12が未シール状態のパウチ10を用意し、それにクリームソース30を充填して、上縁シール部12をヒートシールし、レトルト処理を施すことが挙げられる。
【0057】
次に、本発明の電子レンジ調理用パウチ詰食品を使用してクリーム煮料理を調理又は製造する具体的な方法を説明する。この方法は、電子レンジ調理用容器詰食品のジッパー部を開封し、そこから固形具材をパウチ内に投入し、ジッパー部を閉じ、電子レンジで加熱調理することを特徴とする。また、この調理又は製造方法は、観点を変えれば電子レンジ調理用パウチ詰食品の使用方法という意義を有する。
【0058】
まず、レトルト処理したクリームソース30で煮込む対象の固形具材を電子レンジ調理用パウチ詰食品1に付された説明表示40を参照して選択し、説明表示40の内容に沿って必要に応じてパウチ10への投入サイズにカットする。
【0059】
次に、本発明の電子レンジ調理用パウチ詰食品を使用してクリーム煮料理を調理又は製造する方法を説明する。この方法は、電子レンジ調理用容器詰食品のジッパー部を開封し、そこから固形具材をパウチ内に投入し、ジッパー部を閉じ、電子レンジで加熱調理することを特徴とする。また、この調理又は製造方法は、観点を変えれば電子レンジ調理用パウチ詰食品の使用方法という意義を有する。
【0060】
次に、ジッパー部13を閉じた後、蒸気抜き機構17から内容物がこぼれ難いように蒸気抜き機構17が上部にくるようにパウチ10を電子レンジ内に寝かせ、あるいは立て、その状態で所定のワット数と時間で電子レンジ加熱調理を行う。加熱調理の具体的条件としては、パウチ10に充填されているクリームソース30及び投入した固形具材20の合計100gあたり、好ましくは600W×3分相当以上の電子レンジ加熱条件が挙げられる。
【0061】
なお、図4に、電子レンジ加熱調理の際に、固形具材20が投入され、ジッパー部13を閉じ、電子レンジで加熱調理のための姿勢とした状態であって、電子レンジ加熱前の状態を示す。図4に示されるように、投入された固形具材20で規定されるパウチ内空間高さα(21(固形具材の最高位置)と32(固形具材の最低位置)との間: 換言すれば重力方向における固形具材の最大間隔)を、クリームソースの深さβ(31(ソース表面)と32(ソースまたは固形具材の最低位置)との間: 換言すれば重力方向深さ)の好ましくは1.2倍〜10倍、より好ましくは2倍〜10倍となるようにパウチ10に固形具材20を投入する。これにより、クリームソース30に浸漬しない固形具材を確保することができる。また、固形具材の一部をクリームソース30に浸漬しない状態で電子レンジ加熱調理を開始すると、電子レンジによりクリームソース30が沸騰状態で過度の加熱がなされても固形具材そのものの好ましいテクスチャーや旨みが引き出された美味しい加熱料理を作ることができる。これに対して、ソース表面31が、前記高さよりも高く、パウチ10内に投入した固形具材20が完全に浸漬した状態で電子レンジ加熱調理を開始した場合は、これらの固形具材20にクリームソースの調味成分が染み込みすぎて素材そのものの味が損なわれて料理全体が極めて均質な味となる。
【0062】
また、電子レンジ加熱調理により直接的にクリームソース30と固形具材20が加熱されるのに加え、ジッパー部が閉じられていることから、発生した蒸気によってもクリームソース30と固形具材20とがいわゆる蒸らし効果により加熱される。発生した蒸気は、蒸気抜き機構17から排出されるため、パウチ10は膨張しても、その破裂は防止される。これにより、パウチ10内に充填されていたクリームソース30と、それに浸漬していた及び浸漬していない固形具材20とがそれぞれ適度に加熱調理され、見た目も味も美味しい料理を作ることができる。そして、加熱調理後は、直ちに上縁シール部12近傍のノッチ16からパウチ10の上端部を引き裂いて開口し、パウチ10の料理を一気に大皿にあけて、クリームソース30に、それに浸漬していない固形具材20を絡め混合すればよい。また、パウチ10内では料理に加熱ムラがあっても、パウチ10内の料理を大皿にあけることにより、料理が撹拌され、温度の均一化が図られる。また、加熱調理後のパウチ10は大変熱くなっていて、ジッパー部13を手で開封する作業を行うことが困難であるが、このようにノッチ16からパウチ10の上端部を引き裂いて料理を取り出すと開封作業を安全に行うことができる。
【実施例】
【0063】
実施例1(ブロッコリーのクリーム煮)
(1)加える具材
パウチ内に後に加える具材を一口大(約3cm角)にカットしたブロッコリー約100gとした。
【0064】
(2)クリームソース
表1に示す配合原料を用意した。まず、カゼインナトリウム、卵黄リゾレシチン、キサンタンガム、脱脂粉乳、澱粉、食塩及び香辛料を粉体混合した。次に、ミキサーにこの粉体混合物及び清水を投入した撹拌混合した後、菜種油を徐々に加えながら更に撹拌混合した。続いて、加熱した二重釜に、得られた混合液を加えて撹拌しながら品温90℃になるまで加熱することによりクリームソースを得た。
【0065】
(3)電子レンジ調理用容器詰食品(クリームソース入り)
次に、得られたクリームソース200gを弱化シール部と切欠とからなる蒸気抜き機構を有する図1のジッパー付きスタンドパウチ(パウチサイズ:縦220mm×横140mm×折込(マチ)40mm、材質:(パウチ)ポリエステル/ポリアミド/無延伸ポリプロピレン、(ジッパー部)ポリプロピレン、最大密封充填可能容量:820mL)に充填密封後、レトルト処理(115℃、15分間)し、パウチ内にクリームソース(200mL)が充填されている電子レンジ調理用容器詰食品を得た。クリームソースの充填量は、パウチの最大密封充填可能容積の24%であった。また、クリームソースの食塩濃度は1.5%、クリームソースの粘度(品温60℃、(株)東京計器製のBH形粘度計、ローターNo.2、回転数20rpm)は2Pa・sであり、脂質含有量は5質量%、蛋白質含有量は1.7質量%であった(脂質含有量100質量部に対する蛋白質の含有量は34質量部)。クリームソースの全蛋白質の100%が乳蛋白質であり、クリームソースの全蛋白質の9割がカゼインであった。
【0066】
【表1】

【0067】
(4)電子レンジによる加熱調理
(3)の電子レンジ調理用容器詰食品のジッパーを開封し、(1)のブロッコリー100gを入れ、再度ジッパーを閉じた。次に、電子レンジ内にブロッコリー投入後の電子レンジ調理用容器詰めクリームソースを蒸気抜き機構が上面になるように平置きした。このときのクリームソースの深さは、固形具材で規定されるパウチ内空間高さの1/3(即ち、固形具材で規定されるパウチ内空間高さが、クリームソースの深さの3倍)であった。これを電子レンジで加熱調理(600W×4分間)をし、料理の取出用のノッチから開封してこれを大皿にあけた。なお、電子レンジ加熱中のクリームソースは、沸騰しても液面上に泡が沸き上がらなかった。
【0068】
得られたブロッコリーのクリーム煮は、クリームソース表面に油の分離は見られなかった。また、ブロッコリー特有の好ましい食感と色調があり、また、コクのあるクリーム風味があって味付けにムラがなく、大変美味しいものであった。
【0069】
実施例2〜4及び比較例1
クリームソースにおける蛋白質と脂質の割合が、具材を加えて電子レンジ加熱した際のソースの状態に与える影響を調べるため、実施例1において、乳蛋白含有原料の配合量を表2に示す配合に変え、その減少分又は増加分は清水の配合量で調整した他は実施例1と同様にして蛋白質と脂質含量が異なる4種類のレトルトクリームソース(実施例2〜4、比較例1)を得た。得られた4種類のレトルトクリームソースを用い、実施例1と同様にそれぞれにブロッコリーを加えて電子レンジで加熱調理した場合の電子レンジ加熱中のクリームソースの状態を下記評価基準で評価した。結果を表2に示す。併せて実施例1の結果も併記した。A又はBランクと評価されたものが実用上問題のないレベルである。
【0070】
<電子レンジ加熱中のクリームソースの状態の評価基準>
評価ランク 内容
A: 沸騰しているが、液面上に泡が沸き上がっていない。
B: 沸騰して液面上に泡が沸きあがっており、泡が沸きあがっている高さは、液面から20mm以下である。
C: 沸騰して液面上に泡が沸きあがっており、泡が沸きあがっている高さは、液面から20mmを越える高さである。
D: 沸騰して液面上に泡が沸きあがり、パウチ内のヘッドスペースの大部分に泡が充満し、最終的にパウチの蒸気抜きのための開口部からふきこぼれた(なお、泡が沸きあがっている高さは、液面から20mmを越える高さである)。
【0071】
【表2】

【0072】
表2からわかるように、実施例1を含め、実施例2〜4のクリームソースの場合、蛋白質の含有量がレトルトクリームソース全体の1〜4質量%であり、脂質含有量がレトルトクリームソース全体の2〜30質量%であり、脂質100質量部に対する蛋白質含有量が10〜70質量部であり、澱粉を含有し、粘度が1〜10Pa・sであるので、電子レンジ加熱中のクリームソースの状態の評価はA又はBランクであり、クリームソース表面に油の分離が見られず、好ましいものであった。なお、実施例1〜3と実施例4との結果の対比から、脂質100質量部に対する蛋白質含有量が10〜60質量部であることがより好ましい結果を与えることがわかる。
【0073】
それに対し、比較例1のクリームソースの場合、脂質100質量部に対する蛋白質含有量が84質量部であり、70質量部を大きく超えていたので、電子レンジ加熱中のクリームソースの状態の評価はDランクであった。
【0074】
比較例2
表3に示す配合原料を二重釜に投入し、撹拌しながら品温90℃になるまで加熱することによりクリームソースを得た。
【0075】
続いて、得られたクリームソースを、実施例1と同様にジッパー付きスタンドパウチに充填密封後、レトルト処理し、パウチ内にクリームソースが充填されている電子レンジ調理用容器詰めクリームソースを得た。クリームソースの充填量は、パウチの最大密封充填可能容積の24%であった。また、クリームソースの粘度(品温60℃、(株)東京計器製のBH形粘度計、ローターNo.2、回転数20rpm)は2Pa・sであり、脂質含有量は30.5質量%、蛋白質含有量は2.7質量%であった(脂質含有量100質量部に対する蛋白質の含有量は8.9質量部)。
【0076】
得られた電子レンジ調理用容器詰めクリームソースのジッパーを開封し、実施例1と同様にブロッコリー100gを入れて電子レンジで加熱調理をし、料理の取出用のノッチから開封してこれを大皿にあけたところ、クリームソース表面に油の分離が見られ、好ましいもので6なかった。
【0077】
【表3】

【0078】
実施例5
表4に示す配合原料を二重釜に投入し、撹拌しながら品温90℃になるまで加熱することによりクリームソースを得た。なお、ナチュラルチーズは、常法により乳原料から分離して得られたレンネットカゼインを原料としたものを用いた。
【0079】
続いて、得られたクリームソースを、実施例1と同様にジッパー付きスタンドパウチに充填密封後、レトルト処理し、パウチ内にクリームソースが充填されている電子レンジ調理用容器詰めクリームソースを得た。クリームソースの充填量は、パウチの最大密封充填可能容積の24%であった。また、クリームソースの食塩濃度は1.5%、クリームソースの粘度(品温60℃、(株)東京計器製のBH形粘度計、ローターNo.2、回転数20rpm)は2Pa・sであり、脂質含有量は2.6質量%、蛋白質含有量は1.5質量%であった(脂質含有量100質量部に対する蛋白質の含有量は58質量部)。クリームソースの全蛋白質の100%が乳蛋白質であり、クリームソースの全蛋白質の9割がカゼインであった。
【0080】
得られた電子レンジ調理用容器詰めクリームソースのジッパーを開封し、実施例1と同様にブロッコリー100gを入れて電子レンジで加熱調理をし、料理の取出用のノッチから開封してこれを大皿にあけた。なお、電子レンジ加熱中のクリームソースは、沸騰しても液面上に泡が沸き上がらなかった。
【0081】
また、得られたブロッコリーのクリーム煮は、クリームソース表面に油の分離は見られなかった。また、ブロッコリー特有の好ましい食感と色調があり、また、コクのあるクリーム風味があって味付けにムラがなく、大変美味しいものであった。
【0082】
【表4】

【0083】
比較例3
実施例5において、澱粉を配合せず、代わりにキサンタンガムを0.7部配合しその減少分は清水の配合量を増やして補正した他は実施例5と同様にしてパウチ内に液状のレトルトクリームソースが充填されている電子レンジ調理用容器詰食品を得た。液状食品の調味液の粘度(品温60℃、(株)東京計器製のBH形粘度計、ローターNo.4、回転数20rpm)は5Pa・sであった。
【0084】
得られた電子レンジ調理用容器詰食品を用い、実施例5と同様にしてクリームソース煮を製造したところ、電子レンジ加熱中にクリームソースが沸騰して液面上に泡が沸きあがり、パウチ内のヘッドスペースの大部分に泡が充満し、最終的にパウチの蒸気抜きのための開口部から液状食品がふきこぼれてしまった。なお、泡が沸きあがっている高さは、液面から20mmを越える高さであった。
【0085】
比較例4
実施例5において、澱粉を配合せず、代わりに小麦粉を5部配合しその増加分は清水の配合量を減らして補正した他は実施例5と同様にしてパウチ内に液状のレトルトクリームソースが充填されている電子レンジ調理用容器詰食品を得た。液状食品の調味液の粘度(品温60℃、(株)東京計器製のBH形粘度計、ローターNo.4、回転数20rpm)は4.5Pa・sであった。
【0086】
得られた電子レンジ調理用容器詰食品を用い、実施例5と同様にしてクリームソース煮を製造したところ、電子レンジ加熱中にクリームソースが沸騰して液面上に泡が沸きあがり、パウチ内のヘッドスペースの大部分に泡が充満し、最終的にパウチの蒸気抜きのための開口部から液状食品がふきこぼれてしまった。なお、泡が沸きあがっている高さは、液面から20mmを越える高さであった。
【0087】
比較例5
実施例5において、澱粉を配合せずその減少分は清水の配合量を増やして補正した他は実施例5と同様にしてパウチ内に液状のレトルトクリームソースが充填されている電子レンジ調理用容器詰食品を得た。液状食品の調味液の粘度(品温60℃、(株)東京計器製のBH形粘度計、ローターNo.1、回転数20rpm)は0.1Pa・sであった。
【0088】
得られた電子レンジ調理用容器詰食品を用い、実施例5と同様にしてクリームソース煮を製造したところ、電子レンジ加熱中にクリームソースが沸騰して液面上に泡が沸きあがり、パウチ内のヘッドスペースの大部分に泡が充満してしまった。なお、泡が沸きあがっている高さは、液面から20mmを越える高さであった。
【0089】
参考例1
乳蛋白質の種類が、具材を加えて電子レンジ加熱した際のソースの状態に与える影響を調べるため、以下の試験を行った。即ち、表5に示すように乳蛋白質又はその濃度が異なる4種類の水溶液を調製し、これら4種類の水溶液を実施例1と同じパウチに200gずつ充填した後レトルト処理した。得られた4種類のパウチ(サンプル1〜4)にブロッコリーを100gずつ加え、600Wで加熱した際の状態を評価した。結果を表5に示す。
【0090】
表5より、蛋白質を含む乳原料のいずれもが沸騰後液面上に泡が沸き上がる性質があることがわかるが、乳蛋白質であるカゼインナトリウムは乳性蛋白質に比べて液面上に泡が沸きあがり難い性質であることがわかる。
【0091】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明のレトルトクリームソースは、調理用バッグに入れて電子レンジ加熱しても、クリームソースのふきこぼれが抑制され、油脂分の分離も抑制されている。従って、電子レンジ加熱調理により種々の具材のクリーム煮料理を作るのに有用である。
【符号の説明】
【0093】
1 電子レンジ調理用パウチ詰食品
10 パウチ
11 側縁シール部
12 上縁シール部
13 ジッパー部
14 ジッパーシール部
15 ノッチ
16 ノッチ
17 蒸気抜き機構
18 弱化シール部
19 切欠
20 固形具材
30 (レトルト)クリームソース
31 ソース表面
40 説明表示
50 平板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
具材を加えて電子レンジで加熱調理することによりクリーム煮料理を得られるようにするレトルトクリームソースであって、蛋白質、脂質、湿熱処理澱粉又は加工澱粉、及び小麦粉を含有するレトルトクリームソースにおいて、
蛋白質の含有量がレトルトクリームソース全体の0.5〜4質量%であり、脂質の含有量がレトルトクリームソース全体の2〜30質量%であり、且つ脂質100質量部に対して蛋白質が15〜50質量部含有されており、
全蛋白質に占める乳蛋白質の割合が70質量%以上であり、
乳蛋白質が、乳清蛋白質除去処理された、カゼインを含有する乳蛋白含有原料に由来するものを含み、
湿熱処理澱粉又は加工澱粉の含有量が0.1〜10質量%であり、
小麦粉の含有量が1質量%以下であり、そして
粘度が1〜5Pa・sであるレトルトクリームソース。
【請求項2】
モノアシル型親水性乳化剤を、0.001〜1質量%含有する請求項1記載のレトルトクリームソース。
【請求項3】
請求項1又は2記載のレトルトクリームソースが電子レンジ用容器に充填されてなり、該電子レンジ用容器内に固形具材を投入し、電子レンジで加熱調理することによりクリーム煮を得られるようにする電子レンジ調理用容器詰食品であって、電子レンジ用容器が固形具材の投入口となるジッパー部と電子レンジによる加熱調理時に蒸気を排出する蒸気抜き機構とを有したパウチである電子レンジ調理用容器詰食品。
【請求項4】
パウチへの投入に適した固形具材の種類と投入量の説明表示を備えている請求項3記載の電子レンジ調理用容器詰食品。
【請求項5】
レトルトクリームソースが、パウチの最大密封充填可能容積の10〜40%となる容積でパウチに充填密封されている請求項3又は4記載の電子レンジ調理用容器詰食品。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれかに記載の電子レンジ調理用容器詰食品のジッパー部を開封し、そこから固形具材をパウチ内に投入し、ジッパー部を閉じ、電子レンジで加熱調理することを特徴とするクリーム煮料理の調理又は製造方法。
【請求項7】
具材を、請求項1又は2記載のレトルトクリームソースに加えて電子レンジで加熱調理することを特徴とするクリーム煮料理の調理又は製造方法。
【請求項8】
レトルトクリームソース及び加えた具材の合計300gあたり、600W×3分相当以上の条件で電子レンジで加熱調理する請求項6又は7記載のクリーム煮料理の調理又は製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−46644(P2013−46644A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−267778(P2012−267778)
【出願日】平成24年12月7日(2012.12.7)
【分割の表示】特願2008−180747(P2008−180747)の分割
【原出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【出願人】(591116036)アヲハタ株式会社 (35)
【Fターム(参考)】