説明

レトルト用包装袋

【課題】 本発明は、カレー等の内容物を収納して、レトルト殺菌のように高温の蒸気又は熱水で処理して滅菌する用途に使用した際に、レトルト処理が確実に行われたかどうかを目視により簡単に確認できるレトルト用包装袋を提供することである。
【解決手段】 基材層と熱接着性樹脂層を有する積層体からなり、前記基材層の外面にレトルト処理により消色するアルミニウム粉末顔料を含むインキからなるインジケーターインキ層が形成された構成、ないしは前記基材層の外面にレトルト処理により消色するアルミニウム粉末顔料を含むインキからなるインジケーターインキ層が形成されるとともに、インジケーターインキ層が形成された領域の基材層の内面に表示部が形成された構成からなるレトルト用包装袋である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カレー、シチュー等の内容物を収納して、レトルト滅菌のように高温の蒸気又は熱水で熱処理する用途に使用した際に、レトルト処理が確実に行われたかどうかを目視により簡単に確認することのできるレトルト用包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カレーやシチューなどの内容物を充填してレトルト処理を行う際に、充分に加熱されて内容物が完全に滅菌されたかどうかを目視により正確かつ簡便に確認することのできるレトルト用包装袋としては、樹脂製外層フィルム、基材フィルム、樹脂製内層フィルムの順で接着剤層により貼り合わせられた、レトルト処理すべき製品を封入するレトルト包材シートであって、外層フィルムと基材フィルムとの間の少なくとも一部に、遷移金属化合物と硫黄および/または硫黄化合物とを含むインキ、モノアゾ染料と有機酸および/またはその金属塩とを含むインキのいずれかからなる、殺菌温度での水蒸気変色性のインジケーターインキ層が形成されたレトルト包材シート(例えば、特許文献1参照)が知られている。
【特許文献1】特開2003−334897号
【0003】
しかしながら、上記のレトルト包材シートでは、殺菌温度での水蒸気変色性のインジケーターインキ層が、外層フィルムと基材フィルムとの間の少なくとも一部に形成されている構成であるため、レトルト処理する際に水蒸気又は熱水がインジケーターインキ層に直接接触する構成ではないため、インジケーターインキ層が水蒸気又は熱水の影響を受け難くインジケーターインキ層が変色するのに時間がかかり通常の120℃30分程度の熱処理ではインジケーターインキ層が完全に変色しないものが出るおそれがあるという欠点を有している。また、インジケーターインキ層が、遷移金属化合物と硫黄および/または硫黄化合物とを含むインキ、モノアゾ染料と有機酸および/またはその金属塩とを含むインキのいずれかからなるものであり、インジケーターインキ層が変色するタイプであって完全に消色するタイプではないという問題を有している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、カレーやシチュー等の内容物を収納して、レトルト殺菌のように高温の蒸気又は熱水で熱処理して滅菌する用途に使用した際に、レトルト処理が確実に行われたかどうかを目視により簡単に確認することのできるレトルト用包装袋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
基材層と熱接着性樹脂層を有する積層体からなり、前記基材層の外面にレトルト処理により消色するアルミニウム粉末顔料を含むインキからなるインジケーターインキ層が形成された構成からなるレトルト用包装袋である。
【0006】
上記のレトルト用包装袋において、前記インジケーターインキ層を形成するインキが、アルミニウム粉末顔料を含む銀色インキ又はアルミニウム粉末顔料と透明黄色染料を含む金色インキからなる構成である。
【0007】
上記のレトルト用包装袋において、前記インジケーターインキ層が形成された領域に対応する基材層の内面に印刷により表示部が形成された構成である。
【0008】
上記のレトルト用包装袋において、前記積層体が、基材層と熱接着性樹脂層間に、アルミニウム箔、2軸延伸ナイロンフィルム、アルミニウム箔と2軸延伸ナイロンフィルムからなる中間層が積層された構成である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のレトルト用包装袋とすることにより、120℃30分間程度のレトルト処理を行うことにより、基材層の外面に印刷されているインジケーターインキ層中のアルミニウム粉末顔料が高温の蒸気又は熱水により変質し、アルミニウム粉末顔料の金属光沢が消失して透明となりインジケーターインキ層が消色した状態となるので、インジケーターインキ層の目視により、レトルト処理が確実に行われたかどうかを簡単に確認することができる。
【0010】
請求項2に係る発明では、インジケーターインキ層により特定の文字、記号、模様等を表示しておくことにより、その表示の消失によりレトルト処理が確実に行われたかどうかを確認することができる。
【0011】
請求項3に係る発明では、基材層に印刷によりレトルト処理済、殺菌済等の文字からなる表示層を形成してインジケーターインキ層により隠蔽した状態としておくことにより、レトルト処理が完了した時点でインジケーターインキ層が消失して、表示部のレトルト処理済、殺菌済等の文字が現れるので、レトルト処理が確実に行われたかどうかを目視により簡単に確認することができる。
【0012】
請求項4に係る発明では、レトルト処理によっても劣化することのない内容物の保存性に優れたレトルト用包装袋とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を引用して本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明のレトルト用包装袋の第1実施形態を示す平面図、図2は図1のI−I線断面図、図3は本発明のレトルト用包装袋の第2実施形態を示す平面図、図4は図3のII−II線断面図、図5は第1実施形態のレトルト処理後の状態を示す平面図、図6は第2実施形態のレトルト処理後の状態を示す平面図であって、2は熱接着部、3,3'はインジケーターインキ層、4は表示部、10は積層体、11は基材層、12は熱接着性樹脂層、13は接着剤層をそれぞれ表す。
【0014】
本発明のレトルト用包装袋の第1実施形態は図1、図2に示すとおりである。第1実施形態の平面形状は、図1に示すように、周縁に熱接着部2を有する包装袋であって、包装袋の下部の外面にアルミニウム粉末顔料を含むインジケーターインキ層3が印刷により形成されている構成である。インジケーターインキ層3が設けられた箇所の断面構成は、図2に示すように、基材層11と接着剤層13と熱接着性樹脂層12を備えた積層体10の基材層11の外面にインジケーターインキ層3が印刷により形成されている構成である。
【0015】
インジケーターインキ層3は120℃30分程度のレトルト処理によりインジケーターインキ層3中に含まれるアルミニウム粉末顔料が高温の蒸気又は熱水により変質して消色し透明となるので、インジケーターインキ層3に、例えば、「未殺菌」と表示しておくことにより、レトルト処理により「未殺菌」の表示が消失するので、レトルト処理をしたかどうかの確認を簡単に行うことができる。第1実施形態では、インジケーターインキ層に「未殺菌」と表示したものを示したが、インジケーターインキ層の表示は任意であり、丸型、3角形、4角形等の模様となるように形成してもよい。インジケーターインキ層3に文字、記号、模様等の柄を印刷して表示しておくことにより、レトルト処理により文字、記号、模様等の表示が消失して透明となるので、レトルト処理が行われたかどうかの確認を簡単に行うことができる。
【0016】
本発明のレトルト用包装袋の第2実施形態は図3、図4に示すとおりである。第2実施形態の平面形状は、図3に示すように、周縁に熱接着部2を有する包装袋であって、包装袋の下部の外面にアルミニウム粉末顔料を含むベタ印刷されたインジケーターインキ層3'が形成され、インジケーターインキ層3'が形成されている領域に対応する積層体10の基材層11の内面に表示部4が印刷により形成されている構成である。
【0017】
インジケーターインキ層3'が形成された箇所の断面構成は、図4に示すように、基材層11と接着剤層と熱接着性樹脂層12を備えた積層体10の基材層11の外面にベタ印刷されたインジケーターインキ層3'が形成されるとともに、インジケーターインキ層3'に対応する基材層11の内面に表示部4が印刷されて形成されており、基材層11の内面に印刷された表示部4が基材層11の外面にベタ印刷されたインジケーターインキ層3'により隠蔽されて、外部から表示部4が目視できない構成となっている。レトルト処理が行われると、ベタ印刷されたインジケーターインキ層3'が中に含まれるアルミニウム粉末顔料が高温の蒸気又は熱水により消失して透明となり、表示部に印刷された「殺菌済」の表示が外部から目視により確認することができるので、レトルト処理が行われたかどうかの確認を簡単に行うことができる。第2実施形態では、表示部4に「殺菌済」と表示しているが、表示部4の内容は任意であり、インジケーターインキ層3'が消失した際に現れるように、120℃30分レトルト処理等の表示としてもよい。
【0018】
本発明のレトルト用包装袋では、インジケーターインキ層がレトルト処理により消失して透明となる原理を利用してレトルト処理の有無を目視で簡単に確認できるように構成したものであるので、インジケーターインキ層、表示層の構成及び形成方法は任意であり、目視により簡単にレトルト処理の有無を確認できるものとすればよい。
【0019】
第1、第2実施形態において使用するインジケーターインキ層を形成するインキに使用するアルミニウム粉末顔料は、ノンコートタイプであって、粒径が6〜15μmのものが好ましい。粒子の形状としてはリーフタイプ、ノンリーフタイプのいずれも使用することが可能であるが、インキの光輝性、レトルト処理時の蒸気又は熱水による消色性の点を考慮するとリーフタイプを使用するのが好ましい。インキに使用する樹脂としては、ウレタン系樹脂が好ましく、硝化綿系の樹脂も使用できる。印刷層の耐摩擦性を向上させるとともに水分がより浸透し易くするためにインキ樹脂中にシリカ等のマット剤を添加するのが好ましい。アルミニウム粉末顔料を含むインキの組成としては、樹脂:溶剤:顔料:添加剤の混合比率(重量部)は5〜25:10〜15:70〜80:2〜10とするのが好ましい。
【0020】
第1実施形態において、基材層の外面にインジケーターインキ層を形成する方法は、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム等の2軸延伸フィルムからなる基材層の内面にグラビア印刷等により包装袋の絵柄層を形成する際に、基材層の内面に印刷された絵柄層に対応するように見当を合わせて基材層の外面にインジケーターインキにより印刷することにより形成される。第2実施形態において、基材層の外面にインジケーターインキ層を形成し、内面に表示層を形成する方法は、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム等の2軸延伸フィルムからなる基材層の内面に包装袋の絵柄層を形成する際に絵柄層の所定位置にくるように表示層を印刷にて形成するとともに、基材層の内面に印刷された表示層に見当を合わせて基材層の外面にインジケーターインキをベタ印刷することにより形成される。基材層の外面にインジケーターインキによりインジケーターインキを印刷する際には基材層を表裏反転させて印刷する。
【0021】
積層体を構成する基材層としては、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)、2軸延伸ナイロン(ON)等が使用される。熱接着性樹脂層としてはエラストマー成分をブレンドした未延伸ポリプロピレン(CPP)、高密度ポリエチレン(HDPE)等が使用される。中間層としては、アルミニウム箔(AL)、2軸延伸ナイロン(ON)、アルミニウ箔と2軸延伸ナイロンの積層フィルムが使用される。基材層、中間層、熱接着性樹脂層はウレタン系接着剤を使用したドライラミネーション(DL)により積層される。
【0022】
積層体の構成としては、例えば、2層構成の場合は、ON/DL/CPP、ON/DL/HDPE、PET/DL/CPP、PET/DL/HDPE等であり、3〜4層構成の場合は、PET/DL/AL/DL/CPP、PET/DL/AL/DL/HDPE、PET/DL/ON/DL/AL/DL/CPP、PET/DL/ON/DL/AL/DL/HDPE等である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のレトルト用包装袋の第1実施形態を示す平面図。
【図2】図1のI−I線断面図。
【図3】本発明のレトルト用包装袋の第2実施形態を示す平面図。
【図4】図3のII−II線断面図。
【図5】第1実施形態のレトルト処理後の状態を示す平面図。
【図6】第2実施形態のレトルト処理後の状態を示す平面図。
【符号の説明】
【0024】
2 熱接着部
3,3' インジケーターインキ層
4 表示部
10 積層体
11 基材層
12 熱接着性樹脂層
13 接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と熱接着性樹脂層を有する積層体からなり、前記基材層の外面にレトルト処理により消色するアルミニウム粉末顔料を含むインキからなるインジケーターインキ層が形成された構成からなることを特徴とするレトルト用包装袋。
【請求項2】
前記インジケーターインキ層を形成するインキが、アルミニウム粉末顔料を含む銀色インキ又はアルミニウム粉末顔料と透明黄色染料を含む金色インキであることを特徴とする請求項1記載のレトルト用包装袋。
【請求項3】
前記インジケーターインキ層が形成された領域に対応する基材層の内面に印刷により表示部が形成された構成からなることを特徴とする請求項1または2記載のレトルト用包装袋。
【請求項4】
前記積層体が、基材層と熱接着性樹脂層間に、アルミニウム箔、2軸延伸ナイロンフィルム、アルミニウム箔と2軸延伸ナイロンフィルムからなる中間層が積層された構成からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のレトルト用包装袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−219135(P2006−219135A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−31245(P2005−31245)
【出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】