説明

レトルト米飯の製造方法

【課題】 この発明は、米穀類の粒が型くずれせず、均質な状態のレトルト米飯を簡易な工程で得ることを課題とするものである。
【解決手段】 この発明は、原料米穀を水洗、水に浸潰した後、95度C以上で蒸し、次いで水に浸潰して原料米穀の1.7〜2.0倍の重量になるように調整し、次いで水、調味料と共に容器に充填、密封し、加圧・加熱処理を施すことによりレトルト米飯を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レトルト米飯の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レトルト米飯においては、米穀類と水及び調味料、具などを容器にレトルト容器に充填・密封した後、高温・高圧で殺菌調理していた。このとき、水分や調味料を均一にするために、レトルト釜内で回転させるのが一般的であるが、回転により米穀類の粒が崩れるという問題点があった。
また、炊飯後に無菌充填装置を用いて容器に充填する手法もあるが、炊飯調理、無菌充填のために高額な設備投資が必要となる。
更に、簡便な方法として、炊飯した米穀をレトルト容器に充填し密封した後に殺菌する手法もあるが、製造工程中に米穀類が糊状となり、器具や製造設備に付着し、衛生上、作業上のトラブルの原因ともなる。
【特許文献1】特開平7−236436号
【0003】
上記発明は、原料米を熱水槽で浸潰、加熱して米の表面をα化し、次いで前記前処理された処理米を充填した容器内へ冷却水を噴霧して前処理米を冷却すると共にほぐし、次いで前記前処理米の付着水分を水切りした後、レトルト容器において加圧加熱殺菌、調理を行うものである。
【0004】
上記発明においては、ピラフなどに好適なパサパサした食感を得ることができるとされているが、米穀の調理において、炊きあげ前に原料米を熱水にさらすことは好ましくない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、米穀類の粒が型くずれせず、均質な状態のレトルト米飯を簡易な工程で得ることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、原料米穀を水洗、水に浸潰した後、95度C以上で蒸し、次いで水に浸潰して原料米穀の1.7〜2.0倍の重量になるように調整し、次いで水、調味料と共に容器に充填、密封し、加圧・加熱処理を施すことによりレトルト米飯を製造するものである。
【0007】
前記原料米穀は、白米、玄米、発芽玄米、若しくはこれらと他の穀類とを混合したものである。
前記水洗後の水への浸潰は、原料米に吸水させるものであり、吸水により原料米穀の重量は浸潰前の1.3ないし1.4倍程度(水分量35〜40%程度)となる。浸潰時間は30分ないし120分程度とする。
浸潰の後、原料米穀の表面に付着した水の水切りを行い、常圧下、95度C以上の雰囲気中で蒸す。蒸し時間は10〜15分程度が適当である。
蒸し上がった原料米穀(蒸し米)を水にさらし、粒表面のぬめりを取ると共に、原料米穀(蒸し米)の重量が水洗前の原料米穀の1.7ないし2.0倍程度となるように調整する。このとき、原料米穀(蒸し米)の水分量は50ないし58%重量である。
この処理により、原料米は加水されつつも粒はつぶれにくく、粘らず付着しにくい状態となる。
前記重量が2.0倍(水分量58%程度)を超えると、べたつき、型くずれが生じ、重量が1.7倍(水分量50%程度)未満であると充填時の加水量を多くしなければならず、充填後の調理時に型くずれが生ずるおそれがある。
【0008】
表1は、原料米の生米の水分量と上記全工程における加水量、加水後の水分量の関係を示すものである。
【表1】

【0009】
上記のように処理された原料米を、水、調味料、必要に応じて具と共にレトルト容器に充填する。充填に際しては、調理後における穀類の水分量が55%ないし68%、好ましくは60%程度となるように調整する。
炊きあがり時の水分量と食感との関係は、表2のとおりである。
【表2】

【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下この発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0011】
うるち白米3Kgを水洗して籠に入れ、1時間水に浸潰した後水切りする。このときの白米の重量は3.9Kg(原料うるち米の1.3倍)であった。これを95度C以上で13分間常圧で蒸した後、水に10分間浸潰する。水中で攪拌して米をほぐし、ぬめりをとり、水切り後、5.4Kg(原料うるち米の1.8倍)の吸水白米を得た。
この吸水白米140gと水30gとを耐熱トレー容器(レトルト容器)に充填し、密封包装し、レトルト釜で115度C、30分間加圧・加熱して調理・殺菌して常温流通可能なレトルト米飯を得た。
こjのレトルト米飯の水分は、容器内上部の米が60.7%、下部の米が58.1%であって、調理ムラはほとんど生じなかった。
【0012】
上記における、蒸し工程後の水の浸潰時間を変えることにより、異なる吸水倍率の原料米を得たところ、その状態は表3のとおりであった。
【表3】

【実施例2】
【0013】
うるち白米10部、押麦1部、はとむぎ0.5部を混合した原料米穀3Kgを水洗して籠に入れ、1時間水に浸潰した後水切りする。このときの原料米穀の重量は原料米穀の1.3倍(3.9Kg)であった。これを95度C以上で13分間常圧で蒸した後、水に10分間浸潰する。水中で攪拌して米穀をほぐし、ぬめりをとり、水切りする。このとき吸水米穀の重量は、原料米穀の1.77倍(5.3Kg)であった。
他方、小豆0.15Kgを20時間水漬しておき、水切り後水洗した黍0.13Kgと共に、前記吸水米穀と混ぜ合わせ、五穀ごはんの吸水混合米穀5.75Kgを得た。
この吸水混合米穀140gと水32gとを耐熱トレー容器(レトルト容器)に充填し、密封包装し、レトルト釜で115度C、30分間加圧・加熱して調理・殺菌して常温流通可能なレトルト五穀ご飯を得た。
このレトルト五穀ご飯の水分は、容器内上部の米が60.7%、下部の米が58.1%であって、調理ムラはほとんど生じなかった。
【0014】
上記における充填米量及び充填時の加水量を変化させてレトルト殺菌調理したところ、製品の仕上がり状態は表4のとおりであった。
【表4】

【0015】
また、上記における充填米の量を一定とし、加水量を変化させてレトルト殺菌調理したところ、製品の仕上がり状態は表5のとおりであった。
【表5】

【実施例3】
【0016】
玄米4Kgを水洗した後、25〜28度Cの水に20時間浸潰して発芽させ、発芽玄米を得た。このときの重量は原料玄米の1.34倍(5.36Kg)であった。これを95度C以上で16分間常圧で蒸した後、水に10分間浸潰する。水中で攪拌して玄米をほぐし、ぬめりをとり、水切り後、発芽前原料玄米の1.72倍(6.88Kg)の吸水発芽玄米を得た。
この吸水発芽玄米140gと水32gとを耐熱トレー容器(レトルト容器)に充填し、密封包装し、レトルト釜で115度C、30分間加圧・加熱して調理・殺菌して常温流通可能なレトルト発芽玄米飯を得た。
このレトルト発芽玄米飯の水分は、容器内上部の米が56.4%、下部の米が58.0%であって、調理ムラはほとんど生じなかった。
【0017】
上記における、蒸し工程後の水の浸潰時間を変えることにより、異なる吸水倍率の原料発芽玄米を得たところ、その状態は表6のとおりであった。
【表6】

【0018】
上記における充填米量及び充填時の加水量を変化させてレトルト殺菌調理したところ、製品の仕上がり状態は表7、表8のとおりであった。
【表7】

【表8】

【産業上の利用可能性】
【0019】
この発明は、簡便な方法で、型くずれなく均質な状態の白米、玄米、おこわなどのレトルト米飯を得ることができるものであり、産業上の利用可能性を有するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料米穀を水洗、水に浸潰した後、95度C以上で蒸し、
次いで水に浸潰して原料米穀の1.7〜2.0倍の重量に調整し、
次いで水、調味料と共に容器に充填、密封し、加圧・加熱処理を施すことを特徴とする
レトルト米飯の製造方法