説明

レトルト装置

【課題】被処理物の加熱殺菌処理に要する時間の短縮化を図る上で有利なレトルト装置を提供する。
【解決手段】蒸気供給回路22によって熱交換器16の1次側1602に蒸気が供給され、熱交換器1602により蒸気と熱媒体28との間で熱交換がなされ、熱媒体28が加熱される。加熱された熱媒体28が熱媒体循環回路18により循環されることにより処理槽14の被処理物に噴射ノズル1406から熱媒体28が噴射され被処理物が加熱される。媒体加温手段26は、ドレン回収回路24により回収されたドレンと熱媒体タンク12内の熱媒体28との間で熱交換を行う。これにより、次回の加熱殺菌処理に用いられる熱媒体28が加温される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レトルト食品や医薬品などの被処理物を加圧下で加熱殺菌する際に使用されて好適なレトルト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レトルト食品などの被処理物は常温での長期保存を可能にするために処理槽内で加熱殺菌処理が施される。この場合、熱水を被処理物にスプレー状に噴射して被処理物を加熱することで殺菌する熱水加熱式のレトルト装置が利用される(特許文献1参照)。
【0003】
このようなレトルト装置は、まず、熱媒体タンクから処理槽に熱媒体を供給する。そして、処理槽に供給された熱媒体を熱交換器を介して蒸気との間で熱交換させて加熱し、加熱された熱媒体を処理槽の内部で被処理物に向けて噴射させつつ熱媒体を処理槽と熱交換器との間で循環させ、被処理物を加圧下で加熱殺菌処理する。
加熱殺菌処理が終了したならば、処理槽に供給された熱媒体を熱交換器を介して冷却水との間で熱交換させて冷却し、冷却された熱媒体を処理槽の内部で被処理物に向けて噴射させつつ熱媒体を処理槽と熱交換器との間で循環させ、被処理物を加圧下で冷却する。
その後、処理槽内の熱媒体を排出し、処理槽内の圧力を大気圧に減圧し、被処理物に対する一連の加熱殺菌処理が完了し、被処理物を取り出す。
処理槽では、上述のような加熱殺菌処理が多数の被処理物毎に繰り返して行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−276907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、熱媒体について着目すると、レトルト装置では、一連の加熱殺菌処理を実施する毎に、熱媒体タンクから処理槽に新たな熱媒体を供給して使用したのち、全ての熱媒体を排出している。
したがって、加熱殺菌処理を実施する毎に、熱媒体タンクから処理槽に供給された新たな熱媒体、言い換えると、温度が低い状態の熱媒体を加熱しなくてはならず、熱交換器を介して熱媒体を加熱殺菌処理に必要な高温まで加熱する時間を要し、被処理物の加熱殺菌処理に要する時間の短縮化が望まれていた。
本発明は上記のような点に鑑みなされたもので、被処理物の加熱殺菌処理に要する時間の短縮化を図る上で有利なレトルト装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために請求項1記載の発明は、熱媒体を収容する熱媒体タンクと、前記熱媒体が供給される処理槽と、前記処理槽に供給された前記熱媒体を熱交換器を介して蒸気との間で熱交換させ、この熱交換された熱媒体を前記処理槽の内部で被処理物に向けて噴射させつつ前記熱交換器と前記処理槽との間で前記熱媒体を循環させる熱媒体循環回路と、前記熱交換器で熱交換された使用済み蒸気をドレンとして回収するドレン回収回路とを備えるレトルト装置であって、前記ドレン回収回路により回収されたドレンと前記熱媒体タンク内の熱媒体との間で熱交換することにより前記熱媒体を加温する熱媒体加温手段を設けたことを特徴とする。
【0007】
請求項1記載の発明によれば、熱媒体加温手段によって予め加温された熱媒体を使用するので、熱交換器を用いて熱媒体を予め定められた加熱殺菌に必要な高温まで加熱する時間を短縮することができる。したがって、被処理物の加熱殺菌処理に要する時間の短縮化を図る上で有利となる。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のレトルト装置において、前記熱媒体加温手段は、前記ドレン回収回路により回収されたドレンを前記熱媒体タンクに導くドレン供給回路をさらに備え、前記ドレンと前記熱媒体との間の熱交換は、前記ドレン供給回路によって前記ドレンが前記熱媒体タンクに貯留された前記熱媒体に直接供給されることで行われることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、ドレンがドレン供給回路から熱媒体タンクに貯留された熱媒体に直接供給されるので、ドレンの持つ熱を有効に利用して熱媒体の加温時間を短縮できるのに加えて、熱媒体タンクに補給する熱媒体の量を少なくすることができる。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1記載のレトルト装置において、前記熱媒体加温手段は、前記熱媒体タンク内に設けられたドレン用熱交換器と、前記ドレン回収回路により回収されたドレンを前記ドレン用熱交換器に供給するドレン供給回路とをさらに備え、前記ドレンと前記熱媒体との間の熱交換は、前記ドレン用熱交換器を介して間接的になされることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、ドレンと熱媒体との間の熱交換がドレン用熱交換器を介して間接的になされるため、回収されるドレンに含まれている可能性のある錆や汚れを熱媒体に混入させることのないドレンの熱の再利用をすることができる。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項3記載のレトルト装置において、前記熱媒体加温手段は、前記ドレン用熱交換器を通ったドレンを、前記蒸気を生成する蒸気供給源に還流するドレン還流回路をさらに備えることを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、ドレン用熱交換器を通ったドレンがドレン還流回路から蒸気供給源に還流されるため、還流されたドレンおよびドレンの熱が蒸気供給源により再利用される。したがって、蒸気供給源への給水量の節約を図れ、ドレンの熱を有効利用する上で有利となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、被処理物の加熱殺菌処理に要する時間の短縮化を図る上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施の形態におけるレトルト装置の全体の構成を示す構成図である。
【図2】レトルト装置における全体の処理手順を示すフローチャートである。
【図3】第2の実施の形態におけるレトルト装置の全体の構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施の形態)
以下、本発明にかかるレトルト装置および方法の実施の形態について図1を参照して説明する。
本実施の形態では、被処理物がレトルト食品(レトルトパウチ食品)である場合について説明する。レトルト食品は、プラスチックフィルム若しくは金属箔又はこれらを多層に合わせたものを袋状その他の形に成形した容器(レトルトパウチ)に調製した食品を詰め、熱溶融により密封し、加圧加熱殺菌したものである。
【0017】
図1に示すように、本実施の形態のレトルト装置10は、熱媒体タンク12と、処理槽14と、熱媒体循環回路18と、ドレン回収回路24と、熱媒体加温手段26とを含んで構成されている。より詳細に説明すると、本実施の形態のレトルト装置10は、熱媒体タンク12と、熱媒体供給回路13と、処理槽14と、熱交換器16と、熱媒体循環回路18と、ボイラ20と、蒸気供給回路22と、ドレン回収回路24と、熱媒体加温手段26とを含んで構成されている。
【0018】
熱媒体タンク12は、熱媒体28としての水を収容するものである。
熱媒体タンク12には、給水源から熱媒体タンク12に貯留される水量を一定のレベルに制御するボールタップ1202が設けられている。
【0019】
熱媒体供給回路13は、熱媒体タンク12に収容された熱媒体28を処理槽14に供給するものである。
熱媒体供給回路13は、給水用配管1204と、給水ポンプ1206と、給水弁1208とを含んで構成されている。
給水用配管1204は、熱媒体タンク12と処理槽14の貯留部1402との間を接続するものである。
給水ポンプ1206は、給水用配管1204に設けられ熱媒体タンク12に収容された熱媒体28を貯留部1402に供給するものである。
給水弁1208は、給水ポンプ1206と貯留部1402との間の給水用配管1204の箇所に設けられている。
【0020】
処理槽14は、熱媒体28が供給される貯留部1402と、収容部1404とを含んで構成されている。
貯留部1402は、熱媒体タンク12から供給された熱媒体28を貯留するものである。
収容部1404は、被処理物が収容される部分である。
また、処理槽14には、水位計1408と、温度センサー1410とが設けられている。
水位計1408は、貯留部1402に貯留された熱媒体28の液面の位置(水位)を検出するものである。
より詳細には、水位計1408は、処理槽14に配管を介して連通する金属製の容器と、水位検出用の3本の電極棒とを含んで構成されている。
3本の電極棒は、容器に挿入されて配設され、下端部の高さ位置が高位、中位、低位の3段階に異なる高水位用電極棒、中水位用電極棒、低水位用電極棒で構成されている。
各電極棒には電源の一方が接続され、容器には電源の他方が接続されており、水位計1408は、各電極棒と容器との導通状態の変化に応じて検出信号を制御手段30に供給する。
すなわち、水位計1408は、容器内の水位が高水位用電極棒、中水位用電極棒、低水位用電極棒にそれぞれ達することにより、容器の水位、すなわち、処理槽14の水位に応じた検出信号を制御手段30に供給する。
温度センサー1410は、収容部1404内の温度を検出するものである。
処理槽14の底部には、使用済みの熱媒体28を処理槽14の外部(下水など)に排出する排水用の配管とこの配管に介設された排水弁32とが設けられている。
【0021】
熱交換器16は、熱媒体28を加熱、冷却するものである。
すなわち、熱交換器16は、1次側1602と2次側1604とを備え、1次側1602に供給される蒸気と2次側1604に流れる熱媒体28との間で熱交換を行わせることで熱媒体28を加熱する。
また、1次側1602に流れる冷却水34と2次側1604に流れる熱媒体28との間で熱交換を行わせることで熱媒体28を冷却する。
【0022】
熱媒体循環回路18は、処理槽14に供給された熱媒体28を熱交換器16を介して蒸気との間で熱交換させ、この熱交換された熱媒体28を処理槽14の内部で被処理物に向けて噴射させつつ熱交換器16と処理槽14との間で熱媒体28を循環させるものである。
すなわち、熱媒体循環回路18は、複数の噴射ノズル1406と、熱媒体循環用配管1802と、熱媒体循環ポンプ1804と、熱交換器16の2次側1604とを含んで構成されている。
複数の噴射ノズル1406は、処理槽14に設けられ、収容部1404に収容された被処理物を加熱殺菌および冷却処理するために、熱媒体28を噴射するものである。
熱媒体循環用配管1802は、熱交換器16の2次側1604が介設され貯留部1402と各噴射ノズル1406とを接続するものである。
熱媒体循環ポンプ1804は、熱媒体循環用配管1802に設けられ、貯留部1402に貯留された熱媒体28を各噴射ノズル1406に向けて供給し、噴射されて処理槽14内の貯留部1402に落下した熱媒体28を再び噴射ノズル1406に供給するように循環させる。
【0023】
ボイラ20は、蒸気を生成する蒸気供給源を構成するものである。
【0024】
蒸気供給回路22は、熱交換器16の1次側1602に蒸気を供給し熱交換器1602により蒸気と熱媒体28との間で熱交換させるものである。
蒸気供給回路22は、ボイラ20と熱交換器16の1次側1602の一端1602Aとを接続する蒸気用配管2202と、蒸気用配管2202に設けられた給蒸弁2204とを含んで構成されている。
【0025】
ドレン回収回路24は、熱交換器16で熱交換された使用済み蒸気をドレンとして回収するものである。
ドレン回収回路24は、ドレン回収用配管2402と、排蒸弁2404と、ドレン回収用蒸気トラップ2406と、逆止弁2408とを含んで構成されている。
ドレン回収用配管2402の一端は熱交換器16の1次側1602の他端1602Bと冷却水循環弁3604Aとの間の箇所に接続され、熱交換器16で凝縮したドレンをドレン回収回路24に導くように構成されている。
ドレン回収用配管2402の他端2402Aは熱媒体加温手段26に接続されている。
排蒸弁2404と、ドレン回収用蒸気トラップ2406と、逆止弁2408とは、この順番で上流から下流に向かってドレン回収用配管2402に設けられている。
【0026】
熱媒体加温手段26は、ドレン回収回路24により回収されたドレンと熱媒体タンク12内の熱媒体28との間で熱交換することにより熱媒体28を加温するものである。
本実施の形態では、熱媒体加温手段26は、ドレン供給用配管2602を含んで構成されている。
ドレン供給用配管2602は、ドレン回収用配管2402の他端2402Aに接続されており、ドレン供給用配管2602がドレン回収回路24により回収されたドレンを熱媒体タンク12に導くドレン供給回路を構成している。
熱媒体加温手段26によるドレンと熱媒体28との間の熱交換は、回収されたドレンがドレン供給用配管2602から熱媒体タンク12に貯留された熱媒体28に直接供給されることにより、言い換えると、ドレンが熱媒体28に吹き込まれることによりなされる。したがって、ドレンと熱媒体28との間の熱交換は、熱媒体タンク12内で直接的に行われる。
【0027】
レトルト装置10は、さらに、冷却水循環回路36と、クーリングタワー38と、圧力調整手段40と、制御手段42とを備えている。
冷却水循環回路36は、第1、第2の冷却水循環用配管3602A,3602Bと、第1、第2の冷却水循環弁3604A,3604Bと、冷却水循環ポンプ3606とを含んで構成されている。
第1の冷却水循環用配管3602Aは、クーリングタワー38から供給される冷却水34を熱交換器16の1次側1602の他端1602Bに供給するものである。
第2の冷却水循環用配管3602Bは、熱交換器16の1次側1602の一端1602Aから排出される冷却水34をクーリングタワー38に戻すものである。
第1の冷却水循環弁3604Aは第1の冷却水循環用配管3602Aに設けられ、第2の冷却水循環弁3604Bは第2の冷却水循環用配管3602Bに設けられている。
冷却水循環ポンプ3606は、第1の冷却水循環用配管3602Aに設けられ、クーリングタワー38で冷却された冷却水34を熱交換器16の1次側1602に供給する。
【0028】
圧力調整手段40は、処理槽14内の圧力を調整するものである。
本実施の形態では、圧力調整手段40は、圧縮空気供給手段4002と、圧縮空気供給弁4004と、排気弁4006と、逆止弁4008と、減圧手段4010と、排気弁4012と、開放弁4014と、逆止弁4016と、空気フィルタ4018とを含んで構成されている。
圧縮空気供給手段4002は、処理槽14内に圧縮空気を供給するものであり、圧縮空気供給弁4004を介して処理槽14に接続されている。
排気弁4006は、処理槽14内の加圧空気を逆止弁4008を介して処理槽14外へ放出するものである。
減圧手段4010は、処理槽14内の空気を吸引して処理槽14内を負圧にするものであり、排気弁4012を介して処理槽14に接続されている。減圧手段4010としては、エアエゼクタが好適であるが、水封式真空ポンプなどのポンプを使用するなど従来公知のさまざまな装置が使用可能である。
開放弁4014は、処理槽14内を負圧にした後に処理槽14内を大気圧に戻すものであり、逆止弁4016を介して処理槽14に接続され、開放弁4014の逆止弁4106と反対側は空気フィルタ4018に接続され吸入空気中の塵埃等が除去されるようになっている。
【0029】
制御手段42は、水位計1408、温度センサ1410からの検出信号を受け付けると共に、給水ポンプ1206、給水弁1208、熱媒体循環ポンプ1804、給蒸弁2204、排蒸弁2404、排水弁32、第1、第2の冷却水循環弁3604A,3604B、冷却水循環ポンプ3606、クーリングタワー38、圧縮空気供給手段4002、圧縮空気供給弁4004、排気弁4006、減圧手段4010、排気弁4012、開放弁4014を被処理物の加熱殺菌処理手順に従って制御するものである。
また、制御手段42は、予め以下に示す各時間を計時するタイマー4202を備えており、タイマー4202の計時動作により以下の各時間が、それぞれ予め定められた設定時間に到達したか否か(設定時間を経過したか否か)を判定するように構成されている。
1)処理槽14の被処理物に対する熱媒体28の噴射時間
2)被処理物に対する加熱殺菌処理時間
3)被処理物に対する冷却時間
【0030】
このような制御手段42は、マイクロコンピュータによって構成することができる。
すなわち、マイクロコンピュータは、CPUと、バスラインを介して接続されたROM、RAM、インタフェースなどを含んで構成されている。ROMはCPUが実行する加熱殺菌処理用の制御プログラムなどを格納し、RAMはワーキングエリアを提供する。
そして、CPUが前記の制御プログラムを実行することにより制御手段42が実現される。
【0031】
次に、本実施の形態におけるレトルト装置10の処理手順について図2を参照して説明する。
図2に示すように、レトルト装置によるレトルト食品などの被処理物の加熱殺菌処理は、以下に示す各工程を順次実行することでなされる。
1)処理槽14への給水工程(S10)。
2)被処理物に対して熱媒体28を噴射する熱媒体循環工程(S12)。
3)被処理物を加圧下で加熱殺菌する加熱殺菌工程(S14)。
4)被処理物を加圧下で冷却する冷却工程(S16)。
5)処理槽14内の熱媒体28を排出する排水工程(S18)。
6)処理槽14内の加圧空気を排出して大気圧にする排気工程(S20)。
7)処理槽14内を一旦負圧にした後、大気圧に戻す終了工程(S22)。
以下、上記各工程について説明する。
【0032】
1)給水工程(S10)
処理槽14内に被処理物を収容し、処理槽14の密閉扉(図示省略)を閉じる。
また、給水工程の実行前の初期状態において、給水弁1208、給蒸弁2204、排蒸弁2404、排水弁32、第1、第2の冷却水循環弁3604A,3604Bは閉状態にあり、排気弁4006は開状態にある。
制御手段42は、給水弁1208を開動作させ、給水ポンプ1206を起動して、処理槽14の貯留部1402に熱媒体タンク12から給水し、水位計1408の検出結果に基づいて貯留部1402の給水レベルが予め定められた所定の水位に到達したと判定したならば、給水ポンプ1206を停止し、給水弁1208を閉動作させ、排気弁4006を閉動作させる。本実施の形態では、制御手段42は、高水位用電極棒によって高位の水位が検出されると、貯留部1402への給水を停止する。
初回の給水工程では、熱媒体タンク12に貯留されている熱媒体28の温度は、給水源から供給される水(水道水や地下水)であるため低い。
一方、熱媒体タンク12から貯留部1402への給水に伴い、給水源から熱媒体タンク12への給水が行われ、熱媒体タンク12内の水量が減少した分だけ、給水源から補水される。
このように貯留部1402への給水後に熱媒体タンク12内に貯留された熱媒体28は、次回の加熱殺菌処理に使用される。
【0033】
2)熱媒体循環工程(S12)
制御手段42は、熱媒体循環ポンプ1804を起動し、熱媒体循環回路18により熱媒体28を循環させて処理槽14の被処理物に噴射ノズル1406から熱媒体28を噴射する。
制御手段42は、タイマー4202の計時動作に基づき熱媒体28の噴射時間が予め定められた設定時間に到達したと判定したならば、熱媒体循環工程を終了する。
また、制御手段42は、運転動作中、すなわち、熱媒体循環工程(S12)、加熱殺菌工程(S14)、冷却工程(S16)の間は、高水位用電極棒および中水位用電極棒の間に水位が位置するように、貯留部1402への給水を制御する。
【0034】
3)加熱殺菌工程(S14)
制御手段42は、熱媒体循環ポンプ1804の運転を継続させ、給蒸弁2204および排蒸弁2404を開動作させる。
これにより、蒸気供給回路22によって熱交換器16の1次側1602に蒸気が供給され、熱交換器1602により蒸気と熱媒体28との間で熱交換がなされ、熱媒体28が加熱される。
そして、加熱された熱媒体28が熱媒体循環回路18により循環されることにより処理槽14の被処理物に噴射ノズル1406から熱媒体28が噴射され、処理槽14内の被処理物が加熱される。
これと同時に、熱交換器16の1次側1602から排出されたドレンがドレン回収回路24で回収される。
熱媒体加温手段26は、ドレン回収回路24により回収されたドレンをドレン供給用配管2602を介して熱媒体タンク12に貯留されている熱媒体28に直接供給し、これによりドレンと熱媒体28との間で熱交換がなされ、次回の加熱殺菌処理に用いられる熱媒体28が加温される。
【0035】
制御手段42は、温度センサー1410の検出信号に基づいて処理槽14内の温度が予め定められた設定温度、すなわち、被処理物を加熱殺菌するために必要な高温に到達したと判定した時点から、熱媒体28による被処理物の設定温度での加熱殺菌処理が開始されたものとしてタイマー4202の計時動作を開始する。
この時の熱媒体28の温度は121℃程度であり、処理槽14内の圧力は大気圧より高く設定されている。
制御手段42は、タイマー4202の計時動作に基づき、設定温度での加熱殺菌処理時間が予め定められた設定時間に到達するまで設定温度での加熱殺菌処理を継続させる。
制御手段42は、タイマー4202の計時動作に基づいて設定温度での加熱殺菌処理時間が設定時間に到達したと判定した場合は、制御手段42は、熱媒体循環ポンプ1804の運転を継続させたまま、給蒸弁2204、排蒸弁2404を閉動作させる。
これにより、被処理物の加熱殺菌処理が終了する。
【0036】
4)冷却工程(S16)
制御手段42は、第1、第2の冷却水循環弁3604A,3604Bを開動作させ、熱媒体循環ポンプ1804の運転を継続させると共に、冷却水循環ポンプ3606を起動して冷却水34を冷却水循環回路36に循環させる。
これにより、冷却水循環回路36によって熱交換器16の1次側1602に冷却水34が循環され、熱交換器1602により冷却水34と熱媒体28との間で熱交換がなされ、熱媒体28が冷却される。
そして、冷却された熱媒体28が熱媒体循環回路18により循環されることにより処理槽14の被処理物に噴射ノズル1406から熱媒体28が噴射されることにより、処理槽14内の被処理物が冷却される。
【0037】
制御手段42は、タイマー4202の計時動作に基づき被処理物の冷却時間が予め定められた設定時間に到達したと判定したならば、熱媒体循環ポンプ1804の運転を停止し、第1、第2の冷却水循環弁3604A,3604Bを閉動作させ、冷却水循環ポンプ3606を停止し、冷却水34の循環を停止する。
これにより、被処理物の冷却処理が終了する。
【0038】
5)排水工程(S18)
制御手段42は、排水弁32を開動作させ、被処理物の殺菌および冷却処理に供された、貯留部1402に貯留されている熱媒体28を排水弁32を介して排出させる。
制御手段42では、水位計1408の検出信号に基づいて貯留部1402の熱媒体28が完全に排出されたと判定すると、排水工程を終了する。本実施の形態では、制御手段42は、低水位用電極棒で水位が検出されなくなったときに排水の完了を判断する。
【0039】
6)排気工程(S20)
制御手段42は、処理槽14の排水弁32を開状態に保持したまま、処理槽14の排気弁40を開動作させ、処理槽14内の加圧空気を処理槽14外へ排出して処理槽14内を大気圧にする。
制御手段42は、処理槽14内が大気圧になったと判定したならば、排水弁32および排気弁40を閉状態にする。制御手段42による、大気圧か否かの判定は、例えば、処理槽14に設けられた不図示の圧力計の検出信号に基づいて行う。
これにより排気工程が終了する。
【0040】
7)終了工程(S22)
制御手段42は、減圧手段4010を起動すると共に、処理槽14内を大気圧に対して僅かに負圧となるようにする。前記の圧力計の検出信号に基づいて処理槽14内が負圧であると判定されたならば、減圧手段4010を停止し、処理槽14の開放弁48を開動作する。
その後、排気工程(S20)と同様に、前記の圧力計の検出信号に基づいて処理槽14内が大気圧になったと判定したならば、終了工程が終了する。
【0041】
上述した給水工程(S10)から終了工程(S22)を順次行うことにより被処理物に対する1回目の加熱殺菌処理が終了したならば、加熱殺菌処理がなされた被処理物を処理槽14内から取り出し、次に加熱殺菌処理を行うべき被処理物を処理槽14内に収容する。
そして、上述した給水工程(S10)から終了工程(S22)を再び行うことにより2回目以降の加熱殺菌処理が実施される。
ここで、2回目以降の加熱殺菌処理では、給水工程(S10)において、熱媒体加温手段26によって予め加温されている給水タンク12の熱媒体28が貯留部1402に給水される。
したがって、2回目以降の加熱殺菌処理では、熱媒体28を前記の加熱殺菌に必要な高温まで加熱する時間を、1回目の加熱殺菌処理の場合に比較して短縮することができる。
【0042】
本実施の形態によれば、ドレン回収回路24により回収されたドレンと熱媒体タンク12に貯留された熱媒体28との間で熱交換することにより熱媒体28を加温する熱媒体加温手段26を設けた。
したがって、予め加温された熱媒体28を使用するので、熱交換器16を用いて熱媒体28を加熱殺菌に必要な高温まで加熱する時間を短縮することができることから、被処理物の加熱殺菌処理に要する時間の短縮化を図る上で有利となる。
そのため、加熱時間が短くなることによりレトルト装置10の1バッチ当たりの工程時間が短くなるため、1日当たりのバッチ数(運転回数)を多くでき、加熱殺菌処理に要するコストの低減を図る上で有利となる。
また、本実施の形態では、熱媒体加温手段26において、ドレンがドレン供給用配管2602から熱媒体タンク12に貯留された熱媒体28に直接供給されるようにしたので、ドレンの持つ熱を有効に利用して熱媒体28の加温時間を短縮できるのに加えて、熱媒体タンク12に補給する熱媒体28(補給水)の量を少なくすることができる。
【0043】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態について図3を参照して説明する。
なお、以降の実施の形態において、第1の実施の形態と同様、同一の部分、部材には同一の符号を付してその説明を省略し、あるいは、簡単に行う。
図3に示すように、第2の実施の形態は、熱媒体加温手段50の構成が第1の実施の形態と相違している。
【0044】
第2の実施の形態では、熱媒体加温手段50は、ドレン用熱交換器5002と、ドレン供給用配管5004と、ドレン還流用配管5006とを含んで構成されている。
ドレン用熱交換器5002は、熱媒体タンク12内に設けられ、熱媒体タンク12に貯留された熱媒体28中に配置されている。
ドレン供給用配管5004の一端は、ドレン回収用配管2402の他端2402Aに接続され、ドレン供給用配管5004の他端は、ドレン用熱交換器5002の入口に接続されている。本実施の形態では、ドレン供給配管5004は、ドレン回収回路24により回収されたドレンをドレン用熱交換器5002に供給するドレン供給回路を構成している。
ドレン還流用配管5006の一端は、熱交換器5004の出口に接続され、ドレン還流用配管5006の他端は、熱媒体タンク12の外部に導出されボイラ18に接続されている。本実施の形態では、ドレン還流用配管5006は、ドレン用熱交換器5002を通ったドレンを、蒸気を生成する蒸気供給源(ボイラ18)、より詳細にはボイラ18の給水タンクに還流するドレン還流回路を構成している。
熱媒体加温手段50によるドレンと熱媒体28との間の熱交換は、ドレン用熱交換器5004に供給されるドレンと熱媒体28との間でドレン用熱交換器5004を介して間接的になされる。したがって、ドレンと熱媒体28との間の熱交換は、熱媒体タンク12内で行われる。
【0045】
第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様に、熱媒体加温手段50によって予め加温された熱媒体28を使用するので、加熱殺菌処理に要する時間の短縮化を図る上で有利となり、加熱殺菌処理に要するコストの低減を図る上でも有利となる。
また、第2の実施の形態では、ドレンと熱媒体28との間の熱交換がドレン用熱交換器5004を介して間接的になされるため、回収されるドレンに含まれている可能性のある錆や汚れを熱媒体28に混入させることのないドレンの熱の再利用をすることができる。
また、第2の実施の形態では、熱媒体加温手段26において、ドレン用熱交換器5004を通ったドレンがドレン還流用配管5006からボイラ18に還流されるため、還流されたドレンおよびドレンの熱がボイラにより再利用される。したがって、ボイラ18における給水量の節約を図れ、ドレンの熱を有効利用する上で有利となる。
【0046】
なお、第2の実施の形態では、ドレン還流用配管5006によりドレンをボイラ18に還流したが、ドレン用熱交換器5004を通ったドレンを再利用することなく排水してもよい。しかしながら第2の実施の形態のようにすると、ボイラ18におけるドレンの有効利用を図る上で有利となる。
【0047】
なお、実施の形態では、被処理物がレトルト食品である場合について説明したが、被処理物は缶詰や医薬品など任意である。
また、実施の形態では、加熱殺菌工程(S14)によって被処理物の殺菌を行う場合について説明したが、被処理物を加熱することによって被処理物の調理、あるいは、調理および殺菌の双方を行うなど任意である。
【符号の説明】
【0048】
10……レトルト装置
12……熱媒体タンク
14……処理槽
16……熱交換器
18……熱媒体循環回路
24……ドレン回収回路
26……熱媒体加温手段
2602……ドレン供給用配管
28……熱媒体
50……熱媒体加温手段
5002……ドレン用熱交換器
5004……ドレン供給用配管
5006……ドレン還流用配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体を収容する熱媒体タンクと、
前記熱媒体が供給される処理槽と、
前記処理槽に供給された前記熱媒体を熱交換器を介して蒸気との間で熱交換させ、この熱交換された熱媒体を前記処理槽の内部で被処理物に向けて噴射させつつ前記熱交換器と前記処理槽との間で前記熱媒体を循環させる熱媒体循環回路と、
前記熱交換器で熱交換された使用済み蒸気をドレンとして回収するドレン回収回路と、
を備えるレトルト装置であって、
前記ドレン回収回路により回収されたドレンと前記熱媒体タンク内の熱媒体との間で熱交換することにより前記熱媒体を加温する熱媒体加温手段を設けた、
ことを特徴とするレトルト装置。
【請求項2】
前記熱媒体加温手段は、前記ドレン回収回路により回収されたドレンを前記熱媒体タンクに導くドレン供給回路をさらに備え、
前記ドレンと前記熱媒体との間の熱交換は、前記ドレン供給回路によって前記ドレンが前記熱媒体タンクに貯留された前記熱媒体に直接供給されることで行われる、
ことを特徴とする請求項1記載のレトルト装置。
【請求項3】
前記熱媒体加温手段は、前記熱媒体タンク内に設けられたドレン用熱交換器と、前記ドレン回収回路により回収されたドレンを前記ドレン用熱交換器に供給するドレン供給回路とをさらに備え、
前記ドレンと前記熱媒体との間の熱交換は、前記ドレン用熱交換器を介して間接的になされる、
ことを特徴とする請求項1記載のレトルト装置。
【請求項4】
前記熱媒体加温手段は、前記ドレン用熱交換器を通ったドレンを、前記蒸気を生成する蒸気供給源に還流するドレン還流回路をさらに備える、
ことを特徴とする請求項3記載のレトルト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−90602(P2012−90602A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242454(P2010−242454)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】