説明

レトルト食品

【課題】特有の歯ごたえのある食感と優れた外観とを有した麺類を含むレトルト食品を提供する。
【解決手段】大豆粉及びこんにゃく粉を配合してなる麺類と、pHが5〜8である調味液とからなることを特徴とするレトルト食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特有の歯ごたえのある食感と優れた外観とを有した麺類を含むレトルト食品に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、麺類は、小麦粉、そば粉、米粉、こんにゃく粉、大豆粉等の1種又は2種以上を主原料として製した生地を細長い形状等に成型し、これを茹でた後、調味液と合わせて食する食品であり、一般に「こし」と呼ばれる食感と乳白色の外観が好まれ、子供からお年よりまで幅広く食されている。特に、大豆粉及びこんにゃく粉を配合した麺類は、一般的な従来の小麦粉等を主原料とした麺類の食感と比べて、特有の歯ごたえのある食感を有しており人気が高い。
【0003】
ところで、近年、その便利さからレトルト処理を施したレトルト食品の需要が増加している。麺類においてもこのような傾向があり、調味液に麺類が浸漬されたレトルト食品が提供できれば、このようなレトルト食品を家庭やレストラン等において電子レンジ等で加熱するだけで簡便に食することができるため大変便利である。
【0004】
しかしながら、工場等で調味液に麺類が浸漬されたレトルト食品を製する場合、まず、レトルト処理により高温にさらされることで製した麺類の食感が低下してしまう。さらに、その後、調味液に麺類が浸漬された状態で流通が行なわれるため、調味液中の水分が麺の内部に移行し、家庭やレストラン等において食するまでに麺類が軟らかくなってしまうという問題があった。
【0005】
従来、茹で処理工程等で生じる麺類の煮崩れ等を防止する方法としては、例えば、特開昭56−018559号公報(特許文献1)には麺類またはその材料にスクレロガムを添加する方法が提案されている。しかしながら、この方法では上述のような麺類の軟化、具体的には、レトルト処理と流通工程中の水分の移行とによる麺類の軟化を充分に改善できるとは言い難いものであった。
【0006】
このような状況下、本発明者は、大豆粉及びこんにゃく粉を用いて上述した麺類の軟化を改善できるならば、得られる麺類は、大豆粉及びこんにゃく粉を用いた麺類に特有の歯ごたえのある食感を有することとなり商品価値としてさらに有用なものになると考えこれを試みた。しかしながら、大豆粉及びこんにゃく粉を単に配合した麺類を用いても麺類の軟化は充分に改善されなかった。さらに、レトルト処理により高温にさらされるためか、製した麺類は乳白色の外観を有しておらず、好ましい外観とは言い難いものであった。
【0007】
【特許文献1】特開昭54−117053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的は、特有の歯ごたえのある食感と優れた外観とを有したレトルト食品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記問題を解決すべく、鋭意研究を行ったところ、大豆粉及びこんにゃく粉を配合してなる麺類と、pHが5〜8である調味液とを用いることで、意外にも、麺類の軟化、具体的には、レトルト処理と流通工程中の水分の移行とによる麺類の軟化を充分に改善でき、特有の歯ごたえのある食感と優れた外観とを有した麺類を含むレトルト食品が得られることを見出し、遂に本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)大豆粉及びこんにゃく粉を配合してなる麺類と、pHが5〜8である調味液とからなるレトルト食品、
(2)前記調味液に対する糖類の配合量が8%以下である(1)記載のレトルト食品、
である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、特有の歯ごたえのある食感と優れた外観とを有した麺類を含むレトルト食品を提供できる。したがって、商工業的に大量生産し販売するレトルト食品の商品価値を上げることができ、これの更なる需要の拡大が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」をそれぞれ意味する。
【0013】
本発明のレトルト食品とは、麺類と調味液とからなり、レトルト処理したものをいう。本発明で用いる前記麺類とは、少なくとも大豆粉及びこんにゃく粉を含み、更に必要に応じてその他の任意成分を含む食品をいう。本発明において、大豆粉とこんにゃく粉の配合量の割合が、大豆粉100部に対してこんにゃく粉50〜100部であると、大豆粉及びこんにゃく粉を配合した麺類に特有の歯ごたえのある食感が得られやすいため好ましい。
【0014】
本発明で用いる前記大豆粉としては特に制限はなく、例えば、生大豆粉、脱脂大豆粉等が挙げられる。また、本発明で用いる前記こんにゃく粉とは、さといも科に属する草木の地下球茎であるこんにゃく芋に含まれているグルコマンナンを主成分とするものであれば特に制限はなく、市販のものを用いればよい。
【0015】
本発明における大豆粉及びこんにゃく粉の配合量は、麺類に対して好ましくは0.01〜10%である。麺類における大豆粉及びこんにゃく粉の配合量が前記範囲であると、特有の歯ごたえのある食感と優れた外観とを有した麺類を含むレトルト食品が得られやすいため好ましい。
【0016】
これに対して、麺類における大豆粉及びこんにゃく粉の配合量が前記範囲より少ない場合、レトルト処理と流通工程中の水分の移行とにより麺類が軟化しやすく、特有の歯ごたえのある食感と優れた外観とを有した麺類を含むレトルト食品が得られ難いため好ましくない。一方、前記範囲より多い場合、製した麺類の食感が硬くなりやすいため好ましくない。
【0017】
また、その他の任意成分としては、例えば、クエン酸、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、乳酸、炭酸水素ナトリウム等のpH調整剤、グリセリン脂肪酸エステル等の乳化剤、アルギン酸ナトリウム、エコーガム、キサンタンガム、タラガム、ジェランガム及びカラギーナン、澱粉等の増粘剤、こしょう等の香辛料、食塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、塩化カルシウム、水酸化カルシウム等の塩類、糖類等が挙げられる。
【0018】
本発明で用いる調味液とは、醤油、清酒、みりん、食塩、糖類、動植物エキス等の調味料、pH調整剤、その他必要に応じてその他の任意成分を含み、pH5〜8、好ましくはpH6〜8である食品をいう。調味液のpHが前記範囲であると、特有の歯ごたえのある食感と優れた外観とを有した麺類を含むレトルト食品が得られる。一方、調味液のpHが前記範囲より低い場合、レトルト処理と流通工程中の水分の移行とにより麺類が軟化するため、製したレトルト食品の麺類は特有の歯ごたえのある食感に乏しい。また、調味液のpHが前記範囲より高い場合、製したレトルト食品の麺類は乳白色の外観を有しておらず好ましくない。
【0019】
本発明において前記pHの調整は、クエン酸、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、乳酸、炭酸水素ナトリウム等のpH調整剤を添加することにより行えばよい。本発明においては、pH調整剤がクエン酸であるとレトルト食品の風味に影響を与え難いため好ましい。また、調味液のpHは、調味液の品温を20℃とした後、pHメーターを用いて常法により測定すればよい。
【0020】
さらに、本発明において調味液に対する糖類の配合量が好ましくは8%以下、より好ましくは6%以下であると、製したレトルト食品の麺類が乳白色の外観を有しやすいため好ましい。
【0021】
本発明で用いる糖類としては特に制限はなく、具体的には、例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース等の単糖類、スクロース、トレハロース、マルトース等の二糖類、サイクロデキストリン、デキストリンやその誘導体、これらを水素添加した還元糖等が挙げられる。
【0022】
また、調味液に配合するその他の任意成分としては、上述の[0017]で示したものの他に、例えば、魚介類、海藻、畜肉、野菜、果実、穀類、豆類、酵母及びきのこ等の原料等が挙げられる。
【0023】
本発明のレトルト食品の製造方法は、上述のように大豆粉及びこんにゃく粉を配合してなる麺類と、pHを特定範囲に調整した調味液とを用いる他は特に制限はなく、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、大豆粉及びこんにゃく粉を配合してなる麺類を製する。具体的には、清水に大豆粉、こんにゃく粉及び食塩を加え、攪拌混合する。そこに水酸化カルシウムを加え、練り機等を用いて混練し、これを常法に従い細長い形状等に温水中で成形し、必要に応じて熟成することで前記麺類が得られる。
【0024】
次に、pHを特定範囲に調整した調味液を製する。具体的には、清水に、醤油、清酒、みりん、食塩、糖類、動植物エキス等の調味料、pH調整剤、その他の任意成分を加え、攪拌混合することで前記調味液が得られる。
【0025】
このようにして得られた大豆粉及びこんにゃく粉を配合してなる麺類と、pHを特定範囲に調整した調味液とを容器に詰め、密封後、110〜130℃で5〜90分間の殺菌条件でレトルト処理を行なうことで、本発明のレトルト食品が得られる。
【0026】
また、前記容器としては、レトルト処理を行なえるものであれば材質、形状等は特に制限はなく、例えば、プラスチック製やガラス製の硬質な容器、あるいは、ポリエチレン製、ポリプロピレン製のパウチ等の軟質な容器等が挙げられる。
【0027】
以下、本発明の実施例、試験例を述べ、本発明を更に説明する。なお、本発明はこれらに限定するものではない。
【実施例】
【0028】
[実施例1]
<麺類の製造>
清水94.59部に、大豆粉3部、こんにゃく粉2部、食塩0.4部を加え、攪拌混合する。そこに水酸化カルシウム0.01部を加え、練り機を用いて混練処理を行なう。次に、これを幅8mm、厚さ3mm、長さ15〜20cmの細長い形状に75℃の温水中で成形することで大豆粉及びこんにゃく粉を配合してなる麺類を製した。
【0029】
<調味液の製造>
清水88.79部に、醤油2部、清酒4部、食塩1.2部、澱粉4部、pH調整剤(クエン酸)0.01部を加え、攪拌混合することで調味液を製した。製した調味液のpHを[0019]記載の方法に従って測定したところ、6.2であった。
【0030】
<レトルト食品の製造>
上述の方法で得られた大豆粉及びこんにゃく粉を含有してなる麺類50部と、pHを特定範囲に調整した調味液100部とを容器に詰め、密封後、120℃で30分間レトルト処理を行なうことで、本発明のレトルト食品を製した。
【0031】
[試験例1]
実施例1において、調味液のpHが表1記載のpHとなるようにクエン酸の配合量を変えた他は実施例1と同様の方法を用いて7種類のレトルト食品を製した。得られたレトルト食品を常温(20℃)で5時間保存した後、これらを開封し、麺類の食感と外観をよく訓練されたパネラーにより下記評価基準に基いて評価した。結果を表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
表中の評価記号
<食感評価>
A:特有の歯ごたえのある食感が充分に感じられ、大変好ましい。
B:特有の歯ごたえのある食感が感じられ、好ましい。
C:やや軟らかい食感であり、特有の歯ごたえのある食感に乏しい。
D:軟らかい食感であり、特有の歯ごたえのある食感がない。
【0034】
<外観評価>
A:乳白色の外観を充分に有しており、大変好ましい。
B:乳白色の外観にやや欠けるが、問題ない程度である。
C:乳白色が外観を有しておらず、好ましくない。
【0035】
表1より、大豆粉及びこんにゃく粉を配合してなる麺類と、pHが5〜8、好ましくはpH6〜8である調味液とを用いることで、特有の歯ごたえのある食感と優れた外観とを有した麺類を含むレトルト食品が得られることが理解できる。一方、調味液のpHが前記範囲より低い場合、製したレトルト食品の麺類は特有の歯ごたえのある食感に乏しく、また、調味液のpHが前記範囲より高い場合、製したレトルト食品の麺類は乳白色の外観を有しておらず好ましくないことが理解できる。
【0036】
[試験例2]
実施例1において、調味液に対する糖類の配合量が表2記載の配合量となるようにスクロースを配合した他は実施例1と同様の方法を用いて5種類のレトルト食品を製した。得られたレトルト食品の麺類の食感と外観を試験例1と同様の方法により評価した。結果を表2に示す。
【0037】
【表2】

【0038】
表2より、調味液に対する糖類の配合量が好ましくは8%以下、より好ましくは6%以下であると製したレトルト食品の麺類が乳白色の外観を有しており好ましいことが理解できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大豆粉及びこんにゃく粉を配合してなる麺類と、pHが5〜8である調味液とからなることを特徴とするレトルト食品。
【請求項2】
前記調味液に対する糖類の配合量が8%以下である請求項1記載のレトルト食品。