レトロウィルス性疾患の治療用のアンチトロンビンIIIの医薬組成物
高分子量ATIIIを含む医薬組成物や、トロンビン活性化により媒介される感染性疾患、炎症性異常及び疾患又は状態を治療する際のその使用を開示する。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
レトロウィルス性疾患
ヒト・レトロウィルスであるヒト免疫不全ウィルス(HIV)は、身体の免疫系が破壊されて、被害者が肺炎などの日和見感染や、カポシ肉腫などの特定の癌に罹りやすくなる後天性免疫不全症候群(AIDS)という不治の疾患を引き起こす。AIDSは世界的な健康上の課題である。HIV/AIDSに対する国連のジョイント・プログラムでは、現在世界中で3400万人のHIV又はAIDS患者がいると推定している。そのような感染患者のうちおよそ2810万人は、貧困なサハラ砂漠以南アフリカに居住している。米国では、250人に1人がHIV又はAIDSに感染している。この流行病の初めからでは、AIDSにより推定42万5千人のアメリカ人を含むほぼ1900万人が世界中で死亡している。AIDSは、成人にとってマラリア及び結核に替わって世界で最も致命的な感染性疾患となり、世界中の主な死因の第4位である。
【0002】
いまだにAIDSの治療法はない。しかしながら、HIVの増殖及び体内免疫系の破壊を防ぐ様々な抗レトロウィルス薬がある。このようなクラスの薬物の一つが逆転写酵素と呼ばれるHIV酵素を攻撃する逆転写酵素阻害剤である。もう一つのクラスの薬物は、HIV酵素プロテアーゼを阻害するプロテアーゼ阻害剤である。これらのプロテアーゼ阻害剤は、1995年に初めて導入され、今や、HIV感染の治療に単独で、又は、他の抗レトロウィルス薬と組み合わせて、幅広く用いられている。今日では、米国でHIV感染の治療を受けている推定35万人の患者のうち、ほぼ21万5千人が、プロテアーゼ阻害剤のクラスの薬物のうちの少なくとも1つの薬物による治療を受けている。
【0003】
高有効性抗レトロウィルス薬治療(HAART)は、ウィルス複製を完全に抑止することができる三重薬物プロテアーゼ阻害剤含有養生法を要する、幅広く用いられている抗HIV療法である(Stephenson, JAMA, 277: 614-6 (1997))。しかしながら、体内に潜伏しているHIVの持続性は過小評価されている。その細胞自身のDNAの中にHIVのゲノムが組み込まれている、長命の休止期「記憶」Tリンパ球(CD4)がおそらくは数万乃至数百万個あり、HIVの貯蔵庫になっているという認識が今や、ある(Stephenson, JAMA, 279: 641-2 (1998))。潜在的感染細胞のこのようなプールは、一次感染の間に確立されている可能性が高い。
【0004】
このような併用療法はしばしば、部分的にしか有効でなく、また永続性のあるウィルス学的、免疫学的及び臨床上の利益を達成するのにどれくらいのウィルス抑制が必要であるかも不明である(Deeks, JAMA,
286: 224-6 (2001))。抗HIV薬は毒性が高く、心臓の損傷、腎不全、及び骨粗鬆症を含め、重篤な副作用を起こすことがある。プロテアーゼ阻害剤の長期使用は、体脂肪の異常な蓄積を伴う末梢性のるいそうと関連付けられている。プロテアーゼ阻害剤に関連する代謝障害の他の症状発現には、トリグリセリド及びコレステロールのレベル上昇、膵炎、アテローム性硬化症、及びインシュリン耐性がある(Carr et al., Lancet, 351: 1881-3 (1998))。現在の抗HIV療法の効験は、更に、養生法の複雑さ、薬物負荷、及び薬物対薬物の相互作用の制約を受ける。抗レトロウィルス薬の毒性効果とのコンプライアンスから、併用療法の有効期限の見通しをたてることは難しく、また、多くの患者は、HAARTによる長期治療に耐えることができない。併用療法の養生法が厳守されなかったことが原因で、HIVの薬物耐性株が出現してしまったため、他の抗ウィルス療法が緊急に必要とされている。他の薬物は、毎日の「薬物負荷」を実質的に減らし、現在のプロテアーゼ阻害剤使用に関連する複雑な食事上の指針を簡便化することでコンプライアンスを向上させるであろう。
【0005】
HIVウィルスは感染した個体の身体内に進入し、主に白血球内で生存及び複製する。従って、HIV感染の顕著な特徴は、免疫系のT−ヘルパ又はCD4細胞と呼ばれる細胞の減少である。HIVの細胞内への進入の分子機序には、ウィルス・エンベロープ糖タンパク質(env)と2つの標的細胞タンパク質CD4及びケモカイン受容体との間の特異的相互作用が関与している。HIVの細胞親和性は、特定のケモカイン受容体に対するenvの特異性により決定される(Steinberger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 97: 805-10 (2000))。T細胞系親和性(T親和性)ウィルス(X4ウィルス)は、進入にケモカイン受容体CXR4を要する。マクロファージ(M)親和性ウィルス(R5ウィルス)は、進入にCCR5を用いる(Berger et al., Nature, 391: 240 (1998))。T親和性は、AIDS痴呆症を含め、AIDSの多様な局面に関係しており、ウィルスの身体全体への散らばりや、ウィルスの身体内の貯蔵箇所の役目をする上で重要である可能性がある。
【0006】
更に、HIV患者の約40%が、C型肝炎ウィルス(HCV)にも同時感染している。更に、一種類のウィルス性肝炎に罹患した患者が後期の段階で異なる種類の肝炎ウィルスに感染した場合、重複感染も起きる。これらの条件下では、臨床上の症状及び疾患の経過は通常、単一のウィルス感染が発生した場合よりもより複雑、かつより重篤である。加えて、抗レトロウィルス治療(HAART)の結果としての肝損傷は大きな懸念であり、全てのクラスの抗レトロウィルス治療で起きることが示されている。以前の研究で、HCV又はHBV感染がHAART関連肝毒性の可能性を高める可能性があることが示されている。従って、HIV、HAV、HBV及びHCV感染のより安全な治療を定式化する必要がある。
【0007】
毎年約20万人のアメリカ人及び世界中では1000万人がA型肝炎に罹患している。B型肝炎は世界中で第9位の主要な死因であり、世界中で3000万人を越える慢性HBVキャリアがいる。それはアジアでは人口の15乃至20%に影響する。米国内では、それは僅かに0.1%即ち120万人にしか影響しない。B型肝炎は血液、精液、膣分泌液、乳汁、涙、唾液、及び開口創などのヒトの体液により伝染する。その伝染方法には、母子間、性的接触時、ディープ・キス、及び不適切な注射技術の使用時がある。HBVはHIVの100倍の感染性がある。
【0008】
懸念が高まっているのは、既にB型もしくはC型肝炎に慢性感染している人が、更にA型肝炎に接触したときに、死亡する危険性が高いことである。一種類の肝炎ウィルスに感染しても、別のものの感染に対しては免疫はできない。
【0009】
HBVはワクチンで防止することができる。しかしながら、今日では20億人を越える人が、彼らの生涯の何らかの時点でHBVに感染し、ほぼ3億5000万人がこのウィルスの慢性感染キャリアである。HBVは最もよくある人の病原体の一つであり、世界中で最も流行している慢性ウィルス感染である。毎年、推定140,000人のアメリカ人がB型肝炎に感染している。ほぼ100万人乃至125万人のアメリカ人が慢性感染しており、B型肝炎ウィルスのキャリアであると考えられる。HBVのキャリアは重篤な疾病や、肝硬変を原因とする死亡、そして毎年100万人を越えるキャリアの死因となっている疾患である原発性肝癌を発症するリスクが高い。加えて、これらのキャリアは世代間で感染を永続させる感染個体の貯蔵庫となっている。キャリアは感染性であり、彼/彼女が何の兆候又は症状を有していなくても、B型肝炎をうつすことができる。
【0010】
加えて、2000年9月の時点では、500万人のアメリカ人が(推定によっては1500万人に上るものもある)C型肝炎に感染しており、そして毎年、米国内で最高23万例の新たなC型感染がある。約8千人乃至1万人のアメリカ人が毎年HCVで死亡し、その犠牲者は来る10年又は20年間では3倍になると予測されている。世界中では2億を越える人がC型肝炎に慢性感染しており、この大きな感染者の貯蔵分は、潜在的な新たな感染源となる。HCV感染は先進国で最もよくある種類の慢性ウィルス性肝炎である。HCVに既に感染している人は異なる亜型のHCVに再度感染することがある。現在比較的に軽度の疾患症状のある無症候性の患者が末期の肝臓疾患に進行していくにつれ、来る10乃至20年の間に、B型及びC型慢性肝炎は保健システムにとって大きな重荷となるであろう。
【0011】
もう一つの一本鎖RNAウィルスはコロナウィルス科の属の一つであるコロナウィルスである。これらの大型の、エンベロープを持つ正鎖RNAウィルス(27-31 kb)はヒト及び家畜で優勢な病原体である。コロナウィルスは全てのRNAウィルスの中で最も大きなゲノムを有し、固有の機序で複製して高頻度で組換えを起こす。新たに見つかった重症急性呼吸器症候群(SARS)を起こすウィルスは、この科の一員である。それは2002年11月に現れ、2003年4月の時点で22カ国のうちの3,293人がこの感染が原因で病気となり、それを百人越える人が死亡している。
【0012】
新しい抗レトロウィルス薬が明らかに必要である。
【0013】
アンチトロンビンIII(ATIII)
セリンプロテアーゼ阻害剤(セルピン)は、ヒトを含む真核生物で見られる構造上関連するタンパク質のスーパーファミリを構成している(Wright, BIOASSAY, 18: 453-64 (1996);
Skinner et al., J. Mol. Biol. 283:9-14 (1998); Hungtington et al., J. Mol.
Biol. 293: 449-55
(1999))。このクラスには、ATIII、プロテインC阻害剤、活性化プロテインC、プラスミノーゲン・アクチベータ阻害剤、及びアルファ-1アンチトリプシンが含まれる。
【0014】
ATIIIは、血液凝固で明確な役割を持つ、血漿中に存在する糖タンパク質である。具体的には、ATIIIは、凝固カスケードの反応の強力な阻害剤であり、54k Da乃至65k Daの見かけの分子量を有する(Rosenburg and Damus, J. Biol. Chem. 248:
6490-505 (1973); Nordenman et al., Eur. J. Biochem., 78: 195-204 (1977);
Kurachi et al., Biochemistry 15: 373-7 (1976); Petersen et al., in The
Physiological Inhibitors of Coagulation and Fibrinolysis (Collen et al., eds)
Elsevier, Amsterdam, p. 48 (1979))。ATIIIという名称はそれがトロンビンにのみ作用することを暗に意味しているが、それは実際には、事実上全ての凝固酵素を少なくとも何らかの程度、阻害する働きをする。それが阻害する主な酵素はXa因子、Ixa因子及びトロンビン(IIa因子)である。またそれは、XIIa因子、Xia因子や、VIIa因子と組織因子との複合体に対しても阻害作用を有するが、VIIa因子及び活性化プロテインCに対しては有さない。ATIIIはまた、トリプシン、プラスミン及びカリクレインも阻害する(Charlotte and Church, Seminars in
Hematology 28:3-9 (1995))。複数の相互作用を通じて凝固を制限するというその能力から、それは主要な天然抗凝固タンパク質の一つとなっている。
【0015】
ATIIIはそれ自体では比較的に非効率的な阻害剤である。しかしながら、ATIIIは単一のテンプレート機序で活性化されたり、あるいは、ヘパリン結合により引き起こされるアロステリックなコンホメーション変化によって活性化され得る(Skinner et al., J. Mol. Biol. Chem., 283:
9-14 (1998): Hungtinton et al., J. Mol. Biol., 293: 449-55 (1999); Belar et
al., J. Mol. Biol. Chem., 275: 8733-41 (2000))。ATIIIがヘパリンに結合すると、阻害を起こす反応の速度が大きく加速される。この相互作用は、ヘパリン・ベースの抗凝固治療法の基礎である。
【0016】
標題「HIV感染の治療のためのセルピン薬及びその使用法」の米国で発行された特許出願20020127698は、アンチトロンビンIII(ATIII)などのセルピンによる、HIVの感染性を阻害する方法を開示している。この特許出願は、弛緩(R)、ストレス(S)、修飾(M)又は前潜伏型のATIIIの使用を教示している。修飾されたATIIIは、エラスターゼ、他のプロテアーゼ、化学処理又は酵素消化で処理されたものとして記載されている。
【0017】
国際特許出願WO00/52034の標題「セリン・プロテアーゼ活性の阻害剤、ウィルス感染の治療のための方法及び組成物や、米国5,532,215号も、ATIIIを含むセルピンの抗HIV薬としての使用を概略的に教示している。
【0018】
国際特許出願WO02/22150の標題「活性化アンチトロンビンIIIを含有する医薬」は、酸化、尿素及び塩酸グアニジンによる処理、タンパク質分解性の消化、60℃への加熱、pHの4.0への低下、又は、ATIIIペプチドに配列SEAAAS(配列番号22番)を添加することにより、活性化ATIII(「免疫防御活性化ATIII」又は「IDAAT」と呼ばれる)をin vitroで生じさせることができることを教示している。IDAATは、HIV、プラスモディウム-ファルシパルム(原語:Plasmodium falciparum)及びニューモシスティス-カリニ(原語:Pneumocystis carinii)のような寄生生物、及びスタフィロコッカス-アウレウス(原語:Staphylococcus aureus)のような細菌に対して用いることのできるATIIIの重合体であると報告されている。
【0019】
ATIII及び他のセルピンは抗HIV活性を有することが示唆されているが、ここで開示する研究結果は、純粋な血漿由来又は組換えATIIIは、HIVウィルス負荷を低下させる上で不活性であることを示している。
【0020】
発明の概要
本発明は、より高分子量を有するように処理されているATIIIは、感染細胞内のHIVウィルス負荷を有効に低下させるという驚くべき発見に基づくものである。この発見に基づき、本発明は、薬学的に許容可能な担体と、レトロウィルス感染を治療するために有効量の高分子量アンチトロンビンIII(ATIII)とを含む医薬組成物を特徴とする。
【0021】
好適な高分子量ATIII分子は60kDを超えるものであり、好ましくは約60キロダルトン(kD)乃至約550kDの範囲であるとよい。特に好適な高分子量ATIIIは熱処理されている、及び/又は、オリゴ糖に結び付けられている、ものである。好適なオリゴ糖には、単糖、多糖、ヘパリン(低分子量又は高分子量並びに未分画のもの)、ペクチン及びアミノ・グリコシド、がある。他の好適な実施態様では、当該のオリゴ糖自体をビオチンなどの低分子で誘導体化する。高分子量ATIIIの特に好適な医薬製剤は、制御放出調合物として調製されたものである。
【0022】
別の局面では、本発明は、本発明の医薬組成物の投与に基づいた、感染及び/又は炎症を治療する方法を特徴とする。好適な実施態様では、当該の感染は、細菌又はウィルスにより起こるものである。特に好適な実施態様では、前記ウィルスはレトロウィルスである。特に好適なレトロウィルスは、HIV、HAV、HBV、HCV、CMV及びSARSから成る群より選択されるものである。
【0023】
高分子量ATIIIは既存の抗ウィルス治療薬とは異なる機序を通じて作用すると思われるため、高分子量ATIIIの医薬組成物を、他の抗ウィルス薬と組み合わせて投与してもよい。好適な抗ウィルス薬には、カクテルを含む逆転写酵素阻害剤、例えば高有効性抗レトロウィルス薬治療(HAART)養生法(ジドブジン、ザルシタビン、ジダノシン、スタブジン、ラミブジン、アバカビル、テノフォビル、ネビラピン、エファビレンツ、デラビルジン)及びプロテアーゼ阻害剤(サキナビル、リトナビル、インジナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、ロピナビル)、アデニンアラビノシド、アデニンアラビノシド5’-モノホスフェート、アシクロビル、ガンシクロビル、ファムシクロビル、ラミブジン、クレブジン、アフェドビルジピボキシル、エンテカビル、IFN-α-2b、IFN-α-2a、リンホブラストイドIFN、コンセンサス-IFN、IFN-β、IFN-γ、PEG化IFN-α-2a、コルチコステロイド、又はチモシンa1、IL-2、IL-12、リバビリン、シクロスポリン又は顆粒球マクロファージコロニ刺激因子、がある。
【0024】
更に別の局面では、本発明は、本発明の高分子量ATIIIを対象に投与することにより、トロンビン活性化により引き起こされる、又は、トロンビン活性化に起因する、疾患に関して対象を治療する方法を特徴とする。トロンビン活性化により引き起こされる、又は、トロンビン活性化に起因する、疾患には、敗血症、外傷、急性呼吸器不全症候群、血栓症、卒中、再狭窄、経皮経管血管形成術における再閉塞及び再狭窄;外科術に関連する血栓症、虚血/再潅流損傷;癌又は外科患者の凝固異常、アンチトロンビンIII欠損、静脈及び動脈血栓症、汎発性血管内凝固、微小血管障害性溶血性貧血及び静脈閉塞症(VOD)、がある。
【0025】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び請求項から明白となるであろう。
【0026】
詳細な説明
1. 総論
本発明は、少なくとも部分的には、その分子量を高めるよう処理してあるアンチトロンビンIII(ATIII)(高分子量ATIII)が、HIV感染細胞内のウィルス負荷を効果的に低下させるという驚くべき発見に基づくものである。高分子量ATIIIの作用機序は精確には未知であるが、それは融合阻害剤及び/又は細胞内阻害剤として働くか、あるいは、シグナル伝達に何らかの態様で関与していると考えられる。
【0027】
2.高分子量ATIII
ATIII
本発明は、高分子量ATIIIを含む医薬組成物と、ウィルス性疾患を治療する際のその使用を特徴とする。ATIIIは、例えば、血漿のコーンの分画法により得られる画分IV-1もしくはIV、又は上清IもしくはII+IIIなどから得ることができる(Lebing WR et al., Vox Sang 67:117-24 (1994)
, Hoffman DL, Am. J. Med. 87:23S-26S (1989), Wickerhauser M. et al, Vox Sang
36: 281-93 (1979)。更にATIIIは市販のものを入手することもできる(アベンティス社、ジェンザイム・トランスジェニック・コーポレーション・バイオセラピューティックス社、バクスター・ヘルスケア社、カルバイオケム社、バイヤー社及びシグマ社)。
【0028】
代替的には、組換えATIIIを、例えばE. coli、細胞培養(EP-339919)、遺伝子操作(EP-90505)、トランスジェニック動物(Larrik and Thomas, Curr. Opin. Biotechnol. 12:41111-8
(2001), Edmunds et al., Blood 12:4561-71 (1998)、米国特許第6,441,145号及び第5,843,705号)等を用いて調製することができる。
【0029】
表1は、バリアント・ヌクレオチド配列、即ち、対立遺伝子バリアントなど、一つ以上のヌクレオチド置換、追加又は欠失の違いのある配列、を含む、多種の生物由来のATIIIの核酸及びアミノ酸配列を示す。哺乳動物種やその変種由来のATIIIを用いて、本発明の高分子量ATIIIを作製することができる。
【0030】
【表1】
【0031】
当業者であれば、天然の対立遺伝子のバリエーションのために、ある一つの種の個体間で、特定のタンパク質をコードする核酸の一つ以上のヌクレオチド(最高当該のヌクレオチドの約3から5%)にばらつきがある場合があることは理解されよう。このようなヌクレオチドのバリエーションや、コードされたポリペプチドは、いずれも、本発明の超ATIIIを調製するために用いることができる。例えば、ロイシンをイソロイシン又はバリンに、アスパラギン酸をグルタミン酸に、スレオニンをセリンに単独で置換したり、又はアミノ酸の構造上関連するアミノ酸との同様な置換(即ち保存的変異)を行っても、その結果できる分子の対生物活性には大きな影響はないだろうと予測するのは妥当である。保存的置換とは、側鎖で関連するアミノ酸ファミリ内で起きるものである。遺伝子にコードされたアミノ酸は4つのファミリに分類することができる:(1)酸性=アスパラギン酸、グルタミン酸;(2)塩基性=リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性=アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;及び(4)無電荷の極性=グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン。フェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシンは、ときにはまとめて芳香族アミノ酸と分類されることもある。同様な態様で、アミノ酸のレパートリーは、(1)酸性=アスパラギン酸、グルタミン酸;(2)塩基性=リジン、アルギニン ヒスチジン、(3)脂肪族=グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン;但しセリン及びスレオニンは選択に応じて別に脂肪族−ヒドロキシルに分類される;(4)芳香族=フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン;(5)アミド=アスパラギン、グルタミン;及び(6)硫黄を含有する=システイン及びメチオニンに分類することができる。(例えばBiochemistry, 2nd ed., Ed. by L. Stryer, W.
H. Freeman and Co., 1981を参照されたい)。
【0032】
更に本発明は、主題のATIIIのコンビナトリアル変異体や、切断変異体の組を作製する方法も考察するものであり、ウィルス感染を阻害する上で機能的な潜在的バリアント配列(例えばホモログ)を同定するために特に有用である。このようなコンビナトリアル・ライブラリをスクリーニングする目的は、例えば、選択的効力を持つATIIIホモログを作製するためなどである。この方法の代表的な実施態様では、ATIIIホモログの一集団のアミノ酸配列を、好ましくは可能な最も高いホモロジを促すようにアライメントする。このようなバリアントの集団には、例えば、一つ以上の種を由来とするホモログ、又は、同じ種ではあるが変異のために異なるようなホモログ、を含めることができる。アライメント後の配列の各位置に見られるアミノ酸を選択して、縮重組のコンビナトリアル配列を作製する。ある好適な実施態様では、それぞれが潜在的ATIII配列の少なくとも一部分を含むポリペプチドのライブラリをコードする遺伝子の縮重ライブラリを利用して、コンビナトリアル・ライブラリを作製する。例えば、合成オリゴヌクレオチドの混合物を酵素によりライゲートして、縮重組の潜在的ATIIIヌクレオチド配列が個々のポリペプチドとして、あるいは代替的には一組のより大きな融合タンパク質(例えばファージ・ディスプレイ用)として発現可能であるような遺伝子配列にすることができる。潜在的ホモログのライブラリを縮重オリゴヌクレオチド配列から作製することのできる数多くの方法がある。縮重遺伝子配列の化学合成は、自動DNA合成装置で行うことができ、次にその合成遺伝子を、発現に向けて適した遺伝子にライゲートすることができる。縮重組の遺伝子の目的は、一つの混合物で、所望の組の潜在的ATIII配列をコードする配列の全てを提供することである。縮重オリゴヌクレオチドの合成は当業で公知である(例えば、Narang, SA (1983) Tetrahedron 39:3; Itakura
et al., (1981) Recombinant DNA, Proc. 3rd Cleveland Sympos. Macromolecules,
ed. AG Walton, Amsterdam:
Elsevier pp273-289; Itakura et al., (1984) Annu. Rev.
Biochem. 53:323; Itakura et al.,
(1984) Science 198:1056; Ike et al., (1983) Nucleic Acid Res. 11:477を参照されたい)。このような技術は他のタンパク質の定方向進化にも用いることができる(例えばScott et al., (1990) Science 249:386-390;
Roberts et al., (1992) PNAS USA 89:2429-2433; Devlin et al., (1990) Science
249:404-406; Cwirla et al., (1990) PNAS USA 87: 6378-6382;や米国特許第5,223,409号、第5,198,346号及び第5,096,815号を参照されたい)。
【0033】
代替的には、他の形の変異誘発を利用してコンビナトリアル・ライブラリを作製することもできる。例えば、ATIIIホモログを作製し、例えばアラニン・スキャンニング変異誘発法等(Ruf et al., (1994) Biochemistry
33:1565-1572; Wang et al., (1994) J. Biol.
Chem. 269:3095-3099; Balint et al.,
(1993) Gene 137:109-118; Grodberg et
al., (1993) Eur. J.
Biochem. 218:597-601; Nagashima et
al., (1993) J. Biol. Chem. 268:2888-2892; Lowman et al., (1991) Biochemistry
30:10832-10838; 及びCunningham et a., (1998) Science 244:1081-1085)、リンカ・スキャンニング変異誘発法(Gustin et al., (1993) Virology 193:653-660; Brown et
al., (1992) Mol. Cell. Biol. 12:2644-2652; McKnight et al., (1982) Science
232:316);飽和変異誘発法(Meyers et al., (1986) Science 232:613);PCR変異誘発法(Leung et al., (1989) Method Cell Biol 1:11-19);又は化学的変異誘発法を含むランダム変異誘発法(Miller et al., (1992) A Short Course in
Bacterial Genetics, CSHL Press, Cold Spring Harbor, NY; 及びGreener
et al., (1994) Strategies in Mol Biol 7:32-34)を用いたスクリーニングによりライブラリから単離することができる。リンカ・スキャンニング変異誘発法は、特にコンビナトリアル環境下において、切断(対生物活性な)型のATIIIを同定するための魅力的な方法である。
【0034】
修飾後のATIIIの抗ウィルス活性を模倣することのできる、例えばペプチド又は非ペプチド作用薬など、ミメティックを生ずるように還元されたATIIIも、本発明の超ATIIIを作製するために用いることができる。実例を挙げると、当該のATIIIのうちで、抗ウィルス活性に関与している重要な残基を判定し、ウィルス感染を阻害する働きをするATIII由来ペプチドミメティックを作製するために用いることができる。当該のATIIIのうちでウィルス阻害に関与しているアミノ酸残基をマッピングするためにスキャンニング変異誘発法などを用いることで、ウィルス阻害に関与している残基を模倣するペプチドミメティック化合物を作製することができる。例えば、このような残基の加水分解不可能なペプチド類似体は、ベンゾジアゼピン(例えばFreidinger et al., in Peptides: Chemistry
and Biology, G. R. Marshall ed., ESCOM Publisher: Leiden, Netherlands, 1988を参照されたい)、アゼピン(例えばHuffman et al., in Peptides: Chemistry and Biology, G.
R. Marshall ed., ESCOM Publisher: Leiden, Netherlands, 1988を参照されたい)、置換ガンマラクタム環(Garvey et al., in Peptides: Chemistry and Biology, G.
R. Marshall ed., ESCOM Publisher: Leiden, Netherlands, 1988)、ケト-メチレンシュードペプチド(Ewenson et al., (1986) J. Med. Chem. 29:295; 及びEwenson
et al., in Peptides: Structure and Function (Proceedings of the 9th American
Peptide Symposium) Pierce Chemical Co. Rockford, IL, 1985)、b-ターン・ジペプチド・コア(Nagai et al., (1985) Tetrahedron Lett 26:647; 及びSeto
et al., (1986) J Chem Soc Perkin Trans 1:1231)、及びb-アミノアルコール(Gordon et a., (1985) Biochem Biophys Res Commun
126:419; 及びDann et al., (1986) Biochem Biophys Res Commun 134:71)を用いて作製することができる。
【0035】
ATIIIは、当業者に公知の多種の方法により実質的に精製できよう。実質的に純粋なタンパク質を、免疫学的検定法、クロマトグラフィ検定法、控訴検定法又は他の検定法を用いて、当該手法の各段階で精製を観察するような、タンパク質精製のための以下の公知の手法により得てもよい。タンパク質精製法は当業で公知であり、例えばDeutscher et al., Guide to Protein
Purification, Harcourt Brace Jovanovich, San Diego (1990)に解説されている。ATIIIはまた、例えば米国特許第3,842,061号及び米国特許第4,340,589号などに解説された方法により精製することもできる。
【0036】
ここで用いられる場合の用語「実質的に精製された」とは、天然でそれに伴う成分から分離されたATIIIを言う。好ましくは、ATIIIが、ある試料中の総物質(体積で、湿潤もしくは乾燥重量で、あるいは、モルパーセント又はモル画分で)中の少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%、そして最も好ましくは少なくとも約99%であるとよい。純度は、例えばポリペプチドの場合はカラム・クロマトグラフィ、ゲル電気泳動法又はHPLC分析でなど、いずれかの適した方法によって測定することができる。
【0037】
高分子量ATIII
ここで示すように、分子量が増加するような態様で処理されたATIIIを対象に投与すると、ウィルス感染細胞中のウィルス負荷が減少する。特に好適な高分子量ATIII分子は、ウィルス負荷を、天然ATIIIに比べて少なくとも1.5対数、より好ましくは少なくとも2、3、4又は5対数、より良好に減少させるものである。
【0038】
好適な高分子量ATIII分子又は分子の組合せは、約60kD乃至約550kDの範囲の重さのものである(天然ATIIIは58kDである)。特に好適な高分子量ATIIIは、少なくとも約60-70、70-80、80-90、90-100、100-110、110-120、130-140、140-150、150-160、160-170、170-180、180-190、190-200、200-210、210-220、220-230、230-240、240-250、250-260、260-270、270-280、280-290、290-300、300-310、310-320、320-330、330-340、340-350、350-360、360-370、370-380、380-390、390-400、400-410、410-420、420-430、430-440、440-450、450-460、460-470、470-480、480-490、490-500、500-510、510-520、520-530、530-540又は540-550の範囲の重さのものである。
【0039】
高分子量ATIIIは、例えば実施例1で示すように、熱処理及びヘパリンなどのオリゴ糖との結合などにより、調製することができる。熱処理には、60℃以上で少なくとも約30分の加熱、より好ましくは何時間もの加熱が含まれよう。熱処理されたATIIIの調製はLarsson et al., J. Biol. Chem.
276:11996-12002 (2001)に解説されている。
【0040】
ここで用いられる「オリゴ糖」とは、単糖、二糖、及び多糖(五糖、六糖、及び七糖を含む)、糖アルコール、及びアミノ糖を言う。単糖の例には、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、アラビノース、及びイノシトールがある。二糖の例にはサッカロース、ラクトース、マルトース、ペクチンがある。糖アルコールの例には、マンニトール、ソルビトール、及びキシリトールがある。アミノ糖の例には、アミノグリコシド及びヘパリン等のより複雑なオリゴ糖を形成することのできるビルディング・ブロックであるグルコサミン、ガラクトサミン、N-アセチル-D-グルコサミン及びN-アセチルガラクトサミンがある。好適なオリゴ糖はヘパリン(低分子量2-4kDa)及び高分子量(少なくとも12kDa)、ペクチン、五糖及びアミノグリコシドである。好適なオリゴ糖は、ATIIIに対する親和性を有するものである。例えば、ヘパリンは、ATIIIのHis-1、Ile-7、Arg24、Pro-41、Asn-45、Arg-47、Trp-49、His-65、Lys-107、Ser-112、Lys-114、Phe-121、Phe-122、Lys-125、Arg-129、Asn-135、Lys-136、Glu 414アミノ酸を含め、ATIIIと特定の部位で相互作用することが知られている(Pratt et al., Seminars in Hematology.
28:3-9 (1991), Skinner et al., J. Mol. Biol. 266:601-609 (1997)、Jairajpuri
et al., J. Biol. Chem. M212319200 (2003))。ここで用いられる場合のオリゴ糖は、例えばビオチン、アビジン又はストレプトアビジンなどの更なる低分子で誘導体化することができる。
【0041】
オリゴ糖は、熱処理されたATIIIに、37℃60℃で1−72時間、0.02Mのリン酸ナトリウム、0.05MのNaCl、pH7.4、などの緩衝液中でインキュベートすることにより、連結できよう。同様に、ATIIIにヘパリンなどのオリゴ糖を結合させるには、当業者に公知の標準的な合成有機化学法を用いても可能であろう(例えばMarch J. Advanced Organic Chemistry, John Wiley & Sons, Inc. (1992) )。高分子量ATIIIは、ATIIIを熱変性させた後、オリゴ糖を加えるか、又は、最初にATIIIをオリゴ糖で処理した後、実施例で示すように熱変性させることにより、作製することができる。
【0042】
高分子量ATIIIは、ATIII分子を、少なくとも1つの他のATIII分子に結合させて、二量体又は三量体などの多量体を作製することによっても、調製することができる。加えて、ATIIIの機能的フラグメントを他の機能的フラグメント又は完全長分子に結合させても、高分子量ATIIIを作製できよう。
【0043】
更なる高分子量ATIIIを、硫酸化分子との結合に基づいても調製することができる(Gunnarsson, GT and UR Desai, Bioorg Me Chem
Lett 13(4): 679-893 (2003))。
【0044】
高分子量ATIIIは、そのin vivoでの半減期を延ばす態様で調合することができる。例えば、高分子量ATIIIを、タンパク質又はポリマなど、血中循環を長くし、放出を遅くすることができる付加的な高分子量分子に付着させることができる。好ましくは、当該の制御放出調合物が、生分解性のアミド又はポリマ生成物から成るとよい。
【0045】
制御放出調合物には、インプラント及びマイクロ封入送達系を含めてもよい(それぞれWO 94/23697及び米国特許第5,102,872号を参照されたい)。高分子量ATIIをポリマに捕獲又は結合させ、患者に移植して徐放を容易にしてもよい。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸などの生分解性で生体適合性あるポリマを用いることができる。このような調合物の調製法は当業者に明白であろう。これらの技術の例は、引用をもって各々の内容をここに援用することとする米国特許第5,110,596号、第5,034,229号及び第5,057,318号に示されている。
【0046】
他の制御放出調合物には、経皮送達系が含まれよう。これらの例には、シリコーン・エラストマ・マトリックス中に均質に分散させた水混和性の溶媒に修飾ATIIIを飽和懸濁させたレザバを含有する分配制御された送達系であるマイクロ封入系が含まれよう。二番目の系は、マトリックス−拡散制御系である。三番目の、経皮薬物送達に最も広く用いられている系は、膜−透過制御系である。最近入手可能となった四番目の系は、勾配−荷電系である。更に、進歩した経皮用担体には、イオン泳動及び音波泳動系、熱硬化性ゲル、及びプロドラッグ(Ranade VV. (1991) J. Clin Pharmacol
31(5):401-418を参照されたい)などの系がある。これらの系では、吸収促進剤を用いて、修飾されたATIIIの皮膚の透過を促進してもよい。
【0047】
吸収促進剤は、具体的には、プロピレングリコール、へキシレングリコール、プロピレングリコールジペラルゴネート、グリセリルモノエチルエーテル、ジエチレングリコール、モノグリセリド、(8乃至10個の酸化エチレン単位の付いた)エトキシル化グリセリドのモノオレイン酸塩、アゾン(1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン)、2-(n-ノニル)-1,3-ジオキソラン、イソプロピルミリステート、オクチルミリステート、ドデシル-ミリステート、ミリスチルアルコール、ラウリルアルコール、ラウリン酸、乳酸ラウリル、テルピノール、1-メントール、d-リモネン、.ベータ.-シクロデキストリン及びその誘導体、又は、ポリソルベート、ソルビタンエステル、スクロースエステル、脂肪酸、胆汁酸塩などのサーファクタント、又は代替的には親油性及び/又は親水性及び/又は両親媒性生成物、例えばポリ-グリセロールエステル、N-メチルピロリドン、ポリグリコシル化グリセリド及び乳酸セチル、から選択してもよい。吸収促進剤は、好ましくは、当該組成物の重量の5乃至25%を成すとよい。吸収促進剤の更なる解説は米国特許第6,538,039号に見られる。
【0048】
活性検定法
ここで解説した通りの高分子量ATIIIを、数多くある市販の検定法のいずれかを用いて、抗ウィルス活性について検定してもよい。例えば、HIVウィルス負荷の低下能を、例えば実施例2で示すように、アライアンス(R)HIV-1 p24酵素結合免疫吸着検定法を用いて判定してもよい。他の実施態様では、当業者であれば、例えばRT-PCR(Amplicor HIV-1モニター;ロシュ・ダイアグノスティックス・システムズ社)、核酸ベースの増幅(HIV-1 RNA QT; オルガノン・テクニカ社)、核酸ハイブリダイゼーション及び分枝状DNAシグナル増幅(Quantiplex HIV-1 RNA; バイヤー・ヌクレイック・アシッド・ダイアグノスティックス社)、DNAハイブリダイゼーション及び比色検出法(Digene Assay: ダイジーン・ダイアグノスティックス社)、多重転写媒介型増幅系(ジェン-プローブ社)、及び核酸及び配列ベースの増幅検定法(ヌクリセンス社)などを用いて、ウィルスDNAの存在及び/又は相対量を検出することにより、修飾されたATIIIのHIV-1阻害活性を判定できよう。
【0049】
修飾されたATIIIによるA型肝炎の阻害を、例えば、IgMクラスのA型肝炎ウィルス抗体を検出する市販のラジオイムノアッセイ(RIA)又はELISA検定法、分子ハイブリダイゼーション及びPCR検出技術などを用いて特定してもよい。B型肝炎の阻害は、例えば液体ハイブリダイゼーション検査(Genostics検定法;イリノイ州シカゴ、アボット・ラボラトリーズ社)、分枝状DNA検定法(カリフォルニア州エメリービル、バイヤー社)、及びPCR検定法(Cobas Amplicor HBV モニタ 又はCobas-Am)。などにより、検定できよう。C型肝炎の阻害は、C型肝炎ウィルスに特異的なELISA検定法、標準化されたRT-PCR検定法によるRNA検出(Amplicor HCV 2.0; ロシュ・モラキュラー・システムズ社)、及び分枝状DNA検定法(Quantiplex HCV RNA 2.0; キロン・ダイアグノスティック・ラボラトリーズ社)(Richman, Whitley, Hayden (American Society
for Microbiology Press: 2002 Chapters 30, 32, 46, 52)によるClinical Virology, 2nd Ed)を用いて検定できよう。コロナウィルス(例えばSARS)の阻害は、市販のPCR検定法を用いて検定できよう。
【0050】
3. 医薬組成物及び治療上の使用
ここで示した対生物活性に基づき、有効量の高分子量ATIIIを含む医薬製剤を、(ヒト、及び、例えばウシ、ウマ、イヌ、ネコ、等の動物を含む)対象に、感染及び/又は炎症に関して前記対象を治療するために投与することができる。好適には、当該の感染は細菌又はウィルス・ベースのものであるとよい。特に好適なウィルス感染は、例えばHIV、HAV、HBV、HCV、及びSARSから成る群より選択されるウィルスなどにより引き起こされるレトロウィルス感染である。
【0051】
抗感染/抗炎症薬としての実用性に加え、本発明の医薬組成物を、トロンビン活性化を阻害する必要のある患者において、このような阻害をするために用いてもよい。患者におけるトロンビン活性化が関連する疾患には、敗血症、外傷、急性呼吸器不全症候群、血栓症、卒中、及び再狭窄がある。また、本医薬組成物を、経皮経管冠動脈形成[術における再閉塞及び再狭窄;外科術に関連する血栓症、虚血/再潅流損傷;癌又は外科患者の凝固異常などのトロンビン関連病理学的疾患のリスクのある患者を治療するために用いてもよい。更に、本医薬組成物を、例えば、静脈及び動脈血栓症のハイリスクにつながる先天性アンチトロンビンIII欠損、汎発性血管内凝固につながる後天性アンチトロンビンIII欠損、内皮損傷を原因とする微小血管障害性溶血性貧血(即ち溶血尿毒症症候群)及び静脈閉塞症(VOD)などの治療に抗凝固剤として用いてもよい。
【0052】
高分子量ATIIIの医薬組成物は、従来の態様で、一つ以上の生理学的に許容可能な担体又は医薬品添加物を用いて調合できよう。このように、高分子量ATIIIを、例えば注射、(口又は鼻を通じた)吸入又は通気法又は経口、バッカル、非経口もしくは直腸投与などによる投与に向けて調合してよい。
【0053】
このような治療の場合、本発明の化合物を、全身及び局所もしくは局部投与を含む、多種の投与負荷に向けて調合することができる。技術及び処方は、概略的には、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Meade
Publishing Co., Easton, P.A.に見られよう。全身投与の場合、筋肉内、静脈内、腹腔内、及び皮下を含む注射が好ましい。注射の場合、本発明の化合物を、液体の溶液、好ましくは、ハンクス溶液又はリンガー溶液など、生理学的に適合性ある緩衝液中に入れて調合することができる。加えて、当該の化合物を固体形で調合し、使用直前に再溶解又は懸濁させてもよい。凍結乾燥型も包含される。
【0054】
吸入による投与の場合、本発明に従って用いる化合物を、適宜、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の適した気体などの適した推進剤を用いて、加圧式パック又はネブライザからのエーロゾル噴霧の形で送達する。加圧式エーロゾルの場合、定量を送達する弁を提供することにより、投薬量単位を決定してもよい。当該化合物と、ラクトース又はでんぷんなどの適した粉末基剤との混合粉末を含有する、吸入器又は通気器で用いるためのゼラチンなどのカプセル及びカートリッジを調合してもよい。
【0055】
高分子量ATIIIを、例えば大量注射又は継続的輸注など、注射による非経口投与に向けて調合してもよい。注射用の調合物は、例えばアンプル又は多人数用容器などの中に、保存剤を加えた単位剤形として提供してもよい。調合物は、例えば油性又は水性の賦形剤に入れた懸濁液、溶液又は乳濁液などの形を採っていてもよく、また、懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤などの調合用作用薬を含有していてもよい。代替的には、当該の活性成分は、無菌の無発熱源水などの適した賦形剤による使用前の構成に向けた粉末型であってもよい。
【0056】
また高分子量ATIIIを、例えばココアバター又は他のグリセリドなどの従来の座薬用基剤を含有するなど、座薬又は停留浣腸剤など、直腸用組成物に調合してもよい。
【0057】
前述した調合物に加え、当該の化合物をデポー製剤として調合してもよい。このような長時間作用性調合物は、移植(例えば皮下又は筋肉内)又は筋肉内注射により、投与できよう。従って、例えば、当該の化合物を、適したポリマー製又は疎水性の材料(例えば許容可能な油脂に入れた乳濁液として)又はイオン交換樹脂と一緒に調合したり、あるいは、節約可溶性塩などの節約可溶性誘導体として、調合してもよい。他の適した送達系には、長期間にわたる薬物の局所的非侵襲的送達の可能性を提供するマイクロスフィアがある。全身投与は、また、経粘膜又は経皮手段によってもよい。経粘膜又は経皮投与の場合、透過させようとする障壁に適した浸透剤を調合物中に用いる。このような浸透剤は当業で広く公知であり、その中には、例えば、経粘膜投与用には胆汁酸塩及びフシジン酸誘導体がある。加えて、界面活性剤を用いて透過を促してもよい。経粘膜投与は、鼻孔用スプレーを通じたり、あるいは座薬を用いることで行えよう。
【0058】
高分子量ATIIIと薬学的に許容可能な添加剤との混合物は、好ましくは、凍結乾燥された製品として調製され、使用時に溶解させるとよい。このような製剤は、約1-100単位/mlの高分子量ATIIIを、注射用の蒸留水又は無菌の精製水に溶解させることにより、それを含有する溶液に調製することができる。より好ましくは、それを、生理学的に等張の塩濃度及び生理学的に好ましいpH値(pH6−8)を有するように調節するとよい。
【0059】
ATIIIは、~100U/kg/日(Warren et al., JAMA
286: 1869-78 (2001))の用量で投与された場合によく耐性があることが示されており、18.6時間での全体的な消失半減期が実証されている(Illias et al. Intensive Care Medicine 26:
7104-7115 (2000))。該用量は、症状、体重、性別、動物種等に応じて適宜決定されるが、それは一般に、ヒトの成人の場合、一日に1回から数回の用量で投与される1-1,000単位/体重1kg/日、好ましくは10-500単位/体重1kg/日のATIIIである。例えば静脈内投与の場合、該用量は、好ましくは10-100単位/体重1kg/日であるとよい。
【0060】
更に、当業者であれば理解されるように、本発明のいずれかの作用薬、化合物、薬物等の投薬量は、患者の症状、年齢及び体重、治療又は防止しようとする異常の性質及び重篤度、投与経路、及び補助剤の形に応じて様々であろう。当該の調合物はいずれも、例えば一回の用量又は分割された用量などで、適した用量にして投与してもよい。単独の、又は、本発明のいずれか他の化合物と一緒にした場合、あるいは、治療しようとする特定の異常、疾患又は状態にとって有用と思われるいずれかの化合物と組み合わせた場合の本発明の化合物の投薬量は、この説明の欄及びこの教示事項に基づいて、当業者に公知の技術により、容易に判定できよう。更に、本発明は、二種類以上の当該の化合物や他の治療的作用薬の混合物も提供するものである。
【0061】
ある患者において最も有効な治療となるであろう投与の精確な時間や特定の化合物の量は、特定の化合物の活性、薬物動態、及び生物学的利用能、患者の生理学的状態(年齢、性別、疾患の種類及び段階、全身の肉体条件、医薬の特定の投薬量及び種類に対する応答性を含む)、投与経路等に応じるであろう。ここで提供する指針を、例えば投与の最適な時間及び/又は量を決定するなど、治療を最適するために用いてよく、それには、対象を観察し、投薬量及び/又はタイミングを調節することから成る慣例的な実験しか要さないであろう。
【0062】
対象を治療中、24時間の間、所定の時点における一つ以上の関連する指数を測定することにより、患者の健康を観察してもよい。補助剤、投与の量、時間及び処方を含む治療法を、このような観察の結果に従って最適化してもよい。同じパラメータを測定することで、患者を定期的に再評価して進歩の程度を判定してもよく、初回のこのような再評価を、典型的には、治療の開始から4週間の終わりの時点で行い、次の再評価を、治療中4乃至8週間置きに行い、その後は3ヶ月置きにする。治療は、数ヶ月又は数年、継続してもよいが、最低1ヶ月が、ヒトの治療にとって典型的な長さである。投与される作用薬の量の調節や、可能性としては投与時間の調節を、これらの再評価に基づいて行ってもよい。
【0063】
治療は、当該化合物の最適な用量よりも少ない少量の投薬量で開始してもよい。その後、最適な治療効果が得られるまで、該投薬量を少量ずつ、増加させていってもよい。
【0064】
本発明の高分子量ATIIIを、他の抗ウィルス薬と組み合わせて調合してもよい。例えば、当該の高分子量ATIIIを、高有効性抗レトロウィルス薬治療(HAART)養生法(ジドブジン、ザルシタビン、ジダノシン、スタブジン、ラミブジン、アバカビル、テノフォビル、ネビラピン、エファビレンツ、デラビルジン)などのカクテルを含む逆転写酵素阻害剤、及びプロテアーゼ阻害剤(サキナビル、リトナビル、インジナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、ロピナビル)、アデニンアラビノシド、アデニンアラビノシド5’-モノホスフェート、アシクロビル、ガンシクロビル、ファムシクロビル、ラミブジン、クレブジン、アフェドビルジピボキシル、エンテカビル、IFN-α-2b、IFN-α-2a、リンパ芽球性IFN、コンセンサス-IFN、IFN-β、IFN-γ、PEG化IFN-α-2a、コルチコステロイド、又はチモシンa1、IL-2、IL-12、リバビリン、シクロスポリン又は顆粒球マクロファージコロニ刺激因子と一緒に調合することができる。
【0065】
本発明の医薬化合物及び他の抗ウィルス薬を併用すると、個々の成分に必要な投薬量が減少するであろう。なぜなら、異なる成分の効果の開始及び持続時間が相補的になることがあるからである。このような併用療法においては、異なる活性作用薬を、一緒又は別々に、そして全日中で同時又は異なる時点で送達してもよい。
【0066】
例示
以上、本発明を概略的に解説したが、以下の実施例を参照されれば、より容易に理解されるであろう。但し、以下の実施例は、単に本発明の特定の局面及び実施態様の描写を目的として含まれたのであり、本発明を限定することは意図していない。
【0067】
実施例1: 高分子量ATIIIの調製
以下の実施例では、いくつかの高分子量ATIIIを調製するために用いられる方法を解説する。
1. 熱処理されたATIII(フォーム1)の調製
10mgのATIIIを、2mlの10mM Tris/HCl、0.5M クエン酸ナトリウム、pH7.4に溶解(又は希釈)し、60℃で24時間、大変優しく攪拌しながらインキュベートした。そのインキュベート物を0.02Mのリン酸ナトリウム、0.05MのNaCl、pH7.4に対して15KDaのメンブレン・サイズの透析メンブレンを用いて透析した。透析後のタンパク質を阻害検査で用いるか、又は、ヘパリン(下記参照)と一緒にインキュベートして、高分子量フォーム2を作製した。
【0068】
2. 熱処理されたATIII(フォーム2)のオリゴ糖活性化
ATIII(フォーム1)を、低分子量(MW)ヘパリン(シグマ社)の1:1混合液(w/w)と一緒に37℃で24乃至48時間、0.02Mのリン酸ナトリウム、0.05MのNaCl、pH7.4、中でインキュベートした。その後、この溶液を0.02Mのリン酸ナトリウム、0.05MのNaCl、pH7.4、で透析した。透析後のタンパク質を下記の阻害検査で用いて抗ウィルス活性を判定した。
【0069】
3. ATIII(フォーム3)のオリゴ糖活性化
ATIIIを、低分子量ヘパリン(シグマ社)の1:1混合液(w/w)と一緒に37℃で24乃至48時間、0.02Mのリン酸ナトリウム、0.05MのNaCl、pH7.4、中でインキュベートした。その後、この溶液を0.02Mのリン酸ナトリウム、0.05MのNaCl、pH7.4、で透析した。透析後のタンパク質を下記の阻害検査で用いて抗ウィルス活性を判定した。
【0070】
4. オリゴ糖活性化したATIII(フォーム4)の熱処理
フォーム3を10mMのTris/HCl、0.5M クエン酸ナトリウム、pH7.4で透析し、60℃で24時間、大変優しく攪拌しながらインキュベートした。その後、そのインキュベート物を0.02Mのリン酸ナトリウム、0.05MのNaCl、pH7.4に対して30-50kD以上のメンブレンを用いて透析した。透析後のタンパク質を下記の阻害検査で用いて抗ウィルス活性を判定した。
【0071】
実施例2: HIV-1阻害活性の評価
X4 HTLV-IIIB(以降X4 HIV;Chang
et al., NATURE, 363: 466-9 (1993))という、HIVの原型T親和性株(米国ヴァージニア州マナサス、アメリカン・タイプ・ティシュー・コレクション;ATCC番号CRL-8543)を用いて、野生型及び高分子量ATIIIがT親和性HIV感染に及ぼす効果を評価した。細胞培養マイクロプレート・ウェル、又は試験管の数(n)の50%に感染するであろう特定の懸濁液体積(例えば0.1ml)中のウィルスの量は、組織培養感染用量50[TCID50]と呼ばれる。TCID50は、プラーク形成によりウィルス力価を判定する(その結果PFU又はプラーク形成単位としての数値が出る)代わりに用いられている。ヒト白血球抗原タンパク質(HLA)B6、Bw62、及びCw3を発現するヒトTリンパ球芽状細胞(H9細胞)を、X4 HIVに、1ミリリットル当たり1×10-2TCID50のMOIで急性感染させた。感染したH9細胞を5×105個の細胞/mlになるようにR20細胞培地に再懸濁させた。この懸濁液のうちの2ミリリットルを24ウェル微量定量プレートの各ウェルにピペットで入れた。次に、これらの細胞を多様な形の野生型及び高分子量ATIIIの存在下又は非存在下で、最高12日間、培養した。3日毎に(3、6、9及び12日目)1mlの細胞上清を試験ウェルから取り出し、等容のR20細胞培地に取り替えた。コントロール・ウェルからも同様に試料採取したが、未処理のATIIIを含有する培地を入れた。
【0072】
HIVのウィルスコアタンパク質p24(gag)の濃度(Alliance(R) HIV-1 p24 ELISAキット、米国マサチューセッツ州ボストン、NEN(R)ライフ・サイエンス社)を、得られた各試料毎にそれぞれ0、3、6、9及び12日目に測定した。
【0073】
図4及び5に示された結果は、多様な形の高分子量ATIIIが最も強力なHIV-1阻害活性を有することを実証しているが、GTCバイオセラピューティックス社及びアベンティス社から得た未修飾のATIIIは、事実上何の抗ウィルス活性も示さなかった。
【0074】
実施例3:高分子量ATIIIのHPLC分析
【0075】
【0076】
【0077】
概要
この結果は、ATIIIの修飾の程度が、当該タンパク質を含有する重合体画分(RT>7.8)中のヘパリン蓄積と、主要なタンパク質画分(RT~7.0-7.1、280nmでのUV)のRTの上昇とに相関する以下の態様#3>#2>#5>#4の順に増加することを示している。開始ATIIIに比較したときの、ATIII結合体の主要な画分の分子量の相対的変化を、上記の表で報告する。グリコシル化ATIIIの分子量は ~54,000 Daである。非グリコシル化ATIII(アルファ及びベータ・アイソフォームの分子量は相応に47,800Da及び46,800Daである。)
【0078】
全てのATIII修飾は、TSK G2000カラムの排除体積である高分子量タンパク質集合体を相当量、含有していることが見出されたが、高分子量ポリマについてより良好な分解能を持つカラムで分析してもよい。
【0079】
本発明の実施にあたっては、そうでないと指示しない限り、当業者に公知の従来のウィルス学、タンパク質化学、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、微生物学、及び組換えDNAの従来技術を利用することになるであろう。このような技術は文献に十二分に説明されている。例えばClinical Virology, 2nd Ed., by Richman,
Whitley, Hayden (American Society for Microbiology Press: 2002), Molecular
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(Cold Spring Harbor Laboratory Press: 1989); DNA Cloning, Volumes I and II (D.
N. Glover ed., 1985); Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait eds., (1984) ;
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Feshney, Alan R. Liss, Inc., 1987); Immobilized Cells And Enzymes (IRL Press,
1986); B. Perbal, A Practical Guide To Molecular Cloning (1984) (1984); 論説、Methods In Enzymology (Academic Press, Inc., N. Y. ); Gene Transfer
Vector For Mammalian Cells (J. H. Miller and M. P. Calos eds., 1987, Cold
Spring Harbor Laboratory); 及びMethods In Enzymology, Vols. 154 and 155
(Wu et al. eds.)を参照されたい。ここで言及する全ての公開文献及び特許は、各個々の公開文献又は特許を具体的かつ個別に引用をもって援用すると示唆した場合と同様に、引用をもってそれらの全文をここに援用するものである。矛盾する場合、ここでのいずれかの定義を含む本出願を上位とする。
【0080】
均等物
本発明の具体的な実施態様を論じてきたが、上記の明細書は例示的なものであり、限定的なものではない。当業者であれば、この明細書及び下記の請求の範囲を検討されれば、本発明の数多くの変更が明白となるであろう。本発明の全範囲は、当該の請求の範囲を、それらの全範囲の均等物と併せて、また本明細書をこのような変更と併せて参照されることにより、決定されねばならない。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1(a)−(c)は、ヒトアンチトロンビンIII(hATIII)配列番号1番及び2番)の核酸及びアミノ酸配列を示す。
【図2】図2は、ヘパリン相互作用及びトロンビン阻害に関与する残基の位置の例を示す、アンチトロンビンIIIの概略図である(Pratt et al., Seminars in Hematology.28:3-9 (1991))。
【図3】図3は、ヘパリン結合部位を示す、ATIIIの結晶構造の概略図である(Skinner et a., J. Mol. Biol.266:601-609 (1998))。
【図4】図4(a)−(d)は、HIV-1 p24酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)で測定したときの多種の超ATIIIによるHIV-1の阻害を示す一連のグラフである。(a)フォーム1を60℃で24時間、処理する;(b)フォーム2は、低分子量ヘパリンで修飾されたフォーム1である。(c)フォーム3は、低分子量ヘパリンで修飾されたATIIIである。(d)フォーム4は、60℃で24時間、処理されたフォーム3である。
【図5】図5(a)は、ジェンザイム・トランスジェニック・コーポレーション・バイオセラピューティックス(GTCB)バイオセラピューティックスにより調製された修飾済み組換えATIIIによるHIV-1の阻害を、HIV-1 p24 ELISAで測定して示したグラフである。図5(b)は、カルバイオケム社、シグマ社、ロシュ社、フォーム3及びGTCBにより調製されたATIIIについて、HIV-1 ELISAで測定されたHIV-1の阻害を示す。
【図6】図6(a−g)は、多様に処理されたGTCB-ATIIIの、紫外線(UV)又は屈折率(RI)検出による高速液体クロマトグラフィ(HPLC)のクロマトグラムである。(a)GTC-ATIII(UV解析);(b)GTC-ATIII(RI解析);(c)ヘパリン処理されたGTC-ATIII(UV解析);(d)ヘパリン処理されたGTC-ATIII(RI解析);(e)ヘパリン+熱で処理されたGTC-ATIII(UV解析);(f)ヘパリン+熱で処理されたGTC-ATIII(RI解析);(g)ヘパリン+熱で処理されたGTC-ATIII(UV+RI解析)。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【背景技術】
【0001】
背景
レトロウィルス性疾患
ヒト・レトロウィルスであるヒト免疫不全ウィルス(HIV)は、身体の免疫系が破壊されて、被害者が肺炎などの日和見感染や、カポシ肉腫などの特定の癌に罹りやすくなる後天性免疫不全症候群(AIDS)という不治の疾患を引き起こす。AIDSは世界的な健康上の課題である。HIV/AIDSに対する国連のジョイント・プログラムでは、現在世界中で3400万人のHIV又はAIDS患者がいると推定している。そのような感染患者のうちおよそ2810万人は、貧困なサハラ砂漠以南アフリカに居住している。米国では、250人に1人がHIV又はAIDSに感染している。この流行病の初めからでは、AIDSにより推定42万5千人のアメリカ人を含むほぼ1900万人が世界中で死亡している。AIDSは、成人にとってマラリア及び結核に替わって世界で最も致命的な感染性疾患となり、世界中の主な死因の第4位である。
【0002】
いまだにAIDSの治療法はない。しかしながら、HIVの増殖及び体内免疫系の破壊を防ぐ様々な抗レトロウィルス薬がある。このようなクラスの薬物の一つが逆転写酵素と呼ばれるHIV酵素を攻撃する逆転写酵素阻害剤である。もう一つのクラスの薬物は、HIV酵素プロテアーゼを阻害するプロテアーゼ阻害剤である。これらのプロテアーゼ阻害剤は、1995年に初めて導入され、今や、HIV感染の治療に単独で、又は、他の抗レトロウィルス薬と組み合わせて、幅広く用いられている。今日では、米国でHIV感染の治療を受けている推定35万人の患者のうち、ほぼ21万5千人が、プロテアーゼ阻害剤のクラスの薬物のうちの少なくとも1つの薬物による治療を受けている。
【0003】
高有効性抗レトロウィルス薬治療(HAART)は、ウィルス複製を完全に抑止することができる三重薬物プロテアーゼ阻害剤含有養生法を要する、幅広く用いられている抗HIV療法である(Stephenson, JAMA, 277: 614-6 (1997))。しかしながら、体内に潜伏しているHIVの持続性は過小評価されている。その細胞自身のDNAの中にHIVのゲノムが組み込まれている、長命の休止期「記憶」Tリンパ球(CD4)がおそらくは数万乃至数百万個あり、HIVの貯蔵庫になっているという認識が今や、ある(Stephenson, JAMA, 279: 641-2 (1998))。潜在的感染細胞のこのようなプールは、一次感染の間に確立されている可能性が高い。
【0004】
このような併用療法はしばしば、部分的にしか有効でなく、また永続性のあるウィルス学的、免疫学的及び臨床上の利益を達成するのにどれくらいのウィルス抑制が必要であるかも不明である(Deeks, JAMA,
286: 224-6 (2001))。抗HIV薬は毒性が高く、心臓の損傷、腎不全、及び骨粗鬆症を含め、重篤な副作用を起こすことがある。プロテアーゼ阻害剤の長期使用は、体脂肪の異常な蓄積を伴う末梢性のるいそうと関連付けられている。プロテアーゼ阻害剤に関連する代謝障害の他の症状発現には、トリグリセリド及びコレステロールのレベル上昇、膵炎、アテローム性硬化症、及びインシュリン耐性がある(Carr et al., Lancet, 351: 1881-3 (1998))。現在の抗HIV療法の効験は、更に、養生法の複雑さ、薬物負荷、及び薬物対薬物の相互作用の制約を受ける。抗レトロウィルス薬の毒性効果とのコンプライアンスから、併用療法の有効期限の見通しをたてることは難しく、また、多くの患者は、HAARTによる長期治療に耐えることができない。併用療法の養生法が厳守されなかったことが原因で、HIVの薬物耐性株が出現してしまったため、他の抗ウィルス療法が緊急に必要とされている。他の薬物は、毎日の「薬物負荷」を実質的に減らし、現在のプロテアーゼ阻害剤使用に関連する複雑な食事上の指針を簡便化することでコンプライアンスを向上させるであろう。
【0005】
HIVウィルスは感染した個体の身体内に進入し、主に白血球内で生存及び複製する。従って、HIV感染の顕著な特徴は、免疫系のT−ヘルパ又はCD4細胞と呼ばれる細胞の減少である。HIVの細胞内への進入の分子機序には、ウィルス・エンベロープ糖タンパク質(env)と2つの標的細胞タンパク質CD4及びケモカイン受容体との間の特異的相互作用が関与している。HIVの細胞親和性は、特定のケモカイン受容体に対するenvの特異性により決定される(Steinberger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 97: 805-10 (2000))。T細胞系親和性(T親和性)ウィルス(X4ウィルス)は、進入にケモカイン受容体CXR4を要する。マクロファージ(M)親和性ウィルス(R5ウィルス)は、進入にCCR5を用いる(Berger et al., Nature, 391: 240 (1998))。T親和性は、AIDS痴呆症を含め、AIDSの多様な局面に関係しており、ウィルスの身体全体への散らばりや、ウィルスの身体内の貯蔵箇所の役目をする上で重要である可能性がある。
【0006】
更に、HIV患者の約40%が、C型肝炎ウィルス(HCV)にも同時感染している。更に、一種類のウィルス性肝炎に罹患した患者が後期の段階で異なる種類の肝炎ウィルスに感染した場合、重複感染も起きる。これらの条件下では、臨床上の症状及び疾患の経過は通常、単一のウィルス感染が発生した場合よりもより複雑、かつより重篤である。加えて、抗レトロウィルス治療(HAART)の結果としての肝損傷は大きな懸念であり、全てのクラスの抗レトロウィルス治療で起きることが示されている。以前の研究で、HCV又はHBV感染がHAART関連肝毒性の可能性を高める可能性があることが示されている。従って、HIV、HAV、HBV及びHCV感染のより安全な治療を定式化する必要がある。
【0007】
毎年約20万人のアメリカ人及び世界中では1000万人がA型肝炎に罹患している。B型肝炎は世界中で第9位の主要な死因であり、世界中で3000万人を越える慢性HBVキャリアがいる。それはアジアでは人口の15乃至20%に影響する。米国内では、それは僅かに0.1%即ち120万人にしか影響しない。B型肝炎は血液、精液、膣分泌液、乳汁、涙、唾液、及び開口創などのヒトの体液により伝染する。その伝染方法には、母子間、性的接触時、ディープ・キス、及び不適切な注射技術の使用時がある。HBVはHIVの100倍の感染性がある。
【0008】
懸念が高まっているのは、既にB型もしくはC型肝炎に慢性感染している人が、更にA型肝炎に接触したときに、死亡する危険性が高いことである。一種類の肝炎ウィルスに感染しても、別のものの感染に対しては免疫はできない。
【0009】
HBVはワクチンで防止することができる。しかしながら、今日では20億人を越える人が、彼らの生涯の何らかの時点でHBVに感染し、ほぼ3億5000万人がこのウィルスの慢性感染キャリアである。HBVは最もよくある人の病原体の一つであり、世界中で最も流行している慢性ウィルス感染である。毎年、推定140,000人のアメリカ人がB型肝炎に感染している。ほぼ100万人乃至125万人のアメリカ人が慢性感染しており、B型肝炎ウィルスのキャリアであると考えられる。HBVのキャリアは重篤な疾病や、肝硬変を原因とする死亡、そして毎年100万人を越えるキャリアの死因となっている疾患である原発性肝癌を発症するリスクが高い。加えて、これらのキャリアは世代間で感染を永続させる感染個体の貯蔵庫となっている。キャリアは感染性であり、彼/彼女が何の兆候又は症状を有していなくても、B型肝炎をうつすことができる。
【0010】
加えて、2000年9月の時点では、500万人のアメリカ人が(推定によっては1500万人に上るものもある)C型肝炎に感染しており、そして毎年、米国内で最高23万例の新たなC型感染がある。約8千人乃至1万人のアメリカ人が毎年HCVで死亡し、その犠牲者は来る10年又は20年間では3倍になると予測されている。世界中では2億を越える人がC型肝炎に慢性感染しており、この大きな感染者の貯蔵分は、潜在的な新たな感染源となる。HCV感染は先進国で最もよくある種類の慢性ウィルス性肝炎である。HCVに既に感染している人は異なる亜型のHCVに再度感染することがある。現在比較的に軽度の疾患症状のある無症候性の患者が末期の肝臓疾患に進行していくにつれ、来る10乃至20年の間に、B型及びC型慢性肝炎は保健システムにとって大きな重荷となるであろう。
【0011】
もう一つの一本鎖RNAウィルスはコロナウィルス科の属の一つであるコロナウィルスである。これらの大型の、エンベロープを持つ正鎖RNAウィルス(27-31 kb)はヒト及び家畜で優勢な病原体である。コロナウィルスは全てのRNAウィルスの中で最も大きなゲノムを有し、固有の機序で複製して高頻度で組換えを起こす。新たに見つかった重症急性呼吸器症候群(SARS)を起こすウィルスは、この科の一員である。それは2002年11月に現れ、2003年4月の時点で22カ国のうちの3,293人がこの感染が原因で病気となり、それを百人越える人が死亡している。
【0012】
新しい抗レトロウィルス薬が明らかに必要である。
【0013】
アンチトロンビンIII(ATIII)
セリンプロテアーゼ阻害剤(セルピン)は、ヒトを含む真核生物で見られる構造上関連するタンパク質のスーパーファミリを構成している(Wright, BIOASSAY, 18: 453-64 (1996);
Skinner et al., J. Mol. Biol. 283:9-14 (1998); Hungtington et al., J. Mol.
Biol. 293: 449-55
(1999))。このクラスには、ATIII、プロテインC阻害剤、活性化プロテインC、プラスミノーゲン・アクチベータ阻害剤、及びアルファ-1アンチトリプシンが含まれる。
【0014】
ATIIIは、血液凝固で明確な役割を持つ、血漿中に存在する糖タンパク質である。具体的には、ATIIIは、凝固カスケードの反応の強力な阻害剤であり、54k Da乃至65k Daの見かけの分子量を有する(Rosenburg and Damus, J. Biol. Chem. 248:
6490-505 (1973); Nordenman et al., Eur. J. Biochem., 78: 195-204 (1977);
Kurachi et al., Biochemistry 15: 373-7 (1976); Petersen et al., in The
Physiological Inhibitors of Coagulation and Fibrinolysis (Collen et al., eds)
Elsevier, Amsterdam, p. 48 (1979))。ATIIIという名称はそれがトロンビンにのみ作用することを暗に意味しているが、それは実際には、事実上全ての凝固酵素を少なくとも何らかの程度、阻害する働きをする。それが阻害する主な酵素はXa因子、Ixa因子及びトロンビン(IIa因子)である。またそれは、XIIa因子、Xia因子や、VIIa因子と組織因子との複合体に対しても阻害作用を有するが、VIIa因子及び活性化プロテインCに対しては有さない。ATIIIはまた、トリプシン、プラスミン及びカリクレインも阻害する(Charlotte and Church, Seminars in
Hematology 28:3-9 (1995))。複数の相互作用を通じて凝固を制限するというその能力から、それは主要な天然抗凝固タンパク質の一つとなっている。
【0015】
ATIIIはそれ自体では比較的に非効率的な阻害剤である。しかしながら、ATIIIは単一のテンプレート機序で活性化されたり、あるいは、ヘパリン結合により引き起こされるアロステリックなコンホメーション変化によって活性化され得る(Skinner et al., J. Mol. Biol. Chem., 283:
9-14 (1998): Hungtinton et al., J. Mol. Biol., 293: 449-55 (1999); Belar et
al., J. Mol. Biol. Chem., 275: 8733-41 (2000))。ATIIIがヘパリンに結合すると、阻害を起こす反応の速度が大きく加速される。この相互作用は、ヘパリン・ベースの抗凝固治療法の基礎である。
【0016】
標題「HIV感染の治療のためのセルピン薬及びその使用法」の米国で発行された特許出願20020127698は、アンチトロンビンIII(ATIII)などのセルピンによる、HIVの感染性を阻害する方法を開示している。この特許出願は、弛緩(R)、ストレス(S)、修飾(M)又は前潜伏型のATIIIの使用を教示している。修飾されたATIIIは、エラスターゼ、他のプロテアーゼ、化学処理又は酵素消化で処理されたものとして記載されている。
【0017】
国際特許出願WO00/52034の標題「セリン・プロテアーゼ活性の阻害剤、ウィルス感染の治療のための方法及び組成物や、米国5,532,215号も、ATIIIを含むセルピンの抗HIV薬としての使用を概略的に教示している。
【0018】
国際特許出願WO02/22150の標題「活性化アンチトロンビンIIIを含有する医薬」は、酸化、尿素及び塩酸グアニジンによる処理、タンパク質分解性の消化、60℃への加熱、pHの4.0への低下、又は、ATIIIペプチドに配列SEAAAS(配列番号22番)を添加することにより、活性化ATIII(「免疫防御活性化ATIII」又は「IDAAT」と呼ばれる)をin vitroで生じさせることができることを教示している。IDAATは、HIV、プラスモディウム-ファルシパルム(原語:Plasmodium falciparum)及びニューモシスティス-カリニ(原語:Pneumocystis carinii)のような寄生生物、及びスタフィロコッカス-アウレウス(原語:Staphylococcus aureus)のような細菌に対して用いることのできるATIIIの重合体であると報告されている。
【0019】
ATIII及び他のセルピンは抗HIV活性を有することが示唆されているが、ここで開示する研究結果は、純粋な血漿由来又は組換えATIIIは、HIVウィルス負荷を低下させる上で不活性であることを示している。
【0020】
発明の概要
本発明は、より高分子量を有するように処理されているATIIIは、感染細胞内のHIVウィルス負荷を有効に低下させるという驚くべき発見に基づくものである。この発見に基づき、本発明は、薬学的に許容可能な担体と、レトロウィルス感染を治療するために有効量の高分子量アンチトロンビンIII(ATIII)とを含む医薬組成物を特徴とする。
【0021】
好適な高分子量ATIII分子は60kDを超えるものであり、好ましくは約60キロダルトン(kD)乃至約550kDの範囲であるとよい。特に好適な高分子量ATIIIは熱処理されている、及び/又は、オリゴ糖に結び付けられている、ものである。好適なオリゴ糖には、単糖、多糖、ヘパリン(低分子量又は高分子量並びに未分画のもの)、ペクチン及びアミノ・グリコシド、がある。他の好適な実施態様では、当該のオリゴ糖自体をビオチンなどの低分子で誘導体化する。高分子量ATIIIの特に好適な医薬製剤は、制御放出調合物として調製されたものである。
【0022】
別の局面では、本発明は、本発明の医薬組成物の投与に基づいた、感染及び/又は炎症を治療する方法を特徴とする。好適な実施態様では、当該の感染は、細菌又はウィルスにより起こるものである。特に好適な実施態様では、前記ウィルスはレトロウィルスである。特に好適なレトロウィルスは、HIV、HAV、HBV、HCV、CMV及びSARSから成る群より選択されるものである。
【0023】
高分子量ATIIIは既存の抗ウィルス治療薬とは異なる機序を通じて作用すると思われるため、高分子量ATIIIの医薬組成物を、他の抗ウィルス薬と組み合わせて投与してもよい。好適な抗ウィルス薬には、カクテルを含む逆転写酵素阻害剤、例えば高有効性抗レトロウィルス薬治療(HAART)養生法(ジドブジン、ザルシタビン、ジダノシン、スタブジン、ラミブジン、アバカビル、テノフォビル、ネビラピン、エファビレンツ、デラビルジン)及びプロテアーゼ阻害剤(サキナビル、リトナビル、インジナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、ロピナビル)、アデニンアラビノシド、アデニンアラビノシド5’-モノホスフェート、アシクロビル、ガンシクロビル、ファムシクロビル、ラミブジン、クレブジン、アフェドビルジピボキシル、エンテカビル、IFN-α-2b、IFN-α-2a、リンホブラストイドIFN、コンセンサス-IFN、IFN-β、IFN-γ、PEG化IFN-α-2a、コルチコステロイド、又はチモシンa1、IL-2、IL-12、リバビリン、シクロスポリン又は顆粒球マクロファージコロニ刺激因子、がある。
【0024】
更に別の局面では、本発明は、本発明の高分子量ATIIIを対象に投与することにより、トロンビン活性化により引き起こされる、又は、トロンビン活性化に起因する、疾患に関して対象を治療する方法を特徴とする。トロンビン活性化により引き起こされる、又は、トロンビン活性化に起因する、疾患には、敗血症、外傷、急性呼吸器不全症候群、血栓症、卒中、再狭窄、経皮経管血管形成術における再閉塞及び再狭窄;外科術に関連する血栓症、虚血/再潅流損傷;癌又は外科患者の凝固異常、アンチトロンビンIII欠損、静脈及び動脈血栓症、汎発性血管内凝固、微小血管障害性溶血性貧血及び静脈閉塞症(VOD)、がある。
【0025】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び請求項から明白となるであろう。
【0026】
詳細な説明
1. 総論
本発明は、少なくとも部分的には、その分子量を高めるよう処理してあるアンチトロンビンIII(ATIII)(高分子量ATIII)が、HIV感染細胞内のウィルス負荷を効果的に低下させるという驚くべき発見に基づくものである。高分子量ATIIIの作用機序は精確には未知であるが、それは融合阻害剤及び/又は細胞内阻害剤として働くか、あるいは、シグナル伝達に何らかの態様で関与していると考えられる。
【0027】
2.高分子量ATIII
ATIII
本発明は、高分子量ATIIIを含む医薬組成物と、ウィルス性疾患を治療する際のその使用を特徴とする。ATIIIは、例えば、血漿のコーンの分画法により得られる画分IV-1もしくはIV、又は上清IもしくはII+IIIなどから得ることができる(Lebing WR et al., Vox Sang 67:117-24 (1994)
, Hoffman DL, Am. J. Med. 87:23S-26S (1989), Wickerhauser M. et al, Vox Sang
36: 281-93 (1979)。更にATIIIは市販のものを入手することもできる(アベンティス社、ジェンザイム・トランスジェニック・コーポレーション・バイオセラピューティックス社、バクスター・ヘルスケア社、カルバイオケム社、バイヤー社及びシグマ社)。
【0028】
代替的には、組換えATIIIを、例えばE. coli、細胞培養(EP-339919)、遺伝子操作(EP-90505)、トランスジェニック動物(Larrik and Thomas, Curr. Opin. Biotechnol. 12:41111-8
(2001), Edmunds et al., Blood 12:4561-71 (1998)、米国特許第6,441,145号及び第5,843,705号)等を用いて調製することができる。
【0029】
表1は、バリアント・ヌクレオチド配列、即ち、対立遺伝子バリアントなど、一つ以上のヌクレオチド置換、追加又は欠失の違いのある配列、を含む、多種の生物由来のATIIIの核酸及びアミノ酸配列を示す。哺乳動物種やその変種由来のATIIIを用いて、本発明の高分子量ATIIIを作製することができる。
【0030】
【表1】
【0031】
当業者であれば、天然の対立遺伝子のバリエーションのために、ある一つの種の個体間で、特定のタンパク質をコードする核酸の一つ以上のヌクレオチド(最高当該のヌクレオチドの約3から5%)にばらつきがある場合があることは理解されよう。このようなヌクレオチドのバリエーションや、コードされたポリペプチドは、いずれも、本発明の超ATIIIを調製するために用いることができる。例えば、ロイシンをイソロイシン又はバリンに、アスパラギン酸をグルタミン酸に、スレオニンをセリンに単独で置換したり、又はアミノ酸の構造上関連するアミノ酸との同様な置換(即ち保存的変異)を行っても、その結果できる分子の対生物活性には大きな影響はないだろうと予測するのは妥当である。保存的置換とは、側鎖で関連するアミノ酸ファミリ内で起きるものである。遺伝子にコードされたアミノ酸は4つのファミリに分類することができる:(1)酸性=アスパラギン酸、グルタミン酸;(2)塩基性=リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性=アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;及び(4)無電荷の極性=グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン。フェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシンは、ときにはまとめて芳香族アミノ酸と分類されることもある。同様な態様で、アミノ酸のレパートリーは、(1)酸性=アスパラギン酸、グルタミン酸;(2)塩基性=リジン、アルギニン ヒスチジン、(3)脂肪族=グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン;但しセリン及びスレオニンは選択に応じて別に脂肪族−ヒドロキシルに分類される;(4)芳香族=フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン;(5)アミド=アスパラギン、グルタミン;及び(6)硫黄を含有する=システイン及びメチオニンに分類することができる。(例えばBiochemistry, 2nd ed., Ed. by L. Stryer, W.
H. Freeman and Co., 1981を参照されたい)。
【0032】
更に本発明は、主題のATIIIのコンビナトリアル変異体や、切断変異体の組を作製する方法も考察するものであり、ウィルス感染を阻害する上で機能的な潜在的バリアント配列(例えばホモログ)を同定するために特に有用である。このようなコンビナトリアル・ライブラリをスクリーニングする目的は、例えば、選択的効力を持つATIIIホモログを作製するためなどである。この方法の代表的な実施態様では、ATIIIホモログの一集団のアミノ酸配列を、好ましくは可能な最も高いホモロジを促すようにアライメントする。このようなバリアントの集団には、例えば、一つ以上の種を由来とするホモログ、又は、同じ種ではあるが変異のために異なるようなホモログ、を含めることができる。アライメント後の配列の各位置に見られるアミノ酸を選択して、縮重組のコンビナトリアル配列を作製する。ある好適な実施態様では、それぞれが潜在的ATIII配列の少なくとも一部分を含むポリペプチドのライブラリをコードする遺伝子の縮重ライブラリを利用して、コンビナトリアル・ライブラリを作製する。例えば、合成オリゴヌクレオチドの混合物を酵素によりライゲートして、縮重組の潜在的ATIIIヌクレオチド配列が個々のポリペプチドとして、あるいは代替的には一組のより大きな融合タンパク質(例えばファージ・ディスプレイ用)として発現可能であるような遺伝子配列にすることができる。潜在的ホモログのライブラリを縮重オリゴヌクレオチド配列から作製することのできる数多くの方法がある。縮重遺伝子配列の化学合成は、自動DNA合成装置で行うことができ、次にその合成遺伝子を、発現に向けて適した遺伝子にライゲートすることができる。縮重組の遺伝子の目的は、一つの混合物で、所望の組の潜在的ATIII配列をコードする配列の全てを提供することである。縮重オリゴヌクレオチドの合成は当業で公知である(例えば、Narang, SA (1983) Tetrahedron 39:3; Itakura
et al., (1981) Recombinant DNA, Proc. 3rd Cleveland Sympos. Macromolecules,
ed. AG Walton, Amsterdam:
Elsevier pp273-289; Itakura et al., (1984) Annu. Rev.
Biochem. 53:323; Itakura et al.,
(1984) Science 198:1056; Ike et al., (1983) Nucleic Acid Res. 11:477を参照されたい)。このような技術は他のタンパク質の定方向進化にも用いることができる(例えばScott et al., (1990) Science 249:386-390;
Roberts et al., (1992) PNAS USA 89:2429-2433; Devlin et al., (1990) Science
249:404-406; Cwirla et al., (1990) PNAS USA 87: 6378-6382;や米国特許第5,223,409号、第5,198,346号及び第5,096,815号を参照されたい)。
【0033】
代替的には、他の形の変異誘発を利用してコンビナトリアル・ライブラリを作製することもできる。例えば、ATIIIホモログを作製し、例えばアラニン・スキャンニング変異誘発法等(Ruf et al., (1994) Biochemistry
33:1565-1572; Wang et al., (1994) J. Biol.
Chem. 269:3095-3099; Balint et al.,
(1993) Gene 137:109-118; Grodberg et
al., (1993) Eur. J.
Biochem. 218:597-601; Nagashima et
al., (1993) J. Biol. Chem. 268:2888-2892; Lowman et al., (1991) Biochemistry
30:10832-10838; 及びCunningham et a., (1998) Science 244:1081-1085)、リンカ・スキャンニング変異誘発法(Gustin et al., (1993) Virology 193:653-660; Brown et
al., (1992) Mol. Cell. Biol. 12:2644-2652; McKnight et al., (1982) Science
232:316);飽和変異誘発法(Meyers et al., (1986) Science 232:613);PCR変異誘発法(Leung et al., (1989) Method Cell Biol 1:11-19);又は化学的変異誘発法を含むランダム変異誘発法(Miller et al., (1992) A Short Course in
Bacterial Genetics, CSHL Press, Cold Spring Harbor, NY; 及びGreener
et al., (1994) Strategies in Mol Biol 7:32-34)を用いたスクリーニングによりライブラリから単離することができる。リンカ・スキャンニング変異誘発法は、特にコンビナトリアル環境下において、切断(対生物活性な)型のATIIIを同定するための魅力的な方法である。
【0034】
修飾後のATIIIの抗ウィルス活性を模倣することのできる、例えばペプチド又は非ペプチド作用薬など、ミメティックを生ずるように還元されたATIIIも、本発明の超ATIIIを作製するために用いることができる。実例を挙げると、当該のATIIIのうちで、抗ウィルス活性に関与している重要な残基を判定し、ウィルス感染を阻害する働きをするATIII由来ペプチドミメティックを作製するために用いることができる。当該のATIIIのうちでウィルス阻害に関与しているアミノ酸残基をマッピングするためにスキャンニング変異誘発法などを用いることで、ウィルス阻害に関与している残基を模倣するペプチドミメティック化合物を作製することができる。例えば、このような残基の加水分解不可能なペプチド類似体は、ベンゾジアゼピン(例えばFreidinger et al., in Peptides: Chemistry
and Biology, G. R. Marshall ed., ESCOM Publisher: Leiden, Netherlands, 1988を参照されたい)、アゼピン(例えばHuffman et al., in Peptides: Chemistry and Biology, G.
R. Marshall ed., ESCOM Publisher: Leiden, Netherlands, 1988を参照されたい)、置換ガンマラクタム環(Garvey et al., in Peptides: Chemistry and Biology, G.
R. Marshall ed., ESCOM Publisher: Leiden, Netherlands, 1988)、ケト-メチレンシュードペプチド(Ewenson et al., (1986) J. Med. Chem. 29:295; 及びEwenson
et al., in Peptides: Structure and Function (Proceedings of the 9th American
Peptide Symposium) Pierce Chemical Co. Rockford, IL, 1985)、b-ターン・ジペプチド・コア(Nagai et al., (1985) Tetrahedron Lett 26:647; 及びSeto
et al., (1986) J Chem Soc Perkin Trans 1:1231)、及びb-アミノアルコール(Gordon et a., (1985) Biochem Biophys Res Commun
126:419; 及びDann et al., (1986) Biochem Biophys Res Commun 134:71)を用いて作製することができる。
【0035】
ATIIIは、当業者に公知の多種の方法により実質的に精製できよう。実質的に純粋なタンパク質を、免疫学的検定法、クロマトグラフィ検定法、控訴検定法又は他の検定法を用いて、当該手法の各段階で精製を観察するような、タンパク質精製のための以下の公知の手法により得てもよい。タンパク質精製法は当業で公知であり、例えばDeutscher et al., Guide to Protein
Purification, Harcourt Brace Jovanovich, San Diego (1990)に解説されている。ATIIIはまた、例えば米国特許第3,842,061号及び米国特許第4,340,589号などに解説された方法により精製することもできる。
【0036】
ここで用いられる場合の用語「実質的に精製された」とは、天然でそれに伴う成分から分離されたATIIIを言う。好ましくは、ATIIIが、ある試料中の総物質(体積で、湿潤もしくは乾燥重量で、あるいは、モルパーセント又はモル画分で)中の少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%、そして最も好ましくは少なくとも約99%であるとよい。純度は、例えばポリペプチドの場合はカラム・クロマトグラフィ、ゲル電気泳動法又はHPLC分析でなど、いずれかの適した方法によって測定することができる。
【0037】
高分子量ATIII
ここで示すように、分子量が増加するような態様で処理されたATIIIを対象に投与すると、ウィルス感染細胞中のウィルス負荷が減少する。特に好適な高分子量ATIII分子は、ウィルス負荷を、天然ATIIIに比べて少なくとも1.5対数、より好ましくは少なくとも2、3、4又は5対数、より良好に減少させるものである。
【0038】
好適な高分子量ATIII分子又は分子の組合せは、約60kD乃至約550kDの範囲の重さのものである(天然ATIIIは58kDである)。特に好適な高分子量ATIIIは、少なくとも約60-70、70-80、80-90、90-100、100-110、110-120、130-140、140-150、150-160、160-170、170-180、180-190、190-200、200-210、210-220、220-230、230-240、240-250、250-260、260-270、270-280、280-290、290-300、300-310、310-320、320-330、330-340、340-350、350-360、360-370、370-380、380-390、390-400、400-410、410-420、420-430、430-440、440-450、450-460、460-470、470-480、480-490、490-500、500-510、510-520、520-530、530-540又は540-550の範囲の重さのものである。
【0039】
高分子量ATIIIは、例えば実施例1で示すように、熱処理及びヘパリンなどのオリゴ糖との結合などにより、調製することができる。熱処理には、60℃以上で少なくとも約30分の加熱、より好ましくは何時間もの加熱が含まれよう。熱処理されたATIIIの調製はLarsson et al., J. Biol. Chem.
276:11996-12002 (2001)に解説されている。
【0040】
ここで用いられる「オリゴ糖」とは、単糖、二糖、及び多糖(五糖、六糖、及び七糖を含む)、糖アルコール、及びアミノ糖を言う。単糖の例には、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、アラビノース、及びイノシトールがある。二糖の例にはサッカロース、ラクトース、マルトース、ペクチンがある。糖アルコールの例には、マンニトール、ソルビトール、及びキシリトールがある。アミノ糖の例には、アミノグリコシド及びヘパリン等のより複雑なオリゴ糖を形成することのできるビルディング・ブロックであるグルコサミン、ガラクトサミン、N-アセチル-D-グルコサミン及びN-アセチルガラクトサミンがある。好適なオリゴ糖はヘパリン(低分子量2-4kDa)及び高分子量(少なくとも12kDa)、ペクチン、五糖及びアミノグリコシドである。好適なオリゴ糖は、ATIIIに対する親和性を有するものである。例えば、ヘパリンは、ATIIIのHis-1、Ile-7、Arg24、Pro-41、Asn-45、Arg-47、Trp-49、His-65、Lys-107、Ser-112、Lys-114、Phe-121、Phe-122、Lys-125、Arg-129、Asn-135、Lys-136、Glu 414アミノ酸を含め、ATIIIと特定の部位で相互作用することが知られている(Pratt et al., Seminars in Hematology.
28:3-9 (1991), Skinner et al., J. Mol. Biol. 266:601-609 (1997)、Jairajpuri
et al., J. Biol. Chem. M212319200 (2003))。ここで用いられる場合のオリゴ糖は、例えばビオチン、アビジン又はストレプトアビジンなどの更なる低分子で誘導体化することができる。
【0041】
オリゴ糖は、熱処理されたATIIIに、37℃60℃で1−72時間、0.02Mのリン酸ナトリウム、0.05MのNaCl、pH7.4、などの緩衝液中でインキュベートすることにより、連結できよう。同様に、ATIIIにヘパリンなどのオリゴ糖を結合させるには、当業者に公知の標準的な合成有機化学法を用いても可能であろう(例えばMarch J. Advanced Organic Chemistry, John Wiley & Sons, Inc. (1992) )。高分子量ATIIIは、ATIIIを熱変性させた後、オリゴ糖を加えるか、又は、最初にATIIIをオリゴ糖で処理した後、実施例で示すように熱変性させることにより、作製することができる。
【0042】
高分子量ATIIIは、ATIII分子を、少なくとも1つの他のATIII分子に結合させて、二量体又は三量体などの多量体を作製することによっても、調製することができる。加えて、ATIIIの機能的フラグメントを他の機能的フラグメント又は完全長分子に結合させても、高分子量ATIIIを作製できよう。
【0043】
更なる高分子量ATIIIを、硫酸化分子との結合に基づいても調製することができる(Gunnarsson, GT and UR Desai, Bioorg Me Chem
Lett 13(4): 679-893 (2003))。
【0044】
高分子量ATIIIは、そのin vivoでの半減期を延ばす態様で調合することができる。例えば、高分子量ATIIIを、タンパク質又はポリマなど、血中循環を長くし、放出を遅くすることができる付加的な高分子量分子に付着させることができる。好ましくは、当該の制御放出調合物が、生分解性のアミド又はポリマ生成物から成るとよい。
【0045】
制御放出調合物には、インプラント及びマイクロ封入送達系を含めてもよい(それぞれWO 94/23697及び米国特許第5,102,872号を参照されたい)。高分子量ATIIをポリマに捕獲又は結合させ、患者に移植して徐放を容易にしてもよい。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸などの生分解性で生体適合性あるポリマを用いることができる。このような調合物の調製法は当業者に明白であろう。これらの技術の例は、引用をもって各々の内容をここに援用することとする米国特許第5,110,596号、第5,034,229号及び第5,057,318号に示されている。
【0046】
他の制御放出調合物には、経皮送達系が含まれよう。これらの例には、シリコーン・エラストマ・マトリックス中に均質に分散させた水混和性の溶媒に修飾ATIIIを飽和懸濁させたレザバを含有する分配制御された送達系であるマイクロ封入系が含まれよう。二番目の系は、マトリックス−拡散制御系である。三番目の、経皮薬物送達に最も広く用いられている系は、膜−透過制御系である。最近入手可能となった四番目の系は、勾配−荷電系である。更に、進歩した経皮用担体には、イオン泳動及び音波泳動系、熱硬化性ゲル、及びプロドラッグ(Ranade VV. (1991) J. Clin Pharmacol
31(5):401-418を参照されたい)などの系がある。これらの系では、吸収促進剤を用いて、修飾されたATIIIの皮膚の透過を促進してもよい。
【0047】
吸収促進剤は、具体的には、プロピレングリコール、へキシレングリコール、プロピレングリコールジペラルゴネート、グリセリルモノエチルエーテル、ジエチレングリコール、モノグリセリド、(8乃至10個の酸化エチレン単位の付いた)エトキシル化グリセリドのモノオレイン酸塩、アゾン(1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン)、2-(n-ノニル)-1,3-ジオキソラン、イソプロピルミリステート、オクチルミリステート、ドデシル-ミリステート、ミリスチルアルコール、ラウリルアルコール、ラウリン酸、乳酸ラウリル、テルピノール、1-メントール、d-リモネン、.ベータ.-シクロデキストリン及びその誘導体、又は、ポリソルベート、ソルビタンエステル、スクロースエステル、脂肪酸、胆汁酸塩などのサーファクタント、又は代替的には親油性及び/又は親水性及び/又は両親媒性生成物、例えばポリ-グリセロールエステル、N-メチルピロリドン、ポリグリコシル化グリセリド及び乳酸セチル、から選択してもよい。吸収促進剤は、好ましくは、当該組成物の重量の5乃至25%を成すとよい。吸収促進剤の更なる解説は米国特許第6,538,039号に見られる。
【0048】
活性検定法
ここで解説した通りの高分子量ATIIIを、数多くある市販の検定法のいずれかを用いて、抗ウィルス活性について検定してもよい。例えば、HIVウィルス負荷の低下能を、例えば実施例2で示すように、アライアンス(R)HIV-1 p24酵素結合免疫吸着検定法を用いて判定してもよい。他の実施態様では、当業者であれば、例えばRT-PCR(Amplicor HIV-1モニター;ロシュ・ダイアグノスティックス・システムズ社)、核酸ベースの増幅(HIV-1 RNA QT; オルガノン・テクニカ社)、核酸ハイブリダイゼーション及び分枝状DNAシグナル増幅(Quantiplex HIV-1 RNA; バイヤー・ヌクレイック・アシッド・ダイアグノスティックス社)、DNAハイブリダイゼーション及び比色検出法(Digene Assay: ダイジーン・ダイアグノスティックス社)、多重転写媒介型増幅系(ジェン-プローブ社)、及び核酸及び配列ベースの増幅検定法(ヌクリセンス社)などを用いて、ウィルスDNAの存在及び/又は相対量を検出することにより、修飾されたATIIIのHIV-1阻害活性を判定できよう。
【0049】
修飾されたATIIIによるA型肝炎の阻害を、例えば、IgMクラスのA型肝炎ウィルス抗体を検出する市販のラジオイムノアッセイ(RIA)又はELISA検定法、分子ハイブリダイゼーション及びPCR検出技術などを用いて特定してもよい。B型肝炎の阻害は、例えば液体ハイブリダイゼーション検査(Genostics検定法;イリノイ州シカゴ、アボット・ラボラトリーズ社)、分枝状DNA検定法(カリフォルニア州エメリービル、バイヤー社)、及びPCR検定法(Cobas Amplicor HBV モニタ 又はCobas-Am)。などにより、検定できよう。C型肝炎の阻害は、C型肝炎ウィルスに特異的なELISA検定法、標準化されたRT-PCR検定法によるRNA検出(Amplicor HCV 2.0; ロシュ・モラキュラー・システムズ社)、及び分枝状DNA検定法(Quantiplex HCV RNA 2.0; キロン・ダイアグノスティック・ラボラトリーズ社)(Richman, Whitley, Hayden (American Society
for Microbiology Press: 2002 Chapters 30, 32, 46, 52)によるClinical Virology, 2nd Ed)を用いて検定できよう。コロナウィルス(例えばSARS)の阻害は、市販のPCR検定法を用いて検定できよう。
【0050】
3. 医薬組成物及び治療上の使用
ここで示した対生物活性に基づき、有効量の高分子量ATIIIを含む医薬製剤を、(ヒト、及び、例えばウシ、ウマ、イヌ、ネコ、等の動物を含む)対象に、感染及び/又は炎症に関して前記対象を治療するために投与することができる。好適には、当該の感染は細菌又はウィルス・ベースのものであるとよい。特に好適なウィルス感染は、例えばHIV、HAV、HBV、HCV、及びSARSから成る群より選択されるウィルスなどにより引き起こされるレトロウィルス感染である。
【0051】
抗感染/抗炎症薬としての実用性に加え、本発明の医薬組成物を、トロンビン活性化を阻害する必要のある患者において、このような阻害をするために用いてもよい。患者におけるトロンビン活性化が関連する疾患には、敗血症、外傷、急性呼吸器不全症候群、血栓症、卒中、及び再狭窄がある。また、本医薬組成物を、経皮経管冠動脈形成[術における再閉塞及び再狭窄;外科術に関連する血栓症、虚血/再潅流損傷;癌又は外科患者の凝固異常などのトロンビン関連病理学的疾患のリスクのある患者を治療するために用いてもよい。更に、本医薬組成物を、例えば、静脈及び動脈血栓症のハイリスクにつながる先天性アンチトロンビンIII欠損、汎発性血管内凝固につながる後天性アンチトロンビンIII欠損、内皮損傷を原因とする微小血管障害性溶血性貧血(即ち溶血尿毒症症候群)及び静脈閉塞症(VOD)などの治療に抗凝固剤として用いてもよい。
【0052】
高分子量ATIIIの医薬組成物は、従来の態様で、一つ以上の生理学的に許容可能な担体又は医薬品添加物を用いて調合できよう。このように、高分子量ATIIIを、例えば注射、(口又は鼻を通じた)吸入又は通気法又は経口、バッカル、非経口もしくは直腸投与などによる投与に向けて調合してよい。
【0053】
このような治療の場合、本発明の化合物を、全身及び局所もしくは局部投与を含む、多種の投与負荷に向けて調合することができる。技術及び処方は、概略的には、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Meade
Publishing Co., Easton, P.A.に見られよう。全身投与の場合、筋肉内、静脈内、腹腔内、及び皮下を含む注射が好ましい。注射の場合、本発明の化合物を、液体の溶液、好ましくは、ハンクス溶液又はリンガー溶液など、生理学的に適合性ある緩衝液中に入れて調合することができる。加えて、当該の化合物を固体形で調合し、使用直前に再溶解又は懸濁させてもよい。凍結乾燥型も包含される。
【0054】
吸入による投与の場合、本発明に従って用いる化合物を、適宜、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の適した気体などの適した推進剤を用いて、加圧式パック又はネブライザからのエーロゾル噴霧の形で送達する。加圧式エーロゾルの場合、定量を送達する弁を提供することにより、投薬量単位を決定してもよい。当該化合物と、ラクトース又はでんぷんなどの適した粉末基剤との混合粉末を含有する、吸入器又は通気器で用いるためのゼラチンなどのカプセル及びカートリッジを調合してもよい。
【0055】
高分子量ATIIIを、例えば大量注射又は継続的輸注など、注射による非経口投与に向けて調合してもよい。注射用の調合物は、例えばアンプル又は多人数用容器などの中に、保存剤を加えた単位剤形として提供してもよい。調合物は、例えば油性又は水性の賦形剤に入れた懸濁液、溶液又は乳濁液などの形を採っていてもよく、また、懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤などの調合用作用薬を含有していてもよい。代替的には、当該の活性成分は、無菌の無発熱源水などの適した賦形剤による使用前の構成に向けた粉末型であってもよい。
【0056】
また高分子量ATIIIを、例えばココアバター又は他のグリセリドなどの従来の座薬用基剤を含有するなど、座薬又は停留浣腸剤など、直腸用組成物に調合してもよい。
【0057】
前述した調合物に加え、当該の化合物をデポー製剤として調合してもよい。このような長時間作用性調合物は、移植(例えば皮下又は筋肉内)又は筋肉内注射により、投与できよう。従って、例えば、当該の化合物を、適したポリマー製又は疎水性の材料(例えば許容可能な油脂に入れた乳濁液として)又はイオン交換樹脂と一緒に調合したり、あるいは、節約可溶性塩などの節約可溶性誘導体として、調合してもよい。他の適した送達系には、長期間にわたる薬物の局所的非侵襲的送達の可能性を提供するマイクロスフィアがある。全身投与は、また、経粘膜又は経皮手段によってもよい。経粘膜又は経皮投与の場合、透過させようとする障壁に適した浸透剤を調合物中に用いる。このような浸透剤は当業で広く公知であり、その中には、例えば、経粘膜投与用には胆汁酸塩及びフシジン酸誘導体がある。加えて、界面活性剤を用いて透過を促してもよい。経粘膜投与は、鼻孔用スプレーを通じたり、あるいは座薬を用いることで行えよう。
【0058】
高分子量ATIIIと薬学的に許容可能な添加剤との混合物は、好ましくは、凍結乾燥された製品として調製され、使用時に溶解させるとよい。このような製剤は、約1-100単位/mlの高分子量ATIIIを、注射用の蒸留水又は無菌の精製水に溶解させることにより、それを含有する溶液に調製することができる。より好ましくは、それを、生理学的に等張の塩濃度及び生理学的に好ましいpH値(pH6−8)を有するように調節するとよい。
【0059】
ATIIIは、~100U/kg/日(Warren et al., JAMA
286: 1869-78 (2001))の用量で投与された場合によく耐性があることが示されており、18.6時間での全体的な消失半減期が実証されている(Illias et al. Intensive Care Medicine 26:
7104-7115 (2000))。該用量は、症状、体重、性別、動物種等に応じて適宜決定されるが、それは一般に、ヒトの成人の場合、一日に1回から数回の用量で投与される1-1,000単位/体重1kg/日、好ましくは10-500単位/体重1kg/日のATIIIである。例えば静脈内投与の場合、該用量は、好ましくは10-100単位/体重1kg/日であるとよい。
【0060】
更に、当業者であれば理解されるように、本発明のいずれかの作用薬、化合物、薬物等の投薬量は、患者の症状、年齢及び体重、治療又は防止しようとする異常の性質及び重篤度、投与経路、及び補助剤の形に応じて様々であろう。当該の調合物はいずれも、例えば一回の用量又は分割された用量などで、適した用量にして投与してもよい。単独の、又は、本発明のいずれか他の化合物と一緒にした場合、あるいは、治療しようとする特定の異常、疾患又は状態にとって有用と思われるいずれかの化合物と組み合わせた場合の本発明の化合物の投薬量は、この説明の欄及びこの教示事項に基づいて、当業者に公知の技術により、容易に判定できよう。更に、本発明は、二種類以上の当該の化合物や他の治療的作用薬の混合物も提供するものである。
【0061】
ある患者において最も有効な治療となるであろう投与の精確な時間や特定の化合物の量は、特定の化合物の活性、薬物動態、及び生物学的利用能、患者の生理学的状態(年齢、性別、疾患の種類及び段階、全身の肉体条件、医薬の特定の投薬量及び種類に対する応答性を含む)、投与経路等に応じるであろう。ここで提供する指針を、例えば投与の最適な時間及び/又は量を決定するなど、治療を最適するために用いてよく、それには、対象を観察し、投薬量及び/又はタイミングを調節することから成る慣例的な実験しか要さないであろう。
【0062】
対象を治療中、24時間の間、所定の時点における一つ以上の関連する指数を測定することにより、患者の健康を観察してもよい。補助剤、投与の量、時間及び処方を含む治療法を、このような観察の結果に従って最適化してもよい。同じパラメータを測定することで、患者を定期的に再評価して進歩の程度を判定してもよく、初回のこのような再評価を、典型的には、治療の開始から4週間の終わりの時点で行い、次の再評価を、治療中4乃至8週間置きに行い、その後は3ヶ月置きにする。治療は、数ヶ月又は数年、継続してもよいが、最低1ヶ月が、ヒトの治療にとって典型的な長さである。投与される作用薬の量の調節や、可能性としては投与時間の調節を、これらの再評価に基づいて行ってもよい。
【0063】
治療は、当該化合物の最適な用量よりも少ない少量の投薬量で開始してもよい。その後、最適な治療効果が得られるまで、該投薬量を少量ずつ、増加させていってもよい。
【0064】
本発明の高分子量ATIIIを、他の抗ウィルス薬と組み合わせて調合してもよい。例えば、当該の高分子量ATIIIを、高有効性抗レトロウィルス薬治療(HAART)養生法(ジドブジン、ザルシタビン、ジダノシン、スタブジン、ラミブジン、アバカビル、テノフォビル、ネビラピン、エファビレンツ、デラビルジン)などのカクテルを含む逆転写酵素阻害剤、及びプロテアーゼ阻害剤(サキナビル、リトナビル、インジナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、ロピナビル)、アデニンアラビノシド、アデニンアラビノシド5’-モノホスフェート、アシクロビル、ガンシクロビル、ファムシクロビル、ラミブジン、クレブジン、アフェドビルジピボキシル、エンテカビル、IFN-α-2b、IFN-α-2a、リンパ芽球性IFN、コンセンサス-IFN、IFN-β、IFN-γ、PEG化IFN-α-2a、コルチコステロイド、又はチモシンa1、IL-2、IL-12、リバビリン、シクロスポリン又は顆粒球マクロファージコロニ刺激因子と一緒に調合することができる。
【0065】
本発明の医薬化合物及び他の抗ウィルス薬を併用すると、個々の成分に必要な投薬量が減少するであろう。なぜなら、異なる成分の効果の開始及び持続時間が相補的になることがあるからである。このような併用療法においては、異なる活性作用薬を、一緒又は別々に、そして全日中で同時又は異なる時点で送達してもよい。
【0066】
例示
以上、本発明を概略的に解説したが、以下の実施例を参照されれば、より容易に理解されるであろう。但し、以下の実施例は、単に本発明の特定の局面及び実施態様の描写を目的として含まれたのであり、本発明を限定することは意図していない。
【0067】
実施例1: 高分子量ATIIIの調製
以下の実施例では、いくつかの高分子量ATIIIを調製するために用いられる方法を解説する。
1. 熱処理されたATIII(フォーム1)の調製
10mgのATIIIを、2mlの10mM Tris/HCl、0.5M クエン酸ナトリウム、pH7.4に溶解(又は希釈)し、60℃で24時間、大変優しく攪拌しながらインキュベートした。そのインキュベート物を0.02Mのリン酸ナトリウム、0.05MのNaCl、pH7.4に対して15KDaのメンブレン・サイズの透析メンブレンを用いて透析した。透析後のタンパク質を阻害検査で用いるか、又は、ヘパリン(下記参照)と一緒にインキュベートして、高分子量フォーム2を作製した。
【0068】
2. 熱処理されたATIII(フォーム2)のオリゴ糖活性化
ATIII(フォーム1)を、低分子量(MW)ヘパリン(シグマ社)の1:1混合液(w/w)と一緒に37℃で24乃至48時間、0.02Mのリン酸ナトリウム、0.05MのNaCl、pH7.4、中でインキュベートした。その後、この溶液を0.02Mのリン酸ナトリウム、0.05MのNaCl、pH7.4、で透析した。透析後のタンパク質を下記の阻害検査で用いて抗ウィルス活性を判定した。
【0069】
3. ATIII(フォーム3)のオリゴ糖活性化
ATIIIを、低分子量ヘパリン(シグマ社)の1:1混合液(w/w)と一緒に37℃で24乃至48時間、0.02Mのリン酸ナトリウム、0.05MのNaCl、pH7.4、中でインキュベートした。その後、この溶液を0.02Mのリン酸ナトリウム、0.05MのNaCl、pH7.4、で透析した。透析後のタンパク質を下記の阻害検査で用いて抗ウィルス活性を判定した。
【0070】
4. オリゴ糖活性化したATIII(フォーム4)の熱処理
フォーム3を10mMのTris/HCl、0.5M クエン酸ナトリウム、pH7.4で透析し、60℃で24時間、大変優しく攪拌しながらインキュベートした。その後、そのインキュベート物を0.02Mのリン酸ナトリウム、0.05MのNaCl、pH7.4に対して30-50kD以上のメンブレンを用いて透析した。透析後のタンパク質を下記の阻害検査で用いて抗ウィルス活性を判定した。
【0071】
実施例2: HIV-1阻害活性の評価
X4 HTLV-IIIB(以降X4 HIV;Chang
et al., NATURE, 363: 466-9 (1993))という、HIVの原型T親和性株(米国ヴァージニア州マナサス、アメリカン・タイプ・ティシュー・コレクション;ATCC番号CRL-8543)を用いて、野生型及び高分子量ATIIIがT親和性HIV感染に及ぼす効果を評価した。細胞培養マイクロプレート・ウェル、又は試験管の数(n)の50%に感染するであろう特定の懸濁液体積(例えば0.1ml)中のウィルスの量は、組織培養感染用量50[TCID50]と呼ばれる。TCID50は、プラーク形成によりウィルス力価を判定する(その結果PFU又はプラーク形成単位としての数値が出る)代わりに用いられている。ヒト白血球抗原タンパク質(HLA)B6、Bw62、及びCw3を発現するヒトTリンパ球芽状細胞(H9細胞)を、X4 HIVに、1ミリリットル当たり1×10-2TCID50のMOIで急性感染させた。感染したH9細胞を5×105個の細胞/mlになるようにR20細胞培地に再懸濁させた。この懸濁液のうちの2ミリリットルを24ウェル微量定量プレートの各ウェルにピペットで入れた。次に、これらの細胞を多様な形の野生型及び高分子量ATIIIの存在下又は非存在下で、最高12日間、培養した。3日毎に(3、6、9及び12日目)1mlの細胞上清を試験ウェルから取り出し、等容のR20細胞培地に取り替えた。コントロール・ウェルからも同様に試料採取したが、未処理のATIIIを含有する培地を入れた。
【0072】
HIVのウィルスコアタンパク質p24(gag)の濃度(Alliance(R) HIV-1 p24 ELISAキット、米国マサチューセッツ州ボストン、NEN(R)ライフ・サイエンス社)を、得られた各試料毎にそれぞれ0、3、6、9及び12日目に測定した。
【0073】
図4及び5に示された結果は、多様な形の高分子量ATIIIが最も強力なHIV-1阻害活性を有することを実証しているが、GTCバイオセラピューティックス社及びアベンティス社から得た未修飾のATIIIは、事実上何の抗ウィルス活性も示さなかった。
【0074】
実施例3:高分子量ATIIIのHPLC分析
【0075】
【0076】
【0077】
概要
この結果は、ATIIIの修飾の程度が、当該タンパク質を含有する重合体画分(RT>7.8)中のヘパリン蓄積と、主要なタンパク質画分(RT~7.0-7.1、280nmでのUV)のRTの上昇とに相関する以下の態様#3>#2>#5>#4の順に増加することを示している。開始ATIIIに比較したときの、ATIII結合体の主要な画分の分子量の相対的変化を、上記の表で報告する。グリコシル化ATIIIの分子量は ~54,000 Daである。非グリコシル化ATIII(アルファ及びベータ・アイソフォームの分子量は相応に47,800Da及び46,800Daである。)
【0078】
全てのATIII修飾は、TSK G2000カラムの排除体積である高分子量タンパク質集合体を相当量、含有していることが見出されたが、高分子量ポリマについてより良好な分解能を持つカラムで分析してもよい。
【0079】
本発明の実施にあたっては、そうでないと指示しない限り、当業者に公知の従来のウィルス学、タンパク質化学、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、微生物学、及び組換えDNAの従来技術を利用することになるであろう。このような技術は文献に十二分に説明されている。例えばClinical Virology, 2nd Ed., by Richman,
Whitley, Hayden (American Society for Microbiology Press: 2002), Molecular
Cloning A Laboratory Manual, 2nd Ed., ed. by Sambrook, Fritsch and Maniatis
(Cold Spring Harbor Laboratory Press: 1989); DNA Cloning, Volumes I and II (D.
N. Glover ed., 1985); Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait eds., (1984) ;
Mullis et al. 米国特許第4,683,195号;Nucleic Acid Hybridization
(B. D. Hames & S. J. Higgins eds. 1984); Transcription And Translation (B.
D. Hames & S. J. Higgins eds. 1984); Culture of Animal Cells (R. I.
Feshney, Alan R. Liss, Inc., 1987); Immobilized Cells And Enzymes (IRL Press,
1986); B. Perbal, A Practical Guide To Molecular Cloning (1984) (1984); 論説、Methods In Enzymology (Academic Press, Inc., N. Y. ); Gene Transfer
Vector For Mammalian Cells (J. H. Miller and M. P. Calos eds., 1987, Cold
Spring Harbor Laboratory); 及びMethods In Enzymology, Vols. 154 and 155
(Wu et al. eds.)を参照されたい。ここで言及する全ての公開文献及び特許は、各個々の公開文献又は特許を具体的かつ個別に引用をもって援用すると示唆した場合と同様に、引用をもってそれらの全文をここに援用するものである。矛盾する場合、ここでのいずれかの定義を含む本出願を上位とする。
【0080】
均等物
本発明の具体的な実施態様を論じてきたが、上記の明細書は例示的なものであり、限定的なものではない。当業者であれば、この明細書及び下記の請求の範囲を検討されれば、本発明の数多くの変更が明白となるであろう。本発明の全範囲は、当該の請求の範囲を、それらの全範囲の均等物と併せて、また本明細書をこのような変更と併せて参照されることにより、決定されねばならない。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1(a)−(c)は、ヒトアンチトロンビンIII(hATIII)配列番号1番及び2番)の核酸及びアミノ酸配列を示す。
【図2】図2は、ヘパリン相互作用及びトロンビン阻害に関与する残基の位置の例を示す、アンチトロンビンIIIの概略図である(Pratt et al., Seminars in Hematology.28:3-9 (1991))。
【図3】図3は、ヘパリン結合部位を示す、ATIIIの結晶構造の概略図である(Skinner et a., J. Mol. Biol.266:601-609 (1998))。
【図4】図4(a)−(d)は、HIV-1 p24酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)で測定したときの多種の超ATIIIによるHIV-1の阻害を示す一連のグラフである。(a)フォーム1を60℃で24時間、処理する;(b)フォーム2は、低分子量ヘパリンで修飾されたフォーム1である。(c)フォーム3は、低分子量ヘパリンで修飾されたATIIIである。(d)フォーム4は、60℃で24時間、処理されたフォーム3である。
【図5】図5(a)は、ジェンザイム・トランスジェニック・コーポレーション・バイオセラピューティックス(GTCB)バイオセラピューティックスにより調製された修飾済み組換えATIIIによるHIV-1の阻害を、HIV-1 p24 ELISAで測定して示したグラフである。図5(b)は、カルバイオケム社、シグマ社、ロシュ社、フォーム3及びGTCBにより調製されたATIIIについて、HIV-1 ELISAで測定されたHIV-1の阻害を示す。
【図6】図6(a−g)は、多様に処理されたGTCB-ATIIIの、紫外線(UV)又は屈折率(RI)検出による高速液体クロマトグラフィ(HPLC)のクロマトグラムである。(a)GTC-ATIII(UV解析);(b)GTC-ATIII(RI解析);(c)ヘパリン処理されたGTC-ATIII(UV解析);(d)ヘパリン処理されたGTC-ATIII(RI解析);(e)ヘパリン+熱で処理されたGTC-ATIII(UV解析);(f)ヘパリン+熱で処理されたGTC-ATIII(RI解析);(g)ヘパリン+熱で処理されたGTC-ATIII(UV+RI解析)。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的に許容可能な担体と、60乃至550kDの範囲の分子量及びウィルス感染細胞における負荷を低下させる能力を有する有効量のアンチトロンビンIII(ATIII)とを含む医薬組成物。
【請求項2】
前記ATIIIが熱処理されており、オリゴ糖により修飾されている、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記熱処理が少なくとも60℃以上で少なくとも30分間である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記オリゴ糖が単糖である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記オリゴ糖が多糖である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記オリゴ糖が低分子量ヘパリンである、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記オリゴ糖が高分子量ヘパリンである、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記オリゴ糖がペクチンである、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記オリゴ糖がアミノグリコシドである、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記オリゴ糖がビオチンで誘導体化される、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項11】
ATIII多量体である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
硫酸化した分子で修飾される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記レトロウィルス感染がA型肝炎ウィルス(HAV)感染である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記レトロウィルス感染がB型肝炎ウィルス(HBV)感染である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記レトロウィルス感染がC型肝炎ウィルス(HCV)感染である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記レトロウィルス感染がヒト免疫不全ウィルス(HIV)感染である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記レトロウィルス感染がコロナウィルス感染である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記高分子量ATIIIが二量体である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項19】
制御放出調合物内にある、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記制御放出調合物が生分解性ポリマを含む、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
請求項1に記載の医薬組成物を治療上有効量、対象に投与するステップを含む、対象においてHIV感染を治療する方法。
【請求項22】
前記医薬組成物が1回の単位用量当たり10乃至250mgsの範囲内である、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記医薬組成物が患者に1日当たり16乃至17回、投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記投与が1週間に1回、行われる、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記投与が1週間に少なくとも2回、行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
請求項1に記載の前記医薬組成物が、別の抗ウィルス薬と併用される、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記別の抗ウィルス薬が高有効性抗レトロウィルス薬治療(HAART)作用薬である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
請求項1に記載の医薬組成物を治療上有効量、A型肝炎ウィルスに感染した対象に投与するステップを含む、対象におけるA型肝炎ウィルス感染を治療する方法。
【請求項29】
請求項1に記載の前記医薬組成物が、抗ウィルス薬と併用される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
請求項1に記載の医薬組成物を治療上有効量、B型肝炎ウィルスに感染した対象に投与するステップを含む、対象におけるB型肝炎ウィルス感染を治療する方法。
【請求項31】
請求項1に記載の前記医薬組成物が、抗ウィルス薬と併用される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
請求項1に記載の前記医薬組成物が、インターフェロン又はインターフェロン由来薬と併用される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
請求項1に記載の医薬組成物を治療上有効量、C型肝炎ウィルスに感染した対象に投与するステップを含む、対象におけるC型肝炎ウィルス感染を治療する方法。
【請求項34】
請求項1に記載の前記医薬組成物が、抗ウィルス薬と併用される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
請求項1に記載の前記医薬組成物が、インターフェロン又はインターフェロン由来薬と併用される、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
請求項16に記載の医薬組成物を治療上有効量、対象に投与するステップを含む、対象におけるHIV感染を治療する方法。
【請求項37】
請求項16に記載の前記医薬組成物が、抗ウィルス薬と併用される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記抗ウィルス薬が、高有効性抗レトロウィルス薬治療(HAART)作用薬である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
請求項16に記載の医薬組成物を治療上有効量、対象に投与するステップを含む、対象におけるA型肝炎ウィルス感染を治療する方法。
【請求項40】
請求項16に記載の前記医薬組成物が、抗ウィルス薬と併用される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
請求項16に記載の医薬組成物を治療上有効量、対象に投与するステップを含む、対象におけるB型肝炎ウィルス感染を治療する方法。
【請求項42】
請求項16に記載の前記医薬組成物が、抗ウィルス薬と併用される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記抗ウィルス薬がインターフェロン又はインターフェロン由来薬である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
請求項16に記載の医薬組成物を治療上有効量、C型肝炎ウィルスに感染した対象に投与するステップを含む、対象におけるC型肝炎ウィルス感染を治療する方法。
【請求項45】
請求項16に記載の前記医薬組成物が、抗ウィルス薬と併用される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記抗ウィルス薬がインターフェロン又はインターフェロン由来薬である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
一つ以上の容器と、請求項1に記載の医薬組成物とを含む、キット。
【請求項48】
一つ以上の容器と、請求項16に記載の医薬組成物とを含む、キット。
【請求項49】
薬学的に許容可能な担体と、60乃至550kDの範囲の分子量を有するATIIIとを、トロンビン活性化により引き起こされる、又は、トロンビン活性化に起因する、疾患又は状態のある対象を治療するために有効な量、含む医薬組成物。
【請求項50】
前記疾患又は状態が、敗血症、外傷、急性呼吸器不全症候群、血栓症、卒中、再狭窄、経皮経管血管形成術における再閉塞及び再狭窄;外科術に関連する血栓症、虚血/再潅流損傷;癌又は外科患者の凝固異常、アンチトロンビンIII欠損、静脈及び動脈血栓症、汎発性血管内凝固、微小血管障害性溶血性貧血及び静脈閉塞症(VOD)から成る群より選択される、請求項49に記載の医薬組成物。
【請求項51】
請求項49に記載の医薬組成物を対象に投与するステップを含む、対象におけるトロンビン活性化により引き起こされる、又は、トロンビン活性化に起因する、疾患又は状態を治療する方法。
【請求項1】
薬学的に許容可能な担体と、60乃至550kDの範囲の分子量及びウィルス感染細胞における負荷を低下させる能力を有する有効量のアンチトロンビンIII(ATIII)とを含む医薬組成物。
【請求項2】
前記ATIIIが熱処理されており、オリゴ糖により修飾されている、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記熱処理が少なくとも60℃以上で少なくとも30分間である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記オリゴ糖が単糖である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記オリゴ糖が多糖である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記オリゴ糖が低分子量ヘパリンである、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記オリゴ糖が高分子量ヘパリンである、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記オリゴ糖がペクチンである、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記オリゴ糖がアミノグリコシドである、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記オリゴ糖がビオチンで誘導体化される、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項11】
ATIII多量体である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
硫酸化した分子で修飾される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記レトロウィルス感染がA型肝炎ウィルス(HAV)感染である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記レトロウィルス感染がB型肝炎ウィルス(HBV)感染である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記レトロウィルス感染がC型肝炎ウィルス(HCV)感染である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記レトロウィルス感染がヒト免疫不全ウィルス(HIV)感染である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記レトロウィルス感染がコロナウィルス感染である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記高分子量ATIIIが二量体である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項19】
制御放出調合物内にある、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記制御放出調合物が生分解性ポリマを含む、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
請求項1に記載の医薬組成物を治療上有効量、対象に投与するステップを含む、対象においてHIV感染を治療する方法。
【請求項22】
前記医薬組成物が1回の単位用量当たり10乃至250mgsの範囲内である、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記医薬組成物が患者に1日当たり16乃至17回、投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記投与が1週間に1回、行われる、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記投与が1週間に少なくとも2回、行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
請求項1に記載の前記医薬組成物が、別の抗ウィルス薬と併用される、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記別の抗ウィルス薬が高有効性抗レトロウィルス薬治療(HAART)作用薬である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
請求項1に記載の医薬組成物を治療上有効量、A型肝炎ウィルスに感染した対象に投与するステップを含む、対象におけるA型肝炎ウィルス感染を治療する方法。
【請求項29】
請求項1に記載の前記医薬組成物が、抗ウィルス薬と併用される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
請求項1に記載の医薬組成物を治療上有効量、B型肝炎ウィルスに感染した対象に投与するステップを含む、対象におけるB型肝炎ウィルス感染を治療する方法。
【請求項31】
請求項1に記載の前記医薬組成物が、抗ウィルス薬と併用される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
請求項1に記載の前記医薬組成物が、インターフェロン又はインターフェロン由来薬と併用される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
請求項1に記載の医薬組成物を治療上有効量、C型肝炎ウィルスに感染した対象に投与するステップを含む、対象におけるC型肝炎ウィルス感染を治療する方法。
【請求項34】
請求項1に記載の前記医薬組成物が、抗ウィルス薬と併用される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
請求項1に記載の前記医薬組成物が、インターフェロン又はインターフェロン由来薬と併用される、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
請求項16に記載の医薬組成物を治療上有効量、対象に投与するステップを含む、対象におけるHIV感染を治療する方法。
【請求項37】
請求項16に記載の前記医薬組成物が、抗ウィルス薬と併用される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記抗ウィルス薬が、高有効性抗レトロウィルス薬治療(HAART)作用薬である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
請求項16に記載の医薬組成物を治療上有効量、対象に投与するステップを含む、対象におけるA型肝炎ウィルス感染を治療する方法。
【請求項40】
請求項16に記載の前記医薬組成物が、抗ウィルス薬と併用される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
請求項16に記載の医薬組成物を治療上有効量、対象に投与するステップを含む、対象におけるB型肝炎ウィルス感染を治療する方法。
【請求項42】
請求項16に記載の前記医薬組成物が、抗ウィルス薬と併用される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記抗ウィルス薬がインターフェロン又はインターフェロン由来薬である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
請求項16に記載の医薬組成物を治療上有効量、C型肝炎ウィルスに感染した対象に投与するステップを含む、対象におけるC型肝炎ウィルス感染を治療する方法。
【請求項45】
請求項16に記載の前記医薬組成物が、抗ウィルス薬と併用される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記抗ウィルス薬がインターフェロン又はインターフェロン由来薬である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
一つ以上の容器と、請求項1に記載の医薬組成物とを含む、キット。
【請求項48】
一つ以上の容器と、請求項16に記載の医薬組成物とを含む、キット。
【請求項49】
薬学的に許容可能な担体と、60乃至550kDの範囲の分子量を有するATIIIとを、トロンビン活性化により引き起こされる、又は、トロンビン活性化に起因する、疾患又は状態のある対象を治療するために有効な量、含む医薬組成物。
【請求項50】
前記疾患又は状態が、敗血症、外傷、急性呼吸器不全症候群、血栓症、卒中、再狭窄、経皮経管血管形成術における再閉塞及び再狭窄;外科術に関連する血栓症、虚血/再潅流損傷;癌又は外科患者の凝固異常、アンチトロンビンIII欠損、静脈及び動脈血栓症、汎発性血管内凝固、微小血管障害性溶血性貧血及び静脈閉塞症(VOD)から成る群より選択される、請求項49に記載の医薬組成物。
【請求項51】
請求項49に記載の医薬組成物を対象に投与するステップを含む、対象におけるトロンビン活性化により引き起こされる、又は、トロンビン活性化に起因する、疾患又は状態を治療する方法。
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図6G】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図6G】
【公表番号】特表2007−503464(P2007−503464A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532988(P2006−532988)
【出願日】平成16年5月12日(2004.5.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/014856
【国際公開番号】WO2004/100973
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(505164025)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレーション (20)
【出願人】(505421467)アクセレーション バイオファーマシューティカルズ (1)
【氏名又は名称原語表記】ACCELERATION BIOPHAMACEUTICALS
【住所又は居所原語表記】25 Hawthorne Street, #2,Watertown, MA 02472 (US).
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年5月12日(2004.5.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/014856
【国際公開番号】WO2004/100973
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(505164025)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレーション (20)
【出願人】(505421467)アクセレーション バイオファーマシューティカルズ (1)
【氏名又は名称原語表記】ACCELERATION BIOPHAMACEUTICALS
【住所又は居所原語表記】25 Hawthorne Street, #2,Watertown, MA 02472 (US).
【Fターム(参考)】
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