レニウムイオンを含む水溶液からレニウムイオンを回収する方法、及びレニウムイオン吸着剤

【課題】希薄な水溶液中のレニウムイオンを、吸着して回収する手段を提供すること。
【解決手段】レニウムイオンを含む水溶液に、鉄還元細菌を接触させて、レニウムイオンを鉄還元細菌の菌体に吸着させる工程、菌体に吸着したレニウムイオンを、菌体とともに回収する工程、を含む、レニウムイオンを含む水溶液からレニウムイオンを回収する方法及びレニウムイオン含有沈殿を製造する方法、及び鉄還元細菌を含んでなるレニウムイオン吸着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レニウムイオンを含む水溶液からレニウムイオンを回収する方法、及びレニウムイオン吸着剤にある。
【背景技術】
【0002】
レニウムは、地球上でも極めて少なく、レアメタルの中で最も稀少な金属である。ジェット機エンジン用耐熱合金向けに多く利用され、また石油精製改質触媒成分として利用され、電気電子部品の添加元素としても利用されており、その価値は極めて大きい。
【0003】
レニウムの原料として、レニウム単独で含有する鉱石はない。レニウムは、種々の希土類鉱物、コロンバイト、タンタライト、硫化銅鉱、モリブデナイトなどの鉱石に微量含まれているので、これらから回収して生産される。あまりに稀少であるために、日本におけるレニウムの輸入量は、公的な統計においても、不明であるほどである。そこで、いったん利用し終えたレニウム含有廃棄物や廃液から、低濃度で含まれているレニウムを回収することが、工業的に重要なレニウム生産手段となっている。
【0004】
レニウムの回収方法としては、廃触媒から硫酸溶液にてレニウムを浸出後、陰イオン交換樹脂、又は溶媒抽出にて浸出液からレニウムを抽出し回収する方法(特許文献1)が知られている。
【0005】
また、廃触媒からレニウムをアルカリ溶液により浸出後、陰イオン交換樹脂によりレニウムを吸着後、塩酸で溶離させ、溶離液を硫化して回収する方法(特許文献2)が報告されている。
【0006】
また、銅等の非鉄製錬工程で生成する廃酸から脱水銀後、陰イオン交換樹脂にレニウム等を吸着後、レニウムを溶離させ、溶離液を硫化してレニウムを回収する方法(特許文献3)が報告されている。
【0007】
これらの方法は、イオン交換樹脂への吸着と溶出、さらに硫化といった複雑なプロセスを要するものであった。
【0008】
これに対して、微生物を利用した水溶液からのレニウム回収が提案されている。非特許文献1には、イラン国のアンザリラグーンから取得された微生物である、Bacillus sp. GT-83-23株を用いて、過レニウム酸を含む溶液からレニウムを回収する例が示されている。しかし、この菌株による最大回収率は、高いものではない。また、この菌株の増殖は速いものではない。
【0009】
シワネラ・アルゲは、鉄還元菌として知られている。シワネラ・アルゲを用いて、貴金属類および白金族金属類を回収する方法が提案されている(特許文献4)。しかし、シワネラ・アルゲが、希薄な水溶液中のレニウムイオンを吸着することは、知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第3672874号明細書
【特許文献2】特許第4347783号公報
【特許文献3】特公昭63−016340号公報
【特許文献4】特開2007−113116号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Bioresource Technology, 100 (2009) 603-608
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このように、希薄な水溶液中のレニウムイオンを、吸着して回収する手段が、求められていた。したがって、本発明の目的は、希薄な水溶液中のレニウムイオンを、吸着して回収する手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、鋭意研究の結果、希薄な水溶液中のレニウムイオンが、極めて高い効率で鉄還元細菌シワネラ・アルゲに吸着されること、吸着はイオンの状態で生じていることを見いだして、本発明に到達した。
【0014】
したがって、本発明は、次の(1)〜(14)にある。
(1)
レニウムイオンを含む水溶液に、鉄還元細菌を接触させて、レニウムイオンを鉄還元細菌の菌体に吸着させる工程、
菌体に吸着したレニウムイオンを、菌体とともに回収する工程、
を含む、レニウムイオンを含む水溶液からレニウムイオンを回収する方法。
(2)
レニウムイオンを含む水溶液に、鉄還元細菌を接触させて、レニウムイオンを鉄還元細菌の菌体に吸着させる工程、
菌体に吸着したレニウムイオンを、菌体とともに回収する工程、
を含む、レニウムイオンを含む水溶液からレニウムイオン含有沈殿を製造する方法。
(3)
レニウムイオンを含む水溶液が、レニウム(IV)イオンを含む水溶液である、(1)〜(2)のいずれかに記載の方法。
(4)
レニウム(IV)イオンが、塩化レニウム酸(IV)イオンである、(3)に記載の方法。
(5)
鉄還元細菌が、シワネラ・アルゲである、(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6)
シワネラ・アルゲが、シワネラ アルゲ(Shewanella algae)ATCC 51181株である、(5)に記載の方法。
(7)
レニウムイオンを含む水溶液が、1.0[モル/m3]以下の濃度でレニウムイオンを含む、(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(8)
レニウムイオンを含む水溶液が、0.5[モル/m3]以下の濃度でレニウムイオンを含む、(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(9)
レニウムイオンを含む水溶液が、レニウムイオンを、0.02〜1.0[モル/m3]の範囲の濃度で含んでいる、(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(10)
レニウムイオンを含む水溶液が、レニウムイオンを、0.09〜0.5[モル/m3]の範囲の濃度で含んでいる、(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(11)
レニウムイオンを含む水溶液が、pH1.5〜pH4.0の範囲のpHである、(1)〜(10)のいずれかに記載の方法。
(12)
レニウムイオンを含む水溶液に、鉄還元細菌を接触させて、レニウムイオンを鉄還元細菌の菌体に吸着させる工程が、
レニウムイオンを含む水溶液の中に、鉄還元細菌を分散させて、レニウムイオンを鉄還元細菌の菌体に吸着させる工程である、(1)〜(11)のいずれかに記載の方法。
(13)
レニウムイオンを含む水溶液の中に、鉄還元細菌の菌体を、1.0×1014〜1.0×1017[個/m3]の範囲の濃度で分散させる、(12)に記載の方法。
(14)
レニウムイオンの濃度(モル/m3)に対する鉄還元細菌の菌体の濃度(個/m3)の比率(菌体の濃度(個/m3)/レニウムイオンの濃度(モル/m3))が、
1.0×1014〜5.0×1018の範囲となるように、鉄還元細菌の菌体を、レニウムイオンを含む水溶液に分散させる、(12)〜(13)のいずれかに記載の方法。
【0015】
さらに、本発明は、次の(21)〜(27)にもある。
(21)
有効成分として鉄還元細菌を含んでなる、レニウムイオン吸着剤。
(22)
レニウムイオンが、レニウム(IV)イオンである、(21)に記載のレニウムイオン吸着剤。
(23)
レニウム(IV)イオンが、レニウム(IV)の錯イオンである、(22)に記載のレニウムイオン吸着剤。
(24)
レニウム(IV)の錯イオンが、塩化レニウム酸(IV)イオンである、(23)に記載のレニウムイオン吸着剤。
(25)
鉄還元細菌が、シワネラ・アルゲである、(21)〜(24)のいずれかに記載のレニウムイオン吸着剤。
(26)
シワネラ・アルゲが、シワネラ アルゲ(Shewanella algae)ATCC 51181株である、(25)に記載のレニウムイオン吸着剤。
(27)
pH1.5〜pH4.0の水溶液用である、(21)〜(26)のいずれかに記載のレニウムイオン吸着剤。
【0016】
さらに、本発明は、レニウムのイオンの吸着のための、上記細菌の使用(Use)にもある。さらに、本発明は、レニウムのイオンの回収のための、上記細菌の使用(Use)にもある。さらに、本発明は、レニウムのイオンを含有する沈殿を製造するための、上記細菌の使用(Use)にもある。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、希薄な水溶液中のレニウムイオンを、高い効率で吸着して、濃縮し、回収することができる。また、このようにして得られる、濃縮されたレニウムイオンを含有する沈殿は、稀少な金属であるレニウムを生産するための、重要な資源となる。本発明によれば、微生物を利用して、稀少なレニウム資源を有効に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1はpHと吸着時間によるレニウムイオンの濃度変化を示す図である。
【図2】図2はpHによるレニウムイオンの濃度変化を示す図である。
【図3】図3は細胞濃度と吸着時間によるレニウムイオンの濃度変化を示す図である。
【図4】図4は初期レニウム濃度と吸着時間によるレニウムイオンの濃度変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に実施の態様をあげて、本発明を詳細に説明する。
本発明によれば、レニウムイオンを含む水溶液に、鉄還元細菌を接触させて、レニウムイオンを鉄還元細菌の菌体に吸着させる工程、菌体に吸着したレニウムイオンを、菌体とともに回収する工程、を含む方法によって、レニウムイオンを含む水溶液からレニウムイオンを回収することができる。
【0020】
また、本発明によれば、レニウムイオンを含む水溶液に、鉄還元細菌を接触させて、レニウムイオンを鉄還元細菌の菌体に吸着させる工程、菌体に吸着したレニウムイオンを、菌体とともに回収する工程、を含む方法によって、レニウムイオンを含む水溶液からレニウムイオン含有沈殿を製造することができる。このように製造されたレニウムイオン含有沈殿は、レニウムイオンが鉄還元細菌の菌体に吸着されていることから、レニウムイオンが濃縮されて、高い含有率で含有されたものとなっている。
【0021】
このように、本発明によれば、レニウムイオン吸着剤として、有効成分として鉄還元細菌を含んでなるレニウムイオン吸着剤を、使用することができる。
【0022】
[レニウムイオン]
好適な実施の態様において、レニウムイオンを含む水溶液に、含まれるレニウムイオンは、レニウム(IV)イオンである。レニウム(IV)イオンは、本発明において、特に好適に吸着回収される。好適な実施の態様において、レニウム(IV)は、塩化レニウム酸(IV)イオンとすることができる。
【0023】
好適な実施の態様において、レニウムイオンを含む水溶液は、1.0[モル/m3]以下、好ましくは0.5[モル/m3]以下の濃度でレニウムイオンを含むものとすることができ、さらに、例えば、0.02〜1.0[モル/m3]、0.09〜1.0[モル/m3]、0.09〜0.5[モル/m3]の範囲の濃度でレニウムイオンを含むものとすることができる。本発明によれば、このような低濃度のレニウムイオンを高い効率で回収することができる。
【0024】
[pH]
好適な実施の態様において、レニウムイオンを含む水溶液は、pH5以下、好ましくはpH1.5〜pH4.0、さらに好ましくはpH1.5〜pH3.2、さらに好ましくはpH1.5〜pH2.2の範囲のpH、あるいは、好ましくはpH1.8〜pH4.0、さらに好ましくはpH1.8〜pH3.2、さらに好ましくはpH1.8〜pH2.2の範囲のpHとすることができる。本発明によれば、このような酸性のpH範囲において、菌体はレニウムイオンを好適に吸着することができる。pHの調整は、公知の手段によって行うことができ、例えば、塩酸や水酸化ナトリウムの添加によって、行うことができる。
【0025】
好適な実施の態様において、レニウムイオンの吸着は、上記pHに調整された水溶液の中で行うことができる。後述のように、本発明によるレニウムイオンの吸着は、レニウムイオンの還元を伴うものではないために、上記pHに調整された水溶液は、レニウムイオンの還元に必要となる電子供与体、例えば有機酸塩、例えば乳酸塩が添加される必要がない。このような有機酸塩を添加する場合には、添加の工程を必要とするほかに、廃液処理においてもこれを処理する工程が必要となるので、このような有機酸塩の添加を必要としないことは、工程の複雑さやそれに要する費用の点で、有利である。
【0026】
[鉄還元細菌]
好適な実施の態様において、鉄還元細菌は、シワネラ・アルゲ(Shewanella algae)である。シワネラ・アルゲ(Shewanella algae)として、シワネラ・アルゲ(Shewanella algae)ATCC 51181株を、特に好適に使用することができる。シワネラ・アルゲ(S.algae)は、増殖の速度が速く、例えば、TSB液体培地での好気培養での倍加時間は約20分と非常に速い。これは、例えば、非特許文献1に記載の微生物と比較して、有利である。
【0027】
好適な実施の態様において、レニウムイオンを含む水溶液に、鉄還元細菌を接触させて、レニウムイオンを鉄還元細菌の菌体に吸着させる工程は、レニウムイオンを含む水溶液の中に、鉄還元細菌を分散させて、レニウムイオンを鉄還元細菌の菌体に吸着させる工程とすることができる。このように、本発明においてレニウムイオン吸着剤として使用される鉄還元細菌は、レニウムイオンを含む水溶液のなかに、直接に分散して、使用することができる。一方で、本発明の好適な実施の一態様において、本発明においてレニウムイオン吸着剤として使用される鉄還元細菌は、担体に固定化して、使用することもできる。このような担体として、水溶液に分散して使用可能な担体を使用することもできる。
【0028】
好適な実施の態様において、レニウムイオンを含む水溶液の中に、鉄還元細菌の菌体を、例えば、初期濃度として、1.0×1014〜1.0×1017[個/m3]、好ましくは1.0×1015〜1.0×1017[個/m3]、さらに好ましくは5.0×1015〜5.0×1016[個/m3]、の範囲の濃度で分散させて、使用することができる。
【0029】
好適な実施の態様において、レニウムイオンの濃度(モル/m3)に対する鉄還元細菌の菌体の濃度(個/m3)の比率(菌体の濃度(個/m3)/レニウムイオンの濃度(モル/m3))が、例えば1.0×1014〜5.0×1018の範囲、1.0×1014〜1.11×1018の範囲、2.0×1014〜1.11×1018の範囲、あるいは、例えば1.0×1015〜5.0×1018の範囲、1.0×1015〜1.11×1018の範囲、2.0×1015〜1.11×1018の範囲、あるいは、例えば5.0×1015〜2.5×1018の範囲、5.0×1015〜5.56×1017の範囲、1.0×1016〜5.56×1017の範囲、となるように、鉄還元細菌の菌体を、レニウムイオンを含む水溶液に分散させることができる。レニウムイオンに対する菌体の比率は、大きいほうが好ましい。本発明によれば、水溶液中のレニウムイオンが低い濃度であっても、高い効率でレニウムイオンを吸着して、回収することができる。
【0030】
本発明によれば、レニウムイオンをごく低い濃度で含む水溶液のなかから、レニウムイオンを菌体に吸着させて、レニウムイオンを高い濃度で含有する沈殿を得ることができ、この沈殿(レニウムイオン含有沈殿)は、高いレニウム含有量であることから、レニウム生産のための極めて有用な原材料となる。
【0031】
得られた沈殿(レニウムイオン含有沈殿)は、公知の手段によって、水溶液と分離して、回収することができる。例えば、デカンテーション、遠心分離、フィルターろ過、などを使用することができる。
【0032】
本発明によれば、菌体へのレニウムイオンの吸着は、好ましい実施の態様において、15分以下、好適には10分以下、さらに好適には5分以下の短時間で、平衡の状態に達する。透過電子顕微鏡によれば、菌体およびその周辺には粒子は観察されず、Re(0)やReO2等の固体粒子にはなっていないことが確認されている。すなわち、本発明における菌体への吸着は、レニウムイオンが固体粒子へと還元されることなく、生じている。
【0033】
[培養]
本発明に使用される鉄還元細菌は、レニウムイオンを吸着させるために上記条件での水溶液に分散させることに先だって、所望によって培養を行い、必要な量の菌体を準備することができる。培養は、菌株に適した公知の培地を用いて、行うことができる。好適な実施の態様において、培養した菌株は、公知の手段、例えば、遠心分離によって取得して、例えば水、好ましくはイオン交換水によって洗浄して、その後に、レニウムイオンを吸着させるために上記条件での水溶液に分散することができる。好適な実施の態様において、水による洗浄を行うことなく、レニウムイオンを吸着させるために上記条件での水溶液に分散させることもできる。
【0034】
本発明の好適な実施の態様において、鉄還元細菌としてシワネラ・アルゲ(Shewanella algae)を使用することができ、この培養のための培地として、好ましくは、クエン酸(III)鉄培地、TBS培地を使用することができる。クエン酸(III)鉄培地、TBS培地の例として、次の組成の培地を使用することができる。
【0035】
クエン酸(III)鉄培地
Sodium lactate 3.4 g/l
Iron(III)citrate 3H2O 16.7 g/l
KCl 0.1 g/l
NH4Cl 1.5 g/l
NaH2PO4 0.6 g/l
Wolfe’s Mineral Solution 10 cm3/l
Wolfe’s Vitamin Solution 10 cm3/l
Peptone 1.0 g/l
【0036】
TSB培地(Tryptic (Trypticase) Soy Broth)
Bacto(商標) Tryptic Soy Broth 30 g/l
または
BBL(商標) Trypticase(商標) Soy Broth 30 g/l
【0037】
[レニウムイオン吸着剤]
本発明に係るレニウムイオン吸着剤は、上記鉄還元細菌を有効成分とするものである。好適な実施の態様において、鉄還元細菌は、シワネラ・アルゲ(Shewanella algae)である。シワネラ・アルゲ(Shewanella algae)として、シワネラ・アルゲ(Shewanella algae)ATCC 51181株を、特に好適に使用することができる。好適な実施の態様において、レニウムイオン吸着剤は、鉄還元細菌をそれ自体であってもよく、鉄還元細菌が担体に固定されたものであってもよい。レニウムイオン吸着剤は、レニウムイオン吸着の特性を妨げられない範囲で、他の材料に固定化されたものであってもよく、レニウムイオン吸着剤としての製剤のために、添加剤が添加されていてもよい。
【実施例】
【0038】
以下の実施例によって、本発明をさらに具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
(実施例1)
塩化レニウム酸(IV)カリウム(K2ReCl6)を塩酸(2.0 mol/l)に加熱溶解させ、塩化レニウム酸水溶液を調製した。鉄還元細菌であるShewanella algae ATCC 51181 株 をクエン酸第二鉄を主成分とする液体培地(培地組成:クエン酸第二鉄 15g/l、pH 7.0)で24時間嫌気培養した。指数増殖期末期のS. algae細胞を遠心分離で集菌し、イオン交換水で洗浄した後、所定の細胞濃度に調整した。この細胞懸濁液にpHを1.5から6.3まで変化させたレニウム濃度0.5mol/m3(93mg/L)のレニウム溶液を添加し、所定時間ごとに、フィルター(孔径0.2 μm)でろ過した液試料を採取した。なお、実験は嫌気条件下(酸素濃度2.5%以下)で行った。また、pH調整には、所定濃度のHClおよびNaOHを用い、細胞濃度はヘマトメーター法、液相Reイオン濃度はICP発光分光分析法で測定した。
【0039】
嫌気培養に使用した液体培地(クエン酸鉄培地)の組成は、以下である。
クエン酸(III)鉄培地
Sodium lactate 3.4 g/l
Iron(III)citrate 3H2O 16.7 g/l
KCl 0.1 g/l
NH4Cl 1.5 g/l
NaH2PO4 0.6 g/l
Wolfe’s MineralSolution 10 cm3/l
Wolfe’s Vitamin Solution 10 cm3/l
Peptone 1.0 g/l
【0040】
なお、嫌気培養に上記クエン酸鉄培地に代えて、以下の組成のTBS培地を用いて培養したShewanella algae ATCC 51181 株を使用した場合にも、同様の結果が得られた。
TSB培地(Tryptic (Trypticase) Soy Broth)
Bacto(商標) Tryptic Soy Broth 30 g/l
または
BBL(商標) Trypticase(商標) Soy Broth 30 g/l
【0041】
溶液のpHを1.5から3.2とし、鉄還元細菌であるS. algae細胞濃度0.5×1016個/m3とした場合のS. algaeによるレニウム(Re)回収の経時変化を図1に示す。このpHではS. algae細胞を接種した場合、液相レニウム濃度の低下が認められ、同細菌細胞を利用してReを回収できることが明らかとなった。
【0042】
また、Reの濃度低下は細胞接種後5分以内に完了しており、収着平衡に到達した。さらに、透過電子顕微鏡による観察を行ったところ、菌体およびその周辺には粒子は観察されず、Re(0)やReO2等の固体粒子にはなっていないことが確認された。このことは、レニウムイオンが固体粒子へと還元されたのではなく、4価のまま細胞に吸着し回収されたことを支持する。また、pH 2.1のとき最大Re収率は39%であった。
【0043】
また、pH 1.5-6.3の範囲で、pHを変化させた場合の細胞接種後2時間後のRe回収率を図2に示す。実験結果はpH1.8のとき最大回収率42%を示した。
【0044】
(実施例2)
実施例1の条件において、pH 2.0付近で細胞濃度を0.5-2.5×1016 個/m3の範囲で変化させた。レニウム回収の経時変化を図3に示す。細胞濃度を上昇させるにつれて、より多くのレニウムが回収された。なお、細胞濃度2.5×1016 個/m3の場合、Re回収率は84%(図3の黒四角のスタート濃度と60分後の濃度差から算出した)であり、乾燥菌体の単位重量あたりのレニウム吸着量は1.3×10-4 mol/g-dry cells(24.2 mg/g-dry cells)であった。
【0045】
(実施例3)
実施例1の条件においてpH2.0付近でS. algae細胞濃度0.5×1016個/m3、初期Re濃度を0.1-0.5mol/m3(19-93mg/L)の範囲で変化させた。Re回収の経時変化を図4に示す。 初期Re(IV)濃度0.1mol/m3のとき、84%のRe(図4の黒丸のスタート濃度と60分後の濃度差から算出した)を回収できた。
【0046】
なお、このとき、単位グラム乾燥菌体あたりのRe吸着量は1.3×10-4 mol/g-dry cellsであった。初期Re濃度が低いほどRe回収率は上昇することがわかった。
【0047】
実施例1〜3の実験に基づいて、レニウムの回収量及び回収率を算出した結果を、以下の表1に示す。Re濃度に対する菌濃度を上げると、菌あたりのRe回収量は低下するが、十分な菌濃度で処理することでRe回収率は向上することがわかる。
【0048】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、希薄な水溶液中のレニウムイオンを、高い効率で吸着して、濃縮し、回収することができる。本発明は、産業上有用な発明である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レニウムイオンを含む水溶液に、鉄還元細菌を接触させて、レニウムイオンを鉄還元細菌の菌体に吸着させる工程、
菌体に吸着したレニウムイオンを、菌体とともに回収する工程、
を含む、レニウムイオンを含む水溶液からレニウムイオンを回収する方法。
【請求項2】
レニウムイオンを含む水溶液に、鉄還元細菌を接触させて、レニウムイオンを鉄還元細菌の菌体に吸着させる工程、
菌体に吸着したレニウムイオンを、菌体とともに回収する工程、
を含む、レニウムイオンを含む水溶液からレニウムイオン含有沈殿を製造する方法。
【請求項3】
レニウムイオンを含む水溶液が、レニウム(IV)イオンを含む水溶液である、請求項1〜2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
レニウム(IV)イオンが、塩化レニウム酸(IV)イオンである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
鉄還元細菌が、シワネラ・アルゲである、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
シワネラ・アルゲが、シワネラ アルゲ(Shewanella algae)ATCC 51181株である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
レニウムイオンを含む水溶液が、1.0[モル/m3]以下の濃度でレニウムイオンを含む、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
レニウムイオンを含む水溶液が、pH1.5〜pH4.0の範囲のpHである、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
レニウムイオンを含む水溶液に、鉄還元細菌を接触させて、レニウムイオンを鉄還元細菌の菌体に吸着させる工程が、
レニウムイオンを含む水溶液の中に、鉄還元細菌を分散させて、レニウムイオンを鉄還元細菌の菌体に吸着させる工程である、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
レニウムイオンを含む水溶液の中に、鉄還元細菌の菌体を、1.0×1014〜1.0×1017[個/m3]の範囲の濃度で分散させる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
レニウムイオンの濃度(モル/m3)に対する鉄還元細菌の菌体の濃度(個/m3)の比率(菌体の濃度(個/m3)/レニウムイオンの濃度(モル/m3))が、
1.0×1014〜5.0×1018の範囲となるように、鉄還元細菌の菌体を、レニウムイオンを含む水溶液に分散させる、請求項9〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
有効成分として鉄還元細菌を含んでなる、レニウムイオン吸着剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−112885(P2013−112885A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262833(P2011−262833)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(502362758)JX日鉱日石金属株式会社 (482)
【Fターム(参考)】