説明

レニン阻害剤の合成中間体としての3−アルキル−5−(4−アルキル−5−オキソ−テトラヒドロフラン−2−イル)ピロリジン−2−オン誘導体

【課題】医薬的に活性な化合物、特に、アリスキレンなどのレニン阻害剤の合成に有用な新規製法、新規製法工程および新規中間体の提供。
【解決手段】式(II)で示される化合物またはその塩の製造法、


および式(VI)で示される化合物またはその塩(式中、RおよびRならびにActは特定の置換基)、およびそれらの製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はC−8ラクタムラクトン化合物に関する。さらに、本発明はこれらのC−8ラクタムラクトン化合物の製造方法に関する。
【0002】
これらのC−8ラクタムラクトン化合物は、より具体的には下記に示す式(II)に対応する5−(5−オキソ−テトラヒドロフラン−2−イル)−ピロリジン−2−オン化合物である。かかる化合物はレニン阻害剤、とりわけ、2(S),4(S),5(S),7(S)−2,7−ジアルキル−4−ヒドロキシ−5−アミノ−8−アリール−オクタノイルアミド誘導体またはその医薬的に許容される塩の製造においてキーとなる中間体である。それ故、本発明はこれらのレニン阻害剤の製造における有用な中間体ならびにこれらレニン阻害剤およびその中間体の製造法を目的とするものである。
【背景技術】
【0003】
レニンは腎臓から血液に移行し、そこでアンギオテンシノーゲンの切断に関与してデカペプチド・アンギオテンシンIを放出し、それが次いで、肺、腎臓および他の臓器において切断され、オクタペプチド・アンギオテンシンIIを形成する。このオクタペプチドは、直接的には動脈血管収縮により、また間接的には副腎からナトリウム−イオン−維持ホルモン・アルドステロンを放出することにより、その両方で血圧を上昇させ、それが細胞外液量の増大を伴い、その増大がアンギオテンシンIIの作用に寄与し得る。レニンの酵素活性阻害剤は、アンギオテンシンIの形成を低下させ、その結果、アンギオテンシンIIの産生量が少なくなる。その活性ペプチドホルモンの濃度低下が、レニン阻害剤の降圧作用の直接の原因となる。
【0004】
アリスキレン(aliskiren;INN名称;(2S,4S,5S,7S)−5−アミノ−N−(2−カルバモイル−2−メチルプロピル)−4−ヒドロキシ−2−イソプロピル−7−[4−メトキシ−3−(3−メトキシプロポキシ)ベンジル]−8−メチルノナンアミド)などの化合物とともに、新しい降圧剤が開発されているが、このものはアンギオテンシンII生合成の開始時にレニン−アンギオテンシン系を妨害する。
【0005】
該化合物は4つのキラル炭素原子を含んでなり、エナンチオマーとして純粋な化合物を合成することは至難である。それ故、この極めて複雑なタイプの分子のより簡便な合成を可能とする改善された合成ルートが歓迎される。
【0006】
かかる2(S),4(S),5(S),7(S)−2,7−ジアルキル−4−ヒドロキシ−5−アミノ−8−アリール−オクタノイルアミド誘導体は、レニン阻害活性を有し、従って医薬的用途を有する誘導体であり、例えば、米国特許US5,559,111に開示された誘導体を包含する。従来、2(S),4(S),5(S),7(S)−2,7−ジアルキル−4−ヒドロキシ−5−アミノ−8−アリール−オクタノイルアミド誘導体の製造については、様々な方法が文献に記載されている。
【0007】
EP−A−0678503には、δ−アミノ−γ−ヒドロキシ−ω−アリール−アルカンカルボキサミドが記載されているが、この化合物はレニン−阻害作用を示し、医薬製剤における降圧剤として使用することができよう。
【0008】
WO02/02508には、δ−アミノ−γ−ヒドロキシ−ω−アリール−アルカンカルボキサミドを得るための多工程製法が記載されているが、そこでの中心的中間体は2,7−ジアルキル−8−アリール−4−オクテン酸または2,7−ジアルキル−8−アリール−4−オクテン酸エステルである。この中間体の二重結合は、ハロ−ラクトン化条件経由(下)にて、4/5位でのハロゲン化および4位でのヒドロキシル化が同時になされる。ハロラクトンはヒドロキシラクトンに変換され、次いでヒドロキシ基が脱離基に変換され、脱離基がアジドと置換され、ラクトンがアミド化され、次いでアジドがアミン基に変換される。
【0009】
δ−アミノ−γ−ヒドロキシ−ω−アリール−アルカンカルボキサミドを製造するための中間体のさらなる製造法が、2−アルキル−5−ハロゲンペンタン−4−エンカルボン酸エステルの調製に関連してWO02/092828に、2−アルキル−5−ハロゲンペンタン−4−エンカルボン酸類の調製に関連してWO2001/009079に、2,7−ジアルキル−4−ヒドロキシ−5−アミノ−8−アリールオクタノイルアミド類の調製に関連してWO02/08172に、2−アルキル−3−フェニルプロピオン酸類に関連してWO02/02500に、また2−アルキル−3−フェニルプロパノール類に関連してWO02/024878に記載されている。
【0010】
EP−A−1215201には、δ−アミノ−γ−ヒドロキシ−ω−アリール−アルカンカルボキサミドを得るための代替ルートが開示されている。GB−A−0511686.8には、δ−アミノ−γ−ヒドロキシ−ω−アリール−アルカンカルボキサミドを得るための、ピロリジン中間体を使用するさらなる代替ルートが開示されている。
【0011】
既存の方法は所望のレニン阻害剤、とりわけ、2(S),4(S),5(S),7(S)−2,7−ジアルキル−4−ヒドロキシ−5−アミノ−8−アリール−オクタノイルアミド誘導体に導き得るが、簡単かつ効率的な様式でその製造を確実なものとするための、これらの2(S),4(S),5(S),7(S)−2,7−ジアルキル−4−ヒドロキシ−5−アミノ−8−アリール−オクタノイルアミド誘導体への代替合成ルートを提供する必要がある。
【発明の概要】
【0012】
発明の概要
本発明により、驚くべきことに、レニン阻害剤、とりわけ、2(S),4(S),5(S),7(S)−2,7−ジアルキル−4−ヒドロキシ−5−アミノ−8−アリール−オクタノイルアミド誘導体が、出発原料としての新規のC−8ラクタムラクトン化合物、とりわけ、5−(5−オキソ−テトラヒドロフラン−2−イル)ピロリジン−2−オン化合物を用い、経済的な方式で、また高いジアステレオマー/エナンチオマー純度で入手し得ることが判明した。とりわけ、C−8ラクタムラクトン化合物、とりわけ、5−(5−オキソ−テトラヒドロフラン−2−イル)ピロリジン−2−オン化合物をキラル構築ブロックとして使用し、合成の最後に有機芳香族部分を導入することにより、合成工程の初期の段階で有機芳香族部分を骨格に導入する先行技術の方法よりも、より経済的であることが判明した。さらに、C−8ラクタムラクトン化合物を利用することが、立体化学を都合よく固定、保存し、結果としてかかる極めて複雑なタイプの分子の製造方法を簡単なものとする。
【0013】
発明の詳細な説明
従って、第一の側面において、本発明は式(II):
【化1】

[式中、
はC1−7アルキルまたはC3−8シクロアルキルであり;そして
はC1−7アルキル、C2−7アルケニル、C3−8シクロアルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキルであり、それぞれが未置換であるか、またはC1−4アルキル、O−C1−4アルキル、OH、C1−4アルキルアミノ、ジ−C1−4アルキルアミノ、ハロゲンおよび/またはトリフルオロメチルによりモノ−、ジ−またはトリ−置換されている]
で示される化合物またはその塩に関する。
【0014】
好適な態様において、RはC1−7アルキル、好ましくは分枝C3−6アルキル、最も好ましくはイソプロピルである。
好適な態様において、RはC1−7アルキル、好ましくは分枝C3−6アルキル、最も好ましくはイソプロピルである。
【0015】
好ましくは、式(II)で示される化合物は以下の立体化学を有する:
【化2】

【0016】
最も好ましくは、式(II)の化合物は以下の構造を有する:
【化3】

【0017】
式(II)で示される化合物は、特に、医薬的に活性な物質、好ましくはアリスキレン(aliskiren)などのレニン阻害剤、とりわけ以下に記載する物質の合成に使用し得る。
【0018】
本発明者らは以下に詳細に記載するように、式(II)の重要な中間体を調製する簡便な方法を見出した。いずれの反応工程も単独で、または適切に組み合わせて使用し、式(II)で示される化合物を生成し得る。さらに、以下の反応工程のいずれもが単独で、または適切に組み合わせて、アリスキレンなどのレニン阻害剤の合成に使用し得る。
【0019】
従って、一側面において、本発明は、上に記載の式(II)で示される化合物の製造法であって、式(I):
【化4】

[式中、RおよびRは式(II)で示される化合物について定義したとおりである]
で示される化合物またはその塩を水素化反応に付してアジド部分をアミンに変換し、ラクタム環を閉環させることを含んでなる、製造法に関する。本方法の工程はそのまま本発明の一態様を形成する。
【0020】
およびRについての好適な態様は、式(II)の化合物についての定義から判断し得る。好ましくは、式(I)による化合物は以下の立体化学を有する:
【化5】

【0021】
式(I)で示される化合物は、当該技術分野で周知の方法、とりわけ、EP−A−0678514(参照により本明細書の一部とする)における化合物(III)の調製手法、特に実施例、とりわけ、変換2.c1を用いる実施例2に開示された手法に従って、入手し得る。
【0022】
別法として、式(II)で示される化合物は、式(I)で示される化合物で採用された補助剤とは異なる補助剤を用いて調製することができる。
従って、一側面において、本発明は上記の式(II)で示される化合物の製造法であって、式(I'):
【化6】

[式中、RおよびRは式(II)で示される化合物について定義したとおりであり、Auxはカルボニル官能基とエステルまたはアミドを形成し得る補助基である]
で示される化合物またはその塩を水素化反応に付してアジド部分をアミンに変換し、ラクタム環を閉環させることを含んでなる、製造法に関する。本方法の工程はそのまま本発明の一態様を形成する。
【0023】
Auxの好適な例は、エフェドリン化合物、オキサゾリドン類似体、メチルピロリドン類似体、炭水化物類似体、および環状アルコールまたはアミンなどである。代表例は下記に記載のもの、ならびにその類似体、とりわけ、オキサゾリドン類似体、例えば、エバンス(Evans)補助剤またはより一般的な名称では、キラルα−置換オキサゾリジノン類似体である。これら補助剤調製についての文献は、さらに詳細に下記に示してある。式(I)で示される化合物において使用するエバンス補助剤は別としては、エフェドリン型の補助剤および環状アルコール型の補助剤、例えば、(+)−フェンコールなどが好適である。
【0024】
【化7】

【0025】
式(I')で示される化合物は、エバンス補助剤についてEP−A−0 678 514に概略記載されている実験手法に従って調製し得る。従って、塩化3-メチル−ブチリルなどの式(I'i):
【化8】

[式中、Rは式(II)で示される化合物について定義したとおりである]
で表される適切な酸塩化物またはその塩を、適切な塩基の存在下に、それぞれのAux−H(ただし、Auxは式(I')の化合物に定義したとおりである)と反応させ、式(I'ii):
【化9】

で示される化合物とする。
【0026】
同様に、該反応は式(I'iii):
【化10】

[式中、Rは式(II)で示される化合物について定義したとおりである]
で示される酸塩化物またはその塩およびそれぞれのAux−H(ただし、Auxは式(I')の化合物に定義したとおりである)と、適切な塩基の存在下に実施し、式(I'iv):
【化11】

で示される化合物を得る。
【0027】
式(I'ii)および(I'iv)で示される化合物は次に、式(I'v):
【化12】

で示される(E)−1,4−ジブロモ−ブタン−2−エンと強塩基の存在下に反応させ、式(I'vi):
【化13】

[式中、RおよびRは式(II)で示される化合物について定義したとおりであり、Auxは式(I')の化合物について定義したとおりである]
で示される化合物またはその塩とする。
【0028】
およびRが同一、すなわち、R=Rである場合、2当量以上の式(I'ii)で示される化合物を式(I'v)で示される(E)−1,4−ジブロモ−ブタン−2−エンと反応させることは認められる。
従って、式(I'vi):
【化14】

[式中、
はC1−7アルキルまたはC3−8シクロアルキルであり;
はC1−7アルキル、C2−7アルケニル、C3−8シクロアルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキルであり、それぞれが未置換であるか、またはC1−4アルキル、O−C1−4アルキル、OH、C1−4アルキルアミノ、ジ−C1−4アルキルアミノ、ハロゲンおよび/またはトリフルオロメチルによりモノ−、ジ−またはトリ−置換されており;また
Auxはカルボニル官能基とエステルまたはアミドを形成し得る補助基である]
で示される化合物またはその塩は、効率的な方式により、アリスキレンなどのレニン阻害剤を製造する方法の有用な中間体である。それ故、かかる化合物ならびにこの中間体(I'vi)を用いて化合物(II)を得る方法も、本発明の態様を形成する。
【0029】
式(I'vi)で示される化合物は、さらにハロゲン化の反応条件下に、ハロゲン化剤、例えば、NCS、NBS、NIS(すべてN−ハロコハク酸イミド)、Brまたはブロモヒダントインと反応させて、式(I'vii):
【化15】

[式中、RおよびRは式(II)で示される化合物について定義したとおりであり、Auxは式(I')の化合物について定義したとおりであり、Halはハロゲンである]
で示される化合物またはその塩を形成する。
【0030】
式(I'vii)で示される化合物のハロゲン官能基は、次いで、N源を用いる転移によりアジドに変換し、式(I')で示される化合物を得る。N源の例は、LiN、NaN、KN、MeN、(アルキル)NN型のアジ化アルキルアンモニウムまたはアルキル)NHNまたは例えばアジ化テトラアルキルグアニジニウムまたはアジ化有機金属などの標準的な試薬である。反応は当該技術分野で周知の条件下、例えば、均一系もしくは二相系溶媒混合物中、またはイオン性液体もしくはイオン性液体の混合物中で進行する。好ましくは、反応は0ないし120℃の範囲、例えば、20ないし100℃、好ましくは50ないし80℃の温度で行われる。
【0031】
式(I)または(I')で示される化合物のアジド部分をアミンに変換し、ラクタム環閉環をもたらす反応は、当該分子上の他の官能基が変化を受けないような条件下で好ましくは実施する。水素化は一般的に不均一系触媒または均一系触媒から選択される触媒、例えば、ウイルキンソン触媒、好ましくは不均一系触媒の存在下に行われる。触媒の例は、ラネーニッケル、パラジウム/C、Pd(OH)(パールマン触媒)、ホウ化ニッケル、白金金属もしくは白金金属酸化物、ロジウム、ルテニウムおよび酸化亜鉛、より好ましくは、パラジウム/C、白金金属または白金金属酸化物、最も好ましくはパラジウム/Cである。触媒は、好ましくは1ないし20%の量、より好ましくは5ないし10%の量で使用する。反応は大気圧または2〜10バールなどの高圧、例えば、5バールで実施可能であり、より好ましくは大気圧で実施する。水素化は、好ましくは、不活性溶媒中で、より好ましくはテトラヒドロフランまたはトルエン中で行われる。アルコール、例えば、エタノールもしくはメタノールなどのプロトン性溶媒、または酢酸エチルなども適当である。これらの溶媒は水の存在下に使用し得る。反応時間および反応温度は、不所望の副産物を生成することなく、最短の時間で反応を完結させるように選択する。一般的に、反応は0℃ないし還流温度、好ましくは0ないし60℃、例えば、0ないし40℃、より好ましくは15〜30℃、例えば、室温で、10分ないし12時間、好ましくは20分ないし6時間、最も好ましくは30分ないし4時間、例えば、1ないし3時間または6ないし12時間実施する。
【0032】
化合物(I)または(I')の水素化に際し、化学量論量のプロトン化補助剤Aux−H、例えば、オキサゾリジノン、すなわちキラル補助剤(例えば、(S)−エバンス剤)が分断される。化合物(II)とエバンス補助剤などの補助剤両方は、共に結晶性であり、同様の性質を有するので、両方の化合物を分離し、同時に簡単な分離技法(結晶化または抽出)により高価な補助剤をリサイクルすることが好ましい。ラクタム・ラクトン(II)のラクトン環のけん化により、ラクトン環が開環し、水相への移動が可能となる;一方、オキサゾリジノン(または一般的には補助剤)は有機相に留まることが判明した。簡単な相分離と、引き続く水相の酸性化により、再ラクトン化が可能となり、それが純粋な化合物(II)の単離を可能とする。けん化は、好ましくは、有機または無機塩基、好ましくは無機塩基などの塩基により処理することで達成される。その例はLiOHまたはNaOHである。けん化は一般的に適当な溶媒中で実施する。その例は水性系または水性/有機溶媒混合物およびさらにはアルコールまたはトルエンなどの有機溶媒であり、その場合、アルコール/水混合物、例えば、エタノール性/水性溶液が好適である。相分離した後、水相は一般的に酸性としてγ−ヒドロキシ酸塩をプロトン化し、γ−ヒドロキシ酸を遊離の形状で得る。酸性化に適切な代表的な酸は、それらがγ−ヒドロキシ酸よりより強いが、その分子上の他の官能性が未変化のまま維持されるように選択する。適切な酸は有機酸、例えば、クエン酸、酒石酸もしくは類似の酸、または希HClなどの希釈無機酸である。この遊離酸は、好ましくは該混合物を、例えば、30ないし80℃、より好ましくは50℃などの40〜60℃に加熱することにより、ラクトン(II)を再形成する。
【0033】
従って、式(II'):
【化16】

[式中、
はC1−7アルキルまたはC3−8シクロアルキルであり;そして
はC1−7アルキル、C2−7アルケニル、C3−8シクロアルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキルであり、それぞれが未置換であるか、またはC1−4アルキル、O−C1−4アルキル、OH、C1−4アルキルアミノ、ジ−C1−4アルキルアミノ、ハロゲンおよび/またはトリフルオロメチルによりモノ−、ジ−またはトリ−置換されている]
で示される化合物またはその塩は、効率的な方式により、アリスキレンなどのレニン阻害剤を製造する方法の有用な中間体である。それ故、かかる化合物ならびにこの中間体(II')を用いて化合物(II)を得る方法も、本発明の態様を形成する。
【0034】
化合物(II)の好適な態様は、化合物(II')にとっても好適である。とりわけ、以下の立体化学が好適である:
【化17】

【0035】
好ましくは、該化合物は以下の式を有する
【化18】

【0036】
式(II)で示される化合物を得るための代替法として、本発明は上記定義の式(II)の化合物に別の側面で関連する;当該方法は式(III):
【化19】

[式中、RおよびRは式(II)の化合物について定義したとおりである]
で示される化合物またはその塩を式(IV):
【化20】

[式中、RおよびRは式(II)の化合物について定義したとおりであり、RはC1−7アルキルまたはC3−8シクロアルキルである]
の無水物またはその塩に変換して酸部分を活性化し、次いで水素化してアジド部分をアミンに変換し、ラクタム環を閉環させることを含む。この方法の工程それ自体ならびに式(IV)で示される化合物もまた本発明の態様を形成する。
【0037】
およびRの好適な態様は式(II)の化合物についての定義から判断し得る。
好適な態様において、RはC1−7アルキルであり、より好ましくは直鎖または分枝のC1−4アルキル、最も好ましくは、メチル、エチル、イソプロピルまたはイソブチルである。
【0038】
好ましくは、式(IV)で示される化合物は以下の立体化学を有する:
【化21】

【0039】
式(III)で示される化合物は当該技術分野で周知の方法により、とりわけ、上記定義の式(I)で示される化合物から、特に、EP−A−0678514(参照により本明細書の一部とする)に記載されたかかる化合物の製造手法、特に、実施例、とりわけ、実施例3に開示された手法に従い、入手し得る。同様に、式(I')の化合物はこれらの手法に従い、式(II)の化合物に変換することができる。
【0040】
変換は共に別個の工程で、式(IV)の無水物を単離することにより、またはそれらを単離せずにワン−ポット合成として実施することにより実施し得る。好ましくは、式(IV)の無水物を形成した後に得られる反応混合物を直接水素化反応に付す。
【0041】
式(III)の化合物の酸部分を活性化するために、式(IV)の混合無水物を形成する反応は、分子上の他の官能基を未反応のまま維持するような条件下で行う。この無水物は一般的に酸クロリド、R−CO−Clなどの活性化した酸を用いて導入される。活性化した酸は一定の時間を要して加えることが好ましい。好ましくは、塩基性または酸性の条件下、より好ましくは塩基性の条件下に実施する。適当な塩基は、有機または無機の塩基、好ましくは有機塩基、より好ましくは窒素塩基、さらにより好ましくは三級窒素塩基である。三級窒素塩基の例は、トリメチルアミン、DBU、トリエチルアミンおよびジイソプロピルエチルアミンである。反応はいずれかの適切な溶媒、好ましくはエーテルなどの非プロトン性溶媒、とりわけTHFおよびTBME、芳香族またはハロゲン化溶媒、より好ましくはTHFまたはトルエン中で実施し得る。反応時間および温度は、不所望の副産物を生成することなく、最短の時間で反応を完結させるように選択する。一般的に、反応は−20℃ないし還流温度、好ましくは−10ないし40℃、より好ましくは0〜30℃、例えば、0ないし10℃で、1分ないし12時間、好ましくは10分ないし4時間、最も好ましくは15分ないし2時間、例えば、30分ないし1時間実施する。当業者周知の標準的手法については、例えば、Houben-Weyl, Vol. E5/2 (1985), p. 934-1183, Houben-Weyl, Vol. E5/1 (1985), p. 193-773, および Houben-Weyl, Vol. 8 (1952), p. 359-680(これらを参照により本明細書の一部とする)に記載されている。
【0042】
式(IV)で示される化合物のアジド部分をアミンに変換し、ラクタム環を閉環させる反応は、好ましくは分子上の他の官能基を未反応のまま維持するような条件下で行う。水素化は一般的に不均一系触媒または均一系触媒から選択される触媒、例えば、ウイルキンソン触媒、好ましくは不均一系触媒の存在下に行われる。触媒の例は、ラネーニッケル、パラジウム/C、Pd(OH)(パールマン触媒)、ホウ化ニッケル、白金金属もしくは白金金属酸化物、ロジウム、ルテニウムおよび酸化亜鉛、より好ましくは、パラジウム/C、白金金属または白金金属酸化物、最も好ましくはパラジウム/Cである。触媒は、好ましくは1ないし20%の量、より好ましくは5ないし10%の量で使用する。反応は大気圧または2〜10バールなどの高圧、例えば、5バールで実施可能であり、より好ましくは大気圧で実施する。水素化は、好ましくは、不活性溶媒中で、より好ましくはテトラヒドロフランまたはトルエン中で行われる。反応時間および反応温度は、不所望の副産物を生成することなく、最短の時間で反応を完結させるように選択する。一般的に、反応は0℃ないし還流温度、好ましくは0ないし40℃、より好ましくは15〜30℃、例えば、室温で、30分ないし48時間、好ましくは2時間ないし36時間、最も好ましくは12分ないし24時間、例えば、17ないし23時間で実施し得る。
【0043】
現時点で、式(II)で示される化合物を得る代替法として、本発明は別の側面で上記定義の式(II)で示される化合物の製造法に関し、当該方法は式(III):
【化22】

[式中、RおよびRは式(II)の化合物について定義したとおりである]
で示される化合物またはその塩を、式(V):
【化23】

[式中、RおよびRは式(II)の化合物について定義したとおりであり、RはC1−7アルキルまたはC3−8シクロアルキルである]
で示されるエステルまたはその塩に変換すること、次いで水素化してアジド部分をアミンに変換し、ラクタム環閉環させることを含む。この方法の工程それ自体ならびに式(IV)で示される化合物もまた本発明の態様を形成する。
【0044】
およびRの好適な態様は、式(II)で示される化合物についての定義から判断し得る。
好適な態様において、RはC1−7アルキルであり、より好ましくは直鎖または分枝のC1−4アルキル、最も好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチルまたはイソブチルである。
【0045】
好ましくは、式(V)で示される化合物は以下の立体化学を有する:
【化24】

【0046】
この変換の出発原料として使用される式(III)で示される化合物は上記のように入手し得る。
【0047】
変換は共に別個の工程で、式(V)のエステルを単離することにより、またはそれらを単離せずにワン−ポット合成として実施することにより実施し得る。好ましくは、式(V)のエステルを形成した後に得られる反応混合物を直接水素化反応に付す。
【0048】
式(V)のエステルを形成する式(III)の化合物の反応は、好ましくは、分子上の他の官能基が未反応のまま維持されるような条件下で行われる。エステルは一般的に酸(III)をSOClなどの適当な試薬で活性化した酸、例えば、酸クロリドに変換することにより導入する。別法として、エステルはアルキル供与体として適当なR−トリアゼンを用いて、同時に窒素を発生する迅速、効率的な方法で導入することができる。トリアゼンの例としては、3−メチル−1−(p−トリル)−トリアゼンなどのアリールトリアゼンである。反応は好ましくは中性の条件下に実施し得る。反応はいずれかの適切な溶媒、好ましくは非プロトン性溶媒、例えば、THFまたはTBMEなどのエーテル、芳香族またはハロゲン化溶媒、より好ましくはTHF、塩化メチレンまたはトルエン中で実施し得る。反応時間および反応温度は、不所望の副産物を生成することなく、最短の時間で反応を完結させるように選択する。一般的に、反応は0℃ないし還流温度、好ましくは10ないし40℃、より好ましくは15〜30℃、例えば、室温で、1分ないし12時間、好ましくは10分ないし6時間、最も好ましくは30分ないし4時間、例えば、2ないし3時間、または窒素の発生がすべて停止するまで実施し得る。カルボン酸からエステルを作製するいくつかの他の手法が文献(例:Organicum, Wiley-VCH, Ed. 20, (1999) p. 442;参照により本明細書の一部とする)に記載されている。
【0049】
式(V)で示される化合物のアジド部分をアミンに変換し、ラクタム環を閉環させる反応は、好ましくは分子上の他の官能基を未反応のまま維持するような条件下で行う。水素化は一般的に不均一系触媒または均一系触媒から選択される触媒、例えば、ウイルキンソン触媒、好ましくは不均一系触媒の存在下に行われる。触媒の例は、ラネーニッケル、パラジウム/C、Pd(OH)(パールマン触媒)、ホウ化ニッケル、白金金属もしくは白金金属酸化物、ロジウム、ルテニウムおよび酸化亜鉛、より好ましくは、パラジウム/C、白金金属または白金金属酸化物、最も好ましくはパラジウム/Cである。触媒は、好ましくは1ないし20%の量、より好ましくは5ないし10%の量で使用する。反応は大気圧または2〜10バールなどの高圧、例えば、5バールで実施可能であり、より好ましくは大気圧で実施する。水素化は、好ましくは、不活性溶媒中で、より好ましくはテトラヒドロフランまたはトルエン中で行われる。反応時間および反応温度は、不所望の副産物を生成することなく、最短の時間で反応を完結させるように選択する。一般的に、反応は0℃ないし還流温度、好ましくは0ないし40℃、より好ましくは15〜30℃、例えば、室温で、30分ないし48時間、好ましくは2時間ないし36時間、最も好ましくは12ないし24時間、例えば、17ないし23時間で実施し得る。
【0050】
式(II)で示される化合物を入手するための様々な方法を、以下の反応工程図1に要約して示す:
【化25】

反応工程図1:式(II)のC−8ラクタムラクトンへの経路
【0051】
反応工程図1は補助剤としてエバンス補助剤を例示するが、化合物(I')について概説した補助剤も可能である。従って、反応工程図1に示した式(II)のC−8ラクタムラクトンへとの同じ経路が、出発原料として式(I')の化合物を使用することにより適用される。
【0052】
本発明の好適なさらなる態様において、この合成はさらなる工程として、または個々の合成として、式(VI)で示される化合物またはその塩の製造にも関わる:
【化26】

[式中、RおよびRは式(II)の化合物について定義したとおりであり、Actはアミノ保護基から選択される活性化基であり、とりわけカルバメートである]
該方法は式(II)の化合物またはその塩の窒素に活性化基を導入することからなる。この方法の工程それ自体もならびに式(VI)の化合物もまた本発明の態様を形成する。
【0053】
この変換は標準的な条件下で進行し、例えば、標準的参照文献(J. F. W. McOmie, “Protective Groups in Organic Chemistry”, Plenum Press, London and New York 1973, in T. W. Greene and P. G. M. Wuts, "Protective Groups in Organic Synthesis”, Third edition, Wiley, New York 1999, in “The Peptides”; Volume 3 (editors: E. Gross and J. Meienhofer), Academic Press, London and New York 1981, in “Methoden der organischen Chemie”(Methods of Organic Chemistry), Houben Weyl, 4th edition, Volume 15/I, Georg Thieme Verlag, Stuttgart 1974, in H.-D. Jakubke and H. Jeschkeit, “Amino-saeuren, Peptide, Proteine” (Amino acids, Peptides, Proteins), Verlag Chemie, Weinheim, Deerfield Beach, and Basel 1982, and in Jochen Lehmann, “Chemie der Kohlenhydrate: Monosaccharide und Derivate”(Chemistry of Carbohydrates: Monosaccharides and Derivatives), Georg Thieme Verlag, Stuttgart 1974)(これらを参照により本明細書の一部とする)に記載されているように進行する。
【0054】
特に、Actがカルバメートを形成するようなアルコキシカルボニル基である場合、反応は好ましくは塩基性条件下に実施する。塩基は化学当量的または触媒的に使用し得る。適切な塩基は、有機または無機塩基、好ましくは有機塩基、より好ましくは窒素塩基、さらにより好ましくは三級窒素塩基である。三級窒素塩基の例は、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、DBU、TMEDAおよびトリメチルアミンである。DMAPは触媒として使用し得る。反応は適切な溶媒、好ましくは極性溶媒、例えば、酢酸エチルもしくは酢酸イソプロピル、エーテル、例えば、THFもしくはTBME、またはハロゲン化溶媒、より好ましくは、THF、塩化メチレンまたは酢酸イソプロピル中で実施し得る。反応時間および反応温度は、不所望の副産物を生成することなく、最短の時間で反応を完結させるように選択する。一般的に、反応は0℃ないし還流温度、好ましくは0ないし60℃、より好ましくは15〜50℃、例えば、20〜45℃で、10分ないし36時間、好ましくは3時間ないし24時間、最も好ましくは6時間ないし24時間、例えば、12ないし17時間で実施し得る。
【0055】
本発明の別の重要な態様は、式(VI):
【化27】

[式中、
はC1−7アルキルまたはC3−8シクロアルキルであり;
はC1−7アルキル、C2−7アルケニル、C3−8シクロアルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキルであり、それぞれが未置換であるか、またはC1−4アルキル、O−C1−4アルキル、OH、C1−4アルキルアミノ、ジ−C1−4アルキルアミノ、ハロゲンおよび/またはトリフルオロメチルによりモノ−、ジ−またはトリ−置換されており;そして
Actはアミノ保護基、とりわけカルバメートから選択される活性化基である]
で示される化合物またはその塩に関する。別の好適な態様において、Actはアシルまたは置換基を有するスルホニル基である。
【0056】
好適な態様において、RはC1−7アルキル、好ましくは分枝C3−6アルキル、最も好ましくはイソプロピルである。
好適な態様において、RはC1−7アルキル、好ましくは分枝C3−6アルキル、最も好ましくはイソプロピルである。
【0057】
好適な態様において、ActはN−保護基、例えば、ペプチド化学にて常套的に使用されるアミノ保護基(参照:“Protective groups in Organic Synthesis”, 5th. Ed. T. W. Greene & P. G. M. Wuts;参照により本明細書の一部とする)、とりわけ、保護ピロリジンの化学における保護基である。以下において、用語法“Act”は合成経路全般にわたり、一貫してその意味で使用する。“Act”はラクタム窒素上に存在する場合、活性化基として作用し、ラクタム開環後のActは保護基であることが評価される。
【0058】
好適な保護基は、例えば、(i)フェニルがモノ−、ジ−またはトリ−置換したC−C−アルキル、例えば、ベンジル、(または)ベンズヒドリルまたはトリチル(ただし、該フェニル環は未置換であるか、または1個以上の、例えば、2または3個の残基、例えば、C−C−アルキル、ヒドロキシ、C−C−アルコキシ、C−C−アルカノイル−オキシ、ハロゲン、ニトロ、シアノ、およびCF;フェニル−C1−C2−アルコキシカルボニル;およびアリルまたはシンナミルにより置換されている)からなる。特に好適なのは、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、ベンジルオキシメチル(BOM)、ピバロイルオキシメチル(POM)、トリクロロエトキシカルボニル(Troc)、1−アダマンチルオキシカルボニル(Adoc)であるが、さらにベンジル、クミル、ベンズヒドリル、トリチル、アリル、アロック(アリルオキシカルボニル)などのC1−10アルケニルオキシカルボニルでもよい。該保護基はトリアルキルシリルなどのシリル、とりわけ、トリメチルシリル、tert−ブチル−ジメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、トリメチルシリルエトキシメチル(SEM)でもよく、また置換基を有するスルホニル(例えば、C−C−アルキル、フェニルなどのアリール、C−C−アルキル、ハロ、ヒドロキシルもしくはC−C−アルコキシ置換フェニルなどの置換したアリールの置換したスルホニル、特に、トシル(4−メチル−フェニルスルホニル)、またはカンファースルホニル)または置換スルフェニル(置換アリールスルフェニル)でもよい。スルホニルおよびアシル基の使用については、文献(D. Savoia, et al., J. Org. Chem., 54, 228 (1989), およびそこに引用された文献)に言及されている。
【0059】
Actについての例は、C1−10アルケニルオキシカルボニル、C6−10アリール−C1−6アルキル、およびC1−6アルキル−カルボニル、C6−10アリール−カルボニル、C1−6アルコキシ−カルボニル、C6−10アリール−C1−6アルコキシカルボニル、C1−6アルキル−スルホニル、またはC6−10アリール−スルホニル、例えば、C1−10アルケニルオキシカルボニル、C6−10アリール−C1−6アルキル、およびC1−6アルキル−カルボニル、C6−10アリール−カルボニル、C1−6アルコキシ−カルボニル、およびC6−10アリール−C1−6アルコキシカルボニルである。好適な態様において、ActはC6−10アリール−C1−6アルコキシカルボニル、C1−6アルコキシ−カルボニル、アリルオキシカルボニルまたはC6−10アリール−C1−6アルキル、例えば、ベンジル、t−ブトキシカルボニルまたはベンジルオキシカルボニルである。好適な態様において、Actはt−ブトキシカルボニルまたはベンジルオキシカルボニルである。
【0060】
好ましくは、式(VI)で示される化合物は以下の立体化学を有する:
【化28】

【0061】
より好ましくは、式(VI)で示される化合物は以下の構造を有する:
【化29】

【0062】
最も好ましくは、式(VI)で示される化合物は以下の構造を有する:
【化30】

【0063】
式(VI)の化合物は、特に、医薬的に活性な物質、好ましくはアリスキレンなどのレニン阻害剤、とりわけ以下に記載の物質の合成に使用し得る。
【0064】
本発明の好適なさらなる態様において、この合成はさらなる工程として、または個々の合成として、式(VIII):
【化31】

[式中、RおよびRは式(II)の化合物について定義したとおりであり、またActはアミノ保護基、とりわけカルバメートから選択される活性化基であり、Rは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ−C1−6アルキルオキシまたはC1−6アルコキシ−C1−6アルキルであり;Rは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシである]
で示される化合物またはその塩を製造することからなり、式(VII):
【化32】

[式中、Yは−Li、−MgX、−マグネセート、
【化33】

などのアリールマグネシウム種(R1およびR2は本明細書に定義したとおりである)、アルキルマグネシウム種(分枝C1−7アルキル−Mgなど)、−MnX、(アルキル)MnLi−、または−CeXなどの金属含有基であり(ただし、Xはハロゲン、例えば、Cl、IまたはBr、より好ましくはBrである)、またRおよびRは式(VIII)の化合物について定義したとおりである]
で示される化合物により、上記定義の式(VI)で示されるN−活性化ラクタムラクトンまたはその塩をラクタム環開環する工程を含んでなることを含む。この製法工程それ自体ならびに化合物(VIII)および(VII)も本発明の態様を形成する。この変換については文献(D. Savoia, et al., J. Org. Chem., 54, 228 (1989)、およびその引用文献)を参照されたい。
【0065】
式(VIII)で示される化合物のR、RおよびActの好適な態様は、式(VI)の化合物についての定義から判断し得る。
好適な態様において、Rはヒドロキシル、C1−6アルコキシ−C1−6アルキルオキシまたはC1−6アルコキシ−C1−6アルキル、より好ましくは、C1−4アルコキシ−C1−4アルキルオキシ、最も好ましくは、メトキシプロポキシである。
好適な態様において、RはヒドロキシルまたはC1−4アルコキシ、より好ましくは分枝のC1−4アルコキシ、最も好ましくは、メトキシである。
【0066】
好ましくは、式(VIII)で示される化合物は以下の立体化学を有する:
【化34】

【0067】
好適な例において、式(VIII)で示される化合物は以下の式を有する:
【化35】

【0068】
式(VII)で示される化合物は、式(VII')の化合物から、好ましくはインサイチュで入手可能である:
【化36】

[式中、Xはハロゲン、例えば、Cl、IまたはBr、より好ましくはBrであり;RおよびRは上記式(VIII)の化合物について定義したとおりである]。
【0069】
式(VII)で示される化合物は、当業者周知の方法に従って、特に、ハロゲン金属交換手法、例えば、数種の異なる方法を記載する以下の参照文献の記載に従って、調製し得る:
【0070】
文献1(マグネセートについて):a) K. Oshima et al., Angew. Chem., Int. Ed. 2000, 39, 2481 およびそこでの引用文献;b) K. Oshima et al.; J. Organomet. Chem., 1999, 575, 1−20;c) K. Oshima et al., J. Org. Chem., 66, 4333 (2001); d) A. Akao et al., Tetrahedron Lett., 47, 1877 (2006);e) K. Ishihara et al., Org. Lett., 7, 573 (2005), トリアルキルMgLi−マグネセートのカルボニル基への付加を報告;f) T. Mase et al., Tetrahedron Lett., 42, 4841 (2001)。
【0071】
文献2(グリニヤール試薬):
a) P. Knochel et al., Angew. Chem. Int. Ed 2000, 39, 4414
b) P. Knochel et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2003, 42, 4438
c) Houben-Weyl, Vol. 13/2a, page 53 - 526
d) P. Knochel et al.; Synthesis 2002, 565,
e) P. Knochel et al., Angew. Chem., 118, 165 (2006), 電子豊富ジアリールMg化合物
f) S. Hall et al., Heterocycles, 24, 1205 (1987), Li金属による直接的Li−ハロゲン交換
g) Pat. Appl.; DE 10240262 A1, 2004.03.11, Li金属による直接的Li−ハロゲン交換
h) C. Feugeas, Bull. Soc. Chim. Fr., (8) 1892-1895 (1964); 電子豊富Mg化合物を生じる電子豊富ブロモアリール化合物へのMg金属の直接作用
i) C. Feugeas, Comptes Rendus, 90, (1), 113-116 (1965); 電子豊富ブロモアリール化合物へのMg金属の直接作用
j) B. Bogdanovic et al., Angew. Chem., Int. Ed., 39, 4610 (2000)
k) Handbook of Grignard Reagents (Eds. G. S. Silverman, P.E. Rakita) Marcel Dekker, New York, 1996
l) N. Krause, “Metallorganische Chemie”, Spektrum Akademischer Verlag, Heidelberg, 1996, Chapter 3
m) “Grignard Reagents - New Developments”, Ed. H.G. Richey, John Wiley & Sons, Chichester, 2000
これらのすべてを参照により本明細書の一部とする。
【0072】
一般的に、有機金属種(VII)は上記の異なる文献に従って、化合物(VII')から調製する。通常、反応は不活性溶媒中、より好ましくは、テトラヒドロフラン、その他のエーテル類またはトルエン中、または溶媒混合物、例えば、THFなどのエーテル類とヘキサン、ヘプタンもしくはシクロヘキサンなどのアルカン類との混合物中で行う。反応時間および反応温度は、不所望の副産物を生成することなく、最短の時間で反応を完結させるように選択する。一般的に、反応は低温または室温で、例えば、0ないし30℃、より好ましくは0ないし20℃で実施し得る。一態様において、反応は0℃以下、好ましくは、−80ないし−20℃、より好ましくは−80ないし−40℃、例えば、−78ないし−50℃で、30分ないし10時間、好ましくは1時間ないし5時間、最も好ましくは、1.5ないし4時間、例えば、2ないし3時間、実施し得る。
【0073】
(VII')などの金属有機種と反応する化合物(VIII)の場合における特別のチャレンジは、ラクタム部分での反応と、対するラクトン部分での反応との間で、それを化学選択的に差別することにある。ラクタム窒素に活性化基Actを導入することにより、驚くべきことに、ラクタム環のみが開環し、ラクトンは未変化のまま留まることを本発明者らは見出した。
【0074】
式(VII)で示される化合物は、上記の変換、従って、レニン阻害剤合成における重要な試薬であることが判明した。それ故、一側面において、本発明は式(VII)で示される化合物またはその塩にも関係する:
【化37】

[式中、Yは−Li、−MgX、−マグネセート、
【化38】

などのアリールマグネシウム種(R1およびR2は本明細書に定義したとおりである)、アルキルマグネシウム種(分枝C1−7アルキル−Mgなど)、−MnX、(アルキル)MnLi−、または−CeXなどの金属含有基である(ただし、Xはハロゲン、例えば、Cl、IまたはBr、より好ましくはBrである);Rは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ−C1−6アルキルオキシまたはC1−6アルコキシ−C1−6アルキルであり;そしてRは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシである]。かかる化合物はレニン阻害剤の芳香性部分を炭素鎖に効率的様式で結合することを可能とする。
【0075】
好ましくは、YはLi、マグネセートまたはMgBrであり、より好ましくは、LiまたはMgBrであり、さらにより好ましくは、MgBrである。好ましくは、式(VII)の化合物は以下の構造を有する:
【化39】

【0076】
一態様においては、以下の構造を有する化合物が好適である:
【化40】

【0077】
好ましくは、式(VII')で示される化合物は以下の構造を有する:
【化41】

【0078】
化合物(VI)を化合物(VIII)に変換した後、大規模な精製技法を用いずに、簡単かつ簡便な方法で、化合物(VIII)を分離することが好ましい。化合物(II)の後処理と同様に、化合物(VIII)のラクトン環のけん化により、水相への移行がラクトン環の開環のため可能となるが、一方で可能性のある副生物は有機相に留まる。簡単な相分離と、引き続く水相の酸性化により、再ラクトン化が可能となり、それが純粋な化合物(VIII)の単離を可能とする。けん化は有機塩基または無機塩基などの塩基、好ましくは無機塩基での処理により達成される。その例は、LiOH、NaOH、KCOまたはNaCO、好ましくはLiOHまたはNaOHである。環化は一般に適切な溶媒中で実施される。例示は水系または水性/有機溶媒混合物、さらには有機溶媒、例えば、アルコールまたはトルエンであるが、実際にはアルコール/水混合物、例えば、エタノール/水性溶液が好ましい。相分離の後、水相は一般に酸性としてγ−ヒドロキシ酸塩をプロトン化し、γ−ヒドロキシ酸を遊離の形で得る。酸性化に適する代表的な酸は、γ−ヒドロキシ酸よりも強い酸ではあるが、分子上の他の官能基、特にAct基は未変化のままに維持するように選択する。適切な酸は有機酸、例えば、クエン酸、酒石酸、シュウ酸もしくは類似の酸、または希釈無機酸、例えば、希釈HClである。遊離の酸は、好ましくは混合物を、例えば、30ないし80℃に、より好ましくは40ないし60℃、例えば、50℃に加熱することにより、化合物(VIII)のラクトン部分を再形成する。
【0079】
従って、式(VIII');
【化42】

[式中、
はC1−7アルキルまたはC3−8シクロアルキルであり;
はC1−7アルキル、C2−7アルケニル、C3−8シクロアルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキルであり、それぞれが未置換であるか、またはC1−4アルキル、O−C1−4アルキル、OH、C1−4アルキルアミノ、ジ−C1−4アルキルアミノ、ハロゲンおよび/またはトリフルオロメチルによりモノ−、ジ−またはトリ−置換されており;
は、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ−C1−6アルキルオキシまたはC1−6アルコキシ−C1−6アルキルであり;
は、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシであり;そして
Actはアミノ保護基、とりわけカルバメートから選択される活性化基である]
で示される化合物またはその塩は、アリスキレンなどのレニン阻害剤の効率的な方法による製造法の有用な中間体である。従って、かかる化合物ならびに中間体(VIII')を用いての化合物(VIII)の取得方法もまた本発明の一態様を形成する。
【0080】
式(VIII')の化合物の特に好適な例は、塩、すなわち、カルボン酸塩である。好適な例は、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩などの無機塩、例えば、Li、Na、K、Mg、Caの塩、または有機塩、例えば、一級、二級もしくは三級のアミン塩である。一級アミンの例は、C3−8シクロアルキルアミン(シクロヘキシルアミンなど)、一級芳香族アミン(アニリンなど)、アリールアルキルアミン(ベンジルアミンなど)およびアリール分枝アルキルアミン(フェニル−またはナフチルエチルアミンなど)を包含する。二級アミンは、N−ジ置換(C1−7アルキル、C3−8シクロアルキル、フェニル、および/またはフェニル−C1−4アルキル)アミン、例えば、ジ(C1−7アルキル)アミンまたはジシクロへキシルアミンを包含する。三級アミンは、N−トリ置換(C1−7アルキル、C3−8シクロアルキル、フェニル、および/またはフェニル−C1−4アルキル)アミンを包含する。とりわけ好適なのはLi塩である。
【0081】
式(VIII)で示される化合物を塩の形状で使用することの利点は、製造過程で取り扱い易い固体、好ましくは結晶性物質を生成させる機会のあることである。もう一つの利点は、C1カルボニルがカルボン酸の塩であり、ラクトンの部分ではない場合のC8カルボニル基の還元のために、広範囲の還元剤を使用し得ることである。
【0082】
かかる塩は当該技術分野で既知の、また実施例に記載したような標準的手法により得られる。一つの方法として、該塩は上記のそれぞれの塩基により式(VIII)の化合物の開環後に、けん化することにより直接入手される。別法として、式(VIII')の遊離酸を塩基性とし、γ−ヒドロキシ酸塩を脱プロトン化して、γ−ヒドロキシ酸を塩の形状で得ることができる。塩の形成に適する代表的な塩基は、該酸を塩に変化させるが、分子上の他の官能基、特にAct基を未変化のままに維持するように選択する。適当な塩基は、無機塩基、例えば、LiOH、NaOH、Ca(OH)、KCO、NaCO、Mg(OH)、MgCO、または有機塩基、例えば、アミン塩基、とりわけ、一級、二級または三級のアミン塩基、とりわけ上記の塩基である。
【0083】
化合物(VIII)の好適な態様は、化合物(VIII')にとっても好適である。特に、以下の立体化学:
【化43】

またはその塩、特に本明細書に記載されたものが好適である。好ましくは、該化合物は以下の式:
【化44】

を有し、または好ましくはその塩、特に本明細書に記載されたものが好適である。
【0084】
本発明の好適なさらなる態様においては、この合成はさらなる工程として、または個々の合成として、式(IX):
【化45】

[式中、RおよびRは式(II)の化合物について定義したとおりであり、RおよびRは式(VIII)の化合物について定義したとおりであり、Actはアミノ保護基、とりわけカルバメートから選択される活性化基である]
で示される化合物またはその塩の製造法であって、上記定義の式(VIII)で示される化合物のベンジルカルボニルをメチレン部分に還元することを含む。この製法の工程もそれ自体で本発明の態様を形成する。同様に、この反応は出発原料として式(VIII')で示される化合物を用いて実施し得る。
【0085】
、RおよびActにとっての好適な態様は、式(VI)の化合物についての定義から判断し得るし、またRおよびRについての好適な態様は、式(VIII)の化合物についての定義から判断し得る。好ましくは、式(IX)により示される化合物は、以下の立体化学を有する:
【化46】

C8メチレン部分への還元は様々な手段により達成し得る。代表的には、水素化および/またはヒドリド還元が採用される;本出願において一般的用語して「還元」という用語が使用される場合、その用語は水素化およびヒドリド還元の両方を包含する。可能な変換および中間体を反応工程図2に示す。各方法の工程それ自体も、またそれぞれの中間体も本発明の態様を形成する。
【0086】
【化47】

反応工程図2:式(IX)で示される化合物への経路
【0087】
化合物(IX)への還元は、単一工程で進行するか、または中間体としての対応するアルコール(X)またはその塩を経て2工程で進行し得る:
【化48】

[式中、
はC1−7アルキルまたはC3−8シクロアルキルであり;
はC1−7アルキル、C2−7アルケニル、C3−8シクロアルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキルであり、それぞれが未置換であるか、またはC1−4アルキル、O−C1−4アルキル、OH、C1−4アルキルアミノ、ジ−C1−4アルキルアミノ、ハロゲンおよび/またはトリフルオロメチルによりモノ−、ジ−またはトリ−置換されており;
は、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ−C1−6アルキルオキシまたはC1−6アルコキシ−C1−6アルキルであり;
は、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシであり;そして
Actはアミノ保護基、とりわけカルバメートから選択される活性化基である]。
【0088】
式(X)で示される化合物は、上記の変換において、従って、レニン阻害剤の合成において重要な反応体であることが判明した。それ故、本発明の一側面は、式(X)で示される化合物を目的とするものでもある。好適な態様は化合物(VIII)についてと同様である。アルコール官能基は一般にエピマーであり、両方のエピマーを単離し得る。好ましくは、式(X)で示される化合物は以下の立体化学を有する:
【化49】

【0089】
最も好ましくは、式(X)で示される化合物は以下の構造を有する:
【化50】

【0090】
単一工程法を採用する場合も、反応は単離可能なアルコール(X)を経由して進行する。8位のアルコール部分をメチレン官能基に変換するためのこの反応は、好ましくは、分子上の他の官能基、特に基Actを未反応のまま維持するような条件下で行う。メチレン部分への変換は一般に水素化により行う。水素化は一般的に不均一系触媒または均一系触媒から選択される触媒、例えば、ウイルキンソン触媒、好ましくは不均一系触媒の存在下に行われる。触媒の例は、ラネーニッケル、パラジウム/C、Pd(OH)(パールマン触媒)、ホウ化ニッケル、白金金属もしくは白金金属酸化物、ロジウム複合体、ルテニウム複合体および酸化亜鉛、より好ましくは、パラジウム/C、白金金属または白金金属酸化物、またはラネーニッケル、最も好ましくはパラジウム/Cである。触媒は、好ましくは1ないし20%の量、より好ましくは5ないし10%の量で使用する。反応は大気圧または2〜10バールなどの高圧、例えば、5バールで実施可能であり、より好ましくは、反応は昇圧下で実施する。水素化は、好ましくは、不活性溶媒中で、より好ましくはテトラヒドロフラン、トルエン、メタノール、エタノール中で行い、この溶媒と水との混合物もまた可能である。反応時間および反応温度は、不所望の副産物を生成することなく、最短の時間で反応を完結させるように選択する。一般的に、反応は0℃ないし還流温度、好ましくは0ないし100℃、より好ましくは15〜70℃、例えば、30〜60℃で、60分ないし12時間、例えば、2時間ないし6時間実施し得る。反応時間を引き延ばすこと、例えば、8ないし24時間とすることは、完全な変換を確かなものとするために適切である。
【0091】
別法として、カルボニル部分は先ず錯体水素化物で還元してアルコール(X)とし、次いでさらに還元(水素化分解)に付して式(IX)で示される化合物を得る。
【0092】
アルコールへの還元は、好ましくは、分子上の他の官能基、特に、Act基およびラクトン部分を未変化のままに維持するような条件下で行う。参照文献:M. Larcheveque, et al., J.C.S. Chem. Commun., 83 (1985)。かかる反応は当業者周知であり、例えば、以下の文献に記載されている:Methoden der organischen Chemie” (Methods of Organic Chemistry), Houben Weyl, 4th edition, Volume IV/c, Reduction I & II. Georg Thieme Verlag, Stuttgart 1974, pp. 1-486;これらのすべてを参照により本明細書の一部とする。
【0093】
a) R. L. Augustine, “Reduktion”, Marcel Dekker, Inc., New York, 1968, 1 - 94;
b) F. Zymalkowski, “Katalytische Hydrierungen”, Ferdinand Enke Verlag, Stuttgart, 1965, pp. 103-114, 121-125, 126 - 144;
c) O.H. Wheeler, in “Chemistry of the carbonyl group”, Ed. S. Patai, Interscience, New York, 1966, Chapt. 11;
d) R. H. Mitchell et al., Tetrahedron Lett., 21, 2637 (1980);
e) R. T. Blickenstaff et al., Tetrahedron, 24, 2495 (1968);
【0094】
一般に、還元は、L−セレクトリド(L-Selectride)、水素化トリアルコキシアルミニウム、例えば、水素化トリ−tert−ブチルオキシアルミニウムリチウム、水素化トリエチルホウ素リチウム(スーパーヒドリド;登録商標)、水素化トリ−sec−ブチルホウ素リチウム)または水素化トリ−n−ブチルホウ素リチウム(文献:A.-M. Faucher et al., Tetrahedr. Let., 39, 8425 (1998), および M. Larcheveque et al., J.C.S. Chem. Commun., 83 (1985))、または水素化トリ−tert−ブトキシアルミニウムリチウム、水素化テトラアルキル−アンモニウムホウ素、Zn(BH)およびNaBHなどの存在下に行うか、またはNaBHにCeClなどのルイス酸を添加することにより行う。還元は、好ましくは、不活性溶媒中、より好ましくは、テトラヒドロフラン、ジクロロメタンもしくはトルエンまたはその溶媒の混合物中、またはTHF/水またはエタノール/水(NaBHまたは水素化テトラアルキル−アンモニウムホウ素などによる水溶性基質の場合)中で行う。文献:Fieser & Fieser, Vol. XII, page 441, およびその他の巻。反応時間および反応温度は、不所望の副産物を生成することなく、最短の時間で反応を完結させるように選択する。一般的に、反応は0℃ないし還流温度、好ましくは10ないし100℃、より好ましくは20〜80℃、例えば、30〜60℃で、1ないし48時間、好ましくは、2時間ないし12時間、最も好ましくは、3時間ないし6時間で実施し得る。
【0095】
次工程として、アルコール(X)はさらに還元して式(IX)で示される化合物とする。このメチレン部分への変換は、一般に、水素化により行う。水素化は一般的に不均一系触媒または均一系触媒から選択される触媒、例えば、ウイルキンソン触媒、好ましくは不均一系触媒の存在下に行われる。触媒の例は、ラネーニッケル、パラジウム/C、Pd(OH)(パールマン触媒)、ホウ化ニッケル、白金金属もしくは白金金属酸化物、ロジウム、ルテニウムおよび酸化亜鉛、より好ましくは、パラジウム/C、白金金属または白金金属酸化物、最も好ましくはパラジウム/Cである。触媒は、好ましくは1ないし20%の量、より好ましくは5ないし10%の量で使用する。反応は大気圧または2〜10バールなどの高圧、例えば、5バールで実施可能であり、より好ましくは、反応は昇圧下で実施する。水素化は、好ましくは、不活性溶媒中で、より好ましくはテトラヒドロフラン、酢酸エチル、トルエン、メタノール、エタノール、イソプロパノール中で行い、この溶媒と水との混合物もまた可能である。反応時間および反応温度は、不所望の副産物を生成することなく、最短の時間で反応を完結させるように選択する。一般的に、反応は0℃ないし還流温度、好ましくは0ないし100℃、より好ましくは15〜70℃、例えば、30〜60℃で、6時間ないし48時間、好ましくは、10時間ないし37時間、最も好ましくは12時間ないし24時間、例えば、20時間ないし24時間で実施し得る。
【0096】
化合物(IX)への還元もまた上記の出発原料としての対応する化合物(VIII')、とりわけLi塩などの塩の形状の化合物により進行し得る。好適な態様は上に記載したとおりである。上記開示と同様の方法で、この反応は単一工程で、または中間体として対応するアルコール(X')またはその塩を経由して進行し得る:
【化51】

[式中、
はC1−7アルキルまたはC3−8シクロアルキルであり;
はC1−7アルキル、C2−7アルケニル、C3−8シクロアルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキルであり、それぞれが未置換であるか、またはC1−4アルキル、O−C1−4アルキル、OH、C1−4アルキルアミノ、ジ−C1−4アルキルアミノ、ハロゲンおよび/またはトリフルオロメチルによりモノ−、ジ−またはトリ−置換されており;
は、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ−C1−6アルキルオキシまたはC1−6アルコキシ−C1−6アルキルであり;
は、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシであり;そして
Actはアミノ保護基、とりわけカルバメートから選択される活性化基である]。
【0097】
式(VIII')で示される化合物から式(X')への変換は、出発原料としての式(VIII)の化合物について開示した方法と条件に従って進行させ得る。好ましくは、還元は標準的条件下にヒドリド源により遂行する。ヒドリド源の例は、NaBH、LiAlH、LiBH、Ca(BH)などである。上に引用した文献に言及されている。特に好ましいのは、錯体ヒドリドである。これらは一般的には上記のものなどのヒドリド試薬、特に、NaBHまたはLiAlHなどと、キラルリガンド、例えば、ビノール(BINOL)、アミノ酸、キラルアミノアルコール、および上記ヒドリド試薬のいずれかと複合体を形成し得る他のキラルリガンドとのヒドリド試薬である。好適な手法および条件については、以下に言及されている:
1)Org. Proc. Res.& Dev., 4, (2), 107 (2000)
2)Heteroatom Chemistry, 14, (7), 603 (2003)
3)Synth. Commun., 34, 1359, (2004)
4)J. Org. Chem., 61 (24), 8586, (1996)
5)J. Org. Chem., 67, (26), 9186, (2002)
6)Synthesis, (2), 217 (2004) およびそこに引用されている文献;
これらのすべてを参照により本明細書の一部とする。
【0098】
2つのエピマー(OH基とR3に関してsynおよびanti)は異なる反応性を示し得る。特に、anti−エピマーはベンジルOH結合の水素とPd/Cなどの触媒による所望の水素化分解開裂に顕著により反応性である。
【0099】
式(X')で示される化合物は、上記の変換において、従って、レニン阻害剤の合成において重要な反応体である。それ故、本発明の一側面は式(X')で示される化合物をも目的とする。好適な態様は化合物(VIII')についてと同様である。とりわけ、式(X')で示される化合物は、式(VIII')の化合物について記載した塩の形状にあることが好ましい。アルコール官能基は一般にエピマーであり、両方のエピマーを単離し得る。好ましくは、式(X')で示される化合物またはその塩は、特に式(VIII')の化合物について本明細書に記載したように、以下の立体化学を有する:
【化52】

【0100】
最も好ましくは、式(X')で示される化合物または好ましくはその塩は、特に式(VIII')の化合物について本明細書に記載したように、以下の構造を有する:
【化53】

【0101】
式(X')で示される化合物から式(IX)で示される化合物への変換は、出発原料としての上記の式(X)の化合物について開示した方法および条件に従って進行し得る。
【0102】
式(X)で示される化合物を直接式(IX)の化合物にさらに還元する代わりに、別法として、反応工程図2に示すように、式(X)の化合物を環化して式(XI)で示されるピロリジン化合物またはその塩とすることもできる:
【化54】

[式中、
はC1−7アルキルまたはC3−8シクロアルキルであり;
はC1−7アルキル、C2−7アルケニル、C3−8シクロアルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキルであり、それぞれが未置換であるか、またはC1−4アルキル、O−C1−4アルキル、OH、C1−4アルキルアミノ、ジ−C1−4アルキルアミノ、ハロゲンおよび/またはトリフルオロメチルによりモノ−、ジ−またはトリ−置換されており;
は、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ−C1−6アルキルオキシまたはC1−6アルコキシ−C1−6アルキルであり;
は、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシであり;そして
Actはアミノ保護基、とりわけカルバメートから選択される活性化基である]。
好適な態様は化合物(VIII)についてと同じである。
【0103】
本発明の好適なさらなる態様においては、この合成はさらなる工程として、または個々の合成として、式(XI):
【化55】

[式中、R、R、R、RおよびActは上記定義のとおりである]
で示される化合物またはその塩を調製することからなり、上記定義の式(X)で示される化合物のベンジルアルコールとアミン部分とを環化させてピロリジン部分とすることを含む。本方法の工程それ自体も本発明の態様を形成する。
【0104】
、RおよびActにとっての好適な態様は、式(VI)の化合物についての定義から判断し得るし、またRおよびRについての好適な態様は、式(VIII)の化合物についての定義から判断し得る。
【0105】
式(X)で示される化合物から式(XI)のピロリジンを形成する反応は、好ましくは、分子上の他の官能基を未反応のまま維持するような条件下で行う。この反応に際してはベンジルアルコールのプロトン化が起こり、次いで水が除去されてベンジル・カルボカチオンを生じ、これが分子内で窒素原子に捕捉され、これらの条件下で安定なBoc−基またはCbz−基などのAct基と結合すると考えられる。環化反応は一般に酸性条件下で実施される。適切な酸は強有機酸もしくは無機酸または酸性イオン交換樹脂である。適切な強酸は、好ましくは、pKa<4.75を有するべきである。好適なのは、酒石酸およびシュウ酸などの有機酸、またはアリールもしくはアルキルスルホン酸、リン酸もしくはホスホン酸などの鉱酸、または酸性イオン交換樹脂、例えば、アンバーリストまたはダウエックス(ダウエックス50WX2−100、50WX2−200、50WX2−400など)であり、より好ましくは、反応は酸性イオン交換樹脂にて実施する。有機酸または無機酸を使用する場合、反応は好ましくは無水の条件下に実施する。反応は適切な溶媒、好ましくは、不活性溶媒、例えば、芳香族またはハロゲン化溶媒、より好ましくは、塩化メチレンまたはトルエン中で実施し得る。反応時間および反応温度は、不所望の副産物を生成することなく、最短の時間で反応を完結させるように選択する。一般的に、反応は0℃ないし還流温度、好ましくは10ないし40℃、より好ましくは15〜30℃、例えば、室温で、1分ないし12時間、好ましくは、10分ないし6時間、最も好ましくは、30分ないし4時間、例えば、2ないし3時間で実施し得る。
【0106】
式(XI)のピロリジンは、次いで、本発明の別の好適な態様において、還元または水素化反応により式(IX)で示される化合物に変換する。従って、本発明の好適なさらなる態様においては、この合成はさらなる工程として、または個々の合成として、式(IX):
【化56】

[式中、R、R、R、RおよびActは上記定義のとおりである]
で示される化合物またはその塩の製造法であって、上記定義の式(XI)で示される化合物のピロリジン部分を水素化または還元して開環し、8位のメチレン部分を得る。本方法の工程それ自体も本発明の態様を形成する。
【0107】
化合物(XI)から化合物(IX)への変換は、単一の工程で進行するか、または中間体としての対応するピロリジン塩(XI')またはピロリジン遊離塩基(XI”)を経て進行し得る(反応工程図2参照)。
【0108】
単一工程としての変換を実施する場合、反応は、好ましくは金属開始還元を利用する。使用される代表的な金属は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、好ましくは、Li、Na、またはCaである。かかる還元は、典型的には、液体アンモニア中で、または当業者周知の、また文献(例:Houben-Weyl, Vol. XI /1, page 968-975, およびさらに Houben-Weyl, Vol. 4/1c, pp. 645 - 657, and R. L. Augustine, “Reduktion”, Marcel Dekker, Inc., New York, 1968, “dissolving metal reduction”、参照により本明細書の一部とする)記載の低級アルキルアルコールもしくは低級アルキルアミンなどの同様の反応条件で実施する。
【0109】
中間体(XI')または(XI”)を経て式(IX)の化合物を得る場合、該ピロリジンは、好ましくは水素化に付す。水素化は一般に不均一触媒から選択される触媒の存在下に行う。触媒の例は、ラネーニッケル、パラジウム/C、Pd(OH)(パールマン触媒)、ホウ化ニッケル、白金金属もしくは白金金属酸化物、ロジウム、ルテニウムおよび酸化亜鉛、より好ましくは、パラジウム/C、白金金属または白金金属酸化物、最も好ましくはパラジウム/Cである。触媒は、好ましくは1ないし20%の量、より好ましくは5ないし10%の量で使用する。反応は大気圧または2〜10バールなどの高圧、例えば、5バールで実施可能であり、より好ましくは大気圧で実施する。水素化は、好ましくは、不活性溶媒中で、より好ましくはテトラヒドロフラン、トルエン、アルコール、例えば、メタノール、エタノールなどの溶媒中で行う;また、これらの溶媒と水との混合物も可能であり、最も好ましくは、メタノール、エタノール、およびこれらの溶媒と水との混合物である。反応時間および反応温度は、不所望の副産物を生成することなく、最短の時間で反応を完結させるように選択する。一般的に、反応は0℃ないし還流温度、好ましくは0ないし100℃、より好ましくは15〜70℃、例えば、30〜60℃または室温で、10分ないし12時間、好ましくは20分ないし6時間、最も好ましくは30分ないし4時間、例えば、1ないし3時間、実施する。より詳細については、以下の文献を参照:Tetrahedron, 54, 1753 (1998)。他の方法については、以下を参照されたい:Houben-Weyl, Vol. 4/1c, Reduktion I, page 400-405, and Houben-Weyl, Vol. XI /1, page 968-975;これらのすべてを参照により本明細書の一部とする。
【0110】
この反応に際してAct基が開裂離脱する場合、式(VI)の化合物の調製において記載されているように、それを再導入し得る。
【0111】
式(XI')で示される化合物は上記の変換、および従ってレニン阻害剤の合成において重要な反応体であることが判明した。それ故、本発明の一側面は、式(XI')で示される化合物に関する:
【化57】

[式中、
はC1−7アルキルまたはC3−8シクロアルキルであり;
はC1−7アルキル、C2−7アルケニル、C3−8シクロアルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキルであり、それぞれが未置換であるか、またはC1−4アルキル、O−C1−4アルキル、OH、C1−4アルキルアミノ、ジ−C1−4アルキルアミノ、ハロゲンおよび/またはトリフルオロメチルによりモノ−、ジ−またはトリ−置換されており;
は、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ−C1−6アルキルオキシまたはC1−6アルコキシ−C1−6アルキルであり;
は、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシであり;そして
はハロゲンイオン、トリフルオロ酢酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、シュウ酸イオン、スルホン酸イオン、トリフレートイオン、ホスホン酸イオン、またはリン酸イオンなどのアニオンであり、好ましくは、ハロゲンイオン、トリフルオロ酢酸イオン、硫酸イオン、ホスホン酸イオン、リン酸イオンまたはシュウ酸イオンである]。
【0112】
およびRについての好適な態様は、式(VI)の化合物についての定義から判断し得るし、またRおよびRについての好適な態様は、式(VIII)の化合物についての定義から判断し得る。
【0113】
式(XI”)で示される化合物は上記の変換、および従ってレニン阻害剤の合成において重要な反応体であることが判明した。それ故、本発明の一側面は、式(XI”)で示される化合物に関する:
【化58】

[式中、
はC1−7アルキルまたはC3−8シクロアルキルであり;
はC1−7アルキル、C2−7アルケニル、C3−8シクロアルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキルであり、それぞれが未置換であるか、またはC1−4アルキル、O−C1−4アルキル、OH、C1−4アルキルアミノ、ジ−C1−4アルキルアミノ、ハロゲンおよび/またはトリフルオロメチルによりモノ−、ジ−またはトリ−置換されており;
は、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ−C1−6アルキルオキシまたはC1−6アルコキシ−C1−6アルキルであり;そして
は、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシである]
【0114】
およびRについての好適な態様は、式(VI)の化合物についての定義から判断し得るし、またRおよびRについての好適な態様は、式(VIII)の化合物についての定義から判断し得る。
【0115】
式(X)で示される化合物を直接式(IX)の化合物に向けてさらに還元する代わりに、別法として、式(X)で示される化合物を式(X”)で示される活性化化合物に変換し得る。従って、本発明の好適なさらなる態様においては、この合成はさらなる工程として、または個々の合成として、式(X”):
【化59】

[式中、RおよびRは式(II)の化合物について定義したとおりであり、RおよびRは式(VIII)の化合物について定義したとおりであり、Actはアミノ保護基、とりわけカルバメートから選択される活性化基であり、またAct”は電子吸引性基である]
で示される化合物またはその塩の製造法であって、上記定義の式(X)で示される化合物のベンジルアルコールを活性化アルコール部分に変換することを含む。この方法の工程それ自体ならびに(X”)で示される化合物も本発明の態様を形成する。
【0116】
、RおよびActについての好適な態様は、式(VI)の化合物についての定義から判断し得るし、またRおよびRについての好適な態様は、式(VIII)の化合物についての定義から判断し得る。
【0117】
活性基Act”は文献(F. J. McQuillin, et al., J.C.S., (C), 136 (1967)およびHouben-Weyl, Vol. 4/1c, pp 73, 379-383)によると、電子吸引性基であるべきである。例えば、トリフルオロアセチル、または同様の電子吸引性基である。かかる電子吸引性基、例えば、−CO−CFまたは−CO−CnFm(ただし、Cnは2ないし8個の飽和炭素鎖を意味し、mは1ないし12である)は、不活性のベンジルOH基に比べて、30〜70以上のファクターでベンジル炭素−酸素結合の水素化分解切断を強める。従って、Act”基は、Act”=−(C=O)−Rタイプであるべきであり;ただし、Rは置換基を有するアルキル、アルキル−オキシ−R10、アラルキル、アリール、置換基を有するアリール(とりわけ、F、CF、NOまたはSOアルキルもしくはSOアリールなどのEWG−置換基が置換する)、O−アルキル、O−アリール、NH−R10(ただし、R10はアルキル、アリール、アラルキル、ベンジル、ベンゾイル、置換スルホニルであり得る)であり得る。すべての事例において、EWG部分、例えば、1つ以上のFまたはCFはこれらの残基の一部であるべきである。
【0118】
Act”のような活性化基の付着は、非プロトン性不活性溶媒、例えば、トルエン、TBME、EtOAc、ジクロロメタンなど中、タイプ(X)の化合物と、上記カルボン酸の酸ハロゲン化物もしくは対称無水物もしくは他の酸との混合無水物、またはホスゲン誘導体、または炭酸エステル、またはイソシアン酸エステル、またはベンゾイルイソシアン酸エステルもしくはスルホニルイソシアン酸エステルなどと反応させることにより活性化することができる。
【0119】
次いで、式(X”)で示される化合物は、式(IX)の化合物に変換し得る。従って、本発明の好適なさらなる態様においては、この合成はさらなる工程として、または個々の合成として、式(IX):
【化60】

[式中、R、R、R、RおよびActは上記定義のとおりである]
で示される化合物またはその塩の製造法であって、上記定義の式(X”)で示される化合物の活性化したアルコール部分を水素化または還元して、8位のメチレン部分を得る。本製法の工程それ自体も本発明の態様を形成する。
本方法の条件は式(X)の化合物から式(IX)の化合物に変換するのと同様の方法で選択し得る。
【0120】
さらなる代替法として、式(X)で示される化合物はラジカルに基づく脱酸素反応(還元)に付し、式(IX)で示される化合物とする。ラジカルに基づく還元は立体化学的に差異を生じ難い;その理由は、通常平面の炭素ラジカル中間体を生じ、それが水素ラジカルとの組換えにより還元されるからである。このことがこの場合、式(X)の化合物の両方のエピマーに同じ還元性を与える。
【0121】
従って、本発明の代替となる態様において、この合成はさらなる工程として、または個々の合成として、式(IX):
【化61】

[式中、RおよびRは式(II)の化合物について定義したとおりであり、Actはアミノ保護基、とりわけカルバメートから選択される活性化基であり、またRは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ−C1−6アルキルオキシまたはC1−6アルコキシ−C1−6アルキルであり、Rは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシである]
で示される化合物またはその塩の製造法であって、本明細書に定義の式(X)で示される化合物をチオカルボニル誘導体に転換し、引き続きそれをラジカルに基づく還元に付して、式(IX)で示される化合物を得ることからなる。本製法の工程それ自体も本発明の態様を形成する。
【0122】
チオカルボニル誘導体はラジカルに基づく脱酸素反応に適する技術上知られた既知のチオカルボニル誘導体であり得る。好適な例は、イミダゾリルなどのチオノカルバメート、キサンテートなどのチオカルボニル、またはチオノカルボネートである。特に好適なのは式(XV)で示されるチオノカルバメートまたはその塩である。
【化62】

[式中、RおよびRは式(II)の化合物について定義したとおりであり、またActはアミノ保護基、とりわけカルバメートから選択される活性化基であり、Rは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ−C1−6アルキルオキシまたはC1−6アルコキシ−C1−6アルキルであり、Rは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシである]。
【0123】
式(XV)で示される化合物は上記の変換、および従ってレニン阻害剤の合成において重要な反応体であることが判明した。それ故、本発明の一側面は、式(XV)で示される化合物を目標とする。好適な態様は化合物(VIII)についてと同様である。アルコール官能基は一般的にエピマーであり、両方のエピマーを単離し得る。好ましくは、式(XV)で示される化合物は以下の立体化学を有する:
【化63】

【0124】
ベンジルアルコールからチオノカルボニル誘導体への転換のためには、当該技術分野で既知の方法を採用し得る。チオノカルバメート、とりわけ式(XV)で示される化合物については以下の文献を参照されたい;例えば、方法については:Derek H. R. Barton and Stuart W. McCombie, J. Chem. Soc., Perkin Trans. 1, 1975, 1574;キサンテートなどのチオカルボニルについては:Derek H. R. Barton, Doo Ok Jang, Joseph Cs. Jaszberenyi, Tetrahedron Letters 1990, 31, 3991; チオノカルボネートについては: M.J. Robins, J. S. Wilson, J. Am. Chem. Soc. 1981, 103, 933およびM.J. Robins, J. S. Wilson, J. Am. Chem. Soc. 1983, 105, 4059。
【0125】
ラジカルに基づく脱酸素反応は、標準的な方法論、とりわけ、チオカルボニル誘導体形成についての参照文献に示されたバートン−マックコビー(Barton. McCombie)条件を用いて実施する。還元剤として、BuSnHまたはトリス(トリメチルシリル)シランを使用することが好ましい。トリス(トリメチルシリル)シランを還元剤として使用する場合、ドデシル−メルカプタンなどの三級チオールを触媒として加える。トリス(トリメチルシリル)シランを用いる条件については、文献(例:Dietmar Schummer, Gerhard Hofle, Synlett. 1990, 705)を参照されたい。別法として、別の還元剤、例えば、NaBHの存在下に触媒量のBuSnHを採用し得る。他のシラン類、例えば、フェニルシラン、ジフェニルシランおよびトリフェニルシランもこの還元工程にとって有用であり;参照例:D. H. R. Barton, P. Blundell, J. Dorchak, D. O. Jang and, J. Cs. Jaszberenyi, Tetrahedron 1991, 47, 8969; D. H. Barton, D. O. Jang, J. Cs. Jaszberenyi, Tetrahedron 1993, 49, 7193。文献上、ラジカルに基づく脱酸素反応に使用されているさらなる還元剤、例えば、亜リン酸ジアルキル、次亜リン酸およびその塩(参照例:T. Sato, H. Koga, K. Tsuzuki, Heterocycles 1996, 42, 499)ならびにジラウロイル過酸化物存在下の2−プロパノール(参照例:A. Liard, B. Quicklet-Sire, S. Z. Zard, Tetrahedron Lett. 1996, 37, 5877)なども所望の脱酸素反応を達成するために有用である。
【0126】
式(VI)で示される化合物から、中間体を単離せずに、ワン−ポット合成として、直接式(X)の化合物を得ることも可能である。従って、本発明の代替となる態様において、この合成はさらなる工程として、または個々の合成として、式(X):
【化64】

[式中、RおよびRは式(II)の化合物について定義したとおりであり、またActはアミノ保護基、とりわけカルバメートから選択される活性化基であり、Rは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ−C1−6アルキルオキシまたはC1−6アルコキシ−C1−6アルキルであり;Rは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシである]
で示される化合物またはその塩の製造法であって、上記定義の式(VI)で示されるN−活性化したラクタムラクトンまたはその塩を、上記定義の式(VII):
【化65】

[式中、Yは−Li、−MgX、−マグネセート、
【化66】

などのアリールマグネシウム種(R1およびR2は本明細書に定義したとおりである)、アルキルマグネシウム種(分枝C1−7アルキル−Mgなど)、−MnX、(アルキル)MnLi−、または−CeXなどの金属含有基であり(ただし、Xはハロゲン、例えば、Cl、IまたはBr、より好ましくはBrである)、またRおよびRは上記式(X)の化合物について定義したとおりである]
で示される化合物またはその塩により、ラクタム環開環し、上記定義の式(VIII')で示される化合物またはその塩とし、次いで、式(VIII')で示される化合物またはその塩のベンジルカルボニル基を還元して、上記定義の式(X')で示される化合物またはその塩とし、式(X')で示される化合物をラクトン化して、式(X)で示される化合物を得る工程を含んでなることを含む。この製法の工程それ自体もまた本発明の態様を形成する。この変換についても文献(D. Savoia, et al., J. Org. Chem., 54, 228 (1989), およびその引用文献)を参照されたい。
【0127】
式(VI)、(VII)、(VIII')、(X') および (X) で示される化合物についての好適な態様は、上記定義のこれら化合物のそれぞれについての定義から判断し得る。最も好ましくは、化合物(VIII')および(X')の両方が塩の形状、特にLi塩として用いる。
【0128】
式(VIII')で示される化合物から式(X)で示される化合物への変換については、各変換について個々に上に記載した方法と同じまたは類似の方法が採用され得る;すなわち、式(VI)で示される化合物から式(VIII)で示される化合物への変換(式(VIII')で示される化合物への塩形成、および式(X')で示される化合物へのさらなる変換を含む)について記載したとおりである。この最終工程については、とりわけ、式(VIII')で示される化合物から式(X')で示される化合物への変換について開示した方法が採用されるべきであり、好ましくは、そこに言及されているヒドリド還元条件、例えば、NaBHまたはLiAlHなどのヒドリド試薬、およびそこに記載された錯体ヒドリド条件などである。該遊離の酸は、好ましくは、混合物を、例えば、30ないし80℃に、より好ましくは40ないし60℃、例えば、50℃に加熱することにより、化合物(X)のラクトン部分を形成する。ラクトン形成のためには、一般的に、当該技術分野で既知の緩和な酸性条件などの酸性条件、例えば、クエン酸などの有機酸が採用される。
【0129】
本発明の好適なさらなる態様においては、この合成はさらなる工程として、または個々の合成として、式(XII):
【化67】

[式中、RおよびRは式(II)の化合物について定義したとおりであり、RおよびRは式(VIII)の化合物について定義したとおりであり、またActはアミノ保護基、とりわけカルバメートから選択される活性化基である]
で示される化合物またはその塩の製造法であって、上記定義の式(IX)で示される化合物またはその塩と、式(XIII):
【化68】

[式中、アミド窒素は所望により保護されていてもよく、その保護基は式(XII)の対応する保護化合物において除去し得る]
で示されるアミンまたはその塩を反応させることを含む。本方法の工程それ自体も本発明の態様を形成する。
【0130】
この変換は当該技術分野で周知の典型的なペプチドカップリング反応に従って、例えば、EP−A−678 503(参照により本明細書の一部とする)に開示された類似の方法(特に、実施例124および131参照)に従って、またはWO02/02508(参照により本明細書の一部とする)に開示された類似の方法(特に、35ページの実施例H1(J1の調製))に従って、進行させ得る。
【0131】
、RおよびActについての好適な態様は、式(VI)の化合物についての定義から判断し得る;またRおよびRおよびActについての好適な態様は、式(VIII)の化合物についての定義から判断し得る。好ましくは、式(XII)で示される化合物は以下の立体化学を有する:
【化69】

【0132】
反応は、好ましくは、ラクトンからアミドを形成するための標準的な条件下、例えば、適切な溶媒または溶媒混合物中、例えば、tert−ブチルメチルエーテルなどのエーテル中、好ましくは、弱酸性および弱塩基性基を有する二官能性触媒、たとえば、2−ヒドロキシピリジンもしくはプロリンの存在下に、適切な塩基、例えば、トリエチルアミンなどの三級窒素塩基の存在下、適切な温度、例えば、反応混合物の0℃ないし還流温度の範囲の温度、例えば、0ないし85℃の温度で行う。
【0133】
上記のように式(XIII)で示される化合物を用いる化合物(XII)へのアミドカップリングは、式(IX)で示される化合物の開環類似体を用いて、上記と同様の方法で進行させ得る。従って、本反応は出発原料として式(IX')の対応する化合物またはその塩を使用することで進行させ得る:
【化70】

[式中、
はC1−7アルキルまたはC3−8シクロアルキルであり;
はC1−7アルキル、C2−7アルケニル、C3−8シクロアルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキルであり、それぞれが未置換であるか、またはC1−4アルキル、O−C1−4アルキル、OH、C1−4アルキルアミノ、ジ−C1−4アルキルアミノ、ハロゲンおよび/またはトリフルオロメチルによりモノ−、ジ−またはトリ−置換されており;
は、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ−C1−6アルキルオキシまたはC1−6アルコキシ−C1−6アルキルであり;
は、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシであり;
また、Actはアミノ保護基、とりわけカルバメートから選択される活性化基である]。本方法の工程それ自体も本発明の態様を形成する。
【0134】
式(IX)で示される化合物から式(IX')で示される化合物への変換は、上記式(II)の化合物から式(II')の化合物へのラクトン環開環について開示した方法と条件に従って進行させ得る。推奨されることは、アミドカップリング結合に先立って、式(IX')で示される化合物のアルコール部分を保護することであり、標準的アルコール保護/脱保護化学が採用され得る。
【0135】
式(IX')で示される化合物は、上記の変換において、従って、レニン阻害剤の合成において重要な反応体であることが判明した。それ故、本発明の一側面は式(IX')で示される化合物を目標とするものでもある。好適な態様は化合物(VIII')についてと同様である。特に、式(IX')で示される化合物は式(VIII')で示される化合物について記載した塩の形状にあることが好ましい。好ましくは、式(X')で示される化合物または好ましくはその塩は、特に、式(VIII')の化合物について本明細書に記載したように、以下の立体化学を有する:
【化71】

【0136】
最も好ましくは、式(IX')で示される化合物または好ましくはその塩は、特に、式(VIII')の化合物について本明細書に記載したように、以下の構造を有する:
【化72】

【0137】
式(IX')で示される化合物から式(XII)で示される化合物への変換は、出発原料としての上記の式(IX)で示される化合物について開示した方法と条件に従って、進行させ得る。
【0138】
式(XII)で示される化合物は、次いで、式(XIV):
【化73】

[式中、RおよびRは式(II)の化合物について定義したとおりであり、RおよびRは式(VIII)の化合物について定義したとおりである]
で示される化合物またはその塩に変換し得る:当該変換は活性化基Actを除去すること;所望により、得られる式(XIV)で示される遊離の化合物を塩に変換する(こちらが好ましい)か、または得られる塩を式(XIV)で示される遊離の化合物もしくはその異なる塩に変換することからなる。例えば、Actが(好ましい基)C−C−アルコキシカルボニル基、例えば、tert−ブトキシカルボニルである場合、その除去は通例の条件下、例えば、ハロゲン化水素酸などの酸の存在下、ジオキサンなどの適切な溶媒中、例えば、0ないし50℃の温度、例えば、室温で行うことができる。Act基の除去は、下記引用文献に記載された手法に従い、標準的保護基化学を用いて、または当該技術分野で周知の方法を用いて実施する;参照例:EP−A−0678503(参照により本明細書の一部とする)、特に、実施例130、また選択肢として、例えば、US−A−5,559,111(参照により本明細書の一部とする)に記載された反応条件を用いる塩形成、特に、実施例83参照。
【0139】
上記方法の各工程は、アリスキレンなどのレニン阻害剤を製造する方法において、個々に使用することができる。好ましくは、これらの工程は1つ以上を組合わせて、最も好ましくは、すべてを組合わせて使用し、アリスキレンなどのレニン阻害剤を製造する。
【0140】
、RおよびActについての好適な態様は、式(VI)の化合物についての定義から判断し得る;またRおよびRおよびActについての好適な態様は、式(VIII)の化合物についての定義から判断し得る。最も好ましくは、該化合物はアリスキレンである。
【0141】
これらの異なる合成工程および経路のすべてが、式(II)と(VI)の化合物とともに、非常に重要な新規化合物が、特に、アリスキレンなどのレニン阻害剤の合成のための多くの可能な合成経路に対する中心的中間体であることが判明したことを示している。従って、これらの式(II)と(VI)の化合物またはその塩、ならびにそれらの合成は、本発明の極めて良好な態様を形成する。
【0142】
下記に掲載したのは、本発明の新規の中間体および合成工程を記載するために使用される種々の用語の定義である。これらの定義は、本開示に使用される1つ、またはそれ以上またはすべての一般的表記または記号に置き換えたときに、結果として本発明の好適な態様を生み出し、それらが明細書全体で使用された場合に、個々にまたはより大きなグループの一部として特定の事例に制限されるものでない限り、この用語に適用される。
【0143】
「低級」または「C−C−」という用語は、最大7個を含む7個までの炭素原子、特に最大4個を含む4個までの炭素原子からなる部分と定義し、当該部分は分枝(1回以上)または直鎖であり、末端でまたは非末端経由で結合する。低級またはC−C−アルキルとは、例えば、n−ペンチル、n−ヘキシルまたはn−ヘプチルであるか、または好ましくは、C−C−アルキル、特に、メチル、エチル、n−プロピル、sec−プロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルである。
【0144】
ハロまたはハロゲンは、好ましくは、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードであり、最も好ましくは、フルオロ、クロロまたはブロモであり;ハロという場合、これは1個以上(例えば、3個まで)のハロゲン原子が存在することを意味し得る;例えば、ハロ−C−C−アルキルはトリフルオロメチル、2,2−ジフルオロエチルまたは2,2,2−トリフルオロエチルなどである。
【0145】
アルキルは好ましくは20個までの炭素原子を有し、より好ましくはC−C−アルキルである。アルキルは直鎖または分枝(1回または、所望により、また可能であればそれ以上)である。とりわけ好ましいのはメチルである。
【0146】
ハロゲンアルキルは直鎖または分枝でもよく、好ましくは、1ないし4C原子、とりわけ1または2C原子で構成される。その例は、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、2−クロロエチルおよび2,2,2−トリフルオロエチルである。
【0147】
分枝アルキルは、好ましくは、3ないし6C原子から構成される。その例は、i−プロピル、i−およびt−ブチル、およびペンチルおよびヘキシルの分枝した異性体である。
【0148】
シクロアルキルは、好ましくは、3ないし8個の環炭素原子から構成され、3または5個が特に好ましい。一部の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロオクチルである。該シクロアルキルは選択肢として1個以上の置換基により置換されていてもよく、その置換基は、アルキル、ハロ、オキソ、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、チオール、アルキルチオ、ニトロ、シアノ、ヘテロシクリルなどである。
【0149】
アルケニルは二重結合を含む直鎖または分枝のアルキルであり、好ましくは、2ないし12C原子から構成され、2ないし8C原子が特に好ましい。特に好ましいのは、直鎖のC2−4アルケニルである。アルキル基の一部の例は、エチルおよびプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタシルおよびエイコシルの異性体であり、そのそれぞれが二重結合を含む。特に好適なのはアリルである。
【0150】
アルキルアミノおよびジアルキルアミノは直鎖であっても、分枝であってもよい。そのいくつかの例は、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、およびジエチルアミノである。
【0151】
アルコキシ−アルキルオキシは直鎖であっても、分枝であってもよい。アルコキシ基は、好ましくは、1ないし4C原子、特に、1または2C原子から構成され、アルキルオキシ基は、好ましくは、1ないし4C原子から構成される。その例は、メトキシメチルオキシ、2−メトキシエチルオキシ、3−メトキシプロピルオキシ、4−メトキシブチルオキシ、5−メトキシペンチルオキシ、6−メトキシヘキシルオキシ、エトキシメチルオキシ、2−エトキシエチルオキシ、3−エトキシプロピルオキシ、4−エトキシブチルオキシ、5−エトキシペンチルオキシ、6−エトキシヘキシルオキシ、プロピルオキシメチルオキシ、ブチルオキシメチルオキシ、2−プロピルオキシエチルオキシおよび2−ブチルオキシエチルオキシである。
【0152】
アルコキシアルキルは直鎖であっても、分枝であってもよい。アルコキシ基は、好ましくは、1ないし4C原子、特に、1または2C原子から構成され、アルキル基は、好ましくは、1ないし4C原子から構成される。その例は、メトキシメチル、2−メトキシエチル、3−メトキシプロピル、4−メトキシブチル、5−メトキシペンチル、6−メトキシヘキシル、エトキシメチル、2−エトキシエチル、3−エトキシプロピル、4−エトキシブチル、5−エトキシペンチル、6−エトキシヘキシル、プロピルオキシメチル、ブチルオキシメチル、2−プロピルオキシエチルおよび2−ブチルオキシエチルである。
【0153】
アルコキシ基は直鎖であっても、分枝であってもよく、好ましくは、1ないし4C原子から構成される。その例は、メトキシ、エトキシ、n−およびi−プロピルオキシ、n−、i−およびt−ブチルオキシ、ペンチルオキシおよびヘキシルオキシである。
【0154】
保護基が存在してもよく(“一般的製法条件”の項も参照)、保護基は不所望の二次反応、例えば、環化、エーテル化、エステル化、酸化、加溶媒分解、および同様の反応に対して関わる官能基を保護すべきものである。保護基の特徴とするところは、それらがそれ自体で容易に、すなわち、不所望の二次反応なしに、一般的には、加溶媒分解、還元、光分解により、または酵素活性によっても、例えば、生理的条件に類似の条件下での除去に適していること、そしてそれらが最終産物には存在していないことである。専門家は本明細書にすでに述べた反応および以下に述べる反応に、どの保護基が適しているかを知っており、または容易に設定することができる。好ましくは、もし本明細書に示した1つの中間体に2つ以上の保護基が存在するならば、それらは、その基の1つを除去する必要のある場合、例えば、異なる条件下で切断し得る2つ以上の異なる保護基を使用し、選択的に切断を実施し得る;例えば、一方のものは緩和な加水分解により、他方はより強い条件による;一方は酸の存在下の加水分解により、また他方は塩基の存在下の加水分解による;または一方は還元的切断により(例えば、接触還元により)、他方は加水分解により、などである。
【0155】
ヒドロキシル保護基としては、ヒドロキシ基の可逆的保護に適する基、例えば、“一般的製法条件”の項、標準的教科書に示されている基が可能である。ヒドロキシル保護基は、2〜3の例について述べると、以下の(とりわけ、以下からなる)群より選択し得る:シリル保護基、とりわけ、ジアリール−低級アルキル−シリル、例えば、ジフェニル−tert−ブチルシリル、またはより好ましくは、トリ−低級アルキルシリル、例えば、tert−ブチルジメチルシリルまたはトリメチルシリル;アシル基、例えば、アセチルなどの低級アルカノイル;ベンゾイル;tert−ブトキシカルボニル(Boc)などの低級アルコキシカルボニル、またはベンジルオキシカルボニルなどのフェニル−低級アルコキシカルボニル;テトラヒドロピラニル;未置換または置換1−フェニル−低級アルキル、例えば、ベンジルもしくはp−メトキシベンジル、およびメトキシメチル。Boc(加水分解により選択的に除去し得る)およびベンジル(水素化分解により選択的に除去し得る)が特に好適である。
【0156】
アミノ保護基としては、ヒドロキシ基の可逆的保護に適する基、例えば、“一般的製法条件”の項、標準的教科書に示されている基が可能である。アミノ保護基は、2〜3の例について述べると、以下の(とりわけ、以下からなる)群より選択し得る:アシル(とりわけ、カルボニル基経由で結合する有機炭酸の残基またはスルホニル基経由で結合する有機スルホン酸の残基)、アリールメチル、エーテル化メルカプト、2−アシル−低級1−アルケニル、シリルまたはN−低級アルキルピロリジニリデン。好適なアミノ保護基は、低級アルコキシカルボニル、特に、tert−ブトキシカルボニル(Boc)、フェニル−低級アルコキシカルボニル、たとえば、ベンジルオキシカルボニル、フルオレニル−低級アルコキシカルボニル、例えば、フルオレニルメトキシカルボニル、2−低級アルカノイル−低級1−アルケン−2−イルおよび低級アルコキシカルボニル−低級1−アルケン−2−イルであり、最も優先的には、イソブチリル、ベンゾイル、フェノキシアセチル、4−tert−ブチルフェノキシアセチル、N,N−ジメチルホルムアミジニル、N−メチルピロリジン−2−イリデンまたは特に、tert−ブトキシカルボニルである。
【0157】
未置換または置換アリールは、好ましくは、単環状または多環状、特に、6ないし22個の炭素原子を有する単環状、二環状もしくは三環状基、とりわけ、フェニル(非常に好適)、ナフチル(非常に好適)、インデニル、フルオレニル、アセナプチレニル、フェニレニルまたはフェナントリルであり、未置換であるか、または1個以上の、特に、1ないし3個の、好ましくは以下の群から独立して選択される部分により置換される;該部分は、C−C−アルキル、C−C−アルケニル、C−C−アルキニル、ハロ−C−C−アルキル(トリフルオロメチルなど)、ハロ(特に、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード)、ヒドロキシ、C−C−アルコキシ、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、フェニル−もしくはナフチル−C−C−アルコキシ、C−C−アルカノイルオキシ、フェニル−もしくはナフチル−C−C−アルカノイルオキシ、アミノ、モノ−もしくはジ−(C−C−アルキル、フェニル、ナフチル、フェニル−C−C−アルキル、ナフチル−C−C−アルキル、C−C−アルカノイルおよび/またはフェニル−もしくはナフチル−C−C−アルカノイル)−アミノ、カルボキシ、C−C−アルコキシカルボニル、フェノキシカルボニル、ナフチルオキシカルボニル、フェニル−C−C−アルキルオキシカルボニル、ナフチル−C−C−アルコキシカルボニル、カルバモイル、N−モノ−もしくはN,N−ジ−(C−C−アルキル、フェニル、ナフチル、フェニル−C−C−アルキルおよび/またはナフチル−C−C−アルキル)−アミノカルボニル、シアノ、スルホ、スルファモイル、N−モノ−もしくはN,N−ジ−(C−C−アルキル、フェニル、ナフチル、フェニル−C−C−アルキルおよび/またはナフチル−C−C−アルキル)−アミノスルホニルおよびニトロである。
【0158】
塩とは、とりわけ、式(XIV)の化合物の医薬的に許容される塩であるか、または本明細書に言及する中間体のいずれかの一般的な塩であり;塩は、当業者が容易に理解するであろうという化学的理由で、除外されるものではない。これらは、塩基性または酸性基などの塩形成基が存在して、それが少なくとも部分的に、例えば、水溶液中でpH4〜10の範囲において解離した形状で存在し得る場合に形成されるか、または特に、固形で、特に、結晶形で単離され得る。
【0159】
かかる塩は、好ましくは式(XIV)で示される化合物から、または塩基性窒素原子(例えば、イミノまたはアミノ)をもつ本明細書に言及した中間体のいずれかから、好ましくは有機または無機の酸により、例えば、酸付加塩として、とりわけ医薬的に許容される塩として形成される。適切な無機酸は、例えば、塩酸などのハロゲン酸、硫酸、またはリン酸である。適切な有機酸は、例えば、カルボン酸、ホスホン酸、スルホン酸またはスルファミン酸類、例えば、酢酸、プロピオン酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、クエン酸、アミノ酸(グルタミン酸またはアスパラギン酸など)、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、メチルマレイン酸、安息香酸、メタン−もしくはエタン−スルホン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、1,5−ナフタレン−ジスルホン酸、N−シクロヘキシルスルファミン酸、N−メチル−、N−エチル−もしくはN−プロピル−スフファミン酸、または他の有機プロトン酸(アスコルビン酸など)である。
【0160】
カルボキシまたはスルホなど、負荷電ラジカルの存在下に、塩基によっても塩は形成され得る;例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩などの金属またはアンモニウムの塩、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウムもしくはカルシウムの塩、またはアンモニアもしくは適切な有機アミン(三級モノアミンなど)とのアンモニウム塩、例えば、トリエチルアミンもしくはトリ(2−ヒドロキシエチル)アミン、またはヘテロ環状塩基、例えば、N−エチル−ピペリジンもしくはN,N'−ジメチルピペラジンとの塩などである。
【0161】
塩基性基と酸性基が同じ分子中に存在する場合、式(XIV)で示される化合物または本明細書に言及した中間体のいずれもが、内部塩をも形成し得る。
【0162】
式(XIV)で示される化合物または一般的に本明細書に言及した中間体のいずれかについて単離または精製を目的とする場合、医薬としては許容できない塩、例えば、ピクリン酸塩または過塩素酸塩などを用いることも可能である。治療用途の場合、式(XIV)で示される化合物の医薬的に許容される塩または遊離の化合物のみが採用され(適用可能な場合、医薬製剤に含まれる)、これらは従って少なくとも式(XIV)で示される化合物の場合に好適である。
【0163】
遊離の形状およびその塩の形状にある該化合物と中間体間の密接な関連性に鑑みて、中間体として使用し得るこれらの塩を含め、例えば、該化合物またはその塩の精製または同定において、本明細書においてすでに示した、また後に示す「化合物」、「出発原料」および「中間体」に言及すること、特に式(XIV)で示される化合物に言及することは、対応する遊離の化合物の1種以上のその塩または混合物、中間体または出発原料および1種以上のその塩にも言及していると理解すべきであり;それらのそれぞれは、適切かつ好都合であり、明示的な断りのない限り、式(XIV)で示される化合物の溶媒和物、エステルもしくはアミドなどの代謝前駆体、またはこれらのいずれか1種以上の塩をも包含するものとする。異なる結晶形が得られる可能性があり、その場合も包含される。
【0164】
化合物、出発原料、中間体、塩、医薬製剤、疾患、障害などについて複数形が使用される場合、これは1種(好適)またはそれ以上の単一の化合物、塩、医薬製剤、疾患、障害などをも意味するものとし、単数表現が用いられる場合にも、これは複数を排除するものではないが、好ましくは「1つ」を意味するものである。
【0165】
出発原料は、特に、本明細書に言及した式I、III、VII および/または XIII の化合物であり、中間体は、特に式II、II'、IV、V、VI、VIII、VIII'、IX、IX'、X、X'、X“'、XI、XI'、XI”、XIIおよび/またはXVの化合物である。
【0166】
本発明は上記の式II、II'、IV、V、VI、VIII、VIII'、IX、IX'、X、X'、X”、XI、XI'、XI”、XIIおよび/またはXVで示される中間体の、それぞれ対応する上記の前駆体からの合成法にも関係し、式(XIV)で示される化合物に導く一連の単一工程からなる方法、当該合成の1つを超えるまたはすべての工程、および/または医薬的に活性な物質、とりわけレニン阻害剤、最も好ましくはアリスキレンを含む;式(XIV)で示される化合物に導く一連の単一工程からなる方法、当該合成の1つを超えるまたはすべての工程、および/または医薬的に活性な物質、とりわけレニン阻害剤、最も好ましくはアリスキレンを含む。
【0167】
一般的製法条件
以下は、単一反応の場合の可能性のある制限について、当業者の知識に従うと、一般的に本明細書にすでに示した、また後に示すすべての製法に当てはまる;反応条件は、上記または下記に具体的に示した条件が好ましい。
【0168】
本明細書にすでに示した、また後に示す反応のいずれにおいても、保護基は、適切であるかまたは所望の場合に使用し、たとえそのことが具体的に言及されていなくとも、所定の反応に関与することを望まない官能基を保護するために使用し得る;またそれらは適切な段階または所望の段階で導入および/または除去することができる。従って、保護基の使用を含む反応は、保護および/または脱保護の具体的な言及のない反応が本明細書に記載されている場合にも、可能なものとして包含される。
【0169】
本開示の範囲内に限って、式(XIV)で示される特定の所望の最終産物において、その構成物ではない容易に除去し得る基は、文言上特に断りのない限り、「保護基」と呼称する。かかる保護基による官能基の保護、保護基それ自体、およびそれらの導入および除去に適する反応は、例えば、以下の標準的参照著作物に記載されている:J. F. W. McOmie, “Protective Groups in Organic Chemistry”, Plenum Press, London and New York 1973;T. W. Greene and P. G. M. Wuts, “Protective Groups in Organic Synthesis”, Third edition, Wiley, New York 1999;“The Peptides”; Volume 3 (editors: E. Gross and J. Meienhofer), Academic Press, London and New York 1981;“Methoden der organischen Chemie” (Methods of Organic Chemistry), Houben Weyl, 4th edition, Volume 15/I, Georg Thieme Verlag, Stuttgart 1974, in H.D. Jakubke and H. Jeschkeit, “Aminosaeuren, Peptide, Proteine” (Amino acids, Petides, Proteins), Verlag Chemie, Weinheim, Deerfield Beach, and Basel 1982;“Protecting Groups”, Philip J. Kocienski, 3rd Edition, GeorgThieme Verlag, Stuttgart, ISBN 3-13-137003-3;およびJochen Lehmann, “Chemie der Kohlenhydrate: Monosaccharide und Derivate” (Chemistry of Carbohydrates: Monosaccharides and Derivatives), Georg Thieme Verlag, Stuttgart 1974;これらのすべてを参照により本明細書の一部とする。保護基の特徴は、それらが例えば、加溶媒分解、還元、光分解により、または代替として生理的条件下(例えば、酵素による切断)、容易に(すなわち、不所望の二次的反応を起こさずに)除去し得ることである。異なる保護基は、異なる工程で他の保護基を未変化のままとして、選択的に除去し得るように選択することができる。相当する代替品は、上記の標準的参照著作物に記載されたものから、または本明細書に提示した実施例から、当業者が容易に選択し得る。
【0170】
上記の製法工程はすべてそれ自体既知の反応条件下で実施し得る;好ましくは、具体的に言及した条件、溶媒または希釈剤の不存在下、または慣例的にその存在下、好ましくは使用する試薬に対して不活性であり、またそれらを溶解する溶媒または希釈剤の存在下、触媒、縮合剤または中和剤の不存在下または存在下、例えば、イオン交換体(例:カチオン交換体)、例えば、反応の、および/または反応体の性質に応じてH形状で、低下温度、通常温度または上昇温度で、例えば、約−100℃ないし約190℃の温度範囲で、好ましくは約−80℃ないし約150℃、例えば、−80ないし−60℃、室温、−20ないし40℃または還流温度で、大気圧下または密封容器中で、適切な場合には加圧下で、および/または不活性気流中、例えば、アルゴンまたは窒素気流中で実施する。
【0171】
いずれか特定の反応に適するものとして選択し得る溶媒は、製法の記載に特段の断りのない限り、具体的には、または例示としては、水、エステル(低級アルカン酸低級アルキルエステルなど、例えば、酢酸エチル)、エーテル(脂肪族エーテルなど、例えば、ジエチルエーテル;環状エーテル、例えば、テトラヒドロフランまたはジオキサンなど)、液体芳香族炭化水素(ベンゼンまたはトルエンなど)、アルコール(メタノール、エタノールまたは1−もしくは2−プロパノールなど)、ニトリル(アセトニトリルなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、塩化メチレンまたはクロロホルム)、酸アミド(ジメチルホルムアミドまたはジメチルアセトアミドなど)、塩基(ヘテロ環状窒素塩基など、例えば、ピリジンまたはN−メチルピロリジン−2−オン)、無水カルボン酸(低級アルカン酸無水物など、例えば、無水酢酸)、環状、鎖状もしくは分枝状炭化水素(シクロヘキサン、ヘキサンまたはイソペンタンなど)、またはそれらの混合物、例えば、水溶液である。かかる溶媒混合物は、例えば、クロマトグラフィーまたは分配による後処理にも使用し得る。必要により、または所望により、無水または絶対無水溶媒が使用し得る。
【0172】
要すれば、反応混合物の後処理、とりわけ所望の化合物または中間体を単離するための処理は、常套の手法と工程、例えば、限定されるものではないが、抽出、中和、結晶化、クロマトグラフィー、蒸発、乾燥、濾過、遠心分離などからなる群から選択される手法・工程に従う。
【0173】
本発明はまた、該製法のいずれかの段階で、中間体として入手し得る化合物を出発原料として使用し、残りの製法工程を実施するか、または出発原料をその反応条件下で形成させるか、または誘導体の形状、例えば、保護された形状または塩の形状で使用するか、または本発明の製法により得られる化合物を該製法の条件下に生成させ、さらにインサイチュで処理加工するこれら製法の形態に関する。本発明の製法において、これらの出発原料は、好ましいものとして記載されている式(XIV)の化合物を生じるものを好適に使用する。特別の優先性は実施例に言及した条件に一致するか、または類似の反応条件に対して与えられる。本発明はまた新規の出発化合物および本明細書に記載した中間体、とりわけ本明細書に好適であると記載した化合物に導く化合物に関する。
【0174】
本発明は特にアリスキレンまたはその医薬的に許容される塩に導く、本明細書にすでに記載した、また後に記載する方法のいずれかに関係する。
【0175】
以下の実施例は本発明の範囲を制限することなく本発明を説明するものであり、他方、これら実施例はアリスキレンまたはその塩の製造の反応工程、中間体および/または製法の好適な態様を提示するものである。
実施例中で言及する場合、「boc」はtert−ブトキシカルボニルを意味する。
【実施例】
【0176】
1)無水物を経由する式(II)のラクタムラクトンの調製
[3−イソプロピル−5−(4−イソプロピル−5−オキソ−テトラヒドロフラン−2−イル)ピロリジン−2−オン](IIa)
【化74】

化合物(IIIa)(26.45g;88.9mmol)をトルエン(150ml)に溶かす。トリエチルアミン(10.35g;102.3mmol)をトルエン(10ml)に溶かし、該出発原料の溶液に室温で加える。次いで、この溶液を0〜5℃に冷却する。この温度でクロロギ酸イソブチル(13.97g)をトルエン(10ml)に溶かした溶液を25分で加える。0〜5℃で30分間攪拌した後、その懸濁液を室温まで昇温する。反応容器を水素化装置に移し、5%Pd/C(5g)(エンゲルハード(Engelhard)4522)を加えて水素化する。21時間後、反応懸濁液を濾過する。濾液を水150mlで希釈し、有機相を分離する。水洗後、有機層を蒸発させる。粗製の物質を還流下に酢酸エチル40mlとヘプタン20mlに、澄明な溶液が得られるまで溶解する。この溶液を室温に放冷する。直ぐに結晶化が始まり、23〜25℃でさらに21時間攪拌することで完結させる。この懸濁液を0〜5℃に冷却し、この温度でさらに3時間攪拌を続ける。濾過後、生成物(IIa)をヘプタン/酢酸エチル(2:1)の冷却混合物30mlで洗い、40℃の減圧下で乾燥する。
【0177】
単結晶X線測定により、4ヶ所すべての立体中心が(S,S,S,S)の絶対配位であることを確認する。
Mp : 136-138 ℃;色:無色
1H-NMR (400MHz, CDCl3): 6.04 (s,1H), 4.22-4.16 (m,1H), 3.51-3.46 (m,1H), 2.55-2.51 (m,1H), 2.44-2.38 (m,1H), 2.17-2.09 (m,3H), 2.07-1.99 (m,1H), 1.94-1.87 (m,1H), 1.80-1.73 (m,1H) 0.99-0.97 (d, 3H), 0.95-.93 (d,3H), 0.91-0.89 (d,3H), 0.85-0.84 (d,3H)
MS: MH+ = 254
IR: 1775 = ラクトン, 1704 = ラクタム, cm-1 (FTIR顕微鏡法;透過光)
【0178】
2) 直接水素化による式(II)のラクタムラクトンの別方法
[3−イソプロピル−5−(4−イソプロピル−5−オキソ−テトラヒドロフラン−2−イル)ピロリジン−2−オン](IIa)
【化75】

化合物(Ia)(9.0g;19.7mmol)、5%パラジウム/C(1.08g)をトルエン(55ml)と共に、水素化用フラスコに容れる。水素化は室温、常圧下に実施する。24時間後に変換を分析し、完結する。反応混合物を濾過助剤床で濾過し、トルエンで洗浄して触媒を除く。減圧下にトルエンを蒸発させて白色結晶性固体を得るが、このものは化合物(IIa)とエバンス補助剤との混合物からなる。該補助剤から所望の化合物(IIa)を分離するために、結晶性固体(9.03g)をトルエン50mlに溶かす。得られる澄明な無色溶液に、室温で2N水酸化ナトリウム20mlを加える。得られるエマルジョンを室温で1時間攪拌する。ここで所望の産物はナトリウム塩として塩基性水相にあり、補助剤はトルエン相に留まる。水相をトルエン20mlで3回洗い、補助剤を完全に抽出する。次いで、水相を10%クエン酸70mlで酸性とし、pHを3に調整する。酸性化に際し、ラクタムヒドロキシル酸(II'a)が沈殿する。さらに30分間攪拌した後、結晶を濾取し、減圧乾燥し、化合物(II'a)の白色結晶性粉末を得る。
【0179】
Mp : 152-155℃
1H-NMR (DMSO-d6): 0.78 (d,3H), 0.87-0.91 (3xd,9 H), 1.36 (m,1H), 1.52 (m,1H), 1.72-1.85 (cm,3H), 1.91-1.98 (m,1H), 2.19-2.24 (m,1H), 2.33-2.38 (m,1H), 3.10-3.18 (m,1H), 3.21-3.25 (m,1H), 4.73 (broad,1H,-OH), 7.55 (bs, 1H, NH), 12.03 (broad, 1H, CO2H).
IR: 1730, 1702, 1661, cm-1 (FTIR顕微鏡法;透過光)
MS: MH+ = 272
【0180】
次いで、化合物(II'a)(3.65g)を再度トルエンに溶かし、50℃で触媒量のp−トルエンスルホン酸一水和物(0.25g)で処理する。5時間後(TLC分析)、該酸を所望のラクタム−ラクトン(IIa)に変換する。トルエン相を水50mlで2回抽出し、次いで、減圧下にトルエン相を蒸発させ、乾燥して白色結晶性の化合物(IIa)(融点136−138℃)を得る。スペクトルデータは実施例の1)の物質と一致する。
【0181】
3) 式(Va)の「アジド酸」メチルエステルの調製
【化76】

3.0g(10.1mmol)のIIIaをジクロロメタン15mlに室温で溶かす。3−メチル−1−p−トリルトリアジン(1.66g;11.1mmol)を室温で25分を要して加える。添加後、反応溶液を20〜25℃で2時間攪拌放置した。反応の間、窒素ガスが生成する。後処理のために、水30mlをこの溶液に加える。有機相を30mlの1N−HCl(2×15ml)および30mlの8%NaHCO(2×15ml)で洗う。有機相を中性pHとなるまで水45ml(3×15ml)で洗い、蒸発させてVaを黄色油として得る;このものは冷蔵庫中で結晶化する。
1H-NMR (400MHz, CDCL3): 4.40-4.36 (m,1H), 3.70 (s,3H), 3.18-3.13 (m, 1H), 2.68-2.62 (m,1H), 2.52-2.47 (m,1H), 2.18-2.10 (m, 3H), 1.98-1.93 (q,1H), 1.89-1.82 (m,1H), 1.74-1.67 (m,1H), 1.02-1.00 (d, 3H), 0.94-0.91 (m, 9H)
GC/MS: MH+ = 312
【0182】
3b) 式(Va)の「アジド酸」メチルエステルの(IIa)への水素化
【化77】

1.5gの(Va)(4.8mmol)をトルエン15mlに溶かす。5%Pd/C触媒(エンゲルハード)0.3を加え、室温、常圧下に24時間水素化を実施し、水素取り込み完結した。触媒を濾過し、濾液を減圧下に蒸発させて白色粉末を得る;このものはH−NMR、IRおよびTLCにおいて化合物(IIa)に一致する。
【0183】
4) 式(VIa)のBoc保護ラクタム−ラクトンの調製
【化78】

ラクタム−ラクトン(IIa)(14g;55.3mmol)とジメチル−アミノ−ピリジン(6.7mg;0.055mmol)を共に酢酸イソプロピル100mlに溶かす。この溶液にトリエチルアミン(5.6g;55.3mmol)を加える。この溶液を内部温度40〜45℃に加温する。この温度で二炭酸ジ−tert−ブチル(13.3g;60.8mmol)と酢酸イソプロピル(60ml)との溶液を30分の時間をかけて加える。反応溶液を40〜45℃で一夜攪拌する。この後、反応溶液を室温に冷却し、160mlのヘプタンで希釈する。次いで、この懸濁液を0〜5℃に冷やし、この温度で5時間攪拌を続ける。濾過後、生成物ケーキを50mlの冷ヘプタン/酢酸エチルで洗い、減圧下に40℃で乾燥する。
【0184】
1H-NMR (400MHz, CDCl3): 4.52-4.48 (m,1H, 4.34-4.29 (m,1H), 2.68-2.62 (m,1H),
2.55-2.49 (m,1H), 2.24-2.08 (m,4H), 2.03-1.94 (m,1H), 1.81-1.75 (m,1H), 1.52 (s,9H), 1.02-0.98 (pst,6H), 0.92-0.91 (d,3H, 0.85-0.84 (d,3H)
MS : MH+ = 354
IR:1777-1760 ラクタム/ラクトン/Boc, 1185 Boc cm-1 (FTIR顕微鏡法;透過光)
Mp: 144-145 ℃、透明、無色
【0185】
5) Boc−ラクタム−ラクトン(VIa)とアリール−Li化合物(VIIa)との化合物(VIIIa)への反応:
【化79】

臭化アリール(VII'a)(8.56g;31.12mmol)を第一フラスコ中でTHF125mlに溶かす。この溶液を内部温度−70℃に冷却する。この溶液に、n−ブチルリチウム(1.6Mヘキサン溶液)(19.8ml;31.69mmol)を1時間かけて加える。そこで反応液は桃赤色となった。この溶液を−70℃で1時間攪拌放置する。
【0186】
Boc−ラクタム−ラクトン(VIa)(10.0g;28.29mmol)を第二のフラスコ中で乾燥THF125mlに溶かす。この溶液をアルゴン気流下に内部温度−50℃に冷却する。この溶液にアリール−リチウム化合物(VIIa)の溶液(第一のフラスコから)を−55ないし−50℃で30分間かけて加える。反応混合物を次いで−50℃で3時間攪拌する。反応液を−70℃の温度に一夜冷却する。
【0187】
翌日、第二部分のアリール−リチウム化合物を上記同様に、臭化アリール(VII'a)(1.28g;4.65mmol)およびn−ブチルリチウム3mlから調製し、内部温度−50℃で10分間で該反応混合物に加える。反応混合物を−50℃で4時間攪拌放置する。後処理のため、反応混合物をトルエン125mlと10%クエン酸水溶液250mlの混合物に、0〜5℃で20分間で注ぐ。このクエンチングは発熱反応である。有機相を150mlの10%クエン酸/水(2×75ml)および150mlの8%NaHCO(2×75ml)で洗う。有機相を150mlの水(2×75ml)で中性pHとなるまで洗い、蒸発させて粗製の化合物(VIIIa)をほぼ白色の無定形固体として得る。
【0188】
所望の化合物を精製するために、固体の一部(6.72g、12.22mmol)をエタノール60mlに溶かす。得られる澄明な無色溶液に、0〜5℃で、28mlの1N水酸化リチウム溶液を20分の時間で加える。この混合物を室温(21℃)に昇温し、この温度で1時間攪拌する。この後に、水とエタノールを部分的に蒸発させ、得られる沈殿を100mlの水と50mlのトルエンで希釈し、澄明な溶液とする。ここで所望の産物は塩基性の水相にある。水相をトルエン150ml(3×50ml)で洗う。この水相に酢酸エチル75mlを加える。この反応混合物にクエン酸(7.1g;33.66mol)を加える。ここでプロトン化された生成物は有機相にある。この混合物を初めは室温で、次いでその後に50℃で攪拌する。12時間攪拌した後、クエン酸(3.6g;17.1mmol)を反応混合物に加え、50℃で24時間攪拌を続ける。次いで、水相を分離し、水50ml中のクエン酸7.1gを有機溶液に加える。次いで、二相溶液を50℃でさらに6時間攪拌する。層分離し、7.1gのクエン酸を水溶液として再び加える。反応混合物を内部温度50℃で一夜攪拌する。後処理のために、反応溶液に室温で水50mlを加える。有機相を水50ml(2×25ml)および8%NaHCO50ml(2×25ml)で洗う。有機相を水50ml(2×25ml)で中性のpHとなるまで洗い、蒸発させて(VIIIa)を非常に粘稠な油として得る。
【0189】
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): (2種の回転異性体), 7.52-7.50 (d,1H), 7.37 (s,1H), 7.04-7.02 (d,1H), 6.99 (s,1H), 4.35-4.31 (m,1H), 4.06-4.04 (t,2H), 3.83 (s,3H), 3.49-3.46 (m,3H), 3.25 (s,3H), 2.51-2.49 (m,1H), 2.05-1.95 (m, 4H), 1.87-1.80 (m, 2H), 1.63-1.58 (t,1H), 1.25 (s,9H), 0.97-0.95 (d, 3H), 0.92-0.91 (d,3H), 0.86-0.84 (d,3H), 0.83-0.81 (d,3H), 0.80-0.78 (d,3H)。
MS: [MH - Boc]H+ = 450
Rf = 0.45 (ヘプタン : EtOAc = 1 : 1)
【0190】
5a) 結晶性Li−塩(VIIIa')を生じる塩形成を介しての化合物(VIIIa)の精製
【化80】

粗製の化合物(VIIIa)(30g;55mmol)をエタノール(120ml)に溶かし澄明な溶液とする。この溶液を0℃に冷やし、110mmolのLiOH(2.65g/100ml水)を攪拌下に45分間でゆっくりと加える。反応は僅かに発熱する。2時間後、HPLC分析は出発原料が完全にヒドロキシル酸Li化合物(VIIIa')に変換していることを示す。僅かに黄色がかった濁りのある溶液を部分的に蒸発させ、約100mlのエタノール−水混合物を留出する。Li−塩の残留濃厚水溶液を酢酸エチル(2×100ml)で2回抽出する。ここでLi塩(XII)を含有する併合した酢酸エチル相を飽和塩化ナトリウム溶液50mlで逆抽出する。次いで、有機相を減圧下蒸発させ、33.0gの泡状物を得、これをジイソプロピルエーテル30mlに溶かす。この溶液に0℃でn−ヘプタン(異性体混合物)60mlを加える。この混合物に種結晶を加え、冷蔵庫に一夜放置する。形成される結晶性物質を濾取し、2部(2×30ml)の冷n−ヘプタンで洗い、減圧オーブン内で一夜乾燥し、白色結晶性粉末を得る。
【0191】
m.p.: 62 - 70 ℃ (融解範囲)
MS: [M - Li] = 566; Li-塩: MH+: 574
1H-NMR (600 MHz, DMSO-d6): 室温で回転異性体混合物 (ca.1:3): 7.58 (d,min.), 7.5 (d, maj.), 7.43 (br.s, min.), 7.38 (br.s., maj.), 7.05 (d, min.), 6.98 (d,maj.),6.1 (br.d, -OH, min. +maj.), 4.03 (br.m., -OCH2), 3.82 (s,-OCH3), 3.5-3.35 (br.m., -OCH2, +H2O), 3.22 (s, -OCH3), 3.05 (br.m, 1H), 2.0-1.9 (br.m,3H), 1.85-1.7 (br.m,3H), 1.65-1.55 (br.m, 1H), 1.4-1.3 (br.m, 4H),1.28 (Boc, maj.), 0.95 (Boc, min.), 0.85-0.72 (m,12 H + ヘプタン)。300 ° ケルビン: 7.52 (br.d, 1H), 7.45 (br.d, 1H), 7.0 (2d, 1H)
IR: 3350 (br, NH,OH), 2960, 2932, 2873 (s,as CHn), 1686 (C=O), 1581 (as-COO-),1515 (アミド, 芳香性), 1428 (sy.COO-), 1267 (C-O), 1174 (C-O-Boc), [cm-1]
【0192】
5b) Boc−ラクタム−ラクトン(VIa)からアリール−アルキル−Mg−種経由化合物(VIIIa)への反応:
【化81】

乾燥フラスコ(No.1;100ml)に乾燥THF15mlを容れ、それを次いでアルゴン下に0℃に冷却する。温度が0℃に達したところで、塩化イソプロピルマグネシウム溶液(2.0モル;THF中、12.5mmol)6.25mlを加える。次いで、7.5mlのn−ブチルリチウム溶液(1.6モル/n−へキサン=12.5mmol)をシリンジから10分間で加える。反応混合物を20〜25℃で30分間攪拌する。この後、化合物(VII')(X=Br;2.75g;10mmol)と乾燥THF(7.5ml)との溶液を反応混合物に25℃、15分間で滴下する;混合物は僅かに発熱し、ガスを発生する。滴下漏斗をTHF2mlですすぎ、次いで反応混合物を25℃で少なくとも3時間攪拌し、次いでVII'の変換をチェックするためにHPLC分析を行う。第二のフラスコ(No.2)には化合物(VIa)(3.53g;10mmol)をアルゴン下に乾燥THF22.5mlと共に容れる。次いで、この溶液を−10℃に冷やす。フラスコNo.2中、(VIa)の懸濁液に、アルゴン圧下、アリールアルキル種(VIIb)をテフロンチューブから1〜2時間で加える。反応混合物を次いで−10℃でさらに15時間攪拌する。
【0193】
HPLC分析が(VIa)の完全な変換を示した後、反応混合物を25mlのtBMEと22mlの水との溶媒混合物(3.2mlの酢酸含有)上で、0℃で30分間激しく攪拌することで不活化する。次いで、水相を分離し、有機相は水15mlで3回(合計45ml)抽出する。次いで有機相を減圧下に蒸発させ、油状残渣とする。残渣は再びエタノール35mlに溶かし、水酸化リチウム0.48gと水20mlとの水溶液により、攪拌下に0℃で5時間処理してリチウム塩(VIIIa')とする。次いで、反応混合物を減圧下に濃縮してエタノールの大部分を除去し、次いで水35mlとTBME20mlで希釈し、5分間攪拌する。有機相を分離し、水相を再度20mlのTBMEで抽出する。併合した有機相は不所望の親油性芳香族副生物を含み、一方、水相は所望のリチウム塩(VIIIa')を含有する。塩基性の水相は攪拌下に固形のクエン酸5.3gを加えて中和し、次いで酢酸エチル40mlを加える。中和した水相を分取し、30mlの水に溶かした追加のクエン酸3.2gと置き換える。次いで、反応混合物を65℃で2時間激しく攪拌し、ラクトン化を達成する。HPLC分析が完全なラクトン化を示した後、飽和重炭酸ナトリウム溶液を攪拌下にゆっくりと加える。攪拌を止め、水相を除く一方、生成物(VIIIa)を含む有機相を水25mlで2回(合計50ml)再度洗浄する。最後に、有機相を減圧蒸発させ、非常にねばねばした粘稠な残渣(VIIIa)を得る;このものはHPLC分析によると純粋である。
【0194】
5c) 水素化ホウ素ナトリウム還元による化合物(VIIIa')を経由し、(VIIIa)を経由しないBoc−ラクタム−ラクトン(VIa)とアリール−Li−種(VIIa)の反応:
【化82】

750ml容量の三頚フラスコをアルゴン気流下、150℃に加熱して乾燥した。アルゴン下室温まで冷やした後、このフラスコに25gの臭化物(90.8mmol)を容れる。次いでこの固形物は440mlの乾燥(モレキュラーシーブ)テトラヒドロフランを加えて溶解する。次いで、この溶液を−78℃に冷却する。この温度でn−ブチルリチウム(1.6モル)とn−ヘキサン(57ml)との溶液を30分間でゆっくりと加え、澄明な無色溶液を得る。反応混合物はこの温度に1時間維持する。この後、HPLC分析は約10〜15%のホモカップリング産物と共に、完全なハロゲン−金属化交換を示した。
【0195】
第二のフラスコ中、Boc−化合物(VIa)(26.73g;75.6mmol)を440mlの乾燥THF(モレキュラーシーブによる)に溶かし、−70℃に冷却する。この溶液に、アルゴン圧下、フラスコ1からのLi−種(VIIa)を15分以内で加え、ほぼ無色の澄明な溶液を得る。20分後に、HPLC分析が(VIa)の完全な変換を示した。反応混合物は10%クエン酸水溶液600mlとTBME500mlとの二相混合物により、0℃で激しく攪拌しながら不活化する。
【0196】
水相をTBME250mlで抽出する。併合した有機相をクエン酸水溶液で2回(2×200ml)、次いで重炭酸ナトリウムで2回(2×200ml)、最後に水(2×200ml)で洗浄する。有機相をMgSOで乾燥し、減圧蒸発して濃厚な油を得る。次いで、この油(48.6g)をエタノール500mlに溶かし、無色の溶液を得る。この溶液に水酸化リチウム(0.151mol)の1モル溶液151mlを0℃で攪拌しながら加える。反応混合物をゆっくりと室温まで昇温し、2時間後にラクトン環の開環が完結し(HPLC)、リチウム塩(VIIIa')を得た。
【0197】
この溶液に40℃で少量の水素化ホウ素ナトリウム(3.8g;100mmol)を2時間かけて加える。HPLC分析は5時間後に出発原料の66%が変換していることを示した。追加のNaBH(756mg;20mmol)を加え、40℃での攪拌を一夜続ける。HPLC分析は(Xa')のエピマー混合物への完全な変換を示した。反応混合物を0℃に冷却し、〜10%クエン酸水溶液400mlを攪拌下0℃でpH3となるまでゆっくりと加えて、過剰な水素化ホウ素を分解した。激しい水素ガスの発生が観察される。反応混合物を減圧濃縮し、エタノールを除去する。水相を酢酸エチルで抽出し、酢酸エチル相を再度クエン酸水溶液300mlと混合し、次いで50〜60℃まで12時間昇温する;これによりラクトン化が起こり、相分離と蒸発の後、濃厚油として2つのエピマーアルコール(Xa)を得る;これをTBME/ヘプタン混合物から結晶化して、95:5の比率の白色結晶性固体を得た。スペクトルデータは(Xa)エピマー混合物に相当する。
【0198】
6) 化合物(VIIIa)の直接水素化による化合物(IX)(最後から2番目の前駆体)の調製:
【化83】

化合物(VIIIa)(2.75g;5mmol)をエタノール/酢酸(2:1)の混合物30mlに溶かし、10%Pd−C触媒(エンゲルハード4505)0.35gを加える。水素化は50℃、5バール圧で実施する。10時間後、サンプルは変換が未完であることを示す。追加量の触媒(0.35g)を加え、水素化を継続する。46時間後、ほぼすべての出発原料が変換される。反応混合物を濾過し、エタノールで洗い、濾液を減圧蒸発させて殆ど無色の油を得る。粗製産物の混合物をトルエンに溶かし、飽和NaHCO溶液25mlで3回洗って酢酸を中和し、それを水相に抽出した。減圧下にトルエンを蒸発させた後、ほぼ無色の粘稠油(2.21g)が得られた。この混合物のTLC(SiO、ヘプタン:酢酸エチル(1:1)は、少量の出発原料(VIII;Rf=0.45)の他に4つの異なるスポットを示した;これらはドラーゲンドルフ試薬をスプレーすることにより可視化した。Rf=0.60の最先端のスポットが所望の化合物(IXa)であった。Rf0.33および0.40の2つのスポットはアルコール誘導体(Xa)の2つの異なるエピマーである。Rf0.55のすぽっとは化合物(XI)であり、このものはRf0.33および0.40のエピマー化合物(Xa)から酸性条件(AcOH)、高温で形成されるか、または室温でイオン交換樹脂により形成される。同様の挙動はHPLCにおいて観察された。
【0199】
粗製の混合物2.21gの分取カラムクロマトグラフィーの後、所望の化合物(IXa)の20の純フラクション(Rf=0.60)を集め、その油から直接結晶化し得た。結晶性物質はヘプタンから再結晶した。
化合物(IXa):
M.p.: 78-79℃
【化84】

1H-NMR (400 MHz, CDCl3): 0.74-0.76 (2xd, 6H), 0.85-0.87 (d,3H), 0.92-0.94 (d,3H), 1.16-1.23 (bm,1H), 1.38, (s,9H,Boc), 1.5-1.65 (br-m, 2H), 1.95-2.15 (br-m, 5H), 2.50-2.35 (br-m, 1H), 2.45-2.52 (brm,1H), 2.50-2.59 (brm,1H), 3.28 (s,3H), 3.50 (t,2H), 3.70-3.80 (s+m,4H), 4.03 (t,2H), 4.28-4.35 (m,2H), 6.62 (d,1H), 6.67 (s,1H), 6.69 (d,1H)。
IR: 3358 (-NH), 1773 (ラクトン), 1705 (カルバミン酸エステル), 1518 (アミド II) cm-1; (FTIR顕微鏡法;透過光)
MS: MH+ = 535.7
【0200】
他の「スポット」もまた単離し、スペクトルデータにより特性化する:
Rf=0.55のスポットは化合物(XIa)に相当する
【化85】

1H-NMR (400 MHz, CDCl3): 0.77-0.79 (d, 3H), o.86-0.88 (d, 3H), 0.88-0.90 (d, 3H), 0.97-0.99 (d, 3H), 1.10-1.30 (br-peak, 9H, boc), 1.78-1.86 (m, 1H), 2.0-2.06 (m, 2H), 2.08-2.16 (brm, 3H), 2.50-2.60 (brm, 1H), 3.27 (s, 3H), 3.50 (t, 2H), 3.77 (s, 3H), 4.0-4.10 (brm, 3H), 4.20-4.40 (br-peak, 2H), 6.72-6.74 (d, 1H), 6.75-6.77 (d, 1H), 6.83 (s, 1H).
m.p.: 63-69 ℃
IR: 3057, 2970, 1773 (ラクトン), 1688 (Boc), 1515, 1390, 1368 [cm-1]
MS: MH+ = 534; M-NH4+ = 551
【0201】
Rf=0.40のスポットは化合物(Xa)−エピマー1に相当する(X線構造回折によるとsyn−エピマー:
【化86】

1H-NMR (400 MHz, CDCl3): 0.82-0.88 (3xd, 9H), 0.92-0.94 (d, 3H), 1.40 (s, 9H), 1.80-1.93 (brm, 2H), 2.03-2.11 (brm, 4H), 2.37-2.45 (brm, 1H), 3.32 (s, 3H), 3.35 (t, 2H), 3.83 (s, 3H), 4.05-4.20 (brm, 3H), 4.25 (d, 1H), 4.60 (d, 1H), 6.80 (d, 1H), 4.83 (dd, 1H), 6.95 (s, 1H)。
MS: M + NH4+ = 569; M -H = 550
【0202】
7) EtOH中、化合物(VIIIa)の直接水素化による化合物(IXa)の調製:
10%Pd−C(湿潤、JM−タイプ39)による常圧および室温でのHO(9:1):
【化87】

化合物(VIIIa)(5.5g;10mmol)をエタノール90mlと水10mlとの混合物に溶かした。この混合物に10%Pd−C触媒5g(水分含有約50%;ジョンソン・マッセイから;タイプ39)を加える。混合物を室温・常圧で20時間攪拌する。この後、化合物(VIIIa)の変換は98%であり、所望の化合物(IXa)66%がエピマーアルコール(Xa)28%およびピロリジンラクトン(XIa)4%と共に形成された。同じ条件下の水素化は、触媒を追加せずにさらに48時間継続した。この後、触媒を濾去し、溶媒を減圧下に蒸発させて油(5.9g)を得た;このものはHPLCによると、化合物(IXa)89%およびそれぞれ5%の化合物(XIa)と出発原料(VIIIa)を含んでいた。この油を10mlのn−ヘプタン(異性体混合物)と0℃で処理攪拌し、少量の化合物(IXa)を種結晶として加えると、産物が結晶し始めた。フラスコを冷蔵庫に一夜、さらに−18℃に24時間保存した。生成物を濾取し、少量の極冷却ヘプタンで洗い、減圧乾燥後、所望の産物を得た;このものはHPLC、TLCおよび1H−NMRでは純粋であった。
【0203】
8) ギ酸カリウムの存在下、10%Pd−C触媒によるEtOAc中、6バール、20〜60℃での化合物(VIIIa)の水素化による化合物(Xa)(syn−antiエピマーアルコール)の調製
【化88】

化合物(VIIIa)(22.0g;40mmol)を油として酢酸エチル150mlに溶かす。10%Pd/C(タイプ、エンゲルハード4505)10gおよびギ酸カリウム500mgを触媒のバッファー酸性成分に加えた。水素化は6バール、開始時室温で実施し、後に60℃に昇温した。8日後に、追加の触媒(5g)を加えた;9日後、変換率は91%となり、2つのエピマーアルコールが93:7(syn:anti)の比率で形成された;さらなる化合物(IXa)への水素化分解または化合物(XIa)の形成はまったくなかった。触媒を濾去し、溶媒を減圧下に蒸発させ油を得た;このものは室温に放置し、結晶化した(19.0g)。この物質はtert−ブチルメチルエーテル(20ml)およびn−ヘプタン(60ml、異性体混合物)から、種結晶添加により20℃で再結晶した。結晶化がほぼ終了(2時間)した後、さらに40mlのn−ヘプタンを20℃で加え、2時間攪拌して、冷蔵庫に一夜放置し、濾過、冷n−ヘキサンで洗浄、乾燥して白色結晶性物質(syn/anti比=93:7、HPLC)を得る。syn/antiアルコール混合物の m.p. 69-71℃。
【0204】
8) 化合物(Xa')の調製(syn/antiエピマーアルコール(Xa)からのヒドロキシ酸の塩)
【化89】

結晶性アルコール(Xa)のエピマー混合物(約9;1の比)(1g;1.8mmol)をエタノール10mlに溶かす。この溶液を0℃に冷やし、水酸化リチウム(3.6mmol)と水(4ml)からなる溶液を攪拌下に加える。外気温度で2時間攪拌した後、反応は完結する。エタノールの殆どを留去し、残留水相を酢酸エチル(2×20ml)で抽出する。併合した酢酸エチル抽出物を食塩水5mlで洗浄し、次いで蒸発させて油状固体とする。これにn−ヘプタン5mlを加え、該物質を結晶化する。結晶性懸濁液を冷蔵庫内に一夜放置し、次いで濾過し、冷n−ヘプタンで洗い、減圧乾燥して白色固体を得る。
m.p.: 118 - 128 ℃ (融解範囲)
MS: [M-Li]- = 568; MH+ = 576
IR: FTIR 顕微鏡 i. 透過光: 3440, 3355, 3167 (br, NH, OH); 2958, 2874 (脂肪族-CH), 1686 (C=O,Boc), 1605 (as, COO-), 1555 (アミド-II), 1514, 1438 (sy, COO-), 1367, 1258, 1171, 1028, [cm-1]
【0205】
9) (IXa)からの化合物(IXa')ヒドロキシ酸Li塩の調製
【化90】

結晶性化合物(IXa)(1g;1.86mmol)をエタノール10mlに溶かした。この溶液に、水酸化リチウム(88.6mg;3.7mmol)と水5mlからなる溶液を加えた。均一な反応混合物を室温で2時間攪拌した。HPLCはその時間後に完全な変換を示した。この溶液を減圧蒸発させ、エタノールの大部分を除去した。水相を酢酸エチル(2×20ml)で抽出した。併合した酢酸エチル相を食塩水5mlで洗浄し、次いで蒸発させてねばねばした固体を得た。これに攪拌下0℃でn−ヘプタン10mlを加え、その物質を結晶化する。結晶性懸濁液を冷蔵庫中に一夜保存し、次いで濾過し、冷n−ヘプタンで洗浄し、減圧乾燥して白色固体を得る。
m.p.: 88−98℃ (融解範囲)
IR: FTIR-顕微鏡、透過光: 3573 (-OH), 3377 (-NH), 2955, 2933, 2871,1679 (Boc), 1572 (COO-), 1514(アミド-II), 1439, 1423 (COO-),1366, 1260, 1239, 1170, 1122, 1026 [cm-1]
MS: [M−Li]- = 552; MH+ = 560
【0206】
10) Pd−Cによる化合物(VIIIa')((VIIIa)からのヒドロキシ酸の塩)からエピマー混合物としての化合物(Xa')への水素化
【化91】

カルボキシ−Li−塩(化合物VIIIa')(2.8g;5.0mmol)をイソプロパノール40mlに溶かした。10%Pd−C(JMタイプ39、湿潤)(2.5g)を加え、25℃、0.2バールで一夜(17時間)水素化した。この時点での化合物(VIIIa')の変換は86%であった(HPLC)。温度を50℃に上昇させ、さらに24時間水素化を続けた。41時間後、観察された変換の変化はほんの僅かであったが、syn/antiエピマーアルコールの比は、83%syn/17%antiから67%syn/33%antiに変っていた。それ故、さらに触媒(1g)を加え、さらに6時間、50℃で水素化を続けた。この時点でのHPLC分析はそれ以上の変換を示さなかったが、再びsyn/anti比が62:38に変化していた。追加の触媒を加えることなく、さらに36時間、50℃で水素化を続けた。この時点でのHPLC分析は45:55のsyn/anti比を示したが、出発原料の変換(83%)にさらなる変化はなかった。このことはこの反応条件下、酸化−還元サイクルによるsynエピマーアルコールとantiエピマーの相互変換を示す。水素化を停止し、触媒を濾去し、溶媒を蒸発させて半固体状油とした。
【0207】
11) エタノール−水(1:1)中での水素化ホウ素ナトリウムによるLi−塩(VIIIa')から (Xa)'経由、(Xa)への還元:
【化92】


Li−塩(VIIIa')(2.3g;4mmol)を室温で水10mlとエタノール10mlの混合物に溶かす。この溶液を40℃まで昇温し、水素化ホウ素ナトリウム(151mg;4mmol)を1時間かけて少量に分け加える。HPLC分析は4時間後に出発原料の66%の変換を示した。追加のNaBH(38mg;1mmol)を加え、40℃での攪拌を一夜継続する。HPLC分析は完全な変換を示した。過剰の水素化ホウ素を10%クエン酸水溶液40mlを加えてpH3として不活化分解した。反応混合物を減圧濃縮し、エタノールを除去する。水相を酢酸エチルで抽出し、酢酸エチル相を再度クエン酸水溶液10mlと混合し、50〜60℃に2時間加温する;これによりラクトン化が起こり、相分離と蒸発の後に2種のエピマーアルコール(Xa)を粘つく油として得る;これはTBME/ヘプタンから95:5の比率の白色固体として結晶化した。HPLCおよびスペクトルデータは(Xa)混合物の他のサンプルに相応する。
THF/水、またはi−プロパノール/水または水単独または20容量%水分含有エタノールなどの他の溶媒混合物も、この水素化ホウ素還元にとって良好な溶媒である。
【0208】
12) 化合物(IXa)へのバートン−マックコビー(Barton.McCombie)経路
a)化合物(IXa)(=イミダゾール−1−カルボチオン酸 O−{(S)−2−[(S)−2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−2−((2S,4S)−4−イソプロピル−5−オキソ−テトラヒドロフラン−2−イル)−エチル]−1−[4−メトキシ−3−(3−メトキシ−プロポキシ)−フェニル]−3−メチル−ブチル}エステル)の調製
【化93】

エピマー化合物(Xa)(1.66g;3mmol)をトルエン(18mL)に溶かし、1,1−チオカルボニル−ジイミダゾール(0.804g、4.5mmol)を加え、次いで、ジメチルアミノピリジン(0.037g)を加える。反応混合物を室温で一夜攪拌する。後処理のために、水性飽和NaHCO3(20mL)を加え、層分離する。有機相を水性飽和NaHCO3(20mL)および水(20mL)で抽出する。有機層を無水MgSO4で乾燥し、減圧下に溶媒を蒸発させ、粗製産物2.08gを粘稠液体として得る。粗製の産物をシリカゲル上、tert−ブチルメチルエーテルを移動相とするフラッシュ・クロマトグラフィーにより精製して、純化合物(XVa)を白色泡状物として得る。生成物は1H−NMR、IRおよびHR−MSスペクトルによりジアステレオ異性体(エピマー)の混合物として提案された構造であることを確認した。H−NMRスペクトルは回転異性体の存在により複雑であった。
【0209】
1H-NMR (400 MHz, 354K, d6-DMSO): 0.65-0.99 (m, 12H), 1.42 (s, 9H), 1.44-2.44 (m, 10H), 3.24 (s, 3H), 3.47 (t, 2H), 3.75 (s, 3H), 3.76-3.90 (m, 1H), 4.01 (t, 2H), 4.06-4.40 (m, 1H), 4.73-4.89 (m, 1H), 6.81-7.03 (m, 3H), 7.05 (broad s, 1H), 7.62 (broad s, 1H), 8.28 (broad s, 1H). FT-IR (透過光): 3317, 3125, 2961, 2933, 2875, 2836, 1769, 1701, 1604, 1591, 1517, 1469, 1427, 1390, 1366, 1331, 1290, 1265, 1221, 1168, 1143, 1120, 1097, 1064, 1046, 1026, 968, 949, 886, 811, 753, 725, 694, 666, 646 cm-1. HR-MS: C34H51N3O8S. 計算値:MNa+= 684.32891;測定値: 684.32894;計算値: MK+= 700.30284;測定値:700.30306。
【0210】
b) 水素化トリブチル錫での化合物(XVa)の還元による化合物(IXa)の調製:
【化94】

化合物(XVa)(=イミダゾール−1−カルボチオン酸 O−{(S)−2−[(S)−2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−2−((2S,4S)−4−イソプロピル−5−オキソ−テトラヒドロフラン−2−イル)−エチル]−1−[4−メトキシ−3−(3−メトキシ−プロポキシ)−フェニル]−3−メチル−ブチル}エステル)(0.4g、0.604mmol)をトルエン(8mL)に溶かす。この溶液を100℃に加熱する。水素化トリブチル錫(0.916g)をこの温度でシリンジにより加え、次いで、AIBN(0.01984g)とテトラヒドロフラン(0.4mL)との溶液を加える。反応混合物を100℃で1時間攪拌した後、追加量のAIBN(0.01984g)とテトラヒドロフラン(0.4mL)との追加部分を加える。さらに1時間100℃で攪拌を続け、反応混合物を−20℃の冷メタノール(10mL)に加えて反応停止させる。トルエン(10mL)を加え、その混合物を1N−HCl水(2×10mL)と水(10mL)で抽出する。水層を併合し、トルエン(10mL)で抽出する。有機層を併合し、無水NaSOで乾燥して、減圧下に溶媒を蒸発させる。油状の粗製産物をシリカゲル上ヘキサンフラクション/イソプロパノール(9:1)でのフラッシュ・クロマトグラフィーにより精製して、化合物(IXa)を得た。本産物はHPLCおよび1H−NMRにおいて標品の化合物(IXa)と一致した。
【0211】
c) トリス(トリメチルシリル)シランでの化合物(XVa)の還元による化合物(IXa)の調製:
【化95】

化合物(XVa)(=イミダゾール−1−カルボチオン酸 O−{(S)−2−[(S)−2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−2−((2S,4S)−4−イソプロピル−5−オキソ−テトラヒドロフラン−2−イル)−エチル]−1−[4−メトキシ−3−(3−メトキシ−プロポキシ)−フェニル]−3−メチル−ブチル}エステル)(0.4g、0.604mmol)をトルエン(4mL)とtert−ドデシルメルカプタン(4mL)の混合物に溶かす。この溶液を100℃に加熱する。トリス(トリメチルシリル)シラン(774.5g;3mmol)を加え、次いで、AIBN(20mg)とトルエン(0.4mL)の溶液を加える。反応混合物を100℃で15分間攪拌し、−20℃の冷メタノール(10mL)に加えて反応停止させる。トルエン(10mL)を加え、その混合物を1N−HCl水(2×10mL)と水(10mL)で抽出する。水層を併合し、トルエン(10mL)で抽出する。有機層を併合し、無水硫酸ナトリウムで乾燥して、減圧下に溶媒を蒸発させる。粗製の産物をシリカゲル上のフラッシュ・クロマトグラフィーにより精製して、化合物(4)(30mg、18.5%収率)を得た。本産物はHPLCおよび1H−NMRにおいて標品の化合物(IXa)と一致した。
【0212】
13) 補助体としての(+)−(1S,2S)−プソイド−エフェドリンからのビス−プソイドエフェドリン前駆体 (Ia'vi) の合成;参照文献: A. Myers et al., J.A.C.S., 119, 6496 (1997)
【化96】

100ml容量の三頚フラスコをアルゴン気流下に150℃に加熱して乾燥した。アルゴン下に室温まで冷やした後、乾燥した塩化リチウム2.54g(60mmol)を加えた。次いで、乾燥THF12mlに溶かしたジイソプロピルアミン3.15mlを攪拌下に加える。得られる懸濁液をアルゴン下に−78℃に冷却する。この懸濁液に−78℃攪拌下に1.6モル−ブチルリチウム/ヘキサン溶液13mlをシリンジから加え、LDAを得る。さらに15分間懸濁液を攪拌した後、10mlのTHFに溶かしたN−イソバレリル−(S,S)−プソイド−エフェドリン(2.5g;10mmol)を−78℃でシリンジから加える。次いで、この懸濁液を30分以内で、0℃まで昇温する。この温度で、trans−1,4−ジブロモ−2−ブテン(1.18g;5.5mmol)とTHF5mlからなる溶液をシリンジで加える。さらに30分間、0〜5℃で攪拌を続ける。反応混合物を室温で一夜攪拌した後、HPLC分析は完全な変換を示した。反応混合物は塩化アンモニウム水溶液(80ml)とTBME50mlとの混合物で反応停止させる。水相をTBME25mlで2回抽出する。次いで、併合した有機相を食塩水(50ml)で洗い、MgSOで乾燥し、最後に濾過し、減圧下に蒸発させて、非常に粘稠な油を得る;この油は高真空排気により、白色泡状物となる。MS、H−NMR(d−DMSO中、室温(300°K)および上昇温度(394°K)で)により構造を確認する。該化合物は室温で2種の回転異性体の混合物として(〜2:1)の比で存在する。
MS: 551 (MH+)
IR: 3350 (br, OH), 2960, 1608(amid), 1450, 1407, 1030, 970, 755, 700 [cm-1]
1H-NMR, 600 MHz (d6-DMSO): 複雑なスペクトル;300°Kで2セットのシグナル(回転異性体の混合物(〜2:1))。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II):
【化1】

[式中、
はC1−7アルキルまたはC3−8シクロアルキルであり;そして
はC1−7アルキル、C2−7アルケニル、C3−8シクロアルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキルであり、それぞれが未置換であるか、またはC1−4アルキル、O−C1−4アルキル、OH、C1−4アルキルアミノ、ジ−C1−4アルキルアミノ、ハロゲンおよび/またはトリフルオロメチルによりモノ−、ジ−またはトリ−置換されている]
で示される化合物またはその塩。
【請求項2】
およびRが独立して分枝C3−6アルキルである請求項1記載の化合物。
【請求項3】
以下の立体化学を有する請求項1または2に記載の化合物。
【化2】

【請求項4】
式:
【化3】

を有する請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
式(II'):
【化4】

[式中、
はC1−7アルキルまたはC3−8シクロアルキルであり;そして
はC1−7アルキル、C2−7アルケニル、C3−8シクロアルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキルであり、それぞれが未置換であるか、またはC1−4アルキル、O−C1−4アルキル、OH、C1−4アルキルアミノ、ジ−C1−4アルキルアミノ、ハロゲンおよび/またはトリフルオロメチルによりモノ−、ジ−またはトリ−置換されている]
で示される化合物またはその塩。
【請求項6】
およびRが独立して分枝のC3−6アルキルである請求項5記載の化合物。
【請求項7】
以下の立体化学を有する請求項5または6に記載の化合物。
【化5】

【請求項8】
式:
【化6】

を有する請求項5ないし7のいずれかに記載の化合物。
【請求項9】
請求項1ないし4のいずれかに記載の式(II)で示される化合物の製造法であって、式(I'):
【化7】

[式中、RおよびRは式(II)で示される化合物について定義したとおりであり、Auxはカルボニル官能基とエステルまたはアミドを形成し得る補助基である]
で示される化合物またはその塩を水素化反応に付してアジド部分をアミンに変換し、ラクタム環を閉環させることを含んでなる、製造法。
【請求項10】
請求項1ないし4のいずれかに記載の式(II)で示される化合物の製造法であって、式:
【化8】

[式中、RおよびRは式(II)で示される化合物について定義したとおりである]
で示される化合物またはその塩を水素化反応に付してアジド部分をアミンに変換し、ラクタム環を閉環させることを含んでなる、製造法。
【請求項11】
請求項1ないし4のいずれかに記載の式(II)で示される化合物の製造法であって、式(III):
【化9】

[式中、RおよびRは式(II)で示される化合物について定義したとおりである]
で示される化合物またはその塩を式(IV):
【化10】

[式中、RおよびRは式(II)で示される化合物について定義したとおりであり、RはC1−7アルキルまたはC3−8シクロアルキルである]
で示される無水物またはその塩に変換し、その酸部分を活性化し、次いで水素化してアジド部分をアミンに変換し、ラクタム環を閉環させることを含んでなる、製造法。
【請求項12】
請求項1ないし4のいずれかに記載の式(II)で示される化合物の製造法であって、式(III):
【化11】

[式中、RおよびRは式(II)で示される化合物について定義したとおりである]
で示される化合物またはその塩を式(V):
【化12】

[式中、RおよびRは式(II)で示される化合物について定義したとおりであり、RはC1−7アルキルまたはC3−8シクロアルキルである]
で示されるエステルまたはその塩に変換し、次いで水素化してアジド部分をアミンに変換し、ラクタム環を閉環させることを含んでなる、製造法。
【請求項13】
請求項1ないし4のいずれかに示した式(II)で示される化合物またはその塩の窒素に活性化基を導入することを含んでなる、式(VI):
【化13】

[式中、RおよびRは式(II)で示される化合物について定義したとおりであり、Actはアミノ保護基、とりわけカルバメートから選択される活性化基である]
で示される化合物またはその塩の製造法。
【請求項14】
式(VI):
【化14】

[式中、
はC1−7アルキルまたはC3−8シクロアルキルであり;
はC1−7アルキル、C2−7アルケニル、C3−8シクロアルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキルであり、それぞれが未置換であるか、またはC1−4アルキル、O−C1−4アルキル、OH、C1−4アルキルアミノ、ジ−C1−4アルキルアミノ、ハロゲンおよび/またはトリフルオロメチルによりモノ−、ジ−またはトリ−置換されており;また
Actはアミノ保護基、とりわけカルバメートから選択される活性化基である]
で示される化合物またはその塩。
【請求項15】
式:
【化15】

を有する請求項14記載の化合物。
【請求項16】
式:
【化16】

を有する請求項14または15に記載の化合物。
【請求項17】
式(VIII):
【化17】

[式中、RおよびRは式(II)の化合物について定義したとおりであり、Actはアミノ保護基、とりわけカルバメートから選択される活性化基であり、Rは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ−C1−6アルキルオキシまたはC1−6アルコキシ−C1−6アルキルであり;Rは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシである]
で示される化合物またはその塩の製造法であって、式(VII):
【化18】

[式中、Yは−Li、−MgX、−マグネセート、アリールマグネシウム種、アルキルマグネシウム種、−MnX、(アルキル)MnLi−、または−CeXなどの金属含有基であり(ただし、Xはハロゲン、例えば、Cl、IまたはBr、より好ましくはBrである)、またRおよびRは式(VIII)の化合物について定義したとおりである]
で示される化合物により、上記定義の式(VI)で示される化合物またはその塩のN−活性化ラクタムラクトンのラクタム環開環の工程を含んでなる、製造法。
【請求項18】
式(VII)で示されるN−活性化ラクタムラクトンを以下の式で示される化合物と反応させることを含んでなる、請求項17記載の方法。
【化19】

【請求項19】
式(VII):
【化20】

[式中、Yは−Li、−MgX、−マグネセート、アリールマグネシウム種、例えば、
【化21】

(式中、RおよびRはここに定義したとおりである)、
アルキルマグネシウム種(例えば、分枝C1−7アルキル−Mg−)、−MnX、(アルキル)MnLi−、または−CeXなどの金属含有基である(ただし、Xはハロゲン、例えば、Cl、IまたはBr、より好ましくはBrである);Rは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ−C1−6アルキルオキシまたはC1−6アルコキシ−C1−6アルキルであり;そしてRは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシである]
で示される化合物またはその塩。
【請求項20】
YがMgBr、マグネセートまたはLiである請求項19記載の化合物。
【請求項21】
以下の式を有する請求項19または20記載の化合物。
【化22】

【請求項22】
式(VIII):
【化23】

[式中、
はC1−7アルキルまたはC3−8シクロアルキルであり;
はC1−7アルキル、C2−7アルケニル、C3−8シクロアルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキルであり、それぞれが未置換であるか、またはC1−4アルキル、O−C1−4アルキル、OH、C1−4アルキルアミノ、ジ−C1−4アルキルアミノ、ハロゲンおよび/またはトリフルオロメチルによりモノ−、ジ−またはトリ−置換されており;
は、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ−C1−6アルキルオキシまたはC1−6アルコキシ−C1−6アルキルであり;
は、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシであり;そして
Actはアミノ保護基、とりわけカルバメートから選択される活性化基である]
で示される化合物またはその塩。
【請求項23】
式:
【化24】

を有する請求項22記載の化合物。
【請求項24】
式:
【化25】

を有する請求項22または23記載の化合物。
【請求項25】
式(VIII'):
【化26】

[式中、
はC1−7アルキルまたはC3−8シクロアルキルであり;
はC1−7アルキル、C2−7アルケニル、C3−8シクロアルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキルであり、それぞれが未置換であるか、またはC1−4アルキル、O−C1−4アルキル、OH、C1−4アルキルアミノ、ジ−C1−4アルキルアミノ、ハロゲンおよび/またはトリフルオロメチルによりモノ−、ジ−またはトリ−置換されており;
は、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ−C1−6アルキルオキシまたはC1−6アルコキシ−C1−6アルキルであり;
は、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシであり;そして
Actはアミノ保護基、とりわけカルバメートから選択される活性化基である]
で示される化合物またはその塩。
【請求項26】
塩の形状の請求項25に記載の化合物。
【請求項27】
Li、Na、K、Mg、Ca、一級、二級または三級アミン塩の形状である請求項25または26記載の化合物。
【請求項28】
式:
【化27】

を有する請求項25ないし27のいずれかに記載の化合物または好ましくはその塩。
【請求項29】
式:
【化28】

を有する請求項25ないし28のいずれかに記載の化合物または好ましくはその塩。
【請求項30】
式(IX):
【化29】

[式中、RおよびRは式(II)の化合物について定義したとおりであり、RおよびRは式(VIII)の化合物について定義したとおりであり、Actはアミノ保護基、とりわけカルバメートから選択される活性化基である]
で示される化合物またはその塩の製造法であって、請求項22ないし24に定義した式(VIII)の化合物または請求項25ないし29に定義した式(VIII')の化合物のベンジルカルボニルを還元してメチレン部分とすることを含んでなる、製造法。
【請求項31】
式(X):
【化30】

[式中、RおよびRは式(II)の化合物について定義したとおりであり、RおよびRは式(VIII)の化合物について定義したとおりであり、Actはアミノ保護基、とりわけカルバメートから選択される活性化基である]
で示される化合物またはその塩の製造法であって、請求項22ないし24に定義した式(VIII)の化合物のベンジルカルボニルを還元してヒドロキシル部分とすることを含んでなる、製造法。
【請求項32】
式(X):
【化31】

[式中、RおよびRは式(II)の化合物について定義したとおりであり、RおよびRは式(VIII)の化合物について定義したとおりであり、Actはアミノ保護基、とりわけカルバメートから選択される活性化基である]
で示される化合物またはその塩の製造法であって、ワン−ポット合成として、
請求項14ないし16に定義した式(VI)で示されるN−活性化ラクタムラクトンまたはその塩を式(VII):
【化32】

[式中、Yは−Li、−MgX、−マグネセート、アリールマグネシウム種、例えば、
【化33】

(式中、RおよびRはここに定義したとおりである)、
アルキルマグネシウム種(例えば、分枝C1−7アルキル−Mg−)、−MnX、(アルキル)MnLi−、または−CeXなどの金属含有基である(ただし、Xはハロゲン、例えば、Cl、IまたはBr、より好ましくはBrである);またRおよびRは式(X)の化合物について定義したとおりである]
で示される化合物によりラクタム環開環して、請求項25ないし29に定義した式(VIII')の化合物またはその塩とする工程;
次いで、式(VIII')の化合物またはその塩のベンジルカルボニル基を還元して、請求項34ないし39に定義した式(X')で示される化合物またはその塩とする工程;そして
式(X')で示される化合物をラクトン化して式(X)で示される化合物を得る工程;
を含んでなる、製造法。
【請求項33】
式(X'):
【化34】

[式中、RおよびRは式(II)の化合物について定義したとおりであり、RおよびRは式(VIII)の化合物について定義したとおりであり、Actはアミノ保護基、とりわけカルバメートから選択される活性化基である]
で示される化合物またはその塩の製造法であって、請求項25ないし29に定義した式(VIII')の化合物のベンジルカルボニルを還元してヒドロキシル部分とすることを含んでなる、製造法。
【請求項34】
式(X'):
【化35】

[式中、
はC1−7アルキルまたはC3−8シクロアルキルであり;
はC1−7アルキル、C2−7アルケニル、C3−8シクロアルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキルであり、それぞれが未置換であるか、またはC1−4アルキル、O−C1−4アルキル、OH、C1−4アルキルアミノ、ジ−C1−4アルキルアミノ、ハロゲンおよび/またはトリフルオロメチルによりモノ−、ジ−またはトリ−置換されており;
は、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ−C1−6アルキルオキシまたはC1−6アルコキシ−C1−6アルキルであり;
は、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシであり;そして
Actはアミノ保護基、とりわけカルバメートから選択される活性化基である]
で示される化合物またはその塩。
【請求項35】
塩の形状にある請求項34に記載の化合物。
【請求項36】
Li、Na、K、Mg、Ca、一級、二級または三級アミン塩の形状である請求項34または35記載の化合物。
【請求項37】
式:
【化36】

を有する請求項34ないし36のいずれかに記載の化合物または好ましくはその塩。
【請求項38】
式:
【化37】

を有する請求項34ないし38のいずれかに記載の化合物または好ましくはその塩。
【請求項39】
式(IX):
【化38】

[式中、RおよびRは式(II)の化合物について定義したとおりであり、RおよびRは式(VIII)の化合物について定義したとおりであり、Actはアミノ保護基、とりわけカルバメートから選択される活性化基である]
で示される化合物またはその塩の製造法であって、請求項31に記載した式(X)の化合物を、または請求項34ないし38に記載した式(X')の化合物を調製し、次いで式(X)または(X')の化合物を水素化して式(IX)の化合物とすることを含んでなる、製造法。
【請求項40】
式(XI):
【化39】

[式中、RおよびRは式(II)の化合物について定義したとおりであり、RおよびRは式(VIII)の化合物について定義したとおりであり、Actはアミノ保護基、とりわけカルバメートから選択される活性化基である]
で示される化合物またはその塩の製造法であって、ベンジルアルコールおよび請求項32のいずれかに定義の式(X)で示される化合物のアミノ部分を環化してピロリジン部分とすることを含んでなる、製造法。
【請求項41】
式(IX):
【化40】

[式中、RおよびRは式(II)の化合物について定義したとおりであり、RおよびRは式(VIII)の化合物について定義したとおりであり、Actはアミノ保護基、とりわけカルバメートから選択される活性化基である]
で示される化合物またはその塩の製造法であって、請求項40に記載した式(XI)の化合物を調製し、次いで式(XI)の化合物のピロリジン部分を水素化または還元して開環し、8位置のメチレン部分を得ることを含んでなる、製造法。
【請求項42】
式(XI)で示される化合物が、式(XI')のピロリジン塩または式(XI”)のピロリジン遊離塩基に変換される請求項41記載の製造法:
【化41】

[式中、RおよびRは式(II)の化合物について定義したとおりであり、RおよびRは式(VIII)の化合物について定義したとおりであり、Xはハロゲン化物、トリフルオロ酢酸塩、硫酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、スルホン酸塩、トリフラート塩、ホスホン酸塩またはリン酸塩などのアニオンである]。
【請求項43】
式(XI'):
【化42】

[式中、
はC1−7アルキルまたはC3−8シクロアルキルであり;
はC1−7アルキル、C2−7アルケニル、C3−8シクロアルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキルであり、それぞれが未置換であるか、またはC1−4アルキル、O−C1−4アルキル、OH、C1−4アルキルアミノ、ジ−C1−4アルキルアミノ、ハロゲンおよび/またはトリフルオロメチルによりモノ−、ジ−またはトリ−置換されており;
は、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ−C1−6アルキルオキシまたはC1−6アルコキシ−C1−6アルキルであり;
は、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシであり;そして
はハロゲン化物、トリフルオロ酢酸塩、硫酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、スルホン酸塩、トリフラート塩、ホスホン酸塩またはリン酸塩などのアニオンである]
で示される化合物。
【請求項44】
式:
【化43】

を有する請求項43記載の化合物。
【請求項45】
式:
【化44】

を有する請求項43または44に記載の化合物。
【請求項46】
式(IX'):
【化45】

[式中、
はC1−7アルキルまたはC3−8シクロアルキルであり;
はC1−7アルキル、C2−7アルケニル、C3−8シクロアルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキルであり、それぞれが未置換であるか、またはC1−4アルキル、O−C1−4アルキル、OH、C1−4アルキルアミノ、ジ−C1−4アルキルアミノ、ハロゲンおよび/またはトリフルオロメチルによりモノ−、ジ−またはトリ−置換されており;
は、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ−C1−6アルキルオキシまたはC1−6アルコキシ−C1−6アルキルであり;
は、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシであり;そして
Actはアミノ保護基、とりわけカルバメートから選択される活性化基である]
で示される化合物またはその塩。
【請求項47】
塩の形状にある請求項46に記載の化合物。
【請求項48】
Li、Na、K、Mg、Ca、一級、二級または三級アミン塩の形状である請求項46または47記載の化合物。
【請求項49】
式:
【化46】

を有する請求項46ないし48のいずれかに記載の化合物または好ましくはその塩。
【請求項50】
式:
【化47】

を有する請求項46ないし48のいずれかに記載の化合物または好ましくはその塩。
【請求項51】
式(IX):
【化48】

[式中、RおよびRは式(II)の化合物について定義したとおりであり、RおよびRは式(VIII)の化合物について定義したとおりであり、Actはアミノ保護基、とりわけカルバメートから選択される活性化基である]
で示される化合物またはその塩の製造法であって、式(X”):
【化49】

[式中、RおよびRは式(II)の化合物について定義したとおりであり、RおよびRは式(VIII)の化合物について定義したとおりであり、Actはアミノ保護基、とりわけカルバメートから選択される活性化基であり、Act”は電子吸引基である]
で示される化合物またはその塩を、請求項32に定義した式(X)で示される化合物のベンジルアルコールを活性化アルコール部分に変換することにより、製造することを含んでなる製造法。
【請求項52】
請求項50に記載の製造法であって、請求項49に定義した式(X”)で示される化合物の活性化アルコール部分を水素化または還元して、8位をメチレン部分とすることを含んでなる、製造法。
【請求項53】
Act”が−(C=O)−R(ただし、Rは置換されたアルキル、アルキル−オキシ−R10、置換されたアラルキル、置換されたアリール、置換されたまたは未置換のO−アルキル、置換されたO−アリール、NH−R10であり得る;ただし、R10は置換されたアルキル、置換されたアリール、置換アラルキル(例えば、置換されたベンジル)、ベンゾイル、置換されたスルホニルであり得る;ただし、該置換基は各事例において1つ以上の電子吸引性部分(例えば、FまたはCF)である)である請求項50または51に記載の製造法。
【請求項54】
式(IX):
【化50】

[式中、RおよびRは式(II)の化合物について定義したとおりであり、RおよびRは式(VIII)の化合物について定義したとおりであり、Actはアミノ保護基、とりわけカルバメートから選択される活性化基である]
で示される化合物またはその塩の製造法であって、請求項32に定義した式(X)で示される化合物をチオカルボニル誘導体に転換し、次いでそれをラジカルによる還元に付して式(IX)で示される化合物を得ることを含んでなる、製造法。
【請求項55】
チオカルボニル誘導体が、イミダゾリル誘導体などのチオノカルバメート、キサンテートなどのチオカルボニル、およびチオノカルボネートからなる群より選択される請求項53に記載の製造法。
【請求項56】
チオカルボニル誘導体が、式(XV):
【化51】

[式中、RおよびRは式(II)の化合物について定義したとおりであり、Actはアミノ保護基、とりわけカルバメートから選択される活性化基であり、Rは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ−C1−6アルキルオキシまたはC1−6アルコキシ−C1−6アルキルであり、Rは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシである]
で示されるチオノカルボネートまたはその塩である請求項53または54に記載の製造法。
【請求項57】
チオカルボニル誘導体をBuSnHまたはトリス(トリメチルシリル)シランと反応させる請求項53ないし55のいずれかに記載の製造法。
【請求項58】
式(XII)
【化52】

[式中、RおよびRは式(II)の化合物について定義したとおりであり、RおよびRは式(VIII)の化合物について定義したとおりであり、Actはアミノ保護基、とりわけカルバメートから選択される活性化基である]
で示される化合物またはその塩の製造法であって、請求項30に定義の式(IX)で示される化合物または請求項46ないし49に記載の式(IX')で示される化合物またはその塩と、式(XIII):
【化53】

(式中、アミド窒素は要すれば保護されていてもよく、また保護基は式(XII)の対応する保護化合物においてその後に除去される)
で示されるアミンまたはその塩を反応させることを含んでなる、製造法。
【請求項59】
式(XIV):
【化54】

[式中、RおよびRは式(II)の化合物について定義したとおりであり、RおよびRは式(VIII)の化合物について定義したとおりである]
で示される化合物またはその塩の製造法であって、以下の工程の1つ以上を個々に、または組み合わせて実施する、製造法:
請求項9、10、11または12の1つに記載された式(II)の化合物またはその塩を製造する工程;
請求項13に記載された式(VI)の化合物またはその塩を製造する工程;
請求項17に記載された式(VIII)の化合物またはその塩を製造する工程;および
請求項30に記載された式(IX)の化合物またはその塩を製造する工程。
【請求項60】
請求項9の1つに記載された式(II)の化合物またはその塩を製造する工程;
請求項13に記載された式(VI)の化合物またはその塩を製造する工程;および/または
請求項17に記載された式(VIII)の化合物またはその塩を製造する工程;
を含んでなる、請求項58記載の製造法。
【請求項61】
請求項9の1つに記載された式(II)の化合物またはその塩を製造する工程;および/または
請求項13に記載された式(VI)の化合物またはその塩を製造する工程;
を含んでなる、請求項58または59に記載の製造法。
【請求項62】
請求項12の1つに記載された式(II)の化合物またはその塩を製造する工程;
請求項13に記載された式(VI)の化合物またはその塩を製造する工程;および/または
請求項17に記載された式(VIII)の化合物またはその塩を製造する工程;
を含んでなる、請求項58記載の製造法。
【請求項63】
請求項12の1つに記載された式(II)の化合物またはその塩を製造する工程;および/または
請求項13に記載された式(VI)の化合物またはその塩を製造する工程;
を含んでなる、請求項58または61に記載の製造法。
【請求項64】
請求項17に記載された式(VIII)の化合物または請求項25に記載された式(VIII')の化合物またはそれらの塩を製造する工程;
請求項30に記載された式(IX)の化合物または請求項46に記載された式(IX')の化合物またはそれらの塩を製造する工程;
を含んでなる、請求項58記載の製造法。
【請求項65】
請求項31に記載された式(X)の化合物または請求項33に記載された式(X')の化合物またはそれらの塩を製造する工程;および/または
請求項35に記載された式(IX)の化合物または請求項46に記載された式(IX')の化合物またはそれらの塩を製造する工程;
を含んでなる、請求項63記載の製造法。
【請求項66】
請求項31に記載された式(X)の化合物またはその塩を製造する工程;および/または
請求項36に記載された式(XI)の化合物またはその塩を製造する工程;および
請求項37に記載された式(IX)の化合物またはその塩を製造する工程;
を含んでなる、請求項48記載の製造法。
【請求項67】
式(XIV):
【化55】

[式中、RおよびRは式(II)の化合物について定義したとおりであり、RおよびRは式(VIII)の化合物について定義したとおりである]
で示される化合物またはその塩の製造法であって、以下の工程の1つ以上を個々に、または組み合わせて実施する、製造法:
請求項9、10、11または12の1つに記載された式(II)の化合物またはその塩を製造する工程;
請求項15に記載された式(VI)の化合物またはその塩を製造する工程;
請求項32に記載された式(X)の化合物またはその塩を製造する工程;および
請求項39に記載された式(IX)の化合物またはその塩を製造する工程。
【請求項68】
請求項9の1つに記載された式(II)の化合物またはその塩を製造する工程;
請求項15に記載された式(VI)の化合物またはその塩を製造する工程;および/または
請求項32に記載された式(X)の化合物またはその塩を製造する工程;
を含んでなる、請求項41に記載の製造法。

【公開番号】特開2013−32369(P2013−32369A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−213001(P2012−213001)
【出願日】平成24年9月26日(2012.9.26)
【分割の表示】特願2008−535948(P2008−535948)の分割
【原出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】