説明

レニン阻害剤を含むマイクロエマルジョン前濃縮物

【課題】活性成分としてδ−アミノ−γ−ヒドロキシ−ω−アリール−アルカン酸アミド レニン阻害剤を含む経口投与用の医薬組成物を提供する。
【解決手段】活性成分および少なくとも1個の吸収を促進する賦形剤を含むマイクロエマルジョン前濃縮物の形態の製剤を提供する。該前濃縮物は、さらに水性溶媒中、例えば胃液中に希釈されると水中油型マイクロエマルジョンに変換する自然に分散可能な油中水型マイクロエマルジョンである。また、それらの製造方法および薬剤としてのそれらの使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性成分として、例えば米国特許第5,559,111号(その全内容は、参照により本明細書中に包含される)に開示されるようなδ−アミノ−γ−ヒドロキシ−ω−アリール−アルカン酸アミド誘導体を含む経口投与のための医薬組成物に関する。特に、本発明は、活性成分および少なくとも1個の吸収を促進する賦形剤を含むマイクロエマルジョン前濃縮物の形態の製剤に関し、その前濃縮物は、自然に分散可能な油中水型(w/o)マイクロエマルジョンを提供し、さらに水性溶媒中、例えば胃液中に希釈されると水中油型(o/w)マイクロエマルジョンに変換する。本発明はまた、それらの製造方法および医薬としてのそれらの使用に関する。
【0002】
前記δ−アミノ−γ−ヒドロキシ−ω−アリール−アルカン酸アミド誘導体は、広く投与に関して、そして特に製剤に関して、薬剤の生物学的利用能ならびに対象間および対象内の用量反応における変動性の問題を含む非常に特異な困難を示し、それ故に、従来にない剤形の開発が必要とされている強力なレニン阻害剤のクラスである。
【背景技術】
【0003】
経口薬剤送達のためのマイクロエマルジョンの使用には、従来のエマルジョン(またはマクロエマルジョン)よりも多くの利点がある。マイクロエマルジョンは、多くのエネルギー供給を必要とすることなく自然に形成され、それ故に、商業的用途のための製造およびスケールアップが容易である。それらは、それらの小さい粒子サイズのために熱力学的安定性を有し、それ故に、長期保存性を有する。それらは、等方性の透明な外観を有し、それ故に分光学的手段により観察され得る。それらは、比較的低い粘性を有し、それ故に、移動および混合が容易である。それらは、表面反応を促進する大きな界面積を有する。それらは、その可撓性を可能にする低い界面張力および高い透過力を有する。最後に、それらは、薬物の可溶性および酵素加水分解に対する保護を改善する可能性を提供する。さらに、マイクロエマルジョンは、過剰の分散相を添加されるか、または温度変化に反応して転相し得、このことは、インビトロおよびインビボの両方においてマイクロエマルジョンからの薬剤放出に影響を与え得るこれらの系の特性である。例えば、米国特許第5,633,226号に記載のように、例えば内部の親水性相中に水溶性薬剤を含むw/oマイクロエマルジョンは、ヒトを含む動物の身体に直接投与すると、その体液自体が、w/oマイクロエマルジョンをo/wマイクロエマルジョンに変換するのに十分であり、それ故にインサイチュウで薬剤がゆっくりと放出される。このことは、体液を用いる点で水で予め変換されるよりも特に有利であり、投与される液体の全量はより少量である。本方法は、特に、ペプチド、タンパク質、または容易に酵素により攻撃される結合を有する他の分子のような薬剤の投与に有用であり、ここで油は、体液がエマルジョンを変換して薬剤をゆっくりと放出するまでそれを保護する。
【0004】
ペプチドを含む異なる薬剤の生物学的利用能を増強するための脂質を基礎とするマイクロエマルジョンの使用は、例えば、GB2,222,770およびPCT国際特許出願WO94/08605に既に開示されている。故に、GB2,222,770は、高度に疎水性のシクロスポリンペプチドと共に使用するためのマイクロエマルジョンおよび対応するマイクロエマルジョン前濃縮物を開示する。従って、適する前濃縮物は、親水性成分としての1,2−プロピレングリコール、親油性成分としてのカプリル酸−カプリン酸トリグリセリドおよび界面活性剤−共剤(cosurfactant)としてのポリオキシエチレングリコール化硬化ヒマシ油およびグリセリンモノオレエート(11:1比)の混合物を含む。次に、かかる製剤を水で希釈し、w/oマイクロエマルジョンではなくo/wマイクロエマルジョンを供し得る。WO94/08605は、(i)油および低HLBの界面活性剤が、中鎖および長鎖脂肪酸成分の物理的混合物である親油性相;(ii)高HLBの界面活性剤;および、(iii)水溶性の治療薬を含む水性親水性相を含む、自己乳化性w/oマイクロエマルジョンを記載する。
【0005】
マイクロエマルジョンは典型的に、前記成分を水性溶媒と接触させるとき自然にまたは実質的に自然に形成される、わずかに不透明か、乳白色か、透明かまたは実質的に透明なコロイド分散である。マイクロエマルジョンは、熱力学的に安定であり、かつ典型的には、約200nm(2000Å)未満の平均直径の分散された液滴を含む。一般的に、マイクロエマルジョンには、約150nm(1500Å)未満、典型的には100nm未満、一般的には10nm以上の平均直径を有する液滴または液体ナノ粒子が含まれ、それらは、24時間までの間安定である。
【0006】
マイクロエマルジョンの形成は、通常、3個またはそれ以上の成分、例えば、水またはポリエチレングリコールのような親水性相、油および界面活性剤(複数可)のような親油性相の組合せを必要とする。w/oまたはo/wマイクロエマルジョンのどちらかを形成する傾向は、親油性相および界面活性剤(複数可)の特性により影響される。
【0007】
マイクロエマルジョン前濃縮物は、水性溶媒中、例えば水中、例えば約1:1から約1:300、好ましくは約1:1から約1:70、より好ましくは約1:1から約1:10の範囲の希釈によるか、または経口投与後胃液中で、自然にマイクロエマルジョンを形成する組成物であると、本明細書中に定義される。好ましくは、本発明のマイクロエマルジョン前濃縮物は、混合することにより、例えば安定なw/oマイクロエマルジョンまたは他のミセル組成物を形成する、親水性相、親油性相および界面活性剤を含む。
【0008】
界面活性剤は、1から20までの値をとる親水性−親油性バランス(HLB)として公知の実験的スケールにて適宜分類される。一般に、w/oマイクロエマルジョンは、約2.5から6の範囲のHLB値を有する界面活性剤(または乳化剤)を用いて形成されるが、o/wマイクロエマルジョンは、約8から約18の範囲のHLB値を有する界面活性剤を用いて形成される。低い界面張力が、マイクロエマルジョンの熱力学的安定性に貢献することが長い間認識されている。マイクロエマルジョンの一般的概論は、例えば、Kahlweitの、Science, 240, 617−621 (1988)に記載の通りに発見され得る。
【0009】
共剤(通常、短鎖アルコール)の役割は、界面活性剤薄膜を貫通し、その結果、界面活性剤分子間の隙間のために不規則な薄膜を作製することにより界面の流動性を増すことである。しかしながら、マイクロエマルジョンにおける共剤の使用は、任意であり、アルコール不含有自己乳化性エマルジョンおよびマイクロエマルジョンが、例えばPoutonらの、Int. Journal of Pharmaceutics, 27, 335−348 (1985)、およびOsborneらの、J. Disp. Sci. Tech., 9, 415−423 (1988) などの文献に記載されている。
【発明の概要】
【0010】
本発明によって、特に興味のある生物学的利用能特性ならびに対象間および対象内の生物学的利用能パラメーターにおける変動性が低下した、δ−アミノ−γ−ヒドロキシ−ω−アリール−アルカン酸アミド レニン阻害剤を有する安定な医薬組成物が、マイクロエマルジョン前濃縮物として、特に、w/o前濃縮物として得られることが判明した。本発明の組成物には、流出阻害か、または経細胞吸収の促進、例えば膜流動性の増加のどちらかによる活性成分の経口吸収を促進する少なくとも1個の賦形剤が含まれ、それ故に、これまでに直面した困難を実質的に減じ得る。本発明による組成物が、有効な投薬とそれに伴う増強、ならびに個々の対象および対象間の吸収/生物学的利用能レベルの変動性の減少を可能にし得ることが示されている。故に、本発明は、かかるδ−アミノ−γ−ヒドロキシ−ω−アリール−アルカン酸アミド誘導体の耐容投与量レベルでの有効な治療を達成することができ、かつ各個体に対する必要な1日投与量のより正確な標準化および最適化が可能となり得る。その結果、望まれない副作用の発生の可能性を減じ得、かつ治療の総費用を減らすことができる。
【0011】
本発明に適用するδ−アミノ−γ−ヒドロキシ−ω−アリール−アルカン酸アミド誘導体は、レニン阻害活性を有し、それ故に、例えば、高血圧、アテローム性動脈硬化症、不安定冠状動脈症候群、うっ血性心不全、心肥大、心筋線維症、心筋梗塞後の心筋症、不安定冠状動脈症候群、拡張機能障害、慢性腎臓疾患、肝線維症、腎症、血管障害および神経障害のような糖尿病の合併症、冠動脈血管の疾患、血管形成術後の再狭窄、上昇した眼圧、緑内障、異常な血管増殖、高アルドステロン症、認知障害(cognitive impairment)、アルツハイマー病、認知症(dementia)、不安状態ならびに認知の障害(cognitive disorder)の処置のための治療薬としての医薬的利用性を有するこれらのものの全てである。
【0012】
従って、本発明は、
(a)親油性成分;
(b)高HLB界面活性剤;および
(c)親水性成分;
を含む吸収を促進する担体媒体中に活性成分としてδ−アミノ−γ−ヒドロキシ−ω−アリール−アルカン酸アミド レニン阻害剤を含む医薬組成物であって、混合すると安定なマイクロエマルジョン前濃縮物を形成する医薬組成物を提供する。
【0013】
好ましくは、前記親油性成分は、低HLBの界面活性剤を含む。
より好ましくは、前記親油性成分は、中鎖もしくは長鎖脂肪酸またはその脂肪酸の混合物を基礎とする低HLBの界面活性剤、および中鎖もしくは長鎖脂肪酸トリグリセリドまたはそのトリグリセリドの混合物である油を含む。
【0014】
より好ましくは、前記親油性成分が、中鎖脂肪酸またはその脂肪酸の混合物を基礎とする低HLBの界面活性剤、および中鎖脂肪酸トリグリセリドまたはそのトリグリセリドの混合物である油を含む。
好ましくは、前記親油性成分の中鎖脂肪酸は、8から12個の炭素原子を有する。
【0015】
有利には、本発明の吸収を促進する担体媒体の成分は、全てが吸収を促進する賦形剤を含み得る。しかしながら、1個の吸収を促進する成分、例えば高HLBの界面活性剤のみが、十分であり得る。
【0016】
好ましくは、前記活性成分を担体媒体の親水性成分中に溶解し、混合することにより安定なマイクロエマルジョン前濃縮物を形成する医薬組成物を形成する。好ましくは、本発明のマイクロエマルジョン前濃縮物は、w/oマイクロエマルジョンの形態であって、投与されるかまたは水性溶媒で希釈されると自然にo/wマイクロエマルジョンに変換する。
【0017】
好ましくは、本発明のδ−アミノ−γ−ヒドロキシ−ω−アリール−アルカン酸アミド レニン阻害剤は、式
【化1】

[式中、Rは、C1−4アルコキシ−C1−4アルコキシまたはC1−4アルコキシ−C1−4アルキルであり、Rは、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシであり、そしてRおよびRは、独立して分岐鎖C3−4アルキルである]
を有するか、またはその薬学的に許容される塩である。
【0018】
より好ましくは、本発明のδ−アミノ−γ−ヒドロキシ−ω−アリール−アルカン酸アミド レニン阻害剤は、式(I)(ここで、Rは、3−メトキシプロポキシであり、Rは、メトキシであり、そしてRおよびRは、イソプロピルである)の化合物、またはその薬学的に許容される塩である。
【0019】
最も好ましくは、本発明のδ−アミノ−γ−ヒドロキシ−ω−アリール−アルカン酸アミド レニン阻害剤は、アリスキレンとしても公知である(2S,4S,5S,7S)−5−アミノ−4−ヒドロキシ−2−イソプロピル−7−[4−メトキシ−3−(3−メトキシ−プロポキシ)−ベンジル]−8−メチル−ノナン酸 (2−カルバモイル−2−メチル−プロピル)−アミドヘミフマレートである。
【0020】
本発明に従い、活性成分は、本発明の組成物の総量の約25重量%まで、例えば、約0.1重量%の重量で存在し得る。活性成分は、好ましくは組成物の0.5から15重量%の量で存在する。
【0021】
本発明の医薬組成物の担体媒体を記載するために本明細書で用いられる様々な用語の定義を、下記に列記する。好ましい態様は、単に説明するためのものであって、いかなる場合も本発明の範囲を限定するものではないと解釈されるべきであり、さらなる情報および例を、例えば、Roweらの、“Handbook of Pharmaceutical Excipients”, 4th Edition, Pharmaceutical Press, London, Chicago (2003)に見出すことができる。
【0022】
本明細書で用いる用語“中鎖脂肪酸”は、6から12個の、好ましくは8から12個の炭素原子を有する脂肪酸部分を示し、それらは、分岐または非分岐、好ましくは非分岐であり得て、かつ所望により置換されていて良い。
【0023】
本明細書で用いる用語“長鎖脂肪酸”は、14から22個の、好ましくは14から18個の炭素原子を有する飽和、モノ−不飽和またはポリ−不飽和であり得る脂肪酸部分を示し、それらは、分岐または非分岐、好ましくは非分岐であり得て、かつ所望により置換されていて良い。
【0024】
本発明の使用に適する中鎖および長鎖脂肪酸トリグリセリドは、天然、半合成または合成起源のものであり得、異なる脂肪酸トリグリセリドの混合物であり得る。本明細書における使用に適するトリグリセリドは、商業的供給者からすぐに入手可能である。
【0025】
本明細書における使用に好ましい中鎖脂肪酸トリグリセリド、例えば飽和中鎖脂肪酸トリグリセリドは、商品名ACOMED、MYRITOL、CAPTEX、NEOBEE M 5 F、MIGLYOL 810、MIGLYOL 812、MIGLYOL 818、MAZOL、SEFSOL 860およびSEFSOL 870の下に入手可能である。
【0026】
とりわけ有用な中鎖脂肪酸トリグリセリドには、所望により(C10)カプリン酸と混合されていて良い(C)カプリル酸、例えば50から100%(w/w)のカプリル酸および0から50%(w/w)のカプリン酸トリグリセリドが含まれる。適する例には、例えば、CAPTEX 355、CAPTEX 200、CAPTEX 350、CAPTEX 850、CAPTEX 800、CAPTEX 8000、MIGLYOL 810、MIGLYOL 812およびMIGLYOL 818(それらは、またリノール酸トリグリセリドも含む)が含まれる。好ましい中鎖脂肪酸トリグリセリドは、CAPTEX 200およびMIGLYOL 812である。
【0027】
適する長鎖脂肪酸トリグリセリドは、中性植物、サメ肝油、オリーブ油、ゴマ油、ピーナッツ油、ヒマシ油、ベニバナ油、ヒマワリ油および大豆油のような植物油および魚油から都合良く得られ、それらは、それらの自然状態、または部分的もしくは完全な水素化状態であり得る。大豆油は、オレイン酸(25%)、リノール酸(54%)、リノレン酸(6%)、パルミチン酸(11%)およびステアリン酸(4%)トリグリセリドからなるが一方、ベニバナ油は、オレイン酸(13%)、リノール酸(76%)、ステアリン酸(4%)およびパルミチン酸(5%)トリグリセリドからなる。かかる長鎖脂肪酸トリグリセリドに適する、主な脂肪酸成分は、C18−飽和、モノ−不飽和またはポリ−不飽和脂肪酸、好ましくはC18−モノ−不飽和またはポリ−不飽和脂肪酸である。
【0028】
必要であるとき、中鎖および長鎖脂肪酸トリグリセリドの混合物は、本質的に中鎖脂肪酸部分を有するトリグリセリドを、本質的に長鎖脂肪酸部分を有するトリグリセリドと物理的に混合し、所望の割合の中鎖および長鎖脂肪酸トリグリセリドの人工混合物を作製することにより得られることが十分に理解される。
【0029】
本発明の使用に適する低HLBの界面活性剤には、脂肪酸モノおよびジグリセリド、ならびにそれらの混合物が含まれるが、それらに限定されるものではなく、かつ少量の遊離脂肪酸も含まれ得る。モノおよびジグリセリドには、異なる脂肪酸モノおよびジグリセリドの混合物がそれぞれ含まれ得る。
【0030】
適する中鎖脂肪酸モノ−およびジグリセリドは、カプリル酸およびカプリン酸から形成される。適する混合物には、約50から100%のカプリル酸および約0から約50%のカプリン酸モノおよび/またはジグリセリドが含まれ得る。適するこれらの商業的起源には、商品名CAPMUL(Karlsham Lipid Specialties, Columbus OH)の下に入手可能な吸収を促進する低HLBの界面活性剤、例えばカプロン酸(3.2%)、カプリル酸(66.8%)、カプリン酸(29.6%)、ラウリン酸(0.3%)およびパルミチン酸(0.1%)の脂肪酸組成を有する、モノグリセリド(77.4%)、ジグリセリド(21%)および遊離グリセロール(1.6%)を含むCAPMUL MCM、ならびに、少なくとも98%のカプリル酸を含む脂肪酸組成を有する、モノグリセリド(70−90%)、ジグリセリド(10−30%)および遊離グリセロール(2−4%)を有するCAPMUL MCM C8が含まれるが、それらに限定されない(製造元データ)。
【0031】
適する長鎖脂肪酸モノグリセリドには、モノステアリン酸グリセロール、モノパルミチン酸グリセロールおよびモノステアリン酸グリセロールが含まれる。適する商業的に入手可能なかかる例には、MYVEROL 18−92および18−99のような商品名MYVEROL、MYVATEXおよびMYVAPLEXの下に入手可能な製品が含まれる。製品に含まれる他の有用な長鎖脂肪酸モノグリセリドは、グリセロールモノオレエート、プロピレングリコール(10%)をさらに含むARLACEL 186である。MYVEROL 18−99の主な脂肪酸は、オレイン酸(61%)、リノール酸(21%)、リノレン酸(9%)およびパルミチン酸(4%)である。かかる長鎖モノグリセリドに好適な主な脂肪酸成分は、C18飽和、モノ不飽和またはポリ不飽和脂肪酸、好ましくはC18モノ不飽和またはポリ不飽和脂肪酸である。さらに、商品名MYVATEX SMGの下に入手可能な製品のようなモノグリセリドのジアセチル化型およびジスクシニル化型もまた、入手可能である。
【0032】
プロピレングリコールモノ脂肪酸エステルも使用可能である。脂肪酸構成要素には、好ましくは8から12個の炭素原子を有する飽和および不飽和脂肪酸の両方が含まれ得る。例えば、Nikko Chemicals Co., Ltd.またはGattefosseによる、例えば商品名SEFSOL 218、CAPRYOL 90およびLAUROグリコール 90の下に、またはAbitecによるCAPMUL PG−8の下に商業的に入手可能なカプリル酸およびラウリン酸のプロピレングリコールモノエステルが特に好ましい。
【0033】
好ましくは、前記低HLBの界面活性剤は、約2.5から約6の範囲のHLB値を有し得て、例えば、CAPMUL MCMのHLB値は、約5.5である。
適当には、油および低HLBの界面活性剤を共に含む親油性相は、本発明の組成物の総重量の約15から約80重量%、好ましくは、約20から約70重量%、より好ましくは約30重量%から約60重量%存在し得る。
【0034】
本発明の使用に適する高HLBの界面活性剤には、下記のような非イオン性の放出を阻害し、それ故に吸収を促進する界面活性剤が含まれるが、それらに限定されない:
(a)ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、例えば、商品名MYRJ、例えば、MYRJ 52(ステアリン酸ポリオキシエチレン40)の下に入手可能な型のポリオキシエチレンステアリン酸エステル。他の関係する製品には、飽和ヒドロキシ脂肪酸、例えば、C18からC20脂肪酸を、エチレンオキシドまたはポリエチレングリコールと反応させることにより製造され得るポリエトキシル化飽和ヒドロキシ脂肪酸が含まれる。本発明の適する実施例には、当技術分野で公知の方法、および例えば、商品名SOLUTOLの下にBASF社による商業的に入手可能な方法が含まれる。例えば、the BASF technical leaflet MEF 151E(1986)により公知の、約70重量%のポリエトキシル化12−ヒドロキシステアリン酸および約30重量%の非エステル化ポリエチレングリコール成分を含むSOLUTOL HS15がとりわけ好ましい;
(b)ポリオキシエチレン−ソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート)、例えば、モノ−およびトリラウリル、パルミチル、ステアリールおよびオレイルエステル、例えば、TWEEN20、21、40、60、61、65、80、81および85のような商品名TWEENの下に入手可能なポリオキシエチレンソルビテンモノオレエートであって、それらのクラスのうちTWEEN80(ポリソルベート80)がとりわけ好ましい;
【0035】
(c)天然または硬化ヒマシ油およびエチレンオキシドの反応生成物。天然または硬化ヒマシ油を、約1:35から約1:60のモル比でエチレンオキシドと反応させ、生成物からポリエチレングリコール成分を任意に取り出すことができる。様々なかかる界面活性剤が、商業的に入手可能である。特に適する界面活性剤には、商品名CREMOPHOR、例えば、CREMOPHOR RH 40(ポリオキシル40 硬化ヒマシ油)およびCREMOPHOR EL(ポリオキシル 35ヒマシ油)の下に入手可能なポリエチレングリコール−硬化ヒマシ油が含まれる;
(d)例えば、公知の型および商品名PLURONIC、LUTROLおよびMONOLANの下に商業的に入手可能なポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン・コポリマーおよびブロックコポリマー、ポロキサマー。とりわけ好ましい本クラスの生成物は、約52℃の融点を有し、約6800から8975の分子量である、BASFにより供されるPLURONIC F68(ポロキサマー 188)である;
(e)ポリオキシエチル化グリコールラウリルエーテルのようなポリオキシエチレングリコール長鎖アルキルエーテル;
(f)PEG−モノステアリンサンエステルのようなポリオキシエチレングリコール長鎖アルキルエステル;そして、
(g)水溶性トコフェロールポリエチレングリコールコハク酸エステル(TPGS)、例えば、重合数約1000を有するもの、例えば、Eastman Fine Chemicals Kingsport, Texas, USAにより入手可能なVITAMIN E−TPGS。
【0036】
本明細書における使用に関して、高HLBの界面活性剤は、好ましくは13から20の範囲のHLB値を有する。
【0037】
前記高HLBの界面活性剤は、本発明の組成物の増重量の約5から約60重量%、好ましくは、約10から約50重量%を含み得る。
【0038】
好ましくは、低および高HLBの界面活性剤の混合物は、約7から約15、より好ましくは約8から約13の範囲のHLB値を有し得る。
親水性成分は、典型的に、少なくとも1g/100mLまたはそれ以上、例えば、少なくとも5g/100mLの水に25℃で溶解する。活性成分と水を高速で混合するのが好ましい。かかる混合を、通常の実験により、例えば様々なクロマトグラフ法、例えばガスクロマトグラフィー(GC)により測定することが可能である。都合良くは、親水性成分または相はまた、有機溶媒、例えば、エーテルと混和可能である。一般に、親水性成分は、吸収を促進するアルコール、例えば、無水エタノールのような水混和性アルコール、グリセロール、1,2−プロピレングリコールのようなグリコールまたはポリアルキレングリコールのようなポリオール、トランスクトール(transcutol)のようなポリアルキレングリコールモノエーテル、またはその成分の混合物を含み得る。好ましくは、本発明の親水性成分には、ポリアルキレングリコール、より好ましくは、ポリ(C−C)−アルキレングリコールが含まれる。典型例は、例えば、200−1000ダルトン、より好ましくは、200−400ダルトンの分子量のポリエチレングリコールが好ましい。とりわけ好ましい親水性成分は、ポリエチレングリコール300(PEG 300)である。
【0039】
親水性成分は、本発明の組成物の総重量の約1から約20重量%、好ましくは、約3から約10重量%存在し得る。
好ましくは、親油性成分、親水性成分、および高HLBの界面活性剤の組成比は、標準的な3方向プロットグラフの“マイクロエマルジョン”区分内に位置する。これらの相図(phase diagram)を、例えば、GB2,222,770およびPCT国際特許出願WO96/13273に記載の通りの常套法で作製することができる。
【0040】
様々な相は、任意に下記のようなさらなる成分を含み得るが、それに限定されるわけではない:
(a)リン脂質のような脂質、特に大豆レシチン、卵レシチンまたは卵リン脂質のようなレシチン、コレステロールまたはオレイン酸のような長鎖脂肪酸;
(b)例えば3%未満、好ましくは1%未満(w/w)の量の、n−プロピルガラートのような抗酸化剤、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)およびその混合された異性体、δ−α−トコフェロールおよびその混合された異性体、アスコルビン酸、プロピルパラベン、メチルパラベンおよびクエン酸(一水和物);
(c)胆汁酸塩、例えばナトリウムタウロコレートのようなそれらのアルカリ金属塩;
(d)例えば3%未満、好ましくは1%(w/w)未満の量の、ヒドロキシプロピルセルロースのような安定剤;
(e)安息香酸(ナトリウム塩)のような抗菌剤;
(f)ジオクチルコハク酸エステル、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムまたはラウリル硫酸ナトリウム;
(g)例えば、プロピレングリコールジカプリレート、ジラウレート、ヒドロキシステアレート、イソステアレート、ラウレート、リシノレートなどのプロピレングリコールモノ−およびジ−脂肪酸エステル。それらのうちMiglyol 840およびlmwitor 408として商業的に公知のプロピレングリコールカプリル酸/カプリン酸ジエステルがとりわけ好ましい;そして、
(h)アプロチニンのようなプロテアーゼ阻害剤。
【0041】
好ましくは、例えばレーザー光散乱技術により数−平均直径を測定された、本発明のマイクロエマルジョン前濃縮物の希釈により産生されるo/wマイクロエマルジョンの液滴または粒子の直径は、150nm未満、より好ましくは100nm未満、さらにより好ましくは50nm未満、および最も好ましくは約10から約35nmの範囲である。
【0042】
色素可溶化、水中分散性および伝導性測定などの簡易検定を、マイクロエマルジョンがo/wまたはw/o型のどちらであるかを測定するために用いることができる。水溶性色素は、o/wマイクロエマルジョン中に分散するが、一方、w/oマイクロエマルジョン中ではその原形で残り得る。同様に、o/wマイクロエマルジョンは一般的に、水に分散可能であるが、一方w/oマイクロエマルジョンは一般的に分散できない。さらに、o/wマイクロエマルジョンは伝導性であるが、一方、w/oは伝導性ではない。その系の等方性性質を、偏光下でそれを試験することにより確認することができる。ミセルの性質であるマイクロエマルジョンは、等方性であり、故に偏光下で試験したとき、非複屈折性である。
【0043】
好ましくは、w/oマイクロエマルジョンの形態である本発明のマイクロエマルジョン前濃縮物は、それらの成分を接触させたとき、自然にまたは実質的に自然に、すなわち、実質的なエネルギー供給の適用なしに形成される。例えば、均質化および/または微小流動化、または他の機械的撹拌により与えられるような高せん断エネルギーなしに形成される。従って、前記マイクロエマルジョン前濃縮物を、必要であれば混合を確実にするためにゆっくり混合するかまたは撹拌しながら、適当量を混合する簡単な方法により容易に製造することができる。好ましくは、治療薬を、直接またはその原液を希釈して親水性相に溶解し、そしてその後、これを混合しながら油および低HLBの界面活性剤の予め混合した組合せに加え、次に高HLBの界面活性剤に加えてよく、またはその逆も可能である。別法にて、薬剤不含有マイクロエマルジョン前濃縮物を、油、低HLBの界面活性剤、高HLBの界面活性剤および親水性成分を混合することにより最初に製造し、その後、その組成物に、治療薬を加えても良い。より高温(40−60℃)で、マイクロエマルジョン前濃縮物の製造中に全ての成分を溶解させることが必要になるかもしれないが、好ましい系は、室温で製剤し得る。
【0044】
本明細書中で定義する、活性成分または治療薬は、当技術分野で公知の標準的インビボおよびインビトロ試験、例えば、米国特許第5,559,111号で開示される方法により測定し得るレニン阻害剤活性を示す、任意のδ−アミノ−γ−ヒドロキシ−ω−アリール−アルカン酸アミド誘導体を示す。δ−アミノ−γ−ヒドロキシ−ω−アリール−アルカン酸アミド誘導体は、文献記載の方法、例えば米国特許第5,559,111号に記載の方法に従い製造され得る。
【0045】
好ましい局面において、本発明は、少なくとも1個の吸収を促進する賦形剤、および経口投与され得て、かつその生物学的活性を保持し得るδ−アミノ−γ−ヒドロキシ−ω−アリール−アルカン酸アミド レニン阻害剤を含むマイクロエマルジョン前濃縮物の形態の医薬組成物(それは、自然に分散可能なw/oマイクロエマルジョンを提供し、さらに水性溶媒中、例えば胃液中に希釈されるとo/wマイクロエマルジョンに変換される)を提供し、それ故にδ−アミノ−γ−ヒドロキシ−ω−アリール−アルカン酸アミド誘導体の生物学的利用能が十分ではない従来の剤形の欠点を克服する。
【0046】
従って、本発明は、高血圧、アテローム性動脈硬化症、不安定冠状動脈症候群、うっ血性心不全、心肥大、心筋線維症、心筋梗塞後の心筋症、不安定冠状動脈症候群、拡張機能障害、慢性腎臓疾患、肝線維症、腎症、血管障害および神経障害のような糖尿病の合併症、冠動脈血管の疾患、血管形成術後の再狭窄、上昇した眼圧、緑内障、異常な血管増殖、高アルドステロン症、認知障害、アルツハイマー病、認知症、不安状態および認知の障害の処置のための方法であって、上記に定義の治療的に有効量の医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む方法を提供する。
【0047】
必要なとき、本発明の医薬組成物は、好ましくは、例えば経口投与可能なカプセルシェル中にそれらを充填することにより、単位投与量形態に混合される。カプセルシェルは、軟および硬ゼラチンカプセルシェルであり得る。前記組成物が、単位投与量形態であるとき、各単位投与量は、適当には0.1から300mg、好ましくは10から150mg、より好ましくは10から100mg、例えば15mgまたは75mgの活性成分を含み得る。かかる単位投与量形態は、治療の特定の目的、治療段階などに依存して変わるが、1日1から5回の投与に適する。しかしながら、所望であれば、前記組成物は、飲薬の形態であり得、かつ例えば、約1:10から約1:100の希釈で、例えば飲料に適するコロイド系を提供するために、水、または例えばミルク、グレープフルーツジュースを除くフルーツジュースなどの任意の他の水溶液系を含み得る。
本発明はさらに、医薬としての使用のための上記の医薬組成物に関する。
【0048】
最後に、本発明は、医薬の製造における上記に定義のとおりの脂肪酸トリグリセリド、低HLBの界面活性剤、高HLBの界面活性剤、親水性成分および治療薬の使用を提供する。
【0049】
従って、本発明は、レニン活性により仲介される状態、好ましくは、高血圧、アテローム性動脈硬化症、不安定冠状動脈症候群、うっ血性心不全、心肥大、心筋線維症、心筋梗塞後の心筋症、不安定冠状動脈症候群、拡張機能障害、慢性腎臓疾患、肝線維症、腎症、血管障害および神経障害のような糖尿病の合併症、冠動脈血管の疾患、血管形成術後の再狭窄、上昇した眼圧、緑内障、異常な血管増殖、高アルドステロン症、認知障害、アルツハイマー病、認知症、不安神経症ならびに認知の障害の処置のための医薬の製造を目的とした、上記の医薬組成物の使用に関する。
【0050】
本発明の組成物、例えば実施例に記載の組成物は、標準安定性試験により、例えば1、2または3年まで、およびより長期の貯蔵安定性を有すると示されるとおり、良好な安定特性を示し得る。ミセル前濃縮物、特にw/o前濃縮物の形態の本発明の組成物は、安定なミセル水溶液、例えば、1日までまたはそれ以上安定なo/wマイクロエマルジョンを製造する。
【0051】
上記の記述は、その好ましい態様を含む本発明を完全に開示する。本明細書中に具合的に開示される態様の修飾および改良は、特許請求の範囲内である。さらなる詳述なしに、当業者が上記開示を用いて本発明をその最大限に利用し得ると考えられる。故に、本明細書中の実施例は、単に説明するものであって、いかなる場合も本発明の範囲を限定するものではないと解釈されるべきである。
【実施例】
【0052】
例示的実施例のマイクロエマルジョン前濃縮物は、一般に、必要であれば完全に溶解させるために撹拌しながら、適当量の治療薬、例えばアリスキレンを、親水性成分中、例えばPEG 300中に最初に溶解することにより製造し得る。その後、薬剤を含む親水性相を、ゆっくりと撹拌しながら、油および低HLBの界面活性剤の混合物の適当量(重量)に加え、その後それを高HLBの界面活性剤に加える。別法にて、薬剤を含む親水性相を高HLBの界面活性剤に加え、次に完全に混合し、これを、油+低HLBの界面活性剤混合物に加える。必要であれば、その後、薬剤含有マイクロエマルジョン前濃縮物を、対応する薬剤不含有マイクロエマルジョンで希釈し、薬剤の濃度を調整する。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【0056】
【表4】

【0057】
【表5】

【0058】
【表6】

【0059】
【表7】

【0060】
【表8】

【0061】
【表9】

【0062】
【表10】

【0063】
【表11】

【0064】
【表12】

【0065】
【表13】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)親油性成分;
(b)高親水性−親油性バランス(HLB)の界面活性剤;および
(c)親水性成分;
を含む吸収を促進する担体媒体中にδ−アミノ−γ−ヒドロキシ−ω−アリール−アルカン酸アミド レニン阻害剤を含む経口投与のための医薬組成物であって、混合すると安定なマイクロエマルジョン前濃縮物を形成する医薬組成物。

【公開番号】特開2012−67133(P2012−67133A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−45(P2012−45)
【出願日】平成24年1月4日(2012.1.4)
【分割の表示】特願2006−544364(P2006−544364)の分割
【原出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】