説明

レバミピド含有水性懸濁液剤及びその製造方法

本発明は、簡便な方法で製造可能であり、レバミピドの微細粒子を凝集させることなく、その分散状態を安定に保持できるレバミピド含有水性懸濁液剤を提供する。本発明のレバミピド含有水性懸濁液剤は、レバミピドに、ポリビニルアルコールと、更にナトリウム塩化合物を配合して製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡便な方法で製造可能であり、レバミピドの微細粒子の分散状態を安定に保持できるレバミピド含有水性懸濁液剤、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レバミピドは、消化管に対する抗炎症作用及び抗潰瘍作用を有し、医薬品として使用されている。更に、レバミピドは、眼科分野でも、眼の角膜及び結膜においてゴブレット細胞を増加させることにより、粘液成分であるムチンの産生量、粘液及び涙液を増大させ、これによって角膜及び結膜を保護乃至安定化できるので、ドライアイと総称される眼角膜乾燥に由来する疾患の予防や治療に有効であることが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
一方、レバミピドは、酸性化合物であるため、眼や粘膜の組織に対して刺激や障害が少ない生理的中性のpH領域では、長期間に亘り安定な十分な溶解度を示すことができず、水溶液の状態で製剤化できないという欠点がある。また、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等の界面活性剤や、シクロデキストリン誘導体等の溶解補助剤を使用して、レバミピドを可溶化して水溶液とすることは、添加した各種界面活性剤や溶解補助剤等の添加物が、投薬時に粘膜に含まれる生体成分も溶解させる畏れがあり、粘膜の安定化及び保護を目的とするレバミピドの目的を損なうことが懸念される。
【0004】
これに対して、レバミピドを分散させた水性懸濁液剤にすれば、前述するレバミピドの溶解性の欠点を克服して、レバミピドの製剤化が可能である。しかしながら、レバミピドは、通常、針状結晶(平均粒子径:短径0.1〜0.5μm、長径0.2〜4μm)の一次粒子が凝集して、二次粒子(平均粒子径:約10〜50μm)を形成した粉末状で存在しており、微細粒子の状態で懸濁化が困難であるという問題点がある。そのため、従来技術では、二次粒子を形成して凝集しているレバミピドを微細粒子として均質に分散させるには、懸濁化剤として知られている水溶性高分子のセルロース誘導体等や界面活性剤等を添加し、これを更に高圧ホモジナイザー、コロイドミル、タービン型撹拌装置、高速剪断回転式撹拌装置、超音波装置等の特別な分散・懸濁装置で強力に撹拌することが不可欠であった。
【0005】
更に、従来技術では、たとえレバミピドを水溶液中で微細粒子として分散させることができても、保存時間と共に、レバミピドの微細粒子が再凝集して、再び二次粒子を形成したり、結晶粒子の増大化を示し、沈降した懸濁粒子が容易に微細粒子として再分散しないという問題点があった。
【0006】
このような従来技術を背景として、簡便な方法で、レバミピドを微細粒子の状態で安定に分散させることができ、しかも当該微細粒子の再凝集を引き起こさないレバミピド含有水性懸濁液剤の開発が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−301866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであって、簡便な方法で製造可能であり、レバミピドの微細粒子を凝集させることなく、その分散状態を安定に保持できるレバミピド含有水性懸濁液剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、レバミピドと共にポリビニルアルコールを水溶液に配合することによって、特別な分散・懸濁装置を使用しなくても、微細粒子の状態のレバミピドを均質に分散させることができ、しかもレバミピドの微細粒子の再凝集を引き起こすことがなく、懸濁状態を安定に保持できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、更に改良を重ねることにより完成したものである。
【0010】
即ち、本発明は、下記に掲げるレバミピド含有水性懸濁液剤、及びその製造方法を提供する:
項1. レバミピド、及びポリビニルアルコールを含有することを特徴とする水性懸濁液剤。
項2. 更に、ナトリウム塩化合物を含有する、項1に記載の水性懸濁液剤。
項3. レバミピドを0.1〜30w/v%、及びポリビニルアルコールを0.1〜4w/v%含有する、項1又は2に記載の水性懸濁液剤。
項4. 点眼剤である、項1乃至3のいずれかに記載の水性懸濁液剤。
項5. 下記工程を含むことを特徴とするレバミピド含有水性懸濁液剤の製造方法:
(1)水とポリビニルアルコールを混合して、ポリビニルアルコール含有水溶液を得る第1工程、及び
(2)前記第1工程で得られたポリビニルアルコール含有水溶液に、レバミピドを混合して、レバミピド含有水性懸濁液剤を得る第2工程。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水性懸濁液剤によれば、レバミピドが微細粒子の状態で均質に分散しており、しかも長期間保存しても、レバミピドの微細粒子が凝集を引き起こすことがなく、結晶粒子も増大化しないため、レバミピドが微細粒子の分散状態を安定に保持することができ、沈降した場合も手による振盪で容易に微細結晶粒子が均質な分散状態に戻ることができる。
【0012】
また、本発明の水性懸濁液剤では、ポリビニルアルコールが存在することによって、強力な撹拌を行うための分散・懸濁装置(例えば、ホモジナイザー、コロイドミル、タービン型撹拌装置、高速剪断回転式撹拌装置、超音波装置等)を要することなく、通常の混合に要する程度の撹拌で、二次粒子を形成して凝集しているレバミピドを微細粒子の状態に分散させることが可能になっている。それ故、本発明の水性懸濁液剤には、簡便な方法で製剤化できるという製造上の利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1には、試験例2においてレバミピドの粒度分布[Q3:積算分布(%)、折れ線、q3:頻度分布(%)、縦棒]を測定した結果を示す。図1中、Aは、実施例12の懸濁液におけるレバミピドの粒度分布を、Bは比較例1の懸濁液におけるレバミピドの粒度分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の水性懸濁液剤は、薬理活性物質として、レバミピドを含有する。
【0015】
本発明に使用されるレバミピドの原体粉末は、通常、針状結晶(平均粒子径:短径0.1〜0.5μm、長径0.2〜4μm)の一次粒子が凝集して、二次粒子(平均粒子径:約10〜50μm)を形成した粉末状で存在している。本発明の水性懸濁液剤では、ポリビニルアルコールが存在することによって、レバミピドは平均粒子径が0.1〜10μm、好ましくは0.2〜5μmの微細粒子として分散した状態を安定に保持することが可能になっている。ここで、平均粒子径(μm)とは、以下の方法に従って算出される。即ち、レーザー回折・散乱法により測定された粒度分布データにおいて、粒子径範囲(最大粒子径:x、最小粒子径xn+1)をn分割し、下記の計算式により算出される平均値を平均粒子径とする。
【0016】
平均値=10μ
但し、
【数1】

:粒子径、q:差分%(頻度分布)
【0017】
本発明の水性懸濁液剤において、レバミピドの配合割合については、適用部位や投与方法等に応じて適宜設定することができるが、好ましくは0.1〜30w/v%、更に好ましくは0.3〜10w/v%が例示される。
【0018】
更に、本発明の水性懸濁液剤は、上記レバミピドを微細粒子の状態で安定に分散させるために、ポリビニルアルコールを含有する。
【0019】
本発明に使用されるポリビニルアルコールのケン化度については、特に制限がなく、部分ケン化物又は完全ケン化物のいずれのものであってもよいが、レバミピドの分散性を一層向上させるという観点からは、部分ケン化物が好適である。本発明に使用されるポリビニルアルコールとして、好ましくは平均ケン化度70〜94モル%、特に好ましくは平均ケン化度85〜90モル%の部分ケン化物が例示される。なお、ここでいう平均ケン化度は、JIS K 6726 3.5に従って測定される値である。
【0020】
また、本発明に使用されるポリビニルアルコールの水溶解粘度(20℃、濃度4重量%の水溶解粘度、以下、「4%/20℃の粘度」と表記する)については、特に制限されないが、3〜110mPa・s、特に20〜60mPa・sであることが望ましい。なお、ここでいう4%/20℃の粘度については、「第十四改正日本薬局方 一般試験法 45.粘度測定法 第1法 毛細管粘度計法」に記載の方法に従って測定される値であり、具体的には、以下の方法により測定される:(1)ポリビニルアルコールの4重量%水溶液を調製し、毛細管粘度計(ウベローデ粘度計)に入れ、20℃(±0.1℃)の恒温水槽中にて約20分間保持する。(2)液面が毛細管粘度計の上の標線から下の標線まで流下するのに要する時間t(s)を測定する。(3)得られた測定値を以下の式に適用して、4%/20℃の粘度を算出する。
【0021】
動粘度ν = K(粘度計の定数、mm/s)×t(測定された時間、s)
粘度η(4%/20℃の粘度)= ν(動粘度)×ρ(試料液体の密度、g/mL)
= K(粘度計の定数、mm/s)×t(測定された時間、s)
×ρ(試料液体の密度、g/mL)
【0022】
本発明の水性懸濁液剤において、ポリビニルアルコールの配合割合については、レバミピドの配合割合や使用するポリビニルアルコールの種類等に応じて適宜設定することができるが、好ましくは0.1〜4w/v%、更に好ましくは0.3〜2w/v%が例示される。
【0023】
また、微細粒子状のレバミピドを均質且つ安定に分散させるという観点から、本発明の水性懸濁液剤の好適な一実施形態として、レバミピドとポリビニルアルコールが上記配合割合を満たし、且つこれら両成分の比率として、レバミピド100重量部に対してポリビニルアルコールが2〜4000重量部、好ましくは10〜1000重量部となる比率を充足するものが例示される。
【0024】
本発明の水性懸濁液剤は、レバミピド及びポリビニルアルコールに加えて、水溶液中で溶解可能な金属塩化合物及び/又はトリス塩化合物を含有することによって、一次粒子状のレバミピドの再凝集をより一層効果的に抑制することが可能になる。
【0025】
ここで、水溶液中で溶解可能な金属塩化合物としては、薬学的に許容される限り、特に制限されるものではないが、例えば、塩化ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、コハク酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等のナトリウム塩化合物;塩化カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム、コハク酸カリウム、酒石酸カリウム、水酸化カリウム、酢酸カリウム、炭酸カリウム、クエン酸カリウム等のカリウム塩化合物;塩化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム等のカルシウム塩化合物;塩化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム等のマグネシウム塩化合物等が例示される。また、水溶液中で溶解可能なトリス塩化合物についても、薬学的に許容される限り、特に制限されるものではないが、例えば、トリス(2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール等が例示される。
【0026】
上記金属塩化合物及び/又はトリス塩化合物の中でも、ナトリウム塩化合物、特に塩化ナトリウムには、分散した微細粒子状のレバミピドの再凝集を抑制する作用が高く、本発明の水性懸濁液製剤に好適に使用される。
【0027】
本発明の水性懸濁液製剤において、上記金属塩化合物及び/又はトリス塩化合物は、1種の化合物を単独で使用してもよく、また2種以上の化合物を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
上記金属塩化合物及び/又はトリス塩化合物を配合する場合、本発明の水性懸濁液製剤における当該金属塩化合物及び/又はトリス塩化合物の濃度については特に制限されないが、一例として、これらの化合物が総量で0.01〜3w/v%、好ましくは0.1〜2w/v%となる濃度を挙げることができる。
【0029】
本発明の水性懸濁液製剤の浸透圧については、生体に許容される範囲内であれば、特に制限されない。例えば、本発明の水性懸濁液製剤を点眼剤とする場合であれば、その浸透圧として、通常150〜600mOsm/kg、好ましくは200〜400mOsm/kg、更に好ましくは245〜365mOsm/kgとなる範囲が挙げられる。浸透圧の調整は、前述する金属塩化合物および/またはトリス塩化合物、或いは糖、糖アルコール、多価アルコール等を用いて、当該技術分野で公知の方法で行うことができる。
【0030】
また、本発明の水性懸濁液製剤のpHについては、薬学的に許容できる範囲内であれば特に限定されるものではないが、一例として3.0〜9.0、好ましくは5.0〜7.0が挙げられる。pHの調整は、クエン酸、リン酸、酢酸、及びこれらの塩、塩酸、水酸化ナトリウム等のpH調整剤を用いて、当該技術分野で公知の方法で行うことができる。
【0031】
本発明の水性懸濁液製剤には、本発明の効果を妨げない範囲で、上記成分の他に、他の医薬活性成分、保存剤、清涼化剤、界面活性剤、香料、着色料、キレート剤、緩衝剤、増粘剤等を含んでいてもよい。本発明の水性懸濁液製剤に配合可能な保存剤の具体例としては、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン等のパラベン類;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等の第四級アンモニウム塩;グルコン酸クロルヘキシジン等のグアニジン系殺菌剤;エデト酸ナトリウム等が挙げられる。
【0032】
本発明の水性懸濁液製剤は、点眼剤、点鼻剤、吸入製剤(吸入用噴霧装置で噴霧された状態で吸入される経肺投与製剤)等の粘膜適用製剤として好適に使用されるが、経口製剤や注射剤等として使用してもよい。本発明の水性懸濁液製剤の用途として、特に好ましくは点眼剤である。
【0033】
また、本発明の水性懸濁液製剤は、更に、ゲル化剤、増粘剤、軟膏基材等を配合して、ゲル状又は軟膏状に製剤化して使用することもできる。
【0034】
本発明の水性懸濁液製剤は、薬学的に許容される水(好ましくは精製水又は注射用水)に所定量のレバミピド及びポリビニルアルコール、必要に応じて他の添加成分を配合することにより製造される。本発明の水性懸濁液製剤の製造方法として、好ましくは、下記の第1及び2工程を包含する方法が挙げられる:
(1)水とポリビニルアルコールを混合して、ポリビニルアルコール含有水溶液を得る第1工程、及び
(2)前記第1工程で得られたポリビニルアルコール含有水溶液に、レバミピドを混合して、レバミピド含有水性懸濁液剤を得る第2工程。
【0035】
なお、レバミピド及びポリビニルアルコール以外の配合成分については、上記第1工程又は第2工程のいずれで添加してもよい。また、上記第2工程では、ポリビニルアルコールの作用によって、二次粒子を形成して凝集している粉末状のレバミピドが微細粒子として分散し易くなっているので、特段の強い撹拌でなく、汎用プロペラ撹拌装置などの弱い撹拌でも、レバミピドを微細粒子の状態で均質に分散させることができる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例を挙げて、本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例1〜4及び7〜12で使用したポリビニルアルコールは、商品名「Poval 224C」(クラレ社製)(ケン化度:86〜89モル%;4%/20℃の粘度:20〜48mPa・s)である。また、以下の実施例5〜6で使用したポリビニルアルコールは、商品名「Polyvinylalcohol USP」(Spectrum Quality Product社製、米国)(ケン化度:86〜89モル%;4%/20℃の粘度:20〜48mPa・s)である。
【0037】
実施例1 点眼剤


レバミピド以外の成分を精製水に加温溶解し、無菌濾過後、無菌操作により予め滅菌されたレバミピドを加え、マグネチックスターラーで撹拌して水性懸濁液剤を調製した。斯くして得られた水性懸濁液剤を容量5〜15mLのプラスチック製容器に無菌的に分注することにより点眼剤を製した。
【0038】
実施例2 点眼剤


レバミピド以外の成分を精製水に加温溶解し、無菌濾過後、無菌操作により予め滅菌されたレバミピドを加え、マグネチックスターラーで撹拌して水性懸濁液剤を調製した。斯くして得られた水性懸濁液剤を容量5〜15mLのプラスチック製容器に無菌的に分注することにより点眼剤を製した。
【0039】
実施例3 点眼剤


レバミピド以外の成分を精製水に加温溶解し、無菌濾過後、無菌操作により予め滅菌されたレバミピドを加え、マグネチックスターラーで撹拌して水性懸濁液剤を調製した。斯くして得られた水性懸濁液剤を容量0.3〜1mLの一回使い切りのプラスチック製容器に無菌的に分注することにより点眼剤を製した。
【0040】
実施例4 点眼剤


レバミピド以外の成分を精製水に加温溶解し、無菌濾過後、無菌操作により予め滅菌されたレバミピドを加え、マグネチックスターラーで撹拌して水性懸濁液剤を調製した。斯くして得られた水性懸濁液剤を容量0.3〜1mLの一回使い切りのプラスチック製容器に無菌的に分注することにより点眼剤を製した。
【0041】
実施例5 点眼剤


レバミピド以外の成分を精製水に加温溶解し、無菌濾過後、無菌操作により予め滅菌されたレバミピドを加え、マグネチックスターラーで撹拌して水性懸濁液剤を調製した。斯くして得られた水性懸濁液剤を容量0.3〜1mLの一回使い切りタイプのプラスチック製容器に無菌的に分注することにより点眼剤を製した。
【0042】
実施例6 点眼剤


レバミピド以外の成分を精製水に加温溶解し、無菌濾過後、無菌操作により予め滅菌されたレバミピドを加え、マグネチックスターラーで撹拌して水性懸濁液剤を調製した。斯くして得られた水性懸濁液剤を容量0.3〜1mLの一回使い切りタイプのプラスチック製容器に無菌的に分注することにより点眼剤を製した。
【0043】
実施例7 吸入製剤


レバミピド以外の成分を精製水に加温溶解し、無菌濾過後、無菌操作により予め滅菌されたレバミピドを加え、マグネチックスターラーで撹拌して水性懸濁液剤を調製した。斯くして得られた水性懸濁液剤を容量10〜50mLのプラスチック製又はガラス製の容器に無菌的に分注することにより吸入製剤を製した。当該吸入製剤は、使用に際して、容器内の吸入製剤の2〜3mLをスポイドで採り、これを吸入用噴霧装置(ネブラザー)に注入して噴霧させ、次いで噴霧された吸入製剤を吸入することによって投与される。
【0044】
実施例8 吸入製剤


レバミピド以外の成分を精製水に加温溶解し、無菌濾過後、無菌操作により予め滅菌されたレバミピドを加え、マグネチックスターラーで撹拌して水性懸濁液剤を調製した。斯くして得られた水性懸濁液剤を容量0.3〜5mLの一回使い切りタイプのプラスチック製容器に無菌的に分注することにより吸入製剤を製した。当該吸入製剤は、使用に際して、容器内の吸入製剤の全量を吸入用噴霧装置(ネブラザー)に注入し、適宜、他の吸入製剤又は生理食塩水で希釈して噴霧させ、次いで噴霧された吸入製剤を吸入することによって投与される。
【0045】
実施例9 ゲル状製剤


ポリビニルアルコールを、所定の精製水の半量に溶解し、これにレバミピドを加えて、マグネチックスターラーで撹拌して水性懸濁液剤を調製した。また、別途、残りの精製水にカルボキシビニルポリマーを溶解し、これに残余の成分を加えて溶解し、カルボキシビニルポリマー含有溶液を調製した。次いで、上記で調製した水性懸濁液剤及びカルボキシビニルポリマー含有溶液を混合しながら、pHを調整してゲル化させ、ゲル状製剤を製した。斯くして得られたゲル状製剤を容量3〜20mLのプラスチック製又はアルミニウム製のチューブに充填した。
【0046】
実施例10 ゲル状製剤


ポリビニルアルコールを、所定の精製水の半量に溶解し、これにレバミピドを加えて、マグネチックスターラーで撹拌して水性懸濁液剤を調製した。また、別途、残りの精製水にカルボキシビニルポリマーを溶解し、これに残余の成分を加えて溶解し、カルボキシビニルポリマー含有溶液を調製した。次いで、上記で調製した水性懸濁液剤及びカルボキシビニルポリマー含有溶液を混合しながら、pHを調整してゲル化させ、ゲル状製剤を製した。斯くして得られたゲル状製剤を容量3〜20mLのプラスチック製又はアルミニウム製のチューブに充填した。
【0047】
実施例11 軟膏状製剤


ポリビニルアルコール及び塩化ナトリウムを精製水に溶解した。これにレバミピドを加えて、マグネチックスターラーで撹拌して水性懸濁液剤を調製した。また、別途、白色ワセリンを加温溶解し、これにメチルパラベン及びプロピルパラベンを溶解し、適宜冷却しながら、上記で調製した水性懸濁液剤を加え、均質化し、軟膏状製剤を製した。斯くして得られた軟膏状製剤を容量3〜20mLのプラスチック製又はアルミニウム製の軟膏チューブに充填した。
【0048】
試験例1 長期安定性の評価
上記実施例5及び6の点眼剤を、25℃、相対湿度60%の条件下で、36ヶ月間保存し、レバミピド残存率、浸透圧、pH、及びレバミピドの平均粒子径について、経時的に測定を行った。なお、レバミピドの粒子径の測定は、レーザー回折法(Shimadzu SALD-3000J)によって行った。
【0049】
その結果、保存前、保存後12、24及び36ヶ月の全てにおいて、レバミピドの残存率が90%以上、浸透圧が245〜325mOm、pHが5〜7、平均粒子径が0.5〜5μmを全て満たしており、長期保存後でも、レバミピドの微細粒子の分解や凝集が生じることなく、レバミピドの微細粒子を安定な懸濁状態で保持できていることが確認された。
【0050】
試験例2 平均粒子径の測定
表1に示す組成の懸濁液(実施例12及び比較例1)を次の手順に従って、調製した。まず、レバミピド以外の成分を精製水に加温溶解した。次いで、この溶液にレバミピドを加え、室温でマグネチックスターラーによる撹拌(テフロン(登録商標)攪拌子30mm、約500rpm)を1時間行って懸濁液を調製した。得られた懸濁液中のレバミピドの粒子径をレーザー回折法(Shimadzu SALD-3000J)によって測定した。
【0051】
【表1】

【0052】
得られた結果を図1に示す。図1のAには実施例12の懸濁液におけるレバミピドの粒度分布を、Bには比較例1の懸濁液におけるレバミピドの粒度分布を示す。この結果から、ポリビニルアルコールの存在下、マグネチックスターラーでレバミピドを撹拌することにより、レバミピドが1μm以下の平均粒子径で分散しており、懸濁液中でレバミピドは微細粒子の状態で分散していることが確認された(図1のA参照)。これに対して、ポリビニルアルコールの非存在下では、マグネチックスターラーによる撹拌では、レバミピドは30μm以上の平均粒子径で分散しており、懸濁液中でレバミピドは二次粒子を形成して凝集した状態であることが確認された(図1のB参照)。
【0053】
以上の結果から、ポリビニルアルコールを使用することによって、強力な撹拌を行う特別な分散・懸濁装置を使用しなくても、レバミピドを微細粒子の状態で分散させることが可能になることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レバミピド、及びポリビニルアルコールを含有することを特徴とする水性懸濁液剤。
【請求項2】
更に、ナトリウム塩化合物を含有する、請求項1に記載の水性懸濁液剤。
【請求項3】
レバミピドを0.1〜30w/v%、及びポリビニルアルコールを0.1〜4w/v%含有する、請求項1又は2に記載の水性懸濁液剤。
【請求項4】
点眼剤である、請求項1乃至3のいずれかに記載の水性懸濁液剤。
【請求項5】
下記工程を含むことを特徴とするレバミピド含有水性懸濁液剤の製造方法:
(1)水とポリビニルアルコールを混合して、ポリビニルアルコール含有水溶液を得る第1工程、及び
(2)前記第1工程で得られたポリビニルアルコール含有水溶液に、レバミピドを混合して、レバミピド含有水性懸濁液剤を得る第2工程。

【図1】
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【公表番号】特表2010−507566(P2010−507566A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518660(P2009−518660)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【国際出願番号】PCT/JP2007/071167
【国際公開番号】WO2008/050896
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(000206956)大塚製薬株式会社 (230)
【Fターム(参考)】