説明

レバーブロック用滑車装置

【課題】
電力会社の計器用変成器の取付・取替作業を容易にするため開発された既計器用変成器簡易取替装置を改良し、計器用変成器を支持する取付材の取付状況、部材の大きさに係らず1機種で対応可能な可搬型装置を提供すること。
【解決手段】
キュービクル(20)内の所定の位置に担持される計器用変成器(10)をレバーブロック(2)およびチェーン(2b)を備えたレバーブロック用滑車装置(1)を計器用変成器取付部材(21)上に鞍馬するように取付け、計器用変成器(10)の荷重を移行後、吊支持したまま水平移動を行い、レバーブロック(2)を操作してチェーン(2b)を長く繰り出すことにより該取付部材(21)の取付状況に係らず略斜め状態で計器用変成器(10)を作業床面(30)に引き出すことができると共に、全ての状況下において1機種で取替・取付作業ができることを特徴とする取替装置を確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日本配電盤工業規格JSIA200にて規定されたキュービクル式高圧受電設備(以下キュービクルと呼ぶ)の内部に取付部材から吊下げて設置される電力需給状況を計測する用途に供される電力会社の計器用変成器の取付け・取替作業を容易にするための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
計器用変成器は計量法に則り使用電力量の大きな高圧以上の需要家の電力需給状況を計測する用途に供されるものであり、需要家の使用開始時に併せて取付けられ、指定利用期間経過後には取替えが必要になる。
【0003】
計器用変成器をキュービクル函体内に取付ける場合、計器用変成器の下部高さをキュービクル函体の床面から1000mm以上確保するように全国の電力会社からの要求事項があり、計器用変成器はキュービクルの専用取付部材に持ち上げて吊支持する必要がある。
【0004】
キュービクルは、建物スペースの有効活用のため屋上階に設置されることが多く、屋上階に基礎を設けてその上に据え付けられる。基礎は防水処理のため床面から500mm程度その上面が高く、電力需給用計器用変成器は床面から概略斜め方向に持ち上げながらキュービクル内の吊支持位置まで移動させ、取付けを行うという作業が要求される。
【0005】
また、キュービクルのコンパクト化の要求も強く、計器用変成器の下部に変圧器や高圧用コンデンサといった電気用品が設置されることもあり限られた空間の中で安全に作業を行わねばならない。
【0006】
計器用変成器は60kg〜100kgと比較的重量があるが、キュービクルの函体内の所定位置に計器用変成器を取付け・取替を行う作業には重機類が利用できないことが通常であり、作業員複数名により人力や吊り上げ用のロープまたはチェーンブロック等を利用してこの作業を行っている。このため、作業スペースが限定され安全作業の確保が難しい等の問題点がある。
【0007】
一方、計器用変成器の取替を容易にする装置として、特許文献1があり平行な一対のガイド部材と複数の吊支持のユニットや可動ユニットから構成され、これを計器用変成器が吊支持された取付部材に取付けて変成器の荷重を一旦吊支持ユニットに移行させ、ガイド部材のレール上を水平に動く可動ユニットに再度吊替えを行い、ガイド部材の先端まで変成器を移動させ先端に取付けてあるチェーンブロックを用いて最終的に作業床面に降ろすことができ、変成器を取付ける際は逆の手順を行って所定の位置に吊支持を行うことが可能となるが、変成器を支持する金物がキュービクル上部から溶接等の方法により吊り下げられている場合にのみ有効な装置であり、変成器取付部材がその下部にて別の金物部材上に固定されている場合においては、ガイド部材が取付部材下の金物部材に邪魔されてガイド部材の取付けができなくなるという問題点があった。また、計器用変成器の取付部材の大きさはキュービクルの製造業者により差異があるため、取付部材の大きさに合った取替装置を数種類用意する必要があった。
【0008】
特許文献2では先端部に滑車とフックを取付け可能なレールとレール上を移動する台車および台車と共に引き出した計器用変成器を昇降させるチェーンブロックからなり、レールを略斜め状に据付けて台車と共に変成器をキュービクル函体外へ引き出し、チェーンブロックを使用して変成器を床面に引き降ろすことができるが、台車に取り付けたチェーン切替装置の機構が複雑になり重量が重くなる点と荷重を掛けたままでは切替装置の切替え操作に操作者に大きな力を要求するという問題点があった。
【0009】
特許文献3は計器用変成器の取替えができるスライドレール状の支持材を備えたキュービクルを提供することにあり、持ち運びが可能な計器用変成器装置の取替装置を提供するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3465166号
【特許文献2】特開2005−343652
【特許文献3】電力需給用計器変成器の取付装置を備えたキュービク ル(本出願者から特許願出願済)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は多種多様なキュービクルの計器用変成器用取付部材の取付け状況に係らず、計器用変成器の取替作業を可能とすることを目的としてなされたものであり、使用部品を最小限とすることで容易に持ち運びができる軽量な装置とすると共に、分かり易い操作方法を確立したことにより重量物である計器用変成器の取替作業を安全かつ確実に行うことができる。さらに、小さな搬出口を有し計器用変成器の搬出が難しいキュービクルにおいても、搬出用の引出レールを簡単に取付けられる補助工具を用いて計器用変成器の搬出を容易にし、作業者一人でも安全に取替作業を可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、計器用変成器の取替えの際にレバーブロックを操作してチェーン長を調整する際に、滑車が滑動することによりチェーの張力を両側に均等に担持させることができるので計器用変成器の揺動を抑え横転の危険性排除につながると共に、チェーンの損傷を防止することができる。
【0013】
更に、滑車装置の重量を2.0kg以下に抑えることで計器用変成器の取付部材上への取付け作業を容易とし、レバーブロックを含んでも重量は3.2kg以下であり持ち運びが容易な可搬型の機器である。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、計器用変成器の取付部材の最大幅100mmに合わせてレバーブロック用滑車装置の取付け幅を設定しており、これ以下のサイズの場合でも脱落防止用ボルトの蝶ネジを締めることで確実に該取付部材に鞍馬状に滑車装置を取付けることができ、万一計器用変成器の荷重が不釣合いになっても該取付部材上から滑車装置は脱落することがなく本発明品は1機種で全ての取付部材に使用できる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、計器用変成器の取付部材上を鞍馬したままで無理なく水平に移動が可能となる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、取付部材上を計器用変成器を担持した状態で滑車装置を端部に移動した後、レバーブロックを操作してチェーンを長く繰り出すことにより計器用変成器は降下を開始し、これを略斜めの状態にキュービクルの扉外方向に僅かな人力を加えることで計器用変成器を作業床面に引き降ろすことができる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、補助金具を滑車装置の前後に取付けることで計器用変成器引出用レールを簡単に取付けができ、補助金具は該引出用レールの取付け高さを自由に調整できるので搬出扉に合わせた最適な高さで水平に支持することが容易であり、キュービクルの形状、搬出扉の大きさの違いから請求項4の方法で計器用変成器のキュービクル外への搬出が困難な場合でも該引出用レールを用いることで取替作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、キュービクル函体内の取付部材に吊支持されている計器用変成器の取替作業において、取付部材自体の形状、大きさおよび取付状況に係らず、レバーブロック用滑車装置を用いることで簡略な作業工程で取替作業ができるようになり、ロープやチェーンブロックを用いて複数人の人力により行っていた取替作業をより安全な環境下で行うことができる。
【0019】
また、計器用変成器の搬出口であるキュービクルの扉の状況によりレバーブロック用滑車装置のみでは計器用変成器の搬出入が困難な場合であっても付属の補助金具を用いて引出用レールを簡単に取付けができるので、該レールを移動する移動用トロリーおよびチェーンブロックを用いて扉の状況に係らず計器用変成器を取替できる。
【0020】
更に、レバーブロック用滑車装置を通して重量物である計器用変成器の荷重を操作するため、重量物を直接人力で支持するような作業を必要とせず作業性が向上するので、作業員1名で取替作業を行えるようになり大きな省力化とコスト低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【実施例】
【0022】
図1から図4は、本発明のレバーブロック用滑車装置を用いた計器用変成器の引出方法を示す概略図である。図5から図7はレバーブロック用滑車装置を用いた計器用変成器の取替方法及び操作方法を示す概略図である。図8は、レバーブロック用滑車装置の概略詳細図である。
【0023】
図1は、キュービクル函体(20)内に計器用変成器(10)が設置されている状況を示した断面図であり、計器用変成器(10)は変成器専用の付属取付ボルト(11)および付属取付金具(12)を用いて計器用変成器取付部材(21)に吊支持されている。計器用変成器取付部材(21)には例えば100mm×100mmまたは100mm×50mmなどの各種の大きさの鋼材が使用され最大幅は100mmである。計器用変成器取付部材(21)の取付方法はキュービクル上面の鋼材から吊り下げたような形で支持されるか、または図示のように変成器取付部材支持材(22)を下部に横臥すように取付られたその上に支持される。
【0024】
図2は、計器用変成器(10)の荷重をレバーブロック用滑車装置(1)を用いて移行する場合を示す概略断面図であり、第一に計器用変成器取付部材(21)上にレバーブロック用滑車装置(1)を鞍馬させ脱落防止用ボルト(1f)を締めて固定し滑車装置(1)が取付部材(21)から脱落することのないように措置を行い、第二にレバーブロック(2)のチェーン(2b)をレバーブロック用滑車装置(1)に滑動自在に装着し、チェーン端部のチェーンブロックフック(2c)に取付けた環状ロープ(2a)にて計器用変成器吊下用フック(10a)を係止し、第三に変成器付属取付ボルト(11)を緩めて計器用変成器(10)の全荷重をチェーンに移行した後、ボルト(11)および変成器付属取付金具(12)を取り外し、第四にレバーブロック(2)を操作してチェーン(2b)を延長させるとレバーブロック用滑車装置(1)の滑車上をチェーン(2b)は自由に滑動し計器用変成器(10)は水平状態を保ったまま降下する。
【0025】
図3は、レバーブロック用滑車装置(1)に全荷重を移行して計器用変成器取付部材(21)と計器用変成器(10)間に適度な間隙を取った状況を示す断面図である。
【0026】
図4は、計器用変成器取付部材(21)の端部まで計器用変成器(10)を移動させた状況を示す断面図であり、レバーブロック用滑車装置(1)の移動用ローラー(1d)により抵抗感なく移動が可能である。
【0027】
図5は、計器用変成器取付部材(21)の端部まで移動させた計器用変成器(10)を略斜め方向に引き出し作業床面(30)に降下させた状況を示す断面図で、レバーブロック(2)を操作してチェーン(2b)を長く繰り出すことにより計器用変成器(10)は降下を開始するので、これを略斜めの状態に僅かな人力を加えることにより計器用変成器(10)を作業床面(30)に引き降ろすことができる。
【0028】
上記の方法で計器用変成器(10)を引き出す場合においては、計器用変成器取付部材(21)を支持するためキュービクル(20)に横臥するように取付けられた変成器取付部材支持材(22)は、取替作業の支障とならない。なお、新たに取付け、交換を行う場合は、上記の逆の手順を行うことで計器用変成器(10)を所定の位置に設置できる。
【0029】
図6は、計器用変成器引出用レール(3)を取付けた状況を示す断面図であり、引出用レール取付補助金具(3a)をレバーブロック用滑車装置(1)の前後2カ所に取付け、引出用レール取付補助金具(3a)は引出用レール(3)の取付け高さを調整することができるので、搬出扉の高さを考慮した適切な位置に引出用レール(3)を据付け、引出用レール(3)に設けた水準器を見ながら水平状態に維持する。この取替方法においても変成器取付部材支持材(22)は取替作業の支障とならない。
【0030】
図7は、引出用レール取付補助金具(3a)と計器用変成器引出用レール(3)および引出用レール内を自由に走行するトロリー(3b)とそれに吊り下げたチェーンブロック(4)を用いて作業床面(30)に降下させた状況の断面図を示し、トロリー(3b)にはチェーンブロック(4)を介して計器用変成器吊具(5)が取付けてあり、計器用変成器(10)の荷重をトロリー(3b)に移行した後キュービクル(20)の外部に計器用変成器(10)を引き出し、降下予定位置でトロリー(3b)を固定のうえチェーンブロック(4)を操作して計器用変成器(10)を作業床面(30)に降下させることができる。
【0031】
なお、計器用変成器引出用レール(3)および該レール内を走行するトロリー(3b)は一般市販品を使用するものとし、新たに取付け、交換を行う場合は、上記の逆の手順を行うことで計器用変成器(10)を所定の位置に設置できるのは同様である。
【0032】
図8は、本発明のレバーブロック用滑車装置(1)の一形態を示す概略詳細図であり、レバーブロック用滑車装置本体(1a)の上部にチェーン受け用の滑車(1b)を備え、下部には移動用ローラー(1d)を、装置の両側面には蝶ネジ形式の脱落防止用ボルト(1f)を備える。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】キュービクル内に設置された計器用変成器の取付け状況を示す概略図である。
【図2】計器用変成器の荷重をレバーブロック用滑車装置を用いて以降する方法を示す断面図である。
【図3】レバーブロック用滑車装置に全荷重を移行させた後の状況を示す断面図である。
【図4】計器用変成器を計器用変成器取付部材の端部まで移動させた状況を示す断面図である。
【図5】計器用変成器を略斜め方向に引き出し作業床面に降下させた状況を示す断面図である。
【図6】計器用変成器引出用レールを取付けた状況を示す断面図である。
【図7】計器用変成器引出用レールを使用して計器用変成器を作業床面に降下させた状況を示す断面図である。
【図8】レバーブロック用滑車装置の概略詳細図である。
【符号の説明】
【0034】
1 レバーブロック用滑車装置
1a レバーブロック用滑車装置本体
1b チェーン用滑車
1c チェーン用滑車軸
1d 移動用ローラー
1e 移動用ローラー軸
1f 脱落防止用ボルト
2 レバーブロック
2a 環状ロープ
2b チェーン
2c レバーブロックフック
3 計器用変成器引出用レール
3a 引出用レール取付補助金具
3b トロリー
4 チェーンブロック
5 計器用変成器吊具
10 計器用変成器
10a 計器用変成器吊下用フック
11 変成器付属取付ボルト
12 変成器付属取付金具
20 キュービクル函体
20a キュービクル扉
21 計器用変成器取付部材
22 変成器取付部材支持材
30 作業床面
31 キュービクル基礎



【特許請求の範囲】
【請求項1】
計器用変成器の取付部材上に設置してレバーブロックのチェーンを滑らかに滑動させ、計器用変成器の荷重を均等に分割して該変成器を水平に支持する滑車部を有することを特徴とする可搬型のレバーブロック用滑車装置。
【請求項2】
計器用変成器の取付部材上からの脱落を防止するため、取付部材の大きさに合わせて装置の取付けができるように左右から締付ける機構を備えており、1機種で各種部材に取り付けられることを特徴とするレバーブロック用滑車装置。
【請求項3】
計器用変成器の取付部材上を、計器用変成器を支持した状態のままで水平に移動可能な移動用ローラーを備えることを特徴とするレバーブロック用滑車装置。
【請求項4】
取付部材上を搬出扉の最近端まで移動させたのち、滑車装置のレバーブロックを操作することで計器用変成器をキュービクルと呼ばれる函体の外部に略斜め方向に引き出し、作業床面に降下させることができることを特徴とするレバーブロック用滑車装置。
【請求項5】
請求項4の略斜め方向に引き出しが困難な場合においては計器用変成器の搬出用レールを取付け可能な補助金具を備え、補助金具は搬出用レールの取付け高さを自由に調整できることから水平にレールを支持することが容易であり、計器用変成器の荷重を搬出用レールに移行して計器用変成器を収納された函体の外部へ水平に移動させることができることを特徴とするレバーブロック用滑車装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−223728(P2011−223728A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89761(P2010−89761)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.レバーブロック
【出願人】(591080678)株式会社中電工 (64)