レバー式コネクタの誤作動防止機構
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ワイヤハーネス相互の接続あるいはワイヤハーネスと電気機器の接続に用いられる低挿抜力のレバー式コネクタに関する。
【0002】
【従来の技術】図8は従来例のレバー式コネクタaの斜視図である。図8において、レバー式コネクタaは、端子bを内装した雌コネクタハウジングcの上壁d及び下壁eをコネクタの抜き差し方向と交又する方向に延長するとともに、後述するカムレバーfが出没する空間を存して隣接する雌コネクタハウジングc′及びc″と前記上壁d及び下壁eにて連結され、雄コネクタg,g′及びg″とそれぞれ一対の構成となっている。
【0003】雌コネクタハウジングcの一対の側壁h,hのほぼ中央には、コネクタの抜き差し方向に沿って、前記雄コネクタgの一対の側壁j,jに突設されたピンj′,j′のガイド手段を構成する一対の摺動スロットk,kが形成されている。雌コネクタハウジングc,c′及びc″の連結部及び雌コネクタハウジングc及びc″の両外側面には、一方の端部を操作板mで連結されたカムレバーfが、前記上壁dに突設されたカム軸nに回動自在に軸支されるとともに、該カムレバーfには各雌コネクタハウジングc,c′及びc″の側面に対向して偏心カム溝pが形成され、前記雄コネクタgのピンj′と摺動手段を構成ている。
【0004】カムレバーfは図示しないばねにより初期状態において該カムレバーfの操作板mが起立した位置にあるよう付勢されている。なお、符号qは、端子bのリード部b′が接続されるプリント基板である。従来例は上記のように構成されているので、図9(A)に示すように、雄コネクタgのピンj′を、重なり合っている摺動スロットk及び偏心カム溝pに挿入しながら雄コネクタgと雌コネクタハウジングcとを嵌合する。
【0005】そして、前記ピンj′が前記偏心カム溝pの開口部の側壁p′に当接した位置に達すると、雄コネクタgの底面に形成された仮係止突起rが、雌コネクタハウジングcの内周面に形成された溝sの段部tをかわして溝sに落ち込むことにより、前記位置を感知してこれ以上の挿入を止め、所謂半嵌合の状態としておく(図9R>9(A)参照)。
【0006】同様に、他の雄コネクタg′,g″もそれぞれ対応する雌コネクタハウジングc′,c″に挿入し、カムレバーfの操作板mをF方向に回動する。前記カムレバーfの回動により偏心カム溝pが前記雄コネクタgのピンj′を摺動するとともに、該ピンj′は嵌合を深める方向に呼びこまれて、各雄コネクタg,g′及びg″は一斉に図8(C)に示すように完全な嵌合位置まで挿入される。
【0007】ところが、図9(B)に示すように、最初の雄コネクタgを雌コネクタハウジングcに挿入して半嵌合の状態とする場合、該雄コネクタgのピンj′がカムレバーfの偏心カム溝pの開口部の側壁p′に当接する際、勢いが余るとカムレバーfをF方向に誤回動してカムレバーfは図示の実線の状態となる。
【0008】従って、カムレバーfの偏心カム溝pの開口部が下方にずれるので、次の雄コネクタg′を挿入しようとする場合、先ずカムレバーfを2点鎖線で示す初期状態に戻す為F′方向に一々手で返さないと、前記偏心カム溝pの開口部が次の雄コネクタg′のピンj′に対向する位置に復帰しない欠点がありコネクタの嵌合作業の効率を下げる要因となっていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記した点に鑑み、ワイヤハーネス相互の接続あるいはワイヤハーネスと電気機器の接続に用いられる低挿抜力のレバー式コネクタにおいて、カムレバーを有するコネクタに相手側のコネクタを半嵌合状態に挿入する場合、カムレバーの誤回動を防止してコネクタ嵌合作業が円滑に出来るレバー式コネクタの誤作動防止機構を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、本発明は、複数のコネクタハウジングが一体に連結された一方のコネクタハウジングに、他方のそれぞれのコネクタが嵌合されるコネクタからなり、前記他方のコネクタの両側壁にピンを突設するとともに、前記ピンに対向する一方のコネクタハウジングの両側壁に前記ピンの進退する摺動スロットを設けるとともに、前記一方のコネクタハウジングの連結部及び外側部に、操作板で連結されたカムレバーを回動自在に設け、前記ピンと対向する各カムレバーの側面に、それぞれ前記ピンと摺動して両コネクタの嵌合又は離脱を行わせる偏心カム溝を設けてなるレバー式コネクタにおいて、 前記一方のコネクタハウジングに装着されたカムレバーの偏心カム溝の挿入開始位置に仮係止用係合部を設けるとともに、前記他方のコネクタのピンに仮係止用被係合部を形成した構成を採用した。
【0011】
【作用】第1発明の実施例においては、カムレバーの偏心カム溝の開口部の側面に係合突起からなる仮係止用係合部を形成するとともに、挿入するコネクタのピンの側面に係合凹部からなる仮係止用被係合部を形成して、挿入するコネクタが半嵌合状態にあるとき前記カムレバーの偏心カム溝の仮係止用係合部が、前記コネクタのピンの仮係止用被係合部と一時的に係合してカムレバーを仮係止するので、前記カムレバーは誤回動しない。
【0012】第2発明の実施例においては、カムレバーの偏心カム溝の開口部の底面に係合突起からなる仮係止用係合部を形成するとともに、挿入するコネクタのピンの端面に係合突部からなる仮係止用被係合部を形成して、挿入するコネクタが半嵌合状態にあるとき前記カムレバーの偏心カム溝の仮係止用係合部が、前記コネクタのピンの仮係止用被係合部と一時的に係合してカムレバーを仮係止するので、前記カムレバーは誤回動しない。
【0013】
【実施例】図1は本発明による第1実施例のレバー式コネクタの誤作動防止機構を備えたレバー式コネクタAの斜視図である。図2は同じく半嵌合した状態の縦断面図である。
【0014】図1において、端子1を内装した雌コネクタハウジング2の上壁3及び下壁4をコネクタの抜き差し方向と交又する方向に延長するとともに、後述するカムレバー5が出没する空間を存して隣接する雌コネクタハウジング2′と前記上壁3及び下壁4にて連結され、雄コネクタ6及び6′とそれぞれ一対の構成となっている。
【0015】雌コネクタハウジング2の一対の側壁7,7のほぼ中央には、コネクタの抜き差し方向に沿って、前記雄コネクタ6の一対の側壁8,8に突設された頭部9′の膨出した一対のピン9,9の、ガイド手段を構成する一対の摺動スロット10,10が形成されている。
【0016】雌コネクタハウジング2及び2′の連結部及び両外側面には、一方の端部を操作板11で連結されたカムレバー5が、前記側壁7に突設されたカム軸12に回動自在に軸支されるとともに、該カムレバー5には各雌コネクタハウジング2及び2′の側面に対向して溝の底部が一部欠落した偏心カム溝13が形成され、前記雄コネクタ6のピン9と摺動手段を構成ている。 なお、前記雄コネクタ6のピン9の頭部9′が通過できるように、前記偏心カム溝13開口部には底板14が跨設されている。
【0017】カムレバー5はばね15(図2参照)により初期状態において該カムレバー5の操作板11が起立した位置にあるよう付勢されている。なお、雄コネクタ6の上壁16及び下壁17の外側面に形成された仮係止突起18は、雌コネクタハウジング2の上壁3及び下壁4の内側面に形成された溝19と係合して仮止め手段を構成している。
【0018】図2に示すように、前記カムレバー5の偏心カム溝13の水平溝部13′の終端の偏心カム溝13の立ち上がり部側縁13″に、係合突起からなる仮係止用係合部20を形成するとともに、前記雄コネクタ6のピン9の前記仮係止用係合部20と対向する前方側面に、係合凹部からなる仮係止用被係合部21が形成されている(図3参照)。
【0019】本発明による第1実施例は上記のように構成されているので、使用時に雌コネクタハウジング2に、相手方の雄コネクタ6を挿入するとき、前述のようにカムレバー5はばね15により初期状態においてカムレバー5の操作板11が雌コネクタハウジング2と交叉する位置にあるよう付勢されているので、カムレバー5の偏心カム溝13の開口部の水平溝部13′は雌コネクタハウジング2の摺動スロット10と重なり合った位置にあり、雄コネクタ6のピン9を迎え入れる位置にある。
【0020】雄コネクタ6を雌コネクタハウジング2に挿入する過程において、雄コネクタ6のピン9は、偏心カム溝13の開口部の水平溝部13′の終端の偏心カム溝13の立ち上がり部の側縁13″に当接した位置に達するとともに、雄コネクタ6の側面に形成された仮係止突起18が、雌コネクタハウジング2の内周面に形成された溝19の段部19aをかわして溝19に落ち込むことにより、前記位置を感知してこれ以上の挿入を止め、所謂半嵌合の状態としておく。
【0021】このとき、ピン9の仮係止用被係合部21は偏心カム溝13の水平溝部13′の仮係止用係合部20と係合して、所謂仮係止の状態となり所定値以上のカムレバー5の回動力が加わらない限りカムレバー5は初期状態に保持し続ける(図4参照)。
【0022】同様に雄コネクタ6′が雌コネクタハウジング2′に挿入されて半嵌合の状態となった後、カムレバー5を図2のD方向に回動すると、前記カムレバー5のそれぞれの偏心カム溝13が前記の水平溝部13′の仮係止用係合部20とピン9の仮係止用被係合部21との仮係止が、カムレバー5の回動力が前記仮係止を保持する所定値より越えて仮係止を解除するとともに、偏心カム溝13は雄コネクタ6,6′のピン9をそれぞれ摺動して、該ピン9を嵌合する方向に引き込んで雄コネクタ6,6′が一斉に雌コネクタハウジング2,2′にそれぞれ嵌合する。
【0023】従って、最初の雄コネクタ6を挿入することによりカムレバー5が誤回動しないので、次の雄コネクタ6′を挿入するとき、一々カムレバー5を手で初期状態の位置に戻す手間が省けコネクタ嵌合が効率的に実施出来る。図5は本発明による第2実施例のレバー式コネクタの誤作動防止機構を備えたレバー式コネクタA′の要部の分解斜視図である。
【0024】操作板11で相互に連結されたカムレバー22のコネクタハウジング側には、底付溝状の偏心カム溝23が形成されるとともに、該偏心カム溝23の水平溝部23′の終端の底面に、係合突起からなる仮係止用係合部24が水平方向に形成され、一方雄コネクタ6の両側壁8,8に突設された一対のピン25,25の端面に係合突部からなる仮係止用被係合部25′が前記仮係止用係合部24と対向するように突設されている。なお、符号26はカム軸12が軸支する挿通孔である。
【0025】その他の構成については、第1実施例と同様であるので説明は省略する。本発明による第2実施例は上記のように構成されているので、第1実施例と同様に雄コネクタ6を図6に示すように所謂半嵌合の状態まで挿入すると、雄コネクタ6のピン25の仮係止用被係合部25′は、カムレバー22の偏心カム溝23の水平溝部23′の仮係止用係合部24の下側に当接するとともに(図7参照)、水平溝部23′の終端の偏心カム溝23の立ち上がり部の側壁に当接した感触と外見で雄コネクタ6′を停止する。
【0026】このとき、ピン25の仮係止用被係合部25′は偏心カム溝23の仮係止用係合部24と係合して仮係止され、所謂仮係止の状態となり所定値以上のカムレバー22の回動力が加わらない限りカムレバー22は初期状態に保持し続ける(図7参照)。
【0027】次いで雄コネクタ6′が雌コネクタハウジング2′に挿入されて半嵌合の状態となった後、カムレバー22を図6のD′方向に回動すると、先ず前記の水平溝部23′の仮係止用係合部24がピン25の仮係止用被係合部25′を乗り越えて仮係止を解除する。
【0028】次いで、第1実施例と同様にそれぞれの偏心カム溝23がそれぞれの雄コネクタのピン25を摺動して、該ピン25を嵌合する方向に進入させ、雄コネクタ6,6′がそれぞれの雄コネクタハウジング2,2′に一斉に嵌合する。従って、前記の所定値以上の外力がD′方向にカムレバー22に加えられない限り、カムレバー22は誤回動しないので、次の雄コネクタ6′を挿入するとき、一々カムレバー22を手で初期状態の位置に戻す手間が省けコネクタ嵌合が効率的に実施出来る。
【0029】なお、本発明による第1,第2の実施例は、雌コネクタハウジングにカムレバーを装着したが、雄コネクタハウジング側に装着しても良い。
【0030】
【考案の効果】本発明は上記したように、ワイヤハーネス相互接続あるいはワイヤハーネスと電気機器の接続に用いられる低挿抜力のレバー式コネクタにおいて、カムレバーの偏心カム溝の挿入開始位置に仮係止用係合部を形成するとともに、相手側のコネクタのピンに仮係止用被係合部を形成して、コネクタを半嵌合状態に挿入する場合のカムレバーの誤回動を防止し、コネクタ嵌合作業が円滑に出来るレバー式コネクタの誤作動防止機構を特長とする。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による第1実施例の斜視図である。
【図2】同じく半嵌合の状態の縦断面図である。
【図3】同じく要部の分解斜視図である。
【図4】同じく要部の半嵌合の状態の縦断面図である。
【図5】本発明による第2実施例の要部の斜視図である。
【図6】同じく半嵌合の状態の縦断面図である。
【図7】同じく要部の半嵌合の状態の横断面図である。
【図8】従来例の斜視図である。
【図9】(A)は同じく半嵌合状態の縦断面図である。(B)は同じく誤回動した状態の縦断面図である。(C)は同じく本嵌合状態の縦断面図である。
【符号の説明】
A,A′ レバー式コネクタ
1 端子
2,2′ 雌コネクタハウジング
3,16 上壁
4,17 下壁
5,22 カムレバー
6,6′ 雄コネクタ
7,8 側壁
9,25 ピン
10 摺動スロット
11 操作板
12 カム軸
13,23 偏心カム溝
13′,23′ 水平溝部
14 底板
15 ばね
18 仮係止突起
19 溝
20,24 仮係止用係合部
21,25′ 仮係止用被係合部
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ワイヤハーネス相互の接続あるいはワイヤハーネスと電気機器の接続に用いられる低挿抜力のレバー式コネクタに関する。
【0002】
【従来の技術】図8は従来例のレバー式コネクタaの斜視図である。図8において、レバー式コネクタaは、端子bを内装した雌コネクタハウジングcの上壁d及び下壁eをコネクタの抜き差し方向と交又する方向に延長するとともに、後述するカムレバーfが出没する空間を存して隣接する雌コネクタハウジングc′及びc″と前記上壁d及び下壁eにて連結され、雄コネクタg,g′及びg″とそれぞれ一対の構成となっている。
【0003】雌コネクタハウジングcの一対の側壁h,hのほぼ中央には、コネクタの抜き差し方向に沿って、前記雄コネクタgの一対の側壁j,jに突設されたピンj′,j′のガイド手段を構成する一対の摺動スロットk,kが形成されている。雌コネクタハウジングc,c′及びc″の連結部及び雌コネクタハウジングc及びc″の両外側面には、一方の端部を操作板mで連結されたカムレバーfが、前記上壁dに突設されたカム軸nに回動自在に軸支されるとともに、該カムレバーfには各雌コネクタハウジングc,c′及びc″の側面に対向して偏心カム溝pが形成され、前記雄コネクタgのピンj′と摺動手段を構成ている。
【0004】カムレバーfは図示しないばねにより初期状態において該カムレバーfの操作板mが起立した位置にあるよう付勢されている。なお、符号qは、端子bのリード部b′が接続されるプリント基板である。従来例は上記のように構成されているので、図9(A)に示すように、雄コネクタgのピンj′を、重なり合っている摺動スロットk及び偏心カム溝pに挿入しながら雄コネクタgと雌コネクタハウジングcとを嵌合する。
【0005】そして、前記ピンj′が前記偏心カム溝pの開口部の側壁p′に当接した位置に達すると、雄コネクタgの底面に形成された仮係止突起rが、雌コネクタハウジングcの内周面に形成された溝sの段部tをかわして溝sに落ち込むことにより、前記位置を感知してこれ以上の挿入を止め、所謂半嵌合の状態としておく(図9R>9(A)参照)。
【0006】同様に、他の雄コネクタg′,g″もそれぞれ対応する雌コネクタハウジングc′,c″に挿入し、カムレバーfの操作板mをF方向に回動する。前記カムレバーfの回動により偏心カム溝pが前記雄コネクタgのピンj′を摺動するとともに、該ピンj′は嵌合を深める方向に呼びこまれて、各雄コネクタg,g′及びg″は一斉に図8(C)に示すように完全な嵌合位置まで挿入される。
【0007】ところが、図9(B)に示すように、最初の雄コネクタgを雌コネクタハウジングcに挿入して半嵌合の状態とする場合、該雄コネクタgのピンj′がカムレバーfの偏心カム溝pの開口部の側壁p′に当接する際、勢いが余るとカムレバーfをF方向に誤回動してカムレバーfは図示の実線の状態となる。
【0008】従って、カムレバーfの偏心カム溝pの開口部が下方にずれるので、次の雄コネクタg′を挿入しようとする場合、先ずカムレバーfを2点鎖線で示す初期状態に戻す為F′方向に一々手で返さないと、前記偏心カム溝pの開口部が次の雄コネクタg′のピンj′に対向する位置に復帰しない欠点がありコネクタの嵌合作業の効率を下げる要因となっていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記した点に鑑み、ワイヤハーネス相互の接続あるいはワイヤハーネスと電気機器の接続に用いられる低挿抜力のレバー式コネクタにおいて、カムレバーを有するコネクタに相手側のコネクタを半嵌合状態に挿入する場合、カムレバーの誤回動を防止してコネクタ嵌合作業が円滑に出来るレバー式コネクタの誤作動防止機構を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、本発明は、複数のコネクタハウジングが一体に連結された一方のコネクタハウジングに、他方のそれぞれのコネクタが嵌合されるコネクタからなり、前記他方のコネクタの両側壁にピンを突設するとともに、前記ピンに対向する一方のコネクタハウジングの両側壁に前記ピンの進退する摺動スロットを設けるとともに、前記一方のコネクタハウジングの連結部及び外側部に、操作板で連結されたカムレバーを回動自在に設け、前記ピンと対向する各カムレバーの側面に、それぞれ前記ピンと摺動して両コネクタの嵌合又は離脱を行わせる偏心カム溝を設けてなるレバー式コネクタにおいて、 前記一方のコネクタハウジングに装着されたカムレバーの偏心カム溝の挿入開始位置に仮係止用係合部を設けるとともに、前記他方のコネクタのピンに仮係止用被係合部を形成した構成を採用した。
【0011】
【作用】第1発明の実施例においては、カムレバーの偏心カム溝の開口部の側面に係合突起からなる仮係止用係合部を形成するとともに、挿入するコネクタのピンの側面に係合凹部からなる仮係止用被係合部を形成して、挿入するコネクタが半嵌合状態にあるとき前記カムレバーの偏心カム溝の仮係止用係合部が、前記コネクタのピンの仮係止用被係合部と一時的に係合してカムレバーを仮係止するので、前記カムレバーは誤回動しない。
【0012】第2発明の実施例においては、カムレバーの偏心カム溝の開口部の底面に係合突起からなる仮係止用係合部を形成するとともに、挿入するコネクタのピンの端面に係合突部からなる仮係止用被係合部を形成して、挿入するコネクタが半嵌合状態にあるとき前記カムレバーの偏心カム溝の仮係止用係合部が、前記コネクタのピンの仮係止用被係合部と一時的に係合してカムレバーを仮係止するので、前記カムレバーは誤回動しない。
【0013】
【実施例】図1は本発明による第1実施例のレバー式コネクタの誤作動防止機構を備えたレバー式コネクタAの斜視図である。図2は同じく半嵌合した状態の縦断面図である。
【0014】図1において、端子1を内装した雌コネクタハウジング2の上壁3及び下壁4をコネクタの抜き差し方向と交又する方向に延長するとともに、後述するカムレバー5が出没する空間を存して隣接する雌コネクタハウジング2′と前記上壁3及び下壁4にて連結され、雄コネクタ6及び6′とそれぞれ一対の構成となっている。
【0015】雌コネクタハウジング2の一対の側壁7,7のほぼ中央には、コネクタの抜き差し方向に沿って、前記雄コネクタ6の一対の側壁8,8に突設された頭部9′の膨出した一対のピン9,9の、ガイド手段を構成する一対の摺動スロット10,10が形成されている。
【0016】雌コネクタハウジング2及び2′の連結部及び両外側面には、一方の端部を操作板11で連結されたカムレバー5が、前記側壁7に突設されたカム軸12に回動自在に軸支されるとともに、該カムレバー5には各雌コネクタハウジング2及び2′の側面に対向して溝の底部が一部欠落した偏心カム溝13が形成され、前記雄コネクタ6のピン9と摺動手段を構成ている。 なお、前記雄コネクタ6のピン9の頭部9′が通過できるように、前記偏心カム溝13開口部には底板14が跨設されている。
【0017】カムレバー5はばね15(図2参照)により初期状態において該カムレバー5の操作板11が起立した位置にあるよう付勢されている。なお、雄コネクタ6の上壁16及び下壁17の外側面に形成された仮係止突起18は、雌コネクタハウジング2の上壁3及び下壁4の内側面に形成された溝19と係合して仮止め手段を構成している。
【0018】図2に示すように、前記カムレバー5の偏心カム溝13の水平溝部13′の終端の偏心カム溝13の立ち上がり部側縁13″に、係合突起からなる仮係止用係合部20を形成するとともに、前記雄コネクタ6のピン9の前記仮係止用係合部20と対向する前方側面に、係合凹部からなる仮係止用被係合部21が形成されている(図3参照)。
【0019】本発明による第1実施例は上記のように構成されているので、使用時に雌コネクタハウジング2に、相手方の雄コネクタ6を挿入するとき、前述のようにカムレバー5はばね15により初期状態においてカムレバー5の操作板11が雌コネクタハウジング2と交叉する位置にあるよう付勢されているので、カムレバー5の偏心カム溝13の開口部の水平溝部13′は雌コネクタハウジング2の摺動スロット10と重なり合った位置にあり、雄コネクタ6のピン9を迎え入れる位置にある。
【0020】雄コネクタ6を雌コネクタハウジング2に挿入する過程において、雄コネクタ6のピン9は、偏心カム溝13の開口部の水平溝部13′の終端の偏心カム溝13の立ち上がり部の側縁13″に当接した位置に達するとともに、雄コネクタ6の側面に形成された仮係止突起18が、雌コネクタハウジング2の内周面に形成された溝19の段部19aをかわして溝19に落ち込むことにより、前記位置を感知してこれ以上の挿入を止め、所謂半嵌合の状態としておく。
【0021】このとき、ピン9の仮係止用被係合部21は偏心カム溝13の水平溝部13′の仮係止用係合部20と係合して、所謂仮係止の状態となり所定値以上のカムレバー5の回動力が加わらない限りカムレバー5は初期状態に保持し続ける(図4参照)。
【0022】同様に雄コネクタ6′が雌コネクタハウジング2′に挿入されて半嵌合の状態となった後、カムレバー5を図2のD方向に回動すると、前記カムレバー5のそれぞれの偏心カム溝13が前記の水平溝部13′の仮係止用係合部20とピン9の仮係止用被係合部21との仮係止が、カムレバー5の回動力が前記仮係止を保持する所定値より越えて仮係止を解除するとともに、偏心カム溝13は雄コネクタ6,6′のピン9をそれぞれ摺動して、該ピン9を嵌合する方向に引き込んで雄コネクタ6,6′が一斉に雌コネクタハウジング2,2′にそれぞれ嵌合する。
【0023】従って、最初の雄コネクタ6を挿入することによりカムレバー5が誤回動しないので、次の雄コネクタ6′を挿入するとき、一々カムレバー5を手で初期状態の位置に戻す手間が省けコネクタ嵌合が効率的に実施出来る。図5は本発明による第2実施例のレバー式コネクタの誤作動防止機構を備えたレバー式コネクタA′の要部の分解斜視図である。
【0024】操作板11で相互に連結されたカムレバー22のコネクタハウジング側には、底付溝状の偏心カム溝23が形成されるとともに、該偏心カム溝23の水平溝部23′の終端の底面に、係合突起からなる仮係止用係合部24が水平方向に形成され、一方雄コネクタ6の両側壁8,8に突設された一対のピン25,25の端面に係合突部からなる仮係止用被係合部25′が前記仮係止用係合部24と対向するように突設されている。なお、符号26はカム軸12が軸支する挿通孔である。
【0025】その他の構成については、第1実施例と同様であるので説明は省略する。本発明による第2実施例は上記のように構成されているので、第1実施例と同様に雄コネクタ6を図6に示すように所謂半嵌合の状態まで挿入すると、雄コネクタ6のピン25の仮係止用被係合部25′は、カムレバー22の偏心カム溝23の水平溝部23′の仮係止用係合部24の下側に当接するとともに(図7参照)、水平溝部23′の終端の偏心カム溝23の立ち上がり部の側壁に当接した感触と外見で雄コネクタ6′を停止する。
【0026】このとき、ピン25の仮係止用被係合部25′は偏心カム溝23の仮係止用係合部24と係合して仮係止され、所謂仮係止の状態となり所定値以上のカムレバー22の回動力が加わらない限りカムレバー22は初期状態に保持し続ける(図7参照)。
【0027】次いで雄コネクタ6′が雌コネクタハウジング2′に挿入されて半嵌合の状態となった後、カムレバー22を図6のD′方向に回動すると、先ず前記の水平溝部23′の仮係止用係合部24がピン25の仮係止用被係合部25′を乗り越えて仮係止を解除する。
【0028】次いで、第1実施例と同様にそれぞれの偏心カム溝23がそれぞれの雄コネクタのピン25を摺動して、該ピン25を嵌合する方向に進入させ、雄コネクタ6,6′がそれぞれの雄コネクタハウジング2,2′に一斉に嵌合する。従って、前記の所定値以上の外力がD′方向にカムレバー22に加えられない限り、カムレバー22は誤回動しないので、次の雄コネクタ6′を挿入するとき、一々カムレバー22を手で初期状態の位置に戻す手間が省けコネクタ嵌合が効率的に実施出来る。
【0029】なお、本発明による第1,第2の実施例は、雌コネクタハウジングにカムレバーを装着したが、雄コネクタハウジング側に装着しても良い。
【0030】
【考案の効果】本発明は上記したように、ワイヤハーネス相互接続あるいはワイヤハーネスと電気機器の接続に用いられる低挿抜力のレバー式コネクタにおいて、カムレバーの偏心カム溝の挿入開始位置に仮係止用係合部を形成するとともに、相手側のコネクタのピンに仮係止用被係合部を形成して、コネクタを半嵌合状態に挿入する場合のカムレバーの誤回動を防止し、コネクタ嵌合作業が円滑に出来るレバー式コネクタの誤作動防止機構を特長とする。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による第1実施例の斜視図である。
【図2】同じく半嵌合の状態の縦断面図である。
【図3】同じく要部の分解斜視図である。
【図4】同じく要部の半嵌合の状態の縦断面図である。
【図5】本発明による第2実施例の要部の斜視図である。
【図6】同じく半嵌合の状態の縦断面図である。
【図7】同じく要部の半嵌合の状態の横断面図である。
【図8】従来例の斜視図である。
【図9】(A)は同じく半嵌合状態の縦断面図である。(B)は同じく誤回動した状態の縦断面図である。(C)は同じく本嵌合状態の縦断面図である。
【符号の説明】
A,A′ レバー式コネクタ
1 端子
2,2′ 雌コネクタハウジング
3,16 上壁
4,17 下壁
5,22 カムレバー
6,6′ 雄コネクタ
7,8 側壁
9,25 ピン
10 摺動スロット
11 操作板
12 カム軸
13,23 偏心カム溝
13′,23′ 水平溝部
14 底板
15 ばね
18 仮係止突起
19 溝
20,24 仮係止用係合部
21,25′ 仮係止用被係合部
【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数のコネクタハウジングが一体に連結された一方のコネクタハウジングに、他方のそれぞれのコネクタが嵌合されるコネクタからなり、前記他方のコネクタの両側壁にピンを突設するとともに、前記ピンに対向する一方のコネクタハウジングの両側壁に前記ピンの進退する摺動スロットを設けるとともに、前記一方のコネクタハウジングの連結部及び外側部に、操作板で連結されたカムレバーを回動自在に設け、前記ピンと対向する各カムレバーの側面に、それぞれ前記ピンと摺動して両コネクタの嵌合又は離脱を行わせる偏心カム溝を設けてなるレバー式コネクタにおいて、 前記一方のコネクタハウジングに装着されたカムレバーの偏心カム溝の挿入開始位置に仮係止用係合部を設けるとともに、前記他方のコネクタのピンに仮係止用被係合部を形成したことを特徴とするレバー式コネクタの誤作動防止機構。
【請求項1】 複数のコネクタハウジングが一体に連結された一方のコネクタハウジングに、他方のそれぞれのコネクタが嵌合されるコネクタからなり、前記他方のコネクタの両側壁にピンを突設するとともに、前記ピンに対向する一方のコネクタハウジングの両側壁に前記ピンの進退する摺動スロットを設けるとともに、前記一方のコネクタハウジングの連結部及び外側部に、操作板で連結されたカムレバーを回動自在に設け、前記ピンと対向する各カムレバーの側面に、それぞれ前記ピンと摺動して両コネクタの嵌合又は離脱を行わせる偏心カム溝を設けてなるレバー式コネクタにおいて、 前記一方のコネクタハウジングに装着されたカムレバーの偏心カム溝の挿入開始位置に仮係止用係合部を設けるとともに、前記他方のコネクタのピンに仮係止用被係合部を形成したことを特徴とするレバー式コネクタの誤作動防止機構。
【図1】
【図3】
【図2】
【図4】
【図6】
【図7】
【図5】
【図8】
【図9】
【図3】
【図2】
【図4】
【図6】
【図7】
【図5】
【図8】
【図9】
【特許番号】第2634532号
【登録日】平成9年(1997)4月25日
【発行日】平成9年(1997)7月30日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−83714
【出願日】平成4年(1992)4月6日
【公開番号】特開平5−290921
【公開日】平成5年(1993)11月5日
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【参考文献】
【文献】特開 平5−13129(JP,A)
【登録日】平成9年(1997)4月25日
【発行日】平成9年(1997)7月30日
【国際特許分類】
【出願日】平成4年(1992)4月6日
【公開番号】特開平5−290921
【公開日】平成5年(1993)11月5日
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【参考文献】
【文献】特開 平5−13129(JP,A)
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