説明

レプリキンカウントサイクルを使用して病原体大発生を緩和するための方法および化合物

本発明は、病原体において発現された小ペプチドファミリーの濃度増加の比またはサイクルを特定することによって、病原体の毒性、罹患率および/または死亡率の増加、あるいは、領域内での、または新しい領域への病原体集団の拡大を予測する方法を提供し、また、病原体大発生の処理および予防のためのこの小ペプチドを含む化合物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年1月9日に出願された米国仮特許出願第61/143,618号、2008年8月8日に出願された米国仮特許出願第61/087,354号、2008年5月16日に出願された米国仮特許出願第61/054,010号、2008年4月23日に出願された米国特許出願第12/108,458号、および、2008年4月23日に出願された国際出願PCT/US2008/61336号の利益を主張するものであり、これら各々の内容全体を参照によって本願明細書に組み込む。加えて本願は、2008年1月18日に出願された米国特許出願第12/010,027号、2007年11月30日に出願された米国仮特許出願第60/991,676号、2007年10月24日に出願された米国特許出願第11/923,559号、2007年10月24日に出願された米国仮特許出願第60/982,336号、2007年10月24日に出願された米国仮特許出願第60/982,333号、2007年10月24日に出願された米国仮特許出願第60/982,338号、2007年8月31日に出願された米国仮特許出願第60/935,816号、2007年8月16日に出願された米国仮特許出願第60/935,499号、2007年8月8日に出願された米国仮特許出願第60/954,743号、2007年5月30日に出願された米国特許出願第11/755,597号、2007年1月30日に出願された米国仮特許出願第60/898,097号、2007年1月18日に出願された米国仮特許出願第60/880,966号、2006年10月24日に出願された米国仮特許出願第60/853,744号、2006年2月16日に出願された米国特許出願第11/355,120号、2005年4月28日に出願された米国特許出願第11/116,203号、2004年6月4日に出願された米国特許出願第10/860,050号で現在の米国特許第7,442,761号、2002年7月8日に出願された米国特許出願第10/189,437号で現在の米国特許第7,452,963号、2002年3月26日に出願された米国特許出願第10/105,232号で現在の米国特許第7,189,800号、2001年10月26日に出願された米国特許出願第09/984,057号で現在の米国特許第7,420,028号、2001年10月26日に出願された米国特許出願第09/984,056号で現在の米国特許第7,176,275号の各々の内容全体を参照によって本明細書に組み込む。
【0002】
〔発明の背景〕
世界規模の健康調査において、感染症はしばしば、低所得国および中所得国での死亡原因の上位10位のうちの5つも占め、呼吸器感染症はしばしば、高所得国での死亡原因の第4位とされる。さらに、病原体大発生およびパンデミックが、以前は未知であった病原性疾患または他の変異した病原性疾患によりヒト集団を脅かし続けている。以前は未知であった病原性疾患または他の変異した病原性疾患はしばしば、病原体がブタまたはニワトリなどの罹患している宿主からヒトなどの新しい宿主へ広がる際に発生する。この現象を考慮して、以前から知られている病原体または以前は未知であった病原体による病原体大発生を緩和するために、新しい戦略が継続的に必要とされる。いくつかのそのような脅威的な病原性疾患には、マラリア、インフルエンザ、西ナイルウイルス、口蹄疫、およびヒトおよび動物の双方における世界規模の健康に対する他の脅威が含まれる。異なる病原体株にわたって、または病原体群にさえわたって有用な療法または処理方法が、変異を起こしやすい病原性疾患、および以前は未知であった病原体の大発生に対する戦いを改善するのに特に有益である。
【0003】
世界規模の感染性疾患のうち最も脅威的なものの1つがマラリアである。マラリアは、熱帯環境および亜熱帯環境で毎年100万人以上の人々を殺している。マラリアは、90%のマラリアによる死の原因であると報告されているトリパノソーマ属の熱帯熱マラリア原虫(trypanosome
Plasmodium falciparum)により、最も一般的かつ深刻に引き起こされる。マラリア感染による死亡の大部分は、幼い子供において記録されている。熱帯熱マラリア原虫は、雌のハマダラカ属の蚊によって媒介される。トリパノソーマは、いったんヒトの血流内に入ったら、赤血球内で急速に増殖して、貧血、インフルエンザ様症状、ならびに時として昏睡および死を引き起こす。マラリアに対して部分的に有効なワクチンが現在、市販され始めたばかりであり、完全に有効なワクチンはまだ、産業国において販売品として登録されていない。したがって、マラリアにおける、およびマラリアによる、毒性、罹患率および死亡率の増加を予測し特定する改善された方法の必要性が当業界において引き続き存在する。
【0004】
公衆衛生への別の脅威は、西ナイルウイルス(WNV)であり、西ナイルウイルスは、わずかなヒト感染割合で、脳炎および他の深刻な神経浸潤性疾患を引き起こす。報告されたケースの約4%で、結果として生じる神経浸潤性疾患が死をもたらす。WNVは、フラビウイルス科のウイルスであり、1999年に北米で初めて認められ、現在は米国に固有のものであると考えられている。このウイルスは、蚊(および関連する昆虫)に咬まれることによりヒトに広まる。WNVは、一本鎖センスRNAウイルスであり、ヒト脳炎、つまり日本脳炎、セントルイス脳炎、マレー渓谷脳炎、およびWNVのオーストラリア亜類型であるクンジン脳炎と関連するいくつかの医学的に重要なウイルスを含む、日本脳炎ウイルス抗原複合体のメンバーである。
【0005】
1999年にこの疾患が米国に移入して以来、16,000を超えるヒトにおけるWNVのケースが報告され、650を超える死亡が報告されている。加えて、21,000を超えるケースが、ウマにおいて報告されている。現在のところ、ヒトにおけるWNVと闘うための唯一の利用可能な承認された戦略は、蚊駆除の取り組み、および昆虫忌避剤による個人の保護と併せた、全国規模の積極的監視である。したがって、流行前にWNVの毒性の増加を予測する方法、および、WNV感染を防ぎ、緩和して、処理するための療法の必要性が当業界において存在する。
【0006】
インフルエンザは、世界規模で重大な急性呼吸器疾患である。毒性で致死性のインフルエンザ大発生は、世界の健康状態を脅かし続けている。研究者、官僚、および医師は、新しい処理方法および新規の治療用化合物を必要とする、毒性で致死性のインフルエンザのパンデミックの継続的な脅威にますます意識が高まっている。研究者、官僚、および医師は同様に、流行性インフルエンザの継続的な脅威は、インフルエンザの致死性大発生を予測し追跡する新規およびさらに有効な方法を必要とするということを認識している。
【0007】
インフルエンザワクチンは依然として、インフルエンザウイルスに対する最も有効な防御であるが、ウイルスの変異する能力、およびヒト以外の保有宿主の利用可能性のため、インフルエンザは、新生のまたは再出現の感染症脅威であり続けるだろうと予想される。世界規模のインフルエンザ監視は、インフルエンザウイルスは、インフルエンザシーズンの間、一国内で、ならびに、国家間および大陸間で変化する可能性がある、ということを指摘する。ウイルス学的監視は、抗原シフトおよび抗原ドリフトを監視するのに重要である。疾患監視も、流行の影響力を評価するのに重要である。両方の種類の情報は、ワクチン組成物、および、抗ウイルス剤の使用の基礎を提供してきた。しかしながら伝統的に、数が増加している新生インフルエンザウイルス株の年次事後血液学的分類があるのみで、ウイルスの特異的化学構造は、迫り来るインフルエンザ流行またはパンデミックの指標として特定されなかった。ウイルスのゲノム構造におけるレプリキン化学の発見まで、所与の年において存在または非存在のときのインフルエンザウイルスの年次分類の唯一の基礎は、ウイルスの分離株における赤血球凝集素およびノイラミニダーゼタンパク質の血清学的試験による特定であった。したがって、インフルエンザの株の活動は、大発生の出現の事後にのみ記録され、決して事前ではなかった。
【0008】
大発生前にインフルエンザの毒性および致死性の増加を追跡し予測する定量的方法の継続的な必要性が当業界において存在する。同様に、インフルエンザの毒性株により引き起こされる大発生を防ぎ処理する定量的方法の必要性が当業界において存在する。インフルエンザワクチン投与が年一回であり、かつ、ワクチンを投与できる期間が短いので、ワクチン接種率を改善することに向けられる戦略は、決定的に重要である。
【0009】
レプリキンペプチド(Replikin peptides)は、マラリア、インフルエンザ、西ナイルウイルス、口蹄疫、および他の多くの病原体における急速な複製現象と相関されてきた小ペプチドのファミリーである。レプリキンペプチドは同様に、ウイルスおよび有機体一般における急速な複製現象と相関されてきた。
【0010】
レプリキンペプチドの特定は、マラリア、インフルエンザウイルス、西ナイルウイルス、および口蹄疫ウイルスなどの毒性病原体に対するワクチン開発を含む、病原体の検出および処理のための標的を提供してきた。一般に、このペプチドファミリーについての知識および特定が、レプリキンを持っている任意の病原体に対する有効な療法およびワクチンの開発を可能にする。レプリキンと急速な複製および毒性との関連の現象は、米国特許第7,189,800号、米国特許第7,176,275号、米国特許第7,442,761号、および米国特許出願第11/355,120号に完全に記載されている。レプリキン濃度(100アミノ酸当たりのレプリキン数)およびレプリキン組成の双方は、急速な複製の機能的現象と相関されてきた。
【0011】
しかしながら、毒性病原体の毒性、罹患率、および致死率の増加、ならびに毒性病原体の拡大および大発生を予測し特定する改善された方法の必要性が当業界において引き続き存在する。同様に、拡大する病原体集団の毒性、罹患率、および、致死率の増加で特定されたレプリキン配列を用いて、毒性病原体の大発生および拡大を防ぎ処理する改善された方法の必要性が当業界において存在する。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、時間経過に伴い微生物株で特定されたレプリキンペプチド濃度を含む定量的サイクル構造を提供し、前記サイクル構造は、前記微生物株の集団の拡大および/または収縮、前記微生物株の感染力、ならびに/あるいは前記微生物株の致死率と適時相関する。
【0013】
さらに、本発明は、病原体の大発生を防ぎ緩和して処理する方法であって、同じもしくは関連する病原体の別の株と比較すると、病原体の株の集団の拡大、あるいは、病原体の株の毒性、罹患率、および/または、致死率の増加を予測することと、予測された病原体大発生を緩和するか、防ぐか、あるいは処理するために病原体の構造またはゲノムの分離または合成された部分を含む化合物を動物または患者に投与することと、を含む方法を提供する。
【0014】
本発明はさらに、病原体の株の拡大、あるいは、病原体の毒性、罹患率および/または死亡率の増加を予測する方法であって、病原体のタンパク質断片、タンパク質、ゲノム断片、もしくはゲノムにおけるレプリキンカウント(Replikin Count)のサイクルを特定することと、特定されたレプリキンカウントのサイクル内において前記病原体の毒性、罹患率および/または死亡率の増加を予測することと、を含む方法を提供する。本発明はさらに、病原体大発生に対する診断用薬、治療薬または予防薬として、毒性、罹患率および/または死亡率が増加する、あるいは拡大すると予測された病原体内で特定されたレプリキンペプチドを提供する。
【0015】
本発明の第1の非限定的態様は、第1病原体の集団の拡大を予測することを含む、集団が拡大すると予測された病原体の大発生を防ぐか、緩和するか、または処理する方法であって、
この病原体の分離株におけるレプリキン濃度の少なくとも1つのサイクルを特定して、第1病原体の集団の拡大がレプリキン濃度のその少なくとも1つのサイクルの上昇部分の出現後に起こるであろうと予測することと、
予測された病原体大発生を緩和するか、防ぐか、または処理するために、病原体の構造もしくはゲノムの分離または合成された部分を含む化合物を動物または患者に投与することと、を含む方法を提供する。
【0016】
本発明の第一態様のさらなる実施形態は、病原体の大発生を防ぐか、緩和するか、または処理する方法であって、
(1)病原体の前記第1株の複数の分離株のレプリキン濃度における第一サイクルを特定すること、(2)第1時点または第1期間での特定された第1サイクル内におけるレプリキン濃度の第1ピークを特定すること、ならびに、(3)第1時点または第1期間の後の第2時点または第2期間において分離された病原体の同じ株または関連する株の分離株の毒性の増加を予測すること、を含む、病原体の同じ株もしくは関連する株の1または複数の別の分離株と比較して、集団の拡大、あるいは病原体の第1株の1または複数の分離株の毒性、罹患率および/または死亡率の増加を予測することと、
病原体の大発生を防ぐか、緩和するか、または処理するために、病原体の少なくとも1つの分離株の構造またはゲノムの分離または合成された部分を含む化合物を動物または患者に投与することと、を含む方法を提供する。
【0017】
本発明の第一態様の非限定的実施形態において、病原体は、インフルエンザウイルス、マラリア・トリパノソーマ、西ナイルウイルス、口蹄疫ウイルス、タウラ症候群ウイルス、ホワイトスポット症候群ウイルス、ブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルス、ブタ・サーコウイルス、ヘリコバクター・ピロリ、エントアメーバ・インバデンス、L.レジオネラ、黄色ブドウ球菌、トウモロコシ縞葉枯病ウイルス、ウシヘルペスウイルス、ネコ免疫不全ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ラウス肉腫ウイルス、トリ肉腫ウイルス、シンドビスウイルス、肝炎ウイルス、炭疽菌、または、任意の他の感染病原体である。非限定的実施形態において、このインフルエンザウイルスは、インフルエンザウイルスのHlNl株、H2N2株、H3N2株、H5N1株、H3N8株、またはH9N2株である。
【0018】
本発明の第一態様のさらなる非限定的実施形態において、前記の病原体の株の拡大、あるいは病原体の株の1もしくは複数の分離株の毒性、罹患率および/または死亡率の増加は、病原体の第2株の複数の分離株のレプリキン濃度における第2サイクルであって、病原体の前記第1株の前記複数の分離株のレプリキン濃度における前記第1サイクルと同調性を共有する第2サイクルを、特定することと、第1時点または第1期間の特定された第1サイクル内におけるレプリキン濃度の第1ピークを特定することと、前記第1時点または第1期間に類似する第2時点または第2期間での病原体の前記第2株の特定された第2サイクル内におけるレプリキン濃度の第1ピークを特定することと、第1時点または第1期間に続いて病原体の前記第1株の毒性の増加を予測することと、を含む。非限定的実施形態において、病原体は、インフルエンザウイルス、マラリア・トリパノソーマ、西ナイルウイルス、口蹄疫ウイルス、または任意の他の感染病原体である。
【0019】
本発明の第一態様の非限定的実施形態において、前記病原体は、インフルエンザウイルスである。さらなる非限定的実施形態において、インフルエンザの前記第1株は、インフルエンザの前記第2株とは異なる任意の株である。別の非限定的実施形態において、インフルエンザの前記第1株は、H5N1であり、インフルエンザの前記第2株は、H9N2であり、あるいは逆もまた同様である。
【0020】
本発明の第一態様のさらなる非限定的実施形態において、病原体の少なくとも1つの分離株の構造またはゲノムの前記分離または合成された部分は、レプリキンペプチドおよび/もしくはレプリキン・ピーク・ジーン(Replikin Peak Gene)を含むタンパク質またはタンパク質断片、レプリキン・ピーク・ジーン内で特定されたレプリキンペプチド、あるいは、前記病原体の構造の任意構造または任意部分である。別の実施形態において、構造またはゲノムの前記分離または合成された部分は、レプリキン・ピーク・ジーン、レプリキン・ピーク・ジーン内の1もしくは複数のレプリキンペプチド、または、1もしくは複数のレプリキンペプチドをコード化する核酸である。
【0021】
本発明の第一態様の別の非限定的実施形態において、第2時点または第2期間は、第1時点または第1期間後、3年までである。さらなる非限定的実施形態において、第2時点または第2期間は、第1時点または第1期間後、約1年である。さらなる非限定的実施形態において、第2時点または第2期間は、第1時点または第1期間後、約6ヶ月である。さらなる非限定的実施形態において、第2時点または第2期間は、第1時点または第1期間に続く病原体の次のシーズンである。さらなる非限定的実施形態において、第2時点または第2期間は、第1時点または第1期間に続くインフルエンザの次のシーズンである。さらなる非限定的実施形態において、次のインフルエンザシーズンは、第1時点または第1期間に続く、ある地理的領域における次の冬季である。別の非限定的実施形態において、第2時点または第2期間は、第1時点または第1期間に続くマラリアの次のシーズンである。さらなる非限定的実施形態において、マラリアの次のシーズンは、次の雨季である。別の非限定的実施形態において、第2時点または第2期間は、西ナイルウイルスの次のシーズンである。さらなる非限定的実施形態において、西ナイルウイルスの次のシーズンは、夏季である。
【0022】
本発明の第一態様の別の非限定的実施形態において、レプリキン濃度のサイクルにおいて特定されたピークは、レプリキン濃度のサイクルにおける経時的に前のピークよりも、より高いレプリキン濃度を有する。本発明のさらなる非限定的実施形態において、レプリキン濃度のサイクルにおける特定されたピークは、より前のピークよりも有意に高い。さらなる非限定的実施形態において、特定されたピークは、p値が0.01未満で、より前のピークよりも有意に高い。さらなる非限定的実施形態において、特定されたピークは、p値が0.001未満で、より前のピークよりも有意に高い。
【0023】
本発明の第2の非限定的態様は、第1病原体の集団の拡大を予測する方法であって、病原体の分離株におけるレプリキン濃度の少なくとも1つのサイクルを特定することと、第1病原体の集団の拡大がレプリキン濃度のその少なくとも1つのサイクルの上昇部分が出現した後に起こるであろうと予測することと、を含む方法を提供し、ここで、この少なくとも1つのサイクルは、サイクルAである。
【0024】
本発明の第2態様のさらなる実施形態において、上昇部分はピークを含み、第1病原体の集団の前記拡大は、このピークの出現後に予測される。さらなる実施形態において、サイクルは、少なくとも第1上昇部分および第2上昇部分を含み、前記第1上昇部分は、前記第2上昇部分よりも前の適時に出現する。さらなる実施形態において、サイクルは少なくとも3つの上昇部分を含み、この少なくとも3つの上昇部分は、少なくとも上昇部分A’、上昇部分B’、および上昇部分C’である。さらなる実施形態において、上昇部分B’はピークを含み、上昇部分A’はピークを含み、そして上昇部分B’のピークは、上昇部分A’のピークよりも高いレプリキン濃度を有する。さらなる非限定的実施形態において、予測方法はさらに、コンピュータでこの方法を処理することを含む。さらなる非限定的実施形態において、サイクルは、例えば、ピーク〜谷〜ピーク〜谷、または、谷〜ピーク〜谷〜ピークを含む、1を超えるサイクルを含む。さらなる非限定的実施形態において、サイクルは、3つのピーク、または、3つの谷、またはそれ以上を含む。
【0025】
本発明の第2態様のさらなる実施形態において、予測方法は、病原体の少なくとも1つの他の株の分離株におけるレプリキン濃度の少なくとも1つの他のサイクルを特定することであって、その少なくとも1つの他のサイクルはサイクルBであり、サイクルBは、サイクルAと同調性を共有する、特定することと;第1病原体の集団の拡大が、サイクルBにおける上昇部分に対応するサイクルAにおける上昇部分の出現後に、起こるだろうことを予測することと、を含む。さらなる実施形態において、第1病原体は、インフルエンザウイルスの第1株であり、もう一方の病原体は、インフルエンザウイルスの異なる株である。さらなる実施形態において、第1病原体は、インフルエンザウイルスのH5N1株であり、病原体のもう一方の株は、インフルエンザウイルスのH9N2株である。さらなる実施形態において、第1病原体の集団の拡大は、ピーク後3年以内に予測される。さらなる実施形態において、第1病原体の集団の拡大は、前記ピーク後1年以内に予測される。さらなる実施形態において、第1病原体の集団の拡大は、病原体の次の毒性シーズン後に予測される。
【0026】
本発明の第2態様のさらなる実施形態は、病原体の集団の拡大あるいは病原体の毒性、罹患率および/または死亡率の増加を、同種の別の病原体もしくは関連する種の別の病原体の集団あるいは毒性、罹患率および/または死亡率と比べて、予測する方法であって、(1)複数の病原体の分離株のレプリキン濃度のサイクルを特定することと、(2)第1時点または第1期間の特定されたサイクル内における複数の前記病原体の分離株のレプリキン濃度の第1ピークを特定することと、(3)同種もしくは関連する種の病原体の集団の拡大、あるいは、第1時点または第1期間の後の第2時点または第2期間において分離された同種または関連する種の病原体の毒性、罹患率および/または死亡率の増加を予測することと、を含む方法を提供する。
【0027】
本発明の第2態様の非限定的実施形態において、病原体は、マラリア・トリパノソーマ、西ナイルウイルス、インフルエンザウイルス、ウマ・インフルエンザウイルス、コロナウイルス、口蹄疫ウイルス、タウラ症候群ウイルス、ホワイトスポット症候群ウイルス、または他の病原体もしくは他の感染病原体でありうるが、これらに限定するものではない。
【0028】
本発明の第2態様の非限定的実施形態において、病原体は、マラリア・トリパノソーマである。別の非限定的実施形態において、このトリパノソーマは、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、または、四日熱マラリア原虫である。さらなる非限定的実施形態において、このトリパノソーマは、熱帯熱マラリア原虫である。さらなる非限定的実施形態において、この方法は、マラリア感染による死亡率の増加を予測する。
【0029】
本発明の第2態様の別の実施形態において、特定されたレプリキンサイクルは、熱帯熱マラリア原虫のヒスチジンに富むタンパク質において特定されたレプリキン濃度を示す。本発明の別の非限定的実施形態において、特定されたレプリキンサイクルは、熱帯熱マラリア原虫のそのヒスチジンに富むタンパク質において特定されたレプリキン濃度を示す。
【0030】
本発明の第2態様の別の非限定的実施形態において、病原体は、西ナイルウイルスである。さらなる実施形態において、特定されたレプリキンサイクルは、西ナイルウイルスのエンベロープタンパク質において特定された濃度を示す。別の非限定的実施形態において、病原体は、口蹄疫ウイルスである。さらなる実施形態において、特定されたレプリキンサイクルは、口蹄疫ウイルスのVP1タンパク質において特定された濃度を示す。別の非限定的実施形態において、病原体は、インフルエンザウイルスである。さらなる実施形態において、特定されたレプリキンサイクルは、インフルエンザウイルスのpB1遺伝子領域において特定された濃度を示す。別の非限定的実施形態において、このインフルエンザウイルスは、インフルエンザウイルスのHlNl株、H2N2株、H3N2株、H3N8株、H5N1株、またはH9N2株である。
【0031】
本発明の第2態様の別の非限定的実施形態において、第2時点または第2期間は、第1時点または第1期間後、3年までである。さらなる非限定的実施形態において、第2時点または第2期間は、第1時点または第1期間後、約1年である。さらなる非限定的実施形態において、第2時点または第2期間は、第1時点または第1期間後、約6ヶ月である。さらなる非限定的実施形態において、第2時点または第2期間は、第1時点または第1期間に続く病原体の次のシーズンである。さらなる非限定的実施形態において、第2時点または第2期間は、第1時点または第1期間に続くインフルエンザの次のシーズンである。さらなる非限定的実施形態において、次のインフルエンザシーズンは、第1時点または第1期間に続く、ある地理的領域における次の冬季である。さらなる非限定的実施形態において、第2時点または第2期間は、第1時点または第1期間後の次の乾季に続く。さらなる非限定的実施形態において、第2時点または第2期間は、第1時点または第1期間に続く次のマラリアシーズンである。さらなる非限定的実施形態において、次のシーズンは、次の雨季である。
【0032】
本発明の第2態様の別の非限定的実施形態において、レプリキン濃度のサイクルにおける特定されたピークは、レプリキン濃度のサイクルにおける経時的に前のピークよりも高いレプリキン濃度を有する。本発明のさらなる非限定的実施形態において、レプリキン濃度のサイクルにおいて特定されたピークは、より前のピークよりも有意に高い。さらなる非限定的実施形態において、特定されたピークは、p値が0.01未満で、より前のピークよりも有意に高い。さらなる非限定的実施形態において、特定されたピークは、p値が0.001未満で、より前のピークよりも有意に高い。
【0033】
本発明の第2態様のさらなる非限定的実施形態において、集団の前記拡大あるいは病原体の分離株の毒性、罹患率、および/または、死亡率の前記増加を予測することは、病原体の前記第1株の前記複数の分離株のレプリキン濃度における前記第1サイクルと同調性を共有する、病原体の第2株もしくは関連する株の複数の分離株のレプリキン濃度におけう第2サイクルを特定することと、第1時点または第1期間での特定された第1サイクル内におけるレプリキン濃度の第1ピークを特定することと、前記第1時点または第1期間に類似する第2時点または第2期間で、病原体の前記第2株または病原体の前記関連する株の特定された第2サイクル内におけるレプリキン濃度の第1ピークを特定することと、第1時点または第1期間に続いて、集団の拡大、あるいは、病原体の前記第1株の毒性、罹患率、および/または死亡率の増加を予測することと、を含む。非限定的実施形態において、病原体は、マラリア・トリパノソーマ、西ナイルウイルス、口蹄疫ウイルス、または任意の他の感染病原体である。
【0034】
非限定的実施形態において、前記病原体は、インフルエンザウイルスである。さらなる非限定的実施形態において、インフルエンザの前記第1株は、インフルエンザの前記第2株とは異なる任意の株である。別の非限定的実施形態において、インフルエンザの前記第1株はH5N1であり、インフルエンザの前記第2株はH9N2であり、または、逆もまた同様である。別の実施形態において、この株は、任意のインフルエンザ株であり、関連する株は、任意の他の株であり、ここで前記第1株との関係は、前記株と前記関連する株とのレプリキンサイクルを比較することによって決定される。別の実施形態において、レプリキンサイクルは、同調性を共有するので、これら株は関連している。
【0035】
本発明の第2態様のさらなる非限定的実施形態は、拡大する病原体の集団、あるいは、病原体の毒性、罹患率、および/または死亡率の増加を予測する方法であって、(1)複数の連続する時点で、病原体の少なくとも2つの株の複数の分離株における平均レプリキンカウントを決定することと、(2)各株について少なくとも4つの連続する時点における平均レプリキンカウントを比較して、少なくとも2つの株の各々について、少なくとも4つの時点にわたって平均レプリキンカウントが増えている少なくとも1つのサイクルを特定することと、(3)少なくとも2つの株の各々について平均レプリキンカウントが増えている少なくとも1つのサイクルの間で少なくとも部分的な同調性を特定することと、(4)前記少なくとも2つの株の少なくとも1つのサイクルにおける平均レプリキンカウントの増加に続く適時に毒性の増加を予測することと、を含む方法を提供し、ここで、前記少なくとも2つの株における前記少なくとも1つのサイクルは、対応する期間に起こる。さらなる非限定的実施形態において、段階的サイクルが、連続する時点の間で特定される。さらなる非限定的実施形態において、特異的な保存されているレプリキン配列が、段階的サイクル内で特定される。さらなる非限定的実施形態において、レプリキン配列は、段階的サイクルのピークで特定される。段階的サイクルのピークで特定されたレプリキン配列は、比較的高い死亡率を有するマラリアの大発生を防ぐか、あるいは処理するのに使用するための、分離または合成されたレプリキンペプチドのワクチンまたは治療用化合物の開発に有用である。さらなる実施形態において、病原体はインフルエンザである。さらなる実施形態において、インフルエンザの少なくとも2つの株は、H9N2、およびH5Nlである。
【0036】
本発明の第2態様の別の非限定的実施形態は、病原体の株の集団の収縮または減退を予測する方法を提供し、ここで前記病原体の分離株は、レプリキンサイクルの低下部分の後の時点または期間に分離される。
【0037】
本発明の第2態様のさらなる非限定的実施形態は、ワクチンを作るための方法であって、病原体または病原体の関連する株の拡大する集団、あるいは、病原体または病原体の関連する株の毒性、罹患率、および/または死亡率の増加を予測することと、ワクチン中に含まれるべき前記分離されたインフルエンザウイルスの構造またはゲノムの部分を特定することと、を含む方法を提供する。
【0038】
本発明の第2態様のさらなる非限定的実施形態は、病原体の構造またはゲノムの分離または合成された部分を提供し、ここで前記病原体は、この病原体の集団が拡大すると予測されている。さらなる実施形態において、分離または合成された部分は、レプリキンペプチドもしくはレプリキン・ピーク・ジーンを含む、タンパク質、タンパク質断片、またはペプチドである。さらなる非限定的実施形態において、病原体の構造もしくはゲノムの分離または合成された部分は、1つ以上のレプリキンペプチド、および/または、1つ以上のレプリキン・ピーク・ジーンからなる。さらなる非限定的実施形態において、この1つ以上のレプリキンペプチドは、レプリキン濃度のサイクルの間に、このサイクル内の少なくとも2つの連続する時点または期間において保存される。
【0039】
本発明の第2態様の別の非限定的実施形態は、診断目的、治療目的および/または予防目的のために、前記病原体の複数の分離株の中から、前記病原体のある分離株中に保存されていると特定された、レプリキンペプチドを提供し、ここで前記分離株は、レプリキン濃度のサイクルの間、少なくとも2つの連続する時点または期間で分離され、サイクルは好ましくは、少なくとも2つのピークまたは2つの谷を含む。
【0040】
本発明の第2態様のさらなる非限定的実施形態において、病原体はインフルエンザウイルスである。さらなる非限定的実施形態において、レプリキンペプチドは、HAQDILEKEHNGKLCSLKGVRPLILK(配列ID番号:1)、KEHNGKLCSLKGVRPLILK(配列ID番号:2)、KKNNAYPTIKRTYNNTNVEDLLIIWGIHH(配列ID番号:3)、HHSNEQGSGYAADKESTQKAIDGITNK(配列ID番号:4)、HDSNVKNLYDKVRLQLRDNAK(配列ID番号:5)、KVRLQLRDNAKELGNGCFEFYH(配列ID番号:6)、KDVMESMDKEEMEITTH(配列ID番号:7)、HFQRKRRVRDNMTKK(配列ID番号:8)、KKWSHKRTIGKKKQRLNK(配列ID番号:9)、HKRTIGKKKQRLNK(配列ID番号:10)、HEGIQAGVDRFYRTCKLVGINMSKKK(配列ID番号:11)、または、HSWIPKRNRSILNTSQRGILEDEQMYQKCCNLFEK(配列ID番号:12)のうちの少なくとも1つである。
【0041】
本発明の第2態様のさらなる非限定的実施形態において、病原体は、西ナイルウイルスである。さらなる非限定的実施形態において、レプリキンペプチドは、KIIQKAHK(配列ID番号:13)、HLKCRVKMEK(配列ID番号:14)、KLTSGHLK(配列ID番号:15)、または、HNDKRADPAFVCK(配列ID番号:16)のうちの少なくとも1つである。
【0042】
さらなる非限定的実施形態において、病原体は、口蹄疫ウイルスである。さらなる非限定的実施形態において、レプリキンペプチドは、HKQKIIAPAK(配列ID番号:17)、および、HKQKIVAPVK(配列ID番号:18)のうちの少なくとも1つである。
【0043】
さらなる非限定的実施形態において、病原体は、マラリアである。さらなる非限定的実施形態において、レプリキンペプチドは、以下の受入番号:ABU43157、CAD49281、CAD49281、または、XP001349534のうちの少なくとも1つから特定されるレプリキンペプチドの少なくとも1つである。
【0044】
上記に記載された、または本明細書で特定されるレプリキンペプチドの任意のものは、本発明の免疫原性化合物に含まれうる。
【0045】
本発明の第2態様のさらなる非限定的実施形態は、命令が記憶されているコンピュータ可読媒体を提供する。この命令が実行されると、プロセッサが、病原体の株の拡大、あるいは、病原体の毒性、罹患率、および/または死亡率の増加を予測する方法を実施する。さらなる実施形態において、プロセッサは、ディスプレイ、使用者、研究者、または他の機械もしくは人物に予測を報告する。さらなる実施形態において、プロセッサは、拡大する病原体があると予測された、あるいは、毒性、罹患率および/または死亡率の増加が予測された、病原体の一部分を、ディスプレイ、使用者、研究者、または、他の機械もしくは人物に対して確認し、ここで前記一部分は、治療用化合物または診断用化合物として利用されうる。前記一部分は、1もしくは複数のレプリキンペプチド、または、レプリキン・ピーク・ジーンを含む前記病原体の前記ゲノムの任意の他の構造もしくは部分でありうる。
【0046】
本発明の第3の非限定的態様は、診断目的、治療目的、および/または予防目的のために、病原体の分離株において特定されたレプリキンペプチドを提供し、前記分離株は、病原体の複数の分離株の中からレプリキン濃度のサイクルの上昇部分の間に分離されるか、あるいは、病原体の複数の分離株の中からレプリキン濃度のサイクル内のピークで分離されるか、あるいは、病原体の複数の分離株の中からレプリキン濃度のサイクル内のピークの後に分離される。
【0047】
本発明の第3態様の別の非限定的実施形態は、診断目的、治療目的および/または予防目的のために、病原体の複数の分離株の中から前記病原体のある分離株内に保存されていると特定されたレプリキンペプチドを提供し、前記分離株は、レプリキン濃度のサイクルの間、少なくとも2つの連続する時点または期間で分離され、このサイクルは、少なくとも2つのピークまたは2つの谷を含む。
【0048】
本発明の第3態様の非限定的実施形態において、病原体は、マラリア・トリパノソーマである。さらなる非限定的実施形態において、特定されたサイクルは、熱帯熱マラリア原虫のヒスチジンに富むタンパク質のものである。別の非限定的実施形態において、特定されたサイクルは、熱帯熱マラリア原虫のATPアーゼタンパク質のものである。別の非限定的実施形態において、特定されたサイクルは、マラリアを引き起こすトリパノソーマのレプリキン・ピーク・ジーンのものである。
【0049】
本発明の第3態様の別の非限定的実施形態において、病原体は、西ナイルウイルスである。さらなる非限定的実施形態において、特定されたサイクルは、西ナイルウイルスのエンベロープタンパク質のものである。別の非限定的実施形態において、病原体は、口蹄疫ウイルスである。さらなる非限定的実施形態において、特定されたサイクルは、口蹄疫ウイルスのVP1タンパク質のものである。
【0050】
本発明の第3態様の別の非限定的実施形態において、病原体は、インフルエンザウイルスである。別の非限定的実施形態において、インフルエンザウイルスは、H1N1インフルエンザウイルス、H2N2インフルエンザウイルス、H3N2インフルエンザウイルス、H3N8インフルエンザウイルス、H5N1インフルエンザウイルス、またはH9N2インフルエンザウイルスである。さらなる非限定的実施形態において、特定されたサイクルは、インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼまたは赤血球凝集素タンパク質のものである。
【0051】
本発明の第4の非限定的態様は、病原体の分離株において特定されたレプリキンペプチドを含む免疫原性組成物を提供し、ここで前記分離株は、レプリキン濃度のサイクルの上昇部分の間に、前記病原体の複数の分離株の中から分離されるか、レプリキン濃度の特定されたサイクル内のピークで、この病原体の複数の分離株の中から分離されるか、あるいは、レプリキン濃度の特定されたサイクル内のピークの後に、この病原体の複数の分離株の中から分離される。
【0052】
本発明に第4態様の別の非限定的実施形態において、免疫原性組成物は、病原体の感染を防ぐまたは処理するためのワクチンである。本発明の別の非限定的実施形態は、病原体の分離株において特定されたレプリキンペプチドに対する抗体を提供し、ここで前記分離株は、レプリキン濃度のサイクルの上昇部分の間に特定されるか、あるいは、レプリキン濃度のサイクル内のピークで特定されるか、あるいは、レプリキン濃度のサイクル内のピークの後で特定される。別の非限定的実施形態において、病原体は、西ナイルウイルスである。別の非限定的実施形態において、病原体は、口蹄疫ウイルスである。
【0053】
本発明の第5の非限定的態様は、病原体の大発生を防ぐか、緩和するか、あるいは処理する方法であって、
(1)第1期間の間の第1地理的領域における病原体の株の複数の分離株について、平均レプリキンカウント、および前記平均レプリキンカウントの標準偏差を決定すること、(2)第2期間および/または第2地理的領域からの、病原体の同じ株もしくは関連する株の少なくとも1つの分離株のレプリキンカウントを決定することであって、ここで前記第2期間は、前記第1期間とは異なり、および/または、前記第2地理的領域は、前記第1地理的領域とは異なる、レプリキンカウントを決定すること、ならびに、(3)前記少なくとも1つの分離株のレプリキンカウントが、前記第1期間および前記第1地理的領域で分離された複数の分離株のレプリキンカウントの平均値の1標準偏差よりも大きい場合、前記第2期間および/または第2地理的領域で分離された病原体の前記株の拡大を予測すること、を含む、病原体の株の拡大を予測することと、
インフルエンザウイルスの大発生を防ぐか、または処理するためにインフルエンザウイルスの少なくとも1つの分離株の構造またはゲノムの分離または合成された部分を含む化合物を、動物または患者に投与することと、を含む方法を提供する。
【0054】
本発明の第5態様の非限定的実施形態において、前記病原体は、インフルエンザウイルス、マラリア・トリパノソーマ、西ナイルウイルス、口蹄疫ウイルス、または任意の他の種類の感染病原体である。
【0055】
本発明の第5態様の非限定的実施形態において、前記第1期間は、1年であり、前記第1地理的領域は、ある国家である。さらなる実施形態において、前記第2期間は、1年である。さらなる実施形態において、前記第2地理的領域は、ある国家である。さらなる実施形態において、病原体がインフルエンザウイルスである場合、前記第1地理的領域は、中国である。さらなる実施形態において、病原体がマラリア・トリパノソーマである場合、前記第1地理的領域は、インドである。さらなる実施形態において、病原体が西ナイルウイルスである場合、前記第1地理的領域は、米国内のある州である。
【0056】
本発明の第5態様の別の非限定的実施形態において、第1期間の間の第1地理的領域における病原体の株の前記複数の分離株は、前記第1期間の前記第1地理的領域における公的に入手可能な全ての配列からの複数の分離株である。別の非限定的実施形態において、前記複数の分離株は全て、ある種の動物からの分離株である。別の非限定的実施形態において、前記複数の分離株は全て、ハクチョウ、ニワトリ、ハヤブサ、シチメンチョウ、アヒル、または他の家禽もしくは野鳥などの特定種のトリからの分離株である。
【0057】
本発明の第5態様のさらなる非限定的実施形態において、病原体の少なくとも1つの分離株の構造またはゲノムの前記分離または合成された部分は、レプリキンペプチドを含むタンパク質またはタンパク質断片である。さらなる実施形態において、前記タンパク質またはタンパク質断片は、レプリキンペプチドである。別の実施形態において、前記タンパク質またはタンパク質断片は、レプリキン・ピーク・ジーンを含む。さらなる実施形態において、前記タンパク質またはタンパク質断片は、レプリキン・ピーク・ジーンである。さらなる実施形態において、前記タンパク質またはタンパク質断片は、レプリキン・ピーク・ジーン内で特定されたレプリキンペプチドである。別の実施形態において、この構造またはゲノムの前記分離または合成された部分は、レプリキン・ピーク・ジーンをコード化する核酸、レプリキン・ピーク・ジーン内の1または複数のレプリキンペプチドをコード化する核酸、または、レプリキンペプチドをコード化する核酸である。
【0058】
本発明の第5態様の別の非限定的実施形態において、第2期間および/または第2地理的領域からの病原体の同じ株の少なくとも1つの分離株は、前記第2期間および/または第2地理的領域からの複数の分離株であり、前記第2期間および/または第2地理的領域からの複数の分離株の各分離株のレプリキンカウントは、前記平均レプリキンカウントの前記1標準偏差と別個に比較される。
【0059】
本発明の第5態様のさらなる非限定的実施形態において、前記第2期間および/または第2地理的領域において分離された病原体の前記株の拡大が、前記第1期間に前記第1地理的領域において分離された複数の分離株のレプリキンカウントの平均値の1標準偏差より大きい、前記第2期間および/または第2地理的領域からの前記複数の分離株のレプリキンカウント数が、この平均値の前記1標準偏差よりも小さい、前記第2期間および/または第2地理的領域からの前記複数の分離株のレプリキンカウント数よりも大きい場合に予測される。
【0060】
本発明の第5態様のさらなる非限定的実施形態において、レプリキンカウントは、病原体の分離株のゲノムにおいてコード化されると特定されたレプリキンペプチドの濃度である。さらなる実施形態において、レプリキンカウントは、病原体の分離株の発現されたタンパク質において特定されたレプリキンペプチドの濃度である。さらなる実施形態において、レプリキンカウントは、病原体の分離株の少なくとも1つのタンパク質または遺伝子領域において特定されたレプリキンペプチドの濃度である。さらなる実施形態において、この遺伝子領域は、インフルエンザウイルスのゲノムのpB1遺伝子領域、マラリア・トリパノソーマのヒスチジンに富むタンパク質の遺伝子領域、口蹄疫ウイルスのVP1遺伝子領域、または、西ナイルウイルスのエンベロープタンパク質の遺伝子領域である。別の実施形態において、レプリキンカウントは、病原体の分離株の少なくとも1つのタンパク質断片において特定されたレプリキンペプチドの濃度である。さらなる実施形態において、レプリキンカウントは、病原体の分離株のレプリキン・ピーク・ジーンにおいて特定されたレプリキンペプチドの濃度である。さらなる実施形態において、レプリキン・ピーク・ジーンは、インフルエンザウイルスゲノムのポリメラーゼ領域において特定される。さらなる実施形態において、レプリキン・ピーク・ジーンは、インフルエンザウイルスゲノムのpB1領域において特定される。さらなる実施形態において、レプリキン・ピーク・ジーンは、マラリア・トリパノソーマのヒスチジンに富むタンパク質領域、口蹄疫ウイルスのVP1領域、または、西ナイルウイルスのエンベロープタンパク質において特定される。
【0061】
本発明の第6の非限定的態様は、病原体の株の拡大を予測する方法であって、
(1)第1期間の間の第1地理的領域における病原体の前記株の複数の分離株についての平均レプリキンカウントおよび前記平均レプリキンカウントの標準偏差を決定することと、
(2)第2期間および/または第2地理的領域からの病原体の同じ株もしくは関連する株の少なくとも1つの分離株のレプリキンカウントを決定することであって、ここで前記第2期間は、前記第1期間とは異なり、および/または、前記第2地理的領域は、前記第1地理的領域とは異なる、レプリキンカウントを決定することと、
(3)第2期間および/または第2地理的領域からの前記少なくとも1つの分離株のレプリキンカウントが、前記第1期間に前記第1地理的領域において分離された複数の分離株のレプリキンカウントの平均値の1標準偏差よりも大きい場合、前記第2期間および/または第2地理的領域において分離された病原体の前記株の拡大を予測することと、
を含む、方法を提供する。
【0062】
非限定的実施形態において、予測する方法はさらに、この方法をコンピュータ上で処理することを含む。
【0063】
本発明の第6態様の非限定的実施形態は、病原体がインフルエンザウイルス、マラリア・トリパノソーマ、西ナイルウイルス、口蹄疫ウイルス、または、任意の他の種類の感染病原体であることを意図する。
【0064】
本発明の第6態様のさらなる非限定的実施形態は、ワクチンを作るための方法であって、前記第2期間および/または第2地理的領域において分離された病原体の前記株の拡大を予測することと、ワクチンを構成するために前記分離されたインフルエンザウイルスの構造またはゲノムの部分を特定することと、を含む方法を提供する。
【0065】
本発明の第6態様のさらなる非限定的実施形態において、第2期間および/または第2地理的領域からの病原体の同じ株の少なくとも1つの分離株は、前記第2期間および/または第2地理的領域からの複数の分離株である。さらなる非限定的実施形態において、前記第2期間および/または第2地理的領域からの複数の分離株の各分離株のレプリキンカウントは、平均値の前記1標準偏差と別個に比較される。
【0066】
本発明の第6態様の別の非限定的実施形態において、前記第2期間および/または前記第2地理的領域において分離された病原体の株の拡大は、前記第1期間に前記第1地理的領域において分離された複数の分離株のレプリキンカウントの平均値の1標準偏差よりも大きい、前記第2期間および/または前記第2地理的領域からの前記複数の分離株のレプリキンカウント数が、平均値の前記1標準偏差より小さい、前記第2期間および/または前記第2地理的領域からの前記複数の分離株のレプリキンカウント数よりも大きい場合に、予測される。さらなる非限定的実施形態において、前記第2期間および/または第2地理的領域において分離されたインフルエンザウイルス株の拡大は、平均値の前記1標準偏差よりも大きい、前記第2期間および/または前記第2地理的領域からの前記複数の分離株のレプリキンカウント数を、平均値の前記1標準偏差よりも小さい、前記第2期間および/または前記第2地理的領域からの前記複数の分離株のレプリキンカウント数で割った比が、1より大きい場合に予測される。
【0067】
本発明の第6態様のさらなる非限定的実施形態は、診断目的、治療目的、および/または予防目的のために、拡大する集団を有すると予測された病原体の分離株において特定されたレプリキンペプチドを提供する。別の非限定的実施形態において、診断目的、治療目的、および/または予防目的のためのレプリキンペプチドは、時間と共に、または、地理的領域にわたって保存される。
【0068】
本発明の第6態様の別の非限定的実施形態は、病原体の株の集団の収縮または減退を予測する方法を提供し、ここで第1期間および/または第1地理的領域からの病原体の株の少なくとも1つの分離株のレプリキンカウントは、第2期間および第2地理的領域からのインフルエンザの複数の分離株のレプリキンカウントの平均値の1標準偏差よりも小さい。別の非限定的実施形態は、病原体の株の集団の収縮または減退を予測する方法を提供し、ここで第2地理的領域における第2期間からの複数の分離株のレプリキンカウントの平均値の1標準偏差よりも大きい、第1期間および/または第1地理的領域からの複数の分離株のレプリキンカウント数は、平均値の前記1標準偏差よりも小さい、第1期間および/または第1地理的領域からの複数の分離株のレプリキンカウント数よりも小さい。さらなる非限定的実施形態において、前記収縮または減退は、平均値の前記標準偏差よりも大きい、前記第1期間および/または前記第1地理的領域からの前記複数の分離株のレプリキンカウント数を、平均値の前記標準偏差よりも小さい、前記第1期間および/または前記第1地理的領域からの前記複数の分離株のレプリキンカウント数で割った比が、1よりも小さい場合に、予測される。
【0069】
本発明の第6態様のさらなる非限定的実施形態は、命令が記憶されているコンピュータ可読媒体を提供する。この命令が実行されると、プロセッサが、病原体の株の拡大、または、ウイルスもしくは有機体の拡大を予測する方法を実施する。さらなる実施形態において、プロセッサは、ディスプレイ、使用者、研究者、または他の機械もしくは人物に予測を報告する。さらなる実施形態において、拡大する病原体があると予測された病原体の一部分を、ディスプレイ、使用者、研究者、または、他の機械もしくは人物に対して確認し、ここで前記一部分は、治療用化合物または診断用化合物として利用されうる。前記一部分は、1もしくは複数のレプリキンペプチド、または、レプリキン・ピーク・ジーンを含む前記病原体の前記ゲノムの任意の他の構造もしくは部分でありうる。
【0070】
本発明の第7の非限定的態様は、病原体の分離株の構造またはゲノムの一部分を含む免疫原性組成物を提供し、ここで前記病原体の前記分離株は、(1)異なる期間および/または異なる地理的領域において分離された病原体の複数の分離株の平均レプリキンカウントの1標準偏差よりも大きいレプリキンカウントを有する分離株である、(2)第1期間および/または地理的領域からの分離株であり、平均値の前記1標準偏差よりも大きいレプリキンカウントを有する、第1期間および/または地理的領域からの複数の分離株の数が、平均値の前記1標準偏差よりも小さい、レプリキンカウントを有する分離株の数よりも大きい、(3)インフルエンザの複数の分離株の中からレプリキン濃度のサイクルもしくは一セットの2つ以上の同調サイクルの上昇部分の間に分離される、および/または、(4)インフルエンザの複数の分離株の中からレプリキン濃度の特定されたサイクル内、もしくは特定されたセットの同調サイクル内のピークで分離される。
【0071】
本発明の第7態様の別の非限定的実施形態において、免疫原性組成物は、病原体の感染の予防または処理のためのワクチンである。別の非限定的実施形態は、毒性、罹患率、および/または致死率が増加するか、あるいは病原体の集団が拡大すると予測された病原体の分離株において特定されたレプリキンペプチドに対する抗体を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】1986年から2007年までの分離株についてwww.pubmed.comで入手可能な配列の熱帯熱マラリア原虫のヒスチジンに富むタンパク質における平均年次レプリキン濃度の1986年から2007年の間のサイクルを示している。図1において、レプリキン濃度のサイクルの3つの上昇部分、およびレプリキン濃度のサイクルの2つの低下部分は、1987年および1999年におけるピークを伴って観察可能である。サイクルの第1の上昇部分および低下部分は、1986年から1995年にかけて観察される。サイクルの第2の上昇部分および低下部分は、1996年から2005年にかけて観察される。新しいサイクルが2005年から2007年の間で始まったように見える。第1上昇部分のピークは、1987年に平均年次レプリキンカウントが38.2、および標準偏差が±23.5で、特定された。第2上昇部分のピークは、1999年に段階的にさらに高く、平均年次レプリキンカウントが62.9、および標準偏差が±63.0で、特定された。1987年のピークおよび1999年のピークの双方とも、より高いヒト死亡率に関連していると観察された。1999年のピークに続いて、平均年次レプリキンカウントは、2005年に7.4の低さまで落ち、標準偏差は±6.5であると観察された。同様に死亡率は、2000年から2005年の間に落ちた。新しいマラリアレプリキンサイクルは、観察された平均年次レプリキンカウントが、2005年の7.4±6.5から2007年の17.2±19まで増加しているので、2005年に始まったように見える。新しいサイクルの始まりは、レプリキンカウントが、マラリア死亡率の増加と共に増加し続ける可能性があるという予測を提供する。
【図2】ヒトにおけるマラリアの1000臨床ケース当たりの死亡率が、www.pubmed.comで公的に入手可能な熱帯熱マラリア原虫のATPアーゼ酵素の配列における平均年次レプリキンカウントと概して相関していることを示している。熱帯熱マラリア原虫のATPアーゼの平均年次レプリキンカウントは、1997年および1998年から1999年までのマラリアケース当たりの死亡率の増加と共に、1997年から1998年まで増加した。熱帯熱マラリア原虫のATPアーゼの平均年次レプリキンカウントは、1999年から2005年までの死亡率と共に1998年から2006年まで減少した(一貫した死亡率データは、現在のところ2005年までのみ入手可能であると考慮される)。図2のためのデータは、以下の表6に見出すことができる。図2および図6での死亡率は、世界保健機関により公表されたとおりに表示されている。www.who.intを参照されたい。
【図3】西ナイルウイルス罹患率のサイクルと相関関係にある、西ナイルウイルスの平均年次レプリキンカウントのサイクルを示している。WNVのエンベロープタンパク質の平均年次レプリキンカウント(黒)、および、標準偏差(頭頂部が付いた線)が、疾病管理センター(CDC)により報告された米国内のヒトの年間ケース数(灰色)と比較される。平均年次レプリキンカウントは、www.pubmed.comで公的に入手可能であり2000年から2006年の間に分離された分離株からのエンベロープタンパク質配列において分析された。図3において、エンベロープタンパク質のレプリキンカウントの平均値の標準偏差は、2000年から2001年まで著しく増加していることが観察される(p<0.001)。この変化は、ウイルス集団内の標準偏差が増加しているように(WNVと同じウイルス属ではない)インフルエンザウイルスの全ての一般的な株におけるウイルス大発生に先立つ、レプリキンカウントの範囲の拡大、および、急速な複製の前兆となることが観察された。2000年から2003年までのWNVの平均レプリキンカウントの増加は、CDCによって公表され独立して記録されたヒトWNVケース数の増加と同時に起こるか、またはそれに先立つように見える。平均年次レプリキンカウントおよび記録されたヒトWNVケースの減少が、2003年の後に観察される。2006年に、レプリキンカウントの増加が観察され、その後に2007年のヒトのケース数の増加が続く。結果として、図3は、レプリキン濃度のサイクルにおいて2つの上昇部分および1つの低下部分を、ならびに、WNVヒト罹患率のサイクルにおいて2つの上昇部分および1つの低下部分を示し、第1上昇部分は2000年から2003年まで、第2上昇部分は2004年から2006年/2007年までである。エンベロープタンパク質内の保存されているウイルスレプリキン構造は、図示されているサイクル全体にわたって観察され、レプリキン構造と急速な複製と毒性との間の関係は、時間経過に伴って観察される。
【図4】www.pubmed.comで報告され1999年から2008年の間に分離されたO型口蹄疫ウイルス(FMDV)の全ゲノムのレプリキン濃度のサイクルを示している。データは、O型FMDVの分離株についての年次レプリキンカウント(平均値および標準偏差(SD))が、2つの上昇部分および1つの低下部分を伴って生じたことを証明する。第1上昇部分および第1低下部分は、1999年から2005年の間に観察される。第2上昇部分は、2005年に始まり2008年まで観察される。サイクルは現在のところ、第2の谷がまだ観察できないので不完全である。図4において、平均年次レプリキンカウントは、2001年〜2002年の英国およびオランダにおける深刻なFMDV大発生の前に事前警告信号を(p<0.001で)提供することが観察され、平均年次レプリキンカウントはさらに、2008年〜2009年の中東、アフリカ、インド、およびアジア(中国を含む)における深刻なFMDV大発生の前に事前警告信号を(p<0.001で)提供することが観察される。レプリキンサイクルは、時間経過に伴う、保存されているウイルス構造の繰り返し、およびレプリキン現象の連続性のために、検出可能である。図4のデータは、図4に反映された10年間を通して最も高い平均年次レプリキンカウントは、2007年および2008年に観察されたことを証明する。
【図5】www.pubmed.comで報告され1993年から2008年の間に分離された分離株についてのpB1遺伝子領域からのインフルエンザ配列における平均年次レプリキンカウントのサイクルを示している。図5において、H9N2の分離株のpB1遺伝子領域の平均年次レプリキンカウントが薄い灰色の棒で示され、その上に標準偏差が濃い灰色の棒で示されている。イスラエル国内で報告されたH9N2感染した家禽群の数が、白色の棒で提供されている。データは、2000年から2004年の間のイスラエル国内での家禽群におけるインフルエンザ大発生の増加に対応する平均年次レプリキンカウントの増加を図示している。標準偏差データはさらに、年次H9N2インフルエンザ集団内の拡大するレプリキンカウントの広がりを強調する。
【図6】H9N2およびH5N1インフルエンザ分離株のpB1遺伝子領域の平均年次レプリキンカウントの同調サイクルを示している。データは、www.pubmed.comで報告され1993年から2008年の間に分離された分離株の配列分析を表す。図6において、H9N2についての年次平均レプリキンカウントは薄い灰色の棒で報告され、その上に標準偏差が濃い灰色の棒で報告されている。H5N1についての年次平均レプリキンカウントは黒色の棒で報告され、その上に標準偏差が白色の棒で報告されている。図6は、H9N2のレプリキンサイクルとH5N1のレプリキンサイクルとの間の同調性を明白に図示している。この同調サイクルは、1997年、2002年、2004年、2007年の香港におけるH5N1大発生、ならびに2008年〜2009年のH5N1およびH9N2の現在の大発生を個別および共に予測する。異なる株のサイクルはある水準の同調性に対応するので、個々のサイクルの予測能力は、この対応によって増加される。さらに、H5N1とH9N2との間の相互関係が証明され、ちょうどH5N1が将来のインフルエンザパンデミックの候補であると知られたように、H9N2もそのようなパンデミックの候補となりうると示唆する。
【図7】前世紀の3つのインフルエンザパンデミックにおけるpB1遺伝子領域内の平均年次レプリキンカウントのサイクルを示している。株特異的高レプリキンカウントが、1918年、1957年、および1968年の3つのパンデミックの各々に付随する。各ケースにおいて、第1ピークの後に下降が続き(おそらく宿主の免疫に起因して)、その後、第2の回復ピーク、および「リバウンド」流行が続く。これらの相関関係が偶然によるという確率は非常に低く、これは、これらの相関関係は、各株に特異的で、その世紀のうち3つのパンデミックの年の各々に特異的で、各パンデミック後の下降に特異的で、かつ、各リバウンド流行に特異的であるからである。データは、インフルエンザウイルスにおける平均年次レプリキンカウントのサイクル内のピークに続いて毒性および罹患率の増加の予測を示唆する。死亡をもたらすインフルエンザ株についての毒性および罹患率の増加は、20世紀のパンデミックにおける死亡率の増加と同時に起こった。
【図8A】図7と同じデータを示しているが、個々の年についてのデータをよりよく見るために寸法が拡大されている。図8(A〜C)は、1917年から2007年の間のインフルエンザの大発生に関連するインフルエンザの株におけるレプリキンカウントのサイクルを図示している。データは、1918年以降の各インフルエンザAパンデミックおよび大発生の前ならびにそれらに伴う、レプリキンカウントの増加を図示し、また、インフルエンザA感染の無活動期間の間、および非致死性インフルエンザBにおいて断続的に、低レプリキンカウントを図示している。グラフは、PubMedで公的に入手可能なアミノ酸または核酸の配列を有するインフルエンザ株のpB1遺伝子領域において、コンピューターシミュレーションにより分離された全てのレプリキン・ピーク・ジーンについて1917年〜2007年の年次レプリキンカウントを提供する。(1)1940年から2007年の間の非致死性ヒトインフルエンザBについてのデータ(太い実線)、および(2)1917年から2007年の間のヒトインフルエンザAウイルスの致死性および非致死性期間の双方についてのデータが提供されている。ヒトインフルエンザA株は、(1)H1N1(細い実線)、(2)H2N2(長−短−長の点線)、(3)H3N2(中位の点線)、および(4)H5N1(長い点線)である。ニワトリから分離されたH5N1株が、短い点線で図示されている。データのために分析された配列の総数(N)は、14,227である。列挙されたパンデミック、流行、および大発生は、1918年のH1N1パンデミック、1930年代のH1N1流行、1957年のH2N2パンデミック、1968年のH3N1パンデミック、1977年〜1978年のH3N2大発生、ならびに、2001年〜2004年および2007年のH5N1大発生である。1997年のH5N1の大発生は、図7および図8に示されていない。90年間にわたって、パンデミック、流行、および大発生は、インフルエンザ株のレプリキン・ピーク・ジーン(RPG)において4以上のレプリキンカウントに関連している。同じ期間にわたって、4未満の一定の低レプリキンカウントを、インフルエンザA感染の非致死性の無活動期間において観察することができ、4未満の低レプリキンカウントを、非致死性インフルエンザBにおいて観察することができる。
【図8B】図7と同じデータを示しているが、個々の年についてのデータをよりよく見るために寸法が拡大されている。図8(A〜C)は、1917年から2007年の間のインフルエンザの大発生に関連するインフルエンザの株におけるレプリキンカウントのサイクルを図示している。データは、1918年以降の各インフルエンザAパンデミックおよび大発生の前ならびにそれらに伴う、レプリキンカウントの増加を図示し、また、インフルエンザA感染の無活動期間の間、および非致死性インフルエンザBにおいて断続的に、低レプリキンカウントを図示している。グラフは、PubMedで公的に入手可能なアミノ酸または核酸の配列を有するインフルエンザ株のpB1遺伝子領域において、コンピューターシミュレーションにより分離された全てのレプリキン・ピーク・ジーンについて1917年〜2007年の年次レプリキンカウントを提供する。(1)1940年から2007年の間の非致死性ヒトインフルエンザBについてのデータ(太い実線)、および(2)1917年から2007年の間のヒトインフルエンザAウイルスの致死性および非致死性期間の双方についてのデータが提供されている。ヒトインフルエンザA株は、(1)H1N1(細い実線)、(2)H2N2(長−短−長の点線)、(3)H3N2(中位の点線)、および(4)H5N1(長い点線)である。ニワトリから分離されたH5N1株が、短い点線で図示されている。データのために分析された配列の総数(N)は、14,227である。列挙されたパンデミック、流行、および大発生は、1918年のH1N1パンデミック、1930年代のH1N1流行、1957年のH2N2パンデミック、1968年のH3N1パンデミック、1977年〜1978年のH3N2大発生、ならびに、2001年〜2004年および2007年のH5N1大発生である。1997年のH5N1の大発生は、図7および図8に示されていない。90年間にわたって、パンデミック、流行、および大発生は、インフルエンザ株のレプリキン・ピーク・ジーン(RPG)において4以上のレプリキンカウントに関連している。同じ期間にわたって、4未満の一定の低レプリキンカウントを、インフルエンザA感染の非致死性の無活動期間において観察することができ、4未満の低レプリキンカウントを、非致死性インフルエンザBにおいて観察することができる。
【図8C】図7と同じデータを示しているが、個々の年についてのデータをよりよく見るために寸法が拡大されている。図8(A〜C)は、1917年から2007年の間のインフルエンザの大発生に関連するインフルエンザの株におけるレプリキンカウントのサイクルを図示している。データは、1918年以降の各インフルエンザAパンデミックおよび大発生の前ならびにそれらに伴う、レプリキンカウントの増加を図示し、また、インフルエンザA感染の無活動期間の間、および非致死性インフルエンザBにおいて断続的に、低レプリキンカウントを図示している。グラフは、PubMedで公的に入手可能なアミノ酸または核酸の配列を有するインフルエンザ株のpB1遺伝子領域において、コンピューターシミュレーションにより分離された全てのレプリキン・ピーク・ジーンについて1917年〜2007年の年次レプリキンカウントを提供する。(1)1940年から2007年の間の非致死性ヒトインフルエンザBについてのデータ(太い実線)、および(2)1917年から2007年の間のヒトインフルエンザAウイルスの致死性および非致死性期間の双方についてのデータが提供されている。ヒトインフルエンザA株は、(1)H1N1(細い実線)、(2)H2N2(長−短−長の点線)、(3)H3N2(中位の点線)、および(4)H5N1(長い点線)である。ニワトリから分離されたH5N1株が、短い点線で図示されている。データのために分析された配列の総数(N)は、14,227である。列挙されたパンデミック、流行、および大発生は、1918年のH1N1パンデミック、1930年代のH1N1流行、1957年のH2N2パンデミック、1968年のH3N1パンデミック、1977年〜1978年のH3N2大発生、ならびに、2001年〜2004年および2007年のH5N1大発生である。1997年のH5N1の大発生は、図7および図8に示されていない。90年間にわたって、パンデミック、流行、および大発生は、インフルエンザ株のレプリキン・ピーク・ジーン(RPG)において4以上のレプリキンカウントに関連している。同じ期間にわたって、4未満の一定の低レプリキンカウントを、インフルエンザA感染の非致死性の無活動期間において観察することができ、4未満の低レプリキンカウントを、非致死性インフルエンザBにおいて観察することができる。
【図9】後に低病原性のH5N1ウイルスで攻撃されるニワトリへの、配列ID番号:1〜12のペプチドの混合物を含むワクチンの投与後、保護効果による免疫応答を示している。80羽のニワトリが、ふ化後第1日にそれぞれ20羽のニワトリの4つのグループに分けられた。グループ1は、ワクチン接種も低病原性H5N1ウイルスによる感染も受けない陰性対照であった。グループ2は、ふ化後1日目に鼻腔内に、ふ化後7日目に眼球内に、そしてふ化後14日目に噴霧吸入により、ワクチン接種を受けたワクチン対照であった。グループ2は、低病原性H5N1ウイルスによる感染を受けなかった。グループ3は、グループ2と同じスケジュールでワクチン接種をうけ、低病原性H5N1が28日目にニワトリの口蓋裂に導入された。グループ4は、ワクチン接種されないが、28日目に口蓋裂を通してH5N1により感染された、攻撃された対照であった。7日目、14日目、および21日目に、各グループからの6羽から9羽の間のニワトリが、H5N1ウイルスに対する抗体の血清生成について試験された。血清抗体試験からのデータは、表14に含まれており、図9に図示されている。図9は、グループ3で試験された7羽中1羽(14%)のニワトリ(ワクチン接種しウイルスで攻撃した)のみが、攻撃後7日目に血清中に抗体を生成したことが観察され、一方で、グループ4で試験された7羽中4羽(57%)のニワトリ(ワクチン接種しないが攻撃した)が攻撃後7日目に血清中に抗体を生成したことが観察されたことを図示している。図9はさらに、グループ3で試験された6羽中3羽のニワトリ(50%)(ワクチン接種し攻撃した)のみが、攻撃後14日目に血清中に抗体を生成したことが観察され、一方で、グループ4で試験された9羽中7羽(78%)のニワトリ(ワクチン接種しないが攻撃した)が攻撃後14日目に血清中に抗体を生成したことが観察されたことを図示している。図9はさらに、グループ3で試験された7羽中2羽(29%)のニワトリが攻撃後21日目に血清中に抗体を生成したことが観察され、一方で、グループ4で試験された9羽中3羽(33%)のニワトリが、攻撃後21日目に血清中に抗体を生成したことが観察されたことを図示している。ワクチン対照(グループ2)において、試験された6羽中6羽(100%)のニワトリは、攻撃後14日目に血清中に抗体を生成したことが観察され、一方で、7日目または21日目で血清中に抗体を生成したことが観察された、試験されたニワトリはいなかった。陰性対照(グループ1)において、試験の任意の日においても血清中に抗体を生成したことが観察されたニワトリはいなかった。グループ1、2および3(それぞれ、陰性対照グループ、ワクチン対照グループ、ワクチン/攻撃グループ)のニワトリからの糞便または唾液に排出されたH5N1ウイルスは、PCR検出により観察されなかったこと、ならびに、グループ4(攻撃対照)の全てのニワトリについて、糞便および唾液に排出されたH5N1ウイルスがPCR検出により観察されたことを証明する、実施例10で提供されたデータと組み合わせて、当業者は、ワクチン接種されたグループ(グループ2および3)のニワトリは、ワクチンに対して免疫応答を引き起こし、ワクチン接種され攻撃されたグループ(グループ3)のニワトリは、ふ化に続く28日目に低病原性H5N1攻撃からのある程度の保護が提供されたと、結論付ける。
【発明を実施するための形態】
【0073】
〔定義〕
本明細書に使用される、「レプリキンサイクル」または「レプリキン濃度のサイクル」または「レプリキンカウントのサイクル」は、ウイルスまたは有機体のある種の複数の分離株のレプリキン濃度を意味し、ここで前記複数の分離株のうちの少なくとも4つは、連続する時点で、または、連続する期間に分離され、ここで第2時点もしくは第2期間における第2の個々の分離株、または複数の分離株の第2平均値の、レプリキン濃度は、第1時点もしくは第1期間における第1の個々の分離株、または複数の分離株の第1平均値の、レプリキン濃度よりも高く、第3時点もしくは第3期間における第3の個々の分離株、または複数の分離株の第3平均値の、レプリキン濃度は、第2時点もしくは第2期間におけるレプリキン濃度よりも低く、また、第4時点もしくは第4期間における第4の個々の分離株、または複数の分離株の第4平均値の、レプリキン濃度は、第3時点もしくは第3期間におけるレプリキン濃度よりも高い;あるいは、第2時点もしくは第2期間における第2の個々の分離株、または複数の分離株の第2平均値の、レプリキン濃度は、第1時点もしくは第1期間における第1の個々の分離株、または複数の分離株の第1平均値の、レプリキン濃度よりも低く、第3時点もしくは第3期間における第3の個々の分離株、または複数の分離株の第3平均値の、レプリキン濃度は、第2時点もしくは第2期間におけるレプリキン濃度よりも高く、また、第4時点もしくは第4期間における第4の個々の分離株、または複数の分離株の第4平均値の、レプリキン濃度は、第3時点もしくは第3期間におけるレプリキン濃度よりも低い。レプリキンサイクル、レプリキン濃度のサイクル、またはレプリキンカウントのサイクル内で、第2時点もしくは第2期間は、第1時点もしくは第1期間よりも後の適時でなければならず、第3時点もしくは第3期間は、第2時点もしくは第2期間よりも後の適時でなければならず、かつ、第4時点もしくは第4期間は、第3時点もしくは第3期間より後の適時でなければならない。レプリキンサイクル内で、任意の上昇部分は、集団の拡大、あるいは、宿主における病原体の毒性、罹患率、および/または、死亡率の増加を予測するものであり、また、任意の低下部分は、収縮している集団、あるいは、宿主における病原体の毒性、罹患率、および/または、死亡率の低下を予測するものである。サイクルは、予測が完全である必要ではなく、後に上昇部分が続く低下部分は、拡大する集団、あるいは、毒性、罹患率、および/または死亡率の増加を予測するものである。同様に、後に上昇部分が続く低下部分が続く上昇部分は、拡大する集団、あるいは、毒性、罹患率、および/または死亡率の増加を予測するものである。したがって、サイクルは、宿主における病原体の拡大または収縮(あるいは毒性、罹患率、および/または死亡率の変化)について予測する能力を提供するために完全サイクルである必要はない。
【0074】
本明細書に使用される、「段階的な(step-wise)」サイクルは、任意のセットのサイクルであり、適時の第1のレプリキンサイクルのピークは、適時の第2のレプリキンサイクルのピークよりも低いか、あるいは、適時の第1のレプリキンサイクルのピークは、適時の第2のレプリキンサイクルのピークよりも高い。段階的なサイクルはまた、連続するピークがより下方へ移動することが観察されるときに起こる。段階的なサイクルはまた、連続する谷がより上方またはより下方へ移動する場合に観察されうる。段階的なサイクルは、集団の拡大または収縮を予測するための追加的な予測能力を提供する。
【0075】
本明細書に使用される、「同調的な」、つまり別のレプリキンサイクルと、「同調性」または任意の他の関連する語を共有するレプリキンサイクルは、サイクルのある期間、相、または部分と類似している、期間もしくは相を有するサイクル、またはサイクルの任意の部分を意味し、ここで前記類似性は、視覚的、数学的、統計的、または当業者に知られているもしくは以下で知られる任意の他の方法により決定されうる。同調サイクルは必ずしも、厳密に同時に発生または起こる部分を共有するわけではない。関連する病原体の同調サイクルは、時には互いからある程度の時間だけずれるであろうし、どちらか一方のサイクルの任意の部分において適時互いからずれる可能性もある。サイクルのいくつかの部分の間に類似性が存在する場合、レプリキンサイクルの一部分は、適時別のレプリキンサイクルと「対応する」。任意の対応は、厳密である必要はない。
【0076】
本明細書において使用される、レプリキンサイクルの「上昇部分」は、一分離株のレプリキン濃度、または複数の分離株の平均レプリキン濃度を意味し、ここで1または複数の分離株は、レプリキンサイクルのレプリキン濃度の傾きが少なくとも第1時点または第1期間から少なくとも第2時点または第2期間まで増加しているレプリキンサイクルのある時点または期間において分離された。追加的に、上昇部分は、ピークを含むことができる。
【0077】
本明細書において使用される、レプリキンサイクルの「低下部分」は、上昇部分の反対を意味し、ここで低下部分は、谷を含むことができる。
【0078】
本明細書において使用される、レプリキンサイクルの「ピーク」は、レプリキンサイクル内の第2時点または第2期間を意味し、ここで第2時点または第2期間に連続して先行する第1時点または第1期間におけるレプリキン濃度は、第2時点または第2期間におけるレプリキン濃度よりも低く、第2時点または第2期間の後に連続して続く第3時点または第3期間におけるレプリキン濃度は、第2時点または第2期間におけるレプリキン濃度よりも低い。当業者は、生物系の可変性のため、ピークは、厳密な時点または期間よりもむしろ、連続して先行する領域よりも概して高く、かつ、後に連続して続く領域よりも概して高い、サイクルの大体の領域を含むことができることを理解するであろう。
【0079】
本明細書において使用される、レプリキンサイクルの「谷」は、レプリキンサイクルのピークの反対を意味する。
【0080】
本明細書において使用される、「レプリキンカウントウイルス拡大指標」すなわち「RCVE指標」、または「レプリキンカウント拡大指標」すなわち「RCE指標」は、第2期間に第2地理的領域で分離された複数の分離株のレプリキンカウントの平均値の1標準偏差よりも小さい、第1期間および/または第1地理的領域からの複数の分離株のレプリキンカウント数で割った、前記第2期間および前記第2地理的領域において分離された複数の分離株のレプリキンカウントの平均値の1標準偏差よりも大きい、前記第1期間および/または前記第1地理的領域からの前記複数の分離株のレプリキンカウント数である。RCEまたはRCVE指標は、RCEまたはRCVE指標の比が1よりも大きい場合に、特定の領域および/または期間における病原体の拡大を予測する。RCEまたはRCVE指標は、RCEまたはRCVE指標の比が1よりも小さい場合に、特定の領域および/または期間における病原体の収縮、退縮、縮小、または減退を予測する。RCEまたはRCVE指標は、RCVE指標の比が1と等しい場合に、病原体集団における拡大と収縮との間の平衡を予測する。
【0081】
本明細書において使用される、「関連する病原体」は、第2病原体と同じ種、属、または科である第1病原体を意味し、この関係は、当業者によって現在知られているか、または将来的に知られる。関連する病原体は、第2病原体と同じ種であるが第2病原体とは異なる菌株である第1病原体であってもよい。関連する病原体は、第2病原体と同じまたは異なる種であり、かつ、第2病原体と宿主、保有宿主、またはベクターを共有する、第1病原体であってもよい。第1病原体が第2病原体と同じ種、属、または科でないとしても、第1病原体が第2病原体のレプリキンサイクルと同調的なレプリキンサイクルを有する場合、第1病原体は、第2病原体と関連する。当業者は、第1病原体が第2病原体と関連する可能性がある多くの観点を認識するであろう。関連する病原体は、第1病原体と同じ科内であってもよい。関連する病原体は、第1病原体と同じ属内であってもよい。関連する病原体は、第1病原体と同じ種内であってもよい。関連する病原体は、第1病原体と同じ菌株内であってもよい。
【0082】
本明細書において使用される、異なる「期間」または異なる「時点」は、互いから差別化することができる任意の2つの期間または時点である。例えば、2004年の間に分離された有機体またはウイルスの分離株は、2005年の間に分離された同じ有機体またはウイルスの分離株とは異なる期間に分離されたとみなされうる。同様に、2004年5月に分離された有機体またはウイルスの分離株は、2004年6月に分離された同じ有機体またはウイルスの分離株とは異なる期間に分離されたとみなされうる。異なる分離株のレプリキン濃度を比較する場合、比較に適した期間を使用することができる。例えば、2004年からの分離株は、2002年または2005年などの他の年からの少なくとも1つの他の分離株と比較されうる。同様に、2004年5月からの分離株は、ある年の他の月からの少なくとも1つの分離株、例えば、2003年12月から分離株または2004年6月からの分離株と、比較されうる。
【0083】
本明細書において使用される、「分離株」は、天然源から分離された任意のウイルスまたは有機体であり、天然源は、有機体もしくはウイルスの保有宿主、有機体もしくはウイルスのベクター、または、有機体もしくはウイルスの宿主を含むが、これらに限定されない。分離株を「取得すること」、「分離すること」、または「特定すること」は、分離株内のアミノ酸または核酸配列が取得される任意の行為であり、これは、分離株を分離してその分離株のゲノムもしくタンパク質配列の任意部分の配列を決定すること、PubMedなどのデータベースを含む任意の媒体から分離株の任意の核酸配列またはアミノ酸配列を取得することであって、この核酸配列またはアミノ酸配列はレプリキン濃度について分析されてよい、取得すること、あるいは、ある時点もしくはある期間内において天然源から分離されたウイルスのレプリキン濃度を取得する任意の他の手段を含むが、これらに限定されない。
【0084】
本明細書において使用される、「より初期に発生する」ウイルスもしくは有機体、または、「より初期の時点」に、もしくは「より初期の期間」の間に分離されたウイルスもしくは有機体は、ウイルスもしくは有機体の別の標本が天然源から収集された日付よりも前の日付に、ウイルスもしくは有機体の天然源から収集されたウイルスもしくは有機体の標本である。「より後期に発生する」ウイルスもしくは有機体、または、「より後期の時点」に、もしくは「より後期の期間」の間に分離されたウイルスもしくは有機体は、ウイルスもしくは有機体の別の標本が天然源から収集された日付の後の日付に、ウイルスの天然源(保有宿主、ベクター、もしくは宿主を含むが、これらに限定されない)、または、有機体の天然源から収集されたウイルスもしくは有機体の標本である。
【0085】
本明細書において使用される、病原体の「次の毒性シーズン」は、病原体の罹患率の増加が、夏から冬への変化または雨季から乾季への変化などシーズンの変化に基づいて予想される期間であり、この病原体は、罹患率の増加が起こると予想される期間より前の、先の連続する期間において、より低い罹患率を経験していた。
【0086】
本明細書において使用される、マラリアに関する用語「乾季」または「冬季」は、蚊の活動(摂食および繁殖を含む)がその年の他の時よりも著しく少ない、任意の地理的領域におけるシーズンを説明するものである。乾季前または冬季前のレプリキンサイクルのピークは、蚊の活動が最も盛んな次に続く雨季または夏季における、マラリアの毒性、罹患率、および/または死亡率の増加を予測する。
【0087】
本明細書において使用される、単数形または複数形の「マラリアを引き起こすトリパノソーマ」、「マラリア・トリパノソーマ」、または「トリパノソーマ」は、任意のマラリア原虫の種、または、マラリアを引き起こすと知られている、もしくは将来的に知られる他の種を意味する。マラリア・トリパノソーマは、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、および、四日熱マラリア原虫を含むが、これらに限定されない。
【0088】
本明細書において使用される、「レプリキン・ピーク・ジーン(Replikin Peak Gene)(RPG)」(または時にはレプリキン・ピーク・ジーン領域−RPGA)は、発現した遺伝子または遺伝子セグメントが、ゲノムの他のセグメントまたは命名された遺伝子と比較した場合、連続的で中断されておらず重複しているレプリキン配列(100アミノ酸当たりのレプリキン配列の数)の最も高い濃度を有する、ゲノムのセグメント、タンパク質、タンパク質セグメント、または、タンパク質断片を意味する。一般的に、連続的レプリキン配列の最も高い濃度を有するアミノ酸部分を含む、タンパク質全体または遺伝子または遺伝子セグメントもまた、レプリキン・ピーク・ジーンと呼ばれる。1を超えるRPGが、遺伝子、遺伝子セグメント、タンパク質、またはタンパク質断片内で特定されうる。RPGは、末端リシンもしくは末端ヒスチジン、2つの末端リシン、または、末端リシンおよび末端ヒスチジンを有することができる。診断目的、治療目的、または予防目的のために、RPGは、末端リシンもしくは末端ヒスチジン、2つの末端リシン、または、末端リシンおよび末端ヒスチジンを有することができ、あるいは同様に、RPGは、RPGの末端部分が、レプリキン配列の定義により定義された1または複数のレプリキン配列を、すなわち、
(1)第2リシン残基から6〜10アミノ酸残基のところに位置する少なくとも1つのリシン残基、
(2)少なくとも1つのヒスチジン残基、および、
(3)少なくとも6%のリシン残基、
を含む約7〜約50のアミノ酸を有するアミノ酸配列を、含有する限り、末端リシンも末端ヒスチジンも有しなくてもよい。さらに、診断目的、治療目的、予防目的、および予測目的のために、RPGは、特定されたRPGを含有するタンパク質またはタンパク質断片を含むこともできる。予測目的のために、RPGのレプリキンカウントは、毒性および致死性の変化を追跡するために使用されうる。同様に、RPGは、免疫原性化合物またはワクチンとして使用されうる。RPGを含有するタンパク質全体またはタンパク質断片は同様に、例えば免疫原性化合物、ワクチン中に含まれるよう、ならびに、治療用抗体または診断用抗体の生産のためなど、診断目的、治療目的、および予防目的のために有用である。
【0089】
本明細書において使用される、「レプリキン配列」は、レプリキンモチーフを含む、またはレプリキンモチーフからなる7〜約50のアミノ酸のアミノ酸配列であり、ここでレプリキンモチーフは、
(1)前記分離されたペプチドの第1末端に位置する少なくとも1つのリシン残基、および前記分離されたペプチドの第2末端に位置する少なくとも1つのリシン残基または少なくとも1つのヒスチジン残基、
(2)第2リシン残基から6〜10残基のところに位置する第1リシン残基、
(3)少なくとも1つのヒスチジン残基、ならびに、
(4)少なくとも6%のリシン残基、を含む。
レプリキン濃度を決定する目的のために、レプリキン配列は、一末端にリシン残基を、もう一方の末端にリシンまたはヒスチジン残基を有しなければならない。診断目的、治療目的、および予防目的のために、レプリキン配列は、定められた末端を有してもよいし、有しなくてもよい。
【0090】
用語「レプリキン配列」は、
(1)第2リシン残基から6〜10のアミノ酸残基のところに位置する少なくとも1つのリシン残基、
(2)少なくとも1つのヒスチジン残基、および、
(3)少なくとも6%のリシン残基、
を含む約7〜約50のアミノ酸を有するアミノ酸配列をコード化する核酸配列に言及することもでき、ここでアミノ酸配列は末端リシンを含むこともでき、さらに、アミノ酸配列は末端リシンまたは末端ヒスチジンを含むこともできる。
【0091】
本明細書において使用される、用語「ペプチド」または「タンパク質」は、一アミノ酸のカルボキシル基がペプチド結合により別のアミノ酸のアミノ基に結合している、2つ以上のアミノ酸の化合物に言及する。本明細書において使用される、「分離された」もしくは「合成された」ペプチド、またはその生物活性部分は、精製後、ペプチドが由来する細胞源もしくは組織源からの細胞物質または他の夾雑タンパク質もしくはペプチドを実質的に含まないペプチド、あるいは、任意の方法によって化学的に合成された場合に化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まないペプチド、あるいは、組換え遺伝子技術によって合成された場合に夾雑ペプチドを実質的に含まないペプチド、あるいは、公的または民間のデータベースまたは配列収集により入手可能な核酸またはアミノ酸配列からコンピューターシミュレーションにより分離されたタンパク質またはペプチドに言及する。「コード化された」もしくは「発現された」タンパク質、タンパク質配列、タンパク質断片配列、またはペプチド配列は、当業者に現在または将来的に知られる任意のコドンでタンパク質もしくはペプチド配列のアミノ酸をコード化する核酸配列によりコード化された配列である。遺伝暗号の冗長性に起因して、個々のヌクレオチドが容易にコドン内で交換されて、依然として同一のアミノ酸配列をもたらすことができるということは当業界において周知であることが注目されるべきである。当業者によって理解されるように、レプリキンアミノ酸配列を特定する方法はまた、レプリキンアミノ酸配列をコード化する核酸配列を特定する方法を含み、ここでレプリキンアミノ酸配列は、特定された核酸配列によってコード化される。
【0092】
本明細書において使用される、「大発生」は、病原性疾患の感染のより初期に起きた疫学的パターンの基準と比較して、同じ疾患の毒性、罹患率および/または死亡率の増加、あるいは、病原体の集団の拡大のことである。当業者には、疫学的基準を決定するための方法が分かるであろう。
【0093】
本明細書において使用される、「罹患率」は、過去のゼロのケースを超えて、または、過去の固有ケースの基準を超えて、ウイルスにより引き起こされた疾患のケース数である。したがって、固有ケースの基準は、疫学的用語では、例えば、いくつかのケースが、ごく最近のある地理的領域において存在したか、あるいはこのケースは全く存在しなかったかどうかに関連しうる。過去は、疫学的用語では、1年を超えることを意味してもよく、当業者によって理解されるように数年以上を意味することができる。過去はまた、当業者によって決定されるように1年未満を意味してもよい。例えば、毎年再発する一般的なインフルエンザ、ならびに季節性のマラリアおよび西ナイルウイルスのケースにおいて、この基準はしばしば、これらの疾患の年次再発、または拡大および縮小を反映する。
【0094】
本発明において使用される、病原体または病原体の集団の「拡大」、および、病原体または病原体の集団を「拡大すること」は、病原体(例えば、熱帯熱マラリア原虫の株、インフルエンザウイルスの株など)の毒性、罹患率、および/または致死率の増加、ならびに/あるいは病原体(例えば、熱帯熱マラリア原虫の株、インフルエンザウイルスの株など)の集団の拡大を意味し、ここで前記拡大は、所与の地理的領域における、または、所与の期間における、または、その双方におけるこの病原体の発生の増加、あるいは、この病原体発生の別の地理的領域への蔓延を含む。
【0095】
本明細書において使用される、「毒性」の増加または減少は、インフルエンザウイルスなどの病原体の毒性、罹患率、致死率、宿主の死亡率、および/または拡大の、増加または減少を含む。
【0096】
本明細書において使用される、「地理的領域」または同様の用語は、別の地域から空間により差別化される地域である。例えば、中国は、インドの地理的領域から差別化されうる地理的領域である。同様に、地理的領域は、町、または市、または大陸、または別の地域から差別可能な任意の地域でありうる。地理的領域は、所与の期間からの1または複数の分離株が、地球全体のいたるところの別の期間からの分離株と比較され、地理的差別化が比較のために行われない場合、地球全体を含むことができる。
【0097】
本明細書において使用される、「保存されている」または「保存」は、代替の欠乏に起因する、特定アミノ酸の保存に言及する。
【0098】
本明細書において使用される、「レプリキンカウント」または「レプリキン濃度」は、タンパク質、タンパク質断片、ウイルス、または有機体中の、100アミノ酸当たりのレプリキン配列数に言及する。ウイルスまたは有機体の第1株における、より高いレプリキン濃度は、より低いレプリキン濃度を有するウイルスまたは有機体のより初期に発生した、あるいは、より後期に発生した第2株と比較して、第1ウイルスまたは有機体のより急速な複製と相関すると見出された。レプリキン濃度は、所与の配列におけるレプリキン配列数を計数することによって決定され、ここでレプリキン配列は、一端にリシン残基および他端にリシン残基またはヒスチジン残基を有する7〜約50のアミノ酸残基のペプチドであり、このペプチドは、(1)別のリシン残基から6〜10残基のリシン残基、(2)ヒスチジン残基、および(3)6%以上のリシン残基を含む、あるいは、レプリキン配列は、レプリキンペプチド配列をコード化する核酸である。
【0099】
本願明細書において使用される、用語「連続的レプリキン配列」は、重複された、および/または、直接共有結合された、一連の2つ以上のレプリキン配列を意味する。
【0100】
〔病原体におけるレプリキンサイクル〕
本発明は、同じ病原体の別の株と比較して、病原体の株の拡大、あるいは病原体の株の毒性、罹患率および/または致死率の増加を予測すること、ならびに、予測された病原体の大発生を緩和するか、予防するか、または処理するために、病原体の構造またはゲノムの分離または合成された部分を含む化合物を、動物または患者に投与することによって、病原体の大発生を予防し、緩和して、処理する方法を提供する。本発明はさらに、病原体の拡大する集団、あるいは病原体の毒性、罹患率、および/または死亡率の増加を予測する方法であって、病原体のタンパク質断片、タンパク質、ゲノム断片、またはゲノムにおけるレプリキンカウントのサイクルを特定することと、レプリキンカウントの特定されたサイクル内における、病原体の集団の拡大、ならびに病原体の毒性、罹患率、および/または死亡率の増加を予測することと、を含む方法を提供する。
【0101】
同じ種の別の病原体の毒性、罹患率、および/または死亡率と比べて病原体の毒性、罹患率、および/または死亡率の増加は、病原体のレプリキン配列の濃度における1または複数のサイクルのピークを特定すること、ならびに、病原体の集団の拡大、あるいは、ピークの後に分離された同じ種または関連する種の病原体の毒素、罹患率、および/または死亡率の増加を予測することによって、予測されうる。レプリキンサイクルは、連続する時に分離されたウイルスまたは有機体のある種の少なくとも4つの分離株で特定されたレプリキン配列の濃度におけるサイクルであり、(1)第1適時分離株の濃度は、第2適時分離株の濃度よりも高く、第3適時分離株の濃度は、第2適時分離株の濃度よりも高く、かつ、第4適時分離株の濃度は、第3適時分離株の濃度よりも低い、または、(2)第1適時分離株の濃度は、第2適時分離株の濃度よりも低く、第3適時分離株の濃度は、第2適時分離株の濃度よりも低く、かつ、第4適時分離株の濃度は、第3適時分離株の濃度よりも高い。レプリキンサイクル内で、病原体の毒性、罹患率、および/または死亡率の増加は、サイクルの上昇部分の間、またはサイクルのピークの後に、生じる病原体に対して予測されうる。拡大する集団は、ある領域における集団の増加、または、ある領域から別の領域への拡大を表すことができる。レプリキンサイクルを決定することにおいて、レプリキンカウントは、個々の分離株、あるいは、所与の領域および/または所与の期間からの分離株の群の平均レプリキンカウントを表すことができる。
【0102】
さらなる非限定的実施形態において、段階的なサイクルは、連続する時点の間で特定されうる。さらなる実施形態において、特異的な保存されているレプリキン配列は、段階的なサイクル内で特定される。
【0103】
病原体の毒性、罹患率、または死亡率の増加は、任意の病原体または感染病原体において本発明の方法を使用して決定され得、レプリキンの濃度は、その病原体からのゲノム、ゲノム断片、別の核酸配列、タンパク質、タンパク質断片、または他のアミノ酸配列において決定され得る。病原体は、マラリア、西ナイルウイルス、口蹄疫ウイルス、ブタ・サーコウイルス、ブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルス、タウラ症候群ウイルス、ホワイトスポット症候群ウイルス、トマト縮葉病ウイルス、炭疽菌、天然痘ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、シンドビスウイルス、肝炎ウイルス、ブドウ球菌、レジオネラ属、ヒト乳頭腫ウイルス、ヘリコバクター、酢酸菌、アエロバクター、ブレビバクテリウム(Brivebacterium)、クロストリジウム、Erinia、Esheria、クレブシエラ(Klebsiealla)、Maemophilus、マイコプラズマ、シュードモナス(Psuedomonas)、サルモネラ、カンジダ、エントアメーバ、または、ウイルス、バクテリア、原生生物、真菌もしくは他の感染病原体を含む、任意の他の種類の感染病原体であってもよい。
【0104】
毒性、罹患率もしくは死亡率が増加すると予測された病原体の株において特定された、任意のレプリキン配列、レプリキン・ピーク・ジーン、またはレプリキン配列もしくはレプリキン・ピーク・ジーンを含有するタンパク質断片は、予測されたこの病原体の大発生を緩和するために診断用薬、治療薬もしくは予防薬として、分離および/または合成されうる。
【0105】
トリパノソーマのレプリキン濃度のサイクル、すなわち「レプリキンサイクル」を、図1に見ることができる。西ナイルウイルス、口蹄疫ウイルス、およびインフルエンザウイルスにおけるレプリキン濃度のサイクルは、それぞれ図3〜図6に見ることができる。レプリキンサイクルは、最初に、少なくとも4つの時点または期間からの少なくとも4つの分離株または分離株の群を分離することによって特定され、例えば、一分離株または一群の分離株は、1999年、2001年、2002年および2004年に取得されうるか、あるいは、所与の年の1月、5月、9月および12月に取得されうる。分離株は、4つよりも多い時点または期間から取得され得、レプリキンサイクルの精度は概して、時点または期間ごとの分離株数の増加、および、時点または期間の数の増加によって改善されるであろう。各分離株のゲノムまたは発現されたタンパク質のレプリキンカウントが決定される。レプリキンカウントは、分離株の各々の、レプリキン・ピーク・ジーンにおいて、ゲノム全体において、特定遺伝子もしくは遺伝子セグメントにおいて、または特定のタンパク質もしくはタンパク質断片において、決定されうる。所与の時点または所与の期間についての平均レプリキンカウントは、複数の分離株がこの所与の時点または所与の期間の間に取得された場合に決定される。レプリキンカウントはその後、単位時間ごとに分析されうる。レプリキン濃度のサイクルは、4つの時点または期間により特定され、第2時点または第2期間でのレプリキンカウントは、第1時点または第1期間におけるよりも高く、第3時点または第3期間でのレプリキンカウントは、第2時点または第2期間におけるよりも低く、かつ、第4時点または第4期間でのレプリキンカウントは、第3時点または第3期間におけるよりも高い;あるいは、第2時点または第2期間でのレプリキンカウントは、第1時点または第1期間におけるよりも低く、第3時点または第3期間でのレプリキンカウントは、第2時点または第2期間におけるよりも高く、かつ、第4時点または第4期間でのレプリキンカウントは、第3時点または第3期間におけるよりも低い。
【0106】
レプリキンサイクルのピークは、レプリキンサイクル内の第2時点または第2期間でのサイクル内で特定され、ここで第2時点または第2期間に連続して先行する第1時点または第1期間でのレプリキン濃度は、第2時点または第2期間でのレプリキン濃度よりも低く、かつ、第2時点または第2期間の後に連続して続く第3時点または第3期間でのレプリキン濃度は、第2時点または第2期間でのレプリキン濃度よりも低い。当業者は、生物系の可変性のため、ピークは、厳密な時点または期間よりもむしろ、連続して先行する領域よりも概して高く、かつ、後に連続して続く領域よりも概して高い、サイクルの大体の領域を含むことができることを理解するであろう。
【0107】
レプリキンサイクルの谷は、レプリキンサイクル内の第2時点または第2期間でのサイクル内で特定され、ここで第2時点または第2期間に連続して先行する第1時点または第1期間でのレプリキン濃度は、第2時点または第2期間でのレプリキン濃度よりも高く、かつ、第2時点または第2期間の後に連続して続く第3時点または第3期間でのレプリキン濃度は、第2時点または第2期間でのレプリキン濃度よりも高い。ここでもまた、当業者は、谷が、厳密な時点または期間よりもむしろ、連続して先行する領域よりも概して低く、かつ、後に連続して続く領域よりも概して低い、サイクルの大体の領域として特定されうることを認識するであろう。
【0108】
レプリキンサイクルのピークで特定された本発明のレプリキンペプチドは、ピークの厳密な点の前および後を含むレプリキンサイクルのピークまたはその近傍で特定されたレプリキンペプチドを含む。レプリキンサイクルの上昇部分は、レプリキンサイクルのレプリキン濃度の傾きが、少なくとも第1時点または第1期間から少なくとも第2時点または第2期間まで増加している任意の点であり、ピークを含むことができる。図1〜図8に見られるように、毒性、罹患率、または死亡率の増加は、レプリキンサイクルの上昇部分またはピークに続いて予測されうる。
【0109】
過去において、病原体の大発生はレプリキンカウントの増加と相関し、病原体集団の収縮は、レプリキンカウントの減少と相関するということが理解されていた。しかしながら、罹患率、死亡率、毒性、または集団拡大のサイクルが、レプリキンカウントのサイクルと直接相関されうるこうことは理解されていなかった。本願に提示された新しいデータにより、ピーク〜谷〜ピーク〜谷、および/または、谷〜ピーク〜谷〜ピークの、レプリキンサイクル全体は、毒性、罹患率、死亡率、および、新しい領域もしくは宿主への拡大の、病原性サイクルと相関することを、当業者はここで理解するであろうし、このことは本発明により意図されている。したがって、本発明はここで、レプリキン濃度の変化を監視することによって、病原体の毒性が増加するか、病原体の集団がある領域内でまたはある領域内へ拡大するか、あるいは、病原体の罹患率もしくは死亡率が増加するような病原体の軌道を追跡し予測する方法を提供する。過去において、病原体の毒性が増加するか、病原体の集団が領域内でまたはある領域内へ拡大するか、あるいは、病原体の罹患率または死亡率が増加するような病原体の進路を予測するか、または追跡することは、ある事象の何ヶ月も後になるまで可能ではなく、疫学的データは、事後に収集され分析された。レプリキン分析は、大発生の何ヶ月か前または大発生のまさに始まりにおいて、集団の拡大、ならびに、毒性、罹患率、および死亡率の増加についての情報を当業者に提供する。この情報は、特異的ワクチンの試験および投与を含む公衆衛生反応を組織化するために必要とされるときに明らかに重要である。病原体大発生に関する事前情報の重要性は、気象衛星からの情報が入手可能となったことによるハリケーンの事前警告の結果もたらされた人命および財産の救済との類比で説明されうる。
【0110】
例えば、図3において、本願は、相関することが観察されるレプリキン濃度のサイクル、および、西ナイルウイルス・ヒト罹患率のサイクルを証明するデータを提供する。過去において、レプリキンカウントデータが時間とともに低から高に変動することが理解されていた。このことは、H1N1およびH3N2インフルエンザ株についての20世紀のデータに見ることができる。図7および図8を参照されたい。しかしピークから谷への、および/または、谷からピークへのサイクルの相関は、より初期のデータでは部分的に可能ではなかった。これは、特定のH1N1株またはH3N2株に起因して実際のケース数の疫学的データの全て、およびゲノム配列データの全てが、入手可能でなく、あるいは記録されなかったからである。その代わりに、図7および図8に見ることができるように、レプリキンカウントに関連している20世紀初頭および20世紀半ばにおけるH1N1またはH3N2の罹患率についてのデータのみが、流行またはパンデミックの記録であった。ここで図3に(図1、図4、図5、および図6にも)示されているように、レプリキンカウントのサイクルは、時間にともなう罹患率のサイクルと相関し、時には1を超えるサイクルにわたって相関する。
【0111】
〔病原体の集団についての拡大指標〕
本発明はまた、(1)第1期間の間、第1地理的領域において病原体の株の複数の分離株について、平均レプリキンカウントおよびその平均レプリキンカウントの標準偏差を決定すること、(2)第2期間および/または第2地理的領域からの病原体の同じ株または関連する株の少なくとも1つの分離株のレプリキンカウントを決定することであって、ここで第2期間は第1期間とは異なり、および/または、第2地理的領域は第1地理的領域とは異なる、決定すること、ならびに(3)その少なくとも1つの分離株のレプリキンカウントが、第1期間に第1地理的領域で分離された複数の分離株のレプリキンカウントの平均値の1標準偏差よりも大きい場合に、第2期間および/または第2地理的領域において分離された病原体の株の拡大を予測すること、によって病原体の株の拡大を予測する方法を提供する。
【0112】
前述された方法において、第2期間および/または第2地理的領域からの病原体の同じ株または関連する株の少なくとも1つの分離株は、第2期間および/または第2地理的領域からの複数の分離株であってもよい。この場合において、第2期間および/または第2地理的領域からのこの複数の分離株の各分離株のレプリキンカウントは、平均値の1標準偏差と別個に比較される。第2期間および/または第2地理的領域において分離された病原体の拡大はまた、平均値の1標準偏差よりも大きい、第2期間および/または第2地理的領域からの複数の分離株のレプリキンカウント数が、平均値の1標準偏差よりも小さい、第2期間および/または第2地理的領域からの前記複数の分離株のレプリキンカウント数よりも大きい場合に、予測されうる。
【0113】
この方法はまた、平均値の1標準偏差よりも大きいレプリキンカウント数を、平均値の1標準偏差よりも小さいレプリキンカウント数で割った比を利用することもできる。この比は、レプリキンカウント拡大指標(RCE指標)と呼ばれる。RCE指標を決定する別の方法は、平均値の1標準偏差よりも高い、時間および/または領域により分類されたインフルエンザウイルスの複数の分離株におけるレプリキンカウント割合を、平均値の1標準偏差よりも低いレプリキンカウント割合で割ることである。RCE指標は、長い時間にわたって病原体の株のレプリキンカウントを追跡することによって病原体大発生の将来の危険性を定量化するため使用されうる。
【0114】
RCE指標を決定することにおいて、第1期間および第1地理的領域からの複数の分離株の平均レプリキンカウントは、対照としてみなされうる。対照集団は好ましくは、分離株のレプリキンカウントにおいて比較的小さい変動性を有する、比較的多数の分離株を有するが、対照と関連する1または複数の分離株との間の比較が望ましい場合に、任意の集団が、対照と判断されうる。対照は、研究されている集団と関連していてよい。例えば、ハクチョウなどの鳥類における感染が研究されている場合、対照は、ニワトリなどの近縁関係にあるものであってよく、ニワトリからの分離株は(入手可能な場合に)比較的多く、(可能な場合に)比較的安定であり得、集団にわたるレプリキンカウントの安定性は、ニワトリにおけるインフルエンザウイルスの株または関連する株の拡大と収縮との間の、あるレベルの平衡を証明する。対照は、ある地理的領域で1年間または数年間に報告された最高分離株数を反映することができる。
【0115】
病原体の株の拡大は、任意の病原体または感染病原体において本発明の方法を使用して決定され得、レプリキンの濃度は、この病原体からのゲノム、ゲノム断片、別の核酸配列、タンパク質、タンパク質断片、または他のアミノ酸配列において決定されうる。病原体は、マラリア、西ナイルウイルス、口蹄疫ウイルス、インフルエンザウイルス、ブタ・サーコウイルス、ブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルス、タウラ症候群ウイルス、ホワイトスポット症候群ウイルス、トマト縮葉病ウイルス、炭疽菌、天然痘ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、シンドビスウイルス、肝炎ウイルス、ブドウ球菌、レジオネラ属、または、ウイルス、バクテリア、原生生物、真菌もしくは他の感染病原体を含む、任意の他の種類の感染病原体であってもよい。
【0116】
任意のレプリキン配列、レプリキン・ピーク・ジーン、あるいは、毒性、罹患率または死亡率が増加すると予測される病原体の株において特定されたレプリキン配列またはレプリキン・ピーク・ジーンを含有するタンパク質断片は、病原体の予測された大発生を緩和するために、診断用薬、治療薬、または予防薬として分離および/または合成されうる。
【0117】
〔レプリキンサイクルで特定されたレプリキンペプチドを使用する診断および治療〕
本発明はさらに、診断目的、治療目的、または予防目的のために(ワクチンおよび他の医薬品の合成など)、レプリキン配列(核酸配列およびペプチド配列を含む)を特定する機会を提供する。本発明は、例えば、病原体内で特定されるレプリキンペプチドを企図し、この病原体は、本発明の予測方法に基づいて、拡大する集団、あるいは、同じ種または関連する種の別の病原体よりも高い毒性、罹患率および/または死亡率を有すると予測される。病原体の分離株において特定されたレプリキンペプチドであって、前記分離株は、レプリキン濃度のサイクルの上昇部分の間に病原体の複数の分離株の中から分離されるか、あるいはレプリキン濃度のサイクル内のピークで病原体の複数の分離株の中から分離される、レプリキンペプチドは、診断目的、治療目的、および予防目的のために有用である。例えば、レプリキン濃度のサイクルの上昇部分で特定されるか、またはレプリキン濃度のサイクル内のピークで特定された、分離株のゲノムで特定されたレプリキンペプチドは、病原体による感染に対する免疫応答を引き起こすため、あるいはより高い毒性、罹患率、および/または死亡率を有すると予測される病原体に対する抗体を生成するために、ヒトまたは動物の免疫系を刺激するためのペプチドとして有用である。当業者は、これらの病原体に対する抗体は、対象においてさらに高い毒性または死亡率の疾患を診断するのに有用であるか、あるいは、予防薬として、または、感染の開始後の、いずれかで、感染に対する治療薬として有用であることを認識するであろう。
【0118】
追加的に、レプリキンサイクルでのレプリキン濃度の上昇部分の間に特定されたか、あるいは、レプリキンサイクルでのレプリキン濃度のピークで、またはピーク近傍で特定された、レプリキンペプチドであって、レプリキンサイクルの上昇部分の間に保存される、レプリキンペプチドは、診断目的、治療目的、および予防目的のための化合物として有用である。毒性、罹患率、および/または死亡率の上昇の間でのレプリキンペプチドの保存は、より一定な標的であって、毒性、罹患率および/または死亡率の増加の予測を与える急速な複製のメカニズムにさらに関わると思われる標的を提供する。したがって、これらの保存されているレプリキンペプチドは、対象において免疫応答、抗体応答、および/または保護効果を生ずるようにその対象の免疫系を刺激するため、化合物として、または組成物中に、使用される。
【0119】
本発明の方法を用いて特定および分離されたレプリキンペプチドは、HAQDILEKEHNGKLCSLKGVRPLILK(配列ID番号:1)、KEHNGKLCSLKGVRPLILK(配列ID番号:2)、KKNNAYPTIKRTYNNTNVEDLLIIWGIHH(配列ID番号:3)、HHSNEQGSGYAADKESTQKAIDGITNK(配列ID番号:4)、HDSNVKNLYDKVRLQLRDNAK(配列ID番号:5)、KVRLQLRDNAKELGNGCFEFYH(配列ID番号:6)、KDVMESMDKEEMEITTH(配列ID番号:7)、HFQRKRRVRDNMTKK(配列ID番号:8)、KKWSHKRTIGKKKQRLNK(配列ID番号:9)、HKRTIGKKKQRLNK(配列ID番号:10)、HEGIQAGVDRFYRTCKLVGINMSKKK(配列ID番号:11)、またはHSWIPKRNRSILNTSQRGILEDEQMYQKCCNLFEK(配列ID番号:12)などのインフルエンザペプチド、KIIQKAHK(配列ID番号:13)、HLKCRVKMEK(配列ID番号:14)、KLTSGHLK(配列ID番号:15)、またはHNDKRADPAFVCK(配列ID番号:16)などの西ナイルウイルスペプチド、ならびに、HKQKIIAPAK(配列ID番号:17)およびHKQKIVAPVK(配列ID番号:18)などの口蹄疫ペプチドを含む。
【0120】
集団が拡大すると予測された病原体の部分(レプリキン・ピーク・ジーンまたはレプリキンペプチドなど)の特定は、拡大する病原体の診断および処理のための独特の化合物を提供し、この独特の化合物は、本発明の方法および本明細書に開示される化合物以外の他の方法では特定可能ではないだろう。
【0121】
本発明はさらに、免疫原性組成物としてのレプリキンペプチドの使用を意図し、その免疫原性組成物を、免疫応答を生ずるワクチン、体液性免疫応答を生ずるワクチン、抗原免疫応答を生じるワクチン、および保護効果を生ずるワクチンを含む、ワクチンとして意図する。本発明は追加的に、本発明のレプリキンペプチドに対する抗体を意図する。
【0122】
高いレプリキンカウントおよびRPGは、例えば、H5N1を含むインフルエンザウイルス株、SARSコロナウイルス、エビ・タウラ症候群ウイルス、および口蹄疫ウイルスにおける、急速な複製、ウイルス大発生、流行、罹患率、および宿主死亡率に関連すると示された。病原体における、レプリキンサイクルのピークで、またはそのピークの近傍で、あるいはレプリキンサイクルの上昇部分の間に、特定されたレプリキン配列は、診断、ワクチン、および他の処理のために適切なペプチドである。
【0123】
レプリキン配列は、化学的に定められるので、この配列は、生物学的技法よりむしろ有機化学によって合成されてよく、ゆえに潜在的に、より特異的で、より再現性があり、かつ、より信頼性がある。出願人によって特定された、化学的に定められたレプリキン配列は同様に、生物学的に誘導されたワクチンおよび抗体に特有な有害反応から潜在的により自由である。
【0124】
〔周期的レプリキンカウントによる病原体の大発生の緩和および処理〕
本発明の一態様は、レプリキンカウントのサイクルの分析を通して、または平均レプリキンカウントおよび標準偏差を用いる制御の分析を通して(例えば、レプリキンカウント拡大指標)予想された病原体大発生を予防するか、緩和するか、または処理する方法を提供する。例えば、病原体の拡大する株のレプリキンペプチドおよびレプリキン・ピーク・ジーンに関する事前情報は、レプリキンペプチドのうちの1つまたは組み合わせを使用した、あるいはレプリキン・ピーク・ジーンを使用した、特異的で有効な合成ワクチンの迅速生産を可能にさせる。そのような合成ワクチンは、ウサギ、ニワトリ、およびエビで証明された。例えば、2006年2月16日に出願された米国特許出願第11/355,120号の実施例6および実施例7、ならびに、2008年4月23日に出願された米国特許出願第12/108,458号の実施例2を参照されたい。例えば、エビに経口的に投与されたレプリキンペプチドの混合物は、タウラ症候群ウイルスで攻撃されたエビに対して、91%までの保護効果を与えた。タウラ症候群ウイルスは、エビ産業に重大な悪影響を及ぼす、しばしば致死性の急速複製する病原体である。
【0125】
合成レプリキンワクチンはまた、ニワトリでのインフルエンザウイルスのH5N1株において証明された。例えば、赤血球凝集素およびpB1遺伝子領域からの12個のH5N1レプリキンペプチドの混合物を、鼻腔内に、眼球内に、および噴霧吸入により、投与され、かつ、米国のノースカロライナ州内のガンカモ科の黒い鳥から分離された低病原性H5N1インフルエンザで攻撃された、ニワトリの試験において、保護効果が、インフルエンザの侵入部位(対照と比較すると、粘液内で減少した抗体生産が観察された)と、インフルエンザの排出部位(対照と比較すると、処理したニワトリからの糞便または唾液に排出されたインフルエンザウイルスは観察されなかった)との双方において観察された。以下の実施例10を参照されたい。
【0126】
エビとニワトリとの双方におけるレプリキンペプチドの投与は、注目すべき程度の粘膜免疫を提供したと思われる。例えば、米国特許出願第12/108,458号の実施例2において、レプリキンペプチドの混合物を、後にタウラ症候群ウイルスで攻撃されるエビに経口投与した。そのワクチンの91%の保護効果は、少なくとも部分的に、エビの腸における粘膜免疫様応答の結果であったと予想される。
【0127】
同様に、ニワトリにおいて、レプリキンペプチドの混合物の投与は、H5N1ウイルスの侵入に対する保護効果を提供した。例えば、以下の実施例10に見られるように、ワクチン接種したニワトリ6羽中3羽が、H5N1ウイルスを接種されると、血清中に、H5N1に対する測定可能な量の抗体を生じなかった。その代わりに、このウイルスは、粘膜免疫によって、ニワトリの血流に侵入することすら明らかに阻止された。血清免疫応答が測定された(すなわち、ウイルスが宿主に侵入して抗体産生細胞に提示された)これら3羽のニワトリについて、ワクチンは追加的に、ニワトリのシステムおけるウイルスの複製に対する保護効果を与えた(ニワトリの糞便または唾液内にウイルスは排出されなかった)。したがって、他の免疫に加えて粘膜免疫は、レプリキンを基にしたワクチンにより与えられた免疫の重要な側面である。
【0128】
ゲノム中のレプリキン濃度の周期的増加は、病原体のある領土への拡大のメカニズムでありうる。拡大する集団における各レプリキンサイクルの各レプリキン・ピーク・ジーンのレプリキン濃度は明らかに、先のレプリキン濃度上に確立することができる。折よく、ウイルスのレプリキン構造における周期的変化の度重なる分析は、毒性、罹患率および/または致死率が増加した新生病原体に対して最良に適合するレプリキンワクチンの化学合成のための標的を傾向にもたらすのに有用である。これらの株特異的ワクチンは、致死性タウラ症候群ウイルスに対するエビの91%保護によって証明されたように7日間で製造されうる。例えば、2008年4月23日に出願された米国特許出願第12/108,458号を参照されたい(参照によりこの内容全体を本明細書に組み込む)。
【0129】
〔マラリアのレプリキンサイクル〕
本発明は、マラリアを引き起こすトリパノソーマの集団の拡大、あるいは、マラリアを引き起こすトリパノソーマの毒性、罹患率および/または死亡率の増加を、同じ種または関連する種の別のトリパノソーマと比較して、予測する方法を提供する。マラリアを引き起こすトリパノソーマの拡大する集団、あるいはそのトリパノソーマの毒性、罹患率、および/または死亡率の増加は、その種のトリパノソーマの複数の分離株の中からレプリキン濃度のサイクルを特定すること、および、そのサイクルにおける上昇部分またはピークを特定すること、によって予測されうる。毒性、罹患率、および/または死亡率の増加は、上昇部分またはピークが特定される時点または期間に続いて予想される。拡大する集団は、ある領域内での集団の増加、または、ある領域から別の領域内への拡大を表すことができる。
【0130】
本発明の一態様のさらなる非限定的実施形態は、マラリアの罹患率および死亡率の増加を予測する方法であって、(1)複数の連続する時点において、マラリア・トリパノソーマの複数の分離株の平均レプリキンカウントを決定することと、(2)少なくとも4つの連続する時点における平均レプリキンカウントを比較して、その少なくとも4つの時点にわたって増加している平均レプリキンカウントの少なくとも1つのサイクルを特定することと、(3)前記サイクルのうちの少なくとも1つにおける平均レプリキンカウントの増加に続く適時に罹患率および/または死亡率の増加を予測することと、を含む方法を提供する。さらなる非限定的実施形態において、段階的なサイクルは、連続する時点の間で特定される。さらなる非限定的実施形態において、特異的な保存されているレプリキン配列は、段階的なサイクル内で特定される。さらなる非限定的実施形態において、レプリキン配列は、段階的なサイクルのピークにおいて特定される。段階的なサイクルのピークにおいて特定されたレプリキン配列は、比較的高い死亡率を有するマラリアの大発生を防ぐか、または、処理するのに使用するための、分離または合成されたレプリキンペプチドのワクチンまたは治療用組成物を開発するために有用である。
【0131】
図1は、熱帯熱マラリア原虫のヒスチジンに富むタンパク質における年次平均レプリキン濃度の1986年から2007年の間のサイクルを図示している。熱帯熱マラリア原虫は、マラリアと最も一般的に関連するトリパノソーマである。サイクルは、1987年および1999年におけるピークを伴って観察可能である。新しいサイクルが、2005年から2007年の間で始まったように見える。熱帯熱マラリア原虫についてのアミノ酸配列の一覧表を含むwww.pubmed.comで公的に入手可能な受入番号を、自動FluForecast(登録商標)ソフトウェア(マサチューセッツ州ボストン、Replikins, Ltd.)を使用して問合わせた。このソフトウェアは、1986年から2007年の間の入手可能な各配列のレプリキンカウントを分析した。100アミノ酸当たり最も高い濃度の連続的レプリキン配列を有すると観察された、熱帯熱マラリア原虫ゲノムの領域は、ヒスチジンに富むタンパク質であると見出された。ヒスチジンに富むタンパク質は、節結合のヒスチジンに富むタンパク質(the knob-associated histidine rich protein)を含む。
【0132】
1986年から2007年の間のヒスチジンに富むタンパク質の平均年次レプリキンカウントの分析は、レプリキンカウントのサイクルを明らかにした。サイクルの低下部分が後に続く第1上昇部分は、1986年から1995年まで観察された。低下部分が後に続く第2上昇部分は、1996年から2005年まで観察された。第1ピークは、平均年次レプリキンカウントが38.2、および標準偏差が±23.5で、1987年に特定された。第2ピークは、平均年次レプリキンカウントがさらに高い62.9、および標準偏差が±62.9で、1999年に特定された(アミノ酸配列内のレプリキン配列の重複が、いくつかの配列において100アミノ酸当たり100レプリキン配列を超えるレプリキンカウントを生み出す)。1987年のピークと1999年のピークとの双方が、より高いヒト死亡率と関連があると観察された。1999年のピークに続いて、平均年次レプリキンカウントは、2005年に7.4の低さまで落ち、標準偏差は±6.5であると観察された。同様に死亡率は、2000年から2005年の間に落ちた。第3のマラリアレプリキンサイクルが、観察された平均年次レプリキンカウントが、2005年の7.4±6.5から2007年の17.2±19まで増加しているので、2005年に始まったように見える。新しいサイクルの始まりは、レプリキンカウントが、マラリア死亡率の増加と共に増加し続けるかもしれないという予測を提供する。
【0133】
図1において観察可能なサイクルはまた、ウイルス、すなわちインフルエンザウイルスのH1N1株、H2N2株、H3N3株、H5N1株、H3N8株、およびH9N2株において、西ナイルウイルスにおいて、ならびに、口蹄疫ウイルスにおいて観察された。図1〜図8を参照されたい。ゆえに、レプリキンサイクルは、ウイルスと有機体との双方において観察可能である。レプリキンカウントと死亡率との間の同様の相関関係もまた、1997年から2007年の間のインフルエンザH5N1のサイクルにおいて示された。例えば、2008年1月18日に出願された米国特許出願第12/010,027号を参照されたい(図8)。
【0134】
図1についてのデータは、以下の表1に見られる。平均年次レプリキンカウント、標準偏差、年次平均レプリキンカウントの最低年次平均レプリキンカウントに対する、および先の年次平均レプリキンカウントに対する有意性、ならびに1年ごとに分析された受入番号の数が、提供されている。

熱帯熱マラリア原虫のレプリキンカウント
【表1】

【0135】
図1および上記の表1に見られるように、また、図2および以下の表6にも見られるように、マラリアの毒性および死亡率における変化は、複数のトリパノソーマの分離株のレプリキン濃度における特定されたサイクル内のピークを特定すること、ならびに、レプリキン濃度のサイクルにおける特定されたピークの時点または期間の後の、時点または期間に分離された同じ種のトリパノソーマの毒性、罹患率および/または死亡率の増加を予測することによって、予測されうる。西ナイルウイルスおよびインフルエンザについての図3、図7、および図8と対照的に、罹患率データは、図1におけるマラリアの分析に反映されておらず、また、熱帯熱マラリア原虫のATPアーゼタンパク質におけるレプリキンカウントを死亡率と比較する図2にも含まれていない。図1および図2、ならびにそれらの関連する分析および表において、罹患率データでなく死亡率データを使用しているのは、マラリアについての罹患率データは一般に信頼できない一方で死亡率データはより信頼性があるとみなされるという当業者の理解に基づく。図1の分析および図2のデータは、熱帯熱マラリア原虫のレプリキンカウントと死亡率との間の関係を証明するが、当業者は、この関係はまた、マラリアの罹患率および一般的な毒性まで及ぶことが、まさに西ナイルウイルス(図3を参照のこと)、口蹄疫(図4を参照のこと)、およびインフルエンザ(図5〜図8を参照のこと)における場合と同様に予想されるであろうことを理解するであろう。
【0136】
ゲノム中のレプリキン濃度の周期的増加は、感染性有機体のある領土内への拡大のメカニズムでありうる。各レプリキンサイクルの各レプリキン・ピーク・ジーンにおけるレプリキン濃度は明らかに先のレプリキン濃度上に確立する。蚊媒介性西ナイルウイルスと蚊媒介性マラリア・トリパノソーマとの双方において、この積み重ねは恐らく、冬季、乾季、または他の休眠期間の間に起こる。折よく、有機体のレプリキン構造における周期変化の度重なる分析は、毒性、罹患率および/または死亡率が増加した新生病原体に対して最良に適合するレプリキンワクチンの化学合成のための標的を傾向にもたらすのに有用である。これらの株特異的ワクチンは、致死性タウラ症候群ウイルスに対するエビの91%保護によって証明されたように7日間で製造されうる。例えば、2008年4月23日に出願された米国特許出願第12/108,458号を参照されたい(参照によりこの内容全体を本明細書に組み込む)。
【0137】
レプリキンサイクルは、マラリアを引き起こす任意のトリパノソーマにおいて特定されうる。例えば、レプリキンサイクルは、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、または四日熱マラリア原虫を含む、トリパノソーマのゲノムにおいて特定されうる。レプリキンサイクルは同様に、熱帯熱マラリア原虫中のヒスチジンに富むタンパク質およびATPアーゼタンパク質を含む、ヒスチジンに富むタンパク質またはATPアーゼタンパク質において特定されうる。レプリキンサイクルは同様に、マラリアを引き起こすトリパノソーマのレプリキン・ピーク・ジーンにおいて特定されうる。
【0138】
マラリア・トリパノソーマは、現在のところ任意の感染性有機体において見られる最も高いレプリキンカウントを有し、それはインフルエンザおよび西ナイルウイルスにおけるレプリキンカウントの20倍までであると見出された。これらの高いカウントと一致して、トリパノソーマは、事実上最も高い複製率のうちの1つを有する。この特性は、先のワクチン接種の試みに対するマラリアの抵抗性の部分的な原因となりうる。急速複製に対するレプリキン配列の関係の発見は、マラリアにおける急速複製を抑制するための、新しいアプローチおよび手段を提示する。
【0139】
表1および表5、ならびに図1で報告されたデータ分析において、レプリキン配列は、図示されたレプリキンサイクルの上昇部分およびピークにおけるマラリアのヒスチジンに富むタンパク質内の保存された配列として特定された。そのような配列は、毒性マラリア感染に対する診断用化合物および治療用化合物として有用である。この配列は、ワクチンを含む免疫原性化合物の生産において有用であり、かつ、ワクチンを含む免疫原性治療に含まれうる。
【0140】
例えば、2007年のABU43157分離株において特定されたレプリキンペプチドは、レプリキンサイクルの上昇部分において特定されたので、このレプリキンペプチドは、本発明の診断用、治療用、もしくは予防用の化合物または組成物とし利用可能である。図1および表5を参照されたい。受入番号CAD49281の1999年の分離株において特定されたレプリキンペプチドは同様に、本発明のレプリキンペプチドである。1999年の分離株は、レプリキンサイクルのピークに存在し、したがって、CAD49281で報告された分離株で特定されたレプリキンペプチドは、免疫原性化合物として使用されうる。追加的に、1998年の受入番号XP001349534は、レプリキンサイクルの上昇部分からの分離株由来として特定される。XP001349534で特定されたレプリキンペプチドは同様に、免疫原性化合物またはワクチンとして、あるいはマラリアの診断または処理のために、有用である。この段落で議論された全ての受入番号については図1および表5を参照されたい。
【0141】
〔西ナイルウイルスにおけるレプリキンカウントサイクル〕
本発明のさらなる態様において、西ナイルウイルスの拡大する集団、または西ナイルウイルスの毒性、罹患率もしくは死亡率の増加は、西ナイルウイルスの分離株におけるレプリキン濃度のサイクルを特定すること、ならびに、レプリキン濃度のサイクルにおける上昇部分またはピークに続く、ウイルスの拡大する集団、あるいは西ナイルウイルスの毒性、罹患率および/または死亡率の増加を予測することによって、予測されうる。拡大する集団は、ある領域内の集団の増加、または、ある領域から別の領域内への拡大を表すことができる。
【0142】
例えば西ナイルウイルスのエンベロープタンパク質におけるレプリキン配列の分析を含む、例えば西ナイルウイルスにおけるレプリキン配列の分析を使用して、ウイルス生化学的サイクルとウイルスの毒性、罹患率および/または死亡率サイクルとの間の相関関係は、ウイルス集団の拡大、あるいは、宿主集団におけるウイルスの毒性、罹患率、および/または死亡率の増加を予測するために特定されて使用されうる。本発明の態様の非限定的実施形態は、西ナイルウイルスなどのウイルス性疾患における罹患率の増加を予測する方法であって、(1)複数の連続する時点においてウイルスの複数の分離株のゲノムにおける平均レプリキンカウントを決定することと、(2)少なくとも4つの連続する時点における平均レプリキンカウントを比較して、その少なくとも4つの時点にわたるレプリキンカウントの傾きにおいて少なくとも2つのピークまたは2つの谷を特定することと、(3)前記サイクル内において平均レプリキンカウントの増加に続く適時に、罹患率の増加を予測することと、を含む方法を提供する。さらなる非限定的実施形態において、段階的サイクルが、連続する時点の間において特定される。さらなる実施形態において、特異的な保存されているレプリキン配列は、段階的サイクル内において特定される。
【0143】
以下の表2は、2000年から2007年までの分離株に対するwww.pubmed.comで入手可能な西ナイルウイルスのエンベロープタンパク質配列の分析によるデータを提供する。図3に図示されているデータは、ウイルスにおける平均年次レプリキンカウントのサイクルの例を提供し、ここでこのサイクルは、罹患率を予測する。このデータは追加的に、免疫原性化合物、診断用化合物、および、とりわけワクチンをさらに支持する。これは、このデータが、そのようなレプリキンワクチンおよび他の治療が基にしている原理、特に、レプリキン配列が病原性疾患の毒性および罹患率において果たす役割、レプリキンカウントの病原性との相関関係全般、ならびに、急速な複製および疾患の制御のためのレプリキン構造のターゲッティング全般を含む、原理を支持するからである。例えば、2006年2月16日に出願された米国特許出願第11/355,120号、および2008年1月18日に出願された米国特許出願第12/010,027号を参照されたい(これら各々の内容全体を参照により本明細書に組み込む)。

西ナイルウイルスのエンベロープタンパク質における平均年次レプリキンカウント
【表2】

【0144】
図3および表2において、西ナイルウイルスの分離株における平均レプリキンカウントのサイクルは、繰り返しの保存されているウイルス構造および時間経過に伴うレプリキン現象の連続性のために、検出可能である。特定されたサイクルは、(1)新生疾患の成長、蔓延および進路を決定し、(2)レプリキンカウントの変化を、手動またはReplikinsForecast(商標)(マサチューセッツ州ボストンのReplikins LLCを通して入手可能)などのコンピュータプログラムを使用して追跡することによって、ウイルスおよび他の有機体の大発生の出現および強度を予測して追跡し(例えば2005年4月28日に出願された米国特許出願第11/116,203号を参照のこと。この内容全体を参照によって本明細書に組み込む)、(3)最も正確で最大限の抗有機体免疫刺激特性を提供するために、より古い保存レプリキンとより新しい保存レプリキンの双方を含有するワクチンを設計し化学的に合成し、(4)最も正確で最大限の抗有機体免疫保護特性を提供するために、より古い保存レプリキンとより新しい保存レプリキンの双方に対する反応部位を含有する抗体を設計し化学的に合成し、かつ、(5)最も正確で最大限の抗有機体保護特性を提供するために、より古い保存レプリキンとより新しい保存レプリキンの双方に対する反応部位を含有する化合物を設計し化学的に合成する、新規の方法を提供する。
【0145】
西ナイルウイルスに対する治療用ワクチンのための免疫原性化合物は、例えば、KIIQKAHK(配列ID番号:13)、HLKCRVKMEK(配列ID番号:14)、KLTSGHLK(配列ID番号:15)、および、HNDKRADPAFVCK(配列ID番号:16)を含む。これらのレプリキンペプチド配列は、図3における西ナイルウイルスの段階的サイクル内で保存され、図3で特定されたサイクルのピークに続いて拡大する西ナイルウイルス集団に対する治療のために、これらのレプリキンペプチド配列を特定使用する。この配列は、ワクチンとして動物またはヒトに投与されうる。ワクチンは、医薬的に許容可能な担体および/またはアジュバントを含むことができる。ワクチンは、西ナイルウイルスなどの病原体のレプリキンカウントにおいて特定された段階的サイクルで保存された配列などの配列の特定から7日間以内に製造されうる。この配列は同様に、西ナイルウイルスの拡大する集団の分離株を特定するための診断目的のために使用されうる。
【0146】
〔口蹄疫ウイルスにおけるレプリキンカウントサイクル〕
本発明のさらなる態様において、口蹄疫ウイルスの拡大する集団、または、西ナイルウイルスの毒性、罹患率、もしくは死亡率の増加は、口蹄疫ウイルスの分離株におけるレプリキン濃度のサイクルを特定すること、ならびに、レプリキン濃度のサイクルにおける上昇部分またはピークに続く、ウイルスの拡大する集団、あるいはウイルスの毒性、罹患率、および/または死亡率の増加を予測することによって、予測されうる。拡大する集団は、ある領域内における集団の増加、またはある領域から別の領域内への拡大を表すことができる。
【0147】
例えば口蹄疫ウイルスのVP1タンパク質におけるレプリキン配列の分析を含む、例えば口蹄疫ウイルスにおけるレプリキン配列の分析を使用して、ウイルス生化学的サイクルとウイルスの毒性、罹患率および/または死亡率サイクルとの間の相関関係は、ウイルス集団の拡大、あるいは、宿主集団におけるウイルスの毒性、罹患率、および/または死亡率の増加を予測するために特定されて使用されうる。本発明の態様の非限定的実施形態は、口蹄疫ウイルスなどのウイルス性疾患における罹患率の増加を予測する方法であって、(1)複数の連続する時点においてウイルスの複数の分離株のゲノムにおける平均レプリキンカウントを決定することと、(2)少なくとも4つの連続する時点における平均レプリキンカウントを比較して、その少なくとも4つの時点にわたる平均レプリキンカウントの傾きにおいて少なくとも2つのピークまたは2つの谷を特定することと、(4)サイクル内において平均レプリキンカウントの増加に続く適時に、毒性および/または罹患率の増加を予測することと、を含む方法を提供する。さらなる非限定的実施形態において、段階的サイクルが、連続する時点の間において特定される。さらなる実施形態において、特異的な保存されているレプリキン配列は、段階的サイクル内において特定される。
【0148】
増加したレプリキンカウントは、口蹄疫大発生の事前警告、および、保存された合成FMDVワクチンの基礎を提供する。本発明の一態様は、長い時間にわたるFMDVの分離株のレプリキンカウントのサイクルを特定することによってFMDVの大発生の事前警告の提供を企図する。図4のデータから分かるように、2000年の口蹄疫ウイルス(O型)(FMDV)の大発生は、年次平均レプリキンカウントのピークによって予測された。2001年〜2002年の大発生は、英国およびオランダにおいて観察された。2005年に始まっている新しいサイクルにおいて、2007年および2008年に観察された10年間で最も高いレプリキンカウントの後に、中東、アフリカ、インド、中国、および他のアジアの国々における2008年および2009年の深刻なFMDV大発生が続いた。何十年にもわたって保存されていると見出されたレプリキンペプチド構造は今ではFMDVのための合成レプリキンワクチンの基礎である。図4のレプリキンサイクル内で保存されたと特定されたレプリキン配列は、HKQKIIAPAK(配列ID番号:17)、および、HKQKIVAPVK(配列ID番号:18)を含む。これらの配列はまた、A型の口蹄疫の分離株において時間とともに保存されることも観察された。
【0149】
図4は、FMDVのO型分離株におけるレプリキンカウントのサイクルを図示している。図4に図示されたデータは、表3に含まれている。

口蹄疫ウイルスタンパク質のレプリキンサイクル
【表3】

【0150】
表3および図4のデータは、口蹄疫ウイルスの年次レプリキンカウント(平均値および標準偏差(SD))が2つの上昇部分および1つの低下部分に出現したことを図示している。第1低下部分が後に続く第1上昇部分は、1999年〜2005年に出現し、第2上昇部分は、2005年〜2008年に出現する。レプリキンカウントの増加は、2001年〜2002年の英国およびオランダにおける、ならびに2008年〜2009年の中東、アフリカ、インド、およびアジアにおける、深刻なFMDV大発生の前に事前警告信号(p<0.001)を提供した。
【0151】
レプリキンペプチド(1)は、この場合はPubMedで公表されたFMDVであるが、任意の有機体のタンパク質配列を分析するよう設計されたソフトウェアプログラム(マサチューセッツ州ボストンのReplikins LLCによるReplikinsForecast(商標))を使用して、変化の統計的有意性の試験とともに、自動的に特定および計数された。ウイルスの各レプリキン構造の歴史が、ウイルス配列データが公表された年々の各々の各ウイルス標本におけるその出現について追跡されたとき、何十年もの間のレプリキン構造の保存が発見された。これらの保存されているレプリキンの構造は、FMDVに対する合成レプリキンワクチンの基礎である。
【0152】
何十年にもわたってFMDVに保存されたレプリキンペプチドは、HKQKIIAPAK(配列ID番号:17)、および、HKQKIVAPVK(配列ID番号:18)を含む。レプリキンサイクル内で特定され、かつレプリキンサイクル内で保存されたとして特定された配列は、診断目的および治療目的のために特に有用である。例えば、新しい、および/または、FMDVレプリキンサイクル内で保存されていた、として特定された配列は、(1)最も正確で最大限の抗有機体免疫刺激特性を提供するために、より古い保存されているレプリキンとより新しいレプリキンの双方を含有するワクチンを設計し化学的に合成するため、(2)最も正確で最大限の抗有機体免疫保護特性を提供するために、より古い保存されているレプリキンとより新しいレプリキンの双方に対する反応部位を含有する抗体を設計し化学的に合成するため、ならびに、(3)最も正確で最大限の抗有機体保護特性を提供するために、より古い保存されているレプリキンとより新しいレプリキンの双方に対する反応部位を含有する化合物を設計し化学的に合成するために、有用である。
【0153】
〔インフルエンザウイルスの集団の拡大を予測すること〕
本発明の一態様は、レプリキンカウントウイルス拡大指標を用いて、インフルエンザウイルスの株の毒性、罹患率、および/または致死率の増加、あるいはインフルエンザウイルスの株の集団の拡大を予測することによって、インフルエンザの大発生を予測する方法を提供する。本発明のこの態様において、インフルエンザウイルスの株の毒性、罹患率および/または致死率の増加、あるいは、インフルエンザの株の拡大が、(1)第1期間の間の第1地理的領域におけるインフルエンザウイルスの株の複数の分離株について平均レプリキンカウント、およびこの平均レプリキンカウントからの標準偏差を決定すること、(2)第1期間および/または第2地理的領域とは異なる第2期間および/または第2地理的領域からのインフルエンザウイルスの同じ株または関連する株の少なくとも1つの分離株のレプリキンカウントを決定すること、ならびに、(3)第2期間および/または第2地理的領域からの少なくとも1つの分離株のレプリキンカウントが、第1期間に第1地理的領域において分離された複数の分離株のレプリキンカウントの平均値の1標準偏差よりも大きい場合に、第2期間および/または第2地理的領域において分離されたインフルエンザの株の毒性、罹患率および/または致死率の増加、あるいはこのインフルエンザの株の拡大を予測することによって、予測される。
【0154】
前述された方法において、第2期間および/または第2地理的領域からのインフルエンザウイルスの同じ株または関連する株の少なくとも1つの分離株は、第2期間および/または第2地理的領域からの複数の分離株であってもよい。この場合、第2期間および/または第2地理的領域からの複数の分離株の各分離株のレプリキンカウントは、平均値の1標準偏差と別個に比較される。
【0155】
第2期間および/または第2地理的領域で分離されたインフルエンザの拡大はまた、平均値の1標準偏差よりも大きい、第2期間および/または第2地理的領域からの複数の分離株のレプリキンカウント数が、平均値の1標準偏差よりも小さい、第2期間および/または第2地理的領域からの前記複数の分離株のレプリキンカウント数よりも大きい場合に、予測されうる。
【0156】
本方法はまた、平均値の1標準偏差よりも大きいレプリキンカウント数を、平均値の1標準偏差よりも小さいレプリキンカウント数で割った比を利用することもできる。この比は、レプリキンカウントウイルス拡大指標(RCVE指標)と呼ばれる。RCVE指標を決定する別の方法は、平均値の1標準偏差よりも高い、時間および/または領域により分類されたインフルエンザウイルスの複数の分離株におけるレプリキンカウント割合を、平均値の1標準偏差よりも低いレプリキンカウント割合で割ることである。RCVE指標は、長い時間にわたってインフルエンザの株のレプリキンカウントを追跡することによってインフルエンザの大発生の将来の危険性を定量化するため使用されうる。
【0157】
RCVE指標を決定することにおいて、第1期間および第1地理的領域からの複数の分離株の平均レプリキンカウントは、対照としてみなされる。対照集団は好ましくは、分離株のレプリキンカウントにおいて比較的小さい変動性を有する比較的多数の分離株を有するが、対照と関連する1または複数の分離株との間の比較が望ましい場合、任意の集団を対照と見なすことができる。対照は、研究されている集団と関連していてよい。例えば、ハクチョウなどの鳥類におけるインフルエンザ感染が研究されている場合、対照は、ニワトリなどの近縁関係にあるものであってよく、ニワトリからの分離株は(入手可能な場合に)比較的多く、(可能な場合に)比較的安定であり得、集団にわたるレプリキンカウントの安定性は、ニワトリにおけるインフルエンザウイルスの株または関連する株の拡大と収縮との間の、あるレベルの平衡を証明する。対照は、ある地理的領域で1年間または数年間に報告された最高分離株数を反映することができる。図3に見られるように、インフルエンザBは、20世紀の間のインフルエンザ株についてのモデル対照でありうる。それは、全ての宿主におけるレプリキンカウントと罹患率との双方が、標準偏差が比較的小さく、かつ、致死性大発生が記録されていないという、約40年を通じて際立って安定であるからである。インフルエンザBにおいて、レプリキンカウントおよび複製率は、種の着実な生存ために損失との釣り合いをとるのにまさに十分であるように見える。これは、H2N2と対照的であり、H2N2は、株の生存の釣り合いをとるための平均値の1標準偏差よりも大きいレプリキンカウントがなく、平均値の1標準偏差よりも小さいレプリキンカウントを低下させた後、世紀の終わりに消滅した。
【0158】
RCVE指標を決定することにおいて、任意の程度のレプリキン濃度が、インフルエンザまたは他の病原体において使用されうる。レプリキンカウントは、分離株のゲノムにおいてコード化された、特定されたレプリキンペプチドの濃度を反映することができる。レプリキンカウントはまた、分離株の発現されたタンパク質において、または分離株の少なくとも1つのタンパク質もしくはタンパク質断片において特定されたレプリキンペプチドの濃度を反映することもできる。レプリキンカウントはまた、分離株のレプリキン・ピーク・ジーンにおいて特定されたレプリキンペプチドの濃度を反映することもできる。インフルエンザウイルスのレプリキン・ピーク・ジーンは、ゲノムの任意のセグメント、あるいは、特定された連続的および/または重複レプリキンペプチドの最も高い濃度を有する任意の発現されたタンパク質もしくはタンパク質断片の任意のセグメントであってもよい。
【0159】
多くのインフルエンザ分離株において、レプリキン・ピーク・ジーンは、インフルエンザウイルスゲノムのポリメラーゼ領域において特定される。ポリメラーゼ領域内で、レプリキン・ピーク・ジーンはしばしば、pB1遺伝子領域において特定される。pB1遺伝子内のレプリキンカウントもまた、使用されうる。
【0160】
本発明の方法によって拡大すると予測された分離株における、任意のレプリキンペプチド、レプリキン・ピーク・ジーン、タンパク質、タンパク質断片、あるいは、任意のレプリキンペプチド、レプリキン・ピーク・ジーン、タンパク質、またはタンパク質断片をコード化する核酸配列は、診断目的、治療目的、および/または予防目的のために使用されうる。さらに、ワクチンが、集団が拡大すると予測されたインフルエンザ分離株の構造またはゲノムの部分を特定し、その部分をワクチン組成物中に使用することによって製造されうる。
【0161】
本発明の方法はまた、インフルエンザの株の毒性、罹患率および/または致死率の減少を予測する方法、および/または、インフルエンザの株の収縮もしくは減退を予測する方法を提供し、ここで第2期間および/または第2地理的領域からのインフルエンザの株の少なくとも1つの分離株のレプリキンカウントは、第1期間および第1地理的領域からのインフルエンザの複数の分離株のレプリキンカウントの平均値の1標準偏差よりも小さい。減少はまた、平均値の1標準偏差よりも大きい、第2期間および/または第2地理的領域からの複数の分離株のレプリキンカウント数が、平均値の1標準偏差よりも小さいレプリキンカウント数よりも小さい場合、予測されうる。減少、収縮、または減退は、レプリキンカウントウイルス拡大指標の比が1よりも小さい場合に予測される。
【0162】
集団が、対照の平均値の1標準偏差より上のレプリキンカウントを有する分離株を含有し、かつ、対照の平均値の1標準偏差より下のレプリキンカウントを有する分離株を含有しない場合、RCVE指標の比は、無限大の指標を避けるために1の分母を有するとみなされる。
【0163】
レプリキンカウントウイルス拡大指標を決定することにおいて、レプリキン・ピーク・ジーンからのレプリキンカウントが、様々な種について所与の期間(1年など)、(全ての報告している国々など)領域から分析されうる。1年間ある国内において、様々な種にわたって様々な値があってよい。当業者は、対照として、その様々な値、時、領域、種、またはそれらの任意の組み合わせ(例えば2004年、中国、およびニワトリである、時間、領域および種など)から平均レプリキンカウントを選択することができる。例えば、以下の実施例7において、2004年中国のニワトリからの全てのH5N1分離株の平均レプリキンカウントが、初期対照として選択され、それに対して2004年中国のハクチョウからのレプリキンカウントが比較された。個々の分離株または関連する群の分離株のレプリキンカウントと対照を比較するとき、その分離株または群の分離株といくらかの類似点を共有する対象が使用されうる。例えば、2004年中国のニワトリからの全ての分離株の対照は、2004年からの他の分離株と比較されうる。同様に、2005年日本からのハクチョウの対照は、日本のハクチョウからの将来の分離株と比較されうる。当業者は、対照が分離株または一群の関連する分離株との比較に使用されうるような、その対照がその分離株または一群の関連する分離株と類似点を共有する場合を理解するであろう。
【0164】
個々の分離株または関連する群の分離株のレプリキンカウントを対照と比較するとき、平均値の1標準偏差内に含まれるその群の関連する分離株内の全てのレプリキンカウント値は、1グループとして処理されうる。追加的に、平均値から1標準偏差の範囲から外れる全ての値は、2つの範囲外グループとして処理されうる。第1グループは、平均値+1標準偏差よりも大きいレプリキンカウントのグループである。第2グループは、平均値−1標準偏差よりも小さいレプリキンカウントのグループである。より高いレプリキンカウントは将来の大発生、または拡大するウイルス集団と関連があり、より低いレプリキンカウントは、大発生の停止、またはウイルス集団の減少もしくは減退と関連があるので、平均値+1標準偏差よりも上のレプリキンカウントを有する分離株の割合の、平均値−1標準偏差よりも下のレプリキンカウントを有する分離株の割合に対する比は、ウイルスの生存能力および拡大の定量的指標を提供する。この指標は、ウイルス集団の現在の状態の寸描、およびこの集団の変化の傾向を提供する。この比が1よりも大きい場合、RCVE指標は、拡大する集団を予測する。この比が1よりも小さい場合、RCVE指標は、ウイルス集団の収縮または減退を予測する。
【0165】
〔インフルエンザウイルスの拡大する集団を緩和し処理すること〕
本発明の一態様は、レプリキンカウントウイルス拡大指標を用いてインフルエンザウイルスの株の拡大を予測すること、ならびに、インフルエンザウイルスの大発生を防ぐか、緩和するか、または処理するためにRCVE指標を用いて、特定されたインフルエンザウイルスの構造もしくはゲノムの分離または合成された部分を含む治療薬を投与することによって、インフルエンザウイルスの大発生を防ぐか、または処理する方法を提供する。(1)第1期間の間に第1地理的領域において分離されたインフルエンザの株の一群の分離株について標準偏差とともに平均レプリキンカウントを決定すること、(2)第1期間と異なり、および/または第2地理的領域とは異なる、第2期間および/または第2地理的領域からのインフルエンザウイルスの同じ株の少なくとも1つの分離株のレプリキンカウントを決定すること、ならびに(3)第2期間および/または第2地理的領域からの分離株のレプリキンカウントが、第1期間に第1地理的領域において分離された複数の分離株のレプリキンカウントの平均値から1標準偏差よりも大きい場合に、前記第2期間および/または第2地理的領域において分離されたインフルエンザの株の拡大を予測することによって、大発生の予測がされうる。大発生は、インフルエンザウイルスの少なくとも1つの分離株の構造またはゲノムの全てまたはいくつかの部分を含む医薬的化合物を投与することによって予防されうるか、緩和されうるか、または処理されうる。
【0166】
第2期間および/または第2地理的領域からのインフルエンザのこの少なくとも1つの分離株は、第2期間および/または第2地理的領域からの複数の分離株であってもよく、ここで複数の分離株の各分離株のレプリキンカウントは、平均値から1標準偏差に対して別個に比較される。追加的に、インフルエンザの大発生は、平均値の1標準偏差よりも大きい、第2期間および/または第2地理的領域からの複数の分離株のレプリキンカウント数が、平均値の1標準偏差よりも小さいレプリキンカウント数よりも大きい場合に、予測されうる。
【0167】
当業者によって理解されるように、構造またはゲノムの部分は、インフルエンザ分離株から分離されうるか、あるいは、インフルエンザ分離株から解明された配列もしくは他の構造に基づいて合成されうる。この構造は、レプリキンペプチドを含むか、もしくはレプリキンペプチドからなる、タンパク質またはタンパク質断片であってよい。この構造は、レプリキン・ピーク・ジーンもしくはレプリキン・ピーク・ジーンの断片を含む、または、それからなることができ、あるいは、レプリキン・ピーク・ジーン内で特定されたレプリキンペプチドからなることができる。この構造はまた、レプリキン・ピーク・ジーンをコード化する核酸、レプリキン・ピーク・ジーン内の1もしくは複数のレプリキンペプチド、または、1もしくは複数のレプリキンペプチドを含むがこれらに限定されない、核酸であってもよい。
【0168】
ペプチドまたはペプチドの混合物は、インフルエンザに対する免疫原性化合物内に含まれてもよく、HAQDILEKEHNGKLCSLKGVRPLILK(配列ID番号:1)、KEHNGKLCSLKGVRPLILK(配列ID番号:2)、KKNNAYPTIKRTYNNTNVEDLLIIWGIHH(配列ID番号:3)、HHSNEQGSGYAADKESTQKAIDGITNK(配列ID番号:4)、HDSNVKNLYDKVRLQLRDNAK(配列ID番号:5)、KVRLQLRDNAKELGNGCFEFYH(配列ID番号:6)、KDVMESMDKEEMEITTH(配列ID番号:7)、HFQRKRRVRDNMTKK(配列ID番号:8)、KKWSHKRTIGKKKQRLNK(配列ID番号:9)、HKRTIGKKKQRLNK(配列ID番号:10)、HEGIQAGVDRFYRTCKLVGINMSKKK(配列ID番号:11)、または、HSWIPKRNRSILNTSQRGILEDEQMYQKCCNLFEK(配列ID番号:12)のうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0169】
〔インフルエンザのH9N2株およびH5N1株における同調レプリキンサイクル〕
本発明の別の態様は、インフルエンザウイルスの株の分離株の、毒性、罹患率および/または致死率の増加、あるいは、その分離株の集団の拡大を、同じ株もしくは関連する株の別の分離株もしくは別の群の分離株と比較して、予測する方法を提供する。そのような増加は、インフルエンザの複数の分離株の中からレプリキン濃度のサイクルを特定すること、および、そのサイクルにおいてピークを特定することによって予測されうる。増加は、ピークが特定された時点もしくは期間に続いて、あるいは、サイクルの上昇部分に続いて、予測される。増加は同様に、ピークが2つの同調サイクルにおいて特定された時点または期間に続いて予測され得、ここで第1サイクルは、インフルエンザの株のサイクルであり、第2サイクルは、インフルエンザの異なる株のサイクルである。増加は、同調サイクルのピークが特定された期間に続いて、あるいは、双方の同調サイクルにおいて特定された上昇部分の期間に続いて、予測される。
【0170】
H9N2のレプリキン濃度のサイクル、すなわち「レプリキンサイクル」は、図5に見ることができる。H5N1およびH9N2のレプリキン濃度の同調したサイクルの比較が、図6に見ることができる。これら2つのインフルエンザ株における同調したサイクルは、1997年、2001年、2004年、2007年のH5N1大発生、および2008年と2009年の現在の大発生に対応し、遡及的に予測する。
【0171】
図5において、H9N2のpB1遺伝子領域の平均年次レプリキンカウントが、薄い灰色の棒で示され、標準偏差がH9N2年次平均レプリキンカウントの上に濃い灰色の棒で示されている。標準偏差データは、年間集団内の拡大するレプリキンカウントの広がりを強調する。イスラエル国内で報告されたH9N2感染した家禽群の数が、白色の棒で提供されている。図6において、H9N2についての平均年次レプリキンカウントが再び薄い灰色の棒で報告され、標準偏差がその上に濃い灰色の棒で報告されている。H5N1についての平均年次レプリキンカウントが黒い棒で報告され、標準偏差がH5N1年次平均レプリキンカウントの上に白色の棒で報告されている。図6は、H9N2レプリキンカウントとH5N1レプリキンカウントとの間の同調性を明白に図示している。
【0172】
図5および図6のデータは、以下の表4に開示されている。表4において、平均年次レプリキンカウントが標準偏差とともに、1993年から2008年までに分離されたインフルエンザのH9N2株およびH5N1株のwww.pubmed.comで公的に入手可能である全てのアミノ酸配列について提供されている。イスラエル国内でH9N2感染したと報告された家禽群の数もまた、H9N2の大発生の1つの尺度として2000年から2004年について開示されている。

H9N2およびH5N1における同調レプリキンサイクル
【表4】

【0173】
上の表4で提供されたデータによる図5および図6に図示されているように、一般的には家禽に感染し、時折ヒトに感染する、インフルエンザのH9N2株は、インフルエンザゲノムのpB1遺伝子内でコード化されると特定されたレプリキンペプチドのH9N2レプリキンカウントが、H5N1内で見出されたレプリキンカウントの2倍のレベルに達した、第2の5年レプリキン拡大サイクルを完了したということが見出された。これらの図に見られるように、H9N2レプリキンカウントは、1997年の香港におけるH5N1大発生の1年前、1996年に増加した。1999年、H9N2のpB1領域におけるレプリキンカウントの増加はまた、H5N1のpB1領域におけるレプリキンカウントの増加ならびにH5N1大発生に先行した。図6に見られるように、H9N2およびH5N1のレプリキンサイクルは一致し、可視レベルの同調性を共有する。さらに、図6から分かるように、H9N2のレプリキンカウントレベルは、2008年現在で、H5N1のレプリキンカウントレベルを超えて濃度が増加した。したがって、理論に縛られることを望まないが、インフルエンザのH9N2株およびインフルエンザのH5N1株は、同調した周期的な前駆者−競争者の進化的・生化学的関係を有するように見えることは注目すべきである。データは、H9N2が将来のインフルエンザ・パンデミックのためのH5N1の代替候補であることを予測する。
【0174】
図5および図6において、H9N2またはH5N1の各サイクルは、pB1遺伝子領域における特異的レプリキンペプチドのレプリキンカウント(100アミノ酸当たりのレプリキンペプチド数)によって定められる。連続する年における減少が後に続く、連続する年における増加が、観察可能である。図5は、H9N2レプリキンカウントの増加が、家禽群におけるH9N2感染数増加の出現に先行することを図示している。図5はさらに、H9N2のレプリキンカウントが、イスラエルを含む中東における家禽のH9N2大発生の増加が報告された2年前である、1999年に再び増加し始めたことを証明している。図6に見られるように、H9N2の増加に続いて、レプリキンカウントが2000年にH5N1において増加し始め、感染は2000年に始まり進んでいった。
【0175】
表4ならびに図5および図6において平均レプリキンカウントとして報告され分析されたH9N2配列は、PubMed上で世界的に公表された全ての配列を含む。この配列の主要部分は、中国および中東で分離されたインフルエンザ由来である。
【0176】
サイクルの2つのレプリキンカウント拡大上昇部分が、図6において、可視的同調性を伴って認められる。サイクルの第1拡大上昇部分は、1999年から2003年まで観察される。サイクルの第2拡大上昇部分は、2004年から2008年まで観察される。第2上昇部分において、H9N2の最大レプリキンカウントは、H9N2の第1上昇部分の最大レプリキンカウントよりも大きく、H5N1において見られる最大レプリキンカウントの2倍であった。H9N2について観察された最大レプリキンカウントは同様に、これまで分析された任意の他のインフルエンザ株について観察された最大レプリキンカウントの2倍である。例えば、図7および図8を参照されたい。
【0177】
追加的に、図5および図6に図示されたようにH9N2の標準偏差は、H5N1値の標準偏差よりも明らかに大きく、これはH9N2のレプリキンカウントのより高い活動性を示している。レプリキンカウントの観察可能な変化を通して、H9N2レプリキン・ピーク・ジーン領域のこの観察可能な上方調節は、H9N2大発生より前に見られる。同様の傾向が、2000年から2008年までに分離されたウイルスの西ナイルウイルスにおけるレプリキンカウントで観察可能である。図3を参照されたい。同様に、予測サイクルが、マラリア、口蹄疫、および他のインフルエンザ株において示された。同上の図1〜図6を参照されたい。
【0178】
表4ならびに図5および図6のデータは、レプリキンカウントと結果として生じるH5N1およびH9N2感染との双方の追加的増加が、H9N2およびH5N1の来たるべき第3レプリキンカウントサイクルにおいて予想されうることを予測する。2008年12月上旬の香港におけるニワトリのH5N1の大発生、および、2008年12月下旬の香港における子供の報告されたH9N2感染は、データの予測能力を実証している。2008年後期のインドのアッサム地方、メガラヤ地方、および西ベンガル地方からの他のH5N1大発生データがさらに、この予測を実証している。
【0179】
〔ワクチン、処理、および治療〕
マラリア、西ナイルウイルス、口蹄疫ウイルス、およびインフルエンザウイルスのタンパク質における特異的レプリキンおよびそれらの濃度の観察は、大発生と死亡率の増加との特異的で定量的な初期の化学的相関現象を提供し、また、世界の特定領域における流行性の新生または再出現の株ウイルスを処理するように特異的に合わせて作られたワクチンの生産、およびそのワクチンのタイミングのよい投与のために備える。これらのワクチンの合成は、7日以内に達成され得、これによりマラリア・トリパノソーマ、西ナイルウイルス、口蹄疫ウイルス、およびインフルエンザウイルスを含むウイルスまたは有機体の特定のウイルス株に最良に適合するワクチンの投与を可能にする。
【0180】
レプリキンの存在、濃度および/または保存についてウイルスまたは他の病原体の分離株のタンパク質配列を分析することによって、パンデミック、流行、ならびに、毒性および死亡率の他の変化が予測され得、処理が発展した。さらに、そのような大発生の深刻度は、最も豊富であると見出されたか、あるいは約1年から約3年などの所与の期間にわたってウイルス分離株において上昇中であると示された、レプリキン配列に基づいたペプチドワクチンを投与することによって、著しく低下することができる。
【0181】
本発明のペプチドワクチンは、単一レプリキンペプチド配列を含むことができ、あるいは、特定のウイルス株で観察された複数のレプリキン配列を含むことができる。しかしながら、ワクチンは、1または複数の保存されているレプリキンペプチドを、1または複数の新しいレプリキンペプチドと組み合わせて含むこともでき、あるいは、新しいレプリキンペプチド配列に基づくこともできる。レプリキンペプチドは、化学合成または遺伝子組み換え技術を含む任意の方法によって合成され得、非レプリキン配列を含むこともできるが、レプリキン配列のみを含有するペプチドに基づくワクチンが好ましい。好ましくは、本発明のワクチン組成物はまた、医薬的に許容可能な担体および/またはアジュバントを含有する。ウイルスまたは病原体ワクチンに使用するためのレプリキンペプチドの中には、1年またはそれ以上の年数の間、アミノ酸配列から無くなった後「再出現する」ことが観察されたレプリキンがある。
【0182】
本発明のワクチンは、単独で、あるいは、ガンシクロビルなどの抗ウイルス薬;インターフェロン;インターロイキン;アマンタジン、リマンタジンなどのM2阻害剤;ザナミビルおよびオセルタミビルなどのノイラミニダーゼ阻害剤;などと組み合わせて、同様に、抗ウイルス薬の組み合わせと組み合わせて、投与されうる。
【0183】
本発明のワクチンは、免疫応答で抗体を生成することができる任意の動物に投与されうる。例えば、本発明のワクチンは、ウサギ、ニワトリ、エビ、ブタ、またはヒトに投与されうる。レプリキン配列の普遍的な性質のため、本発明のワクチンは、ウイルスまたは有機体の様々な株、あるいは、ウイルスまたは有機体の特定の株を対照にすることができる。
【0184】
本発明のレプリキンペプチドは、単独または様々な組み合わせで、対象に投与され、非限定的実施形態では、静脈注射、筋肉内注射、経口、または噴霧吸入、鼻腔内投与、または眼球内投与によって投与される。ペプチドは、このペプチドに対する抗体を生成するように対象の免疫系を刺激するために投与される。一般的に、ペプチドの投与量は、約0.01μgから約500mgまで、約0.05μgから約200mgまで、または約0.075μgから約30mg、約0.09μgから約20mgまで、約0.1μgから約10mgまで、10μgから約1mgまで、および約50μgから約500μgまでの範囲内である。熟練した実践者は、有効な免疫応答をもたらすために必要な投与量および投与数を容易に決定することができる。
【0185】
本発明の別の態様において、分離されたレプリキンペプチドは、例えば個人に受動免疫をもたらすため、または診断のために使用されうる抗体を生成するために使用されうる。例えば、2006年2月16日に出願された米国特許出願第11/355,120号、および、2008年1月18日に出願された米国特許出願第12/010,027号を参照されたい(各々の内容全体を参照により本明細書に組み込む)。
【0186】
〔実施例1〕
〔死亡率増加を予測するためのマラリアにおけるレプリキンカウントの分析〕
www.pubmed.comで公的に入手可能な熱帯熱マラリア原虫の分離株の配列を1986年から2007年について、専売の検索ツールソフトウェア(マサチューセッツ州ボストンのREPLIKINS LLCから米国内で入手可能なReplikinForecast(商標))を使用して分析して、それらの年の各年で入手可能な全ての分離株のヒスチジンに富むタンパク質についての平均レプリキンカウントを決定した。その後、各年の平均年次レプリキンカウントを世界保健機関によって報告された死亡率の変化と比較した。
【0187】
レプリキン配列の存在および濃度について分析された受入番号のリストを以下の表5に提供する。各年の平均レプリキンカウントを、各対応する年における分離株の受入番号のリストの次に提供する。標準偏差、ならびに、データセット内で前年および最低の平均レプリキンカウントと比較したときの平均レプリキンカウントの有意性も、各年の平均レプリキンカウントとともに提供する。

マラリアの年次平均レプリキンカウント
【表5】

【0188】
1986年から2007年までの間のヒスチジンに富むタンパク質の年次平均レプリキンカウントの分析は、レプリキンカウントのサイクルを明らかにした。新しいサイクルの始まりは、レプリキンカウントがマラリア死亡率の増加と共に増加し続ける可能性があるという予測を提供する。データは、図1においてグラフ式に図示し、上記の表1に要約する。
【0189】
図1で明らかにされたレプリキンサイクルのピークで、または上昇部分において特定された分離株のレプリキンペプチドは、本発明のペプチドとして利用可能である。例えば、受入番号ABU43157の2007年からの分離株で特定された任意のレプリキンペプチドは、レプリキンサイクルの上昇部分において特定されたので、本発明の診断用、治療用、または予防用の化合物もしくは組成物として利用可能である。受入番号CAD49281で報告された1999年の分離株において特定されたレプリキンペプチドも同様に利用可能である。図1および表2を参照されたい。1999年の分離株は、レプリキンサイクルのピークで存在し、したがってCAD49281で報告された分離株で特定されたレプリキンペプチドは、免疫原性化合物として使用されうる。加えて、1998年の受入番号XP001349534は、レプリキンサイクルの上昇部分の分離株から特定される。図1および表5を参照されたい。とりわけABU43157、CAD49281、および、XP001349534で特定されたレプリキンペプチドは同様に、免疫原性化合物またはワクチンとして、あるいは、マラリアの診断または処理のために、有用である。
【0190】
〔実施例2〕
〔死亡率増加を予測するためのマラリアATPアーゼにおけるレプリキンカウントの分析〕
出願人は、www.pubmed.comにおける熱帯熱マラリア原虫の分離株のATPアーゼ酵素の公的に入手可能な配列を分析した。データを以下の表6に要約し、図2に図示する。データは、ヒトにおけるマラリアの1000臨床ケース当たりの死亡率が、www.pubmed.comで公的に入手可能な熱帯熱マラリア原虫のATPアーゼ酵素の配列における年次平均レプリキンカウントと相関があることを図示している。熱帯熱マラリア原虫のATPアーゼのレプリキンカウントは、1997年および1998年から1999年までのマラリアケース当たりの死亡率の増加と共に、1997年から1998年まで増加した。熱帯熱マラリア原虫のATPアーゼのレプリキンカウントは、1999年から2005年までの死亡率と共に1998年から2006年まで減少した(現在のところ2005年までのみ入手可能な死亡率と一貫性がある)。高いマラリア罹患率および死亡率が1990年代後半に起こり、微生物の適応性および抗マラリア剤の有効性の低下に起因すると考えられた。ATPアーゼは、マラリアのアルテミシニン(arteminisin)治療の主要標的である。アルテミシニンの使用増加および公衆衛生方策の改善に伴い、罹患率および死亡率は、1999年から2005年まで下降した。表6における死亡率は世界保健機関によって宣言されたとおりに表示した。www.who.int.を参照されたい。
【表6】

【0191】
〔実施例3〕
〔西ナイルウイルスにおけるレプリキンカウントサイクルの分析により罹患率の増加を予測する〕
www.pubmed.comで公的に入手可能であった2000年から2008年までの間に分離された西ナイルウイルスの分離株からのエンベロープタンパク質配列をレプリキン配列について分析し、平均年次レプリキンカウントを決定した。データを以下の表7に含め、図3に図示する。
【0192】
図3は、西ナイルウイルスの罹患率のサイクルと相関する、西ナイルウイルスの平均年次レプリキンカウントのサイクルを図示する。サイクルは、繰り返しの保存されているウイルス構造、および、時間経過に伴うレプリキン現象の連続性のため検出可能である。WNVのエンベロープタンパク質の平均年次レプリキンカウント(黒色)、および標準偏差を、CDC報告による米国内のヒトのケースの年次数(灰色)と比較する。
【0193】
2000年〜2003年:エンベロープタンパク質のレプリキンカウントの平均値の標準偏差は、2000年から2001年まで際立って増加する(p<0.001)。この変化が、(WNVと同じウイルス属でない)インフルエンザウイルスの全ての一般的な株において、急速な複製およびレプリキンカウントの範囲拡大の前兆となることが観察され、ゆえにウイルス集団は、レプリキンカウントと共に拡大し、ウイルス大発生に先行する。2000年から2003年までの平均レプリキンカウントの増加は、疾病管理センター(CDC)により公表され独立して記録されたヒトWNVケース数の増加と同時に起こるか、またはそれに先行するように見える。罹患率に対するレプリキンカウントの同じ関係は、インフルエンザ株において、例えば、ヒト死亡率に対するH5N1、および、ウマ罹患率に対するH3N8ウマ脳炎において示され、また、ヒト罹患率に対するトリパノソーマ熱帯熱マラリア原虫(マラリア)において、および、エビ・タウラ症候群ウイルスによるエビにおける死亡率に対して示されている。この関係は、甲殻類の動物、ウマ、およびヒトを含むいくつかの種においてすでに証明されているので、広く流通している一般的原理であるように見える。2004年〜2007年:2004年および2005年に、レプリキンカウントとWNVのヒトのケース数との双方において2003年から減少があった。2006年に、2007年のヒトのケース数の増加が後に続く、レプリキンカウントの増加があった。
【0194】
図3において、レプリキン濃度のサイクル、およびWNVヒト罹患率のサイクルが、相関していることが観察できる。現在のデータまで、病原体の特定株内のサイクルがピーク〜谷〜別のピーク〜別の谷と実際に継続することは理解されていなかった。その代わりに、過去において、レプリキン濃度の増加が大発生と相関し、レプリキン濃度の減少が退縮と相関することは理解されていた。しかしながら、これらの新しいデータにより、ピーク〜谷〜ピーク〜谷、および/または、谷〜ピーク〜谷〜ピークのレプリキンサイクル全体は、毒性、罹患率および死亡率と相関することが、ここで理解され本発明によって意図される。本発明はここで、レプリキン濃度の変化を監視することによって、病原体が毒性を増加するとき、病原体の集団がある領域内でまたはある領域内へ拡大するとき、あるいは、罹患率または死亡率を増加するとき、病原体を追跡する方法を提供する。
【0195】
サイクルの第1上昇部分と比較した場合、2004年〜2008年のサイクルの第2上昇部分におけるレプリキンカウントとケース数との双方の上昇数は、第1上昇部分と比較して第2上昇部分において増加したレプリキンカウントに付随して、増加したすなわち「改善された」感染効率を示唆する。ウイルスの効力の低下は恐らく、宿主における抵抗力の発生に起因し;サイクルの第2上昇部分における感染力のその後の上昇は、WNVで特定される新しいレプリキンの出現と関係がある。ここでもまた、感染力に対するレプリキンの密接な関係が、すなわち、まさに上昇と低下との双方が共に証明されている。
【0196】
ゆえに本データは、以前可能であったレベルよりもさらに正確なレベルで感染力に対するレプリキンの関係の直接的で定量的な証拠を提供する。例えば、H5N1インフルエンザの場合、サイクルは、1996年に香港大発生を伴って始まった。これは、香港内のニワトリの完全処分によって1998年に一時的に終わった。H5N1臨床的「サブ−サイクル」は2000年に再び始まり、現在まで続き、先を見越してレプリキンカウントによって各年予測された。このケースにおいて、東アジアの国々で大抵起こる、H5N1は、ここで提示された米国内の西ナイルウイルスのケースほどには、WHOによる罹患率および死亡率の的確な疫学的報告の対象にはならなかった。これはCDCが、罹患率および死亡率のはるかにより正確な監視記録を保有しているからである。
【0197】
理論に制限されることを望まないが、罹患率および死亡率に対するレプリキンカウントの密接な関係、ならびに他の証拠は、レプリキンが、急速な複製の生化学に密接に関与することに加えて、事実上、感染性単位であり、ウイルスおよびトリパノソーマは単なるレプリキン感染性単位のキャリアーであるが、他のウイルスまたはトリパノソーマ構造は、宿主内に感染力を引き起こすために必要であるという、仮説を導いた。
【0198】
図3は、レプリキンカウントの変化の初期検出が、例えばReplikinForecast(商標)ソフトウェア(マサチューセッツ州ボストンのReplikins LLC)を使用した新生レプリキン配列の特定後7日以内に合成されうる新生レプリキン構造に対するワクチンによる迅速な応答に直接的に繋がりうるということを図示している。
【0199】
www.pubmed.comから入手可能な受入番号の西ナイルウイルスエンベロープタンパク質について、受入番号、分離株数、平均レプリキンカウント、標準偏差、および有意性が、以下の表7に含まれている。図3における西ナイルウイルスの段階的サイクル内で特定された特異的な保存されているレプリキン配列は、KIIQKAHK(配列ID番号:13)、HLKCRVKMEK(配列ID番号:14)、KLTSGHLK(配列ID番号:15)、および、HNDKRADPAFVCK(配列ID番号:16)を含む。これらの配列が保存されている受入番号は、2008年4月23日に出願された米国特許出願第12/108,458号の実施例6に列挙されており、この内容全体を参照により本明細書に組み込む。
西ナイルウイルスエンベロープタンパク質のレプリキンカウントサイクル
【表7】





【0200】
〔実施例4〕
〔罹患率の増加を予測するための口蹄疫ウイルスのレプリキンカウントサイクルの分析〕
www.pubmed.comで公的に入手可能であった1999年から2008年の間にとられた分離株からの全てのタンパク質配列はレプリキン配列について分析され、平均年次レプリキンカウントが決定された。データは、上記の表3に含まれており、図4に図示されている。図4は、O型口蹄疫ウイルスの平均年次レプリキンカウントのサイクルを図示する。サイクル内のピークは、2001年〜2002年の英国およびオランダにおける大発生、ならびに2008年〜2009年の中東およびアジアにおける大発生と相関する。図4に図示されたサイクルは、繰り返しの保存されているウイルス構造、および、時間経過に伴うレプリキン現象の連続性のため検出可能である。2005年に始まった新しいサイクルにおいて、10年間で最も高いカウントが観察され(2007年〜2008年)、その後に中東、アフリカ、インド、中国、および他のアジアの国々における2008年および2009年の深刻なFMDV大発生が続いた。
【0201】
図4は、年次レプリキンカウント(平均値および標準偏差(SD))が、2つの上昇部分および1つの低下部分を伴って生じたことを示す。第1低下部分が後に続く第1上昇部分は1999年〜2005年に起こり、第2上昇部分は、2005年〜2008年に起こった。レプリキンカウントの増加は、2001年〜2002年および2008年〜2009年の深刻な大発生前に、p<0.001で事前警告信号を提供した。
【0202】
図4のデータを提供するために、任意の有機体のタンパク質配列を分析するために設計されたReplikinsForecast(商標)ソフトウェア(マサチューセッツ州ボストンのReplikin LLC)を使用してwww.pubmed.comで入手可能な配列においてレプリキンペプチドを特定して自動的に計数した。同様に統計的分析をこのソフトウェアを使用して成し遂げた。ウイルスの各レプリキン構造の歴史が、ウイルス配列データが公表された年々の各年における各ウイルス標本のレプリキン構造の出現について追跡されたとき、いくつかのレプリキン構造の保存が何十年にわたって観察された。これらの保存されているレプリキンペプチドの構造は、FMDVに対する合成レプリキンワクチンの基礎である。
【0203】
以下のレプリキンペプチド配列:HKQKIIAPAK(配列ID番号:17)、および、HKQKIVAPVK(配列ID番号:18)が、ワクチンのために特定された。これらの配列は、図4に図示されたレプリキンサイクル内で保存されることが観察されており、本発明によって教示されるように、予測された口蹄疫ウイルスの大発生のためのワクチンである。
【0204】
上記で列挙された2つの保存されているレプリキンペプチドは、1934年から2008年までwww.pubmed.comにおいて公的に入手可能な口蹄疫ウイルスの配列において特定され毎年追跡された。配列HKQKIIAPAK(配列ID番号:17)は、1934年から2008年までの分離株からの公的に入手可能な配列に100%の時間、保存されたと観察される。配列HKQKIVAPVK(配列ID番号:18)もまた、2つの置換、すなわちペプチドの残基6におけるバリン、およびペプチドの残基9におけるバリンを除いて、1934年から2007年まで100%の分離株に保存されたことが観察される。
【0205】
表8は、配列HKQKIIAPAK(配列ID番号:17)、および、HKQKIVAPVK(配列ID番号:18)が時間とともに保存された、www.pubmed.comでの受入番号を提供する。受入番号で開示された配列においてペプチドが始まる残基が注目された。

FMDVの保存されている配列
【表8】







【0206】
〔実施例5〕
〔地理的領域内への侵入を予測するための西ナイルウイルスにおけるレプリキンカウントサイクルの分析〕
上記の実施例3で説明したように、出願人はwww.pubmed.comの受入番号において公的に入手可能な西ナイルウイルスエンベロープタンパク質分離株のレプリキン濃度を分析した。図3に見るように、分離株のエンベロープタンパク質における平均年次レプリキン濃度のサイクルは、米国内の罹患率のサイクルと関係する。それに加えて、平均年次レプリキン濃度のサイクルは、1998年ニューヨーク州において最初に知られた西ナイルウイルス感染から米国内への段階的な地理的拡大と関連する。
【0207】
例えば、平均年次レプリキン濃度が2000年から2003年の間増加した際、西ナイルウイルスの罹患は、初めに2000年にニューヨークおよびいくつかの隣接する州から、2001年に北東部および南東部へ、2002年に山岳州および北西部を除くほとんどの州へ、そして2003年には北西部を除く全ての州に拡大した。例えば、http://www.cdc.gov/ncidod/dvbid/westnile/surv&control.htm#mapsで、CDCから入手可能な年次マップを参照されたい。平均年次レプリキン濃度が2004年に低下し始めたとき、西ナイルウイルスは、合衆国全土で、はるかに低い罹患率ではあるが、存在した。2005年に、西ナイルウイルス感染は、米国のいくつかの地域から退却したことが観察され、感染は、ワシントン州、北ニューイングランド、またはウエストバージニアでは観察されなかった。しかしながら、年次平均レプリキン濃度が2006年に再び増加し始めた際、西ナイルウイルス罹患は再び、北ニューイングランドを除いた全ての州へ広がった。
【0208】
ニューヨークでの最初の観察から米国全域にわたる西ナイルウイルスの進行の概観は、レプリキン濃度の変化を監視することは、西ナイルウイルスの地理的拡大の証拠を提供するということを明らかにした。したがって、本発明の一態様は、観察された段階的サイクルを含むレプリキン濃度の一サイクルまたは一連のサイクルのグラフにおいて平均年次レプリキン濃度の進行を決定することに基づく、ある地理的領域内への拡大、またはある地理的領域からの収縮の予測である。例えば、所与の領域からの複数の分離株のレプリキン濃度のサイクルにおけるレプリキン濃度のピークは、その領域の地理的地域を越えて他の隣接する地理的地域内または近くの地理的地域内への拡大の証拠を提供する。さらに、第2の依然として高いピークは、拡大の準備ができている病原体のさらに大きな証拠を提供する。
【0209】
〔実施例6〕
〔地理的領域への侵入を予測するためのマラリアにおけるレプリキンカウントサイクルの分析〕
地理的拡大の現象はマラリアおよび他の病原体にも当てはまる。熱帯熱マラリア原虫のレプリキン・ピーク・ジーン、ヒスチジンに富むタンパク質、またはATPアーゼのレプリキン濃度の分析は、レプリキン濃度サイクルが熱帯熱マラリア原虫の死亡率および/または罹患率の拡大の予測を提供することを証明する。例えば、特定領域からの分離株に基づくレプリキン濃度サイクルが、平均年次レプリキンカウントにおける長期の上昇、または、平均年次レプリキンカウントにおける上昇に続くピークを明示する場合、この有意な上昇またはピークは、レプリキンカウントにおけるこの有意な上昇またはピークまで、この特定領域の死亡率または罹患率を経験しなかった、隣接する領域または近くの領域内へ、この分離株の死亡率または罹患率が拡大することを予測する。
【0210】
例えば、レプリキン濃度のサイクルは、アフリカのサヘル地帯において2年目および7年目に2つのピークを有して確立される。7年目の第2ピークは、0.01のp値で、2年目の第1ピークよりも有意に高い。サヘル地帯は0年目から7年目の間に、より南方の領域よりも高い死亡率を経験した。7年目のより高いピークに基づき、マラリアによる死亡率は、サヘルの南に隣接する領域において増加するだろうと予測される。複数のレプリキン配列が7年目の分離株から分離された。0年目から7年目の間に保存されたレプリキンは、サヘルおよびその南に隣接する領域におけるマラリアに対するワクチンとして選択される。7年目での新しいレプリキンは同様に、ワクチンとして選択される。これらのレプリキン配列の混合物は、医薬的に許容可能な担体および/またはアジュバントと組み合わせて、サヘルおよびその南に隣接する領域において8年目の乾季に続いてより高い死亡率を有すると予測されたマラリアに対して処理および/または保護するため、免疫応答を引き起こすために対象に投与される。
【0211】
〔実施例7〕
〔同じおよび関連するインフルエンザ株における経時的レプリキンカウントウイルス拡大指標〕
出願人は、2004年から2008年の間に分離された標本についてwww.pubmed.comで公的に入手可能なインフルエンザウイルスのH5N1株の分離株のpB1遺伝子領域の全てのアミノ酸配列を分析した。分離株は、配列が入手可能であった各年について国内のトリの種によって分類された。
【0212】
pB1遺伝子領域における連続的および重複するレプリキンペプチドの濃度が、各分離株について決定された(レプリキン・ピーク・ジーンのレプリキンカウント)。各年内、各国において、標準偏差を伴って平均レプリキンカウントが決定された。中国は2004年から2008年までの各年について最も多い数の分離株を有することが見出され、各年の中国国内におけるニワトリからの全てのH5N1分離株の平均レプリキンカウント(標準偏差を伴う)が対照として選ばれ、この対照に対して他のレプリキンカウントが決定された(分析用に利用可能な非常に多くの分離株の中でもレプリキンカウントにおける限定的な変動性のために、中国が対照として選らばれた)。
【0213】
所与の国の所与の年における各々の個々の分離株についてのレプリキンカウントを、その年における中国のニワトリからの全ての分離株についての平均レプリキンカウントから1標準偏差と比較した。各国内において、平均値の1標準偏差よりも大きいレプリキンカウント数、および、平均値の1標準偏差よりも小さいレプリキンカウント数を決定した。その後、各年の各国について、平均値の1標準偏差よりも大きいレプリキンカウントの割合を、平均値の1標準偏差よりも小さいレプリキンカウントの割合で割って、比、すなわちレプリキンカウントウイルス拡大(RCVE)指標を提供した。1より大きいRCVE指標を有する国々において、翌年または翌数年のH5N1の拡大が予測された。1より小さいRCVE指標を有する国々において、翌年または翌数年の収縮またはウイルス減退が予測された。
【0214】
5セットのRCVE指標を計算し、例として当業者用に以下で報告する。当業者は、任意の領域、時、または種のデータの予測方法をどのように繰り返すかを理解するであろうし、集団が拡大すると予測された分離株において特定された治療用化合物を含む、RCVE指標によって予測された大発生に対する予防、緩和および処理の方法をどのように実施するかを本明細書の開示から理解するであろう。
【0215】
以下の表9〜表13において、対照の平均値の報告された標準偏差よりも上の個々のレプリキンカウントは、太字になっている。対照の平均値の報告された標準偏差より下の個々のレプリキンカウントは、イタリック体で太字になっている。対照と比較して、RCVE指標比を各群の分離株について報告する。
【0216】
表9において、2004年の中国国内のハクチョウからの個々のH5N1分離株についてのレプリキンカウントを、2004年の中国からの全てのニワトリのH5N1分離株についての年次平均レプリキンカウントの対照と比較する。

2004年のH5N1のレプリキンカウント
【表9】

【0217】
2004年の中国におけるハクチョウについてのRCVE指標は、12.5/0である。分母がゼロのときゼロは1として設定されるので、指標は、12.5の比に戻り、これは拡大する集団を予測する。この予測された拡大は、2006年の中国におけるハクチョウの拡大する集団についての以下の表11に見られる。
【0218】
表10において、2005年のモンゴル、ロシア、および日本におけるハクチョウからの個々の分離株についてのレプリキンカウントを、2005年の中国からの全てのH5N1ニワトリ分離株についての年次平均レプリキンカウントの対照と比較する。

2005年のH5N1レプリキンカウント
【表10】

【0219】
2005年のモンゴルにおけるハクチョウについてのRCVE指標は1.3であり、RCVE指標が1よりも大きいので、モンゴルにおけるH5N1集団の拡大を予測する。モンゴルからのこの予測された拡大は、ハクチョウおよびモンゴルからの他のトリの飛行経路であると知られている、スウェーデンおよびデンマークなどのヨーロッパの国々において以下で見られる。
【0220】
表11において、8つの異なる国々の様々な種のトリからの個々の分離株についてのレプリキンカウントを、2006年の中国からの全てのH5N1ニワトリ分離株についての年次平均レプリキンカウントの対照と比較する。デンマークにおいて、アヒル、ハクチョウ、および、ハヤブサの分離株が報告された。チェコ共和国において、シチメンチョウおよびハヤブサの分離株が報告された。全ての他の対照でない分離株はハクチョウ由来である。

2006年のH5N1レプリキンカウント
【表11】

【0221】
RCVE指標は、ドイツ、スロベニア、スコットランド、チェコ共和国、および中国における拡大を予測する。指標は、スウェーデン、デンマーク、およびモンゴルにおける収縮または減退を予測する。2005年に1.3の指標が拡大を予測した一方で、指標は、2006年のモンゴルにおけるハクチョウのH5N1インフルエンザ集団の収縮または減退を予測することは注目すべきである。2006年に予測されたように、2007年に、H5N1分離株はモンゴルにおいて報告されなかった。以下の表12を参照されたい。
【0222】
表12において、2007年の日本におけるハクチョウからの個々の分離株についてのレプリキンカウントを、2007年の中国からの全てのニワトリH5N1分離株についての年次平均レプリキンカウントの対照と比較する。

2007年のH5N1レプリキンカウント
【表12】

【0223】
2007年の日本におけるハクチョウについてのRCVE指標は、50/0である。分母がゼロのときゼロは1として設定されるので、指標は、50の比に戻り、これは拡大する集団を予測する。したがって小さいサンプルサイズにもかかわらず、指標は、拡大を予測し、これは日本のハクチョウにおける拡大する集団についての以下の表13に見られる。
【0224】
表13において、2008年の日本におけるハクチョウからの個々の分離株についてのレプリキンカウントを、2008年の中国からの全てのニワトリH5N1分離株についての年次平均レプリキンカウントの対照と比較する。2008年のニワトリからのたった3つの分離株が報告され、分析用に利用可能であった。

2008年のH5N1レプリキンカウント
【表13】

【0225】
2008年の日本におけるハクチョウについてのRCVE指標は、1.8であり、これは日本のハクチョウにおけるインフルエンザの将来の拡大を予測する。
【0226】
前述されたようにRCVE指標は、大発生に関与する病原体の集団の、現在の生存状態、および、拡大状態または収縮/減退状態の一つの尺度として当業者によって実践されうる。当業者は、コンピューターシミュレーションによりレプリキン・ピーク・ジーンを分離でき、レプリキン・ピーク・ジーンのレプリキンカウントを測定でき、そして、大発生の深刻度、大発生の方向、および近隣の地理的領域への付随する危険性を理解するために、同じ期間および前の期間の他の地理的領域におけるウイルスの関連する株のレプリキンカウントデータを比較することができる。ハリケーンを特定し追跡するように、当業者へのかなりの利益は、治療法を開発する時間、ならびに、家禽の隔離と選抜除去、ワクチン接種、および他の方法などの現在知られている、または今後知られる公衆衛生方策を設ける時間である。本明細書において開示された方法はさらに、当業者に、本明細書において開示された合成レプリキンワクチンを製造するための時間を提供する。
【0227】
〔実施例8〕
〔同じおよび関連するマラリア株の経時的レプリキンカウント拡大指標〕
2004年から2008年までの熱帯熱マラリア原虫分離株のヒスチジンに富むタンパク質遺伝子の全ての公的に入手可能な配列をレプリキン濃度について分析する。分離株は領域ごとに分類する。
【0228】
各年内で各領域における平均レプリキンカウントを標準偏差と共に決定する。2004年から2008年までの各年について最も数が多い分離株、または、分離株のレプリキンカウントの中で最も小さい変動性(あるいはこの双方)を有する領域を対照として選び、この対照に対して他のレプリキンカウントを分析した。所与の年、所与の領域における各々の個々の分離株についてのレプリキンカウントを、対照領域からの全ての分離株についての平均レプリキンカウントから1標準偏差と比較する。各領域内で、平均値の1標準偏差よりも大きいレプリキンカウント数、および、平均値の1標準偏差よりも小さいレプリキンカウント数を、決定する。それから各年の各領域について、平均値の1標準偏差よりも大きいレプリキンカウントの割合を、平均値の1標準偏差よりも小さいレプリキンカウントの割合で割って、比、すなわちレプリキンカウント拡大(RCE)指標を提供する。1よりも大きいRCE指標を有する領域において、翌年または翌数年のマラリアの拡大が予測される。1よりも小さいRCE指標を有する領域において、翌年または翌数年のマラリアの収縮が予測される。
【0229】
マラリアが拡大すると予測される領域では、レプリキン・ピーク・ジーンが、領域についての平均レプリキンカウントよりも高いレプリキンカウントを有する分離株において特定される。レプリキン・ピーク・ジーンおよび/またはレプリキン・ピーク・ジーン内の1レプリキンペプチド(もしくは複数のレプリキンペプチド)が、診断目的および/または治療目的のための免疫原性化合物として選択される。拡大する集団に対するワクチンが、免疫原性化合物を含んで製造される。このワクチンは、拡大するマラリア集団を緩和するために投与される。
【0230】
〔実施例9〕
〔同じおよび関連する口蹄疫ウイルス株における経時的レプリキンカウントウイルス拡大指標〕
2004年から2008年までのO型口蹄疫ウイルスの分離株のVP1遺伝子の全ての公的に入手可能な配列を、レプリキン濃度について分析する。分離株は領域ごとに分類する。
【0231】
各年内で各領域における平均レプリキンカウントを標準偏差と共に決定する。2000年から2008年までの各年について、最も数が多い分離株、または、分離株のレプリキンカウントの中で最も小さい変動性(あるいはこの双方)を有する領域を対照として選び、この対照に対して他のレプリキンカウントを分析する。所与の年、所与の領域における各々の個々の分離株についてのレプリキンカウントを、対照領域からの全ての分離株についての平均レプリキンカウントから1標準偏差と比較する。各領域内で、平均値の1標準偏差よりも大きいレプリキンカウント数、および、平均値の1標準偏差よりも小さいレプリキンカウント数を、決定する。それから各年の各領域について、平均値の1標準偏差よりも大きいレプリキンカウントの割合を、平均値の1標準偏差よりも小さいレプリキンカウントの割合で割って、比、すなわちレプリキンカウントウイルス拡大(RCVE)指標を提供する。1よりも大きいRCVE指標を有する領域において、翌年または翌数年の口蹄疫の拡大が予測される。1よりも小さいRCVE指標を有する領域において、翌年または翌数年の口蹄疫の収縮が予測される。
【0232】
口蹄疫が拡大すると予測される領域では、レプリキン・ピーク・ジーンが、領域についての平均レプリキンカウントよりも高いレプリキンカウントを有する分離株において特定される。レプリキン・ピーク・ジーンおよび/またはレプリキン・ピーク・ジーン内の1レプリキンペプチド(もしくは複数のレプリキンペプチド)が、診断目的および/または治療目的のための免疫原性化合物として選択される。拡大する集団に対するワクチンが、免疫原性化合物を含んで製造される。このワクチンは、拡大する口蹄疫ウイルス集団を緩和するために投与される。
【0233】
〔実施例10〕
〔合成レプリキンワクチンはニワトリのH5N1をブロックする〕
12個のH5N1レプリキンペプチドの、ほぼ等しい重量部での混合物を含有する合成レプリキンワクチンを、米国ノースカロライナのガンカモ科の黒いトリから分離された低病原性H5N1株に対して、ニワトリにおいて試験した。低病原性H5N1株は、渡り鳥に感染し、米国の市販のニワトリ群の健康および生産性を損ない、通常この市販ニワトリ群においてほとんど死亡率を伴わない。これら低病原性H5N1株は、ウイルス構造において、ユーラシアにおけるこれらのより致死性の高い高病原性H5N1類縁体と、非常に密接に関係する。低病原性株から高病原性株への変異は、今のところ観察されていないが、この種の変異は次第に当業者によって予測されうる。
【0234】
試験されたワクチンは、H5N1ウイルスの侵入部位と、宿主細胞内への侵入を成し遂げるこれらH5N1ウイルスの複製部位との、双方をブロックするよう作り出された。したがって、このワクチンは、ツーパンチ(TWO-PUNCH)ワクチンと呼ばれる。以下で証明するように、ニワトリにおけるツーパンチワクチンの記載された試験による証拠は、ワクチンが設計された目的である、この双方のメカニズムは、有効であったと示唆する:つまり、(1)接種されたニワトリへのウイルス侵入は、ワクチンによる免疫によって減少された、また、(2)感染細胞内でのウイルス複製は、試験されたトリの糞便内のウイルスの排出を阻止するようにワクチンによる免疫によって十分に制限された。
【0235】
ツーパンチのレプリキンワクチンは、インフルエンザ株の間で共有され、かつ、インフルエンザ株内に何十年もの間保存されているインフルエンザレプリキンペプチドに基づく。このワクチンは、H5N1ウイルスのゲノムから発現されると特定された12個のレプリキンペプチドの混合物として作り出された。これらレプリキンペプチドのうちの6個は、インフルエンザウイルスの細胞への付着および侵入に関与する、H5N1の赤血球凝集素タンパク質から分離された配列にしたがって合成される。これらレプリキンペプチドのうちの6個は、インフルエンザウイルスの宿主細胞内での複製に関与すると特定された、H5N1のpB1遺伝子領域から分離された配列にしたがって合成される。
【0236】
ワクチン内に含有される以下の6個のレプリキン配列は、赤血球凝集素タンパク質から分離された:
(1) HAQDILEKEHNGKLCSLKGVRPLILK(配列ID番号:1);
(2) KEHNGKLCSLKGVRPLILK(配列ID番号:2);
(3) KKNNAYPTIKRTYNNTNVEDLLIIWGIHH(配列ID番号:3);
(4) HHSNEQGSGYAADKESTQKAIDGITNK(配列ID番号:4);
(5) HDSNVKNLYDKVRLQLRDNAK(配列ID番号:5);および、
(6) KVRLQLRDNAKELGNGCFEFYH(配列ID番号:6)。
【0237】
ワクチン内に含有される以下の6個のレプリキン配列は、pB1遺伝子領域から分離された:
(1) KDVMESMDKEEMEITTH(配列ID番号:7);
(2) HFQRKRRVRDNMTKK(配列ID番号:8);
(3) KKWSHKRTIGKKKQRLNK(配列ID番号:9);
(4) HKRTIGKKKQRLNK(配列ID番号:10);
(5) HEGIQAGVDRFYRTCKLVGINMSKKK(配列ID番号:11);および、
(6) HSWIPKRNRSILNTSQRGILEDEQMYQKCCNLFEK(配列ID番号:12)。
【0238】
ワクチンは、12個のペプチドのほぼ等しい重量部での混合物を含む。以下のペプチドの量をワクチンの初期混合物を作るために混ぜ合わせた:
HAQDILEKEHNGKLCSLKGVRPLILK(配列ID番号:1) 239.6
mg
KEHNGKLCSLKGVRPLILK(配列ID番号:2) 200.8
mg
KKNNAYPTIKRTYNNTNVEDLLIIWGIHH(配列ID番号:3) 213.0
mg
HHSNEQGSGYAADKESTQKAIDGITNK(配列ID番号:4) 135.6
mg
HDSNVKNLYDKVRLQLRDNAK(配列ID番号:5) 170.8
mg
KVRLQLRDNAKELGNGCFEFYH(配列ID番号:6) 188.3
mg
KDVMESMDKEEMEITTH(配列ID番号:7) 161.9
mg
HFQRKRRVRDNMTKK(配列ID番号:8) 138.3
mg
KKWSHKRTIGKKKQRLNK(配列ID番号:9) 217.8
mg
HKRTIGKKKQRLNK(配列ID番号:10) 178.0
mg
HEGIQAGVDRFYRTCKLVGINMSKKK(配列ID番号:11) 159.2
mg
HSWIPKRNRSILNTSQRGILEDEQMYQKCCNLFEK(配列ID番号:12) 233.8
mg
混合物の総量は2237.1mgであった。
【0239】
ペプチド混合物をその後、3つの異なる日(1日目、7日目および28日目)にワクチンを投与するために、3つの等しい部分に分けた。水に溶解した後、3つの等しい部分を、毎日合計40羽のトリに投与するように、それぞれ20羽である2つのグループの個々のトリに投与した。(鼻腔内および眼球内のいずれか、あるいは噴霧吸入による)投与時に各トリに投与された活性ペプチド成分の総量は、一投与当たり一羽のトリにつき約18.6mgであった。
【0240】
ワクチン溶液を、ふ化後1日目に第1投与で鼻腔内に、ふ化後7日目に第2投与で眼球内に、そして、ふ化後14日目に第3投与で微細噴霧吸入により、ニワトリに投与した。
【0241】
生後第1日目のニワトリを、一グループ当たりニワトリ20羽となるように4つのグループに分けた。第1グループは、ワクチン接種されず、低病原性H5N1で攻撃されない対照グループであった。第2グループは、ワクチン接種され、低病原性H5N1で攻撃されなかった。第3グループは、ワクチン接種され、続いて低病原性H5N1で攻撃された。第4グループは、ワクチン接種されず、低病原性H5N1で攻撃された。
【0242】
ワクチン接種されたニワトリに対して、合成H5N1レプリキンワクチンを、ふ化後1日目に鼻腔内に投与し、ふ化後7日目に眼球内に投与し、そしてふ化後14日目に微細噴霧吸入により投与した。攻撃されるニワトリのグループはその後、そのニワトリの生後28日目に低病原性H5N1ウイルスで攻撃された。選択されたニワトリからの血清を、攻撃後7日目、14日目、および21日目に、H5N1ウイルスに対する抗体について全てのグループにおいて分析した。ウイルス糞便排出についてPCRも全てのグループにおいて分析した。
【0243】
ワクチン接種されなかった対照ニワトリは、予想された高いウイルス侵入(H5N1に対する抗体の高い力価によって示されるとおり)と、予想された高いウイルス複製(PCRによって検出されたウイルスの糞便および唾液の高い排出によって示されるとおり)の双方を証明した。対照的に、ワクチン接種されたニワトリは、より低いウイルス侵入(H5N1に対する抗体の低い力価によって、または、血清中にH5N1に対する抗体が観察されないことによって、示されるとおり)、および、ワクチン接種されたニワトリにおける低いウイルス複製を示す、またはウイルス複製がないことを示す、ウイルスの糞便または唾液排出の欠如を、証明した。したがってこのデータは、ウイルスがワクチンに対するニワトリの免疫応答によって侵入を部分的に阻止されたこと、ならびに、ニワトリのシステムに侵入した限られた量のウイルスが、糞便または唾液中にウイルスを排出するのに十分なニワトリ宿主細胞における複製を阻止されたことを示唆する。
【0244】
以下の表14のデータは、特定の試験日における4つのグループ(陰性対照グループ、ワクチン接種されたグループ、ワクチン接種され低病原性H5N1で攻撃されたグループ、および低病原性H5N1で攻撃された(ワクチン接種されなかった)グループ)の各々で試験されたニワトリの数、ならびに、H5N1に対する抗体の生成が血清力価で検定されたニワトリの数を提供する。

ワクチン接種されたニワトリの低病原性H5N1攻撃の血清抗体試験
【表14】

【0245】
以下の表15のデータは、特定の試験日における4つのグループ(陰性対照グループ、ワクチン接種されたグループ、ワクチン接種され低病原性H5N1で攻撃されたグループ、および低病原性H5N1で攻撃された(ワクチン接種されなかった)グループ)の各々でニワトリの唾液および糞便中のH5N1ウイルスについて試験されたニワトリの数、ならびに、PCR分析に基づいてニワトリの糞便および唾液中にH5N1が検出されたニワトリの数を提供する。

低病原性H5N1攻撃のニワトリから排出されたH5N1ウイルスについてのPCR試験
【表15】

【0246】
表14および表15のデータは、ツーパンチワクチンの二重保護メカニズムの有効性を証明する。第1に、ワクチン接種されずH5N1で攻撃された、いくつかのニワトリは糞便および唾液中にウイルスを排出したが、一方でワクチン接種されH5N1で攻撃されたニワトリで糞便または唾液中にウイルスを排出したものはいなかった。表15を参照されたい。これらのデータは、このワクチンがウイルスの複製に対する保護効果を与えたことを証明する。第2に、ワクチン接種されずH5N1で攻撃されたニワトリの7羽中4羽が、7日目にH5N1に対する血清抗体を生成し、ワクチン接種されずH5N1で攻撃されたニワトリの9羽中7羽が、14日目にH5N1に対する血清抗体を生成し、そしてワクチン接種されずH5N1で攻撃されたニワトリの9羽中3羽が、28日目にH5N1に対する血清抗体を生成していたが、一方でワクチン接種され攻撃されたニワトリの7羽中たった1羽だけが、7日目にH5N1に対する血清抗体を生成し、ワクチン接種され攻撃されたニワトリの6羽中たった3羽だけが、14日目にH5N1に対する血清抗体を生成し、そして、ワクチン接種され攻撃されたニワトリの7羽中たった2羽だけが、21日目にH5N1に対する血清抗体を生成していた。表14を参照されたい。これらのデータは、ワクチン接種されたニワトリの幾羽かについて、H5N1ウイルス攻撃が、ニワトリのシステム内への侵入前に(おそらく粘膜で生成された抗体によって)停止されたことを証明する。これらのデータはさらに、ウイルスがシステムに侵入した(結果として血清抗体の生成をもたらした)、ワクチン接種され攻撃されたニワトリについて、ウイルスは、それにもかかわらず、糞便または唾液内に排出されなかったことを証明する。
【0247】
表14のデータから分かるように、ワクチン接種されず攻撃されたほとんど全てのトリは抗体陽転した(検出可能な抗体を生成した)。これは、ワクチン接種されなかったトリの感染を証明する。他方では、ワクチン接種され攻撃されたトリのたった数羽だけが、抗体陽転した。さらに、これらの抗体陽転したワクチン接種されたトリについては、抗体力価は低かった。加えて、陰性対照グループは、抗体陽転しなかった。これらのデータは、トリにおけるワクチンの保護効果を証明する。
【0248】
加えて、表15は、ワクチン接種されたトリの糞便および唾液中に検出可能なインフルエンザがなかったことを証明する。ウイルス排出がこのインフルエンザレプリキンワクチンによって阻止されたことは、特に重要である。それは、アジアと米国との双方における渡り鳥群および家禽群のH5N1ウイルスの蓄積の維持(ならびにこれらの蓄積からのH5N1ウイルスの地域的広がり)は、近隣のニワトリおよびトリによって拾われるウイルス排出物に依存するからである。H5N1ウイルスの株の致死性レベルにかかわらず、ウイルス排出がないので、ウイルスの広がりはないと予想される。
【0249】
したがって、ニワトリにおけるツーパンチ・レプリキンペプチドワクチンの投与から観察されたデータは、(1)ウイルスの侵入に対する障壁、(2)ウイルス複製の障害物、および(3)ウイルスの糞便による拡散の障害物としての、ワクチンの効力を証明している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1病原体の集団の拡大を予測する方法であり、
前記第1病原体の分離株におけるレプリキン濃度の少なくとも1つのサイクルを特定することと、
前記第1病原体の前記集団の拡大は、レプリキン濃度の前記少なくとも1つのサイクルの少なくとも1つの上昇部分の出現後に起こるであろうと予測することと、
を含む、方法であって、
前記少なくとも1つのサイクルは、サイクルAである、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの上昇部分は、ピークを含み、前記第1病原体の前記集団の前記拡大は、前記ピークの出現後に予測される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの上昇部分は、少なくとも第1上昇部分および第2上昇部分を含み、前記第1上昇部分は、前記第2上昇部分前の適時に出現する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの上昇部分は、少なくとも上昇部分A’、上昇部分B’、および、上昇部分C’を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記上昇部分B’は、ピークBを含み、前記上昇部分A’は、ピークAを含み、前記上昇部分B’のピークBは、前記上昇部分A’のピークAよりも高いレプリキン濃度を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
病原体の集団の拡大を予測する方法であって、
前記病原体または関連する病原体の複数の分離株のレプリキン濃度の少なくとも1つのサイクルを特定することと、
第1時点または第1期間での前記少なくとも1つの特定されたサイクル内において、前記病原体の複数の分離株の前記レプリキン濃度の第1ピークを特定することと、
第2時点または第2期間で分離された同じ種の病原体の集団の拡大が、前記第1時点または第1期間の後に起こるであろうと予測することと、
を含む、方法。
【請求項7】
前記第1病原体は、マラリア・トリパノソーマ、西ナイルウイルス、口蹄疫ウイルス、または、インフルエンザウイルスである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1病原体は、インフルエンザウイルスのH5N1株である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
病原体の少なくとも1つの他の株の分離株におけるレプリキン濃度の少なくとも1つの他のサイクルを特定することであって、前記少なくとも1つ他のサイクルは、サイクルBであり、サイクルBは、サイクルAと同調性を共有する、特定することと、
前記第1病原体の前記集団の拡大が、前記サイクルA内の少なくとも1つの上昇部分の前記出現後に起こるであろうと予測することであって、前記サイクルAの少なくとも1つの上昇部分は、サイクルBの上昇部分に対応する、予測することと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第1病原体は、インフルエンザウイルスの株であり、前記病原体の少なくとも1つの他の株は、インフルエンザウイルスの異なる株である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1病原体は、インフルエンザウイルスのH5N1株であり、前記病原体の少なくとも1つの他の株は、インフルエンザウイルスのH9N2株である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記第1病原体の前記集団の前記拡大は、前記ピーク後3年以内に予測される、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記第1病原体の前記集団の前記拡大は、前記ピーク後1年以内に予測される、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記第1病原体の前記集団の前記拡大は、前記病原体の次の毒性シーズン後に予測される、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
病原体のレプリキンペプチドもしくはレプリキン・ピーク・ジーン、
を含む、分離または合成されたタンパク質、タンパク質断片、もしくはペプチドであって、
前記病原体は、請求項1に記載の方法にしたがって前記病原体の集団の拡大を有すると予測される、分離または合成されたタンパク質、タンパク質断片、もしくはペプチド。
【請求項16】
1つ以上のレプリキンペプチド、および/または、1つ以上のレプリキン・ピーク・ジーンからなる、
請求項15に記載の分離または合成されたタンパク質、タンパク質断片、もしくはペプチド。
【請求項17】
前記1つ以上のレプリキンペプチドは、レプリキン濃度における少なくとも1つのサイクルの間、前記少なくとも1つのサイクルにおける少なくとも2つの連続する時点または期間に保存される、請求項16に記載の分離または合成されたタンパク質、タンパク質断片、もしくはペプチド。
【請求項18】
HAQDILEKEHNGKLCSLKGVRPLILK(配列ID番号:1)、KEHNGKLCSLKGVRPLILK(配列ID番号:2)、KKNNAYPTIKRTYNNTNVEDLLIIWGIHH(配列ID番号:3)、HHSNEQGSGYAADKESTQKAIDGITNK(配列ID番号:4)、HDSNVKNLYDKVRLQLRDNAK(配列ID番号:5)、KVRLQLRDNAKELGNGCFEFYH(配列ID番号:6)、KDVMESMDKEEMEITTH(配列ID番号:7)、HFQRKRRVRDNMTKK(配列ID番号:8)、KKWSHKRTIGKKKQRLNK(配列ID番号:9)、HKRTIGKKKQRLNK(配列ID番号:10)、HEGIQAGVDRFYRTCKLVGINMSKKK(配列ID番号:11);または、HSWIPKRNRSILNTSQRGILEDEQMYQKCCNLFEK(配列ID番号:12)のペプチドのうち少なくとも1つを含む、請求項17に記載の分離または合成されたタンパク質、タンパク質断片、もしくはペプチド。
【請求項19】
請求項15に記載の分離または合成されたタンパク質、タンパク質断片、もしくはペプチドを含む、免疫原性組成物。
【請求項20】
前記分離または合成されたタンパク質、タンパク質断片、もしくはペプチドは、レプリキンペプチドまたはレプリキン・ピーク・ジーンからなる、請求項19に記載の免疫原性組成物。
【請求項21】
前記レプリキンペプチド、または前記レプリキン・ピーク・ジーンは、レプリキン濃度における少なくとも1つのサイクルのうちの少なくとも1つの間、前記少なくとも1つのサイクルのうちの前記少なくとも1つにおける少なくとも2つの連続する時点もしくは期間に保存される、請求項20に記載の免疫原性組成物。
【請求項22】
集団が拡大すると予測された第1病原体の大発生を防ぐか、緩和するか、または処理する方法であって、
請求項1に記載の方法にしたがって、前記第1病原体の前記集団の前記拡大を予測することと、
前記第1病原体の前記予測された大発生を緩和するか、防ぐか、または処理するために、前記第1病原体の構造もしくはゲノムの分離または合成された部分を含む化合物を、動物または患者に投与することと、
を含む、方法。
【請求項23】
ワクチンを作る方法であって、
請求項1にしたがって第1病原体の集団の拡大を予測することと、
ワクチン中に含まれるべき前記第1病原体の構造またはゲノムの部分を特定することと、
を含む、方法。
【請求項24】
コンピュータ可読媒体であって、
当該コンピュータ可読媒体上に記憶されている命令を有し、
前記命令が実行されると、プロセッサが請求項1の第1病原体の集団の拡大を予測する方法を実施する、コンピュータ可読媒体。
【請求項25】
請求項1の前記第1病原体の前記集団の拡大を予測する前記方法は、ディスプレイ、使用者、研究者、または他の機械もしくは人物にその予測を出力することをさらに含む、請求項24に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項26】
当該コンピュータ可読媒体上に記憶されている命令をさらに含み、
前記命令が実行されると、プロセッサが、ディスプレイ、使用者、研究者、または他の機械もしくは人物に対して、前記第1病原体中に保存されている前記第1病原体の少なくとも1つのレプリキンペプチドを特定する、請求項24に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項27】
病原体の株の拡大を予測する方法であって、
第1地理的領域の第1期間における病原体の株の複数の分離株について、平均レプリキンカウント、および前記平均レプリキンカウントの標準偏差を決定することと、
第2期間および/または第2地理的領域からの病原体の同じ株または関連する株の少なくとも1つの分離株のレプリキンカウントを決定することであって、前記第2期間は前記第1期間とは異なり、および/または、前記第2地理的領域は前記第1地理的領域とは異なり、前記第2期間は必ずしも前記第1期間の後である必要はない、決定することと、
前記少なくとも1つの分離株の前記レプリキンカウントが、前記第1期間に前記第1地理的領域において分離された前記複数の分離株の前記レプリキンカウントの平均値の1標準偏差よりも大きい場合、前記第2期間および/または前記第2地理的領域において分離された病原体の前記株の拡大を予測することと、
を含む、方法。
【請求項28】
第2期間および/または第2地理的領域からの病原体の前記同じ株の前記少なくとも1つの分離株は、前記第2期間および/または前記第2地理的領域からの複数の分離株であり、前記第2期間および/または前記第2地理的領域からの前記複数の分離株の各分離株のレプリキンカウントは、前記平均レプリキンカウントの前記1標準偏差と別個に比較される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記第2期間および/または前記第2地理的領域において分離された病原体の前記株の前記拡大は、前記第1期間に前記第1地理的領域において分離された前記複数の分離株の前記レプリキンカウントの前記平均値の1標準偏差よりも大きい、前記第2期間および/または前記第2地理的領域からの前記複数の分離株のレプリキンカウント数が、前記平均値の前記1標準偏差よりも小さい、前記第2期間および/または前記第2地理的領域からの前記複数の分離株の前記レプリキンカウント数よりも大きい場合に、予測される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記病原体は、インフルエンザウイルス、マラリア・トリパノソーマ、西ナイルウイルス、または、口蹄疫ウイルスである、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記第1期間は、1年であり、前記第1地理的領域は、ある国である、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記第2期間は、1年であり、前記第2地理的領域は、ある国である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
病原体の大発生を防ぐか、緩和するか、または処理する方法であって、
請求項27にしたがって病原体の株の拡大を予測することと、
前記病原体の前記大発生を防ぐか、または処理するために前記病原体の少なくとも1つの分離株の構造もしくはゲノムの分離または合成された部分を含む化合物を、動物または患者に投与することと、
を含む、方法。
【請求項34】
前記方法は、コンピュータによって実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
前記方法は、コンピュータによって実施される、請求項27に記載の方法。
【請求項36】
前記方法は、コンピュータによって実施される、請求項6に記載の方法。
【請求項37】
前記方法は、コンピュータによって実施される、請求項28に記載の方法。
【請求項38】
前記病原体は、マラリア・トリパノソーマ、西ナイルウイルス、口蹄疫ウイルス、または、インフルエンザウイルスである、請求項6に記載の方法。
【請求項39】
前記病原体は、インフルエンザウイルスのH5N1株である、請求項6に記載の方法。
【請求項40】
定量的サイクル構造であり、
時間経過に伴う微生物の株において特定されるレプリキンペプチド濃度、
を含む、定量的サイクル構造であって、
前記サイクル構造は、前記微生物の株の集団の拡大および/または収縮、前記微生物の株の感染性、ならびに/あるいは、その宿主における前記微生物の株の致死性と適時相関する、定量的サイクル構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図8C】
image rotate


【公表番号】特表2011−519837(P2011−519837A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506455(P2011−506455)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/041565
【国際公開番号】WO2009/132209
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(510280419)
【出願人】(510280420)
【出願人】(510280431)
【出願人】(510280442)
【Fターム(参考)】