説明

レベルマーカ

【課題】鉄筋等の支持材に対する取付や位置調整を簡単に行うことができて、取り外しも行えて再使用できるレベルマーカを、簡単な構成によって提供すること。
【解決手段】天端レベル30に対応する位置に配置されている、または配置した支持材20に当接される基部11と、この基部11に一体化されて支持材20を両側から挟持する一対のアーム部12とを備えて、支持材20に対して両アーム部12によって挟持させたとき、天端レベル30を指し示し得るようにしたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打設したコンクリートの表面が、設計された天端レベルとなるようにするためのレベルマーカに関するものである。
【背景技術】
【0002】
打設されたコンクリートの表面位置、またはこの上に流し込まれたレベリング材の表面位置は、「天端レベル」と言われるが、この「天端レベル」は、設計された位置、つまり高さでなければならない。換言すれば、設計された「天端レベル」とするためには、コンクリートの打設量を調整しなければならないのであり、この打設量の調整手段として、特許文献1に示されているようなものが採用されている。
【0003】
この特許文献1には、図7に示すように、「摺動片に端部を介して、間隔を隔てて位置するラチェットのラックに、舌片より連設されている抱持部を連設し、舌片を境して、ラチェットのラックに端部を介して、間隙てて位置する摺動片を連設し、抱持部を介して舌片に連設」されている「レベル用挟持具」が提案されており、この「レベル用挟持具」では、抱持部が収縮自在であるため、当該「レベル用挟持具」が取り付けられるべき鉄筋などの支持材に大小があっても、十分対応することができるものとなっている。
【特許文献1】実開昭60−129453号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この特許文献1の「レベル用挟持具」では、抱持部を収縮させて、ラックにラチェットを一旦係合させてしまうと、その係合解除を容易には行えなくなり、鉄筋等の支持材から容易には取り外せなくなると考えられ、この「レベル用挟持具」の位置調整のし直しや、再使用ができないものと考えられる。特に、天端レベルを指し示すこの種の「レベル用部材」は、「レベル指示のための位置調整」が行えないとなると、致命傷を抱えていると考えられる。
【0005】
そこで、本発明者等は、この種の「レベル用挟持具」やマーカについて、鉄筋等の支持材に対する取付は勿論、位置調整も簡単に行え、しかも再使用できるようにするにはどうしたらよいか、について種々検討を重ねてきた結果、本発明を完成したのである。
【0006】
すなわち、本発明の目的とするところは、鉄筋等の支持材に対する取付や位置調整を簡単に行うことができて、取り外しも行えて再使用できるレベルマーカを、簡単な構成によって提供することにある。また、本発明の他に目的とするところは、支持材の大きさが異なっても、これに簡単に適応することのできるレベルマーカを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために、まず、請求項1に係る発明の採った手段は、後述する最良形態の説明中で使用する符号を付して説明すると、
「コンクリートによって形成すべき天端レベル30を指し示すレベルマーカ10であって、
天端レベル30に対応する位置に配置されている、または配置した支持材20に当接される基部11と、この基部11に一体化されて支持材20を両側から挟持する一対のアーム部12とを備えて、
支持材20に対して両アーム部12によって挟持させたとき、天端レベル30を指し示し得るようにしたことを特徴とするレベルマーカ10」
である。
【0008】
すなわち、本発明に係るレベルマーカ10は、図1にも示すように、コンクリートによって形成すべき天端レベル30を指し示すものであり、天端レベル30に対応する位置に配置されている、または配置した支持材20に嵌め込んで取り付けられるものである。この場合の支持材20は、型枠内に組み込まれた鉄筋であってもよいし、鉄筋に取り付けた別の棒材であってもよい。
【0009】
そのために、このレベルマーカ10は、図2〜図6に示すように、支持材20に当接される基部11と、この基部11に一体化されて支持材20を両側から挟持する一対のアーム部12とを備えていて、図2に示すように、両アーム部12内に支持材20が入り込むように嵌め込まれるものである。
【0010】
この嵌め込み作業は、当該レベルマーカ10の両アーム部12間に形成されているスリット内に支持材20が位置するようにしてから、当該レベルマーカ10全体を支持材20に向けて押圧するだけで、簡単に行える。当該レベルマーカ10を押圧すれば、その力によって両アーム部12が支持材20の太さに応じて両側に開放され、支持材20が両アーム部12内に完全に入って基部11の内面が支持材20に当接すれば、両アーム部12は元の状態に戻って支持材20を両側から挟持するからである。
【0011】
勿論、このレベルマーカ10が嵌め込まれるべき支持材20は、垂直状態に立っている鉄筋を使用すればよいが、そのような鉄筋がない場合には、別の棒材を用意して、これを垂直になるように配置して使用すればよい。
【0012】
また、当該レベルマーカ10は、その下端(図1の右側に示したものの場合)または上端(図1の左側に示したものの場合)が、設計された天端レベル30を指し示すように、支持材20に対する高さ位置を決めなければならないが、垂直に立っている支持材20または棒材に対して嵌め込んだ当該レベルマーカ10を上下に摺動させるだけで、設計された天端レベル30に合わせた位置調整が調整できる。何故なら、このレベルマーカ10においては、各アーム部12が、基部11に対してある程度の弾力性をもった状態で一体化されており、各アーム部12は、基部11に対してある程度の範囲で自由に曲がるものとなっているからである。
【0013】
さらに、このレベルマーカ10は、支持材20に対する摺動や回転が自由に行えるのであるから、これを取り外す場合に、作業し易い方向、例えば引き外しに邪魔になるものが存在しない方向に摺動または回転させることによって、取り外し作業も簡単に行えることになる。
【0014】
換言すれば、このレベルマーカ10は、図7に示した従来のもののように、抱持部を収縮させてラックとラチェットとを固定的に係合させてしまうものではないから、両アーム部12によって支持材20に挟持させたとき、この両アーム部12の挟持力以上の力を加えれば、支持材20の軸方向に対する摺動も半径方向に対する回転も、自由に行える。換言すれば、このレベルマーカ10は、それ自体が指し示す位置を自由に変更できるのである。
【0015】
そして、このレベルマーカ10は、図1の左側に示したように、天端レベル30の下側、つまりコンクリート内に埋設するように使用してもよいし、図1の右側に示したように、天端レベル30の上側、つまりコンクリート内に埋設しないで後に取り外すようにしてもよいものである。このため、コンクリート内に埋設しないで後に取り外したレベルマーカ10は、これを他の工事で再使用できることは、言うまでもないことである。
【0016】
従って、この請求項1に係るレベルマーカ10は、支持材20に対する取付や位置調整を簡単に行うことができて、取り外しも行えて再使用できるものとなっているのである。
【0017】
上記課題を解決するために、請求項2に係る発明の採った手段は、上記請求項1に記載のレベルマーカ10について、
「一対のアーム部12を1組とした組の複数を一体化したこと」
である。
【0018】
すなわち、この請求項2のレベルマーカ10では、一対のアーム部12を1組とした場合に、図3及び図6に示すように、この組を複数となるように構成して、これらの組のアーム部12を基部11に一体化したものである。
【0019】
このようにした場合には、一対のアーム部12によって構成された組の存在する数だけ、当該レベルマーカ10の支持材20に対する取り付け箇所が増加することになって、当該レベルマーカ10の支持材20に対する取り付け位置が増加することになり、その取付作業の自由度が増加することになる。つまり、当該レベルマーカ10を作業者が片手で持って支持材20に係合させたい場合に、手の中で少し回転させることにより、両アーム部12間にあるスリットを支持材20に向けることが簡単になるのであり、取付作業性が良好になっているのである。
【0020】
従って、この請求項2に係るレベルマーカ10は、上記請求項1のそれと同様な機能を発揮する他、支持材20に対する取り付け作業が容易になっているのである。
【0021】
また、上記課題を解決するために、請求項3に係る発明の採った手段は、上記請求項2に記載のレベルマーカ10について、
「前記各組を構成している一対のアーム部12の大きさを他の組のそれとは異なったものとしたこと」
である。
【0022】
このようにした場合には、支持材20の大きさ(直径)が変化しても、これに容易に対応できるものとなる。一般に、支持材20である鉄筋は、その直径が規格化されていてそれ程種類は多くなく、しかも、各組を構成しているアーム部12はある程度範囲内で自由に撓むものであるから、結果的に、支持材20の大きさ(直径)が変化しても、本発明に係るレベルマーカ10は十分対応することができるものとなるのである。
【0023】
従って、この請求項3に係るレベルマーカ10は、上記請求項2のそれと同様な機能を発揮する他、支持材20の大きさ(太さ)が異なっても、これに簡単に適応できるものとなっているのである。
【0024】
さらに、上記課題を解決するために、請求項4に係る発明の採った手段は、上記請求項1〜3のいずれかに記載のレベルマーカ10について、
「基部11またはアーム部12に、支持材20の軸心方向と平行な取付穴13を設けて、この取付穴13に補助指示部材14を位置調節可能に取り付けたこと」
である。
【0025】
すなわち、このレベルマーカ10では、図5に示すように、比較的(図1の左側の場合に比較して)深い位置に埋設して使用する場合に、当該レベルマーカ10自体では、天端レベル30の位置を指し示すことができないため、ネジや釘のような補助指示部材14を採用するようにしたものである。換言すれば、この請求項4のレベルマーカ10は、図4に示すように、基部11またはアーム部12に、支持材20の軸心方向と平行な取付穴13を設けておいて、この取付穴13に、図4の(a)及び図5に示すように、補助指示部材14を位置調節可能に取り付けるようにしたものである。
【0026】
この補助指示部材14を取付穴13に位置調節可能に取り付ける方法としては、最も簡単には、取付穴13をネジ穴としておいて、補助指示部材14をネジにすればよい。これにより、支持材20に一旦取り付けたレベルマーカ10に対して、ネジを螺進あるいは螺退させることにより、当該補助指示部材14のレベルマーカ10からの突出量を調整できる。なお、取付穴13内に板バネを挿入しておけば、補助指示部材14の取付穴13に対する位置決めを自在に行えることになり、補助指示部材14の取付穴13に対する位置調節可能な取付が可能になる。
【0027】
勿論、この補助指示部材14を採用した場合には、図5に示すように、その頭部が天端レベル30を指し示すことになり、この頭部の位置に合わせて、モルタルやレベリング材等を流し込めば良いことは言うまでもない。
【0028】
従って、この請求項4のレベルマーカ10は、上記請求項1〜3のそれと同様な機能を発揮する他、取付穴13に対して補助指示部材14を進退させることにより、指し示すべき天端レベル30の位置調整が容易に行えるものとなっているのである。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したとおり、本発明においては、
「コンクリートによって形成すべき天端レベル30を指し示すレベルマーカ10であって、
天端レベル30に対応する位置に配置されている、または配置した支持材20に当接される基部11と、この基部11に一体化されて支持材20を両側から挟持する一対のアーム部12とを備えて、
支持材20に対して両アーム部12によって挟持させたとき、天端レベル30を指し示し得るようにしたこと」
にその構成上の主たる特徴があり、これにより、鉄筋等の支持材20に対する取付や位置調整を簡単に行うことができて、取り外しも行えて再使用できるレベルマーカ10を、簡単な構成によって提供することができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
次に、上記のように構成した各請求項に係る発明を、図面に示した最良の形態であるレベルマーカ10について説明すると、図1には、最良形態に係るレベルマーカ10を実際に使用している状態が示してある。このレベルマーカ10は、図2〜図6に示したように、基部11と、アーム部12とを有するものであり、例えば合成樹脂材料を使用して一体成形したものである。
【0031】
基部11は、図2にも示したように、内面が円弧状となっているものであり、支持材20の表面に「面」で当接することができるものである。この基部11には、一対のアーム部12が一体化してあり、図3にも示したように、これらのアーム部12の内面と基部11の内面とで、支持材20の断面形状である円に近い円弧面が形成できるようになっている。
【0032】
また、各アーム部12の先端部には案内面12aが一体化してあり、これらの案内面12aは、当該レベルマーカ10を支持材20に対して押圧したとき、両アーム部12を拡開するように、支持材20の表面にて案内されるものである。そして、これらの案内面12aの先端によって、図2あるいは図3の(a)に示したように、スリットが形成されるのであり、このスリットの存在によって支持材20へ当接させたときの位置決めが行えるようになっている。換言すれば、両案内面12aによって形成されているスリットを支持材20の表面に合わせれば、当該レベルマーカ10の支持材20に対する嵌め込みを確実に行える位置に、当該レベルマーカ10の位置合わせができるのである。
【0033】
また、本最良形態のレベルマーカ10は、その全体を、赤や黄色のような明色を採用した着色が施してあり、当該レベルマーカ10の存在によって、天端レベル30を指し示すことができるようにしてある。
【0034】
さらに、このレベルマーカ10については、図3の(a)、あるいは図6の(a)及び(b)に示したように、一対のアーム部12を1組とした組の複数を、基部11にて一体化してある。これにより、各アーム部12間のスリット数を増加させて、一本の支持材20に対する取り付け位置が複数になるようにしてある。
【0035】
また、このレベルマーカ10については、図6の(b)にて明瞭に示したように、前記各組を構成している一対のアーム部12の大きさを他の組のそれとは異なったものとしてある。これにより、支持材20の太さが異なった場合においても、当該レベルマーカ10の支持材20に対する取り付けが容易に行えるようにしてある。
【0036】
そして、このレベルマーカ10については、図4に示したように、その基部11に肉厚部11aを形成しておいて、この肉厚部11aに取付穴13を設けるように実施することもある。すなわち、この取付穴13を設けたレベルマーカ10では、図5に示したように、比較的深い位置に埋設して使用する場合に、当該レベルマーカ10自体では、天端レベル30の位置を指し示すことができないため、ネジや釘のような補助指示部材14を採用して、この補助指示部材14を上記取付穴13に進退可能に取り付けるようにしたものである。
【0037】
換言すれば、これらの取付穴13及び補助指示部材14を有するレベルマーカ10は、支持材20に一旦取り付けたレベルマーカ10に対して、ネジを螺進あるいは螺退させることにより、当該補助指示部材14のレベルマーカ10からの突出量が調整できるものとしてある。勿論、取付穴13内に板バネを挿入しておけば、補助指示部材14の取付穴13に対する位置決めを自在に行えることになり、取付穴13や補助指示部材14にネジ部分を形成しなくても、当該補助指示部材14の取付穴13に対する位置調節可能な取付が可能になる。
【0038】
勿論、この補助指示部材14を採用した場合には、図5に示したように、その頭部が天端レベル30を指し示すことになり、この頭部の位置に合わせて、モルタルやレベリング材等を流し込めば良いことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係るレベルマーカを施工した例を示す断面図である。
【図2】同レベルマーカの拡大斜視図である。
【図3】同レベルマーカを示すもので、(a)は拡大平面図、(b)は左側面図、(c)は正面図、(d)は右側面図である。
【図4】同レベルマーカであって、補助指示部材のための取付穴を設けた例を示すもので、(a)は拡大斜視図、(b)は平面図である。
【図5】図4に示したレベルマーカを施工した例を示す断面図である。
【図6】他のレベルマーカを示すもので、(a)は拡大斜視図、(b)は平面図、(c)は左側面図、(d)は正面図、(e)は右側面図である。
【図7】従来の技術を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
10 レベルマーカ
11 基部
11a 肉厚部
12 アーム部
12a 案内面
13 取付穴
14 補助指示部材
20 支持材
30 天端レベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートによって形成すべき天端レベルを指し示すレベルマーカであって、
前記天端レベルに対応する位置に配置されている、または配置した支持材に当接される基部と、この基部に一体化されて前記支持材を両側から挟持する一対のアーム部とを備えて、
前記支持材に対して前記両アーム部によって挟持させたとき、前記天端レベルを指し示し得るようにしたことを特徴とするレベルマーカ。
【請求項2】
前記一対のアーム部を1組とした組の複数を一体化したことを特徴とする請求項1に記載のレベルマーカ。
【請求項3】
前記各組を構成している一対のアーム部の大きさを他の組のそれとは異なったものとしたことを特徴とする請求項2に記載のレベルマーカ。
【請求項4】
前記基部またはアーム部に、前記支持材の軸心方向と平行な取付穴を設けて、この取付穴に補助指示部材を位置調節可能に取り付けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のレベルマーカ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−127341(P2009−127341A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−305230(P2007−305230)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(506125720)株式会社KSK (23)
【Fターム(参考)】