説明

レベルワウンドコイル及びレベルワウンドコイル梱包体

【課題】いかなる長さの管であっても、その管が健全である限り、高い歩留まりで、レベルワウンドコイルおよびレベルワウンドコイル梱包体を提供する。
【解決手段】底板と、天板とを備え、管を円筒状に巻回してなる少なくとも1段のコイル部を前記底板と天板とで挟み込んだレベルワウンドコイルであって、前記レベルワウンドコイルから前記管を巻き解きするときの前記管の巻き解き開始管端が前記レベルワウンドコイルの最外周に位置し、且つ、最外周にある前記管が底板から天板方向に巻回されていることを特徴とするレベルワウンドコイル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアコンなどの空調冷凍機の伝熱管(内面溝付管および平滑管など)、建築物の給湯・給水配管などに使用されるもので、銅又は銅合金管などをコイル状に多層に整列巻きし、その軸方向が垂直になるように配置され、巻き解かれるレベルワウンドコイルおよび、そのレベルワウンドコイルで構成されるレベルワウンドコイル梱包体に関する。
【背景技術】
【0002】
レベルワウンドコイル(Level Wound Coil:以下、LWCと称す)は、通常、図10に示すように、複数個のLWCが、その軸方向が垂直になるように配置された多段積みLWC梱包体として提供される。図10において、10は多段積みLWC梱包体、11はLWC、8は多段積みしたLWCを仕切る板材(緩衝材となるドーナツ紙など)、12はLWCを巻き解く場合の管2を案内するガイド、13はLWCを積載するパレットである。
【0003】
このような多段積みLWC梱包体10のLWC11を巻き解く場合、特許文献1〜3で示されるように、最上段にあるLWC11の巻き解き開始の管端は、通常、巻回の容易なこと、および管端の取り出しの容易なことからLWC11の最内周の上面または下面に設けられている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−231348号公報
【特許文献2】特開2004−142854号公報
【特許文献3】特開2005−126198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の図7、特許文献2の図6、特許文献3の図6のように、LWCの巻き解き終了の管端が、LWCの最外周に位置し、その最外周の管がLWCの上から下へ巻回されている場合、LWCの下面レベルに到達していないと巻回された管は、下にずり落ちる可能性が高く、したがって、管表面を傷つけたり、管そのものが折れたりしてしまう恐れがある。このような品質の低下を防止するためには、最外周の管がLWCの上から下へ巻回される場合において、LWCの下面レベルに管が到達しないことが明らかなときは、その前の奇数層の下面レベルに管が到達した時点で、管の巻回を終了し、残りの管は切断してしまう必要があり、それゆえ歩留まりの低下を招く結果となる。
【0006】
また、特許文献1から特許文献3で提案されるLWCの構造では、図8に示すようにターンテーブルを用いないで管を巻き解く、ターンテーブル不使用方式による巻き解き方法を採用し、管を内側の管端から巻き解く場合には、LWCの管の巻層の数は奇数層にすることが好ましいという制約ができてしまい、これも余分な管の発生原因となってしまう。
更に、管を内側の管端から巻き解く場合、LWCの内径が変化する。そのため、巻き解きの途中で管の不良が発見された際、残りのLWCは把持具で持ち上げ、廃棄することになるが、LWCを内側から押し付けて持ち上げるタイプの把持具で押圧把持することが困難になるために、LWCの廃棄が困難になってしまうという問題が生じる。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みなされたもので、いかなる長さの管であっても、その管が健全である限り、高い歩留まりで管を巻回することができ、且つ管の不良が発見された際に残りのLWCの廃棄が容易なLWC、LWC梱包体およびLWC巻き解き方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、管を円筒状に巻回してなる少なくとも1段のコイル部を前記底板と天板とで挟み込んだLWCであって、前記LWCから前記管を巻き解きするときの前記管の巻き解き開始管端が前記LWCの最外周に位置し、且つ、最外周にある前記管が底板から天板方向に巻回されていることを特徴とするLWCである。
【0009】
請求項2記載の発明は、底板と、天板と、前記底板と天板との間に、管を円筒状に巻回してなるLWCを少なくとも1段配置したLWC梱包体であって、前記LWC梱包体から前記管を巻き解きするときの前記管の巻き解き開始の管端が、前記LWC梱包体の最上段にあるLWCの最外周に位置し、且つ最外周にある前記管が底板から天板方向に巻回されていることを特徴とするLWC梱包体である。
【0010】
請求項3記載の発明は、管を円筒状に巻回してなるLWCの最内周管に沿って支持部材が備えられていることを特徴とする請求項2記載のLWC梱包体である。
【0011】
請求項4記載の発明は、前記支持部材が、隣り合うLWCに跨って設けられることを特徴とする請求項3記載のLWC梱包体である。
【0012】
請求項5記載の発明は、管を円周状に巻回し、径方向に複数層整列巻してなるLWCを非回転状態に載置し、前記管の最外層から巻き解くことを特徴とするLWC巻き解き方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るLWCは、底板と天板と、それらで挟み込んだ少なくとも1段のコイル部からなるもので、最外周に巻き解き開始となる管端を有し、更に、最外周にある管が底板から天板方向に巻回されていることにより、LWCを構成する管の歩留まりを高く維持する効果を有する。
また、本発明に係るLWC梱包体は、最外周に巻き解き開始となる管端を有し、且つLWC内周に接して支持部材が設けられていることにより、LWCの外周部側から管の巻き解きを行っても、LWCが崩れることなく巻き解きができ、更に、LWC梱包体の輸送時には、支持部材がLWCの揺れを抑えることで、管が傷つくことを予防し、歩留まりの低下を防ぐ効果を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図を参照して本発明の実施形態を具体的に説明する。
図1は、本発明の第一の実施形態を示す縦断面図である。図1において、1はLWC(レベルワウントコイル)、2は管、3は最外周(第1周)に位置する管、3aは巻き解き開始の管端、4は第2周に位置する管、5は第3周に位置する管、6は第4周に位置する管、6aは巻き解き終了管端、66は第4周に位置する管、7は第5周に位置する管、7aは巻き解き終了管端、100はLWCの下面レベル、101はLWCの上面レベルである。
図1(a)は、5周からなるLWC1で、管7が最内周管で、下面レベル100から巻回されている。図1(b)は、4周からなるLWC1で、管66が最内周管で、上面レベル101から巻回されている。
【0015】
通常、管を巻回してLWCを作製する場合、LWCの内周の管から巻回が始められ、供給された長さを巻回して終了するが、最外周の管が外周の上面レベルから下面レベル方向に巻回され、且つ下面レベルに到達していない場合には、LWCの保管時や管の巻き解き時に、管のずり落ちなどが生じて管を損傷させる恐れが多くなることから、先の上面レベルの位置で管の巻回をやめて管を切断する。したがって、残りの管は余剰となってしまう。
【0016】
これに対し、本実施形態に係るLWC1は、図1(a)、(b)で示すように、最外周管3は、必ずLWC1の下面レベル100から巻回されているので、LWCの保管時や管の巻き解きにおいて、最外周の管のずり落ちによる管の損傷は生じない。また、本実施形態のLWC1は、最外周の管が天板方向に巻回されているため、図8に示すように最外周の管端からスムーズに巻き解くことができる。
なお最内周の管について、最外周の管端から巻き解きたいときには、最後に巻き解かれることになるので、管のずり落ち防止のために、管端が底板9b側にあることが望ましい。更に、このような場合のLWC1の内径は、巻き解きの間では変わらない。したがって、管の巻き解きの途中で管に不良が発見された場合には、最内周の管側にLWC1の内側から押し付けるタイプの把持具を押し付けて持ち上げ、LWC1を廃棄することが容易である。
【0017】
図2は、本発明の第二の実施形態に使用される支持部材の説明図である。図2において、9bは底板、13はパレット、22は支持部材、22a〜22dは支持部材の実施例の一例を示すもので、各支持部材は、LWC1の内面1aに沿うように置かれ、22aは円筒形、22b、22cは多角中空体、22dは方形シートを丸めた切欠き円筒形の支持部材である。
【0018】
本実施形態では、図2に示すように、LWC1の内側にボビンを有しない、いわゆるボビンレスのLWC1を用いている。ボビンが不必要であることから、樹脂成形品であるボビン掛かるコストを削減することが可能となるが、ボビンによるLWC1の構造を支持できる効果がその分損なわれることになる。そこで、図2に示すような簡単な支持部材22aから22cを代わりに用い、これをLWC1の内側に矢印に示すように挿入し、LWC1を内側から支持することで、LWC1の構造が崩れることを防止することができる。
また、本実施形態では、最外周から管を巻解くので、最後に最内周の管を巻解くことになる。支持部材22aから22cは、このように最後に残った最内周の管を支持するので、管のずり落ちと、それによる管の表面に傷が入ることを防止することができる。
【0019】
図3は、他の支持部材を示す説明図である。図3において、緩衝材8(例えば紙ダンボール製)に十字スリット8aを設け、そこに2枚の矩形ダンボール片220eを十字に組み合わせてなる十字形支持部材22eを取り付けたものである。
このような構成によれば、非常に簡易に組み立て可能な支持部材22により、最内周の管を支持することができ、好ましい。
【0020】
図4〜図7は、先に示した支持部材22を用いた実施形態に係るLWC梱包体の縦断面図である。図4は、円筒形支持部材22aを用いた場合、図5は、多角中空体22cを用いた場合、図6は、切欠き円筒形支持部材22dを用いた場合、図7は十字形支持部材22eを用いた場合を示している。なお、図4中の符号9aは天板を示す。
支持部材22a〜22eは、二つのLWC1に跨って設けられる。そのため、輸送中に加わる振動によるLWC1の位置ずれを防止できる。更に、巻き解き作業時では、巻き解きを行うLWC1の下面レベルに支持部材22の端を移動させることで、巻き解きによる管の崩れを防止する。
【0021】
図8に示すように本実施形態のLWC41は、ターンテーブル不使用方式で最外周から巻き解かれる。なお、この場合、巻き方によっては底板44(若しくは緩衝材44)に接した管が、それより1つ上の管と挟まれて巻き解くことが困難になる場合が生じる。
表1は、ターンテーブル不使用方式において、管を最外層の管端から巻き解く場合に好ましい層構成とLWCの置き方の組み合わせ(表1中で好適と表記)、及びその逆の好ましくない組み合わせ(表1中で非好適と表記)を示すものである。
【0022】
【表1】

【0023】
表1において、「N−1巻」と表示したものは、図9(a)に示すように、LWCの整列巻において、最内層をN回巻いた構成としたときに、その一つ外側をN−1回巻き、それを外側の層に向かうごとに繰り返す構成である。「N巻」、「N+1巻」(図9(b)参照)も同様に巻き数を変えたものである。なお、N巻の場合は、巻き取り時にフランジ側で折り返す場合(表1中、フランジ側折り返し、図9(d)参照)と、フランジ側とは逆側に折り返す場合(表1中、管側折り返し、図9(c)参照)がある。
このように、できるだけ表1において、好適とされる組み合わせの配置を採用することで、管の巻き解きを効率よく行うことができ、管に対する損傷も少なくてすむものである。
以上説明したように、本発明によれば、いかなる管の長さであっても、その管が健全である限り、高い歩留まりで管を巻回することができ、且つ管の不良が発見された場合に、残りのLWCの廃棄が容易なLWC、LWC梱包体およびLWCの巻き解き方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第一の実施形態を示す縦断面図である
【図2】本発明の第二の実施形態に使用される支持部材の説明図である。
【図3】本発明の第二の実施形態で使用される他の支持部材を示す説明図である。
【図4】本発明に係るレベルワウンドコイル梱包体の縦断面図である。
【図5】本発明に係るレベルワウンドコイル梱包体の縦断面図である。
【図6】本発明に係るレベルワウンドコイル梱包体の縦断面図である。
【図7】本発明に係るレベルワウンドコイル梱包体の縦断面図である。
【図8】ターンテーブル不使用方式による巻き解き方法を示す外観図である。
【図9】レベルワウンドコイルの層構成と置き方の関係を示す説明図である。
【図10】従来レベルワウンドコイル及びその梱包体の外観を示す斜視説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1 レベルワウンドコイル
1a レベルワウンドコイル内周部
3 最外周管
3a 外周部管端
6a 内周部管端
66 最内周管
7 最内周管
7a 内周部管端
8 緩衝材
9a 底板
9b 天板
10 レベルワウンドコイル梱包体
11 レベルワウンドコイル
12 ガイド
13 パレット
22 支持部材
22a 円筒形支持部材
22b 多角形支持部材(五角形断面)
22c 多角形支持部材(六角形断面)
22d 切欠き円筒形支持部材
22e 十字形支持部材
40 レベルワウンドコイル梱包体
41 レベルワウンドコイル
42 ガイド
43 パレット
44 底板又は緩衝材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板と、天板とを備え、
管を円筒状に巻回してなる少なくとも1段のコイル部を前記底板と天板とで挟み込んだレベルワウンドコイルであって、
前記レベルワウンドコイルから前記管を巻き解きするときの前記管の巻き解き開始管端が前記レベルワウンドコイルの最外周に位置し、且つ、最外周にある前記管が底板から天板方向に巻回されていることを特徴とするレベルワウンドコイル。
【請求項2】
底板と、
天板と、
前記底板と天板との間に、管を円筒状に巻回してなるレベルワウンドコイルを少なくとも1段配置したレベルワウンドコイル梱包体であって、
前記レベルワウンドコイル梱包体から前記管を巻き解きするときの前記管の巻き解き開始の管端が、前記レベルワウンドコイル梱包体の最上段にあるレベルワウンドコイルの最外周に位置し、且つ最外周にある前記管が底板から天板方向に巻回されていることを特徴とするレベルワウンドコイル梱包体。
【請求項3】
管を円筒状に巻回してなるレベルワウンドコイルの最内周管に沿って支持部材が備えられていることを特徴とする請求項2記載のレベルワウンドコイル梱包体。
【請求項4】
前記支持部材が、隣り合うレベルワウンドコイルに跨って設けられることを特徴とする請求項3記載のレベルワウンドコイル梱包体。
【請求項5】
管を円周状に巻回し、径方向に複数層整列巻してなるレベルワウンドコイルを非回転状態に載置し、前記管の最外層から巻解くことを特徴とするレベルワウンドコイル巻き解き方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−153601(P2007−153601A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−355013(P2005−355013)
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】