説明

レボシメンダンの製造方法及びその方法で用いる中間体

ある実施態様において、本発明は、(-)-6-(4-アミノフェニル)-5-メチルピリダジン-3-(2H)-オンを製造する方法であって、該方法が:a)式IIのラセミ6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンを、キラル酒石酸誘導体と反応せしめて、(-)-6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンと該キラル酒石酸誘導体とのジアステレオマー塩を得て;及びb)該ジアステレオマー塩を、塩基と反応せしめて、(-)-6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンを得ることを含む方法を提供する。(-)-6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンは、レボシメンダンの製造に用いることができる。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(本発明の分野)
本発明は、以下の構造で示される、[[4-(1,4,5,6-テトラヒドロ-4-メチル-6-オキソ-3-ピリダジニル)フェニル]ヒドラゾノ]プロパンジニトリル(レボシメンダン)の左旋異性体の製造方法に関する。
【化1】

【背景技術】
【0002】
(背景及び先行技術)
レボシメンダンは、細胞内カルシウムの増大を招かずに、カルシウムに対する心臓の感受性を増強する非常に強力な強心剤である。この薬剤は、Abbott社からSimdaxの商品名で市販されている。これは、米国特許第5569657号において初めて開示された。
【0003】
先行技術は、ラセミ混合物を、キラル相クロマトグラフィーカラムに通すことによって、純粋なレボシメンダンが得られることを示している。しかし、このプロセスは、手間がかかる上に、大量の原料が関係する場合には、工業的には利用ができない。
【0004】
ある先行技術は、出発物質として、光学的に純粋な6-(4-アミノフェニル)-5-メチルピリダジン-3-(2H)-オンの(-)-エナンチオマを使用することに関係している。(-)-6-(4-アミノフェニル)-5-メチルピリダジン-3-(2H)-オンを得る方法は、欧州特許出願EP208518において教示されており、そこでは、キラルHPLCカラムを用いて、6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンの純粋なエナンチオマの分離について記載がされている。
【0005】
中国特許出願CN1616437は、50%のアルカリ、又は50%の酸を用いて、(+)-6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンを処理することを記載している。
【0006】
日本国特許出願JP10109977は、1-プロパノール/酢酸エチルを分割溶媒として、また、L-又はD-酒石酸を分割剤として使用することを、開示している。
【0007】
米国特許第5569657号は、レボシメンダンとその塩の調製について開示をしている。 (±)-6-(4-アミノフェニル)-5-メチルピリダジン-3-(2H)-オンは、加熱しながら、2-プロパノールに溶解される。その溶液に対してL-酒石酸が徐々に加えられ、そして、澄明な溶液が得られるまで、加熱しながら、攪拌が行われる。この溶液を、室温になるまで徐々に冷却し、そして、結晶性産物を得るために、20℃で、一晩かけて、攪拌が行われる。濾過をすることで、湿塩が、水に溶解し、そして、攪拌をしながら、そこに炭酸カリウム溶液が加えられる。得られた遊離塩基は、濾過され、水で洗浄され、そして、乾燥される。産物を、加熱しながら、ジオキサンにさらに溶解し、そして、室温になるまで冷却される。(-)-6-(4-アミノフェニル)-5-メチルピリダジン-3-(2H)-オンの結晶性固体を得るために、内容物は、濾過され、そして、真空下で乾燥される。次いで、レボシメンダンを得るために、純粋な(-)-6-(4-アミノフェニル)-5-メチルピリダジン-3-(2H)-オン化合物は、酸性条件下で、亜硝酸ナトリウム及びマロノニトリルで処理される。開示された分割方法の欠点は、高い光学純度(99.5%)のピリダジノン化合物を得るために、ジオキサンを用いた再結晶が必要であることにある。また、この方法は、多段階工程を必要とし、かつ時間も要する。
【0008】
米国特許第6180789号は、D-又はL-酒石酸を含む含水酢酸エチルを用いて分割をした6-(4-アミノフェニル)-5-メチルピリダジン-3-(2H)-オンの(-)-エナンチオマを、亜硝酸ナトリウム及びマロノニトリルで処理し、そして、含水アセトンを用いてさらに結晶化することで、レボシメンダンの調製を行うことを記載している。この特許は、安息香酸、硫酸などのその他の分割剤、及びイソプロパノール、イソブタノール、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、アセトン、及びアセトニトリルなどの分割溶媒も開示している。このような条件は、部分的な分割しか起こさないと言われている。
【0009】
米国特許第6180789号に開示された方法には、幾つかの欠点がある。
D-酒石酸を、分割剤とした場合、
・ 完全な分割を達成するためには、過剰量の分割剤が必要である。
・ この方法では、(-)-6-(4-アミノフェニル)-5-メチルピリダジン-3-(2H)-オンのD-酒石酸塩を使用したシーディングも必要となる。
・ 沈殿物の熱時濾過が行われるが、この作業は、工業規模での大量の取り扱いには、全く不向きである。
・ 反応の温度は、0℃に維持される必要がある。
・ 何度も洗浄を繰り返した後でさえも、産物のエナンチオマ純度は小さい。
・ 所望の鏡像体過剰率を実現するためには、吸収剤の存在下で、アセトニトリルを用いて再結晶を行い、次いで、過剰のアセトニトリルで洗浄する必要がある。大量の溶媒で処理を行うと、プロセスに要する費用が嵩むこととなり、また、消耗に起因して、収率も小さくなる。
【0010】
L-酒石酸を、分割剤とした場合、
・ 塩の沈殿を行うために、-10℃まで冷却する必要がある。
・ 所望の(-)-6-(4-アミノフェニル)-5-メチルピリダジン-3-(2H)-オン産物のエナンチオマ純度が、非常に小さい(78.7%)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来技術において認識されている前掲の問題点が故に、簡便で、経済的で、環境に配慮がされ、しかも、高収率を実現する、レボシメンダンの新規の分割方法の開発の必要性が認められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(本発明の要旨)
本発明の第一の態様にしたがって、(-)-6-(4-アミノフェニル)-5-メチルピリダジン-3-(2H)-オンを製造する方法が提供され、該方法は、a)ラセミ6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンを、分割剤、好ましくは、キラル酒石酸誘導体と、通常は、溶媒の存在下で、反応せしめ、及びb)(-)-6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンを単離することを含む。
【0013】
ある実施態様において、工程a)が、(-)-6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンとキラル酒石酸誘導体との塩であるジアステレオマー塩を生成する。(+)-6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンは、反応生成物の母液の方に含まれているのに対して、塩はそこから沈殿する。この実施態様において、該方法は、a)(-)-6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンとキラル酒石酸誘導体とのジアステレオマー塩を得るために、式IIのラセミ6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンを、該キラル酒石酸誘導体と反応せしめ、及びb)(-)-6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンを得るために、該ジアステレオマー塩を、塩基と反応せしめることを含む。この実施態様において、該キラル酸誘導体として、ジ-p-アニソイル-D-酒石酸を用いることができる。
【0014】
他の実施態様において、工程a)が、(+)-6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンとキラル酒石酸誘導体との塩であるジアステレオマー塩を生成する。(-)-6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンは、反応生成物の母液の方に含まれているのに対して、塩はそこから沈殿する。この実施態様において、該方法は、a)(-)-6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンとキラル酒石酸誘導体とのジアステレオマー塩を得るために、式IIのラセミ6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンを、該キラル酒石酸誘導体と反応せしめ、及びb)(-)-6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンを該母液から単離することを含む。この実施態様において、該キラル酸誘導体として、ジ-p-アニソイル-L-酒石酸を用いることができる。
【0015】
ある実施態様において、該キラル酒石酸誘導体は、ジ-p-アニソイル-酒石酸、ジ-p-トリル-酒石酸、又はO,O'-ジベンゾイル-酒石酸のD-又はL-異性体から選択される。好ましくは、該キラル酸は、該酒石酸誘導体のD-異性体である。好ましくは、該キラル酒石酸誘導体は、ジ-p-アニソイル-D-酒石酸である。最も好ましくは、該キラル酒石酸誘導体は、ジ-p-アニソイル-D-酒石酸である。
【0016】
ある実施態様において、分割をするために、すなわち、工程(a)において用いた溶媒は、水と極性溶媒との混合物である。この極性溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、アセトン、及びアセトニトリルから選択される。好ましくは、水とエタノールの混合物が用いられる。
【0017】
上記方法は、(-)-6-(4-アミノフェニル)-5-メチルピリダジン-3-(2H)-オンを、レボシメンダンに変換することをさらに含むことができる。この変換は、(-)-6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンを、亜硝酸ナトリウム、及びマロノニトリルと反応せしめることを含んでいてもよい。ある実施態様において、本発明の方法は、実質的に純粋なエナンチオマ型のレボシメンダンを生成する。好ましくは、本発明の方法によって調製された左旋-異性体:右旋-異性体の比率は、約99:1である。好ましくは、本発明で調製されたレボシメンダンは、キラルHPLCによって決定された約99.9%の純度を有している。
【0018】
本発明の他の態様にしたがって、(-)-6-(4-アミノフェニル)-5-メチルピリダジン-3-(2H)-オンとジ-p-アニソイル-D-酒石酸との塩が提供される。この化合物は、以下に示す式VIで示される。
【化2】

【0019】
本発明の他の態様にしたがって、(+)-6-(4-アミノフェニル)-5-メチルピリダジン-3-(2H)-オンとジ-p-アニソイル-L-酒石酸との塩が提供される。この化合物は、以下に示す式VIIで示される。
【化3】

【0020】
本発明の方法での使用に適したキラル酒石酸誘導体は、ジ-p-アニソイル-酒石酸であり、また、式VI及びVIIの化合物は、ジ-p-アニソイル-酒石酸を分割剤とした場合における、本発明の方法の工程a)において対応する好ましい産物である。したがって、化合物VI及びVIIは、本発明の方法での使用において、非常に有利な中間体である。
【0021】
本発明の他の態様にしたがって、式VIの化合物を製造する方法が提供され、該方法は、ラセミ6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンを、ジ-p-アニソイル-D-酒石酸と反応せしめることを含む。
【0022】
本発明の他の態様にしたがって、提供される方法は、(i) (-)-6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンとキラル酒石酸誘導体とのジアステレオマー塩、及び(+)-6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンが濃縮された母液を得るために、式II
【化4】

のラセミ6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンを、キラル酒石酸誘導体と反応させ、(ii) 工程(i)で得た(+)-6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンを、ラセミ6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンに変換し、かつ(iii) 上記方法において、工程(ii)で得たラセミ6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンを用いることを含む。
【0023】
本発明の他の態様にしたがって、上記いずれかの方法にしたがって調製された(-)-6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンが提供される。
【0024】
本発明の他の態様にしたがって、上記いずれかの方法にしたがって調製されたレボシメンダンが提供される。
【0025】
本発明の他の態様にしたがって、1つ以上の医薬として許容し得る賦形剤と共に上記いずれかの方法にしたがって調製されたレボシメンダンを含む医薬組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(発明の詳細な説明)
本発明の様々な態様が、さらに十分に理解及び認識できる程度にまで、本発明を、特定の好ましい、及び任意の実施態様に関連して詳細に説明を行うこととする。
【0027】
本発明の方法は、再結晶又は精製を省いて、高い光学純度のレボシメンダンを調製することに関する。
【0028】
ある実施態様において、(-)-6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンと分割剤とのジアステレオマー塩を得るために、ラセミ6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンを、該分割剤を用いて分割し、該塩を、(-)-6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンに変換し、次いで、遊離塩基を、亜硝酸ナトリウム及びマロノニトリルで処理することによって、レボシメンダンを調製する方法が提供される。
【0029】
ある実施態様において、本発明の方法は、式IIのラセミ6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンを、式IVの対応するジアステレオマー塩を得るために、溶媒の存在下で、好ましくは、式IIIで示されるキラル酒石酸誘導体である分割剤を用いて分割することを含む。
【化5】

【0030】
該キラル酒石酸誘導体は、ジ-p-アニソイル-酒石酸、ジ-p-トリル-酒石酸、又はO,O'-ジベンゾイル-酒石酸のD-又はL-異性体から選択される。好ましくは、本発明の方法のためのキラル酸は、酒石酸誘導体のD-異性体である。最も好ましくは、式IIIのジ-p-アニソイル-D-酒石酸が用いられる。
【化6】

【0031】
本発明の方法において、ジアステレオマー塩の調製のために用いられる溶媒は、好ましくは、水と極性溶媒との混合物である。この極性溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、アセトン、及びアセトニトリルからなる群から選択することができる。最も好ましくは、分割工程で使用される溶媒は、水とエタノールの混合物である。
【0032】
他の実施態様において、本発明の方法は、式Vの(-)-6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンを得るために、式IVのジアステレオマー塩を、塩基で処理することをさらに含む。
【化7】

【0033】
使用した塩基は、無機又は有機塩基であって、例えば、アンモニア、ナトリウムメトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、又は重炭酸ナトリウムから選択することができる。
【0034】
本発明の他の態様において、上記方法によって適切に調製された(-)-6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノン(V)は、レボシメンダン(I)を得るために、亜硝酸ナトリウム及びマロノニトリルで処理される。
【0035】
ある実施態様において、レボシメンダン(式I)を調製するための特に好ましい本発明の方法は、
(a) 式IIのラセミ6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノン
【化8】

を、通常は、55℃〜70℃の温度範囲において、水とエタノールの混合物の存在下で、式IIIのジ-p-アニソイル-D-酒石酸を用いて分割して、式VIのジアステレオマー(-)-6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンジ-p-アニソイル-D-酒石酸塩を形成し、
【化9】

(b) 式Vの6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンの(-)-異性体を得るために、式VIのジアステレオマー塩を、アンモニア、ナトリウムメトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、又は重炭酸ナトリウムから選択される有機又は無機塩基を用いて処理をし、
【化10】

(c) 式Iのレボシメンダンを得るために、式Vの(-)-6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンと、亜硝酸ナトリウム及びマロノニトリルとを、酸性条件下で反応せしめることを含む。
【0036】
工程(a)で形成された塩は、任意に、水とエタノールの溶媒混合物を用いて、さらに再結晶することができる。
【0037】
分割工程(a)から得た母液は、(+)-6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンが濃縮されており、また、(±)-6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンに変換することもでき、そして、本発明の方法に改めて使用される。
【0038】
本発明の方法は、高純度のエナンチオマ型のレボシメンダンを生成する。従来技術によって得られた96:4の比率と比較して、本発明の方法によって調製した場合のレボシメンダン:デキストロシメンダンの比率は、通常は、約99:1である。また、本発明の方法で調製したレボシメンダンは、通常は、キラルHPLCによって決定された約99.9%の純度を有している。
【0039】
他の実施態様において、ジ-p-アニソイル-酒石酸のL-異性体を使用することができる。例えば、ジアステレオマー(+)-6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンジ-p-アニソイル-L-酒石酸塩を形成するために、ラセミ6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンは、水とエタノールとの溶媒混合物の存在下で、ジ-p-アニソイル-L-酒石酸との反応に供される。分割を経て得た該母液は、レボシメンダンを調製するための出発物質として機能する(-)-6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンを含んでいる。該沈殿物は、....を再利用するために、本発明において使用することができる。本発明の方法において、再結晶又は精製をせずに、高純度の(-)-6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンが得られる。よって、溶媒の浪費とそれに付随する産物の収率低下が防がれ、そして、経済的で、高収率な、かつ工業的にも利用可能な方法が実現される。また、分割剤としてジ-p-アニソイル-D-酒石酸を適切に使用することで、ジアステレオマー塩が迅速に沈殿し、そして、単一の工程で、レボシメンダンが、高収率で生成する。本発明の方法において使用される溶媒は、好ましくは、本発明の方法を、環境に配慮したものとする水を含む混合物である。
【0040】
本発明の詳細を、例示目的だけで示した以下の実施例に記載をしてあり、したがって、これら実施例が、本発明の範囲を制限するものと解釈すべきではない。
【実施例】
【0041】
(実施例1)
工程1: 50gのラセミ6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノン及び500mlのエタノールを、フラスコに入れ、そして、65℃で、30分間かけて攪拌した。さらに、ジ-p-アニソイル-D-酒石酸(113.3g)及び500mlの水を加えて、そして、攪拌を1時間継続した。反応生成物を、15℃まで冷却し、そして、さらに30分間かけて攪拌した。そして、該生成物を、濾過し、水で洗浄し、及び55℃で、真空下で乾燥をして、対応するジアステレオマー塩を得た(収量 - 110g、純度 - 99.5%)。
【0042】
工程2: 得られた塩と水(500 ml)を、反応槽に加え、そして、25〜30℃で、30分間かけて攪拌した。アンモニア溶液を加えて、得られた溶液のpHを8〜9に調整し、内容物を、濾過し、及び55℃で、真空下で乾燥をして、固形の(-)-6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンを得た(収量 - 24g、純度 - 99.6%)。
【0043】
工程3: (-)-6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノン(20g)、及び希塩酸(52mlの濃塩酸を含む789mlの水)に対して、8gの希亜硝酸ナトリウム(8gの亜硝酸ナトリウムを含む52mlの水)を加え、そして、攪拌した。10分後に、マロノニトリル溶液(6.3gのマロノニトリルを含む52mlの水)を加えた。この溶液を、室温で、1時間かけて攪拌した。酢酸ナトリウム溶液を用いて、懸濁液のpHを6.0に調整した。この懸濁液を、濾過し、水で洗浄をした後に、エタノールで洗浄を行い、そして、乾燥をして、固形のレボシメンダンを得た(収量 - 22g、純度 - 99.9%)。
【0044】
(実施例2)
10gのラセミ6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノン及び100mlのエタノールを加え、そして、65℃で、30分間かけて攪拌した。ジ-p-アニソイル-L-酒石酸(22.6g)及び100mlの水を加えて、そして、攪拌を1時間継続した。反応が完了した後に、固形物を得るために、反応生成物を、15℃まで冷却し、そして、濾過を行った。得られた母液を、エタノールを除去するために濃縮し、そして、アンモニアを用いて、塩基性化した。沈殿した固形物を濾過し、そして、上記のように、亜硝酸ナトリウム及びマロノニトリルを用いて処理して、固形のレボシメンダンを得た(収量 - 4g、純度 - 99.6%)。
【0045】
(実施例3)
実施例1の工程1で得た25gの(+)-6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノン、及び50%水酸化ナトリウム溶液を、90℃で加熱した。反応生成物を、室温まで冷却し、濾過を行い、そして、水で洗浄した。得られた固形物を、250mlのエタノールと共に、フラスコに加え、そして、65℃で、30分間かけて攪拌した。ジ-p-アニソイル-D-酒石酸(56.6g)及び250mlの水を加え、そして、攪拌を1時間継続した。反応生成物を、15℃まで冷却し、そして、さらに30分間かけて攪拌した。反応生成物を、濾過し、そして、水で洗浄をした。湿った固形のジアステレオマー塩を、水と共に、丸底フラスコに加え、そして、内容物を、25℃で攪拌した。この混合物に対して、10%炭酸カリウムを加えて、pHを8〜9に調整した。この反応生成物を、30分間かけて攪拌し、そして、濾過した。得られた固形物を、希塩酸の存在下で、亜硝酸ナトリウム及びマロノニトリル溶液で処理して、レボシメンダンを得た(収量 - 10.5g、純度 - 99.5%)。
【0046】
本発明が、添付した特許請求の範囲内において変更され得ることが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(-)-6-(4-アミノフェニル)-5-メチルピリダジン-3-(2H)-オンを製造する方法であって、該方法が、a)式II:
【化1】

のラセミ6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンを、キラル酒石酸誘導体と反応せしめ;及びb)(-)-6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンを単離することを含む、前記方法。
【請求項2】
工程a)が、(-)-6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンとキラル酒石酸誘導体との塩を生成し、及び工程b)が、(+)-6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンから該塩を分離し、及び(-)-6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンを得るために、該塩と塩基とを反応せしめることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程a)が、(+)-6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンとキラル酒石酸誘導体との塩を生成し、及び工程b)が、該塩から(-)-6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンを分離することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記キラル酒石酸誘導体が、ジ-p-アニソイル-酒石酸、ジ-p-トリル-酒石酸、又はO,O'-ジベンゾイル-酒石酸のD-又はL-異性体から選択される、請求項1、2又は3記載の方法。
【請求項5】
前記キラル酒石酸誘導体が、該酒石酸誘導体のD-異性体である、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
前記キラル酒石酸誘導体が、ジ-p-アニソイル-D-酒石酸である、請求項1又は2記載の方法。
【請求項7】
工程a)が、溶媒の存在下で行われ、該溶媒が、水と極性溶媒との混合物である、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
前記極性溶媒が、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、アセトン、及びアセトニトリルからなる群から選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記溶媒が、水とエタノールとの混合物である、請求項7又は8記載の方法。
【請求項10】
前記塩基が、有機又は無機塩基である、請求項2又は4〜9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
前記塩基が、アンモニア、ナトリウムメトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、及び重炭酸ナトリウムからなる群から選択される、請求項2又は4〜10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
レボシメンダンを製造する方法であって、該方法が、請求項1〜11のいずれか一項記載の方法にしたがって、(-)-6-(4-アミノフェニル)-5-メチルピリダジン-3-(2H)-オンを調製し;及び(-)-6-(4-アミノフェニル)-5-メチルピリダジン-3-(2H)-オンをレボシメンダンに変換することを含む、前記方法。
【請求項13】
前記レボシメンダンへの変換が、(-)-6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンを、亜硝酸ナトリウム、及びマロノニトリルと反応せしめることを含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
(-)-6-(4-アミノフェニル)-5-メチルピリダジン-3-(2H)-オンと、ジ-p-アニソイル-D-酒石酸又はジ-p-アニソイル-L-酒石酸のいずれかとの塩であって、ジ-p-アニソイル-D-酒石酸との該塩が、式VI:
【化2】

を有し、かつジ-p-アニソイル-L-酒石酸との該塩が、式VII:
【化3】

を有する、前記塩。
【請求項15】
下記工程を含む方法:(i) 式II
【化4】

のラセミ6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンを、キラル酒石酸誘導体と反応せしめて、(-)-6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンと該キラル酒石酸誘導体とのジアステレオマー塩、及び(+)-6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンが濃縮された母液を得て;(ii) 工程(i)で得た(+)-6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンを、ラセミ6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンに変換し;及び(iii) 請求項1〜13のいずれか一項記載の方法において、工程(ii)で得たラセミ6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンを用いることを含む、前記方法。
【請求項16】
工程(ii)が、(a)(+)-6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンを、水酸化ナトリウムと反応せしめることを含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
実施例を参照して、実質的に本明細書中に記載されている(-)-6-(4-アミノフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-メチル-3-(2H)-ピリダジノンの製造方法。
【請求項18】
実施例を参照して、実質的に本明細書中に記載されているレボシメンダンの製造方法。
【請求項19】
実施例を参照して、実質的に本明細書中に記載されている式VIの化合物、又は式VIIの化合物:
【化5】



【公表番号】特表2012−532922(P2012−532922A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520083(P2012−520083)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001325
【国際公開番号】WO2011/007123
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(511109180)シプラ・リミテッド (17)
【Fターム(参考)】