説明

レンズのフォーカス固定構造

【課題】監視カメラなどの取り付け場所に作業スペース上の制約がある場合でも、フォーカス調整及び調整がなされたフォーカスリングの位置固定が容易に行え、レンズのフォーカス固定に係る作業性の向上に大きく寄与できるレンズのフォーカス固定構造を提供する。
【解決手段】レンズ保持枠6の径大部16に止めネジ18がねじ込まれ、径大部16の表面には板金で形成されたフォーカスストッパ部材20が止めネジ18で固定されている。フォーカスストッパ部材20の一端部20bはL字状に形成され、その先端はフォーカスリング8の外周面に弾性力で当接(圧接)している。この状態で、フォーカスリング8の回転操作が可能であり、フォーカス調整後は上記圧接による摩擦力でレンズ保持枠6に対するフォーカスリング8の回転が止められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視カメラ等におけるレンズのフォーカス固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば監視カメラにおけるレンズのフォーカス固定は、図6及び図7に示すように、フォーカスリング8に直接ねじ込まれて取り付けられている止めネジ18を、合焦位置でねじ込み、止めネジ18の先端をレンズ保持枠6に当接させることにより、レンズ保持枠6に対するフォーカスリング8の回転を止める構造が一般的となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平09−222552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、イメージセンサの精細化により、レンズ解像度にも高いものが求められている。それに伴い、監視カメラ等の取り付け現場でのフォーカス調整もシビアであり、フォーカス調整にも高分解能化が必要になってきている。
フォーカス調整を高分解能化するためには、フォーカスリングの回転角を増やす必要があり、従来は60deg〜90degで調整していたものが、180deg〜270degと3倍以上の分解能が求められている。
【0005】
従来のフォーカス固定構造の場合、上記のように回転操作されるフォーカスリングに止めネジが直接取り付けられているため、60deg〜90deg程度の調整範囲では問題はなかったが、180deg〜270degの調整範囲となると、フォーカスリングの回転に伴って止めネジも移動するため、取り付け現場での止めネジの固定が難しくなり、作業性が悪くなる問題があった。
作業者が回り込めるスペースがある場合には、それほど問題はないが、例えば3面に囲まれた空間の角部に監視カメラを取り付ける場合、フォーカスリングの回転角が大きくなると、作業者から止めネジはほとんど見えなくなり、手探りの状態で止めネジをねじ込んで固定しなければならない。角部での作業スペースは殆ど無いため、ねじ込み作業は困難を極める場合があった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、監視カメラなどの取り付け場所に作業スペース上の制約がある場合でも、レンズのフォーカス調整及び調整された位置でのフォーカスリングの固定が容易に行え、レンズのフォーカス固定に係る作業性の向上に大きく寄与できるレンズのフォーカス固定構造の提供を、その主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、止めネジのねじ込みによってフォーカスリングの回転を直接に止める構成を回避し、止めネジで固定される別部材によって間接的にフォーカスリングの回転を止めるようにし、フォーカスリングの回転に伴って止めネジが移動しない構成とした。
具体的には、本発明は、レンズ保持枠の外周面に嵌められたフォーカスリングを回転させることにより、レンズ又はレンズ群を光軸方向に移動させ、調整がなされた位置で前記レンズ保持枠に対する前記フォーカスリングの位置を止めネジにより固定するレンズのフォーカス固定構造において、前記止めネジが前記フォーカスリングとは別の部材に取り付けられ、前記止めネジにより位置固定されるフォーカスストッパ部材を有し、前記フォーカスストッパ部材を前記フォーカスリングに当接させて前記レンズ保持枠に対する前記フォーカスリングの位置固定を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、取り付け場所に作業スペース上の制約がある場合でも、レンズのフォーカス調整及び調整位置でのフォーカスリングの固定が容易に行え、レンズのフォーカス固定に係る作業性の向上に大きく寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る監視カメラの要部斜視図である。
【図2】同断面図である。
【図3】フォーカス固定構造の要部拡大図である。
【図4】フォーカスストッパ部材の斜視図である。
【図5】フォーカスストッパ部材の当接部の先端形状を示す図である。
【図6】従来の監視カメラの要部斜視図である。
【図7】同断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態における監視カメラ2は、フォーカスレンズ群4等を保持するレンズ保持枠(レンズ鏡胴)6と、レンズ保持枠6の外周面に螺旋溝とこれに噛み合う凸部構造を介して回転可能に設けられたフォーカスリング8等を有している。
フォーカスリング8には、鋸歯状の突起が周方向に連なる摘み部10が形成されており、該摘み部10を持ってフォーカスリング8を回転させると、これに連動してフォーカスレンズ群4等を支持するユニットが光軸12方向に移動し、フォーカス調整がなされる。
【0011】
ズーム調整部14との接続部であるレンズ保持枠6の径大部(フランジ部)16には雌ネジ16aが形成されており、雌ネジ16aに止めネジ18がねじ込まれて取り付けられている。
径大部16の表面には、例えば帯状の板金を折り曲げて形成したフォーカスストッパ部材20が止めネジ18で固定されている。
図3及び図4に示すように、ネジ止め部位を中心にして、フォーカスストッパ部材20の一端部(図中右側)は係合部20aとしてなり、係合部20aは、その先端(自由端)側が径大部16の下側に潜り込む断面コ字状(U字状の概念を含む)に形成されている。換言すれば、径大部16の外側面に嵌まり込む形状を有している。
すなわち、係合部20aは、止めネジ18で挟持され、径大部16の外周面に略平行に延びる固定部20a−1と、該固定部20a−1から径大部16の下側に向って略垂直に延びる垂直部20a−2と、該垂直部20a−2から径大部16の下面16aに沿って略水平に延びる係止部20a―3とから構成されている。
係止部20a―3が径大部16の下面16aに弾性力でフィットするような寸法のコ字形状とすれば、止めネジ18が脱落しても、フォーカスストッパ部材20がレンズ保持枠6から外れて落ちたり、位置ずれしたりするのを防止することできる。
【0012】
フォーカスストッパ部材20の係合部20aと反対側の他端部20bは、止めネジ18で挟持され、フォーカスリング8の外周面に略平行に延びる固定部20b−1と、該固定部20b−1からフォーカスリング8に向って略垂直に延びる当接部20b−2とからなるL字状に形成されている。当接部20b−2の先端は、リング部22の外周面に対する摩擦力を高めるために、鋸歯状に形成されている。ここでは、他端部20bの形状をL字状としたが、当接部20b−2が斜めに延びる形状としてもよい。
図4において、符号20cは止めネジ18の挿通穴を示している。
【0013】
当接部20b−2の先端は、フォーカスリング8の摘み部10の背面(図2中右側)側に位置するリング部22の外周面に当接している。止めネジ18で固定したときに、当接部20b−2の先端はリング部22の外周面に弾性力で当接し、該当接圧(摩擦力)によってレンズ保持枠6に対するフォーカスリング8の回転が止められている。
上記弾性力は、フォーカス調整のためのフォーカスリング8の回転操作が可能で、且つ、回転操作を止めたときにはレンズ保持枠6に対するフォーカスリング8の位置固定(回転止め)が得られるように設定されている。
【0014】
したがって、フォーカス調整を行う場合には、摘み部10を持ってフォーカスリング8を回転させるだけでよく、調整がなされた位置としての合焦位置で回転操作を止めるだけで、フォーカス調整作業は完了する。
フォーカスリング8を回すだけの作業であるので、フォーカスリング8の回転角の大きさに拘らず容易に調整を行うことができる。
また、如何に狭いスペースであってもカメラ取り付け後のフォーカス調整作業を容易に行うことができる。
【0015】
本実施形態では、フォーカスストッパ部材20をフォーカスリング8の外周面に当接(圧接)させてその摩擦力でフォーカスリング8の回転を止める構成であるので、フォーカスリング8に不意に大きな力が加わった場合、フォーカスリング8が動いて合焦位置がずれる虞がある。
また、リング部22の外周面を傷付ける可能性がる。
このような懸念を解消するために、図5(a)に示すように、当接部20b−2の先端を弾性材24でコーティングして摩擦係数を増加させてもよい。
また、図5(b)に示すように、当接部20b−2の先端を略フラットにしてゴム等の弾性材26を取り付けてもよい。
【0016】
フォーカスストッパ部材20の係合部20a側においても当接部20b−2と同様にレンズ保持枠6との摩擦係数を大きくするようにしてもよい。
すなわち、係止部20a―3の径大部16の下側に対向する面を弾性材でコーティングしたりゴム層を設けて摩擦係数を増加させてもよい。
また、係止部20a―3の先端を上方に立ち上げて該先端を鋸歯状に形成してもよい。
このようにすれば、ネジ締め時のピントずれを防止することができる。
【0017】
上記実施形態では、止めネジ18を締め付けた状態で、フォーカスリング8の回転操作を行う構成としたが、フォーカス調整時に止めネジ18を緩めてフォーカスリング8を回転させ、調整後に締め付けるようにしてもよい。このようにすれば、リング部22の外周面を傷付ける心配はない。
また、止めネジ18の回転操作を要するものの、フォーカス調整作業において止めネジ18の位置は不変であるので、フォーカスリング8の回転角の大きさに伴う従来のような困難性は生じない。
【0018】
上記実施形態では、監視カメラでの実施を例示したが、これに限定されず、取り付け環境が狭い場合などの他種のカメラにおいても同様に実施でき、フォーカス調整が容易且つ高分解能で行える。
【符号の説明】
【0019】
6 レンズ保持枠
8 フォーカスリング
12 光軸
18 止めネジ
20フォーカスストッパ部材
20b−1 固定部
20b−2 当接部
24、26 弾性材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ保持枠の外周面に嵌められたフォーカスリングを回転させることにより、レンズ又はレンズ群を光軸方向に移動させ、調整がなされた位置で前記レンズ保持枠に対する前記フォーカスリングの位置を止めネジにより固定するレンズのフォーカス固定構造において、
前記止めネジが前記フォーカスリングとは別の部材に取り付けられ、前記止めネジにより位置固定されるフォーカスストッパ部材を有し、前記フォーカスストッパ部材を前記フォーカスリングに当接させて前記レンズ保持枠に対する前記フォーカスリングの位置固定を行うことを特徴とするレンズのフォーカス固定構造。
【請求項2】
請求項1に記載のレンズのフォーカス固定構造において、
前記止めネジが前記レンズ保持枠にねじ込んで取り付けられ、前記フォーカスストッパ部材は前記止めネジにより前記レンズ保持枠に固定されていることを特徴とするレンズのフォーカス固定構造。
【請求項3】
請求項2に記載のレンズのフォーカス固定構造において、
前記フォーカスストッパ部材は、前記止めネジにより前記レンズ保持枠に固定される固定部と、該固定部から前記フォーカスリングに向って延びる当接部とを有していることを特徴とするレンズのフォーカス固定構造。
【請求項4】
請求項3に記載のレンズのフォーカス固定構造において、
前記当接部の先端が、前記フォーカスリングとの摩擦係数を大きくする形状ないし表面層を有していることを特徴とするフォーカス固定構造。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のレンズのフォーカス固定構造において、
前記フォーカスストッパ部材の前記固定部における前記当接部と反対側には、前記レンズ保持枠に係止するための係合部が設けられ、該係合部は、前記レンズ保持枠に断面コ字状に係合する形状を有していることを特徴とするレンズのフォーカス固定構造。
【請求項6】
請求項5に記載のレンズのフォーカス固定構造において、
前記係合部の自由端が、前記レンズ保持枠との摩擦係数を大きくする形状ないし表面層を有していることを特徴とするフォーカス固定構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−73093(P2013−73093A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213035(P2011−213035)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000115728)リコー光学株式会社 (134)
【出願人】(599048638)CBC株式会社 (9)
【Fターム(参考)】