説明

レンズの形成方法、レンズおよびネガ型感光性組成物

【解決手段】工程1:ポリシロキサン(A)、光酸発生剤(B)および保護基を有するアミン(C)を含有するネガ型感光性組成物の被膜を基板上に形成する工程、工程2:前記被膜を選択的に露光し、露光された被膜を現像する工程、および工程3:現像後の被膜を加熱する工程を有することを特徴とするマイクロレンズの形成方法、および前記ネガ型感光性組成物。
【効果】本発明のマイクロレンズの形成方法によると、耐熱性に優れたマイクロレンズを形成することができる。本発明のネガ型感光性組成物は、前記マイクロレンズの形成方法の用いることができ、耐熱性に優れたマイクロレンズを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズの形成方法、レンズおよびネガ型感光性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
CCD、CMOS、レンチキュラー、LEDおよび光ファイバー光学系素子には、0.1〜100μm程度のレンズ径を有するマイクロレンズ、およびそれらマイクロレンズをアレイ状にしたマイクロレンズアレイが使用されている。
【0003】
ポリシロキサンを用いたマイクロレンズ形成用の組成物としては、エチレン性不飽和二重結合基を有するポリシロキサン、メルカプト基を有する化合物、およびキノンジアジド化合物を用いた感光性組成物(特許文献1)、エポキシ基を有するポリシロキサン、オニウム塩、およびキノンジアジド化合物を用いた感光性組成物(特許文献2)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−185991号公報
【特許文献2】特開2009−075326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
LEDなどの発光素子では、半導体層から長時間熱が発せられるため、発光素子に用いられるマイクロレンズは、従来のマイクロレンズよりもより優れた耐熱性を求められる。
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、つまり、耐熱性に優れたマイクロレンズ等のレンズの形成方法、当該形成方法により得られるレンズ、当該形成方法などに用いられるネガ型感光性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成する本発明は以下のとおりである。
[1]工程1:ポリシロキサン(A)、光酸発生剤(B)および保護基を有するアミン(C)を含有するネガ型感光性組成物の被膜を基板上に形成する工程、
工程2:前記被膜を選択的に露光し、露光された被膜を現像する工程、および
工程3:現像後の被膜を加熱する工程、
を有することを特徴とするレンズの形成方法。
[2]前記保護基が、tert−ブトキシカルボニル基である前記[1]に記載のレンズの形成方法。
[3]前記ポリシロキサン(A)が、芳香族環を有する基を有するポリシロキサン(A1)である前記[1]または[2]に記載のレンズの形成方法。
[4]前記ポリシロキサン(A1)中に含まれる全Si原子の数を100モル%とするとき、ポリシロキサン(A1)に含まれる芳香族環を有する基の含有量は30〜120モル%である前記[3]に記載のレンズの形成方法。
[5]前記ポリシロキサン(A1)が、下記一般式(1)で示されるポリシロキサンである前記[3]または[4]に記載のレンズの形成方法。
【0007】
【化1】

(式中、R1およびR2はそれぞれ独立に芳香族環を有する基を示す。R3〜R5はそれぞれ独立にアルキル基を示す。Xは水素原子またはアルキル基を示す。a〜fはそれぞれ独立に0以上の整数、a+bは1以上の整数、c+d+eは1以上の整数を示す。)
[6]前記一般式(1)において、a〜eが(a+b)÷(a+b+c+d+e)×10
0≧50の関係を満たす前記[5]に記載のレンズの形成方法。
[7]レンズの形成方法に用いられるネガ型感光性組成物であって、ポリシロキサン(A)、光酸発生剤(B)および保護基を有するアミン(C)を含有することを特徴とするネガ型感光性組成物。
[8]芳香族環を有する基を有するポリシロキサン(A1)、光酸発生剤(B)および保護基を有するアミン(C)を含有することを特徴とするネガ型感光性組成物。
[9]前記ポリシロキサン(A1)が、下記一般式(1)で示されるポリシロキサンである前記[8]に記載のネガ型感光性組成物。
【0008】
【化1】

(式中、R1およびR2はそれぞれ独立に芳香族環を有する基を示す。R3〜R5はそれぞれ独立にアルキル基を示す。Xは水素原子またはアルキル基を示す。a〜fはそれぞれ独立に0以上の整数、a+bは1以上の整数、c+d+eは1以上の整数を示す。)
[10]前記[1]〜[6]のいずれかに記載のレンズの形成方法によって形成されるレンズ。
【発明の効果】
【0009】
本発明のレンズの形成方法によると、耐熱性に優れたマイクロレンズ等のレンズを形成することができる。本発明のネガ型感光性組成物は、前記レンズの形成方法に用いることができ、耐熱性に優れたレンズを形成する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、実施例1で得られたマイクロレンズの走査型電子顕微鏡像である。
【図2】図2は、実施例2で得られたマイクロレンズの走査型電子顕微鏡像である。
【図3】図3は、実施例3で得られたマイクロレンズの走査型電子顕微鏡像である。
【図4】図4は、比較例1で得られたマイクロレンズの走査型電子顕微鏡像である。
【図5】図5は、比較例2で得られたマイクロレンズの走査型電子顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<レンズの形成方法>
本発明のレンズの形成方法は、
工程1:ポリシロキサン(A)、光酸発生剤(B)および保護基を有するアミン(C)を含有するネガ型感光性組成物の被膜を基板上に形成する工程、
工程2:前記被膜を選択的に露光し、露光された被膜を現像する工程、および
工程3:現像後の被膜を加熱する工程、
を有することを特徴とする。
[工程(1)]
工程(1)は、ネガ型感光性組成物の被膜を基板上に形成する工程である。
【0012】
基板としては、レンズを形成することができ、形成されたレンズを有効に使用することができる限り特に制限はなく、例えば半導体基板、ガラス基板、シリコン基板およびこれらの表面に各種金属膜または樹脂からなる平坦化膜などが形成された基板などを挙げることができる。
【0013】
ネガ型感光性組成物の被膜は、通常、ネガ型感光性組成物を基板表面に塗布し、好ましくはその後加熱処理(プレベーク)を行って、溶剤を除去することにより形成される。
ネガ型感光性組成物の塗布方法としては、例えば、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、スリットダイ塗布法、バー塗布法、インクジェット法を採用することができ、特にスピンコート法またはスリットダイ塗布法が好ましい。プレベークの条件は、各成分の種類、使用割合等によっても異なるが、通常、60〜110℃で30秒間〜15分間程度とすることができる。
【0014】
被膜の膜厚は、通常、0.1〜10μmである。
前記ポリシロキサン(A)を含有するネガ型感光性組成物から得られる被膜を工程3において加熱してメルトさせることによりレンズを形成することが可能である。本組成物はポリシロキサン(A)を含み且つネガ型であることから、本レンズの形成方法により耐熱性に優れたレンズが得られる。ポリシロキサンを含有するレンズ形成用の組成物としては、上述の特許文献1および2などに記載の、キノンジアジド化合物を用いたポジ型の感光性組成物は知られているが、ネガ型の感光性組成物は知られていなかった。ポジ型の感光性組成物では、キノンジアジド化合物を用いていることや、ネガ型のように被膜に含まれる成分が架橋しないことから耐熱性の高いレンズを得ることは困難である。また、ポリシロキサンではなく、シロキサン構造を有さない高分子化合物を含有するネガ型の感光性組成物では、耐熱性に優れたシロキサン構造を有さないことから、耐熱性の高いレンズを得ることは困難である。
【0015】
なお、本発明において「メルトさせる」とは、溶融した状態にすることを、「メルトする」とは、溶融した状態になることを意味する。「メルト性」とは、溶融した状態になる性質を意味する。また「メルト法」とは、感光性組成物から得られる被膜をメルトさせることによりレンズを形成する方法を意味する。
【0016】
前記ネガ型感光性組成物は、ポリシロキサン(A)、光酸発生剤(B)および保護基を有するアミン(C)を含有する。さらに、必要に応じて溶剤(D)および界面活性剤(E)等を含有することができる。
ポリシロキサン(A)
ポリシロキサン(A)としては、従来公知のポリシロキサンを用いることができる。ポリシロキサン(A)は、例えばケイ素原子に結合したハロゲン原子やアルコキシ基などを有する加水分解性のシラン化合物を加水分解縮合させて得られたものである。なお、本発明において「ポリシロキサン」とは、シロキサン単位 (Si−O)が2個以上結合した分子骨格を有するシロキサンを意味する。
【0017】
ポリシロキサン(A)は、芳香族環を有する基を有するポリシロキサン(A1)であることが好ましい。ポリシロキサン(A)が、芳香族環を有する基を有するポリシロキサン(A1)であると、本組成物から得られる被膜を加熱により良好にメルトさせやすくなり、また、より耐熱性に優れたレンズを形成できる。
【0018】
芳香族環を有する基とは、芳香族化合物から誘導された基、すなわち芳香族化合物から任意の数の水素原子を除いて形成する基、または該基の任意の水素原子を別の置換基または別の結合に置き換えて形成する基のことである。前記芳香族化合物としては、ベンゼン、ナフタレンおよびアントラセンなどの芳香族炭化水素化合物;フラン、チオフェン、ピロールおよびイミダゾールなどの複素芳香族化合物などが挙げられる。前記別の置換基と
しては、アルキル基、水酸基、アシル基、カルボキシル基およびアミノ基などの1価の基や、アルキリデン基などの2価の基、前記別の結合としては、エーテル結合およびチオエーテル結合などの2価の結合などが挙げられる。これらの中でも、芳香族炭化水素化合物から誘導された基である、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などのアリール基が耐熱性に優れたレンズを形成できることから好ましい。
【0019】
ポリシロキサン(A1)中に含まれる全Si原子の数を100モル%とするとき、ポリシロキサン(A1)に含まれる芳香族環を有する基の含有量は30〜120モル%であることが好ましく、より好ましくは50〜110モル%、さらに好ましくは70〜100モル%である。芳香族環を有する基の含有量が30〜120モル%の範囲内にあると、本組成物から得られる被膜がよりメルトしやすくなり、耐熱性に優れたレンズを形成できる。
【0020】
ポリシロキサン(A1)としては、下記一般式(1)で示されるポリシロキサンであることが好ましい。
【0021】
【化1】

(式中、R1およびR2はそれぞれ独立に芳香族環を有する基を示す。R3〜R5はそれぞれ独立にアルキル基を示す。Xは水素原子またはアルキル基を示す。a〜fはそれぞれ独立に0以上の整数、a+bは1以上の整数、c+d+eは1以上の整数を示す。)
ポリシロキサン(A1)が、このようなポリシロキサンであると、本組成物から得られる被膜はメルトしやすくなり、また、耐熱性に優れたレンズを形成できる。
【0022】
1〜R3が示す芳香族環を有する基としては、前述の芳香族環を有する基と同じ基が例示される。R1〜R3およびXが示すアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等が例示される。
【0023】
一般式(1)に示されたa〜eは、(a+b)÷(a+b+c+d+e)×100≧50の関係を満たすことが好ましく、さらには(a+b)÷(a+b+c+d+e)×100≧55の関係を満たすことが好ましい。この関係が満たされると、芳香族環を有する基の含有量比率が一定量以上になることから、本組成物から得られる被膜は加熱によりメルトしやすくなり、また耐熱性に優れたレンズを形成できる。
【0024】
一般式(1)で示されるポリシロキサン(A1)は、加水分解縮合により一般式(1)の括弧内に示された構造単位を形成しうる、1〜3官能の加水分解性のシラン化合物を加水分解縮合することにより製造することができる。このようなシラン化合物としては、例えばフェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシランおよびトリメチルメトキシシラン等を挙げることができる。一般式(1)で示されるポリシロキサン(A1)は、4官能のシラン化合物から誘導される構造単位を含まない。
【0025】
ポリシロキサン(A)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が100〜50000の範囲にあることが好ましく、500〜5000の範囲にあることがより好ましい。ポリシロキサン(A)の重量平均分子量が前記範囲内にあると、本組成物から得られる被膜は加熱により良好にメルトしやすくなり、また耐熱性に優れたレンズを形成できる。
【0026】
なお、ポリスチレン換算の重量平均分子量の測定条件は、実施例に記載の測定条件である。
ポリシロキサン(A)の製造方法としては、特開平6−9659号公報、特開2003−183582号公報、特開2007−008996号公報、特開2007−106798号公報、特開2007−169427号公報および特開2010−059359号公報等に記載された公知の方法、例えば、各単位源となるクロロシランやアルコキシシランを共加水分解する方法や、共加水分解物をアルカリ金属触媒などにより平衡化反応する方法などが挙げられる。
光酸発生剤(B)
光酸発生剤(B)は、光照射により酸を発生する化合物である。この酸がポリシロキサン(A)と作用することにより、ポリシロキサン(A)の分子同士は架橋する。光酸発生剤(B)を含有する感光性組成物から得られる被膜に含まれるポリシロキサン(A)が露光により架橋することにより、被膜がアルカリ可溶の状態からアルカリ不溶の状態に変化することで、ネガ型のパターンが形成される。なお、光酸発生剤(B)に、キノンジアジド系感光剤は含まれない。
【0027】
光酸発生剤(B)としては、例えば、オニウム塩化合物、ハロゲン含有化合物、スルホン化合物、スルホン酸化合物、スルホンイミド化合物、ジアゾメタン化合物が挙げられる。これらの中では、本組成物から得られる被膜が加熱によりメルトしやすいことからオニウム塩化合物が好ましい。
【0028】
オニウム塩化合物としては、例えば、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩が挙げられる。好ましいオニウム塩の具体例としては、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムp−トルエンスルホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムトリフリオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムp−トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−t−ブチルフェニル・ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−t−ブチルフェニル・ジフェニルスルホニウムp−トルエンスルホネート、1−(4,7−ジブトキシ−1−ナフタレニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホナート、4−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェートが挙げられる。
【0029】
ハロゲン含有化合物としては、例えば、ハロアルキル基含有炭化水素化合物、ハロアルキル基含有複素環式化合物が挙げられる。好ましいハロゲン含有化合物の具体例としては、1,10−ジブロモ−n−デカン、1,1−ビス(4−クロロフェニル)−2,2,2−トリクロロエタン、フェニル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−メトキシフェニル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、スチリル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、ナフチル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等のs−トリアジン誘導体が挙げられる。
【0030】
スルホン化合物としては、例えば、β−ケトスルホン化合物、β−スルホニルスルホン化合物およびこれらの化合物のα−ジアゾ化合物が挙げられる。好ましいスルホン化合物の具体例としては、4−トリスフェナシルスルホン、メシチルフェナシルスルホン、ビス(フェナシルスルホニル)メタンが挙げられる。
【0031】
スルホン酸化合物としては、例えば、アルキルスルホン酸エステル類、ハロアルキルスルホン酸エステル類、アリールスルホン酸エステル類、イミノスルホネート類が挙げられる。好ましいスルホン酸化合物の具体例としては、ベンゾイントシレート、ピロガロールトリストリフルオロメタンスルホネート、o−ニトロベンジルトリフルオロメタンスルホネート、o−ニトロベンジルp−トルエンスルホネートが挙げられる。
【0032】
スルホンイミド化合物としては、例えば、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフチルイミドが挙げられる。
【0033】
ジアゾメタン化合物としては、例えば、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタンが挙げられる。
【0034】
光酸発生剤(B)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のネガ型感光性組成物における光酸発生剤(B)の含有量は、ポリシロキサン(A)100質量部に対して、通常0.1〜10質量部、好ましくは0.3〜5質量部、さらに好ましくは0.5〜5質量部である。光酸発生剤(B)の含有量が前記下限値以上であると、形成されるレンズの耐熱性は優れる。光酸発生剤(B)の含有量が前記上限値以下であると、ネガ型感光性組成物から得られる被膜は解像度に優れる。
保護基を有するアミン(C)
保護基を有するアミン(C)は、ポリシロキサンが急速に架橋することを防ぐことにより、本組成物から得られる被膜をよりメルトしやすくする機能を有する。このため、本組成物は、露光により架橋するネガ型感光性組成物であっても、メルト法によりレンズを形成することができる。また、保護基を有するアミン(C)により、露光により光酸発生剤(B)から生成される酸の被膜中における拡散を制御することにより、感光性組成物から得られる被膜の解像度を上げることができる。
【0035】
保護基を有するアミン(C)とは、1級アミンまたは2級アミンの反応性の高い官能基である水素原子を不活性な官能基である保護基に変換した化合物である。つまり、1級アミンまたは2級アミンから水素原子を除去した1価の官能基(アミノ基)と保護基とを有する化合物のことである。
【0036】
本発明のネガ型感光性組成物は、酸拡散制御剤として保護基を有するアミン(C)を含有することにより、ネガ型感光性組成物から得られた被膜をメルトさせることができるようになり、レンズを形成することが可能になる。酸拡散制御剤として保護基を有しないアミンを用いると、ネガ型感光性組成物から得られた被膜をメルトさせることができず、レンズを形成することができない。すなわち、本発明のネガ型感光性組成物は、酸拡散制御剤として保護基を有するアミン(C)を使用することによって初めて、ポリシロキサンを含有するネガ型の感光性組成物でありながら、メルト法によるレンズの形成を可能にしたものである。
【0037】
保護基は、アミンの塩基性を低減させ、アミンがポリシロキサンを急速に架橋させるのを防ぐ機能を有する基である。
保護基としては、例えば、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、フタロイル基、トシル基および2−ニトロベンゼンスルホニル基がある。これらの中でも、感光性組成物から得られる被膜の解像度に優れ、且つ被膜のメルトが良好に行えることから、tert−ブトキシカルボニル基が好ましい。
【0038】
保護基を有するアミン(C)としては、例えば、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−オクチルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−ノニルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−デシルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジシクロヘキシルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、N,N−ジ−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N,N−ジ−t−ブトキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、N,N'−ジ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N,N',N'−テトラ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,7−ジアミノヘプタン、N,N'−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,8−ジアミノオクタン、N,N'−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,9−ジアミノノナン、N,N'−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,10−ジアミノデカン、N,N'−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,12−ジアミノドデカン、N,N'−ジ−t−ブトキシカルボニル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、N−t−ブトキシカルボニルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−メチルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−ピロリジン、N−t−ブトキシカルボニル−ピペリジン、N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシ−ピペリジン、N−t−ブトキシカルボニル−モルフォリン等のN−t−ブトキシカルボニル基含有アミン化合物等がある。
【0039】
これらの保護基を有するアミン(C)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
保護基を有するアミン(C)の含有量は、ポリシロキサン(A)100質量部に対して、通常、15質量部以下、好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。この配合量が15質量部を超える場合には、被膜の感度および現像性が低下する傾向がある。この配合量が0.001質量部未満である場合、パターン形状や寸法忠実度が低下するおそれがある。
溶剤(D)
溶剤(D)は、ネガ型感光性組成物を塗布して形成される被膜が均一な被膜となるようにするために用いられるものである。
【0040】
溶剤(D)としては、ネガ型感光性組成物中に含まれる成分が良好に溶解や分散する溶媒が用いられる。通常、有機溶剤を用いることが好ましく、前記各成分は有機溶剤に溶解または分散する。
【0041】
前記有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤、および芳香族系溶剤がある。
前記アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等のモノアルコール系溶剤;
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の多価アルコール系溶剤;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコール部分エーテル系溶剤がある。
【0042】
これらのアルコール系溶剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
前記ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−i−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、2−ヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン、がある。これらのケトン系溶剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0043】
前記エーテル系溶剤としては、例えば、エチルエーテル、i−プロピルエーテル、n−ブチルエーテル、n−ヘキシルエーテル、2−エチルヘキシルエーテル、エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、テトラエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソールがある。これらのエーテル系溶剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0044】
前記エステル系溶剤としては、例えば、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチルがある。これらのエステル系溶剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0045】
前記脂肪族炭化水素系溶剤としては、例えば、n−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、i−ヘキサン、n−ヘプタン、i−ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−オクタン、i−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンがある。これらの脂肪族炭化水素系溶剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0046】
前記芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n−プロピルベンセン、i−プロピルベンセン、ジエチルベンゼン、i−ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ−i−プロピルベンセン、n−アミルナフタレン、トリメチルベンゼンがある。これらの芳香族炭化水素系溶剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
界面活性剤(E)
界面活性剤(E)は、ネガ型感光性組成物の塗布性を改良する作用を示す成分であり、例えば、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ポリアルキレンオキシド系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、ポリ(メタ)アクリレート系界面活性剤等が挙げられる。
【0047】
具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤の他、以下商品名で、FTX−218((株)ネオス製)、SH8400 FLUID(Toray Dow Corning Silicone Co.製)、KP341(信越化学工業(株)製)、ポリフローNo.75,同No.95(以上、共栄社化学(株)製)、エフトップEF301、同EF303、同EF352(以上、トーケムプロダクツ(株)製)、メガファックスF171、同F173(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、フロラードFC430、同FC431(以上、住友スリーエム(株)製)、アサヒガードAG710,サーフロンS−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−106(以上、旭硝子(株)製)等を挙げることができる。これらのなかでも、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤が好ましい。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
また、前記界面活性剤は、ポリシロキサン(A)100質量部に対して、通常、0.00001〜1質量部の範囲で用いる。
本発明の感光性組成物は、各成分を均一に混合することにより調製できる。また、通常、ゴミを取り除くために、各成分を均一に混合した後、得られた混合物をフィルター等で濾過する。
[工程2]
工程2においては、上記被膜を選択的に露光し、露光された被膜を現像する。
【0049】
通常、露光は、所望のパターンを有するマスクを介して行う。
露光光としては、例えば紫外線(近紫外線、遠紫外線、極紫外線)、X線、荷電粒子線等が挙げられる。露光光はレーザー光であってもよい。紫外線としては例えばg線(波長436nm)、i線(波長365nm)、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザーがある。X線としては例えばシンクロトロン放射線がある。荷電粒子線として例えば電子線がある。
【0050】
露光量は、露光光の種類などにより適宜決められ、通常、1〜1500mJ/cm2である。
露光された被膜の現像に用いられる現像液としては、ポリシロキサン(A)を溶解するものであればどのようなものであってもよいが、通常、アルカリ性の液体が用いられ、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジエチルアミノエタノール、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノナンの水溶液がある。また、上記のアルカリ性の水溶液にメタノール、エタノールを含有させて得られる液や界面活性剤を適当量添加して得られる液を現像液として使用できる。
【0051】
現像方法としては、例えば液盛り法、ディッピング法、揺動浸漬法、シャワー法等の適宜の方法がある。
現像後、通常、水による洗浄処理を行う。
【0052】
現像後の被膜は、非露光部が除去され、目的とするレンズに対応するパターンを有する。
[工程3]
工程3においては、現像後の被膜を加熱することによりメルトさせる。
【0053】
被膜の加熱は、通常、ホットプレート、オーブン等により行われる。
前記加熱温度は、ポリシロキサンの架橋とメルトとのバランスが保てる温度で行われ、通常、90℃〜300℃である。加熱時間は、ホットプレート上で行う場合には1〜600分間、オーブン中で行う場合には10〜90分間とすることができる。この際に、2回以上の加熱処理を行うステップベーク法などを用いることもできる。
【0054】
このようにパターニングされた現像後の被膜をメルトさせることによりレンズを形成できる。
また、被膜をメルトさせた後、マイクロレンズの耐熱性を向上させる目的で、さらに加熱してもよい。通常、前記加熱温度は、メルトの加熱温度よりも高い温度で行われ、250〜400℃であり、加熱時間は0.5〜10時間である。
【0055】
また、前記加熱処理(メルト処理における加熱処理およびメルト処理の後の加熱処理)は、酸化によるレンズの呈色を防ぐため、窒素雰囲気下で行ってもよい。
以上のようにして得られたレンズは、耐熱性に優れたレンズとなる。
〔レンズ〕
本発明のレンズは、上述のレンズの形成方法により形成される。本発明のレンズは、CCD、CMOS、レンチキュラー、LEDおよび光ファイバーなどの光学系素子に従来使用されているレンズと同様に使用することができる。また本発明のレンズをアレイ状に並べてレンズアレイとすることもできる。
【0056】
本発明のレンズは、前述のとおり、耐熱性に優れている。このため、本発明のレンズは、半導体層から長時間熱が発せられるLEDなどの発光素子等において好適に使用することができる。
【実施例】
【0057】
1.原料の合成
1−1.重量平均分子量
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により下記条件で測定し、ポリスチレン換算値として求めた。
【0058】
装置:HLC−8120C(東ソー社製)
カラム:TSK−gel MultiporeHXL−M(東ソー社製)
溶離液:THF、流量0.5mL/min、負荷量5.0%、100μL
1−2.ポリシロキサンの合成
[合成例1]ポリシロキサン(A1−1)の合成
反応容器に、フェニルトリメトキシシラン98部、メチルトリメトキシシラン36部、シュウ酸2水和物0.1部を水40部に溶解させて得られた溶液、およびプロピレングリコールメチルエーテル25部を含む混合溶液を入れ、70℃で4時間加熱した。加熱後の混合溶液中に含まれるメタノールおよび水を減圧蒸留により除き、ポリシロキサン(A1−1)を35質量%含むプロピレングリコールメチルエーテル溶液を得た。
【0059】
ポリシロキサン(A1−1)に含まれるフェニルトリメトキシシラン由来の構造単位の比率は、ポリシロキサン(A1−1)に含まれる全構造単位を100mol%とした場合、65mol%であることが、Si29NMRより確認できた。すなわち、式(1)において(a+b)÷(a+b+c+d+e)×100=65であった。
【0060】
また、重量平均分子量は1200であった。
[合成例2]ポリシロキサン(A1−2)の合成
反応容器に、p−トリルトリメトキシシラン92部、メチルトリメトキシシラン42部、シュウ酸2水和物0.1部を水42部に溶解させて得られた溶液、およびプロピレングリコールメチルエーテル25部を含む混合溶液を入れ、70℃で4時間加熱した。加熱後の混合溶液中に含まれるメタノールおよび水を減圧蒸留により除き、ポリシロキサン(A1−2)を35質量%含むプロピレングリコールメチルエーテル溶液を得た。
【0061】
ポリシロキサン(A1−2)に含まれるp−トリルトリメトキシシラン由来の構造単位の比率は、ポリシロキサン(A1−2)に含まれる全構造単位を100mol%とした場合、60mol%であることが、Si29NMRより確認できた。すなわち、式(1)において(a+b)÷(a+b+c+d+e)×100=60であった。
【0062】
また、重量平均分子量は1500であった。
1−3.キノンジアジド化合物の合成
[合成例3]
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エタン1モルと1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリド2.0モルとを、ジオキサン中で攪拌しながら溶解させて溶液を調製した。次いで、この溶液が入ったフラスコを30℃にコントロールされた水浴中に浸し、溶液が30℃一定となった時点で、この溶液にトリエチルアミン2.0モルを、溶液が35℃を越えないように滴下ロートを用いてゆっくり滴下した。その後、析出したトリエチルアミン塩酸塩をろ過により取り除いた。ろ液を大量の希塩酸中に注ぎ込み、その際に析出した析出物を濾取し、40℃にコントロールされた真空乾燥器で一昼夜乾燥してキノンジアジド化合物(BR−1)を得た。
2.感光性組成物の調製
[実施例1〜3、比較例1〜3]
下記表1に示す成分を混合し、各成分を表1に示す含有量で含む実施例1〜3、比較例1〜3の感光性組成物を調製した。ポリシロキサン(A1−1)およびポリシロキサン(A1−2)については、表1に示す含有量となるように、それぞれ合成例1および合成例2で得られたポリシロキサン(A1−1)を含むプロピレングリコールメチルエーテル溶液およびポリシロキサン(A1−2)を含むプロピレングリコールメチルエーテル溶液を配合した。各成分の詳細は以下の通りである。
【0063】
【表1】

A1−1:前記合成例1で合成したポリシロキサン(A1−1)
A1−2:前記合成例2で合成したポリシロキサン(A1−2)
B−1:1−(4,7−ジブトキシ−1−ナフタレニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホナート
BR−1:前記合成例3で合成したキノンジアジド化合物(BR−1)
C−1:ジシクロヘキシルカルバミン酸tert−ブチル(N−t−ブトキシカルボニルジシクロヘキシルアミン)
CR−1:トリオクチルアミン
D−1:プロピレングリコールメチルエーテル
E−1:フッ素系界面活性剤((株)ネオス製、商品名「FTX−218」)
3.評価
実施例1〜3、比較例1〜3の感光性組成物について、下記評価を行った。評価結果を表1に示す。
3−1.メルト性
シリコンウェハ上に、前記感光性組成物をスピンコート法にて塗布し、ホットプレートにて100℃で60秒間加熱することで、膜厚1.5μmの被膜を形成した。前記被膜に、マスクを介して、i線ステッパー(ニコン社製、商品名「NSR2205i12D」)にて130mJ/cm2で露光した。露光後、ホットプレートにて80℃で60秒間加熱し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキサイドの水溶液にて現像した。実施例1〜3、比較例1、2においては矩形のドットパターンを得た。各ドットは縦3μm、横3μm、高さ1.5μmであった。比較例3の感光性組成物を用いた場合には、矩形のドットパターンは形成されなかった。その後、200℃で20分間、オーブンにて加熱することによりドットパターンをメルトさせ、次いで、窒素雰囲気下、オーブンにて300℃で1時間、加熱し、マイクロレンズを得た。
【0064】
得られたマイクロレンズの形状を電子顕微鏡にて観察し、メルト性について評価した。図1〜5に、それぞれ実施例1〜3、比較例1、2の感光性組成物から得られたマイクロレンズの走査型電子顕微鏡像を示した。
【0065】
図1〜5より、実施例1〜3および比較例2の感光性組成物を用いた場合は、ドットパターンがメルトして、良好な半球状のレンズが得られた(図1〜3および5)。一方、比較例1の感光性組成物を用いた場合は、ドットパターンのメルトが十分に進まず、角のある形状のレンズが得られた(図4)。
【0066】
比較例1の感光性組成物について、メルトさせる条件を250℃、20分間とした以外は、上記と同様の操作を行ったが、この場合もドットパターンのメルトは十分に進まず、得られたレンズは角のある形状となった。
【0067】
また比較例3においては、前述のとおり矩形のドットパターンは形成されず、得られたドットパターンを加熱しても、十分にメルトせず、良好な半球状のレンズは形成されなかった。
3−2.光透過率
石英板上に、前記感光性組成物をスピンコート法にて塗布し、ホットプレートにて100℃で60秒間加熱することで、膜厚1.5μmの被膜を形成した。前記被膜を、高圧水銀ランプにて400mJ/cm2で全面露光した。露光後、被膜をホットプレートにて80℃で60秒間加熱し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキサイドの水溶液に30秒間接触させた後、オーブンにて200℃で20分間加熱し、さらに、窒素雰囲気下、オーブンにて300℃で1時間加熱した。
【0068】
加熱後の被膜の波長400nmの光透過率(%T)を紫外線透過率測定装置にて測定した。
3−3.耐熱性
次に、被膜の耐熱性を調べるために、上記「3−2.光透過率」において、加熱後の被膜を300℃の熱循環式オーブンで1000時間加熱した後の25℃における波長400nmの光透過率を同様に測定した。熱循環式オーブンで1000時間加熱前の光透過率に対する加熱後の光透過率の比(%)を耐熱性として評価した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程1:ポリシロキサン(A)、光酸発生剤(B)および保護基を有するアミン(C)を含有するネガ型感光性組成物の被膜を基板上に形成する工程、
工程2:前記被膜を選択的に露光し、露光された被膜を現像する工程、および
工程3:現像後の被膜を加熱する工程、
を有することを特徴とするレンズの形成方法。
【請求項2】
前記保護基が、tert−ブトキシカルボニル基である請求項1に記載のレンズの形成方法。
【請求項3】
前記ポリシロキサン(A)が、芳香族環を有する基を有するポリシロキサン(A1)である請求項1または請求項2に記載のレンズの形成方法。
【請求項4】
前記ポリシロキサン(A1)中に含まれる全Si原子の数を100モル%とするとき、ポリシロキサン(A1)に含まれる芳香族環を有する基の含有量は30〜120モル%である請求項3に記載のレンズの形成方法。
【請求項5】
前記ポリシロキサン(A1)が、下記一般式(1)で示されるポリシロキサンである請求項3または4に記載のレンズの形成方法。
【化1】

(式中、R1およびR2はそれぞれ独立に芳香族環を有する基を示す。R3〜R5はそれぞれ独立にアルキル基を示す。Xは水素原子またはアルキル基を示す。a〜fはそれぞれ独立に0以上の整数、a+bは1以上の整数、c+d+eは1以上の整数を示す。)
【請求項6】
前記一般式(1)において、a〜eが(a+b)÷(a+b+c+d+e)×100≧50の関係を満たす請求項5に記載のレンズの形成方法。
【請求項7】
レンズの形成方法に用いられるネガ型感光性組成物であって、ポリシロキサン(A)、光酸発生剤(B)および保護基を有するアミン(C)を含有することを特徴とするネガ型感光性組成物。
【請求項8】
芳香族環を有する基を有するポリシロキサン(A1)、光酸発生剤(B)および保護基を有するアミン(C)を含有することを特徴とするネガ型感光性組成物。
【請求項9】
前記ポリシロキサン(A1)が、下記一般式(1)で示されるポリシロキサンである請求項8に記載のネガ型感光性組成物。
【化1】

(式中、R1およびR2はそれぞれ独立に芳香族環を有する基を示す。R3〜R5はそれぞれ独立にアルキル基を示す。Xは水素原子またはアルキル基を示す。a〜fはそれぞれ独立に0以上の整数、a+bは1以上の整数、c+d+eは1以上の整数を示す。)
【請求項10】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載のレンズの形成方法によって形成されるレンズ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−80201(P2013−80201A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−119531(P2012−119531)
【出願日】平成24年5月25日(2012.5.25)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】