説明

レンズの製造方法、レンズおよび光学装置

【課題】有効径よりも外側に無駄な領域が生じるのを抑制しながら、ゲート部を適切に切除可能なレンズの製造方法、レンズ、および、当該レンズを用いた光学装置を提供する。
【解決手段】対物レンズ100は、射出成形により成形されたレンズ中間体1からコバ部101の側面に形成されたゲート部13を切除することにより製造される。対物レンズ100は、円形のレンズ面102、103と、レンズ面102、103の周囲に形成されたリング状のコバ部101と、を有する。ゲート部13を切除した後の切断面Ct1がレンズ面102、103の光軸に対して傾くように、ゲート部13を切除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズの製造方法、レンズおよび光学装置に関し、特に、射出成形によりレンズを成形する際に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、樹脂により形成されたレンズが、光ピックアップ装置やカメラモジュール等の光学装置に搭載されつつある。かかる樹脂レンズは、たとえば、射出成形により成形される。この場合、射出成形用の金型から取り出されたレンズには、射出成形の際に樹脂を流入するための注入口に対応する部分(以下、「ゲート部」という)が付いている。レンズが金型から取り出された後、レンズからゲート部が取り除かれる。
【0003】
ところで、レンズからゲート部を切除した後の形状として、略円形状を求められることが多い。略円形状を求められる理由を次に述べる。
【0004】
光ピックアップ装置の場合には、たとえば、四角形のものと比較してレンズ設置時にレンズ回転量を大きくすることができ、かつ、細かく調整できる等の有利点があることを挙げることができる。また、レンズ部から一定の距離L1をおいた位置でレンズをホルダHに接着できるので、接着剤が流れてレンズ面を汚す惧れはない。それに対して、たとえば、円の一部が欠けている等により円形ではない場合、図14のように、レンズ面とレンズ外周との距離が前記距離L1より小さい距離L2しかない部分ができる。距離L1であれば接着剤の流入を防止できるが、距離L2であれば接着剤が流入し、レンズ面を汚すという問題がある。
【0005】
カメラモジュールの場合には、その基幹部品であるレンズモジュールにおいて図15(a)および図15(b)に示すように、バレル(筺体)にレンズが圧入されている。図15(c)のようにDカットにより円形が切り欠かれた領域L3が大きく、レンズ形状に円形状の部分が少ないとき、すなわち、レンズが円形状と言い難いときは、バレルへのレンズの圧入の際にバレルの内壁に均等に圧力がかかり難く、レンズモジュールの中心ずれ、ゆがみ、変形が大きく、レンズモジュールとしての性能を悪化させるという問題がある。それに対して、図15(d)のようにDカットにより円形が切り欠かれた領域L4が小さく、レンズ形状に円形状の部分が多いとき、すなわち、レンズが円形状に近いときは、バレルへのレンズの圧入の際にバレルの内壁に均等に圧力がかかることから、レンズモジュールの中心ずれ、ゆがみ、変形をおこしにくく、レンズモジュールとしての性能を向上させることが出来る等の有利点がある。
【0006】
そのため、ゲート部を切除する方法として、以下のような方法が現在用いられている。
【0007】
ゲート部が円形状レンズの側面に付いている場合、円形のレンズの外周面に沿ってゲート部を切除する方法が用いられ得る。しかしながら、この方法は、難易度が高く、コストが嵩むとの問題がある。
【0008】
ゲート部を容易に切除する方法として、ゲート部の近傍に、あらかじめDカット部を形成しておく方法がある(たとえば、特許文献1参照)。この場合、Dカット部は、レンズの外周を規定する円から凹んだ状態にある。このため、この円からはみ出さないようにゲート部を切除するのは、比較的容易である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−219594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、レンズにDカット部が配される場合、レンズの有効径を、Dカット部よりも内側に収める必要がある。このため、レンズの中心からDカット部までの距離よりもレンズの有効径を小さく設定する必要があるが、レンズの有効径を小さくとると、透過光量が少なくなり、レンズとしての性能が著しく低下する。逆に、レンズの有効径を大きくとると、Dカット部を形成するために、レンズ外周部までの径が大きくなる。このため、レンズ外径が大きくなり、その分、レンズのコストが嵩み、装置やモジュールの小型化の要望に沿うことが出来ないことになる。
【0011】
本発明は、このような問題を解消するためになされたものであり、有効径よりも外側に無駄な領域が生じるのを抑制しながら、ゲート部を適切に切除可能なレンズの製造方法、レンズ、および、当該レンズを用いた光学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様は、円形のレンズ部と、前記レンズ部の周囲に形成されたコバ部とを有するレンズを射出成形により成形するレンズの製造方法に関する。本態様に係るレンズの製造方法は、樹脂の流入路に対応するゲート部が前記コバ部の側面に形成されたレンズ中間体から前記ゲート部を切除する切除工程を含む。前記切除工程は、切断面が前記レンズ部の光軸に対して傾くように、前記ゲート部を切除する工程を含む。
【0013】
第1の態様に係るレンズの製造方法によれば、簡易な作業工程にて、ゲート部を適正に切除することができる。また、Dカット部等の手段を用いる必要がないため、有効径の外側に無駄な領域が生じるのを抑制することができる。さらに、レンズの光軸に対して傾くように、ゲート部が切除されるため、コバ部が欠ける領域を小さく抑えることができ、また、切除作業の際に発生するバリの高さを抑えることができる。
【0014】
第1の態様において、前記レンズ中間体には、前記光軸の方向の一方側に第1レンズ面が形成されるとともに、前記光軸の方向の他方側に第2レンズ面が形成され、前記第1レンズ面の有効径は、前記第2レンズ面の有効径よりも小さく構成され得る。さらに、前記切除工程は、前記切断面の上端が前記光軸に近づき、前記切断面の下端が前記光軸から離れるように、前記ゲート部を切除し、前記切断面の上端は前記一方側にあり、前記切断面の下端は前記他方側にあるよう構成され得る。こうすると、切除工程の際、第1レンズ面および第2レンズ面が傷つくことを抑えることができる。また、有効径の小さい第1レンズ面の方向からゲート部を切除することにより、より大きい範囲の切断スペースで、より簡易にゲート部を切除することができる。
【0015】
この場合、前記切除工程は、前記切断面の下端が、前記ゲート部と前記コバ部との接続位置に近づくように、前記ゲート部を切除するよう構成され得る。こうすると、下面側においてコバ部が欠ける領域をさらに小さく抑えることができる。
【0016】
本発明の第2の態様は、射出成形により成形されたレンズ中間体からコバ部の側面に形成されたゲート部を切除することにより形成されるレンズに関する。本態様に係るレンズは、円形のレンズ部と、前記レンズ部の周囲に形成されたコバ部と、を有する。ここで、前記レンズは、前記ゲート部を切除した切断面が前記レンズ部の光軸に対して傾くように形成されている。
【0017】
第2の態様に係るレンズによれば、上記第1の態様において述べたと同様、有効径の外側に無駄な領域が生じるのが抑制されるため、レンズの有効径を大きくとることができる。また、コバ部が欠ける領域が小さく抑えられるため、適正にホルダにレンズを装着することができる。また、切除作業の際に生じるバリの高さが抑えられているため、レンズの上側に空間的な余裕が生じ易くなる。
【0018】
第2の態様において、前記レンズ部は、前記一方側に第1レンズ面が形成されるとともに、前記他方側に第2レンズ面が形成され、前記第1レンズ面の有効径は、前記第2レンズ面の有効径よりも小さく構成され得る。さらに、前記切断面は、前記切断面の上端が前記光軸に近づき、前記切断面の下端が前記光軸から離れるように形成されているように形成されており、前記切断面の上端は前記一方側にあり、前記切断面の下端は前記他方側にあるよう構成され得る。こうすると、切除工程において、第1レンズ面および第2レンズ面が傷つけられにくくなるため、レンズの光学的機能が損われることがない。よって、レンズの光学特性を適正なものとすることができる。
【0019】
この場合、前記切断面は、前記切断面の下端が、前記ゲート部と前記コバ部の接続位置に近づくように、切断されるよう構成され得る。こうすると、下面側においてコバ部が欠ける領域がさらに小さく抑えられるため、適正にレンズをホルダに装着することができる。
【0020】
本発明の第3の態様は、光学装置に関する。本態様に係る光学装置は、上記第2の態様に係るレンズと、該レンズを通過する光線により結像される像を制御する制御系を備える。
【0021】
本態様に係る光学装置によれば、上記第2の態様と同様の効果が奏され得る。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、有効径よりも外側に無駄な領域が生じるのを抑制しながら、ゲート部を適切に切除可能なレンズの製造方法、レンズ、および、当該レンズを用いた光学装置を提供することができる。
【0023】
本発明の特徴は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下の実施の形態は、あくまでも、本発明の一つの実施形態であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以下の実施の形態に記載されたものに制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施の形態に係るレンズ中間体の構成を示す図である。
【図2】実施の形態に係る対物レンズの製造の作業工程の流れを示す図である。
【図3】実施形態1に係る対物レンズの構成を示す図である。
【図4】実施形態1に係る対物レンズからゲート部を切除する方法の比較例を示す図である。
【図5】実施形態1に係る対物レンズからゲート部を切除する方法を示す図である。
【図6】実施形態1に係る対物レンズからゲート部を切除する方法で切除するときに発生するバリの状況を示す図である。
【図7】実施形態2に係る対物レンズの構成を示す図である。
【図8】実施形態2に係る対物レンズからゲート部を切除する方法を示す図である。
【図9】変更例1に係る対物レンズからゲート部を切除する方法を示す図である。
【図10】実施の形態に係る光ピックアップ装置の構成を示す図である。
【図11】実施の形態に係るカメラモジュールの構成を示す図である。
【図12】変更例2に係る対物レンズからゲート部を切除する方法を示す図である。
【図13】変更例3に係る対物レンズからゲート部を切除する方法を示す図である。
【図14】レンズのホルダへの装着にかかる背景技術を説明する図である。
【図15】レンズのバレルへの装着にかかる背景技術を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。
【0026】
図1は、射出成形により成形されたレンズ中間体1の一例を模式的に示す斜視図である。なお、レンズ中間体1は、金型から取り出された後の状態が示されている。
【0027】
レンズ中間体1は、射出成形により成形された樹脂製の成形体である。レンズ中間体1には、スプルー部11と、ランナー部12と、複数のゲート部13と、複数の対物レンズ100が形成されている。
【0028】
スプルー部11は、上下方向に延びる棒状の形状を有する。ランナー部12は、前後左右方向に枝分かれする棒状の形状を有する。ゲート部13は、対物レンズ100とランナー部12を接続している。ゲート部13は、ランナー部12よりも前後上下の大きさが小さくなっている。
【0029】
図2は、対物レンズ100の製造の作業工程の流れを示す図である。
【0030】
まず、図1に示すレンズ中間体1を射出成形用の金型により成形する(S11)。具体的には、まず、融解した樹脂が、スプルー部11に対応する金型の溝に射出され、その後、ランナー部12に対応する金型の溝を通り、各ゲート部13に対応する金型の溝から、対物レンズ100に対応する金型の溝に注入される。そして、流入された樹脂と金型が冷却されることにより樹脂が硬化し、レンズ中間体1が成形される。こうして、成形されたレンズ中間体1を金型から取り出す(S12)。その後、成形されたレンズ中間体1のゲート部13を切除して対物レンズ100を製造する(S13)。
【0031】
このように、成形されたレンズ中間体1のゲート部13を切除することにより、対物レンズ100が得られる。以下、レンズ中間体1のゲート部13を切除して、対物レンズ100を製造する方法について、説明する。
【0032】
<実施形態1>
図3(a)は、実施形態1に係る対物レンズ100を上方向から見た平面図、図3(b)は、対物レンズ100を下方向から見た平面図、図3(c)は、対物レンズ100を前方向から見た平面図である。なお、ゲート部13に接続するランナー部12は、図示省略されている。
【0033】
図3(a)を参照して、対物レンズ100は、平面視において真円の形状を有している。対物レンズ100の上面には、平面視において対物レンズ100の中心と同心円状に、コバ部101と、レンズ面102が形成されている。コバ部101は、所定の厚みを有した平坦なリング形状となっている。レンズ面102の径φi1は、対物レンズ100の径φ1よりもかなり小さくなっている。レンズ面102の有効径は、径φi1よりもやや小さくなっている。
【0034】
図3(b)を参照して、対物レンズ100の下面には、平面視において対物レンズ100の中心と同心円状に、コバ部101と、レンズ面103が形成されている。レンズ面103の径φo1は、レンズ面102の径φi1よりも大きくなっている。レンズ面103の有効径は、径φo1よりもやや小さくなっている。さらに、図3(c)に示すように、
レンズ面102とレンズ面103とは光軸が一致している。レンズ面103の有効径は、レンズ面102の有効径よりも大きくなっている。
【0035】
また、コバ部101の下面の平坦な部分は、コバ部101の上面の平坦な部分よりも、狭くなっている。コバ部101の上下方向の厚みDf1は、ゲート部13の上下方向の厚みDg1よりもやや大きくなっている。
【0036】
さらに、レンズ面102は、上方向に突出する非球面形状の凸部となっている。レンズ面103は、下方向に突出する非球面形状の凸部となっている。レンズ面103の凸部の下方向の高さは、レンズ面102の凸部の上方向の高さよりも、かなり大きくなっている。
【0037】
ゲート部13は、対物レンズ100のリング状のコバ部101の左側面に対して、接続されている。すなわち、ゲート部13と対物レンズ100の接続部は、円の外周に沿って形成されている。なお、本願発明においてレンズ部とは入射してくる光線を屈折させることができる機能を有する部分である。そして、実施形態1においては、レンズ部はレンズ面102およびレンズ面103を含む。
【0038】
ここで、対物レンズ100は、光学部材として利用される場合、通常、ホルダに装着されて用いられる。たとえば、図4(a)に示すように、対物レンズ100は、ホルダH1に上側から載置され、接着剤Bにより固定される。このような場合、対物レンズ100のコバ部101の一部が欠けていると、接着剤Bが下方向のレンズ面103に流入しやすくなり、対物レンズ100の光学的機能に影響を及ぼす惧れがある。
【0039】
このように、対物レンズ100は、外周を円形状に保ちつつ、且つ、可能な限りコバ部101が欠けていない方が望ましい。そのためには、たとえば、図4(b)の比較例に示すように、対物レンズ100のレンズ周面に沿ってゲート部13を切除する方法が用いられ得る。しかし、この方法は、難易度が高く、対物レンズ100の切除にかかるコストが嵩むとの問題がある。
【0040】
ゲート部13を容易に切除する方法として、図4(c)の比較例に示すように、切り口が直線状となる刃物Cで、コバ部101の上面に対して垂直となるように、コバ部101を切断する方法が用いられ得る。この場合、刃物Cを駆動する装置の精度や、刃物C自体の厚さを考慮すると、対物レンズ100の外周からある程度内側の部分を切除する必要がある。このため、この場合には、コバ部101の幅を広くとる必要があり、また、切除によってコバ部101が大きく欠けることとなる。
【0041】
そこで、実施形態1に係る対物レンズ100では、以下に示す方法にて、ゲート部13を切除する。
【0042】
図5は、実施形態1に係る対物レンズ100のゲート部13を切除する方法を説明する図である。
【0043】
図5(a)を参照して、対物レンズ100は、刃物Cにより、対物レンズ100の上側から対物レンズ100の下側に向かって、対物レンズ100の上面に対して垂直な方向から対物レンズ100の光軸に近づく方向に角度θ1だけ傾くように切断される。このとき、対物レンズ100の上面では、コバ部101のPc1を通り、対物レンズ100の下面では、コバ部101のPc2を通るように、切断が行われる。Pc1とPc2を結ぶ直線は、図5(b)の一部拡大図に示すように、ゲート部13下端とコバ部101の接点Pg2を通る。
【0044】
こうして、図5(c)に示すように、対物レンズ100からゲート部13が完全に切除される。このように斜めに切断すると、対物レンズ100は、対物レンズ100の切断面Ct1の上端Pc1が光軸に近づき、対物レンズ100の切断面Ct1の下端Pc2が光軸から離れた形状で形成される。これにより、切断された後のコバ部101aの下面の面積を大きくすることができる。したがって、図5(d)に示すように、対物レンズ100の切断面Ct1の下端Pc2から対物レンズ100の外周までのコバ部101が欠けている領域を、非常に小さなものとすることができる。たとえば、図4(c)に示した比較例のように、Pc1を通り、刃物Cで対物レンズ100の上面に対して垂直な方向に切断する場合、Pc1からPo1までがコバ部101が欠けている領域となり、この領域は、Pc2からPo1までのコバ部101が欠けている領域よりもかなり大きいものとなる。
【0045】
このように、刃物Cを傾けて対物レンズ100を切断するという簡易な作業のみで、対物レンズ100の外周を円形状に保ちつつ、下面側においてコバ部101が欠ける領域を小さく抑えることができる。
【0046】
なお、上記では、対物レンズ100の上面のPc1を通るようにゲート部13が切除されたが、図5(a)に示すゲート部13上端とコバ部101との接点Pg1と、レンズ面102の外周Pr1の範囲t1であって、刃物Cがレンズ面102およびレンズ面103を傷つけない範囲であれば、どの位置から切除が行われても良い。実施形態1では、コバ部101の上面のレンズ面102から外周までのスペースは、コバ部101の下面のレンズ面103から外周までのスペースよりも大きいため、範囲t1を広くとることができる。したがって、広い範囲t1内で切断位置を定めることができ、より簡易に対物レンズ100を切断することができる。なお、レンズ面102の外周部のうち有効径よりも外側の領域が切除されても良いのであれば、対物レンズ100の上側における切断可能な範囲t1を、さらに、レンズ面102の有効径の外縁まで広げることができる。ただし、何れの場合も、切断作業は、切断面が光軸に対して傾くようにして行われる。
【0047】
また、上記では、対物レンズ100の下面のPc2を通るように角度θ1でゲート部13が切除されたが、図5(a)に示すゲート部13下端とコバ部101との接点Pg2と、レンズ103の外周Pr2の範囲b1であって、刃物Cがレンズ面102およびレンズ面103を傷つけない範囲であれば、どのような角度、どのような位置を通るように切除が行われても良い。また、レンズ面103の外周部のうち有効径よりも外側の領域が切除されても良いのであれば、対物レンズ100の下側における切断可能な範囲b1を、さらに、レンズ面103の有効径の外縁まで広げることができる。この場合、コバ部101はレンズ面103の全周を取り囲んでおらず、一部が欠けた形状となっており、略リング状となっている。
【0048】
ただし、実施形態1のように、切断面Ct1の下端がゲート部13下端とコバ部101との接点Pg2に近づくように切除した方が、切断された後のコバ部101aの下面の面積がより大きくなり、望ましい。また、どのように切断面の下端の位置を設定しても、切除作業は、切断面が光軸に対して傾くようにして行われる。
【0049】
なお、たとえば、切断Ct1が接点Pg2を通る構成とするとき、コバ部101を切断する角度θ1を大きくすることにより、切断面Ct1の下端Pc2がコバ部101の下面に掛からないようにすることができる場合がある。特に、ゲート部13の上下方向の厚みが小さい場合には、コバ部101を切断する角度θ1を調整することにより、切断面Ct1の下端Pc2がコバ部101の下面に掛からないように、ゲート部13を切除できる場合が想定され得る。このような場合には、切断面Ct1の下端Pc2がコバ部101の下面に掛からないように、角度θ1を設定するのが望ましい。これにより、コバ部101を
円形のまま残すことができ、対物レンズ100を適正に設置することができる。
【0050】
図6は、対物レンズ100の切断後に、コバ部101の上面に発生するバリを模式的に示す図である。図6には、図5(a)のコバ部101とゲート部13の上面が一部拡大して示されている。また、図6には、図4(c)に示した比較例により切断が行われる場合のバリの発生状態が併せて示されている。
【0051】
図6を参照して、比較例のように、コバ部101の上面に対して垂直な方向から切断が行われると、バリが上方向に発生し、バリの高さはhb2となる。他方、実施形態1のように斜め方向に切断が行われると、バリも斜め方向に発生し、バリの上下方向の高さhb1はhb2よりも低くなる。
【0052】
このように、実施形態1の場合、バリの上方向の高さを抑えることができる。このため、実施形態1では、比較例の場合に比べて、対物レンズ100の上側に、空間的な余裕が生じ易くなる。たとえば、後述のように、対物レンズ100が光ピックアップ装置に装着される場合、実施形態1では、比較例に比べてバリの高さが低くなるため、バリがディスク面に当りにくくなる。このため、ディスク面がバリによって傷つくことを抑制することができる。
【0053】
なお、バリの高さhb1を低くするには、図5(a)の角度θ1をなるべく大きく設定するのが望ましい。最も望ましくは、図5(a)の範囲t1の右端から範囲b1の左端に向かってコバ部101を切断するのが望ましい。こうすると、角度θ1を、許容範囲で最も大きくすることができ、バリの高さhb1を低くすることができる。ただし、コバ部101上面の切断位置を範囲t1の右端に近づけると、バリが、対物レンズ100を通る光の光路に掛かることが起こり得る。よって、この点も考慮して、コバ部101上面の切断位置を設定する必要がある。
【0054】
<実施形態1の効果>
本実施形態1によれば、以下の効果が奏され得る。
【0055】
刃物Cを傾けて対物レンズ100を切断するという簡易な作業のみで、対物レンズ100の外周を円形状に保ちつつ、下面側においてコバ部101が欠ける領域を小さく抑えることができる。したがって、対物レンズ100を適正にホルダ等に装着することができる。また、簡易な切除方法により、対物レンズ100を製造することができるため、対物レンズ100の製造コストを抑えることができる。
【0056】
光軸に対して傾けてゲート部13を切除するため、コバ部101の径方向の幅を小さくすることができる。よって、レンズ面102、103の径を比較例と同一とした場合、比較例と比べて、対物レンズ100の外径を小さくすることができる。また、対物レンズ100の外径を比較例と同一とした場合、レンズ面の径を比較例と比べて大きくすることもできる。
【0057】
切断面の上端が対物レンズの光軸に近づき、切断面の下端が対物レンズの光軸から離れるように、対物レンズ100が切断されるため、切断の際に、刃物Cの先端は、径が大きく高さが高いレンズ面103から離れる方向に進められる。このため、ゲート部13の切除作業において、レンズ面103が傷つくことが回避され得る。
【0058】
上側のレンズ面102は径が小さいため、切断面Ct1の上端Pc1を光軸に近づけることができる。また、レンズ面102は高さが低いため、刃物Cとレンズ面102との距離h1(図5(a)参照)をある程度大きくすることができる。このため、ゲート部13
の切除作業において、レンズ面102が傷づくことが抑えられる。
【0059】
有効径の小さいレンズ面102側から有効径の大きいレンズ面103側に向かって、対物レンズ100を切断するため、広い範囲t1において切断位置を定めることができ、簡易に対物レンズ100を切断することができる。
【0060】
ゲート部13下端とコバ部101の接点Pg2を通るように、対物レンズ100を切断するため、下面側においてコバ部101が欠ける領域をさらに小さく抑えることができる。
【0061】
バリの上下方向の高さを抑えることができるため、対物レンズ100の上側に空間的な余裕が生じ易くなる。このため、対物レンズ100の上面に面する物体がバリによって傷つけられることを抑制することができる。
【0062】
<実施形態2>
上記実施形態1には、Dカット部が設けられていない場合の形態を例示したが、本実施形態2では、Dカット部が設けられている場合に本発明を適用した形態が例示される。
【0063】
図7(a)は、実施形態2に係る対物レンズ200を上方向から見た平面図、図7(b)は、対物レンズ200を下方向から見た平面図、図7(c)は、対物レンズ200を前方向から見た平面図である。なお、対物レンズ200は、上記実施形態1の対物レンズ100同様に、ゲート部13を介して、レンズ中間体1のランナー部12に接続されているが、それらは、図示省略されている。
【0064】
図7(a)〜(c)を参照して、対物レンズ200は、Dカット部204が形成されていることを除いて、実施形態1の対物レンズ100と同様の構成を有する。コバ部201、レンズ面202、203は、それぞれ、実施形態1のコバ部101、レンズ面102、103に対応する。径φi2、φo2の大きさは、実施形態1の径φi1、φo1の大きさと同じである。また、レンズ面202、203の有効径は、実施形態1のレンズ面102、103の有効径と同じである。
【0065】
対物レンズ200は、平面視において真円の一部が切り欠かれた形状を有している。Dカット部204は、対物レンズ200の左端から右方向に距離Lの位置で、対物レンズ200の真円形状を、前後方向に直線状に切り欠くようにして形成されている。ゲート部13は、Dカット部204から左方向に延びるように、Dカット部204に接続されている。
【0066】
このようにDカット部204が形成されている場合、通常、図7(d)の比較例に示すように、対物レンズ200の外周を規定する円からDカット部204の側面までの距離L(図7(a)参照)の範囲において、ゲート部13が上下方向に切断される。これにより、切断後に残るゲート部13は、対物レンズ200の外周を規定する円の中に収まる。
【0067】
しかし、この場合、切断後のゲート部13を、対物レンズ200の外周を規定する円の中に治めるためには、距離Lを比較的大きく設ける必要がある。すなわち、刃物Cを駆動する装置の精度や、刃物C自体の左右方向の厚みを考慮すると、Dカット部204の側面よりも、ある程度、左方向に離れた位置Pc0で、ゲート部13を切断する必要がある。このため、切断後のゲート部13の左方向の飛び出し量は、ある程度大きいものとなる。したがって、切断後のゲート部13を、対物レンズ200の外周を規定する円の中に治めるためには、Dカット部204の側面を、この円から右方向に大きく後退させる必要がある。その結果、図7(a)に示す距離Lは、比較的大きく設けられる必要がある。
【0068】
このように距離Lが大きくなると、それに伴い、コバ部201の径方向の幅が大きくなる。このため、レンズ面202、203の外側に無駄な領域が生じ、対物レンズ200のコストが嵩む結果となる。また、小型化を妨げる結果となる。
【0069】
このようにDカット部204が配されている場合も、上記実施形態1と同様の方法にて、ゲート部13を切除することができる。
【0070】
図8は、実施形態2に係る対物レンズ200のゲート部13を切除する方法を説明する図である。
【0071】
図8(a)を参照して、対物レンズ200は、刃物Cにより、対物レンズ200の上側から対物レンズ200の下側に向かって、対物レンズ200の上面に対して垂直な方向から対物レンズ200の光軸に近づく方向に角度θ2だけ傾くように切断される。
【0072】
対物レンズ200上面の切断位置Pc3は、上記実施形態1と同様、対物レンズ200の外周を規定する円とゲート部13の上端との接点Pg3からレンズ面202の径までの範囲t2内に設定される。レンズ面202の外周部のうち有効径よりも外側の領域が切除されても良いのであれば、範囲t2は、さらに、レンズ面202の有効径の外縁まで広げられる。
【0073】
対物レンズ200の下面の切断位置Pc4は、対物レンズ200の外周を規定する円とゲート部13の下端との接点Pg4からDカット部204の側面までの範囲b2内に設定されるのが望ましい。このように範囲b2が設定されると、ゲート部13の切除作業により、コバ部201aの下面の領域が切除されて減少することを抑制することができる。
【0074】
なお、対物レンズ200の下面の切断位置Pc4を、ゲート部13下端とDカット部204との接点Pd(図8(b)の一部拡大図参照)に近づけることによって、図8(d)に示すように、切断後のゲート部13の左方向への飛び出し量を小さくすることができる。このようにゲート部13を切除すれば、図7(a)に示す距離Lが比較的小さく設定されているような場合にも、刃物Cの厚みを小さくし、あるいは、加工精度を高めずとも、単に、刃物Cの角度を傾けて対物レンズ200を切断するという簡易な作業のみで、ゲート部13を適切に切除することができる。
【0075】
この他、本実施形態2では、上記実施形態1と同様の効果が奏され得る。
【0076】
図9は、実施形態2の対物レンズ200において、ゲート部13を他の位置で切断する場合の変更例1を示す図である。
【0077】
図9(a)を参照して、対物レンズ200は、刃物Cにより、対物レンズ200の上面に対して垂直な方向から、対物レンズ200の光軸に近づく方向に角度θ3だけ傾くように切断される。このとき、ゲート部13は、切断面がコバ部201の上面にも下面にも掛からないように切断される。
【0078】
なお、変更例1の場合、図9(c)に示すように、バリは、ゲート部13に対して、斜め方向に発生するため、比較例にように、ゲート部13を上下方向に切断する場合に比べ、バリの高さhb1を低くすることができる。このため、ゲート部13の厚さDg2を、比較例の場合よりも厚くすることができる。これにより、対物レンズ200を形成する射出成形用の金型の溝に流入させる樹脂を充填しやすくなり、より円滑に射出成形を行うことができる。
【0079】
<光ピックアップ装置>
図10に、実施形態1または2に基づき設計された対物レンズ100または対物レンズ200を搭載する光ピックアップ装置500の光学系(BD用の光学系)の構成を例示する。
【0080】
BD用の光学系は、半導体レーザ501と、回折格子502と、偏光ビームスプリッタ503と、コリメータレンズ504と、コリメータレンズアクチュエータ505と、立ち上げミラー506と、λ/4板507と、対物レンズ508と、アナモレンズ509と、光検出器510と、FMD(Front Monitor Diode)511から構成されている。
【0081】
半導体レーザ501は、波長400nm程度の青色レーザ光を出力する。回折格子502は、半導体レーザ501から出射されたレーザ光をメインビームと2つのサブビームに分割する。偏光ビームスプリッタ503は、回折格子502側から入射されたレーザ光を反射および透過する。なお、半導体レーザ501は、出射レーザ光の偏光方向が偏光ビームスプリッタ503に対してS偏光となる方向からややずれるように配置されている。これにより、回折格子502を透過したレーザ光は、たとえば、95%が偏光ビームスプリッタ503により反射され、残り5%が偏光ビームスプリッタ503を透過する。
【0082】
コリメータレンズ504は、偏光ビームスプリッタ503によって反射されたレーザ光を平行光に変換する。コリメータレンズアクチュエータ505は、コリメータレンズ504をレーザ光の光軸方向に駆動する。なお、コリメータレンズ504とコリメータレンズアクチュエータ505は、収差補正手段として機能する。
【0083】
立ち上げミラー506は、コリメータレンズ504を介して入射されたレーザ光を対物レンズ508に向かう方向に反射する。λ/4板507は、立ち上げミラー506によって反射されたレーザ光を円偏光に変換するとともに、ディスク(BD)からの反射光を、ディスクへ向かうときの偏光方向に直交する直線偏光に変換する。これにより、ディスクによって反射されたレーザ光は偏光ビームスプリッタ503を透過して光検出器510へと導かれる。
【0084】
対物レンズ508は、樹脂材料により射出成形にて形成されており、上記実施形態1の対物レンズ100および実施形態2の対物レンズ200のように、ゲート部が斜めに切断されて構成されている。切断面は、ディスク(BD)側が光軸に近づき、光源側が光軸から離れるように形成されている。また、対物レンズ508は、前記光源側がホルダ521に載置されて装着されている。このホルダ521は、対物レンズアクチュエータ522によって、フォーカス方向およびトラッキング方向に駆動される。
【0085】
アナモレンズ509は、ディスクによって反射されたレーザ光を光検出器510上に収束させる。光検出器510は、受光したレーザ光の強度分布から再生RF信号、フォーカスエラー信号およびトラッキングエラー信号を導出するためのセンサーパターンを有している。なお、本実施の形態では、フォーカスエラー信号の生成手法として非点収差法が採用され、トラッキングエラー信号の生成手法としてDPP(Differential Push Pull)法が採用されている。光検出器510は、これらの手法に従ってフォーカスエラー信号およびトラッキングエラー信号を導出するためのセンサーパターンを有している。
【0086】
FMD511は、偏光ビームスプリッタ503を透過したレーザ光を受光して、受光光量に応じた信号を出力する。FMD511からの信号は、半導体レーザ501のパワー制御に用いられる。
【0087】
本構成例の光ピックアップ装置によれば、対物レンズ508は、ホルダ521に接する面のコバ部の欠ける領域が小さく抑えられるため、適正に対物レンズ508をホルダ521に装着することができる。
【0088】
また、対物レンズ508とホルダ521の接着工程において、接着剤が光源側のレンズ面に流入しにくくなるため、対物レンズ508の光学的機能を損ねることなく、ディスク(BD)の読み書きを適正に行うことができる。
【0089】
また、ゲート部の簡易な切除方法により、安価なコストで対物レンズ508を製造することができるため、光ピックアップ装置全体のコスト削減を図ることができる。
【0090】
さらに、対物レンズ508のバリは、斜め方向に発生するため、対物レンズアクチュエータ522によって、対物レンズ508がディスク(BD)に近づいた場合においても、ディスク(BD)を傷つけることを抑制することができる。上記構成において、光ピックアップ装置(光学装置)は、実施形態1または2の形状をしたレンズと、そのレンズを通過する構成により結像される像を制御する制御系(コリメータレンズアクチュエータ505、対物レンズアクチュエータ522、光検出器510等)を備えていることとなる。
【0091】
<カメラモジュール>
図11は、実施形態1の形状をしたレンズを、携帯電話機等の撮影装置に搭載されるカメラモジュール(光学装置)に使用した形態を示す断面図である。
【0092】
該カメラモジュール600においては、配線基板610上にイメージセンサ611とベース612とDSP613が搭載されている。レンズモジュール620は、有底円筒形状を有するレンズバレル621と、該レンズバレル621内に収容された樹脂製の4つのレンズ621a、621b、621c、621dとを備えている。該4つのレンズ621a、621b、621c、621dは、それぞれの光軸621lに対して傾いた傾斜面(切断面)621ac、621bc、621cc、621dcを有し、レンズバレル621に圧入されている。
【0093】
4つのレンズ621a、621b、621c、621dは、樹脂材料により射出成形にて形成されており、上記実施形態1および実施形態2のように、ゲート部が斜めに切断されて構成されている。
【0094】
レンズバレル621は一対のアクチュエータ630により光軸に沿って移動可能となっている。また、一対のアクチュエータ630は複数設置されており、ズームアクチュエータやフォーカスアクチュエータを用いることができる。
【0095】
カメラモジュール600は、レンズモジュール620に入射した光を該レンズモジュール620によりイメージセンサ611上に結像させ、これをイメージセンサ611により電気信号に変換する。該電気信号は、DSP613により処理される。カメラモジュール600は、携帯電話機等の機器本体に内蔵されたマイコン701と通信可能に接続されており、該マイコン701は、機器本体に設けられた操作部702に接続されて、操作部702からの入力信号を受信することが可能である。ユーザが操作部702を操作することにより、操作部702から、撮影を実行するための入力信号が入力された場合、マイコン701は操作部702からの入力信号を受信し、これによりマイコン701は、イメージセンサ611上に結像された画像の情報を入手し、その後、該情報に基づいて撮影に必要なシャッタ速度等を算出する。そして、マイコン701は、算出したシャッタ速度等で画像の撮影を実行し、これにより被写体の画像が取得されることになる。
【0096】
上記構成において、カメラモジュール(光学装置)は、実施形態1の形状をしたレンズと、そのレンズを通過する光線により結像される像を制御する制御系(アクチュエータ)を備えていることとなる。
【0097】
本構成例のカメラモジュールによれば、上記光ピックアップ装置の構成例と略同様の効果が奏され得る。
【0098】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も上記の他に種々の変更が可能である。
【0099】
たとえば、上記実施形態1および上記実施形態2では、レンズ面が上下方向に突出する両凸の対物レンズ100および対物レンズ200が示されたが、図12の変更例2に示すように、両凹のレンズ300に本発明を適用することができる。この場合、レンズ面が傷つく惧れがないため、切断方向の下部が、レンズ面の光軸に近づくように、レンズを切断しても良い。
【0100】
図12(a)は、変更例2に係るレンズ300のゲート部13を切除する方法を説明する図である。
【0101】
図12(a)を参照して、レンズ300は、リング状のコバ部301と、上面に有効径の小さい凹状のレンズ面302と、下面に有効径の大きい凹状のレンズ面303を有している。ゲート部13と、レンズ300の接続部は、円の外周に沿って形成されている。
【0102】
レンズ300は、刃物Cにより、レンズ300の上方向からレンズ300の下方向に向かって、レンズ300の上面に対して垂直な方向から、レンズ300の光軸から遠ざかる方向に角度θ4だけ傾くように切断される。このとき、レンズ300の上面では、コバ部301のPc7を通り、レンズ300の下面は、コバ部301のPc8を通るように、切断が行われる。Pc7とPc8を結ぶ直線は、図12(b)の一部拡大図に示すように、ゲート部13上端とコバ部301の接点Pg5を通る。
【0103】
こうすると、上記実施形態1同様に、刃物Cの角度を傾けてレンズ300を切断するという簡易な作業のみで、レンズ300の外周を円形状に保ちつつ、下面側においてコバ部301が欠ける領域を小さく抑えることができる。
【0104】
なお、本変更例2においても、上記実施形態1同様に、図12(a)に示すゲート部13上端とコバ部301との接点Pg5と、レンズ面302の外周Pr5の範囲t3であって、刃物Cがレンズ面302およびレンズ面303またはこれらレンズ面の有効径内の領域を傷つけない範囲であれば、どの位置から切除が行われても良い。
【0105】
また、ゲート部13下端とコバ部301の接点Pg6と、レンズ面303の外周Pr6の範囲b3であって、刃物Cがレンズ面302およびレンズ面303またはこれらレンズ面の有効径内の領域を傷つけない範囲であれば、どのような角度、どのような位置を通るように切除が行われても良い。
【0106】
さらには、上記実施形態1および2と同様に、切断面の上端が光軸に近づき、切断面の下端が光軸から離れるように、レンズ300が切断されても良い。
【0107】
なお、本変更例2においては、切断面の上端もしくは下端が、ゲート部13とコバ部301との接点Pg5もしくは接点Pg6のどちらか一方に近づくように切断されるのが望ましい。
【0108】
また、上記実施形態1および2に示した両凸レンズ、および上記変更例2に示した両凹レンズのほか、二つの曲面が同じ方向に湾曲するメニスカスレンズや、片方の面のみが凸状の片凸レンズ、または凹状の片凹レンズ等、射出成形によって成形されるレンズ中間体からゲート部を切除することによって製造されるレンズであれば、どのようなレンズであっても、本発明を適用可能である。
【0109】
また、上記実施形態1では、対物レンズ100がレンズ上面からレンズ下面に向かって切断されたが、図13(a)、(b)の変更例3に示すように、レンズ下面からレンズ上面に向かって対物レンズ100が切断されても良い。
【0110】
図13(a)、(b)は、変更例3に係る対物レンズ100のゲート部13を切除する方法を説明する図である。図13(a)、(b)は、図5(a)と同様の切断位置でレンズ100が切断されており、同一の符号が示されている。
【0111】
この場合、切断方向の上部が、レンズ面102に近づくように切断されるため、レンズ面102の凸部の高さが高い場合は、レンズ面102が刃物Cにより傷つきやすくなるが、図示の如く、変更例3においては、レンズ面102の凸部の高さが非常に低く形成されているため、レンズ面102への影響は軽微である。
【0112】
本変更例3の場合も、上記実施形態1同様の効果が奏され得る。また、本変更例3の場合も、切断位置、および切断角度は適宜、上記実施形態1同様に変更可能である。
【0113】
また、上記光ピックアップ装置の実施形態では、BD用の対物レンズに本発明が適用されたが、他の用途の対物レンズに本発明を適用することもできる。
【0114】
また、光ピックアップ装置の構成は、図10に示すものに限定されるものではなく、CD/DVD/BDのうちの2つまたは3つに対して互換型の光ピックアップ装置に本発明を適用することも可能である。また、光磁気ディスクにレーザ光を照射する光ピックアップ装置およびそれに搭載される対物レンズに本発明を適用することも可能である。
【0115】
また、光ピックアップ装置、および携帯電話機等のカメラモジュールのほか、レンズが搭載される製品であればどのような製品であっても、本発明の対物レンズを適用することが可能である。また、対物レンズ以外のレンズに本発明を適用することも可能である。また、コバ部は平坦物に限定されず、たとえば、段付等の凹凸形状を有するものであっても良い。
【0116】
本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0117】
1 … レンズ中間体
13 … ゲート部
100、200 … 対物レンズ(レンズ)
101、201 … コバ部
102、202 … レンズ面(レンズ部、第1レンズ面)
103、203 … レンズ面(レンズ部、第2レンズ面)
Ct1、Ct2 … 切断面
Pg2、Pd … 接点(接続位置)
300 … レンズ
301 … コバ部
302、303 … レンズ面(レンズ部)
500 … 光ピックアップ装置(光学装置)
508 … 対物レンズ(レンズ)
600 … カメラモジュール(光学装置)
621a〜621d … レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形のレンズ部と、前記レンズ部の周囲に形成されたコバ部とを有するレンズを射出成形により成形するレンズの製造方法であって、
樹脂の流入路に対応するゲート部が前記コバ部の側面に形成されたレンズ中間体から前記ゲート部を切除する切除工程を含み、
前記切除工程は、切断面が前記レンズ部の光軸に対して傾くように、前記ゲート部を切除する工程を含む、
ことを特徴とするレンズの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のレンズの製造方法において、
前記レンズ中間体には、前記光軸の方向の一方側に第1レンズ面が形成されるとともに、前記光軸の方向の他方側に第2レンズ面が形成され、前記第1レンズ面の有効径は、前記第2レンズ面の有効径よりも小さく、
前記切除工程は、前記切断面の上端が前記光軸に近づき、前記切断面の下端が前記光軸から離れるように、前記ゲート部を切除し、
前記切断面の上端は前記一方側にあり、前記切断面の下端は前記他方側にある、
ことを特徴とするレンズの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のレンズの製造方法において、
前記切除工程は、前記切断面の下端が、前記ゲート部と前記コバ部との接続位置に近づくように、前記ゲート部を切除する、
ことを特徴とするレンズの製造方法。
【請求項4】
射出成形により成形されたレンズ中間体からコバ部の側面に形成されたゲート部を切除することにより形成されるレンズであって、
円形のレンズ部と、
該レンズ部の周囲に形成されたコバ部と、を有し、
前記ゲート部を切除した切断面が前記レンズ部の光軸に対して傾くように、形成されている、
ことを特徴とするレンズ。
【請求項5】
請求項4に記載のレンズにおいて
前記レンズ部は、前記光軸の方向の一方側に第1レンズ面が形成されるとともに、前記光軸方向の他方側に第2レンズ面が形成され、前記第1レンズ面の有効径は、前記第2レンズ面の有効径よりも小さく、
前記切断面は、前記切断面の上端が前記光軸に近づき、前記切断面の下端が前記光軸から離れるように形成されており、
前記切断面の上端は前記一方側にあり、前記切断面の下端は前記他方側にある、
ことを特徴とするレンズ。
【請求項6】
請求項5に記載のレンズにおいて
前記切断面は、前記切断面の下端が、前記ゲート部と前記コバ部の接続位置に近づくように、切断されている、
ことを特徴とするレンズ。
【請求項7】
請求項4ないし6の何れか一項に記載のレンズと、
該レンズを通過する光線により結像される像を制御する制御系と、
を備えた光学装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−95034(P2013−95034A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239171(P2011−239171)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】