説明

レンズアレイ、レンズユニット、および画像読取装置

【課題】 読取対象における画像をよりきれいに読み取ることが可能なレンズアレイ、レンズユニット、および画像読取装置を提供すること。
【解決手段】 各々が第1方向に延びる複数の凸レンズ部と、上記複数の凸レンズ部を保持するホルダ部と、を備え、上記複数の凸レンズ部はそれぞれ、上記第1方向のうちの一方を向く第1凸レンズ面211と、上記第1方向のうちの他方を向く第2凸レンズ面212と、を有し、第1凸レンズ面211は、物体の倒立像を結像し、第2凸レンズ面212は、上記倒立像を再結像させることにより上記物体の正立像を結像し、第1凸レンズ面211側の半画角θ1が、6〜15度であり、第2凸レンズ面212側の半画角θ2が、6〜15度である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズアレイ、レンズユニット、および画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コピー機やスキャナ装置において画像読取装置が用いられている。画像読取装置は、光源と、レンズアレイユニットと、複数の受光素子と、を備える。光源から放たれた光は、原稿にて反射され、レンズアレイユニットを通過し、各受光素子に至る。このようにして、原稿における画像が画像読取装置によって読み込まれる。
【0003】
上記のレンズアレイユニットは、複数の凸レンズを列状に並べたレンズアレイを含んでいる。このようなレンズアレイについては、特許文献1に記載されている。同文献に記載の各凸レンズは、第1のレンズ面と第2のレンズ面とを有する。第1のレンズ面は、物体の倒立像を、凸レンズ内に結像する。第2のレンズ面は、上記倒立像を反転させ第2のレンズ面の向く側に、物体の正立像を結像する。このようなレンズアレイユニットは、レンズ内部の屈折率が中心軸からの距離に応じて徐々に変化する屈折率分布ファイバーに比べ、安価であるといったメリットがある。
【0004】
しかしながら、同文献1の記載からは、各凸レンズを規定するパラメータ等についての検討が十分であるとは言えない。一般的に光学の分野においては、レンズの形状等が少しでも変わると、光学特性が大きく変わることがある。そのため、各凸レンズを規定するパラメータによっては、原稿における画像をきれいに読み取れないおそれがある。そこで、凸レンズを規定するパラメータに関して研究が行われてきた。またレンズアレイに関しては、特許文献2にも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−139911号公報
【特許文献2】特開2000−214305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、読取対象における画像をよりきれいに読み取ることが可能なレンズアレイを提供することをその主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面によると、各々が第1方向に延びる複数の凸レンズ部と、上記複数の凸レンズ部を保持するホルダ部と、を備え、上記複数の凸レンズ部はそれぞれ、上記第1方向のうちの一方を向く第1凸レンズ面と、上記第1方向のうちの他方を向く第2凸レンズ面と、を有し、第1凸レンズ面は、物体の倒立像を結像し、上記第2凸レンズ面は、上記倒立像を再結像させることにより上記物体の正立像を結像し、上記第1凸レンズ面側の半画角が、6〜15度であり、上記第2凸レンズ面側の半画角が、6〜15度である、レンズアレイが提供される。
【0008】
好ましくは、F値が7.0よりも小さい。
【0009】
好ましくは、2.8≦TTL/t≦6の関係を満たす。
TTLは、上記第1方向における物体と上記正立像との距離である。tは、上記第1方向における、上記第1凸レンズ面の頂部と上記第2凸レンズ面の頂部との距離である。
【0010】
好ましくは、−7.5≦TTL/f≦−5.2の関係を満たす。
TTLは、上記第1方向における物体と上記正立像との距離である。fは、上記凸レンズ部の焦点距離である。
【0011】
好ましくは、上記第2凸レンズ面の有効径は、上記第1凸レンズ面の有効径よりも大きい。
【0012】
好ましくは、上記第2凸レンズ面の有効径は、上記第1凸レンズ面の有効径の2倍以上である。
【0013】
好ましくは、上記第1凸レンズ面のコーニック定数は正の値であり、上記第2凸レンズ面のコーニック定数は負の値である。
【0014】
好ましくは、上記複数の凸レンズ部は、上記第1方向に直交する第2方向に沿って配列されている。
【0015】
好ましくは、上記複数の凸レンズ部の上記第2方向における配列ピッチは、0.3〜1mmである。
【0016】
好ましくは、上記配列ピッチに対する、互いに隣接する2つの上記凸レンズ部の読取可能領域どうしが重なる領域の上記第2方向における寸法の割合が、50〜200%である
【0017】
好ましくは、上記配列ピッチに対する、互いに隣接する2つの上記凸レンズ部の結像領域どうしが重なる領域の上記第2方向における寸法の割合が、50〜200%である。
【0018】
好ましくは、上記複数の凸レンズ部は、上記ホルダ部と一体成型されている。
【0019】
好ましくは、上記ホルダ部は、平坦面を有し、上記各第1凸レンズ面は、上記平坦面から膨らんでいる。
【0020】
好ましくは、上記凸レンズ部および上記ホルダ部はいずれも樹脂よりなる。
【0021】
本発明の第2の側面によると、本発明の第1の側面によって提供されるレンズアレイと、上記レンズアレイに固定され、且つ、複数の光通過孔が形成された遮光部材と、を備え、上記第1凸レンズ面は、上記複数の光通過孔のいずれか一つに進入している、レンズユニットが提供される。
【0022】
本発明の第3の側面によると、本発明の第2の側面によって提供されるレンズユニットと、線状光源と、上記線状光源から発せられた後に上記物体としての読取対象にて反射した光を、上記レンズユニットを経由して受光する複数の受光素子と、を備える、画像読取装置が提供される。
【0023】
好ましくは、上記複数の受光素子が搭載された基板と、上記レンズユニット、上記線状光源、および上記複数の受光素子を収容するケースと、を更に備える。
【0024】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる画像読取装置の底面図である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかる画像読取装置の断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態にかかるレンズユニットの平面図である。
【図4】本発明の第1実施形態にかかるレンズユニットの正面図である。
【図5】本発明の第1実施形態にかかるレンズユニットの底面図である。
【図6】本発明の第1実施形態にかかるレンズアレイの平面図である。
【図7】本発明の第1実施形態にかかるレンズユニットの部分拡大断面図である。
【図8】本発明の第1実施形態にかかるレンズユニットにおける凸レンズ部21を模式的に示す断面図である。
【図9】本発明の第1実施形態にかかるレンズユニットのパラメータを説明するための図である。
【図10】本発明の第1実施形態にかかるレンズユニットの読取可能領域どうしの重なりを示す図である。
【図11】本発明の第1実施形態にかかるレンズユニットの結像領域どうしの重なりを示す図である。
【図12】凸レンズ部を規定するパラメータの具体的数値を示す表である。
【図13】第1凸レンズ面と第2凸レンズ面を規定する非球面係数を示している。
【図14】第1凸レンズ面と第2凸レンズ面を規定する非球面係数を示している。
【図15】図16〜図28を用いて、No.1〜No.13の各場合の特性を評価した結果を示している。
【図16】図12のNo.1の場合の特性を示す表およびグラフである。
【図17】図12のNo.2の場合の特性を示す表およびグラフである。
【図18】図12のNo.3の場合の特性を示す表およびグラフである。
【図19】図12のNo.4の場合の特性を示す表およびグラフである。
【図20】図12のNo.5の場合の特性を示す表およびグラフである。
【図21】図12のNo.6の場合の特性を示す表およびグラフである。
【図22】図12のNo.7の場合の特性を示す表およびグラフである。
【図23】図12のNo.8の場合の特性を示す表およびグラフである。
【図24】図12のNo.9の場合の特性を示す表およびグラフである。
【図25】図12のNo.10の場合の特性を示す表およびグラフである。
【図26】図12のNo.11の場合の特性を示す表およびグラフである。
【図27】図12のNo.12の場合の特性を示す表およびグラフである。
【図28】図12のNo.13の場合の特性を示す表およびグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0027】
図1および図2に示す画像読取装置801は、基板11(図1では略)と、ケース12と、線状光源13と、レンズユニット14と、複数の受光素子15と、透過板16(図1では略)と、を備える。
【0028】
基板11は、第2方向Yに沿って延びる長矩形状である。基板11は、たとえば、ガラスエポキシ樹脂、もしくはセラミックスよりなる。複数の受光素子15はそれぞれ、基板11に搭載されている。複数の受光素子15は、第2方向Yに沿って配列されている。複数の受光素子15はそれぞれ、受けた光の光量に応じた電気信号を出力する、光電変換機能を果たす。
【0029】
ケース12は、画像読取装置801の外形を構成し、画像読取装置801のケース12以外の要素を収容している。ケース12は、第2方向Yに長く延びており、第2方向Yに直交する面による断面形状は、略矩形状である。ケース12は、たとえば、液晶ポリマ樹脂よりなる。
【0030】
線状光源13は、第2方向Yに沿う線状の光を発する。線状光源13は、LEDモジュール131および導光体132を含む。
【0031】
LEDモジュール131は、ケース12の長手方向の一端寄りの位置において、ケース12に収容されている。LEDモジュール131は、たとえば赤外光や可視光を発する。導光体132は、第2方向Yに延びる棒状である。導光体132は、入射面、反射面、および出射面を有する。LEDモジュール131からの光は、導光体132における入射面に入射したのち、反射面にて反射する。反射面にて反射した光は、出射面から導光体132の外部に出射される。導光体132から出射した光は、透過板16を通過し読取対象890にて反射する。そして読取対象890にて反射した光は、再び透過板16を通過し、レンズユニット14に向かう。
【0032】
レンズユニット14は、読取対象890から進行してきた光を、正立等倍で受光素子15に集光する。レンズユニット14の具体的構成は以下のとおりである。
【0033】
図4、図7に示すように、レンズユニット14は、レンズアレイ2と遮光部材3とを含む。
【0034】
レンズアレイ2は、一方向(第1方向Xに直交する第2方向Y)に延びる直方体状である。図5、図6に示すように、レンズアレイ2は、複数の凸レンズ部21と、ホルダ部22と、を有する。本実施形態においてレンズアレイ2は、透明な樹脂よりなる。このような樹脂としては、たとえば、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)やPC(ポリカーボネート)が挙げられる。レンズアレイ2は一体成型されている。そのため、複数の凸レンズ部21およびホルダ部22は、一体であり且つ同一の材料よりなる。
【0035】
複数の凸レンズ部21は各々、第1方向Xに延びる。図6に示すように、複数の凸レンズ部21は第1方向X視において、互いに隣り合う。図7に示すように、本実施形態においては、複数の凸レンズ部21は、第2方向Yに沿って配列されている。複数の凸レンズ部21の配列ピッチP1は、0.3〜1mmであり、本実施形態では0.7mmである。
【0036】
図7に示すように、複数の凸レンズ部21は各々、第1凸レンズ面211と第2凸レンズ面212とを有する。
【0037】
第1凸レンズ面211は、第1方向Xのうちの一方(以下、方向X1と言う)を向く。第1凸レンズ面211は、方向X1に向かって膨らむ形状を呈する。複数の凸レンズ部21における第1凸レンズ面211の形状は、互いに同一である。図6に示すように、複数の第1凸レンズ面211は、第1方向X視において、互いに離間している。一方、図7に示すように、第2凸レンズ面212は、第1凸レンズ面211の向く方向とは反対方向を向く。すなわち、第2凸レンズ面212は、第1方向Xのうちの他方(以下、方向X2と言う)を向く。第2凸レンズ面212は、方向X2に向かって膨らむ形状を呈する。複数の凸レンズ部21における第2凸レンズ面212の形状は、互いに同一である。なお、本実施形態においては、第2凸レンズ面212の直径は、第1凸レンズ面211の直径よりも大きい。図5に示すように、複数の第2凸レンズ面212のうちの隣接する2つは、第1方向X視において互いに接している。
【0038】
図8は、1つの凸レンズ部21を模式的に示している。
【0039】
同図に示すように、第1凸レンズ面211は、物体(a→b)の倒立像(a”→b”)を結像する。すなわち、第1凸レンズ面211は、第1凸レンズ面211の正面の面Sに存在する物体(a→b)からの光を受けると、当該光を所定の箇所に集束させることにより、物体(a→b)の倒立像(a”→b”)を凸レンズ部21の内部に結像させる。本実施形態においては、倒立像(a”→b”)は倒立縮小像である。そして、第2凸レンズ面212は、倒立像(a”→b”)を再結像させることにより、物体(a→b)の正立像(a’→b’)を結像する。すなわち、第2凸レンズ面212は、第1凸レンズ面211を透過してきた光を受けると、倒立像(a”→b”)を反転させる。本実施形態においては、第2凸レンズ面212は、上記倒立縮小像を反転および拡大し、第2凸レンズ面212の正面に位置する面Rに、正立像(a’→b’)として正立等倍像を結像する。
【0040】
なお、画像読取装置801においては、図2の読取対象890は、図8の面Sに位置し、図2の受光素子15は、図8の面Rに位置する。
【0041】
凸レンズ部21を規定するパラメータ等については、後述する。
【0042】
図4〜図6に示すホルダ部22は、複数の凸レンズ部21を保持する。ホルダ部22は、平坦面221および平坦面222を有する。
【0043】
平坦面221は、方向X1を向く。平坦面221からは複数の第1凸レンズ面211が膨らんでいる。一方、平坦面222は、平坦面221とは反対側を向く。すなわち、平坦面222は、方向X2を向く。平坦面222からは複数の第2凸レンズ面212が膨らんでいる。
【0044】
図3、図7等に示す遮光部材3は遮光性を有する。遮光部材3は、凸レンズ部21の絞りの役割を果たす。遮光部材3は、たとえば黒色の樹脂よりなる。遮光部材3は、レンズユニット14に固定されている。遮光部材3は、レンズユニット14の平坦面221に正対している。そのため、遮光部材3によって、平坦面221に光が到達することが回避される。これは、上述の正立像(a’→b’)を鮮明にするのに資する。
【0045】
遮光部材3には、複数の光通過孔31が形成されている。各光通過孔31の断面形状は、円形状を呈し、第1方向Xに延びる。各光通過孔31の内面も黒色である。図7によく表れているように、複数の光通過孔31にはそれぞれ、第1凸レンズ面211が進入している。光通過孔31を光が通過したのちに、第1凸レンズ面211に光が入射する。
【0046】
次に、レンズアレイ2における凸レンズ部21を規定するパラメータについて説明する。
【0047】
図9に凸レンズ部21を規定するパラメータの一部を図示している。図12に、凸レンズ部21を規定するパラメータの具体的数値を示している。
【0048】
Rc1は、第1凸レンズ面211の頂部(凸レンズ部21の光軸と重なる)の曲率半径である(単位はmmである)。Rc2は、第2凸レンズ面212の頂部(凸レンズ部21の光軸と重なる)の曲率半径である(単位はmmである)。tは、凸レンズ部21の厚さ(第1凸レンズ面211の頂部と、第2凸レンズ面212の頂部との凸レンズ部21の光軸に沿う距離)である(単位はmmである)。K1は、第1凸レンズ面211のコーニック定数である。K2は、第2凸レンズ面212のコーニック定数である。TTLは、結像距離(物体と像との距離、すなわち、図9の面Sと面Rとの離間距離)である(単位はmmである)。fは、凸レンズ部21の焦点距離である(単位はmmである)。Fnoは、凸レンズ部21のF値である。ODは、凸レンズ部21の光軸に沿った、第1凸レンズ面211の頂部と物体との距離(すなわち、第1凸レンズ面211の頂部と面Sとの離間距離)である(単位はmmである)。IDは、凸レンズ部21の光軸に沿った、第2凸レンズ面212の頂部と物体との距離(すなわち、第2凸レンズ面212の頂部と面Rとの離間距離)である(単位はmmである)。R1は、第1凸レンズ面211の有効径である。R2は、第2凸レンズ面212の有効径である。θ1は、第1凸レンズ面211側の半画角である(単位は度である)。θ2は、第2凸レンズ面222側の半画角である(単位は度である)。
【0049】
図12に示すNo.1〜No.13までの13通りのパラメータを用いて凸レンズ部21の特性の評価を行った。図13、図14には、No.1〜No.13の場合の第1凸レンズ面211と第2凸レンズ面212を規定する非球面係数を示している。図13にはNo.1〜No.9の場合の非球面係数を示しており、図14にはNo.10〜No.13の場合の非球面係数を示している。図13および図14にて、符号R1の右側の表は第1凸レンズ面211の非球面係数を示し、符号R2の右側の表は第2凸レンズ面212の非球面係数を示している。非球面式としては、下記の式を用いた。なお、図13、図14のKは、図12のK1もしくはK2と同一である。なお、図12では数値を適宜四捨五入している。
【数1】

【0050】
図16〜図28に、No.1〜No.13までのパラメータを用いて計算した凸レンズ部21の特性の結果について、それぞれ示している。各図の(a)は、像高特性の良否を判断するための表である。最も左の欄は物体高(mm)、中央の欄は像高(mm)、そして、最も右側の欄は物体光と像高の誤差(mm)を示している。各図の(b)は、MTF(Modulation Transfer Function)を示し、横軸は空間周波数(lp/mm)を示し、縦軸は(%)を示す。各図の(c)は、12(lp/mm)でのMTFを示し、横軸はデフォーカス量(mm)を示し、縦軸は(%)を示す。
【0051】
図15には、図16〜図28を用いて、No.1〜No.13の各場合の特性を評価した結果を示している。発明者によると、以上のNo.1〜No.13までのパラメータのうち、No.5のパラメータが最も好ましいことが分かった。そこで、No.5の場合の凸レンズ部21の特性(図20参照)を基準として、No.5以外の場合の特性について、◎、○、△、×の4段階で評価を行った。◎は、No.5の場合と比較して、突出して良好であることを示している。○は、No.5の場合とほぼ同等の特性であることを示している。△は、No.5の場合と比較して、あまり優れない特性であることを示している。×は、No.5の場合と比較して、全く優れない特性であることを示している。
【0052】
◎、○、△、×の判断基準はおおよそ次のとおりである。
【0053】
図15の像高に関しては、図16〜図28の(a)のうち、凸レンズ部211の配列ピッチP1を像高100%とした場合に、(1)像高70%以下のときに誤差が10μm以下、且つ、(2)像高70〜80%のときに誤差が15μm以下、を満たすとき、○とした。この(1)もしくは(2)を満たさないとき、△とした。誤差が50μm以上、もしくは、像高が配列ピッチP1以下であるとき、×とした。特に、像高特性、MTF、および周辺光量、の観点から凸レンズ部21の特性の評価を行った。なお、像高特性は、図9の面Sに位置する物体の高さ(物体高)と、面Rに位置する像の高さ(像高)との差が0に近いほど好ましい、とされている。なお、以上の条件を満たしていても、像高が配列ピッチP1に満たないときには×としている。
【0054】
図15の解像(MTF)に関しては、図16〜図28の(b)のうち、(1)凸レンズ部21の配列ピッチP1を像高100%とした場合に、像高85%以下の12 lp/mmで40%以上のとき、○とした。同様に、(2)凸レンズ部21の配列ピッチP1を像高100%とした場合に、像高85%以下の12 lp/mmで40%近傍のとき、△とした。同様に、(3)凸レンズ部21の配列ピッチP1を像高100%とした場合に、像高85%以下の12 lp/mmで30%以下のとき、×とした。
【0055】
図15の最も右欄の周辺光量比に関しては、同図の右から4つ目の欄の周辺光量比(配列ピッチP1を像高100%とした値)が、(1)配列ピッチP1を像高100%とした場合に、50%以上のとき、○とした。同様に、(2)配列ピッチP1を像高100%とした場合に、49%以下且つ25%以上のとき、△とした。同様に、(3)配列ピッチP1を像高100%とした場合に、25%以下のとき、×とした。
【0056】
また、図15には、No.1〜No.13の各場合の、Rc1/Rc2、TTL/f、TTL/tについても示している。図15のRc1、Rc2、TTL、f、tは、図12におけるものと同一である。
【0057】
図15の表に示すように、発明者は、以下の条件を満たすとき、解像度特性が○や◎となる場合が比較的多くなることについて知見を得た。
3≦TTL/t≦3.857

更に、発明者は、以下の条件を満たすとき、像高特性が○や◎となる場合が比較的多くなることについて知見を得た。
3.857≦TTL/t≦5.285
【0058】
発明者は、以下の条件を満たせば、凸レンズ部21の光学特性が比較的良好であると考えた。
2.8≦TTL/t≦6

TTL/tが2.8より小さいと、像高特性があまり良くなかったり、もしくは、周辺光量比が悪くなってしまう傾向にある。一方、TTL/tが6より大きいと、解像度が悪くなる傾向にあり、また、結像距離TTLが大きくなってしまう。
【0059】
発明者は、以下の条件を満たすとき、解像度特性が○や◎となる場合が比較的多くなることについて知見を得た。
−8.05≦TTL/f≦−6.667

更に、発明者は、以下の条件を満たすとき、像高特性が○や◎となる場合が比較的多くなることについて知見を得た。
−6.67≦TTL/f≦−5.714
【0060】
また、発明者は、以下の条件を満たせば、凸レンズ部21の光学特性が比較的良好であると考えた。
−7.5≦TTL/f≦−5.2

TTL/fが−7.5より小さいと、周辺光量比が悪化してしまう傾向にある。一方、TTL/fが−5.2より大きいと、解像度が悪くなる傾向にあり、また、結像距離TTLが大きくなってしまう。
【0061】
図12の有効径R2は、有効径R1よりも大きいことが好ましく、有効径R2/有効径R1≧2であると更に好ましい。有効径R2/有効径R1が大きくなると、第1凸レンズ面211の有効径R1が相対的に小さくなることにつながる。これにより、第1凸レンズ面211にノイズを招来する余計な光が入射しにくくなる。
【0062】
図9に示したように、半画角θ1と、距離ODと、読取可能領域S1とは互いに関係している。図10に示すように、読取可能領域S1は略円形状である。tanθ1は、読取可能領域S1の半径/距離ODに一致する。なお、図10には、レンズユニット14において互いに隣接する2つの凸レンズ部21の読取可能領域S1をそれぞれ模式的に示している。
【0063】
図10に示すように、互いに隣接する2つの凸レンズ部21の読取可能領域S1は、互いに重なる。そのために、半画角θ1を、6〜15度に設定している。本実施形態においては、読取可能領域S1の直径は、凸レンズ部21の配列ピッチP1に一致している。図10に示す寸法Q1は、互いに隣接する2つの凸レンズ部21の読取可能領域S1どうしが重なる領域(図10では斜線を施している)の、第2方向Yにおける寸法である。配列ピッチP1に対する寸法Q1の割合は、たとえば、50〜200%である。このことは、読取対象890の画像をきれいに読み取れる点において好ましい。たとえば、互いに隣接する凸レンズ部21の読取可能領域S1どうしが重ならない場合、読取対象890を読み取った画像に、黒い筋が形成される可能性がある。
【0064】
図9に示したように、半画角θ2と、距離IDと、結像領域S2とは互いに関係している。図11に示すように、結像領域S2は略円形状である。tanθ2は、結像領域S2の半径/距離IDに一致する。なお、図11には、レンズユニット14において互いに隣接する2つの凸レンズ部21の結像領域S2をそれぞれ模式的に示している。
【0065】
図11に示すように、互いに隣接する2つの凸レンズ部21の結像領域S2は、互いに重なる。そのために、半画角θ2を、6〜15度に設定している。本実施形態においては、結像領域S2の直径は、凸レンズ部21の配列ピッチP1に一致している。図11に示す寸法Q2は、互いに隣接する2つの凸レンズ部21の結像領域S2どうしが重なる領域(図11では斜線を施している)の、第2方向Yにおける寸法である。配列ピッチP1に対する寸法Q2の割合は、たとえば、50〜200%である。このことは、読取対象890の画像をきれいに読み取れる点において好ましい。
【0066】
また、図12、図15のNo.5によると、コーニック定数K1が正であり、コーニック定数K2が負であることが好ましい可能性が示唆された。更に、Fnoを7.0よりも小さい値に設定することは、レンズの実用上好ましい。更に、F値が7より小さい(明るい)ことは、レンズユニット14の実現化のうえでは好ましい。また、曲率半径Rc1と曲率半径Rc2との比の絶対値は、0.5〜2であることが、等倍画像を得るうえで好ましい。
【0067】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0068】
本実施形態においては、第1凸レンズ面211側の半画角θ1が、6〜15度である。また、凸レンズ部21の配列ピッチP1は、0.3〜1mmである。このような構成によると、互いに隣接する凸レンズ部21の読取可能領域S1どうしをより重ならせることができる。また、第2凸レンズ面212側の半画角θ2が、6〜15度である。また、凸レンズ部21の配列ピッチP1は、0.3〜1mmである。このような構成によると、互いに隣接する凸レンズ部21の結像領域S2どうしが重なる領域を、より大きくすることができる。以上の構成によると、読取ムラを抑制することができ、読取対象の画像をきれいに読み取ることができる。
【0069】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0070】
801 画像読取装置
11 基板
12 ケース
13 線状光源
14 レンズユニット
15 受光素子
16 透光板
2 レンズアレイ
21 凸レンズ部
211 第1凸レンズ面
212 第2凸レンズ面
22 ホルダ部
221 平坦面
222 平坦面
3 遮光部材
31 光通過孔
890 読取対象
TTL 結像距離
t 寸法
f 焦点距離
Rc1 曲率半径
Rc2 曲率半径
K1 コーニック定数
K2 コーニック定数
θ1 半画角
θ2 半画角
F 値
OD 距離
ID 距離
R1 有効径
R2 有効径
S 面
R 面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が第1方向に延びる複数の凸レンズ部と、
上記複数の凸レンズ部を保持するホルダ部と、を備え、
上記複数の凸レンズ部はそれぞれ、上記第1方向のうちの一方を向く第1凸レンズ面と、上記第1方向のうちの他方を向く第2凸レンズ面と、を有し、
第1凸レンズ面は、物体の倒立像を結像し、上記第2凸レンズ面は、上記倒立像を再結像させることにより上記物体の正立像を結像し、
上記第1凸レンズ面側の半画角が、6〜15度であり、上記第2凸レンズ面側の半画角が、6〜15度である、レンズアレイ。
【請求項2】
F値が7.0よりも小さい、請求項1に記載のレンズアレイ。
【請求項3】
2.8≦TTL/t≦6の関係を満たす、請求項1または請求項2に記載のレンズアレイ。
TTLは、上記第1方向における物体と上記正立像との距離である。tは、上記第1方向における、上記第1凸レンズ面の頂部と上記第2凸レンズ面の頂部との距離である。
【請求項4】
−7.5≦TTL/f≦−5.2の関係を満たす、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のレンズアレイ。
TTLは、上記第1方向における物体と上記正立像との距離である。fは、上記凸レンズ部の焦点距離である。
【請求項5】
上記第2凸レンズ面の有効径は、上記第1凸レンズ面の有効径よりも大きい、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のレンズアレイ。
【請求項6】
上記第2凸レンズ面の有効径は、上記第1凸レンズ面の有効径の2倍以上である、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のレンズアレイ。
【請求項7】
上記第1凸レンズ面のコーニック定数は正の値であり、上記第2凸レンズ面のコーニック定数は負の値である、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のレンズアレイ。
【請求項8】
上記複数の凸レンズ部は、上記第1方向に直交する第2方向に沿って配列されている、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のレンズアレイ。
【請求項9】
上記複数の凸レンズ部の上記第2方向における配列ピッチは、0.3〜1mmである、請求項8に記載のレンズアレイ。
【請求項10】
上記配列ピッチに対する、互いに隣接する2つの上記凸レンズ部の読取可能領域どうしが重なる領域の上記第2方向における寸法の割合が、50〜200%である、請求項9に記載のレンズアレイ。
【請求項11】
上記配列ピッチに対する、互いに隣接する2つの上記凸レンズ部の結像領域どうしが重なる領域の上記第2方向における寸法の割合が、50〜200%である、請求項9または請求項10に記載のレンズアレイ。
【請求項12】
上記複数の凸レンズ部は、上記ホルダ部と一体成型されている、請求項1ないし請求項11のいずれかに記載のレンズアレイ。
【請求項13】
上記ホルダ部は、平坦面を有し、上記各第1凸レンズ面は、上記平坦面から膨らんでいる、請求項12に記載のレンズアレイ。
【請求項14】
上記凸レンズ部および上記ホルダ部はいずれも、樹脂よりなる、請求項13に記載のレンズアレイ。
【請求項15】
請求項1ないし請求項14のいずれかに記載のレンズアレイと、
上記レンズアレイに固定され、且つ、複数の光通過孔が形成された遮光部材と、を備え、
上記第1凸レンズ面は、上記複数の光通過孔のいずれか一つに進入している、レンズユニット。
【請求項16】
請求項15に記載のレンズユニットと、
線状光源と、
上記線状光源から発せられた後に上記物体としての読取対象にて反射した光を、上記レンズユニットを経由して受光する複数の受光素子と、を備える、画像読取装置。
【請求項17】
上記複数の受光素子が搭載された基板と、
上記レンズユニット、上記線状光源、および上記複数の受光素子を収容するケースと、を更に備える、請求項16に記載の画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2013−80145(P2013−80145A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220801(P2011−220801)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【出願人】(591021671)日本電産ニッシン株式会社 (13)
【Fターム(参考)】