説明

レンズアレイシートおよびレンズアレイシートの製造方法

【課題】レンズアレイシートをより効率的に製造することができる。
【解決手段】透明なシート状のレンズ側基材140と、レンズ側基材140の一面の上に形成された複数のレンズ120と、レンズ側基材140の一面の裏面に貼り合わされた、透明なシート状の遮光側基材160と、遮光側基材160においてレンズ側基材140と貼り合わされた面の裏面に形成され、複数のレンズ120の焦点に対応する部分の可視光を透過し、それ以外の可視光を遮断する遮光パターン180とを備えるレンズアレイシート100が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズアレイシート、および、レンズアレイシートの製造方法に関する。本発明は、特に、一面に複数のレンズが形成されて、他面に遮光パターンが形成されたレンズアレイシート、および、レンズアレイシートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、映像光を透過させる透過型スクリーンとして、映像光を拡散するシート状のレンズアレイが用いられる。このレンズアレイは、シート状の基板における映像光の入射側に、二次元的に配列された複数の単レンズを有する。さらに、このレンズアレイは、観察者側に各単レンズの焦点を中心とした複数の開口が形成された遮光層(以下、ブラックマトリクスと呼ぶ)を有する。
【0003】
上記ブラックマトリックスを形成する方法として、例えば、遮光性のポジ型レジスト材料を用いる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この方法においては、レンズアレイの観察者側に遮光性のポジ型レジスト層を形成し、入射側から平行光をレンズに入射してレンズの集光領域のポジ型レジスト層を露光した後に現像して、集光領域のポジ型レジスト材料を除去することにより、レンズアレイの観察者側の表面における、レンズの集光領域以外の領域にブラックマトリックスを形成する。
【特許文献1】特開2000−147215号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記方法によってブラックマトリックスをレンズアレイの観察者側の面に形成するためには、レンズアレイの厚さをレンズの焦点距離とほぼ同じにすることが好ましい。よって、上記方法によってブラックマトリックスをレンズアレイの観察者側の面に形成する場合、入射側の面に形成されるレンズの焦点距離によって、レンズアレイの基板の厚さが決まってしまう。
【0005】
よって、単レンズの光学的な形状を決めるとレンズアレイの基板の厚さが決まってしまい、設計の自由度が小さい。また、単レンズの光学的な形状が変わる毎に異なる厚さの基板を準備するので、製造の手間およびコストがかかる。さらに、レンズアレイの製造工程において、シート状のレンズアレイをロールによって搬送する場合におけるクリアランス等、レンズの焦点距離が異なるレンズアレイを製造する毎に製造装置の設定を変更するので、製造の手間およびコストがさらにかかる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態においては、透明なシート状のレンズ側基材と、レンズ側基材の一面の上に形成された複数のレンズと、レンズ側基材の一面の裏面に貼り合わされた、透明なシート状の遮光側基材と、遮光側基材においてレンズ側基材と貼り合わされた面の裏面に形成され、複数のレンズの焦点に対応する部分の可視光を透過し、それ以外の可視光を遮断する遮光パターンとを備えるレンズアレイシートが提供される。これにより、レンズの焦点距離を変更する場合でも、遮光側基材の厚さを変更することでレンズアレイシート全体の厚さを変更して遮光パターンを形成することができるので、レンズ側基材の厚さを一定にすることができる。
【0007】
また、上記レンズアレイシートにおいて、遮光側基材は、UV吸収剤を含有してもよい。これにより、レンズアレイシートの使用状態において、例えば、外光に含まれる紫外線によるレンズ側基材などの劣化を防ぐことができる。
【0008】
また、上記レンズアレイシートにおいて、レンズ側基材と遮光側基材とは、接着剤または粘着剤により貼り合わされてもよい。これにより、レンズアレイシートの強度を高めることができる。
【0009】
また、上記レンズアレイシートにおいて、レンズ側基材の厚みは、複数のレンズの焦点距離よりも薄くてもよい。これにより、レンズ側基材の厚みを変えることなく、異なる光学的な形状のレンズを有するレンズアレイシートを製造することができる。また、レンズ側基材の厚みを選ぶ自由度を広げることができる。また、レンズアレイシートの製造において、例えば、レンズ側基材をロールによって搬送する場合、ロールからの引き出し、およびロールへの巻き取りなどが容易になる。
【0010】
この場合、遮光側基材の厚みは、レンズ側基材と貼り合わされた場合に、遮光パターンの位置が複数のレンズの焦点距離に来る厚みを有してもよい。これにより、レンズに入射する平行光のうち遮光パターンで遮光される量を少なくすることができる。また、セルフアラインメントで遮光パターンを形成した場合に、遮光側基材の観察側の面に占める遮光パターンの割合を大きくすることができるので、映像光のコントラストを大幅に向上させることができる。
【0011】
本発明の第2の形態においては、透明なUV硬化樹脂のシート状のレンズ側基材を準備し、UV硬化樹脂をレンズ型に押し付けて紫外線を照射することにより、レンズ側基材の一面の上に複数のレンズを形成し、透明なシートの一面に、感光性材料層を設けた遮光側基材を準備し、レンズ側基材の一面の裏面と、遮光側基材の一面の裏面とを貼り合わせ、レンズ側基材の一面の側から光を照射して遮光側基材において複数のレンズの焦点に対応する部分の感光性材料層を硬化することにより、遮光パターンを形成するレンズアレイシートの製造方法が提供される。また、上記製造方法において、遮光側基材において複数のレンズの焦点に対応する部分の感光性材料層を硬化することに代えて、遮光側基材において前記複数のレンズの焦点に対応する部分を応力破壊してもよい。これにより、レンズ側基板の厚みや、レンズを形成する装置の設定、例えば、レンズ側基材をロールによって搬送する場合のクリアランス等を変えることなく、レンズ側基材の一面の上に形成するレンズの形状を変更することができる。
【0012】
上記製造方法において、レンズ型が軸周りに回転する円筒形状の側面に配され、円筒形状の外側から紫外線を照射してもよい。これにより、紫外線を円筒形状の内側から照射する場合に比べて簡便な方法でレンズを形成することができる。
【0013】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係るレンズアレイシート100の構成を示す断面図である。レンズアレイシート100は、レンズ120が設けられた側から入射した光を拡散しながら透過しつつ、遮光パターン180が設けられた側から入射した光を吸収して、コントラストを上げる。以下において、レンズアレイシート100が背面投写型プロジェクションテレビに用いられる透過型スクリーン等として用いられた場合の、光源からの画像光が入射する面の側を入射側と称し、また、入射側と反対の面の側を観察側と称する。
【0016】
図1に示すように、本実施形態のレンズアレイシート100は、入射側から観察側へ順に、複数のレンズ120と、シート状のレンズ側基材140と、粘着層150と、遮光側基材160と、遮光パターン180とを有する。複数のレンズ120の各々は、球面または非球面のマイクロレンズである。当該レンズ120が、レンズ側基材140における入射側の面に二次元的に、レンズピッチが5〜100μmで複数個、設けられる。これにより、入射側から入射した平行光を光軸方向に透過しつつ、レンズ120の並び方向に拡散する。
【0017】
レンズ側基材140における観察側の面には、粘着剤が塗布された粘着層150が配される。この粘着層150により、レンズ側基材140の観察側の面と、遮光側基材160の入射側の面とが貼り合わされる。
【0018】
遮光側基材160の観察側の面には、遮光パターン180が設けられる。遮光パターン180は、各レンズ120の光軸近傍が開口されたパターンを有し、開口された領域以外の領域において光、特に可視光を吸収する。
【0019】
図1に示すレンズアレイシート100において、レンズ側基材140の厚さは、レンズ120の焦点距離よりも薄い。これにより、レンズ側基材140の厚みを変えることなく、異なる光学的な形状のレンズ120を有するレンズアレイシート100を製造することができる。また、レンズ側基材140の厚みを選ぶ自由度を広げることができる。さらに、レンズ側基材140の厚さは、遮光側基材160の厚さよりも薄い。よって、レンズ側基材140を撓ませやすい。また、遮光側基材160の厚みは、レンズ側基材140と貼り合わされた場合に、遮光パターン180の位置がレンズ120の焦点距離の位置に来る厚みを有する。これにより、レンズ120に入射する平行光のうち遮光パターン180で遮光される量を少なくすることができる。
【0020】
なお、レンズアレイシート100に剛性をもたせる場合に、遮光パターン180側にさらに透明な補強シートを貼り合わせてもよい。この場合に、補強シートの材料としては、アクリル、メチルメタクリレートとスチレンの共重合体、ポリカーボネート等を用いることができる。
【0021】
図2は、図1のレンズアレイシート100の製造方法の一例である。また、図3(A)から図3(C)は、図2に示す製造方法の各段階におけるレンズアレイシート100の構成を示す断面図であり、図3(A)から図3(C)は、図2に付した(A)から(C)の記号にそれぞれ対応する。
【0022】
上記製造方法において、まず、レンズ側基材供給部210よりシート状のレンズ側基材140が塗布装置220に向けて連続的に供給される。塗布装置220によって、レンズ側基材140の片面に、未硬化の紫外線硬化性樹脂が塗布される。次に、レンズ側基材140は、レンズ120の型が外表面に形成された円筒形状のレンズ成型用ロール230に向けて連続的に供給される。レンズ側基材140の供給方向に沿って、レンズ成型用ロール230に対向したロール232、233が配される。レンズ側基材140は、レンズ成型用ロール230およびロール232、並びに、レンズ成型用ロール230およびロール233に挟まれ、レンズ成型用ロール230の型に紫外線硬化性樹脂が塗布された面が押しつけられることにより、レンズ成型用ロール230の表面の形状が紫外線硬化性樹脂に転写される。続いて、レンズ成型用ロール230に押しつけられたレンズ側基材140に対して、レンズ成型用ロール230の外側からUVランプ240によって紫外線が照射されて、レンズ側基材140に塗布された紫外線硬化性樹脂が硬化する。これにより、図3(A)に示すように、表面がレンズ120の形状になる。なお、紫外線に代えて、電子線、ガンマ線等の電離放射線を用いてもよい。
【0023】
片面にレンズ120が形成されたレンズ側基材140は、遮光側基材供給部250から供給される遮光側基材160とともに対を成すラミネート用ロール260、262に通されて、レンズ側基材140および遮光側基材160がラミネートされる。ここで、遮光側基材供給部250から供給される遮光側基材160は、図3(B)に示すように、上記レンズ側基材140とラミネートされる側と反対側の面に、感光性を有する遮光層170が形成されている。
【0024】
図3(B)の構成を成す上記シートは、引き続いて赤外線照射装置270に入る。ここで、上記シートの入射側の面に対してYAGレーザにより赤外線が照射され、上記シートの入射側の面に形成された複数のレンズ120の集光作用を利用して、上記シートの観察側の面に形成された遮光層170におけるレンズ120の焦点付近が露光される。露光された部分が応力破壊により破壊されて剥がれ落ち、図3(C)に示す遮光パターンが形成される。
【0025】
以上、図2から図3(C)に示す製造方法によれば、レンズ側基材140へのレンズ120の形成後に遮光側基材160を貼り付けて遮光パターン180を形成するので、レンズ側基材140の厚みや、レンズ120を形成する装置の設定、例えば、レンズ側基材140をレンズ成型用ロール230、ロール232、233の間に搬送する場合のクリアランス等を変えることなく、レンズ側基材140の一面の上に形成するレンズ120の形状を変更することができる。また、レンズ成型用ロール230のレンズ型が外周面に配され、レンズ成型用ロール230の外側から紫外線を照射するので、紫外線をレンズ成型用ロール230の内側から照射する場合に比べて簡便な方法でレンズ120を形成することができる。
【0026】
上記実施形態において、レンズ側基材140の片面に塗布される紫外線硬化性樹脂(レンズ120の材料)には、少なくとも可視光を透過する紫外線硬化性樹脂のうちで、屈折率が1.4から1.65程度の材料を用いる。屈折率が1.4よりも小さい材料を用いた場合、レンズ120は十分なレンズパワーを有さず、入射光を適切な角度で拡散することができない。逆に、屈折率が1.65よりも大きい材料を用いた場合、レンズ形状によっては、レンズ120に入射した光が内部反射し、スクリーンとしての透過効率が下がってしまう。
【0027】
上記紫外線硬化性樹脂は、モノマー、プレポリマー、ポリマー、および光重合開始剤などを含む。また、紫外線硬化性樹脂の特性は、モノマー、プレポリマー、ポリマー、および光重合開始剤の成分を変更することにより調整される。モノマーおよびプレポリマーは、基本的に少なくとも1個以上の官能基を含有する。光重合開始剤は、紫外線を照射することによりイオンまたはラジカルを発生する。
【0028】
ここで、官能基とは、ビニル基、カルボキシル基、水酸基などの反応性の原因となる原子団または結合様式をいう。本実施形態の生産方法では、紫外線を照射して樹脂を硬化させるので、紫外線による硬化性に優れたアクリロイル基などのビニル基を有するものを使用することが好ましい。アクリロイル基を有するモノマーは、公知のものから選択する。例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、および、1,3−ブタンジオールジアクリレートが挙げられる。他にも、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、およびトリプロピレングリコールジアクリレート等が挙げられる。更に、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレートなどの2官能のもの、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリストールトリアクリレート、ジペンタエリストールヘキサアクリレートなどの3官能以上のものが挙げられる。上記モノマーの中でも3官能以下のものが、硬化後の膜硬度がHB以下となり可撓性に優れている点、架橋密度が小さく低体積収縮率のものが多い点、耐カール性に優れている点などから好ましい。
【0029】
また、上記モノマーと共に、プレポリマーを併用することが好ましい。プレポリマーとしては、例えば、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートなどを用いる。低体積収縮、可撓性などの理由から3官能以下、特に2官能または3官能のものを使用することが好ましい。
【0030】
また、光重合開始剤は、例えば、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、ミヒラーケトン系、ベンジル系、ベンゾイン系、ベンゾインエーテル系、およびベンジルジメチルケタール系等が挙げられる。他にも、ベンゾインベンゾエート系、α−アシロキシムエステル系等のカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン類等の硫黄化合物、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド等の燐化合物等が挙げられる。これらを単独あるいは2種以上混合して使用する。上記光重合開始剤の添加量は、モノマーおよび/またはプレポリマー成分100重量部に対して、0.1〜20重量部、さらには0.5〜15重量部であることが好ましい。光重合開始剤が範囲未満では硬化性が低くなり、また範囲を超えると硬化後ブリードアウトするという問題が起こるため好ましくない。
【0031】
また、上記紫外線硬化性樹脂における、硬化前、硬化中、さらには硬化後の特性および物性、または硬化物の特性および物性を制御する為に、各種添加剤を使用してもよい。ここで硬化前の特性および物性を制御する物質としては、塗料安定化剤(ゲル化防止、硬化防止)、増粘剤(塗工性向上)などがある。また硬化中の特性を制御する物質としては、光重合促進剤、吸光剤(両者とも硬化挙動の調整)などがある。さらに硬化後の膜特性を制御する物質として、可塑剤(可撓性の向上)、紫外線吸収剤(耐光性付与)などがある。
【0032】
本実施形態で使用される紫外線硬化性樹脂には、強度、可撓性、耐カール性などの点からポリマーを添加してもよい。ここでポリマーの種類は、公知のポリマー、例えばポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0033】
レンズ側基材140は、例えば、プラスチックシートまたはプラスチックフィルムが用いられる。レンズ側基材140の材質は、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、およびポリエーテル等が挙げられる。あるいは、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン、マレイミド樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、メラミン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、およびノルボルネン樹脂などであってもよい。さらにこれらの共重合体、ブレンド物、および架橋したものを用いてもよい。透明性などの光学特性と機械強度のバランスの点からは、ポリエステルフィルム中でも2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
【0034】
レンズ側基材140の片面に紫外線硬化性樹脂を塗布する塗布装置220は、紫外線硬化性樹脂を均一な厚さに塗布できるものであれば特に限定されないが、例えば、ドクターブレード、ダイコーターなどが好ましい。塗布装置220によってレンズ側基材140の片面に塗布される紫外線硬化性樹脂の塗布厚は、形成するレンズ120の形状によって異なるが、0.01〜0.2mmが適当である。なお、塗布厚は、樹脂の粘度あるいはレンズ側基材140の送り速度などによって調整することができる。
【0035】
レンズ120と逆の形状が表面に形成されたレンズ成型用ロール230は、例えば、切削加工された金属型、電鋳型、あるいは、金属型や電鋳型から所定の方法により複製した樹脂製型を、ロール表面に配設したものなどが好ましい。また、レンズ120の成型方法は、本実施形態のようにロール状の雌型を用いる方法に限定されず、例えば平板状のものであっても良いが、レンズ側基材140が可撓性を持つプラスチックフィルム等の場合には、ロール状の雌型を用いることで、可撓性をもつレンズ側基材140に対してレンズ120を広い面積にわたって連続的に成形できる。これにより、レンズ120を効率的に製造することができる。
【0036】
遮光側基材160は、レンズアレイシート100の上記製造方法において、UVランプ240からの紫外線照射によって紫外線硬化性樹脂を硬化させる工程よりも後工程でレンズ側基材140にラミネートされる。したがって、遮光側基材160は、紫外線吸収剤を含有してもよい。これにより、レンズアレイシート100が透過型スクリーン等として使用される状態において、例えば、外光に含まれる紫外線によるレンズ側基材140などの劣化を防ぐことができる。
【0037】
同様に、レンズ側基材140の硬化後に遮光側基材160がラミネートされるので、遮光側基材160には可視光を吸収する染料などを含有してもよい。この場合に、染料は、背面と投写型プロジェクションテレビにおけるRGBの映像光の各波長の中間波長を吸収することが好ましい。これにより、レンズアレイシート100の使用状態において、外光がレンズアレイシート100に入射した外光のうち上記中間波長は吸収されて反射に寄与しないので、外光に対する映像光のコントラストを向上させることができる。
【0038】
また、本実施形態において、レンズ側基材140と遮光側基材160とを粘着剤が塗布された粘着層150により貼り合わせたが、この形態に限られない。例えば、レンズ側基材140の観察側の面に溶媒を塗布して、遮光側基材160の入射側の面と貼り合わせたり、あるいは、遮光側基材160の入射側の面に溶媒を塗布して、レンズ側基材140の観察側の面と貼り合わせるなどの方法を用いてもよい。なお、上記方法で使用する溶媒は、例えば、それぞれの基材と親和性の高い有機溶媒(良溶媒)などである。上記有機溶媒は、塗布された基材表面を溶解して、レンズ側基材140および遮光側基材160を接着するとともに、接着後は基材中を通過して分散・蒸発する。上記方法によれば、粘着層150を用いた場合に生じる屈折率差を生じさせることなく、レンズ側基材140と遮光側基材160とを貼り合わせることができる。
【0039】
遮光層170は、例えば、バインダー樹脂にフィラー成分を分散させたものなどが好ましい。フィラー成分は、金属粒子およびその酸化物、または顔料や染料が用いられる。フィラー成分の色調は、可視光に対して黒色であることが好ましい。これにより、フィラー成分がノイズの原因となる外光を吸収する。可視光に対して黒色の顔料は、例えばカーボンブラック、およびチタンブラック等を用いる。また、染料を用いる場合には耐光性などの点から日光堅牢度が5以上の黒色染料を使用することが好ましい。更に分散性、樹脂との相溶性、汎用性などの観点から、アゾ系の黒色染料を使用するのが最も好ましい。上記顔料および染料を分散あるいは溶解させるバインダー樹脂は、公知の樹脂例えばアクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル、ノボラック樹脂、ポリイミド、エポキシ樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニルコポリマー、ニトロセルロースなどを用いる。
【0040】
遮光パターン180の形成方法は、上記赤外線を用いて応力破壊する方法に限られず、可視光等の他のエネルギー線を用いて応力破壊してもよい。赤外線等、可視光とは異なるエネルギー線を用いる場合に、エネルギー線の光路と、映像光を透過させる場合の可視光の光路とが、レンズ120、レンズ側基材140、および遮光側基材160の屈折率波長依存性によってずれる。このずれを補正する手段として、露光に用いる赤外線等を予め一定の角度に拡散させてもよいし、露光光の光軸をレンズ120の光軸から±10度の範囲で揺動させながら露光してもよい。あるいは、これらを同時に実行してもよい。
【0041】
また、遮光パターン180の形成方法は、遮光層170を露光して応力破壊する方法に限られない。他の方法として、透明の感光性粘着層およびブラックシートを用いた方法であってもよい。この場合に、まず、遮光側基材160の観察側の面に、透明の感光性粘着層が塗布等により設けられ、遮光側基材160の入射側の面とレンズ側基材140の観察側の面とが貼り合わされる。その後、レンズ120側から紫外線等のエネルギー線が露光され、レンズ120の焦点近傍における感光性粘着層が露光して粘着性を失う。その後、セパレート基板付きのブラックシートが感光性粘着層に貼り合されてから、セパレート基材が剥がされる。これにより、感光性粘着層における露光部分のブラックシートがセパレート基材と共に剥がされるとともに、非露光部分のブラックシートは遮光側基材160に残り、遮光パターン180が形成される。
【0042】
レンズ120の光軸方向に関する遮光層170の位置は、レンズ120の焦点近傍に位置することが好ましい。これにより、上記遮光パターン180の形成において、露光時のエネルギー線のコントラストを高めることができる。本実施形態では、遮光側基材160の厚みを変更するだけで、レンズ120の光軸方向に関する遮光層170の位置を変えることができる。したがって、図2に示すレンズアレイシート100の製造方法において、レンズ側基材140の厚みを変更することなく、焦点距離が異なるレンズ120を有する複数種類のレンズアレイシート100を容易に製造することができる。加えて、上記のようにレンズ側基材140の厚みをレンズ120の焦点距離よりも薄くすることができる。したがって、レンズ側基材供給部210において、例えば、ロール状に巻かれたレンズ側基材140を引き出して供給する場合、レンズ側基材140の引き出しが容易になる。また、レンズ成型用ロール230、ロール232、233などへの掛け回しが容易になる。以上により、レンズアレイシート100をより効率的に製造することができる。
【0043】
以上、本実施形態のレンズアレイシート100は、レンズ側基材140の厚みを変更することなく、レンズアレイシート100の厚みを、レンズアレイシート100における遮光パターン180の位置が複数のレンズ120の焦点距離に来る厚みとすることができる。したがって、レンズ側基材140の厚みを変更することなく、遮光側基材160の観察側の面に占める遮光パターン180の割合の大きな、すなわち、映像光のコントラストにおいてより優れたレンズアレイシート100を製造することができる。
【0044】
また、図1から図3(C)に示すレンズアレイシート100は、球面等のレンズ120が二次元的に配されているが、レンズ120の形状および配置はこれに限られない。他の例は、カマボコ型のレンチキュラーレンズを互いの母線が平行になるように並べて配してもよい。
【0045】
また、図1から図3(C)に示すレンズアレイシート100は、レンズ側基材140および遮光側基材160の二つの基材を有するが、さらに、他の基材を設けて、三層以上にしてもよい。
【0046】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態に係るレンズアレイシート100の構成を示す断面図である。
【図2】レンズアレイシート100の製造方法の一例である。
【図3】図2に示す製造方法の各段階におけるレンズアレイシート100の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0048】
100 レンズアレイシート、120 レンズ、140 レンズ側基材、150 粘着層、160 遮光側基材、170 遮光層、180 遮光パターン、210 レンズ側基材供給部、220 塗布装置、230 レンズ成型用ロール、232 ロール、233 ロール、240 UVランプ、250 遮光側基材供給部、260 ラミネート用ロール、262 ラミネート用ロール、270 赤外線照射装置、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明なシート状のレンズ側基材と、
前記レンズ側基材の一面の上に形成された複数のレンズと、
前記レンズ側基材の前記一面の裏面に貼り合わされた、透明なシート状の遮光側基材と、
前記遮光側基材において前記レンズ側基材と貼り合わされた面の裏面に形成され、前記複数のレンズの焦点に対応する部分の可視光を透過し、それ以外の可視光を遮断する遮光パターンと
を備えるレンズアレイシート。
【請求項2】
前記遮光側基材は、UV吸収剤を含有している請求項1に記載のレンズアレイシート。
【請求項3】
前記レンズ側基材と前記遮光側基材とは、接着剤または粘着剤により貼り合わされる請求項1に記載のレンズアレイシート。
【請求項4】
前記レンズ側基材の厚みは、前記複数のレンズの焦点距離よりも薄い請求項1に記載のレンズアレイシート。
【請求項5】
前記遮光側基材の厚みは、前記レンズ側基材と貼り合わされた場合に、前記遮光パターンの位置が前記複数のレンズの焦点距離の位置に来る厚みを有する請求項4に記載のレンズアレイシート。
【請求項6】
透明なUV硬化樹脂のシート状のレンズ側基材を準備し、
前記UV硬化樹脂をレンズ型に押し付けて紫外線を照射することにより、前記レンズ側基材の一面の上に複数のレンズを形成し、
透明なシートの一面に、感光性材料層を設けた遮光側基材を準備し、
前記レンズ側基材の前記一面の裏面と、前記遮光側基材の前記一面の裏面とを貼り合わせ、
前記レンズ側基材の前記一面の側から光を照射して前記遮光側基材において前記複数のレンズの焦点に対応する部分の感光性材料層を硬化することにより、遮光パターンを形成する
レンズアレイシートの製造方法。
【請求項7】
透明なUV硬化樹脂のシート状のレンズ側基材を準備し、
前記UV硬化樹脂をレンズ型に押し付けて紫外線を照射することにより、前記レンズ側基材の一面の上に複数のレンズを形成し、
透明なシートの一面に、遮光層を設けた遮光側基材を準備し、
前記レンズ側基材の前記一面の裏面と、前記遮光側基材の前記一面の裏面とを貼り合わせ、
前記レンズ側基材の前記一面の側から光を照射して前記遮光側基材において前記複数のレンズの焦点に対応する部分の遮光層を応力破壊することにより、遮光パターンを形成する
レンズアレイシートの製造方法。
【請求項8】
前記レンズ型が軸周りに回転する円筒形状の側面に配され、前記円筒形状の外側から紫外線を照射することを特徴とする請求項6または7に記載のレンズアレイシートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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