説明

レンズアレイ用成形型

【課題】バリの発生を抑制することのできるレンズアレイ用成形型を提供する。
【解決手段】上型及び下型を備え、複数の貫通孔が配設された基板及び複数の前記貫通孔の各々に供給される樹脂材料を該上型及び該下型で挟み、前記基板と一体に複数の前記貫通孔の各々にレンズを形成するレンズアレイ用成形型であって、前記上型及び前記下型は、前記基板を支持する支持面と、前記基板における複数の前記貫通孔と同じ並びで該支持面に配設された複数のレンズ成形部とをそれぞれ有しており、前記下型の複数の前記レンズ成形部の各々は、その全体が対応する前記貫通孔に収容され、前記下型の前記支持面は、複数の前記貫通孔の各々の縁に全周に亘って密接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズアレイ用成形型に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やPDA(Personal Digital Assistant)などの電子機器の携帯端末には、小型で薄型な撮像ユニットが搭載されている。このような撮像ユニットは、一般に、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal−Oxide Semiconductor)イメージセンサなどの固体撮像素子と、固体撮像素子上に被写体像を結像する一以上のレンズと、を備えている。
【0003】
携帯端末の小型化・薄型化、そして携帯端末の普及により、それに搭載される撮像ユニットにも更なる小型化・薄型化が要請され、そして生産性が要請される。かかる要請に対して、複数の固体撮像素子が配列されたセンサアレイに、複数のレンズが配列された一以上のレンズアレイを順次積層し、得られた積層体を、それぞれに固体撮像素子及びレンズを含むように切断して撮像ユニットを量産する方法が知られている。
【0004】
上記の用途に用いられるレンズアレイとしては、ガラス等の光透過性材料で形成された平行平板の基板の表面に硬化性樹脂材料を滴下し、この樹脂材料を型で所定の形状に成形した状態で硬化させ、複数のレンズを形成したものが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。しかし、かかる構成のレンズアレイでは、レンズは樹脂材料からなる部分と、樹脂材料とは光学特性の異なる基板材料からなる部分とを含み、それらの境界で反射を生じる。それにより、フレアやゴーストが発生して画像品質を悪化させるという光学特性上の不都合が起こり得る。
【0005】
他のレンズアレイとして、シリコンなどの半導体や金属からなる基板に複数の貫通孔を形成し、貫通孔のそれぞれに樹脂材料を配置して、樹脂材料でレンズを形成したものが知られている(例えば、特許文献3参照)。かかる構成のレンズアレイによれば、レンズは樹脂材料のみで形成され、光学特性の異なる材料同士の境界がなく、フレアやゴーストの発生を防止することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3926380号公報
【特許文献2】国際公開第08/102648号
【特許文献3】国際公開第09/076790号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3では、レンズと基板との接合強度を確保するために、貫通孔の周囲において基板の表面に重なる鍔状のベースレイヤーがレンズに設けられている。そして、このベースレイヤーを形成するために、上型及び下型には、基板の表面との間に樹脂材料を収容する凹部がそれぞれ設けられている。しかしながら、下型にそのような凹部を設けると、そこに空気が溜まり易くなり、成形に悪影響を与える虞がある。そして、基板と下型との間に樹脂材料が染み込み易くなり、成形後のバリが問題となる。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みなされたものであり、バリの発生を抑制することのできるレンズアレイ用成形型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上型及び下型を備え、複数の貫通孔が配設された基板及び複数の前記貫通孔の各々に供給される樹脂材料を該上型及び該下型で挟み、前記基板と一体に複数の前記貫通孔の各々にレンズを形成するレンズアレイ用成形型であって、前記上型及び前記下型は、前記基板を支持する支持面と、前記基板における複数の前記貫通孔と同じ並びで配設された複数のレンズ成形部とをそれぞれ有しており、前記下型の複数の前記レンズ成形部の各々は、その全体が対応する前記貫通孔に収容され、前記下型の前記支持面は、複数の前記貫通孔の各々の縁に全周に亘って密接するレンズアレイ用成形型。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、下型の複数のレンズ成形部の各々を対応する貫通孔に収容することで、下型の支持面を複数の貫通孔の各々の縁に全周に亘って密接させることができ、それにより、バリの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態を説明するための、撮像ユニットの一例を示す図である。
【図2】本発明の実施形態を説明するための、レンズアレイの一例を示す図である。
【図3】図2のレンズアレイをIII−III線断面で示す図である。
【図4】図4A〜図4Dは、図2のレンズアレイに含む基板の製造方法の一例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態を説明するための、成形型の一例を示す図である。
【図6】図6A〜図6Cは、図5の成形型を用いたレンズアレイの製造方法の一例を示す図である。
【図7】図5に示す成形型の変形例を示す図である。
【図8】図8A及び図8Bは、図1の撮像ユニットの製造方法の一例を示す図である。
【図9】図9A〜図9Cは、図8A及び図8Bに示す撮像ユニットの製造方法の変形例を示す図である。
【図10】図10A及び図10Bは、図1の撮像ユニットの製造方法の他の例を示す図である。
【図11】図11A〜図11Cは、図10A及び図10Bに示す撮像ユニットの製造方法の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、撮像ユニットの一例を示す。
【0013】
図1に示すように、撮像ユニット1は、固体撮像素子22を含むセンサモジュール2と、固体撮像素子22の受光領域に被写体像を結像させるレンズ32を含むレンズモジュール3と、を備えている。
【0014】
センサモジュール2は、ウエハ片21を有している。ウエハ片21は、例えばシリコンなどの半導体で形成されており、平面視略矩形状に形成されている。ウエハ片21の略中央部には固体撮像素子22が設けられている。固体撮像素子22は、例えばCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサなどであり、ウエハ片21に対して周知の成膜工程、フォトリソグラフィ工程、エッチング工程、不純物添加工程、等を繰り返し、ウエハ片21上に受光領域、電極、絶縁膜、配線、等を形成して構成されている。
【0015】
レンズモジュール3は、基板片31と、レンズ32とを有している。基板片31は、センサモジュール2のウエハ片21と略同一の平面視略矩形状に形成されている。基板片31の中央部には、基板片31を厚み方向に貫通する平面視略円形状の貫通孔34が形成されている。レンズ32は、貫通孔34を埋めて設けられ、基板片31に支持されている。
【0016】
基板片31の一方の表面(図中、下側の表面)には、脚部35が突設されている。レンズモジュール3は、基板片31の脚部35をセンサモジュール2のウエハ片21に接合されてセンサモジュール2に積層される。
【0017】
センサモジュール2上でレンズモジュール3が安定する限り、脚部35の形状は特に限定されないが、好ましくは、レンズ32を包囲する枠状に形成される。脚部35を枠状とすれば、センサモジュール2のウエハ片21とレンズモジュール3の基板片31の間の空間を外より隔絶することができ、ウエハ片21と基板片31との間に塵などの異物が進入し、異物が固体撮像素子22やレンズ32に付着することを防止することができる。さらに、この場合に、例えば脚部35を可視光に対して不透明とすれば、ウエハ片21と基板片31との間から固体撮像素子22に入射する不要な光を脚部35によって遮ることができる。
【0018】
以上のように構成された撮像ユニット1は、典型的には携帯端末の回路基板にリフロー実装される。即ち、回路基板には、撮像ユニット1が実装される位置に予めペースト状の半田が適宜印刷されており、そこに撮像ユニット1が載せられ、この撮像ユニット1を含む回路基板に赤外線の照射や熱風の吹付けといった加熱処理が施され、それにより半田を溶かして撮像ユニット1は回路基板に実装される。
【0019】
なお、上述の撮像ユニット1は、センサモジュール2に積層されるレンズモジュール3が一つであるが、センサモジュール2に複数のレンズモジュール3が積層される場合もある。その場合に、レンズモジュール3の上に積層される上層のレンズモジュール3は、その脚部35を下層のレンズモジュール3の基板片31に接合されて積層される。
【0020】
また、レンズモジュール3は、その基板片31に一体に形成された脚部35をセンサモジュール2や他のレンズモジュール3に接合されて、それらの上に積層されるものとして説明したが、脚部35に替えて、基板片31とは別体のスペーサを介して積層するようにしてもよい。
【0021】
図2及び図3は、レンズアレイの一例を示す。
【0022】
図2及び図3に示すレンズアレイ5は、基板30と、複数のレンズ32と、を備えている。上述のレンズモジュール3は、基板30を切断し、個々にレンズ32を含むようにレンズアレイ5を分割して得られる。換言すれば、レンズアレイ5は、上述のレンズモジュール3の集合体である。
【0023】
基板30は、ウエハ状(円形状)をなし、その厚み方向に貫通して複数の貫通孔34が形成されている。貫通孔34は、図示の例では行列状に配列されている。典型的には、基板30の直径は6インチ、8インチ、又は12インチとされ、そこに数千個の貫通孔34が配列される。なお、基板30は、ウエハ状のものに限られず、例えば矩形状のものであってもよい。また、貫通孔34の配列は、行列状に限られず、例えば放射状、同心の円環状、その他の2次元の配列であってもよく、また、1次元の配列であってもよい。基板30を形成する材料としては、例えば、シリコンなどの半導体、ガラスなどのセラミックス、金属、等の無機材料を用いることができる。
【0024】
レンズ32は、詳細は後述するが、貫通孔34に配置された樹脂材料を、そこで所定の形状に成形してなり、貫通孔34を埋めて設けられている。このようにして形成されるレンズ32は、その全体を均質な材料で形成することができ、光学性能に優れる。即ち、レンズ32の光軸上に、屈折率等の光学特性が互いに異なる材料同士の境界は形成されず、境界における反射、それによるフレアやゴーストといった光学性能上の不都合が発生することを防止することができる。
【0025】
基板30を上記の無機材料で形成する場合に、貫通孔34の内周面は、無機材料と樹脂材料との接着性を改良するカップリング剤で表面処理すると好ましい。それにより、貫通孔34の内周面における樹脂材料との接着性が改良され、レンズ32と基板30との接合強度が高まる。
【0026】
カップリング剤としては、無機材料と反応結合する加水分解性基(例えば、アルコキシ基、アセトキシ基、クロル原子、等)、及び有機材料と反応結合する官能基(例えば、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、等)を有するものであれば特に限定されないが、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、等を用いることができる。そして、基板30がシリコンやガラスである場合にはシランカップリング剤がより優れた強度を示し、また、基板30が金属である場合にはチタネートカップリング剤がより優れた強度を示すので、基板30を形成する無機材料に応じてカップリング剤を適宜選択することが好ましい。
【0027】
カップリング剤による貫通孔34の内周面の表面処理は、例えば、基板30全体をカップリング剤に浸漬してもよいし、また、貫通孔34毎に、その内周面にカップリング剤を吹き付け又は塗布するようにしてもよい。レンズ32と基板30との接合強度向上の観点では、カップリング剤の被膜の厚みは薄いほど好ましい。
【0028】
貫通孔34を埋めて設けられるレンズ32は、貫通孔34の内周面に密着する。そこで、貫通孔34の内周面に微細な凹凸を形成し、換言すれば、貫通孔34の内周面を粗面としてもよい。レンズ32を形成する樹脂材料が貫通孔34の内周面の微細な凹凸に入り込み、それによりレンズ32と基板30との接合強度をさらに高めることができる。さらに、貫通孔34の内周面を粗面とすることで、レンズ32と基板30との境界面での反射が防止され、ゴーストやフレアなどの発生を防止することができる。
【0029】
貫通孔34の内周面を粗面とする場合に、その面粗さは、好ましくは十点平均粗さ(Rz)で4μm以上25μm以下である。反射防止のためだけであれば1μm以上であればよいが、上記の面粗さの範囲とすることで、レンズ32の外周面と貫通孔34の内周面との密着によるレンズ32と基板30との接合強度を高めることができる。貫通孔34の内周面を粗面とする方法としては、例えばブラスト加工、エッチング加工、高温酸化、研磨加工、レーザ加工等が挙げられる。
【0030】
レンズ32の光軸方向の両端部には、それぞれ所定の形状のレンズ面33a、33bが形成されている。図3に示す例において、図中上側の端部に形成されたレンズ面33aは、凹形状の球面とされ、図中下側の端部に形成されたレンズ面33bは、凸形状の球面とされている。そして、レンズ面33aの曲率半径は、レンズ面33bの曲率半径よりも小さくされている。なお、レンズ面33a、33bの形状は、用途に応じて、凸形状の球面、凹形状の球面、非球面、又は平面の種々の組み合わせを採り得る。
【0031】
レンズ32の下側の端部は、貫通孔34内に収容されている。また、図示の例では、レンズ32の上側の端部は貫通孔32より突出しており、この端部には、貫通孔34の縁部に重なる延在部36が形成されている。この延在部36と基板30との密着によって、レンズ32と基板30との接合強度が得られる。なお、上述したカップリング剤による貫通孔34の内周面の表面処理や、貫通孔34の内周面の粗面化などによって、レンズ32と基板30との接合強度が確保できていれば、延在部36を省き、レンズ32の上側の端部を貫通孔34内に収容することもできる。
【0032】
図示の例では、延在部36は、貫通孔34より突出したレンズ32の端部から全周に亘って広がって平面視略円形状に形成されているが、これに限られるものではない。延在部36は、貫通孔34の縁部の一部に重なり合うものであってもよく、例えば、レンズ32の端部からそれぞれ放射状に延びる1又は複数の小片であってもよい。いずれの場合にも、レンズ32の光軸から延在部36の縁までの距離の最大値をdとし、貫通孔34の開口半径をrとしたときに、d>rを満たすことにより、延在部36は、貫通孔34の縁部に重なる。
【0033】
基板30の一方の表面(図中、下側の表面)には、複数の脚部35が突設されている。脚部35は、貫通孔34と同じ並びで行列状に配列されている。
【0034】
以下、レンズアレイ5の製造方法の一例を説明する。
【0035】
図4A〜図4Dは、図2のレンズアレイ5に含む基板30の製造方法の一例を示す。
【0036】
図4A〜図4Dに示す例は、基板素材40にブラスト加工を施し、複数の貫通孔34、及び複数の脚部35を形成して、基板30を得るものである。基板素材40は、基板30と同じ外形で、且つ同じ厚みに形成されている。
【0037】
図4Aに示すように、脚部35を形成する箇所を覆うブラスト用マスク41を基板素材40の一方の表面に貼り付ける。
【0038】
次いで、図4Bに示すように、マスク41が貼り付けられている基板素材40の表面側から脚部35の高さに相当する深さまでブラスト加工を進め、マスク41で覆われていない基板素材40の領域を除去する。それにより、脚部35が形成される。
【0039】
次いで、図4Cに示すように、貫通孔34を形成する箇所を露呈させるブラスト用マスク42を基板素材40の他方の表面に貼り付ける。
【0040】
次いで、図4Dに示すように、マスク42が貼り付けられている基板素材40の表面側からブラスト加工を進め、マスク42で覆われていない基板素材40の領域を除去する。それにより、貫通孔34が形成される。ブラスト加工は、処理面の表面粗さの制御が容易であり、ブラスト加工により貫通孔34を形成するようにすれば、その内周面を粗面とすることも可能である。
【0041】
以上の例は、基板素材40にブラスト用マスクを設け、そこにブラスト加工を施して貫通孔34や脚部35を形成するものであるが、同様にエッチング用マスクを設け、そこにエッチングを施して貫通孔34や脚部35を形成することもできる。そして、エッチングによっても、貫通孔34の内周面を粗面とすることができる。
【0042】
エッチングによって貫通孔34や脚部35を形成する場合に、基板素材40を形成する材料、つまりは基板30を形成する材料としては、シリコンが好ましい。それによれば、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ヒドラジン、等のアルカリ系水溶液をエッチング液に用いて異方性エッチングを行うことができる。異方性エッチングでは、特定の結晶方位に対してはエッチングが進まず、例えば水酸化カリウム水溶液は、結晶方位が(111)の面にはエッチングが殆ど進まない。そこで、結晶方位が(110)の面を表面とする基板素材40であれば、基板素材40の表面に対して略垂直な側面を持つ貫通孔34や脚部35を形成することができる。また、シリコンは可視光に対して不透明であるので、基板30に一体に形成される脚部35もまた可視光に対して不透明となり、上述の撮像ユニット1で説明した通り、ウエハ片21と基板片31との間から固体撮像素子22に入射する不要な光を脚部35によって遮ることができる。
【0043】
図5は、成形型の一例を示す。
【0044】
図5に示す成形型50は、レンズアレイ5の複数のレンズ32を一括して成形する成形型である。この成形型50は、上型51と、下型61とを備えており、それらの間に基板30を挟み込む。
【0045】
上型51には、成形面54、及び凹部55を含むレンズ成形部53が、レンズアレイ5におけるレンズ32の並びと同じ並びで配設されており、また、レンズ成形部53の周囲に支持面52が設けられている。成形面54は、レンズ32の一方のレンズ面33aを反転した形状とされ、凸形状の球面とされている。凹部55は、環状に形成され、上型51と接する基板30の表面側における貫通孔34の縁部に重なっている。
【0046】
下型61には、成形面64を含むレンズ成形部63が、レンズアレイ5におけるレンズ32の並びと同じ並びで配設されており、また、レンズ成形部63の周囲に支持面62が設けられている。レンズ成形部63は、支持面62より突出しており、その外径は、貫通孔34の内径より小さくされている。レンズ成形部63は、貫通孔34内に進入して貫通孔34内に収容され、レンズ成形部63の外周面と貫通孔34の内周面との間には隙間がおかれる。そして、下型61の支持面62は、貫通孔34の縁に全周に亘って密接する。成形面64は、レンズ32の他方のレンズ面33bを反転した形状とされ、凹形状の球面とされている。また、下型61の支持面62には、基板30の脚部35を収容する収容部66が形成されている。
【0047】
上型51のレンズ成形部53と、下型61のレンズ成形部63及びその周囲の支持面62と、基板30の貫通孔34の内周面とで、レンズ32を成形するためのキャビティCが形成される。
【0048】
レンズ32を形成する樹脂材料としては、例えばエネルギー硬化性の樹脂組成物を好適に用いることができる。エネルギー硬化性の樹脂組成物は、熱により硬化する樹脂組成物、あるいは活性エネルギー線の照射(例えば紫外線、電子線照射)により硬化する樹脂組成物のいずれであってもよい。
【0049】
レンズ32を形成する樹脂組成物は、モールド形状の転写適性等、成形性の観点から硬化前には適度な流動性を有していることが好ましい。具体的には常温で液体であり、粘度が1000〜50000mPa・s程度のものが好ましい。
【0050】
また、レンズ32を形成する樹脂組成物は、硬化後にはリフロー工程を通しても熱変形しない程度の耐熱性を有していることが好ましい。該観点から、硬化物のガラス転移温度は200℃以上であることが好ましく、250℃以上であることがより好ましく、300℃以上であることが特に好ましい。樹脂組成物にこのような高い耐熱性を付与するためには、分子レベルで運動性を束縛することが必要であり、有効な手段としては、(1)単位体積あたりの架橋密度を上げる手段、(2)剛直な環構造を有する樹脂を利用する手段(例えばシクロヘキサン、ノルボルナン、テトラシクロドデカン等の脂環構造、ベンゼン、ナフタレン等の芳香環構造、9,9’−ビフェニルフルオレン等のカルド構造、スピロビインダン等のスピロ構造を有する樹脂、具体的には例えば、特開平9−137043号公報、同10−67970号公報、特開2003−55316号公報、同2007−334018号公報、同2007−238883号公報等に記載の樹脂)、(3)無機微粒子など高Tgの物質を均一に分散させる手段(例えば特開平5−209027号公報、同10−298265号公報等に記載)等が挙げられる。これらの手段は複数併用してもよく、流動性、収縮率、屈折率特性など他の特性を損なわない範囲で調整することが好ましい。
【0051】
また、レンズ32を形成する樹脂組成物は、形状転写精度の観点からは硬化反応による体積収縮率が小さい樹脂組成物が好ましい。樹脂組成物の硬化収縮率としては10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることが特に好ましい。硬化収縮率の低い樹脂組成物としては、例えば(1)高分子量の硬化剤(プレポリマ−など)を含む樹脂組成物(例えば特開2001−19740号公報、同2004−302293号公報、同2007−211247号公報等に記載、高分子量硬化剤の数平均分子量は200〜100,000の範囲であることが好ましく、より好ましくは500〜50,000の範囲であり、特に好ましくは1,000〜20,000の場合である。また該硬化剤の数平均分子量/硬化反応性基の数で計算される値が、50〜10,000の範囲にあることが好ましく、100〜5,000の範囲にあることがより好ましく、200〜3,000の範囲にあることが特に好ましい。)、(2)非反応性物質(有機/無機微粒子,非反応性樹脂等)を含む樹脂組成物(例えば特開平6−298883号公報、同2001−247793号公報、同2006−225434号公報等に記載)、(3)低収縮架橋反応性基を含む樹脂組成物(例えば、開環重合性基(例えばエポキシ基(例えば、特開2004−210932号公報等に記載)、オキセタニル基(例えば、特開平8−134405号公報等に記載)、エピスルフィド基(例えば、特開2002−105110号公報等に記載)、環状カーボネート基(例えば、特開平7−62065号公報等に記載)等)、エン/チオール硬化基(例えば、特開2003−20334号公報等に記載)、ヒドロシリル化硬化基(例えば、特開2005−15666号公報等に記載)等)、(4)剛直骨格樹脂(フルオレン、アダマンタン、イソホロン等)を含む樹脂組成物(例えば、特開平9−137043号公報等に記載)、(5)重合性基の異なる2種類のモノマーを含み相互貫入網目構造(いわゆるIPN構造)が形成される樹脂組成物(例えば、特開2006−131868号公報等に記載)、(6)膨張性物質を含む樹脂組成物(例えば、特開2004−2719号公報、特開2008−238417号公報等に記載)等を挙げることができ、本発明において好適に利用することができる。また上記した複数の硬化収縮低減手段を併用すること(例えば、開環重合性基を含有するプレポリマーと微粒子を含む樹脂組成物など)が物性最適化の観点からは好ましい。
【0052】
また、レンズ32を形成する樹脂組成物は、高−低2種類以上のアッベ数の異なる樹脂の混合物が望まれる。高アッベ数側の樹脂は、アッベ数(νd)が50以上であることが好ましく、より好ましくは55以上であり特に好ましくは60以上である。屈折率(nd)は1.52以上であることが好ましく、より好ましくは1.55以上であり、特に好ましくは1.57以上である。このような樹脂としては、脂肪族の樹脂が好ましく、特に脂環構造を有する樹脂(例えば、シクロヘキサン、ノルボルナン、アダマンタン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等の環構造を有する樹脂、具体的には例えば、特開平10−152551号公報、特開2002−212500号公報、同2003−20334号公報、同2004−210932号公報、同2006−199790号公報、同2007−2144号公報、同2007−284650号公報、同2008−105999号公報等に記載の樹脂)が好ましい。低アッベ数側の樹脂は、アッベ数(νd)が30以下であることが好ましく、より好ましくは25以下であり特に好ましくは20以下である。屈折率(nd)は1.60以上であることが好ましく、より好ましくは1.63以上であり、特に好ましくは1.65以上である。このような樹脂としては芳香族構造を有する樹脂が好ましく、例えば9,9’−ジアリールフルオレン、ナフタレン、ベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール等の構造を含む樹脂(具体的には例えば、特開昭60−38411号公報、特開平10−67977号公報、特開2002−47335号公報、同2003−238884号公報、同2004−83855号公報、同2005−325331号公報、同2007−238883号公報、国際公開第2006/095610号パンフレット、特許第2537540号公報等に記載の樹脂等)が好ましい。
【0053】
また、レンズ32を形成する樹脂組成物には、屈折率を高めたり、アッベ数を調整したりするために、無機微粒子をマトリックス中に分散させることが好ましい。無機微粒子としては、例えば、酸化物微粒子、硫化物微粒子、セレン化物微粒子、テルル化物微粒子が挙げられる。より具体的には、例えば、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ニオブ、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化ランタン、酸化イットリウム、硫化亜鉛等の微粒子を挙げることができる。特に上記高アッベ数の樹脂に対しては、酸化ランタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等の微粒子を分散させることが好ましく、低アッベ数の樹脂に対しては、酸化チタン、酸化スズ、酸化ジルコニウム等の微粒子を分散させることが好ましい。無機微粒子は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、複数の成分による複合物であってもよい。また、無機微粒子には光触媒活性低減、吸水率低減などの種々の目的から、異種金属をドープしたり、表面層をシリカ、アルミナ等異種金属酸化物で被覆したり、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、有機酸(カルボン酸類、スルホン酸類、リン酸類、ホスホン酸類等)又は有機酸基を持つ分散剤などで表面修飾してもよい。無機微粒子の数平均粒子サイズは通常1nm〜1000nm程度とすればよいが、小さすぎると物質の特性が変化する場合があり、大きすぎるとレイリー散乱の影響が顕著となるため、1nm〜15nmが好ましく、2nm〜10nmが更に好ましく、3nm〜7nmが特に好ましい。また、無機微粒子の粒子サイズ分布は狭いほど望ましい。このような単分散粒子の定義の仕方はさまざまであるが、例えば、特開2006−160992号に記載されるような数値規定範囲が好ましい粒径分布範囲に当てはまる。ここで上述の数平均1次粒子サイズとは、例えばX線回折(XRD)装置あるいは透過型電子顕微鏡(TEM)などで測定することができる。無機微粒子の屈折率としては、22℃、589nmの波長において、1.90〜3.00であることが好ましく、1.90〜2.70であることが更に好ましく、2.00〜2.70であることが特に好ましい。無機微粒子の樹脂に対する含有量は、透明性と高屈折率化の観点から、5質量%以上であることが好ましく、10〜70質量%が更に好ましく、30〜60質量%が特に好ましい。
【0054】
樹脂組成物に微粒子を均一に分散させるためには、例えばマトリックスを形成する樹脂モノマーとの反応性を有する官能基を含む分散剤(例えば特開2007−238884号公報実施例等に記載)、疎水性セグメント及び親水性セグメントで構成されるブロック共重合体(例えば特開2007−211164号公報に記載)、あるいは高分子末端又は側鎖に無機微粒子と任意の化学結合を形成しうる官能基を有する樹脂(例えば特開2007−238929号公報、特開2007−238930号公報等に記載)等を適宜用いて微粒子を分散させることが望ましい。
【0055】
また、レンズ32を形成する樹脂組成物には、レンズ32と基板30との接合強度を向上させるために、無機材料との接着性を改良するシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、等の上記のカップリング剤が適宜配合されていてもよい。
【0056】
また、レンズ32を形成する樹脂組成物には、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル基含有化合物等の公知の離型剤やヒンダードフェノール等の酸化防止剤等の添加剤が適宜配合されていてもよい。
【0057】
また、レンズ32を形成する樹脂組成物には、必要に応じて硬化触媒又は開始剤を配合することができる。具体的には、例えば特開2005−92099号公報(段落番号〔0063〕〜〔0070〕)等に記載の熱又は活性エネルギー線の作用により硬化反応(ラジカル重合あるいはイオン重合)を促進する化合物を挙げることができる。これらの硬化反応促進剤の添加量は、触媒や開始剤の種類、あるいは硬化反応性部位の違いなどによって異なり一概に規定することはできないが、一般的には硬化反応性樹脂組成物の全固形分に対して0.1〜15質量%程度が好ましく、0.5〜5質量%程度がより好ましい。
【0058】
レンズ32を形成する樹脂組成物は、上記成分を適宜配合して製造することができる。この際、液状の低分子モノマー(反応性希釈剤)等に他の成分を溶解することができる場合には別途溶剤を添加する必要はないが、このケースに当てはまらない場合には溶剤を用いて各構成成分を溶解することにより硬化性樹脂組成物を製造することができる。該硬化性樹脂組成物に使用できる溶剤としては、組成物が沈殿することなく、均一に溶解又は分散されるものであれば特に制限はなく適宜選択することができ、具体的には、例えば、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等)アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチレングリコール等)、芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン等)、水等を挙げることができる。硬化性組成物が溶剤を含む場合には溶剤を乾燥させた後にモールド形状転写操作を行うことが好ましい。
【0059】
レンズ32を形成する樹脂材料として上記のエネルギー硬化性の樹脂組成物を用いる場合に、上型51、及び下型52の材料は、樹脂組成物に応じて適宜選択される。即ち、樹脂組成物として熱硬化のものを用いた場合には、型の材料は、例えばニッケル等の熱伝導率に優れる金属材料や、ガラス等の赤外線を透過する材料が用いられる。また、樹脂材料として紫外線硬化のものを用いた場合には、型の材料は、例えばガラス等の紫外線を透過する材料が用いられ、また、樹脂材料として電子線硬化のものを用いた場合には、型の材料は、その電子線を透過する材料が用いられる。
【0060】
図6A〜図6Cは、図5の成形型50を用いたレンズアレイの製造方法の一例を示す。
【0061】
図6Aに示すように、基板30の脚部35を下型61の収容部66に収容しつつ、下型61の支持面62上に基板30を設置する。下型61のレンズ成形部63は、貫通孔34内に進入して貫通孔34内に収容され、下型61の支持面62は、貫通孔34の縁に全周に亘って密接する。そして、下型61により一方の開口を塞がれた基板30の貫通孔34内に、レンズ32を形成する樹脂材料Mを供給する。レンズ成形部63の成形面64は、凹形状の球面となっていることから、樹脂材料Mは、成形面64の中心から徐々に外側に広がる。そのため、成形面64に空気が溜まることが防止される。
【0062】
次いで、図6Bに示すように、上型51を降下させる。上型51の降下に伴い、樹脂材料Mは、上型51と下型61との間で加圧され、上型51のレンズ成形部53の成形面54、及び下型61のレンズ成形部63の成形面64に倣って変形されると共に貫通孔34の内周面に密着する。成形面54は、凸形状の球面となっていることから、樹脂材料Mは、成形面54の中心から徐々に外側に逃げていく。そのため、成形面54に空気が溜まることが防止される。さらに、上型51の成形面54の曲率半径が、下型61の成形面64の曲率半径より小さくなっていることで、樹脂材料Mが成形面54の中心から外側に効率よく逃げるようになっている。
【0063】
図6Cに示すように、上型51が降下しきって成形型50が閉じられた状態で、キャビティCは樹脂材料Mによって充填され、上型51のレンズ成形部53に設けられた凹部55にも樹脂材料Mが進入している。樹脂材料Mの供給量には多少のバラツキが生じるが、このバラツキは凹部55で吸収される。この状態で、硬化のためのエネルギーを適宜加えて樹脂材料Mを硬化させ、レンズ32を形成する。凹部55に入り込んだ樹脂材料Mが硬化してレンズ32の延在部36が形成される。
【0064】
下型61の支持面62は貫通孔34の縁に全周に亘って密接しているため、支持面62と、これに接する基板30の表面との間への樹脂材料Mの染み込みが抑制され、それにより、バリの発生が抑制される。仮に、上型51の凹部55に相当する凹部、即ち下型61と接する基板30の表面側における貫通孔34の縁部に重なる凹部を下型61に設けた場合に、凹部のエッジにおける直角度が悪いと樹脂材料Mの染み込みが生じ易くなる。さらに、その凹部にも樹脂材料Mが進入するが、上型51を降下させる過程で、樹脂材料Mに作用する圧力の等方性に起因し、その凹部に進入した樹脂材料Mにより基板30が持ち上げられる。それにより、支持面62と、これに接する基板30の表面との間への樹脂材料Mの染み込みが生じ易くなる。
【0065】
図7は、図5の成形型50の変形例を示す。
【0066】
図7に示す成形型50は、上型51のレンズ成形部53に凹部55(図5参照)を設けずに、レンズ成形部53を支持面52より突出させ、その外径を貫通孔34の内径より小さくして、貫通孔34内に収容するようにしたものである。上型51のレンズ成形部53及びその周囲の支持面52と、下型61のレンズ成形部63及びその周囲の支持面62と、貫通孔34の内周面とで、レンズ32を成形するためのキャビティCが形成される。
【0067】
この成形型50を用いて形成されるレンズは、貫通孔34の縁部に重なる延在部36(図3参照)は形成されず、その光軸方向の両端部のいずれもが貫通孔34内に収容される。なお、樹脂材料Mの供給量のバラツキに起因して生じる余剰な樹脂材料Mは、上型51のレンズ成形部53の外周面と貫通孔34の内周面との間の隙間で吸収される。
【0068】
以上のようにして製造されるレンズアレイ5は、その基板30をカッターなどで切断され、それぞれにレンズ32を含んだ複数のレンズモジュール3に分離される。分離されたレンズモジュール3は、上述のとおり、センサモジュール2との組み合わせにおいて撮像ユニット1を構成する。
【0069】
図8A及び図8Bは、図1の撮像ユニット1の製造方法の一例を示す。
【0070】
図8A及び図8Bに示す例は、レンズアレイ5をレンズモジュール3に分離し、このレンズモジュール3をセンサモジュール2に積層して撮像ユニット1を製造するものである。図8Aに示すように、レンズ32及び脚部35を個々に含むように各切断ラインLに沿ってレンズアレイ5の基板30を切断し、レンズモジュール3に分離する。そして、図8Bに示すように、個々のレンズモジュール3を、それに含む脚部35を介してセンサモジュール2に積層し、撮像ユニット1を得る。
【0071】
このように、個々のレンズモジュール3において、その基板片31には脚部35が一体に形成されているので、別途スペーサを必要とせず、よって、センサモジュール2へのレンズモジュール3の積層工程が簡素化される。それにより、撮像ユニット1の生産性を向上させることができる。
【0072】
図9A〜図9Cは、図8A及び図8Bに示す撮像ユニットの製造方法の変形例を示す。
【0073】
図9A〜図9Cに示す例は、2つのレンズモジュール3をセンサモジュール2に積層するようにしたものである。図9Aに示すように、一つのレンズアレイ5を、それに含む複数の脚部35を介してもう一つのレンズアレイ5に積層し、レンズアレイ積層体6を構成する。そして、図9Bに示すように、積層方向に並ぶ複数のレンズ32の群、及び積層方向に並ぶ複数の脚部35の群を個々に含むように、各切断ラインLに沿って積層体6に含む二つのレンズアレイ5の基板30を一括して切断し、2つのレンズモジュール3が積層されたレンズモジュール積層体7に分離する。そして、図9Cに示すように、個々のレンズモジュール積層体7を、最下層のレンズモジュール3の脚部35を介してセンサモジュール2に積層し、撮像ユニット1を得る。
【0074】
このように、複数のレンズモジュール3を予め積層体したレンズモジュール積層体7をセンサモジュール2に積層するようにすれば、それらのレンズモジュール3をセンサモジュール2に順次積層する場合に比べて、撮像ユニット1の生産性を向上させることができる。
【0075】
図10A及び図10Bは、図1の撮像ユニット1の製造方法の他の例を示す。
【0076】
図8A及び図8Bに示す例は、レンズアレイ5をセンサアレイ4に積層して複数の撮像ユニット1を一括して構成し、そして個々の撮像ユニット1に分離するようにしたものである。
【0077】
まず、センサアレイ4について説明すると、センサアレイ4は、シリコンなどの半導体材料で形成されたウエハ20を有しており、ウエハ20には、レンズアレイ5におけるレンズ32の並びと同じ並びで、複数の固体撮像素子22が配列されている。典型的には、ウエハ20の直径は、6インチ、8インチ、又は12インチとされ、そこに数千個の固体撮像素子22が配列される。
【0078】
図10Aに示すように、レンズアレイ5を、それに含む複数の脚部35を介してセンサアレイ4に積層し、素子アレイ積層体8を構成する。そして、図10Bに示すように、積層方向に並ぶ固体撮像素子22及びレンズ32、並びに脚部35を個々に含むように、各切断ラインLに沿って素子アレイ積層体8に含むセンサアレイ4のウエハ20及びレンズアレイ5の基板30を一括して切断し、撮像ユニット1に分離する。
【0079】
図11A〜図11Cは、図10A及び図10Bに示す撮像ユニットの製造方法の変形例を示す。
【0080】
図11A〜図11Cに示す例は、二つのレンズアレイ5をセンサアレイ4に積層するようにしたものである。図11Aに示すように、一つのレンズアレイ5を、それに含む複数の脚部35を介してもう一つのレンズアレイ5に積層し、レンズアレイ積層体6を構成する。そして、図11Bに示すように、レンズアレイ積層体6を、最下層のレンズアレイ5に含む複数の脚部35を介してセンサアレイ4に積層し、素子アレイ積層体8を構成する。そして、図11Cに示すように、積層方向に並ぶ固体撮像素子22及び複数のレンズ32の群、並びに積層方向に並ぶ複数の脚部35の群を個々に含むように、各切断ラインLに沿って素子アレイ積層体8に含むセンサアレイ4のウエハ20及び二つのレンズアレイ5の基板30を一括して切断し、撮像ユニット1に分離する。
【0081】
このように、一つ又は複数のレンズアレイ5をセンサアレイ4に積層し、その後に、センサアレイ4のウエハ20、及び複数のレンズアレイ5の基板30をまとめて切断して複数の撮像ユニット1に分離するようにすれば、分離されたレンズモジュール3又はそれらの積層体7をセンサモジュール2に組み付ける場合に比べて、撮像ユニット1の生産性を一層向上させることができる。
【0082】
以上、説明したように、本明細書に開示されたレンズアレイ用成形型は、上型及び下型を備え、複数の貫通孔が配設された基板及び複数の前記貫通孔の各々に供給される樹脂材料を該上型及び該下型で挟み、前記基板と一体に複数の前記貫通孔の各々にレンズを形成するレンズアレイ用成形型であって、前記上型及び前記下型は、前記基板を支持する支持面と、前記基板における複数の前記貫通孔と同じ並びで配設された複数のレンズ成形部とをそれぞれ有しており、前記下型の複数の前記レンズ成形部の各々は、その全体が対応する前記貫通孔に収容され、前記下型の前記支持面は、複数の前記貫通孔の各々の縁に全周に亘って密接する。
【0083】
また、本明細書に開示されたレンズアレイ用成形型は、前記下型の複数の前記レンズ成形部の各々が、対応する前記貫通孔の内周面との間に隙間を置く大きさに形成されている。
【0084】
また、本明細書に開示されたレンズアレイ用成形型は、前記上型の複数の前記レンズ成形部、及び前記下型の複数の前記レンズ成形部が、所望のレンズ面の形状を反転させた形状の成形面をそれぞれ含み、前記下型の前記成形面は、凹曲面形状である。
【0085】
また、本明細書に開示されたレンズアレイ用成形型は、前記上型の前記成形面が、凸曲面形状である。
【0086】
また、本明細書に開示されたレンズアレイ用成形型は、前記上型の前記成形面の曲率半径が、前記下型の前記成形面の曲率半径より小さい。
【0087】
また、本明細書に開示されたレンズアレイの製造方法は、上記いずれかのレンズアレイ用成形型を用い、前記下型の複数の前記レンズ成形部の各々を対応する前記貫通孔に進入させて、前記基板を支持面上に設置する工程と、前記下型に設置された前記基板の複数の前記貫通孔の各々に、樹脂材料を供給する工程と、前記基板及び複数の前記貫通孔の各々に供給された前記樹脂材料を前記上型と前記下型とで挟み、前記基板と一体に複数の前記貫通孔の各々にレンズを形成する工程と、を備える。
【0088】
また、本明細書に開示されたレンズアレイは、上記の製造方法により製造されたものである。
【0089】
また、本明細書に開示されたレンズアレイ積層体は、上記のレンズアレイを複数備え、これらのレンズアレイが順次積層されている。
【0090】
また、本明細書に開示された素子アレイ積層体は、上記のレンズアレイを少なくとも一つと、ウエハ上に複数の固体撮像素子が配列されたセンサアレイと、を備え、前記レンズアレイが前記センサアレイ上に順次積層されている。
【0091】
また、本明細書に開示されたレンズモジュールの製造方法は、上記のレンズアレイを、一つの前記レンズを個々に含むように分割する。
【0092】
また、本明細書に開示されたレンズモジュール積層体の製造方法は、上記のレンズアレイ積層体を、積層方向に並ぶ複数の前記レンズを個々に含むように分割する。
【0093】
また、本明細書に開示された撮像ユニットの製造方法は、上記の素子アレイ積層体を、積層方向に並ぶ前記固体撮像素子及び少なくとも一つの前記レンズを個々に含むように分割する。
【符号の説明】
【0094】
1 撮像ユニット
2 センサモジュール
3 レンズモジュール
4 センサアレイ
5 レンズアレイ
6 レンズアレイ積層体
7 レンズモジュール積層体
8 素子アレイ積層体
20 ウエハ
21 ウエハ片
22 固体撮像素子
30 基板
31 基板片
32 レンズ
33a、33b レンズ面
34 貫通孔
35 脚部
36 延在部
40 基板素材
41 マスク
42 マスク
50 成形型
51 上型
52 支持面
53 レンズ成形部
54 成形面
55 凹部
61 下型
62 支持面
63 レンズ成形部
64 成形面
66 収容部
C キャビティ
M 成形材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上型及び下型を備え、複数の貫通孔が配設された基板及び複数の前記貫通孔の各々に供給される樹脂材料を該上型及び該下型で挟み、前記基板と一体に複数の前記貫通孔の各々にレンズを形成するレンズアレイ用成形型であって、
前記上型及び前記下型は、前記基板を支持する支持面と、前記基板における複数の前記貫通孔と同じ並びで配設された複数のレンズ成形部とをそれぞれ有しており、
前記下型の複数の前記レンズ成形部の各々は、その全体が対応する前記貫通孔に収容され、
前記下型の前記支持面は、複数の前記貫通孔の各々の縁に全周に亘って密接するレンズアレイ用成形型。
【請求項2】
請求項1に記載のレンズアレイ用成形型であって、
前記下型の複数の前記レンズ成形部の各々は、対応する前記貫通孔の内周面との間に隙間を置く大きさに形成されているレンズアレイ用成形型。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のレンズアレイ用成形型であって、
前記上型の複数の前記レンズ成形部、及び前記下型の複数の前記レンズ成形部は、所望のレンズ面の形状を反転させた形状の成形面をそれぞれ含み、
前記下型の前記成形面は、凹曲面形状であるレンズアレイ用成形型。
【請求項4】
請求項3に記載のレンズアレイ用成形型であって、
前記上型の前記成形面は、凸曲面形状であるレンズアレイ用成形型。
【請求項5】
請求項4に記載のレンズアレイ用成形型であって、
前記上型の前記成形面の曲率半径が、前記下型の前記成形面の曲率半径より小さいレンズアレイ用成形型。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のレンズアレイ用成形型を用い、
前記下型の複数の前記レンズ成形部の各々を対応する前記貫通孔に進入させて、前記基板を支持面上に設置する工程と、
前記下型に設置された前記基板の複数の前記貫通孔の各々に、樹脂材料を供給する工程と、
前記基板及び複数の前記貫通孔の各々に供給された前記樹脂材料を前記上型と前記下型とで挟み、前記基板と一体に複数の前記貫通孔の各々にレンズを形成する工程と、
を備えるレンズアレイの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の製造方法により製造されたレンズアレイ。
【請求項8】
請求項7に記載のレンズアレイを複数備え、これらのレンズアレイが順次積層されたレンズアレイ積層体。
【請求項9】
請求項7に記載のレンズアレイを少なくとも一つと、ウエハ上に複数の固体撮像素子が配列されたセンサアレイと、を備え、前記レンズアレイが前記センサアレイ上に順次積層された素子アレイ積層体。
【請求項10】
請求項7に記載のレンズアレイを、一つの前記レンズを個々に含むように分割するレンズモジュールの製造方法。
【請求項11】
請求項8に記載のレンズアレイ積層体を、積層方向に並ぶ複数の前記レンズを個々に含むように分割するレンズモジュール積層体の製造方法。
【請求項12】
請求項9に記載の素子アレイ積層体を、積層方向に並ぶ前記固体撮像素子及び少なくとも一つの前記レンズを個々に含むように分割する撮像ユニットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−136545(P2011−136545A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189(P2010−189)
【出願日】平成22年1月4日(2010.1.4)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】