説明

レンズシート用ベースフィルム

【課題】加工工程で発生する微小キズを抑制し、透明性が高く、レンズシート用ベースフィルムとして最適なフィルムを得る。
【解決手段】共押出法により3層以上の積層構成を有する二軸配向ポリエステルフィルムであって、前記フィルムの両最外層は平均粒径2.1〜2.5μmの不活性粒子を含有し、最外層の厚みは不活性粒子の平均粒径の5倍以上11倍未満であり、最外層表面における原子間力顕微鏡(AFM)によって観察される高さ2nm以上の表面突起のうち、表面突起の直径Lと表面突起の高さhの比L/hが50以下である表面突起の数の割合が30%以下であることを特徴とする、レンズシート用ベースフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズシート用ベースフィルムに関する。詳しくは、製膜工程で発生する微小キズが少ない、光学欠点が少なく、透明性に優れる、レンズシート用ベースフィルムとして使用したときに最適な二軸配向積層ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年におけるノート型パソコンのカラー化や小型軽量化に代表されるように、携帯用電気機器の小型軽量化、カラー化の普及は著しいものがある。また、例えばカラー液晶ディスプレイを用いた商品としては、カラーノート型パソコンに限らず、携帯用カラー液晶テレビ、ビデオ一体型カラー液晶テレビ、ハンディ型ラベルプリンター、携帯用通信機器(モバイルギアーなど)の如く、多種多様の商品が実用化されている。
【0003】
このような機器においては、携帯用とするためバッテリーが用いられるが、その稼働時間には限りがある。特に液晶ディスプレイ、中でもカラー液晶ディスプレイの消費電力は、バッテリーによる稼働時間を大きく左右するもので、この消費電力を可及的に低減することは、上述したような携帯用電気機器の実用的な商品価値を高めるばかりでなく、省エネルギー化にとっても有意義なことである。
【0004】
消費電力を低減する方法としては、液晶ディスプレイに用いられるバックライトの消費電力を抑制することが最も簡単な方法である。しかし、電力量を低減するとバックライトの輝度が低下するので、液晶ディスプレイの輝度も低下し、表示機能は著しく低下する。
【0005】
こうした問題を解決するため、バックライトユニットの光学的効率を改善する方法が提案されている。例えば、片面にプリズム列のレンズ単位を多数形成したレンズシート、あるいはレンチキュラー列のレンズ単位を多数形成したシートなどのレンズシートをバックライトの導光体の出射光面側に設けたバックライトなどが提案されている。
【0006】
これらのレンズシートは、バックライトからの出射光を屈折作用によりディスプレイ正面方向へ向けて、正面輝度を向上させるものである。通常、レンズシートはその成形性の良さからポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂などの透明プラスチック樹脂を基材(ベースフィルム)とする。中でもポリエステル系樹脂は、優れた透明性、寸法安定性、耐薬品性の観点から、広く採用されている。
【0007】
二軸配向ポリエステルフィルムは一般に、ポリエステル樹脂を溶融押し出してシート化した後、搬送ロールを経て、フィルムの巻取り方向(MD方向)と幅方向(TD方向)に二軸延伸される。延伸方式としては逐次二軸延伸法や同時二軸延伸法が一般的に採用されるが、逐次二軸延伸法が最も広く採用されている。逐次二軸延伸法は搬送ロール間の速度差を利用してMD方向に延伸した後、テンタークリップによりTD方向に延伸する。
【0008】
製膜工程中の搬送ロールをフィルムが通過する際、搬送ロール上にある異物によりフィルムに微小なキズが発生することがある。これらの異物は、製膜工程中で発生するオリゴマー等が主な原因であり、高品位のフィルムを得るために、定期的なロール掃除や、特許文献1のように低オリゴマー原料の使用等の対策が提案されている。
【0009】
また、フィルム表面へ突起を付与することで、微小キズを低減させることが検討されている。キズに対する効果は、一般的に表面粗さの指標であるSRa(中心面平均粗さ)と対応していて、SRaが高いほどキズに対する効果が高いことが知られている。フィルム表面へ突起を付与する方策としては、フィルムを3層構造にし、不活性粒子をフィルム表層部に付与する方法がある。しかし不活性粒子をフィルム中に付与すると、不活性粒子と樹脂との屈折率に差があることから、フィルムの透明性の指標となるヘイズが高くなり透明性を損なう。
【0010】
これらの問題に対して特許文献2、特許文献3では、粒径が異なる不活性粒子を使用して、透明性と耐スクラッチ性を両立させることが提案されている。また、特許文献4では、3層構造の表層部を非常に薄くすることにより、突起に寄与しない粒子の数を少なくし、透明性を向上させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−130984号公報
【特許文献2】特許第3311591号公報
【特許文献3】特許第3235759号公報
【特許文献4】特開2003−231229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
光学欠点となるキズ、異物の低減については、特許文献1などの開示の提案により、従来、問題なく利用されていた。ところが、ディスプレイの高精細化は飛躍的に進展しており、従来問題とされない程度の微小なキズ、異物が光学欠点として認識されるようになると考えられた。
【0013】
加えて、生産性の向上から、加工工程や製膜工程におけるライン速度が飛躍的に向上しており、高速加工条件下においても光学欠点の低減が必要となった。そのため、特許文献2〜4のようにフィルム表面に突起をもたせることで、微小キズによる光学欠点の低減を図ることが検討された。しかしながら、特許文献2、3のように平均粒径1μm以下の微小粒子を用いると、微小粒子の凝集により、樹脂中に均一に分散することができず、凝集粒子によりフィッシュアイ状の欠点が発生し、上記課題を解決するレベルにまで光学欠点の抑制することができなかった。
【0014】
さらに、特許文献4のように、粒子に対して樹脂層を薄くしすぎると、加工や製膜における高速加工により粒子の脱落が発生し、これらが新たな光学欠点の要因となることが懸念された。
【0015】
このように、将来きたるべき高精細化および生産性の向上に対応しうるような、光学欠点が少ない、高品位なレンズシート用フィルムを安定的に得るための方策は確立されていないことがわかった。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、不活性粒子含有層の厚みと不活性粒子の粒子径を特定の範囲とし、さらに特定の突起の直径と突起の高さの比を有する表面突起を制御することにより、粉落ちなどによる光学欠点も少なく、高透明なフィルムを提供するに至ったのである。
【0017】
具体的には、共押出法により3層以上の積層構成を有する二軸配向ポリエステルフィルムであって、前記フィルムの両最外層は平均粒径2.1〜2.5μmの不活性粒子を含有し、最外層の厚みは不活性粒子の平均粒径の5倍以上11倍未満であり、最外層表面における、原子間力顕微鏡(AFM)によって観察される高さ2nm以上の表面突起のうち、表面突起の直径Lと表面突起の高さhの比L/hが50以下である表面突起の数の割合が30%以下とすることにより、透明性に優れ光学欠点が少なく、レンズシート用フィルムとして最適なフィルムを得ることが可能となった。
【発明の効果】
【0018】
本発明により得られるフィルムは透明性に優れ、加工工程や製膜工程での微小キズの発生が少ない。本発明のフィルムをレンズシート用の基材フィルムとして使用することで、光学的な欠点が少なく高性能なレンズシートを、安定的に得ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(ポリエステル原料)
本発明においてポリエステルフィルムに使用するポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであっても良い。ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを縮重合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、1.4−ブタンジオール、1.4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。かかるポリエステルとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等が例示される。中でも、物理的強度、耐熱性、耐薬品性の点からポリエチレンテレフタレートが好適に利用できる。
【0020】
一方、共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシルカルボン酸等の一種または二種以上が挙げられ、グリコール成分としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピオングリコール、1.4−ブタンジオール、1.4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上が挙げられる。何れにしても本発明でいうポリエステルとは、通常60モル%以上、好ましくは80%以上がエチレンテレフタレート単位であるポリエチレンテレフタレート等であるポリエステルを指す
【0021】
ポリエステルはジカルボン酸とグリコールをエステル化反応させ、次いで重縮合反応を行う重縮合法、あるいはジカルボン酸塩とグリコールをエステル交換反応させ、次いで重縮合反応を行うエステル交換法など、従来公知の方法によって製造される。
【0022】
ポリエステルの代表的な重縮合触媒としては、三酸化アンチモン、アンチモングリコラート等のSb系触媒、Ge系触媒、Ti系触媒等があり、これらの内、透明性、熱安定性、価格の観点から、フィルム用ポリエステル樹脂の重合触媒としては、一般に三酸化アンチモン(Sb23)が使用されている。
【0023】
また、上記ポリエステルフィルムには各種の添加剤が含有されていてもよく、該添加剤としては、例えば帯電防止剤、紫外線吸収剤、安定化剤等が挙げられる。
【0024】
本願発明のフィルムは、共押出法により3層以上の積層構成であって、両最外層に不活性粒子を含有する。例えば、最外層をB層、他の層をA層、C層とすると、フィルム厚み方向の層構成は、B/A/B、B/A/C/B、あるいはB/A/C/A/B等の構成が考えられる。A〜C層の各層は、それぞれ、ポリエステル樹脂の構成は同じであっても良いし、異なっていても良いが、バイメタル構成によるカールの発生を抑制すためには、各層のポリエステル樹脂を同構成にする、および/もしくは、B/A/B構成(2種3層構成)とすることが好ましい。
【0025】
本発明では、最外層以外の中心層(例えば、B/A/B構成ではA層)を構成するポリエステル樹脂は、粒子を含有してもよいが、高い透明性を得るためには、中心層を構成するポリエステル樹脂は実質的に粒子を含有しないことが好ましい。最外層にのみ不活性粒子を含有させることで、より好適に高い透明性を得ることができる。最外層以外の中心層に粒子を添加する場合、50ppm以下、好ましくは10ppm以下であることが好ましい。
【0026】
最外層に含まれる不活性粒子としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、不定形シリカ、球状シリカ、結晶性のガラスフィラー、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、シリカ−アルミナ複合酸化物粒子、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン、マイカなどの無機粒子や、架橋ポリスチレン粒子、架橋アクリル系樹脂粒子、架橋メタクリル酸メチル系粒子、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物粒子、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物粒子、ポリテトラフルオロエチレン粒子などの耐熱性高分子微粒子が挙げられる。なかでも、シリカはポリエステルと屈折率が比較的近いため、より透明性に優れたフィルムを確保し得る点で最も好適である。
【0027】
本発明のフィルムの最外層に含まれる不活性粒子の平均粒径は2.1〜2.5μmであり、更に好ましくは2.2〜2.4μmである。不活性粒子の平均粒径が2.1μm以下だと粒子の凝集力が非常に大きく、粒子の凝集による粗大な異常粒子が発生しやすくなり好ましくない。さらに、後述するような表面形状を構成するためには、不活性粒子の平均粒径は2.1μm以上であることが望ましい。また、平均粒径が2.5μm以上だと、粒子単体としての粗大粒子の含有量が多くなり好ましくない。本発明では、光学欠点の要因となる粗大粒子を極限まで低減させるため、このように特定の非常に狭い範囲の粒子を用いる。
【0028】
ここでいう不活性粒子の平均粒径の範囲は、後述する測定方法により測定したものである。なお、例えば後述するような、一次粒子が凝集した二次粒子の場合は、当該二次粒子の平均粒径をいう。つまり、ここでの不活性粒子の平均粒径とは、フィルム内において実際に不活性粒子として存在しうる態様での平均粒径である。
【0029】
最外層中の不活性粒子の含有量は、0.015〜0.030質量%であることが望ましく、更に好ましくは0.020〜0.025質量%である。不活性粒子の含有量が0.015質量%以上の場合は、微小キズを低減する程度の有効な滑り性を奏する上で好ましい。不活性粒子の含有量が0.030質量%以下の場合は、高透明性を保持する上で好ましい。
【0030】
本願発明者は、表面凹凸の付与による光学欠点の減少と、高速加工により生じる粉落ちとの如何に両立すべきかを検討した結果、特定の表面構造を有する場合に、これら両特性が顕著に両立することを見出した。すなわち、本願発明は、最外層表面における、原子間力顕微鏡(AFM)によって観察される高さ2nm以上の表面突起のうち、表面突起の直径Lと表面突起の高さhの比L/hが50以下である突起の数の割合が30%以下であることを特徴とする。
【0031】
光学欠点を抑制する程度の、滑り性を奏するには、不活性粒子による2nm以上の突起高さを有する表面突起を有することが重要である。表面突起の高さが2nm未満では、マクロの表面形状がほぼ平坦となり、滑り性に有効に寄与することが困難である。しかしながら、表面突起が高くなると、超高速度の加工において、ロールやフィルム同士の擦れにより、突起を形成する粒子が脱落する。このような工程中の僅かな粉落ちが長期の操業により工程を汚し、微小キズが生じる要因となる。また、係るフィルムに後述の塗布層を設ける場合もまた同様である。そこで、本願発明者は、粉落ちの要因となる表面形状を検討した結果、表面突起の高さによって粒子の脱落のし易さが決まるのではなく、表面突起の山の形状が不活性粒子の脱落のし易さに影響するという新たな知見を見出し、本発明に至った。すなわち、高さ2nm以上の表面突起のうち、表面突起の直径Lと表面突起の高さhの比L/hが50を越える、なだらか裾野を有する表面突起は、粒子の脱落が生じにくい。一方、表面突起の直径Lと表面突起の高さhの比L/hが50以下である、比較的裾野の小さい表面突起が粒子の脱落が顕著に生じやすい。
【0032】
本発明のフィルムは、原子間力顕微鏡(AFM)によって観察される高さ2nm以上の表面突起のうち、表面突起の直径Lと表面突起の高さhの比L/hが50以下である突起の数の割合が30%以下であり、好ましくは25%以下であり、より好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは15%以下である。直径Lと高さhの比L/hが50以下である表面突起の割合が、30%を超えると、粉落ちによる光学欠点が生じやすくなる。当該形状を有する表面突起の割合は、少ない方が好ましいが、生産性の点から1%程度が下限であると考える。
【0033】
上記特定の表面構成を形成するには、なだらかな山裾を有する表面突起を多くすることが望ましい。そのため、最外層の厚みは不活性粒子の平均粒径の5倍以上にすることが必要である。表面突起は、最外層中に存在する不活性粒子により形成される。なだらかな表面突起を形成するためには、不活性粒子が表面直下にあるのではなく、ある程度以上の大きさを有する粒子が、適当な深さをもって存在することが望ましい。最外層の厚みが不活性粒子の平均粒径の5倍未満であると、不活性粒子による表面突起の形状が比較的鋭利になるため、粉落ちが生じやすくなる。最外層の厚みの上限は、粉落ち発生の観点からは特に設けないが、厚みが厚くなりすぎるとフィルム内部にある不活性粒子の量が多くなりすぎ、フィルム内部で発生する光の散乱が多くなり、レンズシートとして高度な透明性を要求される分野では好ましくない。最外層の厚みの上限は、レンズシートとしてヘイズ上昇を許容できる範囲から、11倍未満とした。尚、ここで最外層の厚みとはフィルム両面に積層されている最外層の、片側の厚みのことである。
【0034】
上述のように不活性粒子と不活性粒子含有層の厚みを制御することにより、好適にフィルム表面の突起形状をコントロールし、個々の突起の傾斜角度を極力小さくすることが出来、透明性の低下を極力抑えながら光学欠点低減効果を高めることが可能となる。
【0035】
さらに、より好適に上記の特定の表面形状を形成するためには、例えば(1)ポリエステル樹脂の固有粘度を高めることで表面形状をなだらかにする方法、(2)熱固定温度を高温で処理することで表面形状をなだらかにする方法、などを組み合わせることによっても可能である。また、後述するように、(3)フィルムの延伸で追従的な変形が生じやすい不活性粒子を用いることも好適である。
【0036】
フィルムの延伸で追従的な変形が生じやすい不活性粒子としては、数nmから数百nmの一次粒子が凝集した二次粒子であって、その細孔容積を1.5ml/g以上であるものが好ましい。特に透明性や取り扱い性、価格の観点から、不定形塊状シリカが好適である。不活性粒子の細孔容積を1.5ml/g以上とすることで、延伸による粒子の変形が発生しやすくなり、本発明の範囲に突起形状をコントロールしやすくなる。なお、不活性粒子の細孔容量はBJH法など公知の窒素脱吸着により算出することができる。不活性粒子がフィルム中にある場合は、例えばフェノール/テトラクロロエタン混合溶液などにより溶解し、残渣である不活性粒子を回収し、十分乾燥した後、BJH法など公知の窒素脱吸着により算出することができる。
る。
【0037】
ポリエステルに上記不活性粒子を配合する方法としては、公知の方法を採用し得る。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応開始前の段階でエチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し、重縮合反応を進めてもよい。またベント付き混練押出機を用いエチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行うことができる。
【0038】
中でも、本発明ではポリエステル原料の一部となるモノマー液中に凝集体無機粒子を均質分散させた後、濾過したものを、エステル化反応前、エステル化反応中、又はエステル化反応後のポリエステル原料の残部に添加する方法が好ましい。この方法によると、モノマー液が低粘度のため、粒子の均質分散やスラリーの高精度な濾過が容易に行えると共に、原料の残部に添加する際に、粒子の分散性が良好で、新たな凝集体も発生しにくい。
【0039】
特に、前記不定形塊状シリカを用いる場合は、スラリーの添加、混合により、粒子が凝集し、凝集粗大粒子が生じる場合がある。シリカの凝集は高温で生じやすいため、光学欠点の要因となる凝集粗大粒子を低減するために、前記不定形塊状シリカを含有するエチレングリコール溶液を添加する場合は、エステル化反応もしくはエステル交換反応を行ってオリゴマーを生成する前の工程において、好ましくは10〜50℃、より好ましくは10〜30℃の範囲に保持しながら、ポリエステル原料とブレンドすることが好ましい。このタイミングでスラリーを添加することで、スラリー温度を低温に保ったまま添加することが可能となり、新たな凝集体の生成を抑制することができる。
【0040】
一般的に不活性粒子の粒径はある程度の幅を有する分布を示すが、本発明で用いる不活性粒子は、好ましくは10μm以上の粒径を有する不活性粒子が全体の1%以下であることが好ましい。10μm以上の粒径を有する不活性粒子が1%を超える場合は、光学欠点の要因となる粗大粒子の数が多くなるため好ましくない。不活性粒子の分布を上記範囲にする方法としては、(1)不活性粒子を分散させたエチレングリコールもしくはポリエステルを精密濾過する方法、(2)不活性粒子を分散させたエチレングリコールもしくはポリエステルをバッチ式または間欠式の遠心分離機で処理する方法、(3)所定の粒度分布を有する不活性粒子を選定する方法、などを用いることができる。
【0041】
本発明においてはフィルムのヘイズが2.0%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましい。ヘイズが2.0%以上となると、レンズシートとして使用した場合、バックライトユニットの正面輝度を低下させる恐れがあるため好ましくない。また、後述するような粒子を含有する接着性改質層を積層した場合、接着性改質層付きフィルムのヘイズは、3.0%以下であることが好ましく、2.5%以下であることがより好ましく、2.0%以下であることがさらに好ましい。
【0042】
本発明のフィルムの三次元中心面平均粗さ(SRa)は0.008〜0.015μmであることが好ましい。また、十点平均粗さ(SRz)が0.5〜1.5μmであることが好ましく、0.6〜1.0μmであることがより好ましい。三次元中心面平均粗さ(SRa)もしくは十点平均粗さ(SRz)が上記範囲内であると、微小キズを有効に抑制しながら、光透明性を維持できるため好ましい。
【0043】
本発明は、上記特定の表面構造を有し、また好ましくは上記特定の表面粗さを有するため、加工工程、製膜工程で生じる微小キズを抑制しうる程度の、良好な滑り性を奏することができる。そのため、後述の測定方法により測定する本発明のフィルムの動摩擦係数(μd)は1.5以下であることが好ましく、1以下であることがより好ましい。動摩擦係数が上記範囲内であれば、耐スクラッチ性が保持され、工程中でのキズが生じにくい。
【0044】
本発明のフィルムの厚みは特に限定されないが、好ましくは75〜350μm、より好ましくは100〜300μmである。フィルムの厚みが75μm以上であると、ベースフィルムとしての強度が保持しやすい。また、フィルム厚みが350μm以下であると、レンズシートの軽量化の点で好ましい。
【0045】
本発明のフィルムは上記特定の表面構造を有するため、光透明でありながら製膜中に生じる光学欠点を抑制することができる。本発明のフィルムは、後述する方法により測定した場合、高低差が0.3μmの微小キズが1m2当り好ましくは2個以下、より好ましくは1個以下、さらに好ましくは0個にすることができる。高低差が0.3μmの非常に浅い深さを有する微小キズは、製膜工程中または加工工程中にフィルム同士やガイドロールと擦れることにより生じるものである。このような顕微レベルの微小なキズは、従来あまり問題となされていなかったが、今後進展するであろう高精細化に対応するためには課題とされるべき光学欠点となりうるものである。このため、本発明のフィルムは特に高精細が要求されるようなレンズシートに好適である。
【0046】
また、本発明のフィルムは上記特定の粒子構成を有するため、フィルムに粒子を含有しながら、光学欠点の要因となる凝集異物を極限まで抑制することが可能となる。本発明のフィルムは、後述する方法により測定した場合、長径20μm以上の異物が1m2当り好ましくは2個以下、より好ましくは1個以下、さらに好ましくは0個にすることができる。長径20μm以上の異物は、微小粒子の凝集により形成される粗大粒子に起因するものである。このため、本発明のフィルムは特に高精細が要求されるようなレンズシートに好適である。
【0047】
本発明においては、レンズ樹脂との接着性を向上させるために、二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも片面に接着性改質樹脂層を有することも好ましい様態である。接着性改質層の成分は特に限定しないが、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂またはポリアクリル樹脂の少なくとも1種類を主成分とすることが好ましい。ここで、「主成分」とは接着性改質樹脂層を構成する固形成分のうち50質量%以上である成分をいう。本発明の接着性改質樹脂層の形成に用いる塗布液は、水溶性又は水分散性の共重合ポリエステル樹脂、アクリル樹脂及びポリウレタン樹脂の内、少なくとも1種を含む水性塗布液が好ましい。これらの塗布液としては、例えば、特許第3567927号公報、特許第3589232号公報、特許第3589233号公報、特許第3900191号公報、特許第4150982号公報等に開示された水溶性又は水分散性共重合ポリエステル樹脂溶液、アクリル樹脂溶液、ポリウレタン樹脂溶液等が挙げられる。
【0048】
接着性改質樹脂層は、前記塗布液を縦方向の1軸延伸フィルムの片面または両面に塗布した後、100〜150℃で乾燥し、さらに横方向に延伸して得ることができる。接着性改質樹脂の厚みは特に限定されないが、通常は0.01〜5μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.02〜2μm、最も好ましくは0.05〜0.5μmである。厚みが薄すぎると接着性不良となる可能性がある。また、本発明の範囲において、接着性改質樹脂を複数層積層することや、複数の接着性改質樹脂を混合して使用すること、両面に異なる接着性改質樹脂を塗工することも可能である。
【0049】
接着性改質樹脂層には易滑性を付与するために粒子を添加することが好ましい。微粒子の平均粒径は2μm以下の粒子を用いることが好ましい。粒子の平均粒径が2μmを超えると、粒子が被覆層から脱落しやすくなる。接着性改質樹脂層に含有させる粒子としては、前述した微粒子と同様のものが例示される。
【0050】
また、塗布液を塗布する方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、リバースロール・コート法、グラビア・コート法、キス・コート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーコート法、パイプドクター法、などが挙げられ、これらの方法を単独であるいは組み合わせて行うことができる。なお、本発明の接着改質樹脂層付きレンズシート用フィルムについて、フィルム表面形状の特性を評価する場合は、例えばメチルエチルケトンなどのような溶剤のより接着性改質樹脂層を除去したものを用いて評価することができる。
【0051】
本発明においてレンズシートは、集光機能が付与された樹脂シートであって、液晶表示装置、スクリーン投影装置、その他のディスプレイ装置の光学部材として用いられるものである。レンズシートとして本発明のフィルムに付与する集光機能層は、集光機能を有するものであればよく、その形状は特定されないが、例えば、プリズムレンズ、マイクロレンズ、フレネルレンズなどが例示される。このような集光機能層を形成するための樹脂としては、例えば、紫外線硬化型または電子線硬化型アクリル系樹脂が挙げられる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合する範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術範囲に包含される。また、得られたフィルムの特性や物性については以下の方法を用いて評価した。
【0053】
(1)ポリエステル樹脂の固有粘度
ポリエステル0.1gをフェノール/テトラクロロエタン(容積比3/2)の混合溶液25g中に溶解させ、30℃にてオストワルド粘度計を用いて測定した。
【0054】
(2)最外層(不活性粒子含有層)の厚み
レンズシート用ベースフィルムをフィルムの流れ方向に対して垂直に切り出し、光硬化樹脂で包埋した。包埋した試料をミクロトームにて70〜100nm程度の厚みの極薄切片とし、四酸化ルテニウム蒸気中で30分間染色した。この染色された極薄切片を、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、TEM2010)を用いて断面観察し、不活性粒子の位置から最外層(不活性粒子含有層)の厚みを求めた。尚、観察倍率は1500倍から10000倍の範囲で適宜設定した。
【0055】
(3)最外層表面の突起形状の評価
各実施例、比較例において接着性改質樹脂層を設けずに作成したレンズシート用ベースフィルムを用意し、レンズシート用ベースフィルムを任意の場所で切り出した後、原子間力顕微鏡(SII社製、SPI3800)を用いて、観察モード=DFMモード、スキャナー=FS−20A、カンチレバー=DF−3、観察視野=5×5μm2、分解能1024×512pixelsにて表面形態観察を行い観察像を得た。次いで同一測定視野の断面プロファイル表示モードを表示させた。断面移動画面で、カーソルの両端をつまんで高さ2nm以上の表面突起の長尺方向に沿うように、かつ、カーソルが表面突起の最高高さ位置を通るように移動させた。断面プロファイル曲線と測定範囲内の平均高さ線である高さ0nmの線とが交わった2箇所の交点間の距離を読み取り、表面突起の直径を測定した。さらに、測定範囲内の平均高さ線である高さ0nmとして表面突起の高さを測定下。こうして得られた観察像から、少なくとも100個以上の高さ2nm以上の突起について、突起の直径Lと突起の高さhを計測して直径と高さの比L/hを算出し、L/hが50以下である突起の比率を算出した。
【0056】
(4)ヘイズ、全光線透過率
各実施例、比較例において接着性改質樹脂層を設けずに作成したレンズシート用ベースフィルム、および接着性改質層付きレンズシート用ベースフィルムを用意し、JIS−K7105に準じ、濁度計(NHD2000、日本電色工業製)を使用して、基材フィルムのヘイズ、全光線透過率を測定した。
【0057】
(5)最外層表面の三次元表面粗さ(SRa、SRz)
各実施例、比較例において接着性改質樹脂層を設けずに作成したレンズシート用ベースフィルムを用意し、レンズシート用ベースフィルムの最外層表面を、触針式三次元粗さ計(SE−3AK、株式会社小阪研究所社製)を用いて、針の半径2μm、荷重30mgの条件下に、フィルムの長手方向にカットオフ値0.25mmで、測定長1mmにわたり、針の送り速度0.1mm/秒で測定し、2μmピッチで500点に分割し、各点の高さを三次元粗さ解析装置(SPA−11)に取り込ませた。これと同様の操作をフィルムの幅方向について2μm間隔で連続的に150回、すなわちフィルムの幅方向0.3mmにわたって行い、解析装置にデータを取り込ませた。次に解析装置を用いて中心面平均粗さ(SRa)、十点平均粗さ(SRz)を求めた。
【0058】
(6)不活性粒子の平均粒子径、10μm以上の粒子数
不活性粒子を走査型電子顕微鏡(日立製作所製、S−51O型)で観察し、粒子の大きさに応じて適宜倍率を変え、写真撮影したものを拡大コピーした。次いで、ランダムに選んだ少なくとも200個以上の粒子について各粒子の外周をトレースし、画像解析装置にてこれらのトレース像から粒子の円相当径を測定し、これらの平均を平均粒子径とした。またこうして得られた200個以上の粒子の粒子径から、10μm以上の粒子の比率を算出した。
【0059】
(7)キズ、異物の検出方法
各実施例、比較例において接着性改質樹脂層を設けずに作成したレンズシート用ベースフィルムを用意し、以下に説明する光学欠点検出装置により、100mm×100mmのフィルム片20枚について検査を行い、1m2あたりの欠点数に換算した。
【0060】
(光学欠点の検出方法)
作製したフィルム片を2枚の偏光板の間に挟みこみ、クロスニコル状態とし、消失位が保たれる状態にセットする。この状態でニコン万能投影機V‐12(投影レンズ50x、
透過照明光束切り替えノブ50x、透過光検査)を用い検査を行う。フィルム片にキズ、異物が存在する場合、その部分から光が透過し、光り輝くように見える長径が20μm以上あるものを検出する。
【0061】
(キズの深さ測定)
前述の光学欠点の検出方法により検出した欠点部分から、キズによる欠点を選出した。さらに適当な大きさに切り取って、三次元非接触形状計測システム Micromap MM500N−M100(菱化システム製、測定条件:waveモード、対物レンズ10倍)を用いてフィルム面に対して垂直方向から観察を行い、キズの断面形状を計測した。この断面形状よりキズの高低差(最も高い所と最も低い所の差)を算出した。このように測定した高低差0.3μm以上のキズの数を測定した。
【0062】
(異物の大きさ測定)
前述の光学欠点検出方法により検出した欠点部分から、異物による欠点を選出した。さらに適当な大きさに切り取って、光学顕微鏡を用いて透過光により観察し、光学的に異常な範囲として観察される部分の最大径を異物の大きさ(長径)とした。光学的に異常な範囲とは、クロスニコル状態(暗視野)にした際に光が漏れて透過する範囲を言う。異物周辺に存在する空洞(ボイド)が光学的に異常な範囲として観察される場合は、この空洞も含めて異物の大きさとする。このように測定した大きさ20μm以上の異物の数を測定した。
【0063】
(実施例1)
(接着性改質樹脂液の作製)
(共重合ポリエステル樹脂の合成)
ジメチルテレフタレート(95質量部)、ジメチルイソフタレート(95質量部)、エチレングリコール(35質量部)、ネオペンチルグリコール(145質量部)、酢酸亜鉛(0.1質量部)および三酸化アンチモン(0.1質量部)を反応容器に仕込み、180℃で3時間かけてエステル交換反応を行った。次に、5−ナトリウムスルホイソフタル酸(6.0質量部)を添加し、240℃で1時間かけてエステル化反応を行った後、250℃で減圧下(10〜0.2mmHg)、2時間かけて重縮合反応を行い、数平均分子量が19,500で、ガラス転移温度が62℃である共重合ポリエステル樹脂(A)を得た。
得られた共重合ポリエステル系樹脂300質量部とブチルセロソルブ140質量部を160℃で3時間撹拌し粘稠な溶融液を得、この溶融液に水を徐々に添加し1時間後に均一な淡白色の固形分濃度30%の水分散液を得た。
【0064】
(ポリウレタン系樹脂の合成)
アジピン酸//1.6ーヘキサンジオール/ネオペンチルグリコール(モル比:4//2/3)の組成からなるポリエステルジオール(OHV:2000eq/ton)100質量部と、キシリレンジイソシアネートを41.4質量部混合し、窒素気流下、80〜90℃で1時間反応させた後、60℃まで冷却し、テトラヒドロフラン70質量部を加えて溶解し、ウレタンプレポリマー溶液(NCO/OH比:2.2、遊離イソシアネート基:3.30質量%)を得た。引き続き、前記のウレタンプレポリマー溶液を40℃にし、次いで、20質量%の重亜硫酸ナトリウム水溶液を45.5質量部加えて激しく撹拌を行いつつ、40〜50℃で30分間反応させた。遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)の消失を確認した後、乳化水で希釈し、固形分20質量%の重亜硫酸ソーダでブロックしたイソシアネート基を含有する自己架橋型ポリウレタン系樹脂水溶液(B)を得た。ガラス転移温度は45℃であった。
【0065】
得られた共重合ポリエステル(A)の30質量%の水分散液を7.5質量部、自己架橋型ポリウレタン(B)の20質量%の水溶液を11.3質量部、触媒(ジブチルチンラウレート)を0.02質量部、水を37.9質量部およびイソプロピルアルコールを39.6質量部、それぞれ混合した。さらに、フッ素系ノニオン型界面活性剤の10質量%水溶液を0.3質量部、粒子Aとして平均粒径40nmの球状シリカの20質量%水分散液を2.3質量部、粒子Bとして平均粒径200nm(平均一次粒径40nm)の乾式法シリカの3.5質量%水分散液を0.5質量部添加した。次いで、重曹水溶液で塗布液のpHを6.2に調整し、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が10μmのフィルターで精密濾過し、接着性改質樹脂液とした。
【0066】
(PETペレットBの作製)
平均粒径2.3μm、細孔容積1.6ml/gの不定形塊状シリカ粒子をエチレングリコールに分散させ、不定形塊状シリカ粒子を濃度15質量%含有するエチレングリコールスラリーを作製した。
【0067】
テレフタル酸を86.4質量部及びエチレングリコールを64.4質量部、および三酸化アンチモン、酢酸マグネシウム(4水和物)を、生成ポリエチレンテレフタレート(PET)に対してSb原子として250ppm、Mg原子として65ppmを添加した後、攪拌した。その後、30℃以下に保持した状態で上記グリコールスラリーを、生成PETに対して2000ppmとなるよう添加してから、窒素で加圧し昇温を開始した。エステル化反応は、3.5Kg/cm2G(ゲージ圧:0.34MPa)の加圧下で、240℃で2時間行った。得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、減圧下260℃から280℃へ徐々に昇温し、285℃で重縮合反応を行った。
【0068】
重縮合反応終了後、ノズルからストランド状に押出し、予め濾過処理(孔径:1μm以下)を行った冷却水を用いて冷却、固化させ、ペレット状にカットし、不活性粒子を含有する固有粘度0.62dl/gの樹脂ペレットBを作製した。
【0069】
(レンズシート用ベースフィルムの作製)
A層用原料として、不活性粒子を含有していない、固有粘度が0.62dl/gのポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂ペレットAを、135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した。次いで、乾燥後のPETペレットをA層用押出機(1)に供給した。B層用原料として、上述の樹脂ペレットAと、平均粒径2.3μm、細孔容積1.6ml/gの不定形塊状シリカ粒子を2000ppm含有した、固有粘度0.62dl/gの樹脂ペレットBを、90:10の比率で混合した後、135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した。次いで、乾燥後のPETペレットをB層用押出機(2)に供給した。押出機に供給したポリマーを、285℃に溶融した後、それぞれ濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)が15μmの濾過材でろ過し、B層/A層/B層となるように積層し、積層比率が8/84/8となるように押出機の吐出量を調整した後、285℃でTダイスから層状に押出し、25℃の回転式冷却ロールに密着固化させて未延伸PETフィルムを得た。
【0070】
得られた未延伸PETフィルムを、加熱されたロール群及び赤外線ヒーターで95℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向に3.5倍延伸して一軸配向PETフィルムを得た。次いで、前記の接着性改質樹脂液を濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)10μmの濾材で精密濾過し、乾燥後の塗布量が7mg/m2になるようにロールコート法で一軸配向PETフィルムの片面に塗布した。
【0071】
引き続き、この一軸延伸PETフィルムをクリップ方式の横延伸機に導き、130℃で横方向に4.0倍延伸し、次いで230℃で熱固定処理した後、200℃で横方向に3%緩和処理し、厚み188μmのレンズシート用ベースフィルムを得た。
【0072】
(実施例2)
実施例1において、フィルム厚みを250μmとした以外は実施例1と同様の方法でレンズシート用ベースフィルムを得た。
【0073】
(実施例3)
実施例1において、B層/A層/B層の比率を12/76/12とした以外は実施例1と同様の方法でレンズシート用ベースフィルムを得た。
【0074】
(比較例1)
実施例1において、樹脂ペレットBの代わりに、平均粒径2.3μmの塊状シリカを篩いに掛けて粗粒を除去して得た、平均粒径1.3μmの不定形塊状シリカを2000ppm含有した、固有粘度0.62dl/gの樹脂ペレットDを使用した以外は実施例1と同様の方法でレンズシート用ベースフィルムを得た。得られたフィルムは透明性には優れるが、製膜工程で発生するキズを低減することが出来なかった。また、シリカによる凝集異物が確認された。
【0075】
(比較例2)
実施例1において、B層/A層/B層の比率を3/94/3とした以外は実施例1と同様の方法でレンズシート用ベースフィルムを得た。得られたフィルムは透明性に優れるが、粒子の脱落による工程汚染が発生しやすく、製膜工程で発生するキズが増加する傾向にあった。
【0076】
(比較例3)
実施例1において、樹脂ペレットBの代わりに、平均粒径2.0μm、細孔容積1.2ml/gの不定形塊状シリカを2000ppm含有した、固有粘度0.62dl/gの樹脂ペレットEを使用した以外は実施例1と同様の方法でレンズシート用ベースフィルムを得た。得られたフィルムは透明性に劣り、粒子の脱落による工程汚染が発生しやすく、製膜工程で発生するキズが増加する傾向にあった。
【0077】
(比較例4)
実施例1において、樹脂ペレットBの代わりに、平均粒径3.5μm、細孔容積1.6ml/gの不定形塊状シリカを2000ppm含有した、固有粘度0.62dl/gの樹脂ペレットEを使用した以外は実施例1と同様の方法でレンズシート用ベースフィルムを得た。得られたフィルムは透明性に劣り、フィッシュアイ状の異物が多い結果となった。
【0078】
(比較例5)
実施例1において、樹脂ペレットAと樹脂ペレットBの比率を75:25とした以外は実施例1と同様の方法でレンズシート用ベースフィルムを得た。得られたフィルムは透明性に劣る結果となった。
【0079】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明のレンズシート用フィルムは透明性に優れ、光学欠点も少ない。そのため、本発明のレンズシート用フィルムをレンズシートの基材フィルムとして使用することで、光学欠陥が少なく輝度向上性能に優れたレンズシートを容易に得ることが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共押出法により3層以上の積層構成を有する二軸配向ポリエステルフィルムであって、
前記フィルムの両最外層は平均粒径2.1〜2.5μmの不活性粒子を含有し、
最外層の厚みは不活性粒子の平均粒径の5倍以上11倍未満であり、
最外層表面における、原子間力顕微鏡(AFM)によって観察される高さ2nm以上の表面突起のうち、表面突起の直径Lと表面突起の高さhの比L/hが50以下である表面突起の数の割合が30%以下であることを特徴とする、
レンズシート用ベースフィルム。
【請求項2】
前記最外層表面の中心面平均粗さ(SRa)が0.008〜0.015μmであり、十点平均粗さ(SRz)が0.5〜1.5μmである、請求項1に記載のレンズシート用ベースフィルム。
【請求項3】
前記最外層中の不活性粒子が細孔容積1.5〜2.0ml/gの不定形塊状シリカであり、前記最外層中の不活性粒子含有量が0.015〜0.030質量%である、請求項1または2のいずれかに記載のレンズシート用ベースフィルム。
【請求項4】
前記不活性粒子のうち10μm以上の粒径を有する粒子の数が全体の1%以下である、請求項1から3のいずれかに記載のレンズシート用ベースフィルム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のレンズシート用ベースフィルムの少なくとも片面に接着性改質樹脂層を有する、接着性改質樹脂層付きレンズシート用ベースフィルム。

【公開番号】特開2011−5648(P2011−5648A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148440(P2009−148440)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】