説明

レンズメータ

【課題】被検レンズに印点を行う、シンプルな構成のレンズメータを提供する。
【解決手段】被検レンズが載置されるレンズ受け4と、レンズ受け4に載置された被検レンズをレンズ受け4の方向に押圧可能なレンズ押圧ピンを有するレンズ押さえユニット21と、被検レンズに印点可能な印点用ペンを有する印点ユニット31と、レンズ押さえユニット21及び印点ユニット31の両方を保持し、垂直方向に昇降可能に配設された昇降アーム11と、を備え、印点ユニット31は、印点用ペンが、レンズ受け4に載置された被検レンズから退避した退避位置と、印点を行う印点位置から上方に離間した印点準備位置との間で回動可能に設けられており、その印点ユニット31は、印点準備位置と印点位置との間を、昇降アーム11の昇降により移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検レンズに印点を行うレンズメータに関する。
【背景技術】
【0002】
図7は、従来のレンズメータ101を示す図である。図7において、従来のレンズメータ101は、測定用光源102と、光を投光する投光レンズ103と、被検レンズ6や図示しないマスク等を透過した光をセンサ上に結像させるための結像レンズ104と、像を受光する撮像センサ105とを備えている。また、従来のレンズメータ101は、被検レンズ6が載置されるレンズ受け4と、被検レンズ6を上からレンズ受け4の方向に押さえるレンズ押さえユニット121と、被検レンズ6に印点を行う印点ユニット131とをも備えている。レンズ押さえユニット121と、印点ユニット131とは、それぞれ昇降アーム111,112によって鉛直方向に昇降可能に保持されている。したがって、被検レンズ6を保持する際には、昇降アーム111を降下させることによってレンズ押さえユニット121のみを被検レンズ6に向かって降下させ、レンズ受け4と、レンズ押さえユニット121とによって被検レンズ6を保持する。また、印点を行う際には、印点用ペンの先端が被検レンズ6に対向する位置となるまで印点ユニット131を回動させ、さらに昇降アーム112を降下させることによって被検レンズ6に印点を行う。なお、このような従来のレンズメータ101については、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−83845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、図7で示される従来のレンズメータ101において、レンズ押さえユニット121と印点ユニット131とをそれぞれ昇降アーム111,112によって昇降させると、それだけ装置の構成が複雑になってしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、シンプルな構成のレンズメータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明によるレンズメータは、被検レンズが載置されるレンズ受けと、被検レンズをレンズ受けの方向に押圧可能なレンズ押圧ピンを有するレンズ押さえユニットと、被検レンズに印点可能な印点用ペンを有する印点ユニットと、レンズ押さえユニット及び印点ユニットを保持し、垂直方向に昇降可能に配設された昇降アームと、を備え、印点ユニットは、印点用ペンが、レンズ受けに載置された被検レンズから退避した退避位置と、その被検レンズに印点を行う印点位置から上方に離間した印点準備位置との間で回動可能に設けられており、印点ユニットは、印点準備位置と印点位置との間を、昇降アームの昇降により移動する、ものである。
このような構成により、単一の昇降アームによってレンズ押さえユニットと印点ユニットとの両方を保持することができ、シンプルな構成のレンズメータを実現することができる。また、レンズ押さえユニットが被検レンズを押さえている状態において、印点ユニットを退避位置から印点準備位置に回動させ、昇降アームを下降させることによって、被検レンズに印点を行うことができるようになる。
【0007】
また、本発明によるレンズメータでは、レンズ押圧ピンは、印点ユニットが印点準備位置にある場合に、印点用ペンの先端と被検レンズとの間に空隙が生じるように、被検レンズの向きに付勢されていてもよい。
このような構成により、印点ユニットを退避位置から印点準備位置に回動させる際に、印点用ペンの先端が被検レンズに当たらないようにすることができ、適切な印点を行うことができるようになる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によるレンズメータによれば、被検レンズに印点を行うレンズメータの構成をシンプルにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1によるレンズメータの外観を示す図
【図2】同実施の形態におけるレンズ押さえユニットの部分を示す図
【図3】同実施の形態における昇降アームの昇降機構について説明するための図
【図4】同実施の形態におけるレンズ押さえユニット及び印点ユニットの内部構造を示す図
【図5】同実施の形態における印点用ペンの先端の高さについて説明するための図
【図6】同実施の形態における印点ユニットの回動と印点動作について説明するための図
【図7】従来のレンズメータを示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明によるレンズメータについて、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素は同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。
【0011】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1によるレンズメータについて、図面を参照しながら説明する。本実施の形態によるレンズメータは、被検レンズを押さえるレンズ押さえユニットと、被検レンズに印点可能な印点ユニットとを単一の昇降アームで保持するものである。
【0012】
図1は、本実施の形態によるレンズメータ1の外観図である。本実施の形態によるレンズメータ1は、投光部2と、受光部3と、被検レンズ6が載置されるレンズ受け4と、モニタ5と、垂直方向に昇降可能に配設された昇降アーム11と、その昇降アーム11によって保持されるレンズ押さえユニット21及び印点ユニット31とを備える。なお、被検レンズ6は、例えば、未加工レンズであってもよく、フレーム加工済みレンズであってもよい。また、図1では、本実施の形態によるレンズメータ1の特徴的な構成要素のみを示している。したがって、レンズメータ1は、これら以外の構成要素を備えていてもよいことは言うまでもない。例えば、レンズメータ1は、被検レンズ6の光学中心の光学特性の値を記憶する記憶手段や、その光学特性の値を印刷するプリンタ等を備えていてもよい。
【0013】
投光部2は、測定用の光源の発した測定光をレンズ受け4に載置された被検レンズ6に投光する。投光部2は、例えば、測定光の光源と、その光源の発した拡散光を平行な測定光にして被検レンズ6に投光する投光レンズとを備えていてもよい。その測定光は、被検レンズ6等を通過し、受光部3で受光される。受光部3は、その受光した測定光に応じたデータを取得する。受光部3は、例えば、被検レンズ6を通過した測定光が通過するパターンマスクと、パターンマスクを通過した光を撮像センサ上に結像させるための結像レンズと、結像された画像を電気信号に変換して画像データを生成するための撮像センサとを備えていてもよい。また、レンズメータ1は、受光部3が受光した測定光の受光像を用いて被検レンズ6の光学特性を算出する図示しない光学特性算出部を有してもよい。その受光像は、例えば、パターンマスクの受光像であってもよい。光学特性算出部が算出する光学特性は、例えば、球面度数であってもよく、円柱度数(柱面度数)であってもよく、プリズム値であってもよく、あるいは、それらの任意の2以上のものであってもよい。また、その光学特性に、軸角度(乱視軸角度)が含まれていてもよい。なお、測定光を用いて被検レンズ6の光学特性を取得する方法はすでに公知であり、その説明を省略する。また、上記説明以外の方法によって、被検レンズ6の光学特性を取得してもよいことは言うまでもない。そのようにして取得された光学特性は、例えば、モニタ5に表示されてもよい。また、被検レンズ6のアライメントの状況等がモニタ5に表示されてもよい。
【0014】
図2は、レンズ押さえユニット21と印点ユニット31の範囲を拡大した図であり、図3は、昇降アーム11の昇降機構について説明するための図であり、図4は、レンズ押さえユニット21や印点ユニット31の内部構造を示す図である。また、図5は、印点用ペン32の高さについて説明するための図であり、図6は、印点ユニット31の回動と印点動作について説明するための図である。
【0015】
図3で示されるように、昇降アーム11は本体フレーム41のスリット44に挿通されている。また、昇降アーム11の背面側(レンズ押さえユニット21と反対側)には、本体フレーム41と平行に延びる延設部11aが一体に形成されている。その延設部11aは、昇降ガイド43にネジで固定されている。昇降ガイド43は、本体フレーム41の垂直方向に配設された昇降レール42に対して垂直方向に摺動可能に設けられている。なお、昇降ガイド43は昇降レール42に対して垂直方向以外は移動できないように設けられているものとする。したがって、レンズ押さえユニット21及び印点ユニット31を保持する昇降アーム11は、図3の両矢印で示される垂直方向にのみ昇降可能となる。なお、昇降アーム11または昇降ガイド43に、昇降アーム11が上昇した状態を一時的に保持する機構(図示せず)を備えてもよい。その機構は、例えば、ラッチ機構であってもよい。例えば、そのラッチ機構により昇降アーム11が上昇位置で保持され、昇降アーム11がもう一度上昇方向に少し移動されることによって、ラッチが外れて昇降アーム11が下降可能になってもよい。
【0016】
レンズ押さえユニット21は、昇降アーム11の延設部11aと反対側の先端で保持されている。すなわち、レンズ押さえユニット21は、昇降アーム11の先端にネジで固定されている。そのレンズ押さえユニット21は、鉛直下方に突出している4本のレンズ押圧ピン22と、その4本のレンズ押圧ピン22を支持する支持部材26と、その支持部材26の上面側に装置本体から離れる方向に突設されている昇降レバー23とを備える。レンズ押圧ピン22は、支持部材26に対して進退可能に設けられており、被検レンズ6をレンズ受け4の方向に押圧可能である。レンズ押圧ピン22が支持部材26に対して進退可能とは、レンズ押圧ピン22の先端が支持部材26から離れる方向、あるいはその逆の近づく方向に移動可能であることを意味する。また、レンズ押圧ピン22は、図4で示されるように、鉛直下方、すなわち、被検レンズ6の向きにピン付勢バネ24によって付勢されている。なお、レンズ押圧ピン22の付勢は、ピン付勢バネ24以外の弾性部材、例えば、ゴム等によって行われてもよい。また、本実施の形態では、レンズ押さえユニット21が4本のレンズ押圧ピン22を有する場合について説明するが、そうでなくてもよい。レンズ押圧ピン22の本数は、4本以外であってもよい。また、図2で示されるように、昇降レバー23の装置本体側は、測定光を遮断しないように略U字形状となっている。また、その略U字形状に対応する支持部材26の中央部分には、測定光が通過できる貫通孔(図示せず)が設けられている。なお、印点ユニット31が回動した際に、中央の印点用ペン32は、その昇降レバー23のU字内と、貫通孔とを通過する。また、支持部材26の左右端には、印点ユニット31が回動した際に両端の印点用ペン32が通過できる貫通孔25が設けられている。
【0017】
印点ユニット31も、昇降アーム11の先端で保持されている。なお、本実施の形態では、印点ユニット31は、レンズ押さえユニット21を介して、間接的に昇降アーム11の先端で保持されている。また、印点ユニット31は、被検レンズ6に印点可能な印点用ペン32と、印点用ペン32が出没可能に装入されるペンホルダー33と、ペンホルダー33を支持する支持部39と、支持部39の一端に設けられ、印点ユニット31を回動させるための印点レバー34とを備える。本実施の形態では、印点ユニット31が3本の印点用ペン32を有する場合について説明するが、そうでなくてもよい。印点用ペン32は、通常、一列に均等に並んで配置されている。真ん中の印点用ペン32は、例えば、被検レンズ6の光学中心位置を示す印点を行うために用いられる。また、左右両側の2個の印点用ペン32は、例えば、円柱屈折力の軸方向を示す印点を行うためなどに用いられる。また、印点用ペン32は、図4で示されるように、ペンの長さ方向(軸方向)におけるペンの先端の向きにペン付勢バネ35によって付勢されている。すなわち、印点用ペン32は印点時における被検レンズ6の向きに付勢されている。なお、印点用ペン32の付勢は、ペン付勢バネ35以外の弾性部材、例えば、ゴム等によって行われてもよい。また、印点用ペン32が被検レンズ6に印点を行うための構成は問わない。例えば、印点用ペン32は、インクタンクと、インクタンクに連接されたフェルト製の細くて柔らかい印点針とを有してもよい。また、図5で示されるように、3本の印点用ペン32は、被検レンズ6の印点形成面の湾曲形状に大略沿うように配置されていてもよい。すなわち、3本の印点用ペン32のうち、中央のペンが、図5で示されるように、ギャップDだけ高い位置(Dだけ突出の少ない位置)に配置されていてもよい。ギャップDは被検レンズ6の曲率半径に応じて適宜、決められる値であるが、例えば、略3mmであってもよい。なお、このような印点ユニット31の構成については、前述の特許文献1で開示されている。また、印点ユニット31は、印点用ペン32がレンズ受け4に載置された被検レンズ6から退避した退避位置と、印点準備位置との間で回動軸36を中心に回動可能に設けられている。印点準備位置は、印点用ペン32が被検レンズ6に印点を行う印点位置から上方に離間した位置である。回動軸36は、支持部材26の装置本体側の端辺に設けられている。本実施の形態では、印点ユニット31は、レンズ押さえユニット21に対して回動可能に設けられている。なお、レンズ押さえユニット21が昇降アーム11に固定されているため、結果として、印点ユニット31は昇降アーム11に対して回動可能となる。退避位置とは、レンズ押圧ピン22の長さ方向(通常、鉛直方向であり、投光部2や受光部3の光軸方向である)と印点用ペン32の長さ方向とが一致しない(平行にならない)印点ユニット31の位置であり、図1〜図4で示される印点ユニット31の位置である。図4において、印点ユニット31は、ねじりコイルバネ37によって退避位置の方向に付勢されている。また、印点ユニット31が退避位置にある場合には、印点ユニット31に設けられたストッパ突部38の端部38aがレンズ押さえユニット21に当接することにより、印点ユニット31のそれ以上の回動が規制される。印点準備位置とは、レンズ押圧ピン22の長さ方向と印点用ペン32の長さ方向とが平行になる印点ユニット31の位置であり、被検レンズ6と印点用ペン32の先端との間に空隙が存在する位置である。すなわち、印点準備位置は、図6(b)で示される印点ユニット31の位置である。印点ユニット31が印点準備位置にある場合には、印点ユニット31の支持部39の下面と、レンズ押さえユニット21の支持部材26の上面とが接触することにより、印点ユニット31のそれ以上の回動が規制される。また、印点用ペン32の先端が被検レンズ6に接触する位置を印点位置と呼ぶ。すなわち、図6(b)で示される印点ユニット31の位置が印点準備位置であり、図6(c)で示される印点ユニット31の位置が印点位置である。また、レンズ押圧ピン22の長さ方向と印点用ペン32の長さ方向とが平行になる印点ユニット31の位置を印点方向位置と呼ぶこともある。印点方向位置は、印点準備位置と印点位置とを含む概念である。印点ユニット31は、印点準備位置と印点位置との間を昇降アーム11の昇降により移動する。また、印点ユニット31が、印点準備位置と印点位置との間で上下方向に移動可能となるように、レンズ押圧ピン22は、レンズ押さえユニット21に対して進退可能に設けられている。また、印点ユニット31が印点準備位置にある場合に、印点用ペン32の先端と、被検レンズ6との間に空隙が生じている。すなわち、その空隙が生じるように、4本のレンズ押圧ピン22が被検レンズ6の向きに付勢されているものとする。印点ユニット31が印点準備位置に回動するまでに印点用ペン32の先端が被検レンズ6に当たらないようにするためである。
【0018】
次に、本実施の形態によるレンズメータ1によって印点を付す動作について説明する。ユーザ(検者)が、レンズ押さえユニット21等を上昇させた状態で、被検レンズ6をレンズ受け4に載置する。そして、昇降レバー23を把持しながら、レンズ押さえユニット21等を被検レンズ6に向かって下降させる。なお、レンズ押さえユニット21等は、自重によって下降することになる。そして、図6(a)で示されるように、被検レンズ6がレンズ受け4とレンズ押圧ピン22とに挟まれるように保持された状態でレンズ押さえユニット21等の下降がストップする。このようにレンズ押さえユニット21とレンズ受け4とによって被検レンズ6を保持している状態では、レンズ押さえユニット21等の荷重による鉛直下向きの力と、被検レンズ6の表面に当接するレンズ押圧ピン22に対するピン付勢バネ24の付勢力とが釣り合っていることになる。したがって、この状態では、レンズ押圧ピン22は、図3等のように被検レンズ6を保持していない状態よりも少しだけ支持部材26の方に沈み込むことになる。この沈み込みの深さをGとする。また、この状態において、印点ユニット31は、ねじりコイルバネ37の付勢力によって、ストッパ突部38の端部38aがレンズ押さえユニット21に当接するまで回動された退避位置にある。
【0019】
その後、ユーザは、モニタ5の表示を見ながら被検レンズ6を移動させ、アライメント等を行う。そして、アライメントが終了すると、ユーザは、印点ユニット31の印点レバー34を図6(a)の矢印方向に押さえる。すると、印点ユニット31が回動軸36を中心に、ねじりコイルバネ37の付勢力に抗して回動する。そして、図6(b)で示されるように、印点ユニット31の下面側がレンズ押さえユニット21の上面側に接触するまで、すなわち、印点準備位置まで回動する。なお、印点ユニット31が印点準備位置に回動された場合に、図6(b)で示されるように、印点用ペン32の先端(印点針の先端)と、印点が行われる被検レンズ6との間に空隙が生じるように、レンズ押圧ピン22が被検レンズ6の向きに付勢されていることは前述の通りである。このようにすることで、印点ユニット31が印点準備位置に回動されるまでの途中において、印点用ペン32の先端が被検レンズ6に当たり、被検レンズ6の望まない位置にマーキングしてしまうことを防止することができる。ここで、印点ユニット31が印点準備位置に回動された場合とは、印点ユニット31の印点準備位置への回動のみが行われた場合であって、印点ユニット31の被検レンズ6に向かう下降がまだ明確には行われていない場合であってもよい。
【0020】
またその後、ユーザが印点レバー34を図6(c)で示される矢印の向きに押さえることによって、昇降アーム11を被検レンズ6の方に移動させると、レンズ押圧ピン22が付勢力に抗して沈み込み、3本の印点用ペン32の先端が被検レンズ6の表面に当接する。そして、被検レンズ6に3個の印点マークが付される。この時点における印点ユニット31の位置が印点位置である。したがって、印点ユニット31が印点準備位置に回動され、昇降アーム11が被検レンズ6に向かって下降された場合に、印点用ペン32の先端と、レンズ押圧ピン22の先端とが略同じ高さとなることができるように、レンズ押圧ピン22が被検レンズの向きに付勢されているものとする。図6(b)の印点準備位置から図6(c)の印点位置になるまで、昇降アーム11がHだけ下降しているため、レンズ押圧ピン22は、図6(b)の状態からさらに少なくともHだけ沈み込むことが可能なように構成されていることになる。すなわち、印点が行われる際には、レンズ押圧ピン22は、図6(a)の状態よりもさらに支持部材26の方に沈み込むことになる。したがって、レンズ押圧ピン22は、被検レンズ6を保持する際の沈み込みの深さGと、印点時の沈み込みの深さHとを足したG+Hに、ペンホルダー33に対する印点用ペン32の沈み込みの深さや全体の遊び等を考慮した長さ(ストローク)だけ上下方向に進退可能(移動可能)に構成されていることになる。なお、図6(c)のように印点マークを付す際には、レンズ押さえユニット21が被検レンズ6に向かって沈み込むことになり、被検レンズ6を固定する力がそれだけ強くなる。そのため、印点時に被検レンズ6がずれることを効果的に防止することができる。また、図6(b)の印点準備位置から図6(c)の印点位置まで、レンズ押圧ピン22の付勢力に抗しながら、手動で印点ユニット31を被検レンズ6に向かって移動させるため、印点用ペン32の先端が被検レンズ6の表面に当接する際の衝撃を小さくすることができ、印点時に被検レンズ6を傷つけないようにすることができる。
【0021】
そのようにして印点が付された後に、ユーザが印点レバー34に対する下方への力を解除すると、ピン付勢バネ24の付勢力により、昇降アーム11は図6(b)の位置に戻る。さらに、ユーザが印点レバー34を解放すると、ねじりコイルバネ37の付勢力により、印点ユニット31は図6(a)で示される退避位置に戻ることになる。
【0022】
なお、印点ユニット31を退避位置の向きに付勢するねじりコイルバネ37の付勢力は、レンズ押圧ピン22を被検レンズ6の向きに付勢するピン付勢バネ24の付勢力よりも弱いものとする。そうでなければ、印点ユニット31を回動させる際に、レンズ押さえユニット21が被検レンズ6の方に下降してしまうからである。
【0023】
以上のように、本実施の形態によるレンズメータ1によれば、単一の昇降アーム11によって、レンズ押さえユニット21と印点ユニット31との両方を支持できる。したがって、従来のレンズメータ101のように、レンズ押さえユニット121及び印点ユニット131に対して、昇降アーム111,112をそれぞれ備える必要がなくなり、構成をシンプルなものにすることができる。その結果、レンズメータ1の部品点数を削減することができ、コストを低減させることができる。
【0024】
また、図7で示される従来のレンズメータ101の場合には、印点ユニット131がレンズ押さえユニット121と別個に昇降するため、印点を行う際に、印点ユニット131の先端が被検レンズ6と対向する位置となるように回動させる動作と、印点ユニット131を降下させる動作との2段階の動作が必要であった。一方、本実施の形態では、印点ユニット31の下降は図6(c)のH程度であるため、印点を行う際の操作が印点ユニット31を回動させる操作で大略完結することになり、印点を行う操作が簡易なものとなる。そのため、印点を行う操作の操作性が向上する。
【0025】
なお、本実施の形態によるレンズメータ1の構成は一例であり、レンズ押さえユニット21と、印点ユニット31とが単一の昇降アーム11によって直接的にまたは間接的に保持されるのであれば、他の構成であってもよいことは言うまでもない。例えば、本実施の形態では、印点ユニット31がレンズ押さえユニット21に設けられている場合について説明したが、そうではなく、印点ユニット31が直接、昇降アーム11に設けられてもよい。すなわち、印点ユニット31が昇降アーム11に対して直接、回動可能に設けられていてもよい。
【0026】
また、本実施の形態では、印点準備位置と印点位置とが異なる場合について説明したが、そうでなくてもよい。印点準備位置と印点位置が同じであってもよい。この場合には、印点方向位置が印点位置となる。すなわち、印点ユニット31を退避位置から印点方向位置(印点位置)に回動させる操作のみで、印点の操作が終了することになる。この場合には、例えば、印点の行われる被検レンズ6がすべて同じ曲率を有するものであり、その被検レンズ6に対して、図6(c)中の長さHが「0」となるように、レンズ押圧ピン22の突出の程度が調整されていてもよい。また、この場合には、レンズ押圧ピン22は、支持部材26に対して進退可能ではなく、固定されたものであってもよい。
このように、レンズメータは、被検レンズが載置されるレンズ受けと、被検レンズをレンズ受けの方向に押圧可能なレンズ押圧ピンを有するレンズ押さえユニットと、被検レンズに印点可能な印点用ペンを有する印点ユニットと、レンズ押さえユニット及び印点ユニットを保持し、垂直方向に昇降可能に配設された昇降アームと、を備え、印点ユニットは、レンズ受けに載置された被検レンズから退避した退避位置と、印点用ペンが被検レンズに印点を行う方向となる印点方向位置との間で回動可能に設けられたものであってもよい。そして、レンズ押圧ピンは、印点ユニットが、印点方向位置であって、被検レンズと印点用ペンの先端との間に空隙が存在する位置である印点準備位置にある場合に、その空隙が生じるように、被検レンズの向きに付勢されており、かつ、印点ユニットが、印点準備位置と印点用ペンの先端が被検レンズに接触する印点位置との間で移動可能となるように進退可能に設けられていてもよい。あるいは、印点準備位置と印点位置が同じであって、印点方向位置が印点位置となってもよい。
【0027】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上より、本発明によるレンズメータによれば、簡易な構成にできるという効果が得られ、被検レンズに印点を行うレンズメータとして有用である。
【符号の説明】
【0029】
1 レンズメータ
4 レンズ受け
6 被検レンズ
11 昇降アーム
21 レンズ押さえユニット
22 レンズ押圧ピン
23 昇降レバー
24 ピン付勢バネ
26 支持部材
31 印点ユニット
32 印点用ペン
33 ペンホルダー
34 印点レバー
35 ペン付勢バネ
37 ねじりコイルバネ
39 支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検レンズが載置されるレンズ受けと、
前記被検レンズを前記レンズ受けの方向に押圧可能なレンズ押圧ピンを有するレンズ押さえユニットと、
前記被検レンズに印点可能な印点用ペンを有する印点ユニットと、
前記レンズ押さえユニット及び前記印点ユニットを保持し、垂直方向に昇降可能に配設された昇降アームと、を備え、
前記印点ユニットは、前記印点用ペンが、前記レンズ受けに載置された被検レンズから退避した退避位置と、当該被検レンズに印点を行う印点位置から上方に離間した印点準備位置との間で回動可能に設けられており、
前記印点ユニットは、前記印点準備位置と前記印点位置との間を、前記昇降アームの昇降により移動する、レンズメータ。
【請求項2】
前記レンズ押圧ピンは、前記印点ユニットが印点準備位置にある場合に、前記印点用ペンの先端と前記被検レンズとの間に空隙が生じるように、前記被検レンズの向きに付勢されている、請求項1記載のレンズメータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−168026(P2012−168026A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29539(P2011−29539)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(390000594)株式会社レクザム (64)
【Fターム(参考)】