説明

レンズモジュール、該レンズモジュールを用いた拡大観察装置、及び拡大観察方法

【課題】微分干渉観察と通常観察との両方を行うことができ、通常観察を行う場合にはフレアを抑制することができ、微分干渉観察を行う場合には微小欠陥を確実に検出することができるレンズモジュール、該レンズモジュールを用いた拡大観察装置、及び拡大観察方法を提供する。
【解決手段】光源3からの光を偏光する偏光子21、及び光透過部材を通過した反射光の一部を偏光する検光子9は、偏光軸方向が互いに略平行となるように配置してある。複屈折光学部材15は、偏光子の偏光軸方向に対して、互いに直交する2つの偏光軸方向がいずれも略45度となるように配置してある。偏光変換部材7は、高速軸又は低速軸を有し、いずれかの軸が偏光子の偏光軸方向と略45度となるように配置してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学系の倍率が低い場合であっても微分干渉観察を行うことが可能なレンズモジュール、該レンズモジュールを用いた拡大観察装置、及び拡大観察方法に関する。
【背景技術】
【0002】
反射型の同軸落射照明を用いて対象物を観察する場合(以下、通常観察)、光源からの光が対物レンズで一部反射し、対象物に関する情報を含まない不要光(フレア)が発生する。フレアを可能な限り抑制するために、照明光学系にポラライザ(偏光子)を、対物レンズの先端にデポラライザ(1/4波長板)を、観察光学系に偏光軸がポラライザの偏光軸と、いわゆるクロスニコルの位置関係になるようにアナライザ(検光子)を、それぞれ配置する対物レンズが開発されている(特許文献1参照)。特許文献1に開示してある対物レンズでは、フレアを効果的に抑制することができる。
【0003】
また、対象物を、いわゆる「微分干渉観察」する場合、受光器において検出される受光量は、デポラライザ(1/4波長板)は用いず、微分干渉用の複屈折光学部材(以下、微分干渉用DICプリズム)を光路上に配置する(特許文献2参照)。特許文献2に開示してあるズーム顕微鏡でデポラライザを用いない理由は、微分干渉観察では鏡面状の対象物を観察することが多く、S/N比が高くなることからフレアが目立ちにくいためである。また、対象物の微小欠陥を検出するために、比較的高倍率(例えば数十倍以上)の対物レンズを用いるので、レンズ設計の特性上、光源からの光が対物レンズで反射して受光器に入射する光量が減少する結果、フレアが目立ちにくくなるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−164652号公報
【特許文献2】特開2006−154230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、微分干渉観察時に対象物全体を広く見渡すことにより、微小欠陥の存在を一目で確認(スクリーニング)する場合、微分干渉観察時に低倍率の対物レンズを用いる必要が生じる。また、非鏡面状の対象物も観察することができるように通常観察も行うには、微分干渉観察用の顕微鏡に微分干渉用DICプリズム(及びポラライザ)を着脱可能とする必要が生じる。微分干渉用DICプリズムを装着している場合には微分干渉観察を行うことができ、微分干渉用DICプリズムが外されている場合には通常観察を行うことが可能となる。
【0006】
しかし、低倍率の対物レンズを用いる場合、通常観察を行う場合にフレアが顕著に生じる。これを解消するためには、上述したように対物レンズの先端にデポラライザを配置すれば良いが、これにより、微分干渉観察を行う場合に対象物の欠陥がない平坦な部分での明るさが最大となってしまい、微小な欠陥を視認することが困難になるという問題点があった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、微分干渉観察と通常観察との両方を行うことができ、微分干渉観察を行う場合には微小欠陥をより確実に検出することができるレンズモジュール、該レンズモジュールを用いた拡大観察装置、及び拡大観察方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明に係るレンズモジュールは、光源からの光を偏光する偏光子と、該偏光子を通過した光の一部を反射させ、連結することが可能なカメラの受光軸方向に沿って対象物へ誘導し、対象物からの反射光の一部を通過させる光透過部材と、該光透過部材で反射した光を、互いに直交する2つの偏光軸方向の光に分離し、着脱することが可能な複屈折光学部材と、該複屈折光学部材を通過した光を集光し、対象物に照射する対物レンズと、該対物レンズを通過した光の偏光状態を変換する偏光変換部材と、前記光透過部材を通過した前記対象物からの反射光の一部を偏光する検光子とを有し、前記偏光子及び前記検光子は、偏光軸方向が互いに略平行となるように配置してあり、前記複屈折光学部材は、前記偏光子の偏光軸方向に対して、前記2つの偏光軸方向がいずれも略45度となるように配置してあり、前記偏光変換部材は、高速軸又は低速軸を有し、いずれかの軸が前記偏光子の偏光軸方向と略45度となるように配置してあることを特徴とする。
【0009】
本発明では、微分干渉観察を行う場合、偏光子及び検光子を、偏光軸が互いに略平行となるように配置し、複屈折光学部材、例えばDICプリズムを、互いに直交する2つの偏光軸方向が、偏光子の偏光軸方向に対していずれも略45度となるように配置してあり、偏光変換部材を、高速軸又は低速軸が偏光子の偏光軸方向と略45度となるように配置する。このように光学系を構成することにより、対象物の平坦な部分で反射した光は検光子を通過する時点で互いに打ち消し合うので、微細な欠陥を認識する等の微分干渉観察本来の目的を達成しやすくなる。つまり、通常観察を行う場合と同様に低倍率の対物レンズ及び偏光変換部材をレンズモジュールに搭載しているにもかかわらず、微分干渉観察を行う場合に、欠陥のない平坦部分が暗くなり、欠陥のある凹凸部分が明るくなるような観察画像を取得できるので、微小欠陥をより確実に検出することができる。
【0010】
また、他の発明に係るレンズモジュールは、上記発明において、前記検光子は(レンズモジュールに)固着してあり、前記複屈折光学部材の、互いに直交する前記2つの偏光軸方向が、前記検光子の偏光軸方向に対して略45度となるように前記複屈折光学部材を挿入することが可能な第1の開口部と、前記偏光子の偏光軸方向が前記検光子の偏光軸方向と互いに略平行又は略垂直になるように前記偏光子を挿入することが可能な第2の開口部とを備えることを特徴とする。
【0011】
他の発明では、検光子を固着しておき、偏光子の偏光軸方向が検光子の偏光軸方向と互いに略平行又は略垂直になるように偏光子を挿入することが可能な第2の開口部を備えるので、微分干渉観察を行うか、通常観察を行うかに応じて偏光子の偏光軸方向を容易に変更することができる。また、複屈折光学部材の、互いに直交する2つの偏光軸方向が、検光子の偏光軸方向に対して略45度となるように複屈折光学部材を挿入することが可能な第1の開口部を備えるので、微分干渉観察を行うか、通常観察を行うかに応じて複屈折光学部材を容易に着脱することができる。特に、通常観察を行う場合に複屈折光学部材を第1の開口部から取り外し、第2の開口部に挿入される偏光子を、検光子と偏光軸が互いに略直交となるように配置することにより、対物レンズで反射するフレア光を大きく抑制することができる。このように、通常観察を行う場合にはフレアを効果的に抑制することができ、微分干渉観察を行う場合には微小欠陥をより確実に検出することができるので、ユーザビリティ又は汎用性の高いレンズモジュールを提供することができる。
【0012】
また、他の発明に係るレンズモジュールは、上記発明において、前記第2の開口部に挿入される前記偏光子は、偏光軸の角度を変更することが可能としてあることを特徴とする。
【0013】
他の発明では、第2の開口部に挿入される偏光子は、偏光軸の角度を変更することが可能としてあるので、偏光軸の微調整を行うことができ、通常観察を行う場合にフレアを最小限に抑制することができるとともに、微分干渉観察を行う場合にコントラストを調整することが可能となる。
【0014】
また、他の発明に係るレンズモジュールは、上記発明において、前記偏光変換部材は、前記対物レンズと対象物との間に配置してあることを特徴とする。
【0015】
他の発明では、対物レンズが複数枚のレンズから構成される場合に、偏光変換部材は、対物レンズを構成する各レンズよりも対象物側にあるので、偏光変換部材より対象物側において、光源からの光の反射がなくなり、フレアを効果的に抑制することができる。
【0016】
次に、上記目的を達成するために本発明に係る拡大観察装置は、上記発明のレンズモジュールと、該レンズモジュールを上下動することが可能に取りつけてある回動支柱と、該回動支柱を水平方向の回転軸を中心として回動することが可能に支持する回動機構と、該回動機構が上方に設けてある固定支柱と、該固定支柱が立設してある基台と、前記固定支柱又は前記基台に設けてあり、対象物を載置する載置部とを備えることを特徴とする。
【0017】
本発明では、レンズモジュールを、取りつけてある回動支柱の回動に応じて回転させることができるので、載置部に載置されている対象物を撮像する角度を所望の角度へ変更することができ、より見やすい角度から微小欠陥を検出することが可能となる。特に、通常観察を行う場合に回動支柱を左右に傾けた場合、表示部に表示された対象物も左右に傾く。この状態で連結されたカメラを90度回転させることにより、表示部に表示された対象物を前後に傾けることができる。
【0018】
次に、上記目的を達成するために本発明に係る拡大観察方法は、光源からの光を偏光する偏光子と、該偏光子を通過した光の一部を反射させ、連結することが可能なカメラの受光軸方向に沿って対象物へ誘導し、対象物からの反射光の一部を通過させる光透過部材と、該光透過部材で反射した光を、互いに直交する2つの偏光軸方向の光に分離し、着脱することが可能な複屈折光学部材と、該複屈折光学部材を通過した光を集光し、対象物に照射する対物レンズと、該対物レンズを通過した光の偏光状態を変換する偏光変換部材と、前記光透過部材を通過した前記対象物からの反射光の一部を偏光する検光子とを有するレンズモジュールを用いて拡大観察する拡大観察方法であって、前記偏光子及び前記検光子を、偏光軸方向が互いに略平行となるか略垂直となるかを切り替えることが可能であり、前記複屈折光学部材を、前記偏光子の偏光軸方向に対して、前記2つの偏光軸方向がいずれも略45度となるように配置し、前記偏光子及び前記検光子を、偏光軸方向が互いに略平行となるように配置した場合、高速軸又は低速軸を有する前記偏光変換部材を、いずれかの軸が前記偏光子の偏光軸方向と略45度となるように配置することを特徴とする。
【0019】
本発明では、微分干渉観察を行う場合、偏光子及び検光子を、偏光軸が互いに略平行となるように配置し、複屈折光学部材、例えばDICプリズムを、互いに直交する2つの偏光軸方向が、偏光子の偏光軸方向に対していずれも略45度となるように配置してあり、偏光変換部材を、高速軸又は低速軸が偏光子の偏光軸方向と略45度となるように配置する。このように光学系を構成することにより、対象物の平坦な部分で反射した光は検光子を通過する時点で互いに打ち消し合うので、微細な欠陥を認識する等の微分干渉観察本来の目的を達成しやすくなる。つまり、通常観察を行う場合と同様に低倍率の対物レンズ及び偏光変換部材をレンズモジュールに搭載しているにもかかわらず、微分干渉観察を行う場合に、欠陥のない平坦部分が暗くなり、欠陥のある凹凸部分が明るくなるような観察画像を取得できるので、微小欠陥をより確実に検出することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、微分干渉観察を行う場合、偏光子及び検光子を、偏光軸が互いに略平行となるように配置し、複屈折光学部材、例えばDICプリズムを、互いに直交する2つの偏光軸方向が、偏光子の偏光軸方向に対していずれも略45度となるように配置してあり、偏光変換部材を、高速軸又は低速軸が偏光子の偏光軸方向と略45度となるように配置する。このように光学系を構成することにより、対象物の平坦な部分で反射した光は検光子を通過する時点で互いに打ち消し合うので、微細な欠陥を認識する等の微分干渉観察本来の目的を達成しやすくなる。つまり、通常観察を行う場合と同様に低倍率の対物レンズ及び偏光変換部材をレンズモジュールに搭載しているにもかかわらず、微分干渉観察を行う場合に、欠陥のない平坦部分が暗くなり、欠陥のある凹凸部分が明るくなるような観察画像を取得できるので、微小欠陥をより確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に係るレンズモジュールを用いた拡大観察装置の構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るコントローラの機能ブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るレンズモジュールの構成を示す正面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るレンズモジュールのポラライザ近傍を示す拡大正面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るレンズモジュールの光学系の構成を示す模式図である。
【図6】微分干渉観察を行う場合の本発明の実施の形態に係るレンズモジュールにおける偏光状態を示す模式図である。
【図7】本発明の実施の形態に係るレンズモジュールにおける偏光状態を三次元的に示す模式図である。
【図8】本発明の実施の形態に係るレンズモジュールにおける偏光軸の傾きを光源の光軸方向から見た状態を示す模式図である。
【図9】フレアを抑制して通常観察を行う場合のレンズモジュールの光学系の構成を示す模式図である。
【図10】対象物の表面を、条件を変えて撮像した画像を示す比較図である。
【図11】段差ゲージを有する対象物の表面を、条件を変えて撮像した画像を示す比較図である。
【図12】λ/4波長板の高速軸を傾ける角度に応じて通常観察及び微分干渉観察で撮像した画像の違いを示す例示図である。
【図13】本発明の実施の形態に係るレンズモジュールにおける、ポラライザの偏光軸に対するλ/4波長板の高速軸の傾斜角度に応じた輝度変化を説明するグラフである。
【図14】本発明の実施の形態に係るレンズモジュールを用いた拡大観察装置のレンズスタンドの構成を示す斜視図である。
【図15】レンズスタンドの回動支柱が所望の角度に傾斜させる様子を示す模式図である。
【図16】レンズスタンドの回動支柱を傾斜させて撮像した場合の例示図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態に係るレンズモジュールについて、図面を参照しながら説明する。なお、参照する図面を通じて、同一又は同様の構成又は機能を有する要素については、同一又は同様の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態に係るレンズモジュール1を用いた拡大観察装置の構成を示す模式図である。図1に示すように レンズモジュール1は、レンズスタンド62に固着されており、対象物(図示せず)が載置されるステージ(載置部)61に対して直立するように設けてある。カメラ5はカメラケーブル51を介して、同軸落射照明ユニット2はライトケーブル60を介して、それぞれコントローラ63に接続されている。
【0024】
コントローラ63は、マイコン、CPU等で構成された制御部を有し、接続されている各ハードウェアの動作を制御する。必要なデータは、表示部(モニタ部)64で視認しながら、ユーザがキーボード65、マウス66等を介して入力する。
【0025】
図2は、本発明の実施の形態に係るコントローラ63の機能ブロック図である。入力受付部71は、キーボード65、マウス66を介して必要なデータの入力を受け付ける。また、カメラ5で撮像された画像データは、カメラ信号処理部72で演算処理され、必要な画像処理を画像処理部73で施した後、表示画像作成部74にて表示部64へ表示するための表示画像を作成する。
【0026】
また、照明制御部75は、入力を受け付けたデータに基づいて光源3の照度を調整する。機構制御部76は、入力を受け付けたデータに基づいてステージ61の動作を制御するステージモータ等への指示信号を送出する。
【0027】
図3は、本発明の実施の形態に係るレンズモジュール1の構成を示す正面図である。レンズモジュール1は、アナライザ9をレンズモジュール1内に固着してある。カメラ5をレンズ光軸を軸として回転させる場合であっても、アナライザ9の偏光軸は回転することがなく、アナライザ9の偏光軸とポラライザ21の偏光軸との相対関係を一定の関係に維持するためである。
【0028】
本発明の実施の形態に係るレンズモジュール1は、ポラライザ21を、同軸落射照明ユニット2に着脱することができるように、スロット(第2の開口部)を備えている。図4は、本発明の実施の形態に係るレンズモジュール1のポラライザ21近傍を示す拡大正面図である。図4に示すように、ポラライザ21を着脱することが可能なスロット(第2の開口部)121を設けることにより、微分干渉観察と通常観察とを切り替える場合に、偏光軸方向の異なるポラライザ21を紙面に垂直な方向に着脱することができる。適切な方向の偏光軸を有するポラライザ21に交換することにより、微分干渉観察と通常観察とを容易に切り替えることができる。換言すれば、ポラライザ21は、レンズモジュール1の長手方向と略直交する方向から第2の開口部121に向けて挿入可能に構成されており、アナライザ9とλ/4波長板7とがレンズモジュール1に固定された状態で、レンズモジュール1の長手方向と略直交する方向から第2の開口部121に向けてポラライザ21を挿入して取り付けるだけで、後述するパラレルニコルの状態(図10参照)を実現できるようになっている。したがって、ユーザは、レンズモジュール1にポラライザ21を第2の開口部121に取り付ける、という簡易な操作を行うことによって、微分干渉観察を行う場合に微小欠陥をより確実に検出することが可能なレンズモジュール1を構成することができる。
【0029】
なお、ポラライザ21は、偏光フィルタと、偏光フィルタを格納する直方体状のケースと、偏光フィルタの偏光軸の回転角度を調整する回転調整機構とを有している。また、本実施の形態に係るレンズモジュール1において、回転調整機構は、ユーザが操作するダイヤル部211を有しており、ダイヤル部211の一面には、偏光フィルタの偏光軸の回転角度を示す目盛りが設けられている。つまり、ユーザは、目盛りを視認しながらダイヤル部211を操作することにより、ポラライザ21の偏光フィルタの偏光軸の回転角度を最適な角度に調整することができる。
【0030】
また、微分干渉用DICプリズム15も着脱することが可能であることが好ましい。微分干渉観察と通常観察とを容易に切り替えることができるからである。したがって、レンズモジュール1は、微分干渉用DICプリズム15を着脱することが可能な開口部(第1の開口部)も備えている。
【0031】
図5は、本発明の実施の形態に係るレンズモジュール1の光学系の構成を示す模式図である。図5に示すように本発明の実施の形態に係るレンズモジュール1は、同軸落射照明ユニット2にポラライザ21を偏光子として配置し、光源3から発せられた照明光は、直線偏光となる。図5ではポラライザ21近傍の矢印方向の直線偏光となっており、アナライザ9の偏光軸方向と平行になっている。
【0032】
直線偏光となった照明光は、ハーフミラー(光透過部材)8により微分干渉用DICプリズム(複屈折光学部材)15へと誘導される。λ/4波長板7は、高速軸がポラライザ21の偏光軸方向と略45度となるように対物レンズ4と対象物6との間に配置してある。微分干渉用DICプリズム15は、ポラライザ21の偏光軸方向に対して略45度の角度をなす直交する2つの直線偏光を出射するように配置してある。これにより、微分干渉用DICプリズム15を通過してλ/4波長板(偏光変換部材)7に到達する2つの直線偏光は、λ/4波長板7の高速軸に対して略45度ではなく、略平行又は略垂直な状態となる。
【0033】
λ/4波長板7は、これらの直線偏光を直線偏光のまま、偏光軸等もそのままで通過させる。しかし、一方に対して他方の位相はλ/4だけずれる。対象物6の表面で反射して再度λ/4波長板7を通過した場合、直線偏光の状態、偏光軸ともに維持されるが、さらに両者間の位相がλ/4だけずれ、往復でλ/2の位相差が発生する。位相差以外は変化のない2つの直交する直線偏光は、微分干渉用DICプリズム15で再び1つの光に合成され、アナライザ(検光子)9を通過する。なお、本実施の形態では、λ/4波長板7はレンズモジュール1に固定しているが、ユーザが取り外し可能となるように構成しても良い。取り外し可能に構成する場合、図3において、λ/4波長板ユニット7aは、λ/4波長板7が固定され、対物レンズ4を覆うようにしてレンズモジュール1の先端に取り付けられる。また、λ/4波長板ユニット7aを反時計回りに回転させると、λ/4波長板7も回転し、レンズモジュール1から取り外される。本実施の形態では、λ/4波長板ユニット7aを時計回りに回転させ、λ/4波長板ユニット7aが締まりきった状態において、λ/4波長板7の高速軸又は低速軸とポラライザ21の偏光軸とが略45度となる。つまり、製造メーカの出荷担当者又はユーザは、λ/4波長板ユニット7aを時計回りにできる限り回転させ、λ/4波長板ユニット7aをレンズモジュール1に固定することによって、λ/4波長板7の高速軸又は低速軸とポラライザ21の偏光軸とが略45度となる状態を、容易につくり出すことができる。
【0034】
このとき、位相差がλ/2であるので、ポラライザ21の偏光軸と偏光軸が略平行であるアナライザ9を通過する時点で、両直線偏光が互いに打ち消し合う。つまり、ポラライザ21とアナライザ9とをクロスニコルの位置関係ではなく、互いに偏光軸が略平行となるパラレルニコルの位置関係とすることにより、微分干渉観察を行うことが可能となる。
【0035】
図6は、微分干渉観察を行う場合の本発明の実施の形態に係るレンズモジュール1における偏光状態を示す模式図である。図6のA、B、E、Fは、それぞれ図5の位置A、B、E、Fにおける偏光状態を示している。
【0036】
位置Aでは、ポラライザ21を通過した状態で直線偏光となっている。直線偏光の向きは、アナライザ9の偏光軸と平行となっている。そして、位置Bでは、微分干渉用DICプリズム15により、入射した直線偏光に対して略45度偏光軸が回転した、直交する2つの直線偏光に分離されている。分離された2つの直線偏光は、光軸に対してわずかなずれを持って出射され、その交点は対物レンズ4の、対象物6と対向している側とは反対側の焦点位置に一致する。
【0037】
位置Eでは、微分干渉用DICプリズム15において再度1つの光線に合成されているが、偏光軸は互いに直交したままである。そして、位置Fでは、アナライザ9を通過することにより、2つの直線偏光が全く同じ光路長であるときには2つの光は山谷がちょうど逆になった同一方向の偏光となるため、互いに打ち消しあう。
【0038】
光の山谷の関係を明確にするために、偏光状態を三次元的に図示して説明する。図7は、本発明の実施の形態に係るレンズモジュール1における偏光状態を三次元的に示す模式図であり、図8は、本発明の実施の形態に係るレンズモジュール1における偏光軸の傾きを光源3の光軸方向から見た状態を示す模式図である。なお、図7及び図8では、偏光状態を明確にするために、2つの光に分離することにより生じる光軸ずれについてはあえて言及していない。図7の三次元的グラフの奥行き方向は時間軸tを示しており、X軸方向及びY軸方向は、光の振幅方向(進行方向と直交する方向)を示している。
【0039】
図7(a)及び図8(a)は、光源3から発せられた照明光がポラライザ21を通過した直後の偏光状態を示している。図7(a)及び図8(a)からわかるように、ポラライザ21を通過した場合、ポラライザ21の偏光軸と同一方向の成分の光のみが通過するので、進行方向から見て45度傾斜して振動する光となる。
【0040】
図7(b)及び図8(b)は、微分干渉用DICプリズム15を通過した直後の偏光状態を示している。図7(b)及び図8(b)からわかるように、微分干渉用DICプリズム15を通過した場合、微分干渉用DICプリズム15の偏光軸(結晶軸)方向の成分の光に分離される。具体的には、進行方向から見た場合、X軸方向に振動する光とY軸方向に振動する光とに分離される。
【0041】
例えば光の波が山である時点、すなわち振幅が最大である位置を示す時刻t1では、X軸方向に振動する光の波は最小(X軸の負の方向に最大の山)となっており、Y軸方向に振動する光の波は最大(Y軸の正の方向に最大の山)となっている。したがって、図8(b)に示すように、時刻t1では、X軸方向に振動する光の波はX軸の負の方向で山となり、Y軸方向に振動する光の波はY軸の正の方向で山となる。
【0042】
図7(c)及び図8(c)は、λ/4波長板7を一度通過して再度通過した後の偏光状態を示している。図7(c)及び図8(c)からわかるように、λ/4波長板7を2度通過した場合、X軸方向に振動する光の波は、位相が90度遅れ、Y軸方向に振動する光の波は、位相が90度進む。なお、分離されている光の方向は、X軸方向(λ/4波長板7の低速軸方向)及びY軸方向(λ/4波長板7の高速軸方向)のままである。
【0043】
例えば光の波が山である時点、すなわち振幅が最大である位置を示す時刻t2では、X軸方向に振動する光の波は最大(X軸の正の方向に最大の山)となっており、Y軸方向に振動する光の波は最大(Y軸の正の方向に最大の山)となっている。したがって、図8(c)に示すように、時刻t2では、X軸方向に振動する光の波はX軸の正の方向で山となり、Y軸方向に振動する光の波はY軸の正の方向で山となる。
【0044】
図7(d)及び図8(d)は、ポラライザ21とアナライザ9とをクロスニコルの位置関係に配置した場合に、アナライザ9を通過した後の偏光状態を示している。図7(d)及び図8(d)からわかるように、2つの光が合成されて強め合い、アナライザ9の偏光軸方向の偏光となる。
【0045】
例えば光の波が山である時点、すなわち振幅が最大である位置を示す時刻t2では、X軸方向からもY軸方向からも45度傾いた方向に振動する光として合成され、対象物6が平坦である場合、合成される2つの光の位相差が0(ゼロ)となるので、光の波の山同士、谷同士が重なり合うことで強め合い、カメラ5により明るい画像として撮像される。
【0046】
一方、図7(e)及び図8(e)は、ポラライザ21とアナライザ9とをパラレルニコルの位置関係に配置した場合に、アナライザ9を通過した後の偏光状態を示している。図7(e)及び図8(e)からわかるように、2つの光が合成されて弱め合い、アナライザ9の偏光軸方向の微弱な偏光となる。
【0047】
例えば光の波が山である時点、すなわち振幅が最大である位置を示す時刻t2では、X軸方向からもY軸方向からも45度傾いた方向に振動する光として合成され、対象物6が平坦である場合、合成される2つの光の位相差が180度となるので、光の波の山と谷とで互いに打ち消し合う。したがって、カメラ5に到達する光強度はほとんど0(ゼロ)となり、暗い画像として撮像される。
【0048】
通常観察をする場合には、本来微分干渉用DICプリズム15を必要としない。図9は、フレアを抑制して通常観察を行う場合のレンズモジュールの光学系の構成を示す模式図である。図9に示すように、同軸落射照明ユニット2にポラライザ21を偏光子として配置してあり、光源3から発せられた照明光は、直線偏光となる(S偏光とする)。図9では紙面に垂直な方向の直線偏光となっている。
【0049】
直線偏光となった照明光は、ハーフミラー(光透過部材)8により対物レンズ4まで誘導される。S偏光の一部は、対物レンズ4で反射されて、そのまま受光素子を有するカメラ5の方向へ進む。すなわち、この光がフレアを発生させる元となる不要光10である。残りは対物レンズ4を通過して対象物6で反射し、反射光11が再び対物レンズ4を通過して受光素子を有するカメラ5の方向へ進む。
【0050】
対物レンズ4と対象物6との間に、S偏光の向きに対してλ/4波長板(偏光変換部材)7を、高速軸が偏光子の偏光軸方向と略45度の角度をなすように配置した場合、λ/4波長板7を通過したS偏光は円偏光となる。円偏光が対象物6で反射する場合、対象物6の表面が鏡面状又はそれに準ずる形状である場合には偏光状態が維持されるが、円偏光の進行方向に対する回転の向きは逆転する。
【0051】
円偏光が再び対物レンズ4と対象物6との間に配置されたλ/4波長板7を通過する場合、入射時とは偏光軸方向が直交する直線偏光となる(P偏光とする)。図9では、紙面に平行な方向、すなわち矢印方向の直線偏光となる。対物レンズ4で反射されて受光素子を有するカメラ5の方向へ進む不要光10はS偏光であり、対象物6からの反射光11はP偏光であるので、両者は容易に区別することができる。
【0052】
同軸落射照明ユニット2のポラライザ21と偏光軸が直交するクロスニコルの位置関係となるよう、対物レンズ4とカメラ5との間にアナライザ9を検光子として配置した場合、アナライザ9はP偏光のみを通過させる。アナライザ9を配置することにより、対物レンズ4で反射した不要光(S偏光)10はほぼ全て遮断され、対象物6からの反射光(P偏光)11はほぼ全て通過する。このようにすることで、同軸落射照明に起因するフレアによる影響を抑制することができる。
【0053】
また、対象物6の表面が鏡面状でない場合、照明光の偏光状態は維持されず、ランダム偏光(偏光していないのと同様)になる。ランダム偏光がλ/4波長板7を再び通過した後もやはりランダム偏光であり、対象物6からのランダム偏光がアナライザ9に到達した場合、その半分は遮断されるものの、残り半分は通過する。対物レンズ4で反射した不要光(S偏光)10は、アナライザ9で少なくとも99%以上が遮断されるので、対象物6からの反射光11がアナライザ9で半減した場合であってもS/N比を十分に高く維持することができる。よって、対象物6の表面が鏡面状でない場合であってもフレアによる影響を抑制することができる。
【0054】
図10は、対象物6の表面を、条件を変えて撮像した画像を示す比較図である。図10(a)は、ポラライザ21の偏光軸とアナライザ9の偏光軸とがクロスニコルの位置関係となるようポラライザ21の偏光軸を配置し、S偏光の向き、すなわちポラライザ21の偏光軸方向に対してλ/4波長板7の高速軸が45度の角度をなすように配置した場合に撮像した画像である。対象物6の表面の細かい部分まで撮像することができている。
【0055】
これに対して、図10(b)は、ポラライザ21の偏光軸とアナライザ9の偏光軸とがクロスニコルの位置関係となるようポラライザ21の偏光軸を配置し、S偏光の向き、すなわちポラライザ21の偏光軸に対してλ/4波長板7の高速軸が90度の角度をなすように配置した場合に撮像した画像である。フレアも対象物6からの反射光11も遮断されるので、何も撮像されていない。
【0056】
また、図10(c)は、ポラライザ21の偏光軸とアナライザ9の偏光軸とがパラレルニコルの位置関係となるようポラライザ21の偏光軸を配置し、S偏光の向き、すなわちポラライザ21の偏光軸に対してλ/4波長板7の高速軸が45度の角度をなすように配置した場合に撮像した画像である。対象物6からの反射光11のみが遮断され、フレアのみが撮像されている。
【0057】
さらに、図10(d)は、ポラライザ21の偏光軸とアナライザ9の偏光軸とがパラレルニコルの位置関係となるようポラライザ21の偏光軸を配置し、S偏光の向き、すなわちポラライザ21の偏光軸に対してλ/4波長板7の高速軸が90度の角度をなすように配置した場合に撮像した画像である。対象物6からの反射光11にフレアが重畳することにより対象物6の表面を明確に撮像することができていない。
【0058】
したがって、ポラライザ21の偏光軸とアナライザ9の偏光軸とがクロスニコルの位置関係となるようポラライザ21の偏光軸を配置し、S偏光の向き、すなわちポラライザ21の偏光軸に対してλ/4波長板7の高速軸が45度の角度をなすように配置して撮像することが必要となる。
【0059】
これに対して、微分干渉観察を行うために微分干渉用DICプリズム15を配置した場合、ポラライザ21の偏光軸とアナライザ9の偏光軸とがクロスニコルの位置関係となるようポラライザ21の偏光軸を配置し、S偏光の向き、すなわちポラライザ21の偏光軸に対してλ/4波長板7の高速軸が45度の角度をなすように配置して撮像すると、図8(d)にも示したように、対象物6が平坦である場合、合成される2つの光の位相差が0(ゼロ)となるので、光の波の山同士、谷同士が重なり合って強め合い、カメラ5では明るい画像として撮像される。背景が明るく、微細な凹凸部分が暗く撮像されるが、撮像された画像の上ではコントラストはあまり高くならない。したがって、微分干渉用として用いることが困難となる。
【0060】
そこで、本実施の形態のように、ポラライザ21の偏光軸とアナライザ9の偏光軸とがパラレルニコルの位置関係となるようポラライザ21の偏光軸を配置することにより、図8(e)に示したように、対象物6が平坦である場合、合成される2つの光の位相差が180度となるので、光の波の山と谷とで互いに打ち消し合う。背景が暗く、微細な凹凸部分が明るく撮像されるので、撮像された画像の上でもコントラストの高い画像が取得されやすい。したがって、わずかな段差による位相のずれを見逃すことなく検出することができ、微分干渉用として用いることが可能となる。
【0061】
図11は、段差ゲージ(所定の模様の段差形状を表面に有する部材)を有する対象物6の表面を、条件を変えて撮像した画像を示す比較図である。図11(a)は、ポラライザ21の偏光軸とアナライザ9の偏光軸とがクロスニコルの位置関係となるようポラライザ21の偏光軸を配置し、S偏光の向き、すなわちポラライザ21の偏光軸に対してλ/4波長板7の高速軸が45度の角度をなすように配置した場合に撮像した画像である。背景(平坦部)は、光の干渉により強め合うので明るい。段差のエッジ部分では位相がずれており、周囲より暗く撮像されているが、背景の明るさとはコントラストが低く、段差のエッジ部分とそれ以外の部分との区別がつきにくい画像となる。
【0062】
これに対して、図11(b)は、ポラライザ21の偏光軸とアナライザ9の偏光軸とがクロスニコルの位置関係となるようポラライザ21の偏光軸を配置し、S偏光の向き、すなわちポラライザ21の偏光軸に対してλ/4波長板7の高速軸が90度の角度をなすように配置した場合に撮像した画像である。微分干渉用DICプリズム15による光の合成がうまく行かないため、光の干渉が生じることがなく、二重画像となって段差部分もはっきりしない。
【0063】
また、図11(c)は、ポラライザ21の偏光軸とアナライザ9の偏光軸とがパラレルニコルの位置関係となるようポラライザ21の偏光軸を配置し、S偏光の向き、すなわちポラライザ21の偏光軸に対してλ/4波長板7の高速軸が45度の角度をなすように配置した場合に撮像した画像である。光の干渉が生じ、背景(平坦部)は干渉により弱め合っていて暗い。段差のエッジ部分では位相がずれ、弱め合う条件が弱まるので明るく見えている。暗い背景中の明るい微細な情報は、カメラ(や眼)で捉える画像としてコントラストが高く認識しやすい。よって、段差のエッジ部分とそれ以外の部分とが明確に区別できる画像となる。
【0064】
さらに、図11(d)は、ポラライザ21の偏光軸とアナライザ9の偏光軸とがパラレルニコルの位置関係となるようポラライザ21の偏光軸を配置し、S偏光の向き、すなわちポラライザ21の偏光軸に対してλ/4波長板7の高速軸が90度の角度をなすように配置した場合に撮像した画像である。図11(b)と同様、微分干渉用DICプリズム15による光の合成がうまく行かないため、光の干渉が生じることがなく、二重画像となって段差部分もはっきりしない。
【0065】
したがって、ポラライザ21の偏光軸とアナライザ9の偏光軸とがパラレルニコルの位置関係となるようポラライザ21の偏光軸を配置し、S偏光の向き、すなわちポラライザ21の偏光軸に対してλ/4波長板7の高速軸が45度の角度をなすように配置して撮像することにより、わずかな段差であっても、確実に検出することが可能となる。
【0066】
なお、λ/4波長板7の高速軸は、ポラライザ21の偏光軸方向に対して略45度傾いているが、傾ける角度は45度近辺であることが好ましい。角度が変わって光の干渉度合が変動した場合、微分干渉観察では結果に大きな違いが生じるからである。
【0067】
図12は、λ/4波長板7の高速軸を傾ける角度に応じて通常観察及び微分干渉観察で撮像した画像の違いを示す例示図である。図12(a)は、ポラライザ21の偏光軸とアナライザ9の偏光軸とがクロスニコルの位置関係となるようポラライザ21の偏光軸を配置し、S偏光の向き、すなわちポラライザ21の偏光軸に対してλ/4波長板7の高速軸が45度の角度をなすように配置した場合に、対象物6の表面を撮像した画像である。フレアが適正に遮断されており、対象物6の表面の細かい部分まで撮像することができている。
【0068】
図12(b)は、ポラライザ21の偏光軸とアナライザ9の偏光軸とがクロスニコルの位置関係となるようポラライザ21の偏光軸を配置し、ポラライザ21の偏光軸に対してλ/4波長板7の高速軸が略55度の角度をなすように配置した場合に、対象物6の表面を通常観察で撮像した画像である。λ/4波長板7の高速軸を45度より約10度大きく傾けただけでは、45度傾けた場合と比べて画像に大きな差異を認めることはできない。
【0069】
したがって、通常観察を行う場合においては、ポラライザ21の偏光軸に対するλ/4波長板7の高速軸の角度が45度近傍から多少ずれても、大きな影響を及ぼさないことがわかる。
【0070】
図12(c)は、ポラライザ21の偏光軸とアナライザ9の偏光軸とがパラレルニコルの位置関係となるようポラライザ21の偏光軸を配置し、ポラライザ21の偏光軸に対してλ/4波長板7の高速軸が45度の角度をなすように配置した場合に、段差ゲージを有する対象物6の表面を微分干渉観察で撮像した画像である。図11(c)と同様に、光の干渉が生じ、段差のエッジ部分で位相のずれによる干渉度合が変動し、段差のエッジ部分とそれ以外の部分とが明確に区別できる画像となる。
【0071】
一方、図12(d)は、ポラライザ21の偏光軸とアナライザ9の偏光軸とがパラレルニコルの位置関係となるようポラライザ21の偏光軸を配置し、ポラライザ21の偏光軸に対してλ/4波長板7の高速軸が略55度の角度をなすように配置した場合に、段差ゲージを有する対象物6の表面を撮像した画像である。図11(c)とは異なり、λ/4波長板7のわずかな角度ずれによって、光の干渉度合が大きく変動し、段差のエッジ部分とそれ以外の部分との区別は、コントラストが低下して視認しにくくなっている。
【0072】
したがって、微分干渉観察を行う場合においては、ポラライザ21の偏光軸に対するλ/4波長板7の高速軸の角度のずれが大きく影響することがわかる。
【0073】
図13は、本発明の実施の形態に係るレンズモジュール1における、ポラライザ21の偏光軸に対するλ/4波長板7の高速軸の傾斜角度に応じた輝度変化を説明するグラフである。図13(a)は、ポラライザ21の偏光軸とアナライザ9の偏光軸とがクロスニコルの位置関係となるようポラライザ21の偏光軸を配置した場合を、図13(b)は、ポラライザ21の偏光軸とアナライザ9の偏光軸とがパラレルニコルの位置関係となるようポラライザ21の偏光軸を配置した場合を、それぞれ示している。
【0074】
ポラライザ21の偏光軸とアナライザ9の偏光軸とがクロスニコルの位置関係となるようポラライザ21の偏光軸を配置した場合、ポラライザ21の偏光軸に対してλ/4波長板7の高速軸が略45度の角度をなすように配置したとき、対象物6からの反射光の輝度132が最大値X1となり、フレア光の輝度131が最小値X3となる。ポラライザ21の偏光軸に対してλ/4波長板7の高速軸を略55度の角度をなすように変更したとき、対象物6からの反射光の輝度132がX2へと減少し、フレア光の輝度131がX4へと増加するが、対象物6からの反射光の輝度132の減少分も、フレア光の輝度131の増加分も小さいことから、カメラ5で撮像される画像に大きな変化が生じない(図12(a)、(b)参照)。したがって、撮像された画像だけから、λ/4波長板7を最適な角度に設定することが困難である。
【0075】
それに対して、ポラライザ21の偏光軸とアナライザ9の偏光軸とがパラレルニコルの位置関係となるようポラライザ21の偏光軸を配置した場合、ポラライザ21の偏光軸に対してλ/4波長板7の高速軸が略45度の角度をなすように配置したとき、カメラ5で撮像される、対象物6の平坦な部分の微分干渉画像の輝度133は最小値Y1となる。ポラライザ21の偏光軸に対してλ/4波長板7の高速軸を略55度の角度をなすように変更したとき、干渉画像の輝度133は一気に増加してY2となり、撮像された画像は急激に明るくなる(図12(c)、(d)参照)。したがって、例えばレンズモジュール1の製造時又はメンテナンス時に、撮像された画像を見ながら、λ/4波長板7を最適な角度に設定することが容易となる。
【0076】
図14は、本発明の実施の形態に係るレンズモジュール1を用いた拡大観察装置のレンズスタンド62の構成を示す斜視図である。なお、図14では、カメラ5が既に連結してあるレンズモジュール1を例示する。また、図14において、レンズモジュール1の同軸落射照明ユニット2は、図示を省略しており、レンズモジュール1の外観は、図3及び図4と異なり概念的に示している。レンズスタンド62は、レンズモジュール1を上下動することが可能に取りつけてある回動支柱81と、回動支柱81を水平方向の回転軸を中心として回動することが可能に支持する回動機構82と、回動機構82が上方に設けてある固定支柱83と、固定支柱83が立設してある基台84と、固定支柱83又は基台84に設けてあり、対象物6を載置するステージ61とを備える。
【0077】
なお、ステージ61は、例えばX−Y−θ(回転)ステージであり、例えば固定支柱83に止ネジ等により固定されている。回動機構82は、水平方向の回転軸を中心として回動支柱81を回動可能とする。これにより、ステージ61に載置された対象物6を撮像する角度を変えることができる。
【0078】
以下、レンズスタンド62の構成に関し、具体的に説明する。レンズスタンド62の基台84上の一端には、剛性を有する固定支柱83及び固定支柱83の前面に嵌め込むことが可能に設けてある支持台91が取り付けられている。固定支柱83は、レンズモジュール1を支持し、支持台91は対象物6を載置するステージ61を支持する。
【0079】
固定支柱83は、上部に回動機構82を備えている。回動機構82の孔部には、回動軸が係合されている。これにより、回動支柱81は、水平軸の周りに回動(傾斜)することが可能になっている。回動支柱81には、Z軸方向に摺動することが可能なスライダ92が取り付けられている。スライダ92には、カメラ取り付け部93が固定されている。カメラ取り付け部93には、レンズモジュール1がZ軸方向に沿って取り付けられている。
【0080】
一方、ユーザが調整つまみ94を操作することにより、ステージ61をZ軸方向の所定の位置に設定する。すなわち、X軸方向から見た場合に、ステージ61の上面の高さが、回動支柱81の回動軸の高さに一致するよう設定する。
【0081】
レンズスタンド62の回動支柱81の傾斜方法について説明する。図14は、レンズスタンド62の回動支柱81が傾斜することなくZ軸に沿って固定されている状態を示している。それに対して、図15は、レンズスタンド62の回動支柱81が所望の角度に傾斜させる様子を示す模式図である。図14に示すような構成を有するスタンド装置を用いることにより、高さの異なる対象物6を観察する場合においても、スライダ92の鉛直方向の高さ、ステージ61の鉛直方向の高さを調整することによって、レンズモジュール1に連結されているカメラ5の焦点位置と対象物6の観察ポイントとを一致させることができる。
【0082】
図16は、レンズスタンド62の回動支柱81を傾斜させて撮像した場合の例示図である。図16(a)はカメラ5にて撮像する上下方向が、図15の奥行き方向である場合に対象物6を撮像した画像の例示図である。左から順に、回動支柱81を傾けることによりレンズモジュール1を左方向へ傾斜した場合、直立している場合、右方向へ傾斜した場合、それぞれの位置で撮像した画像を示している。
【0083】
それに対して、図16(b)はカメラ5にて撮像する上下方向が、図15のレンズモジュール1が傾斜する方向である場合に対象物6を撮像した画像の例示図である。左から順に、回動支柱81を傾けることによりレンズモジュール1を左方向へ傾斜した場合、直立している場合、右方向へ傾斜した場合、それぞれの位置で撮像した画像を示している。図16(a)と比べて、対象物6を90度異なる角度から撮像することができ、ユーザのニーズに応じて撮像する位置を変えることができる。
【0084】
また、図16(c)は図16(b)に対してステージ61も90度回転させた場合に対象物6を撮像した画像の例示図である。左から順に、回動支柱81を傾けることによりレンズモジュール1を左方向へ傾斜した場合、直立している場合、右方向へ傾斜した場合、それぞれの位置で撮像した画像を示している。図16(a)と比べて、対象物6をさらに異なる角度から撮像することができ、ユーザのニーズに応じて撮像する位置を変えることができる。
【0085】
以上のように本実施の形態によれば、微分干渉観察を行う場合、ポラライザ21の偏光軸とアナライザ9の偏光軸とがパラレルニコルの位置関係となるようポラライザ21の偏光軸を配置し、微分干渉用DICプリズム15を、互いに直交する2つの偏光軸方向が、ポラライザ21の偏光軸方向に対していずれも略45度となるように配置してあり、λ/4波長板7を、高速軸又は低速軸がポラライザ21の偏光軸方向と略45度となるように配置する。このように光学系を構成することにより、対象物6の平坦な部分で反射した光はアナライザ9を通過する時点で互いに打ち消し合うので、微細な欠陥を認識する等の微分干渉観察本来の目的を達成しやすくなる。つまり、通常観察を行う場合と同様に低倍率の対物レンズ4及びλ/4波長板7をレンズモジュール1に搭載しているにもかかわらず、微分干渉観察を行う場合に、欠陥のない平坦部分が暗くなり、欠陥のある凹凸部分が明るくなるような観察画像を取得できるので、微小欠陥をより確実に検出することができる。
【0086】
また、通常観察を行う場合には、ポラライザ21の偏光軸とアナライザ9の偏光軸とがクロスニコルの位置関係となるようポラライザ21の偏光軸を配置し、微分干渉用DICプリズム15を取り外すことにより、フレアのない通常観察を行うことが可能となる。
【0087】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内であれば多種の変更、改良等が可能である。例えばλ/4波長板7の高速軸がポラライザ21の偏光軸方向と略45度となるように配置しているが、低速軸がポラライザ21の偏光軸方向と略45度となるように配置しても良いことは言うまでもない。
【0088】
また、図5においてλ/4波長板7を光軸に対して少し傾けて記載しているが、λ/4波長板7の傾きは対物レンズ4のNA(開口数)より大きくしておくことが好ましい。対物レンズ4は、NA範囲内の光をカメラ5まで誘導するので、λ/4波長板7を少し傾けておくことによりλ/4波長板7において直接反射した直接反射光がカメラ5まで到達する心配がなくなる。ただし、傾けすぎた場合には、対物レンズ4と対象物6の距離が短くなって使い勝手が悪くなるため、NAより少し大きくしておくことがより好ましい。
【符号の説明】
【0089】
1 レンズモジュール
2 同軸落射照明ユニット
3 光源
4 対物レンズ
5 カメラ
6 対象物
7 λ/4波長板(偏光変換部材)
8 ハーフミラー(光透過部材)
9 アナライザ(検光子)
15 微分干渉用DICプリズム(複屈折光学部材)
21 ポラライザ(偏光子)
61 ステージ(載置部)
81 回動支柱
82 回動機構
83 固定支柱
84 基台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を偏光する偏光子と、
該偏光子を通過した光の一部を反射させ、連結することが可能なカメラの受光軸方向に沿って対象物へ誘導し、対象物からの反射光の一部を通過させる光透過部材と、
該光透過部材で反射した光を、互いに直交する2つの偏光軸方向の光に分離し、着脱することが可能な複屈折光学部材と、
該複屈折光学部材を通過した光を集光し、対象物に照射する対物レンズと、
該対物レンズを通過した光の偏光状態を変換する偏光変換部材と、
前記光透過部材を通過した前記対象物からの反射光の一部を偏光する検光子と
を有し、
前記偏光子及び前記検光子は、偏光軸方向が互いに略平行となるように配置してあり、
前記複屈折光学部材は、前記偏光子の偏光軸方向に対して、前記2つの偏光軸方向がいずれも略45度となるように配置してあり、
前記偏光変換部材は、高速軸又は低速軸を有し、いずれかの軸が前記偏光子の偏光軸方向と略45度となるように配置してあることを特徴とするレンズモジュール。
【請求項2】
前記検光子は固着してあり、
前記複屈折光学部材の、互いに直交する前記2つの偏光軸方向が、前記検光子の偏光軸方向に対して略45度となるように前記複屈折光学部材を挿入することが可能な第1の開口部と、
前記偏光子の偏光軸方向が前記検光子の偏光軸方向と互いに略平行又は略垂直になるように前記偏光子を挿入することが可能な第2の開口部と
を備えることを特徴とする請求項1記載のレンズモジュール。
【請求項3】
前記第2の開口部に挿入される前記偏光子は、偏光軸の角度を変更することが可能としてあることを特徴とする請求項2記載のレンズモジュール。
【請求項4】
前記偏光変換部材は、前記対物レンズと対象物との間に配置してあることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のレンズモジュール。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のレンズモジュールと、
該レンズモジュールを上下動することが可能に取りつけてある回動支柱と、
該回動支柱を水平方向の回転軸を中心として回動することが可能に支持する回動機構と、
該回動機構が上方に設けてある固定支柱と、
該固定支柱が立設してある基台と、
前記固定支柱又は前記基台に設けてあり、対象物を載置する載置部と
を備えることを特徴とする拡大観察装置。
【請求項6】
光源からの光を偏光する偏光子と、
該偏光子を通過した光の一部を反射させ、連結することが可能なカメラの受光軸方向に沿って対象物へ誘導し、対象物からの反射光の一部を通過させる光透過部材と、
該光透過部材で反射した光を、互いに直交する2つの偏光軸方向の光に分離し、着脱することが可能な複屈折光学部材と、
該複屈折光学部材を通過した光を集光し、対象物に照射する対物レンズと、
該対物レンズを通過した光の偏光状態を変換する偏光変換部材と、
前記光透過部材を通過した前記対象物からの反射光の一部を偏光する検光子と
を有するレンズモジュールを用いて拡大観察する拡大観察方法であって、
前記偏光子及び前記検光子を、偏光軸方向が互いに略平行となるか略垂直となるかを切り替えることが可能であり、
前記複屈折光学部材を、前記偏光子の偏光軸方向に対して、前記2つの偏光軸方向がいずれも略45度となるように配置し、
前記偏光子及び前記検光子を、偏光軸方向が互いに略平行となるように配置した場合、高速軸又は低速軸を有する前記偏光変換部材を、いずれかの軸が前記偏光子の偏光軸方向と略45度となるように配置することを特徴とする拡大観察方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−145722(P2012−145722A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3564(P2011−3564)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000129253)株式会社キーエンス (681)
【Fターム(参考)】