レンズモジュールおよび表示装置
【課題】汎用性および量産性に優れ、電気的にレンズ機能の制御を行うことが可能なレンズモジュールを提供する。
【解決手段】レンズモジュールは、第1の面に曲面形状を有する基材(レンズ基材)と、基材の第1の面側に設けられると共に、液体および荷電粒子を含む機能層と、機能層を間にして対向配置された第1および第2の導電膜とを備える。これらの第1および第2の導電膜の少なくとも一方へ選択的に所定の電荷が供給されると、液体中を荷電粒子が移動し(いわゆる電気泳動現象が生じ)、基材側または基材と反対側に荷電粒子が局在した状態となる。これにより、機能層内の液体および荷電粒子の層状態が変化し、基材のレンズ機能(屈折力)が制御される。
【解決手段】レンズモジュールは、第1の面に曲面形状を有する基材(レンズ基材)と、基材の第1の面側に設けられると共に、液体および荷電粒子を含む機能層と、機能層を間にして対向配置された第1および第2の導電膜とを備える。これらの第1および第2の導電膜の少なくとも一方へ選択的に所定の電荷が供給されると、液体中を荷電粒子が移動し(いわゆる電気泳動現象が生じ)、基材側または基材と反対側に荷電粒子が局在した状態となる。これにより、機能層内の液体および荷電粒子の層状態が変化し、基材のレンズ機能(屈折力)が制御される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レンズモジュールおよびそれを用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、裸眼での立体視を実現する3D(3Dimensions;3次元)画像表示方式として、レンチキュラーレンズを用いたもの(例えば、特許文献1,2参照)、およびパララックスバリアを用いたものが提案されている。これらのうち、レンチキュラーレンズ方式は、パララックスバリア方式に比して光吸収が少ないため明るく、表示装置として望ましい特性を備えている。これらの3D表示方式の共通点として、多視点の画像を多方向に出力するために一方向からみた場合の解像度が低下するという点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009−511942号公報
【特許文献2】特開2010−256432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このため、3D画像だけでなく、2D(2Dimensions;2次元)画像を切り替え可能に表示することが望まれている。即ち、2D表示の際にはレンチキュラーもしくはバリアの機能を消失させる機能が求められる。この点に置いて、パララックスバリアは、液晶パネルにより形成可能であることから、電圧印加によるスイッチングにより2D表示と3D表示とを切り替えることができる。このため、容易に製造可能であり、既に量産化もなされている。
【0005】
一方、レンチキュラーレンズ方式は、その明るいという特性上、立体表示装置として期待されてはいるが、上記のようなパララックスバリアと異なり、3D表示および2D表示の切り替えが可能なものについては、大規模な量産化には至っていない。上記特許文献1,2では、その試みがなされているが、以下に説明するように改善の余地がある。
【0006】
例えば、上記特許文献1では、液晶分子を電気的に配向させレンズ状の位相差を光に与える方式が開示されている。しかしこの技術では、レンズの高さ(厚み)が液晶層の厚みにより規制されるため、レンズの厚みを大きくすることが困難である。例えばTV(Television)などの大画面の表示装置では、1画素のサイズが大きいため、液晶層の厚みは170μm程度となる。このように、レンチキュラーレンズに液晶分子を用いた場合、製造困難であるだけでなく、2D表示と3D表示との切り替え動作に数秒程度の時間を要する。このため、現実的に使用困難である。また、このようなレンチキュラーレンズは、偏光を用いてスイッチング動作を行うため、本来無偏光の光を放出するプラズマディスプレイや有機EL(Electro luminescence:以下ELと称す)ディスプレイに対しては相性が悪く、モジュールとしての汎用性に欠しい。
【0007】
また、特許文献2では、屈折率の異なる2種類の媒質を用いて、この各媒質の位置を入れ替えることによりレンズとしての機能の有無を制御する手法が提案されている。しかしこの方式では各媒質を分離するための分離用ITOを設ける必要がある。この分離用ITOは、レンチキュラーレンズから離間させて設置しなければならず、製造プロセスが容易ではなく、量産にも不向きである。
【0008】
従って、レンチキュラーレンズ方式の画像表示の際に使用されるレンズモジュールにおいて、汎用性、量産性に優れ、電気的にレンズ機能の制御を行うことが可能な構造の実現が望まれている。
【0009】
本開示はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、汎用性および量産性に優れ、電気的にレンズ機能の制御を行うことが可能なレンズモジュールおよびこれを用いた表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示のレンズモジュールは、対向する第1および第2の面を有し、第1の面に曲面形状を有する基材と、基材の第1の面側に設けられると共に、液体および荷電粒子を含む機能層と、機能層を間にして対向配置された第1および第2の導電膜とを備えたものである。
【0011】
本開示のレンズモジュールでは、曲面形状を有する基材の第1の面側に、液体および荷電粒子を含む機能層が設けられ、この機能層を間にして第1および第2の導電膜が設けられている。これらの第1および第2の導電膜の少なくとも一方へ選択的に所定の電荷が供給されると、液体中を荷電粒子が移動し(いわゆる電気泳動現象が生じ)、基材側または基材と反対側に荷電粒子が局在した状態となる。これにより、機能層内の液体および荷電粒子の層状態が変化する。
【0012】
本開示の表示装置は、表示部と、この表示部の光出射側に設けられた上記本開示のレンズモジュールとを備えたものである。
【発明の効果】
【0013】
本開示のレンズモジュールによれば、基材の第1の面(曲面形状を有する面)側に、液体および荷電粒子を含む機能層を設け、この機能層を間にして第1および第2の導電膜を設けるようにしたので、電気的にレンズ機能を切り替えることができる。また、電気泳動現象を利用することで、偏光制御が不要であり、また、層分離のために他の部材を設置する必要もない。よって、汎用性および量産性に優れ、電気的にレンズ機能の制御を行うことが可能なモジュールを実現できる。また、本開示の表示装置によれば、上記本開示のレンズモジュールを介して画像を表示することで、例えば3D画像と2D画像とを切り替えて表示することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本開示の一実施形態のレンズモジュールを用いた表示装置の構成を表す模式図である。
【図2】表示装置の全体構成を表す機能ブロック図である。
【図3】図1に示したレンズモジュールの断面模式図である。
【図4】3Dモード時の表示部による画像表示動作を説明するための模式図である。
【図5】図1に示したレンズモジュールのスイッチング動作を説明するための断面模式図であり、(A)は3D表示動作時、(B)は2D表示動作時をそれぞれ表す。
【図6】3D表示の原理を説明するための模式図である。
【図7】変形例1に係るレンズモジュールを説明するための模式図である。
【図8】変形例2に係るレンズモジュールの断面模式図である。
【図9】図8に示したレンズモジュールのスイッチング動作を説明するための断面模式図であり、(A)は3D表示動作時、(B)は2D表示動作時をそれぞれ表す。
【図10】変形例3に係るレンズモジュールのスイッチング動作を説明するための断面模式図であり、(A)は3D表示動作時、(B)は2D表示動作時をそれぞれ表す。
【図11】変形例4に係るレンズモジュールの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示における実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。尚、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(電気泳動現象を利用してレンズ機能制御を行うレンズモジュールを備えた表示装置の例(液体およびレンズ基材の各屈折率が略一致する場合))
2.変形例1(導電膜を分割し、荷電粒子の攪拌機能を付加した例)
3.変形例2(荷電粒子およびレンズ基材の各屈折率が略一致する場合の例)
4.変形例3(荷電粒子、液体およびレンズ基材の各屈折率が互いに異なる場合の例)
5.変形例4(導電膜をレンズ基材裏面に設けた場合の例)
【0016】
<実施の形態>
[表示装置の構成]
図1および図2は、本開示の一実施形態のレンズモジュール(レンズモジュール1A)を備えた表示装置1の構成を表したものである。表示装置1は、いわゆるレンチキュラーレンズ方式により3D画像を表示可能なディスプレイである。この表示装置1は、例えば、表示部2の光出射側(画像表示側)に、これと適切な間隔をあけてレンズモジュール1Aが配設されたものである。詳細は後述するが、表示部2によって形成された画像を、レンズモジュール1Aを介して観察者が見ることにより、観察者は、3D画像(または2D画像)として視認できるようになっている。
【0017】
表示部2は、観察者によって視認される3D画像またはそのような2D画像に対応する画像を2次元平面上に形成するものであり、その種類を問わず、自発光型であってもよいし、バックライトなど他に光源を要するものであってもよい。このような表示部2としては、例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイまたはプラズマディスプレイが挙げられる。
【0018】
この表示部2には、例えば図2に示したように、複数の画素Pが例えばマトリクス状に設けられた画素部2aと、この画素部2aの駆動回路として、映像信号処理部30、タイミング制御部31、画像メモリ32、Xドライバ(データドライバ)33、Yドライバ(ゲートドライバ)34とを備えている。Xドライバ33は、画素部2a内の各画素Pへ映像信号に基づく駆動電圧を供給するものであり、Yドライバ34は、画素部2a内の各画素Pを図示しない走査線に沿って線順次駆動するものである。タイミング制御部31は、それらXドライバ33およびYドライバ34を制御するものであり、映像信号処理部30は、外部からの映像信号を処理して3D表示用または2D表示用の映像信号を生成するものである。画像メモリ32は、その映像信号処理部30により生成された映像信号を記憶するフレームメモリである。これらの駆動回路は、例えば表示部2において画素部2aの周辺領域(表示部2を構成するパネルの額縁領域)に形成されている。表示装置1はまた、例えば映像信号処理部30の制御に基づいて、レンズモジュール1Aのスイッチング動作(レンズ機能のオン/オフ切り替え動作)を制御するレンズ駆動部35を備えている。
【0019】
尚、レンズモジュール1Aは後述のように電気泳動現象を利用しているため応答速度が遅く、画素部2aの表示駆動速度に追従させることが難しい。そのため、2D画像表示および3D画像表示の切り替えと、レンズモジュール1Aにおけるスイッチング動作とを厳密に同期したタイミングで駆動する必要はない(タイミング制御部31によってレンズ駆動部35を制御する必要はない)。映像信号処理部30から別途送られる切り替え指示に応じて、レンズモジュール1Aにおけるスイッチング動作の切り替えがなされればよい。但し、レンズ駆動部35がタイミング制御部31によって制御されるようにしてもよい。このレンズ駆動部35は、表示部2の額縁領域に上記駆動回路と共に配設されていてもよいし、レンズモジュール1Aに設けられていてもよい。尚、これらの駆動回路(レンズ駆動部35を含む)は、上記周辺領域に別途配設された部品上に形成されていてもよい。また、この場合、上記駆動回路のうち、例えばXドライバ33およびYドライバ34は、上記部品の表面側(表示側)に設けられ、画像メモリ32や映像信号処理部30は、裏面側に設置される場合が多い。
【0020】
レンズモジュール1Aは、表示部2の少なくとも画素部2aに対向して設けられている。このレンズモジュール1Aは、例えば一方向(ここではY方向)に延在する軸を有するシリンドリカルレンズ(半円筒状レンズ、蒲鉾状レンズ)を、その軸方向と直交する方向(X方向)に沿って複数配列してなる、いわゆるレンチキュラーレンズである。本実施の形態では、詳細は後述するが、このレンズモジュール1Aのレンズとしての機能(屈折力)を電気的に制御することが可能であり、詳細にはレンズ機能のオン/オフを切り替えるスイッチング素子として機能するようになっている。
【0021】
図3は、レンズモジュール1Aの断面構造を模式的に表したものである。レンズモジュール1Aは、レンズ基材10の表面(第1の面)側に、透明導電膜11(第1の導電膜)、機能層12、透明導電膜13(第2の導電膜)および対向基板14を備えたものである。
【0022】
レンズ基材10は、その表面に曲面形状を有している。詳細には、レンズ基材10の表面形状は、その上に形成される材料(機能層12)との屈折率差に応じてレンズ機能を発揮し得る曲面形状を有している。ここでは、複数の凹曲面(1つの凹曲面がシリンドリカルレンズ10aに相当)がX方向に沿って配列されており、これにより、レンズモジュール1Aは、全体としてレンチキュラーレンズを構成している。尚、レンズ基材10の表面形状は、レンズ基材10,液体12aおよび荷電粒子12bの各屈折率の大小関係や、必要とされる屈折力等を考慮して適当な形状に決定され、凹曲面であっても凸曲面であってもよい。また、湾曲面に限らず、一部に平面を有するような屈曲面であってもよく、即ちシリンドリカルレンズ10aではなく、多角柱(プリズム)状のレンズが配列したような構成であってもよい。
【0023】
このレンズ基材10は、例えば屈折率(n1)が例えば1.35〜1.75程度の透明材料(可視光線を透過させる材料)よりなる。このような透明材料としては、例えばソーダライムガラス(屈折率1.51)等のガラス材料、あるいはポリメチルメタクリレート(屈折率1.49)、ポリカーボネート(屈折率1.585)、ポリエチレンテレフタレート(屈折率1.57〜1.58)等の、例えば屈折率1.5〜1.6程度のプラスチック材料が挙げられる。このレンズ基材10の表面側には、レンズ基材10と適切な間隔をあけて対向基板14が配置されている。
【0024】
対向基板14は、透明材料より構成されている。透明材料としては、上記レンズ基材10と同様のものが挙げられる。これらのレンズ基材10と対向基板14の各対向面には、透明導電膜11,13が設けられている。
【0025】
透明導電膜11,13は、例えば可視光線に対して透明性を有する導電膜、具体的にはITO(酸化インジウム錫),IZO(酸化インジウム亜鉛),FTO(フッ素ドープ酸化錫)等が挙げられる。これらのうち、透明導電膜11は、レンズ基材10の表面形状(シリンドリカルレンズ10aに対応する曲面形状)に倣った表面形状で形成されている。一方、透明導電膜13の機能層12側の面は平坦面となっている。これらの透明導電膜11,13の厚みは特に限定されないが、例えば10nm〜500nm程度となっている。透明導電膜11,13には、電極寿命延長を目的として、例えばフッ素系表面改質剤を用いたコーティングを行ってもよい。これらの透明導電膜11,13間に機能層12が封入されており、透明導電膜11,13を通じて機能層12に電位差が与えられるようになっている(透明導電膜11,13のいずれかに正または負の電荷を供給することができるようになっている)。
【0026】
機能層12は、例えば液体12a中に荷電粒子12bを含むものであり、レンズ基材10のレンズの厚みt1以上の厚みを有している。液体12aは、荷電粒子12bの分散媒であり、絶縁性を有する有機溶媒よりなる。荷電粒子12bは、そのような液体12a中において、正または負の極性に帯電する性質を有する粒子であり、例えば金属材料、金属酸化物または樹脂材料よりなる。荷電粒子12bには帯電性および分散性の向上のために、各種コーティングを行ってもよい。これらの液体12aおよび荷電粒子12bはいずれも、可視光線に対して透明性を有することが望ましく、本実施の形態では、それらのうちのどちらか一方がレンズ基材10と略同一の屈折率を有している。尚、本明細書における「屈折率」は、材料固有の「絶対屈折率」を示すものとする。
【0027】
液体12a中の荷電粒子12bの含有量は、特に限定されないが、望ましくは、次の条件を満たしているとよい。即ち、荷電粒子12bがレンズ基材10側へ局在した状態において、レンズ基材10の曲面形状における凹部分の厚みt1(深さ)以上の厚みとなる(荷電粒子12bが凹曲面に充填される)量を含有しているとよい。詳細は後述するが、荷電粒子12bをレンズ基材10側へ移動させた際に、レンズ基材10のレンズ機能を効果的に発揮させるためである。
【0028】
本実施の形態では、液体12aの屈折率(na)がレンズ基材10の屈折率n1と略一致しており、荷電粒子の屈折率(nb)がレンズ基材10の屈折率n1と異なっている(ここではnb>n1)。例えば、レンズ基材10が上述のような屈折率1.5前後の材料により構成されている場合には、液体12aとしてはテトラクロロエチレン(屈折率1.504)、荷電粒子12bとしては二酸化チタン(TiO2,屈折率2.72)が用いられる。尚、二酸化チタンは、テトラクロロエチレン中において、表面の水酸基が水素イオンを放出することで負に帯電する性質を有している。また、本明細書において、各材料の屈折率が「略一致する」とは、それぞれの屈折率の値が完全に一致(同一)している場合に限られず、両者の間に例えば0.1程度以下の屈折率差がある場合をも含む概念とする。また、各材料の屈折率が「異なる」とは、レンズ基材において所望の屈折力を得られる程度の屈折率差を有することを意味するものとする。
【0029】
このような機能層12は、コロイド溶液からなることが望ましく、荷電粒子12bの粒径が微小であるとよい。機能層12では、液体12aと荷電粒子12bとの比重差に応じて、荷電粒子12bの沈降あるいは浮上が生じる。ここでは、例えばテトラクロロエチレンの比重が1.62、二酸化チタンの比重が4.5であるから、二酸化チタンの粒子径が大きいと二酸化チタン粒子が、例えばY方向に沿って沈降する。特に、TV等の大型の電子機器では、シリンドリカルレンズ10aの延在方向(Y方向)が垂直方向となるように設置されるため、長時間放置すると二酸化チタンが画面下部に堆積してしまう。このため、液体12aの比重よりも荷電粒子12bの比重が大きい場合には、上記のように荷電粒子12bの粒径を微小とすることが望ましい。これによりブラウン運動が活発となり(重力の影響を受けにくくなり)、沈降速度を遅くすることができる。二酸化チタンの場合には、粒子径が例えば100nm以下であるとよい。逆に、液体12aの比重よりも荷電粒子12bの比重が小さい場合においても、上記場合と同様、ブラウン運動が重力に勝るように荷電粒子の粒径を設計すればよい。
【0030】
上記のようなレンズモジュール1Aは、例えば次のようにして作製することができる。即ち、まず、例えばロールアウト製法や溶融押し出し法を用いて、上述した材料よりなる基材に、上述のような表面形状を形成することにより、レンズ基材10を形成する。この後、レンズ基材10の表面に、例えばスパッタ法により上述した材料よりなる透明導電膜11を成膜する。一方、対向基板14の一面にも同様にして透明導電膜13を成膜しておく。次いで、例えば透明導電膜11上に、上述した材料よりなる液体12aに荷電粒子12bを混ぜたものを塗布した後、その上に対向基板14の透明導電膜13側を、例えばスペーサを用いて所定の間隔に保持しつつ重ね合わせ、周辺部をシールする。これにより、レンズ基材10と対向基板14とを接着する。このようにしてレンズモジュール1Aを作製可能である。
【0031】
[作用・効果]
本実施の形態では、表示部2において、外部から入力された映像信号に基づいて、各画素Pが駆動されると、映像信号に基づく画像が2次元平面(例えば表示部2のレンズモジュール1A側の表面)上に映し出される。このとき、3D画像を表示する場合(3Dモード)には、タイミング制御部31の制御に応じて、3D用の映像信号に対応した駆動電圧が各画素Pへ供給される。一方、2D画像を表示する場合(2Dモード)には、タイミング制御部31の制御に応じて、2D用の映像信号に対応した駆動電圧が各画素Pへ供給される。尚、3Dモードおよび2Dモードの切り替えは、例えば外部から映像信号と共に供給される選択信号に基づいて行われる。このようにして、表示部2では、3D画像または2D画像に対応する画像が2次元平面上に形成される。
【0032】
尚、3Dモードにおいて、表示部2が生成する画像は、多視点の画像を空間分割的に、かつ周期的に配列したものである。例えば図4(A)に示したように、X方向に沿って隣接する複数の画素(ここでは10個の赤色画素R1〜R10)にそれぞれが多視点方向の各視点に対応する視点画像が表示される。これらの視点画像R1〜R10は、図4(B)に示したように、1の点(撮像対象点)Aに対し、10個の視点D1〜D10からそれぞれ撮影した画像(あるいは擬似的に撮影した画像)に対応するものである。このような10個の画素を1ユニット(U1)として、このユニットU1が色毎に所定の周期で配列している。一方、2D画像を表示する場合(2Dモード)では、画素P毎に画像を表示する。
【0033】
図5(A),(B)に、3Dモードと2Dモードの各モードでのレンズモジュール1Aの動作(スイッチング動作)の一例を模式的に示す。本実施の形態では、上述のように、レンズ基材10の屈折率n1と液体12aの屈折率naが略等しく、荷電粒子12bの屈折率nbが屈折率n1と異なるが、この場合、透明導電膜11,13のいずれかに荷電粒子12b極性と反対の極性を有する電荷を供給することにより、以下に説明するようにレンズモジュール1Aのレンズ機能を制御する。
【0034】
(3Dモード)
3Dモードでは、レンズ駆動部35が、映像信号処理部30の制御に応じて、例えばレンズ基材10側の透明導電膜11に、荷電粒子12bの極性と反対の極性の電荷を供給する。具体的には、図5(A)に示したように、透明導電膜11に正の電位を与える。これにより、透明導電膜11側(レンズ基材10側)に、例えば負に帯電した荷電粒子12bが移動する(電気泳動現象が生じる)。尚、印加する電圧としては直流であってもよいが、交流であってもよい。交流とした場合には、荷電粒子12bの移動速度を向上させることができる。この結果、機能層12では、液体12a中において荷電粒子12bがレンズ基材10側にのみ局在した層状態となる。
【0035】
例えば、液体12aとしてテトラクロロエチレン、荷電粒子12bとして二酸化チタンを用いた場合に、例えば透明導電膜11,13間の距離を100μm、印加電圧を15Vとすることにより、荷電粒子12b(二酸化チタン粒子)を、図示したような位置に移動させることができる。
【0036】
この際、レンズ基材10と荷電粒子12bとの間には所定の屈折率差(n1<nb)があるため、この屈折率差と、レンズ基材10の曲面形状とに応じたレンズ(レンチキュラーレンズまたはシリンドリカルレンズ10a)の機能が発揮される(そのようなレンズの機能を発現する)。即ち、レンズ基材10の側から入射した光Lが、レンズ基材10(詳細には透明導電膜11)と機能層12との界面付近において屈折される。尚、荷電粒子12bは、レンズ基材10側に局在した状態において、レンズ基材10の曲面形状における厚みt1以上の厚みを有していることが望ましい。これにより、レンズ基材10の凹曲面を平坦化するように荷電粒子12bが充填され、レンズ基材10のレンズ機能が効果的に発揮されると共に、荷電粒子12bと液体12aとの界面が平面状となり、この荷電粒子12bと液体12aとの界面による光損失を低減することができる。
【0037】
従って、3Dモードでは、例えば図6に示したように、表示部2の2次元平面(面S)に表示された視点画像R1〜R10(図4(A)に示した視点画像R1〜R10)に対応する光は、レンズモジュール1Aによって互いに異なる方向へ向けて屈折されて出射する。これにより、レンズモジュール1A越しに表示部2の面Sを見た観察者に対し、視差(両眼視差)を生じる10視点分の画像R1’〜R10’が表示される。即ち、観察者は、これらの画像R1’〜R10’のうちの互いに異なる画像を左眼と右眼とのそれぞれにおいて知覚することで、それらの画像間の視差に応じた立体感を得ることができる。
【0038】
(2Dモード)
2Dモードでは、レンズ駆動部35が、映像信号処理部30の制御に応じて、例えば対向基板14側の透明導電膜13に、荷電粒子12bの極性と反対の極性の電荷を供給する。具体的には、図5(B)に示したように、透明導電膜13に正の電位を与えることで、透明導電膜13側(対向基板14側)に、例えば負に帯電した荷電粒子12bが移動する(電気泳動現象が生じる)。これにより、機能層12では、液体12a中において荷電粒子12bが対向基板14側にのみ局在し、レンズ基材10側は液体12aで充たされた層状態となる。
【0039】
この際、レンズ基材10と液体12aとの各屈折率は略一致しているため、レンズ基材10のレンズ機能が発揮されない(レンズ機能を発現しない)。即ち、例えばレンズ基材10の側から入射した光Lは、レンズ基材10と機能層12との界面付近において屈折されることなくレンズ基材10および機能層12を通過し、対向基板14上へ出射される。
【0040】
従って、2Dモードでは、レンズモジュール1Aが、表示部2の画像表示を妨げることがない。このため、観察者は、表示部2の2次元平面上に表示された画像を、通常の2D画像として視認することができる。
【0041】
上記のように、レンズモジュール1Aでは、透明導電膜11,13間に、所定の屈折率を有する液体12aと荷電粒子12bとを含む機能層12を設けることにより、電気泳動現象を利用して、レンズ機能を制御することができる。具体的には、本実施の形態では、レンズ基材10および液体12aの各屈折率を略一致させ、透明導電膜11に荷電粒子12bと反対の極性を有する電荷を供給することにより、レンズ機能を発揮させ(通過光を屈折させ)、3D画像表示を実現できる。一方、透明導電膜13に荷電粒子12bと反対の極性を有する電荷を供給することにより、レンズ機能を消失させ(光を屈折させずに通過させ)、2D画像表示を実現できる。
【0042】
以上のように、本実施の形態では、レンズモジュール1Aが、レンズ基材10の表面側(曲面形状側)に、液体12aおよび荷電粒子12bを含む機能層12を設け、この機能層12を間にして透明導電膜11,13を設けるようにしたので、電気的にレンズ機能を制御することができる。即ち、荷電粒子12bの電気泳動現象を利用することで、レンズモジュール1Aを、レンズ機能のオン/オフを切り替えるスイッチング素子として機能させることができる。ここで、液晶の配向を利用して上記のようなスイッチングを行う場合には偏光制御が必要となるため、本来偏光を用いないディスプレイ(有機ELディスプレイなど)とは組み合わせの相性が悪い。これに対し、本実施の形態のように電気泳動現象を利用することで、偏光制御が不要となるため、そのようなディスプレイにもモジュールとして好適に組み合わせることができる。更には、機能層12内において、例えば液体12aと荷電粒子12bとを層分離するための部材を別途設置する必要がないために、製造プロセスが煩雑になることもない。よって、汎用性および量産性に優れ、電気的に光のレンズ機能の制御を行うことが可能なモジュールを実現できる。また、表示装置1では、そのようなレンズモジュール1Aを用いて画像を表示することで、例えば3D画像と2D画像とを切り替えて表示することが可能となる。
【0043】
尚、上記実施の形態では、荷電粒子12bの屈折率がレンズ基材10の屈折率よりも大きい場合を例示したが、荷電粒子12bの屈折率がレンズ基材10の屈折率よりも小さくなるように各材料を選定してもよい。このような場合にも、レンズ基材10の曲面形状を適切な形状に設定することにより、上記実施の形態と同等の効果を得ることができる。
【0044】
次に、上記実施の形態のレンズモジュールの変形例(変形例1〜4)について説明する。以下では、上記実施の形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0045】
<変形例1>
図7は、変形例1に係るレンズモジュールを説明するための模式図である。上記実施の形態では、レンズモジュール1Aにおいて、機能層12を間にして透明導電膜11,13が設けられていることを説明したが、これらの透明導電膜11,13の一方または両方が複数の電極(サブ電極)に分割されていてもよい。この例では、対向基板14側の透明導電膜13が複数のサブ電極13aに分割されている。これらの複数のサブ電極13aはそれぞれ、X方向に沿って長辺を有する短冊形状を有していることが望ましい。尚、この例では、レンズ基材10側の透明導電膜11は、上記実施の形態と同様、レンズ基材10の表面形状に倣った形状を有している。
【0046】
本変形例では、例えば図2に示したレンズ駆動部35が、所定のタイミングで、これらの複数のサブ電極13aにそれぞれ、正または負の電位を空間分割的に印加するようになっている。この際、例えばY方向正または負の向きに(上部から下部、下部から上部へ向かって)、例えば電位を正負反転させながらスキャンする。上述したように、特にレンズモジュールがY方向を垂直方向として設置される場合、重力の影響によりレンズモジュールの下部に、荷電粒子が沈降し易い。本変形例のように、透明導電膜13を分割して、それぞれに正または負の電位を順次供給することにより、沈殿した荷電粒子を攪拌することができる。これにより、荷電粒子が重力により沈降したとしても、再度、荷電粒子を液体中に分散させることができる。但し、攪拌動作時は、上記実施の形態で説明したような画像表示動作に伴うレンズモジュールのスイッチング動作が阻害されるため、この電圧印加による攪拌動作は、画像表示がなされていない期間に行う(例えば、電子機器のスイッチオフ後(画像表示動作終了後)、数秒間程度行う)ことが望ましい。
【0047】
尚、電位の印加手法は、上記のような正負を反転しながらスキャンする手法に限られず、荷電粒子を攪拌可能であれば、他の印加手法であってもよい。また、この例では、対向基板14側の透明導電膜13を複数に分割したが、レンズ基材10側の透明導電膜11を分割してもよく、またそれらの両方を分割してもよい。また、サブ電極の形状、個数(分割数)も例示したものに限定されない。
【0048】
上記のように、透明導電膜11,13の少なくとも一方を複数に分割し、荷電粒子の攪拌を行うようにしてもよい。この場合にも、2D画像を表示する際には、複数のサブ電極13aの全てに荷電粒子と反対の極性を有する電荷を供給すれば、上記実施の形態と同様の2D画像表示を行うことができる。よって、上記実施の形態と同等の効果を得ることができる。また、荷電粒子の沈降が生じた場合には、レンズモジュールの上部と下部との間でレンズ機能が変化し、これによって画面の上下で見え方に違いが生じ、表示品質が低下する虞があるが、上記のような攪拌動作を行うことで、荷電粒子を再び分散させることができる。よって、電気泳動現象を利用した高精度なスイッチング動作を実現可能となる。
【0049】
<変形例2>
図8は、変形例2に係るレンズモジュール1Bの断面構成を表したものである。上記実施の形態では、レンズ基材10および液体12aの各屈折率が略一致し、レンズ基材10および荷電粒子12bの各屈折率が異なる場合を例示したが、屈折率の大小関係はこれに限定されない。例えば、本変形例のように、レンズ基材(レンズ基材20)および荷電粒子(荷電粒子22b)の各屈折率が略一致し、レンズ基材20および液体22aの各屈折率が異なっていてもよい。
【0050】
(構成)
レンズモジュール1Bは、上記実施の形態のレンズモジュール1Aと同様、例えば上述のような表示装置において、モジュールとして表示部2と好適に組み合わされて使用されるものである。このレンズモジュール1Bは、少なくとも画素部2aに対向して設けられ、例えばY方向に軸を有するシリンドリカルレンズ(半円筒状レンズ、蒲鉾状レンズ)20aを、X方向に沿って複数配列してなる、レンチキュラーレンズとして機能するものである。また、このレンズモジュール1Bも、レンズ基材20の表面(第1の面)側に、透明導電膜21(第1の導電膜)、機能層22、透明導電膜13および対向基板14を備えたものである。
【0051】
但し、本変形例では、レンズ基材20の曲面形状は、複数の凸曲面(1つの凸曲面がシリンドリカルレンズ20aに相当)がX方向に沿って配列されたものとなっている。このレンズ基材20の対向基板14との対向面には、レンズ基材20の表面形状に倣った表面形状で、透明導電膜21が形成されている。レンズ基材20としては、例えば屈折率(n1)が上記実施の形態と同様の範囲にある透明材料が用いられる。透明導電膜21は、上記実施の形態の透明導電膜11,13と同様の材料および厚みにより構成されている。また、透明導電膜21,13を通じて機能層22に所定の電位差が与えられるようになっている(透明導電膜21,13のいずれかに正または負の電荷を供給することができるようになっている)。
【0052】
機能層22は、上記実施の形態の機能層12と同様、分散媒としての液体22a中に荷電粒子22bを含むものであり、液体22aは、絶縁性を有する有機溶媒よりなる。荷電粒子22bは、そのような液体22a中において、正または負の極性に帯電する性質を有する粒子であり、例えば金属材料または金属酸化物よりなる。荷電粒子22bには帯電性および分散性の向上のために、各種コーティングを行ってもよい。また、この機能層22は、上記実施の形態の機能層12と同様の理由から、荷電粒子22bの比重が液体22aの比重よりも大きい場合には、コロイド溶液であることが望ましく、荷電粒子22bの粒径が微小であるとよい。
【0053】
液体22a中の荷電粒子22bの含有量は、特に限定されないが、望ましくは、次のような条件を満たしているとよい。即ち、荷電粒子22bがレンズ基材20側へ局在した状態において、レンズ基材20の曲面形状における凸部分の厚みt2以上の厚みとなる(荷電粒子22bが隣接する凸曲面同士の間の凹部20bに充填される)量を含有しているとよい。荷電粒子22bをレンズ基材20側へ移動させた際に、レンズ基材20のレンズ機能をむらなく消失させるためである。
【0054】
本変形例では、上記のように、荷電粒子22bの屈折率nbがレンズ基材20の屈折率n1と略一致し、液体22aの屈折率naがレンズ基材20の屈折率n1と異なっている。(ここではna<n1)。例えば、レンズ基材20が上述のような屈折率1.5前後の材料により構成されている場合には、液体22aとしては例えばシリコーンオイル(屈折率1.4)、荷電粒子22bとしては屈折率が1.5前後の樹脂材料が用いられる。このような荷電粒子22bとしては、例えばアクリル樹脂等が挙げられる。尚、ここでは、荷電粒子22bは、液体22a中において、負に帯電する場合を例に挙げて説明する。
【0055】
(作用・効果)
図9(A),(B)に、3Dモードと2Dモードの各モードでのレンズモジュール1Bの動作(スイッチング動作)の一例を模式的に示す。本変形例のレンズモジュール1Bでは、上述のように、レンズ基材20の屈折率n1と荷電粒子22bの屈折率nbが略一致し、液体22aの屈折率naが屈折率n1と異なるが、この場合も、上記実施の形態と同様、透明導電膜21,13のいずれかに荷電粒子22bの極性と反対の極性を有する電荷を供給することにより、レンズ機能を制御することができる。但し、本変形例では、以下に説明するように、3Dモードおよび2Dモードの各モードにおける液体22aおよび荷電粒子22bの相対的な位置関係が、上記実施の形態と異なっている。
【0056】
具体的には、3Dモードでは、図9(A)に示したように、例えば対向基板14側の透明導電膜13に、荷電粒子22bの極性と反対の極性の電荷を供給する(ここでは、透明導電膜13に正の電位を与える)。これにより、透明導電膜13側(対向基板14側)に、例えば負に帯電した荷電粒子22bが移動する(電気泳動現象が生じる)。この結果、液体22a中において荷電粒子22bが対向基板14側にのみ局在し、レンズ基材20側は液体22aで充たされた層状態となる。
【0057】
この際、本変形例では、レンズ基材20と液体22aとの間に所定の屈折率差(n1>na)があるため、この屈折率差と、レンズ基材20の曲面形状とに応じたレンズ(レンチキュラーレンズまたはシリンドリカルレンズ20a)の機能が発揮される。即ち、レンズ基材20の側から入射した光Lが、レンズ基材20(詳細には透明導電膜21)と機能層22との界面付近において屈折される。従って、3Dモードでは、上記実施の形態と同様、表示部2によって2次元形成された多視点画像のそれぞれに対応する各光が、レンズモジュール1Bによって互いに異なる方向へ向けて屈折されて出射される。
【0058】
一方、2Dモードでは、図9(B)に示したように、例えばレンズ基材20側の透明導電膜21に、荷電粒子22bの極性と反対の極性の電荷を供給する(ここでは、透明導電膜21に正の電位を与える)。これにより、透明導電膜21側(レンズ基材20側)に、例えば負に帯電した荷電粒子22bが移動する(電気泳動現象が生じる)。この結果、機能層22では、液体22a中において荷電粒子22bがレンズ基材10側にのみ局在した層状態となる。
【0059】
この際、本変形例では、レンズ基材20と荷電粒子22bとの各屈折率は略一致しているため、レンズ基材20のレンズ機能は発揮されない。即ち、例えばレンズ基材20の側から入射した光Lは、レンズ基材20と機能層22との界面付近において屈折されることなくレンズ基材20および機能層22を通過し、対向基板14上へ出射される。従って、2Dモードでは、上記実施の形態と同様、レンズモジュール1Bが、表示部2による画像表示を妨げることがない。
【0060】
上記のように、本変形例においても、上記実施の形態と同様、レンズモジュール1Bでは、透明導電膜21,13間に、所定の屈折率を有する液体22aと荷電粒子22bとを含む機能層22を設けることにより、電気泳動現象を利用して、レンズ機能を制御することができる。具体的には、本変形例では、レンズ基材20および荷電粒子22bの各屈折率を略一致させ、透明導電膜13に荷電粒子22bと反対の極性を有する電荷を供給することにより、レンズ機能を発揮させ(通過光を屈折させ)、3D画像表示を実現できる。一方、透明導電膜21に荷電粒子22bと反対の極性を有する電荷を供給することにより、レンズ機能を消失させ(光を屈折させずに通過させ)、2D画像表示を実現できる。よって、本変形例では、上記実施の形態と同等の効果を得ることができる。
【0061】
尚、上記変形例2では、液体22aの屈折率がレンズ基材20の屈折率よりも小さい場合を例示したが、液体22aの屈折率がレンズ基材20の屈折率よりも大きくなるように各材料を選定してもよい。このような場合にも、レンズ基材20の曲面形状を適切な形状に設定することにより、上記実施の形態と同等の効果を得ることができる。
【0062】
<変形例3>
上記実施の形態および変形例2では、液体および荷電粒子のうちのどちらか一方の屈折率がレンズ基材の屈折率と略一致する場合を例示したが、本変形例では、レンズ基材20、液体23aおよび荷電粒子23bの各屈折率が互いに異なっている。尚、レンズ基材20、液体23aおよび荷電粒子23bとしては、上述した材料の中から互いの屈折率が異なるように適切なものを選択すればよい。また、ここでは、上記変形例1において説明した凸曲面を有するレンズ基材20を用いた構成を例示している。
【0063】
図10(A),(B)は、本変形例のレンズモジュール(レンズモジュール1C)の3Dモードおよび2Dモードにおける動作(スイッチング動作)の一例を模式的に示したものである。本変形例においても、上記実施の形態と同様、透明導電膜21,13間に液体23aおよび荷電粒子23bを含む機能層23が設けられていることにより、レンズ機能の制御が可能である。但し、本変形例では、以下に説明するように、2Dモードにおける動作が上記実施の形態等と異なっている。
【0064】
具体的には、3Dモードでは、図10(A)に示したように、上記変形例2と同様、例えば対向基板14側の透明導電膜13に、荷電粒子23bの極性と反対の極性の電荷を供給する(ここでは、透明導電膜13に正の電位を与える)。これにより、透明導電膜13側(対向基板14側)に、例えば負に帯電した荷電粒子23bが移動する(電気泳動現象が生じる)。この結果、液体23a中において荷電粒子23bが対向基板14側にのみ局在し、レンズ基材20側は液体23aで充たされた層状態となる。
【0065】
この際、本変形例では、レンズ基材20と液体23aとの間に所定の屈折率差があるため、この屈折率差と、レンズ基材20の曲面形状とに応じたレンズ(レンチキュラーレンズまたはシリンドリカルレンズ20a)の機能が発揮される。即ち、レンズ基材20の側から入射した光Lが、レンズ基材20(詳細には透明導電膜21)と機能層22との界面付近において屈折される。従って、3Dモードでは、上記実施の形態等と同様、表示部2によって2次元形成された多視点画像のそれぞれに対応する各光が、互いに異なる方向へ向けて屈折されて出射される。
【0066】
一方、2Dモードでは、図10(B)に示したように、荷電粒子23bを液体23a中に分散させた状態とする。即ち、本変形例では、透明導電膜21,13間に電位差を与えずにおくことで、荷電粒子23bの散乱作用によってレンズ基材20のレンズ機能が消失する。従って、2Dモードでは、表示部2による画像表示に大きな影響を与えることはない。但し、散乱作用によって、画像の先鋭感が失われることもあるため、荷電粒子23bの含有量は可能な限り低下させることが望ましい。
【0067】
上記のように、本変形例においても、上記実施の形態とほぼ同様、レンズモジュール1Cでは、透明導電膜21,13間に、所定の屈折率を有する液体23aと荷電粒子23bとを含む機能層23を設けることにより、電気泳動現象を利用して、レンズ機能を制御することができる。具体的には、本変形例では、レンズ基材20、液体23aおよび荷電粒子23bの各屈折率を異なるようにし、透明導電膜13に荷電粒子22bと反対の極性を有する電荷を供給することにより、レンズ機能を発揮させ(通過光を屈折させ)、3D画像表示を実現できる。一方、透明導電膜21,13に電位差を与えず、液体23a中に分散した荷電粒子23bの散乱作用を利用することで、レンズ機能を消失させ(光を屈折させずに通過させ)、2D画像表示を実現できる。よって、本変形例においても、上記実施の形態とほぼ同等の効果を得ることができる。
【0068】
また、本変形例では、上記3Dモードおよび2Dモードのいずれにおいても、凹凸のあるレンズ基材20の曲面形状側に荷電粒子23bを集める必要がない。ここで、透明導電膜21に電位を与えると、レンズ基材20側にはその凹凸形状によって、電界強度の疎密が生じることがあるが、このような電界強度の疎密が生じると、これに起因して荷電粒子23bがレンズ基材20側の偏った領域に集まってしまう(所望の領域に集まらない)。従って、本変形例のように、荷電粒子23bをレンズ基材20側に集めることなくレンズ機能の制御を行うことで、そのような荷電粒子23bの偏りを防ぐことができる。
【0069】
<変形例4>
図11は、変形例4に係るレンズモジュール(レンズモジュール1D)の断面構成を表したものである。上記実施の形態および変形例1〜3では、機能層を挟む一対の透明導電膜のうちの一方をレンズ基材の表面(曲面形状を有する第1の面)に設けたが、本変形例のように、透明導電膜24を、レンズ基材10の裏面(平坦な第2の面)に設けるようにしてもよい。このような場合であっても、上記実施の形態等と同等の効果を得ることができる。尚、本変形例では、レンズ基材10の厚み分、機能層12と透明導電膜24との距離が離れるため、上記実施の形態等に比べて、機能層12への印加電圧を大きく設定する必要があるが、透明導電膜24をレンズ基材10の平坦な面に成膜できるため、膜厚むらが生じにくく、成膜プロセスは容易となる。また、対向基板14側の透明導電膜13とのショートを防ぐ効果もある。
【0070】
以上、実施の形態および変形例を挙げて説明したが、本開示内容は上記実施形態等で説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態等では、本開示の荷電粒子として、液体中において負に帯電するものを例に挙げて説明したが、使用材料に応じて荷電粒子は正に帯電したものであってもよい。但し、この場合には、3Dモードあるいは2Dモードを実現する際に、いずれかの透明導電膜に負の電荷を供給するようにする。
【0071】
また、上記実施の形態等では、レンズ基材の裏面側から光を入射させる場合(レンズ基材の裏面側に表示部が設置される場合)を例示したが、本開示はこれに限定されず、対向基板14側から光を入射させるようにしてもよい。また、対向基板14(透明導電膜13)の機能層側の面は平坦面としたが、シリンドリカルレンズ毎に曲面を有していてもよい。
【0072】
更に、上記実施の形態等では、レンズモジュールを表示部と組み合わせた、3D表示および2D表示の切り替えが可能な表示装置について説明したが、本開示のレンズモジュールは、そのような映像表示装置以外の電子機器にも適用可能である。例えば、3D映像および2D映像を切り替えて撮影可能な撮像装置(カメラ)に適用することもできる。また、レンズモジュールは、レンズ機能のオン/オフを切り替えるスイッチング素子として機能するものであるから、上述のような3D/2Dの切り替え以外にも、様々な用途で使用することができる。例えば、上述のようにレンズモジュールでは、通過する光を、透過(屈折させずに透過)、集光(屈折させて透過)、あるいは散乱させる、という3つの機能をスイッチング可能であるため、このようなスイッチングを利用した照明等にも適用することができる。
【0073】
尚、本開示のレンズモジュールは、以下の(1)〜(12)に記載したような構成を有してもいてもよい。
(1)対向する第1および第2の面を有し、前記第1の面に曲面形状を有する基材と、前記基材の前記第1の面側に設けられると共に、液体および荷電粒子を含む機能層と、前記機能層を間にして対向配置された第1および第2の導電膜とを備えたレンズモジュール。
(2)前記機能層の前記液体および前記荷電粒子のうちのいずれか一方の屈折率は、前記基材の屈折率と略一致する上記(1)に記載のレンズモジュール。
(3)前記第1の導電膜は、前記基材の前記第1または第2の面に設けられ、前記第2の導電膜は、前記機能層の前記基材と反対側に設けられている上記(1)または(2)に記載のレンズモジュール。
(4)前記液体の屈折率と前記基材の屈折率とが略一致すると共に、前記荷電粒子の屈折率と前記基材の屈折率とが互いに異なり、前記第1の導電膜に前記荷電粒子と異なる極性の電荷が供給されることにより、前記基材におけるレンズ機能を発揮し、前記第2の導電膜に前記荷電粒子と異なる極性の電荷が供給されることにより、前記基材におけるレンズ機能を発揮しない上記(1)〜(3)のいずれかに記載のレンズモジュール。
(5) 前記荷電粒子の屈折率と前記基材の屈折率とが略一致すると共に、前記液体の屈折率と前記基材の屈折率とが互いに異なり、前記第2の導電膜に前記荷電粒子と異なる極性の電荷が供給されることにより、前記基材におけるレンズ機能を発揮し、前記第1の導電膜に前記荷電粒子と異なる極性の電荷が供給されることにより、前記基材におけるレンズ機能を発揮しない上記(1)〜(4)のいずれかに記載のレンズモジュール。
(6)前記基材、前記液体および前記荷電粒子の屈折率が互いに異なる上記(1)〜(5)のいずれかに記載のレンズモジュール。
(7)前記第1の導電膜は、前記基材の前記第1または第2の面に設けられ、前記第2の導電膜は、前記機能層の前記基材と反対側の面に設けられ、前記第2の導電膜に前記荷電粒子と異なる極性の電荷が供給されることにより、前記基材におけるレンズ機能を発揮し、前記機能層中に前記荷電粒子が分散されることにより前記基材におけるレンズ機能を発揮しない上記(6)に記載のレンズモジュール。
(8)前記第1および第2の導電膜の少なくとも一方は、複数のサブ電極に分割されている上記(1)〜(7)のいずれかに記載のレンズモジュール。
(9)前記複数のサブ電極にはそれぞれ、正または負の電位が印加されるようになっている上記(8)に記載のレンズモジュール。
(10)前記基材の曲面形状が、一方向に延在する軸を有する半円筒形状の面を複数配列させたものであり、レンチキュラーレンズとしてのレンズ機能を有する上記(1)〜(9)のいずれかに記載のレンズモジュール。
(11)前記機能層は、前記曲面形状における凸部分または凹部分の厚みよりも大きな厚みを有する上記(1)〜(10)のいずれかに記載のレンズモジュール。
(12)前記第1の導電膜は、前記基材の曲面形状に倣った表面形状を有する上記(1)〜(11)のいずれかに記載のレンズモジュール。
【0074】
また、本開示の表示装置は、以下の(13)〜(15)に記載したような構成を有してもいてもよく、更に、上記(2)〜(12)に記載したレンズモジュールを有していてもよい。
(13)表示部と、前記表示部の光出射側に設けられたレンズモジュールとを備え、前記レンズモジュールは、対向する第1および第2の面を有し、前記第1の面に曲面形状を有する基材と、前記基材の前記第1の面側に設けられると共に、液体および荷電粒子を含む機能層と、前記機能層を間にして対向配置された第1および第2の導電膜とを有する表示装置。
(14)前記レンズモジュールを駆動するレンズ駆動部を備え、前記レンズ駆動部は、前記第1および第2の導電膜のうちの一方の導電膜に、前記荷電粒子の極性とは異なる電荷を供給することにより3次元画像表示を行い、他方の導電膜に、前記荷電粒子の極性とは異なる電荷を供給することにより、2次元画像表示を行う上記(13)に記載の表示装置。
(15)前記レンズモジュールを駆動するレンズ駆動部を備え、前記レンズ駆動部は、前記第1および第2の導電膜のうちの一方の導電膜に、前記荷電粒子の極性とは異なる電荷を供給することにより3次元画像表示を行い、前記機能層に電圧無印加の状態で、2次元画像表示を行う上記(13)または(14)に記載の表示装置。
【符号の説明】
【0075】
1…表示装置、1A〜1D…レンズモジュール、2…表示部、10,20…レンズ基材、11,21,13…透明導電膜、12,22,23…機能層、12a,22a,23a…液体、12b,22b,23b…荷電粒子、14…対向基板。
【技術分野】
【0001】
本開示は、レンズモジュールおよびそれを用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、裸眼での立体視を実現する3D(3Dimensions;3次元)画像表示方式として、レンチキュラーレンズを用いたもの(例えば、特許文献1,2参照)、およびパララックスバリアを用いたものが提案されている。これらのうち、レンチキュラーレンズ方式は、パララックスバリア方式に比して光吸収が少ないため明るく、表示装置として望ましい特性を備えている。これらの3D表示方式の共通点として、多視点の画像を多方向に出力するために一方向からみた場合の解像度が低下するという点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009−511942号公報
【特許文献2】特開2010−256432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このため、3D画像だけでなく、2D(2Dimensions;2次元)画像を切り替え可能に表示することが望まれている。即ち、2D表示の際にはレンチキュラーもしくはバリアの機能を消失させる機能が求められる。この点に置いて、パララックスバリアは、液晶パネルにより形成可能であることから、電圧印加によるスイッチングにより2D表示と3D表示とを切り替えることができる。このため、容易に製造可能であり、既に量産化もなされている。
【0005】
一方、レンチキュラーレンズ方式は、その明るいという特性上、立体表示装置として期待されてはいるが、上記のようなパララックスバリアと異なり、3D表示および2D表示の切り替えが可能なものについては、大規模な量産化には至っていない。上記特許文献1,2では、その試みがなされているが、以下に説明するように改善の余地がある。
【0006】
例えば、上記特許文献1では、液晶分子を電気的に配向させレンズ状の位相差を光に与える方式が開示されている。しかしこの技術では、レンズの高さ(厚み)が液晶層の厚みにより規制されるため、レンズの厚みを大きくすることが困難である。例えばTV(Television)などの大画面の表示装置では、1画素のサイズが大きいため、液晶層の厚みは170μm程度となる。このように、レンチキュラーレンズに液晶分子を用いた場合、製造困難であるだけでなく、2D表示と3D表示との切り替え動作に数秒程度の時間を要する。このため、現実的に使用困難である。また、このようなレンチキュラーレンズは、偏光を用いてスイッチング動作を行うため、本来無偏光の光を放出するプラズマディスプレイや有機EL(Electro luminescence:以下ELと称す)ディスプレイに対しては相性が悪く、モジュールとしての汎用性に欠しい。
【0007】
また、特許文献2では、屈折率の異なる2種類の媒質を用いて、この各媒質の位置を入れ替えることによりレンズとしての機能の有無を制御する手法が提案されている。しかしこの方式では各媒質を分離するための分離用ITOを設ける必要がある。この分離用ITOは、レンチキュラーレンズから離間させて設置しなければならず、製造プロセスが容易ではなく、量産にも不向きである。
【0008】
従って、レンチキュラーレンズ方式の画像表示の際に使用されるレンズモジュールにおいて、汎用性、量産性に優れ、電気的にレンズ機能の制御を行うことが可能な構造の実現が望まれている。
【0009】
本開示はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、汎用性および量産性に優れ、電気的にレンズ機能の制御を行うことが可能なレンズモジュールおよびこれを用いた表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示のレンズモジュールは、対向する第1および第2の面を有し、第1の面に曲面形状を有する基材と、基材の第1の面側に設けられると共に、液体および荷電粒子を含む機能層と、機能層を間にして対向配置された第1および第2の導電膜とを備えたものである。
【0011】
本開示のレンズモジュールでは、曲面形状を有する基材の第1の面側に、液体および荷電粒子を含む機能層が設けられ、この機能層を間にして第1および第2の導電膜が設けられている。これらの第1および第2の導電膜の少なくとも一方へ選択的に所定の電荷が供給されると、液体中を荷電粒子が移動し(いわゆる電気泳動現象が生じ)、基材側または基材と反対側に荷電粒子が局在した状態となる。これにより、機能層内の液体および荷電粒子の層状態が変化する。
【0012】
本開示の表示装置は、表示部と、この表示部の光出射側に設けられた上記本開示のレンズモジュールとを備えたものである。
【発明の効果】
【0013】
本開示のレンズモジュールによれば、基材の第1の面(曲面形状を有する面)側に、液体および荷電粒子を含む機能層を設け、この機能層を間にして第1および第2の導電膜を設けるようにしたので、電気的にレンズ機能を切り替えることができる。また、電気泳動現象を利用することで、偏光制御が不要であり、また、層分離のために他の部材を設置する必要もない。よって、汎用性および量産性に優れ、電気的にレンズ機能の制御を行うことが可能なモジュールを実現できる。また、本開示の表示装置によれば、上記本開示のレンズモジュールを介して画像を表示することで、例えば3D画像と2D画像とを切り替えて表示することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本開示の一実施形態のレンズモジュールを用いた表示装置の構成を表す模式図である。
【図2】表示装置の全体構成を表す機能ブロック図である。
【図3】図1に示したレンズモジュールの断面模式図である。
【図4】3Dモード時の表示部による画像表示動作を説明するための模式図である。
【図5】図1に示したレンズモジュールのスイッチング動作を説明するための断面模式図であり、(A)は3D表示動作時、(B)は2D表示動作時をそれぞれ表す。
【図6】3D表示の原理を説明するための模式図である。
【図7】変形例1に係るレンズモジュールを説明するための模式図である。
【図8】変形例2に係るレンズモジュールの断面模式図である。
【図9】図8に示したレンズモジュールのスイッチング動作を説明するための断面模式図であり、(A)は3D表示動作時、(B)は2D表示動作時をそれぞれ表す。
【図10】変形例3に係るレンズモジュールのスイッチング動作を説明するための断面模式図であり、(A)は3D表示動作時、(B)は2D表示動作時をそれぞれ表す。
【図11】変形例4に係るレンズモジュールの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示における実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。尚、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(電気泳動現象を利用してレンズ機能制御を行うレンズモジュールを備えた表示装置の例(液体およびレンズ基材の各屈折率が略一致する場合))
2.変形例1(導電膜を分割し、荷電粒子の攪拌機能を付加した例)
3.変形例2(荷電粒子およびレンズ基材の各屈折率が略一致する場合の例)
4.変形例3(荷電粒子、液体およびレンズ基材の各屈折率が互いに異なる場合の例)
5.変形例4(導電膜をレンズ基材裏面に設けた場合の例)
【0016】
<実施の形態>
[表示装置の構成]
図1および図2は、本開示の一実施形態のレンズモジュール(レンズモジュール1A)を備えた表示装置1の構成を表したものである。表示装置1は、いわゆるレンチキュラーレンズ方式により3D画像を表示可能なディスプレイである。この表示装置1は、例えば、表示部2の光出射側(画像表示側)に、これと適切な間隔をあけてレンズモジュール1Aが配設されたものである。詳細は後述するが、表示部2によって形成された画像を、レンズモジュール1Aを介して観察者が見ることにより、観察者は、3D画像(または2D画像)として視認できるようになっている。
【0017】
表示部2は、観察者によって視認される3D画像またはそのような2D画像に対応する画像を2次元平面上に形成するものであり、その種類を問わず、自発光型であってもよいし、バックライトなど他に光源を要するものであってもよい。このような表示部2としては、例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイまたはプラズマディスプレイが挙げられる。
【0018】
この表示部2には、例えば図2に示したように、複数の画素Pが例えばマトリクス状に設けられた画素部2aと、この画素部2aの駆動回路として、映像信号処理部30、タイミング制御部31、画像メモリ32、Xドライバ(データドライバ)33、Yドライバ(ゲートドライバ)34とを備えている。Xドライバ33は、画素部2a内の各画素Pへ映像信号に基づく駆動電圧を供給するものであり、Yドライバ34は、画素部2a内の各画素Pを図示しない走査線に沿って線順次駆動するものである。タイミング制御部31は、それらXドライバ33およびYドライバ34を制御するものであり、映像信号処理部30は、外部からの映像信号を処理して3D表示用または2D表示用の映像信号を生成するものである。画像メモリ32は、その映像信号処理部30により生成された映像信号を記憶するフレームメモリである。これらの駆動回路は、例えば表示部2において画素部2aの周辺領域(表示部2を構成するパネルの額縁領域)に形成されている。表示装置1はまた、例えば映像信号処理部30の制御に基づいて、レンズモジュール1Aのスイッチング動作(レンズ機能のオン/オフ切り替え動作)を制御するレンズ駆動部35を備えている。
【0019】
尚、レンズモジュール1Aは後述のように電気泳動現象を利用しているため応答速度が遅く、画素部2aの表示駆動速度に追従させることが難しい。そのため、2D画像表示および3D画像表示の切り替えと、レンズモジュール1Aにおけるスイッチング動作とを厳密に同期したタイミングで駆動する必要はない(タイミング制御部31によってレンズ駆動部35を制御する必要はない)。映像信号処理部30から別途送られる切り替え指示に応じて、レンズモジュール1Aにおけるスイッチング動作の切り替えがなされればよい。但し、レンズ駆動部35がタイミング制御部31によって制御されるようにしてもよい。このレンズ駆動部35は、表示部2の額縁領域に上記駆動回路と共に配設されていてもよいし、レンズモジュール1Aに設けられていてもよい。尚、これらの駆動回路(レンズ駆動部35を含む)は、上記周辺領域に別途配設された部品上に形成されていてもよい。また、この場合、上記駆動回路のうち、例えばXドライバ33およびYドライバ34は、上記部品の表面側(表示側)に設けられ、画像メモリ32や映像信号処理部30は、裏面側に設置される場合が多い。
【0020】
レンズモジュール1Aは、表示部2の少なくとも画素部2aに対向して設けられている。このレンズモジュール1Aは、例えば一方向(ここではY方向)に延在する軸を有するシリンドリカルレンズ(半円筒状レンズ、蒲鉾状レンズ)を、その軸方向と直交する方向(X方向)に沿って複数配列してなる、いわゆるレンチキュラーレンズである。本実施の形態では、詳細は後述するが、このレンズモジュール1Aのレンズとしての機能(屈折力)を電気的に制御することが可能であり、詳細にはレンズ機能のオン/オフを切り替えるスイッチング素子として機能するようになっている。
【0021】
図3は、レンズモジュール1Aの断面構造を模式的に表したものである。レンズモジュール1Aは、レンズ基材10の表面(第1の面)側に、透明導電膜11(第1の導電膜)、機能層12、透明導電膜13(第2の導電膜)および対向基板14を備えたものである。
【0022】
レンズ基材10は、その表面に曲面形状を有している。詳細には、レンズ基材10の表面形状は、その上に形成される材料(機能層12)との屈折率差に応じてレンズ機能を発揮し得る曲面形状を有している。ここでは、複数の凹曲面(1つの凹曲面がシリンドリカルレンズ10aに相当)がX方向に沿って配列されており、これにより、レンズモジュール1Aは、全体としてレンチキュラーレンズを構成している。尚、レンズ基材10の表面形状は、レンズ基材10,液体12aおよび荷電粒子12bの各屈折率の大小関係や、必要とされる屈折力等を考慮して適当な形状に決定され、凹曲面であっても凸曲面であってもよい。また、湾曲面に限らず、一部に平面を有するような屈曲面であってもよく、即ちシリンドリカルレンズ10aではなく、多角柱(プリズム)状のレンズが配列したような構成であってもよい。
【0023】
このレンズ基材10は、例えば屈折率(n1)が例えば1.35〜1.75程度の透明材料(可視光線を透過させる材料)よりなる。このような透明材料としては、例えばソーダライムガラス(屈折率1.51)等のガラス材料、あるいはポリメチルメタクリレート(屈折率1.49)、ポリカーボネート(屈折率1.585)、ポリエチレンテレフタレート(屈折率1.57〜1.58)等の、例えば屈折率1.5〜1.6程度のプラスチック材料が挙げられる。このレンズ基材10の表面側には、レンズ基材10と適切な間隔をあけて対向基板14が配置されている。
【0024】
対向基板14は、透明材料より構成されている。透明材料としては、上記レンズ基材10と同様のものが挙げられる。これらのレンズ基材10と対向基板14の各対向面には、透明導電膜11,13が設けられている。
【0025】
透明導電膜11,13は、例えば可視光線に対して透明性を有する導電膜、具体的にはITO(酸化インジウム錫),IZO(酸化インジウム亜鉛),FTO(フッ素ドープ酸化錫)等が挙げられる。これらのうち、透明導電膜11は、レンズ基材10の表面形状(シリンドリカルレンズ10aに対応する曲面形状)に倣った表面形状で形成されている。一方、透明導電膜13の機能層12側の面は平坦面となっている。これらの透明導電膜11,13の厚みは特に限定されないが、例えば10nm〜500nm程度となっている。透明導電膜11,13には、電極寿命延長を目的として、例えばフッ素系表面改質剤を用いたコーティングを行ってもよい。これらの透明導電膜11,13間に機能層12が封入されており、透明導電膜11,13を通じて機能層12に電位差が与えられるようになっている(透明導電膜11,13のいずれかに正または負の電荷を供給することができるようになっている)。
【0026】
機能層12は、例えば液体12a中に荷電粒子12bを含むものであり、レンズ基材10のレンズの厚みt1以上の厚みを有している。液体12aは、荷電粒子12bの分散媒であり、絶縁性を有する有機溶媒よりなる。荷電粒子12bは、そのような液体12a中において、正または負の極性に帯電する性質を有する粒子であり、例えば金属材料、金属酸化物または樹脂材料よりなる。荷電粒子12bには帯電性および分散性の向上のために、各種コーティングを行ってもよい。これらの液体12aおよび荷電粒子12bはいずれも、可視光線に対して透明性を有することが望ましく、本実施の形態では、それらのうちのどちらか一方がレンズ基材10と略同一の屈折率を有している。尚、本明細書における「屈折率」は、材料固有の「絶対屈折率」を示すものとする。
【0027】
液体12a中の荷電粒子12bの含有量は、特に限定されないが、望ましくは、次の条件を満たしているとよい。即ち、荷電粒子12bがレンズ基材10側へ局在した状態において、レンズ基材10の曲面形状における凹部分の厚みt1(深さ)以上の厚みとなる(荷電粒子12bが凹曲面に充填される)量を含有しているとよい。詳細は後述するが、荷電粒子12bをレンズ基材10側へ移動させた際に、レンズ基材10のレンズ機能を効果的に発揮させるためである。
【0028】
本実施の形態では、液体12aの屈折率(na)がレンズ基材10の屈折率n1と略一致しており、荷電粒子の屈折率(nb)がレンズ基材10の屈折率n1と異なっている(ここではnb>n1)。例えば、レンズ基材10が上述のような屈折率1.5前後の材料により構成されている場合には、液体12aとしてはテトラクロロエチレン(屈折率1.504)、荷電粒子12bとしては二酸化チタン(TiO2,屈折率2.72)が用いられる。尚、二酸化チタンは、テトラクロロエチレン中において、表面の水酸基が水素イオンを放出することで負に帯電する性質を有している。また、本明細書において、各材料の屈折率が「略一致する」とは、それぞれの屈折率の値が完全に一致(同一)している場合に限られず、両者の間に例えば0.1程度以下の屈折率差がある場合をも含む概念とする。また、各材料の屈折率が「異なる」とは、レンズ基材において所望の屈折力を得られる程度の屈折率差を有することを意味するものとする。
【0029】
このような機能層12は、コロイド溶液からなることが望ましく、荷電粒子12bの粒径が微小であるとよい。機能層12では、液体12aと荷電粒子12bとの比重差に応じて、荷電粒子12bの沈降あるいは浮上が生じる。ここでは、例えばテトラクロロエチレンの比重が1.62、二酸化チタンの比重が4.5であるから、二酸化チタンの粒子径が大きいと二酸化チタン粒子が、例えばY方向に沿って沈降する。特に、TV等の大型の電子機器では、シリンドリカルレンズ10aの延在方向(Y方向)が垂直方向となるように設置されるため、長時間放置すると二酸化チタンが画面下部に堆積してしまう。このため、液体12aの比重よりも荷電粒子12bの比重が大きい場合には、上記のように荷電粒子12bの粒径を微小とすることが望ましい。これによりブラウン運動が活発となり(重力の影響を受けにくくなり)、沈降速度を遅くすることができる。二酸化チタンの場合には、粒子径が例えば100nm以下であるとよい。逆に、液体12aの比重よりも荷電粒子12bの比重が小さい場合においても、上記場合と同様、ブラウン運動が重力に勝るように荷電粒子の粒径を設計すればよい。
【0030】
上記のようなレンズモジュール1Aは、例えば次のようにして作製することができる。即ち、まず、例えばロールアウト製法や溶融押し出し法を用いて、上述した材料よりなる基材に、上述のような表面形状を形成することにより、レンズ基材10を形成する。この後、レンズ基材10の表面に、例えばスパッタ法により上述した材料よりなる透明導電膜11を成膜する。一方、対向基板14の一面にも同様にして透明導電膜13を成膜しておく。次いで、例えば透明導電膜11上に、上述した材料よりなる液体12aに荷電粒子12bを混ぜたものを塗布した後、その上に対向基板14の透明導電膜13側を、例えばスペーサを用いて所定の間隔に保持しつつ重ね合わせ、周辺部をシールする。これにより、レンズ基材10と対向基板14とを接着する。このようにしてレンズモジュール1Aを作製可能である。
【0031】
[作用・効果]
本実施の形態では、表示部2において、外部から入力された映像信号に基づいて、各画素Pが駆動されると、映像信号に基づく画像が2次元平面(例えば表示部2のレンズモジュール1A側の表面)上に映し出される。このとき、3D画像を表示する場合(3Dモード)には、タイミング制御部31の制御に応じて、3D用の映像信号に対応した駆動電圧が各画素Pへ供給される。一方、2D画像を表示する場合(2Dモード)には、タイミング制御部31の制御に応じて、2D用の映像信号に対応した駆動電圧が各画素Pへ供給される。尚、3Dモードおよび2Dモードの切り替えは、例えば外部から映像信号と共に供給される選択信号に基づいて行われる。このようにして、表示部2では、3D画像または2D画像に対応する画像が2次元平面上に形成される。
【0032】
尚、3Dモードにおいて、表示部2が生成する画像は、多視点の画像を空間分割的に、かつ周期的に配列したものである。例えば図4(A)に示したように、X方向に沿って隣接する複数の画素(ここでは10個の赤色画素R1〜R10)にそれぞれが多視点方向の各視点に対応する視点画像が表示される。これらの視点画像R1〜R10は、図4(B)に示したように、1の点(撮像対象点)Aに対し、10個の視点D1〜D10からそれぞれ撮影した画像(あるいは擬似的に撮影した画像)に対応するものである。このような10個の画素を1ユニット(U1)として、このユニットU1が色毎に所定の周期で配列している。一方、2D画像を表示する場合(2Dモード)では、画素P毎に画像を表示する。
【0033】
図5(A),(B)に、3Dモードと2Dモードの各モードでのレンズモジュール1Aの動作(スイッチング動作)の一例を模式的に示す。本実施の形態では、上述のように、レンズ基材10の屈折率n1と液体12aの屈折率naが略等しく、荷電粒子12bの屈折率nbが屈折率n1と異なるが、この場合、透明導電膜11,13のいずれかに荷電粒子12b極性と反対の極性を有する電荷を供給することにより、以下に説明するようにレンズモジュール1Aのレンズ機能を制御する。
【0034】
(3Dモード)
3Dモードでは、レンズ駆動部35が、映像信号処理部30の制御に応じて、例えばレンズ基材10側の透明導電膜11に、荷電粒子12bの極性と反対の極性の電荷を供給する。具体的には、図5(A)に示したように、透明導電膜11に正の電位を与える。これにより、透明導電膜11側(レンズ基材10側)に、例えば負に帯電した荷電粒子12bが移動する(電気泳動現象が生じる)。尚、印加する電圧としては直流であってもよいが、交流であってもよい。交流とした場合には、荷電粒子12bの移動速度を向上させることができる。この結果、機能層12では、液体12a中において荷電粒子12bがレンズ基材10側にのみ局在した層状態となる。
【0035】
例えば、液体12aとしてテトラクロロエチレン、荷電粒子12bとして二酸化チタンを用いた場合に、例えば透明導電膜11,13間の距離を100μm、印加電圧を15Vとすることにより、荷電粒子12b(二酸化チタン粒子)を、図示したような位置に移動させることができる。
【0036】
この際、レンズ基材10と荷電粒子12bとの間には所定の屈折率差(n1<nb)があるため、この屈折率差と、レンズ基材10の曲面形状とに応じたレンズ(レンチキュラーレンズまたはシリンドリカルレンズ10a)の機能が発揮される(そのようなレンズの機能を発現する)。即ち、レンズ基材10の側から入射した光Lが、レンズ基材10(詳細には透明導電膜11)と機能層12との界面付近において屈折される。尚、荷電粒子12bは、レンズ基材10側に局在した状態において、レンズ基材10の曲面形状における厚みt1以上の厚みを有していることが望ましい。これにより、レンズ基材10の凹曲面を平坦化するように荷電粒子12bが充填され、レンズ基材10のレンズ機能が効果的に発揮されると共に、荷電粒子12bと液体12aとの界面が平面状となり、この荷電粒子12bと液体12aとの界面による光損失を低減することができる。
【0037】
従って、3Dモードでは、例えば図6に示したように、表示部2の2次元平面(面S)に表示された視点画像R1〜R10(図4(A)に示した視点画像R1〜R10)に対応する光は、レンズモジュール1Aによって互いに異なる方向へ向けて屈折されて出射する。これにより、レンズモジュール1A越しに表示部2の面Sを見た観察者に対し、視差(両眼視差)を生じる10視点分の画像R1’〜R10’が表示される。即ち、観察者は、これらの画像R1’〜R10’のうちの互いに異なる画像を左眼と右眼とのそれぞれにおいて知覚することで、それらの画像間の視差に応じた立体感を得ることができる。
【0038】
(2Dモード)
2Dモードでは、レンズ駆動部35が、映像信号処理部30の制御に応じて、例えば対向基板14側の透明導電膜13に、荷電粒子12bの極性と反対の極性の電荷を供給する。具体的には、図5(B)に示したように、透明導電膜13に正の電位を与えることで、透明導電膜13側(対向基板14側)に、例えば負に帯電した荷電粒子12bが移動する(電気泳動現象が生じる)。これにより、機能層12では、液体12a中において荷電粒子12bが対向基板14側にのみ局在し、レンズ基材10側は液体12aで充たされた層状態となる。
【0039】
この際、レンズ基材10と液体12aとの各屈折率は略一致しているため、レンズ基材10のレンズ機能が発揮されない(レンズ機能を発現しない)。即ち、例えばレンズ基材10の側から入射した光Lは、レンズ基材10と機能層12との界面付近において屈折されることなくレンズ基材10および機能層12を通過し、対向基板14上へ出射される。
【0040】
従って、2Dモードでは、レンズモジュール1Aが、表示部2の画像表示を妨げることがない。このため、観察者は、表示部2の2次元平面上に表示された画像を、通常の2D画像として視認することができる。
【0041】
上記のように、レンズモジュール1Aでは、透明導電膜11,13間に、所定の屈折率を有する液体12aと荷電粒子12bとを含む機能層12を設けることにより、電気泳動現象を利用して、レンズ機能を制御することができる。具体的には、本実施の形態では、レンズ基材10および液体12aの各屈折率を略一致させ、透明導電膜11に荷電粒子12bと反対の極性を有する電荷を供給することにより、レンズ機能を発揮させ(通過光を屈折させ)、3D画像表示を実現できる。一方、透明導電膜13に荷電粒子12bと反対の極性を有する電荷を供給することにより、レンズ機能を消失させ(光を屈折させずに通過させ)、2D画像表示を実現できる。
【0042】
以上のように、本実施の形態では、レンズモジュール1Aが、レンズ基材10の表面側(曲面形状側)に、液体12aおよび荷電粒子12bを含む機能層12を設け、この機能層12を間にして透明導電膜11,13を設けるようにしたので、電気的にレンズ機能を制御することができる。即ち、荷電粒子12bの電気泳動現象を利用することで、レンズモジュール1Aを、レンズ機能のオン/オフを切り替えるスイッチング素子として機能させることができる。ここで、液晶の配向を利用して上記のようなスイッチングを行う場合には偏光制御が必要となるため、本来偏光を用いないディスプレイ(有機ELディスプレイなど)とは組み合わせの相性が悪い。これに対し、本実施の形態のように電気泳動現象を利用することで、偏光制御が不要となるため、そのようなディスプレイにもモジュールとして好適に組み合わせることができる。更には、機能層12内において、例えば液体12aと荷電粒子12bとを層分離するための部材を別途設置する必要がないために、製造プロセスが煩雑になることもない。よって、汎用性および量産性に優れ、電気的に光のレンズ機能の制御を行うことが可能なモジュールを実現できる。また、表示装置1では、そのようなレンズモジュール1Aを用いて画像を表示することで、例えば3D画像と2D画像とを切り替えて表示することが可能となる。
【0043】
尚、上記実施の形態では、荷電粒子12bの屈折率がレンズ基材10の屈折率よりも大きい場合を例示したが、荷電粒子12bの屈折率がレンズ基材10の屈折率よりも小さくなるように各材料を選定してもよい。このような場合にも、レンズ基材10の曲面形状を適切な形状に設定することにより、上記実施の形態と同等の効果を得ることができる。
【0044】
次に、上記実施の形態のレンズモジュールの変形例(変形例1〜4)について説明する。以下では、上記実施の形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0045】
<変形例1>
図7は、変形例1に係るレンズモジュールを説明するための模式図である。上記実施の形態では、レンズモジュール1Aにおいて、機能層12を間にして透明導電膜11,13が設けられていることを説明したが、これらの透明導電膜11,13の一方または両方が複数の電極(サブ電極)に分割されていてもよい。この例では、対向基板14側の透明導電膜13が複数のサブ電極13aに分割されている。これらの複数のサブ電極13aはそれぞれ、X方向に沿って長辺を有する短冊形状を有していることが望ましい。尚、この例では、レンズ基材10側の透明導電膜11は、上記実施の形態と同様、レンズ基材10の表面形状に倣った形状を有している。
【0046】
本変形例では、例えば図2に示したレンズ駆動部35が、所定のタイミングで、これらの複数のサブ電極13aにそれぞれ、正または負の電位を空間分割的に印加するようになっている。この際、例えばY方向正または負の向きに(上部から下部、下部から上部へ向かって)、例えば電位を正負反転させながらスキャンする。上述したように、特にレンズモジュールがY方向を垂直方向として設置される場合、重力の影響によりレンズモジュールの下部に、荷電粒子が沈降し易い。本変形例のように、透明導電膜13を分割して、それぞれに正または負の電位を順次供給することにより、沈殿した荷電粒子を攪拌することができる。これにより、荷電粒子が重力により沈降したとしても、再度、荷電粒子を液体中に分散させることができる。但し、攪拌動作時は、上記実施の形態で説明したような画像表示動作に伴うレンズモジュールのスイッチング動作が阻害されるため、この電圧印加による攪拌動作は、画像表示がなされていない期間に行う(例えば、電子機器のスイッチオフ後(画像表示動作終了後)、数秒間程度行う)ことが望ましい。
【0047】
尚、電位の印加手法は、上記のような正負を反転しながらスキャンする手法に限られず、荷電粒子を攪拌可能であれば、他の印加手法であってもよい。また、この例では、対向基板14側の透明導電膜13を複数に分割したが、レンズ基材10側の透明導電膜11を分割してもよく、またそれらの両方を分割してもよい。また、サブ電極の形状、個数(分割数)も例示したものに限定されない。
【0048】
上記のように、透明導電膜11,13の少なくとも一方を複数に分割し、荷電粒子の攪拌を行うようにしてもよい。この場合にも、2D画像を表示する際には、複数のサブ電極13aの全てに荷電粒子と反対の極性を有する電荷を供給すれば、上記実施の形態と同様の2D画像表示を行うことができる。よって、上記実施の形態と同等の効果を得ることができる。また、荷電粒子の沈降が生じた場合には、レンズモジュールの上部と下部との間でレンズ機能が変化し、これによって画面の上下で見え方に違いが生じ、表示品質が低下する虞があるが、上記のような攪拌動作を行うことで、荷電粒子を再び分散させることができる。よって、電気泳動現象を利用した高精度なスイッチング動作を実現可能となる。
【0049】
<変形例2>
図8は、変形例2に係るレンズモジュール1Bの断面構成を表したものである。上記実施の形態では、レンズ基材10および液体12aの各屈折率が略一致し、レンズ基材10および荷電粒子12bの各屈折率が異なる場合を例示したが、屈折率の大小関係はこれに限定されない。例えば、本変形例のように、レンズ基材(レンズ基材20)および荷電粒子(荷電粒子22b)の各屈折率が略一致し、レンズ基材20および液体22aの各屈折率が異なっていてもよい。
【0050】
(構成)
レンズモジュール1Bは、上記実施の形態のレンズモジュール1Aと同様、例えば上述のような表示装置において、モジュールとして表示部2と好適に組み合わされて使用されるものである。このレンズモジュール1Bは、少なくとも画素部2aに対向して設けられ、例えばY方向に軸を有するシリンドリカルレンズ(半円筒状レンズ、蒲鉾状レンズ)20aを、X方向に沿って複数配列してなる、レンチキュラーレンズとして機能するものである。また、このレンズモジュール1Bも、レンズ基材20の表面(第1の面)側に、透明導電膜21(第1の導電膜)、機能層22、透明導電膜13および対向基板14を備えたものである。
【0051】
但し、本変形例では、レンズ基材20の曲面形状は、複数の凸曲面(1つの凸曲面がシリンドリカルレンズ20aに相当)がX方向に沿って配列されたものとなっている。このレンズ基材20の対向基板14との対向面には、レンズ基材20の表面形状に倣った表面形状で、透明導電膜21が形成されている。レンズ基材20としては、例えば屈折率(n1)が上記実施の形態と同様の範囲にある透明材料が用いられる。透明導電膜21は、上記実施の形態の透明導電膜11,13と同様の材料および厚みにより構成されている。また、透明導電膜21,13を通じて機能層22に所定の電位差が与えられるようになっている(透明導電膜21,13のいずれかに正または負の電荷を供給することができるようになっている)。
【0052】
機能層22は、上記実施の形態の機能層12と同様、分散媒としての液体22a中に荷電粒子22bを含むものであり、液体22aは、絶縁性を有する有機溶媒よりなる。荷電粒子22bは、そのような液体22a中において、正または負の極性に帯電する性質を有する粒子であり、例えば金属材料または金属酸化物よりなる。荷電粒子22bには帯電性および分散性の向上のために、各種コーティングを行ってもよい。また、この機能層22は、上記実施の形態の機能層12と同様の理由から、荷電粒子22bの比重が液体22aの比重よりも大きい場合には、コロイド溶液であることが望ましく、荷電粒子22bの粒径が微小であるとよい。
【0053】
液体22a中の荷電粒子22bの含有量は、特に限定されないが、望ましくは、次のような条件を満たしているとよい。即ち、荷電粒子22bがレンズ基材20側へ局在した状態において、レンズ基材20の曲面形状における凸部分の厚みt2以上の厚みとなる(荷電粒子22bが隣接する凸曲面同士の間の凹部20bに充填される)量を含有しているとよい。荷電粒子22bをレンズ基材20側へ移動させた際に、レンズ基材20のレンズ機能をむらなく消失させるためである。
【0054】
本変形例では、上記のように、荷電粒子22bの屈折率nbがレンズ基材20の屈折率n1と略一致し、液体22aの屈折率naがレンズ基材20の屈折率n1と異なっている。(ここではna<n1)。例えば、レンズ基材20が上述のような屈折率1.5前後の材料により構成されている場合には、液体22aとしては例えばシリコーンオイル(屈折率1.4)、荷電粒子22bとしては屈折率が1.5前後の樹脂材料が用いられる。このような荷電粒子22bとしては、例えばアクリル樹脂等が挙げられる。尚、ここでは、荷電粒子22bは、液体22a中において、負に帯電する場合を例に挙げて説明する。
【0055】
(作用・効果)
図9(A),(B)に、3Dモードと2Dモードの各モードでのレンズモジュール1Bの動作(スイッチング動作)の一例を模式的に示す。本変形例のレンズモジュール1Bでは、上述のように、レンズ基材20の屈折率n1と荷電粒子22bの屈折率nbが略一致し、液体22aの屈折率naが屈折率n1と異なるが、この場合も、上記実施の形態と同様、透明導電膜21,13のいずれかに荷電粒子22bの極性と反対の極性を有する電荷を供給することにより、レンズ機能を制御することができる。但し、本変形例では、以下に説明するように、3Dモードおよび2Dモードの各モードにおける液体22aおよび荷電粒子22bの相対的な位置関係が、上記実施の形態と異なっている。
【0056】
具体的には、3Dモードでは、図9(A)に示したように、例えば対向基板14側の透明導電膜13に、荷電粒子22bの極性と反対の極性の電荷を供給する(ここでは、透明導電膜13に正の電位を与える)。これにより、透明導電膜13側(対向基板14側)に、例えば負に帯電した荷電粒子22bが移動する(電気泳動現象が生じる)。この結果、液体22a中において荷電粒子22bが対向基板14側にのみ局在し、レンズ基材20側は液体22aで充たされた層状態となる。
【0057】
この際、本変形例では、レンズ基材20と液体22aとの間に所定の屈折率差(n1>na)があるため、この屈折率差と、レンズ基材20の曲面形状とに応じたレンズ(レンチキュラーレンズまたはシリンドリカルレンズ20a)の機能が発揮される。即ち、レンズ基材20の側から入射した光Lが、レンズ基材20(詳細には透明導電膜21)と機能層22との界面付近において屈折される。従って、3Dモードでは、上記実施の形態と同様、表示部2によって2次元形成された多視点画像のそれぞれに対応する各光が、レンズモジュール1Bによって互いに異なる方向へ向けて屈折されて出射される。
【0058】
一方、2Dモードでは、図9(B)に示したように、例えばレンズ基材20側の透明導電膜21に、荷電粒子22bの極性と反対の極性の電荷を供給する(ここでは、透明導電膜21に正の電位を与える)。これにより、透明導電膜21側(レンズ基材20側)に、例えば負に帯電した荷電粒子22bが移動する(電気泳動現象が生じる)。この結果、機能層22では、液体22a中において荷電粒子22bがレンズ基材10側にのみ局在した層状態となる。
【0059】
この際、本変形例では、レンズ基材20と荷電粒子22bとの各屈折率は略一致しているため、レンズ基材20のレンズ機能は発揮されない。即ち、例えばレンズ基材20の側から入射した光Lは、レンズ基材20と機能層22との界面付近において屈折されることなくレンズ基材20および機能層22を通過し、対向基板14上へ出射される。従って、2Dモードでは、上記実施の形態と同様、レンズモジュール1Bが、表示部2による画像表示を妨げることがない。
【0060】
上記のように、本変形例においても、上記実施の形態と同様、レンズモジュール1Bでは、透明導電膜21,13間に、所定の屈折率を有する液体22aと荷電粒子22bとを含む機能層22を設けることにより、電気泳動現象を利用して、レンズ機能を制御することができる。具体的には、本変形例では、レンズ基材20および荷電粒子22bの各屈折率を略一致させ、透明導電膜13に荷電粒子22bと反対の極性を有する電荷を供給することにより、レンズ機能を発揮させ(通過光を屈折させ)、3D画像表示を実現できる。一方、透明導電膜21に荷電粒子22bと反対の極性を有する電荷を供給することにより、レンズ機能を消失させ(光を屈折させずに通過させ)、2D画像表示を実現できる。よって、本変形例では、上記実施の形態と同等の効果を得ることができる。
【0061】
尚、上記変形例2では、液体22aの屈折率がレンズ基材20の屈折率よりも小さい場合を例示したが、液体22aの屈折率がレンズ基材20の屈折率よりも大きくなるように各材料を選定してもよい。このような場合にも、レンズ基材20の曲面形状を適切な形状に設定することにより、上記実施の形態と同等の効果を得ることができる。
【0062】
<変形例3>
上記実施の形態および変形例2では、液体および荷電粒子のうちのどちらか一方の屈折率がレンズ基材の屈折率と略一致する場合を例示したが、本変形例では、レンズ基材20、液体23aおよび荷電粒子23bの各屈折率が互いに異なっている。尚、レンズ基材20、液体23aおよび荷電粒子23bとしては、上述した材料の中から互いの屈折率が異なるように適切なものを選択すればよい。また、ここでは、上記変形例1において説明した凸曲面を有するレンズ基材20を用いた構成を例示している。
【0063】
図10(A),(B)は、本変形例のレンズモジュール(レンズモジュール1C)の3Dモードおよび2Dモードにおける動作(スイッチング動作)の一例を模式的に示したものである。本変形例においても、上記実施の形態と同様、透明導電膜21,13間に液体23aおよび荷電粒子23bを含む機能層23が設けられていることにより、レンズ機能の制御が可能である。但し、本変形例では、以下に説明するように、2Dモードにおける動作が上記実施の形態等と異なっている。
【0064】
具体的には、3Dモードでは、図10(A)に示したように、上記変形例2と同様、例えば対向基板14側の透明導電膜13に、荷電粒子23bの極性と反対の極性の電荷を供給する(ここでは、透明導電膜13に正の電位を与える)。これにより、透明導電膜13側(対向基板14側)に、例えば負に帯電した荷電粒子23bが移動する(電気泳動現象が生じる)。この結果、液体23a中において荷電粒子23bが対向基板14側にのみ局在し、レンズ基材20側は液体23aで充たされた層状態となる。
【0065】
この際、本変形例では、レンズ基材20と液体23aとの間に所定の屈折率差があるため、この屈折率差と、レンズ基材20の曲面形状とに応じたレンズ(レンチキュラーレンズまたはシリンドリカルレンズ20a)の機能が発揮される。即ち、レンズ基材20の側から入射した光Lが、レンズ基材20(詳細には透明導電膜21)と機能層22との界面付近において屈折される。従って、3Dモードでは、上記実施の形態等と同様、表示部2によって2次元形成された多視点画像のそれぞれに対応する各光が、互いに異なる方向へ向けて屈折されて出射される。
【0066】
一方、2Dモードでは、図10(B)に示したように、荷電粒子23bを液体23a中に分散させた状態とする。即ち、本変形例では、透明導電膜21,13間に電位差を与えずにおくことで、荷電粒子23bの散乱作用によってレンズ基材20のレンズ機能が消失する。従って、2Dモードでは、表示部2による画像表示に大きな影響を与えることはない。但し、散乱作用によって、画像の先鋭感が失われることもあるため、荷電粒子23bの含有量は可能な限り低下させることが望ましい。
【0067】
上記のように、本変形例においても、上記実施の形態とほぼ同様、レンズモジュール1Cでは、透明導電膜21,13間に、所定の屈折率を有する液体23aと荷電粒子23bとを含む機能層23を設けることにより、電気泳動現象を利用して、レンズ機能を制御することができる。具体的には、本変形例では、レンズ基材20、液体23aおよび荷電粒子23bの各屈折率を異なるようにし、透明導電膜13に荷電粒子22bと反対の極性を有する電荷を供給することにより、レンズ機能を発揮させ(通過光を屈折させ)、3D画像表示を実現できる。一方、透明導電膜21,13に電位差を与えず、液体23a中に分散した荷電粒子23bの散乱作用を利用することで、レンズ機能を消失させ(光を屈折させずに通過させ)、2D画像表示を実現できる。よって、本変形例においても、上記実施の形態とほぼ同等の効果を得ることができる。
【0068】
また、本変形例では、上記3Dモードおよび2Dモードのいずれにおいても、凹凸のあるレンズ基材20の曲面形状側に荷電粒子23bを集める必要がない。ここで、透明導電膜21に電位を与えると、レンズ基材20側にはその凹凸形状によって、電界強度の疎密が生じることがあるが、このような電界強度の疎密が生じると、これに起因して荷電粒子23bがレンズ基材20側の偏った領域に集まってしまう(所望の領域に集まらない)。従って、本変形例のように、荷電粒子23bをレンズ基材20側に集めることなくレンズ機能の制御を行うことで、そのような荷電粒子23bの偏りを防ぐことができる。
【0069】
<変形例4>
図11は、変形例4に係るレンズモジュール(レンズモジュール1D)の断面構成を表したものである。上記実施の形態および変形例1〜3では、機能層を挟む一対の透明導電膜のうちの一方をレンズ基材の表面(曲面形状を有する第1の面)に設けたが、本変形例のように、透明導電膜24を、レンズ基材10の裏面(平坦な第2の面)に設けるようにしてもよい。このような場合であっても、上記実施の形態等と同等の効果を得ることができる。尚、本変形例では、レンズ基材10の厚み分、機能層12と透明導電膜24との距離が離れるため、上記実施の形態等に比べて、機能層12への印加電圧を大きく設定する必要があるが、透明導電膜24をレンズ基材10の平坦な面に成膜できるため、膜厚むらが生じにくく、成膜プロセスは容易となる。また、対向基板14側の透明導電膜13とのショートを防ぐ効果もある。
【0070】
以上、実施の形態および変形例を挙げて説明したが、本開示内容は上記実施形態等で説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態等では、本開示の荷電粒子として、液体中において負に帯電するものを例に挙げて説明したが、使用材料に応じて荷電粒子は正に帯電したものであってもよい。但し、この場合には、3Dモードあるいは2Dモードを実現する際に、いずれかの透明導電膜に負の電荷を供給するようにする。
【0071】
また、上記実施の形態等では、レンズ基材の裏面側から光を入射させる場合(レンズ基材の裏面側に表示部が設置される場合)を例示したが、本開示はこれに限定されず、対向基板14側から光を入射させるようにしてもよい。また、対向基板14(透明導電膜13)の機能層側の面は平坦面としたが、シリンドリカルレンズ毎に曲面を有していてもよい。
【0072】
更に、上記実施の形態等では、レンズモジュールを表示部と組み合わせた、3D表示および2D表示の切り替えが可能な表示装置について説明したが、本開示のレンズモジュールは、そのような映像表示装置以外の電子機器にも適用可能である。例えば、3D映像および2D映像を切り替えて撮影可能な撮像装置(カメラ)に適用することもできる。また、レンズモジュールは、レンズ機能のオン/オフを切り替えるスイッチング素子として機能するものであるから、上述のような3D/2Dの切り替え以外にも、様々な用途で使用することができる。例えば、上述のようにレンズモジュールでは、通過する光を、透過(屈折させずに透過)、集光(屈折させて透過)、あるいは散乱させる、という3つの機能をスイッチング可能であるため、このようなスイッチングを利用した照明等にも適用することができる。
【0073】
尚、本開示のレンズモジュールは、以下の(1)〜(12)に記載したような構成を有してもいてもよい。
(1)対向する第1および第2の面を有し、前記第1の面に曲面形状を有する基材と、前記基材の前記第1の面側に設けられると共に、液体および荷電粒子を含む機能層と、前記機能層を間にして対向配置された第1および第2の導電膜とを備えたレンズモジュール。
(2)前記機能層の前記液体および前記荷電粒子のうちのいずれか一方の屈折率は、前記基材の屈折率と略一致する上記(1)に記載のレンズモジュール。
(3)前記第1の導電膜は、前記基材の前記第1または第2の面に設けられ、前記第2の導電膜は、前記機能層の前記基材と反対側に設けられている上記(1)または(2)に記載のレンズモジュール。
(4)前記液体の屈折率と前記基材の屈折率とが略一致すると共に、前記荷電粒子の屈折率と前記基材の屈折率とが互いに異なり、前記第1の導電膜に前記荷電粒子と異なる極性の電荷が供給されることにより、前記基材におけるレンズ機能を発揮し、前記第2の導電膜に前記荷電粒子と異なる極性の電荷が供給されることにより、前記基材におけるレンズ機能を発揮しない上記(1)〜(3)のいずれかに記載のレンズモジュール。
(5) 前記荷電粒子の屈折率と前記基材の屈折率とが略一致すると共に、前記液体の屈折率と前記基材の屈折率とが互いに異なり、前記第2の導電膜に前記荷電粒子と異なる極性の電荷が供給されることにより、前記基材におけるレンズ機能を発揮し、前記第1の導電膜に前記荷電粒子と異なる極性の電荷が供給されることにより、前記基材におけるレンズ機能を発揮しない上記(1)〜(4)のいずれかに記載のレンズモジュール。
(6)前記基材、前記液体および前記荷電粒子の屈折率が互いに異なる上記(1)〜(5)のいずれかに記載のレンズモジュール。
(7)前記第1の導電膜は、前記基材の前記第1または第2の面に設けられ、前記第2の導電膜は、前記機能層の前記基材と反対側の面に設けられ、前記第2の導電膜に前記荷電粒子と異なる極性の電荷が供給されることにより、前記基材におけるレンズ機能を発揮し、前記機能層中に前記荷電粒子が分散されることにより前記基材におけるレンズ機能を発揮しない上記(6)に記載のレンズモジュール。
(8)前記第1および第2の導電膜の少なくとも一方は、複数のサブ電極に分割されている上記(1)〜(7)のいずれかに記載のレンズモジュール。
(9)前記複数のサブ電極にはそれぞれ、正または負の電位が印加されるようになっている上記(8)に記載のレンズモジュール。
(10)前記基材の曲面形状が、一方向に延在する軸を有する半円筒形状の面を複数配列させたものであり、レンチキュラーレンズとしてのレンズ機能を有する上記(1)〜(9)のいずれかに記載のレンズモジュール。
(11)前記機能層は、前記曲面形状における凸部分または凹部分の厚みよりも大きな厚みを有する上記(1)〜(10)のいずれかに記載のレンズモジュール。
(12)前記第1の導電膜は、前記基材の曲面形状に倣った表面形状を有する上記(1)〜(11)のいずれかに記載のレンズモジュール。
【0074】
また、本開示の表示装置は、以下の(13)〜(15)に記載したような構成を有してもいてもよく、更に、上記(2)〜(12)に記載したレンズモジュールを有していてもよい。
(13)表示部と、前記表示部の光出射側に設けられたレンズモジュールとを備え、前記レンズモジュールは、対向する第1および第2の面を有し、前記第1の面に曲面形状を有する基材と、前記基材の前記第1の面側に設けられると共に、液体および荷電粒子を含む機能層と、前記機能層を間にして対向配置された第1および第2の導電膜とを有する表示装置。
(14)前記レンズモジュールを駆動するレンズ駆動部を備え、前記レンズ駆動部は、前記第1および第2の導電膜のうちの一方の導電膜に、前記荷電粒子の極性とは異なる電荷を供給することにより3次元画像表示を行い、他方の導電膜に、前記荷電粒子の極性とは異なる電荷を供給することにより、2次元画像表示を行う上記(13)に記載の表示装置。
(15)前記レンズモジュールを駆動するレンズ駆動部を備え、前記レンズ駆動部は、前記第1および第2の導電膜のうちの一方の導電膜に、前記荷電粒子の極性とは異なる電荷を供給することにより3次元画像表示を行い、前記機能層に電圧無印加の状態で、2次元画像表示を行う上記(13)または(14)に記載の表示装置。
【符号の説明】
【0075】
1…表示装置、1A〜1D…レンズモジュール、2…表示部、10,20…レンズ基材、11,21,13…透明導電膜、12,22,23…機能層、12a,22a,23a…液体、12b,22b,23b…荷電粒子、14…対向基板。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する第1および第2の面を有し、前記第1の面に曲面形状を有する基材と、
前記基材の前記第1の面側に設けられると共に、液体および荷電粒子を含む機能層と、
前記機能層を間にして対向配置された第1および第2の導電膜と
を備えたレンズモジュール。
【請求項2】
前記機能層の前記液体および前記荷電粒子のうちのいずれか一方の屈折率は、前記基材の屈折率と略一致する
請求項1記載のレンズモジュール。
【請求項3】
前記第1の導電膜は、前記基材の前記第1または第2の面に設けられ、
前記第2の導電膜は、前記機能層の前記基材と反対側に設けられている
請求項2に記載のレンズモジュール。
【請求項4】
前記液体の屈折率と前記基材の屈折率とが略一致すると共に、前記荷電粒子の屈折率と前記基材の屈折率とが互いに異なり、
前記第1の導電膜に前記荷電粒子と異なる極性の電荷が供給されることにより、前記基材におけるレンズ機能を発揮し、
前記第2の導電膜に前記荷電粒子と異なる極性の電荷が供給されることにより、前記基材におけるレンズ機能を発揮しない
請求項3記載のレンズモジュール。
【請求項5】
前記荷電粒子の屈折率と前記基材の屈折率とが略一致すると共に、前記液体の屈折率と前記基材の屈折率とが互いに異なり、
前記第2の導電膜に前記荷電粒子と異なる極性の電荷が供給されることにより、前記基材におけるレンズ機能を発揮し、
前記第1の導電膜に前記荷電粒子と異なる極性の電荷が供給されることにより、前記基材におけるレンズ機能を発揮しない
請求項3記載のレンズモジュール。
【請求項6】
前記基材、前記液体および前記荷電粒子の屈折率が互いに異なる
請求項1に記載のレンズモジュール。
【請求項7】
前記第1の導電膜は、前記基材の前記第1または第2の面に設けられ、
前記第2の導電膜は、前記機能層の前記基材と反対側の面に設けられ、
前記第2の導電膜に前記荷電粒子と異なる極性の電荷が供給されることにより、前記基材におけるレンズ機能を発揮し、
前記機能層中に前記荷電粒子が分散されることにより前記基材におけるレンズ機能を発揮しない
請求項6に記載のレンズモジュール。
【請求項8】
前記第1および第2の導電膜の少なくとも一方は、複数のサブ電極に分割されている
請求項1に記載のレンズモジュール。
【請求項9】
前記複数のサブ電極にはそれぞれ、正または負の電位が印加されるようになっている
請求項8に記載のレンズモジュール。
【請求項10】
前記基材の曲面形状が、一方向に延在する軸を有する半円筒形状の面を複数配列させたものであり、
レンチキュラーレンズとしてのレンズ機能を有する
請求項1に記載のレンズモジュール。
【請求項11】
前記機能層は、前記曲面形状における凸部分または凹部分の厚みよりも大きな厚みを有する
請求項1に記載のレンズモジュール。
【請求項12】
前記第1の導電膜は、前記基材の曲面形状に倣った表面形状を有する
請求項1に記載のレンズモジュール。
【請求項13】
表示部と、前記表示部の光出射側に設けられたレンズモジュールとを備え、
前記レンズモジュールは、
対向する第1および第2の面を有し、前記第1の面に曲面形状を有する基材と、
前記基材の前記第1の面側に設けられると共に、液体および荷電粒子を含む機能層と、
前記機能層を間にして対向配置された第1および第2の導電膜と
を有する表示装置。
【請求項14】
前記レンズモジュールを駆動するレンズ駆動部を備え、
前記レンズ駆動部は、
前記第1および第2の導電膜のうちの一方の導電膜に、前記荷電粒子の極性とは異なる電荷を供給することにより3次元画像表示を行い、
他方の導電膜に、前記荷電粒子の極性とは異なる電荷を供給することにより、2次元画像表示を行う
請求項13に記載の表示装置。
【請求項15】
前記レンズモジュールを駆動するレンズ駆動部を備え、
前記レンズ駆動部は、
前記第1および第2の導電膜のうちの一方の導電膜に、前記荷電粒子の極性とは異なる電荷を供給することにより3次元画像表示を行い、
前記機能層に電圧無印加の状態で、2次元画像表示を行う
請求項13に記載の表示装置。
【請求項1】
対向する第1および第2の面を有し、前記第1の面に曲面形状を有する基材と、
前記基材の前記第1の面側に設けられると共に、液体および荷電粒子を含む機能層と、
前記機能層を間にして対向配置された第1および第2の導電膜と
を備えたレンズモジュール。
【請求項2】
前記機能層の前記液体および前記荷電粒子のうちのいずれか一方の屈折率は、前記基材の屈折率と略一致する
請求項1記載のレンズモジュール。
【請求項3】
前記第1の導電膜は、前記基材の前記第1または第2の面に設けられ、
前記第2の導電膜は、前記機能層の前記基材と反対側に設けられている
請求項2に記載のレンズモジュール。
【請求項4】
前記液体の屈折率と前記基材の屈折率とが略一致すると共に、前記荷電粒子の屈折率と前記基材の屈折率とが互いに異なり、
前記第1の導電膜に前記荷電粒子と異なる極性の電荷が供給されることにより、前記基材におけるレンズ機能を発揮し、
前記第2の導電膜に前記荷電粒子と異なる極性の電荷が供給されることにより、前記基材におけるレンズ機能を発揮しない
請求項3記載のレンズモジュール。
【請求項5】
前記荷電粒子の屈折率と前記基材の屈折率とが略一致すると共に、前記液体の屈折率と前記基材の屈折率とが互いに異なり、
前記第2の導電膜に前記荷電粒子と異なる極性の電荷が供給されることにより、前記基材におけるレンズ機能を発揮し、
前記第1の導電膜に前記荷電粒子と異なる極性の電荷が供給されることにより、前記基材におけるレンズ機能を発揮しない
請求項3記載のレンズモジュール。
【請求項6】
前記基材、前記液体および前記荷電粒子の屈折率が互いに異なる
請求項1に記載のレンズモジュール。
【請求項7】
前記第1の導電膜は、前記基材の前記第1または第2の面に設けられ、
前記第2の導電膜は、前記機能層の前記基材と反対側の面に設けられ、
前記第2の導電膜に前記荷電粒子と異なる極性の電荷が供給されることにより、前記基材におけるレンズ機能を発揮し、
前記機能層中に前記荷電粒子が分散されることにより前記基材におけるレンズ機能を発揮しない
請求項6に記載のレンズモジュール。
【請求項8】
前記第1および第2の導電膜の少なくとも一方は、複数のサブ電極に分割されている
請求項1に記載のレンズモジュール。
【請求項9】
前記複数のサブ電極にはそれぞれ、正または負の電位が印加されるようになっている
請求項8に記載のレンズモジュール。
【請求項10】
前記基材の曲面形状が、一方向に延在する軸を有する半円筒形状の面を複数配列させたものであり、
レンチキュラーレンズとしてのレンズ機能を有する
請求項1に記載のレンズモジュール。
【請求項11】
前記機能層は、前記曲面形状における凸部分または凹部分の厚みよりも大きな厚みを有する
請求項1に記載のレンズモジュール。
【請求項12】
前記第1の導電膜は、前記基材の曲面形状に倣った表面形状を有する
請求項1に記載のレンズモジュール。
【請求項13】
表示部と、前記表示部の光出射側に設けられたレンズモジュールとを備え、
前記レンズモジュールは、
対向する第1および第2の面を有し、前記第1の面に曲面形状を有する基材と、
前記基材の前記第1の面側に設けられると共に、液体および荷電粒子を含む機能層と、
前記機能層を間にして対向配置された第1および第2の導電膜と
を有する表示装置。
【請求項14】
前記レンズモジュールを駆動するレンズ駆動部を備え、
前記レンズ駆動部は、
前記第1および第2の導電膜のうちの一方の導電膜に、前記荷電粒子の極性とは異なる電荷を供給することにより3次元画像表示を行い、
他方の導電膜に、前記荷電粒子の極性とは異なる電荷を供給することにより、2次元画像表示を行う
請求項13に記載の表示装置。
【請求項15】
前記レンズモジュールを駆動するレンズ駆動部を備え、
前記レンズ駆動部は、
前記第1および第2の導電膜のうちの一方の導電膜に、前記荷電粒子の極性とは異なる電荷を供給することにより3次元画像表示を行い、
前記機能層に電圧無印加の状態で、2次元画像表示を行う
請求項13に記載の表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−15613(P2013−15613A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147175(P2011−147175)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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