説明

レンズユニットおよびレンズユニットの組立方法

【課題】レンズユニットおよびレンズユニットの組立方法において、レンズ保持枠に対する組立誤差によるレンズの偏心を除去するとともに容易に組み立てることができるようにする。
【解決手段】レンズユニット1を、第1レンズ2、第2レンズ3と、レンズ保持枠7と、を含み、レンズ保持枠7は、一定のテーパ角θを有するテーパ面4bが設けられた鏡枠4と、外周側にテーパ角θのテーパ面5aを、内周側にレンズ側面2f、3fを保持するレンズ保持面5bをそれぞれ有するカラー5と、を備え、鏡枠4には、第1レンズ2の一端側を光軸方向に受けるレンズ受け部4cが設けられ、一端側がレンズ受け部4cによって受けられたレンズ側面2f、3fと鏡枠4との間において、テーパ面4bにテーパ面5aが倣うとともにレンズ側面2f、3fにレンズ保持面5bが倣うようにカラー5が嵌め込まれている構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズユニットおよびレンズユニットの組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学機器においてレンズを使用する場合、取り付け基準を有するレンズ保持枠に、レンズを保持させたレンズユニットを構成し、このレンズユニットを光学機器の装置内に取り付けることが行われている。
このようなレンズユニットでは、レンズ保持枠にレンズを挿入する保持穴が設けられ、この保持穴にレンズを挿入してから光軸方向の位置を位置決めし、例えば接着等によって、レンズ保持枠に対するレンズの位置を固定する。
この組立作業を円滑に行うためには、レンズと保持穴との間に径方向の隙間を設ける必要があるため、最大で隙間量に等しい偏心が発生するおそれがある。レンズが複数枚構成の場合には、各レンズに同様の偏心が発生するおそれがある。
したがって、結像性能に影響する偏心が発生するおそれがある場合には、レンズを固定する前に偏心の調整作業を行っていた。
一方、偏心調整を無調整としたレンズユニットも種々提案されている。
例えば、特許文献1には、複数のレンズの結像作用に影響のない周縁部の側面同士を、直接又は介在部材を介し間接的に固着して所定の空気間隔を確保してなるレンズユニットであって、レンズ相互又はレンズと上記介在部材とを流動体又は半流動体で硬化させると共に、弾性を有する材料を用いて外周面を包持してなるレンズユニットが記載されている。
特許文献1の弾性を有する材料は、弾性被膜であり、具体的には接着剤や塗料が挙げられている。
また、特許文献2には、一方のレンズのレンズ領域よりも外周側に、光軸に対して傾斜した円弧状テーパ面を設け、他方のレンズのレンズ領域よりも外周側に、一方のレンズのテーパ面に当接する隆起突起形状部を設け、円弧状テーパ面と隆起突起形状部とを互いに当接させることにより偏心を除去した状態で、固定連結したレンズユニットが記載されている。
特許文献1のレンズユニットでは、鏡筒(レンズ保持枠)に接触するのは第1レンズのみである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭62−118213号公報
【特許文献2】特開2009−163120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来技術のレンズユニットには、以下のような問題があった。
偏心調整を行わずにレンズ保持枠にレンズを固定する場合、保持穴とレンズ側面との隙間を偏心の許容限度以下にする必要があるため、レンズ保持枠やレンズ側面の加工を高精度に行う必要がある。また、隙間が少なくなるため、レンズの挿入に手間がかかり組立時間が長くなってしまう。このため、製造コストが増大してしまうという問題がある。
特許文献1に記載の技術は、レンズ同士を当接させて空気間隔を設定し、外形を整列させた状態で接着固定し、レンズ保持枠を用いない技術である。特許文献1のレンズユニットは外周部に接着剤などで形成された弾性部材に包持されているため、レンズ保持枠を備える場合のように、光学装置に対して高精度に位置決めできるレンズユニットは得られないという問題がある。
特許文献1のレンズユニットであるレンズ接合体をレンズ保持枠に組み立てることは可能であるが、レンズ保持枠とレンズ接合体との間の隙間による偏心は除去できないという問題がある。
また、特許文献2に記載の技術は、レンズ相互の偏心は、レンズの加工精度の範囲で除去されるものの、固定連結したレンズ接合体をレンズ保持枠に組み立てる際には、第1レンズとレンズ保持枠との間の隙間による偏心は除去できないという問題がある。
また、レンズ間の偏心除去するために、円弧状テーパ面と隆起突起形状部とが必須となるため、形状が複雑となって、例えば、ガラス研磨レンズでは形成できない形状になってしまうという問題がある。
また、円弧状テーパ面と隆起突起形状部とは、レンズ領域よりも外周側に設ける必要があるため、これらを有しない場合に比べてレンズ外径が大きくなり、部品コストが増大し、小型化にも適さないという問題がある。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、レンズ保持枠に対する組立誤差によるレンズの偏心を除去するとともに容易に組み立てることができるレンズユニットおよびレンズユニットの組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明のレンズユニットは、レンズと、前記レンズを内部に保持するレンズ保持枠と、を含み、前記レンズ保持枠は、一定のテーパ角を有するテーパ穴部が設けられた外側保持部材と、外周側に前記テーパ角に等しいテーパ角のテーパ面部を、内周側に前記レンズのレンズ側面を保持する円筒面部をそれぞれ有する内側保持部材と、を備え、前記外側保持部材または前記内側保持部材には、前記レンズの一端側を光軸方向に受けるレンズ受け部が設けられ、光軸方向の一端側が前記レンズ受け部によって受けられた前記レンズのレンズ側面と前記外側保持部材との間において、前記テーパ穴部に前記テーパ面部が倣うとともに前記レンズ側面に前記円筒面部が倣うように前記内側保持部材が嵌め込まれている構成とする。
【0007】
また、本発明のレンズユニットでは、前記内側保持部材は、軸方向の両端部の間に貫通する切れ目を有し、前記円筒面部の内周長が前記レンズの外周長以下となることが可能である。
【0008】
また、本発明のレンズユニットでは、前記レンズは、光軸方向に互いに当接されたレンズ対を1対以上備えるレンズ群からなることが可能である。
【0009】
また、本発明のレンズユニットでは、前記レンズは、外径が異なる複数のレンズを含み、前記円筒面部は、前記複数のレンズのそれぞれの外径に対応して複数設けられていることが可能である。
【0010】
本発明のレンズユニットの組立方法は、レンズをレンズ保持枠の内部に保持するレンズユニットの組立方法であって、前記レンズ保持枠は、一定のテーパ角を有するテーパ穴部が設けられた外側保持部材と、外周側に前記テーパ角に等しいテーパ角のテーパ面部を、内周側に前記レンズのレンズ側面を保持する円筒面部をそれぞれ有する内側保持部材と、を備え、前記外側保持部材または前記内側保持部材には、前記レンズの一端側を光軸方向に受けるレンズ受け部が設けられ、前記レンズユニットの組立方法は、前記レンズ受け部に前記レンズの光軸方向の一端側を配置するレンズ配置工程と、前記レンズ受け部に配置された前記レンズのレンズ側面と前記外側保持部材との間に前記内側保持部材が位置するように、前記外側保持部材の前記テーパ穴部に前記テーパ面部を沿わせて前記内側保持部材を挿入する挿入工程と、前記内側保持部材を押し込み、前記テーパ穴部に前記テーパ面部が倣うとともに前記レンズ側面に前記円筒面部が倣うように前記内側保持部材を前記外側保持部材に嵌め込む嵌め込み工程と、該嵌め込み工程後に、前記内側保持部材、前記外側保持部材、および前記レンズの相対位置関係を固定する位置固定工程と、を備える方法とする。
【0011】
また、本発明のレンズユニットの組立方法では、前記内側保持部材は、軸方向の両端部の間に貫通する切れ目を有し、前記挿入工程では、前記内側保持部材の前記円筒面部の内径が、前記レンズの外径より大きくなるように、前記切れ目を周方向に離間しておき、前記嵌め込み工程では、前記内側保持部材を押し込む際に、前記テーパ穴部に前記テーパ面部が倣うことにより前記切れ目の周方向の間隔を減少して、前記円筒面部が前記レンズ側面に倣うようにすることが可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のレンズユニットおよびレンズユニットの組立方法によれば、外側保持部材のテーパ穴部に内側保持部材を軸方向に挿入し内側保持部材のテーパ面部がテーパ穴部に倣うように嵌め込んでレンズ保持枠を形成することで、内側保持部材の円筒面部がレンズ側面に倣うため、レンズ保持枠に対する組立誤差によるレンズの偏心を除去するとともに容易に組み立てることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態のレンズユニットの一例を示す模式的な断面である。
【図2】本発明の第1の実施形態のレンズユニットの第1レンズの模式的な正面図およびそのA視の側面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態のレンズユニットの第2レンズの模式的な正面図およびそのB視の側面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態のレンズユニットの外側保持部材の模式的な断面図およびそのC視の側面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態のレンズユニットの内側保持部材の模式的な断面図、そのD視の側面図、およびD視の側面図におけるE−E断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態のレンズユニットの組立工程を説明する模式的な工程説明図である。
【図7】本発明の第1の実施形態の第1変形例のレンズユニットに用いる内側保持部材の模式的な断面図、そのE視の側面図、および動作説明図である。
【図8】本発明の第1の実施形態の第2変形例のレンズユニットに用いる内側保持部材の模式的な断面図、そのF視の側面図、および動作説明図である。
【図9】本発明の第1の実施形態の第3変形例のレンズユニットの模式的な部分断面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態のレンズユニットの一例を示す模式的な断面である。
【図11】本発明の第2の実施形態のレンズユニットに用いる内側保持部材の模式的な断面図、そのG視の側面図である。
【図12】本発明の第2の実施形態のレンズユニットに用いる外側保持部材の模式的な断面図およびそのH視の側面図である。
【図13】本発明の第2の実施形態のレンズユニットの変形例(第4変形例)を示す模式的な断面である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。すべての図面において、実施形態が異なる場合であっても、同一または相当する部材には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。
【0015】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態のレンズユニットについて説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態のレンズユニットの一例を示す模式的な断面である。図2(a)は、本発明の第1の実施形態のレンズユニットの第1レンズの模式的な正面図である。図2(b)は、図2(a)におけるA視の側面図である。図3(a)は、本発明の第1の実施形態のレンズユニットの第2レンズの模式的な正面図である。図3(b)は、図3(a)におけるB視の側面図である。図4(a)は、本発明の第1の実施形態のレンズユニットの外側保持部材の模式的な断面図である。図4(b)は、図4(a)におけるC視の側面図である。図5(a)は、本発明の第1の実施形態のレンズユニットの内側保持部材の模式的な断面図である。図5(b)は、図5(a)におけるD視の側面図である。図5(c)は、図5(b)におけるE−E断面図である。
【0016】
本実施形態のレンズユニット1は、図1に示すように、第1レンズ2(レンズ)、第2レンズ3(レンズ)、鏡枠4(外側保持部材)、およびカラー5(内側保持部材)を備える。
【0017】
第1レンズ2は、レンズユニット1に保持される一対のレンズの一方であり、本実施形態では、図2(a)、(b)、(c)に示すように、凸面からなる第1レンズ面2aと、凹面からなる第2レンズ面2bとを有し、外周側にフランジ部2cが設けられたメニスカスレンズである。
第1レンズ2の屈折力の正負は、レンズユニット1の用途に基づいた設計仕様に応じて適宜設定することができる。
【0018】
フランジ部2cの外形は、光軸Oを中心とした直径Dの円状であり、レンズ側面2f、第1フランジ面2d、および第2フランジ面2eを備えている。
レンズ側面2fは、光軸Oに対して同軸となるように形成された直径Dの円筒面であり、第1レンズ2を光軸Oに交差する方向に位置決めするための径方向の基準面を構成している。
第1フランジ面2dは、フランジ部2cの第1レンズ面2a側に、光軸Oに直交するように設けられた平面であり、第1レンズ面2aの外周からレンズ側面2fまでの間に形成されている。第1フランジ面2dは、光軸Oに沿う方向において第1レンズ面2aの面頂から一定距離だけ離間した位置に形成されている。
このため、第1フランジ面2dは、光軸Oに沿う方向における第1レンズ2の位置決めが可能な基準面を構成している。
第2フランジ面2eは、フランジ部2cの第2レンズ面2b側に、光軸Oに直交するように設けられた平面であり、第2レンズ面2bの外周からレンズ側面2fまでの間に形成されている。
第2フランジ面2e上には、図2(b)に示すように、光軸Oを中心とする直径d(ただし、d<D)の円周を周方向に等分する3箇所の位置に、突起部2gが設けられている。
各突起部2gの突出方向の先端は、光軸Oに直交し、予め設定された距離だけ第1フランジ面2dから離間した仮想平面に整列されている。以下では、第1フランジ面2dから各突起部2gの先端までの距離をフランジ幅wと称する。
このため、各突起部2gが整列する仮想平面は、第1レンズ面2aの面頂および第2レンズ面2bの面頂に対して、それぞれ予め設定された距離だけ離間している。
このため、各突起部2gは、光軸Oに沿う方向における第1レンズ2の位置決めが可能な基準突起を構成している。
【0019】
第2レンズ3は、レンズユニット1に保持される一対のレンズの他方であり、本実施形態では、図3(a)、(b)、(c)に示すように、凹面からなる第1レンズ面3aと、凸面からなる第2レンズ面3bとを有し、外周側にフランジ部3cが設けられたメニスカスレンズである。
第2レンズ3の屈折力の正負は、レンズユニット1の用途に基づいた設計仕様に応じて適宜設定することができる。
【0020】
フランジ部3cの外形は、光軸Oを中心とした直径Dの円状であり、レンズ側面3f、第1フランジ面3d、および第2フランジ面3eを備えている。
レンズ側面3fは、光軸Oに対して同軸となるように形成された直径Dの円筒面であり、第2レンズ3を光軸Oに交差する方向に位置決めするための径方向の基準面を構成している。
本実施形態では、レンズ側面3fの直径Dは、第1レンズ2のレンズ側面2fの直径Dと一致されている。
【0021】
第1フランジ面3dは、フランジ部3cの第1レンズ面3a側に、光軸Oに直交するように設けられた平面であり、第1レンズ面3aの外周からレンズ側面3fまでの間に形成されている。第1フランジ面3dは、光軸Oに沿う方向において第1レンズ面3aの面頂から一定距離だけ離間した位置に形成されている。
このため、第1フランジ面3dは、光軸Oに沿う方向における第2レンズ3の位置決めが可能な基準面を構成している。
本実施形態では、第1フランジ面3dは、図1に示す組立状態では、第1レンズ2の各突起部2gと当接されている。これにより、第2レンズ3の第1レンズ面3aと、第1レンズ2の第2レンズ面2bとの面間距離を一定に保つことができるとともに、光軸Oを光軸Oとを互いに平行に保つことができる。
【0022】
第2フランジ面3eは、フランジ部3cの第2レンズ面3b側に、光軸Oに直交するように設けられた平面であり、第2レンズ面3bの外周からレンズ側面3fまでの間に形成されている。
第2フランジ面3e上には、図3(b)に示すように、光軸Oを中心とする直径d(ただし、d<D)の円周を周方向に等分する3箇所の位置に、突起部3gが設けられている。
各突起部3gの突出方向の先端は、光軸Oに直交し、予め設定された距離だけ第1フランジ面3dから離間した仮想平面に整列されている。以下では、第1フランジ面3dから各突起部3gの先端までの距離をフランジ幅wと称する。
このため、各突起部3gが整列する平面は、第1レンズ面3aの面頂および第2レンズ面3bの面頂に対して、それぞれ予め設定された距離だけ離間している。
このため、各突起部3gは、光軸Oに沿う方向における第2レンズ3の位置決めが可能な基準突起を構成している。
【0023】
このような構成の第1レンズ2、第2レンズ3は、本実施形態では、いずれも合成樹脂の成形によって作製されている。
【0024】
鏡枠4は、図1に示すように、内部に、第1レンズ2、第2レンズ3、およびカラー5を収容して、少なくとも、レンズ側面2f、3fを側方から覆う略筒状部材である。
鏡枠4の形状は、図4(a)、(b)に示すように、外周面の外径が中心軸線Pを中心とする直径D4eであり、外周面の表面には中心軸線Pと同軸に整列した雄ねじ部4eが形成されている。
本実施形態では、鏡枠4は、レンズユニット1の最外周を構成する部材になっている。したがって、レンズユニット1を組み付ける光学装置等に、雄ねじ部4eに螺合する雌ねじ部を設けることにより、雄ねじ部4eを利用して、レンズユニット1を光学装置に取り付けたり、レンズユニット1の光軸方向の位置を調整したりすることが可能である。
このとき、鏡枠4の中心軸線Pはレンズユニット1のユニット中心軸を構成している。
【0025】
鏡枠4の軸方向の一端側(図4(a)の左側)には、中心部に向かって全周にわたって突出するレンズ受け部4cが形成されている。
レンズ受け部4cの突出方向の先端には、中心軸線Pを中心とした円状の開口部4fが形成されている。開口部4fの開口径D4fは、第1レンズ2の第1レンズ面2aの外径よりも大きく、これにより、第1レンズ2の組立状態では第1レンズ面2aを挿通させることが可能である(図1参照)。
また、レンズ受け部4cは、軸方向の一端側に外周側から中心部に向かうにつれて軸方向の他端側に傾斜する円錐面状の傾斜面4gを有し、軸方向の他端側に中心軸線Pに直交する平面からなる内側面4hを有する。
また、レンズ受け部4cは、図4(b)に示すように、内側面4h上において、中心軸線Pを中心とする直径d(ただし、D4f<d<D)の円周を周方向に等分する3箇所に突起部4dが形成されている。
各突起部4dの突出方向の先端は、中心軸線Pに直交する仮想平面に整列されている。本実施形態では、各突起部4dは、中心軸線Pに沿う方向に第1レンズ2の位置決めを行う基準突起を構成している。
【0026】
図4(a)に示すように、鏡枠4の内周部においてレンズ受け部4cよりも軸方向の他端側には、内側面4hから軸方向の他端に向かって、テーパ面4b(テーパ穴部)と、挿入ガイド面4aとが、この順に形成されている。
【0027】
テーパ面4bは、中心軸線Pを中心とする円錐面状であり、内側面4hから、鏡枠4の軸方向の中間部の位置まで形成されている。
テーパ面4bの内径は、内側面4hの位置では第1レンズ2の第1フランジ面2dの外径よりも大きな内径を有し、軸方向の他端側に向かうにつれて、一定のテーパ角θの割合で拡径されている。
テーパ面4bの中心軸線Pに沿う長さは、第1レンズ2のフランジ幅wと第2レンズ3のフランジ幅wとの和(w+w)よりも長くなるように設定されている。
【0028】
挿入ガイド面4aは、中心軸線Pを中心とする円筒面であり、テーパ面4bの内径よりも大径の直径D4a(ただし、D4a<D4e)を有する。また、挿入ガイド面4aは鏡枠4の他端に円形の開口部を形成している。
挿入ガイド面4aの軸方向の長さは、本実施形態では、図1に示すように、組立状態において、第2レンズ3の第2レンズ面3bの面頂が鏡枠4の外部に突出しない寸法に設定されている。
【0029】
鏡枠4の材質は、後述するカラー5を押し込む際に発生する外力に耐える強度を有する材質であれば特に限定されない。例えば、アルミニウム等の金属や、後述するカラー5よりも剛性が高い合成樹脂を採用することができる。
【0030】
カラー5は、図1に示すように、内部に、第1レンズ2、および第2レンズ3を挿入してそれぞれのレンズ側面2f、3fに側方から当接して保持し、鏡枠4のテーパ面4bの内側に嵌め込まれる略筒状の部材である。
カラー5は、外力が作用すると容易に変形する部材であり、外力が作用しない自然状態と、レンズユニット1として組み付けられて変形した状態(以下、組付状態と称する)とでは、形状が異なる。
【0031】
自然状態では、図5(a)、(b)、(c)に示すように、カラー5は、その中心軸線Qに直交する断面形状が円周の一部を欠くC字状とされた略筒状の部材になっている。すなわち、側面に軸方向および厚さ方向に貫通する端面5j、5kが周方向に幅tを隔てて対向しており、これらの端面5j、5kによりスリット5h(切れ目)が形成されている。
また、カラー5の内周部には円筒面状に形成されたレンズ保持面5b(円筒面部)を有し、外周部にはテーパ角θで、カラー5の軸方向の一端側(図5(a)左側)に向かって縮径するテーパ面5a(テーパ面部)を有している。カラー5の軸方向の一端部には、中心軸線Qに直交する平面からなる先端面5fが形成されている。
また、カラー5の軸方向の他端(図5(a)の右側の端部)には、レンズ保持面5bの内周側およびテーパ面5aの外周側にそれぞれ突出するフランジ部5cが設けられている。
フランジ部5cの軸方向の他端には、中心軸線Qに直交する一平面からなる後端面5dが形成されている。
フランジ部5cの軸方向の一端には、レンズ保持面5bの内部において、中心軸線Qに直交する平面からなるレンズ受け面5iが形成されている。
以下、カラー5において軸方向の一方側(先端面5fの側)の端部をカラー5の先端部、軸方向の他方側(フランジ部5cの側)の端部をカラー5の後端部と称する。また、テーパ面5aとレンズ保持面5bとで径方向に挟まれている壁状の部位は、カラー5の嵌め込み部5mと称する。
【0032】
組付状態では、スリット5hの開口幅が縮小するに伴って、テーパ面5aの外径、およびレンズ保持面5bの内径が縮径する。このため、図1に示すように、鏡枠4の突起部4dとレンズ受け面5iとの間で、フランジ部2c、3cを重ねた状態に挟持した状態で、テーパ面5aがテーパ面4bに倣い、レンズ保持面5bが、レンズ側面2f、3fに倣うように変形される。
カラー5が鏡枠4、第1レンズ2、第2レンズ3に比べて低剛性、低強度の材料で構成されている場合、カラー5は、組付状態で弾性変形したり、塑性変形したりすることも可能である。
【0033】
フランジ部5cの外周には、直径D5e(ただし、D5e<D4a)の円筒面であるフランジ外周面5eが形成されている。
フランジ部5cの内周には、直径D5g(ただし、D5g<D5b)の円筒面であるフランジ内周面5gが形成されている。フランジ内周面5gの直径D5gは、組付状態において、第2レンズ面3bの外径よりも大径であって、第2フランジ面3e上の各突起部3gがレンズ受け面5iに当接可能となる寸法に設定する。
【0034】
レンズ保持面5bは、中心軸線Qを中心として直径D5b(ただし、D<D5b、D<D5b)の円筒面であり、先端面5fからレンズ受け面5iまでの範囲に形成されている。
レンズ保持面5bの軸方向の長さW5b(図5(c)参照)は、w<W5b<w+wの条件を満たす寸法に設定されている。ただし、長さW5bは、上記範囲において、w+wの方に近い値とすることが好ましい。
【0035】
スリット5hの幅tは、上記のD5bの条件に加えて、レンズ保持面5bの内周長が、レンズ側面2f、3fの外周長以下となるように設定されている。
製作誤差によりレンズ側面2f、3fの周長が相違する場合には、いずれか短い方の周長以下となるように設定しておく。この条件は、レンズ保持面5bの内周長を、レンズ側面2f、3fの周長の許容範囲のうち最小の外周長以下となるように設定すれば常に満たされる。
【0036】
テーパ面5aは、自然状態では、先端面5fにおいて直径D5aを有している。
また、テーパ面5aの軸方向に沿う長さは、鏡枠4のテーパ面4bの軸方向に沿う長さよりも長くなるように設定されている。
テーパ面5aの直径D5aおよびレンズ保持面5bの直径D5bは、嵌め込み部5mの先端の厚さを規定している。このため、テーパ面5aの直径D5aは、嵌め込み部5mの先端の厚さ、およびこれとテーパ角θにより決まる嵌め込み部5mの軸方向の断面形状(中心軸線Qを含む平面における断面形状)が満たすべき形状から決める。
嵌め込み部5mが満たすべき軸方向の断面形状は、図1に示すように、嵌め込み部5mを第1レンズ2、第2レンズ3のレンズ側面2f、3fとテーパ面4bとの間に挿入し、カラー5のレンズ受け面5iによって第1レンズ2および第2レンズ3を光軸方向に押圧して組み立てた状態で、テーパ面4bにテーパ面5aが倣うとともに、レンズ側面2f、3fにレンズ保持面5bが倣う形状である。
ここで、テーパ面5aおよびレンズ保持面5bがそれぞれテーパ面4bおよびレンズ側面2f、3fに「倣う」とは、カラー5のスリット5hの間隔が変化して全体的な径寸法が変化する結果、レンズ側面2f、3fとテーパ面4bとの間に形成された軸方向の断面がくさび形状の隙間に嵌合することをいう。
テーパ面4bおよびテーパ面5aと、レンズ側面2f、3fおよびレンズ保持面5bとは、それぞれ全周にわたって径方向に密着することが好ましい。ただし、径方向にがたつきなく当接することにより、第1レンズ2、第2レンズ3が鏡枠4の中心軸線Pに対して偏心の許容限度内に位置決めされれば、必ずしも密着状態で嵌合する必要はない。例えば各面の微細な凹凸や真円度などの誤差要因によって、厳密には部分的に隙間が発生するような当接状態も許容できる。すなわち、密着状態も含む略密着した状態に嵌合できればよい。
また、カラー5として、鏡枠4や第1レンズ2、第2レンズ3に比べて、剛性や強度が低い材質を採用する場合には、くさび形状の隙間よりも厚い形状として、径方向に弾性変形または塑性変形することで、圧入状態で嵌合するようにしてもよい。
【0037】
カラー5の材質としては、テーパ面5aを、鏡枠4のテーパ面4bに押し込んでいく際に、テーパ面4bから受ける外力により、容易に変形できる材質であれば、特に限定されない。例えば、アルミニウム等の金属や、鏡枠4よりも剛性が低い合成樹脂を採用することができる。
【0038】
接着部6は、後述するように、鏡枠4の内部に、第1レンズ2、第2レンズ3、およびカラー5を組み立ててから、カラー5と鏡枠4とを固定するものであり、図1に示すように、カラー5の後端面5dの外周部と鏡枠4の挿入ガイド面4aとにまたがって塗布された接着剤を硬化させたものである。
接着部6は、後端面5dの外周部と挿入ガイド面4aとの間に周方向に連続して円弧状に形成されていてもよいし、周方向に離間して点付け状態に形成されていてもよい。
接着部6を形成する接着剤としては、カラー5および鏡枠4の材質に応じて、良好な接着強度が得られる種類を適宜選定することができる。
接着部6に好適な接着剤としては、例えば、UV硬化型接着剤、二液性接着剤、熱硬化性接着剤等の接着剤を挙げることができる。
【0039】
次に、レンズユニット1における第1レンズ2、第2レンズ3、鏡枠4、およびカラー5の相互の位置関係について、図1を参照して説明する。
第1レンズ2は、第1レンズ面2aを開口部4f側に向けた状態で、テーパ面4b内に軸方向に挿入され、第1フランジ面2dが、鏡枠4の各突起部4dに当接されている。
第2レンズ3は、第1レンズ面3aを第1レンズ2側に向けてテーパ面4bおよび挿入ガイド面4a内に軸方向に挿入され、第1フランジ面3dが第1レンズ2の各突起部3gに当接されている。
第1レンズ2のレンズ側面2fおよび第2レンズ3のレンズ側面3fと、鏡枠4の挿入ガイド面4aとの間には、カラー5が先端面5f側から軸方向に挿入され、第2レンズ3の突起部3gが、カラー5のレンズ受け面5iと当接されている。
このような位置関係により、第2レンズ面2bと第1レンズ面3aとの面間間隔は、予め設定された面間間隔に設定されている。
【0040】
カラー5のテーパ面5aは鏡枠4のテーパ面4bに対して、径方向にがたつきなく当接している。本実施形態では、テーパ面5aとテーパ面4bとが密着して当接することにより、がたつかない状態になっている。
また、カラー5のレンズ保持面5bはレンズ側面2f、3fに対して、径方向にがたつきなく当接している。本実施形態では、レンズ保持面5bがレンズ側面2f、3fと密着して当接することにより、がたつかない状態になっている。
このような位置関係により、第1レンズ2、第2レンズ3の光軸O、O、およびカラー5の中心軸線Qは、それぞれの部品加工誤差に起因する偏心誤差の範囲内で、鏡枠4の中心軸線Pに整列されている。
【0041】
このような組立状態において、接着部6は、カラー5と鏡枠4とを互いに固定することにより、第1レンズ2、第2レンズ3、鏡枠4、およびカラー5の相互の相対的な位置関係が固定されている。
【0042】
このような構成により、鏡枠4は、一定のテーパ角θを有するテーパ穴部であるテーパ面4bが設けられた外側保持部材を構成している。
また、カラー5は、外周側にテーパ角θを有するテーパ面部であるテーパ面5aを、内周側に、第1レンズ2、第2レンズ3のレンズ側面2f、3fを保持する円筒面部であるレンズ保持面5bをそれぞれ有する内側保持部材を構成している。
鏡枠4およびカラー5の組立体は、レンズを内部に保持するレンズ保持枠7を構成している。
また、本実施形態では、レンズを構成するレンズ対である第1レンズ2、第2レンズ3の一端側である第1フランジ面2dは、鏡枠4に設けられたレンズ受け部4cによって受けられている。
【0043】
次に、レンズユニット1の組立方法について説明する。
図6(a)、(b)は、本発明の第1の実施形態のレンズユニットの組立工程を説明する模式的な工程説明図である。
【0044】
レンズユニット1は、レンズ配置工程、挿入工程、嵌め込み工程、および位置固定工程を、この順に行うことにより組み立てることができる。
【0045】
まず、レンズ配置工程を行う。本工程は、鏡枠4のレンズ受け部である突起部4d上に第1レンズ2の第1フランジ面2dが当接するように、第1レンズ2と第2レンズ3とを重ねて、鏡枠4のテーパ面4b内に配置する工程である。
まず、第1レンズ2の第1フランジ面2dを突起部4dと対向させて、挿入ガイド面4aおよびテーパ面4b内に第1レンズ2を挿入し、第1フランジ面2dを突起部4dと当接させる。このとき、第1レンズ2の中心位置は、中心軸線Qからずれていてもよいが、レンズ側面2fとテーパ面4bとの間に、カラー5の先端部が挿入できる程度の隙間が全周にわたって形成されるように配置する。
次に、第2レンズ3の第1フランジ面3dを第1レンズ2の突起部2gと対向させて、挿入ガイド面4aおよびテーパ面4b内に第2レンズ3を挿入し、第1フランジ面3dを突起部2gと当接させて、第1レンズ2に第2レンズ3を重ねる。このとき、第2レンズ3の中心位置は、中心軸線Qからずれていてもよいが、レンズ側面3fとテーパ面4bとの間に、カラー5の先端部が挿入できる程度の隙間が全周にわたって形成されるように配置する。
以上で、レンズ配置工程が終了する。
【0046】
次に、挿入工程を行う。本工程は、テーパ面4b内に配置されたレンズ側面2f、3fと、テーパ面4bとの間に、カラー5の先端部が位置するように、テーパ面4bにテーパ面5aを沿わせてカラー5を挿入する工程である。
本実施形態では、自然状態のカラー5のフランジ外周面5eの外径D5eは、鏡枠4の他端側の開口である挿入ガイド面4aの内径D4aよりも小さいため、カラー5が自然状態でも、フランジ外周面5eが挿入ガイド面4aに全周が当接するということはない。
また、テーパ面5aは、挿入開始時には、テーパ面4bと接触することなく挿入することが可能だが、カラー5の先端部がテーパ面4bの内部に、ある程度挿入されると、図6(a)に示すように、テーパ面5aの全周がテーパ面4bと接触する状態となる。
このとき、カラー5は、まだ自然状態なので、レンズ保持面5bの内径Dは第2レンズ3、第1レンズ2の外径D、Dよりも大きくなっており、径方向に隙間を有している(図6(a)参照)。このため、ただし、光軸O、Oは、カラー5の中心軸線Qに対して必ずしも整列していない。
以上で、レンズ挿入工程が終了する。
【0047】
次に、嵌め込み工程を行う。本工程は、カラー5を押し込み、テーパ面4bにテーパ面5aが倣うとともにレンズ側面2f、3fにレンズ保持面5bが倣うようにカラー5を鏡枠4に嵌め込む工程である。
すなわち、図6(a)に示す状態から、カラー5の後端面5dに押圧力を加えて、カラー5を押し込んでいく。このとき、テーパ面4bは押し込み方向の先端側でテーパ角θに応じて縮径しているため、カラー5のテーパ面5aに、径方向の外力が作用し、スリット5hの幅が縮小する。このため、カラー5が全体として縮径される。
このとき、カラー5は全体としてC字状断面を備える湾曲体であるため、カラー5のテーパ面5aはテーパ面4bの形状に倣って、断面が中心軸線Qと同軸な円弧状の状態で変形する。このため、レンズ保持面5bも、断面が中心軸線Qと同軸な円弧状の形状を保って縮径する。これにより、カラー5が押し込まれるにつれて、レンズ保持面5bとレンズ側面2f、3fとの間の隙間が狭まり、第1レンズ2、第2レンズ3が中心軸線Qに対して調心されていく。
図6(b)に示すように、カラー5のレンズ受け面5iが第2レンズ3の突起部3gに当接したら、押し込みを停止する。
以上で、嵌め込み工程が終了する。
【0048】
本工程においては、レンズ側面2f、3fとテーパ面4bとの間の隙間にカラー5の嵌め込み部5mが嵌め込まれると、軸方向では、各突起部4dおよび第1フランジ面2dと、各突起部2gおよび第1フランジ面3dと、各突起部3gおよびレンズ受け面5iとがそれぞれ当接し、鏡枠4に対して、第1レンズ2、第2レンズ3、およびカラー5が軸方向に位置決めされる。
また、径方向では、テーパ面4bおよびテーパ面5aと、レンズ保持面5bおよびレンズ側面2f、3fとが、それぞれ略密着(密着する場合も含む)する。
【0049】
次に、位置固定工程を行う。本工程は、嵌め込み工程後に、カラー5、鏡枠4、第1レンズ2、第2レンズ3の相対位置関係を固定する工程である。
本実施形態では、図1に示すように、後端面5dの外周部と、挿入ガイド面4aとの間に接着剤を塗布して硬化させて、接着部6を形成する。接着剤の塗布は、円弧状に塗布してもよいし、点付け状態でもよい。
これにより、カラー5と鏡枠4とを固定されるため、嵌め込み工程終了時のカラー5、鏡枠4、第1レンズ2、第2レンズ3の相対位置関係が固定される。
以上で、位置固定工程が終了し、図1に示すようなレンズユニット1の組立が終了する。
【0050】
本実施形態のレンズユニット1およびレンズユニット1の組立方法によれば、レンズ側面2f、3fをレンズ保持面5bで保持するカラー5を、鏡枠4のテーパ面4b内に押し込んで嵌め込み、これによりレンズ保持枠7を形成する。このため、嵌め込みの過程でカラー5が縮径して、レンズ側面2f、3fとレンズ保持面5bとが略密着するととともに、第1レンズ2、第2レンズ3を鏡枠4に対して調心した状態に組み立てることができる。この結果、レンズ保持枠7に対する組立誤差による第1レンズ2、第2レンズ3の偏心を除去するとともに容易に組み立てることができる。
【0051】
[第1変形例]
次に、本実施形態の第1変形例について説明する。
図7(a)は、本発明の第1の実施形態の第1変形例のレンズユニットに用いる内側保持部材の模式的な断面図である。図7(b)は、図7(a)におけるE視の側面図である。図7(c)は、本変形例の内部保持部材の動作説明図である。
【0052】
本変形例のカラー45(内側保持部材)は、図7(a)、(b)に示すように、上記第1の実施形態のレンズユニット1におけるカラー5の変形例であり、レンズユニット1において、カラー5に代えて用いることができるものである。
カラー45は、カラー5のスリット5hの端面5j、5kの間に、端面5j、5kの対向間隔を縮小可能に連結する弾性変形部45aを追加したものである。
また、カラー45は、弾性変形が容易な低剛性の合成樹脂による一体成形で形成されている。
以下、上記第1の実施形態のカラー5と異なる点を中心に説明する。
【0053】
弾性変形部45aの自然状態の形状は、端面5j、5kの間に周方向に沿って延ばされた薄板状とされている。軸方向の位置は、後端面5dと先端面5fとの間の全体に設けられていてもよいが、本変形例では一例として、後端面5d寄りの位置に設けられている。
このため、組付状態において、端面5j、5kの対向間隔を狭める変形を引き起こす外力がカラー45に作用すると、図7(c)に示すように、弾性変形部45aが周方向に座屈変形を起こして、端面5j、5kの対向間隔が縮小する。
また、このような外力が消失すると、カラー45自体の弾性復元力により、端面5j、5kの対向間隔が増大し、弾性変形部45aの形状も自然状態の形状に復元される。
弾性変形部45aの径方向の厚さは、座屈変形して端面5j、5kの対向間隔が最小となるときに、フランジ内周面5gの周長が、第1レンズ2、第2レンズ3の外径の周長よりも短くなるように設定する。
【0054】
このような構成により、本変形例のカラー45は、第1レンズ2、第2レンズ3とテーパ面4bとの間の挿入隙間の間に押し込んで嵌め込むと、カラー5と同様に縮径するため、上記第1の実施形態と同様にして、レンズユニット1の組立に用いることができる。
本変形例では、弾性変形部45aによって、端面5j、5kが周方向に連結されているため、テーパ面4bに倣って縮径する際、端面5j、5kは、軸方向の移動が拘束されているため、例えば、軸方向に互いに反対方向に移動することを防止できる。このため、押し込む際の形状をより安定させることができるため、押し込み作業がより容易となる。
【0055】
[第2変形例]
次に、本実施形態の第2変形例について説明する。
図8(a)は、本発明の第1の実施形態の第2変形例のレンズユニットに用いる内側保持部材の模式的な断面図である。図8(b)は、図8(a)におけるF視の側面図である。図8(c)は、本変形例の内部保持部材の動作説明図である。
【0056】
本変形例のカラー55(内側保持部材)は、図8(a)、(b)に示すように、上記第1の実施形態のレンズユニット1におけるカラー5の変形例であり、レンズユニット1において、カラー5に代えて用いることができるものである。
カラー55は、カラー5のスリット5hを削除した筒状部材であり、カラー45の中心軸線Qを含む断面は、カラー5の中心軸線Qを含む断面と同形状を有している。
以下、上記第1の実施形態のカラー5と異なる点を中心に説明する。
【0057】
カラー55は、カラー5のテーパ面5a、レンズ保持面5b、フランジ部5c、フランジ外周面5e、フランジ内周面5g、レンズ受け面5i、先端面5f、および後端面5dに対応して、それぞれ、テーパ面55a、レンズ保持面55b、フランジ部55c、フランジ外周面55e、フランジ内周面55g、レンズ受け面55i、先端面55f、および後端面55dを備える。カラー55において、テーパ面55aと、レンズ保持面55bとで径方向に挟まれている壁状の部位は嵌め込み部55mを構成している。
また、カラー55は、弾性変形が容易な低剛性の合成樹脂、または塑性変形が容易な低強度の金属によって形成されている。
【0058】
カラー55の自然状態の形状は、フランジ外周面55eの外径、フランジ内周面55gの内径が、それぞれフランジ外周面5eの外径D5e、フランジ内周面5gの内径D5gと等しい。
レンズ保持面55bの軸方向の長さ、すなわち先端面55fからレンズ受け面55iまでの距離は、カラー5のレンズ保持面5bの長さW5bに等しい。
レンズ保持面55bの自然状態の内径D55は、第1レンズ2、第2レンズ3の外径よりも大径であって、組付状態では弾性変形または塑性変形によって、第1レンズ2、第2レンズ3の外径に等しい内径D55’(図8(c)参照)まで変形可能となるように、カラー55の剛性や強度に応じて設定する。
【0059】
このような構成により、本変形例のカラー55は、第1レンズ2、第2レンズ3とテーパ面4bとの間の挿入隙間の間に押し込んで嵌め込むと、カラー5と同様に縮径するため、上記第1の実施形態と同様にして、レンズユニット1の組立に用いることができる。
【0060】
[第3変形例]
次に、本実施形態の第3変形例のレンズユニットについて説明する。
図9は、本発明の第1の実施形態の第3変形例のレンズユニットの模式的な部分断面図である。
【0061】
本変形例のレンズユニット31は、図9に示すように、上記第1の実施形態の第2レンズ3、カラー5に代えて、第2レンズ33(レンズ)、カラー35(内側保持部材)を備える。
以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0062】
第2レンズ33は、上記第1の実施形態の第2レンズ3のレンズ側面3fの外径を、第1レンズ2に対して小径化したものであり、レンズ側面3fに代えて、直径D33(ただし、D33<D)の円筒面からなるレンズ側面33fを備える。
【0063】
カラー35は、カラー5のレンズ保持面5bに代えて、第1レンズ保持面35A(円筒面部)、第2レンズ保持面35B(円筒面部)を備える。カラー35において、テーパ面5aと、第1レンズ保持面35Aおよび第2レンズ保持面35Bとで径方向に挟まれている壁状の部位は嵌め込み部35mを構成している。
第1レンズ保持面35Aは、レンズ保持面5bの軸方向の長さを、組付状態において第1レンズ2のレンズ側面2fを覆う範囲までの長さに短縮した点のみがレンズ保持面5bと異なる。したがって、自然状態における第1レンズ保持面35Aの内径は、レンズ保持面5bの内径D5bと同様である。
第2レンズ保持面35Bは、カラー35の内周部において、第1レンズ保持面35Aのフランジ部5c側の端部から、レンズ受け面5iまでの間において、組付状態の第2レンズ33のレンズ側面33fを覆う範囲に設けられた、第1レンズ保持面35Aと同心状の円筒面である。
第2レンズ保持面35Bの内径は、第1レンズ保持面35Aの自然状態の内径D5bから、第1レンズ2の外径と第2レンズ33の外径との差を引いた大きさに設定されている。
【0064】
このような構成のレンズユニット31は、上記第1の実施形態の第2レンズ3、カラー5を、第2レンズ33、カラー35に代えるのみで、上記第1の実施形態と略同様にして組み立てることができる。
すなわち、本変形例のレンズ配置工程では、第1レンズ2に第2レンズ33を重ねる際、レンズ側面33fがレンズ側面2fと略同軸となるように配置する。それ以外の挿入工程、嵌め込み工程、および位置固定工程は、上記第1の実施形態と同様の工程である。
本変形例では、挿入工程において、第1レンズ保持面35Aが、レンズ側面2fの外周側を囲み、第2レンズ保持面35Bの外周側を囲む状態に挿入され、嵌め込み工程において、テーパ面4bに倣って、カラー35が縮径するのに伴って、第1レンズ保持面35Aおよび第2レンズ保持面35Bが縮径して、それぞれレンズ側面2f、レンズ側面33fに倣う状態に嵌め込まれる。
このように、本変形例は、上記第1の実施形態のレンズユニットの組立方法が、互いの外径が異なる場合でも適用することができる例になっている。
このようなレンズユニット31は、レンズユニット1と同様な効果を奏する。
【0065】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態のレンズユニットについて説明する。
図10は、本発明の第2の実施形態のレンズユニットの一例を示す模式的な断面である。図11(a)は、本発明の第2の実施形態のレンズユニットに用いる内側保持部材の模式的な断面図である。図11(b)は、図11(a)におけるG視の側面図である。図12(a)は、本発明の第2の実施形態のレンズユニットに用いる外側保持部材の模式的な断面図である。図11(b)は、図11(a)におけるH視の側面図である。
【0066】
本実施形態のレンズユニット11は、図10に示すように、上記第1の実施形態の鏡枠4、カラー5、接着部6に代えて、それぞれ、カラー15(外側保持部材)、鏡枠14(内側保持部材)、接着部16a、16bを備える。
なお、第2レンズ3は、上記第1の実施形態と同じものを用いる場合の例で説明するが、本実施形態では、突起部3gを削除した構成も可能である。
以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0067】
カラー15は、内部に、第1レンズ2、第2レンズ3、および鏡枠14を収容して、少なくとも、レンズ側面2f、3fを側方から覆う略筒状部材である。
カラー15の形状は、図11(a)、(b)に示すように、中心軸線Rを中心とする直径D15bの外周面15aと、外周面15aの内周側に中心軸線Rと同軸に形成され軸方向の一端側(図11(a)の左側)から他端までテーパ角θで拡径する円錐面状のテーパ面15b(テーパ穴部)と、テーパ面15bの軸方向の一端から内周側に突出されたストッパ部15cとを備える。
ストッパ部15cに接する位置における自然状態のテーパ面15bの径は、直径D15b(ただし、D<D15b<D15a)である。また、ストッパ部15cの内周面15fは、中心軸線Rと同軸に設けられた直径D15fの円筒面である。直径D15fは、D15bよりも小さく、第1レンズ2、第2レンズ3で構成される光学系の有効光束径の範囲外となる大きさであれば特に限定されない。
【0068】
テーパ面15bの中心軸線Rに沿う長さは、本実施形態では、後述する鏡枠14の軸方向長さよりも長い設定とされている。
【0069】
本実施形態では、カラー15は、レンズユニット11の最外周を構成する部材になっている。したがって、レンズユニット1を組み付ける光学装置等に、外周面15aを光軸に直交する方向の基準面として、レンズユニット11を光学装置に取り付けたり、レンズユニット11の位置を調整したりすることが可能である。
このとき、カラー15の中心軸線Rはレンズユニット11のユニット中心軸を構成している。
カラー15の材質は、上記第1の実施形態の鏡枠4と同様な材質を採用することができる。
【0070】
鏡枠14は、図10に示すように、内部に、第1レンズ2、および第2レンズ3を挿入してそれぞれのレンズ側面2f、3fに側方から当接して保持し、カラー15のテーパ面15bの内側に嵌め込まれる略筒状の部材である。
鏡枠14は、上記第1の実施形態のカラー5のフランジ部5cを削除し、先端面5f側に鏡枠4のレンズ受け部4cと略同様の構造を設けた構成としている。このため、上記第1の実施形態のカラー5と同様に、外力が作用すると容易に変形する部材になっており、外力が作用しない自然状態と、レンズユニット11として組み付けられて変形した状態(以下、組付状態と称する)とでは、形状が異なる。
【0071】
自然状態では、図12(a)、(b)に示すように、鏡枠14は、その中心軸線Sに直交する断面形状が円周の一部を欠くC字状とされた略筒状の部材になっている。すなわち、側面に軸方向および厚さ方向に貫通する端面14j、14kが周方向に幅t14を隔てて対向しており、これらの端面14j、14kによりスリット14h(切れ目)が形成されている。
【0072】
また、鏡枠14の軸方向の一端部には、中心部に向かって全周にわたって突出するレンズ受け部14cが形成されている。
レンズ受け部14cの突出方向の先端には、中心軸線Sを中心とした円状の開口部14fが形成されている。開口部14fの開口径D14fは、上記第1の実施形態の開口部4fの開口径と等しい。
また、レンズ受け部14cの外周部には、カラー15のストッパ部15cと軸方向に係止可能に設けられた係止溝14mが設けられている。
また、レンズ受け部14cは、軸方向の一端側に外周側から中心部に向かうにつれて軸方向の他端側に傾斜する円錐面状の傾斜面14gを有し、軸方向の他端側に中心軸線Sに直交する平面からなる内側面14iを有する。
また、レンズ受け部14cは、図12(b)に示すように、上記第1の実施形態の突起部4dと同様、内側面14i上において、中心軸線Sを中心とする直径dの円周を周方向に等分する3箇所に突起部14dが形成されている。
各突起部14dの突出方向の先端は、中心軸線Sに直交する仮想平面に整列されている。本実施形態では、各突起部14dは、中心軸線Pに沿う方向に第1レンズ2の位置決めを行う基準突起を構成している。
【0073】
また、鏡枠14の内周部には、少なくとも突起部14dから鏡枠14の他端面である後端面14eまで円筒面状に形成されたレンズ保持面14b(円筒面部)を有する。
レンズ保持面14bにおける突起部14dから後端面14eまでの中心軸線Sに沿う長さW14bは、第1レンズ2のフランジ幅wと第2レンズ3のフランジ幅wとの和(w+w)よりも長くなるように設定されている。
また、鏡枠14の外周部には、テーパ角θで、鏡枠14の軸方向の一端側(図12(a)左側)に向かって縮径するテーパ面14a(テーパ面部)を有する。
以下、鏡枠14において軸方向の一方側(レンズ受け部14cの側)の端部を鏡枠14の先端部、軸方向の他方側(後端面14eの側)の端部を鏡枠14の後端部と称する。また、テーパ面14aとレンズ保持面14bとで径方向に挟まれている壁状の部位は、鏡枠14の嵌め込み部14mと称する。
【0074】
組付状態では、スリット14hの開口幅が縮小するに伴って、テーパ面14aの外径、およびレンズ保持面14bの内径が縮径する。このため、図10に示すように、突起部14dで第1レンズ2のフランジ部2cを受け、フランジ部2c、3cを重ねた状態で、テーパ面14aがカラー15のテーパ面15bに倣い、レンズ保持面14bが、レンズ側面2f、3fに倣うように変形される。
鏡枠14がカラー15、第1レンズ2、第2レンズ3に比べて低剛性、低強度の材料で構成されている場合、鏡枠14は、組付状態で弾性変形したり、塑性変形したりすることも可能である。
【0075】
スリット14hの幅t14は、上記第1の実施形態のスリット5hの幅tと同様に設定する。
レンズ保持面14bは、中心軸線Sを中心として直径D14b(ただし、D<D14b、D<D14b)の円筒面である。直径D14bは、上記第1の実施形態のレンズ保持面5bの直径D5bに等しい。
テーパ面14aは、自然状態では、係止溝14mと接する位置で直径D14aを有している。
また、テーパ面14aの軸方向に沿う長さは、カラー15のテーパ面15bの軸方向に沿う長さよりも長くなるように設定されている。
テーパ面14aの直径D14aは、組付状態で、カラー15のテーパ面15b内に鏡枠14を収めることができるように、適宜設定する。
【0076】
鏡枠14の材質としては、テーパ面14aを、カラー15のテーパ面15bに押し込んでいく際に、テーパ面15bから受ける外力により、容易に変形できる材質であれば、特に限定されず、上記第1の実施形態のカラー5と同様の材質を採用することができる。
【0077】
接着部16a、16bは、後述するように、鏡枠14の内部に、第1レンズ2および第2レンズ3を配置して、カラー15内に鏡枠14を嵌め込んで組み立ててから、鏡枠14に対する第1レンズ2、第2レンズ3、およびカラー15の相対位置関係を固定するものである。
接着部16aは、第2レンズ3と鏡枠14とを固定するもので、図10に示すように、第2フランジ面3eの外周部と鏡枠4のレンズ保持面14bとにまたがって塗布された接着剤を硬化させたものである。
接着部16bは、鏡枠14とカラー15を固定するもので、鏡枠14の後端面14eの外周部とカラー15のテーパ面15bとにまたがって塗布された接着剤を硬化させたものである。
接着部16a、16bは、上記第1の実施形態の接着部6と同様に、周方向に連続して円弧状に形成されていてもよいし、周方向に離間して点付け状態に形成されていてもよい。
接着部16a、16bを形成する接着剤としては、第2レンズ3、鏡枠14、およびカラー15の材質に応じて、良好な接着強度が得られる種類を適宜選定することができる。
接着部16a、16に好適な接着剤としては、例えば、UV硬化型接着剤、二液性接着剤、熱硬化性接着剤等の接着剤を挙げることができる。
【0078】
次に、レンズユニット11における第1レンズ2、第2レンズ3、鏡枠14、およびカラー15の相互の位置関係について、図10を参照して説明する。
第1レンズ2および第2レンズ3は、上記第1の実施形態と同様に重ね合わされている。第1レンズ2および第2レンズ3からなるレンズ対は、レンズ保持面14b内に挿入され、一端側の第1フランジ面2dが、第1レンズ2は、鏡枠14の各突起部14dに当接されている。
鏡枠14は、カラー5のテーパ面15b内に押し込まれて変形し、組付状態となり、テーパ面14aがテーパ面15bに倣うとともに、レンズ保持面14bがレンズ側面2f、3fに倣うように、第1レンズ2および第2レンズ3とカラー15との間に嵌め込まれ、接着部16bによって軸方向の位置が固定されている。
第1レンズ2および第2レンズ3は、面間間隔が予め設定された面間間隔となるように、突起部14d側に押し付けられており、接着部16bによって第2レンズ3が鏡枠14に固定されることで、軸方向の位置が固定されている。
【0079】
鏡枠14のテーパ面14aはカラー15のテーパ面15bに対して、径方向にがたつきなく当接している。本実施形態では、テーパ面14aとテーパ面15bとが密着して当接することにより、がたつかない状態になっている。
また、鏡枠14のレンズ保持面14bはレンズ側面2f、3fに対して、径方向にがたつきなく当接している。本実施形態では、レンズ保持面14bがレンズ側面2f、3fと密着して当接することにより、がたつかない状態になっている。
このような位置関係により、第1レンズ2、第2レンズ3の光軸O、O、および鏡枠14の中心軸線Sは、それぞれの部品加工誤差に起因する偏心誤差の範囲内で、カラー15の中心軸線Rに整列されている。
【0080】
このような構成により、カラー15は、一定のテーパ角θを有するテーパ穴部であるテーパ面15bが設けられた外側保持部材を構成している。
また、鏡枠14は、外周側にテーパ角θを有するテーパ面部であるテーパ面14aを、内周側に、第1レンズ2、第2レンズ3のレンズ側面2f、3fを保持する円筒面部であるレンズ保持面14bをそれぞれ有する内側保持部材を構成している。
カラー15および鏡枠14の組立体は、レンズを内部に保持するレンズ保持枠17を構成している。
また、本実施形態では、レンズを構成するレンズ対である第1レンズ2、第2レンズ3の一端側である第1フランジ面2dは、鏡枠14に設けられたレンズ受け部14cによって受けられている。
【0081】
次に、レンズユニット11の組立方法について説明する。
レンズユニット11は、上記第1の実施形態の鏡枠4、カラー5を、カラー15、鏡枠14に代えるのみで、上記第1の実施形態と略同様にして、レンズ配置工程、挿入工程、嵌め込み工程、および位置固定工程を行うことにより組み立てることができる。
以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0082】
本実施形態のレンズ配置工程では、第1レンズ2を鏡枠14の突起部14d上に配置し、第1レンズ2の各突起部2g上に、第2レンズ3の第1フランジ面3dを重ねて配置する点が異なる。第1レンズ2、第2レンズ3の光軸に直交する方向の位置は、レンズ保持面14b内であれば、特に限定されない。
本実施形態の挿入工程では、第1レンズ2、第2レンズ3が挿入された鏡枠14を、カラー15のテーパ面15b内に鏡枠14の先端部から挿入する点が異なる。
これにより、レンズ保持面14b内に配置されたレンズ側面2f、3fと、カラー15のテーパ面15bとの間に、鏡枠14の嵌め込み部14mが位置するとともに、テーパ面15bにテーパ面14aが沿う状態で、カラー15に鏡枠14が挿入される
本実施形態の嵌め込み工程では、鏡枠14をその後端側から押し込み、テーパ面15bにテーパ面14aが倣うとともにレンズ側面2f、3fにレンズ保持面14bが倣うように鏡枠14をカラー15に嵌め込む点が異なる。
このとき、本実施形態では、レンズ対の一端側は、レンズ受け部14cによって受けられているものの、レンズ対の他端側である第2フランジ面3eは軸方向に移動するおそれがあるため、鏡枠14を押し込む間、適宜の押圧治具を用いて第2フランジ面3eまたは各突起部3gを、鏡枠14の先端側に向かって押圧する。これにより、鏡枠14を押し込む間、突起部14dおよび第1フランジ面2dと、突起部2gおよび第1フランジ面3dとが、軸方向に当接した状態を保つことができる。
本実施形態の位置固定工程では、接着部16a、16bを形成するため、第2レンズ3を押圧治具で押圧した状態で、接着剤をそれぞれの位置に塗布して硬化させる点が異なる。
以上で、図10に示すようなレンズユニット11の組立が終了する。
【0083】
本実施形態のレンズユニット11およびレンズユニット11の組立方法によれば、レンズ側面2f、3fをレンズ保持面14bで保持する鏡枠14を、カラー15のテーパ面15b内に押し込んで嵌め込み、レンズ保持枠17を形成する。このため、嵌め込みの過程で鏡枠14が縮径して、レンズ側面2f、3fとレンズ保持面14bとが略密着するととともに、第1レンズ2、第2レンズ3をカラー15に対して調心した状態に組み立てることができる。この結果、レンズ保持枠17に対する組立誤差による第1レンズ2、第2レンズ3の偏心を除去するとともに容易に組み立てることができる。
【0084】
[第4変形例]
次に、本実施形態の変形例(第4変形例)のレンズユニットについて説明する。
図13は、本発明の第2の実施形態のレンズユニットの変形例(第4変形例)を示す模式的な断面である。
【0085】
本変形例のレンズユニット11は、図13に示すように、上記第2の実施形態の第2レンズ3、鏡枠14に代えて、第2レンズ34(レンズ)、鏡枠24(内側保持部材)を備える。また、鏡枠24とカラー15とは、レンズ保持枠27を構成している。
以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0086】
第2レンズ34は、上記第1の実施形態の第2レンズ3のレンズ側面3fの外径を、第1レンズ2に対して大径化したものであり、レンズ側面3fに代えて、直径D34(ただし、D34>D)の円筒面からなるレンズ側面34fを備える。
【0087】
鏡枠24は、鏡枠14のレンズ保持面14bに代えて、第1レンズ保持面24A(円筒面部)、第2レンズ保持面24B(円筒面部)を備える。鏡枠24において、テーパ面14aと、第1レンズ保持面25Aおよび第2レンズ保持面25Bとで径方向に挟まれている壁状の部位は嵌め込み部24mを構成している。
第1レンズ保持面24Aは、レンズ保持面14bの軸方向の長さを、組付状態において第1レンズ2のレンズ側面2fを覆う範囲までの長さに短縮した点のみがレンズ保持面14bと異なる。したがって、自然状態における第1レンズ保持面24Aの内径は、レンズ保持面14bの内径D14bと同様である。
第2レンズ保持面24Bは、鏡枠24の内周部において、第1レンズ保持面24Aの後端面14e側の端部から、後端面14eまでの間において、組付状態の第2レンズ34のレンズ側面34fを覆う範囲に設けられた、第1レンズ保持面24Aと同心状の円筒面である。
第2レンズ保持面24Bの内径は、第1レンズ保持面24Aの自然状態の内径D14bに、第1レンズ2の外径と第2レンズ33の外径との差を加えた大きさに設定されている。
【0088】
このような構成のレンズユニット21は、上記第2の実施形態の第2レンズ3、鏡枠14を、第2レンズ34、鏡枠24に代えるのみで、上記第2の実施形態と同様にして組み立てることができる。
ただし、本変形例のレンズ配置工程では、第1レンズ2、第2レンズ34を重ねた状態に配置すると、第1レンズ2が第1レンズ保持面24A内に配置され、第2レンズ34が第2レンズ保持面24B内に配置される。
このため、挿入工程および嵌め込み工程では、テーパ面15bに倣って、鏡枠24が縮径するのに伴って、第1レンズ保持面24Aおよび第2レンズ保持面24Bが縮径して、それぞれレンズ側面2f、レンズ側面33fに倣う状態に嵌め込まれる。
このように、本変形例は、上記第2の実施形態のレンズユニットの組立方法が、互いの外径が異なる場合でも適用することができる例になっている。
このようなレンズユニット21は、レンズユニット21と同様な効果を奏する。
【0089】
なお、上記の各実施形態、各変形例の説明では、一例として、レンズが光軸方向に互いに当接された1組のレンズ対からなるレンズ群を構成している場合の例で説明したが、レンズの面構成や屈折力の大きさ、屈折力の正負等のレンズ仕様は特に限定されない。また、レンズは、1枚構成でも、3枚以上の構成でもよい。
また、3枚以上の場合、光軸方向に隣接するレンズ同士が互いに当接したレンズ対を構成してもよいし、例えば間隔リングなどを介して離間して位置されていてもよい。
また、互いに当接する複数のレンズ対が、例えば間隔リングなどを介して離間して位置されていてもよい。
【0090】
また、上記の各実施形態、各変形例の説明では、レンズが合成樹脂成形で作製された場合の例で説明したが、ガラスモールド成形により作製してもよいし、ガラス研磨によって作製してもよい。
例えば、ガラス研磨やガラスモールドによって作製する場合、フランジ部やフランジ部に設けられた突起部などは適宜省略することができる。この場合、光軸方向の位置決めはレンズ有効領域外の曲面や平面などを用いることができる。
【0091】
また、上記の各実施形態および各変形例の説明では、内側保持部材が、嵌め込み工程で縮径することにより、内側保持部材の円筒面部がレンズ側面に倣う場合の例で説明したが、内側保持部材が拡径可能に設けられている場合には、自然状態の円筒面部をレンズの外径より小径に形成した構成でもよい。
この場合、円筒面部内にレンズを押し込んで配置して、円筒面部をレンズ側面に倣わせた状態に組み立てて、内筒面部およびテーパ面部を拡径してから、内側保持部材を外側保持部材のテーパ穴部に嵌め込むことが可能である。
【0092】
また、上記の各実施形態および各変形例の説明では、円筒面部、テーパ面部、テーパ穴部が、それぞれ円筒面、円錐面等の滑らかな表面を有するものとして説明したが、内側保持部材の縮径に伴って、円筒面部によるレンズの保持位置が外側保持部材の中心軸線に整列することができる場合には、滑らかな表面を有しなくてもよい。
例えば、円筒面部には、レンズ側面の一部と当接する凸部が設けられていてもよいし、レンズ側面と当接しない凹部が設けられていてもよい。
また、テーパ面部、テーパ穴部には、円錐面から変形容易な突起部が突出していたり、円錐面の表面に凹溝が形成されたりしていてもよい。
また、円筒面部、テーパ面部、テーパ穴部は、粗面から構成されていてもよい。
【0093】
また、上記第2変形例では、内側保持部材が、切れ目を有しない筒状部材であって、全体的に弾性変形または塑性変形して嵌め込まれる場合の例で説明したが、内側保持部材が筒状部材であっても、周方向に剛性や強度が異なる構成とすることで、一部が弾性変形または塑性変形して縮径する構成も可能である。
例えば、上記第1の実施形態のカラー5のスリット5hに、カラー5よりも低剛性の弾性部材を充填することで、弾性変形部を形成した構成とし、この弾性変形部が周方向に圧縮変形することで、縮径が起こるようにすることができる。
【0094】
また、上記第2の実施形態では、第2レンズ3と鏡枠14とを接着部16aによって固定する場合の例で説明したが、第2レンズ3を第2フランジ面3e側から押圧した状態で鏡枠14と係合したり、接着固定したりする固定部材を設けてもよい。
【0095】
また、上記の各実施形態、および各変形例で説明した構成要素は、本発明の技術的思想の範囲で適宜組み合わせたり、削除したりして実施することができる。
例えば、上記第1の実施形態の鏡枠4の雄ねじ部4eを削除して円筒面とした構成としてもよい。
また、例えば、上記第2の実施形態の鏡枠14に上記第1変形例の弾性変形部45aを追加した構成としてもよい。また、鏡枠14を上記第2の変形例のような縮径可能な筒状部材に置き換えてもよい。
【符号の説明】
【0096】
1、11、21、31 レンズユニット
2 第1レンズ(レンズ)
2d、3d 第1フランジ面
2e、3e 第2フランジ面
2f、3f、33f、34f レンズ側面
2g、3g 突起部
3、33、34 第2レンズ(レンズ)
4 鏡枠(外側保持部材)
4b、15b テーパ面(テーパ穴部)
4c レンズ受け部
4d、14d 突起部
5、35、45、55 カラー(内側保持部材)
5a、14a、55a テーパ面(テーパ面部)
5b、14b、55b レンズ保持面(円筒面部)
5h、14h スリット(切れ目)
5i、55i レンズ受け面
6、16a、16b 接着部
7、17、27 レンズ保持枠
14、24 鏡枠(内側保持部材)
14d 突起部
15 カラー(外側保持部材)
24A、35A 第1レンズ保持面(円筒面部)
24B、35B 第2レンズ保持面(円筒面部)
45a 弾性変形部
、O 光軸
P、Q、R、S 中心軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズと、
前記レンズを内部に保持するレンズ保持枠と、を含み、
前記レンズ保持枠は、
一定のテーパ角を有するテーパ穴部が設けられた外側保持部材と、
外周側に前記テーパ角に等しいテーパ角のテーパ面部を、内周側に前記レンズのレンズ側面を保持する円筒面部をそれぞれ有する内側保持部材と、
を備え、
前記外側保持部材または前記内側保持部材には、前記レンズの一端側を光軸方向に受けるレンズ受け部が設けられ、
光軸方向の一端側が前記レンズ受け部によって受けられた前記レンズのレンズ側面と前記外側保持部材との間において、前記テーパ穴部に前記テーパ面部が倣うとともに前記レンズ側面に前記円筒面部が倣うように前記内側保持部材が嵌め込まれている
ことを特徴とする、レンズユニット。
【請求項2】
前記内側保持部材は、
軸方向の両端部の間に貫通する切れ目を有し、
前記円筒面部の内周長が前記レンズの外周長以下となる
ことを特徴とする、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項3】
前記レンズは、
光軸方向に互いに当接されたレンズ対を1対以上備えるレンズ群からなる
ことを特徴とする、請求項1または2に記載のレンズユニット。
【請求項4】
前記レンズは、
外径が異なる複数のレンズを含み、
前記円筒面部は、
前記複数のレンズのそれぞれの外径に対応して複数設けられている
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のレンズユニット。
【請求項5】
レンズをレンズ保持枠の内部に保持するレンズユニットの組立方法であって、
前記レンズ保持枠は、一定のテーパ角を有するテーパ穴部が設けられた外側保持部材と、外周側に前記テーパ角に等しいテーパ角のテーパ面部を、内周側に前記レンズのレンズ側面を保持する円筒面部をそれぞれ有する内側保持部材と、を備え、前記外側保持部材または前記内側保持部材には、前記レンズの一端側を光軸方向に受けるレンズ受け部が設けられ、
前記レンズユニットの組立方法は、
前記レンズ受け部に前記レンズの光軸方向の一端側を配置するレンズ配置工程と、
前記レンズ受け部に配置された前記レンズのレンズ側面と前記外側保持部材との間に前記内側保持部材が位置するように、前記外側保持部材の前記テーパ穴部に前記テーパ面部を沿わせて前記内側保持部材を挿入する挿入工程と、
前記内側保持部材を押し込み、前記テーパ穴部に前記テーパ面部が倣うとともに前記レンズ側面に前記円筒面部が倣うように前記内側保持部材を前記外側保持部材に嵌め込む嵌め込み工程と、
該嵌め込み工程後に、前記内側保持部材、前記外側保持部材、および前記レンズの相対位置関係を固定する位置固定工程と、
を備えることを特徴とする、レンズユニットの組立方法。
【請求項6】
前記内側保持部材は、軸方向の両端部の間に貫通する切れ目を有し、
前記挿入工程では、
前記内側保持部材の前記円筒面部の内径が、前記レンズの外径より大きくなるように、前記切れ目を周方向に離間しておき、
前記嵌め込み工程では、
前記内側保持部材を押し込む際に、前記テーパ穴部に前記テーパ面部が倣うことにより前記切れ目の周方向の間隔を減少して、前記円筒面部が前記レンズ側面に倣うようにする
ことを特徴とする、請求項5に記載のレンズユニットの組立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−113986(P2013−113986A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259211(P2011−259211)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】