説明

レンズ体

【課題】光のロスがないレンズ体の提供。
【解決手段】レンズ部と該レンズ部を支持する支持部とを具備する発光素子用のレンズ体であって、該支持部は、前記レンズ部の底面および/または側面に接合する天板部および該天板部に結合し、発光素子基板に嵌合する嵌合部を有する脚部からなり、前記レンズ部の発光素子と対向するレンズ部の底面および/または前記天板部には、発光素子とレンズ部の底面および/または前記天板部との間の空気層による光のロスを排除するための透光性を有する低硬度材料からなる緩衝部を具備する前記レンズ体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子用のレンズ体に関し、とくに発光ダイオード等の発光素子を用いた発光デバイスに好適に用いられるレンズ体に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)のような発光素子において、使用目的によっては、封止材上に発光した光の進行方向を規制するための集光レンズ体が設けられる場合がある(特許文献1)。このような集光レンズ体には、素材としてはエポキシ樹脂や、シクロオレフィン共重合体樹脂(以下、COC樹脂と言うことがある。)が用いられ、成形方法としてはトランスファー成形や射出成形が用いられている。LEDに用いられるこれらのアウターレンズ体は、LED光源の上に設置され用いられる(特許文献2〜4)。
【0003】
これら従来のレンズ体においては、多くの場合、レンズ体と光源との間に空気層が設けられている。その理由は、空気層の断熱効果により、発光素子が発する熱や紫外線により上記エポキシ樹脂やCOC樹脂などレンズの素材である樹脂が劣化するのを防ぎ、また、発光素子に接続されているワイヤや発光素子自体を、レンズ体または他の部材(脚部等)との接触による物理的な破損から保護するためである。さらに、かかる空間を保持することを前提とすることによって、レンズ体を種々の大きさの発光素子に取り付けることが可能となる。
【0004】
しかし、これらの従来のレンズ体には以下のような問題がある。すなわち、かかる空気層が存在するために、LED光源とレンズ体の間に生じる空気界面の存在によりレンズの入射光側表面で反射が生じ、透過光にロスが発生している。
かかる問題に対して適切な解決方法が見いだされていないため、上記のようなレンズ体においては、レンズ体の材料の劣化および光のロスのいずれもがないレンズ体を作製することができないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−119769号公報
【特許文献2】特開2003−307663号公報
【特許文献3】特開平10−154832号公報
【特許文献4】特開2000−150968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明は、レンズ部と発光素子との間で発生する光のロスがないレンズ体を提供することを目的とする。
また、発光素子の大きさや基板に設置された発光素子の高さのバラツキに影響されることなく効率よく設置できる発光素子用のレンズ体であり、振動などの機械的外力に対しても安定な設置状態が維持できる発光デバイスを製造することができる発光素子用のレンズ体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願人らは、上記課題に鑑み鋭意研究を重ねた結果、特定の部材をレンズ体に具備せしめることによって従来のレンズ体に必要とされていた発光素子とレンズ体との間の空気層を排除して、驚くべきことに上記課題が解決されることを見いだし、さらに研究を進めた結果本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の各発明に関する。
(1)レンズ部と該レンズ部を支持する支持部とを具備する発光素子用のレンズ体であって、該支持部は、前記レンズ部の底面および/または側面に接合する天板部および該天板部に結合し、発光素子基板に嵌合する嵌合部を有する脚部からなり、前記レンズ部の発光素子と対向するレンズ部の底面および/または前記天板部には、発光素子とレンズ部の底面および/または前記天板部との間の空気層による光のロスを排除するための透光性を有する低硬度材料からなる緩衝部を具備する前記レンズ体。
(2)低硬度材料が、ゴム類およびゲル類からの1種または2種以上である、前記レンズ体。
(3)ゲル類が、フッ素樹脂のゲルまたはシリコーン樹脂のゲルから選択される1種または2種以上である、前記レンズ体。
(4)レンズ部がレンズ部がエポキシ樹脂、フッ素樹脂、ガラス、COC樹脂およびシリコーン樹脂のいずれかからなる、前記レンズ体。
(5)レンズ部がシリコーン樹脂からなり、緩衝部がシリコーンゴムからなる、前記レンズ体。
(6)前記いずれかの記載のレンズ体と発光素子とを備えた発光デバイス。
(7)下記工程を含む、前記(1)に記載のレンズ体を製造する方法で、
(a)レンズ部と支持部とを具備するレンズ体を成形する工程、および
(b)前記支持部の天板部に緩衝部を設ける工程。
【0009】
本発明は、低硬度材料からなる透光性の緩衝部をレンズ体に具備せしめることによって従来のレンズ体に必要とされていた空気層を排除し、光のロスを減じることを可能とするものである。本発明のレンズ体においては前記のとおり透光性の緩衝部が設けられることによって、従来必要とされていた空気層が排除されていてもレンズ部と発光素子とは隔てられている。したがって、本発明のレンズ体においては、従来の空気層を具備するレンズ体と同等またはそれ以上に、レンズ体の材料の劣化が防止されることはいうまでもない。
【発明の効果】
【0010】
(1)本発明によれば、発光素子から出た光がレンズ表面で反射することによる光のロスを、少なくとも従来のレンズ体より小さいかまたは実質的になくすことができるレンズ体が提供される。
(2)本発明のうち、低硬度材料が、ゴム類およびゲル類からの1種または2種以上であるものによれば、好ましい弾性による反発力により、発光素子の表面に低硬度材料が密着し、光のロスがさらに少なくなると同時に、振動に対しても安定した構造の発光デバイスが維持され、発光素子の表面も保護されるレンズ体が提供される。
(3)本発明のうち、ゲル類が、フッ素樹脂のゲルまたはシリコーン樹脂のゲルから選択される1種または2種以上であるものによれば、耐熱性が高まり、劣化のないレンズ体が提供される。
(4)本発明のうち、レンズ部がエポキシ樹脂、フッ素樹脂、ガラス、COC樹脂およびシリコーン樹脂のいずれかからなるものによれば、耐熱性があり、レンズ特性がよく、取り扱いに優れたレンズ体が提供される。
(5)本発明のうち、レンズ部がシリコーン樹脂からなり、緩衝部がシリコーンゴムからなるものによれば、さらに取り扱いに優れたレンズ体が提供される。
(6)本発明の上記いずれかのレンズ体と発光素子とを備えた発光デバイスによれば、レンズ部と発光素子との間で、発光素子から出た光がレンズ表面で反射することによる光のロスがなく、レンズ部の材料の劣化も従来のものと同等以下に抑えられる発光デバイスが提供される。また、発光素子の大きさや基板に設置された発光素子の高さのバラツキに影響されることなく効率よくレンズ体が基板に設置されて、振動などの機械的外力に対しても安定な設置状態を好ましく維持することができる。
(7)本発明のレンズ体の製造方法によれば、レンズ部の材料の劣化を防止し、発光素子の光のロスを、従来のレンズ体より小さいかまたは実質的になくすことができ、発光素子の基板への設置のバラツキがあっても安定した設置ができるレンズ体を効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来のレンズ体を示す図である。
【図2】本発明のレンズ体のうち、緩衝部が曲面を含み、発光素子を覆う形態を有する一態様を示す側面図である。
【図3】本発明のレンズ体のうち、緩衝部が曲面を含み、該緩衝部が発光素子に接している一態様を示す側面図である。
【図4】本発明のレンズ体のうち、緩衝部が平面を含み、発光素子を覆う形態を有する一態様を示す側面図である。
【図5】本発明のレンズ体のうち、緩衝部が平面を含み、該緩衝部が発光素子に接している一態様を示す側面図である。
【図6】本発明のレンズ体のうち、緩衝部が平面を含み、発光素子を覆う形態を有する他の一態様を示す側面図である。
【図7】本発明のレンズ体のうち、緩衝部が平面を含む他の一態様のうち、該緩衝部が発光素子に接している一態様を示す側面図である。
【図8】本発明のレンズ体のうち、天板部が中央部に空間を有するリング状のものの平面図およびレンズ部の中心を通るA−aによる断面図である。
【図9】本発明のレンズ体のうち、天板部が中央部に空間を有するリング状である他の態様を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において、「レンズ体」とは、光路を変える機能を持つ一般的に呼ばれるレンズ体自体のほかに、レンズ本体としてのレンズ部に加えて、該レンズ部に結合したそれ以外の部分からなるものを意味する。したがって、一般的に言う上記本体としてのレンズ体は、本発明において「レンズ部」と呼ぶ。
【0013】
本発明において、「透光性」、「透光性がある」または「透光性を有する」とは、光を吸収または反射によって損失せしめることが実質的にないことを意味する。したがって、透光性があるものには、透明であるものや、特定の波長の光に対してのみ透過性を有するものが包含される。
【0014】
本発明において、「支持部」とは、典型的には本発明のレンズ体を発光素子基板等に設置するための1つまたは2つ以上の部材であって、レンズ部の底面および/または側面に接合する天板部および該天板部に結合する脚部からなり、該脚部は発光素子基板を嵌合する嵌合部を具備する。
【0015】
本発明において、「低硬度材料」とは、レンズ部の材料に比較して硬度が小さい材料を意味する。典型的には、ゲル類およびゴム類を含有する材料を意味する。なお、「ゲル」および「ゴム」とは、大変形させても元の形状に回復することができるゴム弾性を有する材料を意味し、最も硬度が小さい部類のものを「ゲル」と称し、ゴム状分子の網目状の架橋の数はゴムよりも少ないものをいう。「ゲル」より大きい硬度を有するものを「ゴム」という。また、ゴムより大きい硬度を有し、大変形させると構造が破壊したり形状が回復しないものは「樹脂」である。すなわち、本明細書において、「ゲル」、「ゴム」および「樹脂」とは、同一成分からなる材料であっても加えられる力に対して、変形する度合や硬度を指標として相対的に比較して用いることにより本発明の作用効果を実現することができる材料である。
【0016】
以下に、本発明についてさらに詳細に説明する。
従来のレンズ体およびかかるレンズ体を用いる発光デバイスの例を図1に、本発明のレンズ体および本発明のレンズ体を用いて製造した発光デバイスの例を図2〜9に示した。
図2〜9に示されるように、本発明のレンズ体1は、レンズ部2およびレンズ部2に結合した支持部9を具備する発光素子用のレンズ体であって、支持部9はレンズ部2のレンズ底面10または側面に接合する天板部3および天板部3に結合する脚部8からなる。レンズ底面10と発光素子5との間には透光性を有する低硬度材料からなる緩衝部4が実質的に空気層のない状態で具備される。
【0017】
かかる構造、とくに天板部3及び又はレンズ底面10に結合し、レンズ部2のレンズ面に対向している緩衝部4を具備することによって、本発明のレンズ体1は発光素子5から発せられる光のロスを実質的になくすことができる。緩衝部4は低硬度材料からなるため、本発明のレンズ体は、緩衝部4と発光素子5とが密着することができ、外力に対しても構造が安定である。
【0018】
本発明のレンズ体1には、図2〜7に示されるように、天板部3および発光素子基板に嵌合する嵌合部7を有する脚部8を具備する支持部9が設けられる。脚部8は嵌合部7を有することによって、発光素子5が設置されている基板6に簡便にレンズ体1の設置を可能にする。嵌合部7を脚部8に具備するものにおいては、嵌合部7が基板6に篏合することによって、レンズ部2と基板6との位置が定まり、緩衝部4と発光素子5とが密着され、空気層がより完全に排除されるため好ましい。脚部8の個数および形状は限定されないところ、レンズ部2や基板6の形状に応じて変更し得る。例えば、基板6の形状が方形の薄板である場合には、該薄板の四隅または四辺をそれぞれ支持するように、4本の脚部8を設ければよい。また、脚部8は2つ以上の平面状の部材であってもよいし、基板が円板状であれば、円弧状の曲面をなす柱であってもよいし、円柱であってもよく、またはそれらが脚部が一体となって空間を形成する形状であってもよい。
【0019】
本発明の態様における天板部3の形状は図8および図9に示すように、レンズ部2への透光の障害とならないように中央部に空間を有するリング状になっている。かかる態様における天板部3は、レンズ底面10の外周部の一部および/またはレンズ部2の側面に接合する形状を有する。なお、天板部の素材が透光性である場合は、天板部3はレンズ底面全体に接合する板状の形状であることも可能である。かかる場合には、緩衝部4は天板部3に接合される形態を採る。
また、本発明のレンズ体1における脚部8は、助剤の添加により、脚部のうちレンズ体に接していない部分を白色または黒色を包含する有色とし、レンズ体に接している部分を透明とすると、集光効率が高くなり好ましい。とくに脚部のうちレンズ体に接していない部分を白とした場合には、光が反射して戻されるため、集光効率がより高くなるため特に好ましい。
【0020】
本発明のレンズ体において、緩衝部4と発光素子5とは、相互にわずかな圧力で圧着する状態または発光デバイスが許容する範囲内の圧力で密着する。かかる態様における緩衝部4の厚みは、レンズ底面と発光素子面との間に隙間(空気層)が実質的にない状態とする厚みであると好ましく、レンズ底面と発光素子上部との距離より若干大きい厚みであって、緩衝部が圧縮することによって、レンズ底面及び発光素子に圧着して空気層を排除することが好ましい。また、未使用時は不完全な接触状態であっても発光素子が発光したとき熱膨張によって、密着するものも本発明に包含される。緩衝部が圧縮して調節できる距離は、発光素子を設置した際の発光素子の基板からの高さのバラツキの範囲をカバーする距離であれば、発光ダイオードを効率よく製造することができるため好ましい。
緩衝部4の最大厚みは、特に限定されないが、適度に圧縮された状態で、レンズ底面と発光素子基板の間に設置できる厚さであることが好ましい。
【0021】
かかる構成によって本発明のレンズ体においては、発光素子5から発せられる光のロスをより小さくすることができる。かかる態様においては、基板6を取り付けた際に、緩衝部4は発光素子5に接するか、発光素子5がわずかに侵入して接する状態であってもよく(図3、5および7)、または発光素子5によって部分的にもしくは全体が窪みを有する形状(図2、4および6)となっていてもよい。
【0022】
また、緩衝部4の形状は限定されず、図2および3に示すような曲面を含む形状のほか、図4〜7に示すような平面を含む形状であってもよい。また、緩衝部4は、レンズ底面または発光素子と接する部分にのみ低硬度材料を用いたものであってもよい。
【0023】
上記のとおり、本発明においては緩衝部の最大厚みを有する部分は典型的には発光素子に密着するため、緩衝部は材質として低硬度のものが好適に用いられる。かかる場合、発光素子およびその基板への設置がより容易であるうえに、外力に対しても安定な構造となり、また、発光素子の表面が保護されやすい。
【0024】
本発明において緩衝部4に用いられる透光性を有する低硬度の材料には、多くの高分子物質が包含されるところ、ゴム類またはゲル類が好ましい。ゴム類には、天然ゴム、合成ゴムが包含される。合成ゴムとしては、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリルゴム、スチレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムまたはシリコーンゴムが好ましく、耐熱性、化学的安定性の観点からフッ素ゴム、シリコーンゴムが好ましく、更に、架橋によってレンズ部との結合をさせやすい等の観点から、シリコーンゴムが最も好ましい。
また、緩衝部4の材料としてレンズ部の材料より屈折率が高いものは、発光素子5から発せられた光を反射することなく、より効率的にレンズ部2の方向に集光せしめることができるため好ましい。
【0025】
シリコーンゴムとしては、その種類が特に限定されるものではなく、例えばジメチルポリシロキサンなど、シリコーン製造販売会社からシリコーンゴムコンパウンドとして市販されている各種製品を適宜選択して用いることができる。具体的には、例えば信越化学工業株式会社製のKE−951U(商品名)、KE−550U(商品名)、東レ・ダウコーニング株式会社製のSH−851U(商品名)、SE1740(商品名)、SE1821(商品名)、CY52−205(商品名)、GE東芝シリコーン株式会社製のTSE−221−5U(商品名)等が挙げられる。これらのうち、CY52−205は高粘度タイプであるため、ポッティング成形の際に表面張力により盛り上がった形状を成形しやすく、かかる形状のレンズ体の作製にも好適である。
ゲル類としてはシリコーンゲルが好ましい。シリコーンゲルの例としては、東レ・ダウコーニング株式会社製のSE1880(商品名)、SE1886(商品名)、CY52−276(商品名)が挙げられ、これらのうちCY52−276は接点障害となる低分子シロキサン対策品のため、電子部品の使用に適している。
シリコーンエラストマーを使用する場合、上記シリコーンゴムコンパウンドに、シリコーン製造販売会社により指定されている加硫剤と、必要に応じて着色料または顔料等とを配合し、均一に混練した後、所望の形状となるように加熱成形することによって、本発明における低硬度材料を得てもよい。
また、本発明の弾性体として、熱可塑性エラストマーも好適に用いられる。
【0026】
なお、これらの低硬度の材料は、1種類を単独で用いることができるが、2種類以上のものを適切な割合で配合して用いてもよいし、硬度のある材料とともに層状に、弾性のある緩衝部として用いてもよい。
また、上記低硬度の材料には、ガラスファイバー、ガラスビーズ等の充填材、YAG蛍光体などの無機蛍光顔料やペリレン系などの有機蛍光剤、紫外線防止剤、可塑剤、着色料、顔料等の補助剤を低硬度性および透光性を損なわない範囲で適宜添加して用いることができる。
【0027】
本発明のレンズ体のレンズ部の材質は、樹脂、ガラス、ゴム等のうち、透光性を有する材料であればとくに限定されない。取り扱いの観点から、樹脂が好ましい。
本発明において、樹脂として用いられるものとして、天然樹脂にはロジン、アルカロイド樹脂が包含され、また、合成樹脂にはポリスチレン、ポリ塩化ビニル、透明ポリイミド、シクロオレフィン共重合体樹脂(COC樹脂(単一重合のシクロオレフィンポリマーも含む))、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂(シリコーンレジン)、ABS樹脂、PBT樹脂、エポキシ樹脂、BPT樹脂、PPS樹脂が例示される。これらのうち、合成樹脂が加工のし易さの観点から好ましく、透光性、耐熱性の観点からフッ素樹脂、シリコーン樹脂、またはCOC樹脂がより好ましく、耐熱性、透光性、加工性の点からシリコーン樹脂は更に好ましい。とくに、低硬度材料がシリコーンゴムまたはシリコーンゲルの場合はその組み合わせにおいて加工性が極めて良好である。シリコーン樹脂の中でも、紫外線透過率が高く、黄変等の経時変化が少ないジメチルシリコーンが好ましく、強度に優れるフェニルシリコーン、フッ素シリコーンがこれに次ぐ。
【0028】
本発明においては、樹脂材料として液状のものが好適に用いられる。液状樹脂材料を硬化させることにより、樹脂製のレンズ部を得ることができる。樹脂材料としてシリコーン樹脂を用いた場合、特に、液状の付加反応硬化型のシリコーン樹脂組成物が好ましい。液状の付加反応硬化型のシリコーン樹脂組成物は、表面も内部も均一に硬化させることができるので好適である。
【0029】
上記付加反応型のシリコーン樹脂組成物としては、熱硬化により透明なシリコーン樹脂を形成するものであれば特に制限されないが、例えば、オルガノポリシロキサンをベースポリマーとし、オルガノハイドロジェンポリシロキサンおよび白金系触媒等の重金属系触媒を含むものが挙げられる。
【0030】
上記オルガノポリシロキサンとしては、下記平均単位式
RaSiO(4−a)/2
(式中、Rは非置換又は置換一価炭化水素基で、好ましくは炭素数1〜10、特に1〜8のものである。aは0.8〜2、特に1〜1.8の正数である。)
で示されるものが挙げられる。ここで、Rとしてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、ビニル基、ブテニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基や、これらの炭素原子に結合した水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換されたクロロメチル基、クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノ基置換炭化水素基などが挙げられ、Rは同一であっても異なっていてもよいが、Rとしてフェニル基を含むもの、特に、全Rのうち5〜80モル%がフェニル基であるものが、光学レンズ体の耐熱性及び透明性の点から好ましい。
【0031】
また、Rとしてビニル基等のアルケニル基を含むもの、特に全Rのうち1〜20モル%がアルケニル基であるものが好ましく、中でもアルケニル基を1分子中に2個以上有するものが好ましく用いられる。このようなオルガノポリシロキサンとしては、例えば、末端にビニル基等のアルケニル基を有するジメチルポリシロキサンやジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体等の末端アルケニル基含有ジオルガノポリシロキサンが挙げられる。
【0032】
一方、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、3官能以上(即ち、1分子中にケイ素原子に結合する水素原子(Si−H基)を3個以上有するもの)が好ましく、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルハイドロジェンポリシロキサン等が挙げられ、特に、常温で液状のものが好ましい。また、触媒としては、白金、白金化合物、ジブチル錫ジアセテートやジブチル錫ジラウリレート等の有機金属化合物、又はオクテン酸錫のような金属脂肪酸塩などが挙げられる。これらオルガノハイドロジェンポリシロキサンや触媒の種類や量は、架橋度や硬化速度を考慮して適宜決定すればよい。また、上記成分以外に、得られるシリコーン樹脂の強度や透明度を損なわない程度に充填剤、耐熱材、可塑剤等を添加してもよい。上記シリコーン樹脂組成物としては、特開2004−186168号公報または特開2004−221308号公報に開示されているシリコーンレジン素材も使用できる。また、信越化学工業株式会社製KJR632(商品名)、SCR−1004(商品名)、SCR−1011(商品名)、X32−2535/KER−2667B(商品名)等の市販品も用いることができる。
本発明におけるレンズ部の形状としては、とくに限定されない。凸レンズ、凹レンズ、またはこれらのフレネルレンズ、かまぼこ型レンズであってもよい。材質に樹脂を用いる場合は、フレネルレンズ、かまぼこ型レンズ等異形レンズとの組み合わせにおいて好ましい。
【0033】
本発明のレンズ体の製造方法は特に限定されないが、下記工程(a)〜(d)を含む方法によって好適に製造することができる:
(a)レンズ部の材料を成形型に仕込み、レンズ部を成形する工程、
(b)脚部の材料を成形型に仕込み、脚部を成形する工程、
(c)前記レンズ部と脚部とを接着する工程、および
(d)緩衝部を設ける工程。
【0034】
かかる製造方法は、より具体的には、例えば下記工程を含む方法であってもよい。
(a)上下2枚型において、下型としての成形型にレンズ部の材料を仕込み、レンズ部を成形する工程、
(b)下型から前記レンズ部を取り出さずに、上型を、支持部を成形する成形型に入れ替える工程、
(c)支持部を成形するための材料を前記支持部を成形する成形型に仕込み、前記支持部をレンズ部と一体的に成形する工程、
(d)支持部の天板部に緩衝部を設ける工程。
【0035】
本発明における下型としての成形型は、レンズ部キャビティ部を具備するものである。
【0036】
本発明の製造方法においては、前述の樹脂を用いて製造する場合、液状のものが好適に用いられる。液状樹脂材料を硬化させることにより、樹脂製のレンズ部を得ることができる。樹脂材料としてシリコーン樹脂を用いた場合、特に、液状の付加反応硬化型のシリコーン樹脂組成物が好ましい。液状の付加反応硬化型のシリコーン樹脂組成物は、表面も内部も均一に硬化させることができるので好適である。
【0037】
上記付加反応型のシリコーン樹脂組成物としては、熱硬化により透明なシリコーン樹脂を形成するものであれば特に制限されないが、例えば、オルガノポリシロキサンをベースポリマーとし、オルガノハイドロジェンポリシロキサンおよび白金系触媒等の重金属系触媒を含むものが挙げられる。より詳細には、上記のとおりのものが、本発明の製造方法においても好適に用いられる。
【0038】
本発明の製造方法においては、支持部の材料は限定されず、エポキシ樹脂、COC樹脂、ゴム類、熱可塑性エラストマー等が用いられる。ゴム類には、天然ゴム、合成ゴムが包含される。合成ゴムとしては、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリルゴム、スチレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴムが好ましく、耐熱性、化学的安定性の観点からフッ素ゴム、シリコーンゴムが好ましく、架橋によってレンズ部との結合をさせやすい等の観点から、シリコーンゴムが最も好ましい。
【0039】
なお、これらの脚部の材料は、1種類を単独で用いることができるが、2種類以上のものを適切な割合で用いてもよい。
また、上記脚部の材料には、充填剤、可塑剤、着色料、顔料等の補助剤を適宜添加して用いることもできる。これらの補助剤の例として、ガラスファイバー、ガラスビーズ等の充填剤、ステアリン酸等の可塑剤、カーボンブラック、酸化チタン、ベンガラなどの着色料、およびYAG蛍光体などの蛍光顔料が挙げられる。
【0040】
本発明の製造方法における成形方法としては、トランスファー成形、インジェクション成形、コンプレッション成形、(真空)注型成形、2色成形、インサート成形、ポッティング成形、LIM成形等が挙げられる。成形方法は製品形状、素材により適宜選択できるが、コンプレッション成形が好ましい。
【0041】
本発明の製造方法における、レンズ部と支持部、支持部と緩衝部、或いはレンズ部と緩衝部とを接着する工程としては、インサート成形が挙げられる。架橋接着を含むものが、強度の観点から好ましい。また、架橋接着剤として接着用未加硫ゴムまたは、プライマー、過酸化物、カップリング材等が挙げられるが、シリコーンとの相性からシランカップリング剤が好ましい。
【0042】
緩衝部を設ける工程は限定されないが、ポッティングが簡便であるため好適である。また、ポッティングは、レンズ部またはレンズ体を成形型から取り出す前後のいずれに行うことも可能であるが、レンズ部またはレンズ体を再度並べる手間が省けるため、成形型から取り出す前に行うことは好ましい。
【0043】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0044】
(実施例1)
上下2枚型のうち、下型にレンズ部キャビティ部を有する金型を用いてシリコーンレジンレンズ部を成形した。次に、下型からレンズ部を取り出さずに、上型を支持部を成形する金型に入れ替え、シリコーンゴムを金型に仕込み、コンプレッション成形により成形した。架橋接着によりシリコーンレジンレンズ部と支持部とを接着した。続いて、ポッティングにより、支持部に緩衝部を設けた。
上記レンズ体は、シリコーンレジンをレンズ部に、シリコーンゴムを緩衝部に使用することにより、エポキシ樹脂やCOC樹脂より耐熱、耐紫外線性に優れるのみならず、緩衝部を設けることによってさらに耐久性が高められ、かつ空気層を排除したため表面反射ロスが小さいレンズ体である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、光路におけるレンズ部と発光素子との間の空気層を排除したためレンズ部での表面反射ロスが小さいレンズ体が提供される。
また、発光素子とレンズ部との間の低硬度材料からなる緩衝部を具備することおよびレンズ部に接合された、嵌合部を有する脚部を有する支持部を有することにより、該嵌合部が発光素子基板に嵌合することにより脚部が基板に固定され、レンズ部と発光素子基板との距離が一定となり、一方で緩衝部の弾性との間で脚部に抗力が発生して、本発明の発光素子用レンズ体は振動などの外力に対しても安定した発光デバイスを提供することができるレンズ体である。
さらに、発光素子に圧着する材料は、低硬度材料であるので、発光素子を傷つけない。
また、発光素子とレンズ部は緩衝部を隔てて隔離されているため、従来の発光素子用レンズと同程度以上にレンズ部の劣化を防止することができる。
したがって、本発明は、レンズ体産業、照明装置産業および関連産業の発展に貢献するところ大である。
【符号の説明】
【0046】
1 レンズ体
2 レンズ部
3 天板部
4 緩衝部
5 発光素子
6 基板
7 嵌合部
8 脚部
9 支持部
10 レンズ底面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ部と該レンズ部を支持する支持部とを具備する発光素子用のレンズ体であって、該支持部は、前記レンズ部の底面および/または側面に接合する天板部および該天板部に結合し、発光素子基板に嵌合する嵌合部を有する脚部からなり、前記レンズ部の発光素子と対向するレンズ部の底面および/または前記天板部には、発光素子とレンズ部の底面および/または前記天板部との間の空気層による光のロスを排除するための透光性を有する低硬度材料からなる緩衝部を具備する前記レンズ体。
【請求項2】
低硬度材料が、ゴム類およびゲル類からの1種または2種以上である、請求項1に記載のレンズ体。
【請求項3】
ゲル類が、フッ素樹脂のゲルまたはシリコーン樹脂のゲルから選択される1種または2種以上である、請求項2に記載のレンズ体。
【請求項4】
レンズ部がエポキシ樹脂、フッ素樹脂、ガラス、シクロオレフィン共重合体樹脂およびシリコーン樹脂のいずれかからなる、請求項1〜3のいずれかに記載のレンズ体。
【請求項5】
レンズ部がシリコーン樹脂からなり、緩衝部がシリコーンゴムからなる、請求項4に記載のレンズ体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のレンズ体と発光素子とを備えた発光デバイス。
【請求項7】
下記工程を含む、請求項1に記載のレンズ体の製造方法。
(a)レンズ部と支持部とを具備するレンズ体の一部を成形する工程、および
(b)前記支持部の天板部に緩衝部を設ける工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−54614(P2012−54614A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−271236(P2011−271236)
【出願日】平成23年12月12日(2011.12.12)
【分割の表示】特願2005−345001(P2005−345001)の分割
【原出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(597096161)株式会社朝日ラバー (74)
【Fターム(参考)】