レンズ及びその製造方法
【課題】テーパ形状が形成され難いレンズ及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】本レンズは、底板、及び前記底板の上面の外縁部に立設する側壁を有する基板と、前記底板の上面に、前記側壁の上面側に向かって形成された凸部と、を備え、前記凸部は、一方向に曲率を有し前記一方向に直交する方向には曲率を有さない曲面、及び前記曲面と直交する平坦な側面を備え、前記凸部の全ての部分は前記側壁の上面よりも前記底板の上面側に位置し、前記凸部の側面は、前記側壁の内側面により構成されている。
【解決手段】本レンズは、底板、及び前記底板の上面の外縁部に立設する側壁を有する基板と、前記底板の上面に、前記側壁の上面側に向かって形成された凸部と、を備え、前記凸部は、一方向に曲率を有し前記一方向に直交する方向には曲率を有さない曲面、及び前記曲面と直交する平坦な側面を備え、前記凸部の全ての部分は前記側壁の上面よりも前記底板の上面側に位置し、前記凸部の側面は、前記側壁の内側面により構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光を集光等するレンズ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、火災報知機や男子用トイレの自動洗浄機等に用いられている赤外線センサは、防犯や省エネルギ等の分野で注目されており、小型化や低コスト化のニーズが高まっている。これに伴いシリコン(Si)やゲルマニウム(Ge)等の赤外線透過材料郡から構成されている赤外線センサ用レンズも高い生産性が求められており、ウェハーレベルでの加工の開発が進んでいる。その中の一つのレンズ作製手法として、グレースケールマスクを用いてレジストパターンを光学基材上に形成し、ドライエッチングによってレンズ形状を光学基材に転写する手法が既に知られている。
【0003】
例えば、グレースケールマスクを使用してレジストを感光させ、現像することでマイクロレンズのレプリカ像をレジストに形成し、それをマイクロレンズとする手法が知られている。又、レジストと基材を共にエッチングすることによって基材にレジストパターンを転写し、マイクロレンズを形成する手法が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、レジストパターンをエッチングによって転写するレンズ作製手法では、以下のような問題があった。すなわち、シリンドリカルのような曲面と平坦面とを有する形状のレジストをドライエッチングによって転写した場合、ドライエッチングの等方性の影響により、平坦面がテーパ形状になり、レンズとして機能しない領域が発生する問題があった。
【0005】
特にレンズのサグ量を大きくする際等には、レジストと基材との選択比を高くする必要性があり、等方的なドライエッチングが強くなるため、テーパ形状が顕著に現れるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、テーパ形状が形成され難いレンズ及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本レンズは、底板、及び前記底板の上面の外縁部に立設する側壁を有する基板と、前記底板の上面に、前記側壁の上面側に向かって形成された凸部と、を備え、前記凸部は、一方向に曲率を有し前記一方向に直交する方向には曲率を有さない曲面、及び前記曲面と直交する平坦な側面を備え、前記凸部の全ての部分は前記側壁の上面よりも前記底板の上面側に位置し、前記凸部の側面は、前記側壁の内側面により構成されていることを要件とする。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術によれば、テーパ形状が形成され難いレンズ及びその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施の形態に係る赤外線用レンズを例示する斜視図である。
【図2】第1の実施の形態に係る赤外線用レンズを例示する平面図である。
【図3】図2のA−A線に沿う断面図である。
【図4】図2のB−B線に沿う断面図である。
【図5】第1の実施の形態に係る赤外線用レンズの製造工程を例示する図である。
【図6】比較例に係る赤外線用レンズの製造工程を例示する図である。
【図7】比較例に係る赤外線用レンズを例示する平面図である。
【図8】図7のC−C線に沿う断面図である。
【図9】図7のD−D線に沿う断面図である。
【図10】ドライエッチング工程について説明する図である。
【図11】第2の実施の形態に係る赤外線用レンズを例示する斜視図である。
【図12】第1の実施の形態に係る赤外線用レンズを例示する平面図である。
【図13】図12のE−E線に沿う断面図である。
【図14】図12のF−F線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。なお、以下の各実施の形態では、本発明に係るレンズの一例として、赤外線用レンズを例示して説明するが、これに限定されることはない。
【0011】
〈第1の実施の形態〉
[第1の実施の形態に係る赤外線用レンズの構造]
まず、第1の実施の形態に係る赤外線用レンズの構造について説明する。図1は、第1の実施の形態に係る赤外線用レンズを例示する斜視図である。図2は、第1の実施の形態に係る赤外線用レンズを例示する平面図である。図3は、図2のA−A線に沿う断面図である。図4は、図2のB−B線に沿う断面図である。
【0012】
図1〜図4を参照するに、赤外線用レンズ10は、基板20と、凸部30とを有する。基板20と凸部30とは同一材料により一体的に形成されている。凸部30は凸レンズとしての機能を有し、凸部30に入射する赤外線40を所定の焦点位置に集光する。以下、基板20及び凸部30について詳説する。
【0013】
基板20は、底板21と、底板21の上面21aの外縁部に立設する側壁22とを有する。底板21と側壁22とは同一材料により一体的に形成されている。側壁22は、底板21の上面21aに対して略垂直に形成されている。側壁22は、例えば、枠状(平面視額縁状)に形成することができる。
【0014】
凸部30は、底板21の上面21aに、側壁22の上面22a側に向かって形成されている。凸部30は、X方向に曲率を有しY方向(X方向に直交する方向)には曲率を有さない曲面30aと、曲面30aと直交する平坦な側面30b及び30cとを有する。
【0015】
凸部30の全ての部分は、側壁22の上面22aよりも低い位置(底板21の上面21a側の位置)にある。換言すれば、凸部30の曲面30aは、側壁22の上面22aよりも下側に形成されており、凸部30において側壁22の上面22aから突出している部分はない。
【0016】
凸部30の側面30b及び30cは、側壁22の長手方向(X方向)の対向する内側面22bと一致している。換言すれば、基板20と凸部30とは一体的に形成されているため、側面30b及び30cは実際には存在しない仮想的な面であり、側面30b及び30cは、曲面30aと直交する側壁22の対向する内側面22bにより構成されている。
【0017】
凸部30において、曲面30aは球面又は非球面のシリンドリカル形状とすることができる。曲面30aを非球面にすることにより、収差を抑制できる。又、曲面30aは、フレネルレンズのような断面形状が凹凸を繰り返す形状であってもよい。曲面30aをフレネルレンズのような形状にすることにより、凸部30を薄くできる。
【0018】
底板21の上面21aに接する曲面30aの端部と、曲面30aと対向する側壁22の内側面22b(Y方向と平行な内側面)との距離Lは、凸部30に入射する赤外線40の入射角度をθ、側壁22の上面22aの底板21の上面21aからの高さをhとしたときに、L≧htanθを満足するように設定されている。これにより、凸部30に入射する赤外線40が基板20に蹴られることを防止できる。
【0019】
又、赤外線40の反射を減少させるために、少なくとも凸部30の入射側又は反射側の何れか一方の面には無反射コーティング(図示せず)が施されている。
【0020】
基板20及び凸部30は、例えば、シリコン(Si)やGe(ゲルマニウム)等の赤外線を透過させる材料により形成することができる。
【0021】
[第1の実施の形態に係る赤外線用レンズの製造方法]
次に、第1の実施の形態に係る赤外線用レンズの製造方法について説明する。図5は、第1の実施の形態に係る赤外線用レンズの製造工程を例示する図である。ここでは、グレースケールマスクを用いたフォトリソグラフィとドライエッチングの工程を適用してレンズ形状を作製する例を示す。なお、図5(a)〜図5(d)において、左側の図は図2のA−A線に沿う断面に対応し、右側の図は図2のB−B線に沿う断面に対応して描かれている。
【0022】
まず、図5(a)に示す工程では、加工前の基板20を準備し、準備した基板20の上面20aにポジ型レジスト400を塗布する。次に、図5(b)に示す工程では、グレースケールマスク410を介して、矢印方向からレジスト400を露光する。グレースケールマスク410は、パターンに濃淡を持たせたマスクであり、中央部の透過率は略0%であり、周辺に行くに従って徐々に透過率が高くなり、一端透過率が略100%になり、外縁部(基板20の側壁22となる部分)で透過率が再び略0%になるように形成する。
【0023】
次に、図5(c)に示す工程では、露光されたレジスト400に現像を行い、グレースケールマスク410の透過率に応じた形状の立体的なレジストパターン400Aを形成する。具体的には、レジストパターン400Aは、基板20の上面20aに、基板20の上面20aの外縁部に立設する側壁と、基板20の上面20aに側壁の上面側に向かって形成された凸部と、を備え、凸部は一方向に曲率を有し一方向に直交する方向には曲率を有さない曲面、及びこの曲面と直交する平坦な側面を備え、凸部の全ての部分は側壁の上面よりも基板20の上面20a側に位置し、凸部の側面が側壁の内側面により構成されている形状に形成する。
【0024】
次に、図5(d)に示す工程では、図5(c)に示すレジストパターン400Aをマスクとしてドライエッチングを行い、レジストパターン400Aの形状を基板20に転写する。これにより、図1〜図4に示した赤外線用レンズ10が作製される。
【0025】
ここで、比較例を示しながら、本実施の形態に係る赤外線用レンズ10が有する特有の効果について説明する。図6は、比較例に係る赤外線用レンズの製造工程を例示する図である。図7は、比較例に係る赤外線用レンズを例示する平面図である。図8は、図7のC−C線に沿う断面図である。図9は、図7のD−D線に沿う断面図である。
【0026】
例えば、図6(a)に示すように、基板200の上面にシリンドリカル形状のレジストパターン500Aを形成した場合を考える。この状態で、レジストパターン500Aをマスクとしてドライエッチングを行うと、図6(b)に示すように、レジストパターン500Aの形状が基板200に転写され、基板200の上面200aに凸部300が形成される。
【0027】
この際、図7〜図9にも示したように、凸部300の側面300a及び300bは、テーパ形状となる。凸部300の側面300a及び300bがテーパ形状となると、テーパ形状の部分はレンズとして機能しないため、レンズとして機能する領域が狭くなってしまう。
【0028】
図10を参照しながら、凸部300の側面300a及び300bがテーパ形状となる理由について説明する。図10は、ドライエッチング工程について説明する図である。図10において、610は活性イオンを、620はラジカルを示している。
【0029】
図10(a)〜図10(b)、更に図10(c)へとレジストパターン500A及び基板200のドライエッチング工程が進むにつれて、2つのエッチングソース(活性イオン610及びラジカル620)の指向性の違いにより、基板200の凸部300となる部分の両側面がテーパ形状となる。
【0030】
より詳しく説明すると、ドライエッチング工程(例えば、反応性イオンエッチング工程)では2つのエッチングソースが存在する。一つが活性イオン610であり、もう一つがラジカル(反応種)620である。活性イオン610は指向性が高いが、ラジカル620は活性イオン610よりも指向性が弱い。
【0031】
そのため、平面視においてレジストパターン500Aの周囲に位置する基板200の部分のエッチングが進行すると、活性イオン610は基板200の側面には接触しないが、ラジカル620は基板200の側面方向に回り込み、基板200の側面に接触する。その結果、ラジカル620により基板200の側面がエッチングされてテーパ形状となる。
【0032】
一方、図5に戻って、本実施の形態に係る赤外線用レンズ10の製造工程では、基板20の上面よりも下側に凸部30の曲面30aを形成している。又、曲面30aの曲率方向と直交する平坦な側面30b及び30cが基板20の側壁22と連続的につながっている。すなわち、側面30b及び30cは、側壁22の内側面22bにより構成されている。
【0033】
従って、ドライエッチング工程において、図10で説明したようなラジカルが側面30b及び30c(=側壁22の内側面22b)に接触することがないため、テーパ形状は形成されない。
【0034】
このように、第1の実施の形態に係る赤外線用レンズ10では、凸部30の全ての部分を側壁22の上面22aよりも下側に形成すると共に、曲面30aと直交する平坦な側面30b及び30cを側壁22の対向する内側面22bにより構成し、外部に露出しないようにしている。その結果、側壁22の対向する内側面22bにより構成された凸部30の側面30b及び30cにはテーパ形状が形成されないため、凸部30において凸レンズとして機能する領域を広くすることができる。
【0035】
なお、第1の実施の形態に係る赤外線用レンズ10は、例えば、住宅、オフィス、車内等における人体等の熱源からの赤外線を検出する赤外光検出デバイス用のレンズとして利用できる。
【0036】
〈第2の実施の形態〉
第2の実施の形態では、複数の凸部を有する赤外線用レンズの例を示す。なお、第2の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部品についての説明は省略する。
【0037】
図11は、第2の実施の形態に係る赤外線用レンズを例示する斜視図である。図12は、第2の実施の形態に係る赤外線用レンズを例示する平面図である。図13は、図12のE−E線に沿う断面図である。図14は、図12のF−F線に沿う断面図である。
【0038】
図11〜図14を参照するに、赤外線用レンズ10Aは、2つの凸部(凸部31及び31)が形成されている点が、赤外線用レンズ10(図1〜図4参照)と相違する。
【0039】
凸部31及び32は、それぞれ、底板21の上面21aから側壁22の上面22a側に向かって形成されている。凸部31は、X方向に曲率を有しY方向(X方向に直交する方向)には曲率を有さない曲面31aと、曲面31aと直交する平坦な側面31b及び31cとを有する。又、凸部32は、X方向に曲率を有しY方向(X方向に直交する方向)には曲率を有さない曲面32aと、曲面32aと直交する平坦な側面32b及び32cとを有する。
【0040】
凸部31及び32の全ての部分は、側壁22の上面22aよりも低い位置(底板21の上面21a側の位置)にある。換言すれば、凸部31の曲面31aは、側壁22の上面22aよりも下側に形成されており、凸部31において側壁22の上面22aから突出している部分はない。又、凸部32の曲面32aは、側壁22の上面22aよりも下側に形成されており、凸部32において側壁22の上面22aから突出している部分はない。
【0041】
凸部31と凸部32とは、重心位置をずらした状態でY方向に並設されている。換言すれば、底板21の上面21aに接する曲面31aの端部と、底板21の上面21aに接する曲面32aの端部とは、互いにずれた位置にある。
【0042】
凸部31の側面31cは、側壁22の内側面22bと一致している。又、凸部32の側面32bは、側壁22の内側面22bと一致している。換言すれば、基板20と凸部31及び32とは一体的に形成されているため、側面31c及び32bは実際には存在しない仮想的な面であり、側面31c及び32bは、曲面31a及び32aと直交する側壁22の対向する内側面22bにより構成されている。又、凸部31の平坦な側面31bと、凸部32の平坦な側面32cとは一部が重複している。凸部31及び32のその他の特徴は凸部30と同様であるため、その説明を省略する。
【0043】
このように、第2の実施の形態に係る赤外線用レンズ10Aでは、第1の実施の形態に係る赤外線用レンズ10の奏する効果に加えて、更に以下の効果を奏する。すなわち、2つの凸部31及び32を重心位置をずらした状態でY方向に並設しているため、より広い範囲の赤外線を検出できる。
【0044】
以上、好ましい実施の形態について詳説したが、上述した実施の形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0045】
10、10A 赤外線用レンズ
20 基板
20a 基板の上面
21 底板
21a 底板の上面
22 側壁
22a 側壁の上面
22b 側壁の内側面
30、31、32 凸部
30a、31a、32a 曲面
30b、30c、31b、31c、32b、32c 側面
40 赤外線
400 レジスト
400A レジストパターン
410 グレースケールマスク
h 高さ
L 距離
θ 入射角度
【先行技術文献】
【特許文献】
【0046】
【特許文献1】特表平8−504515号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光を集光等するレンズ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、火災報知機や男子用トイレの自動洗浄機等に用いられている赤外線センサは、防犯や省エネルギ等の分野で注目されており、小型化や低コスト化のニーズが高まっている。これに伴いシリコン(Si)やゲルマニウム(Ge)等の赤外線透過材料郡から構成されている赤外線センサ用レンズも高い生産性が求められており、ウェハーレベルでの加工の開発が進んでいる。その中の一つのレンズ作製手法として、グレースケールマスクを用いてレジストパターンを光学基材上に形成し、ドライエッチングによってレンズ形状を光学基材に転写する手法が既に知られている。
【0003】
例えば、グレースケールマスクを使用してレジストを感光させ、現像することでマイクロレンズのレプリカ像をレジストに形成し、それをマイクロレンズとする手法が知られている。又、レジストと基材を共にエッチングすることによって基材にレジストパターンを転写し、マイクロレンズを形成する手法が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、レジストパターンをエッチングによって転写するレンズ作製手法では、以下のような問題があった。すなわち、シリンドリカルのような曲面と平坦面とを有する形状のレジストをドライエッチングによって転写した場合、ドライエッチングの等方性の影響により、平坦面がテーパ形状になり、レンズとして機能しない領域が発生する問題があった。
【0005】
特にレンズのサグ量を大きくする際等には、レジストと基材との選択比を高くする必要性があり、等方的なドライエッチングが強くなるため、テーパ形状が顕著に現れるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、テーパ形状が形成され難いレンズ及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本レンズは、底板、及び前記底板の上面の外縁部に立設する側壁を有する基板と、前記底板の上面に、前記側壁の上面側に向かって形成された凸部と、を備え、前記凸部は、一方向に曲率を有し前記一方向に直交する方向には曲率を有さない曲面、及び前記曲面と直交する平坦な側面を備え、前記凸部の全ての部分は前記側壁の上面よりも前記底板の上面側に位置し、前記凸部の側面は、前記側壁の内側面により構成されていることを要件とする。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術によれば、テーパ形状が形成され難いレンズ及びその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施の形態に係る赤外線用レンズを例示する斜視図である。
【図2】第1の実施の形態に係る赤外線用レンズを例示する平面図である。
【図3】図2のA−A線に沿う断面図である。
【図4】図2のB−B線に沿う断面図である。
【図5】第1の実施の形態に係る赤外線用レンズの製造工程を例示する図である。
【図6】比較例に係る赤外線用レンズの製造工程を例示する図である。
【図7】比較例に係る赤外線用レンズを例示する平面図である。
【図8】図7のC−C線に沿う断面図である。
【図9】図7のD−D線に沿う断面図である。
【図10】ドライエッチング工程について説明する図である。
【図11】第2の実施の形態に係る赤外線用レンズを例示する斜視図である。
【図12】第1の実施の形態に係る赤外線用レンズを例示する平面図である。
【図13】図12のE−E線に沿う断面図である。
【図14】図12のF−F線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。なお、以下の各実施の形態では、本発明に係るレンズの一例として、赤外線用レンズを例示して説明するが、これに限定されることはない。
【0011】
〈第1の実施の形態〉
[第1の実施の形態に係る赤外線用レンズの構造]
まず、第1の実施の形態に係る赤外線用レンズの構造について説明する。図1は、第1の実施の形態に係る赤外線用レンズを例示する斜視図である。図2は、第1の実施の形態に係る赤外線用レンズを例示する平面図である。図3は、図2のA−A線に沿う断面図である。図4は、図2のB−B線に沿う断面図である。
【0012】
図1〜図4を参照するに、赤外線用レンズ10は、基板20と、凸部30とを有する。基板20と凸部30とは同一材料により一体的に形成されている。凸部30は凸レンズとしての機能を有し、凸部30に入射する赤外線40を所定の焦点位置に集光する。以下、基板20及び凸部30について詳説する。
【0013】
基板20は、底板21と、底板21の上面21aの外縁部に立設する側壁22とを有する。底板21と側壁22とは同一材料により一体的に形成されている。側壁22は、底板21の上面21aに対して略垂直に形成されている。側壁22は、例えば、枠状(平面視額縁状)に形成することができる。
【0014】
凸部30は、底板21の上面21aに、側壁22の上面22a側に向かって形成されている。凸部30は、X方向に曲率を有しY方向(X方向に直交する方向)には曲率を有さない曲面30aと、曲面30aと直交する平坦な側面30b及び30cとを有する。
【0015】
凸部30の全ての部分は、側壁22の上面22aよりも低い位置(底板21の上面21a側の位置)にある。換言すれば、凸部30の曲面30aは、側壁22の上面22aよりも下側に形成されており、凸部30において側壁22の上面22aから突出している部分はない。
【0016】
凸部30の側面30b及び30cは、側壁22の長手方向(X方向)の対向する内側面22bと一致している。換言すれば、基板20と凸部30とは一体的に形成されているため、側面30b及び30cは実際には存在しない仮想的な面であり、側面30b及び30cは、曲面30aと直交する側壁22の対向する内側面22bにより構成されている。
【0017】
凸部30において、曲面30aは球面又は非球面のシリンドリカル形状とすることができる。曲面30aを非球面にすることにより、収差を抑制できる。又、曲面30aは、フレネルレンズのような断面形状が凹凸を繰り返す形状であってもよい。曲面30aをフレネルレンズのような形状にすることにより、凸部30を薄くできる。
【0018】
底板21の上面21aに接する曲面30aの端部と、曲面30aと対向する側壁22の内側面22b(Y方向と平行な内側面)との距離Lは、凸部30に入射する赤外線40の入射角度をθ、側壁22の上面22aの底板21の上面21aからの高さをhとしたときに、L≧htanθを満足するように設定されている。これにより、凸部30に入射する赤外線40が基板20に蹴られることを防止できる。
【0019】
又、赤外線40の反射を減少させるために、少なくとも凸部30の入射側又は反射側の何れか一方の面には無反射コーティング(図示せず)が施されている。
【0020】
基板20及び凸部30は、例えば、シリコン(Si)やGe(ゲルマニウム)等の赤外線を透過させる材料により形成することができる。
【0021】
[第1の実施の形態に係る赤外線用レンズの製造方法]
次に、第1の実施の形態に係る赤外線用レンズの製造方法について説明する。図5は、第1の実施の形態に係る赤外線用レンズの製造工程を例示する図である。ここでは、グレースケールマスクを用いたフォトリソグラフィとドライエッチングの工程を適用してレンズ形状を作製する例を示す。なお、図5(a)〜図5(d)において、左側の図は図2のA−A線に沿う断面に対応し、右側の図は図2のB−B線に沿う断面に対応して描かれている。
【0022】
まず、図5(a)に示す工程では、加工前の基板20を準備し、準備した基板20の上面20aにポジ型レジスト400を塗布する。次に、図5(b)に示す工程では、グレースケールマスク410を介して、矢印方向からレジスト400を露光する。グレースケールマスク410は、パターンに濃淡を持たせたマスクであり、中央部の透過率は略0%であり、周辺に行くに従って徐々に透過率が高くなり、一端透過率が略100%になり、外縁部(基板20の側壁22となる部分)で透過率が再び略0%になるように形成する。
【0023】
次に、図5(c)に示す工程では、露光されたレジスト400に現像を行い、グレースケールマスク410の透過率に応じた形状の立体的なレジストパターン400Aを形成する。具体的には、レジストパターン400Aは、基板20の上面20aに、基板20の上面20aの外縁部に立設する側壁と、基板20の上面20aに側壁の上面側に向かって形成された凸部と、を備え、凸部は一方向に曲率を有し一方向に直交する方向には曲率を有さない曲面、及びこの曲面と直交する平坦な側面を備え、凸部の全ての部分は側壁の上面よりも基板20の上面20a側に位置し、凸部の側面が側壁の内側面により構成されている形状に形成する。
【0024】
次に、図5(d)に示す工程では、図5(c)に示すレジストパターン400Aをマスクとしてドライエッチングを行い、レジストパターン400Aの形状を基板20に転写する。これにより、図1〜図4に示した赤外線用レンズ10が作製される。
【0025】
ここで、比較例を示しながら、本実施の形態に係る赤外線用レンズ10が有する特有の効果について説明する。図6は、比較例に係る赤外線用レンズの製造工程を例示する図である。図7は、比較例に係る赤外線用レンズを例示する平面図である。図8は、図7のC−C線に沿う断面図である。図9は、図7のD−D線に沿う断面図である。
【0026】
例えば、図6(a)に示すように、基板200の上面にシリンドリカル形状のレジストパターン500Aを形成した場合を考える。この状態で、レジストパターン500Aをマスクとしてドライエッチングを行うと、図6(b)に示すように、レジストパターン500Aの形状が基板200に転写され、基板200の上面200aに凸部300が形成される。
【0027】
この際、図7〜図9にも示したように、凸部300の側面300a及び300bは、テーパ形状となる。凸部300の側面300a及び300bがテーパ形状となると、テーパ形状の部分はレンズとして機能しないため、レンズとして機能する領域が狭くなってしまう。
【0028】
図10を参照しながら、凸部300の側面300a及び300bがテーパ形状となる理由について説明する。図10は、ドライエッチング工程について説明する図である。図10において、610は活性イオンを、620はラジカルを示している。
【0029】
図10(a)〜図10(b)、更に図10(c)へとレジストパターン500A及び基板200のドライエッチング工程が進むにつれて、2つのエッチングソース(活性イオン610及びラジカル620)の指向性の違いにより、基板200の凸部300となる部分の両側面がテーパ形状となる。
【0030】
より詳しく説明すると、ドライエッチング工程(例えば、反応性イオンエッチング工程)では2つのエッチングソースが存在する。一つが活性イオン610であり、もう一つがラジカル(反応種)620である。活性イオン610は指向性が高いが、ラジカル620は活性イオン610よりも指向性が弱い。
【0031】
そのため、平面視においてレジストパターン500Aの周囲に位置する基板200の部分のエッチングが進行すると、活性イオン610は基板200の側面には接触しないが、ラジカル620は基板200の側面方向に回り込み、基板200の側面に接触する。その結果、ラジカル620により基板200の側面がエッチングされてテーパ形状となる。
【0032】
一方、図5に戻って、本実施の形態に係る赤外線用レンズ10の製造工程では、基板20の上面よりも下側に凸部30の曲面30aを形成している。又、曲面30aの曲率方向と直交する平坦な側面30b及び30cが基板20の側壁22と連続的につながっている。すなわち、側面30b及び30cは、側壁22の内側面22bにより構成されている。
【0033】
従って、ドライエッチング工程において、図10で説明したようなラジカルが側面30b及び30c(=側壁22の内側面22b)に接触することがないため、テーパ形状は形成されない。
【0034】
このように、第1の実施の形態に係る赤外線用レンズ10では、凸部30の全ての部分を側壁22の上面22aよりも下側に形成すると共に、曲面30aと直交する平坦な側面30b及び30cを側壁22の対向する内側面22bにより構成し、外部に露出しないようにしている。その結果、側壁22の対向する内側面22bにより構成された凸部30の側面30b及び30cにはテーパ形状が形成されないため、凸部30において凸レンズとして機能する領域を広くすることができる。
【0035】
なお、第1の実施の形態に係る赤外線用レンズ10は、例えば、住宅、オフィス、車内等における人体等の熱源からの赤外線を検出する赤外光検出デバイス用のレンズとして利用できる。
【0036】
〈第2の実施の形態〉
第2の実施の形態では、複数の凸部を有する赤外線用レンズの例を示す。なお、第2の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部品についての説明は省略する。
【0037】
図11は、第2の実施の形態に係る赤外線用レンズを例示する斜視図である。図12は、第2の実施の形態に係る赤外線用レンズを例示する平面図である。図13は、図12のE−E線に沿う断面図である。図14は、図12のF−F線に沿う断面図である。
【0038】
図11〜図14を参照するに、赤外線用レンズ10Aは、2つの凸部(凸部31及び31)が形成されている点が、赤外線用レンズ10(図1〜図4参照)と相違する。
【0039】
凸部31及び32は、それぞれ、底板21の上面21aから側壁22の上面22a側に向かって形成されている。凸部31は、X方向に曲率を有しY方向(X方向に直交する方向)には曲率を有さない曲面31aと、曲面31aと直交する平坦な側面31b及び31cとを有する。又、凸部32は、X方向に曲率を有しY方向(X方向に直交する方向)には曲率を有さない曲面32aと、曲面32aと直交する平坦な側面32b及び32cとを有する。
【0040】
凸部31及び32の全ての部分は、側壁22の上面22aよりも低い位置(底板21の上面21a側の位置)にある。換言すれば、凸部31の曲面31aは、側壁22の上面22aよりも下側に形成されており、凸部31において側壁22の上面22aから突出している部分はない。又、凸部32の曲面32aは、側壁22の上面22aよりも下側に形成されており、凸部32において側壁22の上面22aから突出している部分はない。
【0041】
凸部31と凸部32とは、重心位置をずらした状態でY方向に並設されている。換言すれば、底板21の上面21aに接する曲面31aの端部と、底板21の上面21aに接する曲面32aの端部とは、互いにずれた位置にある。
【0042】
凸部31の側面31cは、側壁22の内側面22bと一致している。又、凸部32の側面32bは、側壁22の内側面22bと一致している。換言すれば、基板20と凸部31及び32とは一体的に形成されているため、側面31c及び32bは実際には存在しない仮想的な面であり、側面31c及び32bは、曲面31a及び32aと直交する側壁22の対向する内側面22bにより構成されている。又、凸部31の平坦な側面31bと、凸部32の平坦な側面32cとは一部が重複している。凸部31及び32のその他の特徴は凸部30と同様であるため、その説明を省略する。
【0043】
このように、第2の実施の形態に係る赤外線用レンズ10Aでは、第1の実施の形態に係る赤外線用レンズ10の奏する効果に加えて、更に以下の効果を奏する。すなわち、2つの凸部31及び32を重心位置をずらした状態でY方向に並設しているため、より広い範囲の赤外線を検出できる。
【0044】
以上、好ましい実施の形態について詳説したが、上述した実施の形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0045】
10、10A 赤外線用レンズ
20 基板
20a 基板の上面
21 底板
21a 底板の上面
22 側壁
22a 側壁の上面
22b 側壁の内側面
30、31、32 凸部
30a、31a、32a 曲面
30b、30c、31b、31c、32b、32c 側面
40 赤外線
400 レジスト
400A レジストパターン
410 グレースケールマスク
h 高さ
L 距離
θ 入射角度
【先行技術文献】
【特許文献】
【0046】
【特許文献1】特表平8−504515号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板、及び前記底板の上面の外縁部に立設する側壁を有する基板と、
前記底板の上面に、前記側壁の上面側に向かって形成された凸部と、を備え、
前記凸部は、一方向に曲率を有し前記一方向に直交する方向には曲率を有さない曲面、及び前記曲面と直交する平坦な側面を備え、
前記凸部の全ての部分は前記側壁の上面よりも前記底板の上面側に位置し、
前記凸部の側面は、前記側壁の内側面により構成されているレンズ。
【請求項2】
前記曲面は、球面又は非球面のシリンドリカル形状である請求項1記載のレンズ。
【請求項3】
前記曲面の断面形状は凹凸を繰り返す形状である請求項1又は2記載のレンズ。
【請求項4】
前記凸部を複数個備えた請求項1乃至3の何れか一項記載のレンズ。
【請求項5】
各凸部において前記底板の上面に接する前記曲面の端部は、互いにずれた位置にある請求項4記載のレンズ。
【請求項6】
前記底板の上面に接する前記曲面の端部と前記曲面と対向する側壁の内側面との距離Lが、前記凸部に入射する光線の入射角度をθ、前記側壁の上面の前記底板の上面からの高さをhとしたときに、L≧htanθを満足する請求項1乃至5の何れか一項記載のレンズ。
【請求項7】
前記凸部は、赤外線を透過させる材料により形成されている請求項1乃至6の何れか一項記載のレンズ。
【請求項8】
前記底板、前記側壁、及び前記凸部は、同一材料により一体的に形成されている請求項1乃至7の何れか一項記載のレンズ。
【請求項9】
基板の上面に、前記基板の上面の外縁部に立設する側壁と、前記基板の上面に前記側壁の上面側に向かって形成された凸部と、を備え、前記凸部は、一方向に曲率を有し前記一方向に直交する方向には曲率を有さない曲面、及び前記曲面と直交する平坦な側面を備え、前記凸部の全ての部分は前記側壁の上面よりも前記基板の上面側に位置し、前記凸部の側面が前記側壁の内側面により構成されているレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンをマスクとして前記基板をエッチングする工程と、を備えたレンズの製造方法。
【請求項1】
底板、及び前記底板の上面の外縁部に立設する側壁を有する基板と、
前記底板の上面に、前記側壁の上面側に向かって形成された凸部と、を備え、
前記凸部は、一方向に曲率を有し前記一方向に直交する方向には曲率を有さない曲面、及び前記曲面と直交する平坦な側面を備え、
前記凸部の全ての部分は前記側壁の上面よりも前記底板の上面側に位置し、
前記凸部の側面は、前記側壁の内側面により構成されているレンズ。
【請求項2】
前記曲面は、球面又は非球面のシリンドリカル形状である請求項1記載のレンズ。
【請求項3】
前記曲面の断面形状は凹凸を繰り返す形状である請求項1又は2記載のレンズ。
【請求項4】
前記凸部を複数個備えた請求項1乃至3の何れか一項記載のレンズ。
【請求項5】
各凸部において前記底板の上面に接する前記曲面の端部は、互いにずれた位置にある請求項4記載のレンズ。
【請求項6】
前記底板の上面に接する前記曲面の端部と前記曲面と対向する側壁の内側面との距離Lが、前記凸部に入射する光線の入射角度をθ、前記側壁の上面の前記底板の上面からの高さをhとしたときに、L≧htanθを満足する請求項1乃至5の何れか一項記載のレンズ。
【請求項7】
前記凸部は、赤外線を透過させる材料により形成されている請求項1乃至6の何れか一項記載のレンズ。
【請求項8】
前記底板、前記側壁、及び前記凸部は、同一材料により一体的に形成されている請求項1乃至7の何れか一項記載のレンズ。
【請求項9】
基板の上面に、前記基板の上面の外縁部に立設する側壁と、前記基板の上面に前記側壁の上面側に向かって形成された凸部と、を備え、前記凸部は、一方向に曲率を有し前記一方向に直交する方向には曲率を有さない曲面、及び前記曲面と直交する平坦な側面を備え、前記凸部の全ての部分は前記側壁の上面よりも前記基板の上面側に位置し、前記凸部の側面が前記側壁の内側面により構成されているレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンをマスクとして前記基板をエッチングする工程と、を備えたレンズの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−109046(P2013−109046A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252191(P2011−252191)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
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