説明

レンズ材用硬化性組成物、レンズの製造方法、及びレンズ

【課題】各種(メタ)アクリルモノマーに溶解するとともに、従来のアクリル化合物と比較して高屈折率を有するレンズ材用硬化性組成物を提供する。
【解決手段】(A)下記一般式(1)で表される化合物、および、(B)光ラジカル開始剤、を含有する、レンズ材用硬化性組成物。


(上記一般式(1)中、Xは硫黄原子、又は酸素原子である。Rは水素原子、又は(メタ)アクリロイル基であり、少なくとも1つは(メタ)アクリロイル基である。nは0〜2の整数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ材用硬化性組成物、該レンズ材用硬化性組成物を用いたレンズの製造方法、及び、該製造方法によって得られるレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話に搭載されるカメラモジュールや、光ディスク用ピックアップのようなモジュールには、精密に加工されたレンズが使用されている。このようなレンズの材質は、従来ガラスが主流であったが、コスト等の面から、PMMA等の樹脂のレンズや、これをガラスのレンズに複合して形成したレンズが使用されるようになってきた。例えば、特許文献1には、感光性樹脂を用いたレンズとその製造方法が開示されている。
【0003】
またこれらのレンズに要求される光学的な精度は、ますます高まってきており、屈折率等の光学特性、耐環境性、温度安定性に優れた材料の開発が行われてきている。例えば、特許文献2には、9,9−ビスフェニルフルオレン骨格を有する化合物と硫黄化合物とを組み合わせた樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−070107号公報
【特許文献2】特開2005−187661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高屈折率のアクリル系材料として、ビスフェニルフルオレン骨格を有するアクリル系化合物が知られている。しかし、ビスフェニルフルオレン骨格を有するアクリル系化合物の誘導体は、屈折率が高いものの粘度は極めて高く、希釈モノマーの使用が必須であった。その結果、実用的な組成物の屈折率が低下してしまう問題があり、無溶媒系材料には不適であった。
そこで、本発明は、各種(メタ)アクリルモノマーに溶解するとともに、従来のアクリル化合物と比較して高屈折率を有するレンズ材用硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の構造を有する化合物と光ラジカル開始剤を含有するレンズ材用硬化性組成物を用いれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[11]を提供するものである。
[1] (A)下記一般式(1)で表される化合物、および、(B)光ラジカル開始剤、を含有する、レンズ材用硬化性組成物。
【化1】

(上記一般式(1)中、Xは硫黄原子、又は酸素原子である。Rは水素原子、又は(メタ)アクリロイル基であり、かつ、複数存在するRのうち、少なくとも1つは(メタ)アクリロイル基である。Rはフェニル基、ナフチル基、又はビフェニル基である。Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、またはアリール基である。一般式(1)及びR〜R中の水素原子は、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、または炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい。一般式(1)中に各々複数存在するX、R、R、及びRはそれぞれ異なっていても同じでもよい。nは0〜2の整数である。)
[2] 前記一般式(1)中、Xが酸素原子、Rがアクリロイル基またはメタクリロイル基であり、かつ、nが0または1である、前記[1]に記載のレンズ材用硬化性組成物。
[3] さらに、(C)反応性希釈剤を含有する、前記[1]または[2]に記載のレンズ材用硬化性組成物であって、(C)成分が分子内に(メタ)アクリロイル基を1〜4個有する、前記(A)成分以外の液状の(メタ)アクリレートであるレンズ材用硬化性組成物。
[4] 前記(C)成分が、分子内に芳香族環を有する、前記[3]に記載のレンズ材用硬化性組成物。
[5] 前記(C)成分が、下記一般式(2)〜(6)のいずれかで表される化合物である、前記[3]または[4]に記載のレンズ材用硬化性組成物。
【化2】





(上記一般式(2)〜(6)中、i、j、k、l、mは、それぞれ0〜2の整数である。)
[6] 前記(A)成分を20〜99.5質量%含有する、前記[1]〜[5]のいずれかに記載のレンズ材用硬化性組成物。
[7] 溶媒の含有量が1.0質量%未満である、前記[1]〜[6]のいずれかに記載のレンズ材用硬化性組成物。
[8] 前記[1]〜[7]のいずれかに記載のレンズ材用硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物。
[9] 光を透過する透明樹脂製の透明型を含む複数の成形型によって形成されたキャビティーに、未硬化の前記[1]〜[7]のいずれかに記載のレンズ材用硬化性組成物を注入する注入工程と、前記透明型を介して前記レンズ材用硬化性組成物に光を照射して、レンズ材用硬化性組成物を前記キャビティー内で硬化させる硬化工程と、を含む、レンズの製造方法。
[10] 前記[9]に記載の方法によって製造されたレンズ。
[11] 前記[10]に記載のレンズを備えた撮像装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明のレンズ材用硬化性組成物は、各種(メタ)アクリルモノマーに溶解するとともに、従来のアクリル化合物と比較して高屈折率を有し、透明性に優れることから、高屈折率の無溶媒系アクリル樹脂組成物として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】合成例で得られた化合物のNMRスペクトルを示す図である。
【図2】レンズの製造方法に用いる成形型の実施形態の一例を模式的に示す図である。
【図3】レンズの製造方法の工程の実施形態の一部を模式的に示す図である。
【図4】レンズの製造方法の工程の実施形態の一部を模式的に示す図である。
【図5】レンズの製造方法の工程の実施形態の一部を模式的に示す図である。
【図6】レンズの製造方法に用いる造形装置の実施形態の一例を模式的に示す図である。
【図7】レンズの製造方法に用いる転写体の実施形態の一例を模式的に示す図である。
【図8】レンズの製造方法の実施形態の一部を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のレンズ材用硬化性組成物は(A)下記一般式(1)で表される化合物、および、(B)光ラジカル開始剤を含有する。
【化3】

(上記一般式(1)中、Xは硫黄原子、又は酸素原子である。Rは水素原子、又は(メタ)アクリロイル基であり、かつ、複数存在するRのうち、少なくとも1つは(メタ)アクリロイル基である。Rはフェニル基、ナフチル基、又はビフェニル基である。Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、またはアリール基である。一般式(1)及びR〜R中の水素原子は、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、または炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい。一般式(1)中に各々複数存在するX、R、R、及びRはそれぞれ異なっていても同じでもよい。nは0〜2の整数である。)
上記一般式(1)中、Xは酸素原子が好ましい。Rは反応性の観点から、好ましくはアクリロイル基、又はメタクリロイル基であり、より好ましくはアクリロイル基である。この場合、複数のRのうちアクリロイル基及びメタクリロイル基が占める割合は通常30%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上であり、残るRは水素原子である。Rは好ましくはフェニル基またはビフェニル基であり、より好ましくはビフェニル基である。ビフェニル基は2−ビフェニル基、3−ビフェニル基、4−ビフェニル基の何れでもよく、ナフチル基は1−ナフチル基、2−ナフチル基の何れでもよい。
一般式(1)及びR〜R中の水素原子は、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子で置換されていてもよく、屈折率の観点から臭素原子が好ましい。また、一般式(1)中の芳香族環上の水素原子はシアノ基、エチル基、メチル基、プロピル基、イソプロピル基で置換されていることが好ましく、屈折率の観点からシアノ基がより好ましい。nは0又は1が好ましい。
【0010】
前記一般式(1)で表される化合物の具体例としては、例えば、9,9−ビス[4−(3−フェニルオキシ−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−フェニルオキシ−2−メタクリロイルオキシプロピルオキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−ナフチルオキシ−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−ナフチルオキシ−2−メタクリロイルオキシプロピルオキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−ビフェニルオキシ−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−ビフェニルオキシ−2−メタクリロイルオキシプロピルオキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−フェニルチオ−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−フェニルチオ−2−メタクリロイルオキシプロピルオキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−ナフチルチオ−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−ナフチルチオ−2−メタクリロイルオキシプロピルオキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−ビフェニルチオ−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−ビフェニルチオ−2−メタクリロイルオキシプロピルオキシ)フェニル]フルオレン、9−[4−(3−フェニルオキシ−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ)フェニル]−9−[4−(3−フェニルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)フェニル]フルオレン、9−[4−(3−フェニルオキシ−2−メタクリロイルオキシプロピルオキシ)フェニル]−9−[4−(3−フェニルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)フェニル]フルオレン、9−[4−(3−ビフェニルオキシ−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ)フェニル]−9−[4−(3−ビフェニルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)フェニル]フルオレン、9−[4−(3−ビフェニルオキシ−2−メタクリロイルオキシプロピルオキシ)フェニル]−9−[4−(3−ビフェニルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)フェニル]フルオレン、9−[4−(3−ナフチルオキシ−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ)フェニル]−9−[4−(3−ナフチルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)フェニル]フルオレン、9−[4−(3−ナフチルオキシ−2−メタクリロイルオキシプロピルオキシ)フェニル]−9−[4−(3−ナフチルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)フェニル]フルオレン等が挙げられ、中でも9,9−ビス[4−(3−フェニルオキシ−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−ナフチルオキシ−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−ビフェニルオキシ−2−アクリロイルオキシプロピルオキシ)フェニル]フルオレンが好ましい。
【0011】
その他に、下記式(7)〜(14)で表される化合物も好ましく使用することができる。
【化4】








【0012】
(A)成分の含有量は、好ましくは20〜99.5質量%であり、より好ましくは30〜70.0質量%である。20質量%未満であると屈折率が高くなりにくく、本発明の効果が十分に得られない場合がある。99.5質量%を超えると、後述する(B)成分の配合量が少なくなり、組成物の流動性が低く、加工が困難となるおそれがある。
【0013】
(B)光ラジカル開始剤としては、特に限定されることはなく、市販の物を使用することができる。光ラジカル開始剤は、光によってラジカル活性種を発生しうるものであれば特に限定されない。光ラジカル開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類(例えば特開2001−139663号に記載されたもの等)、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類、芳香族スルホニウム類、ロフィンダイマー類、オニウム塩類、ボレート塩類、活性エステル類、活性ハロゲン類、無機錯体、クマリン類などが挙げられる。更に具体的には、例えば、光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、BASF社製のIrgacure184、Irgacure907等が挙げられる。
(B)成分の含有量は0.1〜10質量%が好ましい。
【0014】
さらに、本発明のレンズ材用硬化性組成物は、(C)反応性希釈剤を含有してもよい。反応性希釈剤を含むことによって、レンズ材用硬化性組成物の粘度、及び硬化性を調整することができ、また、得られる硬化物の硬度を調整することもできる。
ここで、本発明における反応性希釈剤とは、分子内に(メタ)アクリロイル基を1〜4個有する、前記(A)成分以外の液状の(メタ)アクリレートである。具体的には、フェノキシエチルアクリレート、o−フェニルフェノキシエチルアクリレート、チオフェノキシエチルアクリレート等が挙げられる。
中でも、屈折率の観点から、分子内に芳香族環を有する(メタ)アクリレート等が好ましく、分子内に芳香族環を有する(メタ)アクリレートとして下記一般式(2)〜(6)のいずれかで表される化合物を例示することができる。なお、この場合、レンズ材用硬化性組成物の粘度や得られる硬化物の硬度を調整する目的で、非芳香族性の化合物を含んでもよいが、非芳香族性の化合物の含量は20質量%以下が好ましい。
【化5】





(上記一般式(2)〜(6)中、i、j、k、l、mは、それぞれ0〜2の整数である。)
【0015】
本発明のレンズ材用硬化性組成物は、型に注入した状態で硬化させることが可能である。そのため、本発明のレンズ材用硬化性組成物は液状であるが、溶媒を含まないことが好ましい。なお、ここで溶媒とは、(A)成分または(C)成分と共重合しない成分であって、沸点が230℃以下のものをいう。本発明のレンズ材用硬化性組成物に含まれる溶媒量が多い場合、硬化させた後に溶媒が揮発することで、微細な空隙を形成し、屈折率が低下することが懸念される。そのため、本発明のレンズ材用硬化性組成物に含まれる溶媒の含有量は、好ましくは1.0質量%未満であり、より好ましくは0.5質量%未満である。
【0016】
本発明のレンズ材用硬化性組成物には、屈折率等を調節するために、各種の添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤としては、平均粒径が0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.06μm以下であるチタン、ジルコニウム、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、およびアンチモンの群から選択される少なくとも一種の金属の酸化物(無機フィラー)を挙げることができる。
さらに、酸化防止剤、光増感剤等の他の各種添加剤が含まれていてもよい。
【0017】
本発明のレンズ材用硬化性組成物は光によって硬化する性質を有する。ここで、光とは、遠赤外線、赤外線、近赤外線、可視光線、紫外線、真空紫外線等の電磁波のことを指し、後述する透明型を透過する性質を有するかぎり特に限定されない。また、ここでの「硬化する」とは、光を受けることに起因して組成物中の分子が、反応して、高分子化、あるいは架橋形成などして、流動性が減少することを指し、組成物の硬化物は、特定の架橋構造を有している。
【0018】
本発明のレンズ材用硬化性組成物の硬化物は、25℃における屈折率が、好ましくは1.60以上、より好ましくは1.62以上である。硬化物の屈折率がこの範囲外であると、レンズ材としての性能が劣る。
また、本発明のレンズ材用硬化性組成物の硬化物のアッベ数は、好ましくは30未満である。一般的にはアッベ数が大きい方が光学的に優れたレンズ材料といえるが、高屈折率かつ高アッベ数の材料を得ることは原理的に困難である。そのため、実用上は色収差を補正する目的で、高屈折率で低アッベ数のレンズと、低屈折率で高アッベ数のレンズとを組み合わせたレンズ群として使用することが一般的である。本発明のレンズ材は、これらのうち高屈折率で低アッベ数の材料を提供するものである。アッベ数が30以上であると単独のレンズ材としては優れるが、低屈折率で高アッベ数のレンズと組み合わせて使用する場合に、色収差の補正が困難になる場合がある。
【0019】
本発明のレンズ材用硬化性組成物を用いてレンズを製造する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、以下の実施形態の他、特許第4226061号公報に記載の方法が挙げられる。
ここで、図2は、本実施形態にかかるレンズの製造方法に用いる成形型の構成の一例を模式的に示す図である。図3〜図5は、本実施形態にかかるレンズの製造方法の工程を模式的に示す図である。
【0020】
本実施形態の一例であるレンズの製造方法は、特定形状を有するレンズ1(図5参照)の製造方法であって、注入工程と、硬化工程と、を含む。
【0021】
[成形型の構成]
まず、本実施形態のレンズの製造方法に使用される成形型の構成を説明する。本実施形態では、成形型は、図2で示すように透明型10、第1支持板12、駒14、第2支持板16、押し板20、および突き出し板22から構成されている。以下では、本実施形態にかかるレンズの製造方法に用いる成形型の構成の一例を示すが、以下の実施形態で説明する構成の全てが、本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0022】
透明型10は、レンズ1に最終的に形成される表面と相補的な形状を有する成形面10aを有する。本実施形態では、透明型10は、レンズ1の凸面1a(図5参照)の型となる成形面10aを有する。透明型10の形状は、成形面10aを有する限り、特に限定されない。透明型10は、例えば、円盤状であることができるが、レンズ1の外形が多角形である場合には、多角形の板状であってもよい。また、透明型10は、図2及び図4に示すように、第1支持板12にはめ込まれるような形状を有していてもよい。
【0023】
透明型10の機能の一つとしては、レンズ1の表面の少なくとも一部を形成するための成形面10aを提供することが挙げられる。また、透明型10の機能の一つとしては、透明型10を含む複数の成形型によって形成されるキャビティー24(図4参照)に、当該透明型10を介して光を導入することができるようにすることが挙げられる。
【0024】
透明型10は、レンズ材用硬化性組成物が硬化するための光を透過することができる透明樹脂で形成される。透明樹脂としては、特に限定されず、透明性を有する各種の高分子化合物が挙げられる。
透明型10に好適に用いることのできる高分子化合物としては、例えば、セルロースアシレート系(例えば、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート系、セルロースアセテートプロピオネート)、ポリエチレンテレフタレート系、ポリエーテルスルホン系、ポリアクリル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリスルホン系、ポリエーテル系、ポリメチルペンテン系、ポリエーテルケトン系、ポリ(メタ)アクリルニトリル系、環状オレフィン系(例えば、JSR社製;商品名「ARTON」(ノルボルネン系))等の樹脂を挙げることができる。
【0025】
第1支持板12は、透明型10を支持する板状の部材である。第1支持板12の形状は、透明型10を支持できる限り特に限定されないが、例えば、図示のように、透明型10をはめ込むことができるような孔を有することが好ましい。第1支持板12が、このような形状を有すると、第1支持板12に透明型10を載置しやすくなり、例えば、本実施形態のレンズ1の製造方法の作業能率を高めることができる。
【0026】
第1支持板12の材質としては、特に限定されず、ガラス、金属、金属酸化物等の無機化合物、樹脂等の有機化合物を用いることができる。なお、第1支持板12は、特に透明性を有さなくてもよいが、透明な材料で形成されることもできる。第1支持板12を、透明な材料で形成する場合には、上記透明型10と同様の材質とすることができる。
【0027】
駒14は、レンズ1に最終的に形成される表面と相補的な形状を有する成形面14bを有する。本実施形態では、駒14は、レンズ1の凹面1b(図5参照)の型となる成形面14bを有する。駒14の形状は、成形面14bを有する限り、特に限定されない。駒14は、例えば、円盤状であることができるが、レンズ1の外形が多角形である場合には、多角形の板状であってもよい。また、駒14は、図2に示すように、第2支持板16にはめ込まれるような形状を有していてもよい。
【0028】
駒14の機能の一つとしては、レンズ1の表面の少なくとも一部を形成する型面を提供することが挙げられる。駒14の材質としては、特に限定されず、ガラス、金属、金属酸化物等の無機化合物、樹脂等の有機化合物を用いることができる。なお、駒14は、特に透明性を有さなくてもよいが、透明な材料で形成されることもできる。駒14を、透明な材料で形成する場合には、上記透明型10と同様の材質とすることができる。この場合、駒14は、透明型10と同様の機能を有し、本実施形態の製造方法における透明型と呼ぶことができる。なお、駒14を介してキャビティー24内に光を導入しようとする場合には、突き出し板22等も透明な材質で形成する必要がある。
【0029】
第2支持板16は、駒14を支持する板状の部材である。第2支持板16の形状は、駒14を支持できる限り特に限定されないが、例えば、図2及び4に示すように、駒14をはめ込んで、突き出し板22の上に載置することができる孔を有することが好ましい。第2支持板16が、このような形状を有すると、第2支持板16に駒14を載置しやすくなり、例えば、本実施形態のレンズ1の製造方法の作業能率を高めることができる。
【0030】
また、本実施形態では、第2支持板16に形成された、駒14をはめ込むための孔は、第2支持板16を貫通しており、突き出し板22を第2支持板16に押しつけることによって、駒14が第2支持板16から押し出されるように形成されている。このようにする
ことで、形成されたレンズ1(図4のキャビティー24内に形成されるもの)を駒14から回収しやすくすることができる。
【0031】
第2支持板16は、レンズ1に最終的に形成される表面と相補的な形状を有する成形面16cを有する。本実施形態では、第2支持板16は、レンズ1の側面1c(図5参照)の型となる成形面16cを有する。第2支持板16の形状は、成形面16cを有する限り、特に限定されない。第2支持板16は、例えば、駒14をはめ込むための円形の孔を有することができるが、レンズ1の外形が多角形である場合には、多角形の孔を有する板状であってもよい。
【0032】
第2支持板16の機能の一つとしては、レンズ1の表面の少なくとも一部(特に厚みを形成する側面)を形成する型面を提供することが挙げられる。第2支持板16の機能の一つとしては、駒14をはめ込むことにより、駒14の取り扱いを容易にすることが挙げられる。
【0033】
第2支持板16の材質としては、特に限定されず、ガラス、金属、金属酸化物等の無機化合物や、樹脂等の有機化合物を用いることができる。なお、第2支持板16は、特に透明性を有さなくてもよいが、透明な材料で形成されることもできる。第2支持板16を、透明な材料で形成する場合には、上記透明型10と同様の材質とすることができる。この場合、第2支持板16は、透明型10と同様の機能を有し、本実施形態の製造方法における透明型と呼ぶことができる。
【0034】
押し板20は、透明型10をキャビティー24(レンズ1)に向かって押さえるための板状の部材である。押し板20の形状は、透明型10を機械的に押さえることができる限り特に限定されず、例えば、平板状であることができる。
押し板20の材質としては、特に限定されず、ガラス、金属、金属酸化物等の無機化合物や、樹脂等の有機化合物を用いることができる。なお、押し板20は、特に透明性を有さなくてもよいが、透明性を有さない材料で形成される場合には、図示の例のように、透明型10に外部から光を導入することが可能な開口(窓)を有するように形成されることができる。なお、押し板20を、透明な材料で形成する場合には、上記透明型10と同様の材質とすることができ、その場合には、開口等を有さない形状としてもよい。
【0035】
突き出し板22は、少なくとも駒14をキャビティー24(レンズ1)に向かって押さえるための板状の部材である。突き出し板22の形状は、駒14を機械的に押さえることができる限り特に限定されず、例えば、平板に駒14に対応する位置に突起を有する形状であることができる。
突き出し板22の材質としては、特に限定されず、ガラス、金属、金属酸化物等の無機化合物や、樹脂等の有機化合物を用いることができる。
【0036】
本実施形態では、透明型10、第2支持板16、および駒14の表面によって、キャビティー24が形成されているが、さらに他の部材構成を含んでもよい。また、本実施形態では、透明型10が透明である場合を例示しているが、これらに限定されるものではない。
キャビティー30は、本実施形態で製造されるレンズ1と相補的な形状を有する空間である。キャビティー30には、透明型10を介して光が導入されることができる。また、キャビティー30を取り囲む面には、レンズ1(成形体)の剥離を容易にするための離型層などの、特定の機能を有する層が形成されていてもよい。
【0037】
[注入工程]
注入工程は、透明型10を含む複数の成形型によって形成されたキャビティー24に、未硬化のレンズ材用硬化性組成物を注入する工程である。未硬化のレンズ材用硬化性組成物とは、流動性を有する状態のレンズ材用硬化性組成物のことを指し、硬化反応が全く生じていない状態のレンズ材用硬化性組成物であっても、硬化反応が一部生じており、かつ流動性を有する状態のレンズ材用硬化性組成物であってもよい。
【0038】
未硬化のレンズ材用硬化性組成物を、キャビティー24に注入する具体的な形態としては、例えば、図3に示すように、押し板20および突き出し板22の間隔を大きくして、キャビティー24が形成される前に、未硬化のレンズ材用硬化性組成物を、キャビティー24が形成される空間に充填し、図4に示すように、押し板20および突き出し板22の間隔を小さくしてキャビティー24を形成することによって行うこともできる。また、レンズ材用硬化性組成物のキャビティー24が形成される空間への充填は、例えば、ディスペンサー等によって行われることができる。
【0039】
[硬化工程]
硬化工程は、透明型10を介してレンズ材用硬化性組成物に光を照射して、レンズ材用硬化性組成物を前記キャビティー24内で硬化させる工程である。
硬化工程における光の照射方法は、特に限定されないが、レンズ材用硬化性組成物が硬化することのできる光を発生する装置からの光を、直接あるいは光ファイバー等を介して、透明型10に導入することによって行うことができる。
【0040】
硬化工程は、大気圧中で行われることができるが、その他の圧力環境で行われることもできる。例えば、硬化工程は、押し板20および突き出し板22によって、挟むように圧力を印加しながら行うことができる。また、硬化工程は、真空プレスによって行われることができる。真空プレスは、例えば、キャビティー24内を大気圧より低い状態にすることによって、押し板20および突き出し板22が互いに近づく方向に大気圧によって応力を受けるような成形方法である。硬化工程がこのような圧力環境で行われると、例えば、レンズに気泡等の欠陥を生じにくくすることができる。
【0041】
上述の成型型の構成を用いて上記注入工程および硬化工程が行われることによって、レンズ1が得られる。このレンズ1は、個片として製造できるため、個片化する工程が不要である。
【0042】
また、レンズの製造方法の他の一例として、以下の方法が挙げられる。
ここで、図6は、レンズの製造方法に用いる造形装置30を示す図である。
造形装置30は、設置面に設置される基台31を有し、基台31の上に可動台33が支持されている。可動台33の上側面には、さらに支持台32が支持されている。可動台33は、下側に突出した形状の突出部34が形成された下側部分35と、下側部分35の上側に位置する上側部分36とからなり、突出部34が基台31の上面に形成されたy軸方向の溝(不図示)に嵌め込まれるように基台31に取り付けられている。このため、y軸方向の溝にガイドされ、可動台33は、基台31上でy軸方向に移動可能となっている。
【0043】
可動台33の上側部分36には、θ軸モータ37が設けられている。θ軸モータ37は、可動台33の上側部分36を、可動台33の下側部分35に対してZ軸に平行な方向の回転軸を中心に回転させる。このように、可動台33は、上側部分36が下側部分35に対して回転可能となっている。
支持台32には、例えばガラス等からなるウエハWが載置されるとともに、可動台33の上側部分36に対してウエハWと一体として回転することができるようになっていて、ウエハWにいわゆるスピンコートで樹脂等を塗布する際に用いられるスピンコート用の回転テーブルとして構成されている。支持台32は、例えばガラス等の光透過性を有する材料を用いる等、後述する光照射装置44が発する光が通過することができるようになっている。
【0044】
可動台33の上側部分36には、成形材料として用いられるレンズ用硬化性組成物を、略円形(円板形状)からなるウエハWの略中心部に上方から落下させるように供給する供給装置38が設けられている。ウエハWに供給されたレンズ用硬化性組成物は、支持台32が予め定められた所定時間回転することで遠心力によって拡散し、ウエハW表面に略均一な厚さで塗布された状態となる。
【0045】
また、可動台33の上側部分36には、硬化装置として用いられる光照射装置44が設けられている。光照射装置44は、ウエハWに塗布されたレンズ用硬化性組成物に光を照射するために用いられる。この実施形態では、光照射装置44は、塗布されたレンズ用硬化性組成物に対して、後述する転写体50とは逆側である下側に設けられている。このため、転写体50をレンズ用硬化性組成物に接触させた状態で、転写体50に遮られることなくレンズ用硬化性組成物に光を照射することができる。
【0046】
基台31には、可動台33が装着されているとともに支柱39が固定されている。支柱39には、支柱39に対してx軸方向に移動可能に可動ユニット40が取り付けられている。
可動ユニット40の右側部分には、転写体50が、支持部材41を介して装着されている。支持部材41は、可動ユニット40に対してz軸方向に移動可能に取り付けられていて、左側に突出した突出部42と、突出部42に固定された支持部43とからなる。支持部43には、例えば下向きの面に、転写体として用いられる転写体50が着脱できるように装着されている。
転写体50は、支持部43に着脱することができるため、転写体50に替えて、支持部43に他の転写体を装着することが可能である。
可動ユニット40の右側部分には、ウエハW及び転写体50の位置を検知する検知手段として用いられる検知装置45が、支持部材41とは独立して上下動可能に(z軸方向に移動可能に)取り付けられている。
【0047】
以上のように、支持部材41は、可動ユニット40に対してz軸方向に移動可能に取り付けられていて、可動ユニット40は支柱39に対してx軸方向に移動可能に取り付けられている。よって、支持部材41とともに転写体50を、x軸方向とz軸方向とに移動させることができる。また、先述のように、支持台32は、可動台33とともにy軸方向に移動し、回転する。よって、ウエハWと、光照射装置44及び転写体50との相対的な位置関係を変更することができる。
【0048】
そして、ウエハWと転写体50との相対的な位置関係を変更することで、ウエハWに塗布されたレンズ用硬化性組成物と転写体50とを、互いに当接させ離間させることができる。
図7には、転写体50が示されている。転写体50は、例えば金属からなり、図7に示されるように、略円筒形状の本体部51を有し、本体部51の底面52が転写部として用いられる。底面52の略中央部には、レンズ用硬化性組成物に、例えばレンズを形成するために用いられる光学部品部形成部53が、下向きに突出するように設けられている。光学部品部形成部53の底面54は、例えば球面又は非球面からなり、この球面等は、転写体50を、例えば切削、研磨する等、機械的に加工することにより形成される。底面54の形状が、レンズ用硬化性組成物に転写されて、レンズ用硬化性組成物に底面54の反対形状を有する光学部品部が形成される。
【0049】
図8には、転写体50及びウエハWの詳細が示されるともに、転写体50の動作が説明されている。
図8に示されるように、ウエハWは、基板W1の上方に、保持板W2が重ねられた構造をしている。基板W1は、例えば光が透過することができる材料であるガラスからなる。
保持板W2は、流動性が高い硬化前のレンズ用硬化性組成物を所定の位置に保持するために用いられる。例えば、保持板W2はシリコンからなり、上方から下方に貫通するすり鉢形状の貫通孔hが複数形成されている。
図8においては、ウエハWの上面にレンズ用硬化性組成物が塗布され、塗布されたレンズ用硬化性組成物が保持板W2の貫通孔hに流れ込むようにして保持板W2に保持され、保持されたレンズ用硬化性組成物に対して、少なくとも底面52がレンズ用硬化性組成物に接触するように、転写体50が接触した状態が示されている。
この状態で、光照射装置44を用いてレンズ用硬化性組成物の、底面52に接触した位置、及びその周辺に光を照射すると、レンズ用硬化性組成物が硬化して転写体50の底面52の形状がレンズ用硬化性組成物へと転写される。そして、レンズ用硬化性組成物が硬化した後、転写体50は、図8に二点鎖線で示されるようにウエハWから離間し、図8中に矢印で示されるように、例えば、硬化した樹脂を保持する貫通孔hの隣の貫通孔hに保持された未硬化の樹脂に接するように移動する。
これを繰り返した後に、ウエハWを切断する等の方法で、複数のレンズに分割する。
【0050】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。たとえば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(たとえば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0051】
上述したレンズの製造方法等によって製造される、本発明のレンズ材用硬化性組成物の硬化物からなるレンズは、小型カメラ等のレンズを備えた撮像装置、記録媒体の光ピックアップ、表示装置、照明装置、複写装置、印刷装置等の光学系、眼鏡、コンタクトレンズ等に用いられる。
また、上述した製造方法によって製造されるレンズの表面は、球面、非球面、自由曲面、凸面、凹面等、任意の形状を有することができる。
【実施例】
【0052】
[物性評価]
NMR:超伝導核磁気共鳴吸収装置(NMR、Bruker社製、商品名:AVANCE500)を用い、重水素化クロロホルム中でH−NMRを測定した。
屈折率:サーキュレーターを備えた屈折計(アタゴ社製 多波長アッベ屈折計DR−M2)を用いて25℃にて589nm、486nm、656nmにおける屈折率を測定しアッベ数を求めた。
【0053】
[合成例1]
9,9−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)フルオレン10.00g(0.0216mol)、4−フェニルフェノール7.36g(0.0432mol)、テトラブチルアンモニウムブロミド0.7g(0.00216mol)、N−メチルピロリドン5gをはかりとり160℃で5時間反応させた。
GPCにより原料である9,9−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)フルオレンおよび4−フェニルフェノールの消失を確認した後、テトラヒドロフラン(THF)22g、アクリル酸クロリド5.87g(0.0648mol)、N,N−ジメチルアニリン7.86g(0.0648mol)を加えて20℃以下の温度で5時間反応させた。
析出した塩をろ過により除去した後、ろ液を塩化メチレン200gで希釈し、イオン交換水200gで3回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、濃縮しシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;塩化メチレン)により精製を行った。得られた溶液を濃縮した後、真空乾燥して白色固体18.8g(収率98%)を得た。合成のフローを下記合成フロー1に示す。また、得られた化合物のNMRスペクトルを図1に示す。
[合成フロー1]
【化6】

【0054】
[実施例1]
合成例1で得た化合物50質量部、フェノキシエチルアクリレート50質量部、Irganox1035(BASF社製)1質量部、Irgacure184(BASF社製)2質量部を混合したところ均一な溶液が得られた。得られた溶液を硼珪酸ガラス製のガラスウェハー上に塗布して0.5mm厚みのスペーサーを周囲に配した後、更にもう1枚のガラスウェハーを乗せた状態でマスクアライナー(Karl Suss社製のMA100CC)を用いて全面露光(20mW/cm(365nm)で2分間)して板状のサンプルを得た。得られた硬化物は無色透明で25℃、589nmにおける屈折率(n25)は1.6023、アッベ数(ν)は28であった。
【0055】
[実施例2]
合成例1で得た化合物60質量部、フェノキシエチルアクリレート40質量部、Irganox1035(BASF社製)1質量部、Irgacure184(BASF社製)2質量部を混合したところ均一な溶液が得られた。得られた溶液を実施例1と同様にして硬化させたところ無色透明の硬化物が得られ、屈折率を測定した結果、n25=1.611、ν=27であった。
【0056】
[実施例3]
合成例1で得た化合物50質量部、フェノキシエチルアクリレート25質量部、o−フェニルフェノキシエチルアクリレート25質量部、Irganox1035(BASF社製)1質量部、Irgacure184(BASF社製)2質量部を混合したところ均一な溶液が得られた。得られた溶液を実施例1と同様にして硬化させたところ無色透明の硬化物が得られ、屈折率を測定した結果、n25=1.616、ν=26であった。
【0057】
[実施例4]
合成例1で得た化合物44質量部、o−フェニルフェノキシエチルアクリレート56質量部、Irganox1035(BASF社製)1質量部、Irgacure184(BASF社製)2質量部を混合したところ均一な溶液が得られた。得られた溶液を実施例1と同様にして硬化させたところ無色透明の硬化物が得られ、屈折率を測定した結果、n25=1.624、ν=25であった。
【0058】
[実施例5]
合成例1で得た化合物55質量部、チオフェノキシエチルアクリレート45質量部、Irganox1035(BASF社製)1質量部、Irgacure184(BASF社製)2質量部を混合したところ均一な溶液が得られた。得られた溶液を実施例1と同様にして硬化させたところ無色透明の硬化物が得られ、屈折率を測定した結果、n25=1.628、ν=26であった。
【0059】
[比較例1]
下記式(15)で表される化合物60質量部、フェノキシエチルアクリレート40質量部、Irganox1035(BASF社製)1質量部、Irgacure184(BASF社製)2質量部を混合したところ均一な溶液が得られた。得られた溶液を実施例1と同様にして硬化させたところ無色透明の硬化物が得られ、屈折率を測定した結果、n25=1.599、ν=28であった。
【化7】

【0060】
[比較例2]
イソフタル酸ジクロライド0.02molと9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン0.04molとの反応をトリエチルアミン0.08molの存在下、テトラヒドロフラン中で行い末端がOH基であるオリゴマーを合成した。その後、反応液中にアクリル酸クロライド0.04molを加えて更に反応させて、下記式(16)で表されるアクリルオリゴマーを得た。精製は水洗、メタノールによる再沈殿により行った。GPCで測定した質量平均分子量Mwは2000、末端のアクリル基導入率は90%であった。得られたオリゴマーをフェノキシエチルアクリレート、o−フェニルフェノキシエチルアクリレートとそれぞれ混合した結果、何れも不溶であった。
【化8】

【0061】
[比較例3]
ビスフェノールAビスクロロホルメート0.02molと9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン0.04molとの反応をトリエチルアミン0.08molの存在下、テトラヒドロフラン中で行い末端がOH基であるオリゴマーを合成した。その後、反応液中にアクリル酸クロライド0.04molを加えて更に反応させて、下記式(17)で表されるアクリルオリゴマーを得た。精製は水洗、メタノールによる再沈殿により行った。GPCで測定した質量平均分子量Mwは4000、末端のアクリル基導入率は70%であった。得られたオリゴマーをフェノキシエチルアクリレートと混合した結果、オリゴマーの濃度が40%を超えると溶液の粘度が高くなり流動性がなくなった。濃度40%の溶液を実施例1と同様にして硬化させたところ無色透明の硬化物が得られ、屈折率を測定した結果、n25=1.594、ν=31であった。
【化9】

【符号の説明】
【0062】
1 レンズ
1a 凸面
1b 凹面
1c 側面
10 透明型
10a 成形面
12 第1支持板
14 駒
14b 成形面
16 第2支持板
16c 成形面
20 押し板
22 突き出し板
30 造形装置
31 基台
32 支持台
33 可動台
37 θ軸モータ
38 供給装置
39 支柱
40 可動ユニット
44 光照射装置
45 検知装置
50 転写体
51 本体部
52 底面
53 光学部品部形成部
54 底面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で表される化合物、および、
(B)光ラジカル開始剤、
を含有する、レンズ材用硬化性組成物。
【化1】

(上記一般式(1)中、Xは硫黄原子、又は酸素原子である。Rは水素原子、又は(メタ)アクリロイル基であり、かつ、複数存在するRのうち、少なくとも1つは(メタ)アクリロイル基である。Rはフェニル基、ナフチル基、又はビフェニル基である。Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、またはアリール基である。一般式(1)及びR〜R中の水素原子は、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、または炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい。一般式(1)中に各々複数存在するX、R、R、及びRはそれぞれ異なっていても同じでもよい。nは0〜2の整数である。)
【請求項2】
前記一般式(1)中、Xが酸素原子、Rがアクリロイル基またはメタクリロイル基であり、かつ、nが0または1である、請求項1に記載のレンズ材用硬化性組成物。
【請求項3】
さらに、(C)反応性希釈剤を含有する、請求項1または2に記載のレンズ材用硬化性組成物であって、(C)成分が分子内に(メタ)アクリロイル基を1〜4個有する、前記(A)成分以外の液状の(メタ)アクリレートであるレンズ材用硬化性組成物。
【請求項4】
前記(C)成分が、分子内に芳香族環を有する、請求項3に記載のレンズ材用硬化性組成物。
【請求項5】
前記(C)成分が、下記一般式(2)〜(6)のいずれかで表される化合物である、請求項3または4に記載のレンズ材用硬化性組成物。
【化2】





(上記一般式(2)〜(6)中、i、j、k、l、mは、それぞれ0〜2の整数である。)
【請求項6】
前記(A)成分を20〜99.5質量%含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のレンズ材用硬化性組成物。
【請求項7】
溶媒の含有量が1.0質量%未満である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のレンズ材用硬化性組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のレンズ材用硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物。
【請求項9】
光を透過する透明樹脂製の透明型を含む複数の成形型によって形成されたキャビティーに、未硬化の請求項1〜7のいずれか1項に記載のレンズ材用硬化性組成物を注入する注入工程と、
前記透明型を介して前記レンズ材用硬化性組成物に光を照射して、レンズ材用硬化性組成物を前記キャビティー内で硬化させる硬化工程と、
を含む、レンズの製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法によって製造されたレンズ。
【請求項11】
請求項10に記載のレンズを備えた撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−255914(P2012−255914A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128976(P2011−128976)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】