説明

レンズ用樹脂の離型性を改良する方法

【課題】本発明は、エピスルフィド化合物を原料とするエピスルフィド系レンズの製造において、耐熱性が高く、また、レンズ離型時の破損または変形を防止でき、レンズの生産性が向上するレンズ用樹脂を提供する。
【解決手段】分子内に2つ以上のエピスルフィド基を持つ化合物を含有する重合性組成物を、注型重合させて得られるエピスルフィド系レンズの製造において、得られるレンズ中に存在するエピスルフィド基が、0.3質量%以下となるように重合を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックレンズ、プリズム、光ファイバー、情報記録基板、フィルター、発光ダイオード等の光学材料に使用される樹脂に関するものであり、特に眼鏡用プラスチックレンズの樹脂として好適に使用されるレンズ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックレンズは、無機レンズに比べ軽量で割れ難く、染色が可能なため、近年、眼鏡レンズ、カメラレンズ等の光学材料に急速に普及してきている。
【0003】
これらプラスチックレンズに要求され続けている光学性能としては、高屈折率、高アッベ数、物理的性質としては高耐熱性、低比重、加工性である。
【0004】
これらの性能のうち、高耐熱性、低比重については現在の高屈折率プラスチックレンズでも高いレベルで実現されてきている。現在、これらの目的に広く用いられる樹脂としては、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)(以下、D.A.Cと称す)をラジカル重合させたものがある。この樹脂は、耐衝撃性に優れていること、軽量であること、染色性に優れていること、切削性および研磨性等の加工性が良好であることなど、種々の特徴を有している。しかしながら、この樹脂は、屈折率ndが1.50と低く、レンズの中心厚やコバ厚が厚くなってしまい、より屈折率の高いレンズ用樹脂が望まれていた。
【0005】
D.A.C樹脂よりも屈折率を高くしたものとして、樹脂中に硫黄原子を導入した、ポリウレタン樹脂(特公平4−58489等)や含硫O−(メタ)アクリレート樹脂(特開平4−161410等)やチオ(メタ)アクリレート樹脂(特公平3−59060等)が知られている。ポリウレタン樹脂は、高屈折率で耐衝撃性が良好であるなど、バランスの優れた樹脂である。
【0006】
しかしながら、屈折率とアッベ数に関しては屈折率が上昇するほどアッベ数が低下するといった相反する物性であるため、両方を同時に向上させることは、非常に困難である。そこで、アッベ数の低下を抑えながら、高屈折率化を行う検討が盛んに行われている。
【0007】
これらの検討に中で最も代表的な提案は、特許文献1(特開平9−110979号公報)および特許文献2(特開平9−71580号公報)、特許文献3(特開平9−255781号公報)、特許文献4(特開平10−2982878号公報)、特許文献5(特開平11−166037号公報)でエピスルフィド化合物を使用する方法である。また本出願人らも特許文献6(WO89/10575)、特許文献7(特開平11−140070号公報)、特許文献8(特開平11−183702号公報)、特許文献9(特開平11−189592号公報)、特許文献10(特開平11−322930号公報)等のエピスルフィド化合物を使用した高屈折率レンズ用樹脂を提案している。
【0008】
これらの方法によれば、比較的高いアッベ数を有しながら、高い屈折率が実現できる。しかしながら、これらの特許には樹脂中に残存するエピスルフィド基に関する記載は無く、樹脂中に存在しているエピスルフィド基が諸物性に与える影響が明らかでなかった。したがって、樹脂中に存在するエピスルフィド基の量を規定することが重要であった。
【特許文献1】特開平9−110979号公報
【特許文献2】特開平9−71580号公報
【特許文献3】特開平9−255781号公報
【特許文献4】特開平10−2982878号公報
【特許文献5】特開平11−166037号公報
【特許文献6】WO89/10575
【特許文献7】特開平11−140070号公報
【特許文献8】特開平11−183702号公報
【特許文献9】特開平11−189592号公報
【特許文献10】特開平11−322930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、エピスルフィド化合物を原料とするエピスルフィド系レンズ用樹脂において、物性、品質の安定したレンズ用樹脂を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような状況に鑑み本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、樹脂中に存在しているエピスルフィド基の影響により、樹脂の耐熱性が低下したり、離型時のガラスモールドとの離型性が悪くなったりし、得られるレンズ用樹脂の品質がぶれ、生産性が低下する場合があることを見出し、本発明に至った。
【0011】
すなわち本発明は、(A):1分子内に下記式(1)
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、R1は炭素数1〜10の2価の炭化水素基、R2、R3、R4はそれぞれ炭素数1〜10の炭化水素基または水素原子を示す。)で示される示される構造を1個以上持つエピスルフィド化合物を含有する重合性組成物を、注型重合させて得られるエピスルフィド系レンズの製造において、得られる樹脂中に存在するエピスルフィド基が、0.3質量%以下となるように重合を行うことを特徴とするレンズの製造方法及び該方法により得られるレンズ用樹脂に関する。
【0014】
(B):エピスルフィド化合物が下記式(2)で表される(A)のレンズの製造方法及びレンズ用樹脂。
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、R5〜R10はそれぞれ炭素数1〜10の炭化水素基または水素原子を示す。Yは、置換または未置換の直鎖、分岐または環状の炭素数1〜10の炭化水素基、置換または未置換の1,4−ジチアン基、アリーレン基を表す。mは、0〜2の整数を表し、nは、0〜4の整数を表す。)
【0017】
(C):エピスルフィド化合物が下記式(3)で表される(A)のレンズの製造方法及びレンズ用樹脂に関するものである。
【0018】
【化3】

【0019】
(式中、R11〜R16はそれぞれ炭素数1〜10の炭化水素基または水素原子を表す。)
【0020】
本発明において、樹脂中に存在するエピスルフィド基が0.3質量%以下とは、後述する分析法により樹脂中のエピスルフィド基のモル数を定量し、それにエピスルフィド基部分の分子量(59/1モル)を乗じて樹脂中のエピスルフィド基部分の質量を算出し、樹脂の質量で割った値である。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、樹脂中に存在するエピスルフィド基を0.3質量%以下にすることで、離型性に優れ、且つ耐熱性の高いレンズを得ることが出来る。
【0022】
その結果、レンズ製造時における離型時のレンズの破損または変形を防止することができ、レンズの生産性の向上につながる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0024】
本発明のレンズ用樹脂は、樹脂中に存在するエピスルフィド基が0.3質量%以下となることにより、耐熱性が優れ、離型性の良好なレンズが得られる。逆に樹脂中に存在するエピスルフィド基が0.3質量%を越えて含有した場合、樹脂の耐熱性が低くなったり、離型時の離型性が悪くなったり、離型時のレンズの破損または変形することがある。
【0025】
本発明において原料として用いられるエピスルフィド樹脂の具体例としては、ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド、ビス(β−エピチオプロピル)ジスルフィド、ビス(β−エピチオプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)エタン、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2−メチルプロパン、1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ブタン、1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2−メチルブタン、1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ブタン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ペンタン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2−メチルペンタン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−3−チアペンタン、1,6−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ヘキサン、1,6−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2−メチルヘキサン、3,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−3,6−ジチアオクタン、1,2,3−トリス(β−エピチオプロピルチオ)プロパン、2,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)プロパン、2,2−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−1−(βーエピチオプロピルチオ)ブタン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2−(β−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアペンタン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアペンタン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−2,2−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−4−チアヘキサン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4−(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,5−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2,4,5−トリス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,1,1−トリス[{2−(β−エピチオプロピルチオ)エチル}チオメチル]−2−(β−エピチオプロピルチオ)エタン、1,1,2,2−テトラキス[{2−(β−エピチオプロピルチオ)エチル}チオメチル]エタン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,8−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,7−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−5,7−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン等の鎖状脂肪族のβ−エピチオプロピルチオ化合物、及び、1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)シクロヘキサン、2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス[{2−(β−エピチオプロピルチオ)エチル}チオメチル]−1,4−ジチアン等の環状脂肪族のβ−エピチオプロピルチオ化合物、及び、1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、ビス{4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル}メタン、2,2−ビス{4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル}プロパン、ビス{4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル}スルフィド、ビス{4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル}スルフォン、4,4’−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ビフェニル等の芳香族β−エピチオプロピルチオ化合物等、更に3−メルカプトプロピレンスルフィド、4−メルカプトブテンスルフィド等、メルカプト基含有エピチオ化合物等を挙げることができるが、これらの例示化合物のみに限定されるものではない。また、これらの化合物は単独でも2種類以上を混合して使用しても良い。
【0026】
本発明の重合性組成物には、これらエピスルフィド樹脂の混合物ばかりでなく、その他、これら樹脂の2量体、3量体、4量体等のポリスルフィドオリゴマー類、エピスルフィド樹脂合成の際にエピハロヒドリンが不足した場合に生成するメルカプト基を有するエピスルフィド樹脂類、更に、エピスルフィド合成時に用いた、無機酸類や有機酸類、溶媒、未反応原料及びその他副生物並びに不純物等の有機化合物、無機化合物も問題にならない範囲で含まれてよい。
【0027】
本発明の方法においてレンズを得る場合、硬化触媒の存在下あるいは不存在下に、加熱あるいは常温放置により重合がなされ、レンズを製造することができるが、硬化触媒がない場合は重合が良好に進行せず重合不良となる、または重合しない場合がある。本発明のレンズを製造する際に用いる硬化触媒としてはアミン類、ホスフィン類、ルイス酸類、ラジカル重合触媒類、カチオン重合触媒類等が通常用いられる。
【0028】
具体的にアミン類としては、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、t−ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、2−アミノエタノール、ジブチルアミン、トリエチルアミン、トリn−ブチルアミン、トリn−ヘキシルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、トリエチレンジアミン、トリフェニルアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジn−ブチルエタノールアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、ジエチルベンジルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン、N−メチルジシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N−イソプロピルモルホリン、ピリジン、N,N−ジメチルアニリン、β−ピコリン、ピペリジン、2,2’−ビピリジル、ジシアンジアミド、ヘキサメチレンテトラミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−7−ウンデセン等が挙げられる。ホスフィン類としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリn−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリn−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリベンジルホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン等が挙げられる。ルイス酸類としては、ジメチル錫ジクロライド、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫ジラウレート、テトラクロロ錫、ジブチル錫オキサイド、塩化亜鉛、アセチルアセトン亜鉛、塩化アルミ、フッ化アルミ、トリフェニルアルミ、テトラクロロチタン、酢酸カルシウム等が挙げられる。ラジカル重合触媒としては、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、n−ブチル−4,4’−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられ、カチオン重合触媒としては、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロ燐酸、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロ砒酸、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモン、トリフェニルスルフォニウムテトラフルオロ硼酸、トリフェニルスルフォニウムヘキサフルオロ燐酸、トリフェニルスルフォニウムヘキサフルオロ砒酸等が挙げられるがこれら例示化合物のみに限定されるものではない。これらは単独でも2種以上を混合して用いても良い。
【0029】
これらの例示化合物のうち、好ましい化合物としては、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルジシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジエチルエタノールアミンであり、これらの3級アミン類は触媒活性の異なるものを2種類以上混合し用いることで良好な結果が得られる。
【0030】
触媒活性の異なる3級アミン類の組み合わせの好ましい例としては、使用するエピスルフィド化合物の種類や樹脂改質剤等の種類によって一概に限定はできないが、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミンとN−メチルジシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミンとN,N−ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジエチルエタノールアミンとN−メチルジシクロヘキシルアミン等の組み合わせが挙げられる。
【0031】
硬化触媒の添加量は、エピスルフィド樹脂から成る組成物の総重量に対して0.001〜10質量%の範囲で用いられ、好ましくは0.01〜5質量%の範囲で使用される。硬化触媒の添加量が0.001質量%未満であると重合不良の原因となる場合がある。一方、10質量%を越えてもできるが、ポットライフが短くなり、透明性、光学物性、又は耐候性が低下するなどの不都合が生じてくる場合がある。
【0032】
本発明におけるレンズ用モノマーには、主に得られるレンズの屈折率等の光学物性の調整や比重等の諸物性の調整、モノマーの粘度、その他の取り扱いを調整するため等、樹脂の改良をする目的で樹脂改質剤を加えることができる。
【0033】
樹脂改質剤としては、本発明に係わる重合性組成物に含まれる以外のエピスルフィド化合物類、エポキシ化合物類、(メタ)アクリレート類を含むオレフィン類、アミン化合物類、チオール化合物類、ポリフェノール類、アミノ酸及びメルカプトアミン類、有機酸類及び無水物、メルカプト有機酸類、が挙げられる。
【0034】
樹脂改質剤としてのエポキシ化合物類の好ましいものの具体例としては、ビスフェノールAグリシジルエーテル等の多価フェノール化合物とエピハロヒドリン化合物との縮合反応により得られるフェノール系エポキシ化合物、水添ビスフェノールAグリシジルエーテル等の多価アルコール化合物とエピハロヒドリン化合物との縮合により得られるアルコール系エポキシ化合物、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートや1,2−ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等の多価有機酸化合物とエピハロヒドリン化合物との縮合により得られるグリシジルエステル系エポキシ化合物、一級及び二級ジアミン化合物とエピハロヒドリン化合物との縮合により得られるアミン系エポキシ化合物等その他、ビニルシクロヘキセンジエポキシド等脂肪族多価エポキシ化合物等を挙げることができるが、これらの例示化合物のみに限定されるものではない。また、これらは単独でも、2種類以上を混合して使用してもかまわない。
【0035】
また、樹脂改質剤としてのオレフィン類の好ましいものの具体例としては、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシメチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシメチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、エチレングリコールビスグリシジルアクリレート、エチレングリコールビスグリシジルメタクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、2,2−ビス(4−アクロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アクロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクロキシジエトキシフェニル)プロパン、ビスフェノールFジアクリレート、ビスフェノールFジメタクリレート、1,1−ビス(4−アクロキシエトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−メタクロキシエトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−アクロキシジエトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−メタクロキシジエトキシフェニル)メタン、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、メチルチオアクリレート、メチルチオメタクリレート、フェニルチオアクリレート、ベンジルチオメタクリレート、キシリレンジチオールジアクリレート、キシリレンジチオールジメタクリレート、メルカプトエチルスルフィドジアクリレート、メルカプトエチルスルフィドジメタクリレート等の(メタ)アクリレート化合物、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート等のアリル化合物、スチレン、クロロスチレン、メチルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ジビニルベンゼン、3,9−ジビニルスピロビ(m−ジオキサン)等のビニル化合物、ジイソプロペニルベンゼン等が挙げられるが、これらの例示化合物のみに限定されるものではない。また、これらは単独でも、2種類以上を混合して使用してもかまわない。
【0036】
以上の樹脂改質剤はいずれも単独種で使用することも、2種類以上を混合して使用することもできる。
【0037】
樹脂改質剤としてのアミン化合物類の好ましいものの具体例としては、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、3−ペンチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、1,2−ジメチルヘキシルアミン、アリルアミン、アミノメチルビシクロヘプタン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、2,3−ジメチルシクロヘキシルアミン、アミノメチルシクロヘキサン、アニリン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、2,3−、あるいは4−メチルベンジルアミン、o−、m−、あるいはp−メチルアニリン、o−、m−、あるいはp−エチルアニリン、アミノモルホリン、ナフチルアミン、フルフリルアミン、α−アミノジフェニルメタン、トルイジン、アミノピリジン、アミノフェノール、アミノエタノール、1−アミノプロパノール、2−アミノプロパノール、アミノブタノール、アミノペンタノール、アミノヘキサノール、メトキシエチルアミン、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、3−エトキシプロピルアミン、3−プロポキシプロピルアミン、3−ブトキシプロピルアミン、3−イソプロポキシプロピルアミン、3−イソブトキシプロピルアミン、2,2−ジエトキシエチルアミン等の単官能1級アミン化合物、エチレンジアミン、1,2−、あるいは1,3−ジアミノプロパン、1,2−、1,3−、あるいは1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,10−ジアミノデカン、1,2−、1,3−、あるいは1,4−ジアミノシクロヘキサン、o−、m−あるいはp−ジアミノベンゼン、3,4−あるいは4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4−あるいは4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−、あるいは4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、2,7−ジアミノフルオレン、1,5−、1,8−、あるいは2,3−ジアミノナフタレン、2,3−、2,6−、あるいは3,4−ジアミノピリジン、2,4−、あるいは2,6−ジアミノトルエン、m−、あるいはp−キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ジアミノメチルビシクロヘプタン、1,3−、あるいは1,4−ジアミノメチルシクロヘキサン、2−、あるいは4−アミノピペリジン、2−、あるいは4−アミノメチルピペリジン、2−、あるいは4−アミノエチルピペリジン、N−アミノエチルモルホリン、N−アミノプロピルモルホリン等の1級ポリアミン化合物、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、ジ−3−ペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、メチルヘキシルアミン、ジアリルアミン、N−メチルアリルアミン、ピペリジン、ピロリジン、ジフェニルアミン、N−メチルアミン、N−エチルアミン、ジベンジルアミン、N−メチルベンジルアミン、N−エチルベンジルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、ジナフチルアミン、1−メチルピペラジン、モルホリン等の単官能2級アミン化合物、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチル−1,2−ジアミノプロパン、N,N’−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N’−ジメチル−1,2−ジアミノブタン、N,N’−ジメチル−1,3−ジアミノブタン、N,N’−ジメチル−1,4−ジアミノブタン、N,N’−ジメチル−1,5−ジアミノペンタン、N,N’−ジメチル−1,6−ジアミノヘキサン、N,N’−ジメチル−1,7−ジアミノヘプタン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチル−1,2−ジアミノプロパン、N,N’−ジエチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N’−ジエチル−1,2−ジアミノブタン、N,N’−ジエチル−1,3−ジアミノブタン、N,N’−ジエチル−1,4−ジアミノブタン、N,N’−ジエチル−1,5−ジアミノペンタン、N,N’−ジエチル−1,6−ジアミノヘキサン、N,N’−ジエチル−1,7−ジアミノヘプタン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、2,6−ジメチルピペラジン、ホモピペラジン、1,1−ジ−(4−ピペリジル)メタン、1,2−ジ−(4−ピペリジル)エタン、1,3−ジ−(4−ピペリジル)プロパン、1,4−ジ−(4−ピペリジル)ブタン、テトラメチルグアニジン等の2級ポリアミン化合物等を挙げることができるが、これらの例示化合物のみに限定されるものではない。また、これらは単独でも、2種類以上を混合して使用してもかまわない。これら例示化合物のなかで、より好ましいものは、ベンジルアミン、ピペラジン類である。
【0038】
また、チオール化合物類の好ましいものの具体例としては、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、1,2−エタンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、2,2−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、1,2,3−トリメルカプトプロパン、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、1,2−ジメルカプトシクロヘキサン、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(2−メルカプトグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトチオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトチオグリコレート)、トリメチロールプロパントリス3−メルカプトプロピオネート)、1,1,1−トリメチルメルカプトエタン、1,1,1−トリメチルメルカプトプロパン、2,5−ジメルカプトメチルチオファン、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、2,5−ビス{(2−メルカプトエチル)チオメチル}−1,4−ジチアン、1,3−シクロヘキサンジチオール、1,4−シクロヘキサンジチオール、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン等の脂肪族チオール、及びベンジルメルカプタン、チオフェノール、1,2−ジメルカプトベンゼン、1,3−ジメルカプトベンゼン、1,4−ジメルカプトベンゼン、1,2−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、2,2’−ジメルカプトビフェニル、4,4’−ジメルカプトビフェニル、ビス(4−メルカプトフェニル)メタン、ビス(4−メルカプトフェニル)スルフィド、ビス(4−メルカプトフェニル)スルフォン、2,2−ビス(4−メルカプトフェニル)プロパン、1,2,3−トリメルカプトベンゼン、1,2,4−トリメルカプトベンゼン、1,2,5−トリメルカプトベンゼン等の芳香族チオールが挙げられるが、これらの例示化合物のみに限定されるものではない。また、これらは単独でも、2種類以上を混合して使用してもかまわない。
【0039】
ポリフェノール類の好ましいものの具体例としては、芳香環にフェノール性のヒドロキシル基を1つ以上有するものであり、モノフェノールとしてはフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、3−メトキシフェノール、4−エトキシフェノール、4−n−プロポキシフェノール、3−ブトキシフェノール、ノニルフェノール、2−n−プロピルフェノール、2,3,4,6−テトラクロロフェノール、2,3,5,6−テトラフルオロフェノール、2,4,6−トリブロモフェノール、2,6−ジクロロ−4−フルオロフェノール、2,6−ジクロロ−4−ニトロフェノール、2,3,4−トリクロロフェノール、4−ブロモ−2−クロロフェノール、2,4−ジブロモフェノール、2−クロロ−4−ニトロフェノール、2,3−ジクロロフェノール、2−フルオロ−4−ニトロフェノール、3,5−キシレノール、2,3−ジフルオロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、2−ブロモフェノール、2−アミノ−4−クロロ−5ニトロフェノール、2−クロロフェノール、4−アミノ−2,6−ジクロロフェノール、2−ニトロフェノール、2−アミノ−4−ニトロフェノール、チモール、カルバクロール、α−ナフトール、2−アミノフェノール等が挙げられ、ポリフェノールとしては、カテコール、3−クロロカテコール、レゾルシン、ハイドロキノン、クロロハイドロキノン、ピロガロール、フルオログルシン等が挙げられるが、これらの例示化合物のみに限定されるものではない。これらのポリフェノール類化合物は単独でも2種類以上を混合して使用しても良い。
【0040】
メルカプト有機酸類の好ましいものの具体例としては、チオグリコール酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオ酢酸、チオ乳酸、チオリンゴ酸、チオサリチル酸等が挙げられるが、これら例示化合物のみに限定されるものではない。また、これらは単独でも、2種類以上を混合して使用してもかまわない。
【0041】
有機酸及びその無水物の好ましいものの具体例としては、チオジグリコール酸、チオジプロピオン酸、ジチオジプロピオン酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルノルボルネン酸無水物、メチルナルボルナン酸無水物、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられるが、これらの例示化合物のみに限定されるものではない。また、これらは単独でも、2種類以上を混合して使用してもかまわない。
【0042】
これら樹脂改質剤の他に、目的に応じ問題のない範囲で、内部離型剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、染料、充填剤等の公知の各種添加剤などを加えてもよい。
【0043】
本発明のレンズは、通常注型重合により得られる。具体的にはエピスルフィド化合物と重合触媒等の添加剤を添加し、この混合液を必要に応じて脱気を行った後、モールド型に注入して加熱重合させる。
【0044】
本発明のレンズ用樹脂は、樹脂中に存在するエピスルフィド基が0.3質量%以下であることが重要であり、樹脂中に存在するエピスルフィド基を0.3質量%以下とするためには、例えば、次のような方策を採り、重合性、重合条件を管理することで達成できる。
【0045】
(a)使用するエピスルフィド化合物の種類、添加剤、樹脂改質剤等の種類によって、硬化触媒の種類及び使用量、重合条件等を最適化する。使用する硬化触媒は活性の異なる2種以上の触媒を組み合わせる場合もあり、重合時において、重合反応が暴走して急激に起きたり、逆に加熱して重合が進まなくなることを避けるように硬化触媒の種類及び使用量を決定する。
【0046】
(b)重合条件として、硬化温度は、30℃〜100℃の範囲で徐々に昇温し、最終的に80℃以上の温度で硬化させ、昇温条件としては短時間での急激な昇温は避け、6時間〜21時間の範囲で昇温する。
【0047】
(c)使用するエピスルフィド化合物中に含まれる重合性に影響を及ぼす不純物や高分子量化物等を低減、除去する。これらの方策で得られた樹脂は、樹脂中に存在するエピスルフィド基が0.3質量%以下となり、良好な結果が得られる。
【0048】
さらに、本発明の硬化樹脂を用いたレンズでは、必要に応じ、反射防止、高硬度付与、耐摩耗性向上、耐薬品性向上、防曇性付与、あるいは、ファッション性付与等の改良を行うため、表面研磨、帯電防止処理、ハードコート処理、無反射コート処理、染色処理等の物理的あるいは化学的処理を施すことができる。又、得られた樹脂成型体については、必要に応じアニールなどの処理を行っても良い。
【0049】
このようにして得られる本発明のエピスルフィド型レンズは無色透明で、光学物性、機械物性に優れ、眼鏡レンズ、カメラレンズ等の光学素子材料として好適である。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。尚、得られた樹脂の残存官能基数および離型性評価、耐熱性は以下の試験法により評価した。
【0051】
・樹脂中のエピスルフィド基量:レンズを厚さ1mm程度に切断し、紙ヤスリにより厚さ0.2mm以下まで表面研磨する。作製した試料を赤外分光光度計を用い、吸光度よりエピスルフィド基を定量し、算出した。
【0052】
・離型性評価方法:重合終了後室温まで冷却し、自然に離型したものについては○、冷水を用いて離型したものについては△で評価した。
【0053】
・耐熱性:TMAペネトレーション法(荷重50g、針先0.5mmφ、昇温速度10℃/分)でTg温度を測定した。
【0054】
実施例1
エピスルフィド系化合物としてビス(2,3−エピチオプロピル)ジスルフィドを100gに、硬化触媒として、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン20mgと、更には樹脂改質剤として4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン10gを混合溶解させた。このモノマー混合物を真空度667Paで0.5時間脱気した後、ガラスモールドとガスケットからなる成型モールドに注入した。このモノマー混合物の入ったモールドを30℃で10時間静置保温した後、30℃から80℃まで徐々に昇温し、21時間で重合を行った。重合終了後、モールドを室温まで徐々に冷却したところ、自然に離型し、レンズが得られた。同時に得られた樹脂について、樹脂中に存在するエピスルフィド基を調べた結果、0.22質量%であり、耐熱性は、78.0℃であった。得られた樹脂の評価を表1に示した。
【0055】
実施例2
エピスルフィド系化合物としてビス(2,3−エピチオプロピル)ジスルフィドを100gに、硬化触媒として、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン20mgと、更には樹脂改質剤として4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン10gを混合溶解させた。このモノマー混合物を真空度667Paで0.5時間脱気した後、ガラスモールドとガスケットからなる成型モールドに注入した。このモノマー混合物の入ったモールドを30℃で10時間静置保温した後、30℃から80℃まで徐々に昇温し、21時間で重合を行った。重合終了後、モールドを室温まで徐々に冷却したところ、自然に離型し、レンズが得られた。同時に得られた樹脂を120℃で3時間の加熱処理を施した。結果、樹脂中に存在するエピスルフィド基が検出限界以下(0.2質量%以下)で、耐熱性の高いレンズが得られた。得られた樹脂の評価を表1に示した。
【0056】
実施例3
樹脂改質剤として4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン10gの代わりにベンジルアミン5gを用いた以外は、すべて実施例1と同じ操作を行った。離型性及び樹脂中に存在するエピスルフィド基量、耐熱性を表1に示した。
【0057】
実施例4
硬化触媒として、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン20mgとN−メチルジシクロヘキシルアミンを100mg用いた以外は、すべて実施例1と同じ操作を行った。離型性及び樹脂中に存在するエピスルフィド基量、耐熱性を表1に示した。
【0058】
比較例1
エピスルフィド系化合物としてビス(2,3−エピチオプロピル)ジスルフィドを100gに、硬化触媒として、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン20mgと、更には樹脂改質剤として4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン10gを混合溶解させた。このモノマー混合物を真空度667Paで0.5時間脱気した後、ガラスモールドとガスケットからなる成型モールドに注入した。このモノマー混合物の入ったモールドを25℃で、48時間で重合を行った。重合終了後、室温まで徐々に冷却したが、自然には離型せず冷水により冷却することで離型した。同時に得られた樹脂について、樹脂中に存在するエピスルフィド基量を調べた結果、4.0質量%であり、耐熱性は、47.0℃であった。得られた樹脂の評価を表1に示した。
【0059】
比較例2
重合条件を30℃で10時間保持した後、30℃〜60℃まで徐々に昇温し、12時間で重合を行った以外はすべて比較例1と同じ操作を行った。重合終了後、室温まで徐々に冷却したが離型しなかった為、冷水を用い離型を行させた。同時に得られた樹脂について、樹脂中に存在するエピスルフィド基量及び耐熱性を調べ、結果を表1に示した。
【0060】
比較例3
重合条件を30℃〜100℃まで徐々に昇温し、5時間で重合を行った以外はすべて比較例1と同じ操作を行った。重合終了後、室温まで徐々に冷却したが離型しなかった為、冷水を用い離型を行させた。同時に得られた樹脂について、樹脂中に存在するエピスルフィド基量及び耐熱性を調べ、結果を表1に示した。
【0061】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子内に下記式(1)
【化1】

(式中、R1は炭素数1〜10の2価の炭化水素基、R2、R3、R4はそれぞれ炭素数1〜10の炭化水素基または水素原子を示す。)で示される構造を1個以上持つエピスルフィド化合物を含有する重合性組成物を、注型重合させて得られるエピスルフィド系レンズ用樹脂において、得られる樹脂中に存在するエピスルフィド基を0.3質量%以下とすることでレンズ用樹脂の離型性を改良する方法。
【請求項2】
1分子内に下記式(1)
【化2】

(式中、R1は炭素数1〜10の2価の炭化水素基、R2、R3、R4はそれぞれ炭素数1〜10の炭化水素基または水素原子を示す。)で示される構造を1個以上持つエピスルフィド化合物を含有する重合性組成物を、注型重合させて得られるエピスルフィド系レンズ用樹脂の製造において、少なくとも下記(a)〜(c)のいずれか一つの条件、または(a)〜(c)の2つ以上の条件を組み合わせた条件で重合することにより、得られる樹脂中に存在するエピスルフィド基を0.3質量%以下とすることでレンズ用樹脂の離型性を改良する方法。
(a)活性の異なる2種以上の硬化触媒を組み合わせて使用する。
(b)硬化は、30〜100℃の範囲で徐々に昇温し、最終的に80℃以上の温度で硬化させ、その際、6〜21時間の範囲で昇温する。
(c)使用するエピスルフィド化合物中に含まれる重合性に影響を及ぼす不純物及び高分子量化物を低減、除去する。
【請求項3】
前記(b)の条件で重合したことを特徴とする請求項2に記載のレンズ用樹脂の離型性を改良する方法。
【請求項4】
重合性組成物として、式(1)で示される構造を1個以上持つエピスルフィド化合物以外にチオール化合物又は単官能1級アミンを含有し、硬化触媒として3級アミンを使用することを特徴とする請求項3記載のレンズ用樹脂の離型性を改良する方法。
【請求項5】
エピスルフィド化合物が下記式(2)で表される請求項1乃至4のいずれか1項に記載のレンズ用樹脂の離型性を改良する方法。
【化3】

(式中、R5〜R10はそれぞれ炭素数1〜10の炭化水素基または水素原子を示す。Yは、置換または未置換の直鎖、分岐または環状の炭素数1〜10の炭化水素基、置換または未置換の1,4−ジチアン基、アリーレン基を表す。mは、0〜2の整数を表し、nは、0〜4の整数を表す。)
【請求項6】
エピスルフィド化合物が下記式(3)で表される請求項5記載のレンズ用樹脂の離型性を改良する方法。
【化4】

(式中、R11〜R16はそれぞれ炭素数1〜10の炭化水素基または水素原子を表す。)
【請求項7】
1分子内に下記式(1)
【化5】

(式中、R1は炭素数1〜10の2価の炭化水素基、R2、R3、R4はそれぞれ炭素数1〜10の炭化水素基または水素原子を示す。)で示される構造を1個以上持つエピスルフィド化合物を含有する重合性組成物を、注型重合させて得られるエピスルフィド系レンズの製造方法において、少なくとも下記(a)〜(c)のいずれか一つの条件、または(a)〜(c)の2つ以上の条件を組み合わせた条件で重合することにより、得られる樹脂中に存在するエピスルフィド基を0.3質量%以下とすることで離型性を改良したレンズの製造方法。
(a)活性の異なる2種以上の硬化触媒を組み合わせて使用する。
(b)硬化は、30〜100℃の範囲で徐々に昇温し、最終的に80℃以上の温度で硬化させ、その際、6〜21時間の範囲で昇温する。
(c)使用するエピスルフィド化合物中に含まれる重合性に影響を及ぼす不純物及び高分子量化物を低減、除去する。
【請求項8】
前記(b)の条件で重合したことを特徴とする請求項7に記載の離型性を改良したレンズの製造方法。
【請求項9】
重合性組成物として、式(1)で示される構造を1個以上持つエピスルフィド化合物以外にチオール化合物又は単官能1級アミンを含有し、硬化触媒として3級アミンを使用することを特徴とする請求項8記載の離型性を改良したレンズの製造方法。
【請求項10】
エピスルフィド化合物が下記式(2)で表される請求項7乃至9のいずれか1項記載の離型性を改良したレンズの製造方法。
【化6】

(式中、R5〜R10はそれぞれ炭素数1〜10の炭化水素基または水素原子を示す。Yは、置換または未置換の直鎖、分岐または環状の炭素数1〜10の炭化水素基、置換または未置換の1,4−ジチアン基、アリーレン基を表す。mは、0〜2の整数を表し、nは、0〜4の整数を表す。)
【請求項11】
エピスルフィド化合物が下記式(3)で表される請求項10記載の離型性を改良したレンズの製造方法。
【化7】

(式中、R11〜R16はそれぞれ炭素数1〜10の炭化水素基または水素原子を表す。)

【公開番号】特開2006−316283(P2006−316283A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−213644(P2006−213644)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【分割の表示】特願2000−10709(P2000−10709)の分割
【原出願日】平成12年1月19日(2000.1.19)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】