レンズ部品および画像表示装置
【課題】複数の視点それぞれに向けて高品質の画像を表示することができ容易に製造することができるレンズ部品を提供することを目的とする。
【解決手段】レンズ部品10は、各々X方向に延在し共通の構成を有しY方向に最小周期PLで並列配置されたK個の単位レンズ11を備える。各単位レンズ11は、Y方向の最小周期PL内において区分される2個の部分レンズ121,122を含む。部分レンズ121,122それぞれは、Z方向に平行であって互いに異なる光軸を有し、互いに接する箇所が凸形状をなし、物体面上の共通点を像面A上の互いに異なる位置に結像する。
【解決手段】レンズ部品10は、各々X方向に延在し共通の構成を有しY方向に最小周期PLで並列配置されたK個の単位レンズ11を備える。各単位レンズ11は、Y方向の最小周期PL内において区分される2個の部分レンズ121,122を含む。部分レンズ121,122それぞれは、Z方向に平行であって互いに異なる光軸を有し、互いに接する箇所が凸形状をなし、物体面上の共通点を像面A上の互いに異なる位置に結像する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の視点それぞれに向けて画像を表示することができる画像表示装置、および、この画像表示装置に含まれるレンズ部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の視点それぞれに向けて画像を表示することができる画像表示装置は、例えばカーナビゲーションシステムにおいて運転席および助手席それぞれに座っている者に対して互いに異なる画像を表示したり、あるいは、同一人物の右目および左目それぞれに対して互いに異なる画像を表示することで立体画像と認識させたりすることができる。
【0003】
このような画像表示装置として、液晶などを用いた表示パネルと、シリンドリカルレンズが並列配置されたレンチキュラレンズと、を備えるものが知られている。表示パネルとして液晶表示パネルが用いられる場合、ブラックマトリックスと呼ばれる遮蔽領域で個々の画素が囲まれている。表示パネルにおいて画素間に遮蔽領域が存在していることにより、画像表示装置が画像を表示する像面上では、遮蔽領域に対応する黒い領域が生じてしまう。
【0004】
この黒い領域が像面上の位置によっては認識されることとなり、画像内で黒い筋となって観察されるので、画質が低下する。そこで、特許文献1に開示された発明は、液晶表示パネルとレンチキュラレンズとの間に異方性散乱シートを設けることで、画素間の遮蔽領域に起因する画質の低下を回避することを図ろうとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−134617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された発明では、画像を形成するのに必要な光をも異方性散乱シートにより散乱させることになるので、これにより画質が低下する。このような画質低下を回避する為に、特殊な形状を有するレンズ部品をレンチキュラレンズに替えて用いることも考えられる。しかし、特殊形状のレンズ部品の製造は必ずしも容易でない。
【0007】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、複数の視点それぞれに向けて高品質の画像を表示することができる画像表示装置、および、この画像表示装置において好適に用いられ容易に製造することができるレンズ部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のレンズ部品は、物体面上の画像を像面上に結像するレンズ部品であって、(1) 各々第1方向に延在し共通の構成を有し、第1方向に垂直な第2方向に最小周期PLで並列配置されたK個の単位レンズを備え、(2) K個の単位レンズそれぞれが、第2方向の最小周期PL内において区分されるM個の部分レンズを含み、(3) 各単位レンズに含まれるM個の部分レンズそれぞれが、第1方向および第2方向の双方に垂直な第3方向に平行であって互いに異なる光軸を有し、互いに接する箇所が凸形状をなし、物体面上の共通点を像面上の互いに異なる位置に結像することを特徴とする。ただし、K,Mは2以上の整数である。
【0009】
本発明のレンズ部品は、各単位レンズに含まれるM個の部分レンズそれぞれが、互いに等しい焦点距離を有するのが好適である。また、各単位レンズに含まれるM個の部分レンズそれぞれが、第1方向および第2方向の双方に平行な面における断面形状が円弧であるのが好適である。
【0010】
本発明の画像表示装置は、(1) 互いに垂直な第1方向および第2方向の双方に平行な面上に複数の単位画素組が2次元配列され、複数の単位画素組それぞれが第2方向に沿って配列されたN個の部分画素を含む表示パネルと、(2) 表示パネルを物体面として該物体面上の画像を像面上に結像し、第2方向について単位画素組に対応して単位レンズが設けられている上記の本発明のレンズ部品と、を備えることを特徴とする。ただし、Nは2以上の整数である。
【0011】
本発明の画像表示装置は、表示パネルの複数の単位画素組それぞれにおいて第2方向に沿ってN個の部分画素の相互の間に遮蔽領域が存在し、遮蔽領域の第2方向での幅が、レンズ部品の各単位レンズに含まれるM個の部分レンズそれぞれの光軸の第2方向での間隔と比べて等しいか又は小さいのが好適である。
【0012】
本発明の画像表示装置は、M値が2であり、レンズ部品のK個の単位レンズのうち第2方向について中央付近にある何れかの単位レンズに含まれる2個の部分レンズそれぞれの光軸の第2方向での中間位置と、表示パネルの複数の単位画素組のうち第2方向について中央付近にある何れかの単位画素組の中央位置とが、互いに等しいのが好適である。また、本発明の画像表示装置は、レンズ部品および表示パネルそれぞれが、両者を組み立てる際の位置合わせの為のマークを有するのが好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の視点それぞれに向けて画像を表示することができ、その画像の画質の劣化を抑制することができ、また、容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1比較例の画像表示装置1による画像表示の原理を模式的に示す図である。
【図2】第1比較例の画像表示装置1による画像表示における表示パネル20の画素と像面A上の像との関係を説明する図である。
【図3】第1比較例の画像表示装置1による画像表示における表示パネル20の画素と像面A上の像との関係を説明する図である。
【図4】参考形態の画像表示装置のレンズ部品10を説明する図である。
【図5】第1比較例における表示パネル10に対しレンズが−Y方向にシフトしたときの部分画素22Rからの光線の軌跡を示す図である。
【図6】第1比較例における表示パネル10に対しレンズが−Y方向にシフトしたときの像面A上の光強度分布を示す図である。
【図7】第1比較例における表示パネル10に対しレンズが+Y方向にシフトしたときの部分画素22Rからの光線の軌跡を示す図である。
【図8】第1比較例における表示パネル10に対しレンズが+Y方向にシフトしたときの像面A上の光強度分布を示す図である。
【図9】参考形態における部分画素22Rからの光線の軌跡を示す図である。
【図10】参考形態における像面A上の光強度分布を示す図である。
【図11】第1比較例の計算条件を示す図である。
【図12】第1比較例の計算結果を示す図である。
【図13】第1参考例の計算条件を示す図である。
【図14】第1参考例の計算結果を示す図である。
【図15】第2参考例の計算条件を示す図である。
【図16】第2参考例の計算結果を示す図である。
【図17】第3参考例の計算条件を示す図である。
【図18】第3参考例の計算結果を示す図である。
【図19】第2比較例の画像表示装置2による画像表示の原理を模式的に示す図である。
【図20】第2比較例の計算条件を示す図である。
【図21】第2比較例の計算結果を示す図である。
【図22】第4参考例の計算条件を示す図である。
【図23】第4参考例の計算結果を示す図である。
【図24】非球面レンズの断面形状を示す図である。
【図25】非球面レンズの最適化条件を示す図である。
【図26】第5参考例の計算条件を示す図である。
【図27】第5参考例の計算結果を示す図である。
【図28】本実施形態のレンズ部品10の断面図である。
【図29】本実施形態のレンズ部品10による結像を説明する図である。
【図30】本実施形態のレンズ部品10の形状を説明する断面図である。
【図31】第3比較例の計算条件を示す図である。
【図32】第3比較例の計算結果を示す図である。
【図33】第1実施例の計算条件を示す図である。
【図34】第1実施例の計算結果を示す図である。
【図35】第2参考例の計算結果を示す図である。
【図36】金型の作製方法を模式的に説明する図である。
【図37】金型の作製の際に用いるバイトの形状を説明する図である。
【図38】本実施形態の画像表示装置の中央での単位レンズと単位画素組との位置関係を示す図である。
【図39】レンズ部品10および表示パネル20の組み立て時の位置合わせの為のマークを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一または同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。初めに比較例および参考形態の画像表示装置について説明した後に、実施形態の画像表示装置について説明する。参考形態は、本発明の実施形態の構成の前提となるべき事項を説明するためのものである。また、説明の便宜のために図面においてXYZ直交座標系を示している。
【0016】
図1は、第1比較例の画像表示装置1による画像表示の原理を模式的に示す図である。画像表示装置1は、レンズ部品10および表示パネル20を備え、表示パネル20を物体面として該物体面上の画像をレンズ部品10により像面A上に結像する。
【0017】
レンズ部品10は、各々X方向に延在し共通の構成を有するシリンドリカルレンズ111〜11Kが単位レンズとして一定周期でY方向に並列配置されたレンチキュラレンズである。Kは2以上の整数である。シリンドリカルレンズ111〜11Kそれぞれの光軸はZ方向に平行である。レンズ部品10は概略的には平板形状のものであって、表示パネル20に対向する面が平面であり、像面Aに対向する面が凸面となっている。同図ではレンズ部品10の凸面の形状が示されている。
【0018】
表示パネル20は、XY平面上に複数の単位画素組21が2次元配列されたものである。各単位画素組21は、Y方向に沿って配列された2個の部分画素22L,22Rを含む。左目用部分画素22Lと右目用部分画素22RとはY方向に交互に配置されている。また、ブラックマトリックスと呼ばれる遮蔽領域23が左目用部分画素22Lと右目用部分画素22Rとの間に存在する。
【0019】
単位画素組21kがシリンドリカルレンズ11kに対応しているとすると、単位画素組21kの左目用部分画素22Lから発した光がシリンドリカルレンズ11kを経ることにより像面A上に左目用像ILが形成され、単位画素組21kの右目用部分画素22Rから発した光がシリンドリカルレンズ11kを経ることにより像面A上に右目用像IRが形成される。そして、像面A上の左目用像ILの形成範囲にある左目ELの網膜には左目用画像が結像され、像面A上の右目用像IRの形成範囲にある右目ERの網膜には右目用画像が結像される。したがって、各単位画素組21の左目用部分画素22Lおよび右目用部分画素22Rそれぞれに適切な画像データが与えられることにより、左目ELおよび右目ERにより立体画像が視認される。
【0020】
しかし、像面A上には、左目用像ILと右目用像IRとの間に、遮蔽領域23に対応する黒い領域IBが生じてしまう。この黒い領域IBが像面A上の位置によっては認識されることとなり、立体画像内で黒い筋となって観察されるので、画質が低下する。
【0021】
図2および図3それぞれは、第1比較例の画像表示装置1による画像表示における表示パネル20の画素と像面A上の像との関係を説明する図である。単位画素組21kに含まれる部分画素22L,22RそれぞれのY方向幅をWPとする。単位画素組21kに含まれる部分画素22Lと部分画素22Rとの間の遮蔽領域23のY方向幅をWBとする。単位画素組21kのY方向幅をP(=2(WP+WB))とする。レンズ部品10の出射側主平面と像面Aとの間の距離をL1とする。レンズ部品10の入射側主平面と表示パネル20との間の距離をL2とする。
【0022】
部分画素22L,22RのY方向幅を底辺とし距離L2を高さとする三角形と、像面Aにおける像IL,IRのY方向幅を底辺とし距離L1を高さとする三角形とは、相似関係にある。なお、厳密には、レンズ部品10と表示パネル20との間には他の部材(ガラス、偏光板、接着剤など)が存在する場合がある。レンズ厚が位置によらず一様にレンズ先端までの厚さと仮定した近軸計算では、距離L2は各層の厚さを各層の屈折率で割ったものの和となる。L1,L2は、各部材の厚さ及び屈折率や設定した像面の位置(観察位置)に基づいて光線行列を解くことにより求められる。
【0023】
図2(a)では、単位画素組21kのY方向中心、および、単位画素組21kに対応するシリンドリカルレンズ11kのY方向中心は、何れもY=0に位置している。このとき、同図(b)に示されるように、像面A上において、左目用部分画素22Lに対応する左目用像ILは下記(1)式で表されるY方向範囲に形成され、右目用部分画素22Rに対応する右目用像IRは下記(2)式で表されるY方向範囲に形成される。また、遮蔽領域23に対応する黒い領域IBは下記(3)式で表されるY方向範囲に形成される。なお、αは、レンズ倍率であり、α=L1/L2なる式で表される。
【0024】
【数1】
【0025】
【数2】
【0026】
【数3】
【0027】
図3(a)では、単位画素組21kのY方向中心はY=0に位置しているのに対して、単位画素組21kに対応するシリンドリカルレンズ11kのY方向中心はY=−tに位置している。このとき、同図(b)に示されるように、像面A上において、左目用部分画素22Lに対応する左目用像ILは下記(4)式で表されるY方向範囲に形成され、右目用部分画素22Rに対応する右目用像IRは下記(5)式で表されるY方向範囲に形成される。また、遮蔽領域23に対応する黒い領域IBは下記(6)式で表されるY方向範囲に形成される。
【0028】
【数4】
【0029】
【数5】
【0030】
【数6】
【0031】
すなわち、図2の場合と比較して図3の場合には、単位画素組21kに対してシリンドリカルレンズ11kがY方向に−tだけ移動していることにより、像面A上において左目用像IL,右目用像IRおよび黒い領域IBは何れもY方向に−t(1+L1/L2) だけシフトすることになる。すなわち、像面A上において図2では光強度0であった部分にも図3では光が到達する。
【0032】
図4は、参考形態の画像表示装置のレンズ部品10を説明する図である。同図でもレンズ部品の凸面の形状が示されている。同図(a),(b)は、各々X方向に延在し共通の構成を有する複数のシリンドリカルレンズが一定周期PLでY方向に並列配置されたレンチキュラレンズを示す。このレンチキュラレンズは、第1比較例の画像表示装置1に含まれるものと同様のものである。同図(a)のレンチキュラレンズに対して同図(b)のレンチキュラレンズはY方向にtだけシフトしている。
【0033】
同図(c)に示される本参考形態のレンズ部品10は、各々X方向に延在し共通の構成を有しY方向に最小周期PLで並列配置されたK個の単位レンズ11を備える。各単位レンズ11は、Y方向の最小周期PL内において区分される2個の部分レンズ121,122を含む。最小周期PL内の0〜PL'の範囲にある部分レンズ121は同図(a)中の実線部分に相当する。最小周期PL内のPL'〜PLの範囲にある部分レンズ122は同図(b)中の実線部分に相当する。
【0034】
すなわち、各単位レンズ11に含まれる2個の部分レンズ121,122それぞれは、Z方向に平行であって互いに異なる光軸(Y方向にtだけ互いに離れている光軸)を有し、物体面上の共通点を像面A上の互いに異なる位置(Y方向に−t(1+L1/L2) だけ互いにシフトした位置)に結像することができる。これにより、遮蔽領域23に対応する黒い領域IB(観察の際に黒い筋となって見える領域)を狭くすることができ、或いは、黒い領域IBを無くすことができる。
【0035】
図2(b)および図3(b)それぞれに示された光強度分布から、下記(7)式で表される条件が成り立つとき、像面A上において光が到達しない領域IBが存在する。下記(8)式で表される条件が成り立つとき、像面A上において左目用像ILと右目用像IRとが互いに一部重なってクロストークが生じる。したがって、下記(9)式で表される条件が成り立つのが最適である。なお、(7)式〜(9)式それぞれにおいて、左辺は図2での黒い領域IBの左側境界位置を表し、右辺は図3での黒い領域IBの右側境界位置を表す。
【0036】
【数7】
【0037】
【数8】
【0038】
【数9】
【0039】
上記(9)式から下記(10)式が得られる。通常、距離L2は数百μm〜数mmであるのに対し、距離L1は数百mmと十分大きい。したがって、(10)式は下記(11)式で近似され得る。
【0040】
【数10】
【0041】
【数11】
【0042】
なお、レンズ部品10の各単位レンズ11に含まれる部分レンズ121,122それぞれは、YZ断面において、球面レンズ形状を有していてもよいし、非球面レンズ形状を有していてもよい。部分レンズ121,122それぞれのレンズ形状は、光線行列を解くことにより得られる。しかし、部分レンズ121,122それぞれのレンズ形状が光線行列の解から数%程度異なっていても、充分に視点分離が可能であるので実用上の問題はない。ただし、像面A上におけるY方向の画質の一様性の観点から、各単位レンズ11に含まれる部分レンズ121,122それぞれは互いに等しい焦点距離を有するのが好ましい。
【0043】
次に、図5〜図10を用いて第1比較例および本参考形態それぞれの画像表示装置の動作を説明する。図5は、第1比較例における表示パネル10に対しレンズが−Y方向にシフトしたときの部分画素22Rからの光線の軌跡を示す図であり、図6は、第1比較例における表示パネル10に対しレンズが−Y方向にシフトしたときの像面A上の光強度分布を示す図である。図7は、第1比較例における表示パネル10に対しレンズが+Y方向にシフトしたときの部分画素22Rからの光線の軌跡を示す図であり、図8は、第1比較例における表示パネル10に対しレンズが+Y方向にシフトしたときの像面A上の光強度分布を示す図である。また、図9は、本参考形態における部分画素22Rからの光線の軌跡を示す図であり、図10は、本参考形態における像面A上の光強度分布を示す図である。
【0044】
第1比較例において、図5および図6に示されるように、表示パネル10に対しレンズが−Y方向にシフトしたとき(図4(a)の場合)、像面A上の右目用像IR1および左目用像IL1も−Y方向にシフトする。一方、図7および図8に示されるように、表示パネル10に対しレンズが+Y方向にシフトしたとき(図4(b)の場合)、像面A上の右目用像IR2および左目用像IL2も+Y方向にシフトする。
【0045】
これに対して、本参考形態においては、図9および図10に示されるように、単位レンズ11のうちの部分レンズ121を経て像面Aに形成される右目用像IR1および左目用像IL1と、単位レンズ11のうちの部分レンズ122を経て像面Aに形成される右目用像IR2および左目用像IL2とは、像面A上において互いに異なる領域に形成される(図10(a))。したがって、本参考形態では、像面A上において、右目用像IR1と右目用像IR2とが重なった右目用像IRが形成され、また、左目用像IL1と左目用像IL2とが重なった左目用像ILが形成される(図10(b))。
【0046】
次に、第1比較例,第1参考例,第2参考例および第3参考例それぞれにおける像面A上での光強度分布の計算例を説明する。第1参考例,第2参考例および第3参考例は、上記の本参考形態の具体的な例である。以下の計算例では、レンズは球面レンズであるとした。
【0047】
図11は、第1比較例の計算条件を示す図である。図12は、第1比較例の計算結果を示す図である。第1比較例では、図11に示されるように、単位画素組のY方向幅Pを0.2mmとし、単位画素組に含まれる各部分画素それぞれのY方向幅WPを0.08mmとし、単位画素組に含まれる各部分画素の間の遮蔽領域のY方向幅WBを0.02mmとした。
【0048】
レンズの出射側主平面と像面との間の距離L1を350mmとし、レンズの入射側主平面と表示パネルとの間の距離L2を0.52mmとした。なお、レンズの厚さを0.3mmとし、レンズの屈折率を1.6とし、レンズと表示パネルとの間に厚さ0.5mmで屈折率1.5のガラスがあるものとして、距離L2を0.52mm(=0.3/1.6+0.5/1.5)とした。また、実際にはレンズと表示パネルとの間に偏光板や接着剤が存在する場合があるが、これらを無視した。
【0049】
これらのパラメータの値を用いて光線行列を解くことにより、レンズの曲率半径は0.31mmと計算された。表示パネルのY方向幅を32.2mmとして、表示パネルが161個の単位画素組を備えるものとした。
【0050】
図11中において、Y=80P=16mmに位置する最外単位画素組は、中央(Y=0)に位置する単位画素組から数えて80番目の単位画素組である。像面A上において各単位画素組から到達した像を視認範囲で概ね重ねるために、Y=80Pに位置する80番目の単位画素組の中心位置の像が、Y=80PLに位置する80番目のレンズを通って、像面A上のY=0の位置に来るようにした。前述と同様の三角形の相似関係から、単位レンズのY方向幅PLは0.1997mmと計算された。
【0051】
第1比較例において、表示パネルの161個の単位画素組に含まれる部分画素22L,22Rの全てを光らせたときの像面A上での光強度分布は、図12に示されるようになる。像面A上において、右目用像IRと左目用像ILとの間に、光が到達しない領域IBが存在している。
【0052】
図13は、第1参考例の計算条件を示す図である。図14は、第1参考例の計算結果を示す図である。第1参考例では、図13に示されるように、単位レンズ形状以外のパラメータについての計算条件は上記の第1比較例の計算条件と同じである。この第1参考例では、単位レンズは、第1比較例のレンズを−Y方向(左方向)にt/2だけシフトしたレンズの一部に相当する部分レンズ121と、第1比較例のレンズを+Y方向(右方向)にt/2だけシフトしたレンズの一部に相当する部分レンズ122とを含む。t/2=WB/2=0.01mmである。
【0053】
部分レンズ121,122それぞれの光軸は、Z方向に平行であって、互いに距離tだけ離れている。レンズ部品の中央に位置する単位レンズに含まれる部分レンズ121,122それぞれの光軸のY方向中心位置は、表示パネルの中央に位置する単位画素組のY方向中心位置と一致している。各単位レンズのY方向幅PL(0.1997mm)において、−Y方向側の0.05mm幅の領域に部分レンズ121が存在し、+Y方向側の0.1497mm幅の領域に部分レンズ122が存在する。
【0054】
第1参考例において、表示パネルの161個の単位画素組に含まれる部分画素22L,22Rの全てを光らせたときの像面A上での光強度分布は、図14に示されるようになる。像面A上において、右目用像IRと左目用像ILとの間に、光が到達しない領域IBがなくなっており、画像を観察したときの黒い筋がなくなる。なお、図14では、光強度が位置によって階段状に変化していて光強度が低い領域があるが、光強度0で黒となって観察される領域より、人間の眼には遥かに認識されにくい。
【0055】
図15は、第2参考例の計算条件を示す図である。図16は、第2参考例の計算結果を示す図である。第2参考例では、図15に示されるように、単位レンズ形状以外のパラメータについての計算条件は上記の第1比較例の計算条件と同じである。前の第1参考例では部分レンズ121,122のY方向幅比が略1:3であったのに対して、この第2参考例では部分レンズ121,122のY方向幅比を1:1とした。
【0056】
第2参考例において、表示パネルの161個の単位画素組に含まれる部分画素22L,22Rの全てを光らせたときの像面A上での光強度分布は、図16に示されるようになる。像面A上において、右目用像IRと左目用像ILとの間に、光が到達しない領域IBがなくなっており、画像を観察したときの黒い筋がなくなる。また、第2参考例では、像面A上の光強度分布はY=0の位置を中心として対称となるので、より自然な画像が得られる。また、第2参考例のレンズ部品は、第1参考例と異なり不連続部分がなくなるので、製造がより容易になる。
【0057】
図17は、第3参考例の計算条件を示す図である。図18は、第3参考例の計算結果を示す図である。第3参考例では、図17に示されるように、第1比較例,第1参考例および第2参考例と同様に、単位画素組のY方向幅Pを0.2mmとし、レンズの出射側主平面と像面との間の距離L1を350mmとし、レンズの入射側主平面と表示パネルとの間の距離L2を0.52mmとし、単位レンズのY方向幅PLを0.1997mmとした。
【0058】
第3参考例では、単位画素組に含まれる各部分画素それぞれのY方向幅WPを0.05mmとし、単位画素組に含まれる各部分画素の間の遮蔽領域のY方向幅WBを0.05mmとして、両者を等しくした。また、部分レンズ121,122のY方向幅比を1:1とした。
【0059】
第1比較例において、単位画素組に含まれる各部分画素それぞれのY方向幅WPと各部分画素の間の遮蔽領域のY方向幅WBとを互いに等しくすると、像面Aにおいて、右目用像IR、左目用像ILおよび黒い領域IBそれぞれのY方向幅も互いに等しくなる。これに対して、第3参考例では、表示パネルの161個の単位画素組に含まれる部分画素22L,22Rの全てを光らせたときの像面A上での光強度分布は、図18に示されるように、部分レンズ121,122により±t/2だけシフトされた右目用像IRおよび左目用像ILの重ね合わせとなるので、略均一の強度分布となる。
【0060】
したがって、第3参考例では、第2参考例の効果に加えて、強度分布が一様でありより自然な画像が得られるという効果が得られる。また、さらに、像面Aでの実質的な視認範囲(すなわち、光強度分布が略一様である範囲)は、第1参考例および第2参考例では、右目用像IRに対してはY=−55mm〜−13mmであって、左目用像ILに対してはY=+13mm〜+55mmであったのに対し、第3参考例では、右目用像IRに対してはY=−65mm〜0であって、左目用像ILに対してはY=0〜+65mmであり、それぞれ視認範囲を広くとることができる。
【0061】
なお、図18(a)において、右目用像IRおよび左目用像ILそれぞれの中央付近に、局所的に強度の大きい部分が見られる。これは、+Y方向にシフトした部分レンズによる像と、−Y方向にシフトした部分レンズによる像との切替部分で、レンズの球面収差により若干光強度分布が裾を引いて僅かなオーバーラップ(図18(b)中の点線で囲った部分)が生じたことに因る。しかしながら、人間の眼には、このような局所的な強度の変化は認識されにくい。この僅かなオーバーラップは、画素の幅やレンズのシフト量に若干の修正を加えることなどにより改善が可能である。
【0062】
これまで説明してきた比較例および参考形態では視点数が2であったが、一般に視点数が2以上であってもよい。視点数がNである場合、表示パネルの各単位画素組はY方向に配列されたN個の部分画素を含む。すなわち、N枚の絵を画素毎に分割し、表示パネル上ではY方向に、1番目の絵を構成する部分画素、2番目の絵を構成する部分画素、・・・、N番目の絵を構成する部分画素の順に配置したものを単位画素組として、レンズによって各視点の像を振り分ける。
【0063】
次に、視点数が3である場合について説明する。図19は、第2比較例の画像表示装置2による画像表示の原理を模式的に示す図である。画像表示装置2は、レンズ部品10および表示パネル20を備え、表示パネル20を物体面として該物体面上の画像をレンズ部品10により像面A上に結像する。レンズ部品10は、図1に示されたものと同様である。
【0064】
表示パネル20は、XY平面上に複数の単位画素組21が2次元配列されたものである。視点数が3である場合、各単位画素組21は、Y方向に沿って配列された3個の第1部分画素221,第2部分画素222および第3部分画素223を含む。部分画素221,222,223はY方向に順に配置されている。また、ブラックマトリックスと呼ばれる遮蔽領域23が、部分画素221と部分画素222との間に存在し、部分画素222と部分画素223との間に存在する。
【0065】
単位画素組21kがシリンドリカルレンズ11kに対応しているとすると、単位画素組21kの第1部分画素221から発した光がシリンドリカルレンズ11kを経ることにより像面A上に第1の像I1が形成され、単位画素組21kの第2部分画素222から発した光がシリンドリカルレンズ11kを経ることにより像面A上に第2の像I2が形成され、また、単位画素組21kの第3部分画素223から発した光がシリンドリカルレンズ11kを経ることにより像面A上に第3の像I3が形成される。そして、像面A上の第1および第2の像の形成範囲にある左目・右目により立体画像が視認され、像面A上の第2および第3の像の形成範囲にある左目・右目により他の立体画像が視認される。
【0066】
しかし、この場合にも、像面A上には、第1の像I1と第2の像I2との間、および、第2の像I2と第3の像I3との間に、遮蔽領域23に対応する黒い領域IBが生じてしまう。この黒い領域IBが像面A上の位置によっては認識されることとなり、立体画像内で黒い筋となって観察されるので、画質が低下する。
【0067】
このような3視点の場合にも、既に説明した2視点の場合と同様に、図4(c)に示されるようなレンズ部品を用いることにより、遮蔽領域23に対応する黒い領域IB(観察の際に黒い筋となって見える領域)を狭くすることができ、或いは、黒い領域IBを無くすことができる。
【0068】
次に、3視点の場合の第2比較例および第4参考例それぞれにおける像面A上での光強度分布の計算例を説明する。第4参考例は、上記の3視点の場合の参考形態の具体的な例である。以下の計算例では、レンズは球面レンズであるとした。
【0069】
図20は、第2比較例の計算条件を示す図である。図21は、第2比較例の計算結果を示す図である。第2比較例では、図20に示されるように、単位画素組のY方向幅Pを0.21mmとし、単位画素組に含まれる各部分画素それぞれのY方向幅WPを0.056mmとし、単位画素組に含まれる各部分画素の間の遮蔽領域のY方向幅WBを0.014mmとした。
【0070】
レンズの出射側主平面と像面との間の距離L1を350mmとし、レンズの入射側主平面と表示パネルとの間の距離L2を0.39mmとした。なお、レンズの厚さを0.2mmとし、レンズの屈折率を1.6とし、レンズと表示パネルとの間に厚さ0.4mmで屈折率1.5のガラスがあるものとして、距離L2を0.39mm(=0.2/1.6+0.4/1.5)とした。また、実際にはレンズと表示パネルとの間に偏光板や接着剤が存在する場合があるが、これらを無視した。
【0071】
これらのパラメータの値を用いて光線行列を解くことにより、レンズの曲率半径は0.235mmと計算された。表示パネルのY方向幅を33.81mmとして、表示パネルが161個の単位画素組を備えるものとした。
【0072】
図20中において、Y=80P=16.8mmに位置する最外単位画素組は、中央(Y=0)に位置する単位画素組から数えて80番目の単位画素組である。像面A上において各単位画素組から到達した像を視認範囲で概ね重ねるために、Y=80Pに位置する80番目の単位画素組の中心位置の像が、Y=80PLに位置する80番目のレンズを通って、像面A上のY=0の位置に来るようにした。前述と同様の三角形の相似関係から、単位レンズのY方向幅PLは0.2098mmと計算された。
【0073】
第2比較例において、表示パネルの161個の単位画素組に含まれる3個の部分画素221〜223の全てを光らせたときの像面A上での光強度分布は、図21に示されるようになる。像面A上において、像I1〜像I3の間に、光が到達しない領域IBが存在している。
【0074】
図22は、第4参考例の計算条件を示す図である。図23は、第4参考例の計算結果を示す図である。第4参考例では、図22に示されるように、単位レンズ形状以外のパラメータについての計算条件は上記の第2比較例の計算条件と同じである。第4参考例では、単位レンズは、第2比較例のレンズを−Y方向(左方向)にt/2だけシフトしたレンズの一部に相当する部分レンズ121と、第2比較例のレンズを+Y方向(右方向)にt/2だけシフトしたレンズの一部に相当する部分レンズ122とを含む。t/2=WB/2=0.007mmである。
【0075】
部分レンズ121,122それぞれの光軸は、Z方向に平行であって、互いに距離tだけ離れている。レンズ部品の中央に位置する単位レンズに含まれる部分レンズ121,122それぞれの光軸のY方向中心位置は、表示パネルの中央に位置する単位画素組のY方向中心位置と一致している。部分レンズ121,122のY方向幅比を1:1とした。
【0076】
第4参考例において、表示パネルの161個の単位画素組に含まれる部分画素221〜223の全てを光らせたときの像面A上での光強度分布は、図23に示されるようになる。像面A上において、像I1〜像I3の間に、光が到達しない領域IBがなくなっており、画像を観察したときの黒い筋がなくなる。また、光強度が位置によって階段状に変化していて光強度が低い領域があるが、光強度0で黒となって観察される領域より、人間の眼には遥かに認識されにくい。
【0077】
これまで説明してきた比較例および参考形態では、単位レンズに含まれる各部分レンズが球面レンズ形状であったが、非球面レンズ形状であってもよい。単位レンズに含まれる各部分レンズを非球面レンズ形状とすることで、画素上1点から出た光を像面上なるべく径の小さい1点に結像させることができる。本参考形態では、レンズがX方向に延在しているので、像面A上なるべく細い線に結像させることができる。
【0078】
次に、単位レンズに含まれる各部分レンズが非球面レンズ形状である場合について説明する。図24は、非球面レンズの断面形状を示す図である。光軸をZ軸に一致させ、光軸からの距離をrとし、r=0のときのレンズ高さとの差をΔzとすると、非球面レンズの凸面の形状は下記(12)式で表される。cは曲率であり、kはコーニック係数であり、c2mは非球面係数である。
【0079】
【数12】
【0080】
これらc,k,c2mのレンズパラメータは、市販されているレンズ設計ソフトを用いて最適化し決定することができる。最適化の際の条件として、中央単位画素組から最外単位画素組までの数をNとし、物体高(レンズ中心から最も遠い発光点のY方向距離)を例えばN(P−PL)+P/2 とし、レンズ倍率をL1/L2とすればよい。
【0081】
本参考形態における単位レンズに含まれる各部分レンズは、球面レンズ形状の場合と同様に、非球面レンズ形状の場合にも、遮蔽領域23のY方向幅tだけ互いにシフトしたレンズの一部同士を組み合わせることにより、像面A上において光を到達しない部分をなくすことができ、画像の質を高めつつ、画面上に現れる黒い筋を無くすことができる。
【0082】
非球面レンズのパラメータは以下のようにして計算される。図25に示されるように、屈折率1.5で厚さ0.5mmの平行平板ガラスに、屈折率1.6で厚さ0.3mmの片面平面で片面非球面凸形状のレンズが、平面側で密着したレンズ系において、レンズと密着しているガラスの面に対向する面を光源面とする。物体高0、0.124mm(=80*(0.2−0.1997)+0.2/2)に対し、レンズ部品10の出射側主平面と像面Aとの間の距離L1を350mmとし、レンズ部品10の入射側主平面と表示パネル20との間の距離L2を0.52mmとする。この条件の下で最適化することにより、c=3.1[mm-1]、k=−0.76、c4=3.9、c6=−145.5 が得られた。なお、c2およびc2m(m≧4)を0とした。
【0083】
次に、単位レンズに含まれる各部分レンズが非球面レンズである場合の第5参考例における像面A上での光強度分布の計算例を説明する。
【0084】
図26は、第5参考例の計算条件を示す図である。図27は、第5参考例の計算結果を示す図である。第5参考例では、図26に示されるように、単位レンズ形状以外のパラメータについての計算条件は上記の第2参考例の計算条件と同じである。この第5参考例では、単位レンズに含まれる各部分レンズを上記のような非球面レンズ形状とした。
【0085】
第5参考例において、表示パネルの161個の単位画素組に含まれる部分画素22L,22Rの全てを光らせたときの像面A上での光強度分布は、図27に示されるようになる。像面A上において、右目用像IRと左目用像ILとの間に、光が到達しない領域IBがなくなっており、画像を観察したときの黒い筋がなくなる。また、第5参考例では、像面A上の光強度分布はY=0の位置を中心として対称となるので、より自然な画像が得られる。また、第5参考例のレンズ部品は、不連続部分がなくなるので、製造がより容易になる。
【0086】
次に、参考形態のレンズ部品と対比しつつ、本実施形態のレンズ部品について説明する。これまで説明してきた参考形態のレンズ部品は、比較例のものと比べて、画像の画質の劣化を抑制することができる点で優れているが、製造の容易性の点では難がある。すなわち、参考形態のレンズ部品は、XZ断面において各単位レンズ11に含まれる部分レンズ121と部分レンズ122との間に窪みを有していることから、製造の際に用いられる金型の加工が容易ではない。以下に説明する本実施形態のレンズ部品は、参考形態のレンズ部品と同程度の画質劣化抑制の作用効果を奏することに加えて、容易に製造することができるものである。
【0087】
図28は、本実施形態のレンズ部品10の断面図である。図29は、本実施形態のレンズ部品10による結像を説明する図である。本実施形態のレンズ部品10は、各々X方向に延在し共通の構成を有しY方向に最小周期PLで並列配置されたK個の単位レンズ11を備える。各単位レンズ11は、Y方向の最小周期PL内において区分される2個の部分レンズ121,122を含む。各単位レンズ11に含まれる部分レンズ121,122それぞれは、Z方向に平行であって互いに異なる光軸Ax1,Ax2を有し、表示パネル20を物体面として該物体面上の共通点を像面A上の互いに異なる位置に結像する。部分レンズ121,122それぞれによる結像の位置の間の距離は、レンズ倍率αと光軸Ax1,Ax2間の距離とに依存する。部分レンズ121,122それぞれの焦点距離は互いに等しい。
【0088】
本実施形態では、各単位レンズ11に含まれる部分レンズ121,122が互いに接する箇所は凸形状をなしている。特に図28に示される構成では、YZ平面上における部分レンズ121のレンズ形状の接線のY方向に対する傾きの符号が一定(常に正)であり、YZ平面上における部分レンズ122のレンズ形状の接線のY方向に対する傾きの符号が一定(常に負)である。なお、図29は、物体面上の共通点から出た光線のうち部分レンズ121,122を通過する光線のみの光路を模式的に描いたものである。
【0089】
各単位レンズ11に含まれる部分レンズ121,122それぞれは、図30に示されるように、同じ形状の円筒レンズの一部である形状で構成することができる。同図で示した断面図では、円C1と円C2とは互いに等しい同じ曲率半径を持ち、円C1の中心O1が光軸Ax1上に存在し、円C2の中心O2が光軸Ax2上に存在する。部分レンズ121,122は各円弧からなる円筒形状の一部である。
【0090】
前述した参考形態の構成では、部分レンズ121,122のうち左側(y座標値が小さい側)に位置する部分レンズ121の光軸は、他方の部分レンズ122の光軸より左側にある。これに対して、本実施形態の構成では、部分レンズ121,122のうち左側(y座標値が小さい側)に位置する部分レンズ121の光軸は、他方の部分レンズ122の光軸より右側にあり、部分レンズ121と部分レンズ122との間に窪みが存在しない。
【0091】
次に、図31〜図35を用いて第3比較例および第1実施例それぞれにおける像面A上での光強度分布の計算例を説明する。第1実施例は、上記の本実施形態の具体的な例である。以下の計算例では、レンズは球面レンズであるとした。
【0092】
図31は、第3比較例の計算条件を示す図である。図32は、第3比較例の計算結果を示す図である。第3比較例では、図31に示されるように、単位画素組のY方向幅Pを0.2mmとし、単位画素組に含まれる各部分画素それぞれのY方向幅WPを0.06mmとし、単位画素組に含まれる各部分画素の間の遮蔽領域のY方向幅WBを0.04mmとした。
【0093】
レンズの出射側主平面と像面との間の距離L1を350mmとし、レンズの入射側主平面と表示パネルとの間の距離L2を0.46mmとした。なお、レンズの厚さを0.2mmとし、レンズの屈折率を1.6とし、レンズと表示パネルとの間に厚さ0.5mmで屈折率1.5のガラスがあるものとして、距離L2を0.46mm(=0.2/1.6+0.5/1.5)とした。また、実際にはレンズと表示パネルとの間に偏光板や接着剤が存在する場合があるが、これらを無視した。
【0094】
これらのパラメータの値を用いて光線行列を解くことにより、レンズの曲率半径は0.27mmと計算された。表示パネルのY方向幅を32.2mmとして、表示パネルが161個の単位画素組を備えるものとした。
【0095】
図31中において、Y=80P=16mmに位置する最外単位画素組は、中央(Y=0)に位置する単位画素組から数えて80番目の単位画素組である。像面A上において各単位画素組から到達した像を視認範囲で概ね重ねるために、Y=80Pに位置する80番目の単位画素組の中心位置の像が、Y=80PLに位置する80番目のレンズを通って、像面A上のY=0の位置に来るようにした。前述と同様の三角形の相似関係から、単位レンズのY方向幅PLは0.1997mmと計算された。
【0096】
第3比較例において、表示パネルの161個の単位画素組に含まれる部分画素22L,22Rの全てを光らせたときの像面A上での光強度分布は、図32に示されるようになる。像面A上において、右目用像IRと左目用像ILとの間に、光が到達しない領域IBが存在している。遮蔽領域23に対する黒い領域IBは、前記(3)式で表されるY方向範囲に形成される。
【0097】
図33は、第1実施例の計算条件を示す図である。図34は、第1実施例の計算結果を示す図である。第1実施例では、図33に示されるように、単位レンズ形状以外のパラメータについての計算条件は上記の第3比較例の計算条件と同じである。この第1実施例では、各単位レンズ11は、部分レンズ121,122を含む。各単位レンズ11に含まれる部分レンズ121,122それぞれの光軸の間の間隔を、単位画素組に含まれる各部分画素の間の遮蔽領域のY方向幅WBと等しく0.04mmとした。なお、図31の比較例では、物体面上の或る点からの光路を、そこから出る光線のうちレンズ面上でレンズ光軸を通る1本の光線で代表して示しているのに対し、図33では、レンズ光軸が、対応する部分レンズのy方向占有位置ないに存在しないため、任意の2本ずつの光線で示した。YZ面におけるレンズ面接線の傾きを各単位レンズ面内で連続とした。各部分レンズの曲率半径を0.27mmとした。
【0098】
物体面上の或る物点から出た光は、その点と光軸との距離のα倍だけ、光軸から物点と反対側に離れた像面上に結像する。右視点用部分画素22Rから出た光により形成される右目用像IRは、部分レンズ121によって下記(13)式で表されるY方向範囲に形成され、部分レンズ122によって下記(14)式で表されるY方向範囲に形成され、全体として下記(15)式で表されるY方向範囲に形成される。左視点用部分画素22Lから出た光により形成される左目用像ILは、全体として下記(16)式で表されるY方向範囲に形成される。よって、像面A上において光が到達しない領域が存在しないことになる。
【0099】
【数13】
【0100】
【数14】
【0101】
【数15】
【0102】
【数16】
【0103】
第1実施例において、表示パネルの161個の単位画素組に含まれる部分画素22L,22Rの全てを光らせたときの像面A上での光強度分布は、図34に示されるようになる。像面A上において、右目用像IRと左目用像ILとの間に、光が到達しない領域IBがなくなっており、画像を観察したときの黒い筋がなくなる。
【0104】
各単位レンズ11において部分レンズ121と部分レンズ122とが互いに接する箇所に窪みが存在する場合(第2参考例の構成とした場合)、像面A上での光強度分布は、図35に示されたようになる。図35と比較して、図34に示される第1実施例の計算結果は、若干の強度分布の違いがあるものの、左右方向への視点分離を維持しつつ、y=0mm付近の光強度0の領域がなくなっているので、十分な性能を有していると言える。
【0105】
このように、部分レンズ121,122の光軸間距離を遮蔽領域23の幅WBと同じかそれ以上にしておけば、像面A上でy=0付近において、右目用像IRと左目用像ILとが互いに重なり、黒い筋をなくすことができる。
【0106】
次に、比較例、参考形態および本実施形態それぞれの場合におけるレンズ部品10の製造方法について説明する。レンズ部品10のレンズ面の形状の凹凸を反転させた形状を有する金型を作製し、溶かした材料を金型に流し込んで上から平板でプレスするか、或いは、溶かした材料を平板に流し込んで上から金型でプレスするかすることで、レンズ部品10を製造する。図36は、金型の作製方法を模式的に説明する図である。図37は、金型の作製の際に用いるバイトの形状を説明する図である。バイト31は本体部と刃先(図示せず)とから構成されており、刃先は本体部の先端にろう付けされて一体に構成されている。刃先はダイヤモンドなどの硬い材料で構成され得る。また、バイト31は図示しないシャンクに保持された状態で所定方向に移動可能とされている。バイト31を図中の矢印の方向に動かし、平板32の一方の主面上に周期PLで配列された複数の溝を形成して、金型を作製する。
【0107】
バイト31の1回のライン加工で切り込める深さが限られるので、1本の溝を形成するためにはm回(深さに依存するが通常は3回)のライン加工が必要となる。n個(通常は数百以上)の単位レンズ11を備えるレンズ部品10を製造するには、金型もn本の溝が必要である。したがって、全体のm×n回のライン加工が必要となる。このようなバイト31は研磨により作製される。
【0108】
バイト31の先端(刃先)は単位レンズ11と同じ形状を有する。比較例のレンズ部品10を製造するための金型を作製する際に用いられるバイト31は、その先端が1つの凸部を有する。参考形態のレンズ部品10を製造するための金型を作製する際に用いられるバイト31Aは、図37(a)に示されるように、その先端が2つの凸部の間に窪みを有する。このような形状を有するバイト31Aは、バイト31の先端(刃先)を研磨することで作製され得る。しかし、バイト31の先端(刃先)は、サイズが小さく、硬い材料で構成されているから、通常の研磨により作製することが困難であり、特殊な技術により作製する必要があるので、作製が容易でなく高価となる。バイト31Aに替えて、図37(b)に示されるような2本のバイト31B,31Cを用いることも考えられる。しかし、この場合には、必要なバイトの本数が増えるだけでなく、金型作成の際のライン加工の回数が2倍になるので、金型作製のコストが倍増する。さらに、こうして作製された金型は、2本のバイトの境界部に筋状の加工残りが発生してしまうから、単位レンズの光学特性が劣化する。
【0109】
本実施形態のレンズ部品10を製造するための金型を作製する際に用いられるバイト31Dは、図37(c)に示されるように、先端に窪みを有していないので、通常のバイト31と同様に通常の研磨により作製することができる。したがって、本実施形態のレンズ部品10は、通常のレンチキュラレンズと同じコストで容易に製造することができる。
【0110】
本実施形態においても、参考形態の場合と同様に、一般に視点数が2以上であってよく、また、単位レンズに含まれる各部分レンズが非球面レンズ形状であってもよい。
【0111】
これまで、立体画像を視認させる場合について主に説明してきた。立体画像を表示する画像表示装置や、視点を非対称に振り分けることを目的としていない画像表示装置では、図38に示されるように、画像表示装置の正面中央で見たときに、左右に均等に各視点の像が形成されていることが好ましい。同図は、本実施形態の画像表示装置の中央での単位レンズと単位画素組との位置関係を示す図である。
【0112】
同図に示されるように、像面A上において、Y方向中央(Y=0)の位置に対して負の方向を右視点とし、正の方向を左視点とすると、表示パネル20において中央の単位画素組21kの中心がY=0に位置する。画素と像とは互いに反転するので、負側に左目用部分画素22Lが配置され、正側に右目用部分画素22Rが配置されている必要がある。これが大きくずれると、両視点の外側の虚像の部分が見えてしまい、また、完全に右目用部分画素と左目用部分画素が入れ替わると、右と左とで像が入れ替わってしまう。したがって、レンズ部品10のY方向について中央付近にある何れかの単位レンズに含まれる2個の部分レンズそれぞれの光軸のY方向での中間位置と、表示パネル20のY方向について中央付近にある何れかの単位画素組の中央位置とが、互いに等しいことが望ましい。
【0113】
図38に示されるような望ましい単位レンズ11と単位画素組21との位置関係にするためには、レンズ部品10と表示パネル20とを組み立てる際に画像を表示させることで位置を確認しながら組み立てることが好ましい。或いは、図39に示されるように、レンズ部品10が位置合わせの為のマーク14を縁に有し、表示パネル20が位置合わせの為のマーク24を縁に有するようにして、レンズ部品10と表示パネル20とを組み立てる際にマーク14とマーク24とを互いに一致させるようにすることが好ましい。
【符号の説明】
【0114】
1,2…画像表示装置、10…レンズ部品、11…単位レンズ、12…部分レンズ、20…表示パネル、21…単位画素組、22…部分画素、23…遮蔽領域。
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の視点それぞれに向けて画像を表示することができる画像表示装置、および、この画像表示装置に含まれるレンズ部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の視点それぞれに向けて画像を表示することができる画像表示装置は、例えばカーナビゲーションシステムにおいて運転席および助手席それぞれに座っている者に対して互いに異なる画像を表示したり、あるいは、同一人物の右目および左目それぞれに対して互いに異なる画像を表示することで立体画像と認識させたりすることができる。
【0003】
このような画像表示装置として、液晶などを用いた表示パネルと、シリンドリカルレンズが並列配置されたレンチキュラレンズと、を備えるものが知られている。表示パネルとして液晶表示パネルが用いられる場合、ブラックマトリックスと呼ばれる遮蔽領域で個々の画素が囲まれている。表示パネルにおいて画素間に遮蔽領域が存在していることにより、画像表示装置が画像を表示する像面上では、遮蔽領域に対応する黒い領域が生じてしまう。
【0004】
この黒い領域が像面上の位置によっては認識されることとなり、画像内で黒い筋となって観察されるので、画質が低下する。そこで、特許文献1に開示された発明は、液晶表示パネルとレンチキュラレンズとの間に異方性散乱シートを設けることで、画素間の遮蔽領域に起因する画質の低下を回避することを図ろうとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−134617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された発明では、画像を形成するのに必要な光をも異方性散乱シートにより散乱させることになるので、これにより画質が低下する。このような画質低下を回避する為に、特殊な形状を有するレンズ部品をレンチキュラレンズに替えて用いることも考えられる。しかし、特殊形状のレンズ部品の製造は必ずしも容易でない。
【0007】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、複数の視点それぞれに向けて高品質の画像を表示することができる画像表示装置、および、この画像表示装置において好適に用いられ容易に製造することができるレンズ部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のレンズ部品は、物体面上の画像を像面上に結像するレンズ部品であって、(1) 各々第1方向に延在し共通の構成を有し、第1方向に垂直な第2方向に最小周期PLで並列配置されたK個の単位レンズを備え、(2) K個の単位レンズそれぞれが、第2方向の最小周期PL内において区分されるM個の部分レンズを含み、(3) 各単位レンズに含まれるM個の部分レンズそれぞれが、第1方向および第2方向の双方に垂直な第3方向に平行であって互いに異なる光軸を有し、互いに接する箇所が凸形状をなし、物体面上の共通点を像面上の互いに異なる位置に結像することを特徴とする。ただし、K,Mは2以上の整数である。
【0009】
本発明のレンズ部品は、各単位レンズに含まれるM個の部分レンズそれぞれが、互いに等しい焦点距離を有するのが好適である。また、各単位レンズに含まれるM個の部分レンズそれぞれが、第1方向および第2方向の双方に平行な面における断面形状が円弧であるのが好適である。
【0010】
本発明の画像表示装置は、(1) 互いに垂直な第1方向および第2方向の双方に平行な面上に複数の単位画素組が2次元配列され、複数の単位画素組それぞれが第2方向に沿って配列されたN個の部分画素を含む表示パネルと、(2) 表示パネルを物体面として該物体面上の画像を像面上に結像し、第2方向について単位画素組に対応して単位レンズが設けられている上記の本発明のレンズ部品と、を備えることを特徴とする。ただし、Nは2以上の整数である。
【0011】
本発明の画像表示装置は、表示パネルの複数の単位画素組それぞれにおいて第2方向に沿ってN個の部分画素の相互の間に遮蔽領域が存在し、遮蔽領域の第2方向での幅が、レンズ部品の各単位レンズに含まれるM個の部分レンズそれぞれの光軸の第2方向での間隔と比べて等しいか又は小さいのが好適である。
【0012】
本発明の画像表示装置は、M値が2であり、レンズ部品のK個の単位レンズのうち第2方向について中央付近にある何れかの単位レンズに含まれる2個の部分レンズそれぞれの光軸の第2方向での中間位置と、表示パネルの複数の単位画素組のうち第2方向について中央付近にある何れかの単位画素組の中央位置とが、互いに等しいのが好適である。また、本発明の画像表示装置は、レンズ部品および表示パネルそれぞれが、両者を組み立てる際の位置合わせの為のマークを有するのが好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の視点それぞれに向けて画像を表示することができ、その画像の画質の劣化を抑制することができ、また、容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1比較例の画像表示装置1による画像表示の原理を模式的に示す図である。
【図2】第1比較例の画像表示装置1による画像表示における表示パネル20の画素と像面A上の像との関係を説明する図である。
【図3】第1比較例の画像表示装置1による画像表示における表示パネル20の画素と像面A上の像との関係を説明する図である。
【図4】参考形態の画像表示装置のレンズ部品10を説明する図である。
【図5】第1比較例における表示パネル10に対しレンズが−Y方向にシフトしたときの部分画素22Rからの光線の軌跡を示す図である。
【図6】第1比較例における表示パネル10に対しレンズが−Y方向にシフトしたときの像面A上の光強度分布を示す図である。
【図7】第1比較例における表示パネル10に対しレンズが+Y方向にシフトしたときの部分画素22Rからの光線の軌跡を示す図である。
【図8】第1比較例における表示パネル10に対しレンズが+Y方向にシフトしたときの像面A上の光強度分布を示す図である。
【図9】参考形態における部分画素22Rからの光線の軌跡を示す図である。
【図10】参考形態における像面A上の光強度分布を示す図である。
【図11】第1比較例の計算条件を示す図である。
【図12】第1比較例の計算結果を示す図である。
【図13】第1参考例の計算条件を示す図である。
【図14】第1参考例の計算結果を示す図である。
【図15】第2参考例の計算条件を示す図である。
【図16】第2参考例の計算結果を示す図である。
【図17】第3参考例の計算条件を示す図である。
【図18】第3参考例の計算結果を示す図である。
【図19】第2比較例の画像表示装置2による画像表示の原理を模式的に示す図である。
【図20】第2比較例の計算条件を示す図である。
【図21】第2比較例の計算結果を示す図である。
【図22】第4参考例の計算条件を示す図である。
【図23】第4参考例の計算結果を示す図である。
【図24】非球面レンズの断面形状を示す図である。
【図25】非球面レンズの最適化条件を示す図である。
【図26】第5参考例の計算条件を示す図である。
【図27】第5参考例の計算結果を示す図である。
【図28】本実施形態のレンズ部品10の断面図である。
【図29】本実施形態のレンズ部品10による結像を説明する図である。
【図30】本実施形態のレンズ部品10の形状を説明する断面図である。
【図31】第3比較例の計算条件を示す図である。
【図32】第3比較例の計算結果を示す図である。
【図33】第1実施例の計算条件を示す図である。
【図34】第1実施例の計算結果を示す図である。
【図35】第2参考例の計算結果を示す図である。
【図36】金型の作製方法を模式的に説明する図である。
【図37】金型の作製の際に用いるバイトの形状を説明する図である。
【図38】本実施形態の画像表示装置の中央での単位レンズと単位画素組との位置関係を示す図である。
【図39】レンズ部品10および表示パネル20の組み立て時の位置合わせの為のマークを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一または同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。初めに比較例および参考形態の画像表示装置について説明した後に、実施形態の画像表示装置について説明する。参考形態は、本発明の実施形態の構成の前提となるべき事項を説明するためのものである。また、説明の便宜のために図面においてXYZ直交座標系を示している。
【0016】
図1は、第1比較例の画像表示装置1による画像表示の原理を模式的に示す図である。画像表示装置1は、レンズ部品10および表示パネル20を備え、表示パネル20を物体面として該物体面上の画像をレンズ部品10により像面A上に結像する。
【0017】
レンズ部品10は、各々X方向に延在し共通の構成を有するシリンドリカルレンズ111〜11Kが単位レンズとして一定周期でY方向に並列配置されたレンチキュラレンズである。Kは2以上の整数である。シリンドリカルレンズ111〜11Kそれぞれの光軸はZ方向に平行である。レンズ部品10は概略的には平板形状のものであって、表示パネル20に対向する面が平面であり、像面Aに対向する面が凸面となっている。同図ではレンズ部品10の凸面の形状が示されている。
【0018】
表示パネル20は、XY平面上に複数の単位画素組21が2次元配列されたものである。各単位画素組21は、Y方向に沿って配列された2個の部分画素22L,22Rを含む。左目用部分画素22Lと右目用部分画素22RとはY方向に交互に配置されている。また、ブラックマトリックスと呼ばれる遮蔽領域23が左目用部分画素22Lと右目用部分画素22Rとの間に存在する。
【0019】
単位画素組21kがシリンドリカルレンズ11kに対応しているとすると、単位画素組21kの左目用部分画素22Lから発した光がシリンドリカルレンズ11kを経ることにより像面A上に左目用像ILが形成され、単位画素組21kの右目用部分画素22Rから発した光がシリンドリカルレンズ11kを経ることにより像面A上に右目用像IRが形成される。そして、像面A上の左目用像ILの形成範囲にある左目ELの網膜には左目用画像が結像され、像面A上の右目用像IRの形成範囲にある右目ERの網膜には右目用画像が結像される。したがって、各単位画素組21の左目用部分画素22Lおよび右目用部分画素22Rそれぞれに適切な画像データが与えられることにより、左目ELおよび右目ERにより立体画像が視認される。
【0020】
しかし、像面A上には、左目用像ILと右目用像IRとの間に、遮蔽領域23に対応する黒い領域IBが生じてしまう。この黒い領域IBが像面A上の位置によっては認識されることとなり、立体画像内で黒い筋となって観察されるので、画質が低下する。
【0021】
図2および図3それぞれは、第1比較例の画像表示装置1による画像表示における表示パネル20の画素と像面A上の像との関係を説明する図である。単位画素組21kに含まれる部分画素22L,22RそれぞれのY方向幅をWPとする。単位画素組21kに含まれる部分画素22Lと部分画素22Rとの間の遮蔽領域23のY方向幅をWBとする。単位画素組21kのY方向幅をP(=2(WP+WB))とする。レンズ部品10の出射側主平面と像面Aとの間の距離をL1とする。レンズ部品10の入射側主平面と表示パネル20との間の距離をL2とする。
【0022】
部分画素22L,22RのY方向幅を底辺とし距離L2を高さとする三角形と、像面Aにおける像IL,IRのY方向幅を底辺とし距離L1を高さとする三角形とは、相似関係にある。なお、厳密には、レンズ部品10と表示パネル20との間には他の部材(ガラス、偏光板、接着剤など)が存在する場合がある。レンズ厚が位置によらず一様にレンズ先端までの厚さと仮定した近軸計算では、距離L2は各層の厚さを各層の屈折率で割ったものの和となる。L1,L2は、各部材の厚さ及び屈折率や設定した像面の位置(観察位置)に基づいて光線行列を解くことにより求められる。
【0023】
図2(a)では、単位画素組21kのY方向中心、および、単位画素組21kに対応するシリンドリカルレンズ11kのY方向中心は、何れもY=0に位置している。このとき、同図(b)に示されるように、像面A上において、左目用部分画素22Lに対応する左目用像ILは下記(1)式で表されるY方向範囲に形成され、右目用部分画素22Rに対応する右目用像IRは下記(2)式で表されるY方向範囲に形成される。また、遮蔽領域23に対応する黒い領域IBは下記(3)式で表されるY方向範囲に形成される。なお、αは、レンズ倍率であり、α=L1/L2なる式で表される。
【0024】
【数1】
【0025】
【数2】
【0026】
【数3】
【0027】
図3(a)では、単位画素組21kのY方向中心はY=0に位置しているのに対して、単位画素組21kに対応するシリンドリカルレンズ11kのY方向中心はY=−tに位置している。このとき、同図(b)に示されるように、像面A上において、左目用部分画素22Lに対応する左目用像ILは下記(4)式で表されるY方向範囲に形成され、右目用部分画素22Rに対応する右目用像IRは下記(5)式で表されるY方向範囲に形成される。また、遮蔽領域23に対応する黒い領域IBは下記(6)式で表されるY方向範囲に形成される。
【0028】
【数4】
【0029】
【数5】
【0030】
【数6】
【0031】
すなわち、図2の場合と比較して図3の場合には、単位画素組21kに対してシリンドリカルレンズ11kがY方向に−tだけ移動していることにより、像面A上において左目用像IL,右目用像IRおよび黒い領域IBは何れもY方向に−t(1+L1/L2) だけシフトすることになる。すなわち、像面A上において図2では光強度0であった部分にも図3では光が到達する。
【0032】
図4は、参考形態の画像表示装置のレンズ部品10を説明する図である。同図でもレンズ部品の凸面の形状が示されている。同図(a),(b)は、各々X方向に延在し共通の構成を有する複数のシリンドリカルレンズが一定周期PLでY方向に並列配置されたレンチキュラレンズを示す。このレンチキュラレンズは、第1比較例の画像表示装置1に含まれるものと同様のものである。同図(a)のレンチキュラレンズに対して同図(b)のレンチキュラレンズはY方向にtだけシフトしている。
【0033】
同図(c)に示される本参考形態のレンズ部品10は、各々X方向に延在し共通の構成を有しY方向に最小周期PLで並列配置されたK個の単位レンズ11を備える。各単位レンズ11は、Y方向の最小周期PL内において区分される2個の部分レンズ121,122を含む。最小周期PL内の0〜PL'の範囲にある部分レンズ121は同図(a)中の実線部分に相当する。最小周期PL内のPL'〜PLの範囲にある部分レンズ122は同図(b)中の実線部分に相当する。
【0034】
すなわち、各単位レンズ11に含まれる2個の部分レンズ121,122それぞれは、Z方向に平行であって互いに異なる光軸(Y方向にtだけ互いに離れている光軸)を有し、物体面上の共通点を像面A上の互いに異なる位置(Y方向に−t(1+L1/L2) だけ互いにシフトした位置)に結像することができる。これにより、遮蔽領域23に対応する黒い領域IB(観察の際に黒い筋となって見える領域)を狭くすることができ、或いは、黒い領域IBを無くすことができる。
【0035】
図2(b)および図3(b)それぞれに示された光強度分布から、下記(7)式で表される条件が成り立つとき、像面A上において光が到達しない領域IBが存在する。下記(8)式で表される条件が成り立つとき、像面A上において左目用像ILと右目用像IRとが互いに一部重なってクロストークが生じる。したがって、下記(9)式で表される条件が成り立つのが最適である。なお、(7)式〜(9)式それぞれにおいて、左辺は図2での黒い領域IBの左側境界位置を表し、右辺は図3での黒い領域IBの右側境界位置を表す。
【0036】
【数7】
【0037】
【数8】
【0038】
【数9】
【0039】
上記(9)式から下記(10)式が得られる。通常、距離L2は数百μm〜数mmであるのに対し、距離L1は数百mmと十分大きい。したがって、(10)式は下記(11)式で近似され得る。
【0040】
【数10】
【0041】
【数11】
【0042】
なお、レンズ部品10の各単位レンズ11に含まれる部分レンズ121,122それぞれは、YZ断面において、球面レンズ形状を有していてもよいし、非球面レンズ形状を有していてもよい。部分レンズ121,122それぞれのレンズ形状は、光線行列を解くことにより得られる。しかし、部分レンズ121,122それぞれのレンズ形状が光線行列の解から数%程度異なっていても、充分に視点分離が可能であるので実用上の問題はない。ただし、像面A上におけるY方向の画質の一様性の観点から、各単位レンズ11に含まれる部分レンズ121,122それぞれは互いに等しい焦点距離を有するのが好ましい。
【0043】
次に、図5〜図10を用いて第1比較例および本参考形態それぞれの画像表示装置の動作を説明する。図5は、第1比較例における表示パネル10に対しレンズが−Y方向にシフトしたときの部分画素22Rからの光線の軌跡を示す図であり、図6は、第1比較例における表示パネル10に対しレンズが−Y方向にシフトしたときの像面A上の光強度分布を示す図である。図7は、第1比較例における表示パネル10に対しレンズが+Y方向にシフトしたときの部分画素22Rからの光線の軌跡を示す図であり、図8は、第1比較例における表示パネル10に対しレンズが+Y方向にシフトしたときの像面A上の光強度分布を示す図である。また、図9は、本参考形態における部分画素22Rからの光線の軌跡を示す図であり、図10は、本参考形態における像面A上の光強度分布を示す図である。
【0044】
第1比較例において、図5および図6に示されるように、表示パネル10に対しレンズが−Y方向にシフトしたとき(図4(a)の場合)、像面A上の右目用像IR1および左目用像IL1も−Y方向にシフトする。一方、図7および図8に示されるように、表示パネル10に対しレンズが+Y方向にシフトしたとき(図4(b)の場合)、像面A上の右目用像IR2および左目用像IL2も+Y方向にシフトする。
【0045】
これに対して、本参考形態においては、図9および図10に示されるように、単位レンズ11のうちの部分レンズ121を経て像面Aに形成される右目用像IR1および左目用像IL1と、単位レンズ11のうちの部分レンズ122を経て像面Aに形成される右目用像IR2および左目用像IL2とは、像面A上において互いに異なる領域に形成される(図10(a))。したがって、本参考形態では、像面A上において、右目用像IR1と右目用像IR2とが重なった右目用像IRが形成され、また、左目用像IL1と左目用像IL2とが重なった左目用像ILが形成される(図10(b))。
【0046】
次に、第1比較例,第1参考例,第2参考例および第3参考例それぞれにおける像面A上での光強度分布の計算例を説明する。第1参考例,第2参考例および第3参考例は、上記の本参考形態の具体的な例である。以下の計算例では、レンズは球面レンズであるとした。
【0047】
図11は、第1比較例の計算条件を示す図である。図12は、第1比較例の計算結果を示す図である。第1比較例では、図11に示されるように、単位画素組のY方向幅Pを0.2mmとし、単位画素組に含まれる各部分画素それぞれのY方向幅WPを0.08mmとし、単位画素組に含まれる各部分画素の間の遮蔽領域のY方向幅WBを0.02mmとした。
【0048】
レンズの出射側主平面と像面との間の距離L1を350mmとし、レンズの入射側主平面と表示パネルとの間の距離L2を0.52mmとした。なお、レンズの厚さを0.3mmとし、レンズの屈折率を1.6とし、レンズと表示パネルとの間に厚さ0.5mmで屈折率1.5のガラスがあるものとして、距離L2を0.52mm(=0.3/1.6+0.5/1.5)とした。また、実際にはレンズと表示パネルとの間に偏光板や接着剤が存在する場合があるが、これらを無視した。
【0049】
これらのパラメータの値を用いて光線行列を解くことにより、レンズの曲率半径は0.31mmと計算された。表示パネルのY方向幅を32.2mmとして、表示パネルが161個の単位画素組を備えるものとした。
【0050】
図11中において、Y=80P=16mmに位置する最外単位画素組は、中央(Y=0)に位置する単位画素組から数えて80番目の単位画素組である。像面A上において各単位画素組から到達した像を視認範囲で概ね重ねるために、Y=80Pに位置する80番目の単位画素組の中心位置の像が、Y=80PLに位置する80番目のレンズを通って、像面A上のY=0の位置に来るようにした。前述と同様の三角形の相似関係から、単位レンズのY方向幅PLは0.1997mmと計算された。
【0051】
第1比較例において、表示パネルの161個の単位画素組に含まれる部分画素22L,22Rの全てを光らせたときの像面A上での光強度分布は、図12に示されるようになる。像面A上において、右目用像IRと左目用像ILとの間に、光が到達しない領域IBが存在している。
【0052】
図13は、第1参考例の計算条件を示す図である。図14は、第1参考例の計算結果を示す図である。第1参考例では、図13に示されるように、単位レンズ形状以外のパラメータについての計算条件は上記の第1比較例の計算条件と同じである。この第1参考例では、単位レンズは、第1比較例のレンズを−Y方向(左方向)にt/2だけシフトしたレンズの一部に相当する部分レンズ121と、第1比較例のレンズを+Y方向(右方向)にt/2だけシフトしたレンズの一部に相当する部分レンズ122とを含む。t/2=WB/2=0.01mmである。
【0053】
部分レンズ121,122それぞれの光軸は、Z方向に平行であって、互いに距離tだけ離れている。レンズ部品の中央に位置する単位レンズに含まれる部分レンズ121,122それぞれの光軸のY方向中心位置は、表示パネルの中央に位置する単位画素組のY方向中心位置と一致している。各単位レンズのY方向幅PL(0.1997mm)において、−Y方向側の0.05mm幅の領域に部分レンズ121が存在し、+Y方向側の0.1497mm幅の領域に部分レンズ122が存在する。
【0054】
第1参考例において、表示パネルの161個の単位画素組に含まれる部分画素22L,22Rの全てを光らせたときの像面A上での光強度分布は、図14に示されるようになる。像面A上において、右目用像IRと左目用像ILとの間に、光が到達しない領域IBがなくなっており、画像を観察したときの黒い筋がなくなる。なお、図14では、光強度が位置によって階段状に変化していて光強度が低い領域があるが、光強度0で黒となって観察される領域より、人間の眼には遥かに認識されにくい。
【0055】
図15は、第2参考例の計算条件を示す図である。図16は、第2参考例の計算結果を示す図である。第2参考例では、図15に示されるように、単位レンズ形状以外のパラメータについての計算条件は上記の第1比較例の計算条件と同じである。前の第1参考例では部分レンズ121,122のY方向幅比が略1:3であったのに対して、この第2参考例では部分レンズ121,122のY方向幅比を1:1とした。
【0056】
第2参考例において、表示パネルの161個の単位画素組に含まれる部分画素22L,22Rの全てを光らせたときの像面A上での光強度分布は、図16に示されるようになる。像面A上において、右目用像IRと左目用像ILとの間に、光が到達しない領域IBがなくなっており、画像を観察したときの黒い筋がなくなる。また、第2参考例では、像面A上の光強度分布はY=0の位置を中心として対称となるので、より自然な画像が得られる。また、第2参考例のレンズ部品は、第1参考例と異なり不連続部分がなくなるので、製造がより容易になる。
【0057】
図17は、第3参考例の計算条件を示す図である。図18は、第3参考例の計算結果を示す図である。第3参考例では、図17に示されるように、第1比較例,第1参考例および第2参考例と同様に、単位画素組のY方向幅Pを0.2mmとし、レンズの出射側主平面と像面との間の距離L1を350mmとし、レンズの入射側主平面と表示パネルとの間の距離L2を0.52mmとし、単位レンズのY方向幅PLを0.1997mmとした。
【0058】
第3参考例では、単位画素組に含まれる各部分画素それぞれのY方向幅WPを0.05mmとし、単位画素組に含まれる各部分画素の間の遮蔽領域のY方向幅WBを0.05mmとして、両者を等しくした。また、部分レンズ121,122のY方向幅比を1:1とした。
【0059】
第1比較例において、単位画素組に含まれる各部分画素それぞれのY方向幅WPと各部分画素の間の遮蔽領域のY方向幅WBとを互いに等しくすると、像面Aにおいて、右目用像IR、左目用像ILおよび黒い領域IBそれぞれのY方向幅も互いに等しくなる。これに対して、第3参考例では、表示パネルの161個の単位画素組に含まれる部分画素22L,22Rの全てを光らせたときの像面A上での光強度分布は、図18に示されるように、部分レンズ121,122により±t/2だけシフトされた右目用像IRおよび左目用像ILの重ね合わせとなるので、略均一の強度分布となる。
【0060】
したがって、第3参考例では、第2参考例の効果に加えて、強度分布が一様でありより自然な画像が得られるという効果が得られる。また、さらに、像面Aでの実質的な視認範囲(すなわち、光強度分布が略一様である範囲)は、第1参考例および第2参考例では、右目用像IRに対してはY=−55mm〜−13mmであって、左目用像ILに対してはY=+13mm〜+55mmであったのに対し、第3参考例では、右目用像IRに対してはY=−65mm〜0であって、左目用像ILに対してはY=0〜+65mmであり、それぞれ視認範囲を広くとることができる。
【0061】
なお、図18(a)において、右目用像IRおよび左目用像ILそれぞれの中央付近に、局所的に強度の大きい部分が見られる。これは、+Y方向にシフトした部分レンズによる像と、−Y方向にシフトした部分レンズによる像との切替部分で、レンズの球面収差により若干光強度分布が裾を引いて僅かなオーバーラップ(図18(b)中の点線で囲った部分)が生じたことに因る。しかしながら、人間の眼には、このような局所的な強度の変化は認識されにくい。この僅かなオーバーラップは、画素の幅やレンズのシフト量に若干の修正を加えることなどにより改善が可能である。
【0062】
これまで説明してきた比較例および参考形態では視点数が2であったが、一般に視点数が2以上であってもよい。視点数がNである場合、表示パネルの各単位画素組はY方向に配列されたN個の部分画素を含む。すなわち、N枚の絵を画素毎に分割し、表示パネル上ではY方向に、1番目の絵を構成する部分画素、2番目の絵を構成する部分画素、・・・、N番目の絵を構成する部分画素の順に配置したものを単位画素組として、レンズによって各視点の像を振り分ける。
【0063】
次に、視点数が3である場合について説明する。図19は、第2比較例の画像表示装置2による画像表示の原理を模式的に示す図である。画像表示装置2は、レンズ部品10および表示パネル20を備え、表示パネル20を物体面として該物体面上の画像をレンズ部品10により像面A上に結像する。レンズ部品10は、図1に示されたものと同様である。
【0064】
表示パネル20は、XY平面上に複数の単位画素組21が2次元配列されたものである。視点数が3である場合、各単位画素組21は、Y方向に沿って配列された3個の第1部分画素221,第2部分画素222および第3部分画素223を含む。部分画素221,222,223はY方向に順に配置されている。また、ブラックマトリックスと呼ばれる遮蔽領域23が、部分画素221と部分画素222との間に存在し、部分画素222と部分画素223との間に存在する。
【0065】
単位画素組21kがシリンドリカルレンズ11kに対応しているとすると、単位画素組21kの第1部分画素221から発した光がシリンドリカルレンズ11kを経ることにより像面A上に第1の像I1が形成され、単位画素組21kの第2部分画素222から発した光がシリンドリカルレンズ11kを経ることにより像面A上に第2の像I2が形成され、また、単位画素組21kの第3部分画素223から発した光がシリンドリカルレンズ11kを経ることにより像面A上に第3の像I3が形成される。そして、像面A上の第1および第2の像の形成範囲にある左目・右目により立体画像が視認され、像面A上の第2および第3の像の形成範囲にある左目・右目により他の立体画像が視認される。
【0066】
しかし、この場合にも、像面A上には、第1の像I1と第2の像I2との間、および、第2の像I2と第3の像I3との間に、遮蔽領域23に対応する黒い領域IBが生じてしまう。この黒い領域IBが像面A上の位置によっては認識されることとなり、立体画像内で黒い筋となって観察されるので、画質が低下する。
【0067】
このような3視点の場合にも、既に説明した2視点の場合と同様に、図4(c)に示されるようなレンズ部品を用いることにより、遮蔽領域23に対応する黒い領域IB(観察の際に黒い筋となって見える領域)を狭くすることができ、或いは、黒い領域IBを無くすことができる。
【0068】
次に、3視点の場合の第2比較例および第4参考例それぞれにおける像面A上での光強度分布の計算例を説明する。第4参考例は、上記の3視点の場合の参考形態の具体的な例である。以下の計算例では、レンズは球面レンズであるとした。
【0069】
図20は、第2比較例の計算条件を示す図である。図21は、第2比較例の計算結果を示す図である。第2比較例では、図20に示されるように、単位画素組のY方向幅Pを0.21mmとし、単位画素組に含まれる各部分画素それぞれのY方向幅WPを0.056mmとし、単位画素組に含まれる各部分画素の間の遮蔽領域のY方向幅WBを0.014mmとした。
【0070】
レンズの出射側主平面と像面との間の距離L1を350mmとし、レンズの入射側主平面と表示パネルとの間の距離L2を0.39mmとした。なお、レンズの厚さを0.2mmとし、レンズの屈折率を1.6とし、レンズと表示パネルとの間に厚さ0.4mmで屈折率1.5のガラスがあるものとして、距離L2を0.39mm(=0.2/1.6+0.4/1.5)とした。また、実際にはレンズと表示パネルとの間に偏光板や接着剤が存在する場合があるが、これらを無視した。
【0071】
これらのパラメータの値を用いて光線行列を解くことにより、レンズの曲率半径は0.235mmと計算された。表示パネルのY方向幅を33.81mmとして、表示パネルが161個の単位画素組を備えるものとした。
【0072】
図20中において、Y=80P=16.8mmに位置する最外単位画素組は、中央(Y=0)に位置する単位画素組から数えて80番目の単位画素組である。像面A上において各単位画素組から到達した像を視認範囲で概ね重ねるために、Y=80Pに位置する80番目の単位画素組の中心位置の像が、Y=80PLに位置する80番目のレンズを通って、像面A上のY=0の位置に来るようにした。前述と同様の三角形の相似関係から、単位レンズのY方向幅PLは0.2098mmと計算された。
【0073】
第2比較例において、表示パネルの161個の単位画素組に含まれる3個の部分画素221〜223の全てを光らせたときの像面A上での光強度分布は、図21に示されるようになる。像面A上において、像I1〜像I3の間に、光が到達しない領域IBが存在している。
【0074】
図22は、第4参考例の計算条件を示す図である。図23は、第4参考例の計算結果を示す図である。第4参考例では、図22に示されるように、単位レンズ形状以外のパラメータについての計算条件は上記の第2比較例の計算条件と同じである。第4参考例では、単位レンズは、第2比較例のレンズを−Y方向(左方向)にt/2だけシフトしたレンズの一部に相当する部分レンズ121と、第2比較例のレンズを+Y方向(右方向)にt/2だけシフトしたレンズの一部に相当する部分レンズ122とを含む。t/2=WB/2=0.007mmである。
【0075】
部分レンズ121,122それぞれの光軸は、Z方向に平行であって、互いに距離tだけ離れている。レンズ部品の中央に位置する単位レンズに含まれる部分レンズ121,122それぞれの光軸のY方向中心位置は、表示パネルの中央に位置する単位画素組のY方向中心位置と一致している。部分レンズ121,122のY方向幅比を1:1とした。
【0076】
第4参考例において、表示パネルの161個の単位画素組に含まれる部分画素221〜223の全てを光らせたときの像面A上での光強度分布は、図23に示されるようになる。像面A上において、像I1〜像I3の間に、光が到達しない領域IBがなくなっており、画像を観察したときの黒い筋がなくなる。また、光強度が位置によって階段状に変化していて光強度が低い領域があるが、光強度0で黒となって観察される領域より、人間の眼には遥かに認識されにくい。
【0077】
これまで説明してきた比較例および参考形態では、単位レンズに含まれる各部分レンズが球面レンズ形状であったが、非球面レンズ形状であってもよい。単位レンズに含まれる各部分レンズを非球面レンズ形状とすることで、画素上1点から出た光を像面上なるべく径の小さい1点に結像させることができる。本参考形態では、レンズがX方向に延在しているので、像面A上なるべく細い線に結像させることができる。
【0078】
次に、単位レンズに含まれる各部分レンズが非球面レンズ形状である場合について説明する。図24は、非球面レンズの断面形状を示す図である。光軸をZ軸に一致させ、光軸からの距離をrとし、r=0のときのレンズ高さとの差をΔzとすると、非球面レンズの凸面の形状は下記(12)式で表される。cは曲率であり、kはコーニック係数であり、c2mは非球面係数である。
【0079】
【数12】
【0080】
これらc,k,c2mのレンズパラメータは、市販されているレンズ設計ソフトを用いて最適化し決定することができる。最適化の際の条件として、中央単位画素組から最外単位画素組までの数をNとし、物体高(レンズ中心から最も遠い発光点のY方向距離)を例えばN(P−PL)+P/2 とし、レンズ倍率をL1/L2とすればよい。
【0081】
本参考形態における単位レンズに含まれる各部分レンズは、球面レンズ形状の場合と同様に、非球面レンズ形状の場合にも、遮蔽領域23のY方向幅tだけ互いにシフトしたレンズの一部同士を組み合わせることにより、像面A上において光を到達しない部分をなくすことができ、画像の質を高めつつ、画面上に現れる黒い筋を無くすことができる。
【0082】
非球面レンズのパラメータは以下のようにして計算される。図25に示されるように、屈折率1.5で厚さ0.5mmの平行平板ガラスに、屈折率1.6で厚さ0.3mmの片面平面で片面非球面凸形状のレンズが、平面側で密着したレンズ系において、レンズと密着しているガラスの面に対向する面を光源面とする。物体高0、0.124mm(=80*(0.2−0.1997)+0.2/2)に対し、レンズ部品10の出射側主平面と像面Aとの間の距離L1を350mmとし、レンズ部品10の入射側主平面と表示パネル20との間の距離L2を0.52mmとする。この条件の下で最適化することにより、c=3.1[mm-1]、k=−0.76、c4=3.9、c6=−145.5 が得られた。なお、c2およびc2m(m≧4)を0とした。
【0083】
次に、単位レンズに含まれる各部分レンズが非球面レンズである場合の第5参考例における像面A上での光強度分布の計算例を説明する。
【0084】
図26は、第5参考例の計算条件を示す図である。図27は、第5参考例の計算結果を示す図である。第5参考例では、図26に示されるように、単位レンズ形状以外のパラメータについての計算条件は上記の第2参考例の計算条件と同じである。この第5参考例では、単位レンズに含まれる各部分レンズを上記のような非球面レンズ形状とした。
【0085】
第5参考例において、表示パネルの161個の単位画素組に含まれる部分画素22L,22Rの全てを光らせたときの像面A上での光強度分布は、図27に示されるようになる。像面A上において、右目用像IRと左目用像ILとの間に、光が到達しない領域IBがなくなっており、画像を観察したときの黒い筋がなくなる。また、第5参考例では、像面A上の光強度分布はY=0の位置を中心として対称となるので、より自然な画像が得られる。また、第5参考例のレンズ部品は、不連続部分がなくなるので、製造がより容易になる。
【0086】
次に、参考形態のレンズ部品と対比しつつ、本実施形態のレンズ部品について説明する。これまで説明してきた参考形態のレンズ部品は、比較例のものと比べて、画像の画質の劣化を抑制することができる点で優れているが、製造の容易性の点では難がある。すなわち、参考形態のレンズ部品は、XZ断面において各単位レンズ11に含まれる部分レンズ121と部分レンズ122との間に窪みを有していることから、製造の際に用いられる金型の加工が容易ではない。以下に説明する本実施形態のレンズ部品は、参考形態のレンズ部品と同程度の画質劣化抑制の作用効果を奏することに加えて、容易に製造することができるものである。
【0087】
図28は、本実施形態のレンズ部品10の断面図である。図29は、本実施形態のレンズ部品10による結像を説明する図である。本実施形態のレンズ部品10は、各々X方向に延在し共通の構成を有しY方向に最小周期PLで並列配置されたK個の単位レンズ11を備える。各単位レンズ11は、Y方向の最小周期PL内において区分される2個の部分レンズ121,122を含む。各単位レンズ11に含まれる部分レンズ121,122それぞれは、Z方向に平行であって互いに異なる光軸Ax1,Ax2を有し、表示パネル20を物体面として該物体面上の共通点を像面A上の互いに異なる位置に結像する。部分レンズ121,122それぞれによる結像の位置の間の距離は、レンズ倍率αと光軸Ax1,Ax2間の距離とに依存する。部分レンズ121,122それぞれの焦点距離は互いに等しい。
【0088】
本実施形態では、各単位レンズ11に含まれる部分レンズ121,122が互いに接する箇所は凸形状をなしている。特に図28に示される構成では、YZ平面上における部分レンズ121のレンズ形状の接線のY方向に対する傾きの符号が一定(常に正)であり、YZ平面上における部分レンズ122のレンズ形状の接線のY方向に対する傾きの符号が一定(常に負)である。なお、図29は、物体面上の共通点から出た光線のうち部分レンズ121,122を通過する光線のみの光路を模式的に描いたものである。
【0089】
各単位レンズ11に含まれる部分レンズ121,122それぞれは、図30に示されるように、同じ形状の円筒レンズの一部である形状で構成することができる。同図で示した断面図では、円C1と円C2とは互いに等しい同じ曲率半径を持ち、円C1の中心O1が光軸Ax1上に存在し、円C2の中心O2が光軸Ax2上に存在する。部分レンズ121,122は各円弧からなる円筒形状の一部である。
【0090】
前述した参考形態の構成では、部分レンズ121,122のうち左側(y座標値が小さい側)に位置する部分レンズ121の光軸は、他方の部分レンズ122の光軸より左側にある。これに対して、本実施形態の構成では、部分レンズ121,122のうち左側(y座標値が小さい側)に位置する部分レンズ121の光軸は、他方の部分レンズ122の光軸より右側にあり、部分レンズ121と部分レンズ122との間に窪みが存在しない。
【0091】
次に、図31〜図35を用いて第3比較例および第1実施例それぞれにおける像面A上での光強度分布の計算例を説明する。第1実施例は、上記の本実施形態の具体的な例である。以下の計算例では、レンズは球面レンズであるとした。
【0092】
図31は、第3比較例の計算条件を示す図である。図32は、第3比較例の計算結果を示す図である。第3比較例では、図31に示されるように、単位画素組のY方向幅Pを0.2mmとし、単位画素組に含まれる各部分画素それぞれのY方向幅WPを0.06mmとし、単位画素組に含まれる各部分画素の間の遮蔽領域のY方向幅WBを0.04mmとした。
【0093】
レンズの出射側主平面と像面との間の距離L1を350mmとし、レンズの入射側主平面と表示パネルとの間の距離L2を0.46mmとした。なお、レンズの厚さを0.2mmとし、レンズの屈折率を1.6とし、レンズと表示パネルとの間に厚さ0.5mmで屈折率1.5のガラスがあるものとして、距離L2を0.46mm(=0.2/1.6+0.5/1.5)とした。また、実際にはレンズと表示パネルとの間に偏光板や接着剤が存在する場合があるが、これらを無視した。
【0094】
これらのパラメータの値を用いて光線行列を解くことにより、レンズの曲率半径は0.27mmと計算された。表示パネルのY方向幅を32.2mmとして、表示パネルが161個の単位画素組を備えるものとした。
【0095】
図31中において、Y=80P=16mmに位置する最外単位画素組は、中央(Y=0)に位置する単位画素組から数えて80番目の単位画素組である。像面A上において各単位画素組から到達した像を視認範囲で概ね重ねるために、Y=80Pに位置する80番目の単位画素組の中心位置の像が、Y=80PLに位置する80番目のレンズを通って、像面A上のY=0の位置に来るようにした。前述と同様の三角形の相似関係から、単位レンズのY方向幅PLは0.1997mmと計算された。
【0096】
第3比較例において、表示パネルの161個の単位画素組に含まれる部分画素22L,22Rの全てを光らせたときの像面A上での光強度分布は、図32に示されるようになる。像面A上において、右目用像IRと左目用像ILとの間に、光が到達しない領域IBが存在している。遮蔽領域23に対する黒い領域IBは、前記(3)式で表されるY方向範囲に形成される。
【0097】
図33は、第1実施例の計算条件を示す図である。図34は、第1実施例の計算結果を示す図である。第1実施例では、図33に示されるように、単位レンズ形状以外のパラメータについての計算条件は上記の第3比較例の計算条件と同じである。この第1実施例では、各単位レンズ11は、部分レンズ121,122を含む。各単位レンズ11に含まれる部分レンズ121,122それぞれの光軸の間の間隔を、単位画素組に含まれる各部分画素の間の遮蔽領域のY方向幅WBと等しく0.04mmとした。なお、図31の比較例では、物体面上の或る点からの光路を、そこから出る光線のうちレンズ面上でレンズ光軸を通る1本の光線で代表して示しているのに対し、図33では、レンズ光軸が、対応する部分レンズのy方向占有位置ないに存在しないため、任意の2本ずつの光線で示した。YZ面におけるレンズ面接線の傾きを各単位レンズ面内で連続とした。各部分レンズの曲率半径を0.27mmとした。
【0098】
物体面上の或る物点から出た光は、その点と光軸との距離のα倍だけ、光軸から物点と反対側に離れた像面上に結像する。右視点用部分画素22Rから出た光により形成される右目用像IRは、部分レンズ121によって下記(13)式で表されるY方向範囲に形成され、部分レンズ122によって下記(14)式で表されるY方向範囲に形成され、全体として下記(15)式で表されるY方向範囲に形成される。左視点用部分画素22Lから出た光により形成される左目用像ILは、全体として下記(16)式で表されるY方向範囲に形成される。よって、像面A上において光が到達しない領域が存在しないことになる。
【0099】
【数13】
【0100】
【数14】
【0101】
【数15】
【0102】
【数16】
【0103】
第1実施例において、表示パネルの161個の単位画素組に含まれる部分画素22L,22Rの全てを光らせたときの像面A上での光強度分布は、図34に示されるようになる。像面A上において、右目用像IRと左目用像ILとの間に、光が到達しない領域IBがなくなっており、画像を観察したときの黒い筋がなくなる。
【0104】
各単位レンズ11において部分レンズ121と部分レンズ122とが互いに接する箇所に窪みが存在する場合(第2参考例の構成とした場合)、像面A上での光強度分布は、図35に示されたようになる。図35と比較して、図34に示される第1実施例の計算結果は、若干の強度分布の違いがあるものの、左右方向への視点分離を維持しつつ、y=0mm付近の光強度0の領域がなくなっているので、十分な性能を有していると言える。
【0105】
このように、部分レンズ121,122の光軸間距離を遮蔽領域23の幅WBと同じかそれ以上にしておけば、像面A上でy=0付近において、右目用像IRと左目用像ILとが互いに重なり、黒い筋をなくすことができる。
【0106】
次に、比較例、参考形態および本実施形態それぞれの場合におけるレンズ部品10の製造方法について説明する。レンズ部品10のレンズ面の形状の凹凸を反転させた形状を有する金型を作製し、溶かした材料を金型に流し込んで上から平板でプレスするか、或いは、溶かした材料を平板に流し込んで上から金型でプレスするかすることで、レンズ部品10を製造する。図36は、金型の作製方法を模式的に説明する図である。図37は、金型の作製の際に用いるバイトの形状を説明する図である。バイト31は本体部と刃先(図示せず)とから構成されており、刃先は本体部の先端にろう付けされて一体に構成されている。刃先はダイヤモンドなどの硬い材料で構成され得る。また、バイト31は図示しないシャンクに保持された状態で所定方向に移動可能とされている。バイト31を図中の矢印の方向に動かし、平板32の一方の主面上に周期PLで配列された複数の溝を形成して、金型を作製する。
【0107】
バイト31の1回のライン加工で切り込める深さが限られるので、1本の溝を形成するためにはm回(深さに依存するが通常は3回)のライン加工が必要となる。n個(通常は数百以上)の単位レンズ11を備えるレンズ部品10を製造するには、金型もn本の溝が必要である。したがって、全体のm×n回のライン加工が必要となる。このようなバイト31は研磨により作製される。
【0108】
バイト31の先端(刃先)は単位レンズ11と同じ形状を有する。比較例のレンズ部品10を製造するための金型を作製する際に用いられるバイト31は、その先端が1つの凸部を有する。参考形態のレンズ部品10を製造するための金型を作製する際に用いられるバイト31Aは、図37(a)に示されるように、その先端が2つの凸部の間に窪みを有する。このような形状を有するバイト31Aは、バイト31の先端(刃先)を研磨することで作製され得る。しかし、バイト31の先端(刃先)は、サイズが小さく、硬い材料で構成されているから、通常の研磨により作製することが困難であり、特殊な技術により作製する必要があるので、作製が容易でなく高価となる。バイト31Aに替えて、図37(b)に示されるような2本のバイト31B,31Cを用いることも考えられる。しかし、この場合には、必要なバイトの本数が増えるだけでなく、金型作成の際のライン加工の回数が2倍になるので、金型作製のコストが倍増する。さらに、こうして作製された金型は、2本のバイトの境界部に筋状の加工残りが発生してしまうから、単位レンズの光学特性が劣化する。
【0109】
本実施形態のレンズ部品10を製造するための金型を作製する際に用いられるバイト31Dは、図37(c)に示されるように、先端に窪みを有していないので、通常のバイト31と同様に通常の研磨により作製することができる。したがって、本実施形態のレンズ部品10は、通常のレンチキュラレンズと同じコストで容易に製造することができる。
【0110】
本実施形態においても、参考形態の場合と同様に、一般に視点数が2以上であってよく、また、単位レンズに含まれる各部分レンズが非球面レンズ形状であってもよい。
【0111】
これまで、立体画像を視認させる場合について主に説明してきた。立体画像を表示する画像表示装置や、視点を非対称に振り分けることを目的としていない画像表示装置では、図38に示されるように、画像表示装置の正面中央で見たときに、左右に均等に各視点の像が形成されていることが好ましい。同図は、本実施形態の画像表示装置の中央での単位レンズと単位画素組との位置関係を示す図である。
【0112】
同図に示されるように、像面A上において、Y方向中央(Y=0)の位置に対して負の方向を右視点とし、正の方向を左視点とすると、表示パネル20において中央の単位画素組21kの中心がY=0に位置する。画素と像とは互いに反転するので、負側に左目用部分画素22Lが配置され、正側に右目用部分画素22Rが配置されている必要がある。これが大きくずれると、両視点の外側の虚像の部分が見えてしまい、また、完全に右目用部分画素と左目用部分画素が入れ替わると、右と左とで像が入れ替わってしまう。したがって、レンズ部品10のY方向について中央付近にある何れかの単位レンズに含まれる2個の部分レンズそれぞれの光軸のY方向での中間位置と、表示パネル20のY方向について中央付近にある何れかの単位画素組の中央位置とが、互いに等しいことが望ましい。
【0113】
図38に示されるような望ましい単位レンズ11と単位画素組21との位置関係にするためには、レンズ部品10と表示パネル20とを組み立てる際に画像を表示させることで位置を確認しながら組み立てることが好ましい。或いは、図39に示されるように、レンズ部品10が位置合わせの為のマーク14を縁に有し、表示パネル20が位置合わせの為のマーク24を縁に有するようにして、レンズ部品10と表示パネル20とを組み立てる際にマーク14とマーク24とを互いに一致させるようにすることが好ましい。
【符号の説明】
【0114】
1,2…画像表示装置、10…レンズ部品、11…単位レンズ、12…部分レンズ、20…表示パネル、21…単位画素組、22…部分画素、23…遮蔽領域。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体面上の画像を像面上に結像するレンズ部品であって、
各々第1方向に延在し共通の構成を有し、前記第1方向に垂直な第2方向に最小周期PLで並列配置されたK個の単位レンズを備え、
前記K個の単位レンズそれぞれが、前記第2方向の最小周期PL内において区分されるM個の部分レンズを含み、
各単位レンズに含まれる前記M個の部分レンズそれぞれが、前記第1方向および前記第2方向の双方に垂直な第3方向に平行であって互いに異なる光軸を有し、互いに接する箇所が凸形状をなし、前記物体面上の共通点を前記像面上の互いに異なる位置に結像する、
ことを特徴とするレンズ部品(ただし、K,Mは2以上の整数)。
【請求項2】
各単位レンズに含まれる前記M個の部分レンズそれぞれが、互いに等しい焦点距離を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のレンズ部品。
【請求項3】
各単位レンズに含まれる前記M個の部分レンズそれぞれが、前記第1方向および前記第2方向の双方に平行な面における断面形状が円弧である、ことを特徴とする請求項1に記載のレンズ部品。
【請求項4】
互いに垂直な第1方向および第2方向の双方に平行な面上に複数の単位画素組が2次元配列され、前記複数の単位画素組それぞれが前記第2方向に沿って配列されたN個の部分画素を含む表示パネルと、
前記表示パネルを物体面として該物体面上の画像を像面上に結像し、前記第2方向について前記単位画素組に対応して前記単位レンズが設けられている請求項1〜3の何れか1項に記載のレンズ部品と、
を備えることを特徴とする画像表示装置(ただし、Nは2以上の整数)。
【請求項5】
前記表示パネルの前記複数の単位画素組それぞれにおいて前記第2方向に沿って前記N個の部分画素の相互の間に遮蔽領域が存在し、
前記遮蔽領域の前記第2方向での幅が、前記レンズ部品の各単位レンズに含まれる前記M個の部分レンズそれぞれの光軸の前記第2方向での間隔と比べて等しいか又は小さい、
ことを特徴とする請求項4に記載の画像表示装置。
【請求項6】
M値が2であり、
前記レンズ部品の前記K個の単位レンズのうち前記第2方向について中央付近にある何れかの単位レンズに含まれる2個の部分レンズそれぞれの光軸の前記第2方向での中間位置と、前記表示パネルの前記複数の単位画素組のうち前記第2方向について中央付近にある何れかの単位画素組の中央位置とが、互いに等しい、
ことを特徴とする請求項4に記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記レンズ部品および前記表示パネルそれぞれが、両者を組み立てる際の位置合わせの為のマークを有する、ことを特徴とする請求項4に記載の画像表示装置。
【請求項1】
物体面上の画像を像面上に結像するレンズ部品であって、
各々第1方向に延在し共通の構成を有し、前記第1方向に垂直な第2方向に最小周期PLで並列配置されたK個の単位レンズを備え、
前記K個の単位レンズそれぞれが、前記第2方向の最小周期PL内において区分されるM個の部分レンズを含み、
各単位レンズに含まれる前記M個の部分レンズそれぞれが、前記第1方向および前記第2方向の双方に垂直な第3方向に平行であって互いに異なる光軸を有し、互いに接する箇所が凸形状をなし、前記物体面上の共通点を前記像面上の互いに異なる位置に結像する、
ことを特徴とするレンズ部品(ただし、K,Mは2以上の整数)。
【請求項2】
各単位レンズに含まれる前記M個の部分レンズそれぞれが、互いに等しい焦点距離を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のレンズ部品。
【請求項3】
各単位レンズに含まれる前記M個の部分レンズそれぞれが、前記第1方向および前記第2方向の双方に平行な面における断面形状が円弧である、ことを特徴とする請求項1に記載のレンズ部品。
【請求項4】
互いに垂直な第1方向および第2方向の双方に平行な面上に複数の単位画素組が2次元配列され、前記複数の単位画素組それぞれが前記第2方向に沿って配列されたN個の部分画素を含む表示パネルと、
前記表示パネルを物体面として該物体面上の画像を像面上に結像し、前記第2方向について前記単位画素組に対応して前記単位レンズが設けられている請求項1〜3の何れか1項に記載のレンズ部品と、
を備えることを特徴とする画像表示装置(ただし、Nは2以上の整数)。
【請求項5】
前記表示パネルの前記複数の単位画素組それぞれにおいて前記第2方向に沿って前記N個の部分画素の相互の間に遮蔽領域が存在し、
前記遮蔽領域の前記第2方向での幅が、前記レンズ部品の各単位レンズに含まれる前記M個の部分レンズそれぞれの光軸の前記第2方向での間隔と比べて等しいか又は小さい、
ことを特徴とする請求項4に記載の画像表示装置。
【請求項6】
M値が2であり、
前記レンズ部品の前記K個の単位レンズのうち前記第2方向について中央付近にある何れかの単位レンズに含まれる2個の部分レンズそれぞれの光軸の前記第2方向での中間位置と、前記表示パネルの前記複数の単位画素組のうち前記第2方向について中央付近にある何れかの単位画素組の中央位置とが、互いに等しい、
ことを特徴とする請求項4に記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記レンズ部品および前記表示パネルそれぞれが、両者を組み立てる際の位置合わせの為のマークを有する、ことを特徴とする請求項4に記載の画像表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【公開番号】特開2013−83860(P2013−83860A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224731(P2011−224731)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(599109906)住友電工ファインポリマー株式会社 (203)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(599109906)住友電工ファインポリマー株式会社 (203)
【Fターム(参考)】
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