説明

レンズ鏡筒

【課題】好適な特性を有するレンズ鏡筒を提供する。
【解決手段】
第1の光学系を備える第1の筒部材(12)と、前記第1の光学系とは異なる第2の光学系を備え、前記第1の筒部材に対して相対移動可能な第2の筒部材(22)とを含み、前記第2の筒部材は、波長1000nm以上1700nm未満の光の平均反射率が波長400nm以上700nm未満の光の平均反射率より高く、前記第1の筒部材に覆われる第1の位置と、前記第1の筒部材から露出する第2の位置とに移動可能な移動面(24,44,54,64)が、前記第2の筒部材の外周の少なくとも一部に備えられているレンズ鏡筒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ鏡筒等に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラに備えられるレンズ鏡筒等の光学装置は、太陽光のような赤外線を含む光線を多量に照射される環境下で使用される場合がある。従来技術に係る光学装置では、太陽光が多量に照射される環境下で用いられた場合、照射熱によって光学装置の温度が上昇するという問題が発生している。
【0003】
レンズ鏡筒等の温度上昇を防止するための従来技術としては、例えば筐体の表面に可逆感温変色層を備えた光学装置が知られている(特許文献1等参照)。しかし、従来技術に係る光学装置は、照射熱による光学装置の温度上昇を十分に抑制することができず、また、温度上昇を防止するために、外装の色が大きく変化してしまうという問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−49370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、好適な特性を有するレンズ鏡筒等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るレンズ鏡筒は、
第1の光学系を備える第1の筒部材(12)と、
前記第1の光学系とは異なる第2の光学系を備え、前記第1の筒部材に対して相対移動可能な第2の筒部材(22)とを含み、
前記第2の筒部材は、波長1000nm以上1700nm未満の光の平均反射率が波長400nm以上700nm未満の光の平均反射率より高く、前記第1の筒部材に覆われる第1の位置と、前記第1の筒部材から露出する第2の位置とに移動可能な移動面(24,44,54,64)が、前記第2の筒部材の外周の少なくとも一部に備えられていることを特徴とする。
【0007】
また、例えば、前記移動面(24)は、波長400nm以上700nm未満の光の反射率が15%以下であり、波長1000nm以上1700nm未満の光の反射率が50%以上であってもよい。
【0008】
また、例えば、前記移動面(44)は、波長400nm以上700nm未満の光の反射率が20%以上60%以下であり、波長1000nm以上1700nm未満の光の反射率が60%以上であってもよい。
【0009】
また、例えば、前記移動面(54)は、波長400nm以上700nm未満の光の反射率が60%以上80%以下であり、波長1000nm以上1700nm未満の光の反射率が80%以上であってもよい。
【0010】
また、例えば、前記移動面(64)は、Lab表色系における明度Lが40未満であって、波長900nm以上1700nm未満の光の反射率が30%以上であってもよい。
【0011】
また、例えば、前記移動面(64)は、Lab表色系における明度Lが40以上70未満であって、波長900nm以上1700nm未満の光の反射率が50%以上であってもよい。
【0012】
また、例えば、前記移動面(64)は、Lab表色系における明度Lが70以上であって、波長900nm以上1700nm未満の光の反射率が70%以上であってもよい。
【0013】
また、例えば、前記移動面には、前記第2の光学系の外側に備えられた基材の外側に形成された塗膜(32,34,50,52,62)が備えられていてもよい。
【0014】
また、例えば、前記塗膜は、Al,Au,Ag,Ni,Cuのうちから選択された少なくとも1つの元素を含有してもよい。
【0015】
前記塗膜は、板状もしくは箱形状の外形状の金属粉(38)を有してもよい。
【0016】
前記基材は、ポリカーボネート、マグネシウム系合金、アルミニウム系合金、アルミニウム、カーボン・樹脂複合材料から選択された少なくとも1つを有してもよい。
【0017】
前記塗膜は、Si,Al,Ti,Fe,Zn,Co,Mg,Ca,Sr,Ba,Cuのうちから選択された少なくとも1つの元素を含有してもよい。
【0018】
なお上述の説明では、本発明をわかりやすく説明するために実施形態を示す図面の符号に対応づけて説明したが、本発明は、これに限定されるものでない。後述の実施形態の構成を適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替させてもよい。さらに、その配置について特に限定のない構成要件は、実施形態で開示した配置に限らず、その機能を達成できる位置に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係るレンズ鏡筒の全体図である。
【図2】図2は、図1に示すレンズ鏡筒に備えられる第2筒部材の断面図である。
【図3】図3は、図2に示す移動面の拡大模式図である。
【図4A】図4Aは、図1等に示す移動面と、従来技術に係るレンズ鏡筒に備えられる外装面の分光反射率を表すグラフである。
【図4B】図4Bは、図1等に示す移動面を構成する第2層の分光透過率を表すグラフである。
【図5】図5は、本発明の第2実施形態に係るレンズ鏡筒に備えられる第2筒部材の断面図である。
【図6】図6は、図5に示す移動面と、従来技術に係るレンズ鏡筒に備えられる外装面の分光反射率を表すグラフである。
【図7】図7は、本発明の第3実施形態に係るレンズ鏡筒に備えられる第2筒部材の断面図である。
【図8】図8は、図7に示す移動面と、従来技術に係るレンズ鏡筒に備えられる外装面の分光反射率を表すグラフである。
【図9】図9は、本発明の第4実施形態に係るレンズ鏡筒に備えられる第2筒部材の断面図である。
【図10】図10は、図9に示す遮熱塗膜に光が照射された場合の照射光波長と反射率との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
第1実施形態
図1(A)は、本発明の第1実施形態に係るレンズ鏡筒10の全体図である。レンズ鏡筒10は、第1筒状部12と第2筒状部22とを有している。第1筒状部12および第2筒状部22は、無底の略円筒形状を有しており、第1筒状部12の中心軸と、第2筒状部22の中心軸とが略一致するように配置される。
【0021】
本実施形態に係る第1筒状部12の一部は、第2筒状部22を内部に収納できるように、第2筒状部22の外径より大きい内径を有する。また、第1および第2筒状部12,22の中心軸に沿う方向には、光が通過可能な光通過領域15が形成されている。
【0022】
第1および第2筒状部12,22の内部に形成されている光通過領域15には、第1光学レンズ群と第2光学レンズ群とが配置されている。すなわち、第1筒状部12には、第1光学レンズ群が備えられており、第2筒状部22には、第1光学レンズ群とは異なる第2光学レンズ群が備えられている。第2筒状部22は、第1筒状部12に対して相対移動自在に取り付けられているため、第2筒状部22に備えられる第2の光学系は、第1筒状部12に備えられる第1の光学系に対して、レンズ鏡筒10の光軸方向に沿って相対移動することができる。
【0023】
光通過領域15に配置される第1および第2光学レンズ群は、レンズ鏡筒10の一方の端部である被写体側の端部10aから入射した光を、レンズ鏡筒10の他方の端部である撮像面側の端部10bに、出射することができる。また、本実施形態に係るレンズ鏡筒10は、被写体側から入射した光の像を、当該光を撮像面側に出射した後の所定の位置で、形成することができる。
【0024】
レンズ鏡筒10の撮像面側の端部10bには、不図示のカメラ本体部が取り付けられる。カメラ本体部は、レンズ鏡筒10に備えられる第1および第2光学レンズ群によって形成される光の像を記録する記録媒体等を有する。また、レンズ鏡筒10の被写体側の端部10aには、レンズ鏡筒10の光通過領域15に不要な光が入射することを防止するために、レンズフードが取り付けられても良い。
【0025】
なお、実施形態では主としてレンズ鏡筒10を例に挙げて説明を行うが、本発明に係るレンズ鏡筒としては実施形態に示すものに限定されない。本発明に係るレンズ鏡筒を備える光学装置としては、レンズ鏡筒10の他に、例えばレンズフード、カメラボディおよびカメラ(レンズ鏡筒とカメラとが一体化したもの)等が挙げられる。また、本発明に係るレンズ鏡筒はスチルカメラや、スチルカメラに備えられるレンズ鏡筒に限定されるものではなく、ビデオカメラ、テレコンバータ、望遠鏡、双眼鏡、単眼鏡に備えられるものを含む。
【0026】
また、レンズ鏡筒10には、レンズ鏡筒10に備えられる光学レンズ群13の焦点調整を行うためのフォーカス環16と、レンズ鏡筒10の倍率調整を行うためのズーム環14が取り付けられている。フォーカス環16の回転位置は、第1筒状部12に備えられる第1光学レンズ群の配置と連動している。撮影者は、フォーカス環16を回転させることによって、第1光学レンズ群の一部である焦点調整レンズの移動を操作し、レンズ鏡筒10の焦点調整を行うことができる。
【0027】
ズーム環14の回転位置は、第1筒状部12と第2筒状部22の相対位置と連動している。撮影者は、ズーム環14を回転させることによって、第1筒状部12に備えられる第1光学レンズ群と、第2筒状部22に備えられる第2光学レンズ群とを相対移動させ、レンズ鏡筒10の倍率調整を行うことができる。
【0028】
図1(A)と図1(B)とは、いずれも本実施形態に係るレンズ鏡筒10を表したものである。図1(A)は、第2筒状部22の一部が、第1筒状部12の内部から露出した状態を表しており、図1(B)は、第2筒状部22が、第1筒状部12の内部に収納された状態を表している。
【0029】
第2筒状部22は、レンズ鏡筒10の光軸方向に沿って、第1筒状部12に対して相対移動することができる。第2筒状部22の外周の少なくとも一部には、図1(A)においてハッチングで示すように、図1(B)に示す第1の位置と図1(A)に示す第2の位置とに移動可能な移動面24が備えられている。移動面24は、図1(B)に示す第1の位置では、第1筒状部12に覆われている。また移動面24は、図1(A)に示す第2の位置では、第1筒状部12から露出する。
【0030】
移動面24は、例えば野外等でレンズ鏡筒10を使用する場合において、図1(A)に示すように、第1筒状部12から露出して直接日射等を受ける場合があるため、日射反射率を高められている。図4Aは、図1等に示す移動面24と、第1参考例に係るレンズ鏡筒に備えられる比較例にかかる外装面の分光反射率を表すグラフである。図4Aでは、本実施形態に係る移動面24の一例について測定した分光反射率の実測データを、実線25で示し、第1参考例に係る外装面の概算データを、点線81で示す。
【0031】
図4Aにおいて実線25で示すように、移動面24は、波長400nm以上700nm未満の光の反射率が15%以下であり、波長1000nm以上1700nm未満の光の反射率が50%以上である。ここで、波長400nm以上700nm未満の光は、人間が視認できる可視領域に含まれる波長の光である。また、波長1000nm以上1700nm未満の光は、人間は視認できないが、物体に熱エネルギーを与える赤外領域に含まれる波長の光である。
【0032】
すなわち、移動面24は、可視領域に含まれる波長400nm以上700nm未満の光の反射率が低いため、可視光を反射しにくく、可視光の反射率が高い外装面を有するレンズ鏡筒より目立ちにくい。イベントを撮影する時に用いるレンズ鏡筒は、他の観客の視野を妨害したり、イベントの美的外観を損ねたりすることがないように、目立たないことが好ましく、移動面24を備えるレンズ鏡筒10は、このような使用に適している。
【0033】
また、移動面24は、赤外領域に含まれる波長1000nm以上1700nm未満の光を反射する反射率が高いため、日射等によってレンズ鏡筒10の温度が上昇することを防止できる。ここで、可視領域の光の反射率が低い表面は、一般的には、赤外領域の光の反射率も低い傾向にある。したがって、従来技術に係るレンズ鏡筒では、可視領域の光の反射率を抑えて外装を目立たなくすると、赤外領域の光の反射率を抑制することが困難であった。
【0034】
すなわち、従来技術にかかるレンズ鏡筒に備えられる外装面は、図4Aにおいて点線で示すように、可視領域の光の反射率も、赤外領域の光の反射率も、両方とも低いため、日射等による温度上昇を防止することが困難であった。
【0035】
しかしながら、移動面24を備える本実施形態に係るレンズ鏡筒10は、可視領域の光の反射率が低く、赤外領域の光の反射率が高いため、外装を目立たなくするとともに、日射等によるレンズ鏡筒10の温度上昇を抑制することが可能である。したがって、本実施形態に係るレンズ鏡筒10は、野外イベント等のように、強い日射を受ける環境で使用された場合でも、レンズ鏡筒10の温度上昇を防止できる。また、温度上昇を防止することによって、レンズ鏡筒10の表面が熱せられて撮影者が素手で触れることが難しくなったり、レンズ鏡筒10の内部に備えられる光学部品が、熱による悪影響を受ける現象を、防止することができる。
【0036】
図2は、図1(A)に示すレンズ鏡筒10における第2筒状部22の断面図である。移動面24の構成としては、特に限定されないが、本実施形態に係る第2筒状部22に備えられる移動面24は、光通過領域15の外側に備えられた基材36の外側に形成される第1層32と、第1層32の外側に形成される第2層34を有している。なお、第2筒状部22の内部に形成される光通過領域15には、第2レンズ群が備えられるが、図2において、第2レンズ群は、図示を省略している。
【0037】
移動面24を構成する各層における光の反射率は、特に限定されないが、第1層32は、第2層34よりも可視光の反射率が高いことが好ましい。一般的には、可視領域の光の反射率が高い層のほうが、赤外領域の光の反射率も高い傾向にあるため、可視光の反射率が高い第1層32を有する移動面24は、容易に赤外領域の反射率を高めることができる。
【0038】
また、第1層32は、その外側の表面が第2層34に覆われているため、たとえ可視領域の光の反射率が高くても、移動面24における可視領域の光の反射率は、低く抑えることができる。すなわち、第2層34における可視領域の光の反射率を、第1層32における可視領域の光の反射率より低くすることによって、可視領域の光の反射率が低く、赤外領域の光の反射率が高い移動面24を形成することができる。
【0039】
さらに、第2層34は、少なくとも波長1000nm以上1700nm未満の光の反射率が、第1層32より低くても良い。赤外領域の光を反射する機能を、最外表面である第2層34より、第2層34の内側に形成される第1層32に持たせることによって、可視領域の光の反射率が低く、赤外領域の光の反射率が高い移動面24を、容易に形成することができる。
【0040】
第2層34は、可視領域の光の反射率が低いことが好ましく、波長400nm以上700nm未満の光の反射率が、10%以下であることが好ましい。可視光の反射率が低い第2層34を、第2筒状部22の最外面に配置しているため、レンズ鏡筒10は、イベント会場等において目立ちにくい。
【0041】
図3は、図2に示す移動面24の拡大模式図である。光通過領域15の外側に備えられる基材36は、第2筒状部22の内部に備えられる第2光学レンズ群等の光学部品を支持するために、適切な剛性を有する材料によって構成される。基材36は、軽量であって剛性の高い材料を用いて構成されることが好ましく、例えば、ポリカーボネート、マグネシウム合金またはマグネシウム、アルミニウム合金またはアルミニウム、カーボン・樹脂複合材料等の材料を用いて構成することができる。
【0042】
基材36の外側に形成される第1層32は、基材36の表面に、たとえばスプレー塗布等によって形成される塗膜によって構成される。本実施形態に係る第1層32には、移動面24の反射率を向上させるために、金属粒子38が含まれる。
【0043】
第1層32に含まれる金属粒子38としては、Al,Au,Ag,Ni,Cuのうちから選択された元素を含有することが好ましく、AlもしくはAl系合金を含むことが特に好ましい。これらの元素を含有する金属粒子38は、広い波長領域において光の反射率が高いため、第1層32の反射率を高めることができ、また、第1層32を含む移動面24の反射率のうち、赤外領域の光に対する反射率を高めることができる。
【0044】
第1層32に含まれる金属粒子38の形状は、特に限定されないが、金属粒子38が板状もしくは箱形状の外形状を有することが、第1層32の反射率を向上させる観点から好ましい。本実施形態に係る第1層32は、金属粒子38の他に、金属粒子38を取り囲むように層を形成している樹脂を有する。すなわち、第1層32は、樹脂のモノマーの中に、金属粒子38を分散させた塗料を、基材36の表面に塗布等することによって、形成することができる。なお、第1層32は金属粒子38を含む塗料以外にも、赤外領域の反射率が第2層34よりも高い塗料、例えば白色系あるいは黄色系あるいは赤色系などの塗料を用いて第1層32とすることも可能である。
【0045】
図3に示すように、第1層32の外側には、第2層34が形成されている。第2層34には、波長400nm以上700nm未満の光の反射率を抑制するために、濃色系の顔料(濃色系とは、例えば、黒色、濃灰色、紺色等である)が含まれることが好ましい。
【0046】
また、第2層34は、Si,Al,Ti,Fe,Zn,Co,Mg,Ca,Sr,Ba,Cuのうちから選択された少なくとも1つの元素を含有してもよい。本実施形態に係る第2層34は、濃色遮熱顔料40を含んでおり、第2層34に含まれる濃色遮熱顔料40としては、Si,Al,Ti,Fe,Zn,Co,Mg,Ca,Sr,Ba,Cuやこれらの酸化物等を、第2層34に含まれる樹脂に合わせて用いることができる。
【0047】
本実施形態に係る第2層34は、濃色遮熱顔料40や各種添加剤の他に、濃色遮熱顔料40を取り囲むように層を形成している樹脂を有する。第2層34は、樹脂のモノマーの中に、濃色遮熱顔料40や各種の添加剤を分散させた塗料を、第1層32の表面に塗布等することによって、形成することができる。
【0048】
図1(A)に示すように、本実施形態に係るレンズ鏡筒10は、波長1000nm以上1700nm未満の光の平均反射率が波長400nm以上700nm未満の光の平均反射率より高い移動面24が備えられる第2筒状部22を有する。また、移動面24は、波長400nm以上700nm未満の光の反射率が15%以下であり、波長1000nm以上1700nm未満の光の反射率が50%以上である。移動面24は、可視光領域の光の反射率が低く、赤外領域の光の反射率が高いため、レンズ鏡筒10の外観を目立たなくするとともに、日射等によるレンズ鏡筒10の温度上昇を抑制することが可能である。
【0049】
したがって、本実施形態に係るレンズ鏡筒10は、野外イベント等のように、強い日射を受ける環境で使用された場合でも、レンズ鏡筒10の温度上昇を防止できる。また、温度上昇を防止することによって、レンズ鏡筒10の表面が熱せられて撮影者が素手で触れることが難しくなったり、レンズ鏡筒10の内部に備えられる光学部品が、熱により悪影響を受ける現象を、防止することができる。
【0050】
移動面24は、図3に示すように、基材36の外側に形成されており金属粒子38を含む第1層32と、第1層32の外側に形成されており酸化物等からなる濃色遮熱顔料40を含む第2層34と、を有することが好ましい。第1層32に、広い波長領域において光の反射率が高い金属粒子38を含有させる。また、最外表面である第2層34には、可視領域の光に対しては反射率・透過率とも低く可視領域の光を吸収するが、赤外領域の光の透過率を高くできる濃色遮熱顔料40を含有させる。
【0051】
図4Bは、第2層34の分光透過率のグラフであり、ガラス基板に第2層34のみを塗って、分光透過率を測定した結果を示すものである。すなわち、図4Bは、第2層34のみの透過率を表している。このように、基材36の外側に、金属粒子38を含む第1層32と、濃色遮熱顔料40を含む第2層34を形成することにより、可視光領域の光の反射率が低く、赤外領域の光の反射率が高い、図4Aの分光反射率のグラフにみるような、理想的移動面24を実現することができる。なお、第2層34は、赤外領域の光を吸収しにくい性質を有していればよく、赤外領域の光を反射する性質の塗膜によって構成することもできる。
【0052】
移動面24に含まれる第1層32および第2層34は、塗布により形成された塗膜であることが好ましい。このような移動面24は、基材36の表面に塗料を塗布することによって容易に形成することができるため、塗膜によって構成される移動面24を備えるレンズ鏡筒10は、製造が容易であり、生産性に優れている。
【0053】
第2実施形態
図6は、本発明の第2実施形態に係るレンズ鏡筒の第2筒状部に備えられる移動面44と、第2参考例に係るレンズ鏡筒に備えられる外装面の分光反射率を表すグラフである。図6では、第1実施形態に係る移動面44の概算データを実線33で示し、第2参考例に係る比較例の外装面の概算データを、点線83で示す。なお、第2実施形態に係るレンズ鏡筒は、移動面44の構成(図5)および分光反射率(図6)が、第1実施形態に係る移動面24の構成(図2および図3)および分光反射率(図4A)と異なるが、その他は第1実施形態に係るレンズ鏡筒10と同様である。
【0054】
図6において実線43で示すように、第2実施形態に係る移動面44は、波長400nm以上700nm未満の光の反射率が60%以上80%以下であり、波長1000nm以上1700nm未満の光の反射率が80%以上である。
【0055】
すなわち、移動面44は、赤外領域に含まれる波長1000nm以上1700nm未満の光を反射する反射率が、可視光領域に含まれる波長400nm以上700nm未満の光の反射率より高い。したがって、移動面44を備える第2筒状部は、当該移動面44と可視光反射率が同等である従来技術にかかる外装面を備えるレンズ鏡筒と比較して、日射等によってレンズ鏡筒の温度が上昇することをより効果的に防止できる。
【0056】
図5(A)は、第2実施形態に係るレンズ鏡筒における第2筒状部の断面図であり、図5(B)は、図5(A)に示す移動面44の拡大模式図である。図5(A)に示すように、本実施形態に係る第2筒状部に備えられる移動面44は、光通過領域15の外側に備えられた基材36の外側に形成されるメタリック遮熱塗膜42を有している。
【0057】
基材36の外側に形成されるメタリック遮熱塗膜42は、基材36の表面に、たとえばスプレー塗布等によって形成される塗膜によって構成される。図5(B)に示すように、本実施形態に係るメタリック遮熱塗膜42には、移動面44の反射率を向上させるために、金属粒子38と赤外線反射顔料46が含まれる。
【0058】
メタリック遮熱塗膜42に含まれる金属粒子38としては、Al,Au,Ag,Ni,Cuのうちから選択された元素を含有することが好ましく、AlもしくはAl系合金を含むことが特に好ましい。これらの元素を含有する金属粒子38は、広い波長領域において光の反射率が高いため、移動面44の反射率を、全体的に高めることができる。
【0059】
メタリック遮熱塗膜42に含まれる金属粒子38の形状は、特に限定されないが、金属粒子38が板状もしくは箱形状の外形状を有することが、移動面44の反射率を向上させる観点から好ましい。
【0060】
メタリック遮熱塗膜42には、Si,Al,Ti,Fe,Zn,Co,Mg,Ca,Sr,Ba,Cuのうちから選択された少なくとも1つの元素を含有する赤外線反射顔料46が含まれることが好ましい。本実施形態に係るメタリック遮熱塗膜42は、酸化珪素またはTiOを主成分とする赤外線反射顔料46を含んでいることが好ましく、赤外領域の光の反射率が高い。ただし、メタリック遮熱塗膜42に含まれる赤外線反射顔料46としては、酸化珪素やTiOを主成分とするものに限定されず、Si,Al,Ti,Fe,Zn,Co,Mg,Ca,Sr,Ba,Cuの酸化物等を、メタリック遮熱塗膜42に含まれる樹脂や着色料等に合わせて用いることができる。
【0061】
本実施形態に係るメタリック遮熱塗膜42は、金属粒子38および赤外線反射顔料46の他に、金属粒子38および赤外線反射顔料46を取り囲むように層を形成している樹脂を有する。すなわち、メタリック遮熱塗膜42は、樹脂のモノマーの中に、金属粒子38および赤外線反射顔料46を分散させた塗料を、基材36の表面に塗布等することによって、形成することができる。
【0062】
ここで、従来技術に係るレンズ鏡筒に用いられる外装面のうち、可視領域に含まれる波長400nm以上700nm未満の光の反射率が60%以上80%以下となる外装面としては、外装面の表面に形成される塗膜に金属粒子を含むものが知られている。図6における点線83は、金属粒子を含む外装面(第2参考例)の分光反射率を表している。第2参考例に係る外装面は、塗膜に金属粒子を含んでおり、可視光の反射率については、本実施形態に係るメタリック遮熱塗膜42を有する移動面44と同等である。
【0063】
第2参考例に係る外装面に含まれる金属粒子は、塗膜等を構成する他の材料である樹脂等と比較して、可視領域の光の反射率も、赤外領域の光の反射率も高い傾向にある。したがって、塗膜に金属粒子を含む外装面は、図6において点線83で示す分光反射率が、概ね60%以上であり、高い反射率を有する。しかし、第2参考例に係る外装面は、金属元素の電子状態等に起因して、図6において点線83で示すように、波長800nm〜900nm程度の光の反射率が、その周辺の領域より低くなるという問題を有している。
【0064】
本実施形態に係る移動面44は、図6において実線43で示すように、波長800nm以上900nm未満の光の反射率が、波長700nmの光の反射率より高く、従来技術に係る外装面が有する問題が解決されている。すなわち、メタリック遮熱塗膜42を有する移動面44は、金属粒子38に加えて赤外線反射顔料46を有するため、波長800nm〜900nm程度の光の反射率がその周辺の領域より低くなるという問題を解決している。また、メタリック遮熱塗膜42を有する移動面44は、その他の赤外領域である波長1000nm以上1700nm未満の光の反射率についても、第2参考例に係る外装面より高い。
【0065】
したがって、本実施形態に係るレンズ鏡筒は、野外イベント等のように、強い日射を受ける環境で使用された場合でも、レンズ鏡筒の温度上昇を効果的に防止できる。また、温度上昇を防止することによって、レンズ鏡筒の表面が熱せられて撮影者が素手で触れることが難しくなったり、レンズ鏡筒の内部に備えられる光学部品が、熱により悪影響を受ける現象を、防止することができる。
【0066】
移動面44に備えられるメタリック遮熱塗膜42は、図5(B)に示すように、基材36の外側に形成されており、金属粒子38と、酸化物等からなる赤外線反射顔料46とを含むことが好ましい。金属粒子38は、広い波長領域において光の反射率を向上させ、赤外線反射顔料46は赤外領域の光の反射率を選択的に向上させるため、メタリック遮熱塗膜42は、波長1000nm以上1700nm未満の光の反射率が80%以上であり、赤外領域の光の反射率が非常に高い移動面44を実現できる。
【0067】
移動面44に含まれるメタリック遮熱塗膜42は、塗布により形成された塗膜であるため、このような移動面44は、基材36の表面に塗料を塗布することによって容易に形成することができる。したがって、塗膜によって構成される移動面44を備えるレンズ鏡筒は、製造が容易であり、生産性に優れている。ただし、移動面44の製造方法としては、塗膜形成を行うものに限定されない。
【0068】
第3実施形態
図7(A)は、本発明の第3実施形態に係るレンズ鏡筒の断面図であり、図7(B)は、図7(A)に示す移動面54の拡大模式図である。第2実施形態に係るレンズ鏡筒は、移動面54がメタリック遮熱塗膜42の代わりにクリーム色遮熱塗膜52を有する点で、第2実施形態に係るレンズ鏡筒と異なるが、その他の構成は、第2実施形態に係るレンズ鏡筒と同様である。
【0069】
図7(A)に示すように、本実施形態に係る移動面54は、光通過領域15の外側に備えられた基材36の外側に形成されるクリーム色遮熱塗膜52を有している。基材36の外側に形成されるクリーム色遮熱塗膜52は、基材36の表面に、たとえばスプレー塗布等によって形成される塗膜によって構成される。図7(B)に示すように、本実施形態に係るクリーム色遮熱塗膜52には、移動面54の反射率を向上させる赤外線反射顔料46が含まれる。
【0070】
本実施形態に係るクリーム色遮熱塗膜52は、酸化珪素またはTiOを主成分とする赤外線反射顔料46を含んでいることが好ましく、赤外領域の光の反射率が高い。ただし、クリーム色遮熱塗膜52に含まれる赤外線反射顔料46としては、酸化珪素やTiOを主成分とするものに限定されず、Si,Al,Ti,Fe,Zn,Co,Mg,Ca,Sr,Ba,Cuの酸化物等を、クリーム色遮熱塗膜52に含まれる樹脂や他の顔料等に合わせて用いることができる。
【0071】
本実施形態に係るクリーム色遮熱塗膜52は、赤外線反射顔料46の他に、赤外線反射顔料46を取り囲むように層を形成している樹脂や、移動面54の色をクリーム色にするための顔料を有する。すなわち、クリーム色遮熱塗膜52は、樹脂のモノマーの中に、赤外線反射顔料46および他の顔料を分散させた塗料を、基材36の表面に塗布等することによって、形成することができる。
【0072】
図8は、図7に示す移動面54と、第3参考例に係るレンズ鏡筒に備えられる外装面の分光反射率を表すグラフである。図8では、第3実施形態に係る移動面54の概算データを実線55で示し、第3参考例に係る外装面の概算データを、点線85で示す。
【0073】
図8において実線55で示すように、移動面54は、波長400nm以上700nm未満の光の反射率が20%以上60%以下であり、波長1000nm以上1700nm未満の光の反射率が60%以上である。
【0074】
移動面54は、赤外領域に含まれる波長1000nm以上1700nm未満の光を反射する反射率が、可視領域に含まれる波長400nm以上700nm未満の光の反射率より高い。したがって、移動面54を備える第2筒状部は、当該移動面54と可視領域の光の反射率が同等である従来技術にかかる外装面を備えるレンズ鏡筒と比較して、日射等によってレンズ鏡筒の温度が上昇することをより効果的に防止できる。
【0075】
第3参考例に係るレンズ鏡筒に備えられる外装面は、基材と、基材の表面に形成されたクリーム色塗膜によって構成される。クリーム色塗膜は、可視領域の光の反射率についてはクリーム色遮熱塗膜52と同等である。しかし、クリーム色塗膜を有する外装面は、図8において点線85で示すように、赤外領域に含まれる波長1000nm以上1700nm未満の光を反射する反射率が、可視領域に含まれる波長400nm以上700nm未満の光の反射率より低い。そのため、このような外装面を備えるレンズ鏡筒は、日射による温度上昇を十分に抑制できないという問題を有している。
【0076】
本実施形態に係る移動面54は、図8おいて実線55で示すように、赤外領域に含まれる波長1000nm以上1700nm未満の光を反射する反射率が、可視光領域に含まれる波長400nm以上700nm未満の光の反射率より高く、従来技術に係る外装面が有する問題が解決されている。すなわち、クリーム色遮熱塗膜52を有する移動面54は、赤外線反射顔料46を有するため、赤外領域に含まれる波長1000nm以上1700nm未満の光の反射率が、第3参考例に係る外装面より高い。
【0077】
このように、第3実施形態に係るレンズ鏡筒は、移動面54を備える第2筒状部を含むため、第2実施形態に係るレンズ鏡筒と同様に、日射等によるレンズ鏡筒の温度上昇を、効果的に防止できる。また、第3実施形態に係るレンズ鏡筒は、第2実施形態に係るレンズ鏡筒と同様の効果を有する。なお、図7(B)に示すクリーム色遮熱塗膜52には、赤外領域の光の反射率を高めるために、図5(B)に示す金属粒子38が含まれてもよい。
【0078】
第4実施形態
図9は、本発明の第4実施形態に係るレンズ鏡筒の第2筒状部に備えられる移動面64の拡大模式図である。第4実施形態に係るレンズ鏡筒は、移動面64がメタリック遮熱塗膜42の代わりに遮熱塗膜62を有する点で、第2実施形態に係るレンズ鏡筒と異なるが、その他の構成は、第2実施形態に係るレンズ鏡筒と同様である。
【0079】
図9に示すように、移動面64は、基材36の外側に形成された遮熱塗膜62を有する。遮熱塗膜62は、Si,Al,Ti,Fe,Zn,Co,Mg,Ca,Sr,Ba,Cuを含む赤外線反射顔料46を含有するため、赤外領域の光を効果的に反射することができる。さらに、遮熱塗膜62に含まれる赤外線反射顔料46の形状が、板状もしくは箱形形状であれば、遮熱塗膜62は、赤外領域の光をより効果的に反射することができる。図9に示す赤外線反射顔料46が、遮熱塗膜に入射される光のうち、赤外領域に含まれる波長の光(赤外線)を効果的に反射するからである。なお、遮熱塗膜62は、赤外線を効率的に反射する赤外線反射顔料46の他に、遮熱塗膜62の色を変えるための顔料または染料を含んでいてもよい。これによって、遮熱塗膜62に赤外線を反射する機能を持たせつつ、遮熱塗膜62の色を任意の色とすることができる。
【0080】
遮熱塗膜62が形成されている移動面64は、一般的な他の塗膜等の材料表面によって形成されており移動面64と同程度の明度を有する他の外装面に比べて、物体に熱エネルギーを与える光を反射する反射率が高い。例えば、移動面64は、そのLab表色系における明度Lが40未満である場合は、波長900nm以上1700nm未満の光の反射率が30%以上である。
【0081】
また、例えば、移動面64は、そのLab表色系における明度Lが40以上70未満である場合は、波長900nm以上1700nm未満の光の反射率が50%以上である。また、例えば、移動面64は、そのLab表色系における明度Lが70以上である場合は、波長900nm以上1700nm未満の光の反射率が70%以上である。
【0082】
図10は、遮熱塗膜に光が照射された場合の照射光波長と反射率との関係を示す図である。
【0083】
図10において、塗膜a1は、可視領域に含まれる波長400nm以上800nm以下の光の反射率が約10%であり、黒色に近い色に見える塗膜である。塗膜bは、可視領域に含まれる波長400nm以上800nm以下の光の反射率が約25%であり、灰色に見える塗膜である。塗膜cは、可視領域に含まれる波長400nm以上800nm以下の光の反射率が約65%であり、白色に近い色に見える塗膜である。
【0084】
赤外領域に含まれる波長900nm以上1700nm未満の光に対して、塗膜a1は30%以上(約45%)の反射率を有しており、塗膜bは50%以上(約60%)の反射率を有しており、塗膜cは70%以上(約85%)の反射率を有しているため、塗膜a1、塗膜bおよび塗膜cは、いずれも遮熱塗膜62である。
【0085】
また、塗膜a2も、可視領域に含まれる波長400nm以上800nm以下の光の反射率が10%であり、赤外領域に含まれる波長900nm以上1700nm未満の平均反射率が30%以上(約35%)であり、遮熱塗膜62である。平均反射率は以下の数式1により計算することができる。
【0086】
【数1】

【0087】
数式1において、Rλ(i)は各波長の反射率、λ(i)はλ(1)=900,λ(2)=910,λ(3)=920,・・・λ(n)=1700nmとする。
【0088】
遮熱塗膜62は、図10に示す塗膜a1、a2、b、cに限定されるものではなく、Lab表色系における明度Lが40未満であって波長900nm以上1700nm未満の光の反射率が30%以上であるか、Lab表色系における明度Lが40以上70未満であって波長900nm以上1700nm未満の光の反射率が50%以上であるか、Lab表色系における明度Lが70以上であって波長900nm以上1700nm未満の光の反射率が70%以上であればよい。
【0089】
さらに好ましくは、遮熱塗膜62は、赤外領域の少なくとも一部の波長領域において反射率が低くてもよいが、赤外領域に含まれる波長900nm以上1700nm未満の光の平均反射率が、可視領域に含まれる波長400nm以上800nmの反射率よりも高いことが好ましい。
【0090】
例えば、遮熱塗膜62は、赤外領域に含まれる波長900nm以上1700nm未満の光の平均反射率が、可視領域に含まれる波長400nm以上800nm以下の光の平均反射率よりも10%以上高いことが好ましい。また、例えば、遮熱塗膜62は、赤外領域に含まれる波長900nm以上1700nm未満の光の平均反射率が、可視領域に含まれる波長400nm以上800nm以下の光の平均反射率よりも20%以上高いことが更に好ましい。
【0091】
図10において、塗膜dは、可視領域に含まれる波長400nm以上800nm以下の光の反射率が10%であり、赤外領域に含まれる波長900nm以上1700nm未満の光の平均反射率が30%未満(約10%)であり、遮熱塗膜ではない比較例の黒色の塗膜である。
【0092】
塗膜a1と塗膜dとは、可視領域に含まれる波長400nm以上800nm以下の光に対しては、ほぼ同じ反射率(約10%)である。しかし、赤外領域に含まれる波長900nm以上1700nm未満の光に対しては、塗膜a1の反射率(約45%)は、塗膜dの約4.5倍の反射率になっている。このため、塗膜a1が形成された光学機器は、塗膜dが形成された光学機器と同様に黒色に近く見えるが、例えば、炎天下(太陽光が多く照射される状態)で使用されても、赤外領域の光の反射率が高いので、塗膜dが形成された光学機器よりも温度上昇が抑えられる。
【0093】
このように、図9に示す移動面64は、物体に照射された場合に熱エネルギーに変換される光を反射する反射率が高い。したがって、例えば太陽光が多量に照射される環境下で用いられた場合でも、本実施形態に係るレンズ鏡筒は、第2筒状部の温度上昇を効果的に防止することができる。また、第2筒状部の温度上昇が防止されるため、レンズ鏡筒を使用する撮影者等は、レンズ鏡筒の表面を直接手で触れながら、レンズ鏡筒を快適に操作することができる。
【0094】
移動面64を有する第2筒状部は、例えば、図9に示す基材36の外周表面に、Si,Al,Ti,Fe,Zn,Co,Mg,Ca,Sr,Ba,Cuのうち少なくとも1つを含む赤外線反射顔料46を含有する塗料を塗布することによって製造することができる。
【0095】
本発明の第4実施形態に係るレンズ鏡筒は、物体に熱エネルギーを与える光を反射する反射率が高い移動面64が備えられた第2筒状部を含むため、赤外線を多量に照射される環境下で用いられた場合でも、第2筒状部およびレンズ鏡筒全体の温度上昇を効果的に防止することができる。また、第2筒状部の温度上昇が効果的に防止されるため、レンズ鏡筒を使用する撮影者等は、レンズ鏡筒の表面を直接手で触れながら、レンズ鏡筒の操作を快適に行うことができる。
【符号の説明】
【0096】
10… レンズ鏡筒
12… 第1筒状部
15… 光通過領域
22… 第2筒状部
24,44,54,64… 移動面
32… 第1層
34… 第2層
36… 基材
38… 金属粒子
40… 濃色遮熱顔料
46… 赤外線反射顔料
50… メタリック遮熱塗膜
52… クリーム色遮熱塗膜
62… 遮熱塗膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光学系を備える第1の筒部材と、
前記第1の光学系とは異なる第2の光学系を備え、前記第1の筒部材に対して相対移動可能な第2の筒部材とを含み、
前記第2の筒部材は、波長1000nm以上1700nm未満の光の平均反射率が波長400nm以上700nm未満の光の平均反射率より高く、前記第1の筒部材に覆われる第1の位置と、前記第1の筒部材から露出する第2の位置とに移動可能な移動面が、前記第2の筒部材の外周の少なくとも一部に備えられていることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
請求項1に記載されたレンズ鏡筒であって、
前記移動面は、波長400nm以上700nm未満の光の反射率が15%以下であり、波長1000nm以上1700nm未満の光の反射率が50%以上であることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項3】
請求項1に記載されたレンズ鏡筒であって、
前記移動面は、波長400nm以上700nm未満の光の反射率が20%以上60%以下であり、波長1000nm以上1700nm未満の光の反射率が60%以上であることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項4】
請求項1に記載されたレンズ鏡筒であって、
前記移動面は、波長400nm以上700nm未満の光の反射率が60%以上80%以下であり、波長1000nm以上1700nm未満の光の反射率が80%以上であることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項5】
請求項1に記載されたレンズ鏡筒であって、
前記移動面は、Lab表色系における明度Lが40未満であって、波長900nm以上1700nm未満の光の反射率が30%以上であることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項6】
請求項1に記載されたレンズ鏡筒であって、
前記移動面は、Lab表色系における明度Lが40以上70未満であって、波長900nm以上1700nm未満の光の反射率が50%以上であることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項7】
請求項1に記載されたレンズ鏡筒であって、
前記移動面は、Lab表色系における明度Lが70以上であって、波長900nm以上1700nm未満の光の反射率が70%以上であることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項8】
請求項1から請求項7までの何れか1項に記載されたレンズ鏡筒であって、
前記移動面には、前記第2の光学系の外側に備えられた基材の外側に形成された塗膜が備えられていることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項9】
請求項8に記載されたレンズ鏡筒であって、
前記塗膜は、Al,Au,Ag,Ni,Cuのうちから選択された少なくとも1つの元素を含有することを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項10】
請求項9に記載されたレンズ鏡筒であって、
前記塗膜は、板状もしくは箱形状の外形状の金属粉を有することを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項11】
請求項8から請求項10までの何れか1項に記載されたレンズ鏡筒であって、
前記基材は、ポリカーボネート、マグネシウム系合金、アルミニウム系合金、アルミニウム、カーボン・樹脂複合材料から選択された少なくとも1つを有することを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項12】
請求項8から請求項11までの何れか1項に記載されたレンズ鏡筒であって、
前記塗膜は、Si,Al,Ti,Fe,Zn,Co,Mg,Ca,Sr,Ba,Cuのうちから選択された少なくとも1つの元素を含有することを特徴とするレンズ鏡筒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−286732(P2010−286732A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141502(P2009−141502)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】